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繭4
蛍光灯のほの白い光を淡く返す頬がゆっくりと愛理のそれに近づいていく。いや、触手群が愛理を引き寄せていた。
「ひう」
ついに愛理の身体が肉卵にぷちゃっと滑稽な音を立てて密着する。何本かの触手はその縛めを解いた。
愛理の目前に微笑みを湛えた未央の母の顔があった。額も首筋も白く血の気を感じさせないが、肌の艶と張りは生気に満ち溢れた少女のようだ。ふ、と微かに目を細めて、愛理の額に彼女の唇が触れた。やはり、冷たくはない。むしろ温かだ。
「や、おばさ……」
軽い拒否を示す愛理。想像の域を果てしなく越えた非現実の只中から、改めて浮かび上がった「近所の知り合い」という現実。
「おばさんはないでしょ。恵美子って呼んで」
えみこっていうんだ、はじめてしった。
うっすらとそんな言葉を心中に浮かべ、過去の氷上家との記憶を呼び覚ましている愛理の唇を、恵美子の柔らかなそれが包んだ。ふわりと唇が触れた感触と、続くぬめって引きずられる感覚が愛理の脳に重い楔を打ち込む。薄くて赤い舌がちろりと愛理の上唇を舐め、下唇を恵美子の上下が含んで吸う。撃ち込まれた快楽の楔は気体のようにほどけて愛理の脳に広がる。また包まれ、舌でなぞられ、軽く押し当てられるとまた含まれる。
「んあ、ふ、う、ん、む、ううぅ」
くぐもった声が知らず上がり、眉根が寄せられる。優しく、しかし圧倒的な快感。
えみこさんやめて。
始めそう言おうとしたが、言うことも叶わず言うつもりもすぐに消え失せた。
すごくいい。でもみきちゃんのおかあさん。でもきもちいい。しらなきゃよかった。なまえだってどうでもよかったのに。
恵美子は落ち着いた慈しむような瞳で愛理を見つめながら、唇の彷徨を続ける。口づけであって口づけではない。深い深い愛撫であり、侵略。つるりと舌が愛理の口腔に忍び込み、愛理のそれを捕らえた。絡め取られた舌と包まれる唇から快楽の和音が重く響く。
「んーっ、んん、んぅんん」
愛理はもはや気づく余裕もないが、触手の動きは和らいでいる。愛理の中と外で呼吸をするように微かな蠕動を繰り返しているだけだ。愛理は今やそれらを下地にして唇に集中し、全身を愛でられる錯覚に陥っている。
「んんー、んんんーっ、んんっは、くあああ、ふあぅぁ」
唐突に恵美子の唇が離された。そして満面の笑み。
「どう? キスでこんなになれるなんて知らなかったでしょ」
力なくわずかに舌を突き出して愛理はただうなだれている。
「もっともっと教えてあげる。もっともっともぉっとすごいの。どんなことより素敵なの。だから愛理ちゃんも、おいで、ね?」
最後に発された疑問形の抑揚に、なんとなく愛理の首が持ちあがる。
恵美子の舌が、ひどく肥大化して伸び、鎌首をもたげていた。それは不自然なほど鮮やかな赤で、太さは人の手首ほどもあり、表面を覆う微細な突起がふるふると蠢いている。
「いぁっ、いやぁっ!」
始めから完全に異形ではなかったことが、微かな現実がちらついていたことが、愛理にはひどく残酷だった。
これまでに見せたどんな動きよりも速く、幅広の触手が愛理の頭を固定し、数本の小さな触手が顎を開かせる。恵美子は依然慈愛の色を瞳に浮かべながら、蠢く舌で愛理の口を犯した。口腔をいっぱいに満たし、ゆるゆると内側の粘膜と擦れ合い、這いずって侵入していく。
「んーーーーーーーーーーーーーっ」
真上を向いて目を見開いた愛理の咽喉を通過し、食道を押し広げながらさらに奥へ、奥へ。猛烈な圧迫感と窒息感が愛理を絶望の縁に追いやる。遂に恵美子の舌は内臓に達した。そしてひくん、とひとつ波打つ。
「ぅん!」
腸の奥に熾き火が灯る。炭のように静かな、しかし確かな熱が、愛理の身体のちょうど中心に生まれて膨らんでいく。ひくん、ともうひとつ。熱は急激に育ってとぐろを巻くかのように疼いた。極上の蜜の甘さを含んだ毒。ひくん。三度波打たれ、愛理の全身は完全に毒に犯された。ねっとりとした疼きは、まるでそれ自体意志を持っているかのように、ゆっくりとでもなく急速にでもなく、本能を焦らし反射に応じながら広がって行く。
「っ、ぅぅうぅっ」
ずるずるっ、といきなり舌が引き抜かれると、愛理の口元から白濁液が溢れ、辺りにも大量にぶちまけられた。
巨大な舌はぼたぼたと大粒の雫をこぼしながら、瞬く間に恵美子の柔らかな唇の間にしまい込まれた。何事もなかったかのように、恵美子はまた鮮やかな舌をちろりと覗かせ、唇の周りについた白濁液を舐め取ってくすっと笑った。
「あ、う、あは、あはぁ」
中空を見つめて呆然とする愛理の中は、灼熱に焼き焦がされていた。
「う、きふ、ふあは」
目が見開かれ、はく、はく、と口は小さく開閉を繰り返す。
「い、いひ、いふ、いふぅん」
眉根が寄って全身が小刻みに震え出し、秘唇から溢れる愛液は急激に量を増す。
「あ、あは、あはっ、いっ、いいっ、いいいっ」
目が細められ、唇は震えながら明らかな悦びの形に歪む。
「いい、いいいっ、いいいいのぉぉぉ!!」
愛理の表情が満面の壊れた笑みに凍りついた。ぽっちゃりした舌が突き出される。
その嬌声を合図に、肉卵の表面がざわめき立った。何度かの身震いの後、野原に群生する植物が一斉に開花したかのように、そこは無数の肉芽の海と化していた。
恵美子がにっこりと笑う。母親が、よくできた子どもを誉めるときの目だった。
「さっきまでのもすごかったでしょ。五感が全部研ぎ澄まされて、ぜぇんぶ気持良くなって。でも、今までのは練習なの」
肉芽の海は柔らかく、優しく愛理の身体の前面を埋もれさせて揺らいだ。直径6mmにも満たぬ小さな肉芽が、吸いつき、離れる。それが触れる場所すべてで何万回と繰り返される。執拗に繰り返される。
「ふふ。これからは今まで知らなかった世界が待ってるの。だぁれも知らなかったわたしたちが」
人体の触感限界を遥かに超えるはずの微細な愛撫が、愛理には全て知覚できた。むしろ今愛理の意識は覚醒している。匂いに誘われていた時の混濁した意識とは全く逆だ。今愛理は、肉卵が送り込む快感を隅々まで知覚させられていた。
「すごい、いきぃぃぃふぅんはっすごいよ、きもちいいのいいのふあああぅはぁ」
緩慢だった他の触手も動きを取り戻す。肉卵に触れていない場所を、愛理の内側を、再び蹂躙する。それは優しげな肉芽の海に対して、壮絶に甘い痺れの豪雨だった。
「いはあああ、いんぁあああああああ」
前後の秘裂を行き来していた太い襞つきの触手は、前ほど激しい動きを見せていない。小刻みに振動しながら、ゆっくり、ゆっくりと出入りを繰り返している。全ての細やかで膨大な刺激は、この快楽の地響きで裏打ちされていた。平べったく小さな、内部に長い柔らかなつらら状の突起を持った触手が両耳を咥えて震え、金管楽器の連打にも似た快感が脳の両側から擦り込まれる。太く大きな触手が2本、がばぁっと大きく口を開いて丸みを帯びた尻に吸い着くと、ゆったりとうねりを起こす。内側で大小の肉びらが吸着し、圧迫して離れるたびに快楽が炸裂した。
「ぐああっ、くはあああっ、うわ、うわぁんく、はああぁあおんんんん」
愛理は触手に緩く支えられている頭をがくがくと振り、焦点を失って濁った目をゆっくりと閉じたり突然開いたりさせている。
なにより愛理の狂喜を垣間見させるのは、口元の屈託のない笑みだった。この笑みが、幾重もの襞をもった触手が秘裂の間で激しく注送されるたびにきつく閉じられ、そして開かれた時にはまた張り付いていた。その表情はどこまでも無邪気で、何の思考も感じさせず、美しかった。
「ふぅんくぅ、あああああああ、いぎぃっひっはうんあはあ」
全身をくまなく暴れ狂う快楽が、愛理の身体を溢れ出さんとするかのようだった。実際に、汗と白濁液が絡み合って火照りきった身体をてかてかと濡らし、愛液はとめどなくあふれ、頭が激しく振られるたびに涙と鼻水と涎とが時折散った。
「もう、こぉんなに喜んで。ね、すごいでしょ」
触手が愛理の頭を再び押さえつける。小さく笑って、恵美子はまた愛理の唇を塞いだ。
「んー、んんん、んむうう、うむぅぅぅぅ」
そして生まれたばかりの仔をそうするように、形は人間のそれだが異常に長く赤い舌で愛理の顔を舐めまわした。
白濁液を直に飲まされたときから、愛理は絶頂の頂に留まっていた。ひたすら留まり続けている。快楽の突風が吹きすさぶ山の頂に磔にされて悶え叫んでいるのだ。
恵美子が唇を離した。
「あぷぅあっ、あぁあいい、もっと、やだもっとんぁあああ」
狂喜を張り付かせたままの表情で、愛理は要求した。恵美子は微笑んでまた応え、胸が張り裂けんばかりの愛理の嬌声がくぐもる。
左の手首と肘と腋の下とを支えている触手の縛めが、明らかに弱められた。支えられてはいるが自由になった愛理の手は、初め肉卵の表面で快楽に打ち震えて開いたり閉じたりしていたが、やがてすぐ何かを求めるように肉卵にしがみついた。口づけを続ける恵美子の目が微かに細くなる。そのままずぶずぶと何の抵抗もなく、愛理の手は触手の中に埋もれた。
「きゃふっ………!」
肘まで腕が飲み込まれる。途端、愛理の中の感覚では肘から先が快楽に融けた。融けてなくなってしまうのではない、融けたままなのだ。存在は確かにあるがしかし、どろどろの快楽、溶岩ではなく「溶悦」の状態だ。そしてこれまでとは一線を画した感覚が愛理に流れ込む。
「んん。いいわよ、愛理ちゃん」
恵美子が初めて、恍惚とした表情を見せた。
「やっ、くはあ、なに、ぅっこれ、なにすごいっうそいいあああ」
腕そのものが腕と愛理に快楽を与えている感覚。愛理は一瞬でこの感覚を理解し、本能的に求めた。肉体の反射と愛理自身の精神が、瞬時に快楽を青天井に増幅していく。求めれば求めるほど、愛理の左肘は彼我の境界を失い、解放されていった。
「こっちも、ほら」
右の手の縛めも解かれる。その手は知らず肉卵を求め、そして沈んでいく。
「うふあああああああああ!」
倍加ではなく、乗算だった。瞳は驚愕に開かれ、しかし口元にはいっそう喜悦を浮かべながら、愛理は快楽を求めた。
「んん~……愛理ちゃん、素敵よ、すごい、気持いいのね、気持いいでしょう」
恵美子が愉悦を満面に湛えて喘ぐ。
「だからもっとほら、おいで」
少女のように無邪気な微笑みを見せて、恵美子は誘った。
「ひう」
ついに愛理の身体が肉卵にぷちゃっと滑稽な音を立てて密着する。何本かの触手はその縛めを解いた。
愛理の目前に微笑みを湛えた未央の母の顔があった。額も首筋も白く血の気を感じさせないが、肌の艶と張りは生気に満ち溢れた少女のようだ。ふ、と微かに目を細めて、愛理の額に彼女の唇が触れた。やはり、冷たくはない。むしろ温かだ。
「や、おばさ……」
軽い拒否を示す愛理。想像の域を果てしなく越えた非現実の只中から、改めて浮かび上がった「近所の知り合い」という現実。
「おばさんはないでしょ。恵美子って呼んで」
えみこっていうんだ、はじめてしった。
うっすらとそんな言葉を心中に浮かべ、過去の氷上家との記憶を呼び覚ましている愛理の唇を、恵美子の柔らかなそれが包んだ。ふわりと唇が触れた感触と、続くぬめって引きずられる感覚が愛理の脳に重い楔を打ち込む。薄くて赤い舌がちろりと愛理の上唇を舐め、下唇を恵美子の上下が含んで吸う。撃ち込まれた快楽の楔は気体のようにほどけて愛理の脳に広がる。また包まれ、舌でなぞられ、軽く押し当てられるとまた含まれる。
「んあ、ふ、う、ん、む、ううぅ」
くぐもった声が知らず上がり、眉根が寄せられる。優しく、しかし圧倒的な快感。
えみこさんやめて。
始めそう言おうとしたが、言うことも叶わず言うつもりもすぐに消え失せた。
すごくいい。でもみきちゃんのおかあさん。でもきもちいい。しらなきゃよかった。なまえだってどうでもよかったのに。
恵美子は落ち着いた慈しむような瞳で愛理を見つめながら、唇の彷徨を続ける。口づけであって口づけではない。深い深い愛撫であり、侵略。つるりと舌が愛理の口腔に忍び込み、愛理のそれを捕らえた。絡め取られた舌と包まれる唇から快楽の和音が重く響く。
「んーっ、んん、んぅんん」
愛理はもはや気づく余裕もないが、触手の動きは和らいでいる。愛理の中と外で呼吸をするように微かな蠕動を繰り返しているだけだ。愛理は今やそれらを下地にして唇に集中し、全身を愛でられる錯覚に陥っている。
「んんー、んんんーっ、んんっは、くあああ、ふあぅぁ」
唐突に恵美子の唇が離された。そして満面の笑み。
「どう? キスでこんなになれるなんて知らなかったでしょ」
力なくわずかに舌を突き出して愛理はただうなだれている。
「もっともっと教えてあげる。もっともっともぉっとすごいの。どんなことより素敵なの。だから愛理ちゃんも、おいで、ね?」
最後に発された疑問形の抑揚に、なんとなく愛理の首が持ちあがる。
恵美子の舌が、ひどく肥大化して伸び、鎌首をもたげていた。それは不自然なほど鮮やかな赤で、太さは人の手首ほどもあり、表面を覆う微細な突起がふるふると蠢いている。
「いぁっ、いやぁっ!」
始めから完全に異形ではなかったことが、微かな現実がちらついていたことが、愛理にはひどく残酷だった。
これまでに見せたどんな動きよりも速く、幅広の触手が愛理の頭を固定し、数本の小さな触手が顎を開かせる。恵美子は依然慈愛の色を瞳に浮かべながら、蠢く舌で愛理の口を犯した。口腔をいっぱいに満たし、ゆるゆると内側の粘膜と擦れ合い、這いずって侵入していく。
「んーーーーーーーーーーーーーっ」
真上を向いて目を見開いた愛理の咽喉を通過し、食道を押し広げながらさらに奥へ、奥へ。猛烈な圧迫感と窒息感が愛理を絶望の縁に追いやる。遂に恵美子の舌は内臓に達した。そしてひくん、とひとつ波打つ。
「ぅん!」
腸の奥に熾き火が灯る。炭のように静かな、しかし確かな熱が、愛理の身体のちょうど中心に生まれて膨らんでいく。ひくん、ともうひとつ。熱は急激に育ってとぐろを巻くかのように疼いた。極上の蜜の甘さを含んだ毒。ひくん。三度波打たれ、愛理の全身は完全に毒に犯された。ねっとりとした疼きは、まるでそれ自体意志を持っているかのように、ゆっくりとでもなく急速にでもなく、本能を焦らし反射に応じながら広がって行く。
「っ、ぅぅうぅっ」
ずるずるっ、といきなり舌が引き抜かれると、愛理の口元から白濁液が溢れ、辺りにも大量にぶちまけられた。
巨大な舌はぼたぼたと大粒の雫をこぼしながら、瞬く間に恵美子の柔らかな唇の間にしまい込まれた。何事もなかったかのように、恵美子はまた鮮やかな舌をちろりと覗かせ、唇の周りについた白濁液を舐め取ってくすっと笑った。
「あ、う、あは、あはぁ」
中空を見つめて呆然とする愛理の中は、灼熱に焼き焦がされていた。
「う、きふ、ふあは」
目が見開かれ、はく、はく、と口は小さく開閉を繰り返す。
「い、いひ、いふ、いふぅん」
眉根が寄って全身が小刻みに震え出し、秘唇から溢れる愛液は急激に量を増す。
「あ、あは、あはっ、いっ、いいっ、いいいっ」
目が細められ、唇は震えながら明らかな悦びの形に歪む。
「いい、いいいっ、いいいいのぉぉぉ!!」
愛理の表情が満面の壊れた笑みに凍りついた。ぽっちゃりした舌が突き出される。
その嬌声を合図に、肉卵の表面がざわめき立った。何度かの身震いの後、野原に群生する植物が一斉に開花したかのように、そこは無数の肉芽の海と化していた。
恵美子がにっこりと笑う。母親が、よくできた子どもを誉めるときの目だった。
「さっきまでのもすごかったでしょ。五感が全部研ぎ澄まされて、ぜぇんぶ気持良くなって。でも、今までのは練習なの」
肉芽の海は柔らかく、優しく愛理の身体の前面を埋もれさせて揺らいだ。直径6mmにも満たぬ小さな肉芽が、吸いつき、離れる。それが触れる場所すべてで何万回と繰り返される。執拗に繰り返される。
「ふふ。これからは今まで知らなかった世界が待ってるの。だぁれも知らなかったわたしたちが」
人体の触感限界を遥かに超えるはずの微細な愛撫が、愛理には全て知覚できた。むしろ今愛理の意識は覚醒している。匂いに誘われていた時の混濁した意識とは全く逆だ。今愛理は、肉卵が送り込む快感を隅々まで知覚させられていた。
「すごい、いきぃぃぃふぅんはっすごいよ、きもちいいのいいのふあああぅはぁ」
緩慢だった他の触手も動きを取り戻す。肉卵に触れていない場所を、愛理の内側を、再び蹂躙する。それは優しげな肉芽の海に対して、壮絶に甘い痺れの豪雨だった。
「いはあああ、いんぁあああああああ」
前後の秘裂を行き来していた太い襞つきの触手は、前ほど激しい動きを見せていない。小刻みに振動しながら、ゆっくり、ゆっくりと出入りを繰り返している。全ての細やかで膨大な刺激は、この快楽の地響きで裏打ちされていた。平べったく小さな、内部に長い柔らかなつらら状の突起を持った触手が両耳を咥えて震え、金管楽器の連打にも似た快感が脳の両側から擦り込まれる。太く大きな触手が2本、がばぁっと大きく口を開いて丸みを帯びた尻に吸い着くと、ゆったりとうねりを起こす。内側で大小の肉びらが吸着し、圧迫して離れるたびに快楽が炸裂した。
「ぐああっ、くはあああっ、うわ、うわぁんく、はああぁあおんんんん」
愛理は触手に緩く支えられている頭をがくがくと振り、焦点を失って濁った目をゆっくりと閉じたり突然開いたりさせている。
なにより愛理の狂喜を垣間見させるのは、口元の屈託のない笑みだった。この笑みが、幾重もの襞をもった触手が秘裂の間で激しく注送されるたびにきつく閉じられ、そして開かれた時にはまた張り付いていた。その表情はどこまでも無邪気で、何の思考も感じさせず、美しかった。
「ふぅんくぅ、あああああああ、いぎぃっひっはうんあはあ」
全身をくまなく暴れ狂う快楽が、愛理の身体を溢れ出さんとするかのようだった。実際に、汗と白濁液が絡み合って火照りきった身体をてかてかと濡らし、愛液はとめどなくあふれ、頭が激しく振られるたびに涙と鼻水と涎とが時折散った。
「もう、こぉんなに喜んで。ね、すごいでしょ」
触手が愛理の頭を再び押さえつける。小さく笑って、恵美子はまた愛理の唇を塞いだ。
「んー、んんん、んむうう、うむぅぅぅぅ」
そして生まれたばかりの仔をそうするように、形は人間のそれだが異常に長く赤い舌で愛理の顔を舐めまわした。
白濁液を直に飲まされたときから、愛理は絶頂の頂に留まっていた。ひたすら留まり続けている。快楽の突風が吹きすさぶ山の頂に磔にされて悶え叫んでいるのだ。
恵美子が唇を離した。
「あぷぅあっ、あぁあいい、もっと、やだもっとんぁあああ」
狂喜を張り付かせたままの表情で、愛理は要求した。恵美子は微笑んでまた応え、胸が張り裂けんばかりの愛理の嬌声がくぐもる。
左の手首と肘と腋の下とを支えている触手の縛めが、明らかに弱められた。支えられてはいるが自由になった愛理の手は、初め肉卵の表面で快楽に打ち震えて開いたり閉じたりしていたが、やがてすぐ何かを求めるように肉卵にしがみついた。口づけを続ける恵美子の目が微かに細くなる。そのままずぶずぶと何の抵抗もなく、愛理の手は触手の中に埋もれた。
「きゃふっ………!」
肘まで腕が飲み込まれる。途端、愛理の中の感覚では肘から先が快楽に融けた。融けてなくなってしまうのではない、融けたままなのだ。存在は確かにあるがしかし、どろどろの快楽、溶岩ではなく「溶悦」の状態だ。そしてこれまでとは一線を画した感覚が愛理に流れ込む。
「んん。いいわよ、愛理ちゃん」
恵美子が初めて、恍惚とした表情を見せた。
「やっ、くはあ、なに、ぅっこれ、なにすごいっうそいいあああ」
腕そのものが腕と愛理に快楽を与えている感覚。愛理は一瞬でこの感覚を理解し、本能的に求めた。肉体の反射と愛理自身の精神が、瞬時に快楽を青天井に増幅していく。求めれば求めるほど、愛理の左肘は彼我の境界を失い、解放されていった。
「こっちも、ほら」
右の手の縛めも解かれる。その手は知らず肉卵を求め、そして沈んでいく。
「うふあああああああああ!」
倍加ではなく、乗算だった。瞳は驚愕に開かれ、しかし口元にはいっそう喜悦を浮かべながら、愛理は快楽を求めた。
「んん~……愛理ちゃん、素敵よ、すごい、気持いいのね、気持いいでしょう」
恵美子が愉悦を満面に湛えて喘ぐ。
「だからもっとほら、おいで」
少女のように無邪気な微笑みを見せて、恵美子は誘った。
繭3
深夜。
暗い路地から見える氷上家の窓には、厚手のカーテンを通して薄ぼんやりと影が浮かんでいる。それが人なのか家具なのか見ては取れない。わずかに開いた窓から夜風が入り込み、カーテンを揺らす。それに連れて、影もゆらりゆらりと形を変えた。
部屋の中は無情なほど明るかった。何の変哲もない蛍光灯が、室内の異常を余すところなく照らしていた。たわんだベッドの上に鎮座した巨大な肉卵は、部屋じゅうに触手を伸ばしている。あちこちに白濁液が染みをつくり、鈍く光っている。床を這って壁に沿い、中ほどまで上った触手の先がひくひくと震え、白濁液の飛沫を飛ばした。
そしてその異常に飲み込まれつつある神田愛理が、ひとり。
愛理の腰骨の辺りにとりわけ幅広の触手が巻き付いて、身体を宙に支えていた。四肢にはそれよりは小ぶりな触手が数本ずつ。それらがたゆたうように作業し、愛理の身体から着衣を脱がしにかかった。惚けた表情の愛理からゆっくりと脱がされて行く様は、母親に着替えさせられる乳児を思わせた。
「……脱がすのぉ? 脱がされるのぉ……」
愛理は小声で間延びした言葉を発する。
ニットのカーディガンが床に落ち、続いて数本の触手が一斉にかかってキャミソールと薄青のブラを脱がせた。Eカップは優にある豊かな丸みの乳房が露になって揺れた。そして色白の肌を、改めて触手たちは蹂躙していく。愛理の下には脱がされた着衣が折り重なった。触手に覆われた柔肌から、砂地に落とした水滴のように快楽が染み込んでいく。
「んはぅ、んはぁっ」
愛理は鼻にかかった鳴き声をあげた。触手が愛理の肌の上を滑りまとわりついて吸い、離れる。背中に、二の腕に、胸に、脇腹に、臍に、触手の突起が甘く温かに湿った快感の連打を続けざまに刻んで行く。そのたびに、ぴちゃ、きゅぅ、ずちゅっ、と汁気に溢れた音を立ててた。
「いっ、いいっ、ひあうっ」
それ以前に、秘所で蠢き続ける触手はひっきりなしに愛理に快楽を送り続けていた。そのあまりの深さに愛理は、まるで快楽そのものが波打つ水面へと腰まで浸かったかのような錯覚に陥った。
「うああ、うああぅ、深いの、気持いいのが、深いのぉ」
甘えた声を喉の奥から細く漏らしながら、さざめく愉悦の泉に浸り、愛理の足はゆらゆらと宙をたゆたう。内から外へ、外から内へ、皮膚や筋肉や骨格などそこには存在しないかのように、ただ水のように濃密な快楽が愛理の中に波紋を伴いながら広がり続けた。
ぱさ、と下にはいていたスエットとパンティが絨毯の上に落ちた。全裸となった愛理を襲う触手の数が増す。大小含め2、30からの様々の触手に、ほぼ余すところなく愛理の身体は埋め尽くされていた。
やがて愛理の豊満な二つの乳房の頂に、無数の繊毛が先端で蠢く触手がそっと触れた。
「ひっ……く」
触れられた瞬間、鋭く冷たい快感が愛理の乳首から背中までを深々と貫いた。そして両の乳房を串刺しにした冷感は、ふんわりとした熱に変わっていく。
「くぅっあ……なに、なにこれぇっ」
果てしなく甘やかな痺れが、乳房に充満し渦巻き肩へ腹へ腕へ腰へと溢れていく。
「んあ、んあああっ、いい、気持いい、むね、気持いいい」
分泌液にぬめる繊毛のひとつひとつが柔らかで弾力のある乳首を小刻みに舐め包んでいく。と、二本の触手の先端がにちゃぁ、と微かに音を立てて割れた。裂け目には幾重かの黒々とした襞、その内側には丸みを帯びた突起、そして奥から柔軟性のある管状の肉筒がぬっと突き出される。それ単体で何か海中生物の摂取口を思わせた。開いた口が薄桃の両乳首を同時に覆う。いったんは途切れた刺激が、口に含まれた途端に猛り狂って再び押し寄せた。
「んっっふはぁ、ふわぁぁぁぅ」
吸いつく襞の中では、小さな管に乳首が吸引されている。管の中のさらに小さな突起ひとつひとつが乳首を捻り擦り上げてはまた奥へと咥え直す。
「いい、胸、吸われて、ぇいいいいっ」
現実には乳首だけが飲み込まれているが、愛理の感覚は乳房まるごと法外な快楽に飲み込まれているようにしか思えない。下半身からさざめく波紋と乳房から沸き起こる津波が愛理の中でぶつかり合い、互いを膨らませながら跳ね返ってまた何度も行きつ戻りつを繰り返す。
「ふあああっ、だめ、もう、だめ、だめ、だめだめだめ、」
膨大な快感の情報が愛理の脳を急速に焦がし、占領していく。泡立つ毒にも似た肉欲の麻痺がその支配を完了したとき、愛理の感覚は放り投げられた。
「んああああああああああああっっっっ」
本能的な恐怖にも近い絶頂感が愛理を襲って意識を開放する。重たげに半眼となっていた瞼が開かれ、唇は驚きとも笑みともつかぬ形をとる。触手に巻きつかれて自由の利かない手足が小刻みに震え、背中から首にかけてびくん、びくん、と小さく痙攣を起こした。少し閉じられて半開きになった口の端から、涎が滴となって落ちた。
「うぅふ、ふぅぅふ」
深く早く呼吸をする以外はぐったりとして触手に支えられるに任せる愛理の身体に向かって、幾重にも折り重なった襞を持つ太い触手が肉卵の中央から伸びていった。
「や……」
霞む視界の向こうにうっすらと見えたそれに、愛理は本能的に注意を向けずにはいられなかった。
「それ……やぁ……」
焦らすような素振りも一瞬のためらいもなく、野太い触手が愛理の股の間を這い登って挿入された。
ひゅっ、と息を飲み込んで凍る愛理。
身体の中心から全身に向けて乱暴な無感覚が走った。これまでの狂おしいほどの快楽が一撃で打ち消される。鼻腔を満たし続けていた甘い匂いも、耳の奥まで分け入っていた粘着質の音も、全身の快感神経を占領していた絶妙な触感も、自らの心臓の鼓動ですら感じられぬ「0」の瞬間。
続いた反射的な吐息とともに、どっと快楽の奔流が愛理を押し流した。
「うわぁぁぁあああぁぁぁぁぅああああぁんんん!」
ヴァギナから全身に向けて疾るのはひたすら愛理の意識を押し流す「快」。触手が奥まで達したところで快楽の流れは岩に当たって砕けた波のように一瞬強まり、いったん静まる。そしてゆっくりと引かれる。引きずられてゆく。
「くっふぁぁぁぁ、ひ、はぁああああぅ!」
先ほどとは質が違う、しかしさらに強烈な快美の逆流が愛理を容赦なく襲った。続いてまた波が押し寄せる。引いていく。押し寄せる。
「うあ! うあはぁ! くあ! んあああぁ!」
繰り返し繰り返し、至悦の轟音が愛理を駆け抜け打ち震わせてやまない。
「いぎ、いいひ、いい、いいの、いいのぉぉぉ!」
ようやく、言語中枢に「快楽」の情報が伝わった。
「いいっ、いいっ、いいいいっく」
切れ切れの言葉の合間に息をつきながら、愛理は鳴いた。ざわめく他の触手たちが送る刺激も意識に上るようになる。首筋を埋め尽くし、耳朶をすくいあげ、鎖骨を這って乳房を包む。乳首を咥えて臍にもぐり込もうとし、背中を伝って尻をなぞる。二の腕にも太腿にも吸いついて手足の指をしゃぶって離さない。
そして秘裂の中を律動する触手の襞が、愛理の中のそれと絡み合い、名残と呼ぶには甚だ言い足りぬ余韻を残してまた激しく睦み合う。
「すごい、すごぉぉい、きもちいいっ、いいっ、よすぎるのっっう」
快楽が、身体の外側から染み込み、内側から迸り溢れる。内も外もなく愛理はその感覚へ溶け込んでいく。
愛理は目を閉じた。何も見えなくなり、自分が声をあげていることも自覚しなくなった。ただ、激流に身を任せて溺れた。溺れることを望んでいった。全身全霊が今与えられている快楽を享受することを求めた。
真っ暗な視界の中に、輝く鮮やかな色が見える。甲高いしかし不快ではない音が聞こえる。強い存在感の匂いがする。
あ。や。何これ。来る。来ちゃう。
愛理が意識の深淵でちらりとつぶやいたとき、真っ黒ななにかが急速に近づいてきた。
死を予感させるほど巨大な恐怖の仮面をかぶった感覚が愛理の中で音もなく弾けた。
「いやいやいやいやいいいいいいああああああああああ!!」
その瞬間、感覚から漆黒の仮面が剥げ落ちる。その奥には眩しく真っ白な快楽。
「あ………ぁは………あ………っかはぁ」
小刻みな旋律を伴った膨大な悦楽の奔流がざぁっと愛理を押し流し、まだやまない。続いていく。かっと見開かれた目は何も見ていない。限界まで開かれた顎が微かにひくついている。触手に拘束されながらもぐんと伸ばされた四肢から全身にかけて小刻みに震え、足の指先は奇妙な角度に曲がったまま。呼吸すら今このときはしていない。
流れに翻弄され続け、どこまでも流れて行く錯覚に陥る。そしてすっと潮が引いていくかのようにやんわりと澱み、愛理の中にゆるやかな波紋を残した。
「気持ち……いいでしょ」
囁きが聞こえた。外界からの刺激を遮断し、内に沸き起こる感覚のみに貪欲となっていた愛理の意識。その蕾のように閉じこもっていた愛理を、囁きが優しく解きほぐす。
「こんなに素敵なの……初めてでしょ?」
濁っていた愛理の瞳孔が生の光をわずかに取り戻す。急速に視覚が蘇った。
「あ……ぅは………」
定まらぬ焦点がようやく一つになったとき、愛理の目の前に見覚えのある「顔」があった。
「え……お…かぁさ、ん……? みお、さんの……」
かすれた声が喉の奥から絞り出されるのにつられて、霧散していた理性が徐々に働きだした。確かに、目の前にある「顔」は未央の母だ。年の頃は四十前かそこらだったはずだが、今はもっと若く見える。
「嬉しいわ。来てくれて。愛理ちゃん」
にっこりと、慈しむように優しい笑みを浮かべる。微笑んだだけで垂れ気味の目がなくなるところも、かつて愛理の記憶にあるものと同じだ。
「今未央もすごぉく気持いいところ。美樹も喜んでる。こんなに、ほらすごい」
とろんと、淫らとしか言いようのない融けた目つきで愛理を見つめる。
「愛理ちゃんもわかるようになるの。みぃんなとけるの。だから、ね……?」
言いながら、鮮やかすぎるほど赤い舌がちろと顔を出し、彼女の唇の間を滑って湿らせた。
暗い路地から見える氷上家の窓には、厚手のカーテンを通して薄ぼんやりと影が浮かんでいる。それが人なのか家具なのか見ては取れない。わずかに開いた窓から夜風が入り込み、カーテンを揺らす。それに連れて、影もゆらりゆらりと形を変えた。
部屋の中は無情なほど明るかった。何の変哲もない蛍光灯が、室内の異常を余すところなく照らしていた。たわんだベッドの上に鎮座した巨大な肉卵は、部屋じゅうに触手を伸ばしている。あちこちに白濁液が染みをつくり、鈍く光っている。床を這って壁に沿い、中ほどまで上った触手の先がひくひくと震え、白濁液の飛沫を飛ばした。
そしてその異常に飲み込まれつつある神田愛理が、ひとり。
愛理の腰骨の辺りにとりわけ幅広の触手が巻き付いて、身体を宙に支えていた。四肢にはそれよりは小ぶりな触手が数本ずつ。それらがたゆたうように作業し、愛理の身体から着衣を脱がしにかかった。惚けた表情の愛理からゆっくりと脱がされて行く様は、母親に着替えさせられる乳児を思わせた。
「……脱がすのぉ? 脱がされるのぉ……」
愛理は小声で間延びした言葉を発する。
ニットのカーディガンが床に落ち、続いて数本の触手が一斉にかかってキャミソールと薄青のブラを脱がせた。Eカップは優にある豊かな丸みの乳房が露になって揺れた。そして色白の肌を、改めて触手たちは蹂躙していく。愛理の下には脱がされた着衣が折り重なった。触手に覆われた柔肌から、砂地に落とした水滴のように快楽が染み込んでいく。
「んはぅ、んはぁっ」
愛理は鼻にかかった鳴き声をあげた。触手が愛理の肌の上を滑りまとわりついて吸い、離れる。背中に、二の腕に、胸に、脇腹に、臍に、触手の突起が甘く温かに湿った快感の連打を続けざまに刻んで行く。そのたびに、ぴちゃ、きゅぅ、ずちゅっ、と汁気に溢れた音を立ててた。
「いっ、いいっ、ひあうっ」
それ以前に、秘所で蠢き続ける触手はひっきりなしに愛理に快楽を送り続けていた。そのあまりの深さに愛理は、まるで快楽そのものが波打つ水面へと腰まで浸かったかのような錯覚に陥った。
「うああ、うああぅ、深いの、気持いいのが、深いのぉ」
甘えた声を喉の奥から細く漏らしながら、さざめく愉悦の泉に浸り、愛理の足はゆらゆらと宙をたゆたう。内から外へ、外から内へ、皮膚や筋肉や骨格などそこには存在しないかのように、ただ水のように濃密な快楽が愛理の中に波紋を伴いながら広がり続けた。
ぱさ、と下にはいていたスエットとパンティが絨毯の上に落ちた。全裸となった愛理を襲う触手の数が増す。大小含め2、30からの様々の触手に、ほぼ余すところなく愛理の身体は埋め尽くされていた。
やがて愛理の豊満な二つの乳房の頂に、無数の繊毛が先端で蠢く触手がそっと触れた。
「ひっ……く」
触れられた瞬間、鋭く冷たい快感が愛理の乳首から背中までを深々と貫いた。そして両の乳房を串刺しにした冷感は、ふんわりとした熱に変わっていく。
「くぅっあ……なに、なにこれぇっ」
果てしなく甘やかな痺れが、乳房に充満し渦巻き肩へ腹へ腕へ腰へと溢れていく。
「んあ、んあああっ、いい、気持いい、むね、気持いいい」
分泌液にぬめる繊毛のひとつひとつが柔らかで弾力のある乳首を小刻みに舐め包んでいく。と、二本の触手の先端がにちゃぁ、と微かに音を立てて割れた。裂け目には幾重かの黒々とした襞、その内側には丸みを帯びた突起、そして奥から柔軟性のある管状の肉筒がぬっと突き出される。それ単体で何か海中生物の摂取口を思わせた。開いた口が薄桃の両乳首を同時に覆う。いったんは途切れた刺激が、口に含まれた途端に猛り狂って再び押し寄せた。
「んっっふはぁ、ふわぁぁぁぅ」
吸いつく襞の中では、小さな管に乳首が吸引されている。管の中のさらに小さな突起ひとつひとつが乳首を捻り擦り上げてはまた奥へと咥え直す。
「いい、胸、吸われて、ぇいいいいっ」
現実には乳首だけが飲み込まれているが、愛理の感覚は乳房まるごと法外な快楽に飲み込まれているようにしか思えない。下半身からさざめく波紋と乳房から沸き起こる津波が愛理の中でぶつかり合い、互いを膨らませながら跳ね返ってまた何度も行きつ戻りつを繰り返す。
「ふあああっ、だめ、もう、だめ、だめ、だめだめだめ、」
膨大な快感の情報が愛理の脳を急速に焦がし、占領していく。泡立つ毒にも似た肉欲の麻痺がその支配を完了したとき、愛理の感覚は放り投げられた。
「んああああああああああああっっっっ」
本能的な恐怖にも近い絶頂感が愛理を襲って意識を開放する。重たげに半眼となっていた瞼が開かれ、唇は驚きとも笑みともつかぬ形をとる。触手に巻きつかれて自由の利かない手足が小刻みに震え、背中から首にかけてびくん、びくん、と小さく痙攣を起こした。少し閉じられて半開きになった口の端から、涎が滴となって落ちた。
「うぅふ、ふぅぅふ」
深く早く呼吸をする以外はぐったりとして触手に支えられるに任せる愛理の身体に向かって、幾重にも折り重なった襞を持つ太い触手が肉卵の中央から伸びていった。
「や……」
霞む視界の向こうにうっすらと見えたそれに、愛理は本能的に注意を向けずにはいられなかった。
「それ……やぁ……」
焦らすような素振りも一瞬のためらいもなく、野太い触手が愛理の股の間を這い登って挿入された。
ひゅっ、と息を飲み込んで凍る愛理。
身体の中心から全身に向けて乱暴な無感覚が走った。これまでの狂おしいほどの快楽が一撃で打ち消される。鼻腔を満たし続けていた甘い匂いも、耳の奥まで分け入っていた粘着質の音も、全身の快感神経を占領していた絶妙な触感も、自らの心臓の鼓動ですら感じられぬ「0」の瞬間。
続いた反射的な吐息とともに、どっと快楽の奔流が愛理を押し流した。
「うわぁぁぁあああぁぁぁぁぅああああぁんんん!」
ヴァギナから全身に向けて疾るのはひたすら愛理の意識を押し流す「快」。触手が奥まで達したところで快楽の流れは岩に当たって砕けた波のように一瞬強まり、いったん静まる。そしてゆっくりと引かれる。引きずられてゆく。
「くっふぁぁぁぁ、ひ、はぁああああぅ!」
先ほどとは質が違う、しかしさらに強烈な快美の逆流が愛理を容赦なく襲った。続いてまた波が押し寄せる。引いていく。押し寄せる。
「うあ! うあはぁ! くあ! んあああぁ!」
繰り返し繰り返し、至悦の轟音が愛理を駆け抜け打ち震わせてやまない。
「いぎ、いいひ、いい、いいの、いいのぉぉぉ!」
ようやく、言語中枢に「快楽」の情報が伝わった。
「いいっ、いいっ、いいいいっく」
切れ切れの言葉の合間に息をつきながら、愛理は鳴いた。ざわめく他の触手たちが送る刺激も意識に上るようになる。首筋を埋め尽くし、耳朶をすくいあげ、鎖骨を這って乳房を包む。乳首を咥えて臍にもぐり込もうとし、背中を伝って尻をなぞる。二の腕にも太腿にも吸いついて手足の指をしゃぶって離さない。
そして秘裂の中を律動する触手の襞が、愛理の中のそれと絡み合い、名残と呼ぶには甚だ言い足りぬ余韻を残してまた激しく睦み合う。
「すごい、すごぉぉい、きもちいいっ、いいっ、よすぎるのっっう」
快楽が、身体の外側から染み込み、内側から迸り溢れる。内も外もなく愛理はその感覚へ溶け込んでいく。
愛理は目を閉じた。何も見えなくなり、自分が声をあげていることも自覚しなくなった。ただ、激流に身を任せて溺れた。溺れることを望んでいった。全身全霊が今与えられている快楽を享受することを求めた。
真っ暗な視界の中に、輝く鮮やかな色が見える。甲高いしかし不快ではない音が聞こえる。強い存在感の匂いがする。
あ。や。何これ。来る。来ちゃう。
愛理が意識の深淵でちらりとつぶやいたとき、真っ黒ななにかが急速に近づいてきた。
死を予感させるほど巨大な恐怖の仮面をかぶった感覚が愛理の中で音もなく弾けた。
「いやいやいやいやいいいいいいああああああああああ!!」
その瞬間、感覚から漆黒の仮面が剥げ落ちる。その奥には眩しく真っ白な快楽。
「あ………ぁは………あ………っかはぁ」
小刻みな旋律を伴った膨大な悦楽の奔流がざぁっと愛理を押し流し、まだやまない。続いていく。かっと見開かれた目は何も見ていない。限界まで開かれた顎が微かにひくついている。触手に拘束されながらもぐんと伸ばされた四肢から全身にかけて小刻みに震え、足の指先は奇妙な角度に曲がったまま。呼吸すら今このときはしていない。
流れに翻弄され続け、どこまでも流れて行く錯覚に陥る。そしてすっと潮が引いていくかのようにやんわりと澱み、愛理の中にゆるやかな波紋を残した。
「気持ち……いいでしょ」
囁きが聞こえた。外界からの刺激を遮断し、内に沸き起こる感覚のみに貪欲となっていた愛理の意識。その蕾のように閉じこもっていた愛理を、囁きが優しく解きほぐす。
「こんなに素敵なの……初めてでしょ?」
濁っていた愛理の瞳孔が生の光をわずかに取り戻す。急速に視覚が蘇った。
「あ……ぅは………」
定まらぬ焦点がようやく一つになったとき、愛理の目の前に見覚えのある「顔」があった。
「え……お…かぁさ、ん……? みお、さんの……」
かすれた声が喉の奥から絞り出されるのにつられて、霧散していた理性が徐々に働きだした。確かに、目の前にある「顔」は未央の母だ。年の頃は四十前かそこらだったはずだが、今はもっと若く見える。
「嬉しいわ。来てくれて。愛理ちゃん」
にっこりと、慈しむように優しい笑みを浮かべる。微笑んだだけで垂れ気味の目がなくなるところも、かつて愛理の記憶にあるものと同じだ。
「今未央もすごぉく気持いいところ。美樹も喜んでる。こんなに、ほらすごい」
とろんと、淫らとしか言いようのない融けた目つきで愛理を見つめる。
「愛理ちゃんもわかるようになるの。みぃんなとけるの。だから、ね……?」
言いながら、鮮やかすぎるほど赤い舌がちろと顔を出し、彼女の唇の間を滑って湿らせた。
繭2
愛理の中に残されたかすかな理性が抵抗を命じた。
じりじりとサンダル履きの踵を後ろへ滑らせながら、よろめいて今にもしゃがみ込んでしまいそうな体を支えるべく壁に手をつく。
ぱちん。
突如愛理の視界が真っ白になり、反射的に閉じられた瞼の上に鈍い痛みがのしかかる。 さあっと血の気が引いた。考えずともわかる。照明をつけてしまったのだ、あろうことか。
目を開けるのが恐かった。今この瞼を開いたとき、見えるものを想像している自分自身にすらたまらない嫌悪感を覚えた。その思いも現実逃避かも知れない。闇の中ですらそれほどの非現実を見てしまったのだ。目を開けたくない――。
そっ、と複雑な触感が足の甲に起きた。
「やっ」
閉じたときと同じように、反射的に愛理は固く閉じた瞼を見開いてしまった。
烏賊の甲腕に似た幅広の触手が、素足の上を這ったのだ。その感触は暖かく湿って柔らかな人間の舌10枚にいっぺんに舐められるのに近いかも知れない。
その後は声にはならない。意思を働かせるまでもなく、奇妙な触手から本能的に足が離れようとする。サンダルが片方脱げた。そのまま後ろに送った足に体重をかけた途端、愛理はがくりと膝から崩れた。
「んあっ」
後ろへ尻餅をつく格好で座り込んだ愛理の素足を、幅広の触手がらせん状に這いずってゆっくりと絡めとっていく。ゆったりとしたスエットの裾に潜り込み、それが1センチ進む毎に、複雑な感触を白い肌に刻んだ。
「ふああっ」
気持ちいい。幾重にも折り重ねられた重厚な触感に脳が出した答えはそれだった。そして鼻腔から侵入して体内を満たしつづける甘さと呼応し、愛理の理性は性欲の閂を押さえる力を弱めてしまった。
いい。気持ちいい。
板張りの廊下についた手が部屋に対してか弱いつっかい棒となっていたが、あえなく肘の力が抜ける。途端、ぐっ、と触手に力がこもり、愛理は戸口から部屋へと引きずり入れられた。愛理は抵抗しない。
照明が煌煌とついた部屋の中は、今や非現実の極みを愛理に見せた。
部屋の奥、窓際にあるベッドの上に、こんもりとした有機物の塊がある。直径2メートルはあろうかという、巨大な卵とでも言うべきものだ。その大きさと質量で金属製のパイプベッドがたわんでいた。卵の表面は柔らかな無数の突起や丸みを帯びた裂け目で覆われており、それらが呼吸をするかのように蠕動している。肉卵もそこから伸びた無数の触手も、わずかな粘性と白濁色を持った分泌物で濡れ、特に裂け目からそれは豊富に滴って糸を引いていた。匂いの正体はこれだと愛理は感じた。妖しい花弁から漏れる蜜の匂いだったのだ。
既に犠牲者となっている美樹はその塊に四肢が埋もれ同化しているように見えた。そして塊から伸びた数えきれないほどの触手に巻き包まれ、弄ばれていた。その触手ひとつひとつがそれぞれの意思を感じさせる多様な動きを見せていた。美樹の肉体に巻きつき執拗に蠕動を続けるものはもちろん、その快楽の律動に合わせるかのように宙撫でるもの、地面を這って行きつ戻りつするもの。
ずずっ、ずずっ、と引きずられながら、愛理はその光景をぼんやりと見つめていた。愛理を引きずる触手に数本の加勢が加わる。それらが足に触れた時、ひん、と愛理は小さく鳴いた。
触手は実に様々の形をもっていた。美樹の耳元にまとわりつく細い触手は、全体に小さな漏斗のような肉片をぶらさげていた。その一つひとつの肉漏斗が、耳腔や首筋に吸い付いてはぬらぬらとした粘液を塗りたくる。
美樹の体の大部分を絡めとっている幅広の触手は、愛理の下半身を捕らえているそれと同じものだ。外側とも言うべき側は弾力と艶を持ち、烏賊の甲腕に似ている。一方内側は人間の小指ほどの大きさの、瑞々しく透き通った青灰色の小袋がびっしりと並んでいた。小袋はまるで水中にでもいるかのようになびき、揺らめいている。その滑やかな無数の「舌」が、美樹のほの白い肌を舐め、分泌液を塗りたくりながら、全身を包み上げて蠢きつづけているのだ。触手もそれに包まれる美樹の体も、白濁した液体でずぶ濡れとなって蛍光灯の光をてらてらと返していた。
最も個性を発揮して目立つのが、とりわけ太い、蛸の吸盤のような斑状突起を持った触手だ。それが美樹の開かれた太ももの間でゆっくりとした不規則な前後運動を繰り返しているのが見える。美樹の後ろの穴も、幾重もの柔らかな肉襞を持った若干小ぶりな触手
で埋められている。これは太い蛸に似た触手の半分ほどのリズムで、ゆっくりと差し込まれては勢い良く引かれていた。これらの触手の動きに合わせて、美樹は低くくぐもったうめき声を上げ続けていた。
ひゅるっ、と幅広の触手が2本、愛理に向かって伸ばされた。床に横たわって惚けている愛理の両腕を巻きとると、ぐいっと上体を持ち上げる。下半身を蹂躙していた触手もぐっと太さを増し、力強く愛理の全身を宙に浮かせて悠々と支持した。意外な俊敏さで、愛理は肉卵のそばに引き寄せられた。
「ふぅっ」
下半身に巻きついていたうちの幅広の触手が1本、するりと臍の辺りから服の中へ潜り込んだ。そのまま下着の中へ分け入り、いきなり秘所に触れる。ひと撫でで、熱く湿っていた愛理の秘所から愉悦が広がった。
「うふああああは」
愛理は目を閉じ、吐息と共にうなだれてかすかに見開いた。天井近くの位置から、そこには狂気的な光景が見えた。美樹の体の前面が触れている肉卵の表面は、繊毛のように小さな触手がびっしりと生えていた。その先端は微細な花弁のようになっており、それぞれ美樹の体に吸い付いたり離れたりを繰り返している。
その繊毛の海の中に、人の顔らしきものが埋もれていた。未央だ。額の広い、鼻筋の通ったどちらかと言えば美人顔の面立ちは、間違いなく一級先輩だった未央のものだ。その未央の唇と、ぎゅっと瞼を閉じた美樹の唇は重なり合い、濃厚なキスをやむことなく続けている。
不意に二人の唇が離れた。
「んあ、んあああああっ、うううっ、くう、ううううっ」
途端に美樹の気違いじみた嬌声が上がる。
そっと美樹の耳元が未央の口元に近づけられ、そこで何事かを囁かれた。うめき声をかすかに弱めながら、美樹は確かに一つゆっくりと、うなずいた。
ふ、と美樹は宙吊りになっている愛理に気づいて見上げた。二人の視線が合う。とろんと半眼で口元から分泌液とも涎ともつかぬ液体を滴らせながら、美樹は悦楽に満ちた笑みを愛理に見せた。
かすかに唇を動かして、美樹は愛理に何かをつぶやいた。声は届かず、唇の動きだけが見て取れた。いおういあおう。母音の形だけならそう見えたが、濁った愛理の意識でわかるはずもない。
肉卵がふるふると震える。と、美樹の体に触れていた部分がばっくりと大きく割れた。糸を引いて開かれた内部は、小さな触手と、深い襞と、手のひらほどもある花弁のような様々の柔らかで鮮やかな突起で埋め尽くされている。そこに美樹は飲み込まれてゆく。肉卵の中の突起群が美樹を歓迎するように一斉に波打った。かくん、と美樹の首が後ろに折れ、天を仰ぐ。屈託のない、満足げな彼女の微笑みを愛理の網膜に残して、卵は速やかに閉じられた。その時、表面の小さな割れ目からぴゅっ、ぴゅっ、と白濁した液が溢れた。
そして滑らかにゆっくりと、愛理は肉卵の前まで下ろされていく。美樹を弄んでいたときに細かな触手の海となっていた肉卵の表面は、今は他の部分と同じ形状になっている。そこにあったはずの未央の顔もない。
美樹を内部に収め、手空きとなった幅広の触手が次々と鎌首をもたげた。ぼんやりと霞がかった意識の中、愛理はいくつかの思いを浮き沈みさせた。
あそこが気持いい
未央さんどうなっちゃったんだろう
恐い
美樹ちゃんすごく気持良さそうだった
これ気持悪い形
あたしどうなっちゃうんだろ
いい匂い
わけわかんない
ぷしゅ、と再び表面に液を分泌させて、肉卵が蠢いた。
じりじりとサンダル履きの踵を後ろへ滑らせながら、よろめいて今にもしゃがみ込んでしまいそうな体を支えるべく壁に手をつく。
ぱちん。
突如愛理の視界が真っ白になり、反射的に閉じられた瞼の上に鈍い痛みがのしかかる。 さあっと血の気が引いた。考えずともわかる。照明をつけてしまったのだ、あろうことか。
目を開けるのが恐かった。今この瞼を開いたとき、見えるものを想像している自分自身にすらたまらない嫌悪感を覚えた。その思いも現実逃避かも知れない。闇の中ですらそれほどの非現実を見てしまったのだ。目を開けたくない――。
そっ、と複雑な触感が足の甲に起きた。
「やっ」
閉じたときと同じように、反射的に愛理は固く閉じた瞼を見開いてしまった。
烏賊の甲腕に似た幅広の触手が、素足の上を這ったのだ。その感触は暖かく湿って柔らかな人間の舌10枚にいっぺんに舐められるのに近いかも知れない。
その後は声にはならない。意思を働かせるまでもなく、奇妙な触手から本能的に足が離れようとする。サンダルが片方脱げた。そのまま後ろに送った足に体重をかけた途端、愛理はがくりと膝から崩れた。
「んあっ」
後ろへ尻餅をつく格好で座り込んだ愛理の素足を、幅広の触手がらせん状に這いずってゆっくりと絡めとっていく。ゆったりとしたスエットの裾に潜り込み、それが1センチ進む毎に、複雑な感触を白い肌に刻んだ。
「ふああっ」
気持ちいい。幾重にも折り重ねられた重厚な触感に脳が出した答えはそれだった。そして鼻腔から侵入して体内を満たしつづける甘さと呼応し、愛理の理性は性欲の閂を押さえる力を弱めてしまった。
いい。気持ちいい。
板張りの廊下についた手が部屋に対してか弱いつっかい棒となっていたが、あえなく肘の力が抜ける。途端、ぐっ、と触手に力がこもり、愛理は戸口から部屋へと引きずり入れられた。愛理は抵抗しない。
照明が煌煌とついた部屋の中は、今や非現実の極みを愛理に見せた。
部屋の奥、窓際にあるベッドの上に、こんもりとした有機物の塊がある。直径2メートルはあろうかという、巨大な卵とでも言うべきものだ。その大きさと質量で金属製のパイプベッドがたわんでいた。卵の表面は柔らかな無数の突起や丸みを帯びた裂け目で覆われており、それらが呼吸をするかのように蠕動している。肉卵もそこから伸びた無数の触手も、わずかな粘性と白濁色を持った分泌物で濡れ、特に裂け目からそれは豊富に滴って糸を引いていた。匂いの正体はこれだと愛理は感じた。妖しい花弁から漏れる蜜の匂いだったのだ。
既に犠牲者となっている美樹はその塊に四肢が埋もれ同化しているように見えた。そして塊から伸びた数えきれないほどの触手に巻き包まれ、弄ばれていた。その触手ひとつひとつがそれぞれの意思を感じさせる多様な動きを見せていた。美樹の肉体に巻きつき執拗に蠕動を続けるものはもちろん、その快楽の律動に合わせるかのように宙撫でるもの、地面を這って行きつ戻りつするもの。
ずずっ、ずずっ、と引きずられながら、愛理はその光景をぼんやりと見つめていた。愛理を引きずる触手に数本の加勢が加わる。それらが足に触れた時、ひん、と愛理は小さく鳴いた。
触手は実に様々の形をもっていた。美樹の耳元にまとわりつく細い触手は、全体に小さな漏斗のような肉片をぶらさげていた。その一つひとつの肉漏斗が、耳腔や首筋に吸い付いてはぬらぬらとした粘液を塗りたくる。
美樹の体の大部分を絡めとっている幅広の触手は、愛理の下半身を捕らえているそれと同じものだ。外側とも言うべき側は弾力と艶を持ち、烏賊の甲腕に似ている。一方内側は人間の小指ほどの大きさの、瑞々しく透き通った青灰色の小袋がびっしりと並んでいた。小袋はまるで水中にでもいるかのようになびき、揺らめいている。その滑やかな無数の「舌」が、美樹のほの白い肌を舐め、分泌液を塗りたくりながら、全身を包み上げて蠢きつづけているのだ。触手もそれに包まれる美樹の体も、白濁した液体でずぶ濡れとなって蛍光灯の光をてらてらと返していた。
最も個性を発揮して目立つのが、とりわけ太い、蛸の吸盤のような斑状突起を持った触手だ。それが美樹の開かれた太ももの間でゆっくりとした不規則な前後運動を繰り返しているのが見える。美樹の後ろの穴も、幾重もの柔らかな肉襞を持った若干小ぶりな触手
で埋められている。これは太い蛸に似た触手の半分ほどのリズムで、ゆっくりと差し込まれては勢い良く引かれていた。これらの触手の動きに合わせて、美樹は低くくぐもったうめき声を上げ続けていた。
ひゅるっ、と幅広の触手が2本、愛理に向かって伸ばされた。床に横たわって惚けている愛理の両腕を巻きとると、ぐいっと上体を持ち上げる。下半身を蹂躙していた触手もぐっと太さを増し、力強く愛理の全身を宙に浮かせて悠々と支持した。意外な俊敏さで、愛理は肉卵のそばに引き寄せられた。
「ふぅっ」
下半身に巻きついていたうちの幅広の触手が1本、するりと臍の辺りから服の中へ潜り込んだ。そのまま下着の中へ分け入り、いきなり秘所に触れる。ひと撫でで、熱く湿っていた愛理の秘所から愉悦が広がった。
「うふああああは」
愛理は目を閉じ、吐息と共にうなだれてかすかに見開いた。天井近くの位置から、そこには狂気的な光景が見えた。美樹の体の前面が触れている肉卵の表面は、繊毛のように小さな触手がびっしりと生えていた。その先端は微細な花弁のようになっており、それぞれ美樹の体に吸い付いたり離れたりを繰り返している。
その繊毛の海の中に、人の顔らしきものが埋もれていた。未央だ。額の広い、鼻筋の通ったどちらかと言えば美人顔の面立ちは、間違いなく一級先輩だった未央のものだ。その未央の唇と、ぎゅっと瞼を閉じた美樹の唇は重なり合い、濃厚なキスをやむことなく続けている。
不意に二人の唇が離れた。
「んあ、んあああああっ、うううっ、くう、ううううっ」
途端に美樹の気違いじみた嬌声が上がる。
そっと美樹の耳元が未央の口元に近づけられ、そこで何事かを囁かれた。うめき声をかすかに弱めながら、美樹は確かに一つゆっくりと、うなずいた。
ふ、と美樹は宙吊りになっている愛理に気づいて見上げた。二人の視線が合う。とろんと半眼で口元から分泌液とも涎ともつかぬ液体を滴らせながら、美樹は悦楽に満ちた笑みを愛理に見せた。
かすかに唇を動かして、美樹は愛理に何かをつぶやいた。声は届かず、唇の動きだけが見て取れた。いおういあおう。母音の形だけならそう見えたが、濁った愛理の意識でわかるはずもない。
肉卵がふるふると震える。と、美樹の体に触れていた部分がばっくりと大きく割れた。糸を引いて開かれた内部は、小さな触手と、深い襞と、手のひらほどもある花弁のような様々の柔らかで鮮やかな突起で埋め尽くされている。そこに美樹は飲み込まれてゆく。肉卵の中の突起群が美樹を歓迎するように一斉に波打った。かくん、と美樹の首が後ろに折れ、天を仰ぐ。屈託のない、満足げな彼女の微笑みを愛理の網膜に残して、卵は速やかに閉じられた。その時、表面の小さな割れ目からぴゅっ、ぴゅっ、と白濁した液が溢れた。
そして滑らかにゆっくりと、愛理は肉卵の前まで下ろされていく。美樹を弄んでいたときに細かな触手の海となっていた肉卵の表面は、今は他の部分と同じ形状になっている。そこにあったはずの未央の顔もない。
美樹を内部に収め、手空きとなった幅広の触手が次々と鎌首をもたげた。ぼんやりと霞がかった意識の中、愛理はいくつかの思いを浮き沈みさせた。
あそこが気持いい
未央さんどうなっちゃったんだろう
恐い
美樹ちゃんすごく気持良さそうだった
これ気持悪い形
あたしどうなっちゃうんだろ
いい匂い
わけわかんない
ぷしゅ、と再び表面に液を分泌させて、肉卵が蠢いた。
繭1+設定
42 fooltheyellow 2010/06/26(土) 20:08:41 ID:yPm7Oot/
ふと思い出して昔書いた小説の痕跡を探してみたら、このスレッドを発見しました。
もう10年も経つのに、すごいよインターネッツ。
まだ需要があるかもしれないので、テキストをうpしてみました。
「繭」&「蛹」
ttp://www1.axfc.net/uploader/File/so/46310.zip&key=cocoon
よろしければご賞味ください。
43 名無しさん@ピンキー sage 2010/06/26(土) 21:53:54 ID:CQe5f0z1
あなたが作者ならいいのだが…
44 fooltheyellow 2010/06/26(土) 22:12:36 ID:yGzdtrZA
>43さん
作者です。証明する方法はぱっと思いつきませんが。
当時はfoolって名前で、「想像主の館」というWebサイトさんに投稿してました。
繭は2000年作、蛹は2001年作です。
小さいのをたくさん書き連ねようと思って開始した「ウロボロス」シリーズでしたが、力つきて終わってました(笑)。
以上でっす。
45 名無しさん@ピンキー sage 2010/06/26(土) 23:09:17 ID:HCVpl13O
>>44
それ消えてないか?
見つからんチクショォォォォ
46 名無しさん@ピンキー sage 2010/06/27(日) 00:30:56 ID:EZPvAibj
懐かしい
昔ネット巡回中に見つけて、htmlで保存してました
いい作品をありがとう
47 名無しさん@ピンキー sage 2010/06/27(日) 07:55:01 ID:mBNjL4Lw
うおおお、懐かしい!
昔携帯で見つけて、次の日htmlで保存しようと思ったら消えていたので
ものすごくモヤモヤした作品でした!
すごい嬉しいです!
ありがとうございます!
48 43 sage 2010/06/27(日) 10:54:02 ID:PpxNcr/V
無用の言ご容赦
あまりにも出来がすばらしかったんで当時取ったハードコピーが
まだ今も手元にあったりしますがこれで安心できます
49 fooltheyellow 2010/06/27(日) 15:00:07 ID:EaM6pee3
おおーやっぱ覚えてくれていた人いたんだ、ありがとう。
ちなみに当時のバージョンとはほんの少しだけいじりました。
3点リーダーの代わりにナカグロ3つ使ってるのとか誤植とか校正レベル。
あと当時のメモが出てきたので、ついでに用語設定のとこだけ投稿しておきます。
ウロボロス症候群
突然変異的に処女懐妊ふうな症状となり、繭になる。すべての始まり。
発生の理由などは特になく、癌に近い。
ウロボロスの娘たち
処女懐妊で産まれた女性型。異形を生み出す。
異形
さまざまの形。当然触手有。
基本形 人型でどろどろぐちょぐちょ。触手と媚薬ばりばり。犯された女は繭に。
優秀形 女性型。ヒトの脳に神経を打ち込み、ヒトの求める幻影や感覚を再現する。
男性を倒すために産まれた攻撃担当。性交した男性は、死亡したり異形や繭に突然変異する。
繭(直径1m~5m)
近くの有機物を取りこんで成長していく。繭は強烈な快楽であらゆる生き物をひきつける。植物を取りこんだものは光合成する。はじめはヒトとしての意識を残しているが、生存欲求で行動する。成長すればするほどヒト意識を失って行く。
巣(直径5m~20m)
繭が成長しきったもの。小型の異形をひっきりなしに生み出す。新種の強力な砦。
近寄っただけでも性的興奮を覚える。光合成する。傷ついた生物をすべて癒す。
森(直径数100m~数km)
繭や巣の集まり。小型の繭を保有して、人間を格納して快楽を送りつづける。その意識を
両性具有 娘たちがまれに性交以外に単一生殖で産む。
「繭」
鼻腔の奥を濡らして漂い残る。そんな甘い匂いに愛理が気づいたのは昨夜のことだ。開け放した部屋の窓の向こうから、昨夜は微かに、今日は確かに感じる。
この甘ったるい匂いはなにかしら、庭の椿にはまだ早い、と閉めていたカーテンを重みを増した瞼と共にすっと開いたのだ。窓だけ開けて少し冷たい夜気を入れながら世界史の暗記を続けていた愛理は、昨夜と同じ行為によってそれを思い出した。
「昨日から……何かなぁ」
すん、すん、と小ぶりな鼻をひくつかせると、匂いの存在感がぐっと強まる。昨夜は気がつかなかった。いい匂いと言えば容易いが、花や香水で当てはまるものは愛理の記憶にはない。
生き物。
姿形までは想像が届かぬものの、ただ何か生きて命あるものをちらと脳裏に走らせて、ぱし、とアルミ窓を閉めた。窓ガラスに元々垂れ気味の目がさらに眠たげに細められた愛理自身の顔が映った。しゃっとカーテンを閉じて目をこする。
「お腹空いた」
愛理はそう声に出して、ゴム紐で止めていた髪を下ろした。そしてベッドに放り投げてあったニットのカーディガンを手に取る。健康と美容には良くないが、愛理は欲求に正直な性質だった。冷蔵庫にロクなものが入っていないのは開けてみるまでもない。留守がちな両親を持つ神田家の食事情は極めて悪かった。良くて、母が残した食べかけのヨーグルトを発見する程度だ。
薄手のキャミソールの上にカーディガンを羽織りながら階段を降りる。案の定まだ両親は帰っていない。玄関口でサンダルを突っかけて家を出た。道路の彼方に見える、煌煌と灯るコンビニの明かりが空腹の愛理を誘う。
大学受験を控えた愛理の最近のささやかな愉しみを邪魔する者は誰もいない。とっとっと小走りにコンビニへ向かう。
するり、と愛理の細い鼻筋を通って喉下まで届いた匂いが、歩みを止めさせた。今ははっきり甘ったるいと感じる。
(この匂い……)
甘さと湿り気を帯び、その裏にかすかな刺激をともなう複雑な匂い。ふとまた愛理は何かの生き物を想像した。明らかに有機的なのだ。すっ、と短く、続けて長く深く、吸い込んでみる。初めて嗅ぐ匂いなのに、なにか懐かしい気もした。
愛理の視線の先には隣の氷上家があった。切れかけた街灯の明滅に暗い一戸建ての壁が照らされている。
氷上家は母子家庭だった。隣人の氷上未央は同じ高校の一級上、妹の美樹は今年中学3年生。姉妹と幼い頃は良く遊んだが年を取るに連れて疎遠になった。
気がつくと、愛理は氷上家の門の前に立っていた。空腹感が一層際立って胃の辺りに圧迫感がある。
(……あたし、お腹空いて)
再び、甘い匂いが愛理の鼻腔を捕らえた。わずかに吸い込んだ匂いが、さらなる吸引を誘った。愛理は深く吸い込んでいた。はあっ、と吐き出すと、言い知れぬ充足感があった。
「いい、匂い」
愛理はまた声に出していた。瞼が落ちる。知らず、視覚を閉ざすことで嗅覚に閉じこもった。すうう、と細く長く吸って肺を満たすと、ふくよかな胸の奥から痺れとも甘さともつかぬ感覚が血流に乗って全身に巡っていくような錯覚すら覚えた。
そしてゆっくりと重い瞼を開く。部屋にこもっていた時よりもそれは重く感じられた。いつの間にか心地良いけだるさに優しく包まれていることにぼんやりと気がつく。開いた瞳も半眼と言った方が近い。どうしてもくっきりと開ききる気にはなれなかった。
街灯に氷上家の玄関が浮かび上がっている。その右手の方にある窓が少し開いていた。厚手のカーテンがかすかに風に揺れ動いて、それと愛理に知らせたのだ。直感的に、匂いのもとはそこだと確信した。
愛理は門の柵に片手をかけた。ひんやりとした感触におののいて、愛理は手を引っ込めた。冷たい金属が、愛理に今自分が何をしようとしていたのか思い出させた。
「……なにやってんだろ、あたし」
住居不法侵入という罪名を思う以前に、明らかに非常識極まる。恥ずかしさと馬鹿馬鹿しさが急速にけだるさを追いやり、愛理はきびすを返した。
そのとき。
たしかに、人の声を聴いた。短く、甲高いそれはたしかに女性のもので、しかも日常普通に耳にする声とははっきりと属性が違っていた。
愛理は振り返って門に駆け寄った。柵に両手をかけ、じっと耳をすます。
「んんんっ」
女性のうめき声が、愛理の耳に実際のそれよりも大きく聞こえた。どくん、と心臓がひとつ冷ややかな拍動を打つ。愛理はなぜかきょろきょろと辺りを見回した。心拍数が上がってくる。数瞬考えた後、柵を引き開けた。
大股に数歩歩けば小さな庭を渡りきり、すぐ玄関の前だ。ちらと右手の方を見て、いまだわずかに揺れるカーテンが気になった。そのカーテンをそっと手繰れば、先刻の声の主とその理由が氷解する。そんな誘惑に駆られながらも、愛理は扉の脇の呼び鈴を選んでしまった。緩慢とした混乱に対して、わずかに日常に近い選択でささやかな抵抗を試みたのだ。
ぴぃんぽぉぉぅん。
切れかけた電池のせいでひどく低く間延びした呼び鈴の音が響く。返事はない。玄関口の電灯はついておらず、扉の前に立つ愛理の視界は暗い。街灯からの頼りなげな明かりが扉に愛理の小柄な影を斜めに落としていた。
もう一度呼び鈴を押そうとしたところで、あの濃密な匂いがふわりと鼻先から侵入した。いや一時の緊張が、それが意識に上るのを阻止していたに過ぎない。
ふとまた目を閉じて嗅覚に集中したいという欲求に駆られる。匂いというもので今ほど心地よい刺激を受けた覚えは間違いなくない。いつまでもここに佇んで、この匂いに包まれていたい。そんな衝動を動物的に感じたのに続けて、大脳の片隅が何気なく演繹した。
この扉を開ければ、もっと近づける。
愛理は取っ手をひねった。鍵がかかっているという当たり前の予測はちらりともしなかった。かちゃり、と扉は開いた。愛理には当然のように思えた。
ふわ、と匂いの見えざる手が愛理を迎える。優しくかすかに湿り気を帯びた匂いが無数の手をのばして愛理の体を包み込み、家の中へと招き入れた。
家の中はさらに暗い。玄関から奥に廊下が伸びているが、数歩先で闇の塊と同化している。
見えないはずだが愛理は玄関を上がった。サンダルを脱ぐことも忘れて歩みを進める。己の目を頼まずとも、匂いの手が愛理の体を支え導いてくれていた。導きながら、匂いは愛理を悦ばせることをやめない。しとやかな愛撫のように撫で、包み、染み込んで、愛理を満たした。
「はあああぅ」
再び奥のほうから声が聞こえたが、愛理は特別驚きもしない。ああ、いる、とだけ思った。
歩みを進めるに連れて匂いの愛撫は質と量を増した。はあっ、と溜息すらこぼれる。愛理の下腹部が湿り気を帯びてきて、自然にそこを意識させられた。まるでこの匂いがゆっくりとそこに結露しているかのようだ。疑問に思う前に、そこから広がる軽い熱を愛理は受け入れた。
半分開いた扉の前に愛理はいた。わざわざドアノブに手をかけるまでもなく、するりと中に体を滑り込ませる。厚手のカーテンを通して重くぼんやりとした窓からの明かりでかすかに、そこそこの広さの部屋だとわかった。
触ることもできそうなほどあまりに密度の濃い匂い。短く途切れるくぐもった女声の吐息。薄暗がりの中で蠢く何か巨大な影。ひっきりなしに続く粘着質ななにかがひきずられる音。
はあっ、はっ、はあっ、うん、うはっ、ふっ。
ずちゃっ。ぐちゅっ。ずるっ。ずずず。
それら異様なモノを五感してようやく、愛理は酩酊の淵からわずかな理性を揺り起こした。
「なに……?」
暗闇に目が慣れるにつれ、律動し続けるそれが影から形へと変わっていった。
入り口とは反対側の隅を、不恰好な丸みを帯びた塊が占領していた。その塊に半分埋もれるようにして、こちらに背を向けた若い娘が不定期的なリズムで体をくねらせている。塊からは様々な形と長さの蠢く筒状のものが方々へ伸びているようだ。
ふうっ、うん、うっふぅううっ、うううっうはぅぅ。
不随意的に体をくねらせながら、娘は低くくぐもった喘ぎ声を上げる。四肢は塊の中に埋もれていて見えない。
美樹ちゃんだ、と愛理は直感した。細いうなじと少しくせのある肩まで伸びた髪型は彼女の後姿だ。
そう想起してようやく、ここでなにがなにをしているのかを理解し始めた。
美樹ちゃんがなにか得体の知れないモノに犯されている。
「いっ……や」
ほとんど唇が動かずに喉の奥からかすれた声が漏れる。大声を上げることや驚いて飛び退ることもかなわない。思考も行動もすべてが緩慢になっていた。
なぜ美樹ちゃんがこんなことに。どうして自分はこんなところへ。
巨大な圧迫感を伴った疑問が愛理の脳裏に浮かんでは揺らめくが、それに明確な答えを導くどころか、帰納も演繹も進まない。代わりに、ひどく非服従的に重い手足の感覚が、目に見えぬ捻れ縒り合わされた糸に縛られた自分の姿をぼんやりと想像させた。
ふと思い出して昔書いた小説の痕跡を探してみたら、このスレッドを発見しました。
もう10年も経つのに、すごいよインターネッツ。
まだ需要があるかもしれないので、テキストをうpしてみました。
「繭」&「蛹」
ttp://www1.axfc.net/uploader/File/so/46310.zip&key=cocoon
よろしければご賞味ください。
43 名無しさん@ピンキー sage 2010/06/26(土) 21:53:54 ID:CQe5f0z1
あなたが作者ならいいのだが…
44 fooltheyellow 2010/06/26(土) 22:12:36 ID:yGzdtrZA
>43さん
作者です。証明する方法はぱっと思いつきませんが。
当時はfoolって名前で、「想像主の館」というWebサイトさんに投稿してました。
繭は2000年作、蛹は2001年作です。
小さいのをたくさん書き連ねようと思って開始した「ウロボロス」シリーズでしたが、力つきて終わってました(笑)。
以上でっす。
45 名無しさん@ピンキー sage 2010/06/26(土) 23:09:17 ID:HCVpl13O
>>44
それ消えてないか?
見つからんチクショォォォォ
46 名無しさん@ピンキー sage 2010/06/27(日) 00:30:56 ID:EZPvAibj
懐かしい
昔ネット巡回中に見つけて、htmlで保存してました
いい作品をありがとう
47 名無しさん@ピンキー sage 2010/06/27(日) 07:55:01 ID:mBNjL4Lw
うおおお、懐かしい!
昔携帯で見つけて、次の日htmlで保存しようと思ったら消えていたので
ものすごくモヤモヤした作品でした!
すごい嬉しいです!
ありがとうございます!
48 43 sage 2010/06/27(日) 10:54:02 ID:PpxNcr/V
無用の言ご容赦
あまりにも出来がすばらしかったんで当時取ったハードコピーが
まだ今も手元にあったりしますがこれで安心できます
49 fooltheyellow 2010/06/27(日) 15:00:07 ID:EaM6pee3
おおーやっぱ覚えてくれていた人いたんだ、ありがとう。
ちなみに当時のバージョンとはほんの少しだけいじりました。
3点リーダーの代わりにナカグロ3つ使ってるのとか誤植とか校正レベル。
あと当時のメモが出てきたので、ついでに用語設定のとこだけ投稿しておきます。
ウロボロス症候群
突然変異的に処女懐妊ふうな症状となり、繭になる。すべての始まり。
発生の理由などは特になく、癌に近い。
ウロボロスの娘たち
処女懐妊で産まれた女性型。異形を生み出す。
異形
さまざまの形。当然触手有。
基本形 人型でどろどろぐちょぐちょ。触手と媚薬ばりばり。犯された女は繭に。
優秀形 女性型。ヒトの脳に神経を打ち込み、ヒトの求める幻影や感覚を再現する。
男性を倒すために産まれた攻撃担当。性交した男性は、死亡したり異形や繭に突然変異する。
繭(直径1m~5m)
近くの有機物を取りこんで成長していく。繭は強烈な快楽であらゆる生き物をひきつける。植物を取りこんだものは光合成する。はじめはヒトとしての意識を残しているが、生存欲求で行動する。成長すればするほどヒト意識を失って行く。
巣(直径5m~20m)
繭が成長しきったもの。小型の異形をひっきりなしに生み出す。新種の強力な砦。
近寄っただけでも性的興奮を覚える。光合成する。傷ついた生物をすべて癒す。
森(直径数100m~数km)
繭や巣の集まり。小型の繭を保有して、人間を格納して快楽を送りつづける。その意識を
両性具有 娘たちがまれに性交以外に単一生殖で産む。
「繭」
鼻腔の奥を濡らして漂い残る。そんな甘い匂いに愛理が気づいたのは昨夜のことだ。開け放した部屋の窓の向こうから、昨夜は微かに、今日は確かに感じる。
この甘ったるい匂いはなにかしら、庭の椿にはまだ早い、と閉めていたカーテンを重みを増した瞼と共にすっと開いたのだ。窓だけ開けて少し冷たい夜気を入れながら世界史の暗記を続けていた愛理は、昨夜と同じ行為によってそれを思い出した。
「昨日から……何かなぁ」
すん、すん、と小ぶりな鼻をひくつかせると、匂いの存在感がぐっと強まる。昨夜は気がつかなかった。いい匂いと言えば容易いが、花や香水で当てはまるものは愛理の記憶にはない。
生き物。
姿形までは想像が届かぬものの、ただ何か生きて命あるものをちらと脳裏に走らせて、ぱし、とアルミ窓を閉めた。窓ガラスに元々垂れ気味の目がさらに眠たげに細められた愛理自身の顔が映った。しゃっとカーテンを閉じて目をこする。
「お腹空いた」
愛理はそう声に出して、ゴム紐で止めていた髪を下ろした。そしてベッドに放り投げてあったニットのカーディガンを手に取る。健康と美容には良くないが、愛理は欲求に正直な性質だった。冷蔵庫にロクなものが入っていないのは開けてみるまでもない。留守がちな両親を持つ神田家の食事情は極めて悪かった。良くて、母が残した食べかけのヨーグルトを発見する程度だ。
薄手のキャミソールの上にカーディガンを羽織りながら階段を降りる。案の定まだ両親は帰っていない。玄関口でサンダルを突っかけて家を出た。道路の彼方に見える、煌煌と灯るコンビニの明かりが空腹の愛理を誘う。
大学受験を控えた愛理の最近のささやかな愉しみを邪魔する者は誰もいない。とっとっと小走りにコンビニへ向かう。
するり、と愛理の細い鼻筋を通って喉下まで届いた匂いが、歩みを止めさせた。今ははっきり甘ったるいと感じる。
(この匂い……)
甘さと湿り気を帯び、その裏にかすかな刺激をともなう複雑な匂い。ふとまた愛理は何かの生き物を想像した。明らかに有機的なのだ。すっ、と短く、続けて長く深く、吸い込んでみる。初めて嗅ぐ匂いなのに、なにか懐かしい気もした。
愛理の視線の先には隣の氷上家があった。切れかけた街灯の明滅に暗い一戸建ての壁が照らされている。
氷上家は母子家庭だった。隣人の氷上未央は同じ高校の一級上、妹の美樹は今年中学3年生。姉妹と幼い頃は良く遊んだが年を取るに連れて疎遠になった。
気がつくと、愛理は氷上家の門の前に立っていた。空腹感が一層際立って胃の辺りに圧迫感がある。
(……あたし、お腹空いて)
再び、甘い匂いが愛理の鼻腔を捕らえた。わずかに吸い込んだ匂いが、さらなる吸引を誘った。愛理は深く吸い込んでいた。はあっ、と吐き出すと、言い知れぬ充足感があった。
「いい、匂い」
愛理はまた声に出していた。瞼が落ちる。知らず、視覚を閉ざすことで嗅覚に閉じこもった。すうう、と細く長く吸って肺を満たすと、ふくよかな胸の奥から痺れとも甘さともつかぬ感覚が血流に乗って全身に巡っていくような錯覚すら覚えた。
そしてゆっくりと重い瞼を開く。部屋にこもっていた時よりもそれは重く感じられた。いつの間にか心地良いけだるさに優しく包まれていることにぼんやりと気がつく。開いた瞳も半眼と言った方が近い。どうしてもくっきりと開ききる気にはなれなかった。
街灯に氷上家の玄関が浮かび上がっている。その右手の方にある窓が少し開いていた。厚手のカーテンがかすかに風に揺れ動いて、それと愛理に知らせたのだ。直感的に、匂いのもとはそこだと確信した。
愛理は門の柵に片手をかけた。ひんやりとした感触におののいて、愛理は手を引っ込めた。冷たい金属が、愛理に今自分が何をしようとしていたのか思い出させた。
「……なにやってんだろ、あたし」
住居不法侵入という罪名を思う以前に、明らかに非常識極まる。恥ずかしさと馬鹿馬鹿しさが急速にけだるさを追いやり、愛理はきびすを返した。
そのとき。
たしかに、人の声を聴いた。短く、甲高いそれはたしかに女性のもので、しかも日常普通に耳にする声とははっきりと属性が違っていた。
愛理は振り返って門に駆け寄った。柵に両手をかけ、じっと耳をすます。
「んんんっ」
女性のうめき声が、愛理の耳に実際のそれよりも大きく聞こえた。どくん、と心臓がひとつ冷ややかな拍動を打つ。愛理はなぜかきょろきょろと辺りを見回した。心拍数が上がってくる。数瞬考えた後、柵を引き開けた。
大股に数歩歩けば小さな庭を渡りきり、すぐ玄関の前だ。ちらと右手の方を見て、いまだわずかに揺れるカーテンが気になった。そのカーテンをそっと手繰れば、先刻の声の主とその理由が氷解する。そんな誘惑に駆られながらも、愛理は扉の脇の呼び鈴を選んでしまった。緩慢とした混乱に対して、わずかに日常に近い選択でささやかな抵抗を試みたのだ。
ぴぃんぽぉぉぅん。
切れかけた電池のせいでひどく低く間延びした呼び鈴の音が響く。返事はない。玄関口の電灯はついておらず、扉の前に立つ愛理の視界は暗い。街灯からの頼りなげな明かりが扉に愛理の小柄な影を斜めに落としていた。
もう一度呼び鈴を押そうとしたところで、あの濃密な匂いがふわりと鼻先から侵入した。いや一時の緊張が、それが意識に上るのを阻止していたに過ぎない。
ふとまた目を閉じて嗅覚に集中したいという欲求に駆られる。匂いというもので今ほど心地よい刺激を受けた覚えは間違いなくない。いつまでもここに佇んで、この匂いに包まれていたい。そんな衝動を動物的に感じたのに続けて、大脳の片隅が何気なく演繹した。
この扉を開ければ、もっと近づける。
愛理は取っ手をひねった。鍵がかかっているという当たり前の予測はちらりともしなかった。かちゃり、と扉は開いた。愛理には当然のように思えた。
ふわ、と匂いの見えざる手が愛理を迎える。優しくかすかに湿り気を帯びた匂いが無数の手をのばして愛理の体を包み込み、家の中へと招き入れた。
家の中はさらに暗い。玄関から奥に廊下が伸びているが、数歩先で闇の塊と同化している。
見えないはずだが愛理は玄関を上がった。サンダルを脱ぐことも忘れて歩みを進める。己の目を頼まずとも、匂いの手が愛理の体を支え導いてくれていた。導きながら、匂いは愛理を悦ばせることをやめない。しとやかな愛撫のように撫で、包み、染み込んで、愛理を満たした。
「はあああぅ」
再び奥のほうから声が聞こえたが、愛理は特別驚きもしない。ああ、いる、とだけ思った。
歩みを進めるに連れて匂いの愛撫は質と量を増した。はあっ、と溜息すらこぼれる。愛理の下腹部が湿り気を帯びてきて、自然にそこを意識させられた。まるでこの匂いがゆっくりとそこに結露しているかのようだ。疑問に思う前に、そこから広がる軽い熱を愛理は受け入れた。
半分開いた扉の前に愛理はいた。わざわざドアノブに手をかけるまでもなく、するりと中に体を滑り込ませる。厚手のカーテンを通して重くぼんやりとした窓からの明かりでかすかに、そこそこの広さの部屋だとわかった。
触ることもできそうなほどあまりに密度の濃い匂い。短く途切れるくぐもった女声の吐息。薄暗がりの中で蠢く何か巨大な影。ひっきりなしに続く粘着質ななにかがひきずられる音。
はあっ、はっ、はあっ、うん、うはっ、ふっ。
ずちゃっ。ぐちゅっ。ずるっ。ずずず。
それら異様なモノを五感してようやく、愛理は酩酊の淵からわずかな理性を揺り起こした。
「なに……?」
暗闇に目が慣れるにつれ、律動し続けるそれが影から形へと変わっていった。
入り口とは反対側の隅を、不恰好な丸みを帯びた塊が占領していた。その塊に半分埋もれるようにして、こちらに背を向けた若い娘が不定期的なリズムで体をくねらせている。塊からは様々な形と長さの蠢く筒状のものが方々へ伸びているようだ。
ふうっ、うん、うっふぅううっ、うううっうはぅぅ。
不随意的に体をくねらせながら、娘は低くくぐもった喘ぎ声を上げる。四肢は塊の中に埋もれていて見えない。
美樹ちゃんだ、と愛理は直感した。細いうなじと少しくせのある肩まで伸びた髪型は彼女の後姿だ。
そう想起してようやく、ここでなにがなにをしているのかを理解し始めた。
美樹ちゃんがなにか得体の知れないモノに犯されている。
「いっ……や」
ほとんど唇が動かずに喉の奥からかすれた声が漏れる。大声を上げることや驚いて飛び退ることもかなわない。思考も行動もすべてが緩慢になっていた。
なぜ美樹ちゃんがこんなことに。どうして自分はこんなところへ。
巨大な圧迫感を伴った疑問が愛理の脳裏に浮かんでは揺らめくが、それに明確な答えを導くどころか、帰納も演繹も進まない。代わりに、ひどく非服従的に重い手足の感覚が、目に見えぬ捻れ縒り合わされた糸に縛られた自分の姿をぼんやりと想像させた。
永久の果肉EX2
8 乙×風 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:09:58 ID:K5PCScl1
お待たせしました。予告通り番外編投下しにきました。
なのですが。
流石に前スレの容量が余り過ぎていると思うのです。
なので今回投稿分を前編と後編の二つにぶつ切りしようかと。
前編は前スレに、そして後編はこちらで、といった具合で。
そういう訳なので先に前スレにて番外編の前編を投下してきます。
お手数ですが閲覧の際にはまず前スレからお願いしますね。
9 乙×風 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:37:03 ID:K5PCScl1
前スレに投下してきました。
後半を今からこちらで投下させて頂きます。
前半をまだ見ていない方は前スレを覗いて見て下さいね。
(エロ少な目、ふたなり、アドニス出産)
NGワードはそんな感じで。
14レスほど消費します。
10 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:39:22 ID:K5PCScl1
番外編 本当のハッピーエンド(後編)
パセットがマゾヒストに開眼した翌朝の事である。
「つまりです」
小川の縁を陣取った人と魔物のパーティはパセットを中心に円陣を組んでいる。
物干し竿を設置し、昨晩でろでろに汚れた衣服が風に吹かれて靡いていた。
ちなみにパセットは換えのメイド服を着用済みである。
「パセット達人間組が安心してアドニスを出産できる場所を確保すればいいわけです」
どうだ名案だろう、と言わんばかりにパセットは薄い胸を偉そうにそらした。
(…元気な子。ほんと…)
それを尊敬の眼差しで見詰めるのはマリオンである。
昨日お互い散々アネモネに犯された筈だがパセットはいつもと変わらない。
それどころかいつもよりも元気?
お肌とかツヤツヤである。何かいい事でもあったのだろうか。
うらやましい。こっちは精も根も尽き果てそうなのに。
いや。ちょっとは慣れてきたけど。エッチだってやりすぎなければ気持ちいいし。
(うー、お尻、まだ触手が刺さってる感じがする)
昨日散々アナル開発されたせいで触手が入っていないとむしろ落ち着かないというか。
うわなんという変態。これでいいのか私。
「そりゃまあ、そうね。あたし達は種付けが出来ればいいんだし。
貴女達三人がアドニスを産んで、また種付けして――っていうのを繰り返すのが理想だわ」
因みに出すもの出して一応はすっきりしたらしく、アネモネ二匹は平静を取り戻していた。
「アネモネを増やすんじゃなくて、アドニスを増やすんですか?」
「生殖本能を持っているのはアドニス側だしね。
あたし達『女』の部分はそれに振り回されてるだけなのよ。
つまり『アドニス』の生殖本能が満たされればそれでいいわけ」
それがイコール種付けになるわけである。
「ほら見ろ! パセットの考えた通りだ! はい拍手喝采!」
「わぁ、パセットちゃん偉いー。パチパチパチッ」
「もっと褒めるのだぁ♪」
「で、安心してアドニスを産み落とせる場所って何処なの?」
ネーアの問いにパセットは首を傾げた。
「それを今から皆で考えるんじゃあーりませんか!」
全員が脱力した。
結局、振り出しに戻ったという事か。
「うん。そんな事だろうと思ったわ。期待なんてしてなかった。
他人任せじゃ駄目なのよ。うん。しっかりしろあたし」
頭を抱えるネーアを流石に不憫に思う。
いや、これって人事じゃないのだけれど。
「実際どこがいいのかなぁ?」
「もういっそこの辺りを我々縄張りにしては如何でしょうか!?
近付いた人間は即犯す! そして種付け! 皆ハッピー! よし決まり!」
「人全然居ないじゃない」
「結局私達で沢山産む事になりそうだね」
「一週間も経たずに終着点とかどれだけ短い旅なのよ」
「それにアレエスからそんなに離れてませんからねぇ。
アドニスが大量繁殖していると気付かれたら討伐隊がやってきますよぉ?」
クロトの真っ当な意見に全員が閉口した。
親子の縁は切れているのだ。
いくらグリーズとは言えど大量のアドニスを放置する事はないだろう。
体裁的な問題もあり、討伐隊を派遣する可能性は十分にある。
折角産み落としたアドニスを皆殺されてしまうのだ。
「駄目ね。森の中に縄張りを造るにしてももうちょっとアレエスから離れないと」
「人里近くも駄目なのかな」
「論外ね。見つかり易いし。見つかったら結局討伐隊を送り込まれるわよ?
アドニスなんて百害有って一利無しなんだから」
11 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:40:41 ID:K5PCScl1
「それじゃ、このメンツで一生やってくの?」
人知れず、森の中でアドニスの楽園を造る。
そこには恐怖も苦痛も無い。
ただ快楽と、切れる事の無い繋がりがある。
言葉にすればまるで天国のようだが――
「それは、ちょっと、寂しい、な」
リオがぽつりと呟いた。
魔物になって自由に外を出歩けるようになった。
家族と殺しあいの果てに、親子の絆を取り戻した。
少し大人になった少女の人生はこれからなのだ。
それは普通の人間とは大分違うものになるのかもしれないが――
そんな少女の人生を、山奥でひっそりと完結させてしまうのはいくらなんでも、寂しい。
リオはもっと世界に触れるべきなのだ。
沢山の人と出会い。
色んな経験を積んで。
思い出を作って欲しい。
その為の家出ではなかったのだろうか。
「難しいわねやっぱり。人と魔物の共存は…」
「――あっ」
ぽつりと呟いたネーアの言葉に何かが閃いた。
全員の視線が集中する。
「お義母様」
「ごめん。もうちょっと分かりやすく説明してくれる?」
「あ…えと――その、良く考えてみたらおかしいと思ったの」
「何が?」
「リオの――というかリオの家系の事」
この場合リビディスタの事ではなく旧姓セイレンの家の方だ。
リオの血筋は悪魔と、ネコマタと、そして人間のハイブリッド。
マリオンはふと思ったのだ。
「シュトリという悪魔は同性、つまり女を堕落させて同族へと変異させて繁殖する。
ネコマタは自然界の猫がモンスターになって発生する。
この二つの特性上、繁殖の過程で人間の血が混じる事は有り得ない」
「でも、リオ達には人間の血が混じってる」
その証明となるのが、恐らくオッドアイだ。
左の赤い瞳が魔物である事。
そして右の、リオならば青い瞳が人間である事の証なのだ。
ならば人間の血はいつ、どこで混じったのか。
「ということはあれですね。
人間の殿方と淫魔が結ばれたという事なのでしょうね」
パセットの意見に全員が神妙に頷いた。
淫魔が人間と交わり、子供を作ったのだ。
何かしら外的要因も働いたのかもしれないが――そうとしか考えられない。
(でも、それが分かったからってこの状況を打開出来る訳じゃない)
『人間と魔物との愛の結晶? それがリオの家系』というのも当て推量に過ぎない。
「ごめん、どうでもいい事だった」
「そんな事無いわよ。お手柄だわマリオン。本当にありがとう」
「……馬鹿……褒めるのは全部解決した後にすればいいのに…」
褒められるのが小恥ずかしくて赤く染まる顔を背けた。
ほんとに調子いいんだから。
「解決したようなものよ。
だってリオのお母さんの家って、ずっと娼館を続けてるのでしょう?」
「そうだった筈」
娼館セイレンは歴史のある売春宿なのである。
12 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:42:36 ID:K5PCScl1
それはセイレンの血が途切れた今でも変わらない。
(あ)
そうか。そういう事か。
なぜ娼館なのかって、そりゃエロスな魔物が人間と共存出来る唯一の手段だから?
淫魔が人間社会に溶け込もうとしたらそりゃやっぱりエロイ仕事を見つけるのが良いのだ。
その為の娼館。少し短絡的かもしれないが。
けれど血筋を絶やさず、この店をずっと続けろ、という家訓もあるくらいだ。
先達が未来の子供達に気を利かせて――いや、余計なお節介?
兎も角淫魔の血を引いた子供が人間と共に生きていく――と望んで作った家訓なのでは。
「売春! でございますね! ええ!
今更人間と殿方とエッチするとかあははは! ちゃんちゃらおかしいっちゅーねん!
こちとら親友に処女を奪われてチンコ生やされて魔物の種まで植え付けられたんだぜ!
おまけにマゾ!! 売春婦くらいなんぼのもんじゃー!」
がはははと豪快に笑うパセットを生暖かい目で見詰める。
本当に逞しい娘である。
「という事はぁ、この五人で新しく売春宿を作るっていう事ですかぁ?
時間掛かりますようぅ? それまで私達我慢できませんよう?」
「きゃっ!?」
しゅるしゅるとクロトの触手が体に巻きつく。
ふぅ、ふうっ、と荒い息が、熱い視線が、隣のクロトから叩き付けられてとっても嫌な予感。
「――あの」
そこにおずおずと手をあげたリオ。
「私がお母さんのお店に言って、協力してもらうように頼んできます」
「え? いくらなんでも無理じゃ――ってクロト、いきなりおし――ああぁ、もうっ」
花の上まで体を持ち上げられ、いきなりアナルに触手が突き刺さった。
まだ会議中だというのにこの体たらく。
アネモネの性欲が如何程のものなのか、良く分かった。
「クロト、『お預け』よ」
「ふええぇぇぇぇんっ」
ネーアの命令にクロトが号泣した。
アネモネは自分よりも上位の同種に逆らえないのだ。
「もうちょっと我慢なさい。これが終わったら好きなだけエッチさせてあげるから」
「いや、それどうなの?」
「っていうか話が横に逸れまくっておりますが。皆様しっかりして下さいませ(キリッ」
「と、兎も角、いくらなんでもセイレンにこのメンツが押しかけるのは無謀じゃ」
「そうかしら? あたしは別にいいと思うわよ?」
「自身たっぷりだけど、どこからその根拠は出てくるの?」
「だってリオは前店主リシュテアさんの忘れ形見なのよ?
向こうのスタッフも喜んで受け入れてくれるんじゃない?」
「リオはいい。でも問題は貴方達アネモネでしょ?」
「ふっふーん。アネモネだって使いようよ。
ようは、人間に――この場合は娼館のスタッフに、かな?
彼女達にアネモネがどれだけ有益な魔物か教えてあげればいいんでしょう?
だったら大丈夫だわ」
両手を腰に当て、無駄に大きい胸を逸らしてネーアは自信満々に言うのだった。
「アネモネは女の夢が詰まってるからね♪」
***
それから二ヶ月後の事である。
ここはアレエスの隣町『ニクシー』。
ニクシーはアレエスの存在する山林を下り、南方へ三日進んだ場所に位置する大型の街だ。
13 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:43:53 ID:K5PCScl1
海岸沿いに存在し、漁業は勿論の事、東の山岳地帯からは鉱物も掘り起こしている。
山から採れた鉱物はアレエスの戦士達が使う武器にも使用されていた。
ところが貿易街であるニクシーにはもう一つの特徴がある。
街の中央に位置する、巨大な遊郭の存在だ。
一般人でも楽しめる大型のカジノ。
法外な掛け金で負ければ即強制労働所送りの裏カジノなるものまである。
そして勿論娼館も。
今宵も多くの人間が訪れ。
ある者は夢を叶え、ある者は絶望へと落ちて行く。
ここは欲望の坩堝、夜の街ニクシーだ。
そしてその遊郭の一角に、娼館セイレンは存在する。
日も暮れ、空に星が輝き始めた時間。
街の街灯は魔力の光を反射して闇を打ち払う。
通りには道行く人が後を絶たない。
ピンクやパープル等『如何にも』な魔力光を放つ看板に吸い寄せられ、男達がやってくる。
その様子は花に誘われた蝶か。
それとも蜘蛛に絡め取られた蝶か。
今日もセイレンで女達の甘い声が響く。
「ああぁぁっ!? 産まれるっ! また、産んじゃうっ!」
そのセイレンの地下。
幼い少女の嬌声が響いていた。
店の地下に広がる空間はおよそ十メートル四方と、意外と広大である。
天井には淡い魔力光を放つランプが吊り下げられ、密室の中をぼんやりと照らしていた。
土が露出した壁や床。
隅の方でひっそりと存在を主張する井戸。
そして地面を埋め尽くす大量のアドニスの花。
「んひゃあぁぁぁぁぁっっ!!?
ぷちぷちっ、いってりゅぅ! お腹のなかぁっ、お花の根っこっ、ちぎれりゅぅ!
死んじゃうっ! パセット死んじゃうぅぅ!!」
「死なないわよ♪ 思いっきりイッちゃいなさい♪」
涎を垂らしながら頭を振り乱すパセットを微笑ましく見詰めるのはネーアだ。
地下空間の真ん中に陣取り、触手を使って裸体の少女を花弁の上に拘束している。
花弁に貼り付けにされているのはパセットだ。
散々『可愛がられた』のだろう。
栗色の犬耳ヘアは粘液でベトベト。
何度も絶頂したせいで頬はだらしなく弛緩していた。
幼い裸体も余す所無くアネモネの精液で汚れ、ランプの光を艶かしく反射している。
そんなパセットの体に異変が三つ。
一つは、二つの慎ましい膨らみだ。
二ヶ月前までは歳相応の、洗濯板とも呼べる胸だった。
だが今では二ヶ月前のリオよりもやや大きくなっている。推定サイズ75。
二つ目は大きく張った下腹部だ。
腹にアドニスを宿し、今まさに出産しようとしているパセットの腹は妊婦のそれと同じ。
今も膨らんだ腹が、ぼこり、と歪に波打ち、その度に少女が嬌声を上げる。
そして彼女が快楽を感じる度に、下腹部の下――股下から生えた肉の棒が跳ねるのだ。
それが三つ目。
「あはぁ♪ パセットちゃんのフタナリチンポぉ、びくびくしてますよぉ♪
美味しそうですぅ♪ 食べちゃいますねぇ私ぃ♪ パクン♪」
「んひゃあぁぁっ!!!? しゅごいぃぃぃっっ!!
チンチンとぉっ、子宮がぁっ! ひゃあぁぁぁっ! くるぅっ!
狂っちゃうぅぅっ!! ひゃううぅぅぅんっ!!」
14 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:45:39 ID:K5PCScl1
隣で事の成り行きを見守っていたクロトが我慢出来ずに触手を伸ばした。
口を開いたおしべ触手に擬似男根を奥まで咥え込まれ、パセットが白目を剥いている。
この擬似男根、マゾに開眼したパセットがリオに頼んで再び生やしてもらったのだ。
今ではこうして二人のお姉様に敏感な肉棒を徹底的に責められるのが癖になっている。
「マリオンはお尻大好きの変態になったし。
パセットはフタナリ好きのマゾになっちゃったし。貴方達散々ねぇ」
そう言ってネーアは微笑んだ。
(ま、娼館で働く分にはその方が良かったんだけどね)
二ヶ月前。
ネーアとリオを含む三匹と二人は娼館セイレンに受け入れてもらえる事になったのだ。
勿論、何のトラブルも無かったと言えば嘘になる。
何せこちらは魔物が三匹。
その内二匹は女を犯して大量繁殖するアネモネだ。
普通に考えれば断られるのも当然であり、娼館のスタッフも最初は拒否していた。
だが前店長のリシュテアの忘れ形見であるリオの頼みなのだ。
スタッフの中にはリシュテアに拾われて育った娘も居る。
現店長の女性もリシュテアには世話になっていたらしい。
その実の娘であるリオの説得に心を打たれて最終的にはネーア達を受け入れた。
またリシュテアと仲が良かったマリオンの存在も大きかった。
と、こちらは義理と人情の話。
セイレンのスタッフを説得しえた要因としてアネモネの存在がある。
一見、有害としか思えないアネモネだが、娼館としては十分に有益な存在だったのだ。
例えばアネモネの体液。
催淫性の強いこれを彼女達から摂取し、媚薬として商品化したのだ。
効果が強く、生産コストはほぼゼロ。
彼女達からすればアネモネは金の生る木だったのだ。
それだけではない。
胎内にアドニスを寄生された女性は肉体を徐々に改造されていく。
体が敏感になったり、欲情しやすくなるわけだ。
だがその中には豊胸効果や、美容効果も含まれているのだ。
法外な金を支払って体を弄くられるよりも簡単に綺麗になれるのである。
アネモネになってしまうリスクもあるが、それは自分の意思や他人の協力で避けられる。
つまり。スタッフから見ればアネモネは、
『気持ち良い事をしてくれる。金を稼いでくれる。綺麗にしてくれる』
と良い事尽くめなのである。
尚、街の領主にリオが枕営業を行った為、店が潰れる心配も無い。
「んひいいぃぃぃっっ!! もうイグっ!! アドニス産んでっ、んあああぁぁっっ!!?
ふひっっ!? んああぁぁっ!! ああっっ!! おああぁぁっ!!
いっぐあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっッッ!!!!!」
ずりりりりっっ――べちゃぁっ…!
「あっひいいいいいぃぃぃぃぃっっっ!!!!」
花弁を分娩台代わりに、パセットがアドニスを産み落とした。
同時にとフタナリペニスから大量射精。
クロトの触手がタイミングを見計らって男根を開放した。
――びゅるるるっ! どぴゅどぴゅどぴゅっ!
「んひゃあぁぁぁぁっ!!? しゅごいっ! 出産アクメしゃせーしゅごいのぉぉっ!!」
自身の体と生まれてきたアドニスを祝福するように白いデコレーションを施す。
白目を剥きアヘ顔を晒すパセット。
(なんだか、エロイのか、めでたいのか、おかしいのかよく分からないわね…)
最近このメイド少女はどんどん壊れてるなぁと他人事のように思ってしまう。
15 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:47:03 ID:K5PCScl1
いや自分のせいなのだけれど。
と。地下空間の隅に設けられた一枚の鉄製の扉が開いた。
きぃぃぃ、と蝶番が擦れる音を立てて、扉の向こうからピンク髪の淫魔が現れる。
「あ。終わったところだったんだ」
「そうね。惜しかったわね」
「大丈夫ですよぉ。またパセットちゃんには種付けしますからぁ♪」
クロトの発言に二人で苦笑いを浮かべた。
「だってさパセットちゃん? 体大丈夫なの?」
「……ふ、ふふふ……っ、ふふふのふ…っ、な、なんのこれしき…、
まだまだっ…いける、じぇい…っ、でもちょっと休ませてお願い下さいまし」
「冗談言えるくらいならまだ余裕はあるわね? クロト、種付けする?
あたしはこの前させてもらったから、次は貴女に譲るわ」
「はぁい♪ ありがとうございますネーア様ぁ♪」
「え、ちょっと、今、イったばっかりで体がっ、んひゃああぁぁっっ!!!」
早速クロトの触手に絡め取られて悶え始めるパセット。
「……流石パセットちゃん。普通の人だったら発狂してると思う」
「そうね。でもその辺りは自他共に認めるマゾメイドちゃんと言うか何と言うか。
ほんと逞しいわ。肉体も精神も」
「んひゃうんっ♪ もっとぉっ!! クロト様ぁっ、もっとズボズボしてぇっ!!」
早速喘ぎ始めたエロメイドに苦笑いを浮かべるしかなかった。
「まあ、お陰であたしもクロトも暴走せずに済むわ」
「スタッフの方にも種付けしてるんですよね?」
「負担が掛からない程度に、ローテーションを組んでね。
皆が受け入れてくれて、ほんと良かったわ」
「最初はやっぱり、嫌煙されてましたけどね」
「一回抱いてあげたら皆メロメロになったけどね?」
二人で声をあげて笑う。今となってはいい思い出だった。
「アドニス、どんどん増えちゃいますね」
「週に二匹くらいのペースかしら」
地下空間に産み落とされたアドニスは十五を超えている。
普通の人間が見ればおぞましいだけだろうが、自分にとっては我が子同然である。
増え過ぎても困ってしまうが、こればかりはどうしようもない。
(マリオンに頼んで、またこの部屋を拡張してもらわきゃね)
魔術でがりがり掘るのである。
それも限界はあるだろうから今の内に何かしら対策を考えておかなければならなかった。
産み落とされたアドニス達をどうするか。
何時かは此処に収まり切らなくなる。
その時、この子達を受け入れてくれる場所を確保しなければならない。
各地でセイレンの支店を作ってその地下にも同じような場所を作ろうか。
それとも大自然に還してやるか。
悩みどころだ。
(贅沢な悩みね)
少し前の自分では考えられない。
二百年前のあの日。
人の心を取り戻し、代わりに最愛の人を失ったあの日。
魔物となった体を持て余し、ただ逃走するだけの日々。
自分は何の為に生きているのか。
何の為に生まれてきたのか。
ずっと自問してきた。
人を犯す事でしか心も体も満たされないアネモネ。
そんな、害悪でしかない自分は死んでしまった方がいいのではないか。
そう思う事もあった。
だが今は違う。
「リオ。今、あたし幸せよ」
「ネーアさん?」
16 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:48:46 ID:K5PCScl1
「皆と一緒に居られる。本能も満たされて、暴走する事も無い。
ここは、あたしにとって楽園なのよ」
だが惜しむらくは、ずっと地下にいるせいで自分を含めアドニス達は太陽を拝んでいない。
それが二ヶ月も続いているのだ。
海沿いの街、という地形的にも水分は大量に補充出来るのだが。
やはり日の光も浴びなければどうにも力が湧いてこない。
だから人間を抱く時は水分をたっぷり搾り取ってしまうのだ。
「ひゃうぅぅぅんっ!? しゃせーしちゃうぅっ!! パセット、まらシャセーするぅ!」
「あはぁっ♪ 出して下さいぃ♪ 一杯一杯、フタナリザーメンビュルビュルして下さい♪」
あんな感じで。
まあそれは兎も角。
「魔物でも、人間の役に立てる。それが分かって、あたし嬉しいのよ」
「はい…っ」
ぴょん、とリオが花弁の上に飛び乗る。
淫魔の姿をした幼い少女を抱き締めると、トクトクと、心臓の鼓動が聞こえた。
それを聞くと安心する。
アネモネはお互いに繋がっているが、その巨体ゆえ、互いに抱き合う事は出来ない。
抱き締めるのはやはり人間しかないのだ。
アネモネは、寂しがり屋なのだ。
それをネーアは今頃になって自覚した。
そしてだからこそ。
今こうやって好きな娘と抱き合っていられる時間がとても幸せに感じる。
「リオ、貴女は幸せ?」
「にゃうん…♪ 幸せですよ…? どうしてそんな事言うんですか?」
「だって、仮にもあたしは貴女の保護者だし…その――
貴女の事を見守る義務があるわけじゃない? ちゃんと幸せになった欲しいのよ」
それにここからアレエスまでそれほど離れている訳ではない。
リオが悪魔の力を解放して空を飛んでいけば二日で辿り付けるだろう。
だというのに彼女はこの店で毎晩売春に励んでいる。
人目を引く容姿は勿論の事。
年齢に似合わない妖艶さ。
穏やかな娘かと思いきや、スイッチが入った後の小悪魔っぽさ、そしてそのギャップ。
全てが魅力的で、今やセイレンの売れっ子だ。
金持ちがひっきりなしに予約を入れ、一日に何人も見知らぬ男に抱かれている。
今日も確か予約が入っていた筈だ。
そろそろ時間ではないのだろうか。
「大丈夫ですよ? 私、今のお仕事好きです。
こんな私でも、ちゃんと人の役に立ってる、って思えるから」
そう言ってニッコリと笑うリオがもう、なんというか感無量。
「それにエッチ自体、私も好きですから♪」
まあ、淫魔としてはそうなのだろう。
だが、一人の娘としてはどうだろうか?
「お父さんに会いに行かないの?」
アドニスを産む前後以外は休む間も無く働いている。
店にも貢献しているのだ。
一日や二日の里帰りくらい、許してもらえるだろう。
「ん…いいです」
「どうして?」
「だって。今会ったら…ずっと一緒に居たいって、思っちゃうから」
やっぱり。
何だかんだ言いつつこの娘は父親の事が好きなのだ。
けれど自分が屋敷に行けば、あのドルキとまたトラブルを起こしてしまうかもしれない。
そんなジレンマがあるからこそ、今この場に甘んじている――そういう事なのだろう。
17 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:51:01 ID:K5PCScl1
「そう言えばグリーズ様はどちらに御用で?」
「その名でワシを呼ぶな」
背中から掛けられた問いに、感情を殺して答える。
「あぁ、これは失礼。一応お忍びでしたね」
「此処では『グリス』と名乗っている。気を付けろ」
背後から男達の失笑が聞こえた。
安易な偽名と笑っているのだろう。失礼な奴らだった。
リオと接触した事のある数少ない証人として今まで色々良くしてやったが恩を仇で返すか。
いや、こういう軽い空気も偶にはいい。
屋敷に篭っていれば息が詰まる。
ドルキと共に作ってきた家であり、それ自体苦痛では無かった筈なのだが。
『父様♪』
脳内で愛娘の笑顔が再生されて溜息をつく。
どうもあの一件以来『角が取れてしまった気がする』。
感傷的になる事が多くなったと言うか。
(やはり歳か)
娘二人を屋敷から追い出してしまった事が悔やまれる。
あのアネモネの言う通り、なんとか屋敷に留めておく方法を考えれば良かったか。
いやいや、それも無理な話だろう。
人の口に戸は立てられない。悪魔の娘を屋敷に置く事はやはり無謀だ。
「そういやさ風の噂で聞いたんだけどよ。
さっき言ってたセイレン。何か新しい女が入ったんだって。
それも三人」
「一気に三人とは儲かってんなぁ」
「いやいやお前ら。女は量より質だぜ? 三人ともブスだったら意味無えし」
「それが三人とも上玉らしいぜ。
内二人はまだ小便臭いガキらしいけど最後の一人が大層ベッピンさんらしい」
小便臭いガキ、という言葉に体が僅かに反応した。
談笑をしている三人に気取られる事は無かったが例によって脳内で愛娘の姿が再生される。
「俺はガキの方がいいな」
「いや、いやいやいや。そりゃねえだろ。苦い思い出があるんだから」
淫魔化した直後のリオに散々搾り取られた時の事を言っているのだろう。
大の男が三人で寄ってたかって幼女をレイプしたはいいが返り討ち。
男からすればトラウマものか。
「……いやぁ実は、あれから俺、ロリに目覚めて…」
「…実は、俺も最近、あの子の事を考えながら抜いてるんだが」
「そういう話はワシの居ない所でしろ」
切り殺されたいのか、この馬鹿共は。
実の父親の目の前で娘をオカズにしていますと告白するなど、怖い物知らずにも程がある。
だが、そういう性格なのだろう。
いい加減と言うか、体裁に疎いというか、只下品なだけかもしれないが。
まあ、常に畏怖や尊敬の眼差しで見られる屋敷の中に居るよりかは気楽でいいが。
「兎も角だ。セイレンの女は量も質もいいんだってよ」
「へー。そりゃいいんだが金無いんだって」
「…やっぱ安い所にすっか?」
「そうだなぁ……ちなみにグリ――スさんは一体どちらまで?」
問われて言葉に詰まった。
今回、わざわざニクシーまで赴いたのはひとえに息抜きだ。
いや、白い物も抜くつもりだが。
最近ドルキが『体を張って』尽くしてくれるようになった。
それは嬉しいし、昔を思い出す。
18 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:52:13 ID:K5PCScl1
だが如何せんあいつも歳である。
僅かだが、淫魔の血を体内に取り入れたこの体は以前に比べ性欲が増してしまった。
元でも苛烈な交わりを求めてしまうこの性格に増大した煩悩。
ドルキではあっと言う間に消耗して体が持たないのだ。
そこでセイレンの女に白羽の矢を立てた訳である。
何分向こうの女達とは知らない仲ではない。
一昔前までは常連だったのだから。
そして、あわよくば――
(いや、それはないか)
淡い期待を自ら否定するように頭を振る。
人外を三体も引き連れてこんな大きな街に入るなど、馬鹿げている。
グリーズは歩みを止めた。
フードの中から、正面の売春宿を見据える。
ピンクやパープルなど、実に『らしい』魔力光を放つ看板。
そこにはセイレンと銘打たれていた。
「グリスさん?」
「…ここだ。予約を入れてある」
「え? ――ええ!? ってここ、セイレンじゃないですか!?」
「はーっ、やっぱ金持ちは違いますねぇ!」
「黙れ。喋るな。恥ずかしい」
道行く人が珍獣でも見るような目を投げかけてくる。
この馬鹿達と一緒に居ると目立ってしょうがない。
だがまあ、折角だ。
金が無いというなら少しくらい恵んでやらんでもない。
元々金の使い方なんて知らない身だ。これくらいはいいだろう。
「じゃ、じゃあ俺達はここで失礼させて頂きます」
「グリスさんはどうか俺らの代わりに心行くまで、」
「何だ。来ないのか。お前達三人分くらないなら、はした金で済むと思っていたのだが」
「逝きます!」
「いやあ、グリス様っ、一生恩に着ますよ!」
「流石グリス様懐が深い!」
などと途端に現金になる三人。
そんな彼らの反応に頭痛を覚えつつも溜息を吐き、店の扉を開けた。
ちりりん、と小気味良い鈴の音が鳴り響く。
昔から変わらないその音に懐かしさを感じながら入店。
すぐに受付嬢が迎え入れてくれた。
歳若い娘だ。
ピンク色の髪。
黒のゴスロリ衣装。
そういう『プレイ』なのか背中には悪魔の翼と尻尾を二本生やし、
「にゃう♪ セイレンにようこそ♪ ――あれ? お客さん? 何処かで会った事ある?」
ぱちくり、と瞬かせた瞳は右が青、左が赤のオッドアイ。
見間違いようが無い。
人違いである筈も無い。
この少女は、
『あーーーーーっっ!!?』
後ろの三人が娘を同時に指差して大声を上げた。
19 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:53:28 ID:K5PCScl1
「え? うん? えーと――あっ! ああっ! 思い出した!
あの日森の中でお世話になった騎士のおじさん達だ!」
「おじさん達じゃねぇ!」
「何でグリーズさんの嬢ちゃんがこんなところに居るんだ!」
「あーそれはまあ、色々ありまして――」
ちらり、と娘の視線がこちらを向いた。
「あの、それじゃ……こちらのお客さんは…?」
「くくくっ」
喉から思わず声が漏れてしまった。
駄目だ。もう我慢出来ない。
「はーはっはっはっ!!」
声を出して大笑いした。
だってそうだろう。
何だこのご都合主義的な展開は。
笑わずにはいられない。
「……え…嘘…まさか…」
「…この馬鹿娘が。親の声も忘れたか」
フードを取り去り、素顔を晒す。
その瞬間の娘の表情といったら、狐に摘まれたような間抜け面だ。
写真にでも撮って額縁に入れて飾りたくなる。
「父様だ…本当に、父様だ…っ」
感極まったように娘の――リオの瞳に涙が溜まっていき、
「父様ぁっっ!!」
胸に飛び込んで来た。
それをしっかりと抱き止めると、愛娘の温もりを感じる。
小動物でも抱いているような柔らかさ。
力を込めれば壊れてしまいそうな小さな体。
あいつと同じ、甘い匂い。
何も、変わっていない。
いや、また胸が大きくなっている気がした。
「にゃぁっ…! にゃぁっ! 父様だぁ…! 本当に、父様だぁ!」
「ああ……元気にやっているようだな」
「うんっ、うんっ! 父様も、駄目だよぅっ、こんな所に来たらっ。
お義母様がまた怒っちゃうよっ」
「それを言うならお前もだ。家を出たと思ったらこんな所で働きおって」
母娘揃って同じ娼館で働くとは思ってもみなかった。
いや、悪魔になる前ならばむしろ勧めてここに来るようにするつもりだったか。
だがネーアとクロトそれに人外となった体でこんな街の真ん中に居座るとは思いもしない。
「リオよ。あの女はどうした? 悪さをするようならワシも見過ごす訳には、」
ぴたり、と唇に人差し指を添えられた。
目の前に、小悪魔っぽい笑みを浮かべた娘の顔がある。
「ネーアさん達は地下に隔離させてもらってます。
姉様の転移魔術が無ければ自力で地上に上がる事は出来ません」
「ここの者達はそれで納得しているのか?」
「最初は説得するのに苦労しましたけど…今は皆お友達です」
「街の領主はどうした? 黙っていてもいずれはばれるぞ。そうなる前に手を、」
「父様? 私が一体何なのか、ご存知ですよね?」
20 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:54:56 ID:K5PCScl1
ふふふ、と娘は十一年前に失った愛人と同じ笑みを浮かべていた。
(成る程。既に陥落済み、という事か)
この欲望と野心の渦巻く街では悪魔は最大限に力を発揮出来る。
力や技だけではない。ずる賢くなったものだ。我が子ながら末恐ろしい。
「となると、遠慮はいらない訳だな?」
「きゃっ」
リオを抱き直すと、可愛らしい声を上げる。
その体は軽く、柔らかかった。かつて死闘を繰り広げた戦士とは思えないほどに。
「おー! お姫様抱っこ!」
「グリス様、お似合いです!」
「でも今更ですけどここから先は割りと禁断かつイヤンな感じになるんですよね!?」
いい加減外野が五月蝿い。誰か黙らせて欲しい。
そう思った矢先の事である。
「リオ。何かあったの? やけに騒がしいけど」
二人目の娘、マリオン登場である。
ブロンドの髪を結い上げ、洒落た髪飾りで留めている。
服装はノースリーブの青いドレス。
胸元と背中がばっくり開いたデザインで『成長した』乳房が谷間を作っているのが見えた。
「あ、姉様…っ」
「…リオ、新しいお客さ――って父様っ!?」
「ほう、化けるものだな。見違えたぞマリオン」
『何いいいぃぃぃっっっ!!? マリオン殿ぉ!?』
後ろの三人が揃って驚愕の声を上げた。
(さもありなん)
何せあのマリオンが化粧までしておめかししているのだ。
剣と魔術しか知らなかったあのマリオンが生意気にもリップを引いている。
「馬鹿な!」
「ああそうだ! ありえない!」
「胸的に!」
「殺されたいの?」
魔術を使ったのかばちり、と周囲の空間が帯電した。
ひい、と男達が情け無い声を上げる。
「ここは客相手に攻撃魔術を使うのか?」
「だって父様っ。私知ってる。こいつら、金なんて持ってない」
「ワシが払う。金を払えば文句はあるまい」
「それはそうだけど……よりにもよってこの人達を相手にしろって事?」
「暇そうにしているではないか。仕事なら逃げるな」
「う……分かった…」
(それでこそワシの娘だ)
ただ勘当を言い渡した手前、堂々とそれを口にする訳にはいかない。
しかしあれほど剣の特訓に心血を注いでいた、あのマリオンが妹と共に娼婦とは。
世の中どうなるか分かったものではない。
「待てよっ、という事は俺達っ?」
「あのマリオン殿と…っ?」
「今からする? のか?」
むふふ、ぐふふ、ぐへへ。
三馬鹿達が妄想の翼を広げ始めた。
鼻の下を伸ばしに伸ばしてマリオンの体を嘗め回すように見ている。
慣れた娼婦ならそれくらいの視線、なんともないのだろう。
ところがマリオンときたらこういう事には未だ慣れていないらしく顔を真っ赤にさせた。
「きゅ、急用を思い出したっ。私帰りますっ」
「姉様? ここが私達のお家だよ?」
「じゃ、じゃあ家出するっ」
「駄目。『ちゃんとお仕事しようね』?」
(惨い事を)
21 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:56:12 ID:K5PCScl1
実の姉にチャームを掛けるリオ。えげつない事をするものだ。
「うぅ…恥ずかしい……やぁ…なのにぃ…」
『うぉぉぉっ! 弱気なマリオン殿に我らの息子達も大ハッスルである!』
「こ、こちらで…ございます……っ――うぅ…っ、さ、逆らえないっ」
先を行くマリオンに後を追う馬鹿三人。
途中でチャームが切れたらハーメルンの笛吹きよろしくあの男達は全滅するのだろうか。
まあ、どうでもいい事か。
そうだ。夜は長い。リオとする事をして一息ついたらマリオンの体も抱かせてもらおう。
(良い体付きになっていたな)
アネモネ達と何度も交わったのだろう。
女としては貧相な体だったと思ったが、今では立派なものだった。
ぎゅぅ…!
「な、何をするっ」
頬を突然抓り上げられて激痛が走った。
人外の力で割と本気に抓られたらしい、頬が赤く腫れてじんじんと痛む。
「父様、今姉様の事考えてたでしょ? 今から私とエッチするのに」
リオが頬を膨らませ唇を尖らせていた。
生意気にもジェラシーを覚えた、という事か。
いや、それ以前に、
「心を読んだのか?」
「読まなくても分かります。顔に書いてありましたから」
べぇ、と舌を出したかと思うと小さな体が急に飛び上がった。
「どうせ私はお子様ですから。父様のご期待にはお答えできません。
代わりの方を呼んで来るのでそこで少しお待ち下さい」
「いや待て」
全く、らしくない。
「その必要は無い」
剣神と恐れられた自分が、自分の娘にこうも心を掻き乱されるとは。
「どうしてですか?」
背中を向けたままの娘に、どう答えようか考える。
まさか、お前に会いに来た、などと口が裂けても言えまい。
「…血が騒ぐのだ…お前から分けてもらった淫魔の血がな…
お前のせいだぞ。この猛り、もう普通の女では受け止めきれぬ。
せめてお前が責任をもって、」
「ぷ…っ、……くすくすっ…!」
「何がおかしい」
「だ、だってっ、父様ったら素直じゃないんですもんっ。
私に会いに来てくれたのに、恥ずかしいからって必死で言い訳を考えて――
くすくす…っ、あははははっっ!」
(全く、本当に敵わんな)
リオが、あのリシュテアの娘であると痛感させられる。
これでは親の面目も丸潰れだ。
「心を読んだのか?」
一応と思って投げかけた言葉。
娘はふふふ、と小悪魔っぽく笑うとウィンクをしながらこう答えるのだった。
「それは、秘密です♪」
- Fin -
22 乙×風 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:58:31 ID:K5PCScl1
皆様お疲れ様でした。
以上で永久の果肉シリーズ、完全完結となります。
最後まで付き合ってくれたスレ住人の方々。
もしいらっしゃるなら一見の方々も。
今までお付き合い頂き、本当にありがとうございました。
約四ヶ月もの間、スレを占拠と言っても過言ではない程大量に消費してしまいした。
特にSSまとめブログの管理人様に関しては大変お手間を取らせていると思います。
何と永久の果肉シリーズ合計で600KBオーバー! やり過ぎです(汗
それを少し心苦しくも思いますが、お陰でこのシリーズを無事終える事が出来ました。
重ね重ね、ありがとうございます。
何か、書く事もあんまりないですね。
これだけのボリュームのものをきちんと書ききれたのは初めてだと思うので達成感ががが。
まああんまりだらだら後書きを続けるのもなんです。
という訳でこの辺りでお暇させていただきます。
もしまた機会と時間と運があればお会いしましょう。
それでは。
お待たせしました。予告通り番外編投下しにきました。
なのですが。
流石に前スレの容量が余り過ぎていると思うのです。
なので今回投稿分を前編と後編の二つにぶつ切りしようかと。
前編は前スレに、そして後編はこちらで、といった具合で。
そういう訳なので先に前スレにて番外編の前編を投下してきます。
お手数ですが閲覧の際にはまず前スレからお願いしますね。
9 乙×風 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:37:03 ID:K5PCScl1
前スレに投下してきました。
後半を今からこちらで投下させて頂きます。
前半をまだ見ていない方は前スレを覗いて見て下さいね。
(エロ少な目、ふたなり、アドニス出産)
NGワードはそんな感じで。
14レスほど消費します。
10 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:39:22 ID:K5PCScl1
番外編 本当のハッピーエンド(後編)
パセットがマゾヒストに開眼した翌朝の事である。
「つまりです」
小川の縁を陣取った人と魔物のパーティはパセットを中心に円陣を組んでいる。
物干し竿を設置し、昨晩でろでろに汚れた衣服が風に吹かれて靡いていた。
ちなみにパセットは換えのメイド服を着用済みである。
「パセット達人間組が安心してアドニスを出産できる場所を確保すればいいわけです」
どうだ名案だろう、と言わんばかりにパセットは薄い胸を偉そうにそらした。
(…元気な子。ほんと…)
それを尊敬の眼差しで見詰めるのはマリオンである。
昨日お互い散々アネモネに犯された筈だがパセットはいつもと変わらない。
それどころかいつもよりも元気?
お肌とかツヤツヤである。何かいい事でもあったのだろうか。
うらやましい。こっちは精も根も尽き果てそうなのに。
いや。ちょっとは慣れてきたけど。エッチだってやりすぎなければ気持ちいいし。
(うー、お尻、まだ触手が刺さってる感じがする)
昨日散々アナル開発されたせいで触手が入っていないとむしろ落ち着かないというか。
うわなんという変態。これでいいのか私。
「そりゃまあ、そうね。あたし達は種付けが出来ればいいんだし。
貴女達三人がアドニスを産んで、また種付けして――っていうのを繰り返すのが理想だわ」
因みに出すもの出して一応はすっきりしたらしく、アネモネ二匹は平静を取り戻していた。
「アネモネを増やすんじゃなくて、アドニスを増やすんですか?」
「生殖本能を持っているのはアドニス側だしね。
あたし達『女』の部分はそれに振り回されてるだけなのよ。
つまり『アドニス』の生殖本能が満たされればそれでいいわけ」
それがイコール種付けになるわけである。
「ほら見ろ! パセットの考えた通りだ! はい拍手喝采!」
「わぁ、パセットちゃん偉いー。パチパチパチッ」
「もっと褒めるのだぁ♪」
「で、安心してアドニスを産み落とせる場所って何処なの?」
ネーアの問いにパセットは首を傾げた。
「それを今から皆で考えるんじゃあーりませんか!」
全員が脱力した。
結局、振り出しに戻ったという事か。
「うん。そんな事だろうと思ったわ。期待なんてしてなかった。
他人任せじゃ駄目なのよ。うん。しっかりしろあたし」
頭を抱えるネーアを流石に不憫に思う。
いや、これって人事じゃないのだけれど。
「実際どこがいいのかなぁ?」
「もういっそこの辺りを我々縄張りにしては如何でしょうか!?
近付いた人間は即犯す! そして種付け! 皆ハッピー! よし決まり!」
「人全然居ないじゃない」
「結局私達で沢山産む事になりそうだね」
「一週間も経たずに終着点とかどれだけ短い旅なのよ」
「それにアレエスからそんなに離れてませんからねぇ。
アドニスが大量繁殖していると気付かれたら討伐隊がやってきますよぉ?」
クロトの真っ当な意見に全員が閉口した。
親子の縁は切れているのだ。
いくらグリーズとは言えど大量のアドニスを放置する事はないだろう。
体裁的な問題もあり、討伐隊を派遣する可能性は十分にある。
折角産み落としたアドニスを皆殺されてしまうのだ。
「駄目ね。森の中に縄張りを造るにしてももうちょっとアレエスから離れないと」
「人里近くも駄目なのかな」
「論外ね。見つかり易いし。見つかったら結局討伐隊を送り込まれるわよ?
アドニスなんて百害有って一利無しなんだから」
11 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:40:41 ID:K5PCScl1
「それじゃ、このメンツで一生やってくの?」
人知れず、森の中でアドニスの楽園を造る。
そこには恐怖も苦痛も無い。
ただ快楽と、切れる事の無い繋がりがある。
言葉にすればまるで天国のようだが――
「それは、ちょっと、寂しい、な」
リオがぽつりと呟いた。
魔物になって自由に外を出歩けるようになった。
家族と殺しあいの果てに、親子の絆を取り戻した。
少し大人になった少女の人生はこれからなのだ。
それは普通の人間とは大分違うものになるのかもしれないが――
そんな少女の人生を、山奥でひっそりと完結させてしまうのはいくらなんでも、寂しい。
リオはもっと世界に触れるべきなのだ。
沢山の人と出会い。
色んな経験を積んで。
思い出を作って欲しい。
その為の家出ではなかったのだろうか。
「難しいわねやっぱり。人と魔物の共存は…」
「――あっ」
ぽつりと呟いたネーアの言葉に何かが閃いた。
全員の視線が集中する。
「お義母様」
「ごめん。もうちょっと分かりやすく説明してくれる?」
「あ…えと――その、良く考えてみたらおかしいと思ったの」
「何が?」
「リオの――というかリオの家系の事」
この場合リビディスタの事ではなく旧姓セイレンの家の方だ。
リオの血筋は悪魔と、ネコマタと、そして人間のハイブリッド。
マリオンはふと思ったのだ。
「シュトリという悪魔は同性、つまり女を堕落させて同族へと変異させて繁殖する。
ネコマタは自然界の猫がモンスターになって発生する。
この二つの特性上、繁殖の過程で人間の血が混じる事は有り得ない」
「でも、リオ達には人間の血が混じってる」
その証明となるのが、恐らくオッドアイだ。
左の赤い瞳が魔物である事。
そして右の、リオならば青い瞳が人間である事の証なのだ。
ならば人間の血はいつ、どこで混じったのか。
「ということはあれですね。
人間の殿方と淫魔が結ばれたという事なのでしょうね」
パセットの意見に全員が神妙に頷いた。
淫魔が人間と交わり、子供を作ったのだ。
何かしら外的要因も働いたのかもしれないが――そうとしか考えられない。
(でも、それが分かったからってこの状況を打開出来る訳じゃない)
『人間と魔物との愛の結晶? それがリオの家系』というのも当て推量に過ぎない。
「ごめん、どうでもいい事だった」
「そんな事無いわよ。お手柄だわマリオン。本当にありがとう」
「……馬鹿……褒めるのは全部解決した後にすればいいのに…」
褒められるのが小恥ずかしくて赤く染まる顔を背けた。
ほんとに調子いいんだから。
「解決したようなものよ。
だってリオのお母さんの家って、ずっと娼館を続けてるのでしょう?」
「そうだった筈」
娼館セイレンは歴史のある売春宿なのである。
12 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:42:36 ID:K5PCScl1
それはセイレンの血が途切れた今でも変わらない。
(あ)
そうか。そういう事か。
なぜ娼館なのかって、そりゃエロスな魔物が人間と共存出来る唯一の手段だから?
淫魔が人間社会に溶け込もうとしたらそりゃやっぱりエロイ仕事を見つけるのが良いのだ。
その為の娼館。少し短絡的かもしれないが。
けれど血筋を絶やさず、この店をずっと続けろ、という家訓もあるくらいだ。
先達が未来の子供達に気を利かせて――いや、余計なお節介?
兎も角淫魔の血を引いた子供が人間と共に生きていく――と望んで作った家訓なのでは。
「売春! でございますね! ええ!
今更人間と殿方とエッチするとかあははは! ちゃんちゃらおかしいっちゅーねん!
こちとら親友に処女を奪われてチンコ生やされて魔物の種まで植え付けられたんだぜ!
おまけにマゾ!! 売春婦くらいなんぼのもんじゃー!」
がはははと豪快に笑うパセットを生暖かい目で見詰める。
本当に逞しい娘である。
「という事はぁ、この五人で新しく売春宿を作るっていう事ですかぁ?
時間掛かりますようぅ? それまで私達我慢できませんよう?」
「きゃっ!?」
しゅるしゅるとクロトの触手が体に巻きつく。
ふぅ、ふうっ、と荒い息が、熱い視線が、隣のクロトから叩き付けられてとっても嫌な予感。
「――あの」
そこにおずおずと手をあげたリオ。
「私がお母さんのお店に言って、協力してもらうように頼んできます」
「え? いくらなんでも無理じゃ――ってクロト、いきなりおし――ああぁ、もうっ」
花の上まで体を持ち上げられ、いきなりアナルに触手が突き刺さった。
まだ会議中だというのにこの体たらく。
アネモネの性欲が如何程のものなのか、良く分かった。
「クロト、『お預け』よ」
「ふええぇぇぇぇんっ」
ネーアの命令にクロトが号泣した。
アネモネは自分よりも上位の同種に逆らえないのだ。
「もうちょっと我慢なさい。これが終わったら好きなだけエッチさせてあげるから」
「いや、それどうなの?」
「っていうか話が横に逸れまくっておりますが。皆様しっかりして下さいませ(キリッ」
「と、兎も角、いくらなんでもセイレンにこのメンツが押しかけるのは無謀じゃ」
「そうかしら? あたしは別にいいと思うわよ?」
「自身たっぷりだけど、どこからその根拠は出てくるの?」
「だってリオは前店主リシュテアさんの忘れ形見なのよ?
向こうのスタッフも喜んで受け入れてくれるんじゃない?」
「リオはいい。でも問題は貴方達アネモネでしょ?」
「ふっふーん。アネモネだって使いようよ。
ようは、人間に――この場合は娼館のスタッフに、かな?
彼女達にアネモネがどれだけ有益な魔物か教えてあげればいいんでしょう?
だったら大丈夫だわ」
両手を腰に当て、無駄に大きい胸を逸らしてネーアは自信満々に言うのだった。
「アネモネは女の夢が詰まってるからね♪」
***
それから二ヶ月後の事である。
ここはアレエスの隣町『ニクシー』。
ニクシーはアレエスの存在する山林を下り、南方へ三日進んだ場所に位置する大型の街だ。
13 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:43:53 ID:K5PCScl1
海岸沿いに存在し、漁業は勿論の事、東の山岳地帯からは鉱物も掘り起こしている。
山から採れた鉱物はアレエスの戦士達が使う武器にも使用されていた。
ところが貿易街であるニクシーにはもう一つの特徴がある。
街の中央に位置する、巨大な遊郭の存在だ。
一般人でも楽しめる大型のカジノ。
法外な掛け金で負ければ即強制労働所送りの裏カジノなるものまである。
そして勿論娼館も。
今宵も多くの人間が訪れ。
ある者は夢を叶え、ある者は絶望へと落ちて行く。
ここは欲望の坩堝、夜の街ニクシーだ。
そしてその遊郭の一角に、娼館セイレンは存在する。
日も暮れ、空に星が輝き始めた時間。
街の街灯は魔力の光を反射して闇を打ち払う。
通りには道行く人が後を絶たない。
ピンクやパープル等『如何にも』な魔力光を放つ看板に吸い寄せられ、男達がやってくる。
その様子は花に誘われた蝶か。
それとも蜘蛛に絡め取られた蝶か。
今日もセイレンで女達の甘い声が響く。
「ああぁぁっ!? 産まれるっ! また、産んじゃうっ!」
そのセイレンの地下。
幼い少女の嬌声が響いていた。
店の地下に広がる空間はおよそ十メートル四方と、意外と広大である。
天井には淡い魔力光を放つランプが吊り下げられ、密室の中をぼんやりと照らしていた。
土が露出した壁や床。
隅の方でひっそりと存在を主張する井戸。
そして地面を埋め尽くす大量のアドニスの花。
「んひゃあぁぁぁぁぁっっ!!?
ぷちぷちっ、いってりゅぅ! お腹のなかぁっ、お花の根っこっ、ちぎれりゅぅ!
死んじゃうっ! パセット死んじゃうぅぅ!!」
「死なないわよ♪ 思いっきりイッちゃいなさい♪」
涎を垂らしながら頭を振り乱すパセットを微笑ましく見詰めるのはネーアだ。
地下空間の真ん中に陣取り、触手を使って裸体の少女を花弁の上に拘束している。
花弁に貼り付けにされているのはパセットだ。
散々『可愛がられた』のだろう。
栗色の犬耳ヘアは粘液でベトベト。
何度も絶頂したせいで頬はだらしなく弛緩していた。
幼い裸体も余す所無くアネモネの精液で汚れ、ランプの光を艶かしく反射している。
そんなパセットの体に異変が三つ。
一つは、二つの慎ましい膨らみだ。
二ヶ月前までは歳相応の、洗濯板とも呼べる胸だった。
だが今では二ヶ月前のリオよりもやや大きくなっている。推定サイズ75。
二つ目は大きく張った下腹部だ。
腹にアドニスを宿し、今まさに出産しようとしているパセットの腹は妊婦のそれと同じ。
今も膨らんだ腹が、ぼこり、と歪に波打ち、その度に少女が嬌声を上げる。
そして彼女が快楽を感じる度に、下腹部の下――股下から生えた肉の棒が跳ねるのだ。
それが三つ目。
「あはぁ♪ パセットちゃんのフタナリチンポぉ、びくびくしてますよぉ♪
美味しそうですぅ♪ 食べちゃいますねぇ私ぃ♪ パクン♪」
「んひゃあぁぁっ!!!? しゅごいぃぃぃっっ!!
チンチンとぉっ、子宮がぁっ! ひゃあぁぁぁっ! くるぅっ!
狂っちゃうぅぅっ!! ひゃううぅぅぅんっ!!」
14 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:45:39 ID:K5PCScl1
隣で事の成り行きを見守っていたクロトが我慢出来ずに触手を伸ばした。
口を開いたおしべ触手に擬似男根を奥まで咥え込まれ、パセットが白目を剥いている。
この擬似男根、マゾに開眼したパセットがリオに頼んで再び生やしてもらったのだ。
今ではこうして二人のお姉様に敏感な肉棒を徹底的に責められるのが癖になっている。
「マリオンはお尻大好きの変態になったし。
パセットはフタナリ好きのマゾになっちゃったし。貴方達散々ねぇ」
そう言ってネーアは微笑んだ。
(ま、娼館で働く分にはその方が良かったんだけどね)
二ヶ月前。
ネーアとリオを含む三匹と二人は娼館セイレンに受け入れてもらえる事になったのだ。
勿論、何のトラブルも無かったと言えば嘘になる。
何せこちらは魔物が三匹。
その内二匹は女を犯して大量繁殖するアネモネだ。
普通に考えれば断られるのも当然であり、娼館のスタッフも最初は拒否していた。
だが前店長のリシュテアの忘れ形見であるリオの頼みなのだ。
スタッフの中にはリシュテアに拾われて育った娘も居る。
現店長の女性もリシュテアには世話になっていたらしい。
その実の娘であるリオの説得に心を打たれて最終的にはネーア達を受け入れた。
またリシュテアと仲が良かったマリオンの存在も大きかった。
と、こちらは義理と人情の話。
セイレンのスタッフを説得しえた要因としてアネモネの存在がある。
一見、有害としか思えないアネモネだが、娼館としては十分に有益な存在だったのだ。
例えばアネモネの体液。
催淫性の強いこれを彼女達から摂取し、媚薬として商品化したのだ。
効果が強く、生産コストはほぼゼロ。
彼女達からすればアネモネは金の生る木だったのだ。
それだけではない。
胎内にアドニスを寄生された女性は肉体を徐々に改造されていく。
体が敏感になったり、欲情しやすくなるわけだ。
だがその中には豊胸効果や、美容効果も含まれているのだ。
法外な金を支払って体を弄くられるよりも簡単に綺麗になれるのである。
アネモネになってしまうリスクもあるが、それは自分の意思や他人の協力で避けられる。
つまり。スタッフから見ればアネモネは、
『気持ち良い事をしてくれる。金を稼いでくれる。綺麗にしてくれる』
と良い事尽くめなのである。
尚、街の領主にリオが枕営業を行った為、店が潰れる心配も無い。
「んひいいぃぃぃっっ!! もうイグっ!! アドニス産んでっ、んあああぁぁっっ!!?
ふひっっ!? んああぁぁっ!! ああっっ!! おああぁぁっ!!
いっぐあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっッッ!!!!!」
ずりりりりっっ――べちゃぁっ…!
「あっひいいいいいぃぃぃぃぃっっっ!!!!」
花弁を分娩台代わりに、パセットがアドニスを産み落とした。
同時にとフタナリペニスから大量射精。
クロトの触手がタイミングを見計らって男根を開放した。
――びゅるるるっ! どぴゅどぴゅどぴゅっ!
「んひゃあぁぁぁぁっ!!? しゅごいっ! 出産アクメしゃせーしゅごいのぉぉっ!!」
自身の体と生まれてきたアドニスを祝福するように白いデコレーションを施す。
白目を剥きアヘ顔を晒すパセット。
(なんだか、エロイのか、めでたいのか、おかしいのかよく分からないわね…)
最近このメイド少女はどんどん壊れてるなぁと他人事のように思ってしまう。
15 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:47:03 ID:K5PCScl1
いや自分のせいなのだけれど。
と。地下空間の隅に設けられた一枚の鉄製の扉が開いた。
きぃぃぃ、と蝶番が擦れる音を立てて、扉の向こうからピンク髪の淫魔が現れる。
「あ。終わったところだったんだ」
「そうね。惜しかったわね」
「大丈夫ですよぉ。またパセットちゃんには種付けしますからぁ♪」
クロトの発言に二人で苦笑いを浮かべた。
「だってさパセットちゃん? 体大丈夫なの?」
「……ふ、ふふふ……っ、ふふふのふ…っ、な、なんのこれしき…、
まだまだっ…いける、じぇい…っ、でもちょっと休ませてお願い下さいまし」
「冗談言えるくらいならまだ余裕はあるわね? クロト、種付けする?
あたしはこの前させてもらったから、次は貴女に譲るわ」
「はぁい♪ ありがとうございますネーア様ぁ♪」
「え、ちょっと、今、イったばっかりで体がっ、んひゃああぁぁっっ!!!」
早速クロトの触手に絡め取られて悶え始めるパセット。
「……流石パセットちゃん。普通の人だったら発狂してると思う」
「そうね。でもその辺りは自他共に認めるマゾメイドちゃんと言うか何と言うか。
ほんと逞しいわ。肉体も精神も」
「んひゃうんっ♪ もっとぉっ!! クロト様ぁっ、もっとズボズボしてぇっ!!」
早速喘ぎ始めたエロメイドに苦笑いを浮かべるしかなかった。
「まあ、お陰であたしもクロトも暴走せずに済むわ」
「スタッフの方にも種付けしてるんですよね?」
「負担が掛からない程度に、ローテーションを組んでね。
皆が受け入れてくれて、ほんと良かったわ」
「最初はやっぱり、嫌煙されてましたけどね」
「一回抱いてあげたら皆メロメロになったけどね?」
二人で声をあげて笑う。今となってはいい思い出だった。
「アドニス、どんどん増えちゃいますね」
「週に二匹くらいのペースかしら」
地下空間に産み落とされたアドニスは十五を超えている。
普通の人間が見ればおぞましいだけだろうが、自分にとっては我が子同然である。
増え過ぎても困ってしまうが、こればかりはどうしようもない。
(マリオンに頼んで、またこの部屋を拡張してもらわきゃね)
魔術でがりがり掘るのである。
それも限界はあるだろうから今の内に何かしら対策を考えておかなければならなかった。
産み落とされたアドニス達をどうするか。
何時かは此処に収まり切らなくなる。
その時、この子達を受け入れてくれる場所を確保しなければならない。
各地でセイレンの支店を作ってその地下にも同じような場所を作ろうか。
それとも大自然に還してやるか。
悩みどころだ。
(贅沢な悩みね)
少し前の自分では考えられない。
二百年前のあの日。
人の心を取り戻し、代わりに最愛の人を失ったあの日。
魔物となった体を持て余し、ただ逃走するだけの日々。
自分は何の為に生きているのか。
何の為に生まれてきたのか。
ずっと自問してきた。
人を犯す事でしか心も体も満たされないアネモネ。
そんな、害悪でしかない自分は死んでしまった方がいいのではないか。
そう思う事もあった。
だが今は違う。
「リオ。今、あたし幸せよ」
「ネーアさん?」
16 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:48:46 ID:K5PCScl1
「皆と一緒に居られる。本能も満たされて、暴走する事も無い。
ここは、あたしにとって楽園なのよ」
だが惜しむらくは、ずっと地下にいるせいで自分を含めアドニス達は太陽を拝んでいない。
それが二ヶ月も続いているのだ。
海沿いの街、という地形的にも水分は大量に補充出来るのだが。
やはり日の光も浴びなければどうにも力が湧いてこない。
だから人間を抱く時は水分をたっぷり搾り取ってしまうのだ。
「ひゃうぅぅぅんっ!? しゃせーしちゃうぅっ!! パセット、まらシャセーするぅ!」
「あはぁっ♪ 出して下さいぃ♪ 一杯一杯、フタナリザーメンビュルビュルして下さい♪」
あんな感じで。
まあそれは兎も角。
「魔物でも、人間の役に立てる。それが分かって、あたし嬉しいのよ」
「はい…っ」
ぴょん、とリオが花弁の上に飛び乗る。
淫魔の姿をした幼い少女を抱き締めると、トクトクと、心臓の鼓動が聞こえた。
それを聞くと安心する。
アネモネはお互いに繋がっているが、その巨体ゆえ、互いに抱き合う事は出来ない。
抱き締めるのはやはり人間しかないのだ。
アネモネは、寂しがり屋なのだ。
それをネーアは今頃になって自覚した。
そしてだからこそ。
今こうやって好きな娘と抱き合っていられる時間がとても幸せに感じる。
「リオ、貴女は幸せ?」
「にゃうん…♪ 幸せですよ…? どうしてそんな事言うんですか?」
「だって、仮にもあたしは貴女の保護者だし…その――
貴女の事を見守る義務があるわけじゃない? ちゃんと幸せになった欲しいのよ」
それにここからアレエスまでそれほど離れている訳ではない。
リオが悪魔の力を解放して空を飛んでいけば二日で辿り付けるだろう。
だというのに彼女はこの店で毎晩売春に励んでいる。
人目を引く容姿は勿論の事。
年齢に似合わない妖艶さ。
穏やかな娘かと思いきや、スイッチが入った後の小悪魔っぽさ、そしてそのギャップ。
全てが魅力的で、今やセイレンの売れっ子だ。
金持ちがひっきりなしに予約を入れ、一日に何人も見知らぬ男に抱かれている。
今日も確か予約が入っていた筈だ。
そろそろ時間ではないのだろうか。
「大丈夫ですよ? 私、今のお仕事好きです。
こんな私でも、ちゃんと人の役に立ってる、って思えるから」
そう言ってニッコリと笑うリオがもう、なんというか感無量。
「それにエッチ自体、私も好きですから♪」
まあ、淫魔としてはそうなのだろう。
だが、一人の娘としてはどうだろうか?
「お父さんに会いに行かないの?」
アドニスを産む前後以外は休む間も無く働いている。
店にも貢献しているのだ。
一日や二日の里帰りくらい、許してもらえるだろう。
「ん…いいです」
「どうして?」
「だって。今会ったら…ずっと一緒に居たいって、思っちゃうから」
やっぱり。
何だかんだ言いつつこの娘は父親の事が好きなのだ。
けれど自分が屋敷に行けば、あのドルキとまたトラブルを起こしてしまうかもしれない。
そんなジレンマがあるからこそ、今この場に甘んじている――そういう事なのだろう。
17 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:51:01 ID:K5PCScl1
「そう言えばグリーズ様はどちらに御用で?」
「その名でワシを呼ぶな」
背中から掛けられた問いに、感情を殺して答える。
「あぁ、これは失礼。一応お忍びでしたね」
「此処では『グリス』と名乗っている。気を付けろ」
背後から男達の失笑が聞こえた。
安易な偽名と笑っているのだろう。失礼な奴らだった。
リオと接触した事のある数少ない証人として今まで色々良くしてやったが恩を仇で返すか。
いや、こういう軽い空気も偶にはいい。
屋敷に篭っていれば息が詰まる。
ドルキと共に作ってきた家であり、それ自体苦痛では無かった筈なのだが。
『父様♪』
脳内で愛娘の笑顔が再生されて溜息をつく。
どうもあの一件以来『角が取れてしまった気がする』。
感傷的になる事が多くなったと言うか。
(やはり歳か)
娘二人を屋敷から追い出してしまった事が悔やまれる。
あのアネモネの言う通り、なんとか屋敷に留めておく方法を考えれば良かったか。
いやいや、それも無理な話だろう。
人の口に戸は立てられない。悪魔の娘を屋敷に置く事はやはり無謀だ。
「そういやさ風の噂で聞いたんだけどよ。
さっき言ってたセイレン。何か新しい女が入ったんだって。
それも三人」
「一気に三人とは儲かってんなぁ」
「いやいやお前ら。女は量より質だぜ? 三人ともブスだったら意味無えし」
「それが三人とも上玉らしいぜ。
内二人はまだ小便臭いガキらしいけど最後の一人が大層ベッピンさんらしい」
小便臭いガキ、という言葉に体が僅かに反応した。
談笑をしている三人に気取られる事は無かったが例によって脳内で愛娘の姿が再生される。
「俺はガキの方がいいな」
「いや、いやいやいや。そりゃねえだろ。苦い思い出があるんだから」
淫魔化した直後のリオに散々搾り取られた時の事を言っているのだろう。
大の男が三人で寄ってたかって幼女をレイプしたはいいが返り討ち。
男からすればトラウマものか。
「……いやぁ実は、あれから俺、ロリに目覚めて…」
「…実は、俺も最近、あの子の事を考えながら抜いてるんだが」
「そういう話はワシの居ない所でしろ」
切り殺されたいのか、この馬鹿共は。
実の父親の目の前で娘をオカズにしていますと告白するなど、怖い物知らずにも程がある。
だが、そういう性格なのだろう。
いい加減と言うか、体裁に疎いというか、只下品なだけかもしれないが。
まあ、常に畏怖や尊敬の眼差しで見られる屋敷の中に居るよりかは気楽でいいが。
「兎も角だ。セイレンの女は量も質もいいんだってよ」
「へー。そりゃいいんだが金無いんだって」
「…やっぱ安い所にすっか?」
「そうだなぁ……ちなみにグリ――スさんは一体どちらまで?」
問われて言葉に詰まった。
今回、わざわざニクシーまで赴いたのはひとえに息抜きだ。
いや、白い物も抜くつもりだが。
最近ドルキが『体を張って』尽くしてくれるようになった。
それは嬉しいし、昔を思い出す。
18 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:52:13 ID:K5PCScl1
だが如何せんあいつも歳である。
僅かだが、淫魔の血を体内に取り入れたこの体は以前に比べ性欲が増してしまった。
元でも苛烈な交わりを求めてしまうこの性格に増大した煩悩。
ドルキではあっと言う間に消耗して体が持たないのだ。
そこでセイレンの女に白羽の矢を立てた訳である。
何分向こうの女達とは知らない仲ではない。
一昔前までは常連だったのだから。
そして、あわよくば――
(いや、それはないか)
淡い期待を自ら否定するように頭を振る。
人外を三体も引き連れてこんな大きな街に入るなど、馬鹿げている。
グリーズは歩みを止めた。
フードの中から、正面の売春宿を見据える。
ピンクやパープルなど、実に『らしい』魔力光を放つ看板。
そこにはセイレンと銘打たれていた。
「グリスさん?」
「…ここだ。予約を入れてある」
「え? ――ええ!? ってここ、セイレンじゃないですか!?」
「はーっ、やっぱ金持ちは違いますねぇ!」
「黙れ。喋るな。恥ずかしい」
道行く人が珍獣でも見るような目を投げかけてくる。
この馬鹿達と一緒に居ると目立ってしょうがない。
だがまあ、折角だ。
金が無いというなら少しくらい恵んでやらんでもない。
元々金の使い方なんて知らない身だ。これくらいはいいだろう。
「じゃ、じゃあ俺達はここで失礼させて頂きます」
「グリスさんはどうか俺らの代わりに心行くまで、」
「何だ。来ないのか。お前達三人分くらないなら、はした金で済むと思っていたのだが」
「逝きます!」
「いやあ、グリス様っ、一生恩に着ますよ!」
「流石グリス様懐が深い!」
などと途端に現金になる三人。
そんな彼らの反応に頭痛を覚えつつも溜息を吐き、店の扉を開けた。
ちりりん、と小気味良い鈴の音が鳴り響く。
昔から変わらないその音に懐かしさを感じながら入店。
すぐに受付嬢が迎え入れてくれた。
歳若い娘だ。
ピンク色の髪。
黒のゴスロリ衣装。
そういう『プレイ』なのか背中には悪魔の翼と尻尾を二本生やし、
「にゃう♪ セイレンにようこそ♪ ――あれ? お客さん? 何処かで会った事ある?」
ぱちくり、と瞬かせた瞳は右が青、左が赤のオッドアイ。
見間違いようが無い。
人違いである筈も無い。
この少女は、
『あーーーーーっっ!!?』
後ろの三人が娘を同時に指差して大声を上げた。
19 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:53:28 ID:K5PCScl1
「え? うん? えーと――あっ! ああっ! 思い出した!
あの日森の中でお世話になった騎士のおじさん達だ!」
「おじさん達じゃねぇ!」
「何でグリーズさんの嬢ちゃんがこんなところに居るんだ!」
「あーそれはまあ、色々ありまして――」
ちらり、と娘の視線がこちらを向いた。
「あの、それじゃ……こちらのお客さんは…?」
「くくくっ」
喉から思わず声が漏れてしまった。
駄目だ。もう我慢出来ない。
「はーはっはっはっ!!」
声を出して大笑いした。
だってそうだろう。
何だこのご都合主義的な展開は。
笑わずにはいられない。
「……え…嘘…まさか…」
「…この馬鹿娘が。親の声も忘れたか」
フードを取り去り、素顔を晒す。
その瞬間の娘の表情といったら、狐に摘まれたような間抜け面だ。
写真にでも撮って額縁に入れて飾りたくなる。
「父様だ…本当に、父様だ…っ」
感極まったように娘の――リオの瞳に涙が溜まっていき、
「父様ぁっっ!!」
胸に飛び込んで来た。
それをしっかりと抱き止めると、愛娘の温もりを感じる。
小動物でも抱いているような柔らかさ。
力を込めれば壊れてしまいそうな小さな体。
あいつと同じ、甘い匂い。
何も、変わっていない。
いや、また胸が大きくなっている気がした。
「にゃぁっ…! にゃぁっ! 父様だぁ…! 本当に、父様だぁ!」
「ああ……元気にやっているようだな」
「うんっ、うんっ! 父様も、駄目だよぅっ、こんな所に来たらっ。
お義母様がまた怒っちゃうよっ」
「それを言うならお前もだ。家を出たと思ったらこんな所で働きおって」
母娘揃って同じ娼館で働くとは思ってもみなかった。
いや、悪魔になる前ならばむしろ勧めてここに来るようにするつもりだったか。
だがネーアとクロトそれに人外となった体でこんな街の真ん中に居座るとは思いもしない。
「リオよ。あの女はどうした? 悪さをするようならワシも見過ごす訳には、」
ぴたり、と唇に人差し指を添えられた。
目の前に、小悪魔っぽい笑みを浮かべた娘の顔がある。
「ネーアさん達は地下に隔離させてもらってます。
姉様の転移魔術が無ければ自力で地上に上がる事は出来ません」
「ここの者達はそれで納得しているのか?」
「最初は説得するのに苦労しましたけど…今は皆お友達です」
「街の領主はどうした? 黙っていてもいずれはばれるぞ。そうなる前に手を、」
「父様? 私が一体何なのか、ご存知ですよね?」
20 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:54:56 ID:K5PCScl1
ふふふ、と娘は十一年前に失った愛人と同じ笑みを浮かべていた。
(成る程。既に陥落済み、という事か)
この欲望と野心の渦巻く街では悪魔は最大限に力を発揮出来る。
力や技だけではない。ずる賢くなったものだ。我が子ながら末恐ろしい。
「となると、遠慮はいらない訳だな?」
「きゃっ」
リオを抱き直すと、可愛らしい声を上げる。
その体は軽く、柔らかかった。かつて死闘を繰り広げた戦士とは思えないほどに。
「おー! お姫様抱っこ!」
「グリス様、お似合いです!」
「でも今更ですけどここから先は割りと禁断かつイヤンな感じになるんですよね!?」
いい加減外野が五月蝿い。誰か黙らせて欲しい。
そう思った矢先の事である。
「リオ。何かあったの? やけに騒がしいけど」
二人目の娘、マリオン登場である。
ブロンドの髪を結い上げ、洒落た髪飾りで留めている。
服装はノースリーブの青いドレス。
胸元と背中がばっくり開いたデザインで『成長した』乳房が谷間を作っているのが見えた。
「あ、姉様…っ」
「…リオ、新しいお客さ――って父様っ!?」
「ほう、化けるものだな。見違えたぞマリオン」
『何いいいぃぃぃっっっ!!? マリオン殿ぉ!?』
後ろの三人が揃って驚愕の声を上げた。
(さもありなん)
何せあのマリオンが化粧までしておめかししているのだ。
剣と魔術しか知らなかったあのマリオンが生意気にもリップを引いている。
「馬鹿な!」
「ああそうだ! ありえない!」
「胸的に!」
「殺されたいの?」
魔術を使ったのかばちり、と周囲の空間が帯電した。
ひい、と男達が情け無い声を上げる。
「ここは客相手に攻撃魔術を使うのか?」
「だって父様っ。私知ってる。こいつら、金なんて持ってない」
「ワシが払う。金を払えば文句はあるまい」
「それはそうだけど……よりにもよってこの人達を相手にしろって事?」
「暇そうにしているではないか。仕事なら逃げるな」
「う……分かった…」
(それでこそワシの娘だ)
ただ勘当を言い渡した手前、堂々とそれを口にする訳にはいかない。
しかしあれほど剣の特訓に心血を注いでいた、あのマリオンが妹と共に娼婦とは。
世の中どうなるか分かったものではない。
「待てよっ、という事は俺達っ?」
「あのマリオン殿と…っ?」
「今からする? のか?」
むふふ、ぐふふ、ぐへへ。
三馬鹿達が妄想の翼を広げ始めた。
鼻の下を伸ばしに伸ばしてマリオンの体を嘗め回すように見ている。
慣れた娼婦ならそれくらいの視線、なんともないのだろう。
ところがマリオンときたらこういう事には未だ慣れていないらしく顔を真っ赤にさせた。
「きゅ、急用を思い出したっ。私帰りますっ」
「姉様? ここが私達のお家だよ?」
「じゃ、じゃあ家出するっ」
「駄目。『ちゃんとお仕事しようね』?」
(惨い事を)
21 永久の果肉EX2 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:56:12 ID:K5PCScl1
実の姉にチャームを掛けるリオ。えげつない事をするものだ。
「うぅ…恥ずかしい……やぁ…なのにぃ…」
『うぉぉぉっ! 弱気なマリオン殿に我らの息子達も大ハッスルである!』
「こ、こちらで…ございます……っ――うぅ…っ、さ、逆らえないっ」
先を行くマリオンに後を追う馬鹿三人。
途中でチャームが切れたらハーメルンの笛吹きよろしくあの男達は全滅するのだろうか。
まあ、どうでもいい事か。
そうだ。夜は長い。リオとする事をして一息ついたらマリオンの体も抱かせてもらおう。
(良い体付きになっていたな)
アネモネ達と何度も交わったのだろう。
女としては貧相な体だったと思ったが、今では立派なものだった。
ぎゅぅ…!
「な、何をするっ」
頬を突然抓り上げられて激痛が走った。
人外の力で割と本気に抓られたらしい、頬が赤く腫れてじんじんと痛む。
「父様、今姉様の事考えてたでしょ? 今から私とエッチするのに」
リオが頬を膨らませ唇を尖らせていた。
生意気にもジェラシーを覚えた、という事か。
いや、それ以前に、
「心を読んだのか?」
「読まなくても分かります。顔に書いてありましたから」
べぇ、と舌を出したかと思うと小さな体が急に飛び上がった。
「どうせ私はお子様ですから。父様のご期待にはお答えできません。
代わりの方を呼んで来るのでそこで少しお待ち下さい」
「いや待て」
全く、らしくない。
「その必要は無い」
剣神と恐れられた自分が、自分の娘にこうも心を掻き乱されるとは。
「どうしてですか?」
背中を向けたままの娘に、どう答えようか考える。
まさか、お前に会いに来た、などと口が裂けても言えまい。
「…血が騒ぐのだ…お前から分けてもらった淫魔の血がな…
お前のせいだぞ。この猛り、もう普通の女では受け止めきれぬ。
せめてお前が責任をもって、」
「ぷ…っ、……くすくすっ…!」
「何がおかしい」
「だ、だってっ、父様ったら素直じゃないんですもんっ。
私に会いに来てくれたのに、恥ずかしいからって必死で言い訳を考えて――
くすくす…っ、あははははっっ!」
(全く、本当に敵わんな)
リオが、あのリシュテアの娘であると痛感させられる。
これでは親の面目も丸潰れだ。
「心を読んだのか?」
一応と思って投げかけた言葉。
娘はふふふ、と小悪魔っぽく笑うとウィンクをしながらこう答えるのだった。
「それは、秘密です♪」
- Fin -
22 乙×風 ◆VBguGDzqNI sage 2010/06/10(木) 18:58:31 ID:K5PCScl1
皆様お疲れ様でした。
以上で永久の果肉シリーズ、完全完結となります。
最後まで付き合ってくれたスレ住人の方々。
もしいらっしゃるなら一見の方々も。
今までお付き合い頂き、本当にありがとうございました。
約四ヶ月もの間、スレを占拠と言っても過言ではない程大量に消費してしまいした。
特にSSまとめブログの管理人様に関しては大変お手間を取らせていると思います。
何と永久の果肉シリーズ合計で600KBオーバー! やり過ぎです(汗
それを少し心苦しくも思いますが、お陰でこのシリーズを無事終える事が出来ました。
重ね重ね、ありがとうございます。
何か、書く事もあんまりないですね。
これだけのボリュームのものをきちんと書ききれたのは初めてだと思うので達成感ががが。
まああんまりだらだら後書きを続けるのもなんです。
という訳でこの辺りでお暇させていただきます。
もしまた機会と時間と運があればお会いしましょう。
それでは。