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卒業研究
961 卒業研究[01/13] sage 2013/12/28(土) 19:49:32.16 ID:NrWYHkGk
カーテンの隙間から差し込む朝日で目が覚めた。研究室の泊まりこみもすっかり慣れっこ
になった。日差しの中に吐く息が白く見える。水の音が遠くから聞こえる。雪解け水が滝
になって落ちてくるのだ。春ももう間近。
仮眠ベッドの上でしばしボーッとしていると、ケトルの笛が聞こえてきた。奥の部屋から
私を呼ぶ声がする。
「忍っち、早く起きなよ。顔を洗って朝食にしよう」
時計を見るとまだ7時である。ベッドから抜け出し声の主のところまで行くと、院生の葵
先輩が朝食を用意していた。
サラサラの黒髪ストレートヘアをアップに束ね、服もばっちり決めている。柔らかそうな
セーターにふくよかな胸がカーブを描く。黒ストッキングが脚線美を演出。白衣を着てい
なければ完璧(パーフェクト)である。朝早いのにマメでしかも美人さんである。時々、何
故こんな美人さんが院生などやっているのか不思議に思うこともある。
「さてさて、食事にしようよ。今日は午後の講義までにチャッチャと片付けなきゃいけな
いからね」
おまけにウキウキである。そうそう。今朝は昼までに片付けなければならないことがある
のだ。
この研究室の室長は冴子教授。彼女の指導の下、私達はある研究をしている。現在
私は卒業研究の真っ只中である。今日は半月に一度の定期観察だ。被検体の様子
を観察し記録する。被検体とは……この私である。
まがりなりにもカメラに写るので、身支度はばっちり決める。決めたいのである。だけど
このクセ毛だけはドライヤーを持ってしてもいうことを聞いてくれない。数十分の格闘の
末に諦めて、撮影の準備に移る。
機材は葵先輩が準備してくれている。私は服を脱いでいく。着ているものは全て脱ぐ。
しかし今朝は少々肌寒いので、ストッキングだけは履かせてもらう。手も冷えるのでつい
でに手袋も。そんな私の格好に先輩はクスリと笑い、そんなセクシーな格好をするならと
ストッキングとおそろいの白いストッキング地の手袋をくれた。
何故おそろいの手袋を持っているのだろう。そんな疑問が顔に出ていたのだろう。
「それは私のストッキングだよ」と先輩が答えた。
やや、これは恥ずかしい。間違えた?先輩、後で洗って返します。
「いいよ、それは忍っちにプレゼントしよう」
先輩はクスクスと笑って上機嫌である。
「その白い手袋とストッキングは、君の小麦色の肌にとても似合ってるからね」
962 卒業研究[02/13] sage 2013/12/28(土) 19:51:52.81 ID:NrWYHkGk
裸身となった私は白いカーテンの前に立ち、気をつけ。目の前には、先輩と三脚とカメラ
が立っている。葵先輩は片手を挙げて合図を送る。
「じゃあ、撮るよ~」という間も無くいきなりパシャリ。被検体の全身を記録する。
先輩の背後に姿見がある。そこに被検体が映っている。クセッ毛栗毛のボブカットに白い
手袋白いストッキング。二つの胸のふくらみはこの一年で立派に成長した。以前の貧乳が
嘘のよう。
今度は腕を水平にあげてパシャリ。そのまま左右に向いてパシャリ。最後に背中をパシャ
リ。パッと見、普通の女性と変わらない姿だけど、私の身体には秘密がある。
被検体の全身像を撮影した先輩は、なにやらいたずらっ子の微笑み。
「忍っちは見られると興奮するんだねえ。最初の頃は初心(ウブ)だったのになあ」
恥ずかしくて血のめぐりが良くなってるだけです。
「血ねえ。下の一箇所に集まってるように見えるけどなあ」
嗚呼そうですよ。恥ずかしくて下腹部に血が集まってますよ。なにしろ私のアソコから明らか
に女性のモノではない肉塊が――芋虫の様なものが何本も――屹立しているんだから。
これが私の秘密。
私の体内には何種類もの寄生生物が住まっている。一年前に研究所に入ってから、寄
生生物を「飼育」し、身体の変化と寄生生物の生態を観察し記録する。それが私の卒
業研究だ。
「次は局部の観察だね」と葵先輩。
先輩の指示するままに移動し、診察台(代わりのソファー)の上で仰向けに寝る。すぐ隣に
先輩のデスクがあり、そこのディスプレイに私が映っている。先のカメラはケーブルでコンピュ
ータに接続されていた。ちょっと何ですか先輩、これってすっごく恥ずかしいんですけど。
「忍っちもよく観察しないとね。自分の身体なんだから」
そう言って先輩はカメラを私の乳房に寄せる。ディスプレイに桃色の大地が現れる。乳輪
が大写しである。そこに銀色に光るモノが飛び込んできた。冷たい!ピンセットである。
「乳胞蟲の胸部への寄生から8ヶ月。順調に生長中。外観には特に異常は認められず。
被検体も至って――調子はどう?」
すっごく恥ずかしいんですってば。
「ふむ、いい加減慣れてくれないとねぇ。――至って健康体。しかし綺麗に育ったね。柔
らかくて気持ちいい」そうレポートしながら先輩の手が私の胸を撫でていく。くすぐったいです。
「ずいぶん張ってきたね。だいぶ溜まっているんじゃないかな。さて、中はどうかな」
先輩は観察部位をピンセットで指し示しながらレポートを続ける。
963 卒業研究[03/13] sage 2013/12/28(土) 19:53:52.89 ID:NrWYHkGk
「乳輪と乳首もやや肥大化。乳首先端に開口部が形成されている」
ピンセットが乳首の先端に触れ、乳首の先のすぼまった孔に潜り込む。普通の人間にはこ
んな孔は無い。冷たい&ゾクゾク!
ピンセットが孔を開いていくと、中の様子がさらけ出された。私のおっぱいの中!
「開口部から乳房の奥へ長さ4~5cmの管が続いている。白い脂肪質の壁に毛細血管が
縦横に張り巡らされて、表面には細かい襞がある」
その奥には何本も枝分かれした支管が形成され、そこから時折白い米粒が顔をのぞかせて
いる。その小さい塊こそ、私の胸を成長させた寄生生物。乳胞蟲はこの管の奥にコロニー
を形成し生活している。
ピンセットの先端が枝管の一つをこじ開けた。白いツブツブがびっくりしてのたうっている。何
匹も。
「乳胞蟲は乳房の組織と完全に同化している。管の一つ一つが固体で、奥には幼生の為
の子宮がある。同化した彼等の体はほとんど卵巣と子宮のみにまで退化して、宿主から
卵の為に栄養を供給するだけの器官と化している」
先輩の言うように、私の胸の中はこの卵の袋でいっぱいになっている。蟲の子宮の中で育
った子蟲がさっきの米粒の様なヤツ。これがたくさんおっぱいの中に詰まっている。
ピンセットが乳首の中をゆっくりと上下にストロークする。じわじわと気持ちがこみ上げ
てくる。蟲の子宮は既に私の臓器でもある。葵先輩が乳房を揉みあげると、管の奥から乳
白色の液がにじみ出てくる。
「こいつは血液を養分とする。卵に必要なのは糖や脂肪くらいで血球などは不要なんだ。
その成分は母乳に近いね」なんと、蟲のおっぱいですか。
さらに白い米粒も絞り出されてくる。白くてツルテンとしてウネウネしている。本当に米
粒みたい。そこが頭なのか、突起部の先端は少し紅をさしている。
乳首からピンセットを引き抜いていく。収縮する管に押されて液体と一緒に子蟲があふれ
てくる。そして乳首から白い液体と子蟲達がピュッと吹き出る。不思議な感覚。嫌いじゃ
ない。
私の肌の上でのたうつ蟲を先輩はピンセットで慎重につまみあげると、試験管の中に収め
ていく。こうして二十数匹のサンプルが収められた。蒸留水の中でたゆたう米粒。
「頭部に赤みが出てきたね。これが感染幼生だ。これが宿主にたどり着くと、二次幼生を
産む。それらが成虫になるのさ」
引き抜いたピンセットはその液体で濡れていた。先輩はそれを舐めてみろというかのよう
に私の口元に寄せる。少し躊躇の後ちょっとひと舐め。ちょっと甘い?
964 卒業研究[04/13] sage 2013/12/28(土) 19:55:43.04 ID:NrWYHkGk
次は……局部の撮影である。要するにアソコとお尻の穴である。これは毎度のことながら
恥ずかしい。だが、いい加減覚悟を決めて両足を開く。カメラ越しに私のアソコがディス
プレイに露わになった。葵先輩のレポートは続く。
「吻妖虫も寄生から8ヶ月経過。被験者のクリトリスの内部で蟲が成長し、親指大にまで
肥大化している。その周囲にも4本の触手が形成されている」
私の秘豆の中にはたくさんの線虫が体の奥から集まってきている。引き伸ばされて薄くな
った秘豆の粘膜越しにそれが見える。この大きさはもうお豆ではない。オチンチンである。
周囲に生える4本の触手は肉棒からあぶれて脇から生え出た蟲である。さっきから肉棒が
ビクンビクンと脈打っている。どんどん蟲が集まってきて大きくなっていく。撮影前から
2,3倍にはなっているかも。
「陰唇にも蟲が侵入し柔突起状になっている」
先輩がピンセットでラヴィアを開くと、そこは桃色の芝生があった。突起の幾つかが伸びて
ピンセットに触れようとする。ピンセットがブラシを撫であげると、ブラシの一本一本が瞬間
太ましく屹立し、私の中にゾクゾクと「快感」が走り抜ける。
「奥を見るよ」と先輩が告げる。わかりました。深呼吸してリラックス。冷たいクスコがヴァギ
ナに侵入しこじ開ける。それは私が初めて見る世界だった。
そこは粘膜から生える、色も形も大きさも様々な触手の森だった。白く細い糸くずのよう
なモノ。それが成長したようなピンク色の触手。先端がイソギンチャクの様な形のずんぐ
りしたものもいる。その森の奥には子宮口の番人の様に数本の太い触手がとぐろを巻い
て待ち構えている。それらが全て生きて蠢いていた。
「吻妖虫は宿主の生殖器に寄生し、群体を構成する。外陰部に寄生する固体と内陰
部のそれは明らかに形態が異なる。何故このような多様性が見られるのかは今もって不明。
子宮口周囲に生息する巨大な触手が成虫だ。――ぞっとしたかい?」
先輩が心配して私に尋ねる。いやあ、ショックじゃないというと嘘になりますけど。他人
のを見るのと自分のを見るのじゃ大違いですねえ。そんな私に先輩は暖かい笑みを送って
こう言った。
「まあ、私もそうだったからね。だが、悪いことばかりでもないよ。こうすると少しは気
分がマシになると思うよ」
先輩は粘液採集用の綿棒を持つと、私の中に挿入した。綿棒がヴァギナの森に入り込み
触手をやさしく撫でていく。その度に快感が肢体を満たしていく。それは衝撃の体験。
愛撫を受けて蟲達は悦びの化学物質(フェロモン)を私の体内に放つ。私の神経にささやき
かける。
965 卒業研究[05/13] sage 2013/12/28(土) 19:57:50.66 ID:NrWYHkGk
綿棒を引き抜こうとしたとき、子宮口の門番がそれに絡みついた。そのまま引き抜いてい
くと、触手達も一緒についてくる。葵先輩はそれらをつまむと、ゆっくりと私の中から引
き抜いていく。先輩の指を感じる。暖かい。そうして私の股間から長さ20cmくらいのピン
ク触手が三本引き出された。
触手から外気を感じる。少し寒い。先輩の暖かい肌に触れたいと思ったとそのとき、触
手が我が意に答えた。さらに伸びて先輩の指に巻きついていく。
「これはすごい。忍っちはもう触手を動かせるのかい?」先輩はびっくりしている。いいえ、
思ったことに触手が反応しただけです。
「ふふん、私の指をなぶりたいと思ったんだ」いえ、そうじゃないです、先輩。
「そういう悪い娘にはおしおきしないとね」先輩、悪い顔してますよ。
そういうと、先輩は触手が絡まる指を口元によせて、指ごとくわえ込んでしまった!
ハウッ!先輩の柔らかい唇と舌先を感じる。舌が「私」に絡み付いてくる。言葉にならな
い感覚。私の肢体は弓なりになる。
「やや?大丈夫かい、忍。すまないことをしたよ」先輩はちょっと狼狽。
最後はお尻。肛門の中を観察。「忍、これで最後だからがんばってね」と葵先輩。りょう
かいです。もうフラフラフワフワで意地をはる気力もありません。
体を反してうつぶせになりお尻を高く突き上げる。先輩にもカメラにも(私にも)お尻のすぼ
まりが丸見えである。ヒクヒクしている。アソコの割れ目から繊毛の森が見え隠れしていて、
そこから三本の触手が垂れていて、クリトリスの肉棒に絡みつく。下腹部に力を込めると
ウネウネ動く。ちょっとオウム貝に似てる?
「ふむ、綺麗だね。肛門の外観には特に変化は見られず。さっきからヒクヒクしてる。そ
れに濡れているじゃないか。ずっと我慢してたのかい?」
いいえ、先輩が色々を刺激するから来ちゃったんですよ。
「ああ、本当にすまなかったよ。でもこれでは中の観察が出来ないね」先輩は困り顔。今
日はもう終わりにしますか?
先輩は少し考えた後、隣の部屋に戻って何かを持ってきた。銀色のボールである。それを
私の両足の間に置いた。何?それに出せと仰るので?
「出そうなんでしょ?我慢は体に良くないよ。それにスッキリ出したら腸内の観察もできる
じゃないか」ああ、先輩。今のあなたはいたずらっ子の顔をしてますよ。
とはいえ私も我慢の限界で、それに「出すもの」はトイレや流し台で処理して良いもので
はない。嗚呼、もう覚悟を決めることにしましたよ。
「忍は怒った顔もかわいいな」
嗚呼にくたらしい!でもにくめない。
966 卒業研究[06/13] sage 2013/12/28(土) 20:00:56.76 ID:NrWYHkGk
ハヒッ!一度堰を切ったら止まらない。
ビュルビュルビュルッ!肛門を緩めた途端、白い粘液と固形物が滝の様に吹き出しボール
に溜まっていく。塊は数mmから数cm程の蛆虫や十数cm位の細長いミミズ,足の無い芋
虫,触覚の無いナメクジの様なモノ達。皆生きていて動いている。私の排泄物は全てこの
子らの餌となって残らない。費やされた「餌」で増えた蟲達が今の私の排泄物。
全てをボールに出しつくしても、肛門の奥にまだ異物感を感じる。お腹に力を入れてそれを
外に押し出してやる。
それはビュルリと肛門をこじ開けて出てきた。お尻の穴の襞を柔らかいモノがすり抜ける感覚
と、穴から「抜け出る」感覚を同時に感じる!珍しく葵先輩はびっくり顔である。いや、私も
びっくりですよ。こんな感覚今までにも無かったし。
それは一本の長く太い蟲だった。私の触手だ。乳白色の体に黄色い脂肪の筋。体表の片
面にはピンクの柔突起がみっしりと生えている。先に行くにつれ細くなり突起も増える。先端
は赤い髭をぐるりと蓄えている。こんなに立派なモノを今まで感じられなかったのは不思議で
ならない。それはね、と先輩が私に教える。
「平時は細く縮んでいるんだよ。先程からの蟲への刺激で産生されるフェロモンが多量とな
り、この蟲を量興奮状態にさせたんだ。それにしても立派に成長したものだね」
成る程です。先輩からこんなにいぢめられたのは初めてですから。しかし、この触手が私の
モノだなんて……。こうやって見られているのが恥ずかしい!
銀色ボールには白濁の粘液と蟲の群れ。ニチャニチャと音を立てている。葵先輩のレクチ
ャーは続く。
「腸毛線虫は腸内に寄生する。腸壁にコロニーを形成する。その中に様々な蟲も住み着
いている。定住する蟲は宿主によって異なる。薄紫のナメクジのようなヤツは吸虫だね」
ようく解っています。この半年で見慣れたモノですよ。この子達のおかげでトイレ要らず、便
秘の悩みからも開放されました。でも、毎日ひり出したこの子等の処理が大変ですよ。
「幾つか見慣れない子が混じってる……吸虫は良子君のだね。仲良くヤッてる様じゃない
か。ちょっと妬けるね」ますます恥ずかしい。蟲を見て判りますか。
良子は同期の娘でルームメイト。同じ研究室生でもある。大きさからいって先月か、私の
中に放った卵から成長したんだ。
「さて、余韻に浸っている暇は無いよ。内視鏡を入れるから楽にしてね」と先輩。ちょっと言
葉の端に棘がある感じ。
お尻のすぼまりに内視鏡のカメラが触れる。機嫌直しにちょっとお手伝い。さっきの感覚を
おさらいしてお尻の触手を動かしてみる。触手がコードに絡みつきそのまま中に引きずり込
む。我ながら器用なものだ。先輩も感嘆の声をあげる。
「これは便利だ。苦しくない?」いいえ、ちっとも。
「結構。ではカメラを奥まで引きこんでちょうだい」言われる通りに触手をお腹の中にしまい
こむ。一緒に内視鏡も大腸の中に引きずり込む。
967 卒業研究[07/13] sage 2013/12/28(土) 20:02:18.75 ID:NrWYHkGk
ディスプレイに私の直腸の中が写る。そこは太さ数mm,長さ1cmくらいの充血した柔毛の
森。奥から白いコードが手前まで伸びている。お尻から出てきた触手だ。このまま内視鏡
を奥まで引き連れていく。
カメラは大腸のさらに奥に進む。腸壁の柔毛は次第に細くなり密集度が上がっていく。森
の隙間は先程ボールに出した蟲達が身を隠すように暮らしている。まばらに太めの白い触
手が生えていて、そこをカメラがこすると、撫でられる感覚を覚えて私の肢体はピクンと
跳ねる。
「その触手には感覚神経が通っている。もっと発育すると周りの柔毛や蟲の徘徊を感じ
取ることが出来ると思うよ」と葵先輩。びっくり感心するも、それは日常に支障をきたすの
ではないかと、いささか心配。
盲腸まで来ると様子が一変する。お尻から出た触手の根元が見える。ここから伸びてきた
のか。周囲に似た形のミニサイズの触手が数本生えている。
「虫垂を棲家としているようだね。触手で見えないが、おそらく虫垂は蟲達の保育所とし
て発達している。草食動物とちょっと似てるね」
小腸へと続く腔から蟲の頭がちらりと覗いている。ボールの中でのたうつミミズと同じ奴
だ。「それは小腸を棲家とする条虫だね。小さい蛆虫が居ただろう?あれはこの蟲の片節
の中で孵化した幼生だよ。」
さて、これで観察は終わり。慎重に内視鏡を腸から引き抜いていく。そのとき珍しい光景
に出くわした。
腸壁から太くそびえる触手の何本かが膨らんでいく。先端の口が開き何かが出ようとして
いる。お腹の中が熱くなる。よく知っている、半年前から私の内からこみ上げる感覚。
触手の先端からピュッピュと何かが飛び出してきた。ひとつ、ふたつ……まだまだ出てく
る。小さい小さいアメーバが触手から産まれてくる。その度に心地よい疼きに襲われる。
似ていないが、この子等はあのボールの中身の芋虫の幼生だ。
「私の子でもある」と葵先輩。その通り、私の中には先輩の蟲も寄生している。異なる宿
主で発生した寄生生物達を同一の環境(ある固体)で生育させ、宿主への影響と発育
過程を観察し考察する。それが研究テーマだ。
「私の蟲の卵は腸壁に着床すると触手を形成する。これがセルカリア(第1幼生)。中でレ
ジア幼生(第2幼生)が育ち、それがこの小蟲達だ」先輩、なんだか嬉しそうですね。
「うちの子が君の体内(なか)で健やかに育っているのを確認できるのは嬉しいね」
最初のうちはわからなかったけど今ならなんとなくわかる。蟲が肉体と同化し、感覚を共
有していくにつれ、自分の一部に思えてくるのだ。私の子もみんなの中でこんな風に生き
てるんだろう。
ほっこりした雰囲気は直に吹き飛んだ。ずっと様々な孔の中から責められて、私の肢体に
は火が点いている。私の体内に蟲が渦巻いているのを感じる。体中の管の至る所がヴァ
ギナになりクリトリスになる感覚。
968 卒業研究[08/13] sage 2013/12/28(土) 20:04:32.95 ID:NrWYHkGk
画像も撮ったしサンプルも採集した。これで観察お仕舞い。でも私の疼きは納まらない。
葵先輩もそれをわかっている様だ。ニッコリ微笑んで頷くと白衣を脱いだ。
「まだ9時だから昼までには時間があるね。忍もスッキリしたい様だし、少し運動しよう
か」お願いします、先輩。もう我慢の限界です。って「も」って何ですか?
「君のあられもない姿を1時間も見せつけられたんだ。私の体も疼いちゃってね」
そういうと先輩は次々と服を脱ぎ、綺麗に畳んでデスクの上に置いていく。なにやってん
ですか……ドキドキです。
やがて先輩は黒ストッキング一枚の姿になった。いや、違う。脚を包むストッキングは体
全体を包みこむボディタイツだった。その薄い布地から透けて見える先輩の肢体はすごく
……エロ綺麗です。黒のボディタイツが肢体のラインを強調する。大きなおおっぱいとお
尻のラインが柔らかい。両乳首と臍に金のピアスをつけている。葵さんは少し恥ずかしそ
うに笑う。
「忍は私のヌードを見るのは初めてだっけ?」はい。いつもは着衣でシてましたから。
「そうだね。私くらいに『成長』すると、不意に漏らしてしまうのを防ぐためにボディタイツは
欠かせなくなるんだ。滅多にないけど、用心に越したことはないからね。ピアスも孔に栓を
するためのものなのさ」
そしてポーズを取ると、その場でクルリと回って体全体を私に見せてくれた。魅惑的な女
性のシルエットの中に異形の美が隠されていた。普通の人なら目を背けるソレを、私は
確かに綺麗だと思ってしまったのだ。
葵さんの豊かな乳房をサポートするように何本もの触手が背後から現れ持ち上げる。そ
れは背後から生えていた。背筋に何対もの乳首の様な突起が並び、触手が生えてくる。
腰周りにベルトのように巻きついているモノもいる。胸の乳首の孔が呼吸に合わせてパク
パクと開き、隙間から触手の束が見え隠れするがピアスで栓をされて外に出られない。
下腹部には私以上に発達した柔突起の森と充血した肉棒が屹立している。体節を持っ
た蟲の様で節のひとつひとつが鰓を張っている。陰毛も蟲と置き換わったのか、芝生の
様に触手が生えて蠢いている。肉棒を皺ひとつなくタイツが包み込む。おそらくボディタイ
ツは特注なのだろう。最初から股間にポケットが作られているのだ。
「体内で蟲が成長して同化が進むとこうなっていくんだ。体内に張り巡らされている循環
系に血管とリンパ管があるのは知ってるね?」私はうなずいて肯定。
「同化が進むと、それらの他に第三の循環系が作られる。蟲の通る蟲管さ。背中から
出ている触手もその管の延長なんだ。私の体の隅々まで張り巡らされている」
お尻にもそれがあるのか、股間から触手が伸びて太ももに巻きついていく。脇から伸びた
それは二の腕を伝い手首まで届く。
突然ビリビリと音が鳴る。葵さんを包む触手の蔦が解かれていく。それがボディタイツを
破っていく音だ。体中の至る所に伝線が走り、あっという間に全てや破り捨てられた。白
い肢体が露わになる。彼女は全くの全裸になった。身体に纏いつく触手が羽衣の様だ。
葵さんはピアスを外しながら一言。「さて、楽しもうか」
969 卒業研究[09/13] sage 2013/12/28(土) 20:06:41.71 ID:NrWYHkGk
最初は軽いキス。次第に舌を絡めあう。向かい合って抱きしめあう。お互いのおっぱいが
つぶれあう。乳首と乳首がキス。そして口を開けてディープキス。葵さんの乳首の触手が
私の孔の中に入ってくる。アソコの肉棒もじゃれ合いを始める。互いに擦りあう。
「この短時間によく動かせるようになったね。上手いよ」と彼女がささやく。えへへ、そ
れほどでも。
私の乳首は彼女の乳首にフェラされ、彼女の乳首ち○ぽに犯される。優しいけど激しい
責めは、長い時間蟲から性の刺激を受けた私にはもう限界。御免なさい。もぉ出ます。
「いいよ、そのまま出して」その声でイッちゃいます!
ビュルリ!乳首から射乳。合わせて子蟲も発射する。葵さんの乳首がゴクゴクと音をたて
てそれを飲む。乳首のキスの隙間からお乳が漏れ出る。
「すごい。私のおっぱいの中で、君の子蟲が暴れまわってる」彼女のうっとりとした顔はすご
くカワイイ。そこで彼女はひらめいた。
「お礼に君のおっぱいに私の子を引越しさせちゃう」
私のおっぱいに潜り込んでいる乳首ち○ぽがさらに奥へ侵入する。狭い肉壁をかき分けて
奥へ奥へ。乳首ち○ぽはおっぱいの奥底にある蟲の子宮に収まりとぐろを巻く。
乳首同士のキスが終わる。彼女の乳首はまだパクパクと口を開いている。お乳の涎がこぼ
れ、子蟲が何匹かこぼれ出す。私の乳首の先には触手が何本かのたうっている。だんだん
奥へ進んでいき、そのうち見えなくなった。
「その蟲は卵が詰まっているの。君のおっぱい子宮を借りて卵を孵し、その中で育っていく
んだ」
次は両足を開いてお互いの秘部を見せ合いっこ。
葵さんのアソコを見るのは初めて。外陰唇がぷっくりボールの様に膨らんでいる。ボール
の谷間に疣が並び肉棒の先まで続いている。私のアソコと随分違う。これはまるで……。
「男の様かい?」ええ、まあ。私の困惑に彼女はクスリ。今度はちょっと苦笑い。
「男だよ。だったというべきかな。寄生蟲が私をこのように改造したのさ」
なんと、彼女は彼だったんですか。でもどうりで、ちょっと勇ましい口調なんだ。
「彼女でいいよ。シルエットはどう見ても女性だし、蟲のホルモンの所為で感受性もかなり
女性的に傾いていると感じる」それを聞いてちょっと安心。この曲線美(一部を除く)を見て
「彼」は無いなあと思っていたので。でも、改めて寄生蟲の黒い一面を思い知る。己
の生殖の為にここまで宿主を改造するんだ。だけど……男性をここまで美人さんに変身さ
せるのなら、それもまたアリかな、と不埒なことをちょっとだけ思う。
「ペニスの海綿体にには蟲管が縦横に張り巡らされていて、勃起と共に蟲がここに集まって
くるんだ。」
葵さんの蛇腹状のオチンチンのカリ首ひとつひとつが、数多の蟲の頭が張り出してできた
ものだったのだ。カリ裏には突起がいっぱい生えている。よく見ると二つのボールが蠢いて
いる。中に何か居る?
「睾丸に蟲が纏わりついているんだ。精嚢も蟲の棲家になってかなり大きくなってる。射精
の量はかなりのものだよ」
その蟲の卵は無数の精子を纏って動力を得るのだそうだ。そして射精と共に卵も次の宿
主の元に行く。なんて生命力なんだろう。
970 名無しさん@ピンキー sage 2013/12/28(土) 20:08:28.86 ID:NrWYHkGk
葵さんが私に被さって股間を顔に押し付ける。彼女の唇が私の肉棒――蟲ち○ぽを頬
張る。
私も彼女のオチンチン――が変貌した蟲ち○ぽを口に頬張る。カリ首に沿って舌を動かす。
彼女の舌も筋に沿って這い回る。互いの腰が自然と動く。口元から喉奥へ、浅く深くスト
ローク。時折ヴァギナから生える私の触手もフェラされる。私も蟲ち○ぽの根元にぶら下
がる睾丸を飴の様に舐めてしゃぶる。玉の間から竿先まで生えている瘤は吸盤の様だ。
パクパクと口を開いている。
彼女のアヌスから太い紐が何本も生えてくる。彼女の腸に居る触手だ。赤い鞭の様で幾
重にも節があり、そこから柔毛がぐるりと生えている。先端は白い瘤。それらが鼻先まで降
りてくる。この子らにもキスしてフェラしてあげる。
互いに責め合い、息が荒くなる。顔も紅潮して熱い。二人の汗が湯気となって立ち上る。
葵さんのカリが脈打ち切ない声が上がる。「出ちゃう!忍、イッちゃうよぉ!」
ビュルビューッ!彼女の蟲ち○ぽが痙攣して鈴口から射精する。すごい量、そして濃い。
口いっぱい放たれる。精液の中でたくさんの蟲が泳いでいる。ゴックン。私はそれを飲み
干した。苦いや。でも悪くないと思える。むせ返る精液が私を更に刺激して、私の蟲ち○
ぽもあふれそう。腰を激しく振り、彼女の喉まで蹂躙する。私もまたイッちゃう!
彼女の頷く合図と共に蟲ち○ぽが堰を切る。ビュッ!ビュッ!と粘液と子蟲を彼女の口の
中に放つ。彼女の喉が鳴る。全部飲み干してくれている。
ハアハアと二人の荒い息が部屋の中にこだまする。二人共ぐったり。二人の蟲ち○ぽも少
しグッタリ。でもすぐにムクムクと元気になる。まだ足りないのか、好きモノめ。
共に顔を見合わせて笑いあう。第3ラウンドはすぐに始まる。
お互いのお尻を合わせてアソコの肉棒を互いのお尻の穴に挿入。入れて出す。出して入
れる。私の肉壷に蠢く触手が葵さんの蟲ち○ぽをしごいていく。彼女の何重ものカリ首が
お尻の穴をめくっていく。私の蟲ち○ぽが彼女の肉壷の触手の森を犯す。
彼女のカリ首が膨らんでいくのが「見える」。私の蟲ち○ぽが先からほつれて何本にも開
放されていく。アヒィッ!薄皮を剥がされた蟲ち○ぽの一本一本に触手の森が絡みつく。
今までと何倍も違うクリアな快感!
「すごい。お尻の中で忍の蟲ち○ぽが暴れまくってる!」
私も負けじと葵さんにご奉仕。ヴァギナの奥から触手を出すと、彼女の玉と竿に絡みつけ
る。腸の奥から伸びた触手を蟲ち○ぽのカリに纏わせる。柔毛のやさしさと触手の激しさ
の二重責め。二人の結合部から愛液が零れ泡を吹く。ニチャニチャパンパンといやらしい
音が響く。
「ヤられっぱなしは、くやしいな。少しは反撃しないと、ね」と葵さんは攻めに出た。
彼女の蟲ち○ぽのカリ裏の触手が一斉に伸びていく。その無数の触手が私の森に遍く広
がっていく。そして子蟲を生む触手の口にはまり込む。一つ一つに、一本一本が。ヤダッ!
何コレ?無数のオ○ンコに無数のオチンチンをハメられた感じ!
「この身体も無敵じゃないからね。数多の快楽を得られるということは、こういう弱点に
もなるのさ」
葵さんの腰が激しく動く。アヌスが大腸が触手のオ○ンコが嬲られる。腸全体が第二の
ヴァギになる実感。これじゃあまるで尻○ンコ!
971 卒業研究[11/13] sage 2013/12/28(土) 20:11:57.00 ID:NrWYHkGk
二人の蟲ち○ぽが相手の尻○ンコをいじめあげる。二人の尻○ンコの触手の主が蟲ち○
ぽに絡みつき、鈴口を見つけるとそこから侵入。蟲ち○ぽの根元まで犯される。私も葵さん
も腰を振る。腰を振り続ける。未知の感覚!新しい快楽!
新たな興奮が蟲ち○ぽを更に勃起させる。もっと奥へ奥へ。蟲ち○ぽを犯す触手も奥へ奥
へ。そして引き抜く。外へ外へ。奥へ奥へ外へ外へ。オクヘソトヘオクヘソトヘ。
「いいイイ」「だめダメ」「気持ちいい」「すごい」「変になっちゃう」
私も彼女も言葉にならない。気持ちの全てが蟲ち○ぽと尻○ンコに持っていかれちゃう。
身体全体を使って大きく腰を振る。おっぱいも激しく揺れる。おっぱい子宮の子蟲が激し
く騒ぐ。血液に蟲のフェロモンが流れ全身を満たす。体中の蟲全てが快楽を称え、蟲の本
能が私に貴女に命令する。卵を放て。子蟲を放て。次の宿主へ!
うん、そうします。出したい。出させて。卵を子蟲を私の一部を貴女の中に!
はい、なります。宿主に。来て。孕ませて。卵を子蟲を貴女の一部を私の中に!!
もう蟲ち○ぽも尻○ンコもフィナーレが近い。来る来るクル!出る出るデル!!イッチャ
ウイッチャウイクイクイクイク……!!!
「あアァン!」私は鳴き、「ヒイィン!」貴女も鳴く。
ビュルビュルビュルビューッビューッ……ビューッ!
蟲ち○ぽが尻○ンコに精と子蟲を大量に吐き出す。お腹の中に白く熱いマグマが拡がって
いく。二人は同時に果てた。
その後はしばし二人で抱き合って眠っていた。眼が覚めたときは11時50分。2時間近くも寝
むっていた。体に毛布がかけられていたことに気づく。愛液でぐしょ濡れのシーツも二人が放
った蟲達もすっかり片付いている。誰か来た?
葵さんがデスクの上にメモを見つけた。そこにはこう記されている。
「おはよう。仲良きことは美しき哉。でも午後の講義には遅れないように。冴子」
教授に私達のあられもない姿を見られたのか。今の私はきっと顔が真っ赤っ赤だ。恥ずか
しくて穴を探して入りたい。
「隠したって無駄。教授は何でもお見通しさ」とは葵さんの言。肩をすくめておどけて答える。
一瞬何で?と思い、すぐに思い出した。お尻から「排泄」した蟲の種類で良子ちゃんとシた
のを看破したのは先輩だった。
葵さんは黒いボディタイツを持ってきた。予備があったんだ。背中の開いた口から脚を入れ
腕を通し身体全体にフィットさせる。今はかわいいペニスを股間のポケットに収めて背中の
ファスナーを閉める。彼女は別の白の服を私に持ってきた。広げてみると白いボディタイツ
だった。「忍っちもそれが要る年頃だからね。それはあげるから着てみなよ」
ありがとうございます。でも年頃って何ですか。
「寄生されてからもうすぐ一年。そろそろ自分の秘部の管理に気を使わなければいけない
年だよ」なるほど、これがあれば助かるかも。
早速ボディタイツに袖を通す。そして姿見で確認。白い絹地に褐色肌と桃色乳首が透け
て見える。今はささやかなクリトリスも綺麗にポケットに収まった。ウン!悪くない。
972 卒業研究[12/13] sage 2013/12/28(土) 20:14:12.13 ID:NrWYHkGk
昼食のとき、ふとした疑問を葵先輩に投げかけた。セックスのときアソコだけ――ヴァギ
ナだけは精や蟲を受け入れては駄目だ。と念押しされている。これは何故なんですか?
「私達の身体は普通の人と違うからね。寄生蟲をたくさん抱えているから」と先輩。
「理由は未だ不明なんだが、他の臓器への寄生はまだリスクが低いんだ。元に戻すこと
は困難だが、寄生された『人間』の域を保つことが出来る。だが、生殖器だけは別だ。
ここに寄生されたら、もう『戻れない』」いきなり重い話ですね。
先輩のペニスはあんなに変容してました。背中からも触手を生やしてたし。ということは
先輩は……。
「見ての通り、蟲に抱かれたのさ」ニッコリ顔。後悔なんかしてないよ、という答えだ。
シリアス話に心が怯んだけど、先輩の笑顔で覚悟は決まった。思い切って聞いてみる。
私は何時「越え」られるんでしょうか?
「即答だね。随分この肢体にご執心だね」先輩が私を指差し、それから袖口から触手
を出して振ってみせる。「それとも、蟲に心を奪われたかな」
今度は答えない。でも先輩は「お見通し」の様である。お互いの顔を見て笑いあう。
「『越える』か『越えられない』かは君の努力次第、研究の評価次第だね。卒業研究
が合格なら、人間を『卒業』できるよ」
なんと華の無い話。でも勉学に励むしかないか。それが私達の「生きる」道でもある。
午後の講義に出るために部屋を移動する。中庭に出たとき、そこには先客が居た。
何本もの触手の脚が膨らんだスカートの様。上半身は6対の乳房をスーツボタンに見
立て、触手の長髪をなびかせて立っていた。身の丈4m程の白亜の巨大生物。頭部
横には巨大な眼球。それがギョロリと私達を睨む。
こいつがこの世界の覇者。獰猛で名を馳せる触手生物。上界に居るはずの生物が何
故ここに?見上げると天蓋の一部が崩落して、そこから滝が流れ落ちている。この穴か
ら降りてきたのか?
恐怖で怯む私と裏腹に葵先輩は呑気している。まるで見知った顔の様。なんでそんな
余裕なんですか?
「フフフ、アレは教授だよ、忍っち」と落ち着いた声で先輩は言う。
あの怪物が教授?いや、教授は女性ですよ。先週もお会いしました。相変わらず切れ
長の眼がクールな美人教授で……。
そのとき怪物の頭が私達に向いた。そこにはこいつにあるはずの無いモノが付いていた。
人間の頭部だ。ラヴィアみたいな肉の割れ目から首から上が生えている。花弁が襟のよ
うだ。後頭部は肉のフードを被り、そこから触手の髪が生えている。頭(こうべ)がまるでク
リトリスみたいに見えるのは偶然か?
人間の頭は女性だった。教授の顔だ。その生物は教授の声で挨拶する。
「御機嫌よう二人共、ゆっくり休めたかしら。忍君はこの姿を見るのは初めてだった?」
ええ、それは、もう。感覚が麻痺してる。
教授を名乗る怪物がこちらに歩み寄る。触手スカートを乱さずにエレガントに。
「教授はこの生物に『寄生』しているんだよ」エッ?!先輩の補足に絶句!!
973 卒業研究[13/13] sage 2013/12/28(土) 20:15:01.74 ID:NrWYHkGk
私達人間はこの世界では生きてはいけない。だから地界に生活圏を作った。だが、それと
て完璧ではなく、何らかの対策を講じなくては死を待つのみである。
私達の研究室では、この動物界の頂点に立つこの怪物等の力を借りて生きる道を模索
している。己の身体を寄生蟲の群体と化し、蟲の力で他の生物と融合(寄生)する試み。
身体中から伸びる触手も、体内の蟲管もその為の道具であり「力」なのだ。
怪物のラヴィアが割れて、そこから中の生物が這い出てくる。ジュルリと音を立てて粘液
が滴り落ちる。裸体の背中から触手が伸びていて怪物のヴァギナへと続いている。股間に
何本もの白亜の触手が食いついている。そちらは怪物のものらしい。
それはどう見ても裸の女性で、とても見慣れた存在だった。確かに冴子教授だ。切れ長の
眼にマシュマロの巨乳。私よりも凄いクリトリスの肉棒。葵先輩と似た背中の触手羽衣。
寄生生物(マスター)が留守となった怪物のラヴィアから肉の孔が見える。孔は触手の森に
なっている。奥から溢れる粘液には教授が放った子蟲達が蠢いている。彼女と怪物の間
には触手の架け橋が架かっている。
「この触手と蟲の発するフェロモンでメガスクイームを操っているわ」と教授。
「単身では上界の大気は呼吸できないし食物も摂取できない。人間には科学技術の助
けがあるけど、それも何時かは壊れたり無くなったりする。この生物等に『バイオスーツ』に
なってもらえば、この子を介して大気も呼吸できるし食事もできるのよ」
そんな彼女の笑みは誇らしげである。でもそれだけではないでしょう。上気した頬からそ
れがわかる。この子との融合は……かなり凄いらしい。葵先輩の喉も鳴る。巨大生物の
瞳も語る。満更ではない様だ。
生か死か。性か死か。精か死か。それが「私達」の「生きる」道。
974 卒業研究 sage 2013/12/28(土) 20:18:01.69 ID:NrWYHkGk
以上です。不慣れな投稿ですみません。
「不気味なモノに寄生されて虜になる娘」と
「娘に寄生されて虜になる不気味なモノ」を両立させるネタをひねくって書いたものです。
片方は尻切れですが。
カーテンの隙間から差し込む朝日で目が覚めた。研究室の泊まりこみもすっかり慣れっこ
になった。日差しの中に吐く息が白く見える。水の音が遠くから聞こえる。雪解け水が滝
になって落ちてくるのだ。春ももう間近。
仮眠ベッドの上でしばしボーッとしていると、ケトルの笛が聞こえてきた。奥の部屋から
私を呼ぶ声がする。
「忍っち、早く起きなよ。顔を洗って朝食にしよう」
時計を見るとまだ7時である。ベッドから抜け出し声の主のところまで行くと、院生の葵
先輩が朝食を用意していた。
サラサラの黒髪ストレートヘアをアップに束ね、服もばっちり決めている。柔らかそうな
セーターにふくよかな胸がカーブを描く。黒ストッキングが脚線美を演出。白衣を着てい
なければ完璧(パーフェクト)である。朝早いのにマメでしかも美人さんである。時々、何
故こんな美人さんが院生などやっているのか不思議に思うこともある。
「さてさて、食事にしようよ。今日は午後の講義までにチャッチャと片付けなきゃいけな
いからね」
おまけにウキウキである。そうそう。今朝は昼までに片付けなければならないことがある
のだ。
この研究室の室長は冴子教授。彼女の指導の下、私達はある研究をしている。現在
私は卒業研究の真っ只中である。今日は半月に一度の定期観察だ。被検体の様子
を観察し記録する。被検体とは……この私である。
まがりなりにもカメラに写るので、身支度はばっちり決める。決めたいのである。だけど
このクセ毛だけはドライヤーを持ってしてもいうことを聞いてくれない。数十分の格闘の
末に諦めて、撮影の準備に移る。
機材は葵先輩が準備してくれている。私は服を脱いでいく。着ているものは全て脱ぐ。
しかし今朝は少々肌寒いので、ストッキングだけは履かせてもらう。手も冷えるのでつい
でに手袋も。そんな私の格好に先輩はクスリと笑い、そんなセクシーな格好をするならと
ストッキングとおそろいの白いストッキング地の手袋をくれた。
何故おそろいの手袋を持っているのだろう。そんな疑問が顔に出ていたのだろう。
「それは私のストッキングだよ」と先輩が答えた。
やや、これは恥ずかしい。間違えた?先輩、後で洗って返します。
「いいよ、それは忍っちにプレゼントしよう」
先輩はクスクスと笑って上機嫌である。
「その白い手袋とストッキングは、君の小麦色の肌にとても似合ってるからね」
962 卒業研究[02/13] sage 2013/12/28(土) 19:51:52.81 ID:NrWYHkGk
裸身となった私は白いカーテンの前に立ち、気をつけ。目の前には、先輩と三脚とカメラ
が立っている。葵先輩は片手を挙げて合図を送る。
「じゃあ、撮るよ~」という間も無くいきなりパシャリ。被検体の全身を記録する。
先輩の背後に姿見がある。そこに被検体が映っている。クセッ毛栗毛のボブカットに白い
手袋白いストッキング。二つの胸のふくらみはこの一年で立派に成長した。以前の貧乳が
嘘のよう。
今度は腕を水平にあげてパシャリ。そのまま左右に向いてパシャリ。最後に背中をパシャ
リ。パッと見、普通の女性と変わらない姿だけど、私の身体には秘密がある。
被検体の全身像を撮影した先輩は、なにやらいたずらっ子の微笑み。
「忍っちは見られると興奮するんだねえ。最初の頃は初心(ウブ)だったのになあ」
恥ずかしくて血のめぐりが良くなってるだけです。
「血ねえ。下の一箇所に集まってるように見えるけどなあ」
嗚呼そうですよ。恥ずかしくて下腹部に血が集まってますよ。なにしろ私のアソコから明らか
に女性のモノではない肉塊が――芋虫の様なものが何本も――屹立しているんだから。
これが私の秘密。
私の体内には何種類もの寄生生物が住まっている。一年前に研究所に入ってから、寄
生生物を「飼育」し、身体の変化と寄生生物の生態を観察し記録する。それが私の卒
業研究だ。
「次は局部の観察だね」と葵先輩。
先輩の指示するままに移動し、診察台(代わりのソファー)の上で仰向けに寝る。すぐ隣に
先輩のデスクがあり、そこのディスプレイに私が映っている。先のカメラはケーブルでコンピュ
ータに接続されていた。ちょっと何ですか先輩、これってすっごく恥ずかしいんですけど。
「忍っちもよく観察しないとね。自分の身体なんだから」
そう言って先輩はカメラを私の乳房に寄せる。ディスプレイに桃色の大地が現れる。乳輪
が大写しである。そこに銀色に光るモノが飛び込んできた。冷たい!ピンセットである。
「乳胞蟲の胸部への寄生から8ヶ月。順調に生長中。外観には特に異常は認められず。
被検体も至って――調子はどう?」
すっごく恥ずかしいんですってば。
「ふむ、いい加減慣れてくれないとねぇ。――至って健康体。しかし綺麗に育ったね。柔
らかくて気持ちいい」そうレポートしながら先輩の手が私の胸を撫でていく。くすぐったいです。
「ずいぶん張ってきたね。だいぶ溜まっているんじゃないかな。さて、中はどうかな」
先輩は観察部位をピンセットで指し示しながらレポートを続ける。
963 卒業研究[03/13] sage 2013/12/28(土) 19:53:52.89 ID:NrWYHkGk
「乳輪と乳首もやや肥大化。乳首先端に開口部が形成されている」
ピンセットが乳首の先端に触れ、乳首の先のすぼまった孔に潜り込む。普通の人間にはこ
んな孔は無い。冷たい&ゾクゾク!
ピンセットが孔を開いていくと、中の様子がさらけ出された。私のおっぱいの中!
「開口部から乳房の奥へ長さ4~5cmの管が続いている。白い脂肪質の壁に毛細血管が
縦横に張り巡らされて、表面には細かい襞がある」
その奥には何本も枝分かれした支管が形成され、そこから時折白い米粒が顔をのぞかせて
いる。その小さい塊こそ、私の胸を成長させた寄生生物。乳胞蟲はこの管の奥にコロニー
を形成し生活している。
ピンセットの先端が枝管の一つをこじ開けた。白いツブツブがびっくりしてのたうっている。何
匹も。
「乳胞蟲は乳房の組織と完全に同化している。管の一つ一つが固体で、奥には幼生の為
の子宮がある。同化した彼等の体はほとんど卵巣と子宮のみにまで退化して、宿主から
卵の為に栄養を供給するだけの器官と化している」
先輩の言うように、私の胸の中はこの卵の袋でいっぱいになっている。蟲の子宮の中で育
った子蟲がさっきの米粒の様なヤツ。これがたくさんおっぱいの中に詰まっている。
ピンセットが乳首の中をゆっくりと上下にストロークする。じわじわと気持ちがこみ上げ
てくる。蟲の子宮は既に私の臓器でもある。葵先輩が乳房を揉みあげると、管の奥から乳
白色の液がにじみ出てくる。
「こいつは血液を養分とする。卵に必要なのは糖や脂肪くらいで血球などは不要なんだ。
その成分は母乳に近いね」なんと、蟲のおっぱいですか。
さらに白い米粒も絞り出されてくる。白くてツルテンとしてウネウネしている。本当に米
粒みたい。そこが頭なのか、突起部の先端は少し紅をさしている。
乳首からピンセットを引き抜いていく。収縮する管に押されて液体と一緒に子蟲があふれ
てくる。そして乳首から白い液体と子蟲達がピュッと吹き出る。不思議な感覚。嫌いじゃ
ない。
私の肌の上でのたうつ蟲を先輩はピンセットで慎重につまみあげると、試験管の中に収め
ていく。こうして二十数匹のサンプルが収められた。蒸留水の中でたゆたう米粒。
「頭部に赤みが出てきたね。これが感染幼生だ。これが宿主にたどり着くと、二次幼生を
産む。それらが成虫になるのさ」
引き抜いたピンセットはその液体で濡れていた。先輩はそれを舐めてみろというかのよう
に私の口元に寄せる。少し躊躇の後ちょっとひと舐め。ちょっと甘い?
964 卒業研究[04/13] sage 2013/12/28(土) 19:55:43.04 ID:NrWYHkGk
次は……局部の撮影である。要するにアソコとお尻の穴である。これは毎度のことながら
恥ずかしい。だが、いい加減覚悟を決めて両足を開く。カメラ越しに私のアソコがディス
プレイに露わになった。葵先輩のレポートは続く。
「吻妖虫も寄生から8ヶ月経過。被験者のクリトリスの内部で蟲が成長し、親指大にまで
肥大化している。その周囲にも4本の触手が形成されている」
私の秘豆の中にはたくさんの線虫が体の奥から集まってきている。引き伸ばされて薄くな
った秘豆の粘膜越しにそれが見える。この大きさはもうお豆ではない。オチンチンである。
周囲に生える4本の触手は肉棒からあぶれて脇から生え出た蟲である。さっきから肉棒が
ビクンビクンと脈打っている。どんどん蟲が集まってきて大きくなっていく。撮影前から
2,3倍にはなっているかも。
「陰唇にも蟲が侵入し柔突起状になっている」
先輩がピンセットでラヴィアを開くと、そこは桃色の芝生があった。突起の幾つかが伸びて
ピンセットに触れようとする。ピンセットがブラシを撫であげると、ブラシの一本一本が瞬間
太ましく屹立し、私の中にゾクゾクと「快感」が走り抜ける。
「奥を見るよ」と先輩が告げる。わかりました。深呼吸してリラックス。冷たいクスコがヴァギ
ナに侵入しこじ開ける。それは私が初めて見る世界だった。
そこは粘膜から生える、色も形も大きさも様々な触手の森だった。白く細い糸くずのよう
なモノ。それが成長したようなピンク色の触手。先端がイソギンチャクの様な形のずんぐ
りしたものもいる。その森の奥には子宮口の番人の様に数本の太い触手がとぐろを巻い
て待ち構えている。それらが全て生きて蠢いていた。
「吻妖虫は宿主の生殖器に寄生し、群体を構成する。外陰部に寄生する固体と内陰
部のそれは明らかに形態が異なる。何故このような多様性が見られるのかは今もって不明。
子宮口周囲に生息する巨大な触手が成虫だ。――ぞっとしたかい?」
先輩が心配して私に尋ねる。いやあ、ショックじゃないというと嘘になりますけど。他人
のを見るのと自分のを見るのじゃ大違いですねえ。そんな私に先輩は暖かい笑みを送って
こう言った。
「まあ、私もそうだったからね。だが、悪いことばかりでもないよ。こうすると少しは気
分がマシになると思うよ」
先輩は粘液採集用の綿棒を持つと、私の中に挿入した。綿棒がヴァギナの森に入り込み
触手をやさしく撫でていく。その度に快感が肢体を満たしていく。それは衝撃の体験。
愛撫を受けて蟲達は悦びの化学物質(フェロモン)を私の体内に放つ。私の神経にささやき
かける。
965 卒業研究[05/13] sage 2013/12/28(土) 19:57:50.66 ID:NrWYHkGk
綿棒を引き抜こうとしたとき、子宮口の門番がそれに絡みついた。そのまま引き抜いてい
くと、触手達も一緒についてくる。葵先輩はそれらをつまむと、ゆっくりと私の中から引
き抜いていく。先輩の指を感じる。暖かい。そうして私の股間から長さ20cmくらいのピン
ク触手が三本引き出された。
触手から外気を感じる。少し寒い。先輩の暖かい肌に触れたいと思ったとそのとき、触
手が我が意に答えた。さらに伸びて先輩の指に巻きついていく。
「これはすごい。忍っちはもう触手を動かせるのかい?」先輩はびっくりしている。いいえ、
思ったことに触手が反応しただけです。
「ふふん、私の指をなぶりたいと思ったんだ」いえ、そうじゃないです、先輩。
「そういう悪い娘にはおしおきしないとね」先輩、悪い顔してますよ。
そういうと、先輩は触手が絡まる指を口元によせて、指ごとくわえ込んでしまった!
ハウッ!先輩の柔らかい唇と舌先を感じる。舌が「私」に絡み付いてくる。言葉にならな
い感覚。私の肢体は弓なりになる。
「やや?大丈夫かい、忍。すまないことをしたよ」先輩はちょっと狼狽。
最後はお尻。肛門の中を観察。「忍、これで最後だからがんばってね」と葵先輩。りょう
かいです。もうフラフラフワフワで意地をはる気力もありません。
体を反してうつぶせになりお尻を高く突き上げる。先輩にもカメラにも(私にも)お尻のすぼ
まりが丸見えである。ヒクヒクしている。アソコの割れ目から繊毛の森が見え隠れしていて、
そこから三本の触手が垂れていて、クリトリスの肉棒に絡みつく。下腹部に力を込めると
ウネウネ動く。ちょっとオウム貝に似てる?
「ふむ、綺麗だね。肛門の外観には特に変化は見られず。さっきからヒクヒクしてる。そ
れに濡れているじゃないか。ずっと我慢してたのかい?」
いいえ、先輩が色々を刺激するから来ちゃったんですよ。
「ああ、本当にすまなかったよ。でもこれでは中の観察が出来ないね」先輩は困り顔。今
日はもう終わりにしますか?
先輩は少し考えた後、隣の部屋に戻って何かを持ってきた。銀色のボールである。それを
私の両足の間に置いた。何?それに出せと仰るので?
「出そうなんでしょ?我慢は体に良くないよ。それにスッキリ出したら腸内の観察もできる
じゃないか」ああ、先輩。今のあなたはいたずらっ子の顔をしてますよ。
とはいえ私も我慢の限界で、それに「出すもの」はトイレや流し台で処理して良いもので
はない。嗚呼、もう覚悟を決めることにしましたよ。
「忍は怒った顔もかわいいな」
嗚呼にくたらしい!でもにくめない。
966 卒業研究[06/13] sage 2013/12/28(土) 20:00:56.76 ID:NrWYHkGk
ハヒッ!一度堰を切ったら止まらない。
ビュルビュルビュルッ!肛門を緩めた途端、白い粘液と固形物が滝の様に吹き出しボール
に溜まっていく。塊は数mmから数cm程の蛆虫や十数cm位の細長いミミズ,足の無い芋
虫,触覚の無いナメクジの様なモノ達。皆生きていて動いている。私の排泄物は全てこの
子らの餌となって残らない。費やされた「餌」で増えた蟲達が今の私の排泄物。
全てをボールに出しつくしても、肛門の奥にまだ異物感を感じる。お腹に力を入れてそれを
外に押し出してやる。
それはビュルリと肛門をこじ開けて出てきた。お尻の穴の襞を柔らかいモノがすり抜ける感覚
と、穴から「抜け出る」感覚を同時に感じる!珍しく葵先輩はびっくり顔である。いや、私も
びっくりですよ。こんな感覚今までにも無かったし。
それは一本の長く太い蟲だった。私の触手だ。乳白色の体に黄色い脂肪の筋。体表の片
面にはピンクの柔突起がみっしりと生えている。先に行くにつれ細くなり突起も増える。先端
は赤い髭をぐるりと蓄えている。こんなに立派なモノを今まで感じられなかったのは不思議で
ならない。それはね、と先輩が私に教える。
「平時は細く縮んでいるんだよ。先程からの蟲への刺激で産生されるフェロモンが多量とな
り、この蟲を量興奮状態にさせたんだ。それにしても立派に成長したものだね」
成る程です。先輩からこんなにいぢめられたのは初めてですから。しかし、この触手が私の
モノだなんて……。こうやって見られているのが恥ずかしい!
銀色ボールには白濁の粘液と蟲の群れ。ニチャニチャと音を立てている。葵先輩のレクチ
ャーは続く。
「腸毛線虫は腸内に寄生する。腸壁にコロニーを形成する。その中に様々な蟲も住み着
いている。定住する蟲は宿主によって異なる。薄紫のナメクジのようなヤツは吸虫だね」
ようく解っています。この半年で見慣れたモノですよ。この子達のおかげでトイレ要らず、便
秘の悩みからも開放されました。でも、毎日ひり出したこの子等の処理が大変ですよ。
「幾つか見慣れない子が混じってる……吸虫は良子君のだね。仲良くヤッてる様じゃない
か。ちょっと妬けるね」ますます恥ずかしい。蟲を見て判りますか。
良子は同期の娘でルームメイト。同じ研究室生でもある。大きさからいって先月か、私の
中に放った卵から成長したんだ。
「さて、余韻に浸っている暇は無いよ。内視鏡を入れるから楽にしてね」と先輩。ちょっと言
葉の端に棘がある感じ。
お尻のすぼまりに内視鏡のカメラが触れる。機嫌直しにちょっとお手伝い。さっきの感覚を
おさらいしてお尻の触手を動かしてみる。触手がコードに絡みつきそのまま中に引きずり込
む。我ながら器用なものだ。先輩も感嘆の声をあげる。
「これは便利だ。苦しくない?」いいえ、ちっとも。
「結構。ではカメラを奥まで引きこんでちょうだい」言われる通りに触手をお腹の中にしまい
こむ。一緒に内視鏡も大腸の中に引きずり込む。
967 卒業研究[07/13] sage 2013/12/28(土) 20:02:18.75 ID:NrWYHkGk
ディスプレイに私の直腸の中が写る。そこは太さ数mm,長さ1cmくらいの充血した柔毛の
森。奥から白いコードが手前まで伸びている。お尻から出てきた触手だ。このまま内視鏡
を奥まで引き連れていく。
カメラは大腸のさらに奥に進む。腸壁の柔毛は次第に細くなり密集度が上がっていく。森
の隙間は先程ボールに出した蟲達が身を隠すように暮らしている。まばらに太めの白い触
手が生えていて、そこをカメラがこすると、撫でられる感覚を覚えて私の肢体はピクンと
跳ねる。
「その触手には感覚神経が通っている。もっと発育すると周りの柔毛や蟲の徘徊を感じ
取ることが出来ると思うよ」と葵先輩。びっくり感心するも、それは日常に支障をきたすの
ではないかと、いささか心配。
盲腸まで来ると様子が一変する。お尻から出た触手の根元が見える。ここから伸びてきた
のか。周囲に似た形のミニサイズの触手が数本生えている。
「虫垂を棲家としているようだね。触手で見えないが、おそらく虫垂は蟲達の保育所とし
て発達している。草食動物とちょっと似てるね」
小腸へと続く腔から蟲の頭がちらりと覗いている。ボールの中でのたうつミミズと同じ奴
だ。「それは小腸を棲家とする条虫だね。小さい蛆虫が居ただろう?あれはこの蟲の片節
の中で孵化した幼生だよ。」
さて、これで観察は終わり。慎重に内視鏡を腸から引き抜いていく。そのとき珍しい光景
に出くわした。
腸壁から太くそびえる触手の何本かが膨らんでいく。先端の口が開き何かが出ようとして
いる。お腹の中が熱くなる。よく知っている、半年前から私の内からこみ上げる感覚。
触手の先端からピュッピュと何かが飛び出してきた。ひとつ、ふたつ……まだまだ出てく
る。小さい小さいアメーバが触手から産まれてくる。その度に心地よい疼きに襲われる。
似ていないが、この子等はあのボールの中身の芋虫の幼生だ。
「私の子でもある」と葵先輩。その通り、私の中には先輩の蟲も寄生している。異なる宿
主で発生した寄生生物達を同一の環境(ある固体)で生育させ、宿主への影響と発育
過程を観察し考察する。それが研究テーマだ。
「私の蟲の卵は腸壁に着床すると触手を形成する。これがセルカリア(第1幼生)。中でレ
ジア幼生(第2幼生)が育ち、それがこの小蟲達だ」先輩、なんだか嬉しそうですね。
「うちの子が君の体内(なか)で健やかに育っているのを確認できるのは嬉しいね」
最初のうちはわからなかったけど今ならなんとなくわかる。蟲が肉体と同化し、感覚を共
有していくにつれ、自分の一部に思えてくるのだ。私の子もみんなの中でこんな風に生き
てるんだろう。
ほっこりした雰囲気は直に吹き飛んだ。ずっと様々な孔の中から責められて、私の肢体に
は火が点いている。私の体内に蟲が渦巻いているのを感じる。体中の管の至る所がヴァ
ギナになりクリトリスになる感覚。
968 卒業研究[08/13] sage 2013/12/28(土) 20:04:32.95 ID:NrWYHkGk
画像も撮ったしサンプルも採集した。これで観察お仕舞い。でも私の疼きは納まらない。
葵先輩もそれをわかっている様だ。ニッコリ微笑んで頷くと白衣を脱いだ。
「まだ9時だから昼までには時間があるね。忍もスッキリしたい様だし、少し運動しよう
か」お願いします、先輩。もう我慢の限界です。って「も」って何ですか?
「君のあられもない姿を1時間も見せつけられたんだ。私の体も疼いちゃってね」
そういうと先輩は次々と服を脱ぎ、綺麗に畳んでデスクの上に置いていく。なにやってん
ですか……ドキドキです。
やがて先輩は黒ストッキング一枚の姿になった。いや、違う。脚を包むストッキングは体
全体を包みこむボディタイツだった。その薄い布地から透けて見える先輩の肢体はすごく
……エロ綺麗です。黒のボディタイツが肢体のラインを強調する。大きなおおっぱいとお
尻のラインが柔らかい。両乳首と臍に金のピアスをつけている。葵さんは少し恥ずかしそ
うに笑う。
「忍は私のヌードを見るのは初めてだっけ?」はい。いつもは着衣でシてましたから。
「そうだね。私くらいに『成長』すると、不意に漏らしてしまうのを防ぐためにボディタイツは
欠かせなくなるんだ。滅多にないけど、用心に越したことはないからね。ピアスも孔に栓を
するためのものなのさ」
そしてポーズを取ると、その場でクルリと回って体全体を私に見せてくれた。魅惑的な女
性のシルエットの中に異形の美が隠されていた。普通の人なら目を背けるソレを、私は
確かに綺麗だと思ってしまったのだ。
葵さんの豊かな乳房をサポートするように何本もの触手が背後から現れ持ち上げる。そ
れは背後から生えていた。背筋に何対もの乳首の様な突起が並び、触手が生えてくる。
腰周りにベルトのように巻きついているモノもいる。胸の乳首の孔が呼吸に合わせてパク
パクと開き、隙間から触手の束が見え隠れするがピアスで栓をされて外に出られない。
下腹部には私以上に発達した柔突起の森と充血した肉棒が屹立している。体節を持っ
た蟲の様で節のひとつひとつが鰓を張っている。陰毛も蟲と置き換わったのか、芝生の
様に触手が生えて蠢いている。肉棒を皺ひとつなくタイツが包み込む。おそらくボディタイ
ツは特注なのだろう。最初から股間にポケットが作られているのだ。
「体内で蟲が成長して同化が進むとこうなっていくんだ。体内に張り巡らされている循環
系に血管とリンパ管があるのは知ってるね?」私はうなずいて肯定。
「同化が進むと、それらの他に第三の循環系が作られる。蟲の通る蟲管さ。背中から
出ている触手もその管の延長なんだ。私の体の隅々まで張り巡らされている」
お尻にもそれがあるのか、股間から触手が伸びて太ももに巻きついていく。脇から伸びた
それは二の腕を伝い手首まで届く。
突然ビリビリと音が鳴る。葵さんを包む触手の蔦が解かれていく。それがボディタイツを
破っていく音だ。体中の至る所に伝線が走り、あっという間に全てや破り捨てられた。白
い肢体が露わになる。彼女は全くの全裸になった。身体に纏いつく触手が羽衣の様だ。
葵さんはピアスを外しながら一言。「さて、楽しもうか」
969 卒業研究[09/13] sage 2013/12/28(土) 20:06:41.71 ID:NrWYHkGk
最初は軽いキス。次第に舌を絡めあう。向かい合って抱きしめあう。お互いのおっぱいが
つぶれあう。乳首と乳首がキス。そして口を開けてディープキス。葵さんの乳首の触手が
私の孔の中に入ってくる。アソコの肉棒もじゃれ合いを始める。互いに擦りあう。
「この短時間によく動かせるようになったね。上手いよ」と彼女がささやく。えへへ、そ
れほどでも。
私の乳首は彼女の乳首にフェラされ、彼女の乳首ち○ぽに犯される。優しいけど激しい
責めは、長い時間蟲から性の刺激を受けた私にはもう限界。御免なさい。もぉ出ます。
「いいよ、そのまま出して」その声でイッちゃいます!
ビュルリ!乳首から射乳。合わせて子蟲も発射する。葵さんの乳首がゴクゴクと音をたて
てそれを飲む。乳首のキスの隙間からお乳が漏れ出る。
「すごい。私のおっぱいの中で、君の子蟲が暴れまわってる」彼女のうっとりとした顔はすご
くカワイイ。そこで彼女はひらめいた。
「お礼に君のおっぱいに私の子を引越しさせちゃう」
私のおっぱいに潜り込んでいる乳首ち○ぽがさらに奥へ侵入する。狭い肉壁をかき分けて
奥へ奥へ。乳首ち○ぽはおっぱいの奥底にある蟲の子宮に収まりとぐろを巻く。
乳首同士のキスが終わる。彼女の乳首はまだパクパクと口を開いている。お乳の涎がこぼ
れ、子蟲が何匹かこぼれ出す。私の乳首の先には触手が何本かのたうっている。だんだん
奥へ進んでいき、そのうち見えなくなった。
「その蟲は卵が詰まっているの。君のおっぱい子宮を借りて卵を孵し、その中で育っていく
んだ」
次は両足を開いてお互いの秘部を見せ合いっこ。
葵さんのアソコを見るのは初めて。外陰唇がぷっくりボールの様に膨らんでいる。ボール
の谷間に疣が並び肉棒の先まで続いている。私のアソコと随分違う。これはまるで……。
「男の様かい?」ええ、まあ。私の困惑に彼女はクスリ。今度はちょっと苦笑い。
「男だよ。だったというべきかな。寄生蟲が私をこのように改造したのさ」
なんと、彼女は彼だったんですか。でもどうりで、ちょっと勇ましい口調なんだ。
「彼女でいいよ。シルエットはどう見ても女性だし、蟲のホルモンの所為で感受性もかなり
女性的に傾いていると感じる」それを聞いてちょっと安心。この曲線美(一部を除く)を見て
「彼」は無いなあと思っていたので。でも、改めて寄生蟲の黒い一面を思い知る。己
の生殖の為にここまで宿主を改造するんだ。だけど……男性をここまで美人さんに変身さ
せるのなら、それもまたアリかな、と不埒なことをちょっとだけ思う。
「ペニスの海綿体にには蟲管が縦横に張り巡らされていて、勃起と共に蟲がここに集まって
くるんだ。」
葵さんの蛇腹状のオチンチンのカリ首ひとつひとつが、数多の蟲の頭が張り出してできた
ものだったのだ。カリ裏には突起がいっぱい生えている。よく見ると二つのボールが蠢いて
いる。中に何か居る?
「睾丸に蟲が纏わりついているんだ。精嚢も蟲の棲家になってかなり大きくなってる。射精
の量はかなりのものだよ」
その蟲の卵は無数の精子を纏って動力を得るのだそうだ。そして射精と共に卵も次の宿
主の元に行く。なんて生命力なんだろう。
970 名無しさん@ピンキー sage 2013/12/28(土) 20:08:28.86 ID:NrWYHkGk
葵さんが私に被さって股間を顔に押し付ける。彼女の唇が私の肉棒――蟲ち○ぽを頬
張る。
私も彼女のオチンチン――が変貌した蟲ち○ぽを口に頬張る。カリ首に沿って舌を動かす。
彼女の舌も筋に沿って這い回る。互いの腰が自然と動く。口元から喉奥へ、浅く深くスト
ローク。時折ヴァギナから生える私の触手もフェラされる。私も蟲ち○ぽの根元にぶら下
がる睾丸を飴の様に舐めてしゃぶる。玉の間から竿先まで生えている瘤は吸盤の様だ。
パクパクと口を開いている。
彼女のアヌスから太い紐が何本も生えてくる。彼女の腸に居る触手だ。赤い鞭の様で幾
重にも節があり、そこから柔毛がぐるりと生えている。先端は白い瘤。それらが鼻先まで降
りてくる。この子らにもキスしてフェラしてあげる。
互いに責め合い、息が荒くなる。顔も紅潮して熱い。二人の汗が湯気となって立ち上る。
葵さんのカリが脈打ち切ない声が上がる。「出ちゃう!忍、イッちゃうよぉ!」
ビュルビューッ!彼女の蟲ち○ぽが痙攣して鈴口から射精する。すごい量、そして濃い。
口いっぱい放たれる。精液の中でたくさんの蟲が泳いでいる。ゴックン。私はそれを飲み
干した。苦いや。でも悪くないと思える。むせ返る精液が私を更に刺激して、私の蟲ち○
ぽもあふれそう。腰を激しく振り、彼女の喉まで蹂躙する。私もまたイッちゃう!
彼女の頷く合図と共に蟲ち○ぽが堰を切る。ビュッ!ビュッ!と粘液と子蟲を彼女の口の
中に放つ。彼女の喉が鳴る。全部飲み干してくれている。
ハアハアと二人の荒い息が部屋の中にこだまする。二人共ぐったり。二人の蟲ち○ぽも少
しグッタリ。でもすぐにムクムクと元気になる。まだ足りないのか、好きモノめ。
共に顔を見合わせて笑いあう。第3ラウンドはすぐに始まる。
お互いのお尻を合わせてアソコの肉棒を互いのお尻の穴に挿入。入れて出す。出して入
れる。私の肉壷に蠢く触手が葵さんの蟲ち○ぽをしごいていく。彼女の何重ものカリ首が
お尻の穴をめくっていく。私の蟲ち○ぽが彼女の肉壷の触手の森を犯す。
彼女のカリ首が膨らんでいくのが「見える」。私の蟲ち○ぽが先からほつれて何本にも開
放されていく。アヒィッ!薄皮を剥がされた蟲ち○ぽの一本一本に触手の森が絡みつく。
今までと何倍も違うクリアな快感!
「すごい。お尻の中で忍の蟲ち○ぽが暴れまくってる!」
私も負けじと葵さんにご奉仕。ヴァギナの奥から触手を出すと、彼女の玉と竿に絡みつけ
る。腸の奥から伸びた触手を蟲ち○ぽのカリに纏わせる。柔毛のやさしさと触手の激しさ
の二重責め。二人の結合部から愛液が零れ泡を吹く。ニチャニチャパンパンといやらしい
音が響く。
「ヤられっぱなしは、くやしいな。少しは反撃しないと、ね」と葵さんは攻めに出た。
彼女の蟲ち○ぽのカリ裏の触手が一斉に伸びていく。その無数の触手が私の森に遍く広
がっていく。そして子蟲を生む触手の口にはまり込む。一つ一つに、一本一本が。ヤダッ!
何コレ?無数のオ○ンコに無数のオチンチンをハメられた感じ!
「この身体も無敵じゃないからね。数多の快楽を得られるということは、こういう弱点に
もなるのさ」
葵さんの腰が激しく動く。アヌスが大腸が触手のオ○ンコが嬲られる。腸全体が第二の
ヴァギになる実感。これじゃあまるで尻○ンコ!
971 卒業研究[11/13] sage 2013/12/28(土) 20:11:57.00 ID:NrWYHkGk
二人の蟲ち○ぽが相手の尻○ンコをいじめあげる。二人の尻○ンコの触手の主が蟲ち○
ぽに絡みつき、鈴口を見つけるとそこから侵入。蟲ち○ぽの根元まで犯される。私も葵さん
も腰を振る。腰を振り続ける。未知の感覚!新しい快楽!
新たな興奮が蟲ち○ぽを更に勃起させる。もっと奥へ奥へ。蟲ち○ぽを犯す触手も奥へ奥
へ。そして引き抜く。外へ外へ。奥へ奥へ外へ外へ。オクヘソトヘオクヘソトヘ。
「いいイイ」「だめダメ」「気持ちいい」「すごい」「変になっちゃう」
私も彼女も言葉にならない。気持ちの全てが蟲ち○ぽと尻○ンコに持っていかれちゃう。
身体全体を使って大きく腰を振る。おっぱいも激しく揺れる。おっぱい子宮の子蟲が激し
く騒ぐ。血液に蟲のフェロモンが流れ全身を満たす。体中の蟲全てが快楽を称え、蟲の本
能が私に貴女に命令する。卵を放て。子蟲を放て。次の宿主へ!
うん、そうします。出したい。出させて。卵を子蟲を私の一部を貴女の中に!
はい、なります。宿主に。来て。孕ませて。卵を子蟲を貴女の一部を私の中に!!
もう蟲ち○ぽも尻○ンコもフィナーレが近い。来る来るクル!出る出るデル!!イッチャ
ウイッチャウイクイクイクイク……!!!
「あアァン!」私は鳴き、「ヒイィン!」貴女も鳴く。
ビュルビュルビュルビューッビューッ……ビューッ!
蟲ち○ぽが尻○ンコに精と子蟲を大量に吐き出す。お腹の中に白く熱いマグマが拡がって
いく。二人は同時に果てた。
その後はしばし二人で抱き合って眠っていた。眼が覚めたときは11時50分。2時間近くも寝
むっていた。体に毛布がかけられていたことに気づく。愛液でぐしょ濡れのシーツも二人が放
った蟲達もすっかり片付いている。誰か来た?
葵さんがデスクの上にメモを見つけた。そこにはこう記されている。
「おはよう。仲良きことは美しき哉。でも午後の講義には遅れないように。冴子」
教授に私達のあられもない姿を見られたのか。今の私はきっと顔が真っ赤っ赤だ。恥ずか
しくて穴を探して入りたい。
「隠したって無駄。教授は何でもお見通しさ」とは葵さんの言。肩をすくめておどけて答える。
一瞬何で?と思い、すぐに思い出した。お尻から「排泄」した蟲の種類で良子ちゃんとシた
のを看破したのは先輩だった。
葵さんは黒いボディタイツを持ってきた。予備があったんだ。背中の開いた口から脚を入れ
腕を通し身体全体にフィットさせる。今はかわいいペニスを股間のポケットに収めて背中の
ファスナーを閉める。彼女は別の白の服を私に持ってきた。広げてみると白いボディタイツ
だった。「忍っちもそれが要る年頃だからね。それはあげるから着てみなよ」
ありがとうございます。でも年頃って何ですか。
「寄生されてからもうすぐ一年。そろそろ自分の秘部の管理に気を使わなければいけない
年だよ」なるほど、これがあれば助かるかも。
早速ボディタイツに袖を通す。そして姿見で確認。白い絹地に褐色肌と桃色乳首が透け
て見える。今はささやかなクリトリスも綺麗にポケットに収まった。ウン!悪くない。
972 卒業研究[12/13] sage 2013/12/28(土) 20:14:12.13 ID:NrWYHkGk
昼食のとき、ふとした疑問を葵先輩に投げかけた。セックスのときアソコだけ――ヴァギ
ナだけは精や蟲を受け入れては駄目だ。と念押しされている。これは何故なんですか?
「私達の身体は普通の人と違うからね。寄生蟲をたくさん抱えているから」と先輩。
「理由は未だ不明なんだが、他の臓器への寄生はまだリスクが低いんだ。元に戻すこと
は困難だが、寄生された『人間』の域を保つことが出来る。だが、生殖器だけは別だ。
ここに寄生されたら、もう『戻れない』」いきなり重い話ですね。
先輩のペニスはあんなに変容してました。背中からも触手を生やしてたし。ということは
先輩は……。
「見ての通り、蟲に抱かれたのさ」ニッコリ顔。後悔なんかしてないよ、という答えだ。
シリアス話に心が怯んだけど、先輩の笑顔で覚悟は決まった。思い切って聞いてみる。
私は何時「越え」られるんでしょうか?
「即答だね。随分この肢体にご執心だね」先輩が私を指差し、それから袖口から触手
を出して振ってみせる。「それとも、蟲に心を奪われたかな」
今度は答えない。でも先輩は「お見通し」の様である。お互いの顔を見て笑いあう。
「『越える』か『越えられない』かは君の努力次第、研究の評価次第だね。卒業研究
が合格なら、人間を『卒業』できるよ」
なんと華の無い話。でも勉学に励むしかないか。それが私達の「生きる」道でもある。
午後の講義に出るために部屋を移動する。中庭に出たとき、そこには先客が居た。
何本もの触手の脚が膨らんだスカートの様。上半身は6対の乳房をスーツボタンに見
立て、触手の長髪をなびかせて立っていた。身の丈4m程の白亜の巨大生物。頭部
横には巨大な眼球。それがギョロリと私達を睨む。
こいつがこの世界の覇者。獰猛で名を馳せる触手生物。上界に居るはずの生物が何
故ここに?見上げると天蓋の一部が崩落して、そこから滝が流れ落ちている。この穴か
ら降りてきたのか?
恐怖で怯む私と裏腹に葵先輩は呑気している。まるで見知った顔の様。なんでそんな
余裕なんですか?
「フフフ、アレは教授だよ、忍っち」と落ち着いた声で先輩は言う。
あの怪物が教授?いや、教授は女性ですよ。先週もお会いしました。相変わらず切れ
長の眼がクールな美人教授で……。
そのとき怪物の頭が私達に向いた。そこにはこいつにあるはずの無いモノが付いていた。
人間の頭部だ。ラヴィアみたいな肉の割れ目から首から上が生えている。花弁が襟のよ
うだ。後頭部は肉のフードを被り、そこから触手の髪が生えている。頭(こうべ)がまるでク
リトリスみたいに見えるのは偶然か?
人間の頭は女性だった。教授の顔だ。その生物は教授の声で挨拶する。
「御機嫌よう二人共、ゆっくり休めたかしら。忍君はこの姿を見るのは初めてだった?」
ええ、それは、もう。感覚が麻痺してる。
教授を名乗る怪物がこちらに歩み寄る。触手スカートを乱さずにエレガントに。
「教授はこの生物に『寄生』しているんだよ」エッ?!先輩の補足に絶句!!
973 卒業研究[13/13] sage 2013/12/28(土) 20:15:01.74 ID:NrWYHkGk
私達人間はこの世界では生きてはいけない。だから地界に生活圏を作った。だが、それと
て完璧ではなく、何らかの対策を講じなくては死を待つのみである。
私達の研究室では、この動物界の頂点に立つこの怪物等の力を借りて生きる道を模索
している。己の身体を寄生蟲の群体と化し、蟲の力で他の生物と融合(寄生)する試み。
身体中から伸びる触手も、体内の蟲管もその為の道具であり「力」なのだ。
怪物のラヴィアが割れて、そこから中の生物が這い出てくる。ジュルリと音を立てて粘液
が滴り落ちる。裸体の背中から触手が伸びていて怪物のヴァギナへと続いている。股間に
何本もの白亜の触手が食いついている。そちらは怪物のものらしい。
それはどう見ても裸の女性で、とても見慣れた存在だった。確かに冴子教授だ。切れ長の
眼にマシュマロの巨乳。私よりも凄いクリトリスの肉棒。葵先輩と似た背中の触手羽衣。
寄生生物(マスター)が留守となった怪物のラヴィアから肉の孔が見える。孔は触手の森に
なっている。奥から溢れる粘液には教授が放った子蟲達が蠢いている。彼女と怪物の間
には触手の架け橋が架かっている。
「この触手と蟲の発するフェロモンでメガスクイームを操っているわ」と教授。
「単身では上界の大気は呼吸できないし食物も摂取できない。人間には科学技術の助
けがあるけど、それも何時かは壊れたり無くなったりする。この生物等に『バイオスーツ』に
なってもらえば、この子を介して大気も呼吸できるし食事もできるのよ」
そんな彼女の笑みは誇らしげである。でもそれだけではないでしょう。上気した頬からそ
れがわかる。この子との融合は……かなり凄いらしい。葵先輩の喉も鳴る。巨大生物の
瞳も語る。満更ではない様だ。
生か死か。性か死か。精か死か。それが「私達」の「生きる」道。
974 卒業研究 sage 2013/12/28(土) 20:18:01.69 ID:NrWYHkGk
以上です。不慣れな投稿ですみません。
「不気味なモノに寄生されて虜になる娘」と
「娘に寄生されて虜になる不気味なモノ」を両立させるネタをひねくって書いたものです。
片方は尻切れですが。
吸虫セミニ・デンティ
800 名無しさん@ピンキー 2013/11/17(日) 17:23:50.72 ID:bY+F2Qhs
今夜あたりに一本投下してみようかと。
このスレ民の口に合うかはわからないけど……
これまでROM専だったが、少しでも活気づいて供給サイドが増えることを願って。
801 名無しさん@ピンキー sage 2013/11/17(日) 21:29:32.93 ID:UbEVeKw6
はよはよ
802 名無しさん@ピンキー 2013/11/17(日) 22:32:02.10 ID:bY+F2Qhs
2chに投下するのはじめてでいまひとつ勝手がわからないが、規制とか連投制限とかかからないことを祈って……
803 吸虫セミニ・デンティ(1/18) 2013/11/17(日) 22:32:56.99 ID:bY+F2Qhs
けたたましく雄叫びをあげる鳥の声。
低地では一年を通して嫌になるほどの強烈な熱暑も、標高1000メートルを越えるここまでくるとむしろ涼しいほどともいえる。
日本であれば膝下程度の植物も、人を見下ろすかのような巨大な異様を見せつけていた。
毎日のように、しかも突如として降り始める、猛烈な豪雨――スコールが、この地の高湿な気候を保ち、それによって多彩な生物相を維持しているのだろう。
珍妙にして怪奇、極彩色の動植物が跋扈するこの地は、東南アジアは某国の密林。
技術発展により、衛星写真から地球を俯瞰することができるようになった。しかしそれでも、人の知らない場所や物は、この星にもまだまだ多く存在する。
日本人をはじめとした外国人は当然のこととして、現地民ですら立ち入ったことのない――より正確な表現としては、厳密な意味での《現地民》が存在すらしない――正真正銘の未踏の地。そのひとつが、このジャングルであった。
804 吸虫セミニ・デンティ(2/18) 2013/11/17(日) 22:34:32.44 ID:bY+F2Qhs
未踏の地には当然、未だ誰も目にしたことのない生物が多数生息している。それを発見、記載するのが一行の目的である。
藤咲陽菜もそのうちの一人であり、一行の紅一点でもある。
幼い頃から泥臭い遊びが好きだった彼女は、同世代の同性が可愛らしい服を眺め、羨んでいる間も、男子と一緒になって野山を駆け巡っていた。
三つ子の魂百までとでもいうべきか、大学院を卒業してもそれは変わらず、異性からもほとんど男友達と接するようにして扱われている。
それもあってか、陽菜自身は自分の容姿に関して極めて無頓着だ。
顔立ちは至極整っており、よくよく同性からは勿体ないとも、ズルいとも言われるものの、本人にまるで興味がないのだから如何ともしようがない。
このような未踏の地でキャンプを行なうという、年頃の女性としてみれば受け入れがたいであろうことも、当然のこととして受け入れている。
人の手の届かない、鬱蒼とした自然の中にあって、陽菜は恐いというよりもわくわくとした気持ちが勝っていた。
そしてもちろん、一行の全員が同じ気持ちだろう、とも。
研究チームの数は二十人ほど、毎日キャンプの番と食事の担当を当番制で交代していく方式だ。
805 吸虫セミニ・デンティ(2/18) 2013/11/17(日) 22:35:02.42 ID:bY+F2Qhs
陽菜は今朝、起きてから、熱っぽさを感じていた。
各種ワクチンは接種済みだが、前人未到の地、どのような未知のウイルスが存在していてもおかしくない。
このような場所へ調査に来ることができるのは、下手をするともう二度と来ないかもしれない。多少の無理をしてでも、フィールドワークをしておきたい。
そう感情的には思う一方で、陽菜の理性はしっかりとした休養の必要性を理解していた。
医者に診てもらうには、このキャンプ地を離れ、近くの――といったところで半日はかかる――村へといき、そこから更に一日は車に揺られる必要がある。つまり、往復で最低でも三日間はかかるわけで、隊のメンバーに多大な迷惑をかけることになる。
今の状態は微熱程度。普段であれば気にせずに動いてしまうところだが、一番悪いのは、無理をして、メンバーに迷惑をかけることだ。
仕方がない、と溜息を吐き、陽菜は調査隊のリーダーである宮村へと声をかけた。
「ごめんなさい。ちょっと熱っぽくて……」
「そうか。妙な病気があってもおかしくないし、気をつけるに越したことはない。今日は俺と山尾がテント番だが、代わってやるよ」
806 吸虫セミニ・デンティ(4/18) 2013/11/17(日) 22:36:35.03 ID:bY+F2Qhs
陽菜の言葉に宮村は逡巡もなくそう申し出ると、早々に調査の準備をはじめた。
しばらくして、起きてきた他のメンバーたちも含めて全員で朝食を終えると、宮村の口から当番の交代とそれに伴う編成の変更が伝えられた。
食事も終わり、調査チームが出発際、宮村は藤咲に、
「メシも、まぁ山尾に任せておけばいい。今日は一日、ゆっくり寝てろ。その間に、俺は大発見をしてきてやるからさ」
と、冗談めかして嘯いた。
「もう宮村さん、そんなこと言われたら、ゆっくり休んでなんていられないじゃないですかぁ。無理にでも行っちゃいますよ?」
「まっ、それもそうだな。つっても安心しろ、ちゃんと共同研究者のところに連名で名前入れてやるからな!」
「そういう問題じゃありませんってぇ」
「まぁ、つい一昨日も、お前は新種と思われる吸虫を見つけたわけだし、少しくらい休んだ方が丁度いい」
そんな軽口の応酬を終えると、宮村は大きな荷物を背負いあげ、他のメンバーたちと共に調査に出ていった。
807 吸虫セミニ・デンティ(5/18) 2013/11/17(日) 22:37:19.04 ID:bY+F2Qhs
「じゃあ、あとは任せたぞ。藤咲はちゃんと休むこと」
「はーい」
メンバーたちが出発すれば、残されるのは陽菜と山尾の二人のみだ。
「んじゃ今日の仕事は……と言いたいところだけど、体調の悪い奴に無理をさせるわけにもいかないからな」
「迷惑をかけてしまってごめんなさい」
殊勝に謝罪する陽菜に、山尾は苦笑。
「そのまま黙って頑張って、その結果倒れられたらもっと迷惑がかかる。そうならないように自己申告した奴を責める奴はここにはいないさ」
「ありがとうございます。今日一日、全力で休んで快復に努めます!」
「全力で休む、ってなぁ。ホント、藤咲はマジメだなぁ。ま、宮村さんの言う通り、ゆっくり寝てな」
「はい」
808 吸虫セミニ・デンティ(6/18) 2013/11/17(日) 22:37:54.61 ID:bY+F2Qhs
仲間たちの気遣いを受け、陽菜は自身の寝床であるテントへと戻る。
だが熱っぽいとはいえ、意識が朦朧とすることもなく、起きがけで眠気もそうそうない。とはいえ、快復させると言った手前、出来る限りのことをするのが筋というものだ。そう真面目な陽菜は思い、薄いシュラフの中に潜り込んでまぶたを閉じる。
そのまま、しばらくしていると、不意に、声が聞こえた。
――ホシイ。
と。
思わず両目を開き、あたりを見回してみるも、テントの中には陽菜以外に誰もいはしない。疲れからくる幻聴だろうか、と自分に苦笑し、再びまぶたを閉じようと思ったそのとき、陽菜は自分の中にある《熱》に気づく。
風邪や病気からくる発熱とはどこか違う、《熱》は、どちらかというとカイロを握り締めているかのような、より直接的な熱であった。
一度自覚しはじめると、《ソレ》は加速度的に強まっていく。
809 吸虫セミニ・デンティ(7/18) 2013/11/17(日) 22:39:07.25 ID:bY+F2Qhs
「え、何よ、これ……」
まるで、自分の中で炎が燃えているかのような異常な感覚に、陽菜は戸惑いを覚える。
熱い。熱い熱い熱い熱い熱いアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイ。
シュラフを剥ぎ、額に手を当てると、確かに熱い。自分の頬に朱が差しているのがわかる。
発熱の元となっているのは下腹部だ。そこから、まるで何かを訴えかけるかのように、熱を放っている。
そこまで考えて、陽菜は自分の思考に違和感を覚える。まるで、自分の腹の中に何かがいるかのように考えている自分に。
――ホシイ。
欲しい? 何が?
気付けば、自身の内から漏れ出る謎の声に、問い返している自分がいた。
わからない。陽菜には何もわからない。ただ、彼女の身体は答えを知って、動いていた。
810 吸虫セミニ・デンティ(8/18) 2013/11/17(日) 22:40:32.74 ID:bY+F2Qhs
動きやすさを追求したズボンを下ろし、女らしい飾り気のないショーツの下に手を滑り込ませる。ねっちょりとした粘液がショーツには染み込み、重みを感じさせるものとなっていた。その重みやぬめりが、今の陽菜には何故か好ましいものに感じられた。
うっすらとしか毛のはえていない花園を越え、ショーツを湿らせる淫液の根源たる秘裂へと指は進む。
「ぅんぁっ!」
小さな、しかし確かな嬌声が、陽菜の口から漏れる。
自慰行為も、一、二度程度しか経験がないし、それがそれほど気持ちの良いことであるとも思っていなかった陽菜にとって、今この瞬間に得られたモノは、生まれて初めて感じる、確たる性的快楽であった。
自身の内側より響く声に、突き動かされるように、一度快楽の味を占めたその身は、貪欲により強い快楽を求めて指を這わせる。
くちゅ、くちゅ、ぐちょ、ねちょ、と。
鳥獣や虫の声響く林内のテントで、淫らな水遊びの音が響き続ける。
812 吸虫セミニ・デンティ(9/18) 2013/11/17(日) 22:41:22.14 ID:bY+F2Qhs
誰に見られているわけでもないのに、まるで見せ付けるかのようにM字に開脚し、ピンク色の割れ目を自らの指で犯してゆく。
「ぁっ、ぁっ、ぁっ、んぁぁっ、ぁっ……!」
陽菜の、土ばかりを触っているせいか平均的な女性よりもやや太い指は、彼女のほぼ触れたことのない快楽部位を適切に刺激し、自身の脳に快楽刺激を与え続ける。
――ホシイ。
そう、欲しい。
ぐちゅ、ぶちょ、にちゃ、くちょ。
メンバーに休むと言ってオナニーをしているという事実や、耳に届く淫猥な水音が、陽菜に背徳的な快感を与える。
それは明らかな異常事態だった。
性に無頓着で、生物学的な意味ではともかく、ほぼ性的な知識の皆無である陽菜が的確に快楽を得ていることも、そもそも、突如としてこのような淫行を行い始めたことも、だ。
813 吸虫セミニ・デンティ(10/18) 2013/11/17(日) 22:42:11.20 ID:bY+F2Qhs
しかし、それを異常と認識することは、陽菜にはもはや出来ないことだった。
胎の内から響く、渇望の声に操られるように快楽を貪り、そしてその快楽に堕ちてゆく。
「も、っとぉ、ほ、し、ぃぃっ……」
違う。
何かが、違う。
そんな風に考えていると、唐突に、テントの入り口が開かれた。
「おーい、藤咲、昼メシだ、ぞ……ってうおっ!」
現れたのはもちろん、キャンプの番をしていた山尾だった。
異性のテントを前置きなく開けるというのは少々マナー違反というべきだろうが、同性のような扱いを受けることを自ら望んですらいた陽菜にも原因がある。
814 吸虫セミニ・デンティ(11/18) 2013/11/17(日) 22:42:41.41 ID:bY+F2Qhs
「すっ、すまんっ、その、昼飯だからな!」
山尾は陽菜の艶姿に頬を染めながら、謝罪だけを残してその場を去ろうとする。
しかし陽菜の胸中に去来したのは、羞恥の感情ではなかった。
より正確にいうならば、羞恥の感情は確かに存在する。だが、それはむしろ行為を止めるためのストッパーではなく、快楽を促進するスパイスのひとつであった。
「待って、山尾さぁん」
くちゅ、にゅちゅ、と。
淫裂に指を突きこみ、かき回す快楽行為を続けたまま、その瞳は山尾の股間へと釘付けになる。
陽菜は山尾のズボンの股間の部分がテントを張っていることに気づくと、意識したこともなかった同僚の《牡》を視線から離すことができない。
キュン、キュン、と、胎の奥底から、音ならぬ音が、陽菜の理性を削ってゆく。
815 吸虫セミニ・デンティ(12/18) 2013/11/17(日) 22:43:18.43 ID:bY+F2Qhs
――駄目、子宮が疼いて、ガマンなんて、出来ない。
「そう……おひる、ごはん、でした、よね……」
陽菜は、それまで見せたこともないような、《女》の、否、《牝》の表情を浮かべ、笑う。
「ちょうど、お腹すいてたんです……」
陽菜は自らの腹をさする。その所作は、我が子を愛でる母親のそれを思わせた。
「この仔、たちも……」
ぼそりと、呟く。その声は、おそらく山尾には届いてはいなかったし、陽菜自身、自分が何を言っているのか、ほとんど理解していなかった。
「ごはん、ください」
言って、腰を突き出し、ラヴィアを広げ、かき混ぜ過ぎで泡立ちはじめた淫液まみれの性器を見せつける。
――ああ、私は……
816 吸虫セミニ・デンティ(13/18) 2013/11/17(日) 22:43:58.73 ID:bY+F2Qhs
なんて破廉恥なことを口にしているだろうか、と陽菜は内心で、誰にというわけでもなく呟く。
山尾のことは決して嫌いというわけではない。むしろ好嫌でいえば好きといっていいだろう。だがそれはあくまで友人として、同僚としての好意であって、異性として見たことは一度としてない。
そもそも、彼氏を作ろうと思ったことも一度もなかったし、まして、セックスをするときが自分に来るなどとは想像したことすらもなかった。
そんな自分が、何故、彼のことを誘惑しているのか。
陽菜には、自分自身の行動がまるで理解できない。理解できないが、止めることもまた、できない。
猛暑の中走りまわされて、それでも水を一滴たりとも得られなかったときのような、渇望。
知りもしないはずの精の渇きが陽菜の思考を満たしてゆく。
「山尾、さぁん。おちんちん、くださいよぅ……わたしのおなか、みたしてくださぁい」
817 吸虫セミニ・デンティ(14/18) 2013/11/17(日) 22:44:57.95 ID:bY+F2Qhs
陽菜の瞳が奇妙な明滅を見せる。それはタコの擬態のようにも見えた。眼球中の色素胞が収縮することによって、その色彩を高速で変化させているのだ。
サブリミナル効果のある明滅のパターンは、その瞳を覗き込んでいた山尾の脳に影響し、脳内麻薬を分泌、性的な興奮状態を強めていく。
本来ならばありえないほどの異常興奮状態に陥った山尾は、理性も何もかもをかなぐり捨てて、陽菜に襲い掛かった。
陽菜は、自分がそれをできると確信していた。何故できるのかなどはこの際どうでもいい。
自分が本当に欲しいもの。即ち牡の精が得られるのであれば、理由などは些末なものでしかないからだ。
「ふじ、さきぃ」
山尾は乱暴にズボンを脱ぎ放ち、ぎぢぎぢにいきり勃ったペニスを、陽菜が突き出した処女裂に向けてねじ込む。
その牡性を突き込まれた瞬間、陽菜は自分が求めていたものを悟る。これだ、と。
遠慮なく処女膜を破ろうとする山尾を迎えるように、自身も腰を突き出す。
ぶちぃ、という繊維の千切れるような音と共に、二十数年保ち続けてきた陽菜の処女性は呆気なく失われた。
818 吸虫セミニ・デンティ(15/18) 2013/11/17(日) 22:45:30.40 ID:bY+F2Qhs
――コレダ。
そう、これだ。欲しかったのはこれなのだ、と、陽菜はがむしゃらに腰を振り、快楽を貪る。
自分の指ではまるで満足することができなかったんも当然と思えるほどの、暴力的な快楽が、陽菜の思考力を更に奪う。
パンッ、パンッ、という打擲音が連続する中、陽菜は嬌声を上げ続け、山尾は「ふじさき、ふじさきぃ」とだけうわごとのように呟き続ける。
――ダガ、
でも……
『まだ、足りない』
陽菜の内なる声と、陽菜自身の意思が、完全に一つになった。
淫裂に咥え込んだペニスに、ナニカが流れ込む。陽菜は今度こそ、求めるモノがやってくるのだと、その顔に喜悦を刻む。
次の瞬間。
834 吸虫セミニ・デンティ(15.5/18): 2013/11/19(火) 23:31:55.44 ID:kCXQObr7
山尾のペニスが爆発するかのように、黄ばんだ白濁を大量に吐き出した。
びゅるびゅるどくどくと、胎の中へと流し込まれるマグマのような汚液を、陽菜の膣は嚥下するかのように蠢き、搾り取ってゆく。
「そう、これぇ、これよぉ! おいしぃ、おいしぃぃいぃ!」
まるで性器がもう一つの舌となったかのように、膣内のヒダのひとつひとつに味蕾が出来たかのように、注ぎ込まれる青臭い精液の味を感じ取ることが出来る。
ほんの数時間前ならば嫌悪感すら抱いたであろうその芳香を、その味を、天上の甘露と思うほどの喜悦と共に呑み込んでゆく。
「もっと、もっとぉ、全部、わたしの、ナカにぃ」
吐精しながらも、二人の腰の動きは止まらない。
特に山尾の方は、狂ったように腰を打ちつけ、性交をはじめたときよりも、心なしかやつれているようにも見える。
それも当然といえば当然のことかもしれない。三時間ほどもの間、一切休むことなく交合を続け、その間に射精した回数は二桁を越える。
それでも分泌され続ける脳内麻薬の作用によって興奮を収めることもままならず、狂った獣の如く交尾を続けているのだ。精力、より明確には生命力そのものが失われていくのは仕方のないことである。
819 吸虫セミニ・デンティ(16/18) 2013/11/17(日) 22:46:20.99 ID:bY+F2Qhs
ロイコクロリディウムという吸虫の属がある。
陸生貝類、即ちカタツムリのたぐいを中間宿主とし、その脳をコントロール、鳥類に捕食させることで新たな宿主を得るという奇妙な生態を持った寄生虫だ。
陽菜が数日前に発見したのは、そのロイコクロリディウムにやや類似した性質を持つ吸虫であった。
発見直後で未解明な部分は多いものの、小型の齧歯目のメス個体の子宮に寄生し、脳をコントロールすることで宿主の性欲を刺激、強烈なフェロモンを分泌することで異性を誘惑する。
子宮内に寄生した吸虫は、異性の精子を栄養源として成長、成虫となると交尾の際、オスのペニスを通して精嚢に寄生、そのオスもまた性欲を強烈に刺激され、メスをレイプ、その子宮に寄生するという非常に奇異な生活環の持ち主であった。
自然界ではこういったレイプ行動を行う動物は少なく、異なる種の生物のレイプ行動を誘発する生物などは前例がない。
だからこそ、彼女たちはそれを調べていたのだが、今、自分に訪れている異常はそれに極めて近い。
もし、その吸虫が、ヒトにも寄生するとしたら?
820 吸虫セミニ・デンティ(17/18) 2013/11/17(日) 22:47:13.18 ID:bY+F2Qhs
それは大発見であると同時に、極めて危険な事態だ。
ネズミの場合の話ではあるものの、メスに寄生した場合は、吸虫が成長するのに必要な精子を得るために、オスとひたすら交尾を続けるだけだが、オスに寄生した場合は、そのオスは精子を吐き出すことのみに生命力を使い果たし、数時間で死に至っていたからだ。
だが、
パンッ、と。
山尾の力強い腰の突き入れに、陽菜の思考は霧散し、消えた。たとえこのあとどうなったところで自分には関係ない。
ただ必要なのは快楽であり、牡の精だけだからだ。
完全に思考を吸虫に支配された陽菜は、そのあと更に五時間、山尾が土気色の顔色になって息絶えるまで、嬉々として腰を振り続けていた。
「もっと、もっとぉ……」
同僚の一人を吸い殺しても尚、彼女の渇きが満たされる兆しは――ない。
精子を喰らい成長した蟲が淫裂から顔を出し、まるでペニスのような兇悪な鎌首をもたげていた。
821 名無しさん@ピンキー 2013/11/17(日) 22:48:33.38 ID:bY+F2Qhs
以上となります。
ナンバリングを微妙にミスってしまいました。
今夜あたりに一本投下してみようかと。
このスレ民の口に合うかはわからないけど……
これまでROM専だったが、少しでも活気づいて供給サイドが増えることを願って。
801 名無しさん@ピンキー sage 2013/11/17(日) 21:29:32.93 ID:UbEVeKw6
はよはよ
802 名無しさん@ピンキー 2013/11/17(日) 22:32:02.10 ID:bY+F2Qhs
2chに投下するのはじめてでいまひとつ勝手がわからないが、規制とか連投制限とかかからないことを祈って……
803 吸虫セミニ・デンティ(1/18) 2013/11/17(日) 22:32:56.99 ID:bY+F2Qhs
けたたましく雄叫びをあげる鳥の声。
低地では一年を通して嫌になるほどの強烈な熱暑も、標高1000メートルを越えるここまでくるとむしろ涼しいほどともいえる。
日本であれば膝下程度の植物も、人を見下ろすかのような巨大な異様を見せつけていた。
毎日のように、しかも突如として降り始める、猛烈な豪雨――スコールが、この地の高湿な気候を保ち、それによって多彩な生物相を維持しているのだろう。
珍妙にして怪奇、極彩色の動植物が跋扈するこの地は、東南アジアは某国の密林。
技術発展により、衛星写真から地球を俯瞰することができるようになった。しかしそれでも、人の知らない場所や物は、この星にもまだまだ多く存在する。
日本人をはじめとした外国人は当然のこととして、現地民ですら立ち入ったことのない――より正確な表現としては、厳密な意味での《現地民》が存在すらしない――正真正銘の未踏の地。そのひとつが、このジャングルであった。
804 吸虫セミニ・デンティ(2/18) 2013/11/17(日) 22:34:32.44 ID:bY+F2Qhs
未踏の地には当然、未だ誰も目にしたことのない生物が多数生息している。それを発見、記載するのが一行の目的である。
藤咲陽菜もそのうちの一人であり、一行の紅一点でもある。
幼い頃から泥臭い遊びが好きだった彼女は、同世代の同性が可愛らしい服を眺め、羨んでいる間も、男子と一緒になって野山を駆け巡っていた。
三つ子の魂百までとでもいうべきか、大学院を卒業してもそれは変わらず、異性からもほとんど男友達と接するようにして扱われている。
それもあってか、陽菜自身は自分の容姿に関して極めて無頓着だ。
顔立ちは至極整っており、よくよく同性からは勿体ないとも、ズルいとも言われるものの、本人にまるで興味がないのだから如何ともしようがない。
このような未踏の地でキャンプを行なうという、年頃の女性としてみれば受け入れがたいであろうことも、当然のこととして受け入れている。
人の手の届かない、鬱蒼とした自然の中にあって、陽菜は恐いというよりもわくわくとした気持ちが勝っていた。
そしてもちろん、一行の全員が同じ気持ちだろう、とも。
研究チームの数は二十人ほど、毎日キャンプの番と食事の担当を当番制で交代していく方式だ。
805 吸虫セミニ・デンティ(2/18) 2013/11/17(日) 22:35:02.42 ID:bY+F2Qhs
陽菜は今朝、起きてから、熱っぽさを感じていた。
各種ワクチンは接種済みだが、前人未到の地、どのような未知のウイルスが存在していてもおかしくない。
このような場所へ調査に来ることができるのは、下手をするともう二度と来ないかもしれない。多少の無理をしてでも、フィールドワークをしておきたい。
そう感情的には思う一方で、陽菜の理性はしっかりとした休養の必要性を理解していた。
医者に診てもらうには、このキャンプ地を離れ、近くの――といったところで半日はかかる――村へといき、そこから更に一日は車に揺られる必要がある。つまり、往復で最低でも三日間はかかるわけで、隊のメンバーに多大な迷惑をかけることになる。
今の状態は微熱程度。普段であれば気にせずに動いてしまうところだが、一番悪いのは、無理をして、メンバーに迷惑をかけることだ。
仕方がない、と溜息を吐き、陽菜は調査隊のリーダーである宮村へと声をかけた。
「ごめんなさい。ちょっと熱っぽくて……」
「そうか。妙な病気があってもおかしくないし、気をつけるに越したことはない。今日は俺と山尾がテント番だが、代わってやるよ」
806 吸虫セミニ・デンティ(4/18) 2013/11/17(日) 22:36:35.03 ID:bY+F2Qhs
陽菜の言葉に宮村は逡巡もなくそう申し出ると、早々に調査の準備をはじめた。
しばらくして、起きてきた他のメンバーたちも含めて全員で朝食を終えると、宮村の口から当番の交代とそれに伴う編成の変更が伝えられた。
食事も終わり、調査チームが出発際、宮村は藤咲に、
「メシも、まぁ山尾に任せておけばいい。今日は一日、ゆっくり寝てろ。その間に、俺は大発見をしてきてやるからさ」
と、冗談めかして嘯いた。
「もう宮村さん、そんなこと言われたら、ゆっくり休んでなんていられないじゃないですかぁ。無理にでも行っちゃいますよ?」
「まっ、それもそうだな。つっても安心しろ、ちゃんと共同研究者のところに連名で名前入れてやるからな!」
「そういう問題じゃありませんってぇ」
「まぁ、つい一昨日も、お前は新種と思われる吸虫を見つけたわけだし、少しくらい休んだ方が丁度いい」
そんな軽口の応酬を終えると、宮村は大きな荷物を背負いあげ、他のメンバーたちと共に調査に出ていった。
807 吸虫セミニ・デンティ(5/18) 2013/11/17(日) 22:37:19.04 ID:bY+F2Qhs
「じゃあ、あとは任せたぞ。藤咲はちゃんと休むこと」
「はーい」
メンバーたちが出発すれば、残されるのは陽菜と山尾の二人のみだ。
「んじゃ今日の仕事は……と言いたいところだけど、体調の悪い奴に無理をさせるわけにもいかないからな」
「迷惑をかけてしまってごめんなさい」
殊勝に謝罪する陽菜に、山尾は苦笑。
「そのまま黙って頑張って、その結果倒れられたらもっと迷惑がかかる。そうならないように自己申告した奴を責める奴はここにはいないさ」
「ありがとうございます。今日一日、全力で休んで快復に努めます!」
「全力で休む、ってなぁ。ホント、藤咲はマジメだなぁ。ま、宮村さんの言う通り、ゆっくり寝てな」
「はい」
808 吸虫セミニ・デンティ(6/18) 2013/11/17(日) 22:37:54.61 ID:bY+F2Qhs
仲間たちの気遣いを受け、陽菜は自身の寝床であるテントへと戻る。
だが熱っぽいとはいえ、意識が朦朧とすることもなく、起きがけで眠気もそうそうない。とはいえ、快復させると言った手前、出来る限りのことをするのが筋というものだ。そう真面目な陽菜は思い、薄いシュラフの中に潜り込んでまぶたを閉じる。
そのまま、しばらくしていると、不意に、声が聞こえた。
――ホシイ。
と。
思わず両目を開き、あたりを見回してみるも、テントの中には陽菜以外に誰もいはしない。疲れからくる幻聴だろうか、と自分に苦笑し、再びまぶたを閉じようと思ったそのとき、陽菜は自分の中にある《熱》に気づく。
風邪や病気からくる発熱とはどこか違う、《熱》は、どちらかというとカイロを握り締めているかのような、より直接的な熱であった。
一度自覚しはじめると、《ソレ》は加速度的に強まっていく。
809 吸虫セミニ・デンティ(7/18) 2013/11/17(日) 22:39:07.25 ID:bY+F2Qhs
「え、何よ、これ……」
まるで、自分の中で炎が燃えているかのような異常な感覚に、陽菜は戸惑いを覚える。
熱い。熱い熱い熱い熱い熱いアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイ。
シュラフを剥ぎ、額に手を当てると、確かに熱い。自分の頬に朱が差しているのがわかる。
発熱の元となっているのは下腹部だ。そこから、まるで何かを訴えかけるかのように、熱を放っている。
そこまで考えて、陽菜は自分の思考に違和感を覚える。まるで、自分の腹の中に何かがいるかのように考えている自分に。
――ホシイ。
欲しい? 何が?
気付けば、自身の内から漏れ出る謎の声に、問い返している自分がいた。
わからない。陽菜には何もわからない。ただ、彼女の身体は答えを知って、動いていた。
810 吸虫セミニ・デンティ(8/18) 2013/11/17(日) 22:40:32.74 ID:bY+F2Qhs
動きやすさを追求したズボンを下ろし、女らしい飾り気のないショーツの下に手を滑り込ませる。ねっちょりとした粘液がショーツには染み込み、重みを感じさせるものとなっていた。その重みやぬめりが、今の陽菜には何故か好ましいものに感じられた。
うっすらとしか毛のはえていない花園を越え、ショーツを湿らせる淫液の根源たる秘裂へと指は進む。
「ぅんぁっ!」
小さな、しかし確かな嬌声が、陽菜の口から漏れる。
自慰行為も、一、二度程度しか経験がないし、それがそれほど気持ちの良いことであるとも思っていなかった陽菜にとって、今この瞬間に得られたモノは、生まれて初めて感じる、確たる性的快楽であった。
自身の内側より響く声に、突き動かされるように、一度快楽の味を占めたその身は、貪欲により強い快楽を求めて指を這わせる。
くちゅ、くちゅ、ぐちょ、ねちょ、と。
鳥獣や虫の声響く林内のテントで、淫らな水遊びの音が響き続ける。
812 吸虫セミニ・デンティ(9/18) 2013/11/17(日) 22:41:22.14 ID:bY+F2Qhs
誰に見られているわけでもないのに、まるで見せ付けるかのようにM字に開脚し、ピンク色の割れ目を自らの指で犯してゆく。
「ぁっ、ぁっ、ぁっ、んぁぁっ、ぁっ……!」
陽菜の、土ばかりを触っているせいか平均的な女性よりもやや太い指は、彼女のほぼ触れたことのない快楽部位を適切に刺激し、自身の脳に快楽刺激を与え続ける。
――ホシイ。
そう、欲しい。
ぐちゅ、ぶちょ、にちゃ、くちょ。
メンバーに休むと言ってオナニーをしているという事実や、耳に届く淫猥な水音が、陽菜に背徳的な快感を与える。
それは明らかな異常事態だった。
性に無頓着で、生物学的な意味ではともかく、ほぼ性的な知識の皆無である陽菜が的確に快楽を得ていることも、そもそも、突如としてこのような淫行を行い始めたことも、だ。
813 吸虫セミニ・デンティ(10/18) 2013/11/17(日) 22:42:11.20 ID:bY+F2Qhs
しかし、それを異常と認識することは、陽菜にはもはや出来ないことだった。
胎の内から響く、渇望の声に操られるように快楽を貪り、そしてその快楽に堕ちてゆく。
「も、っとぉ、ほ、し、ぃぃっ……」
違う。
何かが、違う。
そんな風に考えていると、唐突に、テントの入り口が開かれた。
「おーい、藤咲、昼メシだ、ぞ……ってうおっ!」
現れたのはもちろん、キャンプの番をしていた山尾だった。
異性のテントを前置きなく開けるというのは少々マナー違反というべきだろうが、同性のような扱いを受けることを自ら望んですらいた陽菜にも原因がある。
814 吸虫セミニ・デンティ(11/18) 2013/11/17(日) 22:42:41.41 ID:bY+F2Qhs
「すっ、すまんっ、その、昼飯だからな!」
山尾は陽菜の艶姿に頬を染めながら、謝罪だけを残してその場を去ろうとする。
しかし陽菜の胸中に去来したのは、羞恥の感情ではなかった。
より正確にいうならば、羞恥の感情は確かに存在する。だが、それはむしろ行為を止めるためのストッパーではなく、快楽を促進するスパイスのひとつであった。
「待って、山尾さぁん」
くちゅ、にゅちゅ、と。
淫裂に指を突きこみ、かき回す快楽行為を続けたまま、その瞳は山尾の股間へと釘付けになる。
陽菜は山尾のズボンの股間の部分がテントを張っていることに気づくと、意識したこともなかった同僚の《牡》を視線から離すことができない。
キュン、キュン、と、胎の奥底から、音ならぬ音が、陽菜の理性を削ってゆく。
815 吸虫セミニ・デンティ(12/18) 2013/11/17(日) 22:43:18.43 ID:bY+F2Qhs
――駄目、子宮が疼いて、ガマンなんて、出来ない。
「そう……おひる、ごはん、でした、よね……」
陽菜は、それまで見せたこともないような、《女》の、否、《牝》の表情を浮かべ、笑う。
「ちょうど、お腹すいてたんです……」
陽菜は自らの腹をさする。その所作は、我が子を愛でる母親のそれを思わせた。
「この仔、たちも……」
ぼそりと、呟く。その声は、おそらく山尾には届いてはいなかったし、陽菜自身、自分が何を言っているのか、ほとんど理解していなかった。
「ごはん、ください」
言って、腰を突き出し、ラヴィアを広げ、かき混ぜ過ぎで泡立ちはじめた淫液まみれの性器を見せつける。
――ああ、私は……
816 吸虫セミニ・デンティ(13/18) 2013/11/17(日) 22:43:58.73 ID:bY+F2Qhs
なんて破廉恥なことを口にしているだろうか、と陽菜は内心で、誰にというわけでもなく呟く。
山尾のことは決して嫌いというわけではない。むしろ好嫌でいえば好きといっていいだろう。だがそれはあくまで友人として、同僚としての好意であって、異性として見たことは一度としてない。
そもそも、彼氏を作ろうと思ったことも一度もなかったし、まして、セックスをするときが自分に来るなどとは想像したことすらもなかった。
そんな自分が、何故、彼のことを誘惑しているのか。
陽菜には、自分自身の行動がまるで理解できない。理解できないが、止めることもまた、できない。
猛暑の中走りまわされて、それでも水を一滴たりとも得られなかったときのような、渇望。
知りもしないはずの精の渇きが陽菜の思考を満たしてゆく。
「山尾、さぁん。おちんちん、くださいよぅ……わたしのおなか、みたしてくださぁい」
817 吸虫セミニ・デンティ(14/18) 2013/11/17(日) 22:44:57.95 ID:bY+F2Qhs
陽菜の瞳が奇妙な明滅を見せる。それはタコの擬態のようにも見えた。眼球中の色素胞が収縮することによって、その色彩を高速で変化させているのだ。
サブリミナル効果のある明滅のパターンは、その瞳を覗き込んでいた山尾の脳に影響し、脳内麻薬を分泌、性的な興奮状態を強めていく。
本来ならばありえないほどの異常興奮状態に陥った山尾は、理性も何もかもをかなぐり捨てて、陽菜に襲い掛かった。
陽菜は、自分がそれをできると確信していた。何故できるのかなどはこの際どうでもいい。
自分が本当に欲しいもの。即ち牡の精が得られるのであれば、理由などは些末なものでしかないからだ。
「ふじ、さきぃ」
山尾は乱暴にズボンを脱ぎ放ち、ぎぢぎぢにいきり勃ったペニスを、陽菜が突き出した処女裂に向けてねじ込む。
その牡性を突き込まれた瞬間、陽菜は自分が求めていたものを悟る。これだ、と。
遠慮なく処女膜を破ろうとする山尾を迎えるように、自身も腰を突き出す。
ぶちぃ、という繊維の千切れるような音と共に、二十数年保ち続けてきた陽菜の処女性は呆気なく失われた。
818 吸虫セミニ・デンティ(15/18) 2013/11/17(日) 22:45:30.40 ID:bY+F2Qhs
――コレダ。
そう、これだ。欲しかったのはこれなのだ、と、陽菜はがむしゃらに腰を振り、快楽を貪る。
自分の指ではまるで満足することができなかったんも当然と思えるほどの、暴力的な快楽が、陽菜の思考力を更に奪う。
パンッ、パンッ、という打擲音が連続する中、陽菜は嬌声を上げ続け、山尾は「ふじさき、ふじさきぃ」とだけうわごとのように呟き続ける。
――ダガ、
でも……
『まだ、足りない』
陽菜の内なる声と、陽菜自身の意思が、完全に一つになった。
淫裂に咥え込んだペニスに、ナニカが流れ込む。陽菜は今度こそ、求めるモノがやってくるのだと、その顔に喜悦を刻む。
次の瞬間。
834 吸虫セミニ・デンティ(15.5/18): 2013/11/19(火) 23:31:55.44 ID:kCXQObr7
山尾のペニスが爆発するかのように、黄ばんだ白濁を大量に吐き出した。
びゅるびゅるどくどくと、胎の中へと流し込まれるマグマのような汚液を、陽菜の膣は嚥下するかのように蠢き、搾り取ってゆく。
「そう、これぇ、これよぉ! おいしぃ、おいしぃぃいぃ!」
まるで性器がもう一つの舌となったかのように、膣内のヒダのひとつひとつに味蕾が出来たかのように、注ぎ込まれる青臭い精液の味を感じ取ることが出来る。
ほんの数時間前ならば嫌悪感すら抱いたであろうその芳香を、その味を、天上の甘露と思うほどの喜悦と共に呑み込んでゆく。
「もっと、もっとぉ、全部、わたしの、ナカにぃ」
吐精しながらも、二人の腰の動きは止まらない。
特に山尾の方は、狂ったように腰を打ちつけ、性交をはじめたときよりも、心なしかやつれているようにも見える。
それも当然といえば当然のことかもしれない。三時間ほどもの間、一切休むことなく交合を続け、その間に射精した回数は二桁を越える。
それでも分泌され続ける脳内麻薬の作用によって興奮を収めることもままならず、狂った獣の如く交尾を続けているのだ。精力、より明確には生命力そのものが失われていくのは仕方のないことである。
819 吸虫セミニ・デンティ(16/18) 2013/11/17(日) 22:46:20.99 ID:bY+F2Qhs
ロイコクロリディウムという吸虫の属がある。
陸生貝類、即ちカタツムリのたぐいを中間宿主とし、その脳をコントロール、鳥類に捕食させることで新たな宿主を得るという奇妙な生態を持った寄生虫だ。
陽菜が数日前に発見したのは、そのロイコクロリディウムにやや類似した性質を持つ吸虫であった。
発見直後で未解明な部分は多いものの、小型の齧歯目のメス個体の子宮に寄生し、脳をコントロールすることで宿主の性欲を刺激、強烈なフェロモンを分泌することで異性を誘惑する。
子宮内に寄生した吸虫は、異性の精子を栄養源として成長、成虫となると交尾の際、オスのペニスを通して精嚢に寄生、そのオスもまた性欲を強烈に刺激され、メスをレイプ、その子宮に寄生するという非常に奇異な生活環の持ち主であった。
自然界ではこういったレイプ行動を行う動物は少なく、異なる種の生物のレイプ行動を誘発する生物などは前例がない。
だからこそ、彼女たちはそれを調べていたのだが、今、自分に訪れている異常はそれに極めて近い。
もし、その吸虫が、ヒトにも寄生するとしたら?
820 吸虫セミニ・デンティ(17/18) 2013/11/17(日) 22:47:13.18 ID:bY+F2Qhs
それは大発見であると同時に、極めて危険な事態だ。
ネズミの場合の話ではあるものの、メスに寄生した場合は、吸虫が成長するのに必要な精子を得るために、オスとひたすら交尾を続けるだけだが、オスに寄生した場合は、そのオスは精子を吐き出すことのみに生命力を使い果たし、数時間で死に至っていたからだ。
だが、
パンッ、と。
山尾の力強い腰の突き入れに、陽菜の思考は霧散し、消えた。たとえこのあとどうなったところで自分には関係ない。
ただ必要なのは快楽であり、牡の精だけだからだ。
完全に思考を吸虫に支配された陽菜は、そのあと更に五時間、山尾が土気色の顔色になって息絶えるまで、嬉々として腰を振り続けていた。
「もっと、もっとぉ……」
同僚の一人を吸い殺しても尚、彼女の渇きが満たされる兆しは――ない。
精子を喰らい成長した蟲が淫裂から顔を出し、まるでペニスのような兇悪な鎌首をもたげていた。
821 名無しさん@ピンキー 2013/11/17(日) 22:48:33.38 ID:bY+F2Qhs
以上となります。
ナンバリングを微妙にミスってしまいました。
繭子メタフォーメーション
605 繭子メタフォーメーション【0/19】 sage 2013/09/16(月) 22:15:50.43 ID:tnFyl6wp
1レスに何行書き込めるかわからないので細切れ投下でスマンです
6行×19レス分、書き上げてはいるんで
尻切れになったら連投規制にかかったと思って下さい
微エロ、蟲化
ではどうぞ
606 繭子メタフォーメーション【1/19】 sage 2013/09/16(月) 22:17:27.08 ID:tnFyl6wp
「――出動指令よ、繭子(まゆこ)ちゃん。港東二丁目に歪蟲(わいぢゅう)出現」
「ちょっ……あたし、これから中間テスト……」
「いつも通り処理しておくわ。繭子ちゃんは任務を最優先」
「そんな……せっかく覚えた公式や英単語……処理って平均点になるだけじゃん……」
「赤点脱出おめでとう。現在地はGPSで把握してる。そこから五分で到着できるわね」
「ちょっ……赤点なんて一回だけだし……美冴(みさえ)さんってば……もうっ!」
607 繭子メタフォーメーション【2/19】 sage 2013/09/16(月) 22:18:36.44 ID:tnFyl6wp
電話が切れて、ふくれ面で繭子は、肩から下ろしたナップサックにスマートホンをしまい込んだ。
ウサギのぬいぐるみ型のナップサックは繭子のトレードマークだ。
《繭子二号》と名付けたそれを背負い直して、もと来た道を戻る方向に走り出す。
「着替え」の場所が必要だった。少し戻れば交番がある。
栗色のツーテールの髪と《繭子二号》のウサ耳が揺れる。
やや吊り目の仔猫っぽい顔立ちだが、繭子自身はウサギ萌えだ。髪型もウサギをちょっぴり意識している。
608 繭子メタフォーメーション【3/19】 sage 2013/09/16(月) 22:19:58.66 ID:tnFyl6wp
セーラー服の胸は揺れない。すらりと手足の長い、恵まれた体型だが胸だけは発展途上なのだ。
交番に飛び込み、胸ポケットから出した身分証をかざしてみせた。
「緊急事態です、トイレをお借りします!」
若い警察官が目を丸くして、繭子が手にしたそれを覗き込む。
「……区立港東第二中、三年E組……?」
「違った、こっち!」
609 繭子メタフォーメーション【4/19】 sage 2013/09/16(月) 22:20:59.60 ID:tnFyl6wp
慌てて生徒証を引っ込めて、もう一枚の身分証をポケットから引っぱり出す。
警察官の証票によく似たそれは、国家公安委員会発行の――
「……歪蟲対策作戦本部?」
警察官が、さっと姿勢を正して敬礼した。
「失礼しました! どうぞ、存分にご利用下さい!」
「ありがとうございます、あの……着替えるだけですから!」
610 繭子メタフォーメーション【5/19】 sage 2013/09/16(月) 22:22:01.16 ID:tnFyl6wp
自分の名誉のために言い添えて、繭子は交番の奥のトイレに入った。
以前にも借りたことがあるから勝手はわかっている。
洋式便器の蓋を閉めて《繭子二号》を肩から下ろす。
《繭子二号》は収納部分がウサギの頭と胴体に分かれている。
胴体部分には教科書やノートなど勉強道具が入れてある(試験前でなければ教科書なんて持ち帰らないが)。
そして頭の部分には、「歪蟲対策作戦本部」の任務に必要な「秘密兵器」が収めてあった。
611 繭子メタフォーメーション【6/19】 sage 2013/09/16(月) 22:23:13.39 ID:tnFyl6wp
そう――兵器である。それも「生物兵器」だ。極めてキケンな。
スカーフを解き、脇のジッパーを上げてセーラー服を脱ぎ、下に着ていたキャミソールも脱いだ。
色白のしなやかな身体に――Aカップに収まる慎ましやかな胸。
そして、むんっ……と、たち込めるバニラに似た甘い体臭。
「はあっ……」と、思わず吐息をつく。自分でも頭がくらくらする。
意識するほど匂いが濃く甘くなるのだから始末が悪い。
612 繭子メタフォーメーション【7/19】 sage 2013/09/16(月) 22:24:12.82 ID:tnFyl6wp
その匂いにこそ繭子が歪蟲対策作戦本部に所属する理由が秘められているのだが。
脱いだものは丸めて《繭子二号》の胴体側に押し込む。
それから腰のホックを外し、ジッパーを下ろしてスカートを脱いだ。
黒いニーソックスに太腿の半ばまで包まれた形のいい脚。
細く締まったウエストの下、程良く丸みを帯びたヒップは白と水色の横縞のショーツに収まっている。
613 繭子メタフォーメーション【8/19】 sage 2013/09/16(月) 22:27:04.29 ID:tnFyl6wp
どきどきと胸の鼓動が早まるのを感じながら、通学靴とニーソックスを脱ぐ。
露わになった素肌から立ち上るバニラの匂いに、むせ返りそうになる。
ブラを外し、淡い桜色の乳頭を晒す。
自分以外の誰が見ているわけでもない。なのに、どうしてこんなに身体が火照るのか。
そしてショーツも脱いだ。処理済のビキニラインは綺麗に無毛であった。
しかし幼いままとは違う。なだらかな陰阜の下のその部分には薄紅色の花弁が僅かに綻んでいる。
614 繭子メタフォーメーション【9/19】 sage 2013/09/16(月) 22:29:14.75 ID:tnFyl6wp
どくんどくんどくんどくん。心臓が早鐘を打つ。
脱いだものを《繭子二号》の胴体にしまい込み、頭の収納部分のジッパーを開けてポーチを取り出す。
元は生理用品を入れていたものだ。もう繭子が生理になることはないけど。
身体が「造り変わって」しまったから。
その原因でもある存在(もの)がポーチには収まっていた。
昆虫の蛹(さなぎ)に似たモノ。ただし、人間の握り拳ほども大きい。それが三つ。
615 繭子メタフォーメーション【10/19】 sage 2013/09/16(月) 22:31:20.75 ID:tnFyl6wp
「……はあっ」と、息を吐き、蛹を一つ手にとって、ポーチを《繭子二号》に戻す。
奇妙に大きくグロテスクといっていい蛹なのに、いまの繭子には、それが愛おしく思えてしまう。
「造り変わった」のは身体ばかりではない。繭子の意識(こころ)も、奥底の部分が変えられてしまった。
待ってて、いま「蜜」を吸わせてあげる……
繭子は《解放鍵(キーワード)》を口にした。
「――《メタフォーメーション》!」
616 繭子メタフォーメーション【11/19】 sage 2013/09/16(月) 22:34:12.07 ID:tnFyl6wp
眼の奥で光が弾けた。自慰で達したときと酷似した――いや、それを凌駕する絶頂感。
身体の芯から熱いものが噴き出す。比喩ではなくそうだった。どくどくと、花弁が蜜を溢れさせる。
《解放鍵》によって「本来の繭子」が覚醒したのだ。
とめどなく蜜を湧かせる花弁に、繭子は蛹を押し当てた。
「……ひゃうっ!? んにゅいぃぃぃっ……吸われるぅぅぅっ……!?」
――そして。蛹が、急速に「成長」を始めた。
617 繭子メタフォーメーション【12/19】 sage 2013/09/16(月) 22:37:43.10 ID:tnFyl6wp
体節が伸び、その末端が新たな体節を次々と生み、一部は枝分かれして、繭子の裸身に絡みつく。
すでに綻んでいた花弁を枝の一端が押し割り、蜜にまみれた別の枝は、ぬるりと尻穴に潜り込む。
「あにゅぅぅぅっ……!?」
二条の枝が柔肌の上を這い伸び、幼げな乳房に達すると、くるりと先端が弧を描き、乳頭を覆い隠す。
背にも二筋の枝が這い、左右の肩甲骨の上まで達すると、
――ぶわっ、と、扇を広げるように、蚕蛾に似た一対の白い羽根を生み出す。
618 繭子メタフォーメーション【13/19】 sage 2013/09/16(月) 22:39:16.45 ID:tnFyl6wp
一方、繭子の胎内に潜り込んだ「枝」は「母体」と同化しながら、その「変態」を促す。
ツーテールの髪が根元から白く染まり、前髪の生え際からは、これまた蚕蛾に似た触角が突き出した。
「……みぁっ!? みぁああああっ……!?」
ぎゅっと眼をつむり、上体を仰け反らせて再び眼を開けると、その瞳は紅く変わっている。
色だけではない。艶の消えた瞳を間近で見れば、複眼状に変じたことがわかるだろう。
可憐な少女の面影を残しながらも、蛾と融合したような奇怪な姿に、繭子は変貌を遂げていた。
619 繭子メタフォーメーション【14/19】 sage 2013/09/16(月) 22:42:22.26 ID:tnFyl6wp
いや、そうではない。この姿こそ、いまの繭子の「本来の姿」。
「人間の少女」としての日常生活は「擬態」にすぎない。
そう「造り変わって」しまったのだ。繭子の全てが。
「……はあっ、はあっ、はあっ……」
壁に手をつき、息を整える。
そして《繭子二号》を右肩に掛け、通学靴を手に提げてトイレを出た。
620 繭子メタフォーメーション【15/19】 sage 2013/09/16(月) 22:43:51.57 ID:tnFyl6wp
「……ありがとうございました」
繭子が声をかけると、交番の入口に立っていた若い警官が振り向き、ぽかんと口を開ける。
そして慌てて目を逸らした。顔が真っ赤だ。
「え……あ、はいっ……!」
無理もなかった。蛾と融合したといっても、見た目にはそれは触角や羽根など部分的なもの。
乳頭や股間は辛うじて隠されているが、繭子の姿はほとんど「人間の少女の裸身」なのだ。
621 繭子メタフォーメーション【16/19】 sage 2013/09/16(月) 22:45:27.76 ID:tnFyl6wp
もっとも、それを恥じらう意識は繭子自身からは消え失せている。
覚醒した繭子にとって、いまが当たり前の姿だから。
《繭子二号》と通学靴を警官に押しつける。
「あの……これ、預かって下さい」
返事は待たずに交番の外に出て、繭子は背の羽根を広げ、跳躍した。
「――とうっ!」
622 繭子メタフォーメーション【17/19】 sage 2013/09/16(月) 22:47:00.06 ID:tnFyl6wp
交番の向かいの五階建てビルの屋上へ跳び上がると、弾みをつけて、隣の十二階建てマンションの屋上へ。
そこからさらにビルやマンションの屋上をジャンプして渡って行く。
斃すべき歪蟲のいる場所まで――
異次元より現れ、人類に仇なす魔性のモノ――歪蟲。
見た目は巨大な節足動物や軟体動物――いわゆる「蟲」のよう。
623 繭子メタフォーメーション【18/19】 sage 2013/09/16(月) 22:49:08.50 ID:tnFyl6wp
だが人間の身体を侵蝕し、意識までをも支配して、新たな犠牲者を捕捉し増殖する――
そんな存在が「魔」ではなく何であろう。
しかし、いかなる理由かそれとも偶然か、歪蟲に侵されても自我を喪いきらない「人間」が、ごく稀にいた。
いや、その肉体はすでに歪蟲と同化し「造り変わって」いるのだから厳密には彼らは人間ではない。
それでも、歪蟲に対抗し得る能力を備えた彼らが、人類にとっての救世主であった。
繭子は、その「一人」なのだ。
624 繭子メタフォーメーション【19/19(完)】 sage 2013/09/16(月) 22:52:41.89 ID:tnFyl6wp
……人類のためとか、よっくわかんないけどね。
だいたい、あたし自身もう「人間」じゃないみたいなのに。でも。
ミミズ型とかウミウシ型とかグロい歪蟲がキモいしムカつくし。
悪い歪蟲相手に暴れるのはスカッとするし。出動手当は、いいお小遣いになるし……
繭子は、今日も歪蟲と戦うのであった。
【完】
1レスに何行書き込めるかわからないので細切れ投下でスマンです
6行×19レス分、書き上げてはいるんで
尻切れになったら連投規制にかかったと思って下さい
微エロ、蟲化
ではどうぞ
606 繭子メタフォーメーション【1/19】 sage 2013/09/16(月) 22:17:27.08 ID:tnFyl6wp
「――出動指令よ、繭子(まゆこ)ちゃん。港東二丁目に歪蟲(わいぢゅう)出現」
「ちょっ……あたし、これから中間テスト……」
「いつも通り処理しておくわ。繭子ちゃんは任務を最優先」
「そんな……せっかく覚えた公式や英単語……処理って平均点になるだけじゃん……」
「赤点脱出おめでとう。現在地はGPSで把握してる。そこから五分で到着できるわね」
「ちょっ……赤点なんて一回だけだし……美冴(みさえ)さんってば……もうっ!」
607 繭子メタフォーメーション【2/19】 sage 2013/09/16(月) 22:18:36.44 ID:tnFyl6wp
電話が切れて、ふくれ面で繭子は、肩から下ろしたナップサックにスマートホンをしまい込んだ。
ウサギのぬいぐるみ型のナップサックは繭子のトレードマークだ。
《繭子二号》と名付けたそれを背負い直して、もと来た道を戻る方向に走り出す。
「着替え」の場所が必要だった。少し戻れば交番がある。
栗色のツーテールの髪と《繭子二号》のウサ耳が揺れる。
やや吊り目の仔猫っぽい顔立ちだが、繭子自身はウサギ萌えだ。髪型もウサギをちょっぴり意識している。
608 繭子メタフォーメーション【3/19】 sage 2013/09/16(月) 22:19:58.66 ID:tnFyl6wp
セーラー服の胸は揺れない。すらりと手足の長い、恵まれた体型だが胸だけは発展途上なのだ。
交番に飛び込み、胸ポケットから出した身分証をかざしてみせた。
「緊急事態です、トイレをお借りします!」
若い警察官が目を丸くして、繭子が手にしたそれを覗き込む。
「……区立港東第二中、三年E組……?」
「違った、こっち!」
609 繭子メタフォーメーション【4/19】 sage 2013/09/16(月) 22:20:59.60 ID:tnFyl6wp
慌てて生徒証を引っ込めて、もう一枚の身分証をポケットから引っぱり出す。
警察官の証票によく似たそれは、国家公安委員会発行の――
「……歪蟲対策作戦本部?」
警察官が、さっと姿勢を正して敬礼した。
「失礼しました! どうぞ、存分にご利用下さい!」
「ありがとうございます、あの……着替えるだけですから!」
610 繭子メタフォーメーション【5/19】 sage 2013/09/16(月) 22:22:01.16 ID:tnFyl6wp
自分の名誉のために言い添えて、繭子は交番の奥のトイレに入った。
以前にも借りたことがあるから勝手はわかっている。
洋式便器の蓋を閉めて《繭子二号》を肩から下ろす。
《繭子二号》は収納部分がウサギの頭と胴体に分かれている。
胴体部分には教科書やノートなど勉強道具が入れてある(試験前でなければ教科書なんて持ち帰らないが)。
そして頭の部分には、「歪蟲対策作戦本部」の任務に必要な「秘密兵器」が収めてあった。
611 繭子メタフォーメーション【6/19】 sage 2013/09/16(月) 22:23:13.39 ID:tnFyl6wp
そう――兵器である。それも「生物兵器」だ。極めてキケンな。
スカーフを解き、脇のジッパーを上げてセーラー服を脱ぎ、下に着ていたキャミソールも脱いだ。
色白のしなやかな身体に――Aカップに収まる慎ましやかな胸。
そして、むんっ……と、たち込めるバニラに似た甘い体臭。
「はあっ……」と、思わず吐息をつく。自分でも頭がくらくらする。
意識するほど匂いが濃く甘くなるのだから始末が悪い。
612 繭子メタフォーメーション【7/19】 sage 2013/09/16(月) 22:24:12.82 ID:tnFyl6wp
その匂いにこそ繭子が歪蟲対策作戦本部に所属する理由が秘められているのだが。
脱いだものは丸めて《繭子二号》の胴体側に押し込む。
それから腰のホックを外し、ジッパーを下ろしてスカートを脱いだ。
黒いニーソックスに太腿の半ばまで包まれた形のいい脚。
細く締まったウエストの下、程良く丸みを帯びたヒップは白と水色の横縞のショーツに収まっている。
613 繭子メタフォーメーション【8/19】 sage 2013/09/16(月) 22:27:04.29 ID:tnFyl6wp
どきどきと胸の鼓動が早まるのを感じながら、通学靴とニーソックスを脱ぐ。
露わになった素肌から立ち上るバニラの匂いに、むせ返りそうになる。
ブラを外し、淡い桜色の乳頭を晒す。
自分以外の誰が見ているわけでもない。なのに、どうしてこんなに身体が火照るのか。
そしてショーツも脱いだ。処理済のビキニラインは綺麗に無毛であった。
しかし幼いままとは違う。なだらかな陰阜の下のその部分には薄紅色の花弁が僅かに綻んでいる。
614 繭子メタフォーメーション【9/19】 sage 2013/09/16(月) 22:29:14.75 ID:tnFyl6wp
どくんどくんどくんどくん。心臓が早鐘を打つ。
脱いだものを《繭子二号》の胴体にしまい込み、頭の収納部分のジッパーを開けてポーチを取り出す。
元は生理用品を入れていたものだ。もう繭子が生理になることはないけど。
身体が「造り変わって」しまったから。
その原因でもある存在(もの)がポーチには収まっていた。
昆虫の蛹(さなぎ)に似たモノ。ただし、人間の握り拳ほども大きい。それが三つ。
615 繭子メタフォーメーション【10/19】 sage 2013/09/16(月) 22:31:20.75 ID:tnFyl6wp
「……はあっ」と、息を吐き、蛹を一つ手にとって、ポーチを《繭子二号》に戻す。
奇妙に大きくグロテスクといっていい蛹なのに、いまの繭子には、それが愛おしく思えてしまう。
「造り変わった」のは身体ばかりではない。繭子の意識(こころ)も、奥底の部分が変えられてしまった。
待ってて、いま「蜜」を吸わせてあげる……
繭子は《解放鍵(キーワード)》を口にした。
「――《メタフォーメーション》!」
616 繭子メタフォーメーション【11/19】 sage 2013/09/16(月) 22:34:12.07 ID:tnFyl6wp
眼の奥で光が弾けた。自慰で達したときと酷似した――いや、それを凌駕する絶頂感。
身体の芯から熱いものが噴き出す。比喩ではなくそうだった。どくどくと、花弁が蜜を溢れさせる。
《解放鍵》によって「本来の繭子」が覚醒したのだ。
とめどなく蜜を湧かせる花弁に、繭子は蛹を押し当てた。
「……ひゃうっ!? んにゅいぃぃぃっ……吸われるぅぅぅっ……!?」
――そして。蛹が、急速に「成長」を始めた。
617 繭子メタフォーメーション【12/19】 sage 2013/09/16(月) 22:37:43.10 ID:tnFyl6wp
体節が伸び、その末端が新たな体節を次々と生み、一部は枝分かれして、繭子の裸身に絡みつく。
すでに綻んでいた花弁を枝の一端が押し割り、蜜にまみれた別の枝は、ぬるりと尻穴に潜り込む。
「あにゅぅぅぅっ……!?」
二条の枝が柔肌の上を這い伸び、幼げな乳房に達すると、くるりと先端が弧を描き、乳頭を覆い隠す。
背にも二筋の枝が這い、左右の肩甲骨の上まで達すると、
――ぶわっ、と、扇を広げるように、蚕蛾に似た一対の白い羽根を生み出す。
618 繭子メタフォーメーション【13/19】 sage 2013/09/16(月) 22:39:16.45 ID:tnFyl6wp
一方、繭子の胎内に潜り込んだ「枝」は「母体」と同化しながら、その「変態」を促す。
ツーテールの髪が根元から白く染まり、前髪の生え際からは、これまた蚕蛾に似た触角が突き出した。
「……みぁっ!? みぁああああっ……!?」
ぎゅっと眼をつむり、上体を仰け反らせて再び眼を開けると、その瞳は紅く変わっている。
色だけではない。艶の消えた瞳を間近で見れば、複眼状に変じたことがわかるだろう。
可憐な少女の面影を残しながらも、蛾と融合したような奇怪な姿に、繭子は変貌を遂げていた。
619 繭子メタフォーメーション【14/19】 sage 2013/09/16(月) 22:42:22.26 ID:tnFyl6wp
いや、そうではない。この姿こそ、いまの繭子の「本来の姿」。
「人間の少女」としての日常生活は「擬態」にすぎない。
そう「造り変わって」しまったのだ。繭子の全てが。
「……はあっ、はあっ、はあっ……」
壁に手をつき、息を整える。
そして《繭子二号》を右肩に掛け、通学靴を手に提げてトイレを出た。
620 繭子メタフォーメーション【15/19】 sage 2013/09/16(月) 22:43:51.57 ID:tnFyl6wp
「……ありがとうございました」
繭子が声をかけると、交番の入口に立っていた若い警官が振り向き、ぽかんと口を開ける。
そして慌てて目を逸らした。顔が真っ赤だ。
「え……あ、はいっ……!」
無理もなかった。蛾と融合したといっても、見た目にはそれは触角や羽根など部分的なもの。
乳頭や股間は辛うじて隠されているが、繭子の姿はほとんど「人間の少女の裸身」なのだ。
621 繭子メタフォーメーション【16/19】 sage 2013/09/16(月) 22:45:27.76 ID:tnFyl6wp
もっとも、それを恥じらう意識は繭子自身からは消え失せている。
覚醒した繭子にとって、いまが当たり前の姿だから。
《繭子二号》と通学靴を警官に押しつける。
「あの……これ、預かって下さい」
返事は待たずに交番の外に出て、繭子は背の羽根を広げ、跳躍した。
「――とうっ!」
622 繭子メタフォーメーション【17/19】 sage 2013/09/16(月) 22:47:00.06 ID:tnFyl6wp
交番の向かいの五階建てビルの屋上へ跳び上がると、弾みをつけて、隣の十二階建てマンションの屋上へ。
そこからさらにビルやマンションの屋上をジャンプして渡って行く。
斃すべき歪蟲のいる場所まで――
異次元より現れ、人類に仇なす魔性のモノ――歪蟲。
見た目は巨大な節足動物や軟体動物――いわゆる「蟲」のよう。
623 繭子メタフォーメーション【18/19】 sage 2013/09/16(月) 22:49:08.50 ID:tnFyl6wp
だが人間の身体を侵蝕し、意識までをも支配して、新たな犠牲者を捕捉し増殖する――
そんな存在が「魔」ではなく何であろう。
しかし、いかなる理由かそれとも偶然か、歪蟲に侵されても自我を喪いきらない「人間」が、ごく稀にいた。
いや、その肉体はすでに歪蟲と同化し「造り変わって」いるのだから厳密には彼らは人間ではない。
それでも、歪蟲に対抗し得る能力を備えた彼らが、人類にとっての救世主であった。
繭子は、その「一人」なのだ。
624 繭子メタフォーメーション【19/19(完)】 sage 2013/09/16(月) 22:52:41.89 ID:tnFyl6wp
……人類のためとか、よっくわかんないけどね。
だいたい、あたし自身もう「人間」じゃないみたいなのに。でも。
ミミズ型とかウミウシ型とかグロい歪蟲がキモいしムカつくし。
悪い歪蟲相手に暴れるのはスカッとするし。出動手当は、いいお小遣いになるし……
繭子は、今日も歪蟲と戦うのであった。
【完】
(ヘッドフォンの中には・・・)
467 (1/7) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
部活が終わり、友人たちとファミレスでお喋りをして、駅前で別れ、帰路。
少女はいつものようにレコードショップに寄っていた。
特に欲しいものがあるわけでもないのだけれど、ついつい立ち寄ってしまう。
習慣みたいなものだ。
音楽好きな両親の影響だろうか。
本が好きな人がいるのと同じように、少女はCDやレコードが好きだった。
そんな彼女にとってレコードショップやレンタルショップというのは自宅と同じくらいほっとする場所なのだ。
タイトルを流し見し、目についたものを引きぬき、ジャケットを鑑賞し、棚に戻す。
ほぼ毎日同じ事をしているせいか、妙になれた、流れるような手つきだ。
ときどき気に入ったものがあったのか、目を見開いたり、口元をわずかにほころばせたりする。
中学生の財力ゆえに、気に入ったものすべてを買えるわけではない。
良かったものを覚えて帰り、特に気に入ったものだけを、後日また買いに来るようにして、一枚一枚コレクションを増やしていくのが常だった。
468 (2/7) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
少女はすこし飽きをおぼえていた。
それも当然。
そこそこ大きなレコードショップだったが、所詮はチェーン店。
しかも毎日来ているだけあって、大体のCDは見てしまっている。
店内の配置にしても、下手な店員よりは確実に詳しいだろう。
(そろそろ隣町のレコードショップに足を伸ばしてもいいかな)
そんなことを考えながら、新入荷の棚を漁り、店内をぶらつく。
棚の中を抜けて、壁際へ、店の隅へとふらりふらり。
(あ、試聴機のタイトル替わってる)
目ざとく見つけると、吸い付けられるように試聴機に手を伸ばす。
と、違和感。
(あれ、ヘッドフォンも?)
試聴機にかかっていたのは見慣れたものではなく、より大きく、高級そうなヘッドフォン。
新しいものはいいものだ。
少女はすこし得した気分になって、そのヘッドフォンをそっと取り上げる。
いままで慣れたここのヘッドフォンより、すこしずしりとした作り。
耳をすっぽり覆うおおきなイヤパッドは、手に吸い付くようなしめやかな素材で覆われている。
装着すると、店内のざわつきや音楽が、スッと遠くなった。
どこかがあたったのか、チクリとしたのをちょっとずらして調節すると、頭と一体化したかのように馴染む。
実に上等なヘッドフォンだ。嬉しくなって、試聴機の1番からかける。
はじめて見るバンドだったが、なかなか少女の好みにあった曲だった。
じっくり聞いてやろうと、肩にかけていた鞄をおろして、足の間に置き、楽な体勢をとる。
そうして、少女は静かな世界で音楽に没入していった。
469 (2/7) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
一曲目がおわり、二曲目が始まる。
全部聴いているほど暇でもないし、お店で全部聴くのはちょっと気まずい。
次のCDへかけ替えるために、少女は試聴に手を伸ばそうとした。
(あれ?)
動かない。
金縛りにあってしまったように、ピクリとも動かせない。
手どころか足や首、体全体が少女の意思をはなれてしまっていた。
声を出そうとするも、掠れ声さえ出せない。
音楽に集中するために薄く閉じたまぶたは、いくら開けようとしても微動だにしない。
予想だにしない状況に、パニックに陥ってしまう。
しかし、少女の内心とは裏腹に、身体は平常のまま。
店員や他の客には、リラックスした状態で曲を聴き続けているようにしか見えない。
いつもの子がまた試聴機を使っている、それだけである。
予想だにしない事態に混乱している少女は、聞こえてくる音に変化が生じたことに気づかなかった。
穏やかな音楽に紛れて、なにかが蠢き出す気配。
軟体質のそれは、ヘッドフォンの中にへばりついていたらしい。
染み出すようにイヤパッドの中に溢れて、少女の耳に近づいてゆく。
右のスピーカーがすべて覆われて、音がくぐもった頃に少女もようやく新たな異変を感じとった。
しかし、おぞましい気配を察したところで、少女は動けない。
抵抗のすべを持たない少女の耳を、生暖かい軟体が舐めるように覆ってゆく。
その行き先は少女の耳穴。
気色の悪い感覚に、少女の背筋から全身にぞっと怖気が走る。
右耳からはぐちゅぐちゅとした水音にも似た音ばかりきこえ、左耳から聞こえるはずの音楽は現実感をうしなって遠くへ行ってしまった。
軟体はぬるぬると這いながら耳穴をその身で埋め尽くすと、一度動きを止める。
耳を這う動きがとまったことにより、少女の理解がようやっと追いつく。
身体が動かせなくて、耳をなにかに覆い尽くされて、声もだせなくて。
現状の把握が進むにつれ、少女の胸中に今度は不安が広がる。
何が起きているのかわからないけれど、このまま終わるはずがない。
そんな漠然とした予感。
閉じた視界の中で耳へと意識が集中していて、ほんの些細な動きさえ感じ取れてしまう。
鋭敏になった感覚に突如激痛がはしる。
軟体がその身を尖らせ鼓膜を破ったのだ。
キーンという音にならない音が響き、身動きも声も出せない状況はより痛みをより一層大きく感じさせる。
唯一自由になる呼吸を詰まらせ、荒げ、なんとか痛みを和らげようとするも、たったそれだけでは気休めにもならない。
ただただ、すべてが終わるまで耐えるしかなかった。
470 (4/6) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
そんな少女にお構いなく軟体はその身を少女の奥へと進める。
鼓室に侵入し、蝸牛を埋め尽くし、そうして脳へ根を伸ばす。
丁寧に、丁寧に。
宿主をこわしてしまっては元も子もない。
脳を奪い取るのではなく、共有するのだ。
まずは痛みを感じる部位から変えてゆく。
快楽物質を大量に放出させ、痛みを和らげ、神経を繋ぎ変えて痛みを快感へと錯覚させる。
人間は脆いものだ。
人間をどう扱えばいいのかを、それは本能的に知っていた。
痛みだけで死んでしまうコレは、最初にここを抑えておかないとすぐに壊れてしまう。
痛覚神経と快感中枢を支配して。
さて、本格的な寄生の開始だ。
まだヘッドフォンの中に残った身体を、中へ中へと補充しながら脳に張った根を広げてゆく。
運動中枢を支配して、身体を掌握する。
これでもう神経毒は要らなくなった。
最初に打ち込んでコレの身体を麻痺させた毒は中和しておく。
さあ、あとは意思を司る部分を乗っ取るだけ。
471 (5/6) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
これは少々やっかい。
記憶を読み込んで、改ざんして、自分がいることを当然だと思い込ませなければいけない。
そのためには記憶を共有して、思考パターンを合わせるのが手っ取り早い。
そうしないと思い通りに動いてくれないのだ。
丁寧な仕事には時間がかかる。
その間に養分の確保をしておかなくては。
脳への侵食を進めながら、今度は鼓室から鼻の奥につながる耳管に触手を伸ばす。
身を細くして耳管を抜け、咽喉から食道へ。
消化管の内壁に張り付くように、網状のアメーバのように、奥へ奥へ。
胃を覆い、幽門を抜け、十二指腸、小腸、大腸と。
消化管全てを覆い尽くし、本体へと栄養を送る。
幸い、先ほど食事してくれていたらしい。
十分すぎるほどの養分が摂取できた。
どうやらコレは体重を気にしているみたい。
これからは私がいるからね。
好きなだけ食べるといいよ。
さて、記憶の読み取りもほぼ終わり。
やれやれ、これで一息つけるよ。
あとは吸収した養分で増やした部分を、このヘッドフォンへ残しておしまい。
これ以上ここにいては店員に怪しまれてしまうからね。
あとの作業は家に帰ってからにしましょう。
それにしてもこのヘッドフォンというのは理想的な住処だね。
最初の私はよっぽど賢かったのね。
最近は分裂の頻度もあがって、申し分なし。
さて、じゃあね。
脳から切り離した瞬間に襲っちゃだめだよ?
この人間には私がもう入ってるんだから。
そうね。
2日くらい、眠ってるといいわ。
じゃ、元気でね。
472 (6/6) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
遠い、あやふやなところへ行っていた少女の意識が戻ってくる。
6枚あったCDも、もう聞き終えてしまった。
(そうね、3枚目はなかなか良かった。買ってもいいかもしれないね)
そんなことを考えながら、ヘッドフォンを外し、試聴機へ戻す。
もうすっかり遅くなってしまった。
このままだと夕飯の時間に遅れてしまう。
少女は足の間においていたカバンを持ち上げる。
通学カバンの布地はところどころ、水気を含んでその色を濃くしている。
少女の股間から溢れでた液体が、太ももをつたい、ニーソックスに染みこみ、カバンにまで到達した結果である。
(いやだな。シミにならないといいんだけれど)
家に帰って、はやく洗うことを考えながら、少女は店をでる。
右耳から未だにズキンズキンと痛いほどに感じる快感で、少々足元がおぼつかないようだ。
そっと、手をあてがうと、キーンとした音がひびいてくるような気がする。
家へ足をむけると、クゥと可愛らしく腹がなる。
(お腹すいたなあ)
晩御飯のメニューはなんだろうかと思いを馳せる。
(そう、たくさん食べて、この子を育てて、もっともっと増やさないといけないもんね)
「うーん、楽しみ!」
思わずすこし大きな独り言をもらした後、少女はあわてて周りを見渡し、誰も見ていなかったことにホッとして、足を速めるのだった。
おわり
473 名無しさん@ピンキー sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
以上です
名前欄のレス番がグダったりほぼエロシーンなかったりですまんせん
ヘッドフォンから生えた触手に脳いじられるシチュが大好きですすいません
部活が終わり、友人たちとファミレスでお喋りをして、駅前で別れ、帰路。
少女はいつものようにレコードショップに寄っていた。
特に欲しいものがあるわけでもないのだけれど、ついつい立ち寄ってしまう。
習慣みたいなものだ。
音楽好きな両親の影響だろうか。
本が好きな人がいるのと同じように、少女はCDやレコードが好きだった。
そんな彼女にとってレコードショップやレンタルショップというのは自宅と同じくらいほっとする場所なのだ。
タイトルを流し見し、目についたものを引きぬき、ジャケットを鑑賞し、棚に戻す。
ほぼ毎日同じ事をしているせいか、妙になれた、流れるような手つきだ。
ときどき気に入ったものがあったのか、目を見開いたり、口元をわずかにほころばせたりする。
中学生の財力ゆえに、気に入ったものすべてを買えるわけではない。
良かったものを覚えて帰り、特に気に入ったものだけを、後日また買いに来るようにして、一枚一枚コレクションを増やしていくのが常だった。
468 (2/7) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
少女はすこし飽きをおぼえていた。
それも当然。
そこそこ大きなレコードショップだったが、所詮はチェーン店。
しかも毎日来ているだけあって、大体のCDは見てしまっている。
店内の配置にしても、下手な店員よりは確実に詳しいだろう。
(そろそろ隣町のレコードショップに足を伸ばしてもいいかな)
そんなことを考えながら、新入荷の棚を漁り、店内をぶらつく。
棚の中を抜けて、壁際へ、店の隅へとふらりふらり。
(あ、試聴機のタイトル替わってる)
目ざとく見つけると、吸い付けられるように試聴機に手を伸ばす。
と、違和感。
(あれ、ヘッドフォンも?)
試聴機にかかっていたのは見慣れたものではなく、より大きく、高級そうなヘッドフォン。
新しいものはいいものだ。
少女はすこし得した気分になって、そのヘッドフォンをそっと取り上げる。
いままで慣れたここのヘッドフォンより、すこしずしりとした作り。
耳をすっぽり覆うおおきなイヤパッドは、手に吸い付くようなしめやかな素材で覆われている。
装着すると、店内のざわつきや音楽が、スッと遠くなった。
どこかがあたったのか、チクリとしたのをちょっとずらして調節すると、頭と一体化したかのように馴染む。
実に上等なヘッドフォンだ。嬉しくなって、試聴機の1番からかける。
はじめて見るバンドだったが、なかなか少女の好みにあった曲だった。
じっくり聞いてやろうと、肩にかけていた鞄をおろして、足の間に置き、楽な体勢をとる。
そうして、少女は静かな世界で音楽に没入していった。
469 (2/7) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
一曲目がおわり、二曲目が始まる。
全部聴いているほど暇でもないし、お店で全部聴くのはちょっと気まずい。
次のCDへかけ替えるために、少女は試聴に手を伸ばそうとした。
(あれ?)
動かない。
金縛りにあってしまったように、ピクリとも動かせない。
手どころか足や首、体全体が少女の意思をはなれてしまっていた。
声を出そうとするも、掠れ声さえ出せない。
音楽に集中するために薄く閉じたまぶたは、いくら開けようとしても微動だにしない。
予想だにしない状況に、パニックに陥ってしまう。
しかし、少女の内心とは裏腹に、身体は平常のまま。
店員や他の客には、リラックスした状態で曲を聴き続けているようにしか見えない。
いつもの子がまた試聴機を使っている、それだけである。
予想だにしない事態に混乱している少女は、聞こえてくる音に変化が生じたことに気づかなかった。
穏やかな音楽に紛れて、なにかが蠢き出す気配。
軟体質のそれは、ヘッドフォンの中にへばりついていたらしい。
染み出すようにイヤパッドの中に溢れて、少女の耳に近づいてゆく。
右のスピーカーがすべて覆われて、音がくぐもった頃に少女もようやく新たな異変を感じとった。
しかし、おぞましい気配を察したところで、少女は動けない。
抵抗のすべを持たない少女の耳を、生暖かい軟体が舐めるように覆ってゆく。
その行き先は少女の耳穴。
気色の悪い感覚に、少女の背筋から全身にぞっと怖気が走る。
右耳からはぐちゅぐちゅとした水音にも似た音ばかりきこえ、左耳から聞こえるはずの音楽は現実感をうしなって遠くへ行ってしまった。
軟体はぬるぬると這いながら耳穴をその身で埋め尽くすと、一度動きを止める。
耳を這う動きがとまったことにより、少女の理解がようやっと追いつく。
身体が動かせなくて、耳をなにかに覆い尽くされて、声もだせなくて。
現状の把握が進むにつれ、少女の胸中に今度は不安が広がる。
何が起きているのかわからないけれど、このまま終わるはずがない。
そんな漠然とした予感。
閉じた視界の中で耳へと意識が集中していて、ほんの些細な動きさえ感じ取れてしまう。
鋭敏になった感覚に突如激痛がはしる。
軟体がその身を尖らせ鼓膜を破ったのだ。
キーンという音にならない音が響き、身動きも声も出せない状況はより痛みをより一層大きく感じさせる。
唯一自由になる呼吸を詰まらせ、荒げ、なんとか痛みを和らげようとするも、たったそれだけでは気休めにもならない。
ただただ、すべてが終わるまで耐えるしかなかった。
470 (4/6) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
そんな少女にお構いなく軟体はその身を少女の奥へと進める。
鼓室に侵入し、蝸牛を埋め尽くし、そうして脳へ根を伸ばす。
丁寧に、丁寧に。
宿主をこわしてしまっては元も子もない。
脳を奪い取るのではなく、共有するのだ。
まずは痛みを感じる部位から変えてゆく。
快楽物質を大量に放出させ、痛みを和らげ、神経を繋ぎ変えて痛みを快感へと錯覚させる。
人間は脆いものだ。
人間をどう扱えばいいのかを、それは本能的に知っていた。
痛みだけで死んでしまうコレは、最初にここを抑えておかないとすぐに壊れてしまう。
痛覚神経と快感中枢を支配して。
さて、本格的な寄生の開始だ。
まだヘッドフォンの中に残った身体を、中へ中へと補充しながら脳に張った根を広げてゆく。
運動中枢を支配して、身体を掌握する。
これでもう神経毒は要らなくなった。
最初に打ち込んでコレの身体を麻痺させた毒は中和しておく。
さあ、あとは意思を司る部分を乗っ取るだけ。
471 (5/6) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
これは少々やっかい。
記憶を読み込んで、改ざんして、自分がいることを当然だと思い込ませなければいけない。
そのためには記憶を共有して、思考パターンを合わせるのが手っ取り早い。
そうしないと思い通りに動いてくれないのだ。
丁寧な仕事には時間がかかる。
その間に養分の確保をしておかなくては。
脳への侵食を進めながら、今度は鼓室から鼻の奥につながる耳管に触手を伸ばす。
身を細くして耳管を抜け、咽喉から食道へ。
消化管の内壁に張り付くように、網状のアメーバのように、奥へ奥へ。
胃を覆い、幽門を抜け、十二指腸、小腸、大腸と。
消化管全てを覆い尽くし、本体へと栄養を送る。
幸い、先ほど食事してくれていたらしい。
十分すぎるほどの養分が摂取できた。
どうやらコレは体重を気にしているみたい。
これからは私がいるからね。
好きなだけ食べるといいよ。
さて、記憶の読み取りもほぼ終わり。
やれやれ、これで一息つけるよ。
あとは吸収した養分で増やした部分を、このヘッドフォンへ残しておしまい。
これ以上ここにいては店員に怪しまれてしまうからね。
あとの作業は家に帰ってからにしましょう。
それにしてもこのヘッドフォンというのは理想的な住処だね。
最初の私はよっぽど賢かったのね。
最近は分裂の頻度もあがって、申し分なし。
さて、じゃあね。
脳から切り離した瞬間に襲っちゃだめだよ?
この人間には私がもう入ってるんだから。
そうね。
2日くらい、眠ってるといいわ。
じゃ、元気でね。
472 (6/6) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
遠い、あやふやなところへ行っていた少女の意識が戻ってくる。
6枚あったCDも、もう聞き終えてしまった。
(そうね、3枚目はなかなか良かった。買ってもいいかもしれないね)
そんなことを考えながら、ヘッドフォンを外し、試聴機へ戻す。
もうすっかり遅くなってしまった。
このままだと夕飯の時間に遅れてしまう。
少女は足の間においていたカバンを持ち上げる。
通学カバンの布地はところどころ、水気を含んでその色を濃くしている。
少女の股間から溢れでた液体が、太ももをつたい、ニーソックスに染みこみ、カバンにまで到達した結果である。
(いやだな。シミにならないといいんだけれど)
家に帰って、はやく洗うことを考えながら、少女は店をでる。
右耳から未だにズキンズキンと痛いほどに感じる快感で、少々足元がおぼつかないようだ。
そっと、手をあてがうと、キーンとした音がひびいてくるような気がする。
家へ足をむけると、クゥと可愛らしく腹がなる。
(お腹すいたなあ)
晩御飯のメニューはなんだろうかと思いを馳せる。
(そう、たくさん食べて、この子を育てて、もっともっと増やさないといけないもんね)
「うーん、楽しみ!」
思わずすこし大きな独り言をもらした後、少女はあわてて周りを見渡し、誰も見ていなかったことにホッとして、足を速めるのだった。
おわり
473 名無しさん@ピンキー sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
以上です
名前欄のレス番がグダったりほぼエロシーンなかったりですまんせん
ヘッドフォンから生えた触手に脳いじられるシチュが大好きですすいません
五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』
397 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(1/20) sage 2013/06/16(日) 07:50:03.55 ID:CJ8TnpxM
森の中で、清見は暗い青色の寄生スーツを身にまとっていた。
性交後の余韻を象徴するかのように、露出した肌の部分から淫靡な香りが漂う。
半液状の触手達が汗ばんだ肉体を愛撫する。
だが、彼女の顔立ちはいつもの無表情に戻っていた。
清見は抜け目の無い人間である。
例え妖魔のしもべになった今でも、その性格が変わることは無かった。
だから足元から違和感を覚えた瞬間、清見はすかさず体を横へと滑らせた。
やや遅れて一本のツタが地表から跳ね上がり、彼女の足元を空振る。
地面はいつの間にかイバラの大群に覆われていた。
赤い花が満開すると、血のような花びらの旋風が巻き起こる。
清見は咄嗟に顔面を両腕でガードした。
体を覆った触手スーツは瞬時にバリアのように広がり、
接着剤のごとく花びらを粘つける。
だがその隙に、木の上から一本の蔓が伸び出て、
清見の腕から烈火の勾玉をはたき落とした。
一つの影が飛び出て、勾玉を空中でキャッチすると、
そのまま清見の後方にある巨大水玉へと駆けつけた。
その人影は木の槍を掲げ、全力で巨大水玉の表面に突き刺した。
ブスッという異音とともに、水玉の大目玉から無数の黒液が噴き出る。
木の槍を放った人物は躊躇すること無く、その中から灯を引っぱり出し、
赤い勾玉をその胸にかざした。
主人を認識した霊玉は命を吹き込まれたように輝き、灯の体を炎で包み込む。
少女の体に染み込んだ黒い淫液は蒸発したかのように消え、
本来の健康的な肌色をあぶり出す。
だが炎が完全なバトルスーツに変身する直前、激しい水流が襲来してそれを打ち消した。
人影は灯の体を守るように抱きかかえ、水流を割って飛び出した。
その身に着けていた暗緑色の寄生スーツが、体に付着した液体を自動的に吸い取る。
「これは驚いた。翠、あなたがまだ堕ちていなかったとは」
「清見……っ!」
翠と呼ばれた少女は、肩で息をしながら答えた。
彼女はもう一度清見を悔しそうに見つめ、それから灯を抱きしめて走り去った。
彼女の後ろ姿を冷ややかな目線で追いながら、
清見は自分の触手スーツに指先を入れて目玉を一つえぐり取った。
その青い眼球を、灯を閉じ込めた水玉の残滓にぽちゃんと落とす。
水溜りが怪しくうねると、そこから犬のような妖獣が立ち上がった。
化け物の体は常に波紋が揺らぎ、その顔面には清見の落とした目玉が青く光る。
「ゆけっ」
清見が短く命令すると、妖獣はバネのように地面を蹴り出した。
翠が踏みつけた跡に草花が生え渡った。
そこで異物を感知すると、植物は一斉に棘のある蔓を伸ばした。
縛り付けられた妖獣は、一瞬苦しそうにもがいたが、形勢はすぐに逆転した。
妖獣の表面の毒々しい粘液に触れていた植物は、
まるで濃硫酸を浴びせられたように枯れ始める。
そしてボロボロに黒ずんだ植物を力で千切り、妖獣が再び駆け出した。
398 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(2/20) sage 2013/06/16(日) 07:53:03.07 ID:CJ8TnpxM
翠はもともと満足に走れる状態ではなかった。
足元がふらついて、意識もおぼつかない。
一歩進むごとに貞操帯が股間に食い込み、その隙間から愛液がとろりと垂れ下がる。
今にも狂い出しそうな快感に、翠はその場でうずくまって体をまさぐりたかった。
それを我慢できたのも、懐にある灯の存在だからだ。
(せめて、灯だけでも……!)
翠は唇をかみ締め、その痛みで快楽をこらえた。
変身までさせられなかったが、灯を浸蝕していた黒液はだいぶ浄化できた。
自分が助かる望みはもはや皆無。
ならば、せめて親友だけでも助かってほしかった。
だが翠の覚悟を、妖眼蟲は許さなかった。
迅雷のごとく疾走する妖獣は、あっという間に翠達に追いついた。
一つ目が大きく輝くと、妖獣は翠の脚にがぶりと噛み付き、
首を回転させて引っ張った。
「っ……!」
激痛を感じるも束の間、翠はバランスを崩して倒れた。
牙の鋭い先端が脚を覆った触肉のブーツを貫き、その下にある肉体まで届く。
奮闘も虚しく、彼女は灯を投げ出して倒れ込んでしまった。
「呆れたわ。それほど強い淫気を発しながら、まだ抗おうとするなんて。
まあ、だから感心もするけど」
清見は寄生スーツに刺さった花びらを取り除きながら、悠々と翠の前へやってきた。
その冷徹な瞳は青く湛えながら、翠の艶姿を捉える。
とっくに限界に達しているのか、翠の触手服の寄生眼は頻繁に点滅し、
明暗を繰り返すと同時に宿主の体を震わせる。
スーツを組成していた肉布もほとんど触手に解放され、宿主の肌を自動的に撫で回した。
翠の肌に浮かぶ汗も赤く染まった顔も、見た者の欲情を十分に焚き付ける。
そして清見の言う通り、彼女の体から発する凄まじい淫気は、
取り込んだ者を一瞬にして色欲の虜にしてしまう。
何より滑稽なのは、翠が抑制しようとすればするほど、
色気がより官能的に高まることだった。
「あら、鈴華から戒めを受けたようね」
「っ……!」
清見が視線を移すと、翠は羞恥に満ちながら胸や股間のあたりを隠した。
美乳の先端につけられた金色のピアス。
陰部から臀部にかけて食い込んだ貞操帯。
ピアスと貞操帯を細い鎖で繋ぎ、白いうなじに装着された首輪。
キラキラ輝く金属の装飾品は、卑猥な触肉スーツとアンバランスな対照を作り、
少女の清純だった体を美しい娼婦に作り替える。
「妖眼蟲の下僕になるのがそんなに嫌なら、一人で逃げることだって選べたはずよ」
「仲間を見捨てることは……できません」
「おかしなことを言うわね。私が今の姿になったのも、そもそもあなたのせいなのに」
「ええ……すべてはあの時、私の心が弱かったせいです」
翠はひっそりと俯いた。
その顔は赤く染まりながらも、悔しい感情が滲んでいた。
「私のせいで、たくさんの人が犠牲になりました。その罪からただ逃げるために、
私は快楽に溺れようとしました。でも……あなたと再び会えたおかげで、
もう一度立ち上がる勇気を手にしたので」
「鈴華と一緒に、私と戦った時にか」
399 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(3/20) sage 2013/06/16(日) 07:55:47.27 ID:CJ8TnpxM
「あの時、清見ちゃんが奮戦する姿を見ていたからこそ、
自分の役目を思い出せたのです」
「その本人がこうして悪の味方となったのに?」
「だからこそ……清見ちゃんが私のような過ちを犯す前に!」
翠は拳を握り締め、凛とした眼差しで清見を見上げた。
体が淫気に蝕まれても、彼女が本来持つ凛々しさは埋もれることはなかった。
だが清見は一歩も気負いしなかった。
その正義心におされたのか、触手スーツも動きを鈍らせた。
だが清見は少しも気負しなかった。
彼女はむしろ翠に顔を近づけた。
その深海のような瞳に見つめられると、翠は唐突に寒気を感じた。
「素晴らしい……どんなに汚されてもなお自浄し、他人まで感化する心。
本当に綺麗だわ」
清見は感心したように言った後、一転して残酷な言葉を綴る。
「だからこそ、完全なる闇に染める価値がある。あなたほどの者なら、
どんな正しい心の持ち主であっても、悪に堕落させる誘惑者となれる」
「そんな……!」
自分の言葉はもう決して届かない。
そう思い知らされた翠は、谷底に突き落とされたような気持ちになった。
彼女の表情をよく鑑賞できるように、清見は顎に指を添えて持ち上げた。
「翠、ありがとう。あなたが私を思っていると同じに、
私もあなたのことを大事に思っている。だから心配しなくてもいいよ。
もう一度闇に心を委ねる快楽を思い出させてやる」
清見は青暗い瞳を輝かせ、手を振り上げた。
触手スーツの袖の部分は幾つかのミミズのように分裂して飛びかかった。
翠は目をつむった。
すでに一度は淫乱な性質を植えつけられた身と心は、簡単に屈してしまうだろう。
魂にまで刻み込まれた奴隷の呪縛に、もはや抵抗する勇気さえ無かった。
むしろ心のどこかにホッとするような安堵感さえあった。
(みんな、ごめんなさい……)
翠は謝罪とともに、諦めの言葉を呟いた。
その時。
一陣の砂の線が目にも止まらぬ速さで清見と翠の合間を横切る。
空中に放たれていた水触手は、一瞬にして乾ききって断裂した。
すぐ横の地面から、一つの人影がのろりと起き上がる。
水の隻眼獣はすぐさま翠から離れ、その人物に噛み付きかかった。
だが妖獣が口を開こうとした直前、咽喉元から掴み上げられた。
そして塩漬けされたナメクジのごとく全身から水分が抜けて、
目玉はひび割れながら爆ぜ散った。
清見は素早く後ろへ飛びのき、自分に向かって投げつけられた残骸を回避した。
砂と接触した寄生スーツは一瞬石化したが、
すぐにまわりの触肉に同化されて再び触手化した。
400 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(4/20) sage 2013/06/16(日) 07:58:01.64 ID:CJ8TnpxM
「翠、大丈夫か」
「ああ、平気よ……」
地面から抜け出た睦美は、苦悶をこらえる翠や、失神している灯を抱え起こす。
腐食液のせいで、妖獣をじかに掴んだ手のひらは軽いヤケドを負った。
しかし、睦美はその痛みなどまったく意に介さなかった。
彼女はただ岩盤よりも硬い目線を清見にぶつけた。
清見は逆に睦美の切り刻まれた戦闘スーツを観察した。
「ダメージを負っているようね」
「鈴華のおかげさ」
「逃げるつもり? 鈴華や私を置いて」
「できないことを挑むのは勇気ではない。残念ながら、
今の私にはあなたを抑えつつ鈴華に勝つ方法が思いつかない」
睦美はそう言うと、翠や灯を抱えたまま背を向けた。
その時、清見の背後の茂みから鈴華が駆け抜け出る。
彼女の触手スーツもまた、睦美と同じくらい損傷していた。
睦美は槍の雨に打たれたようだったが、
鈴華の場合は土砂崩れの中から掘り起こしたボロ雑巾のようだ。
「許さないんだから! 絶対捕まえて、この屈辱を晴らしてやるんだから!」
鈴華の小綺麗だった顔が泥にまみれ、怒りの形相をあらわにした。
彼女は身丈の倍ほどある矛を振り回し、穂先の先端を睦美の背中に狙い定めた。
だが睦美は振り返ること無く、霊呪を念じながら土を蹴った。
地面はその場で大きく盛り上がると、巨大な土の聖獣が瀑布のように涌き出た。
その表面に突き刺さった無数の刃や、そこから流出し続ける砂は、
今まで繰り広げた激戦を痛々しく物語る。
「すまない、土麒麟(どきりん)……最後の力を振り絞ってくれ!」
「そんなボロボロの姿で何の役に立つ!」
鈴華は全力で矛をはね上げ、動きが鈍くなった召喚獣に向かって飛びかかった。
穂先は豪快に一回転し、土麒麟の頚部に深くつらぬく。
鈍重な唸り声が森の木々を揺るがす。
ついに限界までダメージが達したのか、聖獣のあちこちから砂が血流のように迸った。
鈴華は容赦無く手首を返すと、土麒麟の首より上の部分が空中へと刎ねのけられた。
頭部を失った砂体はゆっくり横へと倒れていく。
「この堅物め! 体力だけはすごいんだから……」
完全に崩壊した砂の前で、鈴華はぜえぜえ息を変えながら矛にもたれかかった。
召喚獣の首は空中でぐるりと回転すると、ふと大口を開いたまま鈴華に向かって落下した。
だが、その最後の一撃は決して届くことは無かった。
横から一筋の水流が噴射して頭部を貫通すると、
今度こそただの土石となってに砕け散った。
「ふぇ、なに?」
降りかかってくる土砂に、鈴華は初めて気付く。
彼女の横まで歩んだ清見は肩をすぼめてみせた。
「だから昔から注意してやったのに。最後まで油断しないでって」
「おお、清見ちゃん! 無事寄生が終わったんだね。それより、睦美のやつは?」
「彼女達ならもうここにいない」
「えええっ!?」
清見が指差した方向を見ると、その地面には胴体が通れるくらいの穴があいていた。
鈴華は小柄な体を精一杯使って地団駄を踏んだ。
401 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(5/20) sage 2013/06/16(日) 08:00:27.78 ID:CJ8TnpxM
地中は、あらゆる追撃を阻む特殊な地形である。
そして五行戦隊の中で、睦美の土遁術がその唯一の移動手段であった。
この中でいる限り、睦美はどんな敵でも振り切れる自信があった。
例え二人分の人間を抱えて、スピードが大幅にダウンしたとしても。
睦美は魚のように地中空間を泳ぐ。
「翠、もう少し耐えてくれ。陽子先生が帰ってくれれば、きっと全てがうまくいくから」
「うん、ありがと……」
翠は瞳の焦点がぼやけながらも、健気に笑みを見せた。
その様子に胸を痛めながらも、睦美は無視せざるを得なかった。
地行術により、睦美は霊力を消費することで地中を一時的に通過することができる。
だが自分以外の物質を帯同する場合、術者への負担が何倍もの激しくなる。
普段よりずっと通過しにくい土質を感じながら、
睦美は集中力を高めて掘り進んだ。
突然、彼女の後方から一本の鉄索が猛烈な勢いで土を突き破った。
「なにっ!?」
睦美はすかさず方向転換したが、鎖はあたかも追尾するように経路を辿り続ける。
「睦美、鈴華が私を狙っているんだわ!」
翠は疼きに眉をしかめて叫んだ。
彼女の首輪や貞操帯に寄生した妖眼が、まるで鎖を呼応するかのように妖しく輝く。
睦美がいくらモグラのように地層を貫通しても、鎖は決して彼女達を見失わなかった。
そしてついに鎖はカチャリと翠の首輪を繋ぎ止めた。
途端、睦美は腕から凄まじい反発力を覚えた。
「ちっ……!」
そのまま地中を進みながら、睦美は必死に考えを巡らせた。
彼女のスピードに合わせて鉄索も無尽蔵に伸張してくる。
そして次第に、腕の中の重さが増え始めた。
(このままではまずい……!)
灯が健在していればこんな鎖すぐに断ち切れるだろうが、
自分の能力ではどれくらいかかるか予測できない。
そして彼女が止まった瞬間を狙って、鈴華は鎖を引き上げるだろう。
「睦美、灯ちゃんのことは頼みましたわ」
「翠?」
側から掛けられた励ましの言葉に、睦美は小さく驚いた。
そんな翠はニコッと優しい微笑を浮かべる。
「ごめんなさい。私が付いて来られるのがここまでみたいです。
でも、あなたが必ず悪を打ちかつことを信じていますから」
「翠、早まるなっ!」
睦美が阻止するよりも速く、翠は彼女から腕を離した。
掴み直そうと伸びた睦美の手は虚しくも届かない。
次の瞬間、翠の体は一気に後方へと引っ張られて、完全に見えなくなってしまった。
「くっ……!」
その場でとどまりたい気持ちを必死にこらえ、睦美は更にスピードを上げた。
402 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(6/20) sage 2013/06/16(日) 08:03:33.44 ID:CJ8TnpxM
□
地表の上で、清見が傘をさしていた。
傘の表面にいくつもの目玉が見開き、裏側からは激しい雨水が穴の中へと降り注いだ。
その傍らで、悔しがる鈴華と地面に伏せる翠の姿があった。
「もう、もう! あとちょっとだったのに」
「ぅん……!」
鈴華は手に持っている鎖を乱暴に振り回した。
鎖が揺れるたびに、首輪を繋がれた翠が苦しげな声を漏らす。
ふと、穴の中の水が逆流して雨傘の裏側に吸収されていく。
清見は傘を畳み、それを自分の触手服の中に押し込んだ。
傘はたちまち触手スーツの一部に同化し、傘にあった目玉はスーツの妖眼に戻される。
「清見ちゃん、どう?」
「完全にロスト。水が途中で地下湖に合流してしまった。途中で横穴を作って、
そこへ誘導されたんだろう。さすが睦美といったところかしら」
「きぃ――くやしい! 翠ちゃんが余計なことさえしなければ、
こんなことにはならなかったのに!」
鈴華が鎖を振るうと、翠は快楽と苦悶に呻いた。
「まあまあ。私は無事寄生されたし、翠も失わずに済んだ。
それだけでも十分な収穫だ」
「そうなんだけどさ……」
清見が冷静な態度を見せると、鈴華は好奇心に満ちた目線を向けた。
「清見ちゃんって寄生されたはずなのに、なんか前と変わらないね」
「どうなっていれば満足してくれるかしら」
「私や翠の場合は、すっごくエッチになったのに」
「そういう欲望なら、もちろん私にも植え付けられた。なんなら、体で試してみる?」
清見はそう言うと、両目を細めて指先を舐めとった。
青い触手スーツはにょろりと蠢き、半透明化した水の羽衣が肢体のラインを浮かばせる。
今まで冷静沈着なイメージから、絶対に想像できない狡猾さと蠱惑さ。
その挑発な目線に見つめられただけで、鈴華の心がドキッとした。
自分を見透かされたような妖しい冷たさに、
思わず被虐的な気持ちに陥ってしまいそうだ。
だが鈴華が清見の体に触れようとした途端、清見に頭を押さえつけられた。
「はい、そこまで」
「ちょっと、焦らさないでよ!」
「睦美と灯を捕まえるほうが先でしょ?
ちょうど翠がこちらの手にあることだし」
鈴華は一度落胆したが、睦美と灯の名前を聞いた途端、
また新しい悪戯を発見した子供の目になった。
「翠ちゃんを餌に二人をおびき出すつもり? ははっ、なんか悪役っぽくて面白そう」
「……私を人質にしても徒労ですわ」
翠は辛そうに首をあげて呟いた。
403 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(7/20) sage 2013/06/16(日) 08:06:17.46 ID:CJ8TnpxM
「睦美は正義を見失う人ではありません。私一人を救うために、
妖魔に屈することは決してないはずです」
「ああ。そういう意味では、私達五人の中で睦美が一番正義に近いだろうね」
「えっ?」
翠は清見を見上げた。
清見の両目は静かな水面のようで、何を考えているか分からない。
「だから人質を取るなら、あなたよりもっと都合の良い存在を選ぶ。
人数が多く、閉鎖環境で、妖力の源となる精気も取れやすく、
蟲の生産基地にもしやすい。そして、睦美達や私達が良く知っている人達」
「そんな都合の良い人質って……?」
清見の言葉を反芻する鈴華は、何か閃いたかのように顔をほころばせた。
(そんな……まさか!)
翠の心情が激しく揺れた。
彼女も鈴華と同様に、森の外に視線を向けた。
東側のどんよりとした空の底に、朝焼けの薄い赤色が見え始めた。
その方向上にある場所を想起した時、翠は心の奥から絶望と戦慄を覚えた。
□
暁の光が地上を弱々しく照らし、新しい朝を迎えたことを告げる。
雲の合間を抜けるのが精一杯だったのか、朝日の色合いは極めて曖昧なものだった。
その元気に欠けた光に、灯は意識を取り戻していく。
「ううっ……」
徐々に覚醒しながら、灯はゆっくりと目蓋を開けた。
ひどく堅い寝心地だった。
床の上で、自分は一枚の薄汚れた毛布を掛けて寝かされていた。
周りに目をやると、そこは久しく使われていない倉庫のような場所だった。
小屋の中に錆付いたパイプ椅子や机やらが所狭しと積まれる。
そのパイプ椅子の列を背にして、睦美は体育座りの状態で眠っていた。
古びた雨戸の隙間から光が漏れる。
(……助かった、のか)
灯は意識を回復させながら、物音を立てないよう起き上がった。
そして自分が被っていた毛布を睦美にそっと掛け、半壊した窓から外を眺めた。
道端にはバス停やガードレール、さらに下り坂が見えた。
坂道から視線を落とせば、商店街の一部が見えてくる。
素早く脳内地図と照合をとった。
ここは市街地に近い高台、森とは学校を挟んで反対側の位置にある。
丘からの町への見晴らしが良く、攻めにも守りにも適したポイントだ。
睦美らしい思慮深い選択と言える。
昨夜のことは、清見と戦ったことまでは覚えている。
だが自分がどうやって負けたか、その先の記憶がおぼろげだった。
睦美と翠が必死に自分を助けた記憶は印象にあった。
そういえば、一緒に脱出したはずの翠はどこにいるだろうか。
ふと灯は上着をめくり、自分のお腹を見おろした。
少女らしいすべすべした肌には、これといった変わりは無かった。
(あれは……夢か?)
何かおぞましい感覚が湧きそうになり、灯は慌てて思い出すのを止めて。
曖昧ながらも、自分の体が清見に何かされたような覚えはあった。
もし寄生されているのなら、一刻も早く睦美に知らせなければならない。
404 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(8/20) sage 2013/06/16(日) 08:17:30.83 ID:CJ8TnpxM
そう思って睦美を揺り起こそうとした時、その穏やかな寝顔が目に入った。
いつも堅物のイメージがある睦美だが、今ではまぶたを深く閉じて、
静かな寝息を立てて眠っていた。
しな垂れた頭から、白いうなじが無防備のまま晒し出される。
(睦美のやつ、こんな可愛かったのか)
灯は不覚にもトキメキに似た感情を覚えた。
スペースを譲るためか、体が小さく縮こまるところがまたしおらしい。
顔を近づけば、自分以外の女の子の良い匂いを感じる。
そんな時、灯の心臓が突然高鳴り出した。
下腹部に強い疼きを感じるや否や、全身に強い衝撃が立ち起こる。
(ちょっと、なに……!)
ハッとなって一度上着をはだけると、
なんと今度はヘソのまわりに薄っすらと妖眼の紋様が浮かび上がっていた。
子宮に甘い快感が生じるとともに、口から喘ぎが漏れそうになる。
(くうぅぅんっ!)
声が喉を通るのを必死に我慢しながら、灯は睦美から離れた。
赤い勾玉を握ると、瞬時に炎をまとったバトルスーツとなって身を包む。
すかさず両手で印を結び、体内から膨らむ妖気を封じ込めた。
素早い行動が功を奏したのか、
妖気の広がりはなんとかバトルスーツの内側に留まった。
しかし体のほうは沸騰したポットように、
抑え切れないほど膨大な淫欲が暴れ回る。
かすかな記憶の糸に、ある光景だけが力強く再生される。
自分を嘲笑する黒い影。
その口から紡がれる言葉には、悪魔の囁きのように甘い誘惑が満ちていた。
(百眼……さま)
ついに、心の中で復唱してしまった。
その言葉に口にした途端、
体中の細胞の一つ一つが震えて視界や意識が弾けそうになる。
本能が妖眼蟲のものにすり替わっていく。
淫気を集める。
胎内に宿る蟲を育む。
ほかの女を犯し、自分と同類のメスを増やしていく。
無意識のうちに、灯の虚ろになった瞳がある一点にとどまる。
睦美の寝顔だった。
こちらの邪念に気付くこともなく、ただ天使のような顔立ち。
――睦美を陵辱したい。
あまりにも自然と浮かんだ考えに、灯はビックリした。
下腹部に妖呪が現れてから、どす黒い疼きが神経を蝕み始めた。
心地良い脱力感とともに、全身の霊力が子宮のほうへと吸収されていく。
それに比例して、妖眼も淫紋がよりはっきりと浮かび上がる。
(まさか……霊力を妖気に作り変えている!?)
増大していく寄生の快感に、灯は唇をかみ締めた。
護霊服はもともと外からの攻撃を防ぐものであり、
内側の妖気に対しては一切機能しない。
405 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(9/20) sage 2013/06/16(日) 08:20:05.59 ID:CJ8TnpxM
ならば、自らの手で浄化するほか無い。
彼女は残る力を振り絞って、一枚の霊符を取り出した。
五行戦隊で一番解呪に長けているのは清見で、逆に灯は一番苦手としていた。
だが今はそんなことを言っている場合でもない。
下着をおろすと、布切れは甘い匂いの汁がたっぷりと沁み込んで、
股の間と蜜の糸を引いた。
羞恥心をぐっとこらえて、灯は妖気が発散する自分の股に霊符を宛がった。
だが彼女の予想に反して霊符は愛液に触れた途端、
墨汁を浴びたかのように一瞬にして黒く変色した。
御札の表面にある炎の霊言も妖しい目玉模様に上書きされ、
浄化するどころか、逆に強い妖気を放つ魔の札に変化した。
驚いたあまりに、灯は思わず黒化した霊符を握り潰して灰に燃やした。
なんて強力な呪詛だろうか。
動揺している間に、灯は重大なことを思い出した。
この呪詛を施した人物は清見である。
解呪の優れた彼女ならば、その対抗策を練ることだってできるはずだ。
(だめ、これ以上は……!)
奥から一際大きい鼓動を感じると、灯は高揚感のあまり体を抱きしめた。
そのまま背中を強く反らすと、陰部から愛液がほとばしる。
(なにか……出るっ!)
全身の力を吸い取られたように、灯に膣から一本の触手が生え出た。
細蛇のような触手は粘液にまみれ、淫らな香りをあたりに散らす。
異型が下からスカートを押し上げる光景は、
まるで正義の象徴をあざ笑っているかのようだ。
目の前が真っ暗になった気分だった。
(そんな……! 速く、元に戻さないと……)
朦朧となりかけた意識で、灯は触手をなんとか押し込めようとした。
だが指が一物の先端に触れた途端、脊髄に甚大な快感が跳ね返ってきた。
(ヒャアァ――くッッ!)
声を噛み殺すだけで精一杯だった。
指紋の一つ一つが鎌首をなぞる度に、快楽の火花が脳に焼きつける。
最初こそ刺激的だったが、それもあっという間に物足りない快感に変わった。
灯は恍惚の表情を浮かべて、スカートの下から触手をあらわにさせた。
表面の荒れた筋や見開く妖眼は、少女の可愛さと酷烈なコントラストを作り、
背徳さを一層際立たせる。
完全に解放されたせいか、むせ返るほど甘い淫気が外に漏れ出た。
これほど濃密な淫気が潜んでいたかと驚いたが、
すぐに心までその虜になってしまった。
硬くなった触手を握り締めただけで、熱さやドクドクした脈打ちが伝わってくる。
脳内にまたあの囁き声が現われる。
意識が薄れた灯にとって、それはあたかも己の意思のように聞こえた。
406 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(10/20) sage 2013/06/16(日) 08:22:50.68 ID:CJ8TnpxM
『速くそれを鎮めなさい。じゃないと、蟲が成長してしまうわ』
(うん。蟲の成長は、なんとしても阻止しなきゃ……)
『そのためなら、一時的に快楽を求めるのは仕方ないこと』
(うん、ちょっとだけだから……そうしなきゃ、もっと大変なことになるんだから)
『触手をシゴくのが気持ちいい』
(ううぅ、気持ちいい……!)
『でも、これは決して快楽のためにやっているわけではない』
(そう……あくまでも蟲の成長を防ぐためだから)
誘導された通り反芻しながら、灯は虚ろな目で触手をこすり始めた。
最初はゆっくり、段々速く。
次第に意識するまでもなく腕が勝手に加速していった。
どうすれば快楽が得られるか、どこがポイントなのか、
それら全て勝手に思い浮かんだ。
あとは見よう見真似て自分の手によって再現するだけ。
(……睦美……!)
友達の寝顔を見つめながら、灯は心中の欲望をギラギラと燃やし広げた。
生徒会長であり、強い信念を持つ睦美。
学校では誰からも憧れる存在だった。
だがその制服の下には、灯とは変わらない無垢で淫らな肉体が存在している。
彼女を汚したい。
力ずくで屈服させ、快楽を渇望するはしたない声で鳴かせたい。
そして彼女の子宮にも妖眼蟲を分け与え、
その端正な顔立ちが欲情に染まっていく様子を見たい。
とりとめのない罪悪感にさいなまれつつ、
灯はこれまで感じたことも無いような高揚感を味わった。
もうこれ以上考えてはならない。
頭の中で何度も警鐘が鳴り響いたが、そのたびに別の心地良い声によって揉み消される。
(睦美、ごめん……!)
仲間を裏切った意識に苦しみながらも、灯は止めることができなかった。
睦美を陵辱する光景を想像しただけで、脳みそが溶鉱炉のようにドクドクと滾った。
やがて爆発に差し掛かった直前、灯の下腹部の妖呪は最大限に黒く輝いた。
その時、灯は妖しい声に言われるがまま言葉を繰り返した。
(私は百眼様に寄生されたしもべ……
妖眼蟲をこの身に宿し、その繁栄のために全てを捧げます……!)
言葉を一字一句吐き出すにつれ、快楽の高潮が盛り上がっていく。
そしてついに、灯は意識が吹き飛ばすほどの絶頂を迎えた。
「うっ……くっ、かあぁっ……!」
全身の霊力が子宮に引き寄せられた。
体がビクビク震えた次の瞬間、触手陰茎から大量の濁液が発射された。
潰れそうになるほど抑制した喉の隙間から、悲鳴がかすれて弾き出される。
淫らな白液は自分だけでなく、睦美の護霊服までに飛び散った。
放心状態となった灯は、がっくりと地面に膝をついた。
触手陰茎はいつのまにか膣の奥へ引っ込み、気付いたらもう見当たらなくなった。
残るは汗だくの体と火照りと、胸に広がる虚しい気持ちだけだった。
親友をおかずに自慰してしまった罪悪感。
彼女のバトルスーツにぶっかけた粘液を目にしただけで、心が引き裂かれそうになる。
睦美が目を開けたのは、その時だった。
407 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(11/20) sage 2013/06/16(日) 08:26:00.86 ID:CJ8TnpxM
ギクッ、と灯が石膏像のように固まった。
だが睦美は立ち上がるや否や灯の背後に回りこみ、
右手から一粒の小石を弾き飛ばした。
小石は弾丸のように射出され、倉庫の入り口を跨ぐ一匹の妖眼蟲に命中する。
目玉を貫通されたスライム体はドロドロに溶け出し、床に小さな染み跡を残す。
「気を抜くな、灯。敵がいつ現れるか分からないから。
まあ一応結界を張ってはいたが」
「え、えっ?」
睦美に言われて初めて、灯は倉庫の四方にお札が貼られていることに気付く。
札自体の霊力は弱く、境界線を越えた妖魔を知らせるのが主な役目のようだ。
(って、睦美は気付いていないの?)
灯は慌てて睦美のバトルスーツを観察した。
白と褐色が織り成す正義の衣装は、睦美の凛とした雰囲気をより引き立たせる。
だが、その服にはさきほどの……
(あれ……?)
灯は急に戸惑った。
ついさっきまでの記憶が蒸発したかのように、ごっそり思い出せなくなった。
更にしばらくすると、どうして自分が戸惑っていのるかさえ分からなくなった。
ただ何か良くないことが進行している気がするが、
それを思い出すことを本能が拒絶しているようだ。
「灯、どうした?」
「ごめん……オレ、どうかしてるみたいだ。今までのことが曖昧で……」
「無理もない。昨晩、あんなことがあったから」
いや睦美、言いたいのはそれではない。
灯は改めて伝えようとした時、
ふと睦美のスーツの端っこにシミのようなものを見つけた。
そのシミは一瞬だけ触肉のように変化したが、二三度まばたきすれば消えてなくなった。
偶然じっと見ていなかったら、きっと錯覚だと思っていただろう。
だがその現象が一体何を意味するのか、灯にはどうしても思い出せない。
「灯、大丈夫か?」
「あっ、うん……助けてくれて、ありがとう」
「体に目立った外傷は無かったが、しばらくは無理しないほうがいいだろう」
「ああ、そうさせてもらうよ」
灯は自分の口から出てくる言葉に混乱した。
彼女が考えるよりも速く、まるで誰かに操られているように勝手に言葉を綴った。
肝心なのは、睦美は何も気付いていないことだ。
しかし、一体何に気付けというのか?
「どうしたの?」
「いいえ……それより、翠はどこにいるの」
灯は考えを巡らせながらも、話題を逸らすように尋ねた。
だが意外なことに、睦美の視線が俯いた。
「ちょっと、翠はどうした? アイツと一緒にオレを助けたんだろ?」
「敵に捕らえられてしまった。私達を守るために」
「そんな……!」
灯は呆然となった。
つらい気持ちがぐっと込み上がって来る。
408 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(12/20) sage 2013/06/16(日) 08:29:01.25 ID:CJ8TnpxM
睦美は表情を強張らせたまま、言葉を続ける。
「大丈夫ならもう少し休んでおけ。昼になれば妖魔の動きも鈍くなる。
その隙にここを出る」
「なんだと?」
「妖眼蟲の活動範囲がすでにここまで拡大した。さっきは一匹だけだが、
敵に察知されるのも時間の問題だ。その前に町を出て、一度陽子先生と合流……」
「ふざけるな!」
灯は大きな声をあげて、灼熱のような目つきで睦美をねめつけた。
「今オレ達が離れたら、誰が町を守る? 誰が妖魔と戦う?
誰が鈴華や清見や翠を助ける? みんなを見捨てるというのか!」
「見捨てるわけじゃない。先生は三日後に退魔機関の本部から返ってくるはずだ。
そこで体勢を直してから、またここに……」
「戻って妖魔を退治するっての? ハハンッ……! 三日も経ったら、
この町にどれだけの犠牲者が増えると思ってる?」
「だからと言って現状ではこちらに勝ち目は無い。鈴華と清見が敵になった時点で
こっちとは二対二。その上、敵には大勢の妖眼蟲だっている。
もし翠までが敵の戦力になっていたら、完全にこちらの劣勢だ」
「勝ち目が無ければ戦わないのか?」
「今回が特別すぎるのだ。私達が負ければそのまま敵の戦力を増やすことを意味する。
それよりも今私達が知っている妖眼蟲の情報を、退魔本部に知らせることが重要だ」
「要するに負けるかもしれないから、尻尾を巻いて逃げるってことだろ?」
灯は睦美の襟元を掴み取った。
その烈火にも勝る気迫を、睦美は逆に睨み返した。
「五行戦隊に入った時から、この命を捨てる覚悟ができている。
私が何よりも怖いのは、このまま誰にも知られること無く、
妖眼蟲の侵略を許してしまうことだ」
睦美の毅然とした表情はまるで頑固な岩から掘り出されたように、
灯の激怒に対し微動だにしなかった。
彼女のまっすぐな目線にひるんだのか、
やがて灯は手を離し悔しそうに顔を言葉を吐き捨てた。
「くっ……あとでオレに反省させてくれよな。
あの時お前の言うことを聞いて、やっぱり正解だったと」
「灯……!」
「納得したわけじゃないからな! ただ睦美のことは信用しているというだけで」
灯は不器用そうに背を向けた。
目の前の犠牲を我慢できるほど、灯は融通の利いた人間ではなかった。
しかし、彼女は睦美の性格をよく知っていた。
その睦美が信念を曲げてまで決めた選択を、無下にすることができなかった。
ある異変が起きるまでは。
突如、床に広がっていた水の残滓が変色した。
灯と睦美は咄嗟に構える。
妖眼蟲が残した水溜りに波紋が広がると、ぐにゃりぐにゃりと揺らぎながら、
一つの明瞭な映像に変化した。
飛び出さんばかりに、小柄なシルエットがそこに現われる。
409 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(13/20) sage 2013/06/16(日) 08:31:21.88 ID:CJ8TnpxM
『ハ~イ。灯と睦美、見てる?』
「鈴華……!」
驚きに怒りを交えて、灯は仲間だった人物の名前を呼んだ。
水の鏡面には、鈴華の明るい笑顔がいっぱいに映し出される。
もともとある小悪魔な魅力も、
その暗黄色の触手スーツによって淫らに仕立てられた。
『この映像はね、清見の能力で蟲に封じたものなの。
コアを破壊すると、映像が再生されるってわけ。あっ、それじゃあ
この蟲さんはもう殺されちゃったってことかな? あーあ、残酷ぅ~』
映像の中の鈴華はわざとらしく両手を広げてため息をついた。
悪戯っぽい言動は、以前の彼女の快活さを思い出させる。
それが余計に灯の怒りに触れた。
「この……っ!」
「待て、これはただのビジョンだ。破壊しても意味は無い」
飛びかかろうとする灯を睦美が抑制した。
その間にも、鈴を鳴らしたようなかわいい声が小屋に響き続ける。
『ところで、私は今どこにいるでしょう?』
唐突な問いに、灯と睦美は初めて映像の背景に注意を払った。
鈴華の足元を走る白いコンクリートの床。
曇り空へと続く間には、落下防止用の欄干が見える。
それらの景色を照らし合わせると、二人の顔色が激しく変わった。
『正解は、学校の屋上でーす!』
鈴華が手を伸ばすと、映像の視界が後ろの景色を映し出す。
屋上から見える校舎や校庭、そして登校するのに使う通学路。
灯や睦美にとって、どの場所も生活の一部だった。
『さて、今回のゲストを紹介しましょう』
映像の枠外から、鈴華が一人の少女を押し込んだ。
体操着を身に着けた少女は、事情がまったくのみ込めない様子でただ半べそをかいでいた。
彼女の顔立ちを確認した途端、灯はきょとんとなった。
「そんな……祥子!?」
『とりあえず、自己紹介してもらおうかしら。
クラス、氏名……あっ、カメラ目線はこの目玉にね』
『ふぇぇ……に、二年、B組……滝沢祥子、です』
『ところで、あなたはなんてこんな朝早くから学校にいるの?』
『私……陸上部だから、朝練で……』
『まあ可哀相に。真面目に朝練に来たばかりに、こんな目に遭っちゃうなんて。
でも刺激的だったでしょ? あなた以外の女の子達が、
みんな触手に愛撫されてアンアン鳴いていたのを』
『ひ、ひぃ……!』
少女は途端に怯えきった様子に陥った。
鈴華が意地悪そうに笑みを浮かべると、寄生スーツから幾本もの触手が分裂して、
少女の体や頬にまき付いた。
その触手がよっぽどトラウマなのか、少女は逃げることも大声を出すこともできず、
ただほっそりとした体をわななかせた。
410 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(14/20) sage 2013/06/16(日) 08:35:05.36 ID:CJ8TnpxM
『あなたをここに連れてきたのは、実はこれから祥子ちゃんに寄生してもらって、
それをテレビの前の人に見せるためなんだ。
すごく気持ちの良いものだから、怖がらなくてもいいよ』
『き……せい? い、いやぁ……』
恐怖のあまりに、少女の悲鳴はかすれた。
その様子を楽しんでいるかのように、鈴華は得意満面の表情を作る。
『今だけサービスタイム! 特別に寄生の方法を選ばせてあげるわ。
私の首輪や貞操帯に責められたい?
それとも清見ちゃんの精液風呂に浸かりたい?』
『い、いや……!』
『ああん、どっちも気持ち良さそうで選べない!
――そんな優柔不断なあなたに、こちらがオススメ!
私と清見ちゃんの能力をハイブリットさせた真新しい寄生法!』
じゃじゃん、と鈴華は意気揚々と身辺にある物体を示した。
金属製の棺桶のような鋳物が鈴華の横で直立していた。
その物体は鈴華の背丈よりも高く、正面には女体の輪郭がかたどられ、
不気味な雰囲気は中世の拷問器具を連想させる。
鈴華が扉を開くと、中が空洞であることが分かる。
だが目を良く凝らして見ると、そこに恐ろしい光景が潜んでいることに気付く。
金属の裏側には、びっしり埋め尽くす触手が存在していたのだ。
『ひ、ひゃああっ……!』
あまりにもおぞましい景色に、少女の声がうわずった。
金属の裏側から絶え間なく粘液が滴り、空洞内の空気と触手を濡らせる。
外からの光を感知したか、触手は緩慢な動きで伸び始めた。
触手の表面には不気味な目玉がぎょろつき、淫液が糸を引いて垂れ落ちる。
その淫液が床と接触すると、その場を黒く染み広がった。
画面越しでも、灯や睦美にはその匂いが漂って来るように感じた。
一目見ただけで、今までずっと強い寄生能力が備わっていることが分かった。
彼女達ほどの退魔士とて、護霊服が無い状態で長く閉じ込められたら、
寄生支配されてしまいそうだ。
触手の目玉は獲物に気付いたかのように、一斉にぎょろりと女学生を見つめる。
『きゃあっ……!』
『ああん、そんな熱い眼差しで見つめないで、私もう濡れちゃうわ!……あはは。
まあ、恨むなら私達じゃなくて、五行戦隊を恨みなさいね』
『五行……戦隊?』
その言葉を聴いた途端、少女の瞳に一筋の希望が輝いた。
五行戦隊の活躍は、都市伝説のように生徒達の間で囁かれていた。
少女自身も興味半分知っていたが、本物の妖魔を見た今、
その存在は彼女にとって唯一の希望だった。
『五行戦隊は知っているんだ。じゃあ、そのうちの一人の名前が灯で、
あなたと同じ陸上部の子であることは知ってるの?』
『あ、灯ちゃん……!?』
411 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(15/20) sage 2013/06/16(日) 08:38:02.99 ID:CJ8TnpxM
『うん。そもそも私達がこの学校を襲った理由は、彼女がここの生徒だからなんだよ。
ちなみに、あなたは彼女との関係は?』
『と、友達なんです……』
『おおう、友達! なんという幸運! じゃあぜひ彼女の助けを呼ばないと。
もしかしたら、今この瞬間もあなたのピンチを見ているかもしれないよ。
ねぇ灯ちゃん、聞こえてる? 速く助けに来ないとこの子をこの拘束具の中に入れて、
触手ちゃん達にレイプさせちゃうわ』
『い、いやああぁぁ!』
「この……!」
灯は拳を強く握り締めた。
そうでもしないと、膨れ上がる怒りを抑えられなかった。
『おかしいね。友達がピンチなのに、全然来ないじゃない。
ほら、あなたも呼ぶのを手伝ってよ。灯ちゃん、助けてって』
『あ、灯ちゃん……た、助けて……』
『もっと大きな声出してみたら? ほらほら、触手ちゃんがあなたを欲しがってわよ』
自分の身にどんどん近付く触手に、
少女は目に涙を滲ませながらはち切れんばかりの声で叫んだ。
『灯ちゃん、お願い! 速く助けに来て!』
『……全然来る気配が無いね。
どうやらあなたは彼女にとって、人質の価値も無かったみたいだね』
『待って、もう少し待って下さい! 彼女は絶対来ます! だから……』
少女が言い終わるのを待たずに、鈴華は指を鳴らした。
すると空洞の中から無数の触手が飛び出て、少女を体操着の上から絡め込んだ。
粘液が体操着に染み込むと、瞬時に黒い粘質に染め替えた。
『いやああああ!』
触手がそのまま少女を空洞に引っ込むと、
金属の蓋はバタンと閉まり、中からの悲鳴をシャットアウトした。
棺桶の蓋の輪郭がぐにゃりと歪み、
顔の形から足先まで少女にピッタリフィットするよう変形していく。
その作業が終わって固定化すると、拘束具はまるで少女に銀メッキを施したかのように、
体のラインを生々しく浮かび上がらせた。
金属の光沢が映える胸の谷間や、股間の陰り。
生気を失った顔立ちに伝わる怯えた感情。
それらは不気味ながらも、どこか官能的な雰囲気を醸した。
『はい、新しい寄生者の誕生です。ふふふ、大丈夫。あなたがそこから出る時は、
今よりもっとずっと素敵なメス奴隷になれるわ』
鈴華は妖しい笑みを浮かべ、鉄になった少女の胸をいやらしく撫でた。
灯は外に向かって歩き出した。
それを予測したのか、睦美は間髪入れず灯の肩を捕まる。
「冷静になれ。この映像は今よりも前に撮ったはず。
今駆けつけたところで、彼女はもう……」
「だからなんだって言うの? 今この瞬間にも、犠牲者が増えているんだぞ!」
「見て分からんのか。敵はわざと私達を挑発してるのよ!」
412 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(16/20) sage 2013/06/16(日) 08:43:51.85 ID:CJ8TnpxM
二人の諍いをよそに、水の鏡面に青い触手服をまとった人物が映し出された。
彼女の切れ長の目は深淵の湖のように静けさを帯びる。
右手を差し出すと、手のひらに乗せてある水色の妖眼蟲を見せつけた。
そして彼女の口から無情な言葉が紡がれる。
『今日の正午、蟲達を屋上の貯水槽に放つ』
「清見……!」
「どういうこと?」
睦美達の反応に構うこと無く、青い寄生少女は冷酷な口調で語り続けた。
『私が産み出した寄生種は、水に触れただけで無色透明に溶ける。
その水を摂取することで、ここにいる人間は一斉に寄生されることだろう』
「そんなことしたら……!」
灯は愕然となって、清見の手の中にあるガラス球を見つめた。
妖眼蟲の核である眼球は、光を反射してみずみずしく輝く。
別物だと頭の中で分かっていても、どうしても人間の目玉を連想して嫌な気分になる。
『その液体は人間に害は無いわ。むしろ免疫能力が強くなって、
健康状態が向上するくらいだわ。私が念じない限り体内にずっと潜伏状態でいるから、
普段の生活に支障を出すことも無い。それこそ霊力による精密検査でもしない限り、
普通の人間と違いが分からないくらいにね』
「そんな馬鹿な!」
睦美はぞっとしたように声をあげた。
ただでさえ妖眼蟲の発見はしにくく、その高い寄生力と繁殖力で人間を脅かしてきた。
それが新たに潜伏能力を得たら、
感染が広がる前に発見することが更に難しくなるだろう。
『兆候がまったく無いわけでもない。これに寄生された人間は、
繁殖本能が物凄く強くなる。そして、彼らと体液を交換した――
すなわち性交した人間もまた、同じ寄生状態になってしまう』
「それってつまり、感染が速く広がるってことじゃないか!」
灯のつっこみを無視して、清見は淡々と続ける。
『ここでの実験が終わったら、この寄生種を全国の水道局や河川に流す予定だ。
戦いを起こさず、人々が幸せの中で寄生される。
とても平和なアイディアだと思わない?』
予想を遥かに上回る計画性に、灯と睦美は背中に冷え汗を流した。
もし清見の目論見が達成されたら、被害規模はもはや町だけでは済まない。
日本はもちろん、世界中の人々が妖魔に支配されてもおかしくないだろう。
『じゃあ、私と鈴華は学校で待ってくるから。
正義の味方さんなら、こんなことを許すはずないわよね?』
最後に清見が嫌味っぽい薄笑みを残すと、映像はそこで途切れて元の水溜りに戻った。
倉庫の中は再び静かになる。
睦美は自分が掴んでいるのは人間の肩ではなく、高熱に焼かれた鉄板のような気がした。
手のひらに伝わる温度は、映像が終わった後も上昇し続けた。
「落ち着いて、灯……」
「こんなもの見せられて、誰が落ち着いていられるか」
灯は睦美の手を振り払い、それまで溜め込んだストレスを一気に爆発させた。
413 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(17/20) sage 2013/06/16(日) 08:48:38.49 ID:CJ8TnpxM
「睦美が行きたくないならそれでいい。だがオレは絶対行くからな!」
「このまま君が敵の戦力になるのを知って、行かせるわけにはいかない」
「ふざけるな!
だいたい最初に鈴華が敵に捕らわれたのも、睦美のせいじゃないか」
言い終わって、灯はハッとなって後悔した。
睦美は明らかに落ち込んだのだ。
決して弱みを見せない睦美が、潮水に摩滅された石のような表情を浮かべた。
そこでやっと、灯は最近の睦美がどういう心境だったのか理解できた。
鈴華の寄生を発端に始まった一連の事件。
睦美はずっと鈴華のことで自分を責めていたが、
みんなの前では一切素振りを見せなかった。
その気丈さに感心すると同時に、灯は自分の鈍さに慙愧した。
すぐに謝ろうと口を開いた。
だがその瞬間、灯に灯の脳内に妖しい目線が蘇る。
どす黒い感情とともに、口から出た言葉は彼女の意思とまったく逆のものだった。
「睦美にそれを言う資格はあるのか? あの時、あなたが鈴華と一緒に戦っていれば、
鈴華が寄生されることは無かったはずだ。
翠だって、どうせ睦美が彼女のことを見放したんでしょ?」
「……!」
灯が放った言葉は、次々と睦美の心を傷つけた。
その消沈していく様子を目にするだけで、灯は胸を締め付けるような痛みを感じた。
だがその一方で、腹の奥ではまったく異質の快感が膨れ上がった。
――もっと睦美の苦しむ表情が見たい。
その邪悪な感情が下腹部の疼きと合わさって、体中にじんわりと広がっていく。
何かがおかしかった。
(だめ……このままだと、もっと酷いことを口に言ってしまう……!)
興奮の汗が体中から涌き出る。
狂乱する心臓の鼓動を抑えながら、灯は睦美に背中を向け外へ走り出した。
睦美の弱くなる姿を見ただけで邪悪な欲望に支配されそうになる。
頭の中で、誰かに呼ばれているような気がする。
それに答えてしまったら、大事なものを失ってしまいそうだ。
時間が進むにつれ、呼び声の間隔が縮まって灯の心を揺らし始める。
ぼやけていく頭の中で、最後まではっきり保った意識が一つだけあった。
(……ここにいたら、睦美まで……巻き込んじゃう)
そう感じると、灯は目が虚ろになったまま呼び声の方へ駆け出した。
彼女の行動を、睦美は止める事ができなかった。
「クソッ……!」
睦美は床に膝をついて、やりきれない表情で拳を振り下ろした。
思考が麻のごとく乱れていく。
414 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(18/20) sage 2013/06/16(日) 08:50:49.00 ID:CJ8TnpxM
灯の選択は正しいかもしれない。
翠は捕まってしまったが、今ならまだ完全支配されていないはず。
鈴華と清見が敵側にいるとはいえ、灯と協力すれば戦い方次第勝てるかもしれない。
だがもし翠が敵に加勢したら、勝率は限りなく低くなる。
仕掛けるとしたら、今が最後のチャンスだろう。
このままほうって置くと、ミスミス灯を敵の手に渡すようなものだ。
だが自分まで負けて寄生されたら、敵を更に増長させてしまう――
睦美はできるだけ灯の言葉を考えないようにした。
だが避ければ避けるほど、灯のセリフが頭にまとわり付いた。
今の彼女には、行動を起こす余裕の欠片も無かった。
灯を阻止することも。
妖眼蟲の残骸以外の微かな妖気に気付くことも。
空は一段と濃厚な黒雲に覆われ、霧雨に町が煙り始めた。
その中には、学校の建物も含まれているだろう。
どんよりとした町景色を眺めていると、睦美の心は急激に寂しさを覚えた。
今ほど太陽の光が恋しいと思った時はない。
□
メッセージを伝え終えると、清見は妖眼蟲の核を貯水槽に放り投げた。
水に触れた途端、妖眼は溶け広がり、ほのかな残り香を漂わせる。
その無造作な行動に、鈴華は瞳を大きく見開かせた。
「えええ、睦美達が来るまで、人質にとっておくじゃなかったの?」
「人質というのは彼女達の認識であって、私達とは無関係な話。そうでしょ?」
清見は淡々と答えた。
彼女の近くにいた四人の少女が男達の剛直から離れ、
頬や肌に快楽の余韻を残しながら貯水槽の周囲に集まった。
少女達は蓋のまわりでしゃがみ込むと、その股の間から白い粘液が太ももを伝って滴る。
いずれの少女も裸に近い格好で、艶かしい肢体に淫靡な触肉がまとい付いた。
そんな異様な光景にも関わらず、少女達は誰一人怯えた様子もなく、
陶酔しきった目つきで自分達の股間をまさぐり始めた。
魂をとろかすような喘ぎ声とともに、新たな寄生のコアが貯水槽に産み落とされる。
清見の口から嘲弄の意図を悟ると、鈴華は面白そうにまばたきをした。
「灯達が必死に助けようと来てみたら、実は全員すでに私達の奴隷だった!ってオチ?
きゃはは……清見ちゃんって、実は悪役のほうが向いてるんじゃない?」
「正義は決して悪に勝てない。その理由は、
悪は目的のためにどんな作戦も実行できるが、正義にはそれができない。
だから私のような人間は、最初から悪の側にいるべきだった」
清見は冷静に語りながら、部下となった少女達の働きを見守った。
少し前まで、彼女達は普通の女子高生だった。
それが今では、清見に従う忠実なしもべとなった。
学校の屋上には寄生の棺以外に、十数人もの男女が乱交を繰り広げていた。
「くくく……灯と睦美の絶望した表情、今からでも想像するだけでゾクゾクしちゃう。
あなたもそう思わない、翠ちゃん?」
鈴華は自分が腰掛けていた棺を開けると、喘ぎ声のボリュームが大きくなった。
中には一人の少女が鎖に縛られ、半身が白い粘液に浸かっていた。
415 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(19/20) sage 2013/06/16(日) 08:54:01.74 ID:CJ8TnpxM
棺を開けた瞬間、むせ返るような甘い発情臭が外に漏れ出る。
彼女の暗緑色の寄生スーツと棺の裏側に生えた触手が絡め合って、
絶妙な加減で女体を撫で回る。
股間につけてある貞操帯の隙間から絶えず愛液が溢れ出て、
白粘液風呂と混ざり合った。
「翠の体からすごく良い匂いがするわ……これほどに性欲を高められるなんて、羨ましいわ」
「ぐぅん、うぅんんん!」
鈴華が翠の胸の谷間に鼻を埋めると、翠は大きく物音を立てた。
彼女は首輪やボールギャグを装着された状態で、両目も眼帯に覆われていた。
眼帯の表面には水色の目玉が一つ輝き、その点滅と同調して少女の体が震え上がる。
手足まで縛られた彼女には、悶える以外の行動が許されなかった。
「今すぐにもイキそうだね」
「普通の人間ならとっくに狂い出す状況だが、翠の精神力はさすがのものだ。
そのおかげで、みんなの洗脳時間を大幅に短縮できた」
清見は感心したように翠の姿を眺めた。
床に置かれた棺同士の間に太い触手が繋がり、その中心に翠の棺が位置していた。
翠が悶えるたびに、触手間に信号のような光が転送されていく。
「今の翠ちゃんは、自分が寄生された時の記憶を、繰り返し見せられているんだよね?
わざわざ寄生前の心情に戻されて、何度も堕ちた瞬間が味わえるなんて」
「その記憶をほかの寄生者に見せることで、強制的に堕ちた時の心情を学習させていく。
そうして、短時間のうちに高いレベルの寄生者が産み出せる」
「良かったね、翠。百眼様のために、挽回のチャンスがもらえて」
鈴華はそう言って翠の口からボールギャグを外し、
そこにベットリとついた唾液を舐め取った。
口が自由になった途端、翠は悲鳴に近い声で叫んだ。
「お願い、もう許して! もう二度と逆らうことなんて考えないから
……だから、イカせて!」
首を左右に振って懇願する少女。
懸命に身を捻らせるも、全身を拘束された今、それは更なる欲情を煽る行為でしかなかった。
だが今の翠には、それに気付く余裕さえ持たなかった。
「翠ちゃんは反省中なんだから、イカせるわけないじゃん」
「そんなこと言わないで! 全て私が悪かったです……
百眼様のためなら何でもします、鈴華や清見の命令だって何でも従います! だから……」
「その言葉に偽りは無いのだな?」
清見は翠から目玉の眼帯を剥ぎ取り、その顔を晒した。
淫欲に潤んだ虚ろな目は、媚薬に盛られた淫婦のように焦がれていた。
「は、はい……!」
「じゃあ手始めに、この学校を蟲達の苗床に作り変えてもらおうか。
そうすれば、あなたが期待する快楽も得られるだろう」
「えっ……きゃあああああ!?」
清見が貞操帯に足先を乗せると、翠は魂消るような叫び声を上げた。
絶頂に達しないギリギリの快感が翠の全身を震わせる。
416 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(20/20) sage 2013/06/16(日) 08:56:47.61 ID:CJ8TnpxM
「いいのか、清見」
「灯と睦美は必ずここに来る。彼女達を歓迎するためにも、
翠の調教を終わらせてやらないと。正義の心が腐ってしまうくらい、
快楽の蜜液に浸して……!」
「ひゃあ、怖い怖い」
鈴華はペロッと舌を出した。
清見は敵としては手強いが、味方となればこれ以上心強いものはない。
彼女の心に宿る黒い興奮を感じると、鈴華も邪悪な笑みを浮かべた。
― つづく ―
森の中で、清見は暗い青色の寄生スーツを身にまとっていた。
性交後の余韻を象徴するかのように、露出した肌の部分から淫靡な香りが漂う。
半液状の触手達が汗ばんだ肉体を愛撫する。
だが、彼女の顔立ちはいつもの無表情に戻っていた。
清見は抜け目の無い人間である。
例え妖魔のしもべになった今でも、その性格が変わることは無かった。
だから足元から違和感を覚えた瞬間、清見はすかさず体を横へと滑らせた。
やや遅れて一本のツタが地表から跳ね上がり、彼女の足元を空振る。
地面はいつの間にかイバラの大群に覆われていた。
赤い花が満開すると、血のような花びらの旋風が巻き起こる。
清見は咄嗟に顔面を両腕でガードした。
体を覆った触手スーツは瞬時にバリアのように広がり、
接着剤のごとく花びらを粘つける。
だがその隙に、木の上から一本の蔓が伸び出て、
清見の腕から烈火の勾玉をはたき落とした。
一つの影が飛び出て、勾玉を空中でキャッチすると、
そのまま清見の後方にある巨大水玉へと駆けつけた。
その人影は木の槍を掲げ、全力で巨大水玉の表面に突き刺した。
ブスッという異音とともに、水玉の大目玉から無数の黒液が噴き出る。
木の槍を放った人物は躊躇すること無く、その中から灯を引っぱり出し、
赤い勾玉をその胸にかざした。
主人を認識した霊玉は命を吹き込まれたように輝き、灯の体を炎で包み込む。
少女の体に染み込んだ黒い淫液は蒸発したかのように消え、
本来の健康的な肌色をあぶり出す。
だが炎が完全なバトルスーツに変身する直前、激しい水流が襲来してそれを打ち消した。
人影は灯の体を守るように抱きかかえ、水流を割って飛び出した。
その身に着けていた暗緑色の寄生スーツが、体に付着した液体を自動的に吸い取る。
「これは驚いた。翠、あなたがまだ堕ちていなかったとは」
「清見……っ!」
翠と呼ばれた少女は、肩で息をしながら答えた。
彼女はもう一度清見を悔しそうに見つめ、それから灯を抱きしめて走り去った。
彼女の後ろ姿を冷ややかな目線で追いながら、
清見は自分の触手スーツに指先を入れて目玉を一つえぐり取った。
その青い眼球を、灯を閉じ込めた水玉の残滓にぽちゃんと落とす。
水溜りが怪しくうねると、そこから犬のような妖獣が立ち上がった。
化け物の体は常に波紋が揺らぎ、その顔面には清見の落とした目玉が青く光る。
「ゆけっ」
清見が短く命令すると、妖獣はバネのように地面を蹴り出した。
翠が踏みつけた跡に草花が生え渡った。
そこで異物を感知すると、植物は一斉に棘のある蔓を伸ばした。
縛り付けられた妖獣は、一瞬苦しそうにもがいたが、形勢はすぐに逆転した。
妖獣の表面の毒々しい粘液に触れていた植物は、
まるで濃硫酸を浴びせられたように枯れ始める。
そしてボロボロに黒ずんだ植物を力で千切り、妖獣が再び駆け出した。
398 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(2/20) sage 2013/06/16(日) 07:53:03.07 ID:CJ8TnpxM
翠はもともと満足に走れる状態ではなかった。
足元がふらついて、意識もおぼつかない。
一歩進むごとに貞操帯が股間に食い込み、その隙間から愛液がとろりと垂れ下がる。
今にも狂い出しそうな快感に、翠はその場でうずくまって体をまさぐりたかった。
それを我慢できたのも、懐にある灯の存在だからだ。
(せめて、灯だけでも……!)
翠は唇をかみ締め、その痛みで快楽をこらえた。
変身までさせられなかったが、灯を浸蝕していた黒液はだいぶ浄化できた。
自分が助かる望みはもはや皆無。
ならば、せめて親友だけでも助かってほしかった。
だが翠の覚悟を、妖眼蟲は許さなかった。
迅雷のごとく疾走する妖獣は、あっという間に翠達に追いついた。
一つ目が大きく輝くと、妖獣は翠の脚にがぶりと噛み付き、
首を回転させて引っ張った。
「っ……!」
激痛を感じるも束の間、翠はバランスを崩して倒れた。
牙の鋭い先端が脚を覆った触肉のブーツを貫き、その下にある肉体まで届く。
奮闘も虚しく、彼女は灯を投げ出して倒れ込んでしまった。
「呆れたわ。それほど強い淫気を発しながら、まだ抗おうとするなんて。
まあ、だから感心もするけど」
清見は寄生スーツに刺さった花びらを取り除きながら、悠々と翠の前へやってきた。
その冷徹な瞳は青く湛えながら、翠の艶姿を捉える。
とっくに限界に達しているのか、翠の触手服の寄生眼は頻繁に点滅し、
明暗を繰り返すと同時に宿主の体を震わせる。
スーツを組成していた肉布もほとんど触手に解放され、宿主の肌を自動的に撫で回した。
翠の肌に浮かぶ汗も赤く染まった顔も、見た者の欲情を十分に焚き付ける。
そして清見の言う通り、彼女の体から発する凄まじい淫気は、
取り込んだ者を一瞬にして色欲の虜にしてしまう。
何より滑稽なのは、翠が抑制しようとすればするほど、
色気がより官能的に高まることだった。
「あら、鈴華から戒めを受けたようね」
「っ……!」
清見が視線を移すと、翠は羞恥に満ちながら胸や股間のあたりを隠した。
美乳の先端につけられた金色のピアス。
陰部から臀部にかけて食い込んだ貞操帯。
ピアスと貞操帯を細い鎖で繋ぎ、白いうなじに装着された首輪。
キラキラ輝く金属の装飾品は、卑猥な触肉スーツとアンバランスな対照を作り、
少女の清純だった体を美しい娼婦に作り替える。
「妖眼蟲の下僕になるのがそんなに嫌なら、一人で逃げることだって選べたはずよ」
「仲間を見捨てることは……できません」
「おかしなことを言うわね。私が今の姿になったのも、そもそもあなたのせいなのに」
「ええ……すべてはあの時、私の心が弱かったせいです」
翠はひっそりと俯いた。
その顔は赤く染まりながらも、悔しい感情が滲んでいた。
「私のせいで、たくさんの人が犠牲になりました。その罪からただ逃げるために、
私は快楽に溺れようとしました。でも……あなたと再び会えたおかげで、
もう一度立ち上がる勇気を手にしたので」
「鈴華と一緒に、私と戦った時にか」
399 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(3/20) sage 2013/06/16(日) 07:55:47.27 ID:CJ8TnpxM
「あの時、清見ちゃんが奮戦する姿を見ていたからこそ、
自分の役目を思い出せたのです」
「その本人がこうして悪の味方となったのに?」
「だからこそ……清見ちゃんが私のような過ちを犯す前に!」
翠は拳を握り締め、凛とした眼差しで清見を見上げた。
体が淫気に蝕まれても、彼女が本来持つ凛々しさは埋もれることはなかった。
だが清見は一歩も気負いしなかった。
その正義心におされたのか、触手スーツも動きを鈍らせた。
だが清見は少しも気負しなかった。
彼女はむしろ翠に顔を近づけた。
その深海のような瞳に見つめられると、翠は唐突に寒気を感じた。
「素晴らしい……どんなに汚されてもなお自浄し、他人まで感化する心。
本当に綺麗だわ」
清見は感心したように言った後、一転して残酷な言葉を綴る。
「だからこそ、完全なる闇に染める価値がある。あなたほどの者なら、
どんな正しい心の持ち主であっても、悪に堕落させる誘惑者となれる」
「そんな……!」
自分の言葉はもう決して届かない。
そう思い知らされた翠は、谷底に突き落とされたような気持ちになった。
彼女の表情をよく鑑賞できるように、清見は顎に指を添えて持ち上げた。
「翠、ありがとう。あなたが私を思っていると同じに、
私もあなたのことを大事に思っている。だから心配しなくてもいいよ。
もう一度闇に心を委ねる快楽を思い出させてやる」
清見は青暗い瞳を輝かせ、手を振り上げた。
触手スーツの袖の部分は幾つかのミミズのように分裂して飛びかかった。
翠は目をつむった。
すでに一度は淫乱な性質を植えつけられた身と心は、簡単に屈してしまうだろう。
魂にまで刻み込まれた奴隷の呪縛に、もはや抵抗する勇気さえ無かった。
むしろ心のどこかにホッとするような安堵感さえあった。
(みんな、ごめんなさい……)
翠は謝罪とともに、諦めの言葉を呟いた。
その時。
一陣の砂の線が目にも止まらぬ速さで清見と翠の合間を横切る。
空中に放たれていた水触手は、一瞬にして乾ききって断裂した。
すぐ横の地面から、一つの人影がのろりと起き上がる。
水の隻眼獣はすぐさま翠から離れ、その人物に噛み付きかかった。
だが妖獣が口を開こうとした直前、咽喉元から掴み上げられた。
そして塩漬けされたナメクジのごとく全身から水分が抜けて、
目玉はひび割れながら爆ぜ散った。
清見は素早く後ろへ飛びのき、自分に向かって投げつけられた残骸を回避した。
砂と接触した寄生スーツは一瞬石化したが、
すぐにまわりの触肉に同化されて再び触手化した。
400 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(4/20) sage 2013/06/16(日) 07:58:01.64 ID:CJ8TnpxM
「翠、大丈夫か」
「ああ、平気よ……」
地面から抜け出た睦美は、苦悶をこらえる翠や、失神している灯を抱え起こす。
腐食液のせいで、妖獣をじかに掴んだ手のひらは軽いヤケドを負った。
しかし、睦美はその痛みなどまったく意に介さなかった。
彼女はただ岩盤よりも硬い目線を清見にぶつけた。
清見は逆に睦美の切り刻まれた戦闘スーツを観察した。
「ダメージを負っているようね」
「鈴華のおかげさ」
「逃げるつもり? 鈴華や私を置いて」
「できないことを挑むのは勇気ではない。残念ながら、
今の私にはあなたを抑えつつ鈴華に勝つ方法が思いつかない」
睦美はそう言うと、翠や灯を抱えたまま背を向けた。
その時、清見の背後の茂みから鈴華が駆け抜け出る。
彼女の触手スーツもまた、睦美と同じくらい損傷していた。
睦美は槍の雨に打たれたようだったが、
鈴華の場合は土砂崩れの中から掘り起こしたボロ雑巾のようだ。
「許さないんだから! 絶対捕まえて、この屈辱を晴らしてやるんだから!」
鈴華の小綺麗だった顔が泥にまみれ、怒りの形相をあらわにした。
彼女は身丈の倍ほどある矛を振り回し、穂先の先端を睦美の背中に狙い定めた。
だが睦美は振り返ること無く、霊呪を念じながら土を蹴った。
地面はその場で大きく盛り上がると、巨大な土の聖獣が瀑布のように涌き出た。
その表面に突き刺さった無数の刃や、そこから流出し続ける砂は、
今まで繰り広げた激戦を痛々しく物語る。
「すまない、土麒麟(どきりん)……最後の力を振り絞ってくれ!」
「そんなボロボロの姿で何の役に立つ!」
鈴華は全力で矛をはね上げ、動きが鈍くなった召喚獣に向かって飛びかかった。
穂先は豪快に一回転し、土麒麟の頚部に深くつらぬく。
鈍重な唸り声が森の木々を揺るがす。
ついに限界までダメージが達したのか、聖獣のあちこちから砂が血流のように迸った。
鈴華は容赦無く手首を返すと、土麒麟の首より上の部分が空中へと刎ねのけられた。
頭部を失った砂体はゆっくり横へと倒れていく。
「この堅物め! 体力だけはすごいんだから……」
完全に崩壊した砂の前で、鈴華はぜえぜえ息を変えながら矛にもたれかかった。
召喚獣の首は空中でぐるりと回転すると、ふと大口を開いたまま鈴華に向かって落下した。
だが、その最後の一撃は決して届くことは無かった。
横から一筋の水流が噴射して頭部を貫通すると、
今度こそただの土石となってに砕け散った。
「ふぇ、なに?」
降りかかってくる土砂に、鈴華は初めて気付く。
彼女の横まで歩んだ清見は肩をすぼめてみせた。
「だから昔から注意してやったのに。最後まで油断しないでって」
「おお、清見ちゃん! 無事寄生が終わったんだね。それより、睦美のやつは?」
「彼女達ならもうここにいない」
「えええっ!?」
清見が指差した方向を見ると、その地面には胴体が通れるくらいの穴があいていた。
鈴華は小柄な体を精一杯使って地団駄を踏んだ。
401 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(5/20) sage 2013/06/16(日) 08:00:27.78 ID:CJ8TnpxM
地中は、あらゆる追撃を阻む特殊な地形である。
そして五行戦隊の中で、睦美の土遁術がその唯一の移動手段であった。
この中でいる限り、睦美はどんな敵でも振り切れる自信があった。
例え二人分の人間を抱えて、スピードが大幅にダウンしたとしても。
睦美は魚のように地中空間を泳ぐ。
「翠、もう少し耐えてくれ。陽子先生が帰ってくれれば、きっと全てがうまくいくから」
「うん、ありがと……」
翠は瞳の焦点がぼやけながらも、健気に笑みを見せた。
その様子に胸を痛めながらも、睦美は無視せざるを得なかった。
地行術により、睦美は霊力を消費することで地中を一時的に通過することができる。
だが自分以外の物質を帯同する場合、術者への負担が何倍もの激しくなる。
普段よりずっと通過しにくい土質を感じながら、
睦美は集中力を高めて掘り進んだ。
突然、彼女の後方から一本の鉄索が猛烈な勢いで土を突き破った。
「なにっ!?」
睦美はすかさず方向転換したが、鎖はあたかも追尾するように経路を辿り続ける。
「睦美、鈴華が私を狙っているんだわ!」
翠は疼きに眉をしかめて叫んだ。
彼女の首輪や貞操帯に寄生した妖眼が、まるで鎖を呼応するかのように妖しく輝く。
睦美がいくらモグラのように地層を貫通しても、鎖は決して彼女達を見失わなかった。
そしてついに鎖はカチャリと翠の首輪を繋ぎ止めた。
途端、睦美は腕から凄まじい反発力を覚えた。
「ちっ……!」
そのまま地中を進みながら、睦美は必死に考えを巡らせた。
彼女のスピードに合わせて鉄索も無尽蔵に伸張してくる。
そして次第に、腕の中の重さが増え始めた。
(このままではまずい……!)
灯が健在していればこんな鎖すぐに断ち切れるだろうが、
自分の能力ではどれくらいかかるか予測できない。
そして彼女が止まった瞬間を狙って、鈴華は鎖を引き上げるだろう。
「睦美、灯ちゃんのことは頼みましたわ」
「翠?」
側から掛けられた励ましの言葉に、睦美は小さく驚いた。
そんな翠はニコッと優しい微笑を浮かべる。
「ごめんなさい。私が付いて来られるのがここまでみたいです。
でも、あなたが必ず悪を打ちかつことを信じていますから」
「翠、早まるなっ!」
睦美が阻止するよりも速く、翠は彼女から腕を離した。
掴み直そうと伸びた睦美の手は虚しくも届かない。
次の瞬間、翠の体は一気に後方へと引っ張られて、完全に見えなくなってしまった。
「くっ……!」
その場でとどまりたい気持ちを必死にこらえ、睦美は更にスピードを上げた。
402 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(6/20) sage 2013/06/16(日) 08:03:33.44 ID:CJ8TnpxM
□
地表の上で、清見が傘をさしていた。
傘の表面にいくつもの目玉が見開き、裏側からは激しい雨水が穴の中へと降り注いだ。
その傍らで、悔しがる鈴華と地面に伏せる翠の姿があった。
「もう、もう! あとちょっとだったのに」
「ぅん……!」
鈴華は手に持っている鎖を乱暴に振り回した。
鎖が揺れるたびに、首輪を繋がれた翠が苦しげな声を漏らす。
ふと、穴の中の水が逆流して雨傘の裏側に吸収されていく。
清見は傘を畳み、それを自分の触手服の中に押し込んだ。
傘はたちまち触手スーツの一部に同化し、傘にあった目玉はスーツの妖眼に戻される。
「清見ちゃん、どう?」
「完全にロスト。水が途中で地下湖に合流してしまった。途中で横穴を作って、
そこへ誘導されたんだろう。さすが睦美といったところかしら」
「きぃ――くやしい! 翠ちゃんが余計なことさえしなければ、
こんなことにはならなかったのに!」
鈴華が鎖を振るうと、翠は快楽と苦悶に呻いた。
「まあまあ。私は無事寄生されたし、翠も失わずに済んだ。
それだけでも十分な収穫だ」
「そうなんだけどさ……」
清見が冷静な態度を見せると、鈴華は好奇心に満ちた目線を向けた。
「清見ちゃんって寄生されたはずなのに、なんか前と変わらないね」
「どうなっていれば満足してくれるかしら」
「私や翠の場合は、すっごくエッチになったのに」
「そういう欲望なら、もちろん私にも植え付けられた。なんなら、体で試してみる?」
清見はそう言うと、両目を細めて指先を舐めとった。
青い触手スーツはにょろりと蠢き、半透明化した水の羽衣が肢体のラインを浮かばせる。
今まで冷静沈着なイメージから、絶対に想像できない狡猾さと蠱惑さ。
その挑発な目線に見つめられただけで、鈴華の心がドキッとした。
自分を見透かされたような妖しい冷たさに、
思わず被虐的な気持ちに陥ってしまいそうだ。
だが鈴華が清見の体に触れようとした途端、清見に頭を押さえつけられた。
「はい、そこまで」
「ちょっと、焦らさないでよ!」
「睦美と灯を捕まえるほうが先でしょ?
ちょうど翠がこちらの手にあることだし」
鈴華は一度落胆したが、睦美と灯の名前を聞いた途端、
また新しい悪戯を発見した子供の目になった。
「翠ちゃんを餌に二人をおびき出すつもり? ははっ、なんか悪役っぽくて面白そう」
「……私を人質にしても徒労ですわ」
翠は辛そうに首をあげて呟いた。
403 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(7/20) sage 2013/06/16(日) 08:06:17.46 ID:CJ8TnpxM
「睦美は正義を見失う人ではありません。私一人を救うために、
妖魔に屈することは決してないはずです」
「ああ。そういう意味では、私達五人の中で睦美が一番正義に近いだろうね」
「えっ?」
翠は清見を見上げた。
清見の両目は静かな水面のようで、何を考えているか分からない。
「だから人質を取るなら、あなたよりもっと都合の良い存在を選ぶ。
人数が多く、閉鎖環境で、妖力の源となる精気も取れやすく、
蟲の生産基地にもしやすい。そして、睦美達や私達が良く知っている人達」
「そんな都合の良い人質って……?」
清見の言葉を反芻する鈴華は、何か閃いたかのように顔をほころばせた。
(そんな……まさか!)
翠の心情が激しく揺れた。
彼女も鈴華と同様に、森の外に視線を向けた。
東側のどんよりとした空の底に、朝焼けの薄い赤色が見え始めた。
その方向上にある場所を想起した時、翠は心の奥から絶望と戦慄を覚えた。
□
暁の光が地上を弱々しく照らし、新しい朝を迎えたことを告げる。
雲の合間を抜けるのが精一杯だったのか、朝日の色合いは極めて曖昧なものだった。
その元気に欠けた光に、灯は意識を取り戻していく。
「ううっ……」
徐々に覚醒しながら、灯はゆっくりと目蓋を開けた。
ひどく堅い寝心地だった。
床の上で、自分は一枚の薄汚れた毛布を掛けて寝かされていた。
周りに目をやると、そこは久しく使われていない倉庫のような場所だった。
小屋の中に錆付いたパイプ椅子や机やらが所狭しと積まれる。
そのパイプ椅子の列を背にして、睦美は体育座りの状態で眠っていた。
古びた雨戸の隙間から光が漏れる。
(……助かった、のか)
灯は意識を回復させながら、物音を立てないよう起き上がった。
そして自分が被っていた毛布を睦美にそっと掛け、半壊した窓から外を眺めた。
道端にはバス停やガードレール、さらに下り坂が見えた。
坂道から視線を落とせば、商店街の一部が見えてくる。
素早く脳内地図と照合をとった。
ここは市街地に近い高台、森とは学校を挟んで反対側の位置にある。
丘からの町への見晴らしが良く、攻めにも守りにも適したポイントだ。
睦美らしい思慮深い選択と言える。
昨夜のことは、清見と戦ったことまでは覚えている。
だが自分がどうやって負けたか、その先の記憶がおぼろげだった。
睦美と翠が必死に自分を助けた記憶は印象にあった。
そういえば、一緒に脱出したはずの翠はどこにいるだろうか。
ふと灯は上着をめくり、自分のお腹を見おろした。
少女らしいすべすべした肌には、これといった変わりは無かった。
(あれは……夢か?)
何かおぞましい感覚が湧きそうになり、灯は慌てて思い出すのを止めて。
曖昧ながらも、自分の体が清見に何かされたような覚えはあった。
もし寄生されているのなら、一刻も早く睦美に知らせなければならない。
404 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(8/20) sage 2013/06/16(日) 08:17:30.83 ID:CJ8TnpxM
そう思って睦美を揺り起こそうとした時、その穏やかな寝顔が目に入った。
いつも堅物のイメージがある睦美だが、今ではまぶたを深く閉じて、
静かな寝息を立てて眠っていた。
しな垂れた頭から、白いうなじが無防備のまま晒し出される。
(睦美のやつ、こんな可愛かったのか)
灯は不覚にもトキメキに似た感情を覚えた。
スペースを譲るためか、体が小さく縮こまるところがまたしおらしい。
顔を近づけば、自分以外の女の子の良い匂いを感じる。
そんな時、灯の心臓が突然高鳴り出した。
下腹部に強い疼きを感じるや否や、全身に強い衝撃が立ち起こる。
(ちょっと、なに……!)
ハッとなって一度上着をはだけると、
なんと今度はヘソのまわりに薄っすらと妖眼の紋様が浮かび上がっていた。
子宮に甘い快感が生じるとともに、口から喘ぎが漏れそうになる。
(くうぅぅんっ!)
声が喉を通るのを必死に我慢しながら、灯は睦美から離れた。
赤い勾玉を握ると、瞬時に炎をまとったバトルスーツとなって身を包む。
すかさず両手で印を結び、体内から膨らむ妖気を封じ込めた。
素早い行動が功を奏したのか、
妖気の広がりはなんとかバトルスーツの内側に留まった。
しかし体のほうは沸騰したポットように、
抑え切れないほど膨大な淫欲が暴れ回る。
かすかな記憶の糸に、ある光景だけが力強く再生される。
自分を嘲笑する黒い影。
その口から紡がれる言葉には、悪魔の囁きのように甘い誘惑が満ちていた。
(百眼……さま)
ついに、心の中で復唱してしまった。
その言葉に口にした途端、
体中の細胞の一つ一つが震えて視界や意識が弾けそうになる。
本能が妖眼蟲のものにすり替わっていく。
淫気を集める。
胎内に宿る蟲を育む。
ほかの女を犯し、自分と同類のメスを増やしていく。
無意識のうちに、灯の虚ろになった瞳がある一点にとどまる。
睦美の寝顔だった。
こちらの邪念に気付くこともなく、ただ天使のような顔立ち。
――睦美を陵辱したい。
あまりにも自然と浮かんだ考えに、灯はビックリした。
下腹部に妖呪が現れてから、どす黒い疼きが神経を蝕み始めた。
心地良い脱力感とともに、全身の霊力が子宮のほうへと吸収されていく。
それに比例して、妖眼も淫紋がよりはっきりと浮かび上がる。
(まさか……霊力を妖気に作り変えている!?)
増大していく寄生の快感に、灯は唇をかみ締めた。
護霊服はもともと外からの攻撃を防ぐものであり、
内側の妖気に対しては一切機能しない。
405 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(9/20) sage 2013/06/16(日) 08:20:05.59 ID:CJ8TnpxM
ならば、自らの手で浄化するほか無い。
彼女は残る力を振り絞って、一枚の霊符を取り出した。
五行戦隊で一番解呪に長けているのは清見で、逆に灯は一番苦手としていた。
だが今はそんなことを言っている場合でもない。
下着をおろすと、布切れは甘い匂いの汁がたっぷりと沁み込んで、
股の間と蜜の糸を引いた。
羞恥心をぐっとこらえて、灯は妖気が発散する自分の股に霊符を宛がった。
だが彼女の予想に反して霊符は愛液に触れた途端、
墨汁を浴びたかのように一瞬にして黒く変色した。
御札の表面にある炎の霊言も妖しい目玉模様に上書きされ、
浄化するどころか、逆に強い妖気を放つ魔の札に変化した。
驚いたあまりに、灯は思わず黒化した霊符を握り潰して灰に燃やした。
なんて強力な呪詛だろうか。
動揺している間に、灯は重大なことを思い出した。
この呪詛を施した人物は清見である。
解呪の優れた彼女ならば、その対抗策を練ることだってできるはずだ。
(だめ、これ以上は……!)
奥から一際大きい鼓動を感じると、灯は高揚感のあまり体を抱きしめた。
そのまま背中を強く反らすと、陰部から愛液がほとばしる。
(なにか……出るっ!)
全身の力を吸い取られたように、灯に膣から一本の触手が生え出た。
細蛇のような触手は粘液にまみれ、淫らな香りをあたりに散らす。
異型が下からスカートを押し上げる光景は、
まるで正義の象徴をあざ笑っているかのようだ。
目の前が真っ暗になった気分だった。
(そんな……! 速く、元に戻さないと……)
朦朧となりかけた意識で、灯は触手をなんとか押し込めようとした。
だが指が一物の先端に触れた途端、脊髄に甚大な快感が跳ね返ってきた。
(ヒャアァ――くッッ!)
声を噛み殺すだけで精一杯だった。
指紋の一つ一つが鎌首をなぞる度に、快楽の火花が脳に焼きつける。
最初こそ刺激的だったが、それもあっという間に物足りない快感に変わった。
灯は恍惚の表情を浮かべて、スカートの下から触手をあらわにさせた。
表面の荒れた筋や見開く妖眼は、少女の可愛さと酷烈なコントラストを作り、
背徳さを一層際立たせる。
完全に解放されたせいか、むせ返るほど甘い淫気が外に漏れ出た。
これほど濃密な淫気が潜んでいたかと驚いたが、
すぐに心までその虜になってしまった。
硬くなった触手を握り締めただけで、熱さやドクドクした脈打ちが伝わってくる。
脳内にまたあの囁き声が現われる。
意識が薄れた灯にとって、それはあたかも己の意思のように聞こえた。
406 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(10/20) sage 2013/06/16(日) 08:22:50.68 ID:CJ8TnpxM
『速くそれを鎮めなさい。じゃないと、蟲が成長してしまうわ』
(うん。蟲の成長は、なんとしても阻止しなきゃ……)
『そのためなら、一時的に快楽を求めるのは仕方ないこと』
(うん、ちょっとだけだから……そうしなきゃ、もっと大変なことになるんだから)
『触手をシゴくのが気持ちいい』
(ううぅ、気持ちいい……!)
『でも、これは決して快楽のためにやっているわけではない』
(そう……あくまでも蟲の成長を防ぐためだから)
誘導された通り反芻しながら、灯は虚ろな目で触手をこすり始めた。
最初はゆっくり、段々速く。
次第に意識するまでもなく腕が勝手に加速していった。
どうすれば快楽が得られるか、どこがポイントなのか、
それら全て勝手に思い浮かんだ。
あとは見よう見真似て自分の手によって再現するだけ。
(……睦美……!)
友達の寝顔を見つめながら、灯は心中の欲望をギラギラと燃やし広げた。
生徒会長であり、強い信念を持つ睦美。
学校では誰からも憧れる存在だった。
だがその制服の下には、灯とは変わらない無垢で淫らな肉体が存在している。
彼女を汚したい。
力ずくで屈服させ、快楽を渇望するはしたない声で鳴かせたい。
そして彼女の子宮にも妖眼蟲を分け与え、
その端正な顔立ちが欲情に染まっていく様子を見たい。
とりとめのない罪悪感にさいなまれつつ、
灯はこれまで感じたことも無いような高揚感を味わった。
もうこれ以上考えてはならない。
頭の中で何度も警鐘が鳴り響いたが、そのたびに別の心地良い声によって揉み消される。
(睦美、ごめん……!)
仲間を裏切った意識に苦しみながらも、灯は止めることができなかった。
睦美を陵辱する光景を想像しただけで、脳みそが溶鉱炉のようにドクドクと滾った。
やがて爆発に差し掛かった直前、灯の下腹部の妖呪は最大限に黒く輝いた。
その時、灯は妖しい声に言われるがまま言葉を繰り返した。
(私は百眼様に寄生されたしもべ……
妖眼蟲をこの身に宿し、その繁栄のために全てを捧げます……!)
言葉を一字一句吐き出すにつれ、快楽の高潮が盛り上がっていく。
そしてついに、灯は意識が吹き飛ばすほどの絶頂を迎えた。
「うっ……くっ、かあぁっ……!」
全身の霊力が子宮に引き寄せられた。
体がビクビク震えた次の瞬間、触手陰茎から大量の濁液が発射された。
潰れそうになるほど抑制した喉の隙間から、悲鳴がかすれて弾き出される。
淫らな白液は自分だけでなく、睦美の護霊服までに飛び散った。
放心状態となった灯は、がっくりと地面に膝をついた。
触手陰茎はいつのまにか膣の奥へ引っ込み、気付いたらもう見当たらなくなった。
残るは汗だくの体と火照りと、胸に広がる虚しい気持ちだけだった。
親友をおかずに自慰してしまった罪悪感。
彼女のバトルスーツにぶっかけた粘液を目にしただけで、心が引き裂かれそうになる。
睦美が目を開けたのは、その時だった。
407 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(11/20) sage 2013/06/16(日) 08:26:00.86 ID:CJ8TnpxM
ギクッ、と灯が石膏像のように固まった。
だが睦美は立ち上がるや否や灯の背後に回りこみ、
右手から一粒の小石を弾き飛ばした。
小石は弾丸のように射出され、倉庫の入り口を跨ぐ一匹の妖眼蟲に命中する。
目玉を貫通されたスライム体はドロドロに溶け出し、床に小さな染み跡を残す。
「気を抜くな、灯。敵がいつ現れるか分からないから。
まあ一応結界を張ってはいたが」
「え、えっ?」
睦美に言われて初めて、灯は倉庫の四方にお札が貼られていることに気付く。
札自体の霊力は弱く、境界線を越えた妖魔を知らせるのが主な役目のようだ。
(って、睦美は気付いていないの?)
灯は慌てて睦美のバトルスーツを観察した。
白と褐色が織り成す正義の衣装は、睦美の凛とした雰囲気をより引き立たせる。
だが、その服にはさきほどの……
(あれ……?)
灯は急に戸惑った。
ついさっきまでの記憶が蒸発したかのように、ごっそり思い出せなくなった。
更にしばらくすると、どうして自分が戸惑っていのるかさえ分からなくなった。
ただ何か良くないことが進行している気がするが、
それを思い出すことを本能が拒絶しているようだ。
「灯、どうした?」
「ごめん……オレ、どうかしてるみたいだ。今までのことが曖昧で……」
「無理もない。昨晩、あんなことがあったから」
いや睦美、言いたいのはそれではない。
灯は改めて伝えようとした時、
ふと睦美のスーツの端っこにシミのようなものを見つけた。
そのシミは一瞬だけ触肉のように変化したが、二三度まばたきすれば消えてなくなった。
偶然じっと見ていなかったら、きっと錯覚だと思っていただろう。
だがその現象が一体何を意味するのか、灯にはどうしても思い出せない。
「灯、大丈夫か?」
「あっ、うん……助けてくれて、ありがとう」
「体に目立った外傷は無かったが、しばらくは無理しないほうがいいだろう」
「ああ、そうさせてもらうよ」
灯は自分の口から出てくる言葉に混乱した。
彼女が考えるよりも速く、まるで誰かに操られているように勝手に言葉を綴った。
肝心なのは、睦美は何も気付いていないことだ。
しかし、一体何に気付けというのか?
「どうしたの?」
「いいえ……それより、翠はどこにいるの」
灯は考えを巡らせながらも、話題を逸らすように尋ねた。
だが意外なことに、睦美の視線が俯いた。
「ちょっと、翠はどうした? アイツと一緒にオレを助けたんだろ?」
「敵に捕らえられてしまった。私達を守るために」
「そんな……!」
灯は呆然となった。
つらい気持ちがぐっと込み上がって来る。
408 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(12/20) sage 2013/06/16(日) 08:29:01.25 ID:CJ8TnpxM
睦美は表情を強張らせたまま、言葉を続ける。
「大丈夫ならもう少し休んでおけ。昼になれば妖魔の動きも鈍くなる。
その隙にここを出る」
「なんだと?」
「妖眼蟲の活動範囲がすでにここまで拡大した。さっきは一匹だけだが、
敵に察知されるのも時間の問題だ。その前に町を出て、一度陽子先生と合流……」
「ふざけるな!」
灯は大きな声をあげて、灼熱のような目つきで睦美をねめつけた。
「今オレ達が離れたら、誰が町を守る? 誰が妖魔と戦う?
誰が鈴華や清見や翠を助ける? みんなを見捨てるというのか!」
「見捨てるわけじゃない。先生は三日後に退魔機関の本部から返ってくるはずだ。
そこで体勢を直してから、またここに……」
「戻って妖魔を退治するっての? ハハンッ……! 三日も経ったら、
この町にどれだけの犠牲者が増えると思ってる?」
「だからと言って現状ではこちらに勝ち目は無い。鈴華と清見が敵になった時点で
こっちとは二対二。その上、敵には大勢の妖眼蟲だっている。
もし翠までが敵の戦力になっていたら、完全にこちらの劣勢だ」
「勝ち目が無ければ戦わないのか?」
「今回が特別すぎるのだ。私達が負ければそのまま敵の戦力を増やすことを意味する。
それよりも今私達が知っている妖眼蟲の情報を、退魔本部に知らせることが重要だ」
「要するに負けるかもしれないから、尻尾を巻いて逃げるってことだろ?」
灯は睦美の襟元を掴み取った。
その烈火にも勝る気迫を、睦美は逆に睨み返した。
「五行戦隊に入った時から、この命を捨てる覚悟ができている。
私が何よりも怖いのは、このまま誰にも知られること無く、
妖眼蟲の侵略を許してしまうことだ」
睦美の毅然とした表情はまるで頑固な岩から掘り出されたように、
灯の激怒に対し微動だにしなかった。
彼女のまっすぐな目線にひるんだのか、
やがて灯は手を離し悔しそうに顔を言葉を吐き捨てた。
「くっ……あとでオレに反省させてくれよな。
あの時お前の言うことを聞いて、やっぱり正解だったと」
「灯……!」
「納得したわけじゃないからな! ただ睦美のことは信用しているというだけで」
灯は不器用そうに背を向けた。
目の前の犠牲を我慢できるほど、灯は融通の利いた人間ではなかった。
しかし、彼女は睦美の性格をよく知っていた。
その睦美が信念を曲げてまで決めた選択を、無下にすることができなかった。
ある異変が起きるまでは。
突如、床に広がっていた水の残滓が変色した。
灯と睦美は咄嗟に構える。
妖眼蟲が残した水溜りに波紋が広がると、ぐにゃりぐにゃりと揺らぎながら、
一つの明瞭な映像に変化した。
飛び出さんばかりに、小柄なシルエットがそこに現われる。
409 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(13/20) sage 2013/06/16(日) 08:31:21.88 ID:CJ8TnpxM
『ハ~イ。灯と睦美、見てる?』
「鈴華……!」
驚きに怒りを交えて、灯は仲間だった人物の名前を呼んだ。
水の鏡面には、鈴華の明るい笑顔がいっぱいに映し出される。
もともとある小悪魔な魅力も、
その暗黄色の触手スーツによって淫らに仕立てられた。
『この映像はね、清見の能力で蟲に封じたものなの。
コアを破壊すると、映像が再生されるってわけ。あっ、それじゃあ
この蟲さんはもう殺されちゃったってことかな? あーあ、残酷ぅ~』
映像の中の鈴華はわざとらしく両手を広げてため息をついた。
悪戯っぽい言動は、以前の彼女の快活さを思い出させる。
それが余計に灯の怒りに触れた。
「この……っ!」
「待て、これはただのビジョンだ。破壊しても意味は無い」
飛びかかろうとする灯を睦美が抑制した。
その間にも、鈴を鳴らしたようなかわいい声が小屋に響き続ける。
『ところで、私は今どこにいるでしょう?』
唐突な問いに、灯と睦美は初めて映像の背景に注意を払った。
鈴華の足元を走る白いコンクリートの床。
曇り空へと続く間には、落下防止用の欄干が見える。
それらの景色を照らし合わせると、二人の顔色が激しく変わった。
『正解は、学校の屋上でーす!』
鈴華が手を伸ばすと、映像の視界が後ろの景色を映し出す。
屋上から見える校舎や校庭、そして登校するのに使う通学路。
灯や睦美にとって、どの場所も生活の一部だった。
『さて、今回のゲストを紹介しましょう』
映像の枠外から、鈴華が一人の少女を押し込んだ。
体操着を身に着けた少女は、事情がまったくのみ込めない様子でただ半べそをかいでいた。
彼女の顔立ちを確認した途端、灯はきょとんとなった。
「そんな……祥子!?」
『とりあえず、自己紹介してもらおうかしら。
クラス、氏名……あっ、カメラ目線はこの目玉にね』
『ふぇぇ……に、二年、B組……滝沢祥子、です』
『ところで、あなたはなんてこんな朝早くから学校にいるの?』
『私……陸上部だから、朝練で……』
『まあ可哀相に。真面目に朝練に来たばかりに、こんな目に遭っちゃうなんて。
でも刺激的だったでしょ? あなた以外の女の子達が、
みんな触手に愛撫されてアンアン鳴いていたのを』
『ひ、ひぃ……!』
少女は途端に怯えきった様子に陥った。
鈴華が意地悪そうに笑みを浮かべると、寄生スーツから幾本もの触手が分裂して、
少女の体や頬にまき付いた。
その触手がよっぽどトラウマなのか、少女は逃げることも大声を出すこともできず、
ただほっそりとした体をわななかせた。
410 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(14/20) sage 2013/06/16(日) 08:35:05.36 ID:CJ8TnpxM
『あなたをここに連れてきたのは、実はこれから祥子ちゃんに寄生してもらって、
それをテレビの前の人に見せるためなんだ。
すごく気持ちの良いものだから、怖がらなくてもいいよ』
『き……せい? い、いやぁ……』
恐怖のあまりに、少女の悲鳴はかすれた。
その様子を楽しんでいるかのように、鈴華は得意満面の表情を作る。
『今だけサービスタイム! 特別に寄生の方法を選ばせてあげるわ。
私の首輪や貞操帯に責められたい?
それとも清見ちゃんの精液風呂に浸かりたい?』
『い、いや……!』
『ああん、どっちも気持ち良さそうで選べない!
――そんな優柔不断なあなたに、こちらがオススメ!
私と清見ちゃんの能力をハイブリットさせた真新しい寄生法!』
じゃじゃん、と鈴華は意気揚々と身辺にある物体を示した。
金属製の棺桶のような鋳物が鈴華の横で直立していた。
その物体は鈴華の背丈よりも高く、正面には女体の輪郭がかたどられ、
不気味な雰囲気は中世の拷問器具を連想させる。
鈴華が扉を開くと、中が空洞であることが分かる。
だが目を良く凝らして見ると、そこに恐ろしい光景が潜んでいることに気付く。
金属の裏側には、びっしり埋め尽くす触手が存在していたのだ。
『ひ、ひゃああっ……!』
あまりにもおぞましい景色に、少女の声がうわずった。
金属の裏側から絶え間なく粘液が滴り、空洞内の空気と触手を濡らせる。
外からの光を感知したか、触手は緩慢な動きで伸び始めた。
触手の表面には不気味な目玉がぎょろつき、淫液が糸を引いて垂れ落ちる。
その淫液が床と接触すると、その場を黒く染み広がった。
画面越しでも、灯や睦美にはその匂いが漂って来るように感じた。
一目見ただけで、今までずっと強い寄生能力が備わっていることが分かった。
彼女達ほどの退魔士とて、護霊服が無い状態で長く閉じ込められたら、
寄生支配されてしまいそうだ。
触手の目玉は獲物に気付いたかのように、一斉にぎょろりと女学生を見つめる。
『きゃあっ……!』
『ああん、そんな熱い眼差しで見つめないで、私もう濡れちゃうわ!……あはは。
まあ、恨むなら私達じゃなくて、五行戦隊を恨みなさいね』
『五行……戦隊?』
その言葉を聴いた途端、少女の瞳に一筋の希望が輝いた。
五行戦隊の活躍は、都市伝説のように生徒達の間で囁かれていた。
少女自身も興味半分知っていたが、本物の妖魔を見た今、
その存在は彼女にとって唯一の希望だった。
『五行戦隊は知っているんだ。じゃあ、そのうちの一人の名前が灯で、
あなたと同じ陸上部の子であることは知ってるの?』
『あ、灯ちゃん……!?』
411 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(15/20) sage 2013/06/16(日) 08:38:02.99 ID:CJ8TnpxM
『うん。そもそも私達がこの学校を襲った理由は、彼女がここの生徒だからなんだよ。
ちなみに、あなたは彼女との関係は?』
『と、友達なんです……』
『おおう、友達! なんという幸運! じゃあぜひ彼女の助けを呼ばないと。
もしかしたら、今この瞬間もあなたのピンチを見ているかもしれないよ。
ねぇ灯ちゃん、聞こえてる? 速く助けに来ないとこの子をこの拘束具の中に入れて、
触手ちゃん達にレイプさせちゃうわ』
『い、いやああぁぁ!』
「この……!」
灯は拳を強く握り締めた。
そうでもしないと、膨れ上がる怒りを抑えられなかった。
『おかしいね。友達がピンチなのに、全然来ないじゃない。
ほら、あなたも呼ぶのを手伝ってよ。灯ちゃん、助けてって』
『あ、灯ちゃん……た、助けて……』
『もっと大きな声出してみたら? ほらほら、触手ちゃんがあなたを欲しがってわよ』
自分の身にどんどん近付く触手に、
少女は目に涙を滲ませながらはち切れんばかりの声で叫んだ。
『灯ちゃん、お願い! 速く助けに来て!』
『……全然来る気配が無いね。
どうやらあなたは彼女にとって、人質の価値も無かったみたいだね』
『待って、もう少し待って下さい! 彼女は絶対来ます! だから……』
少女が言い終わるのを待たずに、鈴華は指を鳴らした。
すると空洞の中から無数の触手が飛び出て、少女を体操着の上から絡め込んだ。
粘液が体操着に染み込むと、瞬時に黒い粘質に染め替えた。
『いやああああ!』
触手がそのまま少女を空洞に引っ込むと、
金属の蓋はバタンと閉まり、中からの悲鳴をシャットアウトした。
棺桶の蓋の輪郭がぐにゃりと歪み、
顔の形から足先まで少女にピッタリフィットするよう変形していく。
その作業が終わって固定化すると、拘束具はまるで少女に銀メッキを施したかのように、
体のラインを生々しく浮かび上がらせた。
金属の光沢が映える胸の谷間や、股間の陰り。
生気を失った顔立ちに伝わる怯えた感情。
それらは不気味ながらも、どこか官能的な雰囲気を醸した。
『はい、新しい寄生者の誕生です。ふふふ、大丈夫。あなたがそこから出る時は、
今よりもっとずっと素敵なメス奴隷になれるわ』
鈴華は妖しい笑みを浮かべ、鉄になった少女の胸をいやらしく撫でた。
灯は外に向かって歩き出した。
それを予測したのか、睦美は間髪入れず灯の肩を捕まる。
「冷静になれ。この映像は今よりも前に撮ったはず。
今駆けつけたところで、彼女はもう……」
「だからなんだって言うの? 今この瞬間にも、犠牲者が増えているんだぞ!」
「見て分からんのか。敵はわざと私達を挑発してるのよ!」
412 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(16/20) sage 2013/06/16(日) 08:43:51.85 ID:CJ8TnpxM
二人の諍いをよそに、水の鏡面に青い触手服をまとった人物が映し出された。
彼女の切れ長の目は深淵の湖のように静けさを帯びる。
右手を差し出すと、手のひらに乗せてある水色の妖眼蟲を見せつけた。
そして彼女の口から無情な言葉が紡がれる。
『今日の正午、蟲達を屋上の貯水槽に放つ』
「清見……!」
「どういうこと?」
睦美達の反応に構うこと無く、青い寄生少女は冷酷な口調で語り続けた。
『私が産み出した寄生種は、水に触れただけで無色透明に溶ける。
その水を摂取することで、ここにいる人間は一斉に寄生されることだろう』
「そんなことしたら……!」
灯は愕然となって、清見の手の中にあるガラス球を見つめた。
妖眼蟲の核である眼球は、光を反射してみずみずしく輝く。
別物だと頭の中で分かっていても、どうしても人間の目玉を連想して嫌な気分になる。
『その液体は人間に害は無いわ。むしろ免疫能力が強くなって、
健康状態が向上するくらいだわ。私が念じない限り体内にずっと潜伏状態でいるから、
普段の生活に支障を出すことも無い。それこそ霊力による精密検査でもしない限り、
普通の人間と違いが分からないくらいにね』
「そんな馬鹿な!」
睦美はぞっとしたように声をあげた。
ただでさえ妖眼蟲の発見はしにくく、その高い寄生力と繁殖力で人間を脅かしてきた。
それが新たに潜伏能力を得たら、
感染が広がる前に発見することが更に難しくなるだろう。
『兆候がまったく無いわけでもない。これに寄生された人間は、
繁殖本能が物凄く強くなる。そして、彼らと体液を交換した――
すなわち性交した人間もまた、同じ寄生状態になってしまう』
「それってつまり、感染が速く広がるってことじゃないか!」
灯のつっこみを無視して、清見は淡々と続ける。
『ここでの実験が終わったら、この寄生種を全国の水道局や河川に流す予定だ。
戦いを起こさず、人々が幸せの中で寄生される。
とても平和なアイディアだと思わない?』
予想を遥かに上回る計画性に、灯と睦美は背中に冷え汗を流した。
もし清見の目論見が達成されたら、被害規模はもはや町だけでは済まない。
日本はもちろん、世界中の人々が妖魔に支配されてもおかしくないだろう。
『じゃあ、私と鈴華は学校で待ってくるから。
正義の味方さんなら、こんなことを許すはずないわよね?』
最後に清見が嫌味っぽい薄笑みを残すと、映像はそこで途切れて元の水溜りに戻った。
倉庫の中は再び静かになる。
睦美は自分が掴んでいるのは人間の肩ではなく、高熱に焼かれた鉄板のような気がした。
手のひらに伝わる温度は、映像が終わった後も上昇し続けた。
「落ち着いて、灯……」
「こんなもの見せられて、誰が落ち着いていられるか」
灯は睦美の手を振り払い、それまで溜め込んだストレスを一気に爆発させた。
413 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(17/20) sage 2013/06/16(日) 08:48:38.49 ID:CJ8TnpxM
「睦美が行きたくないならそれでいい。だがオレは絶対行くからな!」
「このまま君が敵の戦力になるのを知って、行かせるわけにはいかない」
「ふざけるな!
だいたい最初に鈴華が敵に捕らわれたのも、睦美のせいじゃないか」
言い終わって、灯はハッとなって後悔した。
睦美は明らかに落ち込んだのだ。
決して弱みを見せない睦美が、潮水に摩滅された石のような表情を浮かべた。
そこでやっと、灯は最近の睦美がどういう心境だったのか理解できた。
鈴華の寄生を発端に始まった一連の事件。
睦美はずっと鈴華のことで自分を責めていたが、
みんなの前では一切素振りを見せなかった。
その気丈さに感心すると同時に、灯は自分の鈍さに慙愧した。
すぐに謝ろうと口を開いた。
だがその瞬間、灯に灯の脳内に妖しい目線が蘇る。
どす黒い感情とともに、口から出た言葉は彼女の意思とまったく逆のものだった。
「睦美にそれを言う資格はあるのか? あの時、あなたが鈴華と一緒に戦っていれば、
鈴華が寄生されることは無かったはずだ。
翠だって、どうせ睦美が彼女のことを見放したんでしょ?」
「……!」
灯が放った言葉は、次々と睦美の心を傷つけた。
その消沈していく様子を目にするだけで、灯は胸を締め付けるような痛みを感じた。
だがその一方で、腹の奥ではまったく異質の快感が膨れ上がった。
――もっと睦美の苦しむ表情が見たい。
その邪悪な感情が下腹部の疼きと合わさって、体中にじんわりと広がっていく。
何かがおかしかった。
(だめ……このままだと、もっと酷いことを口に言ってしまう……!)
興奮の汗が体中から涌き出る。
狂乱する心臓の鼓動を抑えながら、灯は睦美に背中を向け外へ走り出した。
睦美の弱くなる姿を見ただけで邪悪な欲望に支配されそうになる。
頭の中で、誰かに呼ばれているような気がする。
それに答えてしまったら、大事なものを失ってしまいそうだ。
時間が進むにつれ、呼び声の間隔が縮まって灯の心を揺らし始める。
ぼやけていく頭の中で、最後まではっきり保った意識が一つだけあった。
(……ここにいたら、睦美まで……巻き込んじゃう)
そう感じると、灯は目が虚ろになったまま呼び声の方へ駆け出した。
彼女の行動を、睦美は止める事ができなかった。
「クソッ……!」
睦美は床に膝をついて、やりきれない表情で拳を振り下ろした。
思考が麻のごとく乱れていく。
414 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(18/20) sage 2013/06/16(日) 08:50:49.00 ID:CJ8TnpxM
灯の選択は正しいかもしれない。
翠は捕まってしまったが、今ならまだ完全支配されていないはず。
鈴華と清見が敵側にいるとはいえ、灯と協力すれば戦い方次第勝てるかもしれない。
だがもし翠が敵に加勢したら、勝率は限りなく低くなる。
仕掛けるとしたら、今が最後のチャンスだろう。
このままほうって置くと、ミスミス灯を敵の手に渡すようなものだ。
だが自分まで負けて寄生されたら、敵を更に増長させてしまう――
睦美はできるだけ灯の言葉を考えないようにした。
だが避ければ避けるほど、灯のセリフが頭にまとわり付いた。
今の彼女には、行動を起こす余裕の欠片も無かった。
灯を阻止することも。
妖眼蟲の残骸以外の微かな妖気に気付くことも。
空は一段と濃厚な黒雲に覆われ、霧雨に町が煙り始めた。
その中には、学校の建物も含まれているだろう。
どんよりとした町景色を眺めていると、睦美の心は急激に寂しさを覚えた。
今ほど太陽の光が恋しいと思った時はない。
□
メッセージを伝え終えると、清見は妖眼蟲の核を貯水槽に放り投げた。
水に触れた途端、妖眼は溶け広がり、ほのかな残り香を漂わせる。
その無造作な行動に、鈴華は瞳を大きく見開かせた。
「えええ、睦美達が来るまで、人質にとっておくじゃなかったの?」
「人質というのは彼女達の認識であって、私達とは無関係な話。そうでしょ?」
清見は淡々と答えた。
彼女の近くにいた四人の少女が男達の剛直から離れ、
頬や肌に快楽の余韻を残しながら貯水槽の周囲に集まった。
少女達は蓋のまわりでしゃがみ込むと、その股の間から白い粘液が太ももを伝って滴る。
いずれの少女も裸に近い格好で、艶かしい肢体に淫靡な触肉がまとい付いた。
そんな異様な光景にも関わらず、少女達は誰一人怯えた様子もなく、
陶酔しきった目つきで自分達の股間をまさぐり始めた。
魂をとろかすような喘ぎ声とともに、新たな寄生のコアが貯水槽に産み落とされる。
清見の口から嘲弄の意図を悟ると、鈴華は面白そうにまばたきをした。
「灯達が必死に助けようと来てみたら、実は全員すでに私達の奴隷だった!ってオチ?
きゃはは……清見ちゃんって、実は悪役のほうが向いてるんじゃない?」
「正義は決して悪に勝てない。その理由は、
悪は目的のためにどんな作戦も実行できるが、正義にはそれができない。
だから私のような人間は、最初から悪の側にいるべきだった」
清見は冷静に語りながら、部下となった少女達の働きを見守った。
少し前まで、彼女達は普通の女子高生だった。
それが今では、清見に従う忠実なしもべとなった。
学校の屋上には寄生の棺以外に、十数人もの男女が乱交を繰り広げていた。
「くくく……灯と睦美の絶望した表情、今からでも想像するだけでゾクゾクしちゃう。
あなたもそう思わない、翠ちゃん?」
鈴華は自分が腰掛けていた棺を開けると、喘ぎ声のボリュームが大きくなった。
中には一人の少女が鎖に縛られ、半身が白い粘液に浸かっていた。
415 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(19/20) sage 2013/06/16(日) 08:54:01.74 ID:CJ8TnpxM
棺を開けた瞬間、むせ返るような甘い発情臭が外に漏れ出る。
彼女の暗緑色の寄生スーツと棺の裏側に生えた触手が絡め合って、
絶妙な加減で女体を撫で回る。
股間につけてある貞操帯の隙間から絶えず愛液が溢れ出て、
白粘液風呂と混ざり合った。
「翠の体からすごく良い匂いがするわ……これほどに性欲を高められるなんて、羨ましいわ」
「ぐぅん、うぅんんん!」
鈴華が翠の胸の谷間に鼻を埋めると、翠は大きく物音を立てた。
彼女は首輪やボールギャグを装着された状態で、両目も眼帯に覆われていた。
眼帯の表面には水色の目玉が一つ輝き、その点滅と同調して少女の体が震え上がる。
手足まで縛られた彼女には、悶える以外の行動が許されなかった。
「今すぐにもイキそうだね」
「普通の人間ならとっくに狂い出す状況だが、翠の精神力はさすがのものだ。
そのおかげで、みんなの洗脳時間を大幅に短縮できた」
清見は感心したように翠の姿を眺めた。
床に置かれた棺同士の間に太い触手が繋がり、その中心に翠の棺が位置していた。
翠が悶えるたびに、触手間に信号のような光が転送されていく。
「今の翠ちゃんは、自分が寄生された時の記憶を、繰り返し見せられているんだよね?
わざわざ寄生前の心情に戻されて、何度も堕ちた瞬間が味わえるなんて」
「その記憶をほかの寄生者に見せることで、強制的に堕ちた時の心情を学習させていく。
そうして、短時間のうちに高いレベルの寄生者が産み出せる」
「良かったね、翠。百眼様のために、挽回のチャンスがもらえて」
鈴華はそう言って翠の口からボールギャグを外し、
そこにベットリとついた唾液を舐め取った。
口が自由になった途端、翠は悲鳴に近い声で叫んだ。
「お願い、もう許して! もう二度と逆らうことなんて考えないから
……だから、イカせて!」
首を左右に振って懇願する少女。
懸命に身を捻らせるも、全身を拘束された今、それは更なる欲情を煽る行為でしかなかった。
だが今の翠には、それに気付く余裕さえ持たなかった。
「翠ちゃんは反省中なんだから、イカせるわけないじゃん」
「そんなこと言わないで! 全て私が悪かったです……
百眼様のためなら何でもします、鈴華や清見の命令だって何でも従います! だから……」
「その言葉に偽りは無いのだな?」
清見は翠から目玉の眼帯を剥ぎ取り、その顔を晒した。
淫欲に潤んだ虚ろな目は、媚薬に盛られた淫婦のように焦がれていた。
「は、はい……!」
「じゃあ手始めに、この学校を蟲達の苗床に作り変えてもらおうか。
そうすれば、あなたが期待する快楽も得られるだろう」
「えっ……きゃあああああ!?」
清見が貞操帯に足先を乗せると、翠は魂消るような叫び声を上げた。
絶頂に達しないギリギリの快感が翠の全身を震わせる。
416 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(20/20) sage 2013/06/16(日) 08:56:47.61 ID:CJ8TnpxM
「いいのか、清見」
「灯と睦美は必ずここに来る。彼女達を歓迎するためにも、
翠の調教を終わらせてやらないと。正義の心が腐ってしまうくらい、
快楽の蜜液に浸して……!」
「ひゃあ、怖い怖い」
鈴華はペロッと舌を出した。
清見は敵としては手強いが、味方となればこれ以上心強いものはない。
彼女の心に宿る黒い興奮を感じると、鈴華も邪悪な笑みを浮かべた。
― つづく ―