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五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』
397 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(1/20) sage 2013/06/16(日) 07:50:03.55 ID:CJ8TnpxM
森の中で、清見は暗い青色の寄生スーツを身にまとっていた。
性交後の余韻を象徴するかのように、露出した肌の部分から淫靡な香りが漂う。
半液状の触手達が汗ばんだ肉体を愛撫する。
だが、彼女の顔立ちはいつもの無表情に戻っていた。
清見は抜け目の無い人間である。
例え妖魔のしもべになった今でも、その性格が変わることは無かった。
だから足元から違和感を覚えた瞬間、清見はすかさず体を横へと滑らせた。
やや遅れて一本のツタが地表から跳ね上がり、彼女の足元を空振る。
地面はいつの間にかイバラの大群に覆われていた。
赤い花が満開すると、血のような花びらの旋風が巻き起こる。
清見は咄嗟に顔面を両腕でガードした。
体を覆った触手スーツは瞬時にバリアのように広がり、
接着剤のごとく花びらを粘つける。
だがその隙に、木の上から一本の蔓が伸び出て、
清見の腕から烈火の勾玉をはたき落とした。
一つの影が飛び出て、勾玉を空中でキャッチすると、
そのまま清見の後方にある巨大水玉へと駆けつけた。
その人影は木の槍を掲げ、全力で巨大水玉の表面に突き刺した。
ブスッという異音とともに、水玉の大目玉から無数の黒液が噴き出る。
木の槍を放った人物は躊躇すること無く、その中から灯を引っぱり出し、
赤い勾玉をその胸にかざした。
主人を認識した霊玉は命を吹き込まれたように輝き、灯の体を炎で包み込む。
少女の体に染み込んだ黒い淫液は蒸発したかのように消え、
本来の健康的な肌色をあぶり出す。
だが炎が完全なバトルスーツに変身する直前、激しい水流が襲来してそれを打ち消した。
人影は灯の体を守るように抱きかかえ、水流を割って飛び出した。
その身に着けていた暗緑色の寄生スーツが、体に付着した液体を自動的に吸い取る。
「これは驚いた。翠、あなたがまだ堕ちていなかったとは」
「清見……っ!」
翠と呼ばれた少女は、肩で息をしながら答えた。
彼女はもう一度清見を悔しそうに見つめ、それから灯を抱きしめて走り去った。
彼女の後ろ姿を冷ややかな目線で追いながら、
清見は自分の触手スーツに指先を入れて目玉を一つえぐり取った。
その青い眼球を、灯を閉じ込めた水玉の残滓にぽちゃんと落とす。
水溜りが怪しくうねると、そこから犬のような妖獣が立ち上がった。
化け物の体は常に波紋が揺らぎ、その顔面には清見の落とした目玉が青く光る。
「ゆけっ」
清見が短く命令すると、妖獣はバネのように地面を蹴り出した。
翠が踏みつけた跡に草花が生え渡った。
そこで異物を感知すると、植物は一斉に棘のある蔓を伸ばした。
縛り付けられた妖獣は、一瞬苦しそうにもがいたが、形勢はすぐに逆転した。
妖獣の表面の毒々しい粘液に触れていた植物は、
まるで濃硫酸を浴びせられたように枯れ始める。
そしてボロボロに黒ずんだ植物を力で千切り、妖獣が再び駆け出した。
398 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(2/20) sage 2013/06/16(日) 07:53:03.07 ID:CJ8TnpxM
翠はもともと満足に走れる状態ではなかった。
足元がふらついて、意識もおぼつかない。
一歩進むごとに貞操帯が股間に食い込み、その隙間から愛液がとろりと垂れ下がる。
今にも狂い出しそうな快感に、翠はその場でうずくまって体をまさぐりたかった。
それを我慢できたのも、懐にある灯の存在だからだ。
(せめて、灯だけでも……!)
翠は唇をかみ締め、その痛みで快楽をこらえた。
変身までさせられなかったが、灯を浸蝕していた黒液はだいぶ浄化できた。
自分が助かる望みはもはや皆無。
ならば、せめて親友だけでも助かってほしかった。
だが翠の覚悟を、妖眼蟲は許さなかった。
迅雷のごとく疾走する妖獣は、あっという間に翠達に追いついた。
一つ目が大きく輝くと、妖獣は翠の脚にがぶりと噛み付き、
首を回転させて引っ張った。
「っ……!」
激痛を感じるも束の間、翠はバランスを崩して倒れた。
牙の鋭い先端が脚を覆った触肉のブーツを貫き、その下にある肉体まで届く。
奮闘も虚しく、彼女は灯を投げ出して倒れ込んでしまった。
「呆れたわ。それほど強い淫気を発しながら、まだ抗おうとするなんて。
まあ、だから感心もするけど」
清見は寄生スーツに刺さった花びらを取り除きながら、悠々と翠の前へやってきた。
その冷徹な瞳は青く湛えながら、翠の艶姿を捉える。
とっくに限界に達しているのか、翠の触手服の寄生眼は頻繁に点滅し、
明暗を繰り返すと同時に宿主の体を震わせる。
スーツを組成していた肉布もほとんど触手に解放され、宿主の肌を自動的に撫で回した。
翠の肌に浮かぶ汗も赤く染まった顔も、見た者の欲情を十分に焚き付ける。
そして清見の言う通り、彼女の体から発する凄まじい淫気は、
取り込んだ者を一瞬にして色欲の虜にしてしまう。
何より滑稽なのは、翠が抑制しようとすればするほど、
色気がより官能的に高まることだった。
「あら、鈴華から戒めを受けたようね」
「っ……!」
清見が視線を移すと、翠は羞恥に満ちながら胸や股間のあたりを隠した。
美乳の先端につけられた金色のピアス。
陰部から臀部にかけて食い込んだ貞操帯。
ピアスと貞操帯を細い鎖で繋ぎ、白いうなじに装着された首輪。
キラキラ輝く金属の装飾品は、卑猥な触肉スーツとアンバランスな対照を作り、
少女の清純だった体を美しい娼婦に作り替える。
「妖眼蟲の下僕になるのがそんなに嫌なら、一人で逃げることだって選べたはずよ」
「仲間を見捨てることは……できません」
「おかしなことを言うわね。私が今の姿になったのも、そもそもあなたのせいなのに」
「ええ……すべてはあの時、私の心が弱かったせいです」
翠はひっそりと俯いた。
その顔は赤く染まりながらも、悔しい感情が滲んでいた。
「私のせいで、たくさんの人が犠牲になりました。その罪からただ逃げるために、
私は快楽に溺れようとしました。でも……あなたと再び会えたおかげで、
もう一度立ち上がる勇気を手にしたので」
「鈴華と一緒に、私と戦った時にか」
399 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(3/20) sage 2013/06/16(日) 07:55:47.27 ID:CJ8TnpxM
「あの時、清見ちゃんが奮戦する姿を見ていたからこそ、
自分の役目を思い出せたのです」
「その本人がこうして悪の味方となったのに?」
「だからこそ……清見ちゃんが私のような過ちを犯す前に!」
翠は拳を握り締め、凛とした眼差しで清見を見上げた。
体が淫気に蝕まれても、彼女が本来持つ凛々しさは埋もれることはなかった。
だが清見は一歩も気負いしなかった。
その正義心におされたのか、触手スーツも動きを鈍らせた。
だが清見は少しも気負しなかった。
彼女はむしろ翠に顔を近づけた。
その深海のような瞳に見つめられると、翠は唐突に寒気を感じた。
「素晴らしい……どんなに汚されてもなお自浄し、他人まで感化する心。
本当に綺麗だわ」
清見は感心したように言った後、一転して残酷な言葉を綴る。
「だからこそ、完全なる闇に染める価値がある。あなたほどの者なら、
どんな正しい心の持ち主であっても、悪に堕落させる誘惑者となれる」
「そんな……!」
自分の言葉はもう決して届かない。
そう思い知らされた翠は、谷底に突き落とされたような気持ちになった。
彼女の表情をよく鑑賞できるように、清見は顎に指を添えて持ち上げた。
「翠、ありがとう。あなたが私を思っていると同じに、
私もあなたのことを大事に思っている。だから心配しなくてもいいよ。
もう一度闇に心を委ねる快楽を思い出させてやる」
清見は青暗い瞳を輝かせ、手を振り上げた。
触手スーツの袖の部分は幾つかのミミズのように分裂して飛びかかった。
翠は目をつむった。
すでに一度は淫乱な性質を植えつけられた身と心は、簡単に屈してしまうだろう。
魂にまで刻み込まれた奴隷の呪縛に、もはや抵抗する勇気さえ無かった。
むしろ心のどこかにホッとするような安堵感さえあった。
(みんな、ごめんなさい……)
翠は謝罪とともに、諦めの言葉を呟いた。
その時。
一陣の砂の線が目にも止まらぬ速さで清見と翠の合間を横切る。
空中に放たれていた水触手は、一瞬にして乾ききって断裂した。
すぐ横の地面から、一つの人影がのろりと起き上がる。
水の隻眼獣はすぐさま翠から離れ、その人物に噛み付きかかった。
だが妖獣が口を開こうとした直前、咽喉元から掴み上げられた。
そして塩漬けされたナメクジのごとく全身から水分が抜けて、
目玉はひび割れながら爆ぜ散った。
清見は素早く後ろへ飛びのき、自分に向かって投げつけられた残骸を回避した。
砂と接触した寄生スーツは一瞬石化したが、
すぐにまわりの触肉に同化されて再び触手化した。
400 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(4/20) sage 2013/06/16(日) 07:58:01.64 ID:CJ8TnpxM
「翠、大丈夫か」
「ああ、平気よ……」
地面から抜け出た睦美は、苦悶をこらえる翠や、失神している灯を抱え起こす。
腐食液のせいで、妖獣をじかに掴んだ手のひらは軽いヤケドを負った。
しかし、睦美はその痛みなどまったく意に介さなかった。
彼女はただ岩盤よりも硬い目線を清見にぶつけた。
清見は逆に睦美の切り刻まれた戦闘スーツを観察した。
「ダメージを負っているようね」
「鈴華のおかげさ」
「逃げるつもり? 鈴華や私を置いて」
「できないことを挑むのは勇気ではない。残念ながら、
今の私にはあなたを抑えつつ鈴華に勝つ方法が思いつかない」
睦美はそう言うと、翠や灯を抱えたまま背を向けた。
その時、清見の背後の茂みから鈴華が駆け抜け出る。
彼女の触手スーツもまた、睦美と同じくらい損傷していた。
睦美は槍の雨に打たれたようだったが、
鈴華の場合は土砂崩れの中から掘り起こしたボロ雑巾のようだ。
「許さないんだから! 絶対捕まえて、この屈辱を晴らしてやるんだから!」
鈴華の小綺麗だった顔が泥にまみれ、怒りの形相をあらわにした。
彼女は身丈の倍ほどある矛を振り回し、穂先の先端を睦美の背中に狙い定めた。
だが睦美は振り返ること無く、霊呪を念じながら土を蹴った。
地面はその場で大きく盛り上がると、巨大な土の聖獣が瀑布のように涌き出た。
その表面に突き刺さった無数の刃や、そこから流出し続ける砂は、
今まで繰り広げた激戦を痛々しく物語る。
「すまない、土麒麟(どきりん)……最後の力を振り絞ってくれ!」
「そんなボロボロの姿で何の役に立つ!」
鈴華は全力で矛をはね上げ、動きが鈍くなった召喚獣に向かって飛びかかった。
穂先は豪快に一回転し、土麒麟の頚部に深くつらぬく。
鈍重な唸り声が森の木々を揺るがす。
ついに限界までダメージが達したのか、聖獣のあちこちから砂が血流のように迸った。
鈴華は容赦無く手首を返すと、土麒麟の首より上の部分が空中へと刎ねのけられた。
頭部を失った砂体はゆっくり横へと倒れていく。
「この堅物め! 体力だけはすごいんだから……」
完全に崩壊した砂の前で、鈴華はぜえぜえ息を変えながら矛にもたれかかった。
召喚獣の首は空中でぐるりと回転すると、ふと大口を開いたまま鈴華に向かって落下した。
だが、その最後の一撃は決して届くことは無かった。
横から一筋の水流が噴射して頭部を貫通すると、
今度こそただの土石となってに砕け散った。
「ふぇ、なに?」
降りかかってくる土砂に、鈴華は初めて気付く。
彼女の横まで歩んだ清見は肩をすぼめてみせた。
「だから昔から注意してやったのに。最後まで油断しないでって」
「おお、清見ちゃん! 無事寄生が終わったんだね。それより、睦美のやつは?」
「彼女達ならもうここにいない」
「えええっ!?」
清見が指差した方向を見ると、その地面には胴体が通れるくらいの穴があいていた。
鈴華は小柄な体を精一杯使って地団駄を踏んだ。
401 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(5/20) sage 2013/06/16(日) 08:00:27.78 ID:CJ8TnpxM
地中は、あらゆる追撃を阻む特殊な地形である。
そして五行戦隊の中で、睦美の土遁術がその唯一の移動手段であった。
この中でいる限り、睦美はどんな敵でも振り切れる自信があった。
例え二人分の人間を抱えて、スピードが大幅にダウンしたとしても。
睦美は魚のように地中空間を泳ぐ。
「翠、もう少し耐えてくれ。陽子先生が帰ってくれれば、きっと全てがうまくいくから」
「うん、ありがと……」
翠は瞳の焦点がぼやけながらも、健気に笑みを見せた。
その様子に胸を痛めながらも、睦美は無視せざるを得なかった。
地行術により、睦美は霊力を消費することで地中を一時的に通過することができる。
だが自分以外の物質を帯同する場合、術者への負担が何倍もの激しくなる。
普段よりずっと通過しにくい土質を感じながら、
睦美は集中力を高めて掘り進んだ。
突然、彼女の後方から一本の鉄索が猛烈な勢いで土を突き破った。
「なにっ!?」
睦美はすかさず方向転換したが、鎖はあたかも追尾するように経路を辿り続ける。
「睦美、鈴華が私を狙っているんだわ!」
翠は疼きに眉をしかめて叫んだ。
彼女の首輪や貞操帯に寄生した妖眼が、まるで鎖を呼応するかのように妖しく輝く。
睦美がいくらモグラのように地層を貫通しても、鎖は決して彼女達を見失わなかった。
そしてついに鎖はカチャリと翠の首輪を繋ぎ止めた。
途端、睦美は腕から凄まじい反発力を覚えた。
「ちっ……!」
そのまま地中を進みながら、睦美は必死に考えを巡らせた。
彼女のスピードに合わせて鉄索も無尽蔵に伸張してくる。
そして次第に、腕の中の重さが増え始めた。
(このままではまずい……!)
灯が健在していればこんな鎖すぐに断ち切れるだろうが、
自分の能力ではどれくらいかかるか予測できない。
そして彼女が止まった瞬間を狙って、鈴華は鎖を引き上げるだろう。
「睦美、灯ちゃんのことは頼みましたわ」
「翠?」
側から掛けられた励ましの言葉に、睦美は小さく驚いた。
そんな翠はニコッと優しい微笑を浮かべる。
「ごめんなさい。私が付いて来られるのがここまでみたいです。
でも、あなたが必ず悪を打ちかつことを信じていますから」
「翠、早まるなっ!」
睦美が阻止するよりも速く、翠は彼女から腕を離した。
掴み直そうと伸びた睦美の手は虚しくも届かない。
次の瞬間、翠の体は一気に後方へと引っ張られて、完全に見えなくなってしまった。
「くっ……!」
その場でとどまりたい気持ちを必死にこらえ、睦美は更にスピードを上げた。
402 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(6/20) sage 2013/06/16(日) 08:03:33.44 ID:CJ8TnpxM
□
地表の上で、清見が傘をさしていた。
傘の表面にいくつもの目玉が見開き、裏側からは激しい雨水が穴の中へと降り注いだ。
その傍らで、悔しがる鈴華と地面に伏せる翠の姿があった。
「もう、もう! あとちょっとだったのに」
「ぅん……!」
鈴華は手に持っている鎖を乱暴に振り回した。
鎖が揺れるたびに、首輪を繋がれた翠が苦しげな声を漏らす。
ふと、穴の中の水が逆流して雨傘の裏側に吸収されていく。
清見は傘を畳み、それを自分の触手服の中に押し込んだ。
傘はたちまち触手スーツの一部に同化し、傘にあった目玉はスーツの妖眼に戻される。
「清見ちゃん、どう?」
「完全にロスト。水が途中で地下湖に合流してしまった。途中で横穴を作って、
そこへ誘導されたんだろう。さすが睦美といったところかしら」
「きぃ――くやしい! 翠ちゃんが余計なことさえしなければ、
こんなことにはならなかったのに!」
鈴華が鎖を振るうと、翠は快楽と苦悶に呻いた。
「まあまあ。私は無事寄生されたし、翠も失わずに済んだ。
それだけでも十分な収穫だ」
「そうなんだけどさ……」
清見が冷静な態度を見せると、鈴華は好奇心に満ちた目線を向けた。
「清見ちゃんって寄生されたはずなのに、なんか前と変わらないね」
「どうなっていれば満足してくれるかしら」
「私や翠の場合は、すっごくエッチになったのに」
「そういう欲望なら、もちろん私にも植え付けられた。なんなら、体で試してみる?」
清見はそう言うと、両目を細めて指先を舐めとった。
青い触手スーツはにょろりと蠢き、半透明化した水の羽衣が肢体のラインを浮かばせる。
今まで冷静沈着なイメージから、絶対に想像できない狡猾さと蠱惑さ。
その挑発な目線に見つめられただけで、鈴華の心がドキッとした。
自分を見透かされたような妖しい冷たさに、
思わず被虐的な気持ちに陥ってしまいそうだ。
だが鈴華が清見の体に触れようとした途端、清見に頭を押さえつけられた。
「はい、そこまで」
「ちょっと、焦らさないでよ!」
「睦美と灯を捕まえるほうが先でしょ?
ちょうど翠がこちらの手にあることだし」
鈴華は一度落胆したが、睦美と灯の名前を聞いた途端、
また新しい悪戯を発見した子供の目になった。
「翠ちゃんを餌に二人をおびき出すつもり? ははっ、なんか悪役っぽくて面白そう」
「……私を人質にしても徒労ですわ」
翠は辛そうに首をあげて呟いた。
403 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(7/20) sage 2013/06/16(日) 08:06:17.46 ID:CJ8TnpxM
「睦美は正義を見失う人ではありません。私一人を救うために、
妖魔に屈することは決してないはずです」
「ああ。そういう意味では、私達五人の中で睦美が一番正義に近いだろうね」
「えっ?」
翠は清見を見上げた。
清見の両目は静かな水面のようで、何を考えているか分からない。
「だから人質を取るなら、あなたよりもっと都合の良い存在を選ぶ。
人数が多く、閉鎖環境で、妖力の源となる精気も取れやすく、
蟲の生産基地にもしやすい。そして、睦美達や私達が良く知っている人達」
「そんな都合の良い人質って……?」
清見の言葉を反芻する鈴華は、何か閃いたかのように顔をほころばせた。
(そんな……まさか!)
翠の心情が激しく揺れた。
彼女も鈴華と同様に、森の外に視線を向けた。
東側のどんよりとした空の底に、朝焼けの薄い赤色が見え始めた。
その方向上にある場所を想起した時、翠は心の奥から絶望と戦慄を覚えた。
□
暁の光が地上を弱々しく照らし、新しい朝を迎えたことを告げる。
雲の合間を抜けるのが精一杯だったのか、朝日の色合いは極めて曖昧なものだった。
その元気に欠けた光に、灯は意識を取り戻していく。
「ううっ……」
徐々に覚醒しながら、灯はゆっくりと目蓋を開けた。
ひどく堅い寝心地だった。
床の上で、自分は一枚の薄汚れた毛布を掛けて寝かされていた。
周りに目をやると、そこは久しく使われていない倉庫のような場所だった。
小屋の中に錆付いたパイプ椅子や机やらが所狭しと積まれる。
そのパイプ椅子の列を背にして、睦美は体育座りの状態で眠っていた。
古びた雨戸の隙間から光が漏れる。
(……助かった、のか)
灯は意識を回復させながら、物音を立てないよう起き上がった。
そして自分が被っていた毛布を睦美にそっと掛け、半壊した窓から外を眺めた。
道端にはバス停やガードレール、さらに下り坂が見えた。
坂道から視線を落とせば、商店街の一部が見えてくる。
素早く脳内地図と照合をとった。
ここは市街地に近い高台、森とは学校を挟んで反対側の位置にある。
丘からの町への見晴らしが良く、攻めにも守りにも適したポイントだ。
睦美らしい思慮深い選択と言える。
昨夜のことは、清見と戦ったことまでは覚えている。
だが自分がどうやって負けたか、その先の記憶がおぼろげだった。
睦美と翠が必死に自分を助けた記憶は印象にあった。
そういえば、一緒に脱出したはずの翠はどこにいるだろうか。
ふと灯は上着をめくり、自分のお腹を見おろした。
少女らしいすべすべした肌には、これといった変わりは無かった。
(あれは……夢か?)
何かおぞましい感覚が湧きそうになり、灯は慌てて思い出すのを止めて。
曖昧ながらも、自分の体が清見に何かされたような覚えはあった。
もし寄生されているのなら、一刻も早く睦美に知らせなければならない。
404 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(8/20) sage 2013/06/16(日) 08:17:30.83 ID:CJ8TnpxM
そう思って睦美を揺り起こそうとした時、その穏やかな寝顔が目に入った。
いつも堅物のイメージがある睦美だが、今ではまぶたを深く閉じて、
静かな寝息を立てて眠っていた。
しな垂れた頭から、白いうなじが無防備のまま晒し出される。
(睦美のやつ、こんな可愛かったのか)
灯は不覚にもトキメキに似た感情を覚えた。
スペースを譲るためか、体が小さく縮こまるところがまたしおらしい。
顔を近づけば、自分以外の女の子の良い匂いを感じる。
そんな時、灯の心臓が突然高鳴り出した。
下腹部に強い疼きを感じるや否や、全身に強い衝撃が立ち起こる。
(ちょっと、なに……!)
ハッとなって一度上着をはだけると、
なんと今度はヘソのまわりに薄っすらと妖眼の紋様が浮かび上がっていた。
子宮に甘い快感が生じるとともに、口から喘ぎが漏れそうになる。
(くうぅぅんっ!)
声が喉を通るのを必死に我慢しながら、灯は睦美から離れた。
赤い勾玉を握ると、瞬時に炎をまとったバトルスーツとなって身を包む。
すかさず両手で印を結び、体内から膨らむ妖気を封じ込めた。
素早い行動が功を奏したのか、
妖気の広がりはなんとかバトルスーツの内側に留まった。
しかし体のほうは沸騰したポットように、
抑え切れないほど膨大な淫欲が暴れ回る。
かすかな記憶の糸に、ある光景だけが力強く再生される。
自分を嘲笑する黒い影。
その口から紡がれる言葉には、悪魔の囁きのように甘い誘惑が満ちていた。
(百眼……さま)
ついに、心の中で復唱してしまった。
その言葉に口にした途端、
体中の細胞の一つ一つが震えて視界や意識が弾けそうになる。
本能が妖眼蟲のものにすり替わっていく。
淫気を集める。
胎内に宿る蟲を育む。
ほかの女を犯し、自分と同類のメスを増やしていく。
無意識のうちに、灯の虚ろになった瞳がある一点にとどまる。
睦美の寝顔だった。
こちらの邪念に気付くこともなく、ただ天使のような顔立ち。
――睦美を陵辱したい。
あまりにも自然と浮かんだ考えに、灯はビックリした。
下腹部に妖呪が現れてから、どす黒い疼きが神経を蝕み始めた。
心地良い脱力感とともに、全身の霊力が子宮のほうへと吸収されていく。
それに比例して、妖眼も淫紋がよりはっきりと浮かび上がる。
(まさか……霊力を妖気に作り変えている!?)
増大していく寄生の快感に、灯は唇をかみ締めた。
護霊服はもともと外からの攻撃を防ぐものであり、
内側の妖気に対しては一切機能しない。
405 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(9/20) sage 2013/06/16(日) 08:20:05.59 ID:CJ8TnpxM
ならば、自らの手で浄化するほか無い。
彼女は残る力を振り絞って、一枚の霊符を取り出した。
五行戦隊で一番解呪に長けているのは清見で、逆に灯は一番苦手としていた。
だが今はそんなことを言っている場合でもない。
下着をおろすと、布切れは甘い匂いの汁がたっぷりと沁み込んで、
股の間と蜜の糸を引いた。
羞恥心をぐっとこらえて、灯は妖気が発散する自分の股に霊符を宛がった。
だが彼女の予想に反して霊符は愛液に触れた途端、
墨汁を浴びたかのように一瞬にして黒く変色した。
御札の表面にある炎の霊言も妖しい目玉模様に上書きされ、
浄化するどころか、逆に強い妖気を放つ魔の札に変化した。
驚いたあまりに、灯は思わず黒化した霊符を握り潰して灰に燃やした。
なんて強力な呪詛だろうか。
動揺している間に、灯は重大なことを思い出した。
この呪詛を施した人物は清見である。
解呪の優れた彼女ならば、その対抗策を練ることだってできるはずだ。
(だめ、これ以上は……!)
奥から一際大きい鼓動を感じると、灯は高揚感のあまり体を抱きしめた。
そのまま背中を強く反らすと、陰部から愛液がほとばしる。
(なにか……出るっ!)
全身の力を吸い取られたように、灯に膣から一本の触手が生え出た。
細蛇のような触手は粘液にまみれ、淫らな香りをあたりに散らす。
異型が下からスカートを押し上げる光景は、
まるで正義の象徴をあざ笑っているかのようだ。
目の前が真っ暗になった気分だった。
(そんな……! 速く、元に戻さないと……)
朦朧となりかけた意識で、灯は触手をなんとか押し込めようとした。
だが指が一物の先端に触れた途端、脊髄に甚大な快感が跳ね返ってきた。
(ヒャアァ――くッッ!)
声を噛み殺すだけで精一杯だった。
指紋の一つ一つが鎌首をなぞる度に、快楽の火花が脳に焼きつける。
最初こそ刺激的だったが、それもあっという間に物足りない快感に変わった。
灯は恍惚の表情を浮かべて、スカートの下から触手をあらわにさせた。
表面の荒れた筋や見開く妖眼は、少女の可愛さと酷烈なコントラストを作り、
背徳さを一層際立たせる。
完全に解放されたせいか、むせ返るほど甘い淫気が外に漏れ出た。
これほど濃密な淫気が潜んでいたかと驚いたが、
すぐに心までその虜になってしまった。
硬くなった触手を握り締めただけで、熱さやドクドクした脈打ちが伝わってくる。
脳内にまたあの囁き声が現われる。
意識が薄れた灯にとって、それはあたかも己の意思のように聞こえた。
406 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(10/20) sage 2013/06/16(日) 08:22:50.68 ID:CJ8TnpxM
『速くそれを鎮めなさい。じゃないと、蟲が成長してしまうわ』
(うん。蟲の成長は、なんとしても阻止しなきゃ……)
『そのためなら、一時的に快楽を求めるのは仕方ないこと』
(うん、ちょっとだけだから……そうしなきゃ、もっと大変なことになるんだから)
『触手をシゴくのが気持ちいい』
(ううぅ、気持ちいい……!)
『でも、これは決して快楽のためにやっているわけではない』
(そう……あくまでも蟲の成長を防ぐためだから)
誘導された通り反芻しながら、灯は虚ろな目で触手をこすり始めた。
最初はゆっくり、段々速く。
次第に意識するまでもなく腕が勝手に加速していった。
どうすれば快楽が得られるか、どこがポイントなのか、
それら全て勝手に思い浮かんだ。
あとは見よう見真似て自分の手によって再現するだけ。
(……睦美……!)
友達の寝顔を見つめながら、灯は心中の欲望をギラギラと燃やし広げた。
生徒会長であり、強い信念を持つ睦美。
学校では誰からも憧れる存在だった。
だがその制服の下には、灯とは変わらない無垢で淫らな肉体が存在している。
彼女を汚したい。
力ずくで屈服させ、快楽を渇望するはしたない声で鳴かせたい。
そして彼女の子宮にも妖眼蟲を分け与え、
その端正な顔立ちが欲情に染まっていく様子を見たい。
とりとめのない罪悪感にさいなまれつつ、
灯はこれまで感じたことも無いような高揚感を味わった。
もうこれ以上考えてはならない。
頭の中で何度も警鐘が鳴り響いたが、そのたびに別の心地良い声によって揉み消される。
(睦美、ごめん……!)
仲間を裏切った意識に苦しみながらも、灯は止めることができなかった。
睦美を陵辱する光景を想像しただけで、脳みそが溶鉱炉のようにドクドクと滾った。
やがて爆発に差し掛かった直前、灯の下腹部の妖呪は最大限に黒く輝いた。
その時、灯は妖しい声に言われるがまま言葉を繰り返した。
(私は百眼様に寄生されたしもべ……
妖眼蟲をこの身に宿し、その繁栄のために全てを捧げます……!)
言葉を一字一句吐き出すにつれ、快楽の高潮が盛り上がっていく。
そしてついに、灯は意識が吹き飛ばすほどの絶頂を迎えた。
「うっ……くっ、かあぁっ……!」
全身の霊力が子宮に引き寄せられた。
体がビクビク震えた次の瞬間、触手陰茎から大量の濁液が発射された。
潰れそうになるほど抑制した喉の隙間から、悲鳴がかすれて弾き出される。
淫らな白液は自分だけでなく、睦美の護霊服までに飛び散った。
放心状態となった灯は、がっくりと地面に膝をついた。
触手陰茎はいつのまにか膣の奥へ引っ込み、気付いたらもう見当たらなくなった。
残るは汗だくの体と火照りと、胸に広がる虚しい気持ちだけだった。
親友をおかずに自慰してしまった罪悪感。
彼女のバトルスーツにぶっかけた粘液を目にしただけで、心が引き裂かれそうになる。
睦美が目を開けたのは、その時だった。
407 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(11/20) sage 2013/06/16(日) 08:26:00.86 ID:CJ8TnpxM
ギクッ、と灯が石膏像のように固まった。
だが睦美は立ち上がるや否や灯の背後に回りこみ、
右手から一粒の小石を弾き飛ばした。
小石は弾丸のように射出され、倉庫の入り口を跨ぐ一匹の妖眼蟲に命中する。
目玉を貫通されたスライム体はドロドロに溶け出し、床に小さな染み跡を残す。
「気を抜くな、灯。敵がいつ現れるか分からないから。
まあ一応結界を張ってはいたが」
「え、えっ?」
睦美に言われて初めて、灯は倉庫の四方にお札が貼られていることに気付く。
札自体の霊力は弱く、境界線を越えた妖魔を知らせるのが主な役目のようだ。
(って、睦美は気付いていないの?)
灯は慌てて睦美のバトルスーツを観察した。
白と褐色が織り成す正義の衣装は、睦美の凛とした雰囲気をより引き立たせる。
だが、その服にはさきほどの……
(あれ……?)
灯は急に戸惑った。
ついさっきまでの記憶が蒸発したかのように、ごっそり思い出せなくなった。
更にしばらくすると、どうして自分が戸惑っていのるかさえ分からなくなった。
ただ何か良くないことが進行している気がするが、
それを思い出すことを本能が拒絶しているようだ。
「灯、どうした?」
「ごめん……オレ、どうかしてるみたいだ。今までのことが曖昧で……」
「無理もない。昨晩、あんなことがあったから」
いや睦美、言いたいのはそれではない。
灯は改めて伝えようとした時、
ふと睦美のスーツの端っこにシミのようなものを見つけた。
そのシミは一瞬だけ触肉のように変化したが、二三度まばたきすれば消えてなくなった。
偶然じっと見ていなかったら、きっと錯覚だと思っていただろう。
だがその現象が一体何を意味するのか、灯にはどうしても思い出せない。
「灯、大丈夫か?」
「あっ、うん……助けてくれて、ありがとう」
「体に目立った外傷は無かったが、しばらくは無理しないほうがいいだろう」
「ああ、そうさせてもらうよ」
灯は自分の口から出てくる言葉に混乱した。
彼女が考えるよりも速く、まるで誰かに操られているように勝手に言葉を綴った。
肝心なのは、睦美は何も気付いていないことだ。
しかし、一体何に気付けというのか?
「どうしたの?」
「いいえ……それより、翠はどこにいるの」
灯は考えを巡らせながらも、話題を逸らすように尋ねた。
だが意外なことに、睦美の視線が俯いた。
「ちょっと、翠はどうした? アイツと一緒にオレを助けたんだろ?」
「敵に捕らえられてしまった。私達を守るために」
「そんな……!」
灯は呆然となった。
つらい気持ちがぐっと込み上がって来る。
408 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(12/20) sage 2013/06/16(日) 08:29:01.25 ID:CJ8TnpxM
睦美は表情を強張らせたまま、言葉を続ける。
「大丈夫ならもう少し休んでおけ。昼になれば妖魔の動きも鈍くなる。
その隙にここを出る」
「なんだと?」
「妖眼蟲の活動範囲がすでにここまで拡大した。さっきは一匹だけだが、
敵に察知されるのも時間の問題だ。その前に町を出て、一度陽子先生と合流……」
「ふざけるな!」
灯は大きな声をあげて、灼熱のような目つきで睦美をねめつけた。
「今オレ達が離れたら、誰が町を守る? 誰が妖魔と戦う?
誰が鈴華や清見や翠を助ける? みんなを見捨てるというのか!」
「見捨てるわけじゃない。先生は三日後に退魔機関の本部から返ってくるはずだ。
そこで体勢を直してから、またここに……」
「戻って妖魔を退治するっての? ハハンッ……! 三日も経ったら、
この町にどれだけの犠牲者が増えると思ってる?」
「だからと言って現状ではこちらに勝ち目は無い。鈴華と清見が敵になった時点で
こっちとは二対二。その上、敵には大勢の妖眼蟲だっている。
もし翠までが敵の戦力になっていたら、完全にこちらの劣勢だ」
「勝ち目が無ければ戦わないのか?」
「今回が特別すぎるのだ。私達が負ければそのまま敵の戦力を増やすことを意味する。
それよりも今私達が知っている妖眼蟲の情報を、退魔本部に知らせることが重要だ」
「要するに負けるかもしれないから、尻尾を巻いて逃げるってことだろ?」
灯は睦美の襟元を掴み取った。
その烈火にも勝る気迫を、睦美は逆に睨み返した。
「五行戦隊に入った時から、この命を捨てる覚悟ができている。
私が何よりも怖いのは、このまま誰にも知られること無く、
妖眼蟲の侵略を許してしまうことだ」
睦美の毅然とした表情はまるで頑固な岩から掘り出されたように、
灯の激怒に対し微動だにしなかった。
彼女のまっすぐな目線にひるんだのか、
やがて灯は手を離し悔しそうに顔を言葉を吐き捨てた。
「くっ……あとでオレに反省させてくれよな。
あの時お前の言うことを聞いて、やっぱり正解だったと」
「灯……!」
「納得したわけじゃないからな! ただ睦美のことは信用しているというだけで」
灯は不器用そうに背を向けた。
目の前の犠牲を我慢できるほど、灯は融通の利いた人間ではなかった。
しかし、彼女は睦美の性格をよく知っていた。
その睦美が信念を曲げてまで決めた選択を、無下にすることができなかった。
ある異変が起きるまでは。
突如、床に広がっていた水の残滓が変色した。
灯と睦美は咄嗟に構える。
妖眼蟲が残した水溜りに波紋が広がると、ぐにゃりぐにゃりと揺らぎながら、
一つの明瞭な映像に変化した。
飛び出さんばかりに、小柄なシルエットがそこに現われる。
409 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(13/20) sage 2013/06/16(日) 08:31:21.88 ID:CJ8TnpxM
『ハ~イ。灯と睦美、見てる?』
「鈴華……!」
驚きに怒りを交えて、灯は仲間だった人物の名前を呼んだ。
水の鏡面には、鈴華の明るい笑顔がいっぱいに映し出される。
もともとある小悪魔な魅力も、
その暗黄色の触手スーツによって淫らに仕立てられた。
『この映像はね、清見の能力で蟲に封じたものなの。
コアを破壊すると、映像が再生されるってわけ。あっ、それじゃあ
この蟲さんはもう殺されちゃったってことかな? あーあ、残酷ぅ~』
映像の中の鈴華はわざとらしく両手を広げてため息をついた。
悪戯っぽい言動は、以前の彼女の快活さを思い出させる。
それが余計に灯の怒りに触れた。
「この……っ!」
「待て、これはただのビジョンだ。破壊しても意味は無い」
飛びかかろうとする灯を睦美が抑制した。
その間にも、鈴を鳴らしたようなかわいい声が小屋に響き続ける。
『ところで、私は今どこにいるでしょう?』
唐突な問いに、灯と睦美は初めて映像の背景に注意を払った。
鈴華の足元を走る白いコンクリートの床。
曇り空へと続く間には、落下防止用の欄干が見える。
それらの景色を照らし合わせると、二人の顔色が激しく変わった。
『正解は、学校の屋上でーす!』
鈴華が手を伸ばすと、映像の視界が後ろの景色を映し出す。
屋上から見える校舎や校庭、そして登校するのに使う通学路。
灯や睦美にとって、どの場所も生活の一部だった。
『さて、今回のゲストを紹介しましょう』
映像の枠外から、鈴華が一人の少女を押し込んだ。
体操着を身に着けた少女は、事情がまったくのみ込めない様子でただ半べそをかいでいた。
彼女の顔立ちを確認した途端、灯はきょとんとなった。
「そんな……祥子!?」
『とりあえず、自己紹介してもらおうかしら。
クラス、氏名……あっ、カメラ目線はこの目玉にね』
『ふぇぇ……に、二年、B組……滝沢祥子、です』
『ところで、あなたはなんてこんな朝早くから学校にいるの?』
『私……陸上部だから、朝練で……』
『まあ可哀相に。真面目に朝練に来たばかりに、こんな目に遭っちゃうなんて。
でも刺激的だったでしょ? あなた以外の女の子達が、
みんな触手に愛撫されてアンアン鳴いていたのを』
『ひ、ひぃ……!』
少女は途端に怯えきった様子に陥った。
鈴華が意地悪そうに笑みを浮かべると、寄生スーツから幾本もの触手が分裂して、
少女の体や頬にまき付いた。
その触手がよっぽどトラウマなのか、少女は逃げることも大声を出すこともできず、
ただほっそりとした体をわななかせた。
410 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(14/20) sage 2013/06/16(日) 08:35:05.36 ID:CJ8TnpxM
『あなたをここに連れてきたのは、実はこれから祥子ちゃんに寄生してもらって、
それをテレビの前の人に見せるためなんだ。
すごく気持ちの良いものだから、怖がらなくてもいいよ』
『き……せい? い、いやぁ……』
恐怖のあまりに、少女の悲鳴はかすれた。
その様子を楽しんでいるかのように、鈴華は得意満面の表情を作る。
『今だけサービスタイム! 特別に寄生の方法を選ばせてあげるわ。
私の首輪や貞操帯に責められたい?
それとも清見ちゃんの精液風呂に浸かりたい?』
『い、いや……!』
『ああん、どっちも気持ち良さそうで選べない!
――そんな優柔不断なあなたに、こちらがオススメ!
私と清見ちゃんの能力をハイブリットさせた真新しい寄生法!』
じゃじゃん、と鈴華は意気揚々と身辺にある物体を示した。
金属製の棺桶のような鋳物が鈴華の横で直立していた。
その物体は鈴華の背丈よりも高く、正面には女体の輪郭がかたどられ、
不気味な雰囲気は中世の拷問器具を連想させる。
鈴華が扉を開くと、中が空洞であることが分かる。
だが目を良く凝らして見ると、そこに恐ろしい光景が潜んでいることに気付く。
金属の裏側には、びっしり埋め尽くす触手が存在していたのだ。
『ひ、ひゃああっ……!』
あまりにもおぞましい景色に、少女の声がうわずった。
金属の裏側から絶え間なく粘液が滴り、空洞内の空気と触手を濡らせる。
外からの光を感知したか、触手は緩慢な動きで伸び始めた。
触手の表面には不気味な目玉がぎょろつき、淫液が糸を引いて垂れ落ちる。
その淫液が床と接触すると、その場を黒く染み広がった。
画面越しでも、灯や睦美にはその匂いが漂って来るように感じた。
一目見ただけで、今までずっと強い寄生能力が備わっていることが分かった。
彼女達ほどの退魔士とて、護霊服が無い状態で長く閉じ込められたら、
寄生支配されてしまいそうだ。
触手の目玉は獲物に気付いたかのように、一斉にぎょろりと女学生を見つめる。
『きゃあっ……!』
『ああん、そんな熱い眼差しで見つめないで、私もう濡れちゃうわ!……あはは。
まあ、恨むなら私達じゃなくて、五行戦隊を恨みなさいね』
『五行……戦隊?』
その言葉を聴いた途端、少女の瞳に一筋の希望が輝いた。
五行戦隊の活躍は、都市伝説のように生徒達の間で囁かれていた。
少女自身も興味半分知っていたが、本物の妖魔を見た今、
その存在は彼女にとって唯一の希望だった。
『五行戦隊は知っているんだ。じゃあ、そのうちの一人の名前が灯で、
あなたと同じ陸上部の子であることは知ってるの?』
『あ、灯ちゃん……!?』
411 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(15/20) sage 2013/06/16(日) 08:38:02.99 ID:CJ8TnpxM
『うん。そもそも私達がこの学校を襲った理由は、彼女がここの生徒だからなんだよ。
ちなみに、あなたは彼女との関係は?』
『と、友達なんです……』
『おおう、友達! なんという幸運! じゃあぜひ彼女の助けを呼ばないと。
もしかしたら、今この瞬間もあなたのピンチを見ているかもしれないよ。
ねぇ灯ちゃん、聞こえてる? 速く助けに来ないとこの子をこの拘束具の中に入れて、
触手ちゃん達にレイプさせちゃうわ』
『い、いやああぁぁ!』
「この……!」
灯は拳を強く握り締めた。
そうでもしないと、膨れ上がる怒りを抑えられなかった。
『おかしいね。友達がピンチなのに、全然来ないじゃない。
ほら、あなたも呼ぶのを手伝ってよ。灯ちゃん、助けてって』
『あ、灯ちゃん……た、助けて……』
『もっと大きな声出してみたら? ほらほら、触手ちゃんがあなたを欲しがってわよ』
自分の身にどんどん近付く触手に、
少女は目に涙を滲ませながらはち切れんばかりの声で叫んだ。
『灯ちゃん、お願い! 速く助けに来て!』
『……全然来る気配が無いね。
どうやらあなたは彼女にとって、人質の価値も無かったみたいだね』
『待って、もう少し待って下さい! 彼女は絶対来ます! だから……』
少女が言い終わるのを待たずに、鈴華は指を鳴らした。
すると空洞の中から無数の触手が飛び出て、少女を体操着の上から絡め込んだ。
粘液が体操着に染み込むと、瞬時に黒い粘質に染め替えた。
『いやああああ!』
触手がそのまま少女を空洞に引っ込むと、
金属の蓋はバタンと閉まり、中からの悲鳴をシャットアウトした。
棺桶の蓋の輪郭がぐにゃりと歪み、
顔の形から足先まで少女にピッタリフィットするよう変形していく。
その作業が終わって固定化すると、拘束具はまるで少女に銀メッキを施したかのように、
体のラインを生々しく浮かび上がらせた。
金属の光沢が映える胸の谷間や、股間の陰り。
生気を失った顔立ちに伝わる怯えた感情。
それらは不気味ながらも、どこか官能的な雰囲気を醸した。
『はい、新しい寄生者の誕生です。ふふふ、大丈夫。あなたがそこから出る時は、
今よりもっとずっと素敵なメス奴隷になれるわ』
鈴華は妖しい笑みを浮かべ、鉄になった少女の胸をいやらしく撫でた。
灯は外に向かって歩き出した。
それを予測したのか、睦美は間髪入れず灯の肩を捕まる。
「冷静になれ。この映像は今よりも前に撮ったはず。
今駆けつけたところで、彼女はもう……」
「だからなんだって言うの? 今この瞬間にも、犠牲者が増えているんだぞ!」
「見て分からんのか。敵はわざと私達を挑発してるのよ!」
412 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(16/20) sage 2013/06/16(日) 08:43:51.85 ID:CJ8TnpxM
二人の諍いをよそに、水の鏡面に青い触手服をまとった人物が映し出された。
彼女の切れ長の目は深淵の湖のように静けさを帯びる。
右手を差し出すと、手のひらに乗せてある水色の妖眼蟲を見せつけた。
そして彼女の口から無情な言葉が紡がれる。
『今日の正午、蟲達を屋上の貯水槽に放つ』
「清見……!」
「どういうこと?」
睦美達の反応に構うこと無く、青い寄生少女は冷酷な口調で語り続けた。
『私が産み出した寄生種は、水に触れただけで無色透明に溶ける。
その水を摂取することで、ここにいる人間は一斉に寄生されることだろう』
「そんなことしたら……!」
灯は愕然となって、清見の手の中にあるガラス球を見つめた。
妖眼蟲の核である眼球は、光を反射してみずみずしく輝く。
別物だと頭の中で分かっていても、どうしても人間の目玉を連想して嫌な気分になる。
『その液体は人間に害は無いわ。むしろ免疫能力が強くなって、
健康状態が向上するくらいだわ。私が念じない限り体内にずっと潜伏状態でいるから、
普段の生活に支障を出すことも無い。それこそ霊力による精密検査でもしない限り、
普通の人間と違いが分からないくらいにね』
「そんな馬鹿な!」
睦美はぞっとしたように声をあげた。
ただでさえ妖眼蟲の発見はしにくく、その高い寄生力と繁殖力で人間を脅かしてきた。
それが新たに潜伏能力を得たら、
感染が広がる前に発見することが更に難しくなるだろう。
『兆候がまったく無いわけでもない。これに寄生された人間は、
繁殖本能が物凄く強くなる。そして、彼らと体液を交換した――
すなわち性交した人間もまた、同じ寄生状態になってしまう』
「それってつまり、感染が速く広がるってことじゃないか!」
灯のつっこみを無視して、清見は淡々と続ける。
『ここでの実験が終わったら、この寄生種を全国の水道局や河川に流す予定だ。
戦いを起こさず、人々が幸せの中で寄生される。
とても平和なアイディアだと思わない?』
予想を遥かに上回る計画性に、灯と睦美は背中に冷え汗を流した。
もし清見の目論見が達成されたら、被害規模はもはや町だけでは済まない。
日本はもちろん、世界中の人々が妖魔に支配されてもおかしくないだろう。
『じゃあ、私と鈴華は学校で待ってくるから。
正義の味方さんなら、こんなことを許すはずないわよね?』
最後に清見が嫌味っぽい薄笑みを残すと、映像はそこで途切れて元の水溜りに戻った。
倉庫の中は再び静かになる。
睦美は自分が掴んでいるのは人間の肩ではなく、高熱に焼かれた鉄板のような気がした。
手のひらに伝わる温度は、映像が終わった後も上昇し続けた。
「落ち着いて、灯……」
「こんなもの見せられて、誰が落ち着いていられるか」
灯は睦美の手を振り払い、それまで溜め込んだストレスを一気に爆発させた。
413 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(17/20) sage 2013/06/16(日) 08:48:38.49 ID:CJ8TnpxM
「睦美が行きたくないならそれでいい。だがオレは絶対行くからな!」
「このまま君が敵の戦力になるのを知って、行かせるわけにはいかない」
「ふざけるな!
だいたい最初に鈴華が敵に捕らわれたのも、睦美のせいじゃないか」
言い終わって、灯はハッとなって後悔した。
睦美は明らかに落ち込んだのだ。
決して弱みを見せない睦美が、潮水に摩滅された石のような表情を浮かべた。
そこでやっと、灯は最近の睦美がどういう心境だったのか理解できた。
鈴華の寄生を発端に始まった一連の事件。
睦美はずっと鈴華のことで自分を責めていたが、
みんなの前では一切素振りを見せなかった。
その気丈さに感心すると同時に、灯は自分の鈍さに慙愧した。
すぐに謝ろうと口を開いた。
だがその瞬間、灯に灯の脳内に妖しい目線が蘇る。
どす黒い感情とともに、口から出た言葉は彼女の意思とまったく逆のものだった。
「睦美にそれを言う資格はあるのか? あの時、あなたが鈴華と一緒に戦っていれば、
鈴華が寄生されることは無かったはずだ。
翠だって、どうせ睦美が彼女のことを見放したんでしょ?」
「……!」
灯が放った言葉は、次々と睦美の心を傷つけた。
その消沈していく様子を目にするだけで、灯は胸を締め付けるような痛みを感じた。
だがその一方で、腹の奥ではまったく異質の快感が膨れ上がった。
――もっと睦美の苦しむ表情が見たい。
その邪悪な感情が下腹部の疼きと合わさって、体中にじんわりと広がっていく。
何かがおかしかった。
(だめ……このままだと、もっと酷いことを口に言ってしまう……!)
興奮の汗が体中から涌き出る。
狂乱する心臓の鼓動を抑えながら、灯は睦美に背中を向け外へ走り出した。
睦美の弱くなる姿を見ただけで邪悪な欲望に支配されそうになる。
頭の中で、誰かに呼ばれているような気がする。
それに答えてしまったら、大事なものを失ってしまいそうだ。
時間が進むにつれ、呼び声の間隔が縮まって灯の心を揺らし始める。
ぼやけていく頭の中で、最後まではっきり保った意識が一つだけあった。
(……ここにいたら、睦美まで……巻き込んじゃう)
そう感じると、灯は目が虚ろになったまま呼び声の方へ駆け出した。
彼女の行動を、睦美は止める事ができなかった。
「クソッ……!」
睦美は床に膝をついて、やりきれない表情で拳を振り下ろした。
思考が麻のごとく乱れていく。
414 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(18/20) sage 2013/06/16(日) 08:50:49.00 ID:CJ8TnpxM
灯の選択は正しいかもしれない。
翠は捕まってしまったが、今ならまだ完全支配されていないはず。
鈴華と清見が敵側にいるとはいえ、灯と協力すれば戦い方次第勝てるかもしれない。
だがもし翠が敵に加勢したら、勝率は限りなく低くなる。
仕掛けるとしたら、今が最後のチャンスだろう。
このままほうって置くと、ミスミス灯を敵の手に渡すようなものだ。
だが自分まで負けて寄生されたら、敵を更に増長させてしまう――
睦美はできるだけ灯の言葉を考えないようにした。
だが避ければ避けるほど、灯のセリフが頭にまとわり付いた。
今の彼女には、行動を起こす余裕の欠片も無かった。
灯を阻止することも。
妖眼蟲の残骸以外の微かな妖気に気付くことも。
空は一段と濃厚な黒雲に覆われ、霧雨に町が煙り始めた。
その中には、学校の建物も含まれているだろう。
どんよりとした町景色を眺めていると、睦美の心は急激に寂しさを覚えた。
今ほど太陽の光が恋しいと思った時はない。
□
メッセージを伝え終えると、清見は妖眼蟲の核を貯水槽に放り投げた。
水に触れた途端、妖眼は溶け広がり、ほのかな残り香を漂わせる。
その無造作な行動に、鈴華は瞳を大きく見開かせた。
「えええ、睦美達が来るまで、人質にとっておくじゃなかったの?」
「人質というのは彼女達の認識であって、私達とは無関係な話。そうでしょ?」
清見は淡々と答えた。
彼女の近くにいた四人の少女が男達の剛直から離れ、
頬や肌に快楽の余韻を残しながら貯水槽の周囲に集まった。
少女達は蓋のまわりでしゃがみ込むと、その股の間から白い粘液が太ももを伝って滴る。
いずれの少女も裸に近い格好で、艶かしい肢体に淫靡な触肉がまとい付いた。
そんな異様な光景にも関わらず、少女達は誰一人怯えた様子もなく、
陶酔しきった目つきで自分達の股間をまさぐり始めた。
魂をとろかすような喘ぎ声とともに、新たな寄生のコアが貯水槽に産み落とされる。
清見の口から嘲弄の意図を悟ると、鈴華は面白そうにまばたきをした。
「灯達が必死に助けようと来てみたら、実は全員すでに私達の奴隷だった!ってオチ?
きゃはは……清見ちゃんって、実は悪役のほうが向いてるんじゃない?」
「正義は決して悪に勝てない。その理由は、
悪は目的のためにどんな作戦も実行できるが、正義にはそれができない。
だから私のような人間は、最初から悪の側にいるべきだった」
清見は冷静に語りながら、部下となった少女達の働きを見守った。
少し前まで、彼女達は普通の女子高生だった。
それが今では、清見に従う忠実なしもべとなった。
学校の屋上には寄生の棺以外に、十数人もの男女が乱交を繰り広げていた。
「くくく……灯と睦美の絶望した表情、今からでも想像するだけでゾクゾクしちゃう。
あなたもそう思わない、翠ちゃん?」
鈴華は自分が腰掛けていた棺を開けると、喘ぎ声のボリュームが大きくなった。
中には一人の少女が鎖に縛られ、半身が白い粘液に浸かっていた。
415 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(19/20) sage 2013/06/16(日) 08:54:01.74 ID:CJ8TnpxM
棺を開けた瞬間、むせ返るような甘い発情臭が外に漏れ出る。
彼女の暗緑色の寄生スーツと棺の裏側に生えた触手が絡め合って、
絶妙な加減で女体を撫で回る。
股間につけてある貞操帯の隙間から絶えず愛液が溢れ出て、
白粘液風呂と混ざり合った。
「翠の体からすごく良い匂いがするわ……これほどに性欲を高められるなんて、羨ましいわ」
「ぐぅん、うぅんんん!」
鈴華が翠の胸の谷間に鼻を埋めると、翠は大きく物音を立てた。
彼女は首輪やボールギャグを装着された状態で、両目も眼帯に覆われていた。
眼帯の表面には水色の目玉が一つ輝き、その点滅と同調して少女の体が震え上がる。
手足まで縛られた彼女には、悶える以外の行動が許されなかった。
「今すぐにもイキそうだね」
「普通の人間ならとっくに狂い出す状況だが、翠の精神力はさすがのものだ。
そのおかげで、みんなの洗脳時間を大幅に短縮できた」
清見は感心したように翠の姿を眺めた。
床に置かれた棺同士の間に太い触手が繋がり、その中心に翠の棺が位置していた。
翠が悶えるたびに、触手間に信号のような光が転送されていく。
「今の翠ちゃんは、自分が寄生された時の記憶を、繰り返し見せられているんだよね?
わざわざ寄生前の心情に戻されて、何度も堕ちた瞬間が味わえるなんて」
「その記憶をほかの寄生者に見せることで、強制的に堕ちた時の心情を学習させていく。
そうして、短時間のうちに高いレベルの寄生者が産み出せる」
「良かったね、翠。百眼様のために、挽回のチャンスがもらえて」
鈴華はそう言って翠の口からボールギャグを外し、
そこにベットリとついた唾液を舐め取った。
口が自由になった途端、翠は悲鳴に近い声で叫んだ。
「お願い、もう許して! もう二度と逆らうことなんて考えないから
……だから、イカせて!」
首を左右に振って懇願する少女。
懸命に身を捻らせるも、全身を拘束された今、それは更なる欲情を煽る行為でしかなかった。
だが今の翠には、それに気付く余裕さえ持たなかった。
「翠ちゃんは反省中なんだから、イカせるわけないじゃん」
「そんなこと言わないで! 全て私が悪かったです……
百眼様のためなら何でもします、鈴華や清見の命令だって何でも従います! だから……」
「その言葉に偽りは無いのだな?」
清見は翠から目玉の眼帯を剥ぎ取り、その顔を晒した。
淫欲に潤んだ虚ろな目は、媚薬に盛られた淫婦のように焦がれていた。
「は、はい……!」
「じゃあ手始めに、この学校を蟲達の苗床に作り変えてもらおうか。
そうすれば、あなたが期待する快楽も得られるだろう」
「えっ……きゃあああああ!?」
清見が貞操帯に足先を乗せると、翠は魂消るような叫び声を上げた。
絶頂に達しないギリギリの快感が翠の全身を震わせる。
416 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(20/20) sage 2013/06/16(日) 08:56:47.61 ID:CJ8TnpxM
「いいのか、清見」
「灯と睦美は必ずここに来る。彼女達を歓迎するためにも、
翠の調教を終わらせてやらないと。正義の心が腐ってしまうくらい、
快楽の蜜液に浸して……!」
「ひゃあ、怖い怖い」
鈴華はペロッと舌を出した。
清見は敵としては手強いが、味方となればこれ以上心強いものはない。
彼女の心に宿る黒い興奮を感じると、鈴華も邪悪な笑みを浮かべた。
― つづく ―
森の中で、清見は暗い青色の寄生スーツを身にまとっていた。
性交後の余韻を象徴するかのように、露出した肌の部分から淫靡な香りが漂う。
半液状の触手達が汗ばんだ肉体を愛撫する。
だが、彼女の顔立ちはいつもの無表情に戻っていた。
清見は抜け目の無い人間である。
例え妖魔のしもべになった今でも、その性格が変わることは無かった。
だから足元から違和感を覚えた瞬間、清見はすかさず体を横へと滑らせた。
やや遅れて一本のツタが地表から跳ね上がり、彼女の足元を空振る。
地面はいつの間にかイバラの大群に覆われていた。
赤い花が満開すると、血のような花びらの旋風が巻き起こる。
清見は咄嗟に顔面を両腕でガードした。
体を覆った触手スーツは瞬時にバリアのように広がり、
接着剤のごとく花びらを粘つける。
だがその隙に、木の上から一本の蔓が伸び出て、
清見の腕から烈火の勾玉をはたき落とした。
一つの影が飛び出て、勾玉を空中でキャッチすると、
そのまま清見の後方にある巨大水玉へと駆けつけた。
その人影は木の槍を掲げ、全力で巨大水玉の表面に突き刺した。
ブスッという異音とともに、水玉の大目玉から無数の黒液が噴き出る。
木の槍を放った人物は躊躇すること無く、その中から灯を引っぱり出し、
赤い勾玉をその胸にかざした。
主人を認識した霊玉は命を吹き込まれたように輝き、灯の体を炎で包み込む。
少女の体に染み込んだ黒い淫液は蒸発したかのように消え、
本来の健康的な肌色をあぶり出す。
だが炎が完全なバトルスーツに変身する直前、激しい水流が襲来してそれを打ち消した。
人影は灯の体を守るように抱きかかえ、水流を割って飛び出した。
その身に着けていた暗緑色の寄生スーツが、体に付着した液体を自動的に吸い取る。
「これは驚いた。翠、あなたがまだ堕ちていなかったとは」
「清見……っ!」
翠と呼ばれた少女は、肩で息をしながら答えた。
彼女はもう一度清見を悔しそうに見つめ、それから灯を抱きしめて走り去った。
彼女の後ろ姿を冷ややかな目線で追いながら、
清見は自分の触手スーツに指先を入れて目玉を一つえぐり取った。
その青い眼球を、灯を閉じ込めた水玉の残滓にぽちゃんと落とす。
水溜りが怪しくうねると、そこから犬のような妖獣が立ち上がった。
化け物の体は常に波紋が揺らぎ、その顔面には清見の落とした目玉が青く光る。
「ゆけっ」
清見が短く命令すると、妖獣はバネのように地面を蹴り出した。
翠が踏みつけた跡に草花が生え渡った。
そこで異物を感知すると、植物は一斉に棘のある蔓を伸ばした。
縛り付けられた妖獣は、一瞬苦しそうにもがいたが、形勢はすぐに逆転した。
妖獣の表面の毒々しい粘液に触れていた植物は、
まるで濃硫酸を浴びせられたように枯れ始める。
そしてボロボロに黒ずんだ植物を力で千切り、妖獣が再び駆け出した。
398 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(2/20) sage 2013/06/16(日) 07:53:03.07 ID:CJ8TnpxM
翠はもともと満足に走れる状態ではなかった。
足元がふらついて、意識もおぼつかない。
一歩進むごとに貞操帯が股間に食い込み、その隙間から愛液がとろりと垂れ下がる。
今にも狂い出しそうな快感に、翠はその場でうずくまって体をまさぐりたかった。
それを我慢できたのも、懐にある灯の存在だからだ。
(せめて、灯だけでも……!)
翠は唇をかみ締め、その痛みで快楽をこらえた。
変身までさせられなかったが、灯を浸蝕していた黒液はだいぶ浄化できた。
自分が助かる望みはもはや皆無。
ならば、せめて親友だけでも助かってほしかった。
だが翠の覚悟を、妖眼蟲は許さなかった。
迅雷のごとく疾走する妖獣は、あっという間に翠達に追いついた。
一つ目が大きく輝くと、妖獣は翠の脚にがぶりと噛み付き、
首を回転させて引っ張った。
「っ……!」
激痛を感じるも束の間、翠はバランスを崩して倒れた。
牙の鋭い先端が脚を覆った触肉のブーツを貫き、その下にある肉体まで届く。
奮闘も虚しく、彼女は灯を投げ出して倒れ込んでしまった。
「呆れたわ。それほど強い淫気を発しながら、まだ抗おうとするなんて。
まあ、だから感心もするけど」
清見は寄生スーツに刺さった花びらを取り除きながら、悠々と翠の前へやってきた。
その冷徹な瞳は青く湛えながら、翠の艶姿を捉える。
とっくに限界に達しているのか、翠の触手服の寄生眼は頻繁に点滅し、
明暗を繰り返すと同時に宿主の体を震わせる。
スーツを組成していた肉布もほとんど触手に解放され、宿主の肌を自動的に撫で回した。
翠の肌に浮かぶ汗も赤く染まった顔も、見た者の欲情を十分に焚き付ける。
そして清見の言う通り、彼女の体から発する凄まじい淫気は、
取り込んだ者を一瞬にして色欲の虜にしてしまう。
何より滑稽なのは、翠が抑制しようとすればするほど、
色気がより官能的に高まることだった。
「あら、鈴華から戒めを受けたようね」
「っ……!」
清見が視線を移すと、翠は羞恥に満ちながら胸や股間のあたりを隠した。
美乳の先端につけられた金色のピアス。
陰部から臀部にかけて食い込んだ貞操帯。
ピアスと貞操帯を細い鎖で繋ぎ、白いうなじに装着された首輪。
キラキラ輝く金属の装飾品は、卑猥な触肉スーツとアンバランスな対照を作り、
少女の清純だった体を美しい娼婦に作り替える。
「妖眼蟲の下僕になるのがそんなに嫌なら、一人で逃げることだって選べたはずよ」
「仲間を見捨てることは……できません」
「おかしなことを言うわね。私が今の姿になったのも、そもそもあなたのせいなのに」
「ええ……すべてはあの時、私の心が弱かったせいです」
翠はひっそりと俯いた。
その顔は赤く染まりながらも、悔しい感情が滲んでいた。
「私のせいで、たくさんの人が犠牲になりました。その罪からただ逃げるために、
私は快楽に溺れようとしました。でも……あなたと再び会えたおかげで、
もう一度立ち上がる勇気を手にしたので」
「鈴華と一緒に、私と戦った時にか」
399 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(3/20) sage 2013/06/16(日) 07:55:47.27 ID:CJ8TnpxM
「あの時、清見ちゃんが奮戦する姿を見ていたからこそ、
自分の役目を思い出せたのです」
「その本人がこうして悪の味方となったのに?」
「だからこそ……清見ちゃんが私のような過ちを犯す前に!」
翠は拳を握り締め、凛とした眼差しで清見を見上げた。
体が淫気に蝕まれても、彼女が本来持つ凛々しさは埋もれることはなかった。
だが清見は一歩も気負いしなかった。
その正義心におされたのか、触手スーツも動きを鈍らせた。
だが清見は少しも気負しなかった。
彼女はむしろ翠に顔を近づけた。
その深海のような瞳に見つめられると、翠は唐突に寒気を感じた。
「素晴らしい……どんなに汚されてもなお自浄し、他人まで感化する心。
本当に綺麗だわ」
清見は感心したように言った後、一転して残酷な言葉を綴る。
「だからこそ、完全なる闇に染める価値がある。あなたほどの者なら、
どんな正しい心の持ち主であっても、悪に堕落させる誘惑者となれる」
「そんな……!」
自分の言葉はもう決して届かない。
そう思い知らされた翠は、谷底に突き落とされたような気持ちになった。
彼女の表情をよく鑑賞できるように、清見は顎に指を添えて持ち上げた。
「翠、ありがとう。あなたが私を思っていると同じに、
私もあなたのことを大事に思っている。だから心配しなくてもいいよ。
もう一度闇に心を委ねる快楽を思い出させてやる」
清見は青暗い瞳を輝かせ、手を振り上げた。
触手スーツの袖の部分は幾つかのミミズのように分裂して飛びかかった。
翠は目をつむった。
すでに一度は淫乱な性質を植えつけられた身と心は、簡単に屈してしまうだろう。
魂にまで刻み込まれた奴隷の呪縛に、もはや抵抗する勇気さえ無かった。
むしろ心のどこかにホッとするような安堵感さえあった。
(みんな、ごめんなさい……)
翠は謝罪とともに、諦めの言葉を呟いた。
その時。
一陣の砂の線が目にも止まらぬ速さで清見と翠の合間を横切る。
空中に放たれていた水触手は、一瞬にして乾ききって断裂した。
すぐ横の地面から、一つの人影がのろりと起き上がる。
水の隻眼獣はすぐさま翠から離れ、その人物に噛み付きかかった。
だが妖獣が口を開こうとした直前、咽喉元から掴み上げられた。
そして塩漬けされたナメクジのごとく全身から水分が抜けて、
目玉はひび割れながら爆ぜ散った。
清見は素早く後ろへ飛びのき、自分に向かって投げつけられた残骸を回避した。
砂と接触した寄生スーツは一瞬石化したが、
すぐにまわりの触肉に同化されて再び触手化した。
400 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(4/20) sage 2013/06/16(日) 07:58:01.64 ID:CJ8TnpxM
「翠、大丈夫か」
「ああ、平気よ……」
地面から抜け出た睦美は、苦悶をこらえる翠や、失神している灯を抱え起こす。
腐食液のせいで、妖獣をじかに掴んだ手のひらは軽いヤケドを負った。
しかし、睦美はその痛みなどまったく意に介さなかった。
彼女はただ岩盤よりも硬い目線を清見にぶつけた。
清見は逆に睦美の切り刻まれた戦闘スーツを観察した。
「ダメージを負っているようね」
「鈴華のおかげさ」
「逃げるつもり? 鈴華や私を置いて」
「できないことを挑むのは勇気ではない。残念ながら、
今の私にはあなたを抑えつつ鈴華に勝つ方法が思いつかない」
睦美はそう言うと、翠や灯を抱えたまま背を向けた。
その時、清見の背後の茂みから鈴華が駆け抜け出る。
彼女の触手スーツもまた、睦美と同じくらい損傷していた。
睦美は槍の雨に打たれたようだったが、
鈴華の場合は土砂崩れの中から掘り起こしたボロ雑巾のようだ。
「許さないんだから! 絶対捕まえて、この屈辱を晴らしてやるんだから!」
鈴華の小綺麗だった顔が泥にまみれ、怒りの形相をあらわにした。
彼女は身丈の倍ほどある矛を振り回し、穂先の先端を睦美の背中に狙い定めた。
だが睦美は振り返ること無く、霊呪を念じながら土を蹴った。
地面はその場で大きく盛り上がると、巨大な土の聖獣が瀑布のように涌き出た。
その表面に突き刺さった無数の刃や、そこから流出し続ける砂は、
今まで繰り広げた激戦を痛々しく物語る。
「すまない、土麒麟(どきりん)……最後の力を振り絞ってくれ!」
「そんなボロボロの姿で何の役に立つ!」
鈴華は全力で矛をはね上げ、動きが鈍くなった召喚獣に向かって飛びかかった。
穂先は豪快に一回転し、土麒麟の頚部に深くつらぬく。
鈍重な唸り声が森の木々を揺るがす。
ついに限界までダメージが達したのか、聖獣のあちこちから砂が血流のように迸った。
鈴華は容赦無く手首を返すと、土麒麟の首より上の部分が空中へと刎ねのけられた。
頭部を失った砂体はゆっくり横へと倒れていく。
「この堅物め! 体力だけはすごいんだから……」
完全に崩壊した砂の前で、鈴華はぜえぜえ息を変えながら矛にもたれかかった。
召喚獣の首は空中でぐるりと回転すると、ふと大口を開いたまま鈴華に向かって落下した。
だが、その最後の一撃は決して届くことは無かった。
横から一筋の水流が噴射して頭部を貫通すると、
今度こそただの土石となってに砕け散った。
「ふぇ、なに?」
降りかかってくる土砂に、鈴華は初めて気付く。
彼女の横まで歩んだ清見は肩をすぼめてみせた。
「だから昔から注意してやったのに。最後まで油断しないでって」
「おお、清見ちゃん! 無事寄生が終わったんだね。それより、睦美のやつは?」
「彼女達ならもうここにいない」
「えええっ!?」
清見が指差した方向を見ると、その地面には胴体が通れるくらいの穴があいていた。
鈴華は小柄な体を精一杯使って地団駄を踏んだ。
401 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(5/20) sage 2013/06/16(日) 08:00:27.78 ID:CJ8TnpxM
地中は、あらゆる追撃を阻む特殊な地形である。
そして五行戦隊の中で、睦美の土遁術がその唯一の移動手段であった。
この中でいる限り、睦美はどんな敵でも振り切れる自信があった。
例え二人分の人間を抱えて、スピードが大幅にダウンしたとしても。
睦美は魚のように地中空間を泳ぐ。
「翠、もう少し耐えてくれ。陽子先生が帰ってくれれば、きっと全てがうまくいくから」
「うん、ありがと……」
翠は瞳の焦点がぼやけながらも、健気に笑みを見せた。
その様子に胸を痛めながらも、睦美は無視せざるを得なかった。
地行術により、睦美は霊力を消費することで地中を一時的に通過することができる。
だが自分以外の物質を帯同する場合、術者への負担が何倍もの激しくなる。
普段よりずっと通過しにくい土質を感じながら、
睦美は集中力を高めて掘り進んだ。
突然、彼女の後方から一本の鉄索が猛烈な勢いで土を突き破った。
「なにっ!?」
睦美はすかさず方向転換したが、鎖はあたかも追尾するように経路を辿り続ける。
「睦美、鈴華が私を狙っているんだわ!」
翠は疼きに眉をしかめて叫んだ。
彼女の首輪や貞操帯に寄生した妖眼が、まるで鎖を呼応するかのように妖しく輝く。
睦美がいくらモグラのように地層を貫通しても、鎖は決して彼女達を見失わなかった。
そしてついに鎖はカチャリと翠の首輪を繋ぎ止めた。
途端、睦美は腕から凄まじい反発力を覚えた。
「ちっ……!」
そのまま地中を進みながら、睦美は必死に考えを巡らせた。
彼女のスピードに合わせて鉄索も無尽蔵に伸張してくる。
そして次第に、腕の中の重さが増え始めた。
(このままではまずい……!)
灯が健在していればこんな鎖すぐに断ち切れるだろうが、
自分の能力ではどれくらいかかるか予測できない。
そして彼女が止まった瞬間を狙って、鈴華は鎖を引き上げるだろう。
「睦美、灯ちゃんのことは頼みましたわ」
「翠?」
側から掛けられた励ましの言葉に、睦美は小さく驚いた。
そんな翠はニコッと優しい微笑を浮かべる。
「ごめんなさい。私が付いて来られるのがここまでみたいです。
でも、あなたが必ず悪を打ちかつことを信じていますから」
「翠、早まるなっ!」
睦美が阻止するよりも速く、翠は彼女から腕を離した。
掴み直そうと伸びた睦美の手は虚しくも届かない。
次の瞬間、翠の体は一気に後方へと引っ張られて、完全に見えなくなってしまった。
「くっ……!」
その場でとどまりたい気持ちを必死にこらえ、睦美は更にスピードを上げた。
402 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(6/20) sage 2013/06/16(日) 08:03:33.44 ID:CJ8TnpxM
□
地表の上で、清見が傘をさしていた。
傘の表面にいくつもの目玉が見開き、裏側からは激しい雨水が穴の中へと降り注いだ。
その傍らで、悔しがる鈴華と地面に伏せる翠の姿があった。
「もう、もう! あとちょっとだったのに」
「ぅん……!」
鈴華は手に持っている鎖を乱暴に振り回した。
鎖が揺れるたびに、首輪を繋がれた翠が苦しげな声を漏らす。
ふと、穴の中の水が逆流して雨傘の裏側に吸収されていく。
清見は傘を畳み、それを自分の触手服の中に押し込んだ。
傘はたちまち触手スーツの一部に同化し、傘にあった目玉はスーツの妖眼に戻される。
「清見ちゃん、どう?」
「完全にロスト。水が途中で地下湖に合流してしまった。途中で横穴を作って、
そこへ誘導されたんだろう。さすが睦美といったところかしら」
「きぃ――くやしい! 翠ちゃんが余計なことさえしなければ、
こんなことにはならなかったのに!」
鈴華が鎖を振るうと、翠は快楽と苦悶に呻いた。
「まあまあ。私は無事寄生されたし、翠も失わずに済んだ。
それだけでも十分な収穫だ」
「そうなんだけどさ……」
清見が冷静な態度を見せると、鈴華は好奇心に満ちた目線を向けた。
「清見ちゃんって寄生されたはずなのに、なんか前と変わらないね」
「どうなっていれば満足してくれるかしら」
「私や翠の場合は、すっごくエッチになったのに」
「そういう欲望なら、もちろん私にも植え付けられた。なんなら、体で試してみる?」
清見はそう言うと、両目を細めて指先を舐めとった。
青い触手スーツはにょろりと蠢き、半透明化した水の羽衣が肢体のラインを浮かばせる。
今まで冷静沈着なイメージから、絶対に想像できない狡猾さと蠱惑さ。
その挑発な目線に見つめられただけで、鈴華の心がドキッとした。
自分を見透かされたような妖しい冷たさに、
思わず被虐的な気持ちに陥ってしまいそうだ。
だが鈴華が清見の体に触れようとした途端、清見に頭を押さえつけられた。
「はい、そこまで」
「ちょっと、焦らさないでよ!」
「睦美と灯を捕まえるほうが先でしょ?
ちょうど翠がこちらの手にあることだし」
鈴華は一度落胆したが、睦美と灯の名前を聞いた途端、
また新しい悪戯を発見した子供の目になった。
「翠ちゃんを餌に二人をおびき出すつもり? ははっ、なんか悪役っぽくて面白そう」
「……私を人質にしても徒労ですわ」
翠は辛そうに首をあげて呟いた。
403 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(7/20) sage 2013/06/16(日) 08:06:17.46 ID:CJ8TnpxM
「睦美は正義を見失う人ではありません。私一人を救うために、
妖魔に屈することは決してないはずです」
「ああ。そういう意味では、私達五人の中で睦美が一番正義に近いだろうね」
「えっ?」
翠は清見を見上げた。
清見の両目は静かな水面のようで、何を考えているか分からない。
「だから人質を取るなら、あなたよりもっと都合の良い存在を選ぶ。
人数が多く、閉鎖環境で、妖力の源となる精気も取れやすく、
蟲の生産基地にもしやすい。そして、睦美達や私達が良く知っている人達」
「そんな都合の良い人質って……?」
清見の言葉を反芻する鈴華は、何か閃いたかのように顔をほころばせた。
(そんな……まさか!)
翠の心情が激しく揺れた。
彼女も鈴華と同様に、森の外に視線を向けた。
東側のどんよりとした空の底に、朝焼けの薄い赤色が見え始めた。
その方向上にある場所を想起した時、翠は心の奥から絶望と戦慄を覚えた。
□
暁の光が地上を弱々しく照らし、新しい朝を迎えたことを告げる。
雲の合間を抜けるのが精一杯だったのか、朝日の色合いは極めて曖昧なものだった。
その元気に欠けた光に、灯は意識を取り戻していく。
「ううっ……」
徐々に覚醒しながら、灯はゆっくりと目蓋を開けた。
ひどく堅い寝心地だった。
床の上で、自分は一枚の薄汚れた毛布を掛けて寝かされていた。
周りに目をやると、そこは久しく使われていない倉庫のような場所だった。
小屋の中に錆付いたパイプ椅子や机やらが所狭しと積まれる。
そのパイプ椅子の列を背にして、睦美は体育座りの状態で眠っていた。
古びた雨戸の隙間から光が漏れる。
(……助かった、のか)
灯は意識を回復させながら、物音を立てないよう起き上がった。
そして自分が被っていた毛布を睦美にそっと掛け、半壊した窓から外を眺めた。
道端にはバス停やガードレール、さらに下り坂が見えた。
坂道から視線を落とせば、商店街の一部が見えてくる。
素早く脳内地図と照合をとった。
ここは市街地に近い高台、森とは学校を挟んで反対側の位置にある。
丘からの町への見晴らしが良く、攻めにも守りにも適したポイントだ。
睦美らしい思慮深い選択と言える。
昨夜のことは、清見と戦ったことまでは覚えている。
だが自分がどうやって負けたか、その先の記憶がおぼろげだった。
睦美と翠が必死に自分を助けた記憶は印象にあった。
そういえば、一緒に脱出したはずの翠はどこにいるだろうか。
ふと灯は上着をめくり、自分のお腹を見おろした。
少女らしいすべすべした肌には、これといった変わりは無かった。
(あれは……夢か?)
何かおぞましい感覚が湧きそうになり、灯は慌てて思い出すのを止めて。
曖昧ながらも、自分の体が清見に何かされたような覚えはあった。
もし寄生されているのなら、一刻も早く睦美に知らせなければならない。
404 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(8/20) sage 2013/06/16(日) 08:17:30.83 ID:CJ8TnpxM
そう思って睦美を揺り起こそうとした時、その穏やかな寝顔が目に入った。
いつも堅物のイメージがある睦美だが、今ではまぶたを深く閉じて、
静かな寝息を立てて眠っていた。
しな垂れた頭から、白いうなじが無防備のまま晒し出される。
(睦美のやつ、こんな可愛かったのか)
灯は不覚にもトキメキに似た感情を覚えた。
スペースを譲るためか、体が小さく縮こまるところがまたしおらしい。
顔を近づけば、自分以外の女の子の良い匂いを感じる。
そんな時、灯の心臓が突然高鳴り出した。
下腹部に強い疼きを感じるや否や、全身に強い衝撃が立ち起こる。
(ちょっと、なに……!)
ハッとなって一度上着をはだけると、
なんと今度はヘソのまわりに薄っすらと妖眼の紋様が浮かび上がっていた。
子宮に甘い快感が生じるとともに、口から喘ぎが漏れそうになる。
(くうぅぅんっ!)
声が喉を通るのを必死に我慢しながら、灯は睦美から離れた。
赤い勾玉を握ると、瞬時に炎をまとったバトルスーツとなって身を包む。
すかさず両手で印を結び、体内から膨らむ妖気を封じ込めた。
素早い行動が功を奏したのか、
妖気の広がりはなんとかバトルスーツの内側に留まった。
しかし体のほうは沸騰したポットように、
抑え切れないほど膨大な淫欲が暴れ回る。
かすかな記憶の糸に、ある光景だけが力強く再生される。
自分を嘲笑する黒い影。
その口から紡がれる言葉には、悪魔の囁きのように甘い誘惑が満ちていた。
(百眼……さま)
ついに、心の中で復唱してしまった。
その言葉に口にした途端、
体中の細胞の一つ一つが震えて視界や意識が弾けそうになる。
本能が妖眼蟲のものにすり替わっていく。
淫気を集める。
胎内に宿る蟲を育む。
ほかの女を犯し、自分と同類のメスを増やしていく。
無意識のうちに、灯の虚ろになった瞳がある一点にとどまる。
睦美の寝顔だった。
こちらの邪念に気付くこともなく、ただ天使のような顔立ち。
――睦美を陵辱したい。
あまりにも自然と浮かんだ考えに、灯はビックリした。
下腹部に妖呪が現れてから、どす黒い疼きが神経を蝕み始めた。
心地良い脱力感とともに、全身の霊力が子宮のほうへと吸収されていく。
それに比例して、妖眼も淫紋がよりはっきりと浮かび上がる。
(まさか……霊力を妖気に作り変えている!?)
増大していく寄生の快感に、灯は唇をかみ締めた。
護霊服はもともと外からの攻撃を防ぐものであり、
内側の妖気に対しては一切機能しない。
405 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(9/20) sage 2013/06/16(日) 08:20:05.59 ID:CJ8TnpxM
ならば、自らの手で浄化するほか無い。
彼女は残る力を振り絞って、一枚の霊符を取り出した。
五行戦隊で一番解呪に長けているのは清見で、逆に灯は一番苦手としていた。
だが今はそんなことを言っている場合でもない。
下着をおろすと、布切れは甘い匂いの汁がたっぷりと沁み込んで、
股の間と蜜の糸を引いた。
羞恥心をぐっとこらえて、灯は妖気が発散する自分の股に霊符を宛がった。
だが彼女の予想に反して霊符は愛液に触れた途端、
墨汁を浴びたかのように一瞬にして黒く変色した。
御札の表面にある炎の霊言も妖しい目玉模様に上書きされ、
浄化するどころか、逆に強い妖気を放つ魔の札に変化した。
驚いたあまりに、灯は思わず黒化した霊符を握り潰して灰に燃やした。
なんて強力な呪詛だろうか。
動揺している間に、灯は重大なことを思い出した。
この呪詛を施した人物は清見である。
解呪の優れた彼女ならば、その対抗策を練ることだってできるはずだ。
(だめ、これ以上は……!)
奥から一際大きい鼓動を感じると、灯は高揚感のあまり体を抱きしめた。
そのまま背中を強く反らすと、陰部から愛液がほとばしる。
(なにか……出るっ!)
全身の力を吸い取られたように、灯に膣から一本の触手が生え出た。
細蛇のような触手は粘液にまみれ、淫らな香りをあたりに散らす。
異型が下からスカートを押し上げる光景は、
まるで正義の象徴をあざ笑っているかのようだ。
目の前が真っ暗になった気分だった。
(そんな……! 速く、元に戻さないと……)
朦朧となりかけた意識で、灯は触手をなんとか押し込めようとした。
だが指が一物の先端に触れた途端、脊髄に甚大な快感が跳ね返ってきた。
(ヒャアァ――くッッ!)
声を噛み殺すだけで精一杯だった。
指紋の一つ一つが鎌首をなぞる度に、快楽の火花が脳に焼きつける。
最初こそ刺激的だったが、それもあっという間に物足りない快感に変わった。
灯は恍惚の表情を浮かべて、スカートの下から触手をあらわにさせた。
表面の荒れた筋や見開く妖眼は、少女の可愛さと酷烈なコントラストを作り、
背徳さを一層際立たせる。
完全に解放されたせいか、むせ返るほど甘い淫気が外に漏れ出た。
これほど濃密な淫気が潜んでいたかと驚いたが、
すぐに心までその虜になってしまった。
硬くなった触手を握り締めただけで、熱さやドクドクした脈打ちが伝わってくる。
脳内にまたあの囁き声が現われる。
意識が薄れた灯にとって、それはあたかも己の意思のように聞こえた。
406 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(10/20) sage 2013/06/16(日) 08:22:50.68 ID:CJ8TnpxM
『速くそれを鎮めなさい。じゃないと、蟲が成長してしまうわ』
(うん。蟲の成長は、なんとしても阻止しなきゃ……)
『そのためなら、一時的に快楽を求めるのは仕方ないこと』
(うん、ちょっとだけだから……そうしなきゃ、もっと大変なことになるんだから)
『触手をシゴくのが気持ちいい』
(ううぅ、気持ちいい……!)
『でも、これは決して快楽のためにやっているわけではない』
(そう……あくまでも蟲の成長を防ぐためだから)
誘導された通り反芻しながら、灯は虚ろな目で触手をこすり始めた。
最初はゆっくり、段々速く。
次第に意識するまでもなく腕が勝手に加速していった。
どうすれば快楽が得られるか、どこがポイントなのか、
それら全て勝手に思い浮かんだ。
あとは見よう見真似て自分の手によって再現するだけ。
(……睦美……!)
友達の寝顔を見つめながら、灯は心中の欲望をギラギラと燃やし広げた。
生徒会長であり、強い信念を持つ睦美。
学校では誰からも憧れる存在だった。
だがその制服の下には、灯とは変わらない無垢で淫らな肉体が存在している。
彼女を汚したい。
力ずくで屈服させ、快楽を渇望するはしたない声で鳴かせたい。
そして彼女の子宮にも妖眼蟲を分け与え、
その端正な顔立ちが欲情に染まっていく様子を見たい。
とりとめのない罪悪感にさいなまれつつ、
灯はこれまで感じたことも無いような高揚感を味わった。
もうこれ以上考えてはならない。
頭の中で何度も警鐘が鳴り響いたが、そのたびに別の心地良い声によって揉み消される。
(睦美、ごめん……!)
仲間を裏切った意識に苦しみながらも、灯は止めることができなかった。
睦美を陵辱する光景を想像しただけで、脳みそが溶鉱炉のようにドクドクと滾った。
やがて爆発に差し掛かった直前、灯の下腹部の妖呪は最大限に黒く輝いた。
その時、灯は妖しい声に言われるがまま言葉を繰り返した。
(私は百眼様に寄生されたしもべ……
妖眼蟲をこの身に宿し、その繁栄のために全てを捧げます……!)
言葉を一字一句吐き出すにつれ、快楽の高潮が盛り上がっていく。
そしてついに、灯は意識が吹き飛ばすほどの絶頂を迎えた。
「うっ……くっ、かあぁっ……!」
全身の霊力が子宮に引き寄せられた。
体がビクビク震えた次の瞬間、触手陰茎から大量の濁液が発射された。
潰れそうになるほど抑制した喉の隙間から、悲鳴がかすれて弾き出される。
淫らな白液は自分だけでなく、睦美の護霊服までに飛び散った。
放心状態となった灯は、がっくりと地面に膝をついた。
触手陰茎はいつのまにか膣の奥へ引っ込み、気付いたらもう見当たらなくなった。
残るは汗だくの体と火照りと、胸に広がる虚しい気持ちだけだった。
親友をおかずに自慰してしまった罪悪感。
彼女のバトルスーツにぶっかけた粘液を目にしただけで、心が引き裂かれそうになる。
睦美が目を開けたのは、その時だった。
407 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(11/20) sage 2013/06/16(日) 08:26:00.86 ID:CJ8TnpxM
ギクッ、と灯が石膏像のように固まった。
だが睦美は立ち上がるや否や灯の背後に回りこみ、
右手から一粒の小石を弾き飛ばした。
小石は弾丸のように射出され、倉庫の入り口を跨ぐ一匹の妖眼蟲に命中する。
目玉を貫通されたスライム体はドロドロに溶け出し、床に小さな染み跡を残す。
「気を抜くな、灯。敵がいつ現れるか分からないから。
まあ一応結界を張ってはいたが」
「え、えっ?」
睦美に言われて初めて、灯は倉庫の四方にお札が貼られていることに気付く。
札自体の霊力は弱く、境界線を越えた妖魔を知らせるのが主な役目のようだ。
(って、睦美は気付いていないの?)
灯は慌てて睦美のバトルスーツを観察した。
白と褐色が織り成す正義の衣装は、睦美の凛とした雰囲気をより引き立たせる。
だが、その服にはさきほどの……
(あれ……?)
灯は急に戸惑った。
ついさっきまでの記憶が蒸発したかのように、ごっそり思い出せなくなった。
更にしばらくすると、どうして自分が戸惑っていのるかさえ分からなくなった。
ただ何か良くないことが進行している気がするが、
それを思い出すことを本能が拒絶しているようだ。
「灯、どうした?」
「ごめん……オレ、どうかしてるみたいだ。今までのことが曖昧で……」
「無理もない。昨晩、あんなことがあったから」
いや睦美、言いたいのはそれではない。
灯は改めて伝えようとした時、
ふと睦美のスーツの端っこにシミのようなものを見つけた。
そのシミは一瞬だけ触肉のように変化したが、二三度まばたきすれば消えてなくなった。
偶然じっと見ていなかったら、きっと錯覚だと思っていただろう。
だがその現象が一体何を意味するのか、灯にはどうしても思い出せない。
「灯、大丈夫か?」
「あっ、うん……助けてくれて、ありがとう」
「体に目立った外傷は無かったが、しばらくは無理しないほうがいいだろう」
「ああ、そうさせてもらうよ」
灯は自分の口から出てくる言葉に混乱した。
彼女が考えるよりも速く、まるで誰かに操られているように勝手に言葉を綴った。
肝心なのは、睦美は何も気付いていないことだ。
しかし、一体何に気付けというのか?
「どうしたの?」
「いいえ……それより、翠はどこにいるの」
灯は考えを巡らせながらも、話題を逸らすように尋ねた。
だが意外なことに、睦美の視線が俯いた。
「ちょっと、翠はどうした? アイツと一緒にオレを助けたんだろ?」
「敵に捕らえられてしまった。私達を守るために」
「そんな……!」
灯は呆然となった。
つらい気持ちがぐっと込み上がって来る。
408 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(12/20) sage 2013/06/16(日) 08:29:01.25 ID:CJ8TnpxM
睦美は表情を強張らせたまま、言葉を続ける。
「大丈夫ならもう少し休んでおけ。昼になれば妖魔の動きも鈍くなる。
その隙にここを出る」
「なんだと?」
「妖眼蟲の活動範囲がすでにここまで拡大した。さっきは一匹だけだが、
敵に察知されるのも時間の問題だ。その前に町を出て、一度陽子先生と合流……」
「ふざけるな!」
灯は大きな声をあげて、灼熱のような目つきで睦美をねめつけた。
「今オレ達が離れたら、誰が町を守る? 誰が妖魔と戦う?
誰が鈴華や清見や翠を助ける? みんなを見捨てるというのか!」
「見捨てるわけじゃない。先生は三日後に退魔機関の本部から返ってくるはずだ。
そこで体勢を直してから、またここに……」
「戻って妖魔を退治するっての? ハハンッ……! 三日も経ったら、
この町にどれだけの犠牲者が増えると思ってる?」
「だからと言って現状ではこちらに勝ち目は無い。鈴華と清見が敵になった時点で
こっちとは二対二。その上、敵には大勢の妖眼蟲だっている。
もし翠までが敵の戦力になっていたら、完全にこちらの劣勢だ」
「勝ち目が無ければ戦わないのか?」
「今回が特別すぎるのだ。私達が負ければそのまま敵の戦力を増やすことを意味する。
それよりも今私達が知っている妖眼蟲の情報を、退魔本部に知らせることが重要だ」
「要するに負けるかもしれないから、尻尾を巻いて逃げるってことだろ?」
灯は睦美の襟元を掴み取った。
その烈火にも勝る気迫を、睦美は逆に睨み返した。
「五行戦隊に入った時から、この命を捨てる覚悟ができている。
私が何よりも怖いのは、このまま誰にも知られること無く、
妖眼蟲の侵略を許してしまうことだ」
睦美の毅然とした表情はまるで頑固な岩から掘り出されたように、
灯の激怒に対し微動だにしなかった。
彼女のまっすぐな目線にひるんだのか、
やがて灯は手を離し悔しそうに顔を言葉を吐き捨てた。
「くっ……あとでオレに反省させてくれよな。
あの時お前の言うことを聞いて、やっぱり正解だったと」
「灯……!」
「納得したわけじゃないからな! ただ睦美のことは信用しているというだけで」
灯は不器用そうに背を向けた。
目の前の犠牲を我慢できるほど、灯は融通の利いた人間ではなかった。
しかし、彼女は睦美の性格をよく知っていた。
その睦美が信念を曲げてまで決めた選択を、無下にすることができなかった。
ある異変が起きるまでは。
突如、床に広がっていた水の残滓が変色した。
灯と睦美は咄嗟に構える。
妖眼蟲が残した水溜りに波紋が広がると、ぐにゃりぐにゃりと揺らぎながら、
一つの明瞭な映像に変化した。
飛び出さんばかりに、小柄なシルエットがそこに現われる。
409 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(13/20) sage 2013/06/16(日) 08:31:21.88 ID:CJ8TnpxM
『ハ~イ。灯と睦美、見てる?』
「鈴華……!」
驚きに怒りを交えて、灯は仲間だった人物の名前を呼んだ。
水の鏡面には、鈴華の明るい笑顔がいっぱいに映し出される。
もともとある小悪魔な魅力も、
その暗黄色の触手スーツによって淫らに仕立てられた。
『この映像はね、清見の能力で蟲に封じたものなの。
コアを破壊すると、映像が再生されるってわけ。あっ、それじゃあ
この蟲さんはもう殺されちゃったってことかな? あーあ、残酷ぅ~』
映像の中の鈴華はわざとらしく両手を広げてため息をついた。
悪戯っぽい言動は、以前の彼女の快活さを思い出させる。
それが余計に灯の怒りに触れた。
「この……っ!」
「待て、これはただのビジョンだ。破壊しても意味は無い」
飛びかかろうとする灯を睦美が抑制した。
その間にも、鈴を鳴らしたようなかわいい声が小屋に響き続ける。
『ところで、私は今どこにいるでしょう?』
唐突な問いに、灯と睦美は初めて映像の背景に注意を払った。
鈴華の足元を走る白いコンクリートの床。
曇り空へと続く間には、落下防止用の欄干が見える。
それらの景色を照らし合わせると、二人の顔色が激しく変わった。
『正解は、学校の屋上でーす!』
鈴華が手を伸ばすと、映像の視界が後ろの景色を映し出す。
屋上から見える校舎や校庭、そして登校するのに使う通学路。
灯や睦美にとって、どの場所も生活の一部だった。
『さて、今回のゲストを紹介しましょう』
映像の枠外から、鈴華が一人の少女を押し込んだ。
体操着を身に着けた少女は、事情がまったくのみ込めない様子でただ半べそをかいでいた。
彼女の顔立ちを確認した途端、灯はきょとんとなった。
「そんな……祥子!?」
『とりあえず、自己紹介してもらおうかしら。
クラス、氏名……あっ、カメラ目線はこの目玉にね』
『ふぇぇ……に、二年、B組……滝沢祥子、です』
『ところで、あなたはなんてこんな朝早くから学校にいるの?』
『私……陸上部だから、朝練で……』
『まあ可哀相に。真面目に朝練に来たばかりに、こんな目に遭っちゃうなんて。
でも刺激的だったでしょ? あなた以外の女の子達が、
みんな触手に愛撫されてアンアン鳴いていたのを』
『ひ、ひぃ……!』
少女は途端に怯えきった様子に陥った。
鈴華が意地悪そうに笑みを浮かべると、寄生スーツから幾本もの触手が分裂して、
少女の体や頬にまき付いた。
その触手がよっぽどトラウマなのか、少女は逃げることも大声を出すこともできず、
ただほっそりとした体をわななかせた。
410 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(14/20) sage 2013/06/16(日) 08:35:05.36 ID:CJ8TnpxM
『あなたをここに連れてきたのは、実はこれから祥子ちゃんに寄生してもらって、
それをテレビの前の人に見せるためなんだ。
すごく気持ちの良いものだから、怖がらなくてもいいよ』
『き……せい? い、いやぁ……』
恐怖のあまりに、少女の悲鳴はかすれた。
その様子を楽しんでいるかのように、鈴華は得意満面の表情を作る。
『今だけサービスタイム! 特別に寄生の方法を選ばせてあげるわ。
私の首輪や貞操帯に責められたい?
それとも清見ちゃんの精液風呂に浸かりたい?』
『い、いや……!』
『ああん、どっちも気持ち良さそうで選べない!
――そんな優柔不断なあなたに、こちらがオススメ!
私と清見ちゃんの能力をハイブリットさせた真新しい寄生法!』
じゃじゃん、と鈴華は意気揚々と身辺にある物体を示した。
金属製の棺桶のような鋳物が鈴華の横で直立していた。
その物体は鈴華の背丈よりも高く、正面には女体の輪郭がかたどられ、
不気味な雰囲気は中世の拷問器具を連想させる。
鈴華が扉を開くと、中が空洞であることが分かる。
だが目を良く凝らして見ると、そこに恐ろしい光景が潜んでいることに気付く。
金属の裏側には、びっしり埋め尽くす触手が存在していたのだ。
『ひ、ひゃああっ……!』
あまりにもおぞましい景色に、少女の声がうわずった。
金属の裏側から絶え間なく粘液が滴り、空洞内の空気と触手を濡らせる。
外からの光を感知したか、触手は緩慢な動きで伸び始めた。
触手の表面には不気味な目玉がぎょろつき、淫液が糸を引いて垂れ落ちる。
その淫液が床と接触すると、その場を黒く染み広がった。
画面越しでも、灯や睦美にはその匂いが漂って来るように感じた。
一目見ただけで、今までずっと強い寄生能力が備わっていることが分かった。
彼女達ほどの退魔士とて、護霊服が無い状態で長く閉じ込められたら、
寄生支配されてしまいそうだ。
触手の目玉は獲物に気付いたかのように、一斉にぎょろりと女学生を見つめる。
『きゃあっ……!』
『ああん、そんな熱い眼差しで見つめないで、私もう濡れちゃうわ!……あはは。
まあ、恨むなら私達じゃなくて、五行戦隊を恨みなさいね』
『五行……戦隊?』
その言葉を聴いた途端、少女の瞳に一筋の希望が輝いた。
五行戦隊の活躍は、都市伝説のように生徒達の間で囁かれていた。
少女自身も興味半分知っていたが、本物の妖魔を見た今、
その存在は彼女にとって唯一の希望だった。
『五行戦隊は知っているんだ。じゃあ、そのうちの一人の名前が灯で、
あなたと同じ陸上部の子であることは知ってるの?』
『あ、灯ちゃん……!?』
411 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(15/20) sage 2013/06/16(日) 08:38:02.99 ID:CJ8TnpxM
『うん。そもそも私達がこの学校を襲った理由は、彼女がここの生徒だからなんだよ。
ちなみに、あなたは彼女との関係は?』
『と、友達なんです……』
『おおう、友達! なんという幸運! じゃあぜひ彼女の助けを呼ばないと。
もしかしたら、今この瞬間もあなたのピンチを見ているかもしれないよ。
ねぇ灯ちゃん、聞こえてる? 速く助けに来ないとこの子をこの拘束具の中に入れて、
触手ちゃん達にレイプさせちゃうわ』
『い、いやああぁぁ!』
「この……!」
灯は拳を強く握り締めた。
そうでもしないと、膨れ上がる怒りを抑えられなかった。
『おかしいね。友達がピンチなのに、全然来ないじゃない。
ほら、あなたも呼ぶのを手伝ってよ。灯ちゃん、助けてって』
『あ、灯ちゃん……た、助けて……』
『もっと大きな声出してみたら? ほらほら、触手ちゃんがあなたを欲しがってわよ』
自分の身にどんどん近付く触手に、
少女は目に涙を滲ませながらはち切れんばかりの声で叫んだ。
『灯ちゃん、お願い! 速く助けに来て!』
『……全然来る気配が無いね。
どうやらあなたは彼女にとって、人質の価値も無かったみたいだね』
『待って、もう少し待って下さい! 彼女は絶対来ます! だから……』
少女が言い終わるのを待たずに、鈴華は指を鳴らした。
すると空洞の中から無数の触手が飛び出て、少女を体操着の上から絡め込んだ。
粘液が体操着に染み込むと、瞬時に黒い粘質に染め替えた。
『いやああああ!』
触手がそのまま少女を空洞に引っ込むと、
金属の蓋はバタンと閉まり、中からの悲鳴をシャットアウトした。
棺桶の蓋の輪郭がぐにゃりと歪み、
顔の形から足先まで少女にピッタリフィットするよう変形していく。
その作業が終わって固定化すると、拘束具はまるで少女に銀メッキを施したかのように、
体のラインを生々しく浮かび上がらせた。
金属の光沢が映える胸の谷間や、股間の陰り。
生気を失った顔立ちに伝わる怯えた感情。
それらは不気味ながらも、どこか官能的な雰囲気を醸した。
『はい、新しい寄生者の誕生です。ふふふ、大丈夫。あなたがそこから出る時は、
今よりもっとずっと素敵なメス奴隷になれるわ』
鈴華は妖しい笑みを浮かべ、鉄になった少女の胸をいやらしく撫でた。
灯は外に向かって歩き出した。
それを予測したのか、睦美は間髪入れず灯の肩を捕まる。
「冷静になれ。この映像は今よりも前に撮ったはず。
今駆けつけたところで、彼女はもう……」
「だからなんだって言うの? 今この瞬間にも、犠牲者が増えているんだぞ!」
「見て分からんのか。敵はわざと私達を挑発してるのよ!」
412 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(16/20) sage 2013/06/16(日) 08:43:51.85 ID:CJ8TnpxM
二人の諍いをよそに、水の鏡面に青い触手服をまとった人物が映し出された。
彼女の切れ長の目は深淵の湖のように静けさを帯びる。
右手を差し出すと、手のひらに乗せてある水色の妖眼蟲を見せつけた。
そして彼女の口から無情な言葉が紡がれる。
『今日の正午、蟲達を屋上の貯水槽に放つ』
「清見……!」
「どういうこと?」
睦美達の反応に構うこと無く、青い寄生少女は冷酷な口調で語り続けた。
『私が産み出した寄生種は、水に触れただけで無色透明に溶ける。
その水を摂取することで、ここにいる人間は一斉に寄生されることだろう』
「そんなことしたら……!」
灯は愕然となって、清見の手の中にあるガラス球を見つめた。
妖眼蟲の核である眼球は、光を反射してみずみずしく輝く。
別物だと頭の中で分かっていても、どうしても人間の目玉を連想して嫌な気分になる。
『その液体は人間に害は無いわ。むしろ免疫能力が強くなって、
健康状態が向上するくらいだわ。私が念じない限り体内にずっと潜伏状態でいるから、
普段の生活に支障を出すことも無い。それこそ霊力による精密検査でもしない限り、
普通の人間と違いが分からないくらいにね』
「そんな馬鹿な!」
睦美はぞっとしたように声をあげた。
ただでさえ妖眼蟲の発見はしにくく、その高い寄生力と繁殖力で人間を脅かしてきた。
それが新たに潜伏能力を得たら、
感染が広がる前に発見することが更に難しくなるだろう。
『兆候がまったく無いわけでもない。これに寄生された人間は、
繁殖本能が物凄く強くなる。そして、彼らと体液を交換した――
すなわち性交した人間もまた、同じ寄生状態になってしまう』
「それってつまり、感染が速く広がるってことじゃないか!」
灯のつっこみを無視して、清見は淡々と続ける。
『ここでの実験が終わったら、この寄生種を全国の水道局や河川に流す予定だ。
戦いを起こさず、人々が幸せの中で寄生される。
とても平和なアイディアだと思わない?』
予想を遥かに上回る計画性に、灯と睦美は背中に冷え汗を流した。
もし清見の目論見が達成されたら、被害規模はもはや町だけでは済まない。
日本はもちろん、世界中の人々が妖魔に支配されてもおかしくないだろう。
『じゃあ、私と鈴華は学校で待ってくるから。
正義の味方さんなら、こんなことを許すはずないわよね?』
最後に清見が嫌味っぽい薄笑みを残すと、映像はそこで途切れて元の水溜りに戻った。
倉庫の中は再び静かになる。
睦美は自分が掴んでいるのは人間の肩ではなく、高熱に焼かれた鉄板のような気がした。
手のひらに伝わる温度は、映像が終わった後も上昇し続けた。
「落ち着いて、灯……」
「こんなもの見せられて、誰が落ち着いていられるか」
灯は睦美の手を振り払い、それまで溜め込んだストレスを一気に爆発させた。
413 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(17/20) sage 2013/06/16(日) 08:48:38.49 ID:CJ8TnpxM
「睦美が行きたくないならそれでいい。だがオレは絶対行くからな!」
「このまま君が敵の戦力になるのを知って、行かせるわけにはいかない」
「ふざけるな!
だいたい最初に鈴華が敵に捕らわれたのも、睦美のせいじゃないか」
言い終わって、灯はハッとなって後悔した。
睦美は明らかに落ち込んだのだ。
決して弱みを見せない睦美が、潮水に摩滅された石のような表情を浮かべた。
そこでやっと、灯は最近の睦美がどういう心境だったのか理解できた。
鈴華の寄生を発端に始まった一連の事件。
睦美はずっと鈴華のことで自分を責めていたが、
みんなの前では一切素振りを見せなかった。
その気丈さに感心すると同時に、灯は自分の鈍さに慙愧した。
すぐに謝ろうと口を開いた。
だがその瞬間、灯に灯の脳内に妖しい目線が蘇る。
どす黒い感情とともに、口から出た言葉は彼女の意思とまったく逆のものだった。
「睦美にそれを言う資格はあるのか? あの時、あなたが鈴華と一緒に戦っていれば、
鈴華が寄生されることは無かったはずだ。
翠だって、どうせ睦美が彼女のことを見放したんでしょ?」
「……!」
灯が放った言葉は、次々と睦美の心を傷つけた。
その消沈していく様子を目にするだけで、灯は胸を締め付けるような痛みを感じた。
だがその一方で、腹の奥ではまったく異質の快感が膨れ上がった。
――もっと睦美の苦しむ表情が見たい。
その邪悪な感情が下腹部の疼きと合わさって、体中にじんわりと広がっていく。
何かがおかしかった。
(だめ……このままだと、もっと酷いことを口に言ってしまう……!)
興奮の汗が体中から涌き出る。
狂乱する心臓の鼓動を抑えながら、灯は睦美に背中を向け外へ走り出した。
睦美の弱くなる姿を見ただけで邪悪な欲望に支配されそうになる。
頭の中で、誰かに呼ばれているような気がする。
それに答えてしまったら、大事なものを失ってしまいそうだ。
時間が進むにつれ、呼び声の間隔が縮まって灯の心を揺らし始める。
ぼやけていく頭の中で、最後まではっきり保った意識が一つだけあった。
(……ここにいたら、睦美まで……巻き込んじゃう)
そう感じると、灯は目が虚ろになったまま呼び声の方へ駆け出した。
彼女の行動を、睦美は止める事ができなかった。
「クソッ……!」
睦美は床に膝をついて、やりきれない表情で拳を振り下ろした。
思考が麻のごとく乱れていく。
414 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(18/20) sage 2013/06/16(日) 08:50:49.00 ID:CJ8TnpxM
灯の選択は正しいかもしれない。
翠は捕まってしまったが、今ならまだ完全支配されていないはず。
鈴華と清見が敵側にいるとはいえ、灯と協力すれば戦い方次第勝てるかもしれない。
だがもし翠が敵に加勢したら、勝率は限りなく低くなる。
仕掛けるとしたら、今が最後のチャンスだろう。
このままほうって置くと、ミスミス灯を敵の手に渡すようなものだ。
だが自分まで負けて寄生されたら、敵を更に増長させてしまう――
睦美はできるだけ灯の言葉を考えないようにした。
だが避ければ避けるほど、灯のセリフが頭にまとわり付いた。
今の彼女には、行動を起こす余裕の欠片も無かった。
灯を阻止することも。
妖眼蟲の残骸以外の微かな妖気に気付くことも。
空は一段と濃厚な黒雲に覆われ、霧雨に町が煙り始めた。
その中には、学校の建物も含まれているだろう。
どんよりとした町景色を眺めていると、睦美の心は急激に寂しさを覚えた。
今ほど太陽の光が恋しいと思った時はない。
□
メッセージを伝え終えると、清見は妖眼蟲の核を貯水槽に放り投げた。
水に触れた途端、妖眼は溶け広がり、ほのかな残り香を漂わせる。
その無造作な行動に、鈴華は瞳を大きく見開かせた。
「えええ、睦美達が来るまで、人質にとっておくじゃなかったの?」
「人質というのは彼女達の認識であって、私達とは無関係な話。そうでしょ?」
清見は淡々と答えた。
彼女の近くにいた四人の少女が男達の剛直から離れ、
頬や肌に快楽の余韻を残しながら貯水槽の周囲に集まった。
少女達は蓋のまわりでしゃがみ込むと、その股の間から白い粘液が太ももを伝って滴る。
いずれの少女も裸に近い格好で、艶かしい肢体に淫靡な触肉がまとい付いた。
そんな異様な光景にも関わらず、少女達は誰一人怯えた様子もなく、
陶酔しきった目つきで自分達の股間をまさぐり始めた。
魂をとろかすような喘ぎ声とともに、新たな寄生のコアが貯水槽に産み落とされる。
清見の口から嘲弄の意図を悟ると、鈴華は面白そうにまばたきをした。
「灯達が必死に助けようと来てみたら、実は全員すでに私達の奴隷だった!ってオチ?
きゃはは……清見ちゃんって、実は悪役のほうが向いてるんじゃない?」
「正義は決して悪に勝てない。その理由は、
悪は目的のためにどんな作戦も実行できるが、正義にはそれができない。
だから私のような人間は、最初から悪の側にいるべきだった」
清見は冷静に語りながら、部下となった少女達の働きを見守った。
少し前まで、彼女達は普通の女子高生だった。
それが今では、清見に従う忠実なしもべとなった。
学校の屋上には寄生の棺以外に、十数人もの男女が乱交を繰り広げていた。
「くくく……灯と睦美の絶望した表情、今からでも想像するだけでゾクゾクしちゃう。
あなたもそう思わない、翠ちゃん?」
鈴華は自分が腰掛けていた棺を開けると、喘ぎ声のボリュームが大きくなった。
中には一人の少女が鎖に縛られ、半身が白い粘液に浸かっていた。
415 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(19/20) sage 2013/06/16(日) 08:54:01.74 ID:CJ8TnpxM
棺を開けた瞬間、むせ返るような甘い発情臭が外に漏れ出る。
彼女の暗緑色の寄生スーツと棺の裏側に生えた触手が絡め合って、
絶妙な加減で女体を撫で回る。
股間につけてある貞操帯の隙間から絶えず愛液が溢れ出て、
白粘液風呂と混ざり合った。
「翠の体からすごく良い匂いがするわ……これほどに性欲を高められるなんて、羨ましいわ」
「ぐぅん、うぅんんん!」
鈴華が翠の胸の谷間に鼻を埋めると、翠は大きく物音を立てた。
彼女は首輪やボールギャグを装着された状態で、両目も眼帯に覆われていた。
眼帯の表面には水色の目玉が一つ輝き、その点滅と同調して少女の体が震え上がる。
手足まで縛られた彼女には、悶える以外の行動が許されなかった。
「今すぐにもイキそうだね」
「普通の人間ならとっくに狂い出す状況だが、翠の精神力はさすがのものだ。
そのおかげで、みんなの洗脳時間を大幅に短縮できた」
清見は感心したように翠の姿を眺めた。
床に置かれた棺同士の間に太い触手が繋がり、その中心に翠の棺が位置していた。
翠が悶えるたびに、触手間に信号のような光が転送されていく。
「今の翠ちゃんは、自分が寄生された時の記憶を、繰り返し見せられているんだよね?
わざわざ寄生前の心情に戻されて、何度も堕ちた瞬間が味わえるなんて」
「その記憶をほかの寄生者に見せることで、強制的に堕ちた時の心情を学習させていく。
そうして、短時間のうちに高いレベルの寄生者が産み出せる」
「良かったね、翠。百眼様のために、挽回のチャンスがもらえて」
鈴華はそう言って翠の口からボールギャグを外し、
そこにベットリとついた唾液を舐め取った。
口が自由になった途端、翠は悲鳴に近い声で叫んだ。
「お願い、もう許して! もう二度と逆らうことなんて考えないから
……だから、イカせて!」
首を左右に振って懇願する少女。
懸命に身を捻らせるも、全身を拘束された今、それは更なる欲情を煽る行為でしかなかった。
だが今の翠には、それに気付く余裕さえ持たなかった。
「翠ちゃんは反省中なんだから、イカせるわけないじゃん」
「そんなこと言わないで! 全て私が悪かったです……
百眼様のためなら何でもします、鈴華や清見の命令だって何でも従います! だから……」
「その言葉に偽りは無いのだな?」
清見は翠から目玉の眼帯を剥ぎ取り、その顔を晒した。
淫欲に潤んだ虚ろな目は、媚薬に盛られた淫婦のように焦がれていた。
「は、はい……!」
「じゃあ手始めに、この学校を蟲達の苗床に作り変えてもらおうか。
そうすれば、あなたが期待する快楽も得られるだろう」
「えっ……きゃあああああ!?」
清見が貞操帯に足先を乗せると、翠は魂消るような叫び声を上げた。
絶頂に達しないギリギリの快感が翠の全身を震わせる。
416 五行戦隊 第七話『静かなる侵蝕』(20/20) sage 2013/06/16(日) 08:56:47.61 ID:CJ8TnpxM
「いいのか、清見」
「灯と睦美は必ずここに来る。彼女達を歓迎するためにも、
翠の調教を終わらせてやらないと。正義の心が腐ってしまうくらい、
快楽の蜜液に浸して……!」
「ひゃあ、怖い怖い」
鈴華はペロッと舌を出した。
清見は敵としては手強いが、味方となればこれ以上心強いものはない。
彼女の心に宿る黒い興奮を感じると、鈴華も邪悪な笑みを浮かべた。
― つづく ―
(帰り道での遭遇)
350 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/23(火) 01:44:55.80 ID:8lNbPl95
今日は特に暑かった。
流石に3日連続で約束を破ってしまったら、いくらあの子でも憤慨するかもしれない。
私はそんなことを思いながら通り慣れた路地を走り抜けていく。
「ああもう、……なんで今日も残業になっちゃうかなぁ……」
私はそそっかしく不器用で、おまけに頭が悪い。
今日の残業もそんなことが原因の些細なミスが重なったことによる遅れを取り戻さなくてはいけなくなったからだった。
いつもと同じ最悪な一日を私は頭の中で振り返り、あの子にメールも出していないことに気づいた。
まったく何をやってるんだ、私は!
足は止めずにカバンの中から携帯を取り出し、私は本文を打ち始めた。
「えっと……ご、ゴメン、違う、ゴメスじゃない! ええっと、ご、ゴメン、も、もうすぐ、つくから……って、わああ!」
送信ボタンを押そうとした瞬間、何かにつまづき私は大きくよろめいた。
そのままの勢いで私は斜め横にあった電柱に豪快な体当たりをかます。
ジーンと、鈍い電流が身体を伝っていくが、おかげでなんとか転ばずには済んだことにふぅと安堵の息を零した。
「あいたたた……やっぱり走りながらメールなんてしちゃいけないね……。ん? なんだろ、あれ」
ビリビリとしびれる左肩をさすりながら、私は自分がつまづいた何かに目を向けた。
それは……なんというか、ヘンだった。
いつも私を照らしてくれる電灯が今日はチカチカと点滅しているから、よくは見えなかったけど、それはどこかヘンだった。
いつの間にか肩の痛みも忘れ、私は引き寄せられるように明滅を繰り返す電灯の下に来ていた。
「まっくろ、だ……」
そう、真っ黒。
伝統の下にあったのは、真っ黒な人影のようなものだった。
マネキンに黒い全身タイツをかぶせて寝かせているかのようなそれは、私のいつもの日常にはとても似合わないものだった。
と、その時だった。
細かな明滅を繰り返していた電灯がぷっつりとその活動を止めた。
私は突然のことに思わず真上の電灯を見上げた。
べちゃ――
そんな音が鼓膜を揺らしたのと、電灯がいつものように明るく私を照らし始めたのは同時だった。
351 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/23(火) 01:45:28.90 ID:8lNbPl95
「んんんんっっっっ!!」
悲鳴が思わずお腹の中から溢れ出ていた。
だけどそれは私の身体が意図した音が出ることはなく、こもった叫び声となって私の中へと戻っていく。
それは私の口を、いや、顔の下半分を緑色に光るクラゲみたいな生物が塞いでいたからだった。
「んんんぅううううっぅつっ!」
そレを見て、私は更に狂ったように喉を震わす。
ただその私の声はクラゲの傘の部分をわずかに膨らましただけで、再び私の中に戻ってくる。
やばい、やばいやばいやばい怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!
頭の奥でありえないほどに早くなる鼓動の音。
それが鳴り響く中、私は息をすることも忘れて必死の抵抗をした。
「んっっっ! んぅぅぅぅぅ!」
まるでマスクを引っ掛けるように耳に絡みついたそのクラゲの触手を剥がそうと爪を引っ掛けてもがいた。
それでも外れないから、気持ち悪いけどクラゲの傘の部分を掴んで思いっきり引っ張った。
ギチギチと耳の付け根が悲鳴を上げるのも構わず、引っ張った。
すると、私の唇にずっと重なっていたクラゲの傘が少しだけ離れ、ヌメった私の唇が湿った空気を感じた。
そのスキに、私はすかさず大きく息を吸い込んでめいいっぱいの叫び声を放とうとした。
路地裏で人通りが少なく、右も左も塀に囲まれているけど、その向こうには家がある。
大声を出せばきっと誰かが気づく……!
だけども大きく吸い込んだ息はそのまま、私のお腹の中へと押し戻されていった。
「っ、ひぁっ、だ、んぐうううぅぅううううう!?」
助けを求めるための最初の言葉がわずかに出た瞬間、ぐにゃっとしたものが私の口の中に入り込んできた。
それが自らの身体を縦長に丸めたクラゲだと分かるまでに、そう時間はかからなかった。
ただ、このクラゲが私の抵抗を先読みしてそんな行動に出たのだと理解したとき、言いようのない恐怖が胸の中に広がった。
「ん、ぐぅう、ぐっ、ちゅ!」
助けを求めることなど二の次に押し込め、なんとかそれを吐き出そうと私はもがく。
ただ、呼吸さえもままならない私の身体は既にろくな抵抗もできず、異物感に苦しむ喉だけが最後の防衛線となっていた。
352 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/23(火) 01:46:10.17 ID:8lNbPl95
そして、その防衛線が必死の抵抗を続けているとき、私はハッと閃いた。
そうだ……気持ち悪いけど、噛んじゃえばいい!
唇からだらりとたれている傘の先端を噛み切れば、きっと痛みでひるむはず。
その好きに吐き出して、走れば……逃げられるっ!
その閃きに、仕事の時もこうやって頭が働けばなぁと、のんきな考えが一瞬頭をよぎった。
それだけこの閃きに、私は安堵感と確信を持っていた。
そう、タコ! タコと思って噛みつけばいい!
噛みついて犬みたいにブルブルと頭を震えば、きっと噛みちぎれる!
私はそう自分に言い聞かせ、顎を一瞬を緩め、そして一気に力を込め――
「んぁ……あ……ぁ……」
……え?
あれ……? あれ……?
何かが、おかしかった。
身体が、ない。
そう表現するのが一番近しい感覚が、ただ呆然と私の中に残った。
必死の抵抗を続けていた息の苦しさも、喉を支配していた異物感も、汗で湿ったブラウスの感触も……どこかに飛んでいってしまった。
まるで身体が空に飛んでいるかのようだった。
……なんだか、このままでいたいな……。
そんな思いが頭をよぎったとき、力の抜けた両目がそれを捉えた。
だらりと垂れ下がるクラゲの傘から伸びる2本の触手。
それが私の鼻の中に入り込んでいるところを。
ぷつん。
額の部分から後頭部に何かが通り抜けていくような感覚。
それと同時にクラゲは、まるでパチンコを放とうとしているゴムのように、その身を私の唇の向こうへと伸ばした。
「んっ、あ~ん♪」
なんとものんきな私の声。
でもそれは、私が意図して出したものではなかった。
その次の瞬間、クラゲはその身を一気に私の口の中へと飛び込ませてきた。
353 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/23(火) 01:47:27.05 ID:8lNbPl95
「ん♪ ……んぐぅっっぅううう!? んんんんんん!」
そのクラゲの動作の一瞬後になって、私の身体は感覚を取り戻し、本能的にそれを吐き出そうと喉を脈動させる。
だけどもまるでゲル状の何かが喉を降りていくかのように、それはゆっくりと私の中へと降下していく。
駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ぇえええええええ!
「んっ、ごく、んっ……」
あっけない音と共に、それは私の喉を通って、私の中へと取り込まれてしまった。
私は何が起きたかわからなくて、口をパクパクとさせながら、喉を掴む。
まるで、自分の命をここで終わらせるかのように。
それはまるで私の人間としての身体が生命の遺伝子として起こしている、拒絶反応のように感じられた。
『あらあら、ダメよ、そんなことしちゃ♪ 私の大切な身体なんだから』
聞いたことのない口調で、私の声が頭の中に響く。
……誰?
『くすっ、私が誰であるかなんてどうでもいいわ。だってそんなこと……意味がなくなるもの』
私の問いかけに、私の声で答えるそれ。
それ? ……それって……どれ……?
あれ……? 私って、ん……? あれ、私って、どれ……だっけ……?
『だから言ったでしょ。意味がなくなる、って』
意味? 意味……意味、って、なんだっけ?
あれ、なんで私、自分に向かってそんなこと聞いてるんだろう?
だって私は――。
「『“私”じゃない。くすっ。なに言ってんだろ、私』」
そう……私は、私。
さぁ、早く帰らないと。
あの子が待ってる。
「くすっ。えっと……待っててね。今、帰るから♪」
私はメールの本文にそう打ち込んで、送信ボタンを押した。
今日は特に暑かった。
流石に3日連続で約束を破ってしまったら、いくらあの子でも憤慨するかもしれない。
私はそんなことを思いながら通り慣れた路地を走り抜けていく。
「ああもう、……なんで今日も残業になっちゃうかなぁ……」
私はそそっかしく不器用で、おまけに頭が悪い。
今日の残業もそんなことが原因の些細なミスが重なったことによる遅れを取り戻さなくてはいけなくなったからだった。
いつもと同じ最悪な一日を私は頭の中で振り返り、あの子にメールも出していないことに気づいた。
まったく何をやってるんだ、私は!
足は止めずにカバンの中から携帯を取り出し、私は本文を打ち始めた。
「えっと……ご、ゴメン、違う、ゴメスじゃない! ええっと、ご、ゴメン、も、もうすぐ、つくから……って、わああ!」
送信ボタンを押そうとした瞬間、何かにつまづき私は大きくよろめいた。
そのままの勢いで私は斜め横にあった電柱に豪快な体当たりをかます。
ジーンと、鈍い電流が身体を伝っていくが、おかげでなんとか転ばずには済んだことにふぅと安堵の息を零した。
「あいたたた……やっぱり走りながらメールなんてしちゃいけないね……。ん? なんだろ、あれ」
ビリビリとしびれる左肩をさすりながら、私は自分がつまづいた何かに目を向けた。
それは……なんというか、ヘンだった。
いつも私を照らしてくれる電灯が今日はチカチカと点滅しているから、よくは見えなかったけど、それはどこかヘンだった。
いつの間にか肩の痛みも忘れ、私は引き寄せられるように明滅を繰り返す電灯の下に来ていた。
「まっくろ、だ……」
そう、真っ黒。
伝統の下にあったのは、真っ黒な人影のようなものだった。
マネキンに黒い全身タイツをかぶせて寝かせているかのようなそれは、私のいつもの日常にはとても似合わないものだった。
と、その時だった。
細かな明滅を繰り返していた電灯がぷっつりとその活動を止めた。
私は突然のことに思わず真上の電灯を見上げた。
べちゃ――
そんな音が鼓膜を揺らしたのと、電灯がいつものように明るく私を照らし始めたのは同時だった。
351 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/23(火) 01:45:28.90 ID:8lNbPl95
「んんんんっっっっ!!」
悲鳴が思わずお腹の中から溢れ出ていた。
だけどそれは私の身体が意図した音が出ることはなく、こもった叫び声となって私の中へと戻っていく。
それは私の口を、いや、顔の下半分を緑色に光るクラゲみたいな生物が塞いでいたからだった。
「んんんぅううううっぅつっ!」
そレを見て、私は更に狂ったように喉を震わす。
ただその私の声はクラゲの傘の部分をわずかに膨らましただけで、再び私の中に戻ってくる。
やばい、やばいやばいやばい怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!
頭の奥でありえないほどに早くなる鼓動の音。
それが鳴り響く中、私は息をすることも忘れて必死の抵抗をした。
「んっっっ! んぅぅぅぅぅ!」
まるでマスクを引っ掛けるように耳に絡みついたそのクラゲの触手を剥がそうと爪を引っ掛けてもがいた。
それでも外れないから、気持ち悪いけどクラゲの傘の部分を掴んで思いっきり引っ張った。
ギチギチと耳の付け根が悲鳴を上げるのも構わず、引っ張った。
すると、私の唇にずっと重なっていたクラゲの傘が少しだけ離れ、ヌメった私の唇が湿った空気を感じた。
そのスキに、私はすかさず大きく息を吸い込んでめいいっぱいの叫び声を放とうとした。
路地裏で人通りが少なく、右も左も塀に囲まれているけど、その向こうには家がある。
大声を出せばきっと誰かが気づく……!
だけども大きく吸い込んだ息はそのまま、私のお腹の中へと押し戻されていった。
「っ、ひぁっ、だ、んぐうううぅぅううううう!?」
助けを求めるための最初の言葉がわずかに出た瞬間、ぐにゃっとしたものが私の口の中に入り込んできた。
それが自らの身体を縦長に丸めたクラゲだと分かるまでに、そう時間はかからなかった。
ただ、このクラゲが私の抵抗を先読みしてそんな行動に出たのだと理解したとき、言いようのない恐怖が胸の中に広がった。
「ん、ぐぅう、ぐっ、ちゅ!」
助けを求めることなど二の次に押し込め、なんとかそれを吐き出そうと私はもがく。
ただ、呼吸さえもままならない私の身体は既にろくな抵抗もできず、異物感に苦しむ喉だけが最後の防衛線となっていた。
352 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/23(火) 01:46:10.17 ID:8lNbPl95
そして、その防衛線が必死の抵抗を続けているとき、私はハッと閃いた。
そうだ……気持ち悪いけど、噛んじゃえばいい!
唇からだらりとたれている傘の先端を噛み切れば、きっと痛みでひるむはず。
その好きに吐き出して、走れば……逃げられるっ!
その閃きに、仕事の時もこうやって頭が働けばなぁと、のんきな考えが一瞬頭をよぎった。
それだけこの閃きに、私は安堵感と確信を持っていた。
そう、タコ! タコと思って噛みつけばいい!
噛みついて犬みたいにブルブルと頭を震えば、きっと噛みちぎれる!
私はそう自分に言い聞かせ、顎を一瞬を緩め、そして一気に力を込め――
「んぁ……あ……ぁ……」
……え?
あれ……? あれ……?
何かが、おかしかった。
身体が、ない。
そう表現するのが一番近しい感覚が、ただ呆然と私の中に残った。
必死の抵抗を続けていた息の苦しさも、喉を支配していた異物感も、汗で湿ったブラウスの感触も……どこかに飛んでいってしまった。
まるで身体が空に飛んでいるかのようだった。
……なんだか、このままでいたいな……。
そんな思いが頭をよぎったとき、力の抜けた両目がそれを捉えた。
だらりと垂れ下がるクラゲの傘から伸びる2本の触手。
それが私の鼻の中に入り込んでいるところを。
ぷつん。
額の部分から後頭部に何かが通り抜けていくような感覚。
それと同時にクラゲは、まるでパチンコを放とうとしているゴムのように、その身を私の唇の向こうへと伸ばした。
「んっ、あ~ん♪」
なんとものんきな私の声。
でもそれは、私が意図して出したものではなかった。
その次の瞬間、クラゲはその身を一気に私の口の中へと飛び込ませてきた。
353 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/23(火) 01:47:27.05 ID:8lNbPl95
「ん♪ ……んぐぅっっぅううう!? んんんんんん!」
そのクラゲの動作の一瞬後になって、私の身体は感覚を取り戻し、本能的にそれを吐き出そうと喉を脈動させる。
だけどもまるでゲル状の何かが喉を降りていくかのように、それはゆっくりと私の中へと降下していく。
駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ぇえええええええ!
「んっ、ごく、んっ……」
あっけない音と共に、それは私の喉を通って、私の中へと取り込まれてしまった。
私は何が起きたかわからなくて、口をパクパクとさせながら、喉を掴む。
まるで、自分の命をここで終わらせるかのように。
それはまるで私の人間としての身体が生命の遺伝子として起こしている、拒絶反応のように感じられた。
『あらあら、ダメよ、そんなことしちゃ♪ 私の大切な身体なんだから』
聞いたことのない口調で、私の声が頭の中に響く。
……誰?
『くすっ、私が誰であるかなんてどうでもいいわ。だってそんなこと……意味がなくなるもの』
私の問いかけに、私の声で答えるそれ。
それ? ……それって……どれ……?
あれ……? 私って、ん……? あれ、私って、どれ……だっけ……?
『だから言ったでしょ。意味がなくなる、って』
意味? 意味……意味、って、なんだっけ?
あれ、なんで私、自分に向かってそんなこと聞いてるんだろう?
だって私は――。
「『“私”じゃない。くすっ。なに言ってんだろ、私』」
そう……私は、私。
さぁ、早く帰らないと。
あの子が待ってる。
「くすっ。えっと……待っててね。今、帰るから♪」
私はメールの本文にそう打ち込んで、送信ボタンを押した。
(転性)
332 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:33:08.10 ID:7QBX1G3o
暑い夏の日。
死に場所を求めていた僕が樹海の奥底で出くわしたバケモノ。
それは、地面から伸びる一本の図太い触手だった。
『ねぇ……食べて、いい? きみの全て、もらっていい?』
ニュルニュルと蠢くそれは蠅を飲み込む食虫植物のように、四方へその身を裂いた。
赤黒くドクドクと脈打つ触手の中から、ダラリと粘っこい液体が僕の顔へと垂れてくる。
「……いいよ」
もはや自分の答えなど必要なさそうにも感じたが、口が勝手に動いていた。
背中のリュックに入った無機質な縄で最後を遂げるよりも、
それはまだ苦しくなさそうに見えたからかもしれない。
『そう♪ じゃあ遠慮なく……』
暗闇が迫ってくる。
木陰の御蔭で免れていた湿度に混じった暑さとは違う、生物的な暖かさを肌の向こうで感じた。
程なくして、僕の身体を触手が締め付けてきた。
苦しさはあるものの、やはり始めに考えていた最後よりも痛みはない。
加えて少しずつ僕を奥へ奥へと飲み込もうとする触手の脈動は、
21年前にいたハジマリの場所を連想させ、僕の心を安心させた。
『ふふっ……おやすみなさい……』
そして僕は、バケモノに食べられた。
333 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:34:39.95 ID:7QBX1G3o
――あたたかい。
肌の向こうから感じるぬくもりに、ボクの頭から単語が溢れた。
その単語を堺に、ボクの意識は急速に微睡みから目覚め始めた。
ゆっくりと、瞼を開く。だけど何も見えない。
見えなくてもいいじゃないかとボクは思ったのだけど、
ボクの身体は勝手に瞬きを繰り返し、やがて緑色に染まった世界をボクに見せてみせた。
そんな世界でも、鬱蒼とした森が広がっているのがよく見えた。
それはいつか映画で見た、死闘を求めて宇宙を彷徨う某狩猟宇宙人の視界に似ていた。
視覚が戻ると、身体の五感が一気にスタートアップを始めた。
「ん……ん、ごポ……」
そして嗅覚を感じようと息を吸おうとしたとき、ボクは液体に包まれていることを理解した。
その液体の質感にボクは覚えを感じ……そして全てを思い出した。
その時だった。
瞼を閉じれば再び眠れそうなボクの周りの小さな空間が、いきなり崩壊を始めたのだ。
そしてボクの身体は重力に従い、地面へと落とされた。
「ぐっ! ゲホッ、ゲホッ……!」
背中を打つと同時に身体の中を行き渡っていたその液体を宙へ吐き出す。
随分と久しぶりに感じる重力に、ボクは思わず気持ちが悪くなった。
『大丈夫、落ち着いて……』
混乱にグルグルと回転する脳に、誰かの声が静かに響く。
明らかに耳の奥底から聞こえてくるその声は、不思議と不安定なボクの気持ちをスッと安定させた。
「っ、はぁ、はぁ……」
『そう、その調子……ゆっくりと呼吸を繰り返すの』
身体が本能的に覚えていた呼吸法で、程なくして視界も安定を取り戻していく。
緑色の世界が静まるのと引き換えに黒が主体の色が世界が目の前を包み込む。、
わずかな月明かりに照らされた足元のヒメジョオンに目の焦点が合わさるのと、ボクが疑問を口にしたのはほぼ同時だった。
「……なんで……」
『クスッ……残念? 死ねなくて』
その純粋なボクの落胆を楽しむように、頭の中の声がほくそ笑んだ。
334 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:35:33.27 ID:7QBX1G3o
『でも誰も殺すなんて言ってないしね。と言っても、もう1年も前だし覚えてない、か』
「いち、ねん……?」
唐突に聞かされた時の経過に、ボクは記憶の栞を辿った。
その中で一番手前にある記憶は……そう、この頭の中に響く声の主に食べられた記憶だった。
それはつい昨日のことのように感じられながらも、どこか形が古ぼけていた。
『ほら、後ろの“繭”。その中でアナタは1年間眠っていたのよ?』
「ま、ゆ……?」
頭の中の声に従い、ボクは背後を振り返った。
するとそこには薄緑色の薄皮に包まれた半球体がぽうっと存在していた。
その上部はまるで花が開いたかのように四方にめくれ、球体を維持している下部は透明な液体で満たされていた。
それが、さっきまでボクの身体を包み、満たしていたあの液体だということは容易に想像がついた。
そして……ようやくボクは、僕でなくなっていることに気づいた。
「こ、れ……だれ……?」
『誰って……アナタしかいないでしょ?』
困惑したボクの調子にわざと合わせるかのように、頭の中の声は答えた。
このか弱くも肉付きの良い華奢な腕も、月夜に照らされ白く光る肌も、下半身を隠すこの胸も……ボク?
いや……こんなの僕じゃない。
『うん。その身体は。アナタと私の……そう、きみと私の子供の身体』
ボクの否定を頭の中の声は肯定し、突拍子のない真実を口にした。
「ボクとキミの、こ、こど、も……?」
『そう。きみの精子を私の中で培養して作った子供。それが今のアナタの身体』
そんなのSFだ、と笑い飛ばすことは今のボクには到底できなかった。
ただただ困惑する頭で、なんとか現実を理解しようとすることだけが、ボクのできる唯一の努力だった。
335 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:36:52.19 ID:7QBX1G3o
”ここ”という言葉だけがやや右の方から聞こえ、ボクは促されるままに右の方向を向く。
するとそこには先ほどの繭と同じものがそこにあった。
薄い皮の向こうには確かに、僕の姿があった。
だけどその身体は体育座りのように丸くなり、まさしく眠っているかのようにふたつの瞼も静かに閉じられていた。
『言っとくけど、返さないわよ?』
ボクは意思を伝える前に、頭の中の声は返答をした。
「な、なんでよ!」
『当たり前でしょ。だって、もう私のだもん』
その頭の中の言葉を示すように、繭の中の僕はうっすらと目を開け、そしてニヤリとボクに笑いかけてきた。
薄皮の向こうにいる実像の僕のその表情に、ボクは思わず後退りをしてしまう。
しかしそれを踏ん張って、ボクは僕を取り戻そうと右足を一歩、繭の方向へと右足を――
「言っておくけど、この身体も私のモノだよ?」
踏み出せなかった。
持ち上がった右足が一瞬宙で停止すると、ボクの身体は急にボクの意思とは関係なく動き出した。
「この右足も、この右手も、この胸も、子宮も、脳みそも……そして、キミ自身も、ね。ふふっ」
ボクの身体でボク以上に自然に振舞うその身振り手振り口振りに、ボクは自分が一体どこにいるのかが分からなくなってしまう。
でも、たとえ身体がこの頭の中の声のモノだとしても、このボク自身はボクのものだ。
決して、頭の中の声のモノじゃない。
しかし下腹部から急にこみ上げてきた熱さが、そんなボクの答えをねじ伏せた。
336 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:37:48.95 ID:7QBX1G3o
「ふ、ぁ……! んっ、うぅ……」
突然のその感覚に嬌声が漏れ、思わず右手でむき出しの股間を覆い隠す。
それでも手のひらの向こうに存在する穴の奥底の場所からの火照りに、思わず両膝がくっつきあってしまう。
『ふふっ、感じてきたでしょ? 身体と、キミの心が』
再び頭の中に戻ってきた声は、いかにも自分がそうさせていると主張するように、嬉々とした口調で続ける。
『その気持ちよさはキミの身体が感じさせてるもの。でも、その感覚に“迷っている”のはキミの心自身、でしょ?』
そう。ボクは迷っていた。
ボクの身体の下腹部の火照りに応える方法は、本能的にわかっていた。
それは例えるなら、虫に刺されて痒くなったところを掻くような、ごくごく自然な行動だった。
『挿れたいんでしょ、その穴の中に指を』
頭の中の声が、ボクの心を代弁する。
ぷっくりと膨れた陰核に指先が触れるだけで、全身を痺れるような快感が走り抜ける。
ジリジリとくすぶっている欲求が、全てを飲み込む炎のように、その熱を上げていく。
『ねっ? キミのその綺麗な指先で、もっとグチャグチャにしたくない?』
「うっぅ……だ、ダメ、だよ、こん、なのっ……!」
内なる声から逃れるように頭を振るが、右手は股間から剥がれようとはしなかった。
一方で、左手が胸の突起を乱暴に揉みしだいていることにボクが気づいてしまったとき、
無意識下で右手の中指がボクの中へと滑り込んでしまった。
「ひっ、あっ!」
『あはっ、挿れちゃったね。ふふっ、気持ちいいでしょ?』
腹部に入り込んでくる異物感にボクは虚空を見上げ、快感の波に身を委ねる。
337 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:38:23.78 ID:7QBX1G3o
『ありゃまぁ、軽くイっちゃった?』
「だ、だめだよ、こんなの……」
『んふふ、そんなこと言いながらも身体はしっかりと素直なんだから』
「ふ、ぁ……!」
頭の中の声が言うとおりだった。
ボクは否定の言葉を口にしながらも、入り込んだ指で自らの中をかき回しつつ、
さらなる快感を求め続けていた。
どうすればもっと気持ちよくなれるのか、という純粋な気持ちでボクはひたすらに全身をまさぐり始めた。
「んぅ! ち、くびが、きもちい、っ!」
『ひぁ……私まで感じてきちゃった……♪』
先程まであった羞恥心は既に頭からはとっくのとうに剥がれ落ち、木の幹にもたれ掛かって白い息を吐き出し続けた。
ただ、ガサガサの木の幹は体に電流が走るたびボクの皮膚に引っかかり、その小さな苦痛がボクに少しだけ理性を残してくれていた。
そんな時、まるで慕ってくる動物のように、優しい力使いでボクの身体に何かが絡みついてきた。
「ひぁぅ! な、なに……!?」
『ふふっ、大丈夫。動かしてるのは私だから。ほら、こっちのほうがラクでしょ?』
ボクの両足と下腹部に巻き付いたそれは、見た目は森というよりジャングルに生い茂っていそうなツタのようだが、
そのウネウネとした動きは海をゆらめくタコを彷彿とさせた。
突如出現したその触手に、ボクは思わず呆然と身を硬直させてしまった。
『あ~もう、危なくなっていば。ほ、らっ♪』
その動きはまるで獲物ににじり寄るヘビのようだった。
下腹部に絡みついていた触手が乳首に、両足に絡みついていた触手は秘所に近づき、その丸っこい先端が開いたかと思うと、
粘りっけのある液体を垂らしながら、ぷっくりと膨れたそれぞれの敏感な部分に噛み付いてきたのだ。
その瞬間、ボクはまた快楽の渦の中へと一気に引きずり込まれた。
338 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:40:12.33 ID:7QBX1G3o
「っあぅ!? やっ、だっ、んんぅぅぅう!」
自分でいじった時とは全く別の刺激に、ボクの身体を激しい電流が駆け巡る。
しかしボクはどれだけ暴れようと、身体に絡みついた触手が丁寧に身体をつなぎとめてくれた。
それはまるで心地よく揺れるハンモックのようだった。
それでも触手の先端はしっかりとあまがみを続け、時折いやらしい音を立てて吸い付けてくる。
「っあぅううぅ! らっ、めっ! こんなっ、きもちよす、っぅう!」
『ひゃぅっ♪ そろそろ、かなっ……』
どこか艶っぽい頭の中の声がボクの高まりを後押しする。
木々の隙間から夜空を見上げ、何もしなくても快感を与えられるということに更なる快感を覚えながら、
ボクは何かが下腹部の奥から出ようとしているのを感じた。
それはオトコノコの時のあの気持ちよさに似ていて、自然と息が小刻みに震え始めた。
「で、るぅ……♪ なにか、出ちゃうっっっ……!」
『う、んっっ♪ いこっ、いっしょ、にっっ……!』
いっしょに、という言葉がボクの全てをぎゅっと抱き込むように感じ、身体から溢れる快感に身を委ねた。
「『ふっ、あっっっっっっっううううううう♪』」
頭を後ろに投げ出し、全身を支配する快感に何度も身体を震わせる。
音が消えた耳の奥底に時折、びしゃっと響く粘っこい音がボクがイッたことを実感させてくれていた。
『んぅぅ……たまんない♪ ほらっ、いっぱい出てる……♪」
「ぁっ♪ ……ぅ、ん……♪」
段々と快感の波が引いてくると、頭の中の声に従い、触手がボクの頭をゆっくりと持ち上げてくれた。
そしてボクは未だ快感が残る秘所に目をやると、その快感の小さな波に合わせて、
液体のようなものがびしゃりびしゃりとボクの中から外へと溢れ出ているのが見えた。
そのままボクはしばらくの間、先ほどの大波の余韻に浸りつつ、その様子を眺めていた。
339 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:41:44.09 ID:7QBX1G3o
『……よし、お疲れ様♪』
頭の中の声がそんな言葉を口にすると、触手たちは優しくボクを地面へと降ろしてくれた。
あれだけの快楽に身を委ねていたのに、不思議と身体に疲労感はなかった。
「ふぅ……ひゃっ!?」
火照ったままのむき出しのお尻に触れる、夜露に濡れた葉っぱの程よい冷たさに思考を停止していると、
爪先にぬるっとした感覚をボクは感じ、間の抜けた声を吐き出した。
『あっ、こら。だめだめ、暴れちゃ。その子、さっきキミが産んだ“子”よ』
「えっ? ひぅぅ!」
頭の中の声に疑問を抱いた一瞬の隙に、その感覚はボクの下腹部まで這い上がっていた。
その一瞬、ボクの下半身がぬらっと光るのを見て、ボクは目を凝らした。
そしてボクは気づいた。
その感覚の原因が、先ほどボクの中から溢れ出したあの液体であったことに。
見た目は無色透明な液体なのだが、月明かりに照らされた部分が妖しく煌き、
獲物を丸呑みするかのように脈動しながらボクの頭の方へと迫ってきていた。
本能的な危機感を感じながらも声を出すことも忘れ、しかし身体をよじらせてなんとかその動きを止めようとボクはもがく。
身体からそれをはじき飛ばそうと両手を払うものの、今度はその手の指先にしっかりと液体が絡みつき、
肩の方へとせり上がってくる。
やがて抵抗むなしく、ボクの首までの身体の表面はその液体に覆い尽くされてしまった。
心臓がドクンと脈を打つたびに小さな波を立てながら全身を愛撫するその液体を、ボクはなすすべもなく見つめていた。
「ぅぅ……え……? っぁ……!」
快感とは微妙に違う全身の感覚にボクが戸惑いの声を上げると、液体が繭の中のそれに似た緑色の光を発し始めた。
それらは全身を行き交う血液のように蠢き、何とも言えないもどかしさにもじもじと身体をくねらせた。
数秒ほど経つとその光と感覚はなりを潜め始め、ボクの身体は再び月明かりによって色付けがされた。
するとそこには、黒いセーラー服に身を包んだボクの姿があった。
342 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/22(月) 02:17:11.94 ID:L/Rb1QRm
『うんうん、よく似合ってる』
「こ、これって……?」
『それはさっきキミが産んだ子が擬態してくれてるの。ふふっ、よくできてるでしょ?』
擬態、という言葉にボクはこれが偽物なのかと思わず手が伸びた。
人工的なセーラー服の布地の感覚、スカートの裾の翻り具合、ツルツルとしたいやらしいパンストの締め付け具合。
とてもではないが偽物とは思えないその感覚にボクが驚いていると、不意に秘所を何かが撫でていった。
「ひゃうっ!?」
『あはは、キミが好きだからじゃれてるみたい。まぁ“おかあさん”だもんね』
「お、おかあさんって……ボク、が……?』
『もちろん。キミ自身、さっきその子が自分のナカから生まれたのを見たでしょ?』
そうは言われても理解が追いつかないボクに、頭の中の声は続ける。
『キミが宿ってるのは私が持ってきた“卵”とオトコノコのキミの“種”で産まれた子供のカラダ。
つまり、その子供においてキミはおとうさんで私がおかあさん、ってこと。ふふっ』
嬉々とた様子で説明する頭の中の声の言葉に、ボクはちらりと繭の中で眠る僕の身体を見た。
いつの間にかボクに笑いかけたあの不気味な表情はなりを潜め、彼はゆっくりと眠っているようだった。
『そしてその子供、つまり今のキミが寝ている間に、“種”を仕込んでおいたの。今度は私が、ね。
それがキミの中の“卵”と結びついてその子が生まれたの。まぁ本来、人の“卵”じゃ生まれないんだけど、
なんせ今のキミの身体は見た目こそ人間だけど、その中身は人間と“エイリアン”のハーフだからね』
饒舌に非現実的な言葉を羅列した頭の中の声は、やっとその正体をボクに明言した。
不思議とボクに大きな驚きなかった。
それは頭の中の声のとおり、ボクが既に人間じゃなくなっていることを裏付けているようにも感じた。
そのせいか、ボクの口からはひどく冷え切った質問が溢れた。
「目的は、地球の侵略、とか?」
『う~ん、そんな大それたものじゃないんだけど……。第一目的は私という個体の維持だけど、
まぁでもどうせなら、家族を増やしたいかな』
この星の外にも“家族”という概念があること、ボクは喜びと悲しみを覚えた。
343 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/22(月) 02:17:57.54 ID:L/Rb1QRm
『とは言っても、私たちはキミたちと違って安定した“肉体”がないの。ただ、生命体に宿って支配することができる。
いわゆる……そう、寄生。今の私は、ほらこの木に宿ってるの』
ゆらりと現れた触手が示す、繭の隣の木。
それはこの森の中でも一際小さい、わずか2mほどの小さな木だった。
『1年前にキミがこの森を訪れるよりも少し前に、私は不時着して、その時は寄生していた別の星の生命体……つまり、、
キミたちから見れば宇宙人の身体に宿ってたんだけどその身体が力尽きちゃって、
色々な設備とかも壊れちゃて……弱った私がやっと宿れたのはこの木だけだったの』
その言葉に合わせて、どこか自虐的に触手を震わせてかか、頭の中の声は続けた。
『でもこの木に宿ったのはいいけど、これだけ背が低いと陽の光も当たらないから光合成のエネルギーが手に入らなくて……、
かと言って別の何かに寄生し直すだけの力も残っていなかった。……正直、あの時はもう諦めてた』
「……そこに、僕がやってきた」
『ふふっ、そう。私と同じように、生きることを諦めたキミが、ね』
触手がふわりとボクの頬を愛でるように撫でた。
『そしてキミを取り込んだあと、私はキミだったものの“種”を食べて私自身を回復させてながら、
唯一残った私の“卵”にキミだったものの“種”を植え付けた。そして1年後の今日、やっとその卵が孵った』
「それが……この、身体」
『そう。私とキミの、子供』
ボクは改めて自分の身体を見下ろした。
白い指先、たわわに実った胸のふくらみ、華奢ながらも艶やかに伸びた足。
僕の“種”から生まれたというその身体を見てから、ボクは言った。
「じゃあなんで……ボクは自分自身の子供の身体に宿っているの?」
『その理由は簡単。私の力が完全じゃなくて、その身体に魂が作れなかったから、代わりにキミの魂を入れてあげたの。
人間ってそう考えるとすごいわよ? 無意識でも孕みさえすれば魂を作れちゃうんだから』
頭の中の声に言われて、ボクも確かにと少しだけ感心してしまう。
『魂っていうのは身体じゃなくて心から生まれるものだから。ほら、キミが生んだその子。
その子はキミが母体となっていたから魂が宿っているの』
その言葉に呼応するように、服に擬態しているボクの子供は優しくボクの身体を少し締め付けてきた。
きっと本来のセーラー服には存在していないであろうポカポカとした暖かさを、ボクは一瞬だけ感じた。
344 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/22(月) 02:20:12.09 ID:L/Rb1QRm
『私がキミをその身体に定着させて1年間育ててきた理由の一つは、つまり私の代わりにキミに子供を生んでもらうため。
もう一つは……』
焦らすように、頭の中の声は間を開ける。
だけどボク自身もはやそれは気になることではなく、頭の中の声もそれを察したのか、程なくしてもうひとつの理由を口にした。
『それはキミに興味を持ったから』
「ボク、に?」
どうとでも捉えることができそうなアバウトな答えにボクが聞き返すと、頭の中の声はなめらかに答えた。
『そっ。だって死にたい死にたいって自分の身体に言わせておきながら、心は生きたい生きたいって言ってるんだもん。
ヘンな子だなぁ、って思ったから』
「ボ、ボクは生きたいなんて思ってない!」
考えるよりも先に、口が先に動いていた。
それを待っていたかのように、頭の中の声は笑う。
『ほら。キミはよくも考えもせずに死にたいって言ってるだけ。死にたいんじゃなくて、死んで“楽になりたい”だけ』
「っ! ……ボクの……ボクの何が分かるんだよ、キミに!」
またしても口が勝手に動く。
この感覚を、ボクは1年前にも味わっていた。
そう、今と全く同じように目の前の触手へと僕は辛さをぶちまけ、そして彼女は僕の話を静かに聞き、そしてボクを優しく食べた。
だけどその時と、今は違った。
『そっ。じゃあ、死ねば』
「えっ……? ぐっ、うぐんんぅぅううううう!?」
それは一瞬の出来事だった。
目の前の触手がわずかに身をくねらせたかと思うと、乱暴にボクの口へと侵入してきたのだ。
さらにいつの間にか周りを取り囲んでいた触手に四肢が拘束される。その力はまるでボクを引き裂かんとするかのように容赦がない。
『このままキミの心を食べちゃえば、キミの心は死ねるわ。キミの望み通りに、ね』
一瞬、胸の奥から身体が引きずり出されるような感覚を感じ、そして何も感じなくなった。
ただ次の瞬間には口から続く異物感と共に、言いようのない苦しみが全身を襲った。
『ふふっ、今キミの心にアマガミしてあげたの。どう? 死にそうだったでしょ』
温かみを失った頭の中の声が冷ややかにボクに囁いた。
345 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/22(月) 02:20:46.62 ID:L/Rb1QRm
『まぁキミの元の身体は私の栄養分として、子供の身体は人間との接触に、それぞれだ~いじに使わせてもらうから、安心して』
先ほどこの身体がボクの意思とは無関係に言葉を喋ったことを思い出した。
そうだ。ボクはこの身体を使わせてもらっているに過ぎなかったんだ。
彼女にしてみれば、その逆。使わせて上げているに過ぎない。
なのにボクが死にたい死にたいといったのが、逆鱗に触れてしまったのだろう。
身体は苦しいはずなのに、頭の中はそんなことが考えられるくらいにボクは冷め切っていた。
それは捕食者と非捕食者の関係がどうしようもないぐらいに理解できたからであった。
でも、彼女はボクの心を食べることはしなかった。
「っ……んげほっ、ぐぅtゲホッゲホッ!」
突然ボクの中に入り込んだ触手が逆流して抜け出たかと思うと、四肢を拘束していた触手たちもボクを解放した。
地面に四つん這いになり、酸素を取り込むボクの背中を優しく撫でてくれる感覚を感じた。
それが身にまとっているボクの子供がしてくれていることだと、ボクはすぐに気づいた。
苦しいのに、胸がポカポカと暖かくなるその懐かしい感覚に、ボクは思いを巡らせてから言った。
「はぁはぁ……あり、がと」
ボクの言葉に、ボクの子供はまるで懐くかのようにボクの全身にその身をこすらせてきた。
『……キミのその身体はまだまだ不完全。5日間、外で活動したらまた私の中で作り直さないといけない。
その5日間だけ、私たちに協力してみない? それでも生きるのが嫌だったら、キミの心を食べてあげる。
もちろん、さっきみたいな痛さなんて感じさせないように、優しく、ね』
触手がボクの頬を撫で、それから顔の前で止まった。
この返答次第では、再びこの触手がボクの中に入り込み、きっとボクを殺してくれるだろう。
背中に感じた鳥肌のような感覚は、一体誰のものなんだろうと感じながら、ボクは考えた。
そしてボクは、その触手を握った。
それは体液で滑りながらも、身に纏ったボクの子供と同じような暖かさが確かにあった。
「……正直、生きたいとは思えないけど……その……」
うまく言葉にできないその思いに、ボクはセーラー服の袖を撫でた。
彼女はそのボクの仕草に、優しい声を掛けてくれた。
『ふふっ……5日間でどうしても嫌だったら、その子に気兼ねすることはないよ。
キミは死を選んでも、私がいるから。それに、その子もキミが苦しむことは、望んでないから』
「……うん。ありがとう」
『ぅ~、でもなんか妬けちゃうなぁ。一応私も、キミの家族なんだけどなぁ~』
その嫉妬心を表すかのように、目の前の触手は頭を垂れながらそっぽを向いた。
「……ぷっ。ふふふっ」
思わず笑いが溢れていた。
そんな風に自然と笑えたは何年ぶりだろうか、と思い出そうとしてボクはやめた。
だってボクはもう、生まれ変わったのだから。
『そう。キミはもう人間じゃない。私たち、エイリアンの家族』
「……うん。よろしく、ね」
『ふふっ、こちらこそ』
そしてボクの新たな生活が幕を開けた。
暑い夏の日。
死に場所を求めていた僕が樹海の奥底で出くわしたバケモノ。
それは、地面から伸びる一本の図太い触手だった。
『ねぇ……食べて、いい? きみの全て、もらっていい?』
ニュルニュルと蠢くそれは蠅を飲み込む食虫植物のように、四方へその身を裂いた。
赤黒くドクドクと脈打つ触手の中から、ダラリと粘っこい液体が僕の顔へと垂れてくる。
「……いいよ」
もはや自分の答えなど必要なさそうにも感じたが、口が勝手に動いていた。
背中のリュックに入った無機質な縄で最後を遂げるよりも、
それはまだ苦しくなさそうに見えたからかもしれない。
『そう♪ じゃあ遠慮なく……』
暗闇が迫ってくる。
木陰の御蔭で免れていた湿度に混じった暑さとは違う、生物的な暖かさを肌の向こうで感じた。
程なくして、僕の身体を触手が締め付けてきた。
苦しさはあるものの、やはり始めに考えていた最後よりも痛みはない。
加えて少しずつ僕を奥へ奥へと飲み込もうとする触手の脈動は、
21年前にいたハジマリの場所を連想させ、僕の心を安心させた。
『ふふっ……おやすみなさい……』
そして僕は、バケモノに食べられた。
333 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:34:39.95 ID:7QBX1G3o
――あたたかい。
肌の向こうから感じるぬくもりに、ボクの頭から単語が溢れた。
その単語を堺に、ボクの意識は急速に微睡みから目覚め始めた。
ゆっくりと、瞼を開く。だけど何も見えない。
見えなくてもいいじゃないかとボクは思ったのだけど、
ボクの身体は勝手に瞬きを繰り返し、やがて緑色に染まった世界をボクに見せてみせた。
そんな世界でも、鬱蒼とした森が広がっているのがよく見えた。
それはいつか映画で見た、死闘を求めて宇宙を彷徨う某狩猟宇宙人の視界に似ていた。
視覚が戻ると、身体の五感が一気にスタートアップを始めた。
「ん……ん、ごポ……」
そして嗅覚を感じようと息を吸おうとしたとき、ボクは液体に包まれていることを理解した。
その液体の質感にボクは覚えを感じ……そして全てを思い出した。
その時だった。
瞼を閉じれば再び眠れそうなボクの周りの小さな空間が、いきなり崩壊を始めたのだ。
そしてボクの身体は重力に従い、地面へと落とされた。
「ぐっ! ゲホッ、ゲホッ……!」
背中を打つと同時に身体の中を行き渡っていたその液体を宙へ吐き出す。
随分と久しぶりに感じる重力に、ボクは思わず気持ちが悪くなった。
『大丈夫、落ち着いて……』
混乱にグルグルと回転する脳に、誰かの声が静かに響く。
明らかに耳の奥底から聞こえてくるその声は、不思議と不安定なボクの気持ちをスッと安定させた。
「っ、はぁ、はぁ……」
『そう、その調子……ゆっくりと呼吸を繰り返すの』
身体が本能的に覚えていた呼吸法で、程なくして視界も安定を取り戻していく。
緑色の世界が静まるのと引き換えに黒が主体の色が世界が目の前を包み込む。、
わずかな月明かりに照らされた足元のヒメジョオンに目の焦点が合わさるのと、ボクが疑問を口にしたのはほぼ同時だった。
「……なんで……」
『クスッ……残念? 死ねなくて』
その純粋なボクの落胆を楽しむように、頭の中の声がほくそ笑んだ。
334 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:35:33.27 ID:7QBX1G3o
『でも誰も殺すなんて言ってないしね。と言っても、もう1年も前だし覚えてない、か』
「いち、ねん……?」
唐突に聞かされた時の経過に、ボクは記憶の栞を辿った。
その中で一番手前にある記憶は……そう、この頭の中に響く声の主に食べられた記憶だった。
それはつい昨日のことのように感じられながらも、どこか形が古ぼけていた。
『ほら、後ろの“繭”。その中でアナタは1年間眠っていたのよ?』
「ま、ゆ……?」
頭の中の声に従い、ボクは背後を振り返った。
するとそこには薄緑色の薄皮に包まれた半球体がぽうっと存在していた。
その上部はまるで花が開いたかのように四方にめくれ、球体を維持している下部は透明な液体で満たされていた。
それが、さっきまでボクの身体を包み、満たしていたあの液体だということは容易に想像がついた。
そして……ようやくボクは、僕でなくなっていることに気づいた。
「こ、れ……だれ……?」
『誰って……アナタしかいないでしょ?』
困惑したボクの調子にわざと合わせるかのように、頭の中の声は答えた。
このか弱くも肉付きの良い華奢な腕も、月夜に照らされ白く光る肌も、下半身を隠すこの胸も……ボク?
いや……こんなの僕じゃない。
『うん。その身体は。アナタと私の……そう、きみと私の子供の身体』
ボクの否定を頭の中の声は肯定し、突拍子のない真実を口にした。
「ボクとキミの、こ、こど、も……?」
『そう。きみの精子を私の中で培養して作った子供。それが今のアナタの身体』
そんなのSFだ、と笑い飛ばすことは今のボクには到底できなかった。
ただただ困惑する頭で、なんとか現実を理解しようとすることだけが、ボクのできる唯一の努力だった。
335 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:36:52.19 ID:7QBX1G3o
”ここ”という言葉だけがやや右の方から聞こえ、ボクは促されるままに右の方向を向く。
するとそこには先ほどの繭と同じものがそこにあった。
薄い皮の向こうには確かに、僕の姿があった。
だけどその身体は体育座りのように丸くなり、まさしく眠っているかのようにふたつの瞼も静かに閉じられていた。
『言っとくけど、返さないわよ?』
ボクは意思を伝える前に、頭の中の声は返答をした。
「な、なんでよ!」
『当たり前でしょ。だって、もう私のだもん』
その頭の中の言葉を示すように、繭の中の僕はうっすらと目を開け、そしてニヤリとボクに笑いかけてきた。
薄皮の向こうにいる実像の僕のその表情に、ボクは思わず後退りをしてしまう。
しかしそれを踏ん張って、ボクは僕を取り戻そうと右足を一歩、繭の方向へと右足を――
「言っておくけど、この身体も私のモノだよ?」
踏み出せなかった。
持ち上がった右足が一瞬宙で停止すると、ボクの身体は急にボクの意思とは関係なく動き出した。
「この右足も、この右手も、この胸も、子宮も、脳みそも……そして、キミ自身も、ね。ふふっ」
ボクの身体でボク以上に自然に振舞うその身振り手振り口振りに、ボクは自分が一体どこにいるのかが分からなくなってしまう。
でも、たとえ身体がこの頭の中の声のモノだとしても、このボク自身はボクのものだ。
決して、頭の中の声のモノじゃない。
しかし下腹部から急にこみ上げてきた熱さが、そんなボクの答えをねじ伏せた。
336 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:37:48.95 ID:7QBX1G3o
「ふ、ぁ……! んっ、うぅ……」
突然のその感覚に嬌声が漏れ、思わず右手でむき出しの股間を覆い隠す。
それでも手のひらの向こうに存在する穴の奥底の場所からの火照りに、思わず両膝がくっつきあってしまう。
『ふふっ、感じてきたでしょ? 身体と、キミの心が』
再び頭の中に戻ってきた声は、いかにも自分がそうさせていると主張するように、嬉々とした口調で続ける。
『その気持ちよさはキミの身体が感じさせてるもの。でも、その感覚に“迷っている”のはキミの心自身、でしょ?』
そう。ボクは迷っていた。
ボクの身体の下腹部の火照りに応える方法は、本能的にわかっていた。
それは例えるなら、虫に刺されて痒くなったところを掻くような、ごくごく自然な行動だった。
『挿れたいんでしょ、その穴の中に指を』
頭の中の声が、ボクの心を代弁する。
ぷっくりと膨れた陰核に指先が触れるだけで、全身を痺れるような快感が走り抜ける。
ジリジリとくすぶっている欲求が、全てを飲み込む炎のように、その熱を上げていく。
『ねっ? キミのその綺麗な指先で、もっとグチャグチャにしたくない?』
「うっぅ……だ、ダメ、だよ、こん、なのっ……!」
内なる声から逃れるように頭を振るが、右手は股間から剥がれようとはしなかった。
一方で、左手が胸の突起を乱暴に揉みしだいていることにボクが気づいてしまったとき、
無意識下で右手の中指がボクの中へと滑り込んでしまった。
「ひっ、あっ!」
『あはっ、挿れちゃったね。ふふっ、気持ちいいでしょ?』
腹部に入り込んでくる異物感にボクは虚空を見上げ、快感の波に身を委ねる。
337 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:38:23.78 ID:7QBX1G3o
『ありゃまぁ、軽くイっちゃった?』
「だ、だめだよ、こんなの……」
『んふふ、そんなこと言いながらも身体はしっかりと素直なんだから』
「ふ、ぁ……!」
頭の中の声が言うとおりだった。
ボクは否定の言葉を口にしながらも、入り込んだ指で自らの中をかき回しつつ、
さらなる快感を求め続けていた。
どうすればもっと気持ちよくなれるのか、という純粋な気持ちでボクはひたすらに全身をまさぐり始めた。
「んぅ! ち、くびが、きもちい、っ!」
『ひぁ……私まで感じてきちゃった……♪』
先程まであった羞恥心は既に頭からはとっくのとうに剥がれ落ち、木の幹にもたれ掛かって白い息を吐き出し続けた。
ただ、ガサガサの木の幹は体に電流が走るたびボクの皮膚に引っかかり、その小さな苦痛がボクに少しだけ理性を残してくれていた。
そんな時、まるで慕ってくる動物のように、優しい力使いでボクの身体に何かが絡みついてきた。
「ひぁぅ! な、なに……!?」
『ふふっ、大丈夫。動かしてるのは私だから。ほら、こっちのほうがラクでしょ?』
ボクの両足と下腹部に巻き付いたそれは、見た目は森というよりジャングルに生い茂っていそうなツタのようだが、
そのウネウネとした動きは海をゆらめくタコを彷彿とさせた。
突如出現したその触手に、ボクは思わず呆然と身を硬直させてしまった。
『あ~もう、危なくなっていば。ほ、らっ♪』
その動きはまるで獲物ににじり寄るヘビのようだった。
下腹部に絡みついていた触手が乳首に、両足に絡みついていた触手は秘所に近づき、その丸っこい先端が開いたかと思うと、
粘りっけのある液体を垂らしながら、ぷっくりと膨れたそれぞれの敏感な部分に噛み付いてきたのだ。
その瞬間、ボクはまた快楽の渦の中へと一気に引きずり込まれた。
338 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:40:12.33 ID:7QBX1G3o
「っあぅ!? やっ、だっ、んんぅぅぅう!」
自分でいじった時とは全く別の刺激に、ボクの身体を激しい電流が駆け巡る。
しかしボクはどれだけ暴れようと、身体に絡みついた触手が丁寧に身体をつなぎとめてくれた。
それはまるで心地よく揺れるハンモックのようだった。
それでも触手の先端はしっかりとあまがみを続け、時折いやらしい音を立てて吸い付けてくる。
「っあぅううぅ! らっ、めっ! こんなっ、きもちよす、っぅう!」
『ひゃぅっ♪ そろそろ、かなっ……』
どこか艶っぽい頭の中の声がボクの高まりを後押しする。
木々の隙間から夜空を見上げ、何もしなくても快感を与えられるということに更なる快感を覚えながら、
ボクは何かが下腹部の奥から出ようとしているのを感じた。
それはオトコノコの時のあの気持ちよさに似ていて、自然と息が小刻みに震え始めた。
「で、るぅ……♪ なにか、出ちゃうっっっ……!」
『う、んっっ♪ いこっ、いっしょ、にっっ……!』
いっしょに、という言葉がボクの全てをぎゅっと抱き込むように感じ、身体から溢れる快感に身を委ねた。
「『ふっ、あっっっっっっっううううううう♪』」
頭を後ろに投げ出し、全身を支配する快感に何度も身体を震わせる。
音が消えた耳の奥底に時折、びしゃっと響く粘っこい音がボクがイッたことを実感させてくれていた。
『んぅぅ……たまんない♪ ほらっ、いっぱい出てる……♪」
「ぁっ♪ ……ぅ、ん……♪」
段々と快感の波が引いてくると、頭の中の声に従い、触手がボクの頭をゆっくりと持ち上げてくれた。
そしてボクは未だ快感が残る秘所に目をやると、その快感の小さな波に合わせて、
液体のようなものがびしゃりびしゃりとボクの中から外へと溢れ出ているのが見えた。
そのままボクはしばらくの間、先ほどの大波の余韻に浸りつつ、その様子を眺めていた。
339 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:41:44.09 ID:7QBX1G3o
『……よし、お疲れ様♪』
頭の中の声がそんな言葉を口にすると、触手たちは優しくボクを地面へと降ろしてくれた。
あれだけの快楽に身を委ねていたのに、不思議と身体に疲労感はなかった。
「ふぅ……ひゃっ!?」
火照ったままのむき出しのお尻に触れる、夜露に濡れた葉っぱの程よい冷たさに思考を停止していると、
爪先にぬるっとした感覚をボクは感じ、間の抜けた声を吐き出した。
『あっ、こら。だめだめ、暴れちゃ。その子、さっきキミが産んだ“子”よ』
「えっ? ひぅぅ!」
頭の中の声に疑問を抱いた一瞬の隙に、その感覚はボクの下腹部まで這い上がっていた。
その一瞬、ボクの下半身がぬらっと光るのを見て、ボクは目を凝らした。
そしてボクは気づいた。
その感覚の原因が、先ほどボクの中から溢れ出したあの液体であったことに。
見た目は無色透明な液体なのだが、月明かりに照らされた部分が妖しく煌き、
獲物を丸呑みするかのように脈動しながらボクの頭の方へと迫ってきていた。
本能的な危機感を感じながらも声を出すことも忘れ、しかし身体をよじらせてなんとかその動きを止めようとボクはもがく。
身体からそれをはじき飛ばそうと両手を払うものの、今度はその手の指先にしっかりと液体が絡みつき、
肩の方へとせり上がってくる。
やがて抵抗むなしく、ボクの首までの身体の表面はその液体に覆い尽くされてしまった。
心臓がドクンと脈を打つたびに小さな波を立てながら全身を愛撫するその液体を、ボクはなすすべもなく見つめていた。
「ぅぅ……え……? っぁ……!」
快感とは微妙に違う全身の感覚にボクが戸惑いの声を上げると、液体が繭の中のそれに似た緑色の光を発し始めた。
それらは全身を行き交う血液のように蠢き、何とも言えないもどかしさにもじもじと身体をくねらせた。
数秒ほど経つとその光と感覚はなりを潜め始め、ボクの身体は再び月明かりによって色付けがされた。
するとそこには、黒いセーラー服に身を包んだボクの姿があった。
342 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/22(月) 02:17:11.94 ID:L/Rb1QRm
『うんうん、よく似合ってる』
「こ、これって……?」
『それはさっきキミが産んだ子が擬態してくれてるの。ふふっ、よくできてるでしょ?』
擬態、という言葉にボクはこれが偽物なのかと思わず手が伸びた。
人工的なセーラー服の布地の感覚、スカートの裾の翻り具合、ツルツルとしたいやらしいパンストの締め付け具合。
とてもではないが偽物とは思えないその感覚にボクが驚いていると、不意に秘所を何かが撫でていった。
「ひゃうっ!?」
『あはは、キミが好きだからじゃれてるみたい。まぁ“おかあさん”だもんね』
「お、おかあさんって……ボク、が……?』
『もちろん。キミ自身、さっきその子が自分のナカから生まれたのを見たでしょ?』
そうは言われても理解が追いつかないボクに、頭の中の声は続ける。
『キミが宿ってるのは私が持ってきた“卵”とオトコノコのキミの“種”で産まれた子供のカラダ。
つまり、その子供においてキミはおとうさんで私がおかあさん、ってこと。ふふっ』
嬉々とた様子で説明する頭の中の声の言葉に、ボクはちらりと繭の中で眠る僕の身体を見た。
いつの間にかボクに笑いかけたあの不気味な表情はなりを潜め、彼はゆっくりと眠っているようだった。
『そしてその子供、つまり今のキミが寝ている間に、“種”を仕込んでおいたの。今度は私が、ね。
それがキミの中の“卵”と結びついてその子が生まれたの。まぁ本来、人の“卵”じゃ生まれないんだけど、
なんせ今のキミの身体は見た目こそ人間だけど、その中身は人間と“エイリアン”のハーフだからね』
饒舌に非現実的な言葉を羅列した頭の中の声は、やっとその正体をボクに明言した。
不思議とボクに大きな驚きなかった。
それは頭の中の声のとおり、ボクが既に人間じゃなくなっていることを裏付けているようにも感じた。
そのせいか、ボクの口からはひどく冷え切った質問が溢れた。
「目的は、地球の侵略、とか?」
『う~ん、そんな大それたものじゃないんだけど……。第一目的は私という個体の維持だけど、
まぁでもどうせなら、家族を増やしたいかな』
この星の外にも“家族”という概念があること、ボクは喜びと悲しみを覚えた。
343 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/22(月) 02:17:57.54 ID:L/Rb1QRm
『とは言っても、私たちはキミたちと違って安定した“肉体”がないの。ただ、生命体に宿って支配することができる。
いわゆる……そう、寄生。今の私は、ほらこの木に宿ってるの』
ゆらりと現れた触手が示す、繭の隣の木。
それはこの森の中でも一際小さい、わずか2mほどの小さな木だった。
『1年前にキミがこの森を訪れるよりも少し前に、私は不時着して、その時は寄生していた別の星の生命体……つまり、、
キミたちから見れば宇宙人の身体に宿ってたんだけどその身体が力尽きちゃって、
色々な設備とかも壊れちゃて……弱った私がやっと宿れたのはこの木だけだったの』
その言葉に合わせて、どこか自虐的に触手を震わせてかか、頭の中の声は続けた。
『でもこの木に宿ったのはいいけど、これだけ背が低いと陽の光も当たらないから光合成のエネルギーが手に入らなくて……、
かと言って別の何かに寄生し直すだけの力も残っていなかった。……正直、あの時はもう諦めてた』
「……そこに、僕がやってきた」
『ふふっ、そう。私と同じように、生きることを諦めたキミが、ね』
触手がふわりとボクの頬を愛でるように撫でた。
『そしてキミを取り込んだあと、私はキミだったものの“種”を食べて私自身を回復させてながら、
唯一残った私の“卵”にキミだったものの“種”を植え付けた。そして1年後の今日、やっとその卵が孵った』
「それが……この、身体」
『そう。私とキミの、子供』
ボクは改めて自分の身体を見下ろした。
白い指先、たわわに実った胸のふくらみ、華奢ながらも艶やかに伸びた足。
僕の“種”から生まれたというその身体を見てから、ボクは言った。
「じゃあなんで……ボクは自分自身の子供の身体に宿っているの?」
『その理由は簡単。私の力が完全じゃなくて、その身体に魂が作れなかったから、代わりにキミの魂を入れてあげたの。
人間ってそう考えるとすごいわよ? 無意識でも孕みさえすれば魂を作れちゃうんだから』
頭の中の声に言われて、ボクも確かにと少しだけ感心してしまう。
『魂っていうのは身体じゃなくて心から生まれるものだから。ほら、キミが生んだその子。
その子はキミが母体となっていたから魂が宿っているの』
その言葉に呼応するように、服に擬態しているボクの子供は優しくボクの身体を少し締め付けてきた。
きっと本来のセーラー服には存在していないであろうポカポカとした暖かさを、ボクは一瞬だけ感じた。
344 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/22(月) 02:20:12.09 ID:L/Rb1QRm
『私がキミをその身体に定着させて1年間育ててきた理由の一つは、つまり私の代わりにキミに子供を生んでもらうため。
もう一つは……』
焦らすように、頭の中の声は間を開ける。
だけどボク自身もはやそれは気になることではなく、頭の中の声もそれを察したのか、程なくしてもうひとつの理由を口にした。
『それはキミに興味を持ったから』
「ボク、に?」
どうとでも捉えることができそうなアバウトな答えにボクが聞き返すと、頭の中の声はなめらかに答えた。
『そっ。だって死にたい死にたいって自分の身体に言わせておきながら、心は生きたい生きたいって言ってるんだもん。
ヘンな子だなぁ、って思ったから』
「ボ、ボクは生きたいなんて思ってない!」
考えるよりも先に、口が先に動いていた。
それを待っていたかのように、頭の中の声は笑う。
『ほら。キミはよくも考えもせずに死にたいって言ってるだけ。死にたいんじゃなくて、死んで“楽になりたい”だけ』
「っ! ……ボクの……ボクの何が分かるんだよ、キミに!」
またしても口が勝手に動く。
この感覚を、ボクは1年前にも味わっていた。
そう、今と全く同じように目の前の触手へと僕は辛さをぶちまけ、そして彼女は僕の話を静かに聞き、そしてボクを優しく食べた。
だけどその時と、今は違った。
『そっ。じゃあ、死ねば』
「えっ……? ぐっ、うぐんんぅぅううううう!?」
それは一瞬の出来事だった。
目の前の触手がわずかに身をくねらせたかと思うと、乱暴にボクの口へと侵入してきたのだ。
さらにいつの間にか周りを取り囲んでいた触手に四肢が拘束される。その力はまるでボクを引き裂かんとするかのように容赦がない。
『このままキミの心を食べちゃえば、キミの心は死ねるわ。キミの望み通りに、ね』
一瞬、胸の奥から身体が引きずり出されるような感覚を感じ、そして何も感じなくなった。
ただ次の瞬間には口から続く異物感と共に、言いようのない苦しみが全身を襲った。
『ふふっ、今キミの心にアマガミしてあげたの。どう? 死にそうだったでしょ』
温かみを失った頭の中の声が冷ややかにボクに囁いた。
345 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/22(月) 02:20:46.62 ID:L/Rb1QRm
『まぁキミの元の身体は私の栄養分として、子供の身体は人間との接触に、それぞれだ~いじに使わせてもらうから、安心して』
先ほどこの身体がボクの意思とは無関係に言葉を喋ったことを思い出した。
そうだ。ボクはこの身体を使わせてもらっているに過ぎなかったんだ。
彼女にしてみれば、その逆。使わせて上げているに過ぎない。
なのにボクが死にたい死にたいといったのが、逆鱗に触れてしまったのだろう。
身体は苦しいはずなのに、頭の中はそんなことが考えられるくらいにボクは冷め切っていた。
それは捕食者と非捕食者の関係がどうしようもないぐらいに理解できたからであった。
でも、彼女はボクの心を食べることはしなかった。
「っ……んげほっ、ぐぅtゲホッゲホッ!」
突然ボクの中に入り込んだ触手が逆流して抜け出たかと思うと、四肢を拘束していた触手たちもボクを解放した。
地面に四つん這いになり、酸素を取り込むボクの背中を優しく撫でてくれる感覚を感じた。
それが身にまとっているボクの子供がしてくれていることだと、ボクはすぐに気づいた。
苦しいのに、胸がポカポカと暖かくなるその懐かしい感覚に、ボクは思いを巡らせてから言った。
「はぁはぁ……あり、がと」
ボクの言葉に、ボクの子供はまるで懐くかのようにボクの全身にその身をこすらせてきた。
『……キミのその身体はまだまだ不完全。5日間、外で活動したらまた私の中で作り直さないといけない。
その5日間だけ、私たちに協力してみない? それでも生きるのが嫌だったら、キミの心を食べてあげる。
もちろん、さっきみたいな痛さなんて感じさせないように、優しく、ね』
触手がボクの頬を撫で、それから顔の前で止まった。
この返答次第では、再びこの触手がボクの中に入り込み、きっとボクを殺してくれるだろう。
背中に感じた鳥肌のような感覚は、一体誰のものなんだろうと感じながら、ボクは考えた。
そしてボクは、その触手を握った。
それは体液で滑りながらも、身に纏ったボクの子供と同じような暖かさが確かにあった。
「……正直、生きたいとは思えないけど……その……」
うまく言葉にできないその思いに、ボクはセーラー服の袖を撫でた。
彼女はそのボクの仕草に、優しい声を掛けてくれた。
『ふふっ……5日間でどうしても嫌だったら、その子に気兼ねすることはないよ。
キミは死を選んでも、私がいるから。それに、その子もキミが苦しむことは、望んでないから』
「……うん。ありがとう」
『ぅ~、でもなんか妬けちゃうなぁ。一応私も、キミの家族なんだけどなぁ~』
その嫉妬心を表すかのように、目の前の触手は頭を垂れながらそっぽを向いた。
「……ぷっ。ふふふっ」
思わず笑いが溢れていた。
そんな風に自然と笑えたは何年ぶりだろうか、と思い出そうとしてボクはやめた。
だってボクはもう、生まれ変わったのだから。
『そう。キミはもう人間じゃない。私たち、エイリアンの家族』
「……うん。よろしく、ね」
『ふふっ、こちらこそ』
そしてボクの新たな生活が幕を開けた。
魔界の種
321 魔界の種 sage 2013/03/31(日) 04:59:00.37 ID:h2DNH2Y5
私は魔王にさらわれたお姉ちゃんを助ける為に旅をしていた。
しかし旅の途中で悪い魔女に捕まってしまった。
目が覚めると小屋のようなところにいた。
体は動かせず、頭だけは動かせたので自分の体を見ると、裸にされ大の字で机に縛り付けられていた。
「おや、気が付いたようじゃのう」
「あなたはいったい何をするつもりなの!?」
「ひーっひっひっ、おまえには実験台になってもらうんじゃ」
「じ、実験台!? そんなの嫌!!」
「おや、そんなこと言っていいのかい? おまえなんて殺そうと思えばいつでも殺せるんじゃぞ」
そう言うとナイフを私の首元に近づけた。
「まあ逆らわないほうが身のためじゃな」
「くっ・・・」
魔女はナイフを引っ込めると直径10cm程の黒い楕円形の物をポケットから取り出した。
「これは魔界で採れる種らしくてのう、どうやら股間に入れるらしいのじゃが効果がよくわからんので試させてもらおうかのう」
「い、嫌・・・やめて!!」
私は涙目になりながら必死で拒否するも、魔女はニヤニヤしながら、種の先端から入れ始めた。
その時、急に種が生き物のようにウネウネと動き始めた。
「おやおや、元気のいい種じゃのう」
「あぁ、ううう・・・」
ぬるぬるしたモノが膣から入ってくる感触の不気味さに私はまともに声さえ出せなかった。
種だったモノは奥まで到達すると壁へとくっつき、根を伸ばし始めた。
体が急に熱くなってきたけどなんだか気持ちいい。
種だったモノはどんどん体の中で増殖と成長をし、私と融合していった。
「中はどうなってるかのう」
魔女が股間を覗きこんだ瞬間、突然そこから大量の触手が現れ、魔女の首を締め殺した。
そのまま魔女を股間へと引きずり込むと、いつの間にか膣内に生えていた鋭い歯でバリバリと噛み砕いた。
そして子宮内へと飲み込み、消化し始めた。
ふぅ、と私は一息つくとまずはヘソから触手を出して私を縛りつけていた縄をといた。
やっと自由になったと思ったその時、子宮だったところから体中へと何度も大きく脈動するのを感じた。
消化された魔女を栄養として私の幼い感じの残る体が成長を始めたのだ。
背が高くなり、胸も大きく、顔つきも大人っぽくなった。
「ふふふ、なんだか体がとても気持ちいいわ。さてと、お姉様を探しに行かないと」
私は魔王にさらわれたお姉ちゃんを助ける為に旅をしていた。
しかし旅の途中で悪い魔女に捕まってしまった。
目が覚めると小屋のようなところにいた。
体は動かせず、頭だけは動かせたので自分の体を見ると、裸にされ大の字で机に縛り付けられていた。
「おや、気が付いたようじゃのう」
「あなたはいったい何をするつもりなの!?」
「ひーっひっひっ、おまえには実験台になってもらうんじゃ」
「じ、実験台!? そんなの嫌!!」
「おや、そんなこと言っていいのかい? おまえなんて殺そうと思えばいつでも殺せるんじゃぞ」
そう言うとナイフを私の首元に近づけた。
「まあ逆らわないほうが身のためじゃな」
「くっ・・・」
魔女はナイフを引っ込めると直径10cm程の黒い楕円形の物をポケットから取り出した。
「これは魔界で採れる種らしくてのう、どうやら股間に入れるらしいのじゃが効果がよくわからんので試させてもらおうかのう」
「い、嫌・・・やめて!!」
私は涙目になりながら必死で拒否するも、魔女はニヤニヤしながら、種の先端から入れ始めた。
その時、急に種が生き物のようにウネウネと動き始めた。
「おやおや、元気のいい種じゃのう」
「あぁ、ううう・・・」
ぬるぬるしたモノが膣から入ってくる感触の不気味さに私はまともに声さえ出せなかった。
種だったモノは奥まで到達すると壁へとくっつき、根を伸ばし始めた。
体が急に熱くなってきたけどなんだか気持ちいい。
種だったモノはどんどん体の中で増殖と成長をし、私と融合していった。
「中はどうなってるかのう」
魔女が股間を覗きこんだ瞬間、突然そこから大量の触手が現れ、魔女の首を締め殺した。
そのまま魔女を股間へと引きずり込むと、いつの間にか膣内に生えていた鋭い歯でバリバリと噛み砕いた。
そして子宮内へと飲み込み、消化し始めた。
ふぅ、と私は一息つくとまずはヘソから触手を出して私を縛りつけていた縄をといた。
やっと自由になったと思ったその時、子宮だったところから体中へと何度も大きく脈動するのを感じた。
消化された魔女を栄養として私の幼い感じの残る体が成長を始めたのだ。
背が高くなり、胸も大きく、顔つきも大人っぽくなった。
「ふふふ、なんだか体がとても気持ちいいわ。さてと、お姉様を探しに行かないと」
地球によく似た・・・
210 地球によく似た・・・(1/5) sage 2013/01/25(金) 19:26:07.97 ID:AJk9kduf
そう言い突然彼女をベッドの上に押し倒し、その唇に自身の唇を顔ごと重ねる。
「んん、んんん!」
フローラの幹のような力強い手は彼女の頭を固定し、足の根と背中の蔦は彼女の手足にまきつき自由を奪う。それぞれの蔦は力強くもしなや
かに動き、茎のように比較的細い先端は器用に、そのまとっている粘液をなじませるように彼女の肌をくすぐる。彼女の口にはフローラの喉の
奥からから、なにか甘酸っぱい、とろみのついたものが吐き出される。こうして濃厚な口付けを二三分続けているうちに、彼女の目から反抗の
鋭さがなくなり、手足に力を感じられなくなったところでフローラは、根を彼女の足に巻きつけたままのっ状態で蔦を解き、上体を起き上がら
せて彼女の緊張のゆるんだ顔を観賞する。
とろけきった彼女の表情に満足し、フローラは
「どう、気分は? まるで天国にいるみたいでしょう」
「は、わ、わらしになにを・・・」
彼女はぼーっとして体に力を入れることができず、それでいてまるで天国へとのぼっていくような、非常に爽快な気分になり、夢見心地の快
さを感じる。その夢見心地も、男性であれば女性を抱く幻想を見るような、官能の心地よさをふくんだものであった。フローラはなにも答えず、
しばらく彼女の顔を魅入られたようにうっとりと眺めていたが、急に少しばかり険しい表情になり、
「わたしがあなたに質問しているのよ、あなたに質問する権利はないわ・・・まあいいわ、別の質問をすることにしましょ。――その前に、
もうあなたに服は要らないわね」
そういうとフローラは彼女の着ている服を乱暴に引き裂きながら下着まで裂いてしまう。
「あぁ、やめて・・・」
彼女は懇願するがもちろん聞き入れてもらえるはずがなく、とうとう大事なところまで晒されてしまった。そこは彼女自身のからだから出て
くるもので既にしめっていた。
「まぁ、いつの間にこんなに濡らしていたのね、なんていやらしい子」
「や、やめて、そんなこと言わないで」
「ねぇ、やっぱりあなたって、わたしのお母様――マリー様のことを想って、オナニーするの?」
フローラは妖艶な目で、問いただすように彼女の目を見つめる。
「へ、な、なにを・・・そ、そんな・・・こと」
彼女はかっと赤くなり、フローラの目線から逃れるように顔を左右へ振るが、さきほど飲まされた妙ななにかの影響もあって、視界はぼやけ、
意識は曖昧となり、からだはある部分は痙攣し。ある部分は弛緩し、とても逃れられるような状況ではない。フローラはそんな彼女をしかるよ
うに、
「ごまかすんじゃないの、正直に答えなさい!」
そして背中から生えている一本の蔦を彼女の割れ目に当て、さすりはじめる。二人の粘液がいやらしい音を立てながら混ざりあう。
「ひやっ、や、やめて、はっ、ひいぃ」
「正直に答えなきゃやめてあげないわよ、さあどうなの、してるの、してないの」
「し、してますううぅ」
彼女の顔は、恥ずかしさと気持ちよさが頂点に達し、真っ赤になる。フローラはまだ彼女を責め続ける。
「は、っや、ど、どうして、正直に、答えたのに・・・あぁ」
「ふふ、もっと詳しく答えてくれなきゃ。どれくらいのペースでしているわけ、月に一度、週に一度、それとも毎日?」
「それは・・・」
「さあ、正直に答えなさい!」
「っ!」
フローラは自身の蔦を彼女の割れ目の奥へ一気にのめりこませる。すると彼女は声も出せずに一瞬白目をむいてしまう。
(擦られているだけなのに・・・、どうしてこんなに)
蔦をいったん停止させ、フローラは彼女に顔を、互いに吐息が感じられるほどにまで近寄せ、相変わらずの糾弾するような顔で、
「さあ、答えるのよ」
身体的にも精神的にももうとても逃げられないと観念した彼女は、
「しゅ、週に・・・三日・・・ほど・・・」
フローラの顔は元のやさしい表情へと戻る。
「あらまあそんなに、なんていやらしい娘なんでしょう!」
「やだぁ、マリー様の顔で、そんなこと・・・言わないで、グスン」
彼女は涙目で切にお願いする。フローラの表情は優しくも、妖艶な感情を湛えた目はそのままだ。
211 地球によく似た・・・(2/5) sage 2013/01/25(金) 19:28:09.38 ID:AJk9kduf
「ふふ、どうして、もう恥ずかしがらなくていいのよ、わたしがあなたを解き放してあげるわ。かわいそうな子、よっぽど欲求不満を溜め込
んでいたんでしょ、よく耐え続けたわね」
フローラは再び彼女を優しく抱擁する、全身の蔦を、両腕に当たる部位は彼女の背中に回し、背中の六本の蔦は彼女の両腕にそれぞれ三本ず
つまきつけ、再び彼女のからだに絡めつける。服をはがされた分、彼女はフローラの粘液をまとった蔦の感覚を直に感じ取るようになり、涙を
流して泣きながらフローラのぬくもりに包まれてしまう。
「わたしの胸のなかで泣きたいだけ泣きなさい。もういいのよ、我慢しなくて。さあ、顔をよく見せて・・・」
彼女の顔を自分のほうへと向けると、もういちど彼女の唇に自分の唇を、今度はそっと、やさしく触れさせ、ほのかに甘く香り、爽やかで、
甘美な風味のある唾液に濡れた舌を彼女のなかへ進入させる。フローラは積極的に彼女の舌と自分の舌を絡めあわせ、お互いの粘液を交換し、
混ぜ合わせるように溶けあわせてゆく。
(ああぁ、温かくて、優しくて、清々しくて・・・とっても気持ちいい・・・。体が浄化されてゆくみたい・・・。変な気分だ、あんなにぬ
るぬるして気持ち悪かったのが、今じゃ私を優しく包み込んでくれてるみたいで・・・温泉に浸かっているみたいだし、毛布にくるまれている
みたいでもあるし・・・とっても、いい・・・)
その状態がどれだけつづいたことだろう、彼女のほうは、同じ女同士で快楽を極めるように進化した妖花として、遺伝子レベルでテクニック
を極めているフローラにアシストしてもらうほかなく、気持ちよくしてもらっている間にも彼女の精神は、無意識のうちにどんどんフローラに
依存してゆくのだった。フローラは彼女の味を十分堪能し、彼女の口内とつながっている粘液の糸を引きながら舌を離す。そして、お互いの混
ざり合ったよだれを口からあふれさせている彼女を見下ろしながら、彼女の心の中まで浸透するような、甘く、透き通った声で、
「今日はわたしがたっぷりと慰めてあげるから。・・・それこそ今まで我慢してきた分、たっぷりと・・・」
意味ありげな妖艶な微笑を浮かべたまま、フローラは自分の股間をまさぐり、多肉質の房に包まれた何かを取り出し、それを自分の蔦で扱き
はじめる。
「へ・・・、な、それ・・・」
彼女はなにかおかしなことにつっこまずにはいられないという顔をしているが、フローラはかまわずに、
「ねぇ、エリーって、・・・あっ・・・初体験は、もう経験済み?」
フローラは敏感な部分がさすられたような嬌声をあげながら、彼女に問う。エリーという親しげな呼びかけに一瞬誰のことだか惑ったが、自
分のことだと悟り、少し赤くなり、
「ま、まだです」
「そう、だったらちょうどいいわ。・・・はぁ・・・あっ、わたしが、初めての人になりましょう。夫婦になるんですし」
「へっ!?」
彼女は驚きとそれ以上の恐怖に顔が青くなってゆく一方で、フローラは楽しみと興奮でどんどん上気してゆく。
「そんなに・・・怖がらなくていいのよ・・・。痛いのは一瞬のことだから。私ならエリーを、っ・・・とことん気持ちよくさせてあげられ
るから・・・はぁ、はぁ。でも、その前に・・・ん、んんん、ああ、この子宮にまで響くような感覚・・・いい・・・、ちょっとあなたのかわ
いらしいおっぱいを借りるわよ」
そう言うとフローラは彼女の膨らみかけの乳房に自分のそれを使ってパイズリをはじめる。フローラが自分のそれをこすり付けるたびに、彼
女の胸の谷間は汗と粘液でてかてかと光ってゆく。
「ああっ、ああ!」
体が一種の状態異常に陥っている彼女は、つい素で愛らしい嬌声を上げてしまう。
「そんなに、かわいらしい声を上げて、あなたもまんざらでもないのね。わたしは、少し、あなたの、・・・ごめんね・・・はぁん、これの大
きさに、不満があるけど・・・。それにしても、こういうことを、されるのは、むしろ本望なのかしら?」
「そ、そんなこと、きかないでください。自分でも、もう、なにが、・・・ああ・・・なんだか・・・ああぁ!」
「いいのよ、もう、人間のしがらみに、・・・はぁっあ・・・と、とらわれなくても・・・わたしが、エリー、あなたを、解き放してあげる・・・
あ、ああ、そ、そろそろ出る!」
212 地球によく似た・・・(3/5) sage 2013/01/25(金) 19:29:38.28 ID:AJk9kduf
フローラのそれから黄色い花粉が噴き出す。彼女はもろにその花粉を顔に浴びてしまい、吸い込んでしまう。しばらくくしゃみが止まらない
彼女だったが、くしゃみが止んでくるにつれ、下半身をがくがくと震わせ、全身から汗を噴き出し、顔をさもあつそうに真っ赤に火照らせる。
股の間は彼女の愛液でシーツが濡れ、割れ目はひくついている。
「はあ、はあ、わたし・・・一体・・・」
「準備は万端ね。さあ、ここからが本番よ。これが・・・わたしの・・・はっぁん・・・はぁ、とっても敏感な・・・」
フローラのそれが、花開くように房を開いてゆき、粘液の糸を引きながら中から、太さが彼女の太ももに近いくらいに膨らんだ立派な雄しべ
をのぞかせる。それを見た瞬間、彼女は不本意にも余計に興奮してしまう。呼吸も苦しそうなほど荒い。
「はああっ!・・・・・・ああ!」
「あらあら、うふふ」
フローラは母親の、娘を温かく見守るような目で優しく彼女のその有り様を見届ける。
「ち、違うんですっ!・・・こ、これは・・・ハウン・・・体が・・・勝手に・・・ヒャン」
嬌声とともに潮をふかせ、自分でも何に対するのかよく分からない弁解をする。
「ああ、そんな・・・ハァン、ああ、ああ!」
「ふふ、可愛い娘、シーツをびしょびしょに濡らしちゃったわよ」
「ああ、ああ」
彼女は体じゅう震え上がりながらも、自分でも何がなんだか分からないまま、何か申し開きをするような、何かを言わなければならないが言
葉が見つからないというような困った表情を見せる。そんな彼女にフローラは妖しくも優しい声で、
「ふふ、いいのよ、何も言わなくて。わたしには分かるから。エリーのことなら何でも・・・」
フローラの不気味な優しさと包容力に恐怖するも、彼女はもう逃れられない。彼女はフローラのほうでも、興奮と妖艶な熱気にかられている
ことをその体や顔から感じ取ることができた。フローラも顔が蒸気で蒸れるように火照っており、性的な熱情を露にしていた。フローラはもう
何も言わずに、優しい微笑を浮かべたまま自分の頼もしいそれを、彼女の神聖な場所におさめ、後は互いに体の動くままにまかせ悦びと愉しみ
の時にひたりきる。
213 地球によく似た・・・(4/5) sage 2013/01/25(金) 19:31:11.44 ID:AJk9kduf
「ひ、痛っ」
処女を喪失するも、フローラの体から彼女の体へと侵されたその艶めかしい花粉、粘液などなどの妖しい効果と、フローラ自身の思いやりと
テクニックにより痛みは一瞬のことで、すぐに快楽の波が彼女をのみこむ。
「はあああぁぁ、き、気持ちいい」
フローラも快楽の刺激に悶え叫ぶ。
「はああああぁぁ、はあ、はあ、ひいいいいいい。ひ、響くううううう、子宮までえええ」
フローラの雄しべはまだまだ根元を残している。彼女は盛大に潮を吹き、よだれ垂らし、涙を流し、失禁までしてしまう。
「はああ、あ、はぁ、はぁ・・・、あああ! はいってくる、奥まではいってくる!」
「わ、わたしもっ・・・ょ、エリーぃいい、ひいいいいい。ま、まだまだ奥まで・・・ああっ、は、入るわ! ああ!」
ともに悶え叫びながらも、フローラの太くて長い雄しべは徐々に彼女の体内へ進入してゆき、とうとう子宮の入り口にまで到達してしまった。
あまりにも彼女を気持ちよくさせるのによく出来過ぎている、フローラの立派な、そしてフローラ自身誇らしいと思っている雄しべは、先のほ
うで彼女の子宮をつつくように押し上げている。
「ああああああ! ついてる、奥でついてるうううう!」
「わ、わたしも、ひい、イイ! エリー、気持ちいい! す、すごい・・・子宮と子宮が、か、あああ!」
花粉を製造する、人間の女性の卵巣と似た器官とつながっている雄しべから、フローラも、おそらく彼女以上に強力な快感におそわれる。子
宮と子宮をこすり合わせるような快感に、フローラは至高の悦びの笑みをあらわす。
(ああ、なんて初心(うぶ)でかたいしめつけ方! こんなかわいらしい子の最初の人になれるなんて、わたしはなんて幸せ者なんだろう! あ
あ、この子をわたしに授けてくださったお母様に感謝します! 偉大なるお母様! ああ! お母様! お母様! この子はまもなくお母様の
もとへと参ります、わたしが一緒にお連れします! この子もお母様の御身体によって清められ、お母様の聖なる娘となり、そして、わたした
ちはずっと幸せに・・・っ!)
フローラの熱情が頂点に達すると同時に、彼女の膣内に大量の花粉が注がれる。淫らな作用を持つ花粉をその淫らなことに弱い場所に注がれ
ることで、彼女はより深い悦楽におぼれてゆく。
「ひいいいい、ひ、ひもひよすぎるううう」
「ああああっ、ま、まだまだ、まだ出るわっ、ああっ!」
二人仲良く絶頂に達し、フローラは長い時間溜め込んでいたものを噴出させる。それは止むことを知らず、二人の絶頂も止まらない。
「ひいいいぃやああああ、止まらない、とまらないいいいいぃ、ひい、いぐ、いぐいぐうううう」
「ああ! 出る! もっと出る! 出て! わたしの花粉出てえええぇ、もっろ、もっろぉぉ」
やがては彼女たちの息が切れ掛かる寸前でやっとおさまった。
「はあ、はあ、はあ、きもち・・・よすぎる・・・」
「はぁああっ!・・・ああ、あはぁ」
214 地球によく似た・・・(5/5) sage 2013/01/25(金) 19:32:19.10 ID:AJk9kduf
二人は絶頂の余韻にひたる。彼女もフローラも、お互いの霊魂を共鳴させた後の、愛欲満たされた幸せそうなカップルの顔をしている。しか
しフローラは、
「まだ、まだまだ・・・花粉・・・残ってる・・・もっと、出したい」
フローラは雄しべを徐々に引き抜いてゆく。
「ひゃああぁ、こ、こすれるぅっ」
その感覚だけでもお互い喘ぎ叫ばずにはいられない。彼女が抜いてくれているのかと思い、実際まさに抜けようとしているところで急に、
「っ!!」
もう一度一気に子宮の入り口まで――否、今度はその勢いは入り口では止まらずにそのまま貫通してしまった、彼女の下半身は筋肉がすっか
りゆるんでしまっていた。あまりにも衝撃的な、意識がとびかけるほどの強烈な感覚に彼女は息をつまらせ声を出すこともできない。
「ひゃぁっ!」
フローラの体にも快楽の稲妻が一瞬にして体を駆け巡り、ぶるっと震え上がる。そしてそのまま声を震わせながら、
「はぁ、はぁ、まだまだぁ、まだまだわたしたちは気持ちよくなれるんだから」
彼女の目にはわずかに抵抗しようとする意志が浮かんだが、それも次に起こる快感の第二波によって瞬時に消え去る。フローラは、本能的な
性衝動にかられるままに腰を前後に振りながら、自分の体から出るものを彼女の膣内で擦り合わせ、混ぜ合わせ、溶け合わせはじめた。
「ひい、はあ、やあ、もう、やめて、気持ちいい、もう、だめになる、わたし、ひもちよすぎて、わだし・・・」
「ひゃっ、ああああぁああ、ひい、いいぃいいい! いい、いいじゃないの、今は、はああぁああ! そうよ、はあぁああっ、味わいなさい、
しっかりと、人間じゃ味わえない、この愉悦を、おおおお!」
フローラは愉悦という言葉に力をこめるように、雄しべを抜けるぎりぎりのところまで引いた後で、最後の言葉でとりわけ強く、一気に奥ま
で、再び彼女の子宮を突き抜けるほどに攻め込む。ふたりの快感はそれまでの最高の、それこそ天国にまで達せんとする域にまで上りつめる。
「ひぃやああああ! はぁはぁああああ!」
「おおおお、も、も、もうぅらめええ、わらし、わらしいい!」
その時フローラの雄しべからもう一度噴き出した花粉が、彼女の身も心もとろけさせ、彼女の意識はフローラとともに、フローラに先導され
るように、自分が今どこにいるのかも分からないままに天国の幻想の中をさまよいはじめる。
「マリー様、マリー様ぁあああ! 好き! 好き! 大好きぃ! わたしを、つれてって、独りにしないで、マリー様あああ!」
ふと、快楽の海の中から今までの寂しさが噴火したかのようにどっとあふれ、彼女は幻覚に襲われながら、強烈な快感を味わいながらも大い
に泣きじゃくる。フローラはそんな悲しい言葉を発する彼女の口に蓋をするように、或いは悲しい言葉ごと彼女の口を飲み込むように、そして
フローラ自身の欲求を満たそうと貪るように、彼女の唇にしゃぶりつく。二人の唇の間から、ねちゃねちゃと聞こえるいやらしい音や二人の喘
ぎ声に混ざって、フローラのあいまいな声が彼女の意識にまで響いてくる。
「ん、んんん、大丈夫よ、んんん、エリー、ああ、あああ! ・・・わたしが、むうぅ、マリー様の次女の、この、ぅ、んんん、フローラが、
ずっと一緒に・・・ああ、はぁゃああ、ま、また、ああ!」
「ふ、フローラ!? フローラ! フローラ様ああああ!」
彼女は初めてフローラという名前を叫び、自分でもよく理解できない快さを感じる。
「溶け合ってる! わたしの子宮とエリーの子宮、溶け合ってる! 感じる! 感じすぎちゃうううぅう!」
「フローラ様! フローラ様とわたし、ひとつに、ひとつに! はっああああ!」
二人の悦びの声は絶えることなく、永い時を幸福のままに過ごし続ける・・・
そう言い突然彼女をベッドの上に押し倒し、その唇に自身の唇を顔ごと重ねる。
「んん、んんん!」
フローラの幹のような力強い手は彼女の頭を固定し、足の根と背中の蔦は彼女の手足にまきつき自由を奪う。それぞれの蔦は力強くもしなや
かに動き、茎のように比較的細い先端は器用に、そのまとっている粘液をなじませるように彼女の肌をくすぐる。彼女の口にはフローラの喉の
奥からから、なにか甘酸っぱい、とろみのついたものが吐き出される。こうして濃厚な口付けを二三分続けているうちに、彼女の目から反抗の
鋭さがなくなり、手足に力を感じられなくなったところでフローラは、根を彼女の足に巻きつけたままのっ状態で蔦を解き、上体を起き上がら
せて彼女の緊張のゆるんだ顔を観賞する。
とろけきった彼女の表情に満足し、フローラは
「どう、気分は? まるで天国にいるみたいでしょう」
「は、わ、わらしになにを・・・」
彼女はぼーっとして体に力を入れることができず、それでいてまるで天国へとのぼっていくような、非常に爽快な気分になり、夢見心地の快
さを感じる。その夢見心地も、男性であれば女性を抱く幻想を見るような、官能の心地よさをふくんだものであった。フローラはなにも答えず、
しばらく彼女の顔を魅入られたようにうっとりと眺めていたが、急に少しばかり険しい表情になり、
「わたしがあなたに質問しているのよ、あなたに質問する権利はないわ・・・まあいいわ、別の質問をすることにしましょ。――その前に、
もうあなたに服は要らないわね」
そういうとフローラは彼女の着ている服を乱暴に引き裂きながら下着まで裂いてしまう。
「あぁ、やめて・・・」
彼女は懇願するがもちろん聞き入れてもらえるはずがなく、とうとう大事なところまで晒されてしまった。そこは彼女自身のからだから出て
くるもので既にしめっていた。
「まぁ、いつの間にこんなに濡らしていたのね、なんていやらしい子」
「や、やめて、そんなこと言わないで」
「ねぇ、やっぱりあなたって、わたしのお母様――マリー様のことを想って、オナニーするの?」
フローラは妖艶な目で、問いただすように彼女の目を見つめる。
「へ、な、なにを・・・そ、そんな・・・こと」
彼女はかっと赤くなり、フローラの目線から逃れるように顔を左右へ振るが、さきほど飲まされた妙ななにかの影響もあって、視界はぼやけ、
意識は曖昧となり、からだはある部分は痙攣し。ある部分は弛緩し、とても逃れられるような状況ではない。フローラはそんな彼女をしかるよ
うに、
「ごまかすんじゃないの、正直に答えなさい!」
そして背中から生えている一本の蔦を彼女の割れ目に当て、さすりはじめる。二人の粘液がいやらしい音を立てながら混ざりあう。
「ひやっ、や、やめて、はっ、ひいぃ」
「正直に答えなきゃやめてあげないわよ、さあどうなの、してるの、してないの」
「し、してますううぅ」
彼女の顔は、恥ずかしさと気持ちよさが頂点に達し、真っ赤になる。フローラはまだ彼女を責め続ける。
「は、っや、ど、どうして、正直に、答えたのに・・・あぁ」
「ふふ、もっと詳しく答えてくれなきゃ。どれくらいのペースでしているわけ、月に一度、週に一度、それとも毎日?」
「それは・・・」
「さあ、正直に答えなさい!」
「っ!」
フローラは自身の蔦を彼女の割れ目の奥へ一気にのめりこませる。すると彼女は声も出せずに一瞬白目をむいてしまう。
(擦られているだけなのに・・・、どうしてこんなに)
蔦をいったん停止させ、フローラは彼女に顔を、互いに吐息が感じられるほどにまで近寄せ、相変わらずの糾弾するような顔で、
「さあ、答えるのよ」
身体的にも精神的にももうとても逃げられないと観念した彼女は、
「しゅ、週に・・・三日・・・ほど・・・」
フローラの顔は元のやさしい表情へと戻る。
「あらまあそんなに、なんていやらしい娘なんでしょう!」
「やだぁ、マリー様の顔で、そんなこと・・・言わないで、グスン」
彼女は涙目で切にお願いする。フローラの表情は優しくも、妖艶な感情を湛えた目はそのままだ。
211 地球によく似た・・・(2/5) sage 2013/01/25(金) 19:28:09.38 ID:AJk9kduf
「ふふ、どうして、もう恥ずかしがらなくていいのよ、わたしがあなたを解き放してあげるわ。かわいそうな子、よっぽど欲求不満を溜め込
んでいたんでしょ、よく耐え続けたわね」
フローラは再び彼女を優しく抱擁する、全身の蔦を、両腕に当たる部位は彼女の背中に回し、背中の六本の蔦は彼女の両腕にそれぞれ三本ず
つまきつけ、再び彼女のからだに絡めつける。服をはがされた分、彼女はフローラの粘液をまとった蔦の感覚を直に感じ取るようになり、涙を
流して泣きながらフローラのぬくもりに包まれてしまう。
「わたしの胸のなかで泣きたいだけ泣きなさい。もういいのよ、我慢しなくて。さあ、顔をよく見せて・・・」
彼女の顔を自分のほうへと向けると、もういちど彼女の唇に自分の唇を、今度はそっと、やさしく触れさせ、ほのかに甘く香り、爽やかで、
甘美な風味のある唾液に濡れた舌を彼女のなかへ進入させる。フローラは積極的に彼女の舌と自分の舌を絡めあわせ、お互いの粘液を交換し、
混ぜ合わせるように溶けあわせてゆく。
(ああぁ、温かくて、優しくて、清々しくて・・・とっても気持ちいい・・・。体が浄化されてゆくみたい・・・。変な気分だ、あんなにぬ
るぬるして気持ち悪かったのが、今じゃ私を優しく包み込んでくれてるみたいで・・・温泉に浸かっているみたいだし、毛布にくるまれている
みたいでもあるし・・・とっても、いい・・・)
その状態がどれだけつづいたことだろう、彼女のほうは、同じ女同士で快楽を極めるように進化した妖花として、遺伝子レベルでテクニック
を極めているフローラにアシストしてもらうほかなく、気持ちよくしてもらっている間にも彼女の精神は、無意識のうちにどんどんフローラに
依存してゆくのだった。フローラは彼女の味を十分堪能し、彼女の口内とつながっている粘液の糸を引きながら舌を離す。そして、お互いの混
ざり合ったよだれを口からあふれさせている彼女を見下ろしながら、彼女の心の中まで浸透するような、甘く、透き通った声で、
「今日はわたしがたっぷりと慰めてあげるから。・・・それこそ今まで我慢してきた分、たっぷりと・・・」
意味ありげな妖艶な微笑を浮かべたまま、フローラは自分の股間をまさぐり、多肉質の房に包まれた何かを取り出し、それを自分の蔦で扱き
はじめる。
「へ・・・、な、それ・・・」
彼女はなにかおかしなことにつっこまずにはいられないという顔をしているが、フローラはかまわずに、
「ねぇ、エリーって、・・・あっ・・・初体験は、もう経験済み?」
フローラは敏感な部分がさすられたような嬌声をあげながら、彼女に問う。エリーという親しげな呼びかけに一瞬誰のことだか惑ったが、自
分のことだと悟り、少し赤くなり、
「ま、まだです」
「そう、だったらちょうどいいわ。・・・はぁ・・・あっ、わたしが、初めての人になりましょう。夫婦になるんですし」
「へっ!?」
彼女は驚きとそれ以上の恐怖に顔が青くなってゆく一方で、フローラは楽しみと興奮でどんどん上気してゆく。
「そんなに・・・怖がらなくていいのよ・・・。痛いのは一瞬のことだから。私ならエリーを、っ・・・とことん気持ちよくさせてあげられ
るから・・・はぁ、はぁ。でも、その前に・・・ん、んんん、ああ、この子宮にまで響くような感覚・・・いい・・・、ちょっとあなたのかわ
いらしいおっぱいを借りるわよ」
そう言うとフローラは彼女の膨らみかけの乳房に自分のそれを使ってパイズリをはじめる。フローラが自分のそれをこすり付けるたびに、彼
女の胸の谷間は汗と粘液でてかてかと光ってゆく。
「ああっ、ああ!」
体が一種の状態異常に陥っている彼女は、つい素で愛らしい嬌声を上げてしまう。
「そんなに、かわいらしい声を上げて、あなたもまんざらでもないのね。わたしは、少し、あなたの、・・・ごめんね・・・はぁん、これの大
きさに、不満があるけど・・・。それにしても、こういうことを、されるのは、むしろ本望なのかしら?」
「そ、そんなこと、きかないでください。自分でも、もう、なにが、・・・ああ・・・なんだか・・・ああぁ!」
「いいのよ、もう、人間のしがらみに、・・・はぁっあ・・・と、とらわれなくても・・・わたしが、エリー、あなたを、解き放してあげる・・・
あ、ああ、そ、そろそろ出る!」
212 地球によく似た・・・(3/5) sage 2013/01/25(金) 19:29:38.28 ID:AJk9kduf
フローラのそれから黄色い花粉が噴き出す。彼女はもろにその花粉を顔に浴びてしまい、吸い込んでしまう。しばらくくしゃみが止まらない
彼女だったが、くしゃみが止んでくるにつれ、下半身をがくがくと震わせ、全身から汗を噴き出し、顔をさもあつそうに真っ赤に火照らせる。
股の間は彼女の愛液でシーツが濡れ、割れ目はひくついている。
「はあ、はあ、わたし・・・一体・・・」
「準備は万端ね。さあ、ここからが本番よ。これが・・・わたしの・・・はっぁん・・・はぁ、とっても敏感な・・・」
フローラのそれが、花開くように房を開いてゆき、粘液の糸を引きながら中から、太さが彼女の太ももに近いくらいに膨らんだ立派な雄しべ
をのぞかせる。それを見た瞬間、彼女は不本意にも余計に興奮してしまう。呼吸も苦しそうなほど荒い。
「はああっ!・・・・・・ああ!」
「あらあら、うふふ」
フローラは母親の、娘を温かく見守るような目で優しく彼女のその有り様を見届ける。
「ち、違うんですっ!・・・こ、これは・・・ハウン・・・体が・・・勝手に・・・ヒャン」
嬌声とともに潮をふかせ、自分でも何に対するのかよく分からない弁解をする。
「ああ、そんな・・・ハァン、ああ、ああ!」
「ふふ、可愛い娘、シーツをびしょびしょに濡らしちゃったわよ」
「ああ、ああ」
彼女は体じゅう震え上がりながらも、自分でも何がなんだか分からないまま、何か申し開きをするような、何かを言わなければならないが言
葉が見つからないというような困った表情を見せる。そんな彼女にフローラは妖しくも優しい声で、
「ふふ、いいのよ、何も言わなくて。わたしには分かるから。エリーのことなら何でも・・・」
フローラの不気味な優しさと包容力に恐怖するも、彼女はもう逃れられない。彼女はフローラのほうでも、興奮と妖艶な熱気にかられている
ことをその体や顔から感じ取ることができた。フローラも顔が蒸気で蒸れるように火照っており、性的な熱情を露にしていた。フローラはもう
何も言わずに、優しい微笑を浮かべたまま自分の頼もしいそれを、彼女の神聖な場所におさめ、後は互いに体の動くままにまかせ悦びと愉しみ
の時にひたりきる。
213 地球によく似た・・・(4/5) sage 2013/01/25(金) 19:31:11.44 ID:AJk9kduf
「ひ、痛っ」
処女を喪失するも、フローラの体から彼女の体へと侵されたその艶めかしい花粉、粘液などなどの妖しい効果と、フローラ自身の思いやりと
テクニックにより痛みは一瞬のことで、すぐに快楽の波が彼女をのみこむ。
「はあああぁぁ、き、気持ちいい」
フローラも快楽の刺激に悶え叫ぶ。
「はああああぁぁ、はあ、はあ、ひいいいいいい。ひ、響くううううう、子宮までえええ」
フローラの雄しべはまだまだ根元を残している。彼女は盛大に潮を吹き、よだれ垂らし、涙を流し、失禁までしてしまう。
「はああ、あ、はぁ、はぁ・・・、あああ! はいってくる、奥まではいってくる!」
「わ、わたしもっ・・・ょ、エリーぃいい、ひいいいいい。ま、まだまだ奥まで・・・ああっ、は、入るわ! ああ!」
ともに悶え叫びながらも、フローラの太くて長い雄しべは徐々に彼女の体内へ進入してゆき、とうとう子宮の入り口にまで到達してしまった。
あまりにも彼女を気持ちよくさせるのによく出来過ぎている、フローラの立派な、そしてフローラ自身誇らしいと思っている雄しべは、先のほ
うで彼女の子宮をつつくように押し上げている。
「ああああああ! ついてる、奥でついてるうううう!」
「わ、わたしも、ひい、イイ! エリー、気持ちいい! す、すごい・・・子宮と子宮が、か、あああ!」
花粉を製造する、人間の女性の卵巣と似た器官とつながっている雄しべから、フローラも、おそらく彼女以上に強力な快感におそわれる。子
宮と子宮をこすり合わせるような快感に、フローラは至高の悦びの笑みをあらわす。
(ああ、なんて初心(うぶ)でかたいしめつけ方! こんなかわいらしい子の最初の人になれるなんて、わたしはなんて幸せ者なんだろう! あ
あ、この子をわたしに授けてくださったお母様に感謝します! 偉大なるお母様! ああ! お母様! お母様! この子はまもなくお母様の
もとへと参ります、わたしが一緒にお連れします! この子もお母様の御身体によって清められ、お母様の聖なる娘となり、そして、わたした
ちはずっと幸せに・・・っ!)
フローラの熱情が頂点に達すると同時に、彼女の膣内に大量の花粉が注がれる。淫らな作用を持つ花粉をその淫らなことに弱い場所に注がれ
ることで、彼女はより深い悦楽におぼれてゆく。
「ひいいいい、ひ、ひもひよすぎるううう」
「ああああっ、ま、まだまだ、まだ出るわっ、ああっ!」
二人仲良く絶頂に達し、フローラは長い時間溜め込んでいたものを噴出させる。それは止むことを知らず、二人の絶頂も止まらない。
「ひいいいぃやああああ、止まらない、とまらないいいいいぃ、ひい、いぐ、いぐいぐうううう」
「ああ! 出る! もっと出る! 出て! わたしの花粉出てえええぇ、もっろ、もっろぉぉ」
やがては彼女たちの息が切れ掛かる寸前でやっとおさまった。
「はあ、はあ、はあ、きもち・・・よすぎる・・・」
「はぁああっ!・・・ああ、あはぁ」
214 地球によく似た・・・(5/5) sage 2013/01/25(金) 19:32:19.10 ID:AJk9kduf
二人は絶頂の余韻にひたる。彼女もフローラも、お互いの霊魂を共鳴させた後の、愛欲満たされた幸せそうなカップルの顔をしている。しか
しフローラは、
「まだ、まだまだ・・・花粉・・・残ってる・・・もっと、出したい」
フローラは雄しべを徐々に引き抜いてゆく。
「ひゃああぁ、こ、こすれるぅっ」
その感覚だけでもお互い喘ぎ叫ばずにはいられない。彼女が抜いてくれているのかと思い、実際まさに抜けようとしているところで急に、
「っ!!」
もう一度一気に子宮の入り口まで――否、今度はその勢いは入り口では止まらずにそのまま貫通してしまった、彼女の下半身は筋肉がすっか
りゆるんでしまっていた。あまりにも衝撃的な、意識がとびかけるほどの強烈な感覚に彼女は息をつまらせ声を出すこともできない。
「ひゃぁっ!」
フローラの体にも快楽の稲妻が一瞬にして体を駆け巡り、ぶるっと震え上がる。そしてそのまま声を震わせながら、
「はぁ、はぁ、まだまだぁ、まだまだわたしたちは気持ちよくなれるんだから」
彼女の目にはわずかに抵抗しようとする意志が浮かんだが、それも次に起こる快感の第二波によって瞬時に消え去る。フローラは、本能的な
性衝動にかられるままに腰を前後に振りながら、自分の体から出るものを彼女の膣内で擦り合わせ、混ぜ合わせ、溶け合わせはじめた。
「ひい、はあ、やあ、もう、やめて、気持ちいい、もう、だめになる、わたし、ひもちよすぎて、わだし・・・」
「ひゃっ、ああああぁああ、ひい、いいぃいいい! いい、いいじゃないの、今は、はああぁああ! そうよ、はあぁああっ、味わいなさい、
しっかりと、人間じゃ味わえない、この愉悦を、おおおお!」
フローラは愉悦という言葉に力をこめるように、雄しべを抜けるぎりぎりのところまで引いた後で、最後の言葉でとりわけ強く、一気に奥ま
で、再び彼女の子宮を突き抜けるほどに攻め込む。ふたりの快感はそれまでの最高の、それこそ天国にまで達せんとする域にまで上りつめる。
「ひぃやああああ! はぁはぁああああ!」
「おおおお、も、も、もうぅらめええ、わらし、わらしいい!」
その時フローラの雄しべからもう一度噴き出した花粉が、彼女の身も心もとろけさせ、彼女の意識はフローラとともに、フローラに先導され
るように、自分が今どこにいるのかも分からないままに天国の幻想の中をさまよいはじめる。
「マリー様、マリー様ぁあああ! 好き! 好き! 大好きぃ! わたしを、つれてって、独りにしないで、マリー様あああ!」
ふと、快楽の海の中から今までの寂しさが噴火したかのようにどっとあふれ、彼女は幻覚に襲われながら、強烈な快感を味わいながらも大い
に泣きじゃくる。フローラはそんな悲しい言葉を発する彼女の口に蓋をするように、或いは悲しい言葉ごと彼女の口を飲み込むように、そして
フローラ自身の欲求を満たそうと貪るように、彼女の唇にしゃぶりつく。二人の唇の間から、ねちゃねちゃと聞こえるいやらしい音や二人の喘
ぎ声に混ざって、フローラのあいまいな声が彼女の意識にまで響いてくる。
「ん、んんん、大丈夫よ、んんん、エリー、ああ、あああ! ・・・わたしが、むうぅ、マリー様の次女の、この、ぅ、んんん、フローラが、
ずっと一緒に・・・ああ、はぁゃああ、ま、また、ああ!」
「ふ、フローラ!? フローラ! フローラ様ああああ!」
彼女は初めてフローラという名前を叫び、自分でもよく理解できない快さを感じる。
「溶け合ってる! わたしの子宮とエリーの子宮、溶け合ってる! 感じる! 感じすぎちゃうううぅう!」
「フローラ様! フローラ様とわたし、ひとつに、ひとつに! はっああああ!」
二人の悦びの声は絶えることなく、永い時を幸福のままに過ごし続ける・・・
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