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五行戦隊 第九話『善意と悪意』
132 五行戦隊 ◆vPNY1/7866 sage 2015/01/03(土) 17:38:42.32 ID:5PW9na0t
あけましておめでとうございます。
今回の投下は第九話・第十話の二話分です。
分量が多くなりますが、こたつ蜜柑を食べるくらいな気持ちでまったりどうぞ。
<あらすじ>
死闘の末、妖気に支配された親友を打ち倒した灯(あかり)。
だが彼女の身も邪眼の力によって着実に侵されていた。
最後の力を振り絞って、寄生の大樹と対峙する。
133 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(1/19) sage 2015/01/03(土) 17:39:18.51 ID:5PW9na0t
――絶対許さない。
精液プールに聳え立つ巨大樹を、灯は睨みつけた。
心の怒りが妖力へと変換される。
服の表面は火焔をまとったようにたえず燃え揺らぎ、溢れんばかりの妖気を漂わせる。
彼女の身は今、敵のシンボルである触手服に包まれていた。
触手と触手を繋ぎ合わせたような赤黒い服装。
その隙間から触手の突起がはみ出て、内側の卑猥さを想像させる。
肌にぬめりと貼り付く触肉は、体の凹凸を隠すこと無く浮かばせ、
健全のボディーを官能的に見せ付ける。
裏側に分布する無数の絨毛は常に媚液を分泌し、
宿主がいつでも繁殖活動できるよう発情状態を維持する。
服表面の寄生眼から、不気味な赤い眼光が放たれる。
この力を頼るのは危険であることを、灯は分かっている。
だが、心の怒りはすでに爆発のラインを越えていた。
彼女は仲間思いの女の子である。
助け出した仲間の姿は、一目で分かるほど無残な陵辱を受けていた。
以前灯を助けていなければ、彼女はこんな目に遭わなかっただろう。
そう思うだけで悔しさと同時に、とてつもない怒りと闇の力が体中を溢れる。
これも寄生蟲の影響だろうか。
(操ってるつもりだろうが……お前達なんかに支配されるものか)
灯は自分の中の正義を確認しながら、改めて意志を定めた。
憎しみはあっても、それは悪への憎しみであり、目の前の妖眼樹への憎しみである。
どんなことがあろうと、彼女は妖魔の手先になるつもりは無い。
灯の近くで、一人の少女がゆっくりと起き上がった。
ついさきほど、寄生樹から助けた翠である。
灯と同様、彼女もまた触手スーツを着ていた。
普段はおっとりしたお姉さん風だが、五行戦隊の中で誰よりも命を愛する強い人間だ。
それが今、露出度の大きい服飾が優しいイメージをかき消し、
一挙手一投足に色気をふりまく妖婦に仕立てる。
無理やり絶頂寸前の状態にされ、虚ろな瞳で呼吸を繰り返す翠。
これほどの淫欲に漬かっても、彼女はまだ自我をギリギリのところで保っていた。
それがどれほど凄いことか、同じく寄生された灯は改めて痛感する。
「灯……ちゃん、ありがとう……来てくれて」
おぼつかない足取りで立ち、曖昧な吐息を漏らす翠。
極限まで登り詰めた状態のせいか、服のいくつかの部位は触手にほつれて、
宿主をイかそうと愛撫し続ける。
だが貞操帯に絶頂をコントロールされているため、その行為は翠を調教する手助けにしかならない。
立っていられることすら奇跡のようなはずだ。
そんな彼女が寄生樹のコアとして利用され、今までずっと苛酷な仕打ちを受けていると思うと、
灯は怒髪天を衝くような心境になる。
「下がってろ、翠。こいつはオレが倒す!」
「待って、灯ちゃん!」
ビックリするほど大きな声。
灯はきょとんとなって、彼女に視線を移す。
翠はうつむいた。
134 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(2/19) sage 2015/01/03(土) 17:41:07.78 ID:5PW9na0t
「灯ちゃん……私は、平気だから。だから、あなたもこれ以上、無理する必要はないわ」
「心配するな。このお化けツリーを燃やした後、清見のやつを連れてさっさと脱出するぞ」
「……どうしても、この樹を倒すのですか」
「翠を酷い目に合わせた奴を許しておけるか!」
翠は触手服の裾を、ぎゅっと握り締めた。
次の瞬間、灯は自分の耳を疑った。
「灯……ちゃん、この子を……見逃してほしいの」
「えっ?」
ふと、灯は気付いた。
翠は最初から寄生樹を庇うようにして立っていたのだ。
立ちはだかるその体は、自分の向けた両手を寄生樹から遮る。
何十回何百回も陵辱されて、今も弱々しく震える翠。
だが、そこには強い意志力があった。
「言っている意味分かってるのか? 妖眼蟲は我々の敵だぞ!
お前や、そしてどれだけの人間が傷ついたと思ってる!」
「それでも、お願い……この子だけは見逃してほしいの!」
灯は戸惑った。
唇をかみ締める翠。
その必死な表情は、確かに灯がよく知っているものだった。
だが翠なら、人間を傷つくことを決して許さないはずだ。
――やはり寄生蟲の影響だろうか。
鈴華や清見と同様、思考を歪められているのか。
どちらにせよ、こっちはもはや限界である。
これ以上言葉をかわす余裕は無い。
敵愾心があったから寄生服の快楽を抑えるのがやっとで、ここで力を緩めば、
自にもこの場で自慰しまいそうだ。
この巨大樹を倒すのは今しかない。
「……ごめん、翠」
灯はそう言って、妖気を溜めた両腕をゆっくり降ろした。
だが翠が気を抜けた瞬間、灯は両手を空中で重ね、全ての妖力を放出した。
黒炎のつぶては砲弾のごとく発射される。
その行き先は、巨大樹の幹にある目玉だった。
目玉さえ破壊できれば、妖眼蟲は絶命する。
この距離なら、いかに翠が術を駆使しても間に合わない。
だが、灯の予想はそこで途切れる。
翠は空中へ飛び上がり、なんと自らの体で攻撃を受け止めた。
この最後の一撃は灯が余力を残さず放ったもの。
巨大樹を貫くことを想定したもので、衰弱している今の翠がまともに受けられるはずが無い。
高温の塊に恐れることもなく、翠は諦観した贖罪者のように目をつむった。
次の瞬間、室内に翠の悲鳴が響き渡る。
灯は呆然と目の前の光景を見つめた。
翠は無傷だった。
だが灯を驚かせたのは別の事柄だった。
火炎弾が命中する直前、なんと寄生樹の妖眼は自ら飛び出し、体を伸ばして翠を守ったのだ。
瞬時に炎が飲み込む。
136 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(3/19) sage 2015/01/03(土) 17:43:03.91 ID:5PW9na0t
その妖眼蟲を抱き締め、煙から飛び出る翠。
高熱をものともせずに、異形を自分の胸に抱き締める。
その悲しみの表情を一目見ただけで、内臓をバラバラに裂かれる痛みを覚える。
しかし彼女の望みを逆らって、妖眼蟲の粘液が溶け出て行く。
次の瞬間、灯はおぞましい戦慄を覚えた。
翠が射抜くように灯を睨んだ。
その視線と触れた途端、息の仕方を忘れてしまうほど胸が重くなる。
空中に花びらが狂ったように散り、毒々しい腐葉が床に積もる。
妖眼蟲を受け止めた時、翠は世界の終焉を迎えたように絶望した。
だが今の彼女から、この世界を滅亡してもいとわないほどの強い憎しみを感じる。
その悪意は彼女の色気と綺麗に合わさり、邪悪な魅力を十二分引き出す。
突然、全ての葉っぱが床から一斉に逆立った。
花びらと共に、空中の一箇所へ吸い込まれると、そこに巨大な木龍が現れた。
龍の躯体を構成する枝葉は入り乱れるように舞い踊る。
時折溢れた葉が床に落ちると、その一帯が腐蝕して黒ずんでいく。
灯の想像もつかないほど、強烈な邪気が溢れる。
翠は腕を振り上げた。
プールの水面を揺らすほど轟きながら、毒龍の長躯は空を舞いながら飛び越え、
その逆鱗が灯に直撃する。
何の抵抗もできず打ち上げられる灯。
宿主からの妖力補給が無い触手服は、いとも簡単に引き裂かれ、
ダメージを灯の体に直通させてしまった。
がはっ、と黒い血を吐く灯。
精根が尽き果てた体はそのまま地面に墜落する。
触手服の正面は裏返った部分まで暗緑色に蝕まれた。
高熱、頭痛、痙攣、悪寒、嘔吐感、呼吸困難など、ありとあらゆる厄病の苦しみが降りかかる。
だがそんな体の痛みよりも、灯は心のほうがより痛かった。
翠は本気で自分を攻撃した。
それと同じくらい衝撃的だったのは、妖眼蟲が翠を庇ったという事実。
妖魔とは、人間に害をなす存在。
それだけを信じ、灯は今まで大勢の妖魔と戦い続けてきた。
特に人間に寄生して盾にするやり方は、灯にとって最も許しがたい卑怯な行為である。
そんな妖眼蟲が自分を犠牲してまで、翠を守ったのだ。
茫然自失する灯。
その近くのプールサイドに、密かに一つの水晶珠が漂着した。
岸辺と接触すると水晶珠がひび割れ、中から濃紺の液体が漏れ出た。
甘い匂いの青液が十分に広がった後、そこから裸身の美少女が浮上する。
透き通るような白肌の上を、粘液がぬらりと垂れ滴る。
光に照らされると、儚さの中に官能的な輝きが映し出される。
その人影を確認した灯は背筋を凍らせた。
青い髪をした少女は長き眠りから醒めたように、
目を半開きにして、気だるそうに立ち上がる。
灯は急いで清見が倒れているはずの場所を振り向く。
つい数刻前、壁に叩きつけてやった清見の躯体は、シャーベットのように溶けていた。
裸の少女はそこへ移動する。
粘液はその足元を渦巻くようにして昇り、青のスーツとなって包み込んだ。
少女は腕を伸ばし、触肉の締め付け具合を確かめる。
138 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(4/19) sage 2015/01/03(土) 17:44:35.97 ID:5PW9na0t
「どういう、ことだ!?」
「妖力確認……九割が欠如。戦闘への影響は極めて甚大。やるわね、灯。
分身相手とはいえ、ここまで私に損傷を与えたとは」
驚く灯に、彼女はぶっきらぼうな口調で答えた。
清見は滅多に人を褒めない。
その彼女がそう言っているということは、心底から灯を評価しているのだろう。
だが灯にとって、今は評価などどうでも良かった。
「分身……だと?」
「ええ。妖眼蟲の能力を、私の術で拡張したもの。理論上、
妖眼蟲の細胞はどんな生物をも構成できるはず。私のクローンができても、問題無いでしょ?」
「だけど、力までは……!」
「もちろん、妖力もほとんど預けたわ。戦ってて気付かなかったでしょ?」
淡々と説明する清見。
だが親交の深い灯なら、彼女の瞳が少しだけきらめいていることが分かる。
理科室の実験に成功した子供のように。
「ただ最適化にまだまだ改善の余地があるわね。妖力を与えても、
その出力が本人より低いではね。格下の敵以外ではリスクが大き過ぎる。
幸い灯は何も考えずに全力を出し尽くすタイプだから、役に立ったけど」
「てめ……っ!」
灯は今にも飛び掛ろうとしたが、体はびくとも動かなかった。
そんな彼女に目もくれず、清見は泣きじゃくる翠のそばへ歩む。
そして、妖眼蟲の残骸に手をかざす。
「核がまだ辛うじて生きているのね」
清見のぼそっとした一言。
まるで絶望の淵から一筋の光を見つけたかのごとく、翠はハッと泣き止む。
「だいぶダメージを負っているが、まだ生命力がある。
時間はかかるが、私の力なら再生できるはずだ」
そう言って離れようとする清見を、翠は両手で引き止める。
「お願い、この子を……この子を助けて!」
「そんなことして、私になんのメリットがある」
「えっ?」
まるで予想外の返事に、翠は言葉を詰まらせる。
だが清見の冷淡さ決して変わらない。
「百眼王に逆らい、私達と敵対する道を選んだあなた。
そんな敵の願いを聞き入れる理由は、どこにあるというの」
「うっ……」
「それどころか、あなたが五行戦隊にこだわるから、
わざわざ寄生樹の中で映像を見せてあげたじゃない。あなたが五行戦隊として、
妖眼蟲を浄化するシーンを。何度も何度も、繰り返して」
「もう止めてっ!」
翠は両手で耳を押さえ、魂をつんざくような悲鳴を上げた。
139 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(5/19) sage 2015/01/03(土) 17:45:33.42 ID:5PW9na0t
「もうこれ以上私の手で、この子を殺させないで……お願いだから!」
気力が抜けたように泣き崩れる翠。
そんな彼女を清見が優しく抱き締める。
「これで分かったでしょ。あなたの居場所はもうこちら側しかないの。
あなたには、人間なんかに戻れないわ。血の一滴たりとも」
「……ええ、全てあなたの言う通りだわ。だから……この子だけは助けて!」
「いいわよ。百眼様は寛大なお方、裏切り者であっても見捨てない。
そのことをしっかりと心に刻みこみなさい。あなたの魂が、二度と離れられないように」
清見の一つの金魚鉢を取り出すと、その中に傷ついた蟲を置いた。
触手スーツの一部が溶け出し、青い透明液がガラスの容器を満たす。
培養液の中、粘体の蟲は微弱ながらも蠢き始めた。
その変化に気付いた翠は、救われたように表情を明るくさせる。
「さすがの自己治癒能力だわ。母親の能力を受け継いだことが幸いだったね」
「これで、この子が助かるんですね……!」
「いいえ、これだけじゃ足りない。翠、あなたが男から精液を搾取しなさい。
とびっきり淫欲を高めたものをね。母体のあなたが採取したものなら、拒絶反応も一番少ない」
「そんな……」
翠は少し躊躇したが、やがて「分かった」と小声で答えた。
清見は身を屈め、プールの白水に金魚鉢を沈めた。
「鈴華は職員室にいるはず。そこで貞操帯を解いてもらえ」
「うん……」
翠は金魚鉢の場所をしばらく見つめ、未練を引きずりながらその場を離れようとした。
一つの声がそれを阻止する。
「行くな……翠……ぃ!」
「灯、ちゃん……」
満身創痍の状態で、必死に腕を伸ばす灯。
翠は罪悪感に満ちた様子で目線を伏せる。
やがて、彼女は灯が倒れた場所にやってきた。
両手で薬草をすり潰し、そのまま灯の傷ついた体に塗りつける。
暗緑色の毒気に蝕まれた体は、次第に正常の色へと戻る。
「ごめんなさい、灯ちゃん」
「……!」
灯の心は沈んだ。
翠は申し訳無い表情をしていたが、その意志に揺らぎは感じられなかった。
彼女は何か言おうと唇を開いたが、途中からそれが溜息となった。
そのまま立ち上がって、出口のほうへ歩んだ。
ここで別れたら、きっともう彼女の心は取り戻せない。
そんな予感をしながら、灯は必死に指を伸ばした。
しかし、その指先が翠に届くことは無かった。
140 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(6/19) sage 2015/01/03(土) 17:47:04.91 ID:5PW9na0t
「灯、覚えておきなさい。今の翠を救えるのは五行戦隊の力ではなく、妖眼蟲の力よ」
「くっ……!」
清見の言葉に反論することなく、灯は無力に顔を伏せた。
そんなはずあるわけが無い。
あるわけが無いのに。
どうして翠は最後まで振り向いてくれなかったのか。
どうして自分がこんなにも動揺しているのだ。
何もかも分からない中、灯は低い声で尋ねた。
「それで、オレをどうするつもりだ」
「あなたが一番行きたがっていた場所へ連れてあげるわ」
清見の見下ろしたような冷たい視線。
そこには灯でさえ寒気を感じるほど、暗澹としたモノが潜めていた。
■
プール室のすぐ隣に、この学校の体育館があった。
普段健全な汗を流す場所は、今ではまるで異質の風景となった。
建物の内装は生物の内臓のように化し、大小様々な寄生眼が見開く。
床を踏みつけると柔らかく沈み、不気味な弾力が返ってくる。
天井からとろりと粘液が滴る。
生暖かい空気が渦まくこの場所に、二十人ほどの男子生徒が集められていた。
見るからにヘドを催すような空間。
しかし、生徒達は誰一人その場から逃げようとしない。
なぜなら、彼らの周囲には、それ以上に恐ろしい化け物が取り囲んでいるからだ。
人間よりも大きいサイズの、水の塊のような異形の群れ。
その肉体はスライムのように蠢きながら、
体中央の目玉で四方八方から生徒達を監視する。
危害を加えようとする気配は、とりあえず無かった。
だが少しでも近付こうとすると、化け物の肉塊は激しく波を打って触手を伸ばしてくる。
うねうね増殖する触手を突破するほど、少年達は勇敢ではなかった。
そんな彼らの前に、二人の美少女が現れた。
異形の群れは誰かに指図されたわけでもなく一本の道をあける。
そこから歩み出た青服の少女。
彼女が身にまとう気配は、化け物と同じ妖しいものだった。
体にピッタリ貼り付く触肉の布地。
表面には、化け物と同じ青い邪眼が刻み込まれる。
だが醜い化け物と大きく異なるのは、少女は一目で惚れるほど美しかった。
触手服の上からでも分かる、腰のしなやかなくびれ。
胸の谷間は衆目をはばかることなく晒され、白肌は初雪のように一寸の穢れも無い。
知性に富んだ端正な顔立ち。
その流し目で見られるだけで、男なら誰もが心を奪われるような気持ちが芽生える。
氷のような冷たさがまた、見る者の被虐心をそそる。
清廉な美の奥に隠れた、性欲を煽動する媚態。
本来背反し合うはずの二つの要素が、彼女の身で奇跡的に並立していた。
141 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(7/19) sage 2015/01/03(土) 17:48:19.73 ID:5PW9na0t
その後ろに、もう一人の少女が異形に押され歩かされていた。
明るい赤色のコスチューム。
青い少女の淫靡さとは正反対の、目のさめるような勇ましいデザイン。
ただ、その両腕は後ろで触手に縛られていた。
彼女らの登場と同時に、妖眼の化け物は動きを止め、畏怖の目線を青の少女に捧げる。
「シュルシュル」という擦れ音がピタッと止み、あたりを不気味な静けさが包み込み。
青い少女は一歩前に出る。
「皆さん、大変お待たせしました。これから、ここにいる全員を解放しようと思います」
湧き水のような透き通った声。
その美貌とあいまって、少年達は彼女の言葉に耳を傾けた。
「ここを出る者に対し、私や私の部下達は、決して危害を加えません。
ただし、一つだけ条件があります」
青の少女は一息置いてから、静かに宣言する。
「ここにいる五行戦隊の娘を犯した人だけが、自由になれます」
「五行戦隊」「犯す」の単語が聞いた途端、生徒達はざわめいた。
赤服の少女が妖眼獣に前へ押し出される。
「この人が、五行戦隊だっていうの?」
「ほ、本物なのか?」
「じゃあ、あの噂はやっぱり……!」
この町には、妖魔から人々を守る正義の味方が存在する。
学校では、そんな嘘のような噂がずっと前から流布していた。
だが今、こうして異形の化け物に囲まれている以上、
少女をただのコスプレヤーと思う者は誰一人いなかった。
生徒達の遠慮気味な視線や嘆声に、赤コスチュームの少女――灯は、
ただ唇を強く噛み締めた。
五行戦隊に変身した時点で特殊な術式が発動し、
変身前の姿と同一人物に認識されることは無い。
妖魔から正体を隠すための措置だ。
だが正体がバレないとはいえ、五行戦隊として敗北の姿を晒していることに変わりは無い。
(ううっ……!)
灯の顔が真っ赤になっていた。
その理由は恥かしさだけでは無い。
一見、正常に戻った正義のバトルスーツ。
だがその実体は、数え切れないほどの絨毛を備え、
クチュクチュと小さな音を漏らす触手服だったのだ。
■
数刻前、体育館に来る途中のことだった。
「はい、おしまい」
清見はそう言って、灯の胸から手のひらを離す。
胸部にある妖眼――もともと変身アイテムの勾玉だったもの――が妖光を収めると、
灯の寄生スーツの目玉が次々と閉じた。
142 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(8/19) sage 2015/01/03(土) 17:52:42.16 ID:5PW9na0t
触手の境目が跡も無く縫合し、本来のバトルスーツに姿を変える。
正義を示す白地に、持ち主の熱き魂を象徴する赤色。
見た目上の変化は一つだけある。
霊力の源である勾玉が、妖眼としてそのまま見開いているのだ。
そして裸の肌と接する裏面では、柔突起が宿主を刺激し続ける。
灯にはなんとなく分かっていた。
彼女の護霊服は、もはや二度と元に戻れないことを。
「ちゃんと擬態できたわね。そのうち潜入任務もあるだろうから、
自分ひとりでも擬態出来るように」
そう語る清見を、灯が睨みつける。
「何をするつもりだ」
「体育館でショーを行うの。正義の使者であるあなたの目の前でね。
人質の生徒達は一人ずつ私に犯され、最後まであなたに助けを求めながら、
精気を吸い尽くされるの。面白いでしょ?」
淡々と綴られる清見の言葉。
そのおぞましい内容は、灯を震え上がらせるには十分過ぎた。
「ちょっと待って、一般人には関係ないだろ!」
「約束を破ったのはあなたのほうでしょ? だから、これは罰なの。
あなたは一生、このことを後悔するように」
「やるなら、オレを好きにすればいい! だが、彼らだけは助けてやってくれ!」
「ふーん」
清見は腕を組み、無表情のまま思案に耽る。
「焼くなり煮るなり、好きにしろ。だが関係の無い人達は解放してやれ!」
「そこまで言うのなら、彼らのために犠牲になる覚悟はあるの?」
「ああ、当然だ」
「その言葉、信じていいかしら」
「女に二言は無い!」
潔く言い切る灯。
そのどこまでもまっすぐな瞳に、清見の体は人知れずに火照った。
■
「彼女はまぎれも無く五行戦隊の一員です。そして残念なことに、
皆さんが置かれている現状は、全て彼女に責任があります」
一体どういうことだ、と聞き入る生徒達。
その疑念を挟んだ眼差しを楽しむように、清見はゆっくりとした口調で続ける。
「私達妖魔の仲間は五行戦隊である彼女の手によって、多くの命が殺戮されました。
だがつい先日、私達は彼女がこの学校の生徒だということを突き止めたのです」
「この学校の生徒」という言葉に、生徒達は一様に驚きの色を浮かべる。
「彼女はこの学校を利用し、隠れみのにしました。皆さんと同じ、
か弱い生徒という身分に扮して。皆さんを巻き込んだことは不本意ですが、
我々がこの学校を襲ったのは仕方ないことだったのです」
なんて白々しい。
灯はそう思いながらも、ぐっとこらえた。
143 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(9/19) sage 2015/01/03(土) 17:54:47.02 ID:5PW9na0t
「彼女を捕らえた今、本来なら利用価値の無い皆さんは、
この場で殺してもかまいませんでした。しかし、私達もそこまで悪人ではありません」
清見はそう言うと、生徒達一人一人の顔を眺める。
その瞳に宿る暗い虹彩に見つめられた者は、例外なく心をドギマギさせる。
「そこで彼女への処罰も兼ね、これから皆さんに彼女を犯してもらいます。
彼女の体に精液を出した者だけ、解放してさしあげます。
我が身で皆さんを助けられるなら、正義の味方さんもさぞ本望でしょう」
「くっ……」
灯は歯ぎしりをした。
しーんとした空気の重さが体にのし掛かる。
彼女を犯した者だけ、見逃してやる。
それが清見が話した解放の条件だった。
女の子にとってあまりにも残酷な話だが、灯には選択肢など無かった。
力が尽きた今、もはや自分にできることは皆無である。
自分以外の誰かが傷つくのは、もう見たくないのだ。
(先輩……)
灯はこっそり群衆の中にいる一人の男子を見た。
まわりよりも頭が一つ分、身長の高い生徒。
ここに来た時からずっと気に掛けていた、三年生の沖田先輩だ。
最初に見た時、とりあえず怪我が無かったことにホッとした。
だが今、淡くて甘い感情と絶望的な悲しさが心を占める。
妖眼蟲に純潔を奪われた時から、すでに一切の望みは捨てた。
こんな穢れた体で先輩の命が守れるのなら、喜んで犠牲になる。
■
妖眼獣に下半身を裸にされ、体育館の跳び箱に押し付けられる灯。
下着を脱がされた時、あちこちから突き刺さる視線が痛い。
灯は思わず顔を台のほうへ向け、生徒達と視線を合わせないようにした。
背中から感じる気配が火あぶりの刑のようだ。
(みんなが……こっちを見ている)
心がドキドキして鳴り止まない。
だがほんの少し、違う気持ちもあった。
このような大勢の男子に注目されるのは初体験だった。
言いようの無い刺激が体を震わせる。
それが羞恥だけではないことを、本人はまだ気付いていない。
妖眼獣が一人の生徒を前へ連れ出す。
太り気味の体は恐怖に震え、どうしていいか分からず視線を左右に泳がせる。
清見はその生徒に近寄ると、彼の頬を撫でながら、
その耳元で脳髄をとろかすような低い声で囁く。
「ほら、慌てないで。彼女のいやらしいところ見ながら、ズボンを脱ぎなさい。
それとも、この子達の体の一部になりたいかしら」
シュルシュルと異声を立て、アメーバのように触手を伸ばす妖眼獣。
溶け出る粘液に目玉が浮かび、男の蒼白とした顔色を映す。
生徒は震える手つきでベルトをはずし、股間の一物を剥き出した。
一筋の匂いが背後から伝わり、灯の鼻をくすぐる。
144 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(10/19) sage 2015/01/03(土) 17:55:58.61 ID:5PW9na0t
(これが……男の匂い?)
灯は自分の顔面温度が急上昇しているのを感じた。
処女こそ失ったものの、一般人と性交したことはまだ無いのだ。
だがまるで本能のように、これが人間のオスの性臭だと分かった。
思わず後ろをチラ見する灯に、清見が耳元を舐めるように小言をはさむ。
(ちなみにこれが童貞の匂い。よく覚えて)
(どう……てい?)
(ほら、彼のあそこが萎えているでしょ? なんとかしてあげなさい)
(なんとかって、何をすればいいんだよ!)
(誘惑して、その気にさせるのよ)
不意に、清見は灯の胸に手を伸ばす。
「きゃっ!」
灯は思わず小さな悲鳴を漏らした。
体は熟れきった果実のように、少し刺激を加えるだけでも果汁が溢れ出るようだ。
ずっと前から押さえていた淫欲が背筋をのぼって、ゾクゾクと頭を痺れさせる。
「あ、あの……本当に、私のことは、大丈夫です……だから、気にしないで……下さい」
灯はたどたどしく言葉を並べながら、跳び箱台に上半身を預けて臀部を向けた。
誘惑なんてどうすればいいか、分かるはずが無い。
だが度重なる性行為に、体のほうは先に慣れていた。
外気に晒された秘所は、キラキラと愛液が濡れる。
そこから発するメスの香りは、室内の妖気と混ざり合い、
淫らな芳香となって生徒全員を虜にする。
とりわけ間近にいた生徒は、すぐにも荒々しい息遣いで股間の一物を勃起させた。
彼は遠慮がちながら、両手で灯の太ももを掴んだ。
「……っ!」
灯は悲鳴を上げたい気持を必死に抑えて、台の上に肘をつき、じっと身構えた。
そのぎこちない様子を、清見はどこか微笑ましそうに見守る。
妖眼蟲にとって、人間の精液は食糧である。
その匂いを敏感に嗅げるということは、灯の寄生化が進んだ証拠。
本人はまだ気付いていないが、その体から発される淫気もまた、
より多くの精液を搾取するための妖眼蟲の能力である。
「じゃ、じゃあ……いくよ」
肥えた生徒はボソボソと呟き、股間の一物を割れ目に向けた。
灯は思わず体をこわばらせる。
肉棒がゆっくり近付いて、熱気が肌に伝わる。
「ッ――!?」
異物が膣内に入り込んできた瞬間、灯はたまらず息を吐いた。
両目をカッと見開き、台を掴む手に力が入る。
痛み、というほどではなかった。
だが焼き付けるような感触が、体幹の底から立ち上がる。
(先輩だけには、こんなの……見られたくなかったのに)
覚悟を決めたつもりでも、絶望感はそう簡単に拭いきれない。
憧れの人が今の自分を見て、どう思っているのか。
その現実から少しでも逃げようと、灯は必死に顔を伏せる。
男子は何度か突くうちに慣れ始めたのか、ピストンの速度を徐々に上げた。
重々しい吐息が灯の背中に当たる。
生徒は更に後ろから灯の胸を掴み、興奮したようにまさぐり始めた。
145 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(11/19) sage 2015/01/03(土) 17:58:48.09 ID:5PW9na0t
(ちょ、ちょっと……?)
心の準備を越えた行為に、灯は当惑する。
振り返らずとも、男の欲望がどんどん加熱しているのが分かる。
外界からの愛撫に刺激され、服裏の触手がいやらしさを増して蠢き始めた。
(うぅ……こんな時に、楽しんでる場合か!!)
灯はただ声を噛み殺して、一刻も速く終わって欲しいと願った。
だが彼女自身も気付かないことに、膣肉が生徒の陰茎を淫靡に絡めていた。
妖眼蟲に寄生された以来、灯の肉体は常に精液を搾り取るのに最適化されている。
ほどよく濡れそぼった蜜壷は、男性器と隙間無く密着し、まるで別意思を持つように蠢く。
オナニーしか知らない高校男子にとって、それはもはや未知の領域だった。
「うおっ……おおおお――っ!」
「いっ……!?」
灯はびっくりした。
男子生徒は唸り声とともに、灯の体を強く抱き締め、腰をずどんと突き上げた。
瞬時に、一筋の熱波が膣内に叩き込まれる。
「ちゃんと射精できたね。もういいよ。はい、次の人」
「えっ?」
清見のあっさりとした宣言に、灯は思わず声が出た。
膣内からしなびれた一物が引き抜かれ、心までポッカリと穴が開いた気分だ。
「どうしたの?」
「い、いや……」
清見の追及から逃げようと、灯は慌てて顔を逸らす。
生徒との性交は思ったより苦痛が少なかった。
それどころか、物足りない感さえがあった。
妖眼蟲にされた時は、無理やり何度もイかされ、
一切の余裕が無いまま心の隅々まで屈服させられた。
それと比べれば、生徒の行為は暴風雨の後の小雨のように感じる。
「もしかして、もっと続いてほしかった?」
「そ、そんなわけ無いでしょ!」
すかさず否定した灯だが、心がドクンドクン鼓動する。
妖眼蟲の触手に蹂躙される記憶が蘇る中、次の生徒が前へ押し出された。
すでに全裸になった彼の下半身からは、一人目の生徒と同種の匂いが鼻をつく。
■
(一体……どうなってる?)
数人ほど生徒から精液を浴びた灯。
だがそこには充足感なく、むしろ焦燥感ばかりが膨らみ上がった。
精液は確かに芳醇なものだった。
青臭い匂いが洗い落とせないほど体に滲みこむ瞬間は、堕落するような高揚感をもたらす。
でも、体の火照りは一向に収まらないのだ。
中途半端な刺激ばかり続いて、不完全燃焼を繰り返す。
この心情は清見にだけ悟られまいと、灯は懸命に自制をした。
そのため、まわりの雰囲気が少しずつ変化していることに、彼女は察知できなかった。
146 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(12/19) sage 2015/01/03(土) 18:01:51.68 ID:5PW9na0t
「ひゃっ!」
新たに現れた生徒は、下品な笑みを掲げながら灯の腰を掴み、下腹に肉棒を宛がった。
(さっきまでと違う匂い……?)
不安を覚えた灯は、相手の様子を振り返った。
髪を派手に染め、首元にアクセサリーを下げた男。
いかにも柄悪そうな目つきで自分を見下ろしていた。
男は無遠慮に肩を掴むと、勃起した一物をいきなり奥深くまで突き刺す。
「あっんん!」
突如の出来事だった。
灯は唇を強く引き締め、体を弾くように浮かせてしまう。
だが男は灯が逃げられないように頭を鷲掴み、台の上へ粗暴に押さえつける。
さらにもう片方の手で灯の片腕を引き上げ、慣れた動きで腰を前後に揺らす。
熱病におかされたように、灯の体から力が抜けていく。
「けけっ、こりゃたまんねえぜ。
ずっと指をくわえて待ってたんだから、激しくいかせてもらうぜ」
「ちょっと……やめてよ!」
「俺達を助けたいってんだろ? ほら、チューしような」
「むぅ――っ!?」
男が灯の顎を強引に向けると、そのまま唇を重ねた。
灯の頭の中が真っ白になる。
大勢の人達の前で、それも憧れの人が見ている中、知らない男とキスしてしまった。
驚きが満ちる瞳に、相手の軽薄な風貌がより間近で映る。
灯が最も嫌いな、チャラチャラしたタイプの男だった。
いつもの状態なら、ここで顔面をグーで殴っていただろう。
だが今の彼女はただされるがまま唇を押し広げられ、相手に舌をしゃぶられた。
体はチョコレートのように甘くとろけ、相手に委ねてしまう。
溢れた唾液は下へ滴り、太ももまで垂れ落ちる。
(なんで……体に力が入らないんだ!)
こんな不良の男にいいようされていると思うと、
どうしようもない悔しさが込み上がる。
長い接吻から解放された少女。
目つきはトロンとなって、色っぽい息を小さく吐く。
今まで灯を犯した生徒達は、なぜその行為を思いつかなかったのかと悔しがる。
ピンク色の空気の中、ぼんやりと浮かび上がる女体の輪郭。
上半身の着衣が乱れ、呼吸に合わせて起伏する胸はいやらしく汗ばむ。
その無防備な雰囲気は、思春期の少年達にとって網膜を焼くような絶景だった。
徐々に生徒達は灯との距離を縮め、いつしか清見の指図が無くとも、
彼女のまわりを群がるようになった。
(何よ……みんなを助けるために、こんなことしているのに……)
意識が朦朧とする中、灯の胸に理不尽な気持ちが溜め始める。
どこを見ても、欲情にぎらついた視線が自分を見つめている。
少し前に乱暴された少女にとって、それは酷く嫌悪感を催すものだった。
147 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(13/19) sage 2015/01/03(土) 18:03:30.80 ID:5PW9na0t
「もう……やめてよ!」
再び顔を迫ろうとする相手を、灯は思いっきり突き放す。
だがその途端、不良の男は豹変する。
「なに言ってんだ! セックスしてくださいって頼んだのは、そっちだろうが!」
「違う、そんな意味で言ったんじゃ……!」
夢中になって拒絶している間、周囲から徐々に非難の声が上がった。
灯は最初、それは自分を擁護するための声だと思った。
だが途中から、必ずしもそうではないことに気付く。
「おい、いつまでやってんだ!」
「さっさと引っ込んでろよ、次が待ってんだから」
「こっちにもやらせろよ」
(えっ?)
思考停止する灯に一人の生徒がこっそり歩み寄り、一物を顔面に近づけた。
突然目の前に現れる醜悪な造形。
そこから漂ってくる淫臭はいやらしい感情を煽る。
だが相手の顔を見上げた時、灯は自分の目を疑った。
最初に自分を犯した、あの太り気味の生徒だった。
余裕が無かったあの頃と違い、今では好色な顔つきで自分を見下ろしていた。
「あなた……どうしてまだここにいるの? 解放されたはずじゃかったの?」
「へへっ。せっかくだから、もう一回しようぜ」
「ふざけないでよ! 何を考えているの? 速くここから逃げなさいよ!」
「ふざけてるのはどっちだ!」
思いがけない怒号に、灯は愕然と身をすくめる。
生徒は鬱憤を晴らすかのように続けて吼えた。
「俺達がこんな目に遭ったのも、そもそもお前のせいだろうが!」
「ええ?」
全身に衝撃が走る。
清見もそんなことを言っていたが、灯にとってそれはただの戯言であった。
だがまわりを見ると、目の前の男だけで無く、
ほかの生徒達までが同意したような表情を浮かべる。
「そうだそうだ。誰のせいで、俺達までこんな目に巻き込まれたと思ってる」
「あんたがこの学校にいなかったら、
ここが襲われることが無かったってあの人も言ったじゃないか」
「化け物に負けてるくせに、気取ってんじゃねえよ」
「っ……!」
悔しさあまりに、灯は瞳を潤わせる。
実直な性格のせいで、言葉が喉の奥に突っ掛かってうまく出せない。
人知れず妖魔を退け、町の平和を守ってきた。
中には命懸けになった時もあった。
妖眼蟲との激戦に次ぐ激戦では、仲間を失い、処女さえ失った。
それでもこの学校へ戻ってきたのは、ここの人達を守りたい一心だった。
「みんな聞いてくれよ。コイツ、処女じゃないんだぜ?」
太り気味の男子は灯を指差して言った。
すぐさま周囲が反応する。
「マジかよ?」
「馬鹿野郎、こんなエロい女が処女のはず無いだろ。
今まで気持ち良さそうにセックスしてるのを見てなかったのかよ」
「まさかと思うが、初相手はあの目玉の化け物連中じゃないだろな?」
148 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(14/19) sage 2015/01/03(土) 18:04:49.77 ID:5PW9na0t
「そ、それは……っ!」
口下手な灯は言葉を詰まらせる。
その反応はすぐさま肯定として捉えられた。
「おいおい、マジかよ」
「あの化け物達相手にも、こんな嬉しそうに腰を振ってたのかよ」
「ただのビッチじゃねえか」
「あの化け物ともやったんなら、こっちにもサービスしろよ!」
太り気味の生徒は、有無を言わせず灯の口にペニスを押し込んだ。
「むぐっ……!?」
異物が喉奥に当たる違和感に、思わず涙が滲み出る。
なまぬるい感触と息ができない苦しさが同時に襲い掛かる。
処女を妖魔に散らされたことは、彼女にとって人生最悪の出来事だった。
それがあろうことか、人々の軽蔑や罵声の対象となっている。
陰茎が口を占領しているため、灯は思うように呼吸できず、唾を飲み続けるほかなかった。
まだ灯に触れてない生徒達は、次々と不満の声をあげる。
「浦田のやつ、でしゃばってんじゃねえよ!」
「お前はさっきもやっただろ、ズルイぞ!」
ある生徒は灯の背中を持ち上げ、彼女の肛門に肉棒を突き立てた。
それ見たほかの男子も、我先に陰茎を少女の手や肌にこすりつける。
「ぐわあ……も、もう……だめだ!」
膣内に挿入していた不良男子は腰を強く沈ませ、精液を奥深くに吐き出す。
今までの青臭い精液と違い、女性を知った味が灯の中を満たす。
射精した生徒が腰を抜けると、後ろの生徒にさっさと押しのけられる。
「ダッセーぞ。いつも女とヤッてるとか自慢してるくせに、結局浦田と同じ早漏じゃねえか」
「ちげぇよ、この女がマジやばいって」
「うおお……!」
新たに灯の膣内に挿入した生徒は、いきなり甲高い声を発した。
不良仲間なのか、彼の肉棒も同じく熟れたような濃い味だった。
だが今の灯には気にしていられる余裕など既に無い。
前後両穴から肉棒を挿入され、口までも性器で塞がれた灯。
欲望にまみれた男達は、ただひたすら彼女に精液を浴びせる。
まわりの淫気に馴染んだのか、
彼らの顔から怯えの色が消え、堂々と下品な言動を取り始めた。
男性器が一突き一突きする度に、黒い欲望が灯の体内へ流れ込む。
他人への思いやりの欠片もなく、
鬱憤と八つ当たり、そして己の欲を満たすだけのドス黒い感情。
その感情に触れただけで、心の闇が激発される。
口内の一物が膨張した次の瞬間、おびただしい量の精液が解き放たれた。
濁液が一気に喉まで押し寄せて、食道まで溢れかえる。
「ケホッ、ケホッ……」
口から陰茎を引き抜かれると、灯は慌てて息継ぎをした。
吐き出される息までが精臭を帯びるようになる。
自分の五臓六腑までが、精液に漬かってしまったじゃないかと錯覚する。
「なにこいつ、涙流してるぜ」
「そんなに気持ち良かったのか?」
生徒に嘲笑されてから、灯は初めて自分の頬をつたうものに気付く。
やりきれない気持ちが一気に込み上がる。
149 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(15/19) sage 2015/01/03(土) 18:06:37.54 ID:5PW9na0t
「違う……違う……」
「何が違うってんだ! こんなにもマンコを締め付けるクセに!」
「おら、さっきの鳴き声もう一度聞かせろよ」
「あああんっ!」
生徒達から胸や体を撫で回された灯は、自分の意思と無関係にゾクリと跳ねた。
擬態した触手服はモゾモゾ蠢き、宿主の快楽を極限まで引き上げる。
それに気付かない生徒達からしてみれば、灯は喜んで反応しているように見える。
寄生蟲によって改造された女体。
肌が精液を浴びれば浴びるほど、淫らな艶を帯びるようになる。
屈辱的な表情とのギャップがまた、雄の征服欲をたまらなく駆り立てる。
「おい、もっと大事に扱えよ。後ろが待ってんだから」
「こいつは正義の味方だろ? この程度で壊れるかよ」
「ハハ、そりゃそうだ」
下劣な哄笑の中、灯は自分の心がどんどん絶望に満ちていくのが分かる。
邪悪なエネルギーが飽和して、擬態したはずの服の表面に黒い線が浮かび始めた。
その亀裂が広がるに連れ、凄まじい快感が灯の全身を締め付ける。
「だめ、眼が……開いちゃうぅ! このままだと、本当に……化け物になっちゃうよ!」
「こいつ、なに言ってやがる」
「あの化け物どもとやり合ってるなら、お前だって十分化け物だろうが」
「「ハハハ!」」
(そんな……みんなにとって、化け物と同じ存在だった?)
チクリとした黒い痛みが灯の胸を刺す。
それが全身へと広がろうとした時。
灯を正面から責めていた男が、突然つき飛ばされた。
「いい加減にしろ」
威厳のこもった一喝に、周囲の嘲笑がピタッと収斂する。
群がっていた少年達は恐れをなしたかのように、そこから引き下がる。
灯の明るみが消えかけた瞳は再び光を取り戻し、喝を放った生徒を見つめる。
ほかの生徒よりも一回り大きい背丈。
引き締まった肉体は日焼けした肌とよく似合い、男児の魅力を引き立てる。
常に自信溢れる顔つきは女子の心を惹き付ける。
その鋭い目付きは今、灯を見つめていた。
(沖田……先輩)
憧れの人物だと気付いた途端、灯は慌ててうつむいた。
入学した時から、ずっと先輩のことが好きだった。
放課後の窓辺にいる時も、陸上部の練習の時も。
グランドでサッカーの練習をする先輩の姿を、こっそり探すのが楽しみだった。
このささやかな幸せは、五行戦隊の仲間にも打ち解けたことは無い。
先輩に多くのファンがいることは知っていた。
だから告白するどころか、言葉をかわしたことさえ無かった。
それがまさか、こんな理不尽な結末が待っていたとは。
先輩もきっと、ほかの人達のように自分を責めているだろう。
そう考えただけで、胸が苦しくなって、何もかも投げ捨てたい気持ちに追いやられる。
150 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(16/19) sage 2015/01/03(土) 18:08:17.68 ID:5PW9na0t
先輩の両手が自分を掴む。
体は一瞬こわばったが、すぐ柔らかくなっていく。
伝わって来る温もりが憧れの人のものだと思うと、驚きと幸せが込み上がって、
心を巣食っていた闇を浄化していく。
「おい、お前」
「ええっ?」
話しかけられ、まるで小動物のようにキョトンとなる灯。
いつも遠巻きでしか聞こえなかった声が、今は自分に向けられている。
心拍数が加速する。
「大丈夫か」
「は、はい……」
灯はそこで黙ろうとした、ふと思いついたように口を開く。
「あの……わ、私は大丈夫ですので、だからその……だ、だ……抱いてください」
最後は蚊のような消え入る声で言うと、灯の頭はヤカンのように沸騰した。
言い終わった直後、後悔の荒波がどっと押し寄せる。
(ちょっとドサクサにまぎれて、何言っているのよ!)
目の前に噴火口があったら、今すぐ飛び降りたかった。
だが年上の先輩の反応は、軽蔑でも拒絶でも無かった。
「そう。だったら遠慮しないぞ」
先輩はそう言うと、彼女の体を優しく抱き起こす。
その腕の力強さに、灯は夢心地になった。
(こんなに汚れ切った体を、優しくしてくれるなんて……)
まるで子ウサギのように体を小さく震わせる灯。
彼女のうつむいた顔が、ゆっくり持ち上げられる。
先輩の黒真珠のような双眸に見つめられ、頭が何も考えられなくなる。
「勿体無いじゃないか。こんなカワイイ子が」
(か、カワイイ……?)
顔がかあっと熱くなる。
地獄のような居心地が、一瞬にして天国になった。
体がふにゃっとなって、倒れていく背中を先輩の両手が支える。
そのまま、灯の体を撫で下ろす。
「ううんっ……あぁっ!」
自分のものかと疑うほど色っぽい嬌声だった。
相手が先輩だと考えただけで、今までと比べ物にならないほどの快感が灯を襲う。
手のひらの位置が下がるにつれ、灯の喘ぎ声は徐々に大きくなり、腰がくねり出す。
自制を解かれたことにより、淫乱に改造された体は本来の色欲を取り戻す。
愛撫されるがまま股を開いて、先輩の直立を受け入れる。
「はあああああっ……!」
灯は肺を締め付けるような声をあげた。
剛直な一物はまっすぐ芯を貫く。
分泌された淫液はほどよく膣璧をほぐし、男女の性愛を補助する。
快楽の火花が脳内をほとばしる
熱くて硬いモノが自分の奥深くまで満ちる。
そして一物が引いていくと、それを失う虚しさと寂しさが身をゾクリとさせる。
大きな両手が灯の胸を揉みほぐし、形を淫らに変えさせ、
挿入のサイクルをより過激にさせる。
151 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(17/19) sage 2015/01/03(土) 18:18:09.07 ID:5PW9na0t
(だめ……こんなの、気持ちよすぎるよ!)
灯は少しずつ喘ぎ声を響かせた。
先輩の動きは、今までどんな男よりも灯を陶酔させた。
まるでこの瞬間、自分がこの世界で一番幸せな女だと思わせるように。
体は自然と相手に寄りかかり、胸と胸を密着させる。
そして両腕は相手の首の後ろへ回し、ピストン運動と合わせるよう腰を躍らす。
「好き」という感情が至高の媚薬となって、荒廃していた灯の心身を癒す。
肌に浮かぶ汗珠は空気と混ざり合って、淫らな芳香を作り出す。
ほかの人に見られていることさえ忘れ、灯はただこの享楽に没頭して。
その「ほかの人」の中に、清見も含まれていた。
彼女は集団から離れた体育館の隅に立ち、一言も発さずに見届けていた。
だがその体からは、灯に負けないほど濃厚な淫気が漂っていた。
彼女はずっと自慰しているからだ。
自分の秘部をまさぐり、もう片方の手に下着を握り鼻に近づける。
その下着とは、灯が脱いだものを彼女がこっそり拾い上げたものである。
そこに滲み込む匂いを胸いっぱい吸い込みながら、清見は灯の痴態を観賞し続ける。
灯の幸せな表情。
灯の切なそうな吐息。
灯の相手に迎合した腰の動き。
それら全ては自分でもなく、五行戦隊の仲間でもなく、
まったく他人の男に向けられている。
そう意識しただけで、胸を焼き尽くさんばかりの黒い感情が沸き起こる。
清見がビクッと跳ねると、何度目か分からない絶頂を迎えた。
それでも親友の表情を見ただけで、芯がまたもムラムラと熱くなる。
自分に寄生している蟲が、心臓の鼓動に合わせて動悸しているのが分かる。
(そう、あなたも私と同じ気持ちなのね。でも、まだ本気でイッちゃだめよ。
最高のシーンはまだこれからだから)
清見は暗い薄笑みを浮かべ、イッたばかりの体を愛おしそう抱き締める。
彼女の触手服は粘体状に分裂して、宿主の抱擁を答えるように肌をねっとり愛撫する。
サディズムとマゾヒズムの快楽が折り重ねて、清見の心身を痺れさせる。
あれほど気丈に振舞った少女。
それが沖田と交わってから、淫乱な娼婦のように色気を散らすようになる。
沖田に恐れる生徒は、その不満の矛先を灯に向ける。
「見ろよアイツ。あんなヨガリ顔をしやがって」
「あれで本当に正義の味方なのかよ」
「化け物とセックスしまくった話、やっぱり本当じゃないか」
生徒達の間をくすぶる批判の念。
今までわずかにあった同情も、いつしか怒りに取って変えられた。
「おい沖田、いつまで独り占めするつもりだ!」
「いつも女とヤッてる奴が、こういう時くらい俺達に譲れよ」
ふと耳にした野次に、灯はまばたきをする。
二人の生徒が沖田先輩を押しのけようとし近付く。
自分の体から、暖かい手が離れたと感じた次の瞬間。
その生徒達の顔面に先輩の拳が命中する。
後方へ倒れた生徒は鼻骨を押さえてのたうつ。
152 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(18/19) sage 2015/01/03(土) 18:19:38.62 ID:5PW9na0t
「うるせぇ。黙ってろよ」
振り返る先輩の目付きは、灯には想像もつかないほど怖いものだった。
だが彼女の予想に反して、
まわりの生徒――さきほどの不良っぽい人達も含め、これ以上抗議しなかった。
怯える者。
へつらう者。
知らん振りをする者。
ただ異議を唱える者だけは、一人もいなかった。
だから、灯は自分の口から異議を唱えた。
「いつも女とヤッってるって……どういうこと?」
「どういうことって、普通分かるだろ」
一人の男子が代わりに答えると、左右の生徒と一緒にニヤニヤ笑い出した。
「沖田さんの女喰いは、うちの部活じゃ有名だぜ?」
「ツラが良いからな。知らない女はホイホイやってくる」
「新人マネが入る時期なんか、おかげで盛り上がったんだぜ」
灯は茫然とした。
「そ、そんなの嘘だ。先輩は……この方はとても真面目な人なんだ。
そんなふしだらなこと、するはずがないでしょ」
自分が貶された時以上に、感情を昂ぶる灯。
だが返されたのは、生徒数人の呵々大笑だった。
「な、何がおかしい!」
「聞いたか、沖田さん。あんたのことが真面目だってよ」
「沖田さんのところに来る女はみんな言うよな、チクショー。俺もイケメンに生まれていたら」
「ごちゃごちゃ抜かんじゃねえ」
沖田の口から響くドスのきいた声。
笑っていたサッカー部員はきまり悪そうに黙る。
彼らの顔面を、沖田の鷹のような目線が睨みつける。
「人聞きの悪いこと言うなよ。お前らだって、散々良い思いをしただろうが」
灯の心が冷たくなっていく。
沖田先輩は、弁解しようという意志はまるで感じられなかった。
むしろどこか得意げに腰のピストンを続ける姿は、
灯にとって徐々に不気味な存在に変わっていく。
しかし、それでも灯は拒むように言葉を発した。
「う、嘘よ……そんな酷いこと、できるわけが……
第一、そういう女の子達が黙るわけないでしょ?」
「沖田さんの家は大財閥の社長だぜ?」
「そりゃ体をいっぱい弄ばれたあげく、写真やビデオまで撮られて脅されたら、
誰も言えねえよな」
「頭の良さも俺達とは全然違うよ」
153 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(19/19) sage 2015/01/03(土) 18:21:32.47 ID:5PW9na0t
(えっ、えっ?)
まわりの生徒達が何を言っているのか、灯はまったく理解できない。
そんな自己欺瞞しようとする矢先に、先輩自ら灯の希望を打ち砕かく。
「あいつらだって、俺とセックスしたくて来たわけだ。
そいつらの願いを叶えたんだから、感謝されたれくらいだぜ」
灯は沖田先輩の嘲笑から、目を離すことができなかった。
耳側で、別人の声が蘇る。
『ちなみにこれが童貞の匂い。よく覚えて』
初めて犯された時、確かに清見はそう言った。
沖田先輩の匂いは、その童貞とは違うものだった。
それもあの不良達よりもずっと熟れて、沢山の女の子の味を知り尽くしたようなものだった
自分を触る手つきも、一物を出し入れするテクニックも。
全てがほかの男子より上手かった。
清見の声がまだまだ終わらない。
『友人として忠告するわ。あんなクズ、あなたにはふさわしくない』
『彼のことを諦めないと、あなたはいずれ後悔する』
灯はハッとなって、青い少女を探した。
待ちわびたように壁に寄りかかる清見の姿。
アクアマリンのような綺麗な瞳。
その目は人の子をあざ笑う悪魔のようにも、子供を慈しむ聖母のようにも見えた。
放心状態の灯の耳に、生徒達の雑談が右から左へと流れる。
「そういえば最近、生徒会の連中が沖田さんを睨んでるって話だぜ」
「ああ、俺も知ってる。なんでも陸上部の新星だって言うじゃない。
部活の時もちらちらガンをくれやがって」
「あの勝気そうだけど、可愛い子だろ?」
「でも今期の生徒会メンバーはカワイイって評判だけど、相当のやり手らしいぜ。
そんな連中に目をつけられたら……」
その時、沖田は腰を強く突き進めた。
灯の悲鳴が生徒達の会話を遮断する。
「馬鹿かおめえら。あの子は、俺に惚れてんだよ」
沖田は灯を突き上げながら、ニヤリといびつな笑みをこぼす。
「生徒会が何だって言うんだ。女なんざどいつも同じだ。
うまく引っ掛けたら、そいつで芋づる式に全員喰ってやるさ」
下品な野望に満ちる言葉。
それに周囲から歓声と野次が沸く。
ただ一人だけ、灯の顔色が燃え尽きる寸前の蝋燭のように暗くなった。
彼女は小さな声で沖田に尋ねる。
「……お願い、一つだけ答えて」
「あん?」
「もしその女の子とエッチできたら、その後どうするつもりだった?」
「決まってるだろうが。ヤるだけヤッて、飽きた時に捨てる」
少女はそれっきり、押し黙った。
154 五行戦隊 ◆vPNY1/7866 sage 2015/01/03(土) 18:23:44.92 ID:5PW9na0t
以上、第九話でした。
連投寄生のため毎度投下時間が延びてすみません。
第十話は明日投下の予定。
あけましておめでとうございます。
今回の投下は第九話・第十話の二話分です。
分量が多くなりますが、こたつ蜜柑を食べるくらいな気持ちでまったりどうぞ。
<あらすじ>
死闘の末、妖気に支配された親友を打ち倒した灯(あかり)。
だが彼女の身も邪眼の力によって着実に侵されていた。
最後の力を振り絞って、寄生の大樹と対峙する。
133 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(1/19) sage 2015/01/03(土) 17:39:18.51 ID:5PW9na0t
――絶対許さない。
精液プールに聳え立つ巨大樹を、灯は睨みつけた。
心の怒りが妖力へと変換される。
服の表面は火焔をまとったようにたえず燃え揺らぎ、溢れんばかりの妖気を漂わせる。
彼女の身は今、敵のシンボルである触手服に包まれていた。
触手と触手を繋ぎ合わせたような赤黒い服装。
その隙間から触手の突起がはみ出て、内側の卑猥さを想像させる。
肌にぬめりと貼り付く触肉は、体の凹凸を隠すこと無く浮かばせ、
健全のボディーを官能的に見せ付ける。
裏側に分布する無数の絨毛は常に媚液を分泌し、
宿主がいつでも繁殖活動できるよう発情状態を維持する。
服表面の寄生眼から、不気味な赤い眼光が放たれる。
この力を頼るのは危険であることを、灯は分かっている。
だが、心の怒りはすでに爆発のラインを越えていた。
彼女は仲間思いの女の子である。
助け出した仲間の姿は、一目で分かるほど無残な陵辱を受けていた。
以前灯を助けていなければ、彼女はこんな目に遭わなかっただろう。
そう思うだけで悔しさと同時に、とてつもない怒りと闇の力が体中を溢れる。
これも寄生蟲の影響だろうか。
(操ってるつもりだろうが……お前達なんかに支配されるものか)
灯は自分の中の正義を確認しながら、改めて意志を定めた。
憎しみはあっても、それは悪への憎しみであり、目の前の妖眼樹への憎しみである。
どんなことがあろうと、彼女は妖魔の手先になるつもりは無い。
灯の近くで、一人の少女がゆっくりと起き上がった。
ついさきほど、寄生樹から助けた翠である。
灯と同様、彼女もまた触手スーツを着ていた。
普段はおっとりしたお姉さん風だが、五行戦隊の中で誰よりも命を愛する強い人間だ。
それが今、露出度の大きい服飾が優しいイメージをかき消し、
一挙手一投足に色気をふりまく妖婦に仕立てる。
無理やり絶頂寸前の状態にされ、虚ろな瞳で呼吸を繰り返す翠。
これほどの淫欲に漬かっても、彼女はまだ自我をギリギリのところで保っていた。
それがどれほど凄いことか、同じく寄生された灯は改めて痛感する。
「灯……ちゃん、ありがとう……来てくれて」
おぼつかない足取りで立ち、曖昧な吐息を漏らす翠。
極限まで登り詰めた状態のせいか、服のいくつかの部位は触手にほつれて、
宿主をイかそうと愛撫し続ける。
だが貞操帯に絶頂をコントロールされているため、その行為は翠を調教する手助けにしかならない。
立っていられることすら奇跡のようなはずだ。
そんな彼女が寄生樹のコアとして利用され、今までずっと苛酷な仕打ちを受けていると思うと、
灯は怒髪天を衝くような心境になる。
「下がってろ、翠。こいつはオレが倒す!」
「待って、灯ちゃん!」
ビックリするほど大きな声。
灯はきょとんとなって、彼女に視線を移す。
翠はうつむいた。
134 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(2/19) sage 2015/01/03(土) 17:41:07.78 ID:5PW9na0t
「灯ちゃん……私は、平気だから。だから、あなたもこれ以上、無理する必要はないわ」
「心配するな。このお化けツリーを燃やした後、清見のやつを連れてさっさと脱出するぞ」
「……どうしても、この樹を倒すのですか」
「翠を酷い目に合わせた奴を許しておけるか!」
翠は触手服の裾を、ぎゅっと握り締めた。
次の瞬間、灯は自分の耳を疑った。
「灯……ちゃん、この子を……見逃してほしいの」
「えっ?」
ふと、灯は気付いた。
翠は最初から寄生樹を庇うようにして立っていたのだ。
立ちはだかるその体は、自分の向けた両手を寄生樹から遮る。
何十回何百回も陵辱されて、今も弱々しく震える翠。
だが、そこには強い意志力があった。
「言っている意味分かってるのか? 妖眼蟲は我々の敵だぞ!
お前や、そしてどれだけの人間が傷ついたと思ってる!」
「それでも、お願い……この子だけは見逃してほしいの!」
灯は戸惑った。
唇をかみ締める翠。
その必死な表情は、確かに灯がよく知っているものだった。
だが翠なら、人間を傷つくことを決して許さないはずだ。
――やはり寄生蟲の影響だろうか。
鈴華や清見と同様、思考を歪められているのか。
どちらにせよ、こっちはもはや限界である。
これ以上言葉をかわす余裕は無い。
敵愾心があったから寄生服の快楽を抑えるのがやっとで、ここで力を緩めば、
自にもこの場で自慰しまいそうだ。
この巨大樹を倒すのは今しかない。
「……ごめん、翠」
灯はそう言って、妖気を溜めた両腕をゆっくり降ろした。
だが翠が気を抜けた瞬間、灯は両手を空中で重ね、全ての妖力を放出した。
黒炎のつぶては砲弾のごとく発射される。
その行き先は、巨大樹の幹にある目玉だった。
目玉さえ破壊できれば、妖眼蟲は絶命する。
この距離なら、いかに翠が術を駆使しても間に合わない。
だが、灯の予想はそこで途切れる。
翠は空中へ飛び上がり、なんと自らの体で攻撃を受け止めた。
この最後の一撃は灯が余力を残さず放ったもの。
巨大樹を貫くことを想定したもので、衰弱している今の翠がまともに受けられるはずが無い。
高温の塊に恐れることもなく、翠は諦観した贖罪者のように目をつむった。
次の瞬間、室内に翠の悲鳴が響き渡る。
灯は呆然と目の前の光景を見つめた。
翠は無傷だった。
だが灯を驚かせたのは別の事柄だった。
火炎弾が命中する直前、なんと寄生樹の妖眼は自ら飛び出し、体を伸ばして翠を守ったのだ。
瞬時に炎が飲み込む。
136 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(3/19) sage 2015/01/03(土) 17:43:03.91 ID:5PW9na0t
その妖眼蟲を抱き締め、煙から飛び出る翠。
高熱をものともせずに、異形を自分の胸に抱き締める。
その悲しみの表情を一目見ただけで、内臓をバラバラに裂かれる痛みを覚える。
しかし彼女の望みを逆らって、妖眼蟲の粘液が溶け出て行く。
次の瞬間、灯はおぞましい戦慄を覚えた。
翠が射抜くように灯を睨んだ。
その視線と触れた途端、息の仕方を忘れてしまうほど胸が重くなる。
空中に花びらが狂ったように散り、毒々しい腐葉が床に積もる。
妖眼蟲を受け止めた時、翠は世界の終焉を迎えたように絶望した。
だが今の彼女から、この世界を滅亡してもいとわないほどの強い憎しみを感じる。
その悪意は彼女の色気と綺麗に合わさり、邪悪な魅力を十二分引き出す。
突然、全ての葉っぱが床から一斉に逆立った。
花びらと共に、空中の一箇所へ吸い込まれると、そこに巨大な木龍が現れた。
龍の躯体を構成する枝葉は入り乱れるように舞い踊る。
時折溢れた葉が床に落ちると、その一帯が腐蝕して黒ずんでいく。
灯の想像もつかないほど、強烈な邪気が溢れる。
翠は腕を振り上げた。
プールの水面を揺らすほど轟きながら、毒龍の長躯は空を舞いながら飛び越え、
その逆鱗が灯に直撃する。
何の抵抗もできず打ち上げられる灯。
宿主からの妖力補給が無い触手服は、いとも簡単に引き裂かれ、
ダメージを灯の体に直通させてしまった。
がはっ、と黒い血を吐く灯。
精根が尽き果てた体はそのまま地面に墜落する。
触手服の正面は裏返った部分まで暗緑色に蝕まれた。
高熱、頭痛、痙攣、悪寒、嘔吐感、呼吸困難など、ありとあらゆる厄病の苦しみが降りかかる。
だがそんな体の痛みよりも、灯は心のほうがより痛かった。
翠は本気で自分を攻撃した。
それと同じくらい衝撃的だったのは、妖眼蟲が翠を庇ったという事実。
妖魔とは、人間に害をなす存在。
それだけを信じ、灯は今まで大勢の妖魔と戦い続けてきた。
特に人間に寄生して盾にするやり方は、灯にとって最も許しがたい卑怯な行為である。
そんな妖眼蟲が自分を犠牲してまで、翠を守ったのだ。
茫然自失する灯。
その近くのプールサイドに、密かに一つの水晶珠が漂着した。
岸辺と接触すると水晶珠がひび割れ、中から濃紺の液体が漏れ出た。
甘い匂いの青液が十分に広がった後、そこから裸身の美少女が浮上する。
透き通るような白肌の上を、粘液がぬらりと垂れ滴る。
光に照らされると、儚さの中に官能的な輝きが映し出される。
その人影を確認した灯は背筋を凍らせた。
青い髪をした少女は長き眠りから醒めたように、
目を半開きにして、気だるそうに立ち上がる。
灯は急いで清見が倒れているはずの場所を振り向く。
つい数刻前、壁に叩きつけてやった清見の躯体は、シャーベットのように溶けていた。
裸の少女はそこへ移動する。
粘液はその足元を渦巻くようにして昇り、青のスーツとなって包み込んだ。
少女は腕を伸ばし、触肉の締め付け具合を確かめる。
138 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(4/19) sage 2015/01/03(土) 17:44:35.97 ID:5PW9na0t
「どういう、ことだ!?」
「妖力確認……九割が欠如。戦闘への影響は極めて甚大。やるわね、灯。
分身相手とはいえ、ここまで私に損傷を与えたとは」
驚く灯に、彼女はぶっきらぼうな口調で答えた。
清見は滅多に人を褒めない。
その彼女がそう言っているということは、心底から灯を評価しているのだろう。
だが灯にとって、今は評価などどうでも良かった。
「分身……だと?」
「ええ。妖眼蟲の能力を、私の術で拡張したもの。理論上、
妖眼蟲の細胞はどんな生物をも構成できるはず。私のクローンができても、問題無いでしょ?」
「だけど、力までは……!」
「もちろん、妖力もほとんど預けたわ。戦ってて気付かなかったでしょ?」
淡々と説明する清見。
だが親交の深い灯なら、彼女の瞳が少しだけきらめいていることが分かる。
理科室の実験に成功した子供のように。
「ただ最適化にまだまだ改善の余地があるわね。妖力を与えても、
その出力が本人より低いではね。格下の敵以外ではリスクが大き過ぎる。
幸い灯は何も考えずに全力を出し尽くすタイプだから、役に立ったけど」
「てめ……っ!」
灯は今にも飛び掛ろうとしたが、体はびくとも動かなかった。
そんな彼女に目もくれず、清見は泣きじゃくる翠のそばへ歩む。
そして、妖眼蟲の残骸に手をかざす。
「核がまだ辛うじて生きているのね」
清見のぼそっとした一言。
まるで絶望の淵から一筋の光を見つけたかのごとく、翠はハッと泣き止む。
「だいぶダメージを負っているが、まだ生命力がある。
時間はかかるが、私の力なら再生できるはずだ」
そう言って離れようとする清見を、翠は両手で引き止める。
「お願い、この子を……この子を助けて!」
「そんなことして、私になんのメリットがある」
「えっ?」
まるで予想外の返事に、翠は言葉を詰まらせる。
だが清見の冷淡さ決して変わらない。
「百眼王に逆らい、私達と敵対する道を選んだあなた。
そんな敵の願いを聞き入れる理由は、どこにあるというの」
「うっ……」
「それどころか、あなたが五行戦隊にこだわるから、
わざわざ寄生樹の中で映像を見せてあげたじゃない。あなたが五行戦隊として、
妖眼蟲を浄化するシーンを。何度も何度も、繰り返して」
「もう止めてっ!」
翠は両手で耳を押さえ、魂をつんざくような悲鳴を上げた。
139 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(5/19) sage 2015/01/03(土) 17:45:33.42 ID:5PW9na0t
「もうこれ以上私の手で、この子を殺させないで……お願いだから!」
気力が抜けたように泣き崩れる翠。
そんな彼女を清見が優しく抱き締める。
「これで分かったでしょ。あなたの居場所はもうこちら側しかないの。
あなたには、人間なんかに戻れないわ。血の一滴たりとも」
「……ええ、全てあなたの言う通りだわ。だから……この子だけは助けて!」
「いいわよ。百眼様は寛大なお方、裏切り者であっても見捨てない。
そのことをしっかりと心に刻みこみなさい。あなたの魂が、二度と離れられないように」
清見の一つの金魚鉢を取り出すと、その中に傷ついた蟲を置いた。
触手スーツの一部が溶け出し、青い透明液がガラスの容器を満たす。
培養液の中、粘体の蟲は微弱ながらも蠢き始めた。
その変化に気付いた翠は、救われたように表情を明るくさせる。
「さすがの自己治癒能力だわ。母親の能力を受け継いだことが幸いだったね」
「これで、この子が助かるんですね……!」
「いいえ、これだけじゃ足りない。翠、あなたが男から精液を搾取しなさい。
とびっきり淫欲を高めたものをね。母体のあなたが採取したものなら、拒絶反応も一番少ない」
「そんな……」
翠は少し躊躇したが、やがて「分かった」と小声で答えた。
清見は身を屈め、プールの白水に金魚鉢を沈めた。
「鈴華は職員室にいるはず。そこで貞操帯を解いてもらえ」
「うん……」
翠は金魚鉢の場所をしばらく見つめ、未練を引きずりながらその場を離れようとした。
一つの声がそれを阻止する。
「行くな……翠……ぃ!」
「灯、ちゃん……」
満身創痍の状態で、必死に腕を伸ばす灯。
翠は罪悪感に満ちた様子で目線を伏せる。
やがて、彼女は灯が倒れた場所にやってきた。
両手で薬草をすり潰し、そのまま灯の傷ついた体に塗りつける。
暗緑色の毒気に蝕まれた体は、次第に正常の色へと戻る。
「ごめんなさい、灯ちゃん」
「……!」
灯の心は沈んだ。
翠は申し訳無い表情をしていたが、その意志に揺らぎは感じられなかった。
彼女は何か言おうと唇を開いたが、途中からそれが溜息となった。
そのまま立ち上がって、出口のほうへ歩んだ。
ここで別れたら、きっともう彼女の心は取り戻せない。
そんな予感をしながら、灯は必死に指を伸ばした。
しかし、その指先が翠に届くことは無かった。
140 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(6/19) sage 2015/01/03(土) 17:47:04.91 ID:5PW9na0t
「灯、覚えておきなさい。今の翠を救えるのは五行戦隊の力ではなく、妖眼蟲の力よ」
「くっ……!」
清見の言葉に反論することなく、灯は無力に顔を伏せた。
そんなはずあるわけが無い。
あるわけが無いのに。
どうして翠は最後まで振り向いてくれなかったのか。
どうして自分がこんなにも動揺しているのだ。
何もかも分からない中、灯は低い声で尋ねた。
「それで、オレをどうするつもりだ」
「あなたが一番行きたがっていた場所へ連れてあげるわ」
清見の見下ろしたような冷たい視線。
そこには灯でさえ寒気を感じるほど、暗澹としたモノが潜めていた。
■
プール室のすぐ隣に、この学校の体育館があった。
普段健全な汗を流す場所は、今ではまるで異質の風景となった。
建物の内装は生物の内臓のように化し、大小様々な寄生眼が見開く。
床を踏みつけると柔らかく沈み、不気味な弾力が返ってくる。
天井からとろりと粘液が滴る。
生暖かい空気が渦まくこの場所に、二十人ほどの男子生徒が集められていた。
見るからにヘドを催すような空間。
しかし、生徒達は誰一人その場から逃げようとしない。
なぜなら、彼らの周囲には、それ以上に恐ろしい化け物が取り囲んでいるからだ。
人間よりも大きいサイズの、水の塊のような異形の群れ。
その肉体はスライムのように蠢きながら、
体中央の目玉で四方八方から生徒達を監視する。
危害を加えようとする気配は、とりあえず無かった。
だが少しでも近付こうとすると、化け物の肉塊は激しく波を打って触手を伸ばしてくる。
うねうね増殖する触手を突破するほど、少年達は勇敢ではなかった。
そんな彼らの前に、二人の美少女が現れた。
異形の群れは誰かに指図されたわけでもなく一本の道をあける。
そこから歩み出た青服の少女。
彼女が身にまとう気配は、化け物と同じ妖しいものだった。
体にピッタリ貼り付く触肉の布地。
表面には、化け物と同じ青い邪眼が刻み込まれる。
だが醜い化け物と大きく異なるのは、少女は一目で惚れるほど美しかった。
触手服の上からでも分かる、腰のしなやかなくびれ。
胸の谷間は衆目をはばかることなく晒され、白肌は初雪のように一寸の穢れも無い。
知性に富んだ端正な顔立ち。
その流し目で見られるだけで、男なら誰もが心を奪われるような気持ちが芽生える。
氷のような冷たさがまた、見る者の被虐心をそそる。
清廉な美の奥に隠れた、性欲を煽動する媚態。
本来背反し合うはずの二つの要素が、彼女の身で奇跡的に並立していた。
141 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(7/19) sage 2015/01/03(土) 17:48:19.73 ID:5PW9na0t
その後ろに、もう一人の少女が異形に押され歩かされていた。
明るい赤色のコスチューム。
青い少女の淫靡さとは正反対の、目のさめるような勇ましいデザイン。
ただ、その両腕は後ろで触手に縛られていた。
彼女らの登場と同時に、妖眼の化け物は動きを止め、畏怖の目線を青の少女に捧げる。
「シュルシュル」という擦れ音がピタッと止み、あたりを不気味な静けさが包み込み。
青い少女は一歩前に出る。
「皆さん、大変お待たせしました。これから、ここにいる全員を解放しようと思います」
湧き水のような透き通った声。
その美貌とあいまって、少年達は彼女の言葉に耳を傾けた。
「ここを出る者に対し、私や私の部下達は、決して危害を加えません。
ただし、一つだけ条件があります」
青の少女は一息置いてから、静かに宣言する。
「ここにいる五行戦隊の娘を犯した人だけが、自由になれます」
「五行戦隊」「犯す」の単語が聞いた途端、生徒達はざわめいた。
赤服の少女が妖眼獣に前へ押し出される。
「この人が、五行戦隊だっていうの?」
「ほ、本物なのか?」
「じゃあ、あの噂はやっぱり……!」
この町には、妖魔から人々を守る正義の味方が存在する。
学校では、そんな嘘のような噂がずっと前から流布していた。
だが今、こうして異形の化け物に囲まれている以上、
少女をただのコスプレヤーと思う者は誰一人いなかった。
生徒達の遠慮気味な視線や嘆声に、赤コスチュームの少女――灯は、
ただ唇を強く噛み締めた。
五行戦隊に変身した時点で特殊な術式が発動し、
変身前の姿と同一人物に認識されることは無い。
妖魔から正体を隠すための措置だ。
だが正体がバレないとはいえ、五行戦隊として敗北の姿を晒していることに変わりは無い。
(ううっ……!)
灯の顔が真っ赤になっていた。
その理由は恥かしさだけでは無い。
一見、正常に戻った正義のバトルスーツ。
だがその実体は、数え切れないほどの絨毛を備え、
クチュクチュと小さな音を漏らす触手服だったのだ。
■
数刻前、体育館に来る途中のことだった。
「はい、おしまい」
清見はそう言って、灯の胸から手のひらを離す。
胸部にある妖眼――もともと変身アイテムの勾玉だったもの――が妖光を収めると、
灯の寄生スーツの目玉が次々と閉じた。
142 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(8/19) sage 2015/01/03(土) 17:52:42.16 ID:5PW9na0t
触手の境目が跡も無く縫合し、本来のバトルスーツに姿を変える。
正義を示す白地に、持ち主の熱き魂を象徴する赤色。
見た目上の変化は一つだけある。
霊力の源である勾玉が、妖眼としてそのまま見開いているのだ。
そして裸の肌と接する裏面では、柔突起が宿主を刺激し続ける。
灯にはなんとなく分かっていた。
彼女の護霊服は、もはや二度と元に戻れないことを。
「ちゃんと擬態できたわね。そのうち潜入任務もあるだろうから、
自分ひとりでも擬態出来るように」
そう語る清見を、灯が睨みつける。
「何をするつもりだ」
「体育館でショーを行うの。正義の使者であるあなたの目の前でね。
人質の生徒達は一人ずつ私に犯され、最後まであなたに助けを求めながら、
精気を吸い尽くされるの。面白いでしょ?」
淡々と綴られる清見の言葉。
そのおぞましい内容は、灯を震え上がらせるには十分過ぎた。
「ちょっと待って、一般人には関係ないだろ!」
「約束を破ったのはあなたのほうでしょ? だから、これは罰なの。
あなたは一生、このことを後悔するように」
「やるなら、オレを好きにすればいい! だが、彼らだけは助けてやってくれ!」
「ふーん」
清見は腕を組み、無表情のまま思案に耽る。
「焼くなり煮るなり、好きにしろ。だが関係の無い人達は解放してやれ!」
「そこまで言うのなら、彼らのために犠牲になる覚悟はあるの?」
「ああ、当然だ」
「その言葉、信じていいかしら」
「女に二言は無い!」
潔く言い切る灯。
そのどこまでもまっすぐな瞳に、清見の体は人知れずに火照った。
■
「彼女はまぎれも無く五行戦隊の一員です。そして残念なことに、
皆さんが置かれている現状は、全て彼女に責任があります」
一体どういうことだ、と聞き入る生徒達。
その疑念を挟んだ眼差しを楽しむように、清見はゆっくりとした口調で続ける。
「私達妖魔の仲間は五行戦隊である彼女の手によって、多くの命が殺戮されました。
だがつい先日、私達は彼女がこの学校の生徒だということを突き止めたのです」
「この学校の生徒」という言葉に、生徒達は一様に驚きの色を浮かべる。
「彼女はこの学校を利用し、隠れみのにしました。皆さんと同じ、
か弱い生徒という身分に扮して。皆さんを巻き込んだことは不本意ですが、
我々がこの学校を襲ったのは仕方ないことだったのです」
なんて白々しい。
灯はそう思いながらも、ぐっとこらえた。
143 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(9/19) sage 2015/01/03(土) 17:54:47.02 ID:5PW9na0t
「彼女を捕らえた今、本来なら利用価値の無い皆さんは、
この場で殺してもかまいませんでした。しかし、私達もそこまで悪人ではありません」
清見はそう言うと、生徒達一人一人の顔を眺める。
その瞳に宿る暗い虹彩に見つめられた者は、例外なく心をドギマギさせる。
「そこで彼女への処罰も兼ね、これから皆さんに彼女を犯してもらいます。
彼女の体に精液を出した者だけ、解放してさしあげます。
我が身で皆さんを助けられるなら、正義の味方さんもさぞ本望でしょう」
「くっ……」
灯は歯ぎしりをした。
しーんとした空気の重さが体にのし掛かる。
彼女を犯した者だけ、見逃してやる。
それが清見が話した解放の条件だった。
女の子にとってあまりにも残酷な話だが、灯には選択肢など無かった。
力が尽きた今、もはや自分にできることは皆無である。
自分以外の誰かが傷つくのは、もう見たくないのだ。
(先輩……)
灯はこっそり群衆の中にいる一人の男子を見た。
まわりよりも頭が一つ分、身長の高い生徒。
ここに来た時からずっと気に掛けていた、三年生の沖田先輩だ。
最初に見た時、とりあえず怪我が無かったことにホッとした。
だが今、淡くて甘い感情と絶望的な悲しさが心を占める。
妖眼蟲に純潔を奪われた時から、すでに一切の望みは捨てた。
こんな穢れた体で先輩の命が守れるのなら、喜んで犠牲になる。
■
妖眼獣に下半身を裸にされ、体育館の跳び箱に押し付けられる灯。
下着を脱がされた時、あちこちから突き刺さる視線が痛い。
灯は思わず顔を台のほうへ向け、生徒達と視線を合わせないようにした。
背中から感じる気配が火あぶりの刑のようだ。
(みんなが……こっちを見ている)
心がドキドキして鳴り止まない。
だがほんの少し、違う気持ちもあった。
このような大勢の男子に注目されるのは初体験だった。
言いようの無い刺激が体を震わせる。
それが羞恥だけではないことを、本人はまだ気付いていない。
妖眼獣が一人の生徒を前へ連れ出す。
太り気味の体は恐怖に震え、どうしていいか分からず視線を左右に泳がせる。
清見はその生徒に近寄ると、彼の頬を撫でながら、
その耳元で脳髄をとろかすような低い声で囁く。
「ほら、慌てないで。彼女のいやらしいところ見ながら、ズボンを脱ぎなさい。
それとも、この子達の体の一部になりたいかしら」
シュルシュルと異声を立て、アメーバのように触手を伸ばす妖眼獣。
溶け出る粘液に目玉が浮かび、男の蒼白とした顔色を映す。
生徒は震える手つきでベルトをはずし、股間の一物を剥き出した。
一筋の匂いが背後から伝わり、灯の鼻をくすぐる。
144 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(10/19) sage 2015/01/03(土) 17:55:58.61 ID:5PW9na0t
(これが……男の匂い?)
灯は自分の顔面温度が急上昇しているのを感じた。
処女こそ失ったものの、一般人と性交したことはまだ無いのだ。
だがまるで本能のように、これが人間のオスの性臭だと分かった。
思わず後ろをチラ見する灯に、清見が耳元を舐めるように小言をはさむ。
(ちなみにこれが童貞の匂い。よく覚えて)
(どう……てい?)
(ほら、彼のあそこが萎えているでしょ? なんとかしてあげなさい)
(なんとかって、何をすればいいんだよ!)
(誘惑して、その気にさせるのよ)
不意に、清見は灯の胸に手を伸ばす。
「きゃっ!」
灯は思わず小さな悲鳴を漏らした。
体は熟れきった果実のように、少し刺激を加えるだけでも果汁が溢れ出るようだ。
ずっと前から押さえていた淫欲が背筋をのぼって、ゾクゾクと頭を痺れさせる。
「あ、あの……本当に、私のことは、大丈夫です……だから、気にしないで……下さい」
灯はたどたどしく言葉を並べながら、跳び箱台に上半身を預けて臀部を向けた。
誘惑なんてどうすればいいか、分かるはずが無い。
だが度重なる性行為に、体のほうは先に慣れていた。
外気に晒された秘所は、キラキラと愛液が濡れる。
そこから発するメスの香りは、室内の妖気と混ざり合い、
淫らな芳香となって生徒全員を虜にする。
とりわけ間近にいた生徒は、すぐにも荒々しい息遣いで股間の一物を勃起させた。
彼は遠慮がちながら、両手で灯の太ももを掴んだ。
「……っ!」
灯は悲鳴を上げたい気持を必死に抑えて、台の上に肘をつき、じっと身構えた。
そのぎこちない様子を、清見はどこか微笑ましそうに見守る。
妖眼蟲にとって、人間の精液は食糧である。
その匂いを敏感に嗅げるということは、灯の寄生化が進んだ証拠。
本人はまだ気付いていないが、その体から発される淫気もまた、
より多くの精液を搾取するための妖眼蟲の能力である。
「じゃ、じゃあ……いくよ」
肥えた生徒はボソボソと呟き、股間の一物を割れ目に向けた。
灯は思わず体をこわばらせる。
肉棒がゆっくり近付いて、熱気が肌に伝わる。
「ッ――!?」
異物が膣内に入り込んできた瞬間、灯はたまらず息を吐いた。
両目をカッと見開き、台を掴む手に力が入る。
痛み、というほどではなかった。
だが焼き付けるような感触が、体幹の底から立ち上がる。
(先輩だけには、こんなの……見られたくなかったのに)
覚悟を決めたつもりでも、絶望感はそう簡単に拭いきれない。
憧れの人が今の自分を見て、どう思っているのか。
その現実から少しでも逃げようと、灯は必死に顔を伏せる。
男子は何度か突くうちに慣れ始めたのか、ピストンの速度を徐々に上げた。
重々しい吐息が灯の背中に当たる。
生徒は更に後ろから灯の胸を掴み、興奮したようにまさぐり始めた。
145 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(11/19) sage 2015/01/03(土) 17:58:48.09 ID:5PW9na0t
(ちょ、ちょっと……?)
心の準備を越えた行為に、灯は当惑する。
振り返らずとも、男の欲望がどんどん加熱しているのが分かる。
外界からの愛撫に刺激され、服裏の触手がいやらしさを増して蠢き始めた。
(うぅ……こんな時に、楽しんでる場合か!!)
灯はただ声を噛み殺して、一刻も速く終わって欲しいと願った。
だが彼女自身も気付かないことに、膣肉が生徒の陰茎を淫靡に絡めていた。
妖眼蟲に寄生された以来、灯の肉体は常に精液を搾り取るのに最適化されている。
ほどよく濡れそぼった蜜壷は、男性器と隙間無く密着し、まるで別意思を持つように蠢く。
オナニーしか知らない高校男子にとって、それはもはや未知の領域だった。
「うおっ……おおおお――っ!」
「いっ……!?」
灯はびっくりした。
男子生徒は唸り声とともに、灯の体を強く抱き締め、腰をずどんと突き上げた。
瞬時に、一筋の熱波が膣内に叩き込まれる。
「ちゃんと射精できたね。もういいよ。はい、次の人」
「えっ?」
清見のあっさりとした宣言に、灯は思わず声が出た。
膣内からしなびれた一物が引き抜かれ、心までポッカリと穴が開いた気分だ。
「どうしたの?」
「い、いや……」
清見の追及から逃げようと、灯は慌てて顔を逸らす。
生徒との性交は思ったより苦痛が少なかった。
それどころか、物足りない感さえがあった。
妖眼蟲にされた時は、無理やり何度もイかされ、
一切の余裕が無いまま心の隅々まで屈服させられた。
それと比べれば、生徒の行為は暴風雨の後の小雨のように感じる。
「もしかして、もっと続いてほしかった?」
「そ、そんなわけ無いでしょ!」
すかさず否定した灯だが、心がドクンドクン鼓動する。
妖眼蟲の触手に蹂躙される記憶が蘇る中、次の生徒が前へ押し出された。
すでに全裸になった彼の下半身からは、一人目の生徒と同種の匂いが鼻をつく。
■
(一体……どうなってる?)
数人ほど生徒から精液を浴びた灯。
だがそこには充足感なく、むしろ焦燥感ばかりが膨らみ上がった。
精液は確かに芳醇なものだった。
青臭い匂いが洗い落とせないほど体に滲みこむ瞬間は、堕落するような高揚感をもたらす。
でも、体の火照りは一向に収まらないのだ。
中途半端な刺激ばかり続いて、不完全燃焼を繰り返す。
この心情は清見にだけ悟られまいと、灯は懸命に自制をした。
そのため、まわりの雰囲気が少しずつ変化していることに、彼女は察知できなかった。
146 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(12/19) sage 2015/01/03(土) 18:01:51.68 ID:5PW9na0t
「ひゃっ!」
新たに現れた生徒は、下品な笑みを掲げながら灯の腰を掴み、下腹に肉棒を宛がった。
(さっきまでと違う匂い……?)
不安を覚えた灯は、相手の様子を振り返った。
髪を派手に染め、首元にアクセサリーを下げた男。
いかにも柄悪そうな目つきで自分を見下ろしていた。
男は無遠慮に肩を掴むと、勃起した一物をいきなり奥深くまで突き刺す。
「あっんん!」
突如の出来事だった。
灯は唇を強く引き締め、体を弾くように浮かせてしまう。
だが男は灯が逃げられないように頭を鷲掴み、台の上へ粗暴に押さえつける。
さらにもう片方の手で灯の片腕を引き上げ、慣れた動きで腰を前後に揺らす。
熱病におかされたように、灯の体から力が抜けていく。
「けけっ、こりゃたまんねえぜ。
ずっと指をくわえて待ってたんだから、激しくいかせてもらうぜ」
「ちょっと……やめてよ!」
「俺達を助けたいってんだろ? ほら、チューしような」
「むぅ――っ!?」
男が灯の顎を強引に向けると、そのまま唇を重ねた。
灯の頭の中が真っ白になる。
大勢の人達の前で、それも憧れの人が見ている中、知らない男とキスしてしまった。
驚きが満ちる瞳に、相手の軽薄な風貌がより間近で映る。
灯が最も嫌いな、チャラチャラしたタイプの男だった。
いつもの状態なら、ここで顔面をグーで殴っていただろう。
だが今の彼女はただされるがまま唇を押し広げられ、相手に舌をしゃぶられた。
体はチョコレートのように甘くとろけ、相手に委ねてしまう。
溢れた唾液は下へ滴り、太ももまで垂れ落ちる。
(なんで……体に力が入らないんだ!)
こんな不良の男にいいようされていると思うと、
どうしようもない悔しさが込み上がる。
長い接吻から解放された少女。
目つきはトロンとなって、色っぽい息を小さく吐く。
今まで灯を犯した生徒達は、なぜその行為を思いつかなかったのかと悔しがる。
ピンク色の空気の中、ぼんやりと浮かび上がる女体の輪郭。
上半身の着衣が乱れ、呼吸に合わせて起伏する胸はいやらしく汗ばむ。
その無防備な雰囲気は、思春期の少年達にとって網膜を焼くような絶景だった。
徐々に生徒達は灯との距離を縮め、いつしか清見の指図が無くとも、
彼女のまわりを群がるようになった。
(何よ……みんなを助けるために、こんなことしているのに……)
意識が朦朧とする中、灯の胸に理不尽な気持ちが溜め始める。
どこを見ても、欲情にぎらついた視線が自分を見つめている。
少し前に乱暴された少女にとって、それは酷く嫌悪感を催すものだった。
147 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(13/19) sage 2015/01/03(土) 18:03:30.80 ID:5PW9na0t
「もう……やめてよ!」
再び顔を迫ろうとする相手を、灯は思いっきり突き放す。
だがその途端、不良の男は豹変する。
「なに言ってんだ! セックスしてくださいって頼んだのは、そっちだろうが!」
「違う、そんな意味で言ったんじゃ……!」
夢中になって拒絶している間、周囲から徐々に非難の声が上がった。
灯は最初、それは自分を擁護するための声だと思った。
だが途中から、必ずしもそうではないことに気付く。
「おい、いつまでやってんだ!」
「さっさと引っ込んでろよ、次が待ってんだから」
「こっちにもやらせろよ」
(えっ?)
思考停止する灯に一人の生徒がこっそり歩み寄り、一物を顔面に近づけた。
突然目の前に現れる醜悪な造形。
そこから漂ってくる淫臭はいやらしい感情を煽る。
だが相手の顔を見上げた時、灯は自分の目を疑った。
最初に自分を犯した、あの太り気味の生徒だった。
余裕が無かったあの頃と違い、今では好色な顔つきで自分を見下ろしていた。
「あなた……どうしてまだここにいるの? 解放されたはずじゃかったの?」
「へへっ。せっかくだから、もう一回しようぜ」
「ふざけないでよ! 何を考えているの? 速くここから逃げなさいよ!」
「ふざけてるのはどっちだ!」
思いがけない怒号に、灯は愕然と身をすくめる。
生徒は鬱憤を晴らすかのように続けて吼えた。
「俺達がこんな目に遭ったのも、そもそもお前のせいだろうが!」
「ええ?」
全身に衝撃が走る。
清見もそんなことを言っていたが、灯にとってそれはただの戯言であった。
だがまわりを見ると、目の前の男だけで無く、
ほかの生徒達までが同意したような表情を浮かべる。
「そうだそうだ。誰のせいで、俺達までこんな目に巻き込まれたと思ってる」
「あんたがこの学校にいなかったら、
ここが襲われることが無かったってあの人も言ったじゃないか」
「化け物に負けてるくせに、気取ってんじゃねえよ」
「っ……!」
悔しさあまりに、灯は瞳を潤わせる。
実直な性格のせいで、言葉が喉の奥に突っ掛かってうまく出せない。
人知れず妖魔を退け、町の平和を守ってきた。
中には命懸けになった時もあった。
妖眼蟲との激戦に次ぐ激戦では、仲間を失い、処女さえ失った。
それでもこの学校へ戻ってきたのは、ここの人達を守りたい一心だった。
「みんな聞いてくれよ。コイツ、処女じゃないんだぜ?」
太り気味の男子は灯を指差して言った。
すぐさま周囲が反応する。
「マジかよ?」
「馬鹿野郎、こんなエロい女が処女のはず無いだろ。
今まで気持ち良さそうにセックスしてるのを見てなかったのかよ」
「まさかと思うが、初相手はあの目玉の化け物連中じゃないだろな?」
148 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(14/19) sage 2015/01/03(土) 18:04:49.77 ID:5PW9na0t
「そ、それは……っ!」
口下手な灯は言葉を詰まらせる。
その反応はすぐさま肯定として捉えられた。
「おいおい、マジかよ」
「あの化け物達相手にも、こんな嬉しそうに腰を振ってたのかよ」
「ただのビッチじゃねえか」
「あの化け物ともやったんなら、こっちにもサービスしろよ!」
太り気味の生徒は、有無を言わせず灯の口にペニスを押し込んだ。
「むぐっ……!?」
異物が喉奥に当たる違和感に、思わず涙が滲み出る。
なまぬるい感触と息ができない苦しさが同時に襲い掛かる。
処女を妖魔に散らされたことは、彼女にとって人生最悪の出来事だった。
それがあろうことか、人々の軽蔑や罵声の対象となっている。
陰茎が口を占領しているため、灯は思うように呼吸できず、唾を飲み続けるほかなかった。
まだ灯に触れてない生徒達は、次々と不満の声をあげる。
「浦田のやつ、でしゃばってんじゃねえよ!」
「お前はさっきもやっただろ、ズルイぞ!」
ある生徒は灯の背中を持ち上げ、彼女の肛門に肉棒を突き立てた。
それ見たほかの男子も、我先に陰茎を少女の手や肌にこすりつける。
「ぐわあ……も、もう……だめだ!」
膣内に挿入していた不良男子は腰を強く沈ませ、精液を奥深くに吐き出す。
今までの青臭い精液と違い、女性を知った味が灯の中を満たす。
射精した生徒が腰を抜けると、後ろの生徒にさっさと押しのけられる。
「ダッセーぞ。いつも女とヤッてるとか自慢してるくせに、結局浦田と同じ早漏じゃねえか」
「ちげぇよ、この女がマジやばいって」
「うおお……!」
新たに灯の膣内に挿入した生徒は、いきなり甲高い声を発した。
不良仲間なのか、彼の肉棒も同じく熟れたような濃い味だった。
だが今の灯には気にしていられる余裕など既に無い。
前後両穴から肉棒を挿入され、口までも性器で塞がれた灯。
欲望にまみれた男達は、ただひたすら彼女に精液を浴びせる。
まわりの淫気に馴染んだのか、
彼らの顔から怯えの色が消え、堂々と下品な言動を取り始めた。
男性器が一突き一突きする度に、黒い欲望が灯の体内へ流れ込む。
他人への思いやりの欠片もなく、
鬱憤と八つ当たり、そして己の欲を満たすだけのドス黒い感情。
その感情に触れただけで、心の闇が激発される。
口内の一物が膨張した次の瞬間、おびただしい量の精液が解き放たれた。
濁液が一気に喉まで押し寄せて、食道まで溢れかえる。
「ケホッ、ケホッ……」
口から陰茎を引き抜かれると、灯は慌てて息継ぎをした。
吐き出される息までが精臭を帯びるようになる。
自分の五臓六腑までが、精液に漬かってしまったじゃないかと錯覚する。
「なにこいつ、涙流してるぜ」
「そんなに気持ち良かったのか?」
生徒に嘲笑されてから、灯は初めて自分の頬をつたうものに気付く。
やりきれない気持ちが一気に込み上がる。
149 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(15/19) sage 2015/01/03(土) 18:06:37.54 ID:5PW9na0t
「違う……違う……」
「何が違うってんだ! こんなにもマンコを締め付けるクセに!」
「おら、さっきの鳴き声もう一度聞かせろよ」
「あああんっ!」
生徒達から胸や体を撫で回された灯は、自分の意思と無関係にゾクリと跳ねた。
擬態した触手服はモゾモゾ蠢き、宿主の快楽を極限まで引き上げる。
それに気付かない生徒達からしてみれば、灯は喜んで反応しているように見える。
寄生蟲によって改造された女体。
肌が精液を浴びれば浴びるほど、淫らな艶を帯びるようになる。
屈辱的な表情とのギャップがまた、雄の征服欲をたまらなく駆り立てる。
「おい、もっと大事に扱えよ。後ろが待ってんだから」
「こいつは正義の味方だろ? この程度で壊れるかよ」
「ハハ、そりゃそうだ」
下劣な哄笑の中、灯は自分の心がどんどん絶望に満ちていくのが分かる。
邪悪なエネルギーが飽和して、擬態したはずの服の表面に黒い線が浮かび始めた。
その亀裂が広がるに連れ、凄まじい快感が灯の全身を締め付ける。
「だめ、眼が……開いちゃうぅ! このままだと、本当に……化け物になっちゃうよ!」
「こいつ、なに言ってやがる」
「あの化け物どもとやり合ってるなら、お前だって十分化け物だろうが」
「「ハハハ!」」
(そんな……みんなにとって、化け物と同じ存在だった?)
チクリとした黒い痛みが灯の胸を刺す。
それが全身へと広がろうとした時。
灯を正面から責めていた男が、突然つき飛ばされた。
「いい加減にしろ」
威厳のこもった一喝に、周囲の嘲笑がピタッと収斂する。
群がっていた少年達は恐れをなしたかのように、そこから引き下がる。
灯の明るみが消えかけた瞳は再び光を取り戻し、喝を放った生徒を見つめる。
ほかの生徒よりも一回り大きい背丈。
引き締まった肉体は日焼けした肌とよく似合い、男児の魅力を引き立てる。
常に自信溢れる顔つきは女子の心を惹き付ける。
その鋭い目付きは今、灯を見つめていた。
(沖田……先輩)
憧れの人物だと気付いた途端、灯は慌ててうつむいた。
入学した時から、ずっと先輩のことが好きだった。
放課後の窓辺にいる時も、陸上部の練習の時も。
グランドでサッカーの練習をする先輩の姿を、こっそり探すのが楽しみだった。
このささやかな幸せは、五行戦隊の仲間にも打ち解けたことは無い。
先輩に多くのファンがいることは知っていた。
だから告白するどころか、言葉をかわしたことさえ無かった。
それがまさか、こんな理不尽な結末が待っていたとは。
先輩もきっと、ほかの人達のように自分を責めているだろう。
そう考えただけで、胸が苦しくなって、何もかも投げ捨てたい気持ちに追いやられる。
150 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(16/19) sage 2015/01/03(土) 18:08:17.68 ID:5PW9na0t
先輩の両手が自分を掴む。
体は一瞬こわばったが、すぐ柔らかくなっていく。
伝わって来る温もりが憧れの人のものだと思うと、驚きと幸せが込み上がって、
心を巣食っていた闇を浄化していく。
「おい、お前」
「ええっ?」
話しかけられ、まるで小動物のようにキョトンとなる灯。
いつも遠巻きでしか聞こえなかった声が、今は自分に向けられている。
心拍数が加速する。
「大丈夫か」
「は、はい……」
灯はそこで黙ろうとした、ふと思いついたように口を開く。
「あの……わ、私は大丈夫ですので、だからその……だ、だ……抱いてください」
最後は蚊のような消え入る声で言うと、灯の頭はヤカンのように沸騰した。
言い終わった直後、後悔の荒波がどっと押し寄せる。
(ちょっとドサクサにまぎれて、何言っているのよ!)
目の前に噴火口があったら、今すぐ飛び降りたかった。
だが年上の先輩の反応は、軽蔑でも拒絶でも無かった。
「そう。だったら遠慮しないぞ」
先輩はそう言うと、彼女の体を優しく抱き起こす。
その腕の力強さに、灯は夢心地になった。
(こんなに汚れ切った体を、優しくしてくれるなんて……)
まるで子ウサギのように体を小さく震わせる灯。
彼女のうつむいた顔が、ゆっくり持ち上げられる。
先輩の黒真珠のような双眸に見つめられ、頭が何も考えられなくなる。
「勿体無いじゃないか。こんなカワイイ子が」
(か、カワイイ……?)
顔がかあっと熱くなる。
地獄のような居心地が、一瞬にして天国になった。
体がふにゃっとなって、倒れていく背中を先輩の両手が支える。
そのまま、灯の体を撫で下ろす。
「ううんっ……あぁっ!」
自分のものかと疑うほど色っぽい嬌声だった。
相手が先輩だと考えただけで、今までと比べ物にならないほどの快感が灯を襲う。
手のひらの位置が下がるにつれ、灯の喘ぎ声は徐々に大きくなり、腰がくねり出す。
自制を解かれたことにより、淫乱に改造された体は本来の色欲を取り戻す。
愛撫されるがまま股を開いて、先輩の直立を受け入れる。
「はあああああっ……!」
灯は肺を締め付けるような声をあげた。
剛直な一物はまっすぐ芯を貫く。
分泌された淫液はほどよく膣璧をほぐし、男女の性愛を補助する。
快楽の火花が脳内をほとばしる
熱くて硬いモノが自分の奥深くまで満ちる。
そして一物が引いていくと、それを失う虚しさと寂しさが身をゾクリとさせる。
大きな両手が灯の胸を揉みほぐし、形を淫らに変えさせ、
挿入のサイクルをより過激にさせる。
151 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(17/19) sage 2015/01/03(土) 18:18:09.07 ID:5PW9na0t
(だめ……こんなの、気持ちよすぎるよ!)
灯は少しずつ喘ぎ声を響かせた。
先輩の動きは、今までどんな男よりも灯を陶酔させた。
まるでこの瞬間、自分がこの世界で一番幸せな女だと思わせるように。
体は自然と相手に寄りかかり、胸と胸を密着させる。
そして両腕は相手の首の後ろへ回し、ピストン運動と合わせるよう腰を躍らす。
「好き」という感情が至高の媚薬となって、荒廃していた灯の心身を癒す。
肌に浮かぶ汗珠は空気と混ざり合って、淫らな芳香を作り出す。
ほかの人に見られていることさえ忘れ、灯はただこの享楽に没頭して。
その「ほかの人」の中に、清見も含まれていた。
彼女は集団から離れた体育館の隅に立ち、一言も発さずに見届けていた。
だがその体からは、灯に負けないほど濃厚な淫気が漂っていた。
彼女はずっと自慰しているからだ。
自分の秘部をまさぐり、もう片方の手に下着を握り鼻に近づける。
その下着とは、灯が脱いだものを彼女がこっそり拾い上げたものである。
そこに滲み込む匂いを胸いっぱい吸い込みながら、清見は灯の痴態を観賞し続ける。
灯の幸せな表情。
灯の切なそうな吐息。
灯の相手に迎合した腰の動き。
それら全ては自分でもなく、五行戦隊の仲間でもなく、
まったく他人の男に向けられている。
そう意識しただけで、胸を焼き尽くさんばかりの黒い感情が沸き起こる。
清見がビクッと跳ねると、何度目か分からない絶頂を迎えた。
それでも親友の表情を見ただけで、芯がまたもムラムラと熱くなる。
自分に寄生している蟲が、心臓の鼓動に合わせて動悸しているのが分かる。
(そう、あなたも私と同じ気持ちなのね。でも、まだ本気でイッちゃだめよ。
最高のシーンはまだこれからだから)
清見は暗い薄笑みを浮かべ、イッたばかりの体を愛おしそう抱き締める。
彼女の触手服は粘体状に分裂して、宿主の抱擁を答えるように肌をねっとり愛撫する。
サディズムとマゾヒズムの快楽が折り重ねて、清見の心身を痺れさせる。
あれほど気丈に振舞った少女。
それが沖田と交わってから、淫乱な娼婦のように色気を散らすようになる。
沖田に恐れる生徒は、その不満の矛先を灯に向ける。
「見ろよアイツ。あんなヨガリ顔をしやがって」
「あれで本当に正義の味方なのかよ」
「化け物とセックスしまくった話、やっぱり本当じゃないか」
生徒達の間をくすぶる批判の念。
今までわずかにあった同情も、いつしか怒りに取って変えられた。
「おい沖田、いつまで独り占めするつもりだ!」
「いつも女とヤッてる奴が、こういう時くらい俺達に譲れよ」
ふと耳にした野次に、灯はまばたきをする。
二人の生徒が沖田先輩を押しのけようとし近付く。
自分の体から、暖かい手が離れたと感じた次の瞬間。
その生徒達の顔面に先輩の拳が命中する。
後方へ倒れた生徒は鼻骨を押さえてのたうつ。
152 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(18/19) sage 2015/01/03(土) 18:19:38.62 ID:5PW9na0t
「うるせぇ。黙ってろよ」
振り返る先輩の目付きは、灯には想像もつかないほど怖いものだった。
だが彼女の予想に反して、
まわりの生徒――さきほどの不良っぽい人達も含め、これ以上抗議しなかった。
怯える者。
へつらう者。
知らん振りをする者。
ただ異議を唱える者だけは、一人もいなかった。
だから、灯は自分の口から異議を唱えた。
「いつも女とヤッってるって……どういうこと?」
「どういうことって、普通分かるだろ」
一人の男子が代わりに答えると、左右の生徒と一緒にニヤニヤ笑い出した。
「沖田さんの女喰いは、うちの部活じゃ有名だぜ?」
「ツラが良いからな。知らない女はホイホイやってくる」
「新人マネが入る時期なんか、おかげで盛り上がったんだぜ」
灯は茫然とした。
「そ、そんなの嘘だ。先輩は……この方はとても真面目な人なんだ。
そんなふしだらなこと、するはずがないでしょ」
自分が貶された時以上に、感情を昂ぶる灯。
だが返されたのは、生徒数人の呵々大笑だった。
「な、何がおかしい!」
「聞いたか、沖田さん。あんたのことが真面目だってよ」
「沖田さんのところに来る女はみんな言うよな、チクショー。俺もイケメンに生まれていたら」
「ごちゃごちゃ抜かんじゃねえ」
沖田の口から響くドスのきいた声。
笑っていたサッカー部員はきまり悪そうに黙る。
彼らの顔面を、沖田の鷹のような目線が睨みつける。
「人聞きの悪いこと言うなよ。お前らだって、散々良い思いをしただろうが」
灯の心が冷たくなっていく。
沖田先輩は、弁解しようという意志はまるで感じられなかった。
むしろどこか得意げに腰のピストンを続ける姿は、
灯にとって徐々に不気味な存在に変わっていく。
しかし、それでも灯は拒むように言葉を発した。
「う、嘘よ……そんな酷いこと、できるわけが……
第一、そういう女の子達が黙るわけないでしょ?」
「沖田さんの家は大財閥の社長だぜ?」
「そりゃ体をいっぱい弄ばれたあげく、写真やビデオまで撮られて脅されたら、
誰も言えねえよな」
「頭の良さも俺達とは全然違うよ」
153 五行戦隊 第九話『善意と悪意』(19/19) sage 2015/01/03(土) 18:21:32.47 ID:5PW9na0t
(えっ、えっ?)
まわりの生徒達が何を言っているのか、灯はまったく理解できない。
そんな自己欺瞞しようとする矢先に、先輩自ら灯の希望を打ち砕かく。
「あいつらだって、俺とセックスしたくて来たわけだ。
そいつらの願いを叶えたんだから、感謝されたれくらいだぜ」
灯は沖田先輩の嘲笑から、目を離すことができなかった。
耳側で、別人の声が蘇る。
『ちなみにこれが童貞の匂い。よく覚えて』
初めて犯された時、確かに清見はそう言った。
沖田先輩の匂いは、その童貞とは違うものだった。
それもあの不良達よりもずっと熟れて、沢山の女の子の味を知り尽くしたようなものだった
自分を触る手つきも、一物を出し入れするテクニックも。
全てがほかの男子より上手かった。
清見の声がまだまだ終わらない。
『友人として忠告するわ。あんなクズ、あなたにはふさわしくない』
『彼のことを諦めないと、あなたはいずれ後悔する』
灯はハッとなって、青い少女を探した。
待ちわびたように壁に寄りかかる清見の姿。
アクアマリンのような綺麗な瞳。
その目は人の子をあざ笑う悪魔のようにも、子供を慈しむ聖母のようにも見えた。
放心状態の灯の耳に、生徒達の雑談が右から左へと流れる。
「そういえば最近、生徒会の連中が沖田さんを睨んでるって話だぜ」
「ああ、俺も知ってる。なんでも陸上部の新星だって言うじゃない。
部活の時もちらちらガンをくれやがって」
「あの勝気そうだけど、可愛い子だろ?」
「でも今期の生徒会メンバーはカワイイって評判だけど、相当のやり手らしいぜ。
そんな連中に目をつけられたら……」
その時、沖田は腰を強く突き進めた。
灯の悲鳴が生徒達の会話を遮断する。
「馬鹿かおめえら。あの子は、俺に惚れてんだよ」
沖田は灯を突き上げながら、ニヤリといびつな笑みをこぼす。
「生徒会が何だって言うんだ。女なんざどいつも同じだ。
うまく引っ掛けたら、そいつで芋づる式に全員喰ってやるさ」
下品な野望に満ちる言葉。
それに周囲から歓声と野次が沸く。
ただ一人だけ、灯の顔色が燃え尽きる寸前の蝋燭のように暗くなった。
彼女は小さな声で沖田に尋ねる。
「……お願い、一つだけ答えて」
「あん?」
「もしその女の子とエッチできたら、その後どうするつもりだった?」
「決まってるだろうが。ヤるだけヤッて、飽きた時に捨てる」
少女はそれっきり、押し黙った。
154 五行戦隊 ◆vPNY1/7866 sage 2015/01/03(土) 18:23:44.92 ID:5PW9na0t
以上、第九話でした。
連投寄生のため毎度投下時間が延びてすみません。
第十話は明日投下の予定。
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