スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
永久の果肉14
256 乙×風 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 18:58:12 ID:/Wkm2F56
皆様お待たせしました。乙×風です。
推敲に時間を掛け過ぎたみたいで月曜には投下できませんでした。申し訳ない。
前回のお話ですがクライマックスだけあって高評価のご様子。
私も執筆した甲斐があったというものです。
誤字等のご指摘もありがとうございました。
さて、永久の果肉エピローグを投下します。
(だいぶ長い、会話シーン多め、3P、大団円)
NGワードはこんな感じですか。
筆が乗っているせいでかつてないボリュームになっています。
エッチシーンはマリオンがリオとクロトの二人掛かりで責められて大変そうですw
勿論和姦ですよ。
こんなところですか。
以下本編です。お時間を取らせて申し訳ないですが良かったらごゆっくりお楽しみ下さい。
28レス程消費します。
257 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 18:59:41 ID:/Wkm2F56
最終話 ずっと一緒
夜も更けた丑三つ時。
静まり返ったリビディスタの屋敷――その一室から光が漏れていた。
正面玄関の真上、ドルキの寝室だ。
部屋の中にはドルキ、グリーズ、リオ、マリオン。
リビディスタの家族四人と、ネーアの姿がある。
「怪我はもういいのか」
窓の外をぼんやりと眺めていたドルキにグリーズが声を掛けた。
ええ、と頷き、振り向いたドルキの顔には、確かに傷らしい傷は残っていない。
だが、傷が癒えたとしても自分が取り返しのつかない事をした、という事実は消えない。
血は繋がっていなくとも、実の母親に暴力を振るった罪は許されるものではない。
「…ごめんなさい」
思わずリオは呟いていた。
母が憎い。それは変わらない。
しかしだ。だからと言ってドルキに復讐しても何の解決にもならない事に気付いたのだ。
仮にそれを果たしたとしても、今度はマリオンが、グリーズが悲しむ事になるのだから。
憎悪は連鎖する。どこかでそれを断ち切らなければならない。
スカートの端を掴み、握り締める。
母は、リシュテアはどうしたら報われるのだろうか。
自分が復讐を果たせばいいのだろうか。
それとも――
「リオは悪くない。母様が悪い」
ぽん、と肩に手が置かれた。
振り仰げばポーカーフェイスのままのマリオンがドルキを見詰めている。
ここにいる五人が全員、事の経緯を知っているのだ。
ドルキが企てた、リシュテア暗殺を。
街を混乱に貶めた今回の事件、その責任は誰にあるかと言えば、間違いなくドルキなのだ。
それもドルキ本人は分かっているのか、魔女は娘の辛らつな言葉に何の反論もしなかった。
「信じられない。お義母様を毒殺するなんて。見損なった」
「それに関してはワシも同意だ」
便乗したグリーズの態度にショックを受けたのだろうか。
ドルキが顔を上げ、縋るような視線を彼へと向ける。
それを見ると流石のリオも哀れに思えてきた。
永年慕ってきた夫にさえ見限られるのだから、その絶望は計り知れないものだろう。
「……もういいです…」
気が付けば、そんな事を口にしていた。
意外な所から出た助け舟に、全員の視線が集中する。
今回の件で最も心に大きな傷を負ったのはリオ自身だ。
その彼女からドルキを庇うような言葉が出てくるとは皆、夢にも思わなかったのだろう。
「一歩間違えれば…私も、お義母様と同じ事をしていたんですから…」
ドルキに重症を負わせ、グリーズを殺しかけた。
ドルキが責められるなら、自分も責められてしかるべきだろう。
「だから、もう、いいです…」
「私は納得出来ない。母様にはお義母様を殺した罪をちゃんと償って欲しい」
リシュテアを一番慕っていたのはマリオンだ。
ドルキの罪を許せる筈も無かった。
「街の皆にも真実を話して。その上で魔女の称号も返還して」
リビディスタの創設者が嫉妬の余り恋敵を謀殺した。
その事実を白日の下に晒せと言っているのだ。
だが、そんな事をすれば栄華を極めたリビディスタの家系は破滅だ。
ドルキ一人の問題ではなくなってしまう。
その事にマリオンも気付いたのか、急に口を閉ざし、俯いてしまった。
「あーもーっ、まだるっこしいわねぇ…っ。
家族揃って五体満足で生還出来たのよ? もっと喜びなさいよっ」
「そんな単純な問題では無い」
258 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:01:54 ID:/Wkm2F56
「貴方達人間がややこしく考えてるだけよ。
ようはそこの女に、リオの母親を殺した償いをさせればいいんでしょう?
だったら簡単よ。そこの女、」
「…ドルキですわ」
「そう。ドルキがリオの事をちゃんと育ててあげればいいのよ。
死んでしまったリオの母親の代わりにね。
私がリオのお母さんだったら、そうして欲しいって思うわ」
「それは…そうかもしれないですけど」
思わずドルキとリオ、二人が顔を見合わせ――余りの気まずさに視線を逸らす。
(あれだけ憎み合ったんだから、いきなり仲良くしろなんて言われても…)
「大体、問題はそれだけではありません。
このむす――こほん――リオの体は人外となったままです。
お腹の中には貴女が寄生させたアドニスもあるのですよ?
その責任はどう取るおつもりですか?」
「それこそリオの気持ち次第よ。
アドニスは体内の魔力が枯渇すれば枯れるわ。
リオが寄生させたメイド達のアドニスもそうよ。
さっきの戦いでリオに魔力を吸収されたせいで根こそぎ枯れちゃったわ。
後遺症も無く、生活に復帰出来るでしょうね」
「貴女がリオのアドニスの力を吸収すると?」
「まあ、リオが望むなら。リオの力を借りてそうしようかな、って話よ」
「でもネーアさん。お腹の中のアドニスが消えても、私の体は人間には戻りませんよ」
それには何の根拠も無いが確信めいたものがある。
一度覚醒してしまった魔物の血はそう簡単に抑え込む事は出来ないだろう。
ドルキと顔を合わせていれば、また暴走して彼女に傷を負わせてしまうかもしれない。
「それに私、言いました。ずっとネーアさんの傍に居るって。
それは今でも変わりません」
父の事を知り、母の事を知り、姉の事を知った。
自分がどれだけ愛されているか。
人間の生もまだまだ捨てたものではないと思った。
しかし思うのだ。
仮に自分が再びリビディスタの生活に戻ったとして。
その生活は幸せなものなのだろうか。
『武芸の家に悪魔が住み着いている』。
そんな噂が流れれば、姉にも父にも迷惑を掛けてしまう。
それでは人であった時と変わらない。
それにネーアはどうなる。
屋敷から飛び出した自分を保護し、慰め、契りを交わした彼女を放り出す気か。
ネーアは教えてくれた。
二百年における逃亡生活がどれほど寂しく、辛いものか。
人外の身でありながら、人の心を残している事がどれほど苦痛か。
そんな彼女を放っておけない。
(なんだ。最初から、答えは出てたんだ)
ネーアの言うとおり、ややこしく考える必要はなかった。
「私、リビディスタを出ていきます」
リオの言葉に一同が驚き、眼を見張った。
「ちょ、リオっ! 貴女本当にそれでいいの!?
折角お父さんと仲良くなれたのにっ、それをみすみす諦めるような…っ」
「それは…父様とはもっと一緒に居たいですけど」
ちらり、と横目で父を伺う。
娘が家を出ると言っているのに彼は相変わらずのポーカーフェイスだった。
だが彼も娘と心を同じくしている筈だ。
あの激しい戦いの時交わした言葉が、偽りとは思いえないから。
259 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:02:54 ID:/Wkm2F56
「貴方もっ、リオともっと一緒に居たいんじゃなかったの!?
家族の団欒とかは……あー、ちょっと想像出来ないけど…。
それでも、剣の稽古とかさっ、一緒にしたい事色々あるでしょうにっ」
「…そうだな…」
ふ、とグリーズの顔が僅かに綻んだ気がした。
彼が表情を見せる事は少ない。
もし見せたとしたら、それは彼の心情に大きな変化があった時だ。
今は野暮だと思い、シュトリの能力は使っていない。
だが父の心境が如何なるものか、大体分かるようになってきた気がする。
「だが。ワシには責任がある。
この街を三十年以上の月日を掛けて作り上げ、それを管理する責任がな。
リビディスタの家柄を穢す訳にもいかんのだ」
「あっきれた! この甲斐性無し! 唐変木!
結局リオよりも、過去の栄光に縋っているだけじゃない!
本当の父親なら娘一人くらい救ってみなさい!」
ばんばんっ――テーブルに触手を打ち付けながら抗議をするネーア。
その様子にグリーズとドルキが顔を見合わせた。
「言った通りだろう?」
「え、えぇ…本当に…怖いもの知らずというか、豪気というか。
野蛮というか――あら、失礼。聞き流してくださいませ。
兎も角、口の利き方があの女そっくりですわ」
夫妻で視線と言葉を通わす姿に、ネーアが、リオが首を傾げた。
マリオンはと言うと珍しく、くすくすと忍び笑いを漏らしている。
「な、何なのよ…二人して……マリオンも、気持ち悪いじゃない」
「いや、お前を見ているとリシュテアを思い出す」
「見た目は違いますが……雰囲気がそっくりなのです」
「……確かマリオンにも同じような事を言われたわ。
よっぽど似てるのね、リオのお母さんに」
(ネーアさんが、私のお母様にそっくり?)
今度はネーアとリオが顔を見合わせる番だった。
成熟した女としての美しさと、どこか少女としての可憐さを併せ持った不思議なアネモネ。
肌も髪も瞳も、人とは異なる翠の一色。
いや、内面の話なのか。
『命を粗末にするんじゃないの!』
お節介で。
『どうしてって、体、弱いんでしょ? 無理させたくないもの』
優しくて。
『ご馳走様♪ リオのお汁、とっても美味しかったわ♪』
エッチで。
『ねえリオ。やっぱり。モンスターになるなんて嫌?』
でも実は寂しがり屋さん。
「この子の、面倒を見てやってくれ」
唐突に、グリーズがネーアにそんな事を言った。
「は? ちょ、ちょっと待ってよっ。いきなりそんな事言われても」
「貴女なら……そう……あの女の代わりになれますわ」
「私もそう思う。ネーアなら、安心してリオを任せられる」
「み、皆して何なのよ一体…」
困り顔をするネーアに、更に追い討ちを掛けた。
260 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:04:07 ID:/Wkm2F56
「ネーアさん。私を一緒に連れて行くって言ってくれました。
ずっと一緒だって、言ってくれました。
エッチまでして、私を魔物にしてくれました。
あれは嘘だったんですか? 遊びだったんですかっ?
私を、騙したんですかっ!?」
瞳を潤ませながらまっすぐにネーアを見詰める。
ひっくひっくと嗚咽を漏らしながら、涙声で彼女に訴える。
「え、ええぇ!?」
上目遣いに見詰められたネーアは明らかに狼狽した。
続けざまに家族三人から敵意の篭った眼差しがモンスターの女に集中する。
家族からすれば可愛い娘を行きずりのモンスターに寝取られたようなものだ。
そして根が真面目なネーアは大なり小なり後ろめたく思っている筈なのである。
「う、嘘なんかじゃないわよ!? あれは本心よ! 神様なんか信じないけどっ。
居るんなら誓ってもいい! あたしは今でもリオと一緒に居たいと、」
「じゃあ決まりですね♪」
ぴたりと泣き止み、笑顔を浮かべたリオに、ネーアが呆然とした。
「だ、騙したわねっ!?」
「私、悪魔だもーん♪」
ぺろりと舌を出して悪戯っぽく笑う。
「あ、貴女って子はーーっ!!」
触手を展開して迫るネーアから逃げるように狭い室内を駆け回る。
「きゃはははっ」
「こらーーっ! 大人をからかうんじゃないのー!」
どたんばたんと家具を薙ぎ倒しながら傍迷惑な追いかけっこが始まった。
「あの…ここが私の部屋だとお忘れですか?
というか静かにして下さいな。屋敷の者が目を覚ましてしまいます」
呟くドルキの声は果たして二人に聞こえたのか。
「そうだ。父様」
「何だ」
「リオが出て行くなら。私も家を出ます」
「は!? マリオン! 何を勝手な事を言っているのです!
貴女が家を出る理由など、一体何処にあると言うのですか!?」
「私母様よりリオの方が好き。それじゃ駄目なの?」
「駄目に決まって、」
「勝手にしろこの親不孝者が。貴様は勘当だ」
言葉自体は厳しいものの、グリーズの表情自体は穏やかなものだった。
将来有望なマリオンをみすみす家から追い出したくは無い。
だがマリオンとリオ、それにネーアの三人なら上手くやっていく事が出来るだろう。
そう考えた彼が、不器用なりにもマリオンに送る手向けの言葉なのだ。
「はあ…もう勝手にして下さい…わたくしはもう知りません…」
部屋の中で暴れまわる魔物二匹。
それに突如家を出る事になった娘のマリオン。
頭痛の種にドルキは頭を抑えるのだった。
***
パセットは夢の中に居た。
『今日のおパンツはクマ柄でございます。お嬢様』
『パセットちゃんって喋り方と台詞の内容がちぐはぐだよね』
『それがパセットのキャラでございます故』
夢の中でパセットは屋敷の離れに居た。
いつものようにリオを起こし、彼女の世話をする。
着替えから始まり食事の用意。
ベッドメイキングを初めとした部屋の掃除。
風呂だけはお供させてもらえなかった。
それでも夜寝る時以外の殆どは彼女と共に過ごしていたと思う。
261 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:05:10 ID:/Wkm2F56
主従。友達。いや、或いはそれよりももっと深い絆で結ばれた何か。
もしどちらかが男だったなら――従者と主、いけない恋に落ちちゃったりなんかして。
『今エッチな事考えて無かった?』
『何故分かった!? いやいやいやいやいや!
違うよ? リオっちのつるぺたボディにあんな事やこんな事したいとか!
そんな事考えてないさ! でもね…! でもっ――
ぱ、パセット…リオっちとだったら……いやん♪ 恥ずかしい♪』
『あはは…』
苦笑いを浮かべるリオ。
彼女はもっと笑えばいいのに。可愛いんだし。
そう思って出会った時からずっと何かにつけてはその笑顔を拝もうと四苦八苦してきた。
それはもう、意地と言っていい。
いつも寂しそうに笑う彼女を、本気で、心の底から笑わしてあげたい。
それは面白おかしい、とかそういう意味じゃなくて。
生きてて良かったー、とか。
幸せだー、とか。そういうニュアンスの笑顔がみたいのだ。
でも、未だにそんな表情を見た事が無い。
そして、それはきっと、これからも。
『パセットちゃん? 私そろそろ行かなきゃ』
ばさり、と彼女の背中から蝙蝠の翼が生えた。
その姿はいつものワンピースではない。
人外に身を堕とした時の、黒のゴスロリ衣装だ。
『え?』
『だって私もう人間じゃないし。お屋敷には居られないよ。だから、お別れなの』
がらがらと、足元が崩れる感覚と共に夢の中の風景までが崩れていく。
離れの中の景色が岩肌を削るように剥がれ落ち、その下から暗闇が覗いた。
それは悪夢だった。
リオと離れ離れになってしまう。
悪魔となったリオが屋敷に潜入し――返り討ちに遭ってしまう。
そんなパセットの不安を具現化した夢だ。
『や、やだっ! 一緒に、パセットも一緒に行くっ』
『パセットちゃんは駄目。だって普通の人間だもの』
『そんな事無い! パセットだってお腹の中にお花のお化けが――』
そう言って腹に手を当てて、その下から何も感じない事に気付いた。
狂おしい官能も。堪えられない疼きも。腹を圧迫する感覚も――最早感じられない。
アドニスの花が、子宮から消えていた。
『え、何で…?』
『だからね? ここでお別れ。
ばいばいパセットちゃん。私、パセットちゃんが私のメイドさんで良かった』
『やだっ、やだやだやだやだやだやだやだ!! そんなの認められるかぁ!
そんな、今生の別れみたいなのっ、ヤダぁああっ!!』
『ありがとう』
そう言って笑うリオはやはりというか。
(ありがとうって言うなら、そんな悲しそうに笑うなぁ!!)
『さようなら』
『やだっ、リオッち!!』
背を向けて歩き出したリオに走り寄ろうとする。
だがリオとパセットしか居ない漆黒の空間。
パセットがどれだけ走ってもリオには追いつけない。
262 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:06:05 ID:/Wkm2F56
それどころか徐々に二人との差が開いていく。
頭の片隅では何となく気付いていた。
これが只の夢だという事に。
走っても走っても追い付けない――そんなのベタベタじゃないか、と。
けれど、それがもし夢であっても。
今リオと離れ離れになったら二度と会えない気がした。
だからパセットは走る。
どれだけ二人との差が開こうとも。
リオの後姿が米粒のように遠ざかっても。
絶対に諦めない。
諦めて、たまるか。
『リオッちーーーーーーーーーーっっっ!!!!』
手を伸ばし、どこまでも広がる黒い世界の中、あらん限りの声で叫んだ――
――ところでパセットは眼を覚ました。
「――あれ…? リオッち?」
暗闇の中、自分の右手が天井に向けて一直線に伸びていた。
がばりと上体を起こし、辺りをキョロキョロと見回す。
「何も見えん! ここは誰? ワタシは何処!?」
随分混乱していた。
夢を除けば――その夢の内容も急速に形を失い、曖昧になっていくが――
――最後の記憶は何だっただろうか?
「――――――――――――――――――――――あ、思い出した」
(大乱交大会でした)
メナンティお姉様の部屋で同僚を交えてそれはもうエロエロな事になってました。
「ってあれ!? あれれっ!?」
布団を剥ぎ取り、自分の格好を確認する。
誰かが着替えさせてくれたのだろう。
眼を凝らして良く見ると寝巻き姿という事が分かった。
その寝巻きの裾から手を突っ込み、下腹部に触れる。
「――無い。お花のお化け、無くなってる!?」
どくどくと脈打つアドニスの鼓動が感じられない。
(どうなってるの?)
リオと一緒に屋敷に潜入した。
そしてメナンティを皮切りに、同僚達に手を掛けてアドニスを植え付けていった。
(あれ、気持ちよかったなぁー、っていやいやそんな事考えてる場合じゃないし)
そう言えば部屋にドルキが入ってきた気がする。
それから――それから――
「どうなったの?」
そこで記憶が途切れていた。
(ちょっと待って。あの鬼ババアが入ったところで記憶が無いって事は……)
まさか、リオは。
『パセットちゃん? 私そろそろ行かなきゃ』
先程の悪夢がフラッシュバックした。
反射的にベッドから飛び出し、月明かりが僅かに漏れるカーテンを開き、光源を確保。
ガラス窓から漏れる月明かりで、ここが自分の部屋だと確認する。
パセットは急いで部屋を出た。
あれからどれだけ時間が経っているか分からない。
腹のアドニスが消えている理由も気になる。
そして何より、リオが一体どうなってしまったのか。
それらの疑問に答えてくれる人物に、会うしかない。
263 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:07:40 ID:/Wkm2F56
パセットは寝巻き姿に素足のまま、屋敷の廊下をぱたぱたと駆け抜ける。
問題の人――ドルキの寝室まで行くと扉の隙間から灯りが漏れていた。
ノックをしようとした瞬間、向こうから扉が開く。
「――貴様か」
扉の向こうから顔を出したのは我らが旦那様、グリーズその人だった。
本人の居ない所ではロリコンだの何だのと冗談を言うが目の前ではそうはいかない。
頭四つ分くらいは高い所から仏頂面で見下ろされれば流石に怖いし。
「ぐ、グリーズ様っ、ほ、本日は大変お日柄もよろしく…っ、グリーズ様に至っては、」
「普通に話せ」
「リオッちをどうしやがったんだコンチクショー!!!」
思わず本音が飛び出してから『あ』と口を塞ぐ。
ところが上目遣いにグリーズを見上げれば、彼は怒った様子もない。
彼は表情を変えないまま、只一言、
「一足違いだったな」
「…え? どういう事っすか?」
「マリオンとあの娘はリビディスタから勘当しました」
部屋から更にドルキが現れた。
「勘当って、じゃ、じゃあリオッちは!?」
「心配しなくとも生きている」
「よっしゃあああぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!」
ぴょんぴょんとその場で飛び跳ねる。
その様子に、これだから子供は、とドルキが呟き、グリーズが僅かに頬を緩ませた。
(あ、そうでした、今一応夜でした)
「えー色々お話を伺いたいところですが」
結局、今回の事件はどうやって解決したのか、とか。
まあ、復讐の対象だったリビディスタ夫妻が存命。
それに加え首謀者のリオと自分が存命。それにマリオンが揃って勘当となると。
割と穏便に解決したのかな、と思ってしまう。
(ま、それはいいや。後でリオッち本人から聞けばいいんだし)
今する事は、
「お願いがあります!」
ぶん、と音がするくらい頭を下げた。
そうだ。リオが居ないなら、自分も屋敷に留まる意味は無い。
(だってパセットは、リオッちのメイドさんなんだから!)
だから、その事をグリーズとドルキに伝えなければならない。
自分も屋敷を出て行くと。
頭の固そうな二人の事だから、大なり小なり反対されるだろうが、
「貴様はクビだ。何処へでも好きな所に行け」
「―――――――はい?」
「二度は言わん」
背を向けるグリーズ。
その向こうで、ドルキがくすくすと可笑しそうに笑っていた。ちょっと気持ち悪い。
(え? あれ? ひょっとして、旦那様、今の、気を遣ってくれたの?)
えーマジで? イメージと全然違うし。
というか照れてる? グリーズ様照れてますか? ツンデレですか?
「笑うな。何が可笑しい――貴様も、何をぼんやりしている?」
「え――と言いますと?」
「リオを追いかけるのだろう? さっさと支度を整えろ。森の中は危険だ」
どうにも言葉足らずだがこれはひょっとしてあれか。
まさか送ってくれる、という事なのだろうか。
「あ、ありがとうございます!!」
頭突きでもしそうな勢いで再び頭を下げた。
グリーズは何も言わなかった。
鉄面皮はびくともしていない。
だがその下に隠れた心が、ちゃんとした人間の――『父』のものであると理解した。
264 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:09:20 ID:/Wkm2F56
***
夜の帳が下りた森の中に、二つの異形と二つの人影が輪を作っていた。
異形の正体は、上半身に美しい女の裸体を晒した花型の魔物――アネモネだ。
それが二体。内一体は、
「ひっくっ…! ひくっ…! グリーズ様、グリーズ様ぁっ!」
かの英雄を名前を呼びながら大泣きしているそのアネモネはクロトだ。
愛するその男に首を切り落とされ――だが死なず、気が付けば森の中に一人だった。
屋敷を静かに後にした一同と合流する前から、彼女は泣き続けていたのである。
「よしよし。クロトさん。元気出して? もう一人じゃないよ?
私も、ネーアさんも居るから。ね?」
アドニスの花弁の上に座り、リオは泣きじゃくるクロトをあやしていた。
背中に手を回して抱き付き、かつては銀髪だった翠色の髪を優しく撫でる。
「リオ様ぁっ…! 私、振られちゃいましたぁ…っ! ううっ! うわぁぁぁんっ!!」
「うん。うん。辛いよね。分かるよ。分かる。
今は、好きなだけ泣いてていいからね?」
「泣きたいのはリオも一緒じゃないの?」
背中から掛けられたのはネーアの声だった。
世にも美しいアネモネの女は心配げな表情でこちらを見詰めてくる。
そう、クロトもリオもリビディスタを追い出された身。
人間の世界を離れ、欲望と破壊の渦巻く人外の世へと踏み込んだ少女。
もう、父とは二度と会う事も無いだろう。
ネーアはそれを心配して言っているのだ。
「私は、大丈夫です。多分」
(ここには皆居るから。ネーアさんも、クロトさんも、それに、)
「それに、頼りになる姉も居ますから」
傍らの切り株に腰を落としていたマリオンに向けて、にこやかな笑みを送る。
この中で唯一の人間である腹違いの姉は照れくさそうに頷いた。
「どれだけ役に立てるか分からないけど、頑張る」
「何謙遜してるのよ? 人里離れた所なんて魔物やら凶悪な野生動物が沢山居るんだから。
その中で剣も魔術も使える人間が居るんだから心強いものだわ」
「そうは言うけど」
ちらり、とマリオンの視線がリオに向く。
「リオ、ひょっとしたらもう私よりも強くなってるかもしれない」
グリーズとの決闘の事だ。
あの時はがむしゃらに戦っていたからよく覚えていないのだが。
まあ、確かに、良く考えればあの剣神様と対等に渡り合ったというだけで凄いのだ。
向こうが勝ちを譲ってくれた事を差し引いても、リオは十分に強い。
「それにクロトさんは探索魔術と防御魔術のスペシャリスト。
生存率が高くて、ダンジョンの探索なんかじゃ重宝していた。
――まさかリオに種付けされてたなんて夢にも思わなかったけど」
「あう、ご、ごめんなさい」
クロトに種付けした時は魔物となった体を持て余していた。
体から溢れ出る欲望に抗えず、やりたい放題やってしまったのだ。
その結果が今のクロトである。完全な被害者だった。
「もういいじゃない。私は仲魔が増えた方が良いと思うし。賑やかだしね?」
もし仮に人間に戻れたとしてもだ。
グリーズと戦い、あまつさえ告白までしてしまった。
そんな状態で一体どの面下げて屋敷に戻るというのだ。
「あ、いや…そうじゃなくて…それは、もういいの、私も。
ただ、私以外の三人は、皆強い。ネーアもそうだった」
(そう言えば。ネーアさんと姉様、一度戦ったんだよね)
クロトを発見するまでの道すがらその話を聞いた。
激しい戦いだったそうな。
「だから、今更私一人が増えたくらいで、あまり戦力の足しにならない――そう思って」
姉の発言に丸い眼をぱちくりとさせた。
その後、二匹のアネモネと交互に顔を合わせる。
265 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:10:36 ID:/Wkm2F56
「私、リオを守る為に強くなった。
辛い修行にも耐えて、魔術の勉強もして。
リオの事を一人にして、実戦経験も積んで――
でも、そのリオは、もう私が守る必要が無いくらいに強くなってる。
だったら、私が居る意味は……」
「じゃ何で貴女は着いてきたのよ? 家でご両親の面倒見れば良かったじゃない」
「それは――リオが、心配だったから」
「? だったらそれでいいんじゃないんですかぁ?」
何時の間にか泣き止んでいたクロトが首を傾げながらそう言った。
「そうだよ。私、姉様の事、邪魔だなんて思わない。
姉様は私の事ずっと思ってくれてた。それは、これからもだよね?」
「う、うん」
ぴょんと、クロトのアドニスから飛び降り、その勢いのままマリオンに抱き付く。
(うにゃぁ…姉様、暖かい…♪)
「それじゃ、今度は絶対絶対一人にしないでね?
ずっと一緒に居てね? 私は、それで十分だから♪」
「……でも、私は、」
何か言い掛けた姉の唇に人差し指を添える。
「それにね? この四人の中で一番大変なのは姉様だと思うよ?」
すんすんと姉の胸元に顔を寄せて匂いを嗅ぐ。
いい匂いがした。
日向と、汗と、それに女の匂い。
大好きな、乙女の匂いが。
どくん、と胸が高鳴る。
同時にどろり、とした感情が流れ込んで来る。
(んにゃ、それは、いいの)
姉の体を抱きしめ体温を感じる。
そうする事で悪魔としての本能――他人を貪る暗い心が霧散した。
「――ああ、成る程ね」
こちらの言葉の意味に気付いたのか、ネーアがにやにやと笑っていた。
「え、え? 何?」
「ふふふ。姉様? 家を出て私達に付いて来るっていう事がどういう事か分かってますか?」
「え、それは…」
「覚悟、していますよね?」
ずくり、と腹の中のアドニスが疼く。
負の心は抑えられても、三つの魔物の因子による凶悪なまでの性欲は抑えられそうに無い。
「いや、まだ心の準備が、」
往生際の悪い姉の唇を、キスで塞いだ。
***
何が起こったか一瞬理解出来なかった。
「ん…っ、ふぅっ…、ちゅっ…、姉、様…っ」
(私、リオにキスされてるっ)
切り株に腰を下ろした体勢のまま硬直してしまった。
じゃれつくように抱き付いて妹がしたのは、歳に似合わない熱烈な口付けだった。
キスと言えば唇同士を合わせるくらいにしか思っていなかったので、思考停止してしまう。
実際には柔らかな舌が捻じ込まれ、唾液をまぶしながら咥内を嘗め回される。
ざらざらとした舌の感触は普通の人のものとは少し違うのだが、それを認識する暇もない。
「ちゅるっ、ちゅっ、レロレロっ、ちゅぷっ…っ、ふにゃっ、はぁっ」
「んっ…!? はっ、ぁふっ…、り、おっ…!」
(頭、蕩けるっ)
どろりとした唾液を大量に流し込まれ舌で無茶苦茶に攪拌される。
ぐちゃぐちゃと咥内からいやらしい音が響いて、それがどうしようもなく興奮する。
妹の唾液はどこか甘く、彼女の吐息を吸い込むと脳が痺れるようだった。
舌同士が触れ合い、粘膜同士が擦り合えばぞくりとするような感覚が背筋を駆け抜けた。
266 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:11:57 ID:/Wkm2F56
(あっ、これっ)
「ちゅぅぅうううぅぅっっ♪」
「んっ!? ――――――!!!!」
舌を思い切り吸引されて視界で火花が散った。
妹に抱きしめられた体がびくん、と一人でに震え、体から力が抜けていく。
「――ぷあっ♪ ご馳走様、姉様♪ どう姉様? 姉様も気持ち良かったでしょ♪」
(気持ちいい? 今のが?)
体が気だるい。
だがポカポカとしていて、頭がぼう、として。
姉妹で背徳的な行為をしているというのに幸せな気分だった。
キスだけで、こんなになってしまうのか。
こんなにも、気持ちいいのか。
「んにゃぁ? 姉様? チューだけでイッちゃった?」
妹の顔が急接近した。
キスをした相手が、それも大好きな妹の顔を間近で見るとそれだけで心臓が跳ね上がる。
「き、気持ち良くなんか無いっ。全然っ」
捨て台詞を吐いて、視線を外した。
どきどきどきどきどきっ!
心臓の音がやけに五月蝿い。正直、妹の顔を直視出来なかった。
きっと今頃真っ赤な顔をしているだろう。
全く、天邪鬼な自分の性格が恨めしい。
そしてそれを周りの者は皆理解しているようだった。
ネーアは当然として、リオも、クロトさえもくすくすと忍び笑いを漏らしている。
「わ、笑わないで」
「あははっ。ごめんごめんっ。だってあんまりにも可笑しいから。
マリオンってほんと初心よねー、可愛いわよ?」
「う、うるさいっ。からかわないでっ」
「ネーアさん、姉様の事からかってないよ?だって私も姉様の事可愛いと思うし。
でも、キスだけでそんなになるんなら、この先が思いやられるね?」
これからもっと凄い事するのにね――そう言って妹はぺろりと舌なめずりをした。
「…う」
(何このリオ怖い)
昼間の事件の時もそうだったが気弱で大人しい妹はもう変わってしまったのだ。
それを少し寂しく思い、同時にこの娘が大人になったらどんな女になるのか。
想像するだけで恐ろしい。
「さあ姉様♪ ベッドに行きましょう♪」
「え、ベッドって、何処」
「目の前に立派なベッドが二つもあるじゃないですか♪」
「あたし達をベッド扱いとは、なんというか本当に逞しくなったわねぇ。
あ。あたしは今回パスするわ。クロトに構ってあげて?」
ネーアの言葉に内心ほっと息をついた。
いくらなんでもアネモネ二匹と淫魔一匹に同時に責められたら死んでしまう。魂的に。
「それじゃクロトさん。お願いします♪」
「はい、リオ様ぁ♪」
しゅるるるるっ。
脚代わりの触手が何本が伸び、リオとリオに抱きつかれたままのこの体を拘束する。
普通の女ならこの時点で悲鳴の一つでもあげるのだろうが。
(何か、慣れちゃってる自分が居る)
ここ最近アネモネと――主にネーアと触れ合う機会が多かったからだろうか。
性的な接触は無かったが、アネモネに対しての危機感がすっかり薄れてしまった。
そんな益体の無い事を考えている内にクロトの真正面へと体を吊り上げられた。
「到着ー♪」
花冠の中央に尻餅を付くように着地。
鎧を通して、背中にクロトの肌の感触があった。
「さあクロト様ぁ? 鎧を脱ぎましょうねぇ♪」
267 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:12:55 ID:/Wkm2F56
体を拘束していた触手が一瞬離れたかと思うと衣服や鎧の隙間に侵入してきた。
「あ、馬鹿っ、勝手に脱がさないでっ」
「私も手伝うー♪ 姉様? 脱ぎ脱ぎしましょうねぇ♪」
「やあぁぁっっ!!」
あっと言う間だった。
抵抗らしい抵抗も出来ないまま、着ている物を全て脱がされてしまう。
アドニスの繋がりを利用しての見事な連携だったと言わざるをえない。
「…っっ、見ないで…っ」
顔が熱い。リオとキスした時よりも、顔が紅潮しているのが分かった。
それは羞恥心のせいだ。
人前で裸体を晒すだけでも恥ずかしいというのに、触手で淫靡に拘束されているのだ。
手を万歳の形に広げられ、脚はM字に開脚されている。
真正面のリオからは本当に丸見えだ。
月明かりに照らされたマリオンの体は決して豊かとは言えない。
胸は当然の事として、尻や太股の肉付きも少ない。
女の色香とは無縁な体型だ。
だが折れてしまいそうな四肢は均整がとれており、何かの芸術品のようだ。
真っ白い肌に掛かるブロンドの髪も、彼女の魅力を一層に引き立てていた。
「うにゃ。姉様の体綺麗♪ スレンダー系なんだね」
「…ほ、本当に…?」
涙目で、妹を見詰める。
何を感じたのか妹は目を瞬かせ、こくこくと首を縦に振った。
離れた所から『うわ。マリオンったら割と凶悪ね』なんて言葉が聞こえた気がした。
「でも私、胸、小さいし。リオより」
クロトやネーアに関しては、比較する事すらおこがましい。
ぐす、と鼻を啜る。
大好きな妹の前だから何とか耐えている。
だがこれが公衆の面前だったり男の前だったりすれば。
きっと大泣きするか見た者全員を斬殺していたかもしれなかった。
「え、ええ? そうかな?」
「…ぐすっ、そう…よ、見たら、分かる。私の胸は、小さ過ぎる」
「だ、大丈夫だよ姉様っ。私が一杯揉んで、大きくしてあげる!」
「ほ、本当っ?」
思わず目を輝かせてしまった。
(いや。違う。そうじゃない。揉んでも大きくなる訳ないし)
「や、やっぱりいいっ。私はこのままで」
「そんな事言わないで♪」
「――きゃっ!?」
妹の指先が緩やかな曲線を描く膨らみに触れた。
肌が敏感になっているのか、それだけで甘い官能が体に満ちる。
「にゃう♪ 姉様の肌すべすべー♪ ずっと触ってたくなる♪
ほらほら♪ クロトさんも触ってみて♪」
「はぁい♪ ではご相伴に預かりますぅ♪」
「え、ちょっ、待って――はんっ…!?」
肌を撫で回す妹の指がピンク色の藁を掠める。それも全く予測の出来ないタイミングで。
慣れない快感にもピンク色の先端は反応し、生意気にも自己主張を始めた。
「あっ!? 勃った、勃った♪」
「それじゃぁ、こちらもぉ♪」
「あっ、駄目っ」
背中からクロトが手を回し、乳首を中心に乳房を撫で回す。
触れるか触れないかくらいの絶妙なタッチに、左側の先端もあっと言う間にしこり立った。
(さ、触られてるだけなのに…っ)
過去、ネーア追撃中に犠牲者となった女性達の顔が浮かび上がる。
眉をハの字に寄せ、口をだらしなく開けた、いやらしい雌の顔。
魔物に襲われておきながら感じるなんてありえない――そんな事を当時は思ったものだが。
「いただきますぅ♪」
268 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:14:08 ID:/Wkm2F56
背中からクロトの甘ったるい声が聞こえた。
かと思うと一本の触手が鎌首をもたげ、その先端がくぱり、と十字に割れる。
内側にびちびちと柔毛触手がひしめき合うそれを左側の乳首へと近付けて、
「え、待って、それだめっ、駄目っ――きゃあぁぁっ!?」
ぱくり、と愛らしいサクランボを咥え込まれた瞬間、電気が走った。
充血し、敏感になったそこをぬるぬるとした細い触手の束に舐めしゃぶられ悶絶する。
(き、気持ちいいっ、私、駄目になっちゃうっ)
コンプレックスの対象だった胸を責められ、こんな醜態を晒すとは、夢にも思わなかった。
恥知らずな先端をくちゃくちゃと舐められ、或いは甘噛みされ、その愉悦に脳が蕩ける。
「姉様、エッチな顔にゃぁ♪」
「い、いやぁ…っ、見ないでぇ…っ」
「恥ずかしがらなくてもいいんだよ? これからもっともっと気持ちよくなるんだから♪」
言って妹は右の乳房へと顔を寄せて――ぱくり。
「あっ!? 駄目っ! だめっ!」
赤ん坊のように乳首に吸い付かれる。
ぺろぺろと先端を舌で何度も弾かれ、その度に快楽で視界が白んだ。
(エッチって、こんなに気持ちいいのっ)
戦う事しか知らなかったマリオンは、一人遊びはおろか、キスすらした事が無かったのだ。
興味が全く無い、とは言えなかったが、機会には恵まれなかった。
ところが実際に経験してみると、どうだ。
(びりびりして、痺れてっ、変になるっ)
心臓がどきどきと早鐘を打つ。
だがそれは実戦の空気の中感じる緊張や恐怖とは全然違って、どこか甘く、切ない。
頭もぼーとして、ろくな思考もままならない。
右と左の乳首から襲い来る、鋭い快楽に翻弄されるだけ。
「はあぁっ、はあっ、あぁっ!? やっ、かま、噛まないでっ!」
時折思い出したかのようにピンク色の先端を優しく噛まれ、喉から嬌声が独りでに漏れる。
じゅくり、と下腹部が疼いた。
「ふふふ。姉様のエッチな匂いがする♪」
顔を離したリオが微笑んだ。
コケティッシュな妹の笑みに、心拍数が更に上昇する。
つー、と乳首から伸びた唾液を舐めて切り取り、淫魔らしい表情を浮かべているのだ。
その愛らしくも妖しい笑みに、どきどきしながら魅入ってしまう。
アネモネ達はまだガスを撒いていない。
それでこれだけ心が掻き乱されるのだから流石淫魔と言ったところなのだろう。
それとも、自分はひょっとしてあれか。
生粋のレズビアンなのか。
「もういいかな?」
「うぅんっ」
急に二体の魔物の責めが終わる。
快楽という荒波から開放され、ほっとしたが体には火が着いてしまったらしい。
火照った体は切なく、快楽の余韻にじんじんと肌が疼いている。
特に下腹部――子宮ではそれが顕著だ。
じくじくとした疼きが腹から全身へと拡がっている。
何だか居ても立っても居られない。
「姉様? とっても濡れてるよ? あそこ、ぐちょぐちょだよ?」
妹の眼前に晒されたクレヴァスは解れ、口を大きく開いていた。
自慰もした事の無い生娘のそこからは、とろとろと新鮮な蜜を零している。
雌の匂いを発する愛液に髪と同じ色の恥毛が濡れて、色っぽさを演出していた。
「ば、馬鹿っ、そんな事、言わないでっ」
発情した自分の隅々まで妹に見られている。
それを思うと頭が沸騰しそうだった。
恥ずかしすぎて顔から火が出る。
「ふふふ♪ 姉様ほんとうに可愛いにゃぁ♪」
「ですねぇ♪ 初心な乙女、って感じですぅ♪」
「うー…!」
おもちゃにされている。
それは分かっているのだが体はすっかり出来上がってしまい逆らう事も出来ない。
269 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:14:59 ID:/Wkm2F56
何より、二人には悪意など一つも無いのは分かっているのだ。
誰の邪魔も入らぬ森の中、仲間同士でじゃれあうようなものだ。
じゃれ合うは無いか。ああでも魔物の慣性からすればいやらしい事もじゃれ合いのうち?
(そんな事より、体、疼いてっ)
「姉様、辛いよね?」
火照った体を持て余すこちらの心情を悟ってくれたのか、妹が優しい笑顔を浮かべた。
こくり、と小さく首を縦に振る。喋れば、情けない声が出てしまいそうだったから。
「準備も出来てるし、姉様の処女、リオが貰うよ?」
処女という言葉に体が震える。
別に貞操観念など持っては居ないし、異性との真っ当な恋愛にも執着は無い。
だが実の妹に犯される、という事実に、少なからず抵抗を覚えてしまった。
(…、違う、私は、リオを受け入れてあげないといけない)
自分は、結局妹に何もしてやれなかった。
強くなると言い張るのはいいし、実際に強くなった。
けれどそれが何の役に立った?
得た物より、失った物の方が大きいのではないか?
自分が屋敷を離れたせいでリオはこうして人外になってしまった。
ならその彼女を受け入れる事が、せめてもの罪滅ぼしではないのか。
例え、この体も魔へと堕ちるとしても。
「…分かった…」
ぽつりと呟くと、妹は嬉しそうに微笑んだ。
「うにゃぁ♪ 姉様大好き♪」
抱き付き、顔中にキスの雨をプレゼントしてくれる。
にゃうにゃうと鳴きながら、唇を舐めたり、首筋の匂いを嗅いだりしてきた。
それがくすぐったくて、微笑ましくて。
まるで猫がじゃれついてくるような感覚にこちらも頬が緩んでしまう。
「姉様ぁ…♪」
「リオ…」
そしてどちらからともなく再び口付けをした。
今回は妹に一方的にされるだけのキスではない。
互いに舌を絡ませ合い、相手の咥内へと自分の唾液を流し込む。
ふんふんと鼻で息をしながら、貪り合うようなディープキスに熱中した。
鼻に吹きかかる妹の吐息は甘く香り、胸を高鳴らせる。
甘酸っぱい唾液はまるで蜜のようで、いくらでも啜りたくなってくる。
舌をさりさりと削る猫舌も甘いばかりのキスの中では唯一の刺激となって、心地良かった。
(リオ、りおっ)
好き。大好き。
この感情が家族愛なのか恋愛なのかは分からない。
けれど手放したくない。ずっと一緒に居たい。
そして、その為には。
「はぁっ、はぁっ」
「ふにゃぁ…にゃうぅん…♪」
濃厚なキスを終え、僅かに互いの顔が離れる。
粘度の高い唾液が二人の間で銀色の橋を掛け、時間を掛けてぷつりと切れた。
「姉様ぁ…します、よ?」
「あ、ちょっと待って。私だけ裸なの、なんかずるい」
ぼやくように言うと妹はオッドアイを瞬かせた。
「うにゃ♪ そうだね♪」
黒いゴスロリドレスが揺らいだかと思うと黒い霧へと姿を変えた。
そして次の瞬間にはリオの体へと吸引されていく。
後には自分同様、生まれたままの姿になった妹の姿がある。
ふっくらとした肢体。
270 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:16:22 ID:/Wkm2F56
確実に膨らみ始めている乳房。
太股や、桃尻も丸みを帯びて、小さな体にも徐々に色気を帯び始めているのが分かる。
――というか明らかに、
(私よりもエッチな体をしている)
恨めしい。姉よりも優れた妹なんて存在しない――というのは言い過ぎだと思うけど。
遺伝子というか血のせいでここまで差が出るかと思うと悲しくなってくる。
(…それにしても)
妹の下腹部に思わず目がいってしまう。
同性の性器などまじまじ見る事は無かった上に妹のもの、ともなると興味もあるのだが――
(花だ)
ヴァギナの内側から咲いた肉の花が海星よろしく妹の股間にべったりと張り付いている。
花びらの内側は膣壁のように粘液に濡れたヒダが連なっていた。
四つある花弁は十字を形作り、その付け根からは計十二本の細い触手が生え出していた。
一本一本は小指程の太さでこれが獲物を拘束したり責めたりするわけだ。
中央の窪みには女性器の陰唇に酷似した割れ目が有り、粘度の高い蜜を垂れ流していた。
催淫性の高い蜜の香りに頭がぼーっ、として胸がどきどきと高鳴ってくる。
女の神聖な場所に寄生するおぞましい魔物だとは思う。
実際見てみると卑猥でグロテスクなものだとも思うが――
「あの、姉様? さっきからお股に突き刺さるような視線が…」
「ご、ごめんっ!? つい、」
見とれてしまった――口に出そうとしてその言葉を慌てて飲み込んだ。
「にゃふふ♪ リオのお花に見とれてたのかにゃぁ?」
バレバレだった。
「いいから! 早くするの!」
「にゃう♪ 分かったにゃぁ♪ しっかり見ててね、姉様♪」
妹が腹に力を込めた。
「ふにゃっ…! ――んにゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
ずるずるずるずるっ!!
花の中央からアドニスの生殖器が生え出した。
多重のエラを持つ肉色の胴。
疣が大量に張り付いた先端部分。
更にそこから細い触手が生え出し、うぞうぞとのたくっている。
自分の腕程もある、グロテスクな触手に思わず息を呑んだ。
「ふにゃぁぁっ♪ はぁっ…♪ はぁ♪ どう、姉様? リオの触手おチンポぉ♪」
官能を感じ、頬を赤くし、息を荒げるリオ。
股からもだらだらと愛液を垂れ流し、その姿は実に色っぽい。
(こ、これがアソコに入るの?)
だがこちらはその凄まじい外観にドン引きだ。
粘液に塗れて光る妹のイチモツは、こちらの穴の直径よりも遥かに大きい気がするのだが。
まあ、リオのものだと思えば怖くは無い――かもしれない。
試しに疣の生えた先端部分に指を絡めてみた。
「ふにゃぁっ!?」
「きゃっ」
びくん! と大仰に触手が跳ね上がる。
「ご、ごめんっ。痛かった?」
「ち、違うのっ…! いきなり触るなんて、思ってなかったからっ。
びっくりしたしただけ」
はぁはぁと妹は息を荒げていた。
敏感になっているのは、貧相なこの体だけではないという事か。
「もう少し、触っていい?」
「う、うにゃぁ…」
こくんと頷いた妹の顔は快楽に蕩けていた。
もっと触って欲しいとばかりに僅かに腰を押し付けられる。
自分はというと妹の触手ペニスに触る、というシチュエーションに興奮していた。
どきどきしながら今度は凶悪な多重エラ部分に指先で触れる。
「ふにゃぁっ…!」
びくり、と再び触手が脈打った。
(――あ、なんか可愛いかも)
271 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:17:19 ID:/Wkm2F56
調子に乗って触手に添えた人差し指と中指をツツーと下へと滑らせる。
「にゃうぅぅんっ…♪」
びくびく。触手が再び暴れ回る。
それを逃がさないように掌で抑え、その触手の形や温かさを感じた。
(あ…、やっぱり、全然怖くない…)
これなら、大丈夫だ。
と、いうかむしろ。早くしてみたいくらいだ。
(なんか、エロイ気分になってる)
下腹部のじくじくがいい加減切なくて、自分の指でかき回したいほど。
淫魔の愛撫とキス。それにリオのアドニスから漂う催淫香が理性を追いやっていた。
「ね、姉様ぁっ♪」
「きゃぁっ」
いきなり押し倒された。
息を荒げた妹にマウントポジションを決められ、触手をヴァギナにあてがわれる。
「リオ、もう我慢出来にゃいにゃぁっ♪」
「うんっ、私も、私もリオが欲しいっ」
頭が完全に上せて、自分でも何を言っているか分からなかった。
ただ、妹はその言葉に感動したらしく、目をうるうるとさせながら、
「うにゃあぁぁぁぁぁあぁんっ♪」
嬉しさの余りに謎の遠吠え。
同時に、触手ペニスを一息で奥まで突き入れた!
ずりゅりゅりゅっ!
「っ!? …、っ…っ!」
ぶつん。そんな音が聞こえたかと思うと体の芯から引き裂かれるような痛みが走る。
(う、痛ぁっ)
だが予想していた程ではない。
死ぬほど痛いと聞かされていたので、どんなものかと思ったが。
「ね、姉様の中、いいっ♪ きつきつでっ、たまんにゃいよぉ♪
姉様は? 姉様はどうっ?」
快感を感じるのはまだ無理だが、ヴァギナの中にリオの触手を感じる事は出来た。
痛みよりも異物感と温もりの方が勝っている感じだ。
(もっと、リオを感じたい)
蕩けた魂が激しい交わりを求めている。
この大きく、卑猥な形状をした触手で滅茶苦茶に犯して欲しい。
「んっ…大丈夫っ…動いても、いいよ…っ」
すぐさまリオは腰を動かした。
最奥まで突き入れた雌しべ触手をゆっくりと引き抜いていく。
「あっ!? ……っ、っ! っ…」
処女膜の残骸をずりずりと多重エラで擦り削られ、明確な痛みに襲われた。
だが、これくらいの痛みが何だ。
リオはもっと辛い目に会ってきたのだ。この程度の痛み、耐えてみせる。
歯を食いしばり、ヴァギナを蹂躙する触手を受け入れる。
だが何が気に入らないのか背中のクロトがうーんと不満げな声を上げた。
「駄目ですよぉマリオン様ぁ? そんなに力んじゃぁ? 私がもっと解してあげますねぇ♪」
(え、いやそんな余計なお世話…)
――ぱく。
「きゃぁっ!?」
両の乳首に触手が喰らい付いた。
そのままちゅーちゅーと先端を吸われ、頭で快楽の火花が散る。
「うにゃぁんっ♪ 締まる、締まるよぉ♪
クロトさぁんっ、もっと姉様にしてあげてぇ♪」
「はいぃ♪」
「いやっ、それっ、だめっ――きゃぁんっ」
右左右左と交互に弱点を甘噛みされる。
痛みを堪えているところに不意打ち気味に襲い掛かる快楽は只甘い。
喉の奥から自分のものとは思えないほどいやらしい嬌声が漏れ出した。
272 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:18:08 ID:/Wkm2F56
(エロイ声、勝手に出るっ)
「姉様、やらしいにゃぁ♪」
ちゅっ、と妹が額にキスをしてくれた。そしてすぐに腰の動きを再開する。
ずりゅ、りゅ…りゅ…。
「んっ!? はっ! あぁっ!」
ゆっくりと、焦らすように触手を挿入される。
先端の突起物、エラエラの感触、それに太い胴と肉の温もりを順番に感じた。
「はぁっ、はぁっ♪ どう、姉様っ? まだ痛む?」
「んっ少し、だけっ――きゃんっ」
ちゅう、と両乳首を同時に吸われ、いやらしい声が漏れる。
「ふふふ♪ じゃあ、もうちょっと気持ちよくなろうねっ」
妹がクロトに目配せ。アドニスを通して何かの指示を送る。
待ってましたとばかりに三本目の触手が花弁の根元から生え、くぱり、と口をあける。
乳首を咥え込んでいるおしべ触手と同じそれは、結合部のすぐ上辺りを目指していた。
そしてその先には、ぷっくりと充血し膨らんだ淫核がある。
直に触った事も無いが、そこが敏感な部分だという事くらいは知っていた。
どきり、と胸が妖しく高鳴る。
口を開けた触手がピンク色の真珠に徐々に近付くのを、息を荒げながら見詰める。
白状すると、期待していたのだ。
未知の快楽に心も体も焦がされる事を。
――ぱくり。
「…っ、っ、っ、…!? ああぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
そしてその快楽は期待以上だった。
つるつるとした肉の突起物はその表面が乳首以上に敏感だと思い知らされる。
(すごっ、びりびり、するっ)
粘液に濡れた細かな触手にぞろぞろと嘗め回され、その度に腰が跳ねた。
「あっ!? あぁっ…! あぁぁぁっ!」
「ふにゃぁんっ♪ 姉様のおマンコっ、きゅっ、きゅっ、ってなってる♪
リオの触手チンポっ、食べられてるよぉっ♪」
妹の卑猥な言葉遣いも耳に入らない。
全神経が下半身に集中していた。
小指程にも満たない肉が、びりびりとした官能の嵐を呼び、マリオンの自我を削ぎ取る。
(やばいっ、気持ち、いいっ)
「姉様っ、もうっ、いいよね? 姉様スケベな顔になってるもんっ。
だから、リオもっいっぱい動くよっ」
「うんっ、うんっ」
返事と同時に妹が本格的に腰を使い始めた。
ぱつっ! ぱつっ! ぱつっ!
「ああっ!? あひっ!! すごぃっ!!」
腹の中を極太の触手が蹂躙する。
ごりごりといやらしい形状をした肉竿が処女の残骸をかき回し、痛みを産む。
「こっちもペースをあげますよぉ♪」
じゅるるるるるっ!!
「んああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!?」
充血する三つの突起物が同時に吸引され、痛みとは真逆の感覚に襲われる。
「姉様っ、姉様っ」
ばつっ! ぱつっ! ぱつっ!
激しく触手をピストンされ――
「はぁっ!! あぁうっ! ああっ!」
「ちゅぅー♪」
じゅるるるるっ!
「はあぁぁぁぁぁっ!!」
――敏感な三点を同時に吸引される。
「も、もうだめぇ!」
(頭っ、おかしくなるぅ)
痛みと快楽。その両方を同時に叩き込まれ脳はショート寸前だ。
273 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:19:18 ID:/Wkm2F56
体がガクガクと痙攣し、半開きになった口から唾液が垂れる。
しかも性に卓越した魔物二匹が本気で感じさせようと責め立ててるのだ。
そのせいで、痛みよりも快楽の割合の方が大きい。
「はあっ♪ はぁっ♪ 姉様っ? どうっ? 痛くて、気持ちよくてっ。
訳わかんないでしょっ? それとも、もうずっと気持ち良いの?
おまんこ、もう全然痛くないんじゃないの?」
「あっ! んっ! それ、はっ!」
ピストンのペースが途端に緩む。
がつがつと恥骨同士をぶつけ合うようなものではなく、拡張を主とした腰使いだ。
ふふふ、と妹は悪魔的な笑みを浮かべた。
くちくちくちっ。
「あっ!? あっ! それっ!?」
ヴァギナの浅い所で、素早く、揺するようなピストン。
散々穿り返された肉ヒダ一枚一枚に、丁寧に官能が与えられ背筋がぞくりとした。
痛みとも快楽ともつかない官能の嵐は、それ自体が判別不能の刺激でしかなかった。
だが今度は違う。
肉壷の入り口をぐちゃぐちゃと掻き回されれば蕩けそうな快楽が生まれるのだ。
(き、気持ちいいっ)
ついさっきまで処女だった体を空恐ろしい速度で開発されている。
そして今、ヘスペリスとしてのプライド、人間としての常識。
あらゆる束縛から開放されたマリオンは、妹の手で淫らに変えられていく事すら自ら望む。
「…もっと…」
「…にゃぁ? 姉様?」
頭が快楽で茹っている。
このままする事をすれば自分の体がどうなってしまうのか分かっている。
妹に種子を植え付けられアネモネとなってしまうのだろう。
だがそれでも良かった。
「…もっとしてぇ…」
恐ろしい程の猫撫で声だった。
妹がごくり、と生唾を飲み込んだのが分かる。
愛らしい猫目のオッドアイに移った自分の顔が、快楽に溺れる娼婦のように蕩けていた。
「にゃっ、にゃあんっ♪ 姉様っ♪ にゃうぅ♪」
ぐちゅっ! ぐちっ! じゅぷっ!
「あぁ!? あっ! それっ、それぇ!」
苛烈な突き込みに声が上がる。
「本気で、本気でいくにゃぁっ…! 姉様を、天国に連れて行ってあげるにゃぁっ」
ぐりんっ、と妹の腰が大きく時計回りに弧を描いた。
「あぁぁぁっ!?」
肉のチューブが触手の凹凸の形に拡張され、性感が掘り返される。
充血し、粘液に塗れた肉ヒダから甘美な官能が生まれ、全身を痺れさせた。
かと思うと今度は反対回りに腰が回転し、あぁんっ、と甘い嬌声を漏らす。
「はっ♪ はっ♪ はっ♪ はぁっ♪」
じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ…!
「あっ!? いっ! あんっ! あぁっ!」
だらしなく舌を垂らしたリオがこつこつと素早いピストンを繰り出した。
それも一突き毎に角度を変え、肉壷の中を万遍なく刺激してくる。
(あっ!? これっ、触手の疣疣っ、当たってるのが分かってっ)
敏感になった肉ヒダがぐりぐりと押付けられる触手の凹凸を感じてしまう。
「ぐりぐりされてっ、気持ちいいよっ…! ――あぁっ!?」
膣内のとある一点を触手の先端が掠めると、一際強い官能が襲い掛かる。
じいいん、とヴァギナ全体が痺れ、鼻の奥がつーんとした。
(い、今、すごいのがっ)
「ふにゃぁ♪ 姉様の、きゅうきゅうしてるにゃぁ♪ ここが、弱点なんだね♪」
にゃふふ、と淫靡に笑う妹、嫌な予感がした次の瞬間に、思い切り触手を突き込まれる。
じゅぷうっ!
「あひぃっ!!?」
深く、勢いを付けた一撃が『弱点』とやらに叩き込まれ意識が飛んだ。
274 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:20:29 ID:/Wkm2F56
下腹部がきゅう、と収斂し、白濁とした本気汁を結合部から噴出す。
「にゃはっ♪ しまるっ、しまるよぉっ♪ 姉様のおマンコっ、最高だよぉっ♪」
「ああっ!? 駄目っ! すごいっ! ああっ!」
ばつっ、ばつっ、と恥骨同士がぶつかり合う程の激しいストローク。
ひっきりなしにじゅぷじゅぷと卑猥な音が響き、マリオンの濃い匂いを辺りに撒き散らす。
「はぁ♪ はぁ♪ マリオン様、いやらしいっ。
マリオン様のマン汁の匂いがぷんぷんしてっ――私もっ、もう我慢できませんっ」
ずるるるるっ、と背後から触手がせり出した音がした。
それが何かを理解する思考力はもう残っていない。
Gスポットを荒々しく削り、かと思えば焦らすように触手をグラインドさせる――
そんな、緩急の付いたリオの責めに頭がピンク色に染まっていた。
これ以上されたら壊れるかも知れない。
なけなしの理性がぼんやりと考えた直後――菊門に何かが触れた。
ずりりりりりっ!!
「んああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!?」
「はああぁぁっ♪ マリオン様のケツマンコヴァージンっ、頂いちゃいましたぁっ♪
ああっ♪ いいっ♪ いいですぅっ♪ とってもしまりますぅ♪」
「ふにゃぁ♪ クロトさんがっ、姉様のお尻犯したらっ、にゃんっ♪
おマンコのしまりもっ、よくにゃったよぉ♪」
(あっ? おしりっ? おしりっ、犯されてるっ?)
肛門にとんでもない圧迫感を感じる。
二、三日便秘で溜まった排泄物をまとめて出そうとしてもこれほどではないだろう。
そして敏感になった体はアヌスに凹凸の激しい極太触手の感触を捉えた。
「あっ!? おしりにっ、触手――あぁぁっ! 触手っ、入ってるうっ!」
じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ!
「ああぁっ!? いやあっ!? だめぇっ! だめえぇっ!!」
ヴァギナとアナル。二つの穴を同時に触手で突き込まれる。
リオが突き込めばクロトも突き込み、腹の中腸壁越しに触手同士が触れ合う。
その衝撃に白目が剥く。子宮がきゅうきゅうと収斂していた。
それが絶頂だという事に気付かないまま、延々とサンドイッチファックが続く。
ずるるるるるぅっ!
「んぎいいぃぃぃっっ!!?」
今度は同時に、ゆっくりと二本の触手を引き抜かれていく。
ごりっ、ごりっ、ごりっ――
生き物のようにうねり、締め付ける肉ヒダ一枚一枚をいやらしい形状の凹凸が掘り返す。
陰唇から引きずり出される触手に、肉穴が離すものかと咥え込み、肉ビラが捲れ上がった。
女性器の内側が、チーズ臭を放つ本気汁と一緒に月明かりに晒される。
「あっ! ひっ!」
敏感になっているヴァギナを掘り返され、更なるアクメへと追いやられた。
初めての絶頂にしては快楽の総量が桁外れだ。
子宮がキュン、キュン――と何度も収斂する感触は空恐ろしくなる程の快感だった。
意識が真っ白になり、全身が浮遊感に満たされる。
息苦しい尻の圧迫感もそれでどこかに消えてしまった。
むしろ未だに尻を穿り返す触手の感触すらも気持ち良い。
まるでアナルとヴァギナが繋がってしまったようだ。快楽しか感じない。
マリオンは半開きの口から涎を垂らし、意味の無い獣のような声を上げる。
アクメの波にがくがくと痙攣しながら、二匹の魔物にがつがつと細い体を犯されて、
「ふにゃああっ! でるよぉ! もうだめえっ! どぴゅどぴゅするにゃぁ!
姉様にぃっ――にゃっ! にゃあっ! 姉様に種付けするにゃぁぁっ!」
「私もぉっ! 出ますぅっ! マリオン様の尻穴にぃっ!
触手ザーメンびゅるびゅるしますぅっ!」
じゅぷじゅぷじゅぷじゅぷじゅぷっっ!!
「にゃぁっ! にゃあっ! あっ! でるにゃっ! でるでるでるにゃぁぁ!!
にゃっ、にゃっ! にゃっ! にゃああっ!! にゃあああぁぁぁぁっっ!
にゃうううううううううううううぅぅぅぅぅんっっっっ!!!」
275 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:21:40 ID:/Wkm2F56
「あっ! いっ! ああぁんっ! でますでますっあああああっ!!
ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
二本の触手がどくどくと脈動する。
射精される。真っ白になった頭でぼんやりと考え、
ぢゅうううぅぅぅっ!!
その直後に乳首と陰核に喰らい付いていた触手に吸引された。
『ああああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっっっっ!!!!!!』
びゅるびゅるびゅるびゅるびゅるっっ!!
どぴゅっ! どぷどぷどぷどぷどぷっっ!!
三人の嬌声が美しいとも言える和音を生み出した直後。
ヴァギナとアナルに大量の精液が流し込まれる。
びゅるびゅると底が無いかと思う程子宮と直腸に白濁とした粘液が注がれ、腹が膨張する。
強すぎるアクメに、腹が徐々に張っていく感覚も分からない。
白目を剥き、涎を垂らし、潮を吹き、尿を漏らし――
それが二匹の魔物が流す体液に混じって全身をぐちゃぐちゃに汚す。
クロトのおしべ触手が三人を祝福するように射精し、全員の体を白くコーティングした。
どろどろになった体でアクメを味わい、三人で強く抱き合う。
(――あったかい)
熱い粘液と、妹の温もりを感じて、心に僅かに平穏が戻る。
だが次の瞬間子宮口をこじ開けて、ぼこり、とアドニスの種子が侵入し――
その衝撃で意識を失った。
***
「また、派手にやったわねぇ」
遠巻きから三人の交わりを眺めていたネーアは溜息交じりに呟いた。
特にクロトの悶えっぷりは絶景だった。
肝が据わっているというか開き直ったというか。
最初は少しぎこちなかったが、最後はもう立派な女だった。
(相手がリオだから、かな?)
このシスコンめ。
くすりと笑みが漏れる。仲良き事は美しきかな。
(貴女達は今まですれ違ってばっかりだったんだから。
これからは仲良くしていきなさいよ。ずっとね)
粘液に塗れた三人を見ながらそう思う。
傷心のクロトを元気付ける為にも今回は『ベッド役』を辞退したのだが。
中々具合が良さそうなので今度は自分も混ぜてもらおう。
「にゃぁ…姉様ぁ♪」
「あらぁ? マリオン様、気絶してますねぇ?」
「にゃうぅ。起きたらもう一回だにゃぁ♪」
「はいぃ♪」
当分自分の出番は回って来ないようだ。
「…やれやれね」
まあ、いいだろう。時間ならいくらでもある。
この四人で永遠にじゃれ合い続けるのもいいだろう。
――不意に視界が歪んだ。
「――あら?」
目にゴミが入ったのかと思い、指で瞳を拭う。
細い指が涙で濡れていた。
276 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:22:56 ID:/Wkm2F56
(泣いてるんだ、あたし)
アネモネになっても泣くんだなー。
と思いながら、この二百年間、ずっと涙を堪えてきたのを思い出した。
(あ、そうか。嬉し涙か、これ)
それもそうか。
昨日まではずっと独りだったのに。
今ではリオ、マリオン、クロト――三人の仲間がいる。
皆良い子で、彼女達と一緒ならどんな困難も乗り越えられえる気がする。
(…何か、生きてて良かった、って…そんな気がするわ…)
二百年に渡る逃亡生活も、この瞬間の為だと思えば、報われた気がした。
ただ、惜しむらくは――リオの気持ち。
「にゃう♪ にゃうぅん♪ ぺろぺろっ♪ ちゅっ♪ ちゅっ、ちゅぅ♪」
気絶した姉にじゃれつくネコマタと悪魔と人間のハーフの娘。
彼女は果たして救われたのだろうか。
人を止め、家を出、大好きな父と別れ、母親の仇も取れなかった。
そんな彼女を、自分が幸せにしてやる事が出来るだろうか。
(リオのお母さん、か)
もしくはその代わりだ。
まあ、これだけ歳が離れていれば娘、という感じもしないではない。
肌を合わせ、契りを結んだ仲であり、リオの事も少しは分かるつもりだ。
気がかりは、今のリオがどこか無理をしている事だ。
「姉様大好きにゃぁ♪」
ちゅう、と唇を合わせるリオを見ながら思う。
単に甘えてるだけにも見えるが、彼女は少なからず後悔している。
家を出るのも彼女の意思だが、それも後ろ髪を引かれるような想いだったのだ。
百歩譲って、父の事は諦めがついたのだろう。
自分を想ってくれる姉も一緒に着いて来る事になり、彼女は幸せとも言える。
だが、リオの心にはぽっかり穴が開いていたのだ。
今の彼女は、その穴を埋めようとマリオンに甘えているように見える。
ハッピーエンドかと思ったが、まだ一つ、何かが足りない。
それが何かを考え――
遠くから、人の気配が近付いてくるのを感じた。
***
盛大な3Pを終えて三十分も経った頃だろうか。
マリオンが『うぅん…』と呻き声を上げた。
「姉様? 目が覚めた?」
「り…お…?」
こちらを見返すブルーの瞳はどこかぼんやりとしていて、彼女はまだ夢の中にいるようだ。
「そうですよ♪ 私はリオですよ、姉様♪」
語尾にハートマークが付きそうな猫撫で声の後、姉の唇に唇を重ねる。
ちゅっ、と唇を合わせるだけのものだったが姉の目覚まし代わりにはなったらしい。
瞳に意思の光が戻り、阿呆のような顔が羞恥に染まっていく。
「ぅわぁ…っ」
「にゃう♪ 姉様可愛いにゃぁ♪」
すりすりと頬擦り。
ぶっ掛けられた触手汁がほっぺたで塗り伸ばされてぐちゃぐちゃと音を立てた。
別に狙った訳ではないが、その際に繋がったままの触手が捻れてマリオンが嬌声を上げる。
「…っ、まだ、刺さってる、のっ?」
「そうだよぉ♪ 姉様のおマンコが、今でもキュウキュウしめつけるにゃぁ♪」
「尻マンコの具合も大変いい具合ですぅ♪」
「いやだから…そういうエロイ言い方って…」
277 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:24:13 ID:/Wkm2F56
「にゃぁに? 姉様、今更怖気付いたにゃぁ?
リオ達と一緒に来るっていう事はぁ、こうやっていつでもどこでもエロエロしちゃう――
って事なんだよぉ? だからぁ、猥語くらい慣れないと駄目にゃぁ♪」
ネーアと交わった時、彼女に言われた事と同じ事を姉にも言ってやる。
魔物になる事、また魔物と共に行く者の為の通過儀礼のようなものだった。
「うぅ…頑張る…」
「その意気にゃぁ♪」
抱き付いて、熱い抱擁を交わす。
ただ、全身にクロトの粘液をぶっ掛けられている状態だった。
なので身じろぎをする度にヌチャヌチャと肌と合わさった場所から派手に音が鳴った。
アクメ後で敏感になった肌同士が粘液越しに擦れて、それだけで蕩けそうになってしまう。
「んっ!? も、…もうっ、どろどろじゃない…っ」
「そうだねぇ♪」
「アソコも、お尻も、ずっと刺さりっぱなしで……穴、広がる…」
「にゃう♪ そうなったら私達の触手じゃないと満足出来なくなっちゃうね♪」
「それ、本気で言ってるのか冗談で言ってるのか分からない」
「にゃははは…っ」
三人で穏やかに笑い合う。
幸せだった。人間だった時の頃と比べて、今はまるで天国にでも居るようだ。
こんなに幸せになれるのだったら、やっぱり人間を止めて良かったと思っている。
けれど――
「姉様?」
「何?」
「本当に、良かったの?」
「…今更そんな、水臭い」
「んにゃ…そうなんだけど……でも……
私、姉様の中にアドニスの種子、植え付けちゃったよ?」
種子が成長すれば姉もクロトのようにアネモネになってしまう。
二本の脚で大地に立つ事が出来なくなり、剣も使えなくなるだろう。
記憶や人格はそのまま継承されるが、その魂は最早人間の時とは別物なのだ。
魔物になれば、本能には逆らえなくなってしまう。
ドス黒い欲求が体中を駆け巡り、衝動の赴くまま人間達に害を与えてしまう。
それをこの身を以って知っているのだ。
自分はいい。自ら選んだ道だ。
クロトも、ここまでこればどうしようもない。
アネモネ化させてしまった責任として、死ぬまで面倒を見てやるつもりだ。
(けど、姉様は?)
姉までもアネモネとなってしまったら――
ところがマリオンはこちらの心情を察してくれたのか、笑顔で答えてくれた。
「いい。別にアネモネになっても」
「でも…」
「というか。私だけ仲間外れにしないで」
姉だけ人間のままでは大なり小なり後ろめたい、という事だろうか。
(でも、自分の体の事なんだから。もっと考えてくれないと。
私と違って人間としては将来有望なんだし。もう種付けしちゃったけど)
はあ、と思わず溜息を吐いてしまう。
姉の同意の元とはいえ、種付けは早計だったか。
欲を言えば姉には人間のままで居てもらいたかったのだ。
「ちょっとリオ? 貴女真剣に悩み過ぎよ?」
横合いから掛かった声はネーアのものだ。
今の今まで傍観を決め込んでいたのに――何か思うところでもあるのだろうか。
というか腹のアドニスを通じて彼女がどうにもこの状況を楽観的に捉えているのが分かる。
「だって、勢い余って――という訳ではないですけど。いや、それもあるかもしれないけど。
姉様に種付けしちゃったんですよ? 姉様、アネモネになっちゃう」
「なって欲しくないの?」
「それは……多分…」
278 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:25:42 ID:/Wkm2F56
なんだか自分でも良く分からないが、姉には人外にはなって欲しくない。
「そう? なら、ならなければいいんじゃない?」
『え?』
姉妹が、同時に目を丸くした。
何だそれ。まるで、嫌ならアネモネにならなくてもいい、みたいな言い方。
「どういう事ですかぁ?」
「皆勘違いしているみたいだけど。
本来アネモネって成体になったアドニスと女性が完全に同化した姿の事を言うのよ?
種子を植え付けられたからって、絶対にアネモネになるわけじゃないわ」
今度はクロトを含めて、三人で顔を見合わせた。
「普通、女が子宮の中で種子を育てて、産んで、それから同化するまで二、三日掛かるのよ。
まあ、クロトの場合はリオのせいでそれが何倍にも早送りされちゃったみたいだけど。
兎も角、産んだアドニスと同化するまでタイムラグがあるのよ」
「あ、そうか。それじゃ、アドニスと同化してアネモネになるかどうかって、」
「そう。本人が決められるのよ。
まあ、それまで散々エッチして頭の中ピンク色一色だろうから。
大抵自分から進んでアドニスと同化しちゃうんだけどね。
それにもう一つ。アドニスは十分な魔力を蓄えないと成長しない。
それにどころか下手をすれば枯れてしまうわ」
「あっ、そうかっ」
屋敷での戦いの時、メイド達に植え付けたアドニスを全て枯らしてしまった。
つまり。魔力を吸い取れば、マリオンの中のアドニスをいつでも枯らす事が出来る。
「リオの中のアドニスがいつまで経っても成体にならないのもそのせいね。
蓄えた魔力を、種付けや戦闘に使っているから全然成長していないのよ」
「…そういえば、そうですね」
「まあ、折角植え付けた種子だし。私にとっては孫みたいなものだから。
アドニスを枯らす事は出来れば避けて欲しいところね。
兎も角、そういう事だから。何も心配する必要は無いわよ?」
姉妹でもう一度顔を見合わせた。
「なんか、拍子抜け。覚悟してたのに」
「あらあ? 別にアネモネになってくれてもいいのよ?
あたしとしては仲間が増えるならそれに越した事はないからね♪」
「…それに関しては保留という事で」
「そ。期待せずに待ってるわ」
(何だ、それじゃぁ、何も心配する事なかったんだ)
ネーアの言うとおり、自分が悲観的過ぎただけだ。
「えへへへへ…♪」
嬉しさの余り、すりすりと姉に頬擦りする。
もう、何か幸せ一杯だった。
今までリビディスタの屋敷で肩身の狭い想いをしながら生きてきた。
自分の存在理由も分からなくて、心の底から信じる事が出来る人も居なくて。
生きているのか死んでいるのか良く分からない、薄っぺらい生を送ってきた。
父に陵辱され、母に疎まれ――リビディスタの屋敷は自分にとって牢獄だった。
だがそんな辛い日々も、今となっては思い出だ。
自分はもう一人じゃない。
ネーアが居る。
マリオンが居る。
クロトが居る。
もう、寂しい思いはしなくていい。
でも、何か、足りない。
『リオっち♪』
栗色の髪に、犬耳のような癖毛を持つメイドさん。
279 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:26:53 ID:/Wkm2F56
パセットが、ここには居ないのだ。
「リオ?」
「? どうしたの姉様」
真剣な目をした姉がこちらを見詰めていた。
「あの子、置いてきて良かったの?」
今の心中をずばりと言い当てられて鼻白む。
鈍感だと思っていた姉に心の機微を読み取られるなどとは夢にも思わなかった。
思わずバツの悪そうな顔をしてしまう。
「…いいんだよ。きっと」
そう。自分はそう思ったから眠ったままのパセットを起こす事無く屋敷を出た。
「だって。パセットちゃんはもう何年も私の為に頑張ってくれたもん。
もう、自由にならなきゃ」
パセットはずっと一緒に居てくれた。
どれだけ怒っても、八つ当たりして理不尽な事を言っても。
ずっと笑顔を見せてくれた。
どう考えても悪いのはこっちなのに嫌な顔一つする事は無かった。
けれど、全く苦痛でない筈がないのだ。
屋敷、という閉鎖された空間の中で、こんな陰気な少女に付っきりなのだから。
口にこそ出さなくとも、腹の中には色々と溜め込んでいる筈なのだ。
「私みたいな子に構って、一生を棒に振る事は無いよ」
そう。それがパセットの為だ。
「それに私、もう人間じゃないし」
えへへ、と笑う。
「それ、私にも同じ事が言える?」
姉が真剣な表情で問い掛けてきた。
「私も、立場としてはあの子と同じ。でもリオに付いて来た」
「それは、姉様は、ずっと私の事を思ってくれてたからだよね?
でもパセットちゃんは仕事で」
「…リオのばか」
「…え? 姉様?」
「私もばかだけど、リオもばか。鈍感」
「え、ええっ?」
「私もあの子も変わらない。リオの事、大切に思ってる。
私は妹として、あの子は……多分、友達として。
仕事だからとかじゃないの。あの子はリオの事、そんな風に思ってない。
じゃないと、リオが屋敷から居なくなった時、泣いたりしない」
「え?」
(泣いてたの? あのパセットちゃんが? 私の為に?)
あの元気の塊のような娘が、泣いていた? 信じられない。
もう三年以上一緒に居るが彼女が泣いているところなんて見た事が――
(――あ、そういえば。街でパセットちゃんと再会した時、泣いてたような…)
おっぱい揉ませろとか何時も通りの冗談を言っていた気もするが。
あの時のパセットは嬉しさ半分怒り半分といった感じ状態だった。
そう、彼女は心配してくれていたのだ。
メイドとその主人、としてではなく。
たった一人の親友として。
(――でも)
「だったら尚更…そんなパセットちゃんを、私は巻き込みたくない」
大事な友達だからこそ、人として幸せに生きて欲しい。
魔物となった自分に付き合って、危険な目に遭って欲しくないのだ。
ネーアやクロトと共に行く以上、人里には近付く事が出来ない。
魔物が蔓延る、こんな森の中を常に歩く事になる。
アネモネのガスや、姉妹の戦闘能力を考えればある程度の安全は保障出来るだろう。
だがそれも絶対ではない。
常に死と隣合わせになるかもしれない。
280 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:27:56 ID:/Wkm2F56
そんな危険な旅に、何の力も無い友人を連れて行く事なんて出来る筈が無かった。
「でも、それはリオの我侭」
「それは、そうかもしれないけど。いいの! 我侭でも!
私はパセットちゃんに付いて来て欲しくないの!」
もし、襲い来る魔物達からパセットを守り切れなかったら。
自分の力が及ばないせいで彼女が傷を負うような事になったら。
自分は一生後悔するだろう。
あの時、一緒に連れて行くんじゃなかった――と。
そんな想いをするくらいなら、最初から、
「でも、あの子はそうは思ってなかったみたいね」
遠巻きから見ていたネーアがポツリと呟いた。
「え?」
遠くの山から日の出が見え、薄暗い視界が徐々に明るくなってくる。
すると眼下に広がる山間の獣道から人影か近付いてくるのが分かった。
その人影は息を荒げながらしゃむにに走り、こちらへと向かってくる。
大きな旅行鞄を背負い、メイド服を着用し、栗色の髪を揺らす彼女は間違いなく、
「パセットちゃん!?」
「――ぜえっ! ぜっ! はあっ!」
メイド服の少女は魔物三匹と人間一人の輪へと接近すると、膝に手を付いて息を整えた。
全員が見守る中、その少女は顔を上げて、
「うっわエッロっ!?」
顔真っ赤にして背中を向けてしまった。
そう言えばこちらはマリオンとエッチして、そのままの姿だ。
クロトの花の上で、三人が密着したまま、今も二本の触手で繋がっている。
刺激の強い光景だった筈だがメイドの少女は背を向けたまま大きく深呼吸。
それを三、四回繰り返して、くるり、とこちらに振り向いた。
「頼もーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっっっっ!!!!!!」
山中に響き渡る大声だった。
遠くの方で野鳥の集団が羽音を立てて、一斉に飛び立つのを見た。
「いや。そんなに大きな声ださなくとも聞こえるから」
全員が全員耳を押さえていた。
「う。面目無い。体力有り余ってたんで」
(息を切らせながら走ってきた癖に…)
まあ、それだけ必死だったという事か。
この森の中を一人で来るからには何かしらの準備もしていたと思うが。
それにしたって余程の覚悟と度胸がなければ出来る事ではない。
(私に、わざわざ会う為に。そんな事)
やっぱり危険だ。
今回は何とか追いついてきたけど、これ以降一緒に居て無事で居られる保障は無い。
マリオンと違ってこの子は何の力も無い只の少女なのだから。
「パセットちゃん。帰って」
「え?」
281 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:29:26 ID:/Wkm2F56
冷たく、突き放つような言葉に、流石の少女も困惑した表情を浮かべた。
「ど、どうしてさ…っ、どうしてそんな事言うのさっ。
パセットは、リオっちのメイドさんだぞ!
ご主人様が居ないと、パセットはメイドさんじゃなくなっちゃうんだぞ!?」
「パセットちゃん? リオ=リビディスタはもうこの世の何処にも居ないの」
マリオンから触手を引き抜き、花から飛び降りる。
魔力を制御し、裸体に黒く、卑猥なゴスロリドレスを纏わせた。
じゃきり、と爪を伸ばし、そのまま右手をメイドへと突きつける。
「私はモンスター。人を襲い、犯し、精を吸う恐ろしい魔物なの。
分かるパセットちゃん? 私にもうメイドさんはいらないの。
だから帰っ、」
「ふ、」
「…ふ?」
カタカタとパセットが肩を震わせていた。
俯き加減で表情は見えない。
シュトリの能力で彼女の心を読み取ろうと目を凝らして、
「ふっざけんなああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!」
彼女の怒りが叩き付けられた。
「にゃうっ!?」
そのまま地面に押し倒されてしまう。
こっちは凶器だって持ってるのに、怖くは無いのか。
「二回だ!」
「え?」
「二回もっ、居なくなったんだ! パセットの前から!
何も言わずにっ、いきなり消えて! 何でっ!? どうして黙って行くのさ!?
パセットの事、嫌いなのか!? ならいい! それならパセットも諦める!
諦めて里に帰ってやる! けどっ、パセットの事少しでも好きなら、諦めない!
リオッちが何と言おうと付いて行ってやる! 地獄でも何処でもね!
さあリオッち!! 大嫌いっ、って今ここで言ってみろ!
パセットの目を見て言ってみろっ!!」
メイド少女の持つ気迫に完全に呑まれていた。
涙目で、歯を剥き出しにしながら激昂する友人の気持ちが痛い程伝わってくる。
置いてけぼりにされた事を不甲斐無く思い、同時に置き去りにしたこちらを恨んでいた。
そしてその激しい感情の奥に根ざしてるのは――純粋な好意なのだ。
「嫌いな訳、無いじゃないっ」
そんな人間を、どうして嫌いになれよう。
「私、パセットちゃんの事、大好きだもんっ!」
「だったらっ」
「だから、だよ! 私、パセットちゃんには幸せになって欲しいもんっ!
私みたいな化け物に付いて来たら、絶対に不幸になるもんっ!
だから、だからパセットちゃんの事を置いて来たのにっ!
どうして分かってくれないのっ!?」
「ひゃっ!?」
体を起こし、こちらを組み伏せていたパセットを突き飛ばす。
尻餅を付いたパセットが苦痛の声を上げ、思わず『あっ』と声を上げる。
が、そんな動揺を悟られまいと背中を向けると、押し殺した声で言い放つ。
「痛いでしょ? 私、もうモンスターなんだよ?
それはパセットちゃん本人がよく知ってる筈だよね?
だって嫌がるパセットちゃんを犯して、無理矢理種子を植え付けたのは、私なんだから」
溢れ出る衝動のままパセットを陵辱し、その精神を破壊した。
それも一時的なものだったらしく今はこうして元気に振舞っているが。
「私達と一緒に来るっていう事は、また同じような目に何度も遭うって事だよ?
ううん。ひょっとしたらもっと酷い事をするかもしれない。
暴走した私は、自分でも止められないのっ」
282 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:30:53 ID:/Wkm2F56
両腕強く自分の体を抱き締める。
この細腕にはパセットくらいなら簡単に八つ裂きで切る力がある。
そして魔物の本能は、完全に抑制する事は出来ない。
我慢は出来ても、いつか必ず爆発する時が来る。
その時に、目の前の友人に手を出さない、という自身が無い。
「私、怖いのっ!
また昨日みたいに暴走したら、パセットちゃんにもっと酷い事をするっ。
ひょっとしたら、殺しちゃうかもしれないっ!
そんなの絶対に嫌なのっ!! だからっ、だからっ」
最後は言葉にならなかった。
ぽろぽろと涙が溢れてきて、泣きじゃくってしまう。
こうして人間らしい感情はあっても、自分の中には確かに魔物が居るのだ。
パセットには、その餌食になって欲しくない。
「――リオッちの言いたい事は分かった。
まあ、言ってみれば前科持ちだもんね。心配になるのも分かる」
パセットはどっこらしょっと、なんて言いながら立ち上がり、スカートを両手ではたく。
それから何かを考えるように顎に手を当てて――
「ポクポクポク――チーンっ!」
何か閃いたらしい。擬音をわざわざ言葉にして言うあたりらしいというか何というか。
「大丈夫! リオッちはパセットに酷い事しないって!」
なんて、あっけらかんと言うのだった。
「な、何でそんな事言えるのっ!? 昨日の今日だよ!?
酷い目に遭ったばかりでしょ!?」
「何となくだ!! それじゃ悪いか!?」
「えぇ!? 何も根拠が無いの!? さっき何か考えてるみたいだったのに!?」
「ウチの婆ちゃんは言っていた! 『馬鹿は考えるだけ無駄』と!!
余計なお世話だっちゅーねん!」
セルフ突っ込みを入れるパセットに一同愕然としていた。
「だから根拠は無い!!」
「そ、そんな無茶苦茶な!?」
「リオッちどうだ!? 自分を信じられないか!?」
「あ、当たり前だよ!」
「けどパセットはリオッちを信じる!」
「そ、そんな事言われてもっ」
「なら自分を信じるな! パセットを信じろ!
リオッちを信じる、パセットを信じるんだ! これなら問題ナシ! 万事解決ぅッ!」
(もう訳わかんないよぉっ)
思わず頭を抱えてしまう。
「リオ、観念なさい。貴女の負けよ」
「ネーアさん…」
「ほらリオッち。そこのお花のお姉さんもそう言ってる事だし。ね? ね? ね?」
そう言って笑うメイドの少女は、大地を照らす太陽のように眩しい。
その笑顔に何度助けられた事だろう。
(……そっか、私はパセットちゃんに恩返しをしなきゃならない)
彼女がそう望むなら、その我侭を叶えてあげるというのが筋だろう。
じっと、パセットを見詰めて、
「ほんとに、いいんだね?」
「おうさ!」
「私、もう魔物さんだよ?」
「しつこい! リオッちはリオッちだ!」
283 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:32:00 ID:/Wkm2F56
「また、悪い事するかもしれないよ?」
「そんときゃパセットが張り倒してでも正気に戻してあげるさ!」
「…どうして…」
どうしてこの少女は、こんなにも自分に尽くしてくれるのだろう。
いや、本当は分かってる。
パセットが自分をどう思ってくれてるのか。
ただそれを、言葉にして欲しかった。
冗談ではなく真剣に。
相思相愛の恋人同士が愛を囁き合うように。
「だって友達じゃん♪」
ほら。やっぱり。
馬鹿なパセットちゃん。
ただ友達、なんて言う理由だけで、お屋敷での生活を捨てて、一緒に付いて来るなんて。
ほんと、救いようの無いお馬鹿さん。
「パセットちゃんって、真性の馬鹿だよね」
「にゃにぃ!? 昨日エッチした時『ずっと一緒ぉ♪』とか言ってたのはこの口だぞ!?」
「あにゃっ!?」
ぐい、と唇を左右に引っ張られて間抜けな顔を晒した。
「にゃったにゃぁ!」
「ふひっ!?」
負けじとパセットの唇を左右に引っ張ってお返しする。
「ひほっちへんふぁふぁおー!」
(リオッち変な顔ー!)
「ぱふぇっふぉふぁんふぁってへんふぁふぁおー!」
(パセットちゃんだって変な顔ー!)
「ひほっひふぉほうふぁへんふぁ!」
(リオッちの方が変だぁ!)
「ぱふぇっふぉふぁんふぉほうふぁへん!」
(パセットちゃんの方が変!)
ぎりぎりと唇を引っ張り合って激しい攻防戦を繰り広げる。
子供らしい喧嘩を、皆がが生暖かい目で見守っていた。
『あはははははっ』
朝焼けの森に二人の少女の笑いが響く。
リオとパセット。魔物と人間。主君と従者。
いや、そんなしがらみをものともしない、強い絆を彼女達は持っている。
この五人の行く先には、きっと様々な試練があるだろう。
人間からも、魔物からも疎まれたこの五人はきっと何処にも受け入れてはもらえない。
でも、きっと大丈夫。この五人ならどんな困難も乗り越えられる。
天国のお母さん。私を産んでくれてありがとう。
姉様も、パセットも、こんな私に付いて来てくれてありがとう。
私は今、とっても幸せです。
そして願わくば、どうかこの幸せがいつまでも続きますように。
ずっと。永久に。
284 乙×風 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:34:01 ID:/Wkm2F56
はーい最終話終了です。皆様お疲れ様でした。
70KBは長かったですねぇ(汗 、何でこんなに長くなったのだか。
お時間を取らせてしまってほんと申し訳ない。
せめて、時間を忘れるほど愉しんでもらえたらいいのですが。
今回、エッチシーンを入れたおかげでマリオンのキャラがぐんと立った気がします。
自分の体にコンプレックスを持ってるマリオンは裸になる度に、
『…どうせ貧相だし…』
とか言いながら瞳をうるうるさせてちょっぴりいじけるわけですな。
逆に褒めると嬉しそうな顔をして、上目遣いで『本当?』なんて聞いてきます。
不器用なおねーさんがそんな時だけ子供っぽくなるというギャップが実にエクセレント。
とか馬鹿な事を考えながらエチシーンを書いていました。あほですね。
さあ、今から後日談を書く作業に戻ります。二週間くらい掛かるかな?
来週には経過報告も兼ねて次回予告だけでも投下しようと思います。
いつものように誤字脱字感想等よろしくお願いしますー。
それではまたお会いしましょう。
ロリータっ、万歳!!
皆様お待たせしました。乙×風です。
推敲に時間を掛け過ぎたみたいで月曜には投下できませんでした。申し訳ない。
前回のお話ですがクライマックスだけあって高評価のご様子。
私も執筆した甲斐があったというものです。
誤字等のご指摘もありがとうございました。
さて、永久の果肉エピローグを投下します。
(だいぶ長い、会話シーン多め、3P、大団円)
NGワードはこんな感じですか。
筆が乗っているせいでかつてないボリュームになっています。
エッチシーンはマリオンがリオとクロトの二人掛かりで責められて大変そうですw
勿論和姦ですよ。
こんなところですか。
以下本編です。お時間を取らせて申し訳ないですが良かったらごゆっくりお楽しみ下さい。
28レス程消費します。
257 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 18:59:41 ID:/Wkm2F56
最終話 ずっと一緒
夜も更けた丑三つ時。
静まり返ったリビディスタの屋敷――その一室から光が漏れていた。
正面玄関の真上、ドルキの寝室だ。
部屋の中にはドルキ、グリーズ、リオ、マリオン。
リビディスタの家族四人と、ネーアの姿がある。
「怪我はもういいのか」
窓の外をぼんやりと眺めていたドルキにグリーズが声を掛けた。
ええ、と頷き、振り向いたドルキの顔には、確かに傷らしい傷は残っていない。
だが、傷が癒えたとしても自分が取り返しのつかない事をした、という事実は消えない。
血は繋がっていなくとも、実の母親に暴力を振るった罪は許されるものではない。
「…ごめんなさい」
思わずリオは呟いていた。
母が憎い。それは変わらない。
しかしだ。だからと言ってドルキに復讐しても何の解決にもならない事に気付いたのだ。
仮にそれを果たしたとしても、今度はマリオンが、グリーズが悲しむ事になるのだから。
憎悪は連鎖する。どこかでそれを断ち切らなければならない。
スカートの端を掴み、握り締める。
母は、リシュテアはどうしたら報われるのだろうか。
自分が復讐を果たせばいいのだろうか。
それとも――
「リオは悪くない。母様が悪い」
ぽん、と肩に手が置かれた。
振り仰げばポーカーフェイスのままのマリオンがドルキを見詰めている。
ここにいる五人が全員、事の経緯を知っているのだ。
ドルキが企てた、リシュテア暗殺を。
街を混乱に貶めた今回の事件、その責任は誰にあるかと言えば、間違いなくドルキなのだ。
それもドルキ本人は分かっているのか、魔女は娘の辛らつな言葉に何の反論もしなかった。
「信じられない。お義母様を毒殺するなんて。見損なった」
「それに関してはワシも同意だ」
便乗したグリーズの態度にショックを受けたのだろうか。
ドルキが顔を上げ、縋るような視線を彼へと向ける。
それを見ると流石のリオも哀れに思えてきた。
永年慕ってきた夫にさえ見限られるのだから、その絶望は計り知れないものだろう。
「……もういいです…」
気が付けば、そんな事を口にしていた。
意外な所から出た助け舟に、全員の視線が集中する。
今回の件で最も心に大きな傷を負ったのはリオ自身だ。
その彼女からドルキを庇うような言葉が出てくるとは皆、夢にも思わなかったのだろう。
「一歩間違えれば…私も、お義母様と同じ事をしていたんですから…」
ドルキに重症を負わせ、グリーズを殺しかけた。
ドルキが責められるなら、自分も責められてしかるべきだろう。
「だから、もう、いいです…」
「私は納得出来ない。母様にはお義母様を殺した罪をちゃんと償って欲しい」
リシュテアを一番慕っていたのはマリオンだ。
ドルキの罪を許せる筈も無かった。
「街の皆にも真実を話して。その上で魔女の称号も返還して」
リビディスタの創設者が嫉妬の余り恋敵を謀殺した。
その事実を白日の下に晒せと言っているのだ。
だが、そんな事をすれば栄華を極めたリビディスタの家系は破滅だ。
ドルキ一人の問題ではなくなってしまう。
その事にマリオンも気付いたのか、急に口を閉ざし、俯いてしまった。
「あーもーっ、まだるっこしいわねぇ…っ。
家族揃って五体満足で生還出来たのよ? もっと喜びなさいよっ」
「そんな単純な問題では無い」
258 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:01:54 ID:/Wkm2F56
「貴方達人間がややこしく考えてるだけよ。
ようはそこの女に、リオの母親を殺した償いをさせればいいんでしょう?
だったら簡単よ。そこの女、」
「…ドルキですわ」
「そう。ドルキがリオの事をちゃんと育ててあげればいいのよ。
死んでしまったリオの母親の代わりにね。
私がリオのお母さんだったら、そうして欲しいって思うわ」
「それは…そうかもしれないですけど」
思わずドルキとリオ、二人が顔を見合わせ――余りの気まずさに視線を逸らす。
(あれだけ憎み合ったんだから、いきなり仲良くしろなんて言われても…)
「大体、問題はそれだけではありません。
このむす――こほん――リオの体は人外となったままです。
お腹の中には貴女が寄生させたアドニスもあるのですよ?
その責任はどう取るおつもりですか?」
「それこそリオの気持ち次第よ。
アドニスは体内の魔力が枯渇すれば枯れるわ。
リオが寄生させたメイド達のアドニスもそうよ。
さっきの戦いでリオに魔力を吸収されたせいで根こそぎ枯れちゃったわ。
後遺症も無く、生活に復帰出来るでしょうね」
「貴女がリオのアドニスの力を吸収すると?」
「まあ、リオが望むなら。リオの力を借りてそうしようかな、って話よ」
「でもネーアさん。お腹の中のアドニスが消えても、私の体は人間には戻りませんよ」
それには何の根拠も無いが確信めいたものがある。
一度覚醒してしまった魔物の血はそう簡単に抑え込む事は出来ないだろう。
ドルキと顔を合わせていれば、また暴走して彼女に傷を負わせてしまうかもしれない。
「それに私、言いました。ずっとネーアさんの傍に居るって。
それは今でも変わりません」
父の事を知り、母の事を知り、姉の事を知った。
自分がどれだけ愛されているか。
人間の生もまだまだ捨てたものではないと思った。
しかし思うのだ。
仮に自分が再びリビディスタの生活に戻ったとして。
その生活は幸せなものなのだろうか。
『武芸の家に悪魔が住み着いている』。
そんな噂が流れれば、姉にも父にも迷惑を掛けてしまう。
それでは人であった時と変わらない。
それにネーアはどうなる。
屋敷から飛び出した自分を保護し、慰め、契りを交わした彼女を放り出す気か。
ネーアは教えてくれた。
二百年における逃亡生活がどれほど寂しく、辛いものか。
人外の身でありながら、人の心を残している事がどれほど苦痛か。
そんな彼女を放っておけない。
(なんだ。最初から、答えは出てたんだ)
ネーアの言うとおり、ややこしく考える必要はなかった。
「私、リビディスタを出ていきます」
リオの言葉に一同が驚き、眼を見張った。
「ちょ、リオっ! 貴女本当にそれでいいの!?
折角お父さんと仲良くなれたのにっ、それをみすみす諦めるような…っ」
「それは…父様とはもっと一緒に居たいですけど」
ちらり、と横目で父を伺う。
娘が家を出ると言っているのに彼は相変わらずのポーカーフェイスだった。
だが彼も娘と心を同じくしている筈だ。
あの激しい戦いの時交わした言葉が、偽りとは思いえないから。
259 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:02:54 ID:/Wkm2F56
「貴方もっ、リオともっと一緒に居たいんじゃなかったの!?
家族の団欒とかは……あー、ちょっと想像出来ないけど…。
それでも、剣の稽古とかさっ、一緒にしたい事色々あるでしょうにっ」
「…そうだな…」
ふ、とグリーズの顔が僅かに綻んだ気がした。
彼が表情を見せる事は少ない。
もし見せたとしたら、それは彼の心情に大きな変化があった時だ。
今は野暮だと思い、シュトリの能力は使っていない。
だが父の心境が如何なるものか、大体分かるようになってきた気がする。
「だが。ワシには責任がある。
この街を三十年以上の月日を掛けて作り上げ、それを管理する責任がな。
リビディスタの家柄を穢す訳にもいかんのだ」
「あっきれた! この甲斐性無し! 唐変木!
結局リオよりも、過去の栄光に縋っているだけじゃない!
本当の父親なら娘一人くらい救ってみなさい!」
ばんばんっ――テーブルに触手を打ち付けながら抗議をするネーア。
その様子にグリーズとドルキが顔を見合わせた。
「言った通りだろう?」
「え、えぇ…本当に…怖いもの知らずというか、豪気というか。
野蛮というか――あら、失礼。聞き流してくださいませ。
兎も角、口の利き方があの女そっくりですわ」
夫妻で視線と言葉を通わす姿に、ネーアが、リオが首を傾げた。
マリオンはと言うと珍しく、くすくすと忍び笑いを漏らしている。
「な、何なのよ…二人して……マリオンも、気持ち悪いじゃない」
「いや、お前を見ているとリシュテアを思い出す」
「見た目は違いますが……雰囲気がそっくりなのです」
「……確かマリオンにも同じような事を言われたわ。
よっぽど似てるのね、リオのお母さんに」
(ネーアさんが、私のお母様にそっくり?)
今度はネーアとリオが顔を見合わせる番だった。
成熟した女としての美しさと、どこか少女としての可憐さを併せ持った不思議なアネモネ。
肌も髪も瞳も、人とは異なる翠の一色。
いや、内面の話なのか。
『命を粗末にするんじゃないの!』
お節介で。
『どうしてって、体、弱いんでしょ? 無理させたくないもの』
優しくて。
『ご馳走様♪ リオのお汁、とっても美味しかったわ♪』
エッチで。
『ねえリオ。やっぱり。モンスターになるなんて嫌?』
でも実は寂しがり屋さん。
「この子の、面倒を見てやってくれ」
唐突に、グリーズがネーアにそんな事を言った。
「は? ちょ、ちょっと待ってよっ。いきなりそんな事言われても」
「貴女なら……そう……あの女の代わりになれますわ」
「私もそう思う。ネーアなら、安心してリオを任せられる」
「み、皆して何なのよ一体…」
困り顔をするネーアに、更に追い討ちを掛けた。
260 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:04:07 ID:/Wkm2F56
「ネーアさん。私を一緒に連れて行くって言ってくれました。
ずっと一緒だって、言ってくれました。
エッチまでして、私を魔物にしてくれました。
あれは嘘だったんですか? 遊びだったんですかっ?
私を、騙したんですかっ!?」
瞳を潤ませながらまっすぐにネーアを見詰める。
ひっくひっくと嗚咽を漏らしながら、涙声で彼女に訴える。
「え、ええぇ!?」
上目遣いに見詰められたネーアは明らかに狼狽した。
続けざまに家族三人から敵意の篭った眼差しがモンスターの女に集中する。
家族からすれば可愛い娘を行きずりのモンスターに寝取られたようなものだ。
そして根が真面目なネーアは大なり小なり後ろめたく思っている筈なのである。
「う、嘘なんかじゃないわよ!? あれは本心よ! 神様なんか信じないけどっ。
居るんなら誓ってもいい! あたしは今でもリオと一緒に居たいと、」
「じゃあ決まりですね♪」
ぴたりと泣き止み、笑顔を浮かべたリオに、ネーアが呆然とした。
「だ、騙したわねっ!?」
「私、悪魔だもーん♪」
ぺろりと舌を出して悪戯っぽく笑う。
「あ、貴女って子はーーっ!!」
触手を展開して迫るネーアから逃げるように狭い室内を駆け回る。
「きゃはははっ」
「こらーーっ! 大人をからかうんじゃないのー!」
どたんばたんと家具を薙ぎ倒しながら傍迷惑な追いかけっこが始まった。
「あの…ここが私の部屋だとお忘れですか?
というか静かにして下さいな。屋敷の者が目を覚ましてしまいます」
呟くドルキの声は果たして二人に聞こえたのか。
「そうだ。父様」
「何だ」
「リオが出て行くなら。私も家を出ます」
「は!? マリオン! 何を勝手な事を言っているのです!
貴女が家を出る理由など、一体何処にあると言うのですか!?」
「私母様よりリオの方が好き。それじゃ駄目なの?」
「駄目に決まって、」
「勝手にしろこの親不孝者が。貴様は勘当だ」
言葉自体は厳しいものの、グリーズの表情自体は穏やかなものだった。
将来有望なマリオンをみすみす家から追い出したくは無い。
だがマリオンとリオ、それにネーアの三人なら上手くやっていく事が出来るだろう。
そう考えた彼が、不器用なりにもマリオンに送る手向けの言葉なのだ。
「はあ…もう勝手にして下さい…わたくしはもう知りません…」
部屋の中で暴れまわる魔物二匹。
それに突如家を出る事になった娘のマリオン。
頭痛の種にドルキは頭を抑えるのだった。
***
パセットは夢の中に居た。
『今日のおパンツはクマ柄でございます。お嬢様』
『パセットちゃんって喋り方と台詞の内容がちぐはぐだよね』
『それがパセットのキャラでございます故』
夢の中でパセットは屋敷の離れに居た。
いつものようにリオを起こし、彼女の世話をする。
着替えから始まり食事の用意。
ベッドメイキングを初めとした部屋の掃除。
風呂だけはお供させてもらえなかった。
それでも夜寝る時以外の殆どは彼女と共に過ごしていたと思う。
261 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:05:10 ID:/Wkm2F56
主従。友達。いや、或いはそれよりももっと深い絆で結ばれた何か。
もしどちらかが男だったなら――従者と主、いけない恋に落ちちゃったりなんかして。
『今エッチな事考えて無かった?』
『何故分かった!? いやいやいやいやいや!
違うよ? リオっちのつるぺたボディにあんな事やこんな事したいとか!
そんな事考えてないさ! でもね…! でもっ――
ぱ、パセット…リオっちとだったら……いやん♪ 恥ずかしい♪』
『あはは…』
苦笑いを浮かべるリオ。
彼女はもっと笑えばいいのに。可愛いんだし。
そう思って出会った時からずっと何かにつけてはその笑顔を拝もうと四苦八苦してきた。
それはもう、意地と言っていい。
いつも寂しそうに笑う彼女を、本気で、心の底から笑わしてあげたい。
それは面白おかしい、とかそういう意味じゃなくて。
生きてて良かったー、とか。
幸せだー、とか。そういうニュアンスの笑顔がみたいのだ。
でも、未だにそんな表情を見た事が無い。
そして、それはきっと、これからも。
『パセットちゃん? 私そろそろ行かなきゃ』
ばさり、と彼女の背中から蝙蝠の翼が生えた。
その姿はいつものワンピースではない。
人外に身を堕とした時の、黒のゴスロリ衣装だ。
『え?』
『だって私もう人間じゃないし。お屋敷には居られないよ。だから、お別れなの』
がらがらと、足元が崩れる感覚と共に夢の中の風景までが崩れていく。
離れの中の景色が岩肌を削るように剥がれ落ち、その下から暗闇が覗いた。
それは悪夢だった。
リオと離れ離れになってしまう。
悪魔となったリオが屋敷に潜入し――返り討ちに遭ってしまう。
そんなパセットの不安を具現化した夢だ。
『や、やだっ! 一緒に、パセットも一緒に行くっ』
『パセットちゃんは駄目。だって普通の人間だもの』
『そんな事無い! パセットだってお腹の中にお花のお化けが――』
そう言って腹に手を当てて、その下から何も感じない事に気付いた。
狂おしい官能も。堪えられない疼きも。腹を圧迫する感覚も――最早感じられない。
アドニスの花が、子宮から消えていた。
『え、何で…?』
『だからね? ここでお別れ。
ばいばいパセットちゃん。私、パセットちゃんが私のメイドさんで良かった』
『やだっ、やだやだやだやだやだやだやだ!! そんなの認められるかぁ!
そんな、今生の別れみたいなのっ、ヤダぁああっ!!』
『ありがとう』
そう言って笑うリオはやはりというか。
(ありがとうって言うなら、そんな悲しそうに笑うなぁ!!)
『さようなら』
『やだっ、リオッち!!』
背を向けて歩き出したリオに走り寄ろうとする。
だがリオとパセットしか居ない漆黒の空間。
パセットがどれだけ走ってもリオには追いつけない。
262 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:06:05 ID:/Wkm2F56
それどころか徐々に二人との差が開いていく。
頭の片隅では何となく気付いていた。
これが只の夢だという事に。
走っても走っても追い付けない――そんなのベタベタじゃないか、と。
けれど、それがもし夢であっても。
今リオと離れ離れになったら二度と会えない気がした。
だからパセットは走る。
どれだけ二人との差が開こうとも。
リオの後姿が米粒のように遠ざかっても。
絶対に諦めない。
諦めて、たまるか。
『リオッちーーーーーーーーーーっっっ!!!!』
手を伸ばし、どこまでも広がる黒い世界の中、あらん限りの声で叫んだ――
――ところでパセットは眼を覚ました。
「――あれ…? リオッち?」
暗闇の中、自分の右手が天井に向けて一直線に伸びていた。
がばりと上体を起こし、辺りをキョロキョロと見回す。
「何も見えん! ここは誰? ワタシは何処!?」
随分混乱していた。
夢を除けば――その夢の内容も急速に形を失い、曖昧になっていくが――
――最後の記憶は何だっただろうか?
「――――――――――――――――――――――あ、思い出した」
(大乱交大会でした)
メナンティお姉様の部屋で同僚を交えてそれはもうエロエロな事になってました。
「ってあれ!? あれれっ!?」
布団を剥ぎ取り、自分の格好を確認する。
誰かが着替えさせてくれたのだろう。
眼を凝らして良く見ると寝巻き姿という事が分かった。
その寝巻きの裾から手を突っ込み、下腹部に触れる。
「――無い。お花のお化け、無くなってる!?」
どくどくと脈打つアドニスの鼓動が感じられない。
(どうなってるの?)
リオと一緒に屋敷に潜入した。
そしてメナンティを皮切りに、同僚達に手を掛けてアドニスを植え付けていった。
(あれ、気持ちよかったなぁー、っていやいやそんな事考えてる場合じゃないし)
そう言えば部屋にドルキが入ってきた気がする。
それから――それから――
「どうなったの?」
そこで記憶が途切れていた。
(ちょっと待って。あの鬼ババアが入ったところで記憶が無いって事は……)
まさか、リオは。
『パセットちゃん? 私そろそろ行かなきゃ』
先程の悪夢がフラッシュバックした。
反射的にベッドから飛び出し、月明かりが僅かに漏れるカーテンを開き、光源を確保。
ガラス窓から漏れる月明かりで、ここが自分の部屋だと確認する。
パセットは急いで部屋を出た。
あれからどれだけ時間が経っているか分からない。
腹のアドニスが消えている理由も気になる。
そして何より、リオが一体どうなってしまったのか。
それらの疑問に答えてくれる人物に、会うしかない。
263 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:07:40 ID:/Wkm2F56
パセットは寝巻き姿に素足のまま、屋敷の廊下をぱたぱたと駆け抜ける。
問題の人――ドルキの寝室まで行くと扉の隙間から灯りが漏れていた。
ノックをしようとした瞬間、向こうから扉が開く。
「――貴様か」
扉の向こうから顔を出したのは我らが旦那様、グリーズその人だった。
本人の居ない所ではロリコンだの何だのと冗談を言うが目の前ではそうはいかない。
頭四つ分くらいは高い所から仏頂面で見下ろされれば流石に怖いし。
「ぐ、グリーズ様っ、ほ、本日は大変お日柄もよろしく…っ、グリーズ様に至っては、」
「普通に話せ」
「リオッちをどうしやがったんだコンチクショー!!!」
思わず本音が飛び出してから『あ』と口を塞ぐ。
ところが上目遣いにグリーズを見上げれば、彼は怒った様子もない。
彼は表情を変えないまま、只一言、
「一足違いだったな」
「…え? どういう事っすか?」
「マリオンとあの娘はリビディスタから勘当しました」
部屋から更にドルキが現れた。
「勘当って、じゃ、じゃあリオッちは!?」
「心配しなくとも生きている」
「よっしゃあああぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!」
ぴょんぴょんとその場で飛び跳ねる。
その様子に、これだから子供は、とドルキが呟き、グリーズが僅かに頬を緩ませた。
(あ、そうでした、今一応夜でした)
「えー色々お話を伺いたいところですが」
結局、今回の事件はどうやって解決したのか、とか。
まあ、復讐の対象だったリビディスタ夫妻が存命。
それに加え首謀者のリオと自分が存命。それにマリオンが揃って勘当となると。
割と穏便に解決したのかな、と思ってしまう。
(ま、それはいいや。後でリオッち本人から聞けばいいんだし)
今する事は、
「お願いがあります!」
ぶん、と音がするくらい頭を下げた。
そうだ。リオが居ないなら、自分も屋敷に留まる意味は無い。
(だってパセットは、リオッちのメイドさんなんだから!)
だから、その事をグリーズとドルキに伝えなければならない。
自分も屋敷を出て行くと。
頭の固そうな二人の事だから、大なり小なり反対されるだろうが、
「貴様はクビだ。何処へでも好きな所に行け」
「―――――――はい?」
「二度は言わん」
背を向けるグリーズ。
その向こうで、ドルキがくすくすと可笑しそうに笑っていた。ちょっと気持ち悪い。
(え? あれ? ひょっとして、旦那様、今の、気を遣ってくれたの?)
えーマジで? イメージと全然違うし。
というか照れてる? グリーズ様照れてますか? ツンデレですか?
「笑うな。何が可笑しい――貴様も、何をぼんやりしている?」
「え――と言いますと?」
「リオを追いかけるのだろう? さっさと支度を整えろ。森の中は危険だ」
どうにも言葉足らずだがこれはひょっとしてあれか。
まさか送ってくれる、という事なのだろうか。
「あ、ありがとうございます!!」
頭突きでもしそうな勢いで再び頭を下げた。
グリーズは何も言わなかった。
鉄面皮はびくともしていない。
だがその下に隠れた心が、ちゃんとした人間の――『父』のものであると理解した。
264 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:09:20 ID:/Wkm2F56
***
夜の帳が下りた森の中に、二つの異形と二つの人影が輪を作っていた。
異形の正体は、上半身に美しい女の裸体を晒した花型の魔物――アネモネだ。
それが二体。内一体は、
「ひっくっ…! ひくっ…! グリーズ様、グリーズ様ぁっ!」
かの英雄を名前を呼びながら大泣きしているそのアネモネはクロトだ。
愛するその男に首を切り落とされ――だが死なず、気が付けば森の中に一人だった。
屋敷を静かに後にした一同と合流する前から、彼女は泣き続けていたのである。
「よしよし。クロトさん。元気出して? もう一人じゃないよ?
私も、ネーアさんも居るから。ね?」
アドニスの花弁の上に座り、リオは泣きじゃくるクロトをあやしていた。
背中に手を回して抱き付き、かつては銀髪だった翠色の髪を優しく撫でる。
「リオ様ぁっ…! 私、振られちゃいましたぁ…っ! ううっ! うわぁぁぁんっ!!」
「うん。うん。辛いよね。分かるよ。分かる。
今は、好きなだけ泣いてていいからね?」
「泣きたいのはリオも一緒じゃないの?」
背中から掛けられたのはネーアの声だった。
世にも美しいアネモネの女は心配げな表情でこちらを見詰めてくる。
そう、クロトもリオもリビディスタを追い出された身。
人間の世界を離れ、欲望と破壊の渦巻く人外の世へと踏み込んだ少女。
もう、父とは二度と会う事も無いだろう。
ネーアはそれを心配して言っているのだ。
「私は、大丈夫です。多分」
(ここには皆居るから。ネーアさんも、クロトさんも、それに、)
「それに、頼りになる姉も居ますから」
傍らの切り株に腰を落としていたマリオンに向けて、にこやかな笑みを送る。
この中で唯一の人間である腹違いの姉は照れくさそうに頷いた。
「どれだけ役に立てるか分からないけど、頑張る」
「何謙遜してるのよ? 人里離れた所なんて魔物やら凶悪な野生動物が沢山居るんだから。
その中で剣も魔術も使える人間が居るんだから心強いものだわ」
「そうは言うけど」
ちらり、とマリオンの視線がリオに向く。
「リオ、ひょっとしたらもう私よりも強くなってるかもしれない」
グリーズとの決闘の事だ。
あの時はがむしゃらに戦っていたからよく覚えていないのだが。
まあ、確かに、良く考えればあの剣神様と対等に渡り合ったというだけで凄いのだ。
向こうが勝ちを譲ってくれた事を差し引いても、リオは十分に強い。
「それにクロトさんは探索魔術と防御魔術のスペシャリスト。
生存率が高くて、ダンジョンの探索なんかじゃ重宝していた。
――まさかリオに種付けされてたなんて夢にも思わなかったけど」
「あう、ご、ごめんなさい」
クロトに種付けした時は魔物となった体を持て余していた。
体から溢れ出る欲望に抗えず、やりたい放題やってしまったのだ。
その結果が今のクロトである。完全な被害者だった。
「もういいじゃない。私は仲魔が増えた方が良いと思うし。賑やかだしね?」
もし仮に人間に戻れたとしてもだ。
グリーズと戦い、あまつさえ告白までしてしまった。
そんな状態で一体どの面下げて屋敷に戻るというのだ。
「あ、いや…そうじゃなくて…それは、もういいの、私も。
ただ、私以外の三人は、皆強い。ネーアもそうだった」
(そう言えば。ネーアさんと姉様、一度戦ったんだよね)
クロトを発見するまでの道すがらその話を聞いた。
激しい戦いだったそうな。
「だから、今更私一人が増えたくらいで、あまり戦力の足しにならない――そう思って」
姉の発言に丸い眼をぱちくりとさせた。
その後、二匹のアネモネと交互に顔を合わせる。
265 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:10:36 ID:/Wkm2F56
「私、リオを守る為に強くなった。
辛い修行にも耐えて、魔術の勉強もして。
リオの事を一人にして、実戦経験も積んで――
でも、そのリオは、もう私が守る必要が無いくらいに強くなってる。
だったら、私が居る意味は……」
「じゃ何で貴女は着いてきたのよ? 家でご両親の面倒見れば良かったじゃない」
「それは――リオが、心配だったから」
「? だったらそれでいいんじゃないんですかぁ?」
何時の間にか泣き止んでいたクロトが首を傾げながらそう言った。
「そうだよ。私、姉様の事、邪魔だなんて思わない。
姉様は私の事ずっと思ってくれてた。それは、これからもだよね?」
「う、うん」
ぴょんと、クロトのアドニスから飛び降り、その勢いのままマリオンに抱き付く。
(うにゃぁ…姉様、暖かい…♪)
「それじゃ、今度は絶対絶対一人にしないでね?
ずっと一緒に居てね? 私は、それで十分だから♪」
「……でも、私は、」
何か言い掛けた姉の唇に人差し指を添える。
「それにね? この四人の中で一番大変なのは姉様だと思うよ?」
すんすんと姉の胸元に顔を寄せて匂いを嗅ぐ。
いい匂いがした。
日向と、汗と、それに女の匂い。
大好きな、乙女の匂いが。
どくん、と胸が高鳴る。
同時にどろり、とした感情が流れ込んで来る。
(んにゃ、それは、いいの)
姉の体を抱きしめ体温を感じる。
そうする事で悪魔としての本能――他人を貪る暗い心が霧散した。
「――ああ、成る程ね」
こちらの言葉の意味に気付いたのか、ネーアがにやにやと笑っていた。
「え、え? 何?」
「ふふふ。姉様? 家を出て私達に付いて来るっていう事がどういう事か分かってますか?」
「え、それは…」
「覚悟、していますよね?」
ずくり、と腹の中のアドニスが疼く。
負の心は抑えられても、三つの魔物の因子による凶悪なまでの性欲は抑えられそうに無い。
「いや、まだ心の準備が、」
往生際の悪い姉の唇を、キスで塞いだ。
***
何が起こったか一瞬理解出来なかった。
「ん…っ、ふぅっ…、ちゅっ…、姉、様…っ」
(私、リオにキスされてるっ)
切り株に腰を下ろした体勢のまま硬直してしまった。
じゃれつくように抱き付いて妹がしたのは、歳に似合わない熱烈な口付けだった。
キスと言えば唇同士を合わせるくらいにしか思っていなかったので、思考停止してしまう。
実際には柔らかな舌が捻じ込まれ、唾液をまぶしながら咥内を嘗め回される。
ざらざらとした舌の感触は普通の人のものとは少し違うのだが、それを認識する暇もない。
「ちゅるっ、ちゅっ、レロレロっ、ちゅぷっ…っ、ふにゃっ、はぁっ」
「んっ…!? はっ、ぁふっ…、り、おっ…!」
(頭、蕩けるっ)
どろりとした唾液を大量に流し込まれ舌で無茶苦茶に攪拌される。
ぐちゃぐちゃと咥内からいやらしい音が響いて、それがどうしようもなく興奮する。
妹の唾液はどこか甘く、彼女の吐息を吸い込むと脳が痺れるようだった。
舌同士が触れ合い、粘膜同士が擦り合えばぞくりとするような感覚が背筋を駆け抜けた。
266 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:11:57 ID:/Wkm2F56
(あっ、これっ)
「ちゅぅぅうううぅぅっっ♪」
「んっ!? ――――――!!!!」
舌を思い切り吸引されて視界で火花が散った。
妹に抱きしめられた体がびくん、と一人でに震え、体から力が抜けていく。
「――ぷあっ♪ ご馳走様、姉様♪ どう姉様? 姉様も気持ち良かったでしょ♪」
(気持ちいい? 今のが?)
体が気だるい。
だがポカポカとしていて、頭がぼう、として。
姉妹で背徳的な行為をしているというのに幸せな気分だった。
キスだけで、こんなになってしまうのか。
こんなにも、気持ちいいのか。
「んにゃぁ? 姉様? チューだけでイッちゃった?」
妹の顔が急接近した。
キスをした相手が、それも大好きな妹の顔を間近で見るとそれだけで心臓が跳ね上がる。
「き、気持ち良くなんか無いっ。全然っ」
捨て台詞を吐いて、視線を外した。
どきどきどきどきどきっ!
心臓の音がやけに五月蝿い。正直、妹の顔を直視出来なかった。
きっと今頃真っ赤な顔をしているだろう。
全く、天邪鬼な自分の性格が恨めしい。
そしてそれを周りの者は皆理解しているようだった。
ネーアは当然として、リオも、クロトさえもくすくすと忍び笑いを漏らしている。
「わ、笑わないで」
「あははっ。ごめんごめんっ。だってあんまりにも可笑しいから。
マリオンってほんと初心よねー、可愛いわよ?」
「う、うるさいっ。からかわないでっ」
「ネーアさん、姉様の事からかってないよ?だって私も姉様の事可愛いと思うし。
でも、キスだけでそんなになるんなら、この先が思いやられるね?」
これからもっと凄い事するのにね――そう言って妹はぺろりと舌なめずりをした。
「…う」
(何このリオ怖い)
昼間の事件の時もそうだったが気弱で大人しい妹はもう変わってしまったのだ。
それを少し寂しく思い、同時にこの娘が大人になったらどんな女になるのか。
想像するだけで恐ろしい。
「さあ姉様♪ ベッドに行きましょう♪」
「え、ベッドって、何処」
「目の前に立派なベッドが二つもあるじゃないですか♪」
「あたし達をベッド扱いとは、なんというか本当に逞しくなったわねぇ。
あ。あたしは今回パスするわ。クロトに構ってあげて?」
ネーアの言葉に内心ほっと息をついた。
いくらなんでもアネモネ二匹と淫魔一匹に同時に責められたら死んでしまう。魂的に。
「それじゃクロトさん。お願いします♪」
「はい、リオ様ぁ♪」
しゅるるるるっ。
脚代わりの触手が何本が伸び、リオとリオに抱きつかれたままのこの体を拘束する。
普通の女ならこの時点で悲鳴の一つでもあげるのだろうが。
(何か、慣れちゃってる自分が居る)
ここ最近アネモネと――主にネーアと触れ合う機会が多かったからだろうか。
性的な接触は無かったが、アネモネに対しての危機感がすっかり薄れてしまった。
そんな益体の無い事を考えている内にクロトの真正面へと体を吊り上げられた。
「到着ー♪」
花冠の中央に尻餅を付くように着地。
鎧を通して、背中にクロトの肌の感触があった。
「さあクロト様ぁ? 鎧を脱ぎましょうねぇ♪」
267 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:12:55 ID:/Wkm2F56
体を拘束していた触手が一瞬離れたかと思うと衣服や鎧の隙間に侵入してきた。
「あ、馬鹿っ、勝手に脱がさないでっ」
「私も手伝うー♪ 姉様? 脱ぎ脱ぎしましょうねぇ♪」
「やあぁぁっっ!!」
あっと言う間だった。
抵抗らしい抵抗も出来ないまま、着ている物を全て脱がされてしまう。
アドニスの繋がりを利用しての見事な連携だったと言わざるをえない。
「…っっ、見ないで…っ」
顔が熱い。リオとキスした時よりも、顔が紅潮しているのが分かった。
それは羞恥心のせいだ。
人前で裸体を晒すだけでも恥ずかしいというのに、触手で淫靡に拘束されているのだ。
手を万歳の形に広げられ、脚はM字に開脚されている。
真正面のリオからは本当に丸見えだ。
月明かりに照らされたマリオンの体は決して豊かとは言えない。
胸は当然の事として、尻や太股の肉付きも少ない。
女の色香とは無縁な体型だ。
だが折れてしまいそうな四肢は均整がとれており、何かの芸術品のようだ。
真っ白い肌に掛かるブロンドの髪も、彼女の魅力を一層に引き立てていた。
「うにゃ。姉様の体綺麗♪ スレンダー系なんだね」
「…ほ、本当に…?」
涙目で、妹を見詰める。
何を感じたのか妹は目を瞬かせ、こくこくと首を縦に振った。
離れた所から『うわ。マリオンったら割と凶悪ね』なんて言葉が聞こえた気がした。
「でも私、胸、小さいし。リオより」
クロトやネーアに関しては、比較する事すらおこがましい。
ぐす、と鼻を啜る。
大好きな妹の前だから何とか耐えている。
だがこれが公衆の面前だったり男の前だったりすれば。
きっと大泣きするか見た者全員を斬殺していたかもしれなかった。
「え、ええ? そうかな?」
「…ぐすっ、そう…よ、見たら、分かる。私の胸は、小さ過ぎる」
「だ、大丈夫だよ姉様っ。私が一杯揉んで、大きくしてあげる!」
「ほ、本当っ?」
思わず目を輝かせてしまった。
(いや。違う。そうじゃない。揉んでも大きくなる訳ないし)
「や、やっぱりいいっ。私はこのままで」
「そんな事言わないで♪」
「――きゃっ!?」
妹の指先が緩やかな曲線を描く膨らみに触れた。
肌が敏感になっているのか、それだけで甘い官能が体に満ちる。
「にゃう♪ 姉様の肌すべすべー♪ ずっと触ってたくなる♪
ほらほら♪ クロトさんも触ってみて♪」
「はぁい♪ ではご相伴に預かりますぅ♪」
「え、ちょっ、待って――はんっ…!?」
肌を撫で回す妹の指がピンク色の藁を掠める。それも全く予測の出来ないタイミングで。
慣れない快感にもピンク色の先端は反応し、生意気にも自己主張を始めた。
「あっ!? 勃った、勃った♪」
「それじゃぁ、こちらもぉ♪」
「あっ、駄目っ」
背中からクロトが手を回し、乳首を中心に乳房を撫で回す。
触れるか触れないかくらいの絶妙なタッチに、左側の先端もあっと言う間にしこり立った。
(さ、触られてるだけなのに…っ)
過去、ネーア追撃中に犠牲者となった女性達の顔が浮かび上がる。
眉をハの字に寄せ、口をだらしなく開けた、いやらしい雌の顔。
魔物に襲われておきながら感じるなんてありえない――そんな事を当時は思ったものだが。
「いただきますぅ♪」
268 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:14:08 ID:/Wkm2F56
背中からクロトの甘ったるい声が聞こえた。
かと思うと一本の触手が鎌首をもたげ、その先端がくぱり、と十字に割れる。
内側にびちびちと柔毛触手がひしめき合うそれを左側の乳首へと近付けて、
「え、待って、それだめっ、駄目っ――きゃあぁぁっ!?」
ぱくり、と愛らしいサクランボを咥え込まれた瞬間、電気が走った。
充血し、敏感になったそこをぬるぬるとした細い触手の束に舐めしゃぶられ悶絶する。
(き、気持ちいいっ、私、駄目になっちゃうっ)
コンプレックスの対象だった胸を責められ、こんな醜態を晒すとは、夢にも思わなかった。
恥知らずな先端をくちゃくちゃと舐められ、或いは甘噛みされ、その愉悦に脳が蕩ける。
「姉様、エッチな顔にゃぁ♪」
「い、いやぁ…っ、見ないでぇ…っ」
「恥ずかしがらなくてもいいんだよ? これからもっともっと気持ちよくなるんだから♪」
言って妹は右の乳房へと顔を寄せて――ぱくり。
「あっ!? 駄目っ! だめっ!」
赤ん坊のように乳首に吸い付かれる。
ぺろぺろと先端を舌で何度も弾かれ、その度に快楽で視界が白んだ。
(エッチって、こんなに気持ちいいのっ)
戦う事しか知らなかったマリオンは、一人遊びはおろか、キスすらした事が無かったのだ。
興味が全く無い、とは言えなかったが、機会には恵まれなかった。
ところが実際に経験してみると、どうだ。
(びりびりして、痺れてっ、変になるっ)
心臓がどきどきと早鐘を打つ。
だがそれは実戦の空気の中感じる緊張や恐怖とは全然違って、どこか甘く、切ない。
頭もぼーとして、ろくな思考もままならない。
右と左の乳首から襲い来る、鋭い快楽に翻弄されるだけ。
「はあぁっ、はあっ、あぁっ!? やっ、かま、噛まないでっ!」
時折思い出したかのようにピンク色の先端を優しく噛まれ、喉から嬌声が独りでに漏れる。
じゅくり、と下腹部が疼いた。
「ふふふ。姉様のエッチな匂いがする♪」
顔を離したリオが微笑んだ。
コケティッシュな妹の笑みに、心拍数が更に上昇する。
つー、と乳首から伸びた唾液を舐めて切り取り、淫魔らしい表情を浮かべているのだ。
その愛らしくも妖しい笑みに、どきどきしながら魅入ってしまう。
アネモネ達はまだガスを撒いていない。
それでこれだけ心が掻き乱されるのだから流石淫魔と言ったところなのだろう。
それとも、自分はひょっとしてあれか。
生粋のレズビアンなのか。
「もういいかな?」
「うぅんっ」
急に二体の魔物の責めが終わる。
快楽という荒波から開放され、ほっとしたが体には火が着いてしまったらしい。
火照った体は切なく、快楽の余韻にじんじんと肌が疼いている。
特に下腹部――子宮ではそれが顕著だ。
じくじくとした疼きが腹から全身へと拡がっている。
何だか居ても立っても居られない。
「姉様? とっても濡れてるよ? あそこ、ぐちょぐちょだよ?」
妹の眼前に晒されたクレヴァスは解れ、口を大きく開いていた。
自慰もした事の無い生娘のそこからは、とろとろと新鮮な蜜を零している。
雌の匂いを発する愛液に髪と同じ色の恥毛が濡れて、色っぽさを演出していた。
「ば、馬鹿っ、そんな事、言わないでっ」
発情した自分の隅々まで妹に見られている。
それを思うと頭が沸騰しそうだった。
恥ずかしすぎて顔から火が出る。
「ふふふ♪ 姉様ほんとうに可愛いにゃぁ♪」
「ですねぇ♪ 初心な乙女、って感じですぅ♪」
「うー…!」
おもちゃにされている。
それは分かっているのだが体はすっかり出来上がってしまい逆らう事も出来ない。
269 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:14:59 ID:/Wkm2F56
何より、二人には悪意など一つも無いのは分かっているのだ。
誰の邪魔も入らぬ森の中、仲間同士でじゃれあうようなものだ。
じゃれ合うは無いか。ああでも魔物の慣性からすればいやらしい事もじゃれ合いのうち?
(そんな事より、体、疼いてっ)
「姉様、辛いよね?」
火照った体を持て余すこちらの心情を悟ってくれたのか、妹が優しい笑顔を浮かべた。
こくり、と小さく首を縦に振る。喋れば、情けない声が出てしまいそうだったから。
「準備も出来てるし、姉様の処女、リオが貰うよ?」
処女という言葉に体が震える。
別に貞操観念など持っては居ないし、異性との真っ当な恋愛にも執着は無い。
だが実の妹に犯される、という事実に、少なからず抵抗を覚えてしまった。
(…、違う、私は、リオを受け入れてあげないといけない)
自分は、結局妹に何もしてやれなかった。
強くなると言い張るのはいいし、実際に強くなった。
けれどそれが何の役に立った?
得た物より、失った物の方が大きいのではないか?
自分が屋敷を離れたせいでリオはこうして人外になってしまった。
ならその彼女を受け入れる事が、せめてもの罪滅ぼしではないのか。
例え、この体も魔へと堕ちるとしても。
「…分かった…」
ぽつりと呟くと、妹は嬉しそうに微笑んだ。
「うにゃぁ♪ 姉様大好き♪」
抱き付き、顔中にキスの雨をプレゼントしてくれる。
にゃうにゃうと鳴きながら、唇を舐めたり、首筋の匂いを嗅いだりしてきた。
それがくすぐったくて、微笑ましくて。
まるで猫がじゃれついてくるような感覚にこちらも頬が緩んでしまう。
「姉様ぁ…♪」
「リオ…」
そしてどちらからともなく再び口付けをした。
今回は妹に一方的にされるだけのキスではない。
互いに舌を絡ませ合い、相手の咥内へと自分の唾液を流し込む。
ふんふんと鼻で息をしながら、貪り合うようなディープキスに熱中した。
鼻に吹きかかる妹の吐息は甘く香り、胸を高鳴らせる。
甘酸っぱい唾液はまるで蜜のようで、いくらでも啜りたくなってくる。
舌をさりさりと削る猫舌も甘いばかりのキスの中では唯一の刺激となって、心地良かった。
(リオ、りおっ)
好き。大好き。
この感情が家族愛なのか恋愛なのかは分からない。
けれど手放したくない。ずっと一緒に居たい。
そして、その為には。
「はぁっ、はぁっ」
「ふにゃぁ…にゃうぅん…♪」
濃厚なキスを終え、僅かに互いの顔が離れる。
粘度の高い唾液が二人の間で銀色の橋を掛け、時間を掛けてぷつりと切れた。
「姉様ぁ…します、よ?」
「あ、ちょっと待って。私だけ裸なの、なんかずるい」
ぼやくように言うと妹はオッドアイを瞬かせた。
「うにゃ♪ そうだね♪」
黒いゴスロリドレスが揺らいだかと思うと黒い霧へと姿を変えた。
そして次の瞬間にはリオの体へと吸引されていく。
後には自分同様、生まれたままの姿になった妹の姿がある。
ふっくらとした肢体。
270 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:16:22 ID:/Wkm2F56
確実に膨らみ始めている乳房。
太股や、桃尻も丸みを帯びて、小さな体にも徐々に色気を帯び始めているのが分かる。
――というか明らかに、
(私よりもエッチな体をしている)
恨めしい。姉よりも優れた妹なんて存在しない――というのは言い過ぎだと思うけど。
遺伝子というか血のせいでここまで差が出るかと思うと悲しくなってくる。
(…それにしても)
妹の下腹部に思わず目がいってしまう。
同性の性器などまじまじ見る事は無かった上に妹のもの、ともなると興味もあるのだが――
(花だ)
ヴァギナの内側から咲いた肉の花が海星よろしく妹の股間にべったりと張り付いている。
花びらの内側は膣壁のように粘液に濡れたヒダが連なっていた。
四つある花弁は十字を形作り、その付け根からは計十二本の細い触手が生え出していた。
一本一本は小指程の太さでこれが獲物を拘束したり責めたりするわけだ。
中央の窪みには女性器の陰唇に酷似した割れ目が有り、粘度の高い蜜を垂れ流していた。
催淫性の高い蜜の香りに頭がぼーっ、として胸がどきどきと高鳴ってくる。
女の神聖な場所に寄生するおぞましい魔物だとは思う。
実際見てみると卑猥でグロテスクなものだとも思うが――
「あの、姉様? さっきからお股に突き刺さるような視線が…」
「ご、ごめんっ!? つい、」
見とれてしまった――口に出そうとしてその言葉を慌てて飲み込んだ。
「にゃふふ♪ リオのお花に見とれてたのかにゃぁ?」
バレバレだった。
「いいから! 早くするの!」
「にゃう♪ 分かったにゃぁ♪ しっかり見ててね、姉様♪」
妹が腹に力を込めた。
「ふにゃっ…! ――んにゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
ずるずるずるずるっ!!
花の中央からアドニスの生殖器が生え出した。
多重のエラを持つ肉色の胴。
疣が大量に張り付いた先端部分。
更にそこから細い触手が生え出し、うぞうぞとのたくっている。
自分の腕程もある、グロテスクな触手に思わず息を呑んだ。
「ふにゃぁぁっ♪ はぁっ…♪ はぁ♪ どう、姉様? リオの触手おチンポぉ♪」
官能を感じ、頬を赤くし、息を荒げるリオ。
股からもだらだらと愛液を垂れ流し、その姿は実に色っぽい。
(こ、これがアソコに入るの?)
だがこちらはその凄まじい外観にドン引きだ。
粘液に塗れて光る妹のイチモツは、こちらの穴の直径よりも遥かに大きい気がするのだが。
まあ、リオのものだと思えば怖くは無い――かもしれない。
試しに疣の生えた先端部分に指を絡めてみた。
「ふにゃぁっ!?」
「きゃっ」
びくん! と大仰に触手が跳ね上がる。
「ご、ごめんっ。痛かった?」
「ち、違うのっ…! いきなり触るなんて、思ってなかったからっ。
びっくりしたしただけ」
はぁはぁと妹は息を荒げていた。
敏感になっているのは、貧相なこの体だけではないという事か。
「もう少し、触っていい?」
「う、うにゃぁ…」
こくんと頷いた妹の顔は快楽に蕩けていた。
もっと触って欲しいとばかりに僅かに腰を押し付けられる。
自分はというと妹の触手ペニスに触る、というシチュエーションに興奮していた。
どきどきしながら今度は凶悪な多重エラ部分に指先で触れる。
「ふにゃぁっ…!」
びくり、と再び触手が脈打った。
(――あ、なんか可愛いかも)
271 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:17:19 ID:/Wkm2F56
調子に乗って触手に添えた人差し指と中指をツツーと下へと滑らせる。
「にゃうぅぅんっ…♪」
びくびく。触手が再び暴れ回る。
それを逃がさないように掌で抑え、その触手の形や温かさを感じた。
(あ…、やっぱり、全然怖くない…)
これなら、大丈夫だ。
と、いうかむしろ。早くしてみたいくらいだ。
(なんか、エロイ気分になってる)
下腹部のじくじくがいい加減切なくて、自分の指でかき回したいほど。
淫魔の愛撫とキス。それにリオのアドニスから漂う催淫香が理性を追いやっていた。
「ね、姉様ぁっ♪」
「きゃぁっ」
いきなり押し倒された。
息を荒げた妹にマウントポジションを決められ、触手をヴァギナにあてがわれる。
「リオ、もう我慢出来にゃいにゃぁっ♪」
「うんっ、私も、私もリオが欲しいっ」
頭が完全に上せて、自分でも何を言っているか分からなかった。
ただ、妹はその言葉に感動したらしく、目をうるうるとさせながら、
「うにゃあぁぁぁぁぁあぁんっ♪」
嬉しさの余りに謎の遠吠え。
同時に、触手ペニスを一息で奥まで突き入れた!
ずりゅりゅりゅっ!
「っ!? …、っ…っ!」
ぶつん。そんな音が聞こえたかと思うと体の芯から引き裂かれるような痛みが走る。
(う、痛ぁっ)
だが予想していた程ではない。
死ぬほど痛いと聞かされていたので、どんなものかと思ったが。
「ね、姉様の中、いいっ♪ きつきつでっ、たまんにゃいよぉ♪
姉様は? 姉様はどうっ?」
快感を感じるのはまだ無理だが、ヴァギナの中にリオの触手を感じる事は出来た。
痛みよりも異物感と温もりの方が勝っている感じだ。
(もっと、リオを感じたい)
蕩けた魂が激しい交わりを求めている。
この大きく、卑猥な形状をした触手で滅茶苦茶に犯して欲しい。
「んっ…大丈夫っ…動いても、いいよ…っ」
すぐさまリオは腰を動かした。
最奥まで突き入れた雌しべ触手をゆっくりと引き抜いていく。
「あっ!? ……っ、っ! っ…」
処女膜の残骸をずりずりと多重エラで擦り削られ、明確な痛みに襲われた。
だが、これくらいの痛みが何だ。
リオはもっと辛い目に会ってきたのだ。この程度の痛み、耐えてみせる。
歯を食いしばり、ヴァギナを蹂躙する触手を受け入れる。
だが何が気に入らないのか背中のクロトがうーんと不満げな声を上げた。
「駄目ですよぉマリオン様ぁ? そんなに力んじゃぁ? 私がもっと解してあげますねぇ♪」
(え、いやそんな余計なお世話…)
――ぱく。
「きゃぁっ!?」
両の乳首に触手が喰らい付いた。
そのままちゅーちゅーと先端を吸われ、頭で快楽の火花が散る。
「うにゃぁんっ♪ 締まる、締まるよぉ♪
クロトさぁんっ、もっと姉様にしてあげてぇ♪」
「はいぃ♪」
「いやっ、それっ、だめっ――きゃぁんっ」
右左右左と交互に弱点を甘噛みされる。
痛みを堪えているところに不意打ち気味に襲い掛かる快楽は只甘い。
喉の奥から自分のものとは思えないほどいやらしい嬌声が漏れ出した。
272 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:18:08 ID:/Wkm2F56
(エロイ声、勝手に出るっ)
「姉様、やらしいにゃぁ♪」
ちゅっ、と妹が額にキスをしてくれた。そしてすぐに腰の動きを再開する。
ずりゅ、りゅ…りゅ…。
「んっ!? はっ! あぁっ!」
ゆっくりと、焦らすように触手を挿入される。
先端の突起物、エラエラの感触、それに太い胴と肉の温もりを順番に感じた。
「はぁっ、はぁっ♪ どう、姉様っ? まだ痛む?」
「んっ少し、だけっ――きゃんっ」
ちゅう、と両乳首を同時に吸われ、いやらしい声が漏れる。
「ふふふ♪ じゃあ、もうちょっと気持ちよくなろうねっ」
妹がクロトに目配せ。アドニスを通して何かの指示を送る。
待ってましたとばかりに三本目の触手が花弁の根元から生え、くぱり、と口をあける。
乳首を咥え込んでいるおしべ触手と同じそれは、結合部のすぐ上辺りを目指していた。
そしてその先には、ぷっくりと充血し膨らんだ淫核がある。
直に触った事も無いが、そこが敏感な部分だという事くらいは知っていた。
どきり、と胸が妖しく高鳴る。
口を開けた触手がピンク色の真珠に徐々に近付くのを、息を荒げながら見詰める。
白状すると、期待していたのだ。
未知の快楽に心も体も焦がされる事を。
――ぱくり。
「…っ、っ、っ、…!? ああぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
そしてその快楽は期待以上だった。
つるつるとした肉の突起物はその表面が乳首以上に敏感だと思い知らされる。
(すごっ、びりびり、するっ)
粘液に濡れた細かな触手にぞろぞろと嘗め回され、その度に腰が跳ねた。
「あっ!? あぁっ…! あぁぁぁっ!」
「ふにゃぁんっ♪ 姉様のおマンコっ、きゅっ、きゅっ、ってなってる♪
リオの触手チンポっ、食べられてるよぉっ♪」
妹の卑猥な言葉遣いも耳に入らない。
全神経が下半身に集中していた。
小指程にも満たない肉が、びりびりとした官能の嵐を呼び、マリオンの自我を削ぎ取る。
(やばいっ、気持ち、いいっ)
「姉様っ、もうっ、いいよね? 姉様スケベな顔になってるもんっ。
だから、リオもっいっぱい動くよっ」
「うんっ、うんっ」
返事と同時に妹が本格的に腰を使い始めた。
ぱつっ! ぱつっ! ぱつっ!
「ああっ!? あひっ!! すごぃっ!!」
腹の中を極太の触手が蹂躙する。
ごりごりといやらしい形状をした肉竿が処女の残骸をかき回し、痛みを産む。
「こっちもペースをあげますよぉ♪」
じゅるるるるるっ!!
「んああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!?」
充血する三つの突起物が同時に吸引され、痛みとは真逆の感覚に襲われる。
「姉様っ、姉様っ」
ばつっ! ぱつっ! ぱつっ!
激しく触手をピストンされ――
「はぁっ!! あぁうっ! ああっ!」
「ちゅぅー♪」
じゅるるるるっ!
「はあぁぁぁぁぁっ!!」
――敏感な三点を同時に吸引される。
「も、もうだめぇ!」
(頭っ、おかしくなるぅ)
痛みと快楽。その両方を同時に叩き込まれ脳はショート寸前だ。
273 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:19:18 ID:/Wkm2F56
体がガクガクと痙攣し、半開きになった口から唾液が垂れる。
しかも性に卓越した魔物二匹が本気で感じさせようと責め立ててるのだ。
そのせいで、痛みよりも快楽の割合の方が大きい。
「はあっ♪ はぁっ♪ 姉様っ? どうっ? 痛くて、気持ちよくてっ。
訳わかんないでしょっ? それとも、もうずっと気持ち良いの?
おまんこ、もう全然痛くないんじゃないの?」
「あっ! んっ! それ、はっ!」
ピストンのペースが途端に緩む。
がつがつと恥骨同士をぶつけ合うようなものではなく、拡張を主とした腰使いだ。
ふふふ、と妹は悪魔的な笑みを浮かべた。
くちくちくちっ。
「あっ!? あっ! それっ!?」
ヴァギナの浅い所で、素早く、揺するようなピストン。
散々穿り返された肉ヒダ一枚一枚に、丁寧に官能が与えられ背筋がぞくりとした。
痛みとも快楽ともつかない官能の嵐は、それ自体が判別不能の刺激でしかなかった。
だが今度は違う。
肉壷の入り口をぐちゃぐちゃと掻き回されれば蕩けそうな快楽が生まれるのだ。
(き、気持ちいいっ)
ついさっきまで処女だった体を空恐ろしい速度で開発されている。
そして今、ヘスペリスとしてのプライド、人間としての常識。
あらゆる束縛から開放されたマリオンは、妹の手で淫らに変えられていく事すら自ら望む。
「…もっと…」
「…にゃぁ? 姉様?」
頭が快楽で茹っている。
このままする事をすれば自分の体がどうなってしまうのか分かっている。
妹に種子を植え付けられアネモネとなってしまうのだろう。
だがそれでも良かった。
「…もっとしてぇ…」
恐ろしい程の猫撫で声だった。
妹がごくり、と生唾を飲み込んだのが分かる。
愛らしい猫目のオッドアイに移った自分の顔が、快楽に溺れる娼婦のように蕩けていた。
「にゃっ、にゃあんっ♪ 姉様っ♪ にゃうぅ♪」
ぐちゅっ! ぐちっ! じゅぷっ!
「あぁ!? あっ! それっ、それぇ!」
苛烈な突き込みに声が上がる。
「本気で、本気でいくにゃぁっ…! 姉様を、天国に連れて行ってあげるにゃぁっ」
ぐりんっ、と妹の腰が大きく時計回りに弧を描いた。
「あぁぁぁっ!?」
肉のチューブが触手の凹凸の形に拡張され、性感が掘り返される。
充血し、粘液に塗れた肉ヒダから甘美な官能が生まれ、全身を痺れさせた。
かと思うと今度は反対回りに腰が回転し、あぁんっ、と甘い嬌声を漏らす。
「はっ♪ はっ♪ はっ♪ はぁっ♪」
じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ…!
「あっ!? いっ! あんっ! あぁっ!」
だらしなく舌を垂らしたリオがこつこつと素早いピストンを繰り出した。
それも一突き毎に角度を変え、肉壷の中を万遍なく刺激してくる。
(あっ!? これっ、触手の疣疣っ、当たってるのが分かってっ)
敏感になった肉ヒダがぐりぐりと押付けられる触手の凹凸を感じてしまう。
「ぐりぐりされてっ、気持ちいいよっ…! ――あぁっ!?」
膣内のとある一点を触手の先端が掠めると、一際強い官能が襲い掛かる。
じいいん、とヴァギナ全体が痺れ、鼻の奥がつーんとした。
(い、今、すごいのがっ)
「ふにゃぁ♪ 姉様の、きゅうきゅうしてるにゃぁ♪ ここが、弱点なんだね♪」
にゃふふ、と淫靡に笑う妹、嫌な予感がした次の瞬間に、思い切り触手を突き込まれる。
じゅぷうっ!
「あひぃっ!!?」
深く、勢いを付けた一撃が『弱点』とやらに叩き込まれ意識が飛んだ。
274 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:20:29 ID:/Wkm2F56
下腹部がきゅう、と収斂し、白濁とした本気汁を結合部から噴出す。
「にゃはっ♪ しまるっ、しまるよぉっ♪ 姉様のおマンコっ、最高だよぉっ♪」
「ああっ!? 駄目っ! すごいっ! ああっ!」
ばつっ、ばつっ、と恥骨同士がぶつかり合う程の激しいストローク。
ひっきりなしにじゅぷじゅぷと卑猥な音が響き、マリオンの濃い匂いを辺りに撒き散らす。
「はぁ♪ はぁ♪ マリオン様、いやらしいっ。
マリオン様のマン汁の匂いがぷんぷんしてっ――私もっ、もう我慢できませんっ」
ずるるるるっ、と背後から触手がせり出した音がした。
それが何かを理解する思考力はもう残っていない。
Gスポットを荒々しく削り、かと思えば焦らすように触手をグラインドさせる――
そんな、緩急の付いたリオの責めに頭がピンク色に染まっていた。
これ以上されたら壊れるかも知れない。
なけなしの理性がぼんやりと考えた直後――菊門に何かが触れた。
ずりりりりりっ!!
「んああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!?」
「はああぁぁっ♪ マリオン様のケツマンコヴァージンっ、頂いちゃいましたぁっ♪
ああっ♪ いいっ♪ いいですぅっ♪ とってもしまりますぅ♪」
「ふにゃぁ♪ クロトさんがっ、姉様のお尻犯したらっ、にゃんっ♪
おマンコのしまりもっ、よくにゃったよぉ♪」
(あっ? おしりっ? おしりっ、犯されてるっ?)
肛門にとんでもない圧迫感を感じる。
二、三日便秘で溜まった排泄物をまとめて出そうとしてもこれほどではないだろう。
そして敏感になった体はアヌスに凹凸の激しい極太触手の感触を捉えた。
「あっ!? おしりにっ、触手――あぁぁっ! 触手っ、入ってるうっ!」
じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ!
「ああぁっ!? いやあっ!? だめぇっ! だめえぇっ!!」
ヴァギナとアナル。二つの穴を同時に触手で突き込まれる。
リオが突き込めばクロトも突き込み、腹の中腸壁越しに触手同士が触れ合う。
その衝撃に白目が剥く。子宮がきゅうきゅうと収斂していた。
それが絶頂だという事に気付かないまま、延々とサンドイッチファックが続く。
ずるるるるるぅっ!
「んぎいいぃぃぃっっ!!?」
今度は同時に、ゆっくりと二本の触手を引き抜かれていく。
ごりっ、ごりっ、ごりっ――
生き物のようにうねり、締め付ける肉ヒダ一枚一枚をいやらしい形状の凹凸が掘り返す。
陰唇から引きずり出される触手に、肉穴が離すものかと咥え込み、肉ビラが捲れ上がった。
女性器の内側が、チーズ臭を放つ本気汁と一緒に月明かりに晒される。
「あっ! ひっ!」
敏感になっているヴァギナを掘り返され、更なるアクメへと追いやられた。
初めての絶頂にしては快楽の総量が桁外れだ。
子宮がキュン、キュン――と何度も収斂する感触は空恐ろしくなる程の快感だった。
意識が真っ白になり、全身が浮遊感に満たされる。
息苦しい尻の圧迫感もそれでどこかに消えてしまった。
むしろ未だに尻を穿り返す触手の感触すらも気持ち良い。
まるでアナルとヴァギナが繋がってしまったようだ。快楽しか感じない。
マリオンは半開きの口から涎を垂らし、意味の無い獣のような声を上げる。
アクメの波にがくがくと痙攣しながら、二匹の魔物にがつがつと細い体を犯されて、
「ふにゃああっ! でるよぉ! もうだめえっ! どぴゅどぴゅするにゃぁ!
姉様にぃっ――にゃっ! にゃあっ! 姉様に種付けするにゃぁぁっ!」
「私もぉっ! 出ますぅっ! マリオン様の尻穴にぃっ!
触手ザーメンびゅるびゅるしますぅっ!」
じゅぷじゅぷじゅぷじゅぷじゅぷっっ!!
「にゃぁっ! にゃあっ! あっ! でるにゃっ! でるでるでるにゃぁぁ!!
にゃっ、にゃっ! にゃっ! にゃああっ!! にゃあああぁぁぁぁっっ!
にゃうううううううううううううぅぅぅぅぅんっっっっ!!!」
275 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:21:40 ID:/Wkm2F56
「あっ! いっ! ああぁんっ! でますでますっあああああっ!!
ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
二本の触手がどくどくと脈動する。
射精される。真っ白になった頭でぼんやりと考え、
ぢゅうううぅぅぅっ!!
その直後に乳首と陰核に喰らい付いていた触手に吸引された。
『ああああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっっっっ!!!!!!』
びゅるびゅるびゅるびゅるびゅるっっ!!
どぴゅっ! どぷどぷどぷどぷどぷっっ!!
三人の嬌声が美しいとも言える和音を生み出した直後。
ヴァギナとアナルに大量の精液が流し込まれる。
びゅるびゅると底が無いかと思う程子宮と直腸に白濁とした粘液が注がれ、腹が膨張する。
強すぎるアクメに、腹が徐々に張っていく感覚も分からない。
白目を剥き、涎を垂らし、潮を吹き、尿を漏らし――
それが二匹の魔物が流す体液に混じって全身をぐちゃぐちゃに汚す。
クロトのおしべ触手が三人を祝福するように射精し、全員の体を白くコーティングした。
どろどろになった体でアクメを味わい、三人で強く抱き合う。
(――あったかい)
熱い粘液と、妹の温もりを感じて、心に僅かに平穏が戻る。
だが次の瞬間子宮口をこじ開けて、ぼこり、とアドニスの種子が侵入し――
その衝撃で意識を失った。
***
「また、派手にやったわねぇ」
遠巻きから三人の交わりを眺めていたネーアは溜息交じりに呟いた。
特にクロトの悶えっぷりは絶景だった。
肝が据わっているというか開き直ったというか。
最初は少しぎこちなかったが、最後はもう立派な女だった。
(相手がリオだから、かな?)
このシスコンめ。
くすりと笑みが漏れる。仲良き事は美しきかな。
(貴女達は今まですれ違ってばっかりだったんだから。
これからは仲良くしていきなさいよ。ずっとね)
粘液に塗れた三人を見ながらそう思う。
傷心のクロトを元気付ける為にも今回は『ベッド役』を辞退したのだが。
中々具合が良さそうなので今度は自分も混ぜてもらおう。
「にゃぁ…姉様ぁ♪」
「あらぁ? マリオン様、気絶してますねぇ?」
「にゃうぅ。起きたらもう一回だにゃぁ♪」
「はいぃ♪」
当分自分の出番は回って来ないようだ。
「…やれやれね」
まあ、いいだろう。時間ならいくらでもある。
この四人で永遠にじゃれ合い続けるのもいいだろう。
――不意に視界が歪んだ。
「――あら?」
目にゴミが入ったのかと思い、指で瞳を拭う。
細い指が涙で濡れていた。
276 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:22:56 ID:/Wkm2F56
(泣いてるんだ、あたし)
アネモネになっても泣くんだなー。
と思いながら、この二百年間、ずっと涙を堪えてきたのを思い出した。
(あ、そうか。嬉し涙か、これ)
それもそうか。
昨日まではずっと独りだったのに。
今ではリオ、マリオン、クロト――三人の仲間がいる。
皆良い子で、彼女達と一緒ならどんな困難も乗り越えられえる気がする。
(…何か、生きてて良かった、って…そんな気がするわ…)
二百年に渡る逃亡生活も、この瞬間の為だと思えば、報われた気がした。
ただ、惜しむらくは――リオの気持ち。
「にゃう♪ にゃうぅん♪ ぺろぺろっ♪ ちゅっ♪ ちゅっ、ちゅぅ♪」
気絶した姉にじゃれつくネコマタと悪魔と人間のハーフの娘。
彼女は果たして救われたのだろうか。
人を止め、家を出、大好きな父と別れ、母親の仇も取れなかった。
そんな彼女を、自分が幸せにしてやる事が出来るだろうか。
(リオのお母さん、か)
もしくはその代わりだ。
まあ、これだけ歳が離れていれば娘、という感じもしないではない。
肌を合わせ、契りを結んだ仲であり、リオの事も少しは分かるつもりだ。
気がかりは、今のリオがどこか無理をしている事だ。
「姉様大好きにゃぁ♪」
ちゅう、と唇を合わせるリオを見ながら思う。
単に甘えてるだけにも見えるが、彼女は少なからず後悔している。
家を出るのも彼女の意思だが、それも後ろ髪を引かれるような想いだったのだ。
百歩譲って、父の事は諦めがついたのだろう。
自分を想ってくれる姉も一緒に着いて来る事になり、彼女は幸せとも言える。
だが、リオの心にはぽっかり穴が開いていたのだ。
今の彼女は、その穴を埋めようとマリオンに甘えているように見える。
ハッピーエンドかと思ったが、まだ一つ、何かが足りない。
それが何かを考え――
遠くから、人の気配が近付いてくるのを感じた。
***
盛大な3Pを終えて三十分も経った頃だろうか。
マリオンが『うぅん…』と呻き声を上げた。
「姉様? 目が覚めた?」
「り…お…?」
こちらを見返すブルーの瞳はどこかぼんやりとしていて、彼女はまだ夢の中にいるようだ。
「そうですよ♪ 私はリオですよ、姉様♪」
語尾にハートマークが付きそうな猫撫で声の後、姉の唇に唇を重ねる。
ちゅっ、と唇を合わせるだけのものだったが姉の目覚まし代わりにはなったらしい。
瞳に意思の光が戻り、阿呆のような顔が羞恥に染まっていく。
「ぅわぁ…っ」
「にゃう♪ 姉様可愛いにゃぁ♪」
すりすりと頬擦り。
ぶっ掛けられた触手汁がほっぺたで塗り伸ばされてぐちゃぐちゃと音を立てた。
別に狙った訳ではないが、その際に繋がったままの触手が捻れてマリオンが嬌声を上げる。
「…っ、まだ、刺さってる、のっ?」
「そうだよぉ♪ 姉様のおマンコが、今でもキュウキュウしめつけるにゃぁ♪」
「尻マンコの具合も大変いい具合ですぅ♪」
「いやだから…そういうエロイ言い方って…」
277 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:24:13 ID:/Wkm2F56
「にゃぁに? 姉様、今更怖気付いたにゃぁ?
リオ達と一緒に来るっていう事はぁ、こうやっていつでもどこでもエロエロしちゃう――
って事なんだよぉ? だからぁ、猥語くらい慣れないと駄目にゃぁ♪」
ネーアと交わった時、彼女に言われた事と同じ事を姉にも言ってやる。
魔物になる事、また魔物と共に行く者の為の通過儀礼のようなものだった。
「うぅ…頑張る…」
「その意気にゃぁ♪」
抱き付いて、熱い抱擁を交わす。
ただ、全身にクロトの粘液をぶっ掛けられている状態だった。
なので身じろぎをする度にヌチャヌチャと肌と合わさった場所から派手に音が鳴った。
アクメ後で敏感になった肌同士が粘液越しに擦れて、それだけで蕩けそうになってしまう。
「んっ!? も、…もうっ、どろどろじゃない…っ」
「そうだねぇ♪」
「アソコも、お尻も、ずっと刺さりっぱなしで……穴、広がる…」
「にゃう♪ そうなったら私達の触手じゃないと満足出来なくなっちゃうね♪」
「それ、本気で言ってるのか冗談で言ってるのか分からない」
「にゃははは…っ」
三人で穏やかに笑い合う。
幸せだった。人間だった時の頃と比べて、今はまるで天国にでも居るようだ。
こんなに幸せになれるのだったら、やっぱり人間を止めて良かったと思っている。
けれど――
「姉様?」
「何?」
「本当に、良かったの?」
「…今更そんな、水臭い」
「んにゃ…そうなんだけど……でも……
私、姉様の中にアドニスの種子、植え付けちゃったよ?」
種子が成長すれば姉もクロトのようにアネモネになってしまう。
二本の脚で大地に立つ事が出来なくなり、剣も使えなくなるだろう。
記憶や人格はそのまま継承されるが、その魂は最早人間の時とは別物なのだ。
魔物になれば、本能には逆らえなくなってしまう。
ドス黒い欲求が体中を駆け巡り、衝動の赴くまま人間達に害を与えてしまう。
それをこの身を以って知っているのだ。
自分はいい。自ら選んだ道だ。
クロトも、ここまでこればどうしようもない。
アネモネ化させてしまった責任として、死ぬまで面倒を見てやるつもりだ。
(けど、姉様は?)
姉までもアネモネとなってしまったら――
ところがマリオンはこちらの心情を察してくれたのか、笑顔で答えてくれた。
「いい。別にアネモネになっても」
「でも…」
「というか。私だけ仲間外れにしないで」
姉だけ人間のままでは大なり小なり後ろめたい、という事だろうか。
(でも、自分の体の事なんだから。もっと考えてくれないと。
私と違って人間としては将来有望なんだし。もう種付けしちゃったけど)
はあ、と思わず溜息を吐いてしまう。
姉の同意の元とはいえ、種付けは早計だったか。
欲を言えば姉には人間のままで居てもらいたかったのだ。
「ちょっとリオ? 貴女真剣に悩み過ぎよ?」
横合いから掛かった声はネーアのものだ。
今の今まで傍観を決め込んでいたのに――何か思うところでもあるのだろうか。
というか腹のアドニスを通じて彼女がどうにもこの状況を楽観的に捉えているのが分かる。
「だって、勢い余って――という訳ではないですけど。いや、それもあるかもしれないけど。
姉様に種付けしちゃったんですよ? 姉様、アネモネになっちゃう」
「なって欲しくないの?」
「それは……多分…」
278 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:25:42 ID:/Wkm2F56
なんだか自分でも良く分からないが、姉には人外にはなって欲しくない。
「そう? なら、ならなければいいんじゃない?」
『え?』
姉妹が、同時に目を丸くした。
何だそれ。まるで、嫌ならアネモネにならなくてもいい、みたいな言い方。
「どういう事ですかぁ?」
「皆勘違いしているみたいだけど。
本来アネモネって成体になったアドニスと女性が完全に同化した姿の事を言うのよ?
種子を植え付けられたからって、絶対にアネモネになるわけじゃないわ」
今度はクロトを含めて、三人で顔を見合わせた。
「普通、女が子宮の中で種子を育てて、産んで、それから同化するまで二、三日掛かるのよ。
まあ、クロトの場合はリオのせいでそれが何倍にも早送りされちゃったみたいだけど。
兎も角、産んだアドニスと同化するまでタイムラグがあるのよ」
「あ、そうか。それじゃ、アドニスと同化してアネモネになるかどうかって、」
「そう。本人が決められるのよ。
まあ、それまで散々エッチして頭の中ピンク色一色だろうから。
大抵自分から進んでアドニスと同化しちゃうんだけどね。
それにもう一つ。アドニスは十分な魔力を蓄えないと成長しない。
それにどころか下手をすれば枯れてしまうわ」
「あっ、そうかっ」
屋敷での戦いの時、メイド達に植え付けたアドニスを全て枯らしてしまった。
つまり。魔力を吸い取れば、マリオンの中のアドニスをいつでも枯らす事が出来る。
「リオの中のアドニスがいつまで経っても成体にならないのもそのせいね。
蓄えた魔力を、種付けや戦闘に使っているから全然成長していないのよ」
「…そういえば、そうですね」
「まあ、折角植え付けた種子だし。私にとっては孫みたいなものだから。
アドニスを枯らす事は出来れば避けて欲しいところね。
兎も角、そういう事だから。何も心配する必要は無いわよ?」
姉妹でもう一度顔を見合わせた。
「なんか、拍子抜け。覚悟してたのに」
「あらあ? 別にアネモネになってくれてもいいのよ?
あたしとしては仲間が増えるならそれに越した事はないからね♪」
「…それに関しては保留という事で」
「そ。期待せずに待ってるわ」
(何だ、それじゃぁ、何も心配する事なかったんだ)
ネーアの言うとおり、自分が悲観的過ぎただけだ。
「えへへへへ…♪」
嬉しさの余り、すりすりと姉に頬擦りする。
もう、何か幸せ一杯だった。
今までリビディスタの屋敷で肩身の狭い想いをしながら生きてきた。
自分の存在理由も分からなくて、心の底から信じる事が出来る人も居なくて。
生きているのか死んでいるのか良く分からない、薄っぺらい生を送ってきた。
父に陵辱され、母に疎まれ――リビディスタの屋敷は自分にとって牢獄だった。
だがそんな辛い日々も、今となっては思い出だ。
自分はもう一人じゃない。
ネーアが居る。
マリオンが居る。
クロトが居る。
もう、寂しい思いはしなくていい。
でも、何か、足りない。
『リオっち♪』
栗色の髪に、犬耳のような癖毛を持つメイドさん。
279 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:26:53 ID:/Wkm2F56
パセットが、ここには居ないのだ。
「リオ?」
「? どうしたの姉様」
真剣な目をした姉がこちらを見詰めていた。
「あの子、置いてきて良かったの?」
今の心中をずばりと言い当てられて鼻白む。
鈍感だと思っていた姉に心の機微を読み取られるなどとは夢にも思わなかった。
思わずバツの悪そうな顔をしてしまう。
「…いいんだよ。きっと」
そう。自分はそう思ったから眠ったままのパセットを起こす事無く屋敷を出た。
「だって。パセットちゃんはもう何年も私の為に頑張ってくれたもん。
もう、自由にならなきゃ」
パセットはずっと一緒に居てくれた。
どれだけ怒っても、八つ当たりして理不尽な事を言っても。
ずっと笑顔を見せてくれた。
どう考えても悪いのはこっちなのに嫌な顔一つする事は無かった。
けれど、全く苦痛でない筈がないのだ。
屋敷、という閉鎖された空間の中で、こんな陰気な少女に付っきりなのだから。
口にこそ出さなくとも、腹の中には色々と溜め込んでいる筈なのだ。
「私みたいな子に構って、一生を棒に振る事は無いよ」
そう。それがパセットの為だ。
「それに私、もう人間じゃないし」
えへへ、と笑う。
「それ、私にも同じ事が言える?」
姉が真剣な表情で問い掛けてきた。
「私も、立場としてはあの子と同じ。でもリオに付いて来た」
「それは、姉様は、ずっと私の事を思ってくれてたからだよね?
でもパセットちゃんは仕事で」
「…リオのばか」
「…え? 姉様?」
「私もばかだけど、リオもばか。鈍感」
「え、ええっ?」
「私もあの子も変わらない。リオの事、大切に思ってる。
私は妹として、あの子は……多分、友達として。
仕事だからとかじゃないの。あの子はリオの事、そんな風に思ってない。
じゃないと、リオが屋敷から居なくなった時、泣いたりしない」
「え?」
(泣いてたの? あのパセットちゃんが? 私の為に?)
あの元気の塊のような娘が、泣いていた? 信じられない。
もう三年以上一緒に居るが彼女が泣いているところなんて見た事が――
(――あ、そういえば。街でパセットちゃんと再会した時、泣いてたような…)
おっぱい揉ませろとか何時も通りの冗談を言っていた気もするが。
あの時のパセットは嬉しさ半分怒り半分といった感じ状態だった。
そう、彼女は心配してくれていたのだ。
メイドとその主人、としてではなく。
たった一人の親友として。
(――でも)
「だったら尚更…そんなパセットちゃんを、私は巻き込みたくない」
大事な友達だからこそ、人として幸せに生きて欲しい。
魔物となった自分に付き合って、危険な目に遭って欲しくないのだ。
ネーアやクロトと共に行く以上、人里には近付く事が出来ない。
魔物が蔓延る、こんな森の中を常に歩く事になる。
アネモネのガスや、姉妹の戦闘能力を考えればある程度の安全は保障出来るだろう。
だがそれも絶対ではない。
常に死と隣合わせになるかもしれない。
280 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:27:56 ID:/Wkm2F56
そんな危険な旅に、何の力も無い友人を連れて行く事なんて出来る筈が無かった。
「でも、それはリオの我侭」
「それは、そうかもしれないけど。いいの! 我侭でも!
私はパセットちゃんに付いて来て欲しくないの!」
もし、襲い来る魔物達からパセットを守り切れなかったら。
自分の力が及ばないせいで彼女が傷を負うような事になったら。
自分は一生後悔するだろう。
あの時、一緒に連れて行くんじゃなかった――と。
そんな想いをするくらいなら、最初から、
「でも、あの子はそうは思ってなかったみたいね」
遠巻きから見ていたネーアがポツリと呟いた。
「え?」
遠くの山から日の出が見え、薄暗い視界が徐々に明るくなってくる。
すると眼下に広がる山間の獣道から人影か近付いてくるのが分かった。
その人影は息を荒げながらしゃむにに走り、こちらへと向かってくる。
大きな旅行鞄を背負い、メイド服を着用し、栗色の髪を揺らす彼女は間違いなく、
「パセットちゃん!?」
「――ぜえっ! ぜっ! はあっ!」
メイド服の少女は魔物三匹と人間一人の輪へと接近すると、膝に手を付いて息を整えた。
全員が見守る中、その少女は顔を上げて、
「うっわエッロっ!?」
顔真っ赤にして背中を向けてしまった。
そう言えばこちらはマリオンとエッチして、そのままの姿だ。
クロトの花の上で、三人が密着したまま、今も二本の触手で繋がっている。
刺激の強い光景だった筈だがメイドの少女は背を向けたまま大きく深呼吸。
それを三、四回繰り返して、くるり、とこちらに振り向いた。
「頼もーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっっっっ!!!!!!」
山中に響き渡る大声だった。
遠くの方で野鳥の集団が羽音を立てて、一斉に飛び立つのを見た。
「いや。そんなに大きな声ださなくとも聞こえるから」
全員が全員耳を押さえていた。
「う。面目無い。体力有り余ってたんで」
(息を切らせながら走ってきた癖に…)
まあ、それだけ必死だったという事か。
この森の中を一人で来るからには何かしらの準備もしていたと思うが。
それにしたって余程の覚悟と度胸がなければ出来る事ではない。
(私に、わざわざ会う為に。そんな事)
やっぱり危険だ。
今回は何とか追いついてきたけど、これ以降一緒に居て無事で居られる保障は無い。
マリオンと違ってこの子は何の力も無い只の少女なのだから。
「パセットちゃん。帰って」
「え?」
281 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:29:26 ID:/Wkm2F56
冷たく、突き放つような言葉に、流石の少女も困惑した表情を浮かべた。
「ど、どうしてさ…っ、どうしてそんな事言うのさっ。
パセットは、リオっちのメイドさんだぞ!
ご主人様が居ないと、パセットはメイドさんじゃなくなっちゃうんだぞ!?」
「パセットちゃん? リオ=リビディスタはもうこの世の何処にも居ないの」
マリオンから触手を引き抜き、花から飛び降りる。
魔力を制御し、裸体に黒く、卑猥なゴスロリドレスを纏わせた。
じゃきり、と爪を伸ばし、そのまま右手をメイドへと突きつける。
「私はモンスター。人を襲い、犯し、精を吸う恐ろしい魔物なの。
分かるパセットちゃん? 私にもうメイドさんはいらないの。
だから帰っ、」
「ふ、」
「…ふ?」
カタカタとパセットが肩を震わせていた。
俯き加減で表情は見えない。
シュトリの能力で彼女の心を読み取ろうと目を凝らして、
「ふっざけんなああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!」
彼女の怒りが叩き付けられた。
「にゃうっ!?」
そのまま地面に押し倒されてしまう。
こっちは凶器だって持ってるのに、怖くは無いのか。
「二回だ!」
「え?」
「二回もっ、居なくなったんだ! パセットの前から!
何も言わずにっ、いきなり消えて! 何でっ!? どうして黙って行くのさ!?
パセットの事、嫌いなのか!? ならいい! それならパセットも諦める!
諦めて里に帰ってやる! けどっ、パセットの事少しでも好きなら、諦めない!
リオッちが何と言おうと付いて行ってやる! 地獄でも何処でもね!
さあリオッち!! 大嫌いっ、って今ここで言ってみろ!
パセットの目を見て言ってみろっ!!」
メイド少女の持つ気迫に完全に呑まれていた。
涙目で、歯を剥き出しにしながら激昂する友人の気持ちが痛い程伝わってくる。
置いてけぼりにされた事を不甲斐無く思い、同時に置き去りにしたこちらを恨んでいた。
そしてその激しい感情の奥に根ざしてるのは――純粋な好意なのだ。
「嫌いな訳、無いじゃないっ」
そんな人間を、どうして嫌いになれよう。
「私、パセットちゃんの事、大好きだもんっ!」
「だったらっ」
「だから、だよ! 私、パセットちゃんには幸せになって欲しいもんっ!
私みたいな化け物に付いて来たら、絶対に不幸になるもんっ!
だから、だからパセットちゃんの事を置いて来たのにっ!
どうして分かってくれないのっ!?」
「ひゃっ!?」
体を起こし、こちらを組み伏せていたパセットを突き飛ばす。
尻餅を付いたパセットが苦痛の声を上げ、思わず『あっ』と声を上げる。
が、そんな動揺を悟られまいと背中を向けると、押し殺した声で言い放つ。
「痛いでしょ? 私、もうモンスターなんだよ?
それはパセットちゃん本人がよく知ってる筈だよね?
だって嫌がるパセットちゃんを犯して、無理矢理種子を植え付けたのは、私なんだから」
溢れ出る衝動のままパセットを陵辱し、その精神を破壊した。
それも一時的なものだったらしく今はこうして元気に振舞っているが。
「私達と一緒に来るっていう事は、また同じような目に何度も遭うって事だよ?
ううん。ひょっとしたらもっと酷い事をするかもしれない。
暴走した私は、自分でも止められないのっ」
282 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:30:53 ID:/Wkm2F56
両腕強く自分の体を抱き締める。
この細腕にはパセットくらいなら簡単に八つ裂きで切る力がある。
そして魔物の本能は、完全に抑制する事は出来ない。
我慢は出来ても、いつか必ず爆発する時が来る。
その時に、目の前の友人に手を出さない、という自身が無い。
「私、怖いのっ!
また昨日みたいに暴走したら、パセットちゃんにもっと酷い事をするっ。
ひょっとしたら、殺しちゃうかもしれないっ!
そんなの絶対に嫌なのっ!! だからっ、だからっ」
最後は言葉にならなかった。
ぽろぽろと涙が溢れてきて、泣きじゃくってしまう。
こうして人間らしい感情はあっても、自分の中には確かに魔物が居るのだ。
パセットには、その餌食になって欲しくない。
「――リオッちの言いたい事は分かった。
まあ、言ってみれば前科持ちだもんね。心配になるのも分かる」
パセットはどっこらしょっと、なんて言いながら立ち上がり、スカートを両手ではたく。
それから何かを考えるように顎に手を当てて――
「ポクポクポク――チーンっ!」
何か閃いたらしい。擬音をわざわざ言葉にして言うあたりらしいというか何というか。
「大丈夫! リオッちはパセットに酷い事しないって!」
なんて、あっけらかんと言うのだった。
「な、何でそんな事言えるのっ!? 昨日の今日だよ!?
酷い目に遭ったばかりでしょ!?」
「何となくだ!! それじゃ悪いか!?」
「えぇ!? 何も根拠が無いの!? さっき何か考えてるみたいだったのに!?」
「ウチの婆ちゃんは言っていた! 『馬鹿は考えるだけ無駄』と!!
余計なお世話だっちゅーねん!」
セルフ突っ込みを入れるパセットに一同愕然としていた。
「だから根拠は無い!!」
「そ、そんな無茶苦茶な!?」
「リオッちどうだ!? 自分を信じられないか!?」
「あ、当たり前だよ!」
「けどパセットはリオッちを信じる!」
「そ、そんな事言われてもっ」
「なら自分を信じるな! パセットを信じろ!
リオッちを信じる、パセットを信じるんだ! これなら問題ナシ! 万事解決ぅッ!」
(もう訳わかんないよぉっ)
思わず頭を抱えてしまう。
「リオ、観念なさい。貴女の負けよ」
「ネーアさん…」
「ほらリオッち。そこのお花のお姉さんもそう言ってる事だし。ね? ね? ね?」
そう言って笑うメイドの少女は、大地を照らす太陽のように眩しい。
その笑顔に何度助けられた事だろう。
(……そっか、私はパセットちゃんに恩返しをしなきゃならない)
彼女がそう望むなら、その我侭を叶えてあげるというのが筋だろう。
じっと、パセットを見詰めて、
「ほんとに、いいんだね?」
「おうさ!」
「私、もう魔物さんだよ?」
「しつこい! リオッちはリオッちだ!」
283 永久の果肉14 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:32:00 ID:/Wkm2F56
「また、悪い事するかもしれないよ?」
「そんときゃパセットが張り倒してでも正気に戻してあげるさ!」
「…どうして…」
どうしてこの少女は、こんなにも自分に尽くしてくれるのだろう。
いや、本当は分かってる。
パセットが自分をどう思ってくれてるのか。
ただそれを、言葉にして欲しかった。
冗談ではなく真剣に。
相思相愛の恋人同士が愛を囁き合うように。
「だって友達じゃん♪」
ほら。やっぱり。
馬鹿なパセットちゃん。
ただ友達、なんて言う理由だけで、お屋敷での生活を捨てて、一緒に付いて来るなんて。
ほんと、救いようの無いお馬鹿さん。
「パセットちゃんって、真性の馬鹿だよね」
「にゃにぃ!? 昨日エッチした時『ずっと一緒ぉ♪』とか言ってたのはこの口だぞ!?」
「あにゃっ!?」
ぐい、と唇を左右に引っ張られて間抜けな顔を晒した。
「にゃったにゃぁ!」
「ふひっ!?」
負けじとパセットの唇を左右に引っ張ってお返しする。
「ひほっちへんふぁふぁおー!」
(リオッち変な顔ー!)
「ぱふぇっふぉふぁんふぁってへんふぁふぁおー!」
(パセットちゃんだって変な顔ー!)
「ひほっひふぉほうふぁへんふぁ!」
(リオッちの方が変だぁ!)
「ぱふぇっふぉふぁんふぉほうふぁへん!」
(パセットちゃんの方が変!)
ぎりぎりと唇を引っ張り合って激しい攻防戦を繰り広げる。
子供らしい喧嘩を、皆がが生暖かい目で見守っていた。
『あはははははっ』
朝焼けの森に二人の少女の笑いが響く。
リオとパセット。魔物と人間。主君と従者。
いや、そんなしがらみをものともしない、強い絆を彼女達は持っている。
この五人の行く先には、きっと様々な試練があるだろう。
人間からも、魔物からも疎まれたこの五人はきっと何処にも受け入れてはもらえない。
でも、きっと大丈夫。この五人ならどんな困難も乗り越えられる。
天国のお母さん。私を産んでくれてありがとう。
姉様も、パセットも、こんな私に付いて来てくれてありがとう。
私は今、とっても幸せです。
そして願わくば、どうかこの幸せがいつまでも続きますように。
ずっと。永久に。
284 乙×風 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/27(木) 19:34:01 ID:/Wkm2F56
はーい最終話終了です。皆様お疲れ様でした。
70KBは長かったですねぇ(汗 、何でこんなに長くなったのだか。
お時間を取らせてしまってほんと申し訳ない。
せめて、時間を忘れるほど愉しんでもらえたらいいのですが。
今回、エッチシーンを入れたおかげでマリオンのキャラがぐんと立った気がします。
自分の体にコンプレックスを持ってるマリオンは裸になる度に、
『…どうせ貧相だし…』
とか言いながら瞳をうるうるさせてちょっぴりいじけるわけですな。
逆に褒めると嬉しそうな顔をして、上目遣いで『本当?』なんて聞いてきます。
不器用なおねーさんがそんな時だけ子供っぽくなるというギャップが実にエクセレント。
とか馬鹿な事を考えながらエチシーンを書いていました。あほですね。
さあ、今から後日談を書く作業に戻ります。二週間くらい掛かるかな?
来週には経過報告も兼ねて次回予告だけでも投下しようと思います。
いつものように誤字脱字感想等よろしくお願いしますー。
それではまたお会いしましょう。
ロリータっ、万歳!!
永久の果肉13
212 乙×風 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:01:38 ID:Q2wLCt6z
>>211様
すいません。ドルキのエロシーンとか無理です。作者的に。
設定が30代とかだったら若作りにしてまだまだエロもいけたと思いますが。
という訳で十三話投下です。
(エロ無し、暴力的表現有り、バトル多め、流血有り<微>、決着、ちと長いかも)
NGワードをお確かめ下さい。
エロが無いのはご容赦を。
前回に引き続きバトル多め、というかほぼ全編通してバトルです。
それでも、と思われる方はお読み下さい。
以下本編です。25レス程消費します。
213 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:03:37 ID:Q2wLCt6z
第十三話 愛憎劇―後編―
実の母親を殴り飛ばしたところで、マリオンは正気に戻った。
「…あ、やっちゃった」
『ドルキ様ーーっ!?』
外野がやいのやいのと慌てふためいている。
まあ、自慢の娘に問答無用で殴り倒されたのだから当然か。
しかしよくもまあこの程度の攻撃が通用したものだ。
魔女とか名乗っているが実は大した事無いのではないかと思ってしまう。
(母様、弱い)
当然だが。
不器用なマリオンが母親の気持ちに気付く事はなかった。
ドルキがどれだけマリオンに愛を注いでいたか。
汚らわしい腹違いの娘の存在もあればこそ、正当な血筋の末娘であるマリオンには手を掛けたのだ。
しかし、ドルキはそのマリオンに口汚い言葉で罵られ、あまつさえ攻撃された。
その時の動揺が彼女の判断を鈍らせ――今に至る。
だが殴った本人がドルキの愛情に気付いていないのだから、皮肉な話である。
「マリオン様、お退き下さい!」
周りの門下生達がドルキを取り囲み、回復魔術を掛け始める。
他にも貴女は正気か、だの、悪魔にたぶらかされてる、だの大変五月蝿い。
折角溜まったストレスを発散させたのにまたイライラしてしまう。
構っていたらキリが無いと判断し、突っかかってくる門下生達を取り合えず無視。
リオの元へと駆け寄った。
「……姉様…」
ドルキの拘束魔術から開放されたリオは呆然としながらこちらを見上げている。
鮮やかな桃色の髪は不自然な色をしながら伸び。
背中からは蝙蝠の翼。そして二本の尻尾。愛らしい猫耳。
それに卑猥なゴスロリ衣装を見ていると、彼女が人間でなくなってしまったと痛感する。
「――ほんとに、悪魔になったんだね」
「…っ」
びくり、と妹の体が震える。
(あ、しまった)
こちらを上目遣いで見上げる少女の目は捨て犬のそれと同じだ。
いや、この場合捨て猫か。いやいやそんな事はどうでもいい。
きっと人間を止めた事に少なからずコンプレックスを抱いている筈だ。
だというのに今の言い方は、ない。
(ほんと、私は喋るのがへたくそ)
自分の不器用っぷりが恨めしい。
「大丈夫。私はリオがどんな姿になっても、気にしない」
たとえ、いつかアネモネになってしまうとしても、妹は妹だ。
愛らしい猫目が、『両方とも血のような赤だとしても』、それは変わらない。
「っ……姉様ぁ…」
うるうると瞳を潤ませながら最愛の妹が見詰めてくる。
(う。可愛い)
二年も見ない間に随分と見違えてしまった気がする。
最後に見た時はもっと小さかった気がするが。
そんな事を思いながら改めて妹の姿を観察する。
(あの、でも、やっぱりその格好は、目のやり場に困る)
開いた胸元から明らかに自分より成長した膨らみが覗いている。
それに何だかいい匂いがしてきて――どきどきする。
そんなこちらの心中を察してか妹は微笑み、小さな口を開く。
「姉様、助けてくれてありがとう」
「と、当然の事、しただけ…」
クールぶっても、照れ隠しというのはバレバレなのだろう。
妹はくすくすと可笑しそうに笑ってから言葉を続けた。
214 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:05:13 ID:Q2wLCt6z
「お陰で義母様に止めを刺す事が出来ます」
一瞬、何を言ったのか理解できなかった。
そしてそれを理解する暇も無く、リオが先手を打った。
「『姉様はそこで見ていて下さい』」
赤い猫目が、魔力を放つ。
それはマリオンの精神を容易く侵蝕した。
体から力が抜け落ち、膝をついてしまう。
リオに対して心を開いていた為、チャームの影響を強く受けてしまった。
(……だめ、りお…)
妹の表情が豹変していた。
捨てられた小動物から、残虐な悪魔へと。
だが、靄の掛かったような意識の中、マリオンは彼女を見詰める事しか出来ない。
ゆっくりと立ち上がるリオに周りの門下生達が気付いた。
その直後にリオが力を解放する。
小さな体から黒い霧を噴き出し、周囲の人間達を制圧する。
黒い霧は彼女の魔力そのものであり、人間にとっては毒以外何物でもない。
それを吸い込んだ門下生達が、一人、また一人と膝を折っていく。
命に別状は無いが、行動を制限するだけなら十分だった。
「さあ、これで邪魔者は居なくなったかな♪」
リオは足取りも軽く、倒れ伏すドルキに元へと向かう。
腕を背に回し、恋人に会う少女のように笑顔を浮かべた悪魔は人畜無害そうに見えたが――
「さっきのお返し、しないとね♪」
スキップでもするようにリオはドルキに近付くと、
まるでボールでも蹴るように、親の体を蹴飛ばした。
どすっ、と肉を打つ音が響き、ドルキの体が宙を舞う。
悪夢を見ているようだった。
母親が植え込みの木の幹にぶつかり、地面に落ちる瞬間を呆然と見詰める事しか出来ない。
先程マリオン自らドルキに暴力を振るったが、あれは我を忘れていただけだ。
今、目の前で行われているのはもっと残虐的な行為。
「あはっ♪ 飛んだ飛んだー♪」
翼を広げ、悪魔がドルキを追いかける。
ドルキは地面で何度も咳を吐いた。
びしゃり、と音がして、地面に赤い液体が散る。
老体には過度の暴力だったのだ。このままでは本当に死んでしまう。
ところが淫魔は血反吐を吐いた女を見ても笑顔を絶やさない。
それどころか地面に倒れ伏したドルキに近付くと、ブロンドを鷲掴みにし、引き上げた。
「なーに? 義母様もう死にそうなの?
リオ、つまんなーい。もっと…遊んでよぉっ!!」
掴み上げたドルキの頭を地面に叩きつける。
加減はしたのだろう。地面に脳髄をぶちまけるような事は無かったのが救いだった。
だがマリオンに殴られた頬は青く腫れ上がっていた。
地面に叩きつけられた衝撃で鼻がひしゃげた。
更にぶちぶちと金髪が千切れ、ドルキの顔は見るも無残な事になっている。
「あははははっ!! 義母様変な顔ーーっ♪」
腹を抱えて笑い声を上げるリオ。
狂気を含んだ、少女の声に混じって、『助けて…』とドルキの懇願が聞こえた気がした。
「うにゃぁ? なーに? 聞こえなーい♪」
だが淫魔は許しを請うドルキに容赦しない。
じゃきん、と笑顔で爪を伸ばし、ドルキの頬にあてがう。
「ひ、あぁぁぁぁっっ!?」
ぎぎぎぎ、と顔面を横断する爪の感触にドルキが悲鳴を上げる。
無残だった顔が爪に引き裂かれ更に無残な事になった。
ドルキの悲鳴が余程良かったのか、リオは艶かしい吐息を漏らす。
215 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:06:42 ID:Q2wLCt6z
「はぁ…♪ はぁ…♪ 義母様の悲鳴…気持ちいい…♪
おマンコ、濡れちゃうよぉ…♪」
リオはドルキの血が付着した爪先にぞろり、と舌を這わせる。
「ねぇ? 義母様ぁ…♪ もっと、義母様の悲鳴をリオに聞かせてぇ…♪
義母様の絶望する声をリオに聞かせてぇ…♪ ねぇ、どうすればいい声で鳴くのぉ?
痛い事すればいい? それとも、そのお顔をもっとぐちょぐちょにすればいい?
――あ、そうだ! 両方同時にしよう!
目玉を抉り取るの! きっといい悲鳴で鳴いてくれるよね!?
あはっ――あははははははははははははっっっ!!!」
駄目だ。今のリオは、狂ってる。
彼女を救ったのは、間違いだったのだろうか。
他に何か、方法があったのだろうか。
このままでは、取り返しの付かない事になってしまう気がする。
ドルキを殺してしまったら、きっともうリオは戻って来ない。
その魂すら、完全に邪悪に染まり、人の心を忘れてしまうのだろう。
(私、また、リオを助けられない…)
マリオンの頬を涙が伝った。
悔しかった。リオの事を思って行動してきたこの十年余りの歳月。
それらが全て無駄なのだと言われている気がした。
どれだけ努力しても、結局誰も報われない。
妹の命は助かるかもしれないが、魔へと堕ちた彼女は悪逆非道の限りを尽くすだろう。
それでは何の救いにもならない。
誰か、誰か。
リオを止めて。
自分では、妹を止められない。
彼女を愛する余り、彼女の本質が見えていなかった。
世界に絶望し、他者を恨み、何より孤独を知っているものだけが、リオを理解出来るのだ。
そうでない者以外、彼女を止める事なんて出来ないのだ。
けれど、そんな人間が、ここに居るのだろうか。
「悪い子はどこだああぁぁぁっっ!!!」
その声は空から響いた。
リオがそれの存在に気付き、獣の目で空を見据える。
次の瞬間、美しい花が空から降ってきた。
正門から続く石畳の通路を踏み砕き、一匹の魔物が大地に降り立つ。
着地の衝撃で黒い霧が吹き飛ばされ、薄暗い視界に日の光が差した。
浅葱色の肌。
腰まで伸びる、肌と同じ色の髪。
女神にも引けを取らないほど美しい顔立ち。
豊満な、果実を思わせる双房。
上半身は絶世の美女。
下半身に肉の花を持つ魔物。
(……来るのが、遅い…)
胸の前で偉そうに腕を組むアネモネを見て、マリオンは救われた気がした。
「…ネーアさん…」
だが、感動の再会である筈なのに淫魔の表情は晴れない。
それがマリオンには気に掛かってしょうがなかった。
「あたしだけじゃないわよ」
アネモネの言葉に答えるように、二人目の乱入者が姿を表した。
全身を覆う赤い鎧。
216 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:08:03 ID:Q2wLCt6z
獅子の鬣を連想させるブロンドの髪。
顎下まで立派な髭を生やし、顔には深い皺が刻まれている。
もうすぐ五十を迎える男の顔だ。だが、その眼光はどこまでも鋭い。
凶暴な獣性を真紅の鎧に封じ込めているようだった。
「父様…」
父グリーズの登場に淫魔の顔が僅かに強張った。
***
「随分と派手にやらかしてるみたいじゃない」
地上に降り立ったネーアは辺りを見回しながら眼前の仲魔に喋りかけた。
周りはリオの放つ黒い霧のせいで死屍累々といった様子だ。
「殺したの?」
「いえ? 皆さん生きてますよ? 第一そんな酷い事私がするわけないじゃないですか。
女の子は皆、アネモネになってもらうんですから♪
あ――そうだ。私も質問があります。どうしてネーアさんと父様が一緒に居るんですか?」
「ああ、そうね…説明しないとね」
立場を考えれば、二人が戦っても不思議ではないのだ。寧ろ、それが自然と言えよう。
ちらりと背後のグリーズに目配りをする。
彼は任せると言った様子で軽く頷いた。物臭な男だ。
「リオに会いに行く途中でばったり会っちゃってね。
貴女の居場所を教える代わりにここまで案内させてもらったの。
それと、クロトの安全も、ね」
「クロトさん? クロトさんが生きてるんですか!?」
「アドニスの繋がりは切れてるだろうから、やっぱり死んだと思った?
大丈夫よ。首を撥ねられただけだから。すぐにくっつくわ。
撥ねられた本人は自分が死んだと思ってるでしょうけどね」
アネモネと戦闘経験が無いものなら、切っても死なないなどとは思わないだろう。
しかし、かの剣神ともあろう人間が、その程度の事を知らないものなのだろうか?
「…そうですか。安心しました――でも私がやる事に代わりはありません」
リオが見せびらかすようにドルキの体を引きずり上げる。
滅茶苦茶にされた女性の顔面を見て、二人の顔が僅かに強張った。
「私は、この女に復讐します」
淫魔らしい、愛らしさと淫靡さを同時に備えた姿よりも、その性格の豹変振りに驚く。
「…変わったわね、リオ」
無邪気に微笑みながら大胆な発言をする少女に、諦めにも似た感情が胸を満たす。
この少女を『こちら側』に引き込んだのは間違いなく自分だ。
だが肉体が変わっても、精神がここまで堕ちるとは夢にも見ていなかった。
「それが、貴女の義理の母親?」
「はい。――うふふ♪ ネーアさん?
私達いまぁ、親子の絆を育んでいるところですぅ♪」
何も見ていなければそれが歳相応の少女が言う台詞に聞こえる。
だがリオが小さな手で引きずり上げているのはぼろ雑巾のようになった人間の体だ。
息も絶え絶えで、見てるこちらが痛々しく思えてしまう。
昨日の夜までは、他人を思いやれる優しい娘だった。
それが今では身内を笑顔でリンチするような残虐な性格になってしまった。
(…あたしのせいね)
リオに種子を植え付けたのは双方合意の下で行われた事だ。
しかし、孤独に耐え切れなかったネーアの弱さも原因の一つであるかもしれない。
自分がもっとしっかりしていれば、こんな事にはならなかった。
そう思うと、本当にやり切れない。
「リオ。引き上げるわよ」
「……え? …え? …引き上げるって…何言ってるんですか、ネーアさん」
「昨日の夜にも言ったでしょ? 目立ち過ぎだわ。もうここには居られない」
いや、それもある。
だが本音はリオにこれ以上悪事を働いて欲しく無かったのだ。
きっとそこの義理の母を殺してしまったら、理性のタガが外れてしまうだろう。
他人を貶め、命を奪う行為に快楽を覚えるようになってしまうだろう。
217 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:10:16 ID:Q2wLCt6z
人を止めたとしても、そうはなって欲しくないのだ。
「……嫌です」
「あのねぇ。我侭言わないの。
人間達に延々と追いかけられるのがどれだけ苦痛か、話してあげたでしょう?
貴女も同じ目に遭いたいの?」
「襲ってくるなら、追い払えばいい」
リオの声のトーンが下がる。
ぞくり、とした。
先程まで無邪気な笑顔を浮かべていたのに、今その愛らしい顔は能面のように無表情だ。
「しつこいなら、殺せばいい」
獣の双眸に射抜かれ、本能が警鐘を鳴らした。
この娘は、危険だ、と。
真紅の両目を見ながら何とか説得する方法を考える。
「リオ、忘れないで。私達は人間が居ないと繁殖も出来ない。
ただ殺すだけならいつかあたし達自身が滅びるわよ」
「そんな事ありませんよう」
ふと、リオの顔が歳相応の少女のものへと破綻した。
「例えば――ほらっ、この街を私達で占領するんです!
アドニスの花をいっぱい咲かせてっ、必要最低限の人間だけを残して『飼う』んです!
鎖で繋いでぇ、エッチして人間の子供を産ませるだけの家畜にしちゃうんです!
そうすれば、アネモネを好きなだけ増やせますよ! 永遠に!」
名案だとばかりにリオは表情を輝かせた。
「…成る程、確かにあたし達アネモネからすればそれは理想の世界ね」
「ですよねっ? ネーアさんもそう思いますよね!?」
孤独と、人間達に追い掛け回されるストレスから開放される。
それだけでリオの考えは魅力的に聞こえた。
アネモネは水と日の光さえあれば半永久的に生きられるのだ。
アドニスの中で、人間の『餌』も生成出来るので何も問題は無い。
そしてこの街には結界がある。
事を知って追いかけて来た人間も、そうそう簡単には街には侵入出来ない。
ここをアネモネの拠点とするには最高の場所と言えた。
「でも駄目」
「――どうしてですか」
「今の、本当にあたし達の事を思って考えてくれていたのなら、まあ、いいわ。
でも、違うでしょ?」
リオのそれは、目的ではなく、手段なのだ。
彼女は、ネーアの、アネモネの未来を考えて語っているわけではない。
それは彼女の言動や行動を見ていれば馬鹿でも分かる。
「リオ、貴女はね。自分の復讐を果たす為にこの街を支配しようとしているの。
それは私の為なんかじゃない。リオ自身の我侭の為よ。
復讐を正当化する為に、あたし達アネモネを利用しないで」
(…言い過ぎたかしら)
だがここでその事をはっきりしておかないと彼女は間違いに気付かないかもしれない。
それに、ネーアは信じている。
リオの中にはまだ人の心が残っていると。
「どうして分かってくれないんですか」
獣の瞳がこちらを見据えた。
まるで石ころでも見るような目つきに、再び背筋に冷たいものが走る。
「私、ずっとずっとネーアさんの事を考えてたのに。
どうしたら喜んでくれるか一生懸命考えたのに」
違う。それは良い訳だ。
いや、ひょっとしたら本気でそう思っていた時もあったのかもしれない。
218 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:11:32 ID:Q2wLCt6z
でも今は違う筈だ。
赤くなった両目は、復讐に酔っているようにしか見えない。
どうやって自分を殺した女を苦しめてやろうか、それしか頭にないのだ。
「……ネーアさんも私を裏切るんですね。
父様と同じように。私を捨てるんですね」
「それは違うわ。あたしは今でもリオの味方よ。だからこそ、」
「うるさい裏切り者」
淫魔の肩が震えていた。
(しまった…あたしの馬鹿っ)
相手が年端も行かない子供だという事を失念していた。
正論だけで説得出来たのなら、誰も苦労はしない。
こちらから譲歩して、彼女の意思を少しでも尊重すべきだった。
「…私の味方は姉様だけ」
悪魔がドルキを放り捨て、翼を広げてマリオンの傍らへと移動する。
「……リオ…」
チャームでも掛けられていたのだろうか。
今まで事の成り行きを呆然と見ていただけのマリオンの瞳に、意思の光が戻る。
その傍らに悪魔が着地した。
「ね? 姉様だけは、私の味方だよね?
私が何をしても、許してくれるよね?」
そう問い掛けるリオの表情は歳相応の少女のそれと同じだった。
好きな人に嫌われたくない。
この人だけは甘えていい。
そんな、感情が垣間見える。
だが、マリオンはそれを理解せずに言葉を発した。
「お願いリオ。元のリオに戻って」
それも最悪のタイミングで、最悪の言葉を。
(…馬鹿…っ)
どうしてもっと慎重になれない。
何故そんなにも不器用なのだ。
自分が見限られた以上、マリオンがリオの支えにならなければならないというのに。
そのマリオンにさえ今の自分を否定されたリオは、一体どうなる?
だが、マリオンが不器用なのは元からだ。
それに同じミスをした自分が、彼女を責める資格などない。しかし、
「……姉様まで…」
ふらふらとリオがマリオンから離れた。
その足取りはおぼつかなく、まるで悪夢の中を彷徨う子供だ。
いや、今の彼女にとっては正に今この状況は悪夢以外の何でもなかった。
信じていた者達に裏切られ、独りぼっちになってしまう悪夢。
(何か、何か言葉を掛けてあげないと)
リオは首を振り、両手で頭を抱えている。
このままでは、孤独でリオが潰れてしまう。
思い出せ、この二百年間を。
たった一人で、人間という敵だらけの世界の中を生き抜いてきた苦痛を。
その重圧に、十二歳の子供が耐えられる訳が無い。
「リオ聞いて、あたしは、」
「――きらい」
「…リオ?」
ぼそりと呟いた彼女の言葉。
219 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:12:39 ID:Q2wLCt6z
それは悲しみの嘆きではない。
「義母様も、父様も、姉様も、ネーアさんもっ…っ!
嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌いきらいきらいきらいキライキライキライっ」
世界を憎む呪詛だ。
「みんな死んじゃええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!!!」
闇が膨れ上がった。
リオを中心に爆発的に放射される黒い霧に、マリオンの体が吹き飛ばされる。
「うああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁっっっっ!!!!!!!」
悪魔の魔力に、地面に転がっていたドルキや、門下生達も吹き飛んだ。
ネーアは地面に触手を突き立てながら体を固定し、衝撃波をやり過ごす。
更に飛ばされるマリオンの体を何とか捕まえ、横目でグリーズの様子を伺った。
赤い鎧が吹き付ける黒い霧を遮っていた。グリーズは涼しい顔のままリオを見詰めている。
「…失敗か」
吹き荒れる魔力の中、ぽつりと彼の呟きが聞こえた。
リオの居場所を教える条件として、クロトの安全、ネーアの同行。
それにもう一つ、リオの説得を引き受ける、という三つの条件を要求したのだ。
街の領主が相手だというのに我ながら身勝手な要求だなとは思った。
しかし意外にも彼は懐の深さを示し、その三つの要求全てを呑んでくれた。
今頃クロトは魔術士達により街の外へと転移させられただろう。
そして彼のエスコートのお陰でこの屋敷まで、無事辿り付けた。
(リオの説得は、出来なかったけど)
歯痒い。分かったつもりで、彼女の事を全然理解してあげられなかった。
森の中でマリオンにあれだけ偉そうな事を言っておいて――自分が情けない。
(こうなったら強硬手段ね)
力ずくでリオの戦闘能力を奪い、それから再び説得する。
これだけの被害を出しておいてグリーズがそれを認めてくれるかは甚だ疑問だが。
今は現状を何とかするしかない。
幸い、魔力総量ならばまだこちらの方が上だ。
『繋がり』を利用した、強制力もある。こちらが有利な事には、
「――え?」
(ちょっと、何これ? あの子の魔力、どんどん上昇している!?)
これだけの量の魔力を放出しておきながら、減るどころか増えている?
一体どんな手を使っているのか、それを考え――ふと気付いた。
屋敷の中に、同類達の反応がある。
恐らくリオが屋敷に潜入した際種付けした者達だろうが――
その者達のアドニスから急激に力が失われていくのだ。
このままではアドニスが枯れ果ててしまう、それくらいの勢いで。
そして失われていく魔力と反比例するように膨れ上がるリオの魔力。
(『繋がり』を利用して、アドニスから直接魔力を吸収しているの!?)
吸精能力を持ったネコマタと魔力の扱いに長けた悪魔。
そしてアドニスを胎内に持つリオだけが可能な芸当なのだろう。
それを理解した瞬間、がくん、と体から力が抜けた。
「そんな、あたし、までっ」
「あはははははははははっっ!!! すごいっ!! 力が溢れてくる!!」
狂ったように笑うリオの魔力は既にこちらと引けを取らない。
「『止めなさい、リオ』!!」
「っ!?」
びくり、と悪魔の体が仰け反った。
そう思った次の瞬間にはにんまり、と彼女は不敵な笑みを浮かべる。
「い、や、で、す♪」
悪魔が腕を一薙ぎ。
それだけで黒い霧がうねり、烈風となり、こちらに叩き付けられた!
220 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:14:11 ID:Q2wLCt6z
「きゃあっ!?」
触手で固定していた地面ごと巨体が吹き飛ばされる。
マリオンを放り出しはしなかったものの、べちゃり、と無様に着地した。
(強制力も効かないっ)
そしてこの体からも魔力が奪われていく。
十やそこらの生まれたての魔物に下克上を突き付けられ、絶体絶命を迎えていた。
(これは、本気でやばいわね)
リビディスタの門下生達が戦術を組んで挑み掛かれば勝てるだろう。
だが彼らの主戦力は街の外で待機している魔物達の殲滅で手一杯だ。
魔物達を倒したその頃には屋敷の人間は全滅である。
となれば最後の望みは。
ネーアの縋る視線に答えるように、一人の男が地を蹴った。
***
リオは視界の端で、何かが猛烈に近付いてくるのを捉えた。
特殊な加工がされた鎧はある程度の魔力耐性を所持しているらしい。
こちらが放つ魔力をものともせず一直線に突っ込んで来た。
さしずめそれは赤い弾丸。
年齢を感じさせない鋭い踏み込みに、こちらも爪を伸ばし、迎撃を試みる。
(ふふふ♪ 今の私なら、父様だって倒せる♪)
屋敷のメイド達やパセットに植え付けたアドニス。
更にネーアからも魔力を吸収し、今では全快状態のネーアと同等の力を得ている。
ただ、あの赤い鎧は精神防御能力すらもあるようで、彼の思考を読む事は出来なかった。
まあ、その程度、丁度いいハンデになるだろう。
向こうは五十近い老体。
対してこちらは魔力を補充したばかりの魔物。
負ける筈が無い。
人を止め、手にした力を思う存分見せ付けてやる。
(大体、父様丸腰じゃないですか)
黒い霧の中を掛ける男の手は空っぽだ。
かと思った瞬間、その手から青い魔術陣が生み出される。
(ああ、そっか。そう言えば父様、剣を転移させる魔術を使えるんですね)
あらゆる剣を状況に応じて使い分ける。
それが剣神と謳われる由縁だ。
だが種が明かされていれば怖いものではない。
力でねじ伏せてやる。
「行くぞ」
ご丁寧にも父親は攻撃前に声を掛けてくれた。
子供だと思って舐めているのか。
その手に握れられているのは細い、変わった意匠の黒い鞘。
『反り』のある刀身を封じ込めた鞘を左手に携え、右手でその柄に触れる。
刀身の大きさはそれほどではない。
鯉口を切り、闇の烈風の中僅かに覗いたそれは細く、薄い。
そんなナマクラ、へし折ってやる。
こちらから間合いを詰める。
右手に魔力を集約。ブレード状に固定した赤い爪を振り被り――袈裟切りに叩き付ける!
同時に、グリーズが黒い鞘から刀身を引き抜いた。
常人には捕らえる事の出来ない神懸り的な居合いも、今のリオはしっかりと捉えていた。
ぎいん!
赤い爪と異国の剣。それが交わった瞬間、高々と剣戟の音が響き――
「――えっ!?」
あっさりと消滅した赤い爪を見て、愕然とした。
そしてそれを見逃すグリーズでは無かった。
221 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:15:24 ID:Q2wLCt6z
返す刀が悪魔の首を狙う。
「こ、のぉっ!!」
左手の爪に瞬間的に魔力を集約。
惜しみなく魔力を消費して、頑丈な刃を生成した。
ぎいいいいぃぃぃんんっ!!
白刃と赤い爪が、鍔迫り合い、魔力の光を散らす。
それが予想外だったのか、グリーズが『ほう…』と感嘆の声を静かに漏らした。
(どうですか、父様? 驚きましたか?
舐めないで下さい。私はもう、一人前のモンスターなんですよぉ!!)
左手で攻撃を受けている間に右手に再び赤い刃を生み出す。
それをがら空きになったグリーズの左脇に繰り出そうと思った――その直前、
赤い鎧が僅かに捻れた。
グリーズが逆時計回りに体を回転させたのである。
それだけで白刃を受け止めていた左の刃が紙切れのように引き裂かれた。
「っ!!?」
ひゅんっ、と耳元で風切り音が唸る。
反射的に翼をはためかせて後方へと跳躍、斬撃を回避する。
(危なかった…!)
反応が一瞬でも遅れていたら首を切り落とされていた。
何が五十近くの老体だ。冗談じゃない。
楽に倒せると思ったのがそもそもの間違いだった。
これだけの魔力を得ても、やった対等に渡り合える――とでも言うのか。
ぎり、とリオは歯を食いしばりグリーズを睨み付けた。
彼は鉄面皮のまま、こちらを見据えるだけだ。
あれだけ重そうな鎧を着ているのに汗一つかいていない。化け物じゃないのか。
(魔力の放射は、無駄かも)
先程から爆発的に垂れ流している黒い霧もあの鎧の前では目くらまし程度にしかならない。
大量に吸収した魔力も無限ではない以上、使い過ぎは只の浪費だ。
リオは自身の体から放射していた黒い霧を再び自分の体へと吸収する。
庭とも言える玄関先に日の光が再び差し込み、視界が回復していく。
「片刃の剣は、叩く事よりも切る事に特化されている。
この剣もそうだ。刀身の『反り』は叩き付けただけでは効果を成さない。
これを引くか、押すか、そうする事で初めて対象を『切る』事が出来る」
「そう、でしたね」
姉の剣の訓練を何度か見た事があるが、そんな話をしていたかもしれない。
何年も前の事なのでうろ覚えだったが、今しがた体で経験して、それを思い知らされた。
「そして――」
グリーズが鞘を放り投げ、剣を地面に突き立てる。
と思った瞬間には何かがこちらに向かい飛来してきた。
「っ!?」
ひゅひゅんっ!!
こちらの体を射抜こうとするのは二本のナイフだ。
それを大きく横に跳躍し、かわす。
「距離をとったからと言って安心するな。
ワシは、何処からでも貴様を狙えるぞ」
じゃらり、と両手で計八本のナイフを扇状に広げて見せる。
さっきはあれを投擲して攻撃してきたのか。
「だったら、こっちにも考えがありますっ」
ばさり。翼をはためかせて飛び立つ。
グリーズは屋敷の地下にある専用の武器庫から獲物を転移させ、手元へと呼び寄せる。
その数も有限ではあるだろう。
だがあのサイズのナイフくらいならほぼ無限と言って差し支えないほどのストックが在る。
弾切れを狙うには時間が掛かりすぎる。
それなら、こちらも同じ事をしてやればいい。
リオは体内に蓄積させた魔力を消費。中空に大量の赤い刃を生成する。
大きさはグリーズが手に持つナイフとほぼ同等。それらの刃先がグリーズに狙いを定める。
222 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:16:54 ID:Q2wLCt6z
「…む」
「いけぇぇぇっっ!!!」
ひゅひゅひゅひゅん!!
リオの掛け声と同時に、魔力の刃がグリーズに向けて降り注いだ!!
ずががががががががががっっ!!!
「…おっかないわね…っ」
少し離れた所でネーアが小さく声を上げていた。
グリーズを狙う赤い雨とも言うべき攻撃は石畳の地面を粉砕し、辺りに破片を撒き散らす。
赤い雨に穿たれた地面は深く掘り返され、その下の土を露出させた。
人間が喰らえば、その鎧ごとミンチにしてしまうほどの威力だ。
だがそれも当たれば、の話だ。
「このっ、このぉっ」
リオは次々と赤い刃を生み出してはグリーズへと放つが――当たらない。
鎧を着たままグリーズが軽やかなに地を駆ける。
その動きは五十近くの中年とは思えない程、素早い。
グリーズは植え込みの木を縫うように庭の中を縦横無尽に駆け回る。
「このっ! 速いっ、当たらないっ――にゃうっ!?」
不意に飛んできた八本のナイフを空中でなんとか回避する。
グリーズが走りながら投擲したものだ。
(き、器用な事をっ)
だが飛び回りながら攻撃すれば、向こうの攻撃もなかなか当たらない。
疲れて動きが鈍くなった所を仕留める!
と思った矢先に彼の体が屋敷の陰に隠れて見えなくなった。
「に、逃げるの!?」
いや、追いかけて来たところを不意打ちを食らわすつもりだ。
ここは慎重になって――いやいや、こちらが尻込みをしている間に体力を回復させる気か?
(技術では、敵わないのは分かってる)
まともに戦っては勝てない。
となれば向こうのスタミナ切れを狙うのがやはり得策なのだ。
人質を取る事も考えたが――それは何だか嫌だった。
卑劣な手段を用いるのは、ドルキだけでいい。
(私は、実力で父様を倒すっ)
決意を固めて中庭の方角へと走り去ったグリーズを追う。
ただこれが罠である事は分かっている。
文字通り足元を掬われないよう、注意しながら建物の角から顔を出した。
(――居ない?)
逡巡していたのはほんの数秒だ。その間に、どこに消えたというのだ。
「どこを見ている」
声は『頭上』から聞こえた。
「え?」
慌てて振り仰げば、上から長大な剣を構えたグリーズが降って来た。
(っ、何で、上からっ!?)
避けられるタイミングではない。
慌ててブレードを両手で生成。それを交差して、剣を受ける。
次の瞬間、二の腕に千切れるかと思うほどの衝撃が走った。
良く見ればグリーズが振り下ろしたのは彼の背丈よりも遥かに長い剣だ。
ツヴァイハンダーと呼ばれる両手持ちの大剣よりも更に大きい。
剣などと言うのもおこがましい、鉄板だ。
どうやって屋敷の上まで上ったのか知らないが、こんな物を叩き付けられたら、
(お、ちるっ)
落ちるだけなら兎も角、地面と剣でサンドイッチにされてしまう。冗談じゃなかった。
「こ、のおおぉぉぉっっ!!!」
自由落下する体を捻り、一方向に目掛けて魔力を放出する。
噴出した黒い霧は推進力となり、体を捻った動きを合わせて小さな体を回転させた。
がんっ!!
裂帛の掛け声と共にリオが放ったのは蹴りだ。
223 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:18:25 ID:Q2wLCt6z
体を回転させ、斬撃から横に脱出しながら、同時にその剣の腹を蹴り飛ばす。
「っ…!」
破れかぶれの行動だったそれは功を制した。
蹴り飛ばされた大剣は中庭の中央に弾き飛ばされ、リオは蹴りの反動を利用して着地した。
「と、ととととっ…!」
と思ったが脚にも腕にも負担が掛かっていたらしい。
たたら踏んで、その場で情けなく尻餅をついてしまう。
(生きていただけ、よしとしなきゃね)
鎧同士が擦りあう音を立てながら、グリーズが僅かに離れた位置に着地した。
あいも変わらずポーカーフェイスで、うんざりしてしまう。
「良く凌いだものな」
「…お褒め頂き光栄です」
「だが油断していたのも事実だ。
自分が飛べるからと言って、相手が常に自分よりも下に居ると思わない事だ」
言いながらグリーズは屋敷のある一点を指差した。
そこはグリーズを追撃するリオから見て、丁度死角になっていた場所だ。
建物の角から少し離れた壁に、剣が何本が突き刺さっている。
剣は屋敷の上を目指し、およそ一、二メートル間隔で突き立てられていた。
「まさか、壁に突き刺した剣を足場にして、上ったのっ?」
「空を飛ぶ魔物相手には重宝する戦術だ。
そういうものに限って、まさか相手が自分より高い場所にいるとは思わないだろうからな」
「…くっ」
図星を突かれて、歯噛みした。
伊達に歳は食っていないという事か、実戦経験が違いすぎる。
下手な戦術は、こちらの身を滅ぼすだけだ。
(だったらっ)
再び両手にブレードを生成。
「真っ向勝負ですっ!」
「その意気や良し」
突っ込むリオに答えるように、グリーズも両手から剣を生み出した。
***
剣戟の音が高々と響いていた。
両手にブレードを生成したリオと、同じく二本の曲刀を生み出したグリーズ。
父と子が、真正面から切り結んでいる。
(……凄い)
リオとグリーズの切り合いを見詰めながら、マリオンは心底感心していた。
何が凄いかって、あのグリーズとまともにリオが戦っている、という事が、だ。
最初は怒りに我を忘れたリオにどうしようかと頭を悩ませていた。
だが親子で繰り広げられる死闘は意気を呑むほど激しく、目が離せない。
気が付けばマリオンは剣神と悪魔の戦いに見惚れてしまっていた。
「……助けないの?」
この体を抱きとめるアネモネの女が至極当然の疑問を口にした。
助ける対象がリオだとしてもグリーズだとしても。
戦いを止めなければどちらかが死ぬ事になるだろう。
「そんな事しない」
だがそれは、父親の――剣神に対する侮辱だ。
「何となく、分かったの」
「何を?」
「父様の事」
今まで、グリーズという個人を何も理解してなかった。
無表情で。口数が少なくて。何を考えているか分からない。
リオをレイプした鬼畜かと思ったら、アネモネのネーアをこの場まで案内してくれた。
リオを陵辱した父が、本当の父なのか。
それとも――
224 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:19:41 ID:Q2wLCt6z
『違わないわよ。あの人、ちゃんと優しいところもあるもの。
病気だって分かった時、真っ先に様子を見に来てくれたしね。
週に一度はお見舞いに来てくれるし。不器用だけなのよ』
リオの母、リシュテアが遺してくれた言葉を思い出す。
彼女が言った通り、グリーズは不器用なだけで、優しい人間なのだろうか。
結局どちらが本当の彼なのかは分からない。
だが、一つだけはっきりしている事が分かる。
彼は今、リオとの戦いを愉しんでいる。
「攻撃が単調だ。そんな事ではすぐに裏をかかれる」
「うるさいっ! じゃあ、こうだっ」
ブレードによる斬撃に混じり、不意に赤い爪による射撃攻撃が放たれた。
だがそれも読まれていたのかグリーズが二本の剣で弾き、防御している。
「攻撃のバリエーションを増やすのはいい。だが、決定打にはならんな」
「くぅっ…!」
グリーズとリオが切り結ぶ度に彼は何かしらのアドバイスを与えているようだった。
そしてリオも彼の言葉を覚え、学習し、急激に成長しているのだ。戦士として。
グリーズは、そうして成長しているリオと戦う事を、愉しんでいるように見える。
(そういえば、私も、父様に剣を教えてもらった時は、こんな感じだった)
足りない所、至らない所を淡々と指摘される。
そして体が間違いを直すまで何度も何度も同じ訓練が繰り返される。
当時のマリオンはそんなグリーズに優しさは感じる事は無かったが……
(父様…嬉しそう…?)
リオと切り結ぶグリーズはかつて無いほど口数が多い。
それにリオの繰り出す攻撃や挙動に微かだが表情を動かしている。
笑みの形に。
「くっ、正面からじゃっ」
「来ないのか? ならばこちらから行くぞ」
距離を取ったリオを追いかけるようにグリーズが踏み込む。
リオは二本のブレードで迎撃しょうとするが――
ぎんっ! ぎんっ、ぎぃんっ!
一回、二回、三回と、剣を交える毎に小さな体が後退する。
グリーズのから放たれる斬撃は一発一発が重く、速い。
それを二本の腕からあらゆる角度、速度で放たれるのだ。
緩急のついたその連撃はまさしく電光石火。
赤い刃と交わる度に火花を散らし、悪魔の細腕を跳ね上げる。
「このっ…はなれろぉ!!」
ばしゅう!
悪魔がグリーズ目掛けて魔力を放射した。
黒い霧は赤い鎧の防御効果によりすぐに霧散した。
「目眩ましか」
グリーズの言葉のすぐ後に赤い凶弾が彼を貫こうと飛来する。
それをあっさりと二刀で弾き飛ばした。
「……ほう。魔力の放射を目眩ましと移動に使うか。成る程、線がいい」
ほらまただ。
リオのアクションに対して、グリーズが僅かに微笑んだ気がした。
彼は、リオと決闘している――のではないのだろう。
恐らく、稽古をつけているつもりなのだ。
「リオよ。気付いただろう。戦いには――人には間合いというものがある。
個人の力を最大限に発揮出来る距離だ。
このワシと正面から切り結ぼうなどと、愚の骨頂と言えよう」
「……みたいですね」
225 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:21:29 ID:Q2wLCt6z
「逆に、貴様にはそれが無い。
戦い方に幅はあっても、自分を活かせる間合いが無い。
一対一の戦いにおいては。
相手の間合いに入らず、いかに自分の間合いで戦うかが勝利の鍵となる。
リオよ。先ずは、自分の間合いを見つけろ……でなければ死ぬだけだ」
「敵に塩を送っているのですか? …余裕ですね、父様?」
「…そうでもない」
(あ、笑ったっ)
自嘲気味に言った彼は、確かに笑っていた。
慣れない顔の筋肉を引き攣らせて、子供が見たら泣きそうな顔だったけど。
実の娘との決闘の最中、剣神と謳われた男は人間らしい、笑みを浮かべていた。
「父様、今笑ってたっ?」
「…みたいね…なんか、あの人、想像していたのとはイメージ違うわねぇ。
本当にリオをレイプした人と同一人物なのかしら?」
(それはこっちが聞きたい)
だが真実は当人達しか知らない事だ。
自分達には、この戦いを見届ける事しか出来ない。
勿論、リオが危機的状況に陥るような事になれば割り込むつもりだが。
グリーズの表情を見ていれば、彼は間違っても娘を殺すような事は無いと確信できた。
***
(良くぞ、ここまで成長した)
射出された赤い爪を弾き飛ばしながらグリーズは感嘆していた。
リオが居なくなった時は本気で心配したものだ。
あの体で森にでも入ったら命は無い。
だが妻であるドルキを蔑ろにも出来なかった。
自分を慕い、これまで背中を預け、子を産み、そして共に歩んで来た伴侶。
周りが見えなくなる時もあるが、彼女を愛しているのもまた事実なのだ。
そのドルキが、愛人であるリシュテアを憎む理由も分かる。
そしてその娘を憎む理由も。
何より母子揃ってグリーズと交わったのだ。
ドルキにしてみれば寝取られたようなものなのだろう。
彼女には悪い事をした。
それはリオにも言える。
かつてリシュテアと交わった時の様に鬼畜のように責め立ててしまった。
慙愧の念に駆られながら、それでもリオを求めて止まなかった。
娘の瞳が。香りが。その髪までも。
リシュテアの面影を強く遺していたせいで、歯止めが利かなかったのだ。
「ふっ、シャアァァッ!!」
魔力の放射を利用し、リオが急激に間合いを詰める。
振りかざされた赤い凶刃を受け止め、流れのまま受け流す。
勢い余った娘の体は僅かに離れた地面へと吹き飛び、すぐに体勢を整え着地した。
娘は傷付いただろう。
心も、体も。
だがそうやって彼女を傷つける事が、彼女を屋敷に置く為の理由にもなったのだ。
剣も魔法も使えないのだからせめて夜伽の相手だけでも勤めろ、と。
そんな言い訳を続けて、ドルキと、リオの二人をずっと苦しめてきた。
だからリオの行方不明は他言無用で、信頼出来る門下生だけに娘の捜索を依頼した。
ドルキの精神的負担も考え、何らかの形でリビディスタからは出て行ってもらおう。
そう考え、準備していた矢先の事なので素早く対応する事も出来た。
事が上手く運べば、ドルキの精神も安定する。
リオは隣町の娼館『セイレン』に引き渡される予定だった。
226 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:22:45 ID:Q2wLCt6z
『セイレン』はリシュテアの勤めていた店で、今も営業を続けている。
店にはリシュテアに好意的なスタッフが何人も居る。
彼女達はリシュテアの忘れ形見であるリオの到着を心待ちにしている筈だった。
(それがまさか、アネモネに拾われるとはな)
再びリオが突貫してくる。
学習が早い。正面に立っての切り合いはめっきり減ってしまった。
今ではこうやって着かず離れずの距離から一撃離脱の戦術を取っていた。
これがモンスターリオの『間合い』らしい。
悪魔の飛行能力。ネコマタの俊敏さ。
それに魔力放射による急速移動を使い、縦横無尽に駆け回る。
目で追い切れない事は無いが、中々速い。
腕利きの門下生でも捉えるのは難しいだろう。
「しゃあっ!!」
ぎいんっ! ぎいんっ!
息をつく暇も無くリオのヒット&アウェイが続く。
勘を掴んできたのか回数を重ねる毎に速さと一撃の重みが増してきた。
この鎧には魔力遮断の効果以外に、筋力強化や、体力増強の効果をも持つ。
先程から人外の力と真っ向から切り合い、力で押し勝っている事にはそういう理由がある。
だが、それにも限度はあるのだ。
戦い方を徐々に学び、急激に強さを増していくリオに、段々と手加減する余裕が無くなる。
(…流石に堪えるな。歳には勝てんか)
そうだ。ネーアと名乗ったアネモネ。
彼女はどことなくリシュテアと似ていた。
顔の形も、声も、髪も、何もかも違うが、纏っている空気、というか雰囲気が似ていた。
モンスターの分際で人間臭く、他人の世話を焼きたがる不思議な女だった。
リオにアドニスの種子を植え付け、悪魔へと堕とした張本人でもあるらしい。
だが、それが魔物の凶暴性に任せて行った事ではないのだろう。
それは人間的な優しさや思考の末の選択であったと理解出来る。
(クロトの身の安全。屋敷までの連れ添い。リオの説得、か)
リオの居場所を聞き出すのに求められた条件だ。
街の領主である自分に対し臆さず、よくもまあこうも傲慢に物を頼んだものだ。
その厚かましさもリシュテアそっくりだった。
だからだろう。周りの門下生達の声もろくに聞かずに、ネーアの言葉に従ってしまった。
説得が失敗したのも、仕方が無い。
今のリオは心までもが魔へと堕ちてしまっている。
聞く耳など有って無いようなものだ。
それに、
(説得が成功していたら。こうして一戦交わる事も無かったか)
襲い掛かるリオの攻撃を受け流そうと剣を走らせ、
同時に悪魔がその軌道を大きく変えた。
「っ!?」
(魔力噴射かっ)
矢のように一直線に伸びてきたブレードの突き。
それが交差する直前でリオが横へと魔力を噴射した。
只の突きが、体を回転させながらの斬撃へと一瞬で切り替わり、反応が僅かに遅れる。
ぎいぃんっ!
二人の影が交差し、リオが地面へと着地する。
「…これでも、駄目なんだ」
「いや、危なかった」
227 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:23:58 ID:Q2wLCt6z
鎧の左わき腹部分がばっくりと切り裂かれている。
反応が遅れた分、ブレードが鎧を掠ったのだ。
対魔力防御も兼ねた鎧がこうも易々と破壊されるのだから直撃を受ければ只では済まない。
(本当に、良くもここまで強くなったものだ)
行方不明になってから一日と経たない内に非力な少女は立派な戦士になっていた。
魔物になった影響も少なくはないだろう。
だが咄嗟の機転や、飲み込みの速さ、それに戦いのセンス。
それらは魔物になっただけでは身につかないものだ。
あえて言うなら、それらは生まれ持ったリオの才能。
(お前は、本当に、ワシの娘なのだな)
健康な体で育っていれば、今頃立派な戦士になっていたかもしれない。
それも、詮無い事か。
(そろそろ、潮時か)
深呼吸をし、高鳴る心臓を落ち着かせる。
反応が遅れたのは不意を突かれた事だけが原因ではない。
疲労が溜まってきたからだ。
(血湧き肉踊るが…年寄りには少し堪えるな)
リオと戦う前から魔物を迎撃していたのだ。
鎧の力を差し引いても、体力が持たない。
それを悟られないように立ち振る舞っては来たが所詮はやせ我慢。
「もう、終わりにするか」
ひびの入った二本の曲刀を地面に突き刺し、新たな剣を呼び出す。
オーソドックスな、両刃の剣だ。
決闘も終局を迎えようとするこのタイミングで使うのだから、勿論考えがある。
切り結ぶ度に少しずつ移動し、今では二人とも玄関前の広場に居るのだ。
ここには、地面に突き刺さったままのムラマサが存在する。
耐魔力効果を持った異国の名剣。
物理攻撃の殆どを、魔力で生成した刃に頼るリオにとってこれは天敵。
だがムラマサを使っていたのは最初だけだ。
時間も経ち、一度手放した武器を使い回されるとは思うまい。
だが刀に向かって一目散に向かえばリオもその意図に気付いてしまうだろう。
それでは意味が無い。
「…父様?」
「少し名残惜しいが…楽しかったぞ」
言ってから自分でも驚く。が、さもありなん。
戦う事しか出来ない根っからの武人が、娘と対等に渡り合ってきたのだ。
あの、リビディスタの汚点とまで言われてきたリオが、剣神である自分と、である。
嬉しいに、決まっていた。
娘の成長を誇りに思う。
「…え…?」
案の定というか、リオは呆気に取られた顔をしていた。
殺し合いの最中、敵から掛けられた言葉はアドバイスでもなんでもない。
毒気が抜ける――とまではいかないものの、人間らしい言葉に困惑しているようだった。
(だがそれでは困るな)
「行くぞ。リオ」
まだだ。まだ伸びる筈だ。
生まれ持つ天賦の才を、この目に見せてみろ。
「最後の教訓だ。利用出来る物は何でも利用しろ」
無論、それは人質を取る、という意味では無い。
遮蔽物や地面に落ちている武器となり得る物。
地形や敵の携帯物など、戦場に常に目を見張り、利用しろという事だ。
転移させた剣を大地へと突き立てた。
ずんっ!!
同時に大地が鳴った。
地鳴りと共に足元が揺れ――突如石畳の床をめくり上げて、大地が隆起した。
ずどんっ!! ずどんっ!!
228 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:25:35 ID:Q2wLCt6z
「っ!?」
リオの足元から、その小さな体をミンチにしようと大地が襲う。
隆起した地面の先は尖り、直撃すれば風穴が開いてしまう。
リオはそれを嫌がり、後方へと下がった。
その隙を見逃さず、ムラマサの元へと走り、回収する。
隆起した地面が視界を塞いでおり、リオからは見えなかっただろう。
大地の隆起は一瞬で元に戻る。
美しい広場を滅茶苦茶に破壊した岩の槍は崩れ、砂塵となって視界を殺す。
グリーズはその中に踏み込んだ。
ムラマサを鞘に納刀し、いつでも居合いを放てるようにする。
同時に黒い霧が吹き付けてきた。
間合いを詰めるこちらに対する牽制なのだろう。
構わない。このまま突っ込んで、
黒い霧の中に、爛々と光る猫目を見た気がした。
打ち合うつもりなのだろう。
視界が悪いなら人外の瞳を持つ方が有利と踏んだのか。
それもいい、だが賭けはこちらの勝ちだ。
ぶうんっ。
黒い霧の中、旋風が巻き起こる。
(そういえば、ブレードの光が見えんな)
構わず鞘から白刃を滑らせて、
眼前から鉄板とも言うべき巨大な剣が振り下ろされた。
「っ!?」
反射的に居合いの角度をずらす。
本来ならば真横一文字に『切り裂く』太刀筋を、斜め下へと『受け流す』太刀筋へ。
だが、
ぎぃんっ!
圧倒的な質量の前に、あっけなくムラマサが粉砕された。
当たり前だ。どれだけ技術が高くとも、刀で鉄板は切れない。
(ワシの剣を使うか…っ)
ずがぁんっ!!
リオの身の丈の倍以上がある大剣が、地面を粉砕し、土と石をばら撒く。
剣の軌道を逸らしたお陰で体への直撃は防いだが、腕に激痛が走っていた。
骨にひびでも入ったか。
それでもリオは容赦しない。
地面を穿つ大剣を引き抜き、振りかぶり、
「うああぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
横薙ぎの一撃が襲い掛かる。
回避は無理だ。リーチが長すぎてかわし切れない。
両手に剣を転移。
それを交差した瞬間、体が粉々になるような衝撃が走った。
***
「うああぁぁぁぁぁっっ!!」
ぎぃいぃんっ!!
返す刀がグリーズの体を弾き飛ばした。
防御の為に交差した二本の剣を粉砕し、赤い鎧の胸部を砕く。
決まったか?
229 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:26:30 ID:Q2wLCt6z
咄嗟の思い付きだった。
利用出来る物は何でも利用しろ。
その言葉にグリーズが使った規格外の大剣を使おうと思ったのだ。
大地の隆起により互いの視界が塞がれた時。
魔力を鎖状へと変換し、中庭に突き刺さったままの大剣を絡め取り、手元へと引き寄せた。
魔力の霧を放射すれば向こうの視界を更に封じる事が出来る。
結果、グリーズに読み勝つ事が出来た。
向こうがあの刀を使わなければ、また少し違った結果になるかもしれなかったが。
兎も角これで終わりだ。
あのダメージではいくらグリーズと言えども――
(…いや、まだっ)
赤い鎧を纏った英雄は無様に地面に倒れる事無く着地した。
顔を上げたグリーズの目から戦意は消えていない。
鋭い眼光が、未だに負けを認めないようにこちらを見据えている。
(だったらっ)
大剣を放り投げ、両手にブレードを形成する。
ダメージも与えた。動きも鈍っている。
もう、彼との戦力差は殆ど無い筈だ。
「父様あぁぁぁっ!!」
何の策も無しに突っ込む。
ブレードへ魔力を惜しみなく注ぎ込み、赤い刃を最強の剣へと変える。
対してグリーズも両手に再び剣を転移させ、こちらへと果敢に踏み込んできた。
疲労を感じさせない獅子奮迅の勢いだ。
青い瞳が、殺気すら放ち、こちらを睨みつける。
(容赦はしませんっ!)
背中から魔力を噴射、後方へとGが掛かり急加速する。
地から脚が離れ、悪魔の体はまるで矢のようにグリーズへと突貫した。
瞬く間に、二人の距離が縮まっていく。
その中で、リオは次の手を既に考えていた。
この突進で終わるとは思っていない。きっと回避されるだろう。
だが魔力噴射を利用して再突撃を仕掛ける。
グリーズはもうこちらの速さに対応し切れない。
当たるまで、何度でも何度でも突撃してやる。
「ああぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
眼前のグリーズを見据える。
彼はこちらを迎撃しようと脚を止め、両手に持った二本の剣を振りかぶった。
ぎりぎりのタイミングだ。
向こうが捨て身の覚悟で切り替えして来れば、こちらも只では済まない。
グリーズを倒しても、この後リビディスタの門下生達とも戦わなければならないのだ。
体力を少しでも温存しておく必要がある。それは分かっているのだが。
(構うもんかっ)
後の事なんて考えていられない。
だって、こんなにも『楽しいのだ』。
あの父との戦いが。血湧き肉踊る死闘が。
それを無下に出来る訳が無い。
手を抜く事も、尻尾を巻いて逃げる事も、打算で戦う事もありえない。
自分の出せる力を全て使い、敵を倒す。それが、快感なのだ。
だから後先の事など考えない。
今は目の前の敵を、鼻先まで迫った父親を倒し、
『少し名残惜しいが…楽しかったぞ』
230 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:27:55 ID:Q2wLCt6z
(あ…何で、)
このタイミングで、雑念が。
先程のグリーズの言葉が、微笑が、脳内でリフレインされ、動きが僅かに鈍る。
だがコンマ何秒の時間すら、この戦いでは致命的だ。
ほら、グリーズの剣が今にも、この体を叩き切ろうと振り抜かれ――
――無い。
彼は剣を振りかぶったままで、こちらに攻撃してこない。
まるで時が止まったかのようにその体は硬直したままで、
直後に、赤い凶刃が深々とグリーズの腹へと突き刺さった。
突進の勢いのまま、彼を刺してしまった。
『…それでいい』
鎧を貫通した腕から、グリーズの思考が伝わって来た。
『最後の最後で油断したな……危うく切ってしまう所だった』
(…え?)
危うく、切ってしまう? 何だそれは。
まるで、最初から殺す気が無かったような言い方ではないか。
(…まさか、さっきの)
こちらの隙を狙って攻撃しなかったのは、ワザとなのか。
「…どうして…?」
ブレードを解除する。これはもう必要ない。
こちらの勝ちだ。
ただ、この勝利はおそらく『最初から約束された』ものなのだろう。
グリーズと視線が交わった。
さっきまで殺気を纏わりつかせていた戦士のそれとは違う。
彼は、穏やかな――そう。父親の顔をしていた。
『気付いたか…流石、リシュテアの娘だな……勘がいい』
「そんなの誰でも気付きます! 母様の娘だとかそんなの関係無い!
卑怯ですっ! 父様っ、ワザと負けるだなんてっ、そんなの納得出来ません!」
『……そうか…心が読めるのか…鎧が無ければ、ワシは最初から負けていたな』
「そ、そんな事、やってみないと、」
びしゃり。
「きゃっ!?」
唐突に、顔面に熱い何かが吹き付けられた。
目には入らなかったものの開いた左手で目元を拭う。
そして再び目を開いた時、視界が真っ赤に染まっていた。
グリーズの血だ。
「…あ…ああぁぁぁっ…!?」
(わ、わたし、なんで、こんなっ)
戦いの興奮が冷め、人間的な感情が蘇る。
(死んじゃうっ、父様が死んじゃうっ)
慌てて腕を引き抜く。
げぼっ、と血の塊が再びグリーズの口から零れ、黒いスカートを赤く染めた。
「父様、父様っ」
呼びかけると返事の代わりに掌を握られた。
豆だらけの大きな手。
昨日までは、この手は幼い体を叩き、蹂躙するものだと思っていた。
だが今は…違う。
温もりを感じるのだ。彼の穏やかな心と共に。
『喋らなくてもいい、というのは便利なものだな……
勝負は、お前の勝ちだ……リオよ…』
231 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:29:22 ID:Q2wLCt6z
「そ、そんな事、」
『どうした…? もっと喜べ…仮にもワシに勝ったのだ…誇ってもいい』
「そんなの…っ、そんなのどうだっていいですっ!
確かに、父様と戦っている時、少し楽しかったっ!
でも、私、父様の命まで、欲しくなんか無いっ!」
そうだ。
ドルキに復讐する事も大切だ。これはいまでも変わらない。
でもそれとは別に、もう一つささやかな願いを持っている事に今更気付いた。
「私、父様にもっと甘えたかった!」
自分には母親は居ないが、父親なら居る。
ならその男に甘えれば良かったのだと気付いたのだ。
「エッチな事も、剣の修行でも、何だってやります!
でも、その分だけ、私に甘えさせて下さいっ。
一緒に、ご飯を食べたり、一緒に本を読んだりっ…!
そんな当たり前の事で良いんですっ!
ちゃんと、私の『お父さん』をして下さいっ!!」
悲痛な声が、広場に響き渡った。
『…すまん。駄目な父親だったな』
そっと、血に濡れたグリーズの右手が頬を触る。
熱い血潮が左の頬へと塗りたくられると、それを離すまいと上から押さえつけた。
『以前写真で見せてもらった事がある……
幼い日のリシュテアとそっくりだ…』
「だったらっ、私に、もっと母様の事、教えて下さいっ!
私っ、何も知らないんですっ!
母様の顔もっ、声もっ、好きな物とかっ、嫌いな物とかっ…
全部、全部教えてくださいよっ!
父様、剣神なんでしょう!? 英雄なんでしょう!?
こんな事で、死にませんよねっ!?」
自分でも無茶な事を言っているのは分かっている。
だがネコマタの眼が、彼から大量の血液と共に精気が抜け落ちていくのを捉えるのだ。
『無茶な事を言う…そんなところまで…あいつに似たのか?』
ふ、と口の端から血を流したままグリーズが不器用に微笑んだ。
穏やかなブルーの瞳に、少女の顔が映っている。
猫耳を生やした悪魔の瞳は、青と赤の猫眼だ。
父と同じ、ブルーの右目だ。
『やはり、お前はワシの娘だよ…愛しい……我が子……よ……』
彼の手から力が抜ける。
抜ける空のような瞳から徐々に意思の光が消えていく。
グリーズから、命の火が消える。
「…あ、ヤダ…っ、死んじゃ嫌ですっ! 父様っ、父様ぁっっ!!」
「……リオ、退いて」
瀕死のグリーズに泣き付く所を、背中から引っ張られた。
232 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:31:14 ID:Q2wLCt6z
振り向くと、強張った表情をしたマリオンが立っている。
「…姉様…っ、父様がっ、父様がっ」
「分かってる」
マリオンがグリーズを治癒しようと試みる。
回復を意味する白い魔術陣がグリーズの体を取り囲み、淡い光で包み始めた。
春の木漏れ日を連想させる暖かな光が、グリーズの腹に開いた傷を徐々に塞いでいく。
「ほら!! アンタ達も回復魔術が使えるでしょうっ!! 何をぐずぐずしているの!?
この人はアンタ達の大将でしょうが! 死んじゃってもいいの!?」
遠巻きに見ていたネーアが、何時の間にか眼を覚ましていた門下生達に檄を飛ばす。
治癒専門の魔術士達が顔を見合わせると、事態の深刻さに気付きグリーズへと駆け寄った。
白い魔術陣が一つ二つと数を増やし、グリーズの全身を眩い光が包み込む。
しかし何重にも治癒魔術が発動しているにも関わらず、彼の顔は土気色のままだ。
血が足りない。傷が塞がっても、それでは意味が無いのだ。
そしてそれを理解しているのだろう。
門下生達の諦めに似た表情を浮かべたいた。
『こんなの無理よ…』
『駄目、助からない…』
『この化け物のせいだ…』
『グリーズ様が…グリーズ様が…っ』
彼女達の絶望の声が聞こえる。
口に出さなくても、心の中では諦めていているのだ。
そして誰のせいで剣神と呼ばれた男が生死を彷徨っているのか。
彼が死んだら怒りの矛先を誰に向ければいいのか。
密かに叩き付けられる憎悪を敏感に感じ取って、リオはすっかり萎縮してしまった。
だがその中で、マリオンだけは希望を捨てていなかった。
『絶対助ける』
無駄だと分かっていても治癒魔術を止める気配は無い。
『本当に、不器用なんだから。
私ちゃんと分かった。父様、最初からリオを殺す気なんて無かった。
ずっと手を抜いて戦ってた。馬鹿。甲斐性無し。鬼。鬼畜っ』
「さっさと眼を覚ませこの駄目オヤジっ!」
悲鳴同然に叫んだマリオンの瞳にも薄っすらと涙が浮かんでいた。
「リオに謝って! 眼を覚ましてっ、酷い事して済まなかった、って! 謝るのっ!
死ぬならそれから死ねばいいっ! この子の事も、考えてっ」
俯き、喚き散らすマリオンの姿は普段の彼女から想像出来ない。
生の感情を剥き出しにした彼女の姿に、門下生達も、リオも唖然としてしまう。
「マリオン様…お気持ちは分かりますが…」
「もう、無理です…私達の手には、負えません…」
「そんな事、無いっ、父様はっ」
「治癒魔術だって万能じゃないんですっ。
傷を塞ぐくらいがせいぜいで、死人を生き返らす事は勿論、致命傷だって治せないっ。
そんなのマリオン様でもご存知でしょうっ?」
例えるなら水が注がれたグラスが割れたとする。
治癒魔術は割れたグラスを直す事は出来るが、零れてしまった水はそのままなのだ。
「それじゃあ、『中身』を戻せばいいのね?」
何時の間にか近付いていたネーアが女の魔術士に問いかける。
「それが出来たら苦労しませんっ! 大体貴方達魔物が攻めて来たから、」
「罪を償えって言うなら、後でいくらでも償ってあげるわ。
でも、今はまだ出来る事があるでしょう?」
「そんな事っあるわけ、」
「あるわよ? 血が足りないなら、家族から貰えばいいじゃない。
幸い、血の繋がった娘さんがここには二人も居るわ」
言ってネーアはリオをマリオンを見詰め、ウィンクを一つ。
(あ、そうか…)
ネーアの試みを読み取り、リオは僅かに顔をほころばせた。
まだ、絶望するには早い。
233 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:32:34 ID:Q2wLCt6z
ネーアが触手を一本伸ばし、マリオンへと向ける。
その先端からは、注射器のような細い針が生え出していた。
「マリオン。腕を出して。血を抜くわ」
「…分かった」
「正気ですか!? ろくな設備も無いのに、輸血作業をっ!?」
「しかも魔物の手を借りるなんて、信じられませんっ」
「他に方法があるの?」
「それは…っ、でもっ」
「無いなら黙って見てて」
「――もういいかしら?」
ネーアの問い掛けにマリオンが頷く。
グローブを外して剥き出しになった細腕に、細い針が突き刺さった。
「失敗したら今度は縦に真っ二つにするから」
「馬鹿にしないでよね。あたしを誰だと思ってるの」
(…ネーアさんに姉様、何時の間にかとっても仲良しになってる)
自分が見ていない所で何かあったのだろう。
事が終わればそれも聞いてみたいと思った。
「――はい終わり。ほら、次はリオの番よ」
「はい。お願いしますネーアさん」
「貴女はあたしから散々魔力を吸ったからね。その分多めに血取るわよ」
返事をする前に針が刺さった。
僅かな痛みと共に、血液が抜き取られていく。
十秒か二十秒か、その待っている時間がもどかしい。
「――よし。こんなものね――どう、リオ? 辛くない?」
「大丈夫です。もっと取っても良かったくらいです」
「体力は温存しておきなさい。じゃないと――
眼を覚ましたお父さんに、元気な笑顔を見せられないでしょ?」
「あ、はいっ」
だが、楽観も出来ない。
いくら血の繋がった家族とは言え素人のする輸血など分の悪い賭けでしかないのだ。
拒否反応が出ればその場で終わりである。
リオはネーアが作業しやすいようにグリーズの腕からガントレットを外す。
「ありがと」
全員が固唾を呑んで見守る中、触手の針がグリーズの腕へと突き刺さった。
今、彼の中に娘二人の血液が静かに注入されている。
(父様…っ)
ごつごつとした腕を両手で握り締める。
人外の瞳が、自分と姉の血が僅かな精気を運んで父の体内へと流れ込んでいるのを見た。
「拒絶反応は、無いようね」
ネーアの言葉に一同が緊張と共に大きく息を吐き出した。
輸血自体は無事成功と言ったところか。
ネーアが体内で二人の血液を弄繰り回してグリーズの血と混じり易くしたらしい。
つくづくアネモネとは便利な体だ。
(でも、駄目…)
顔色は少し良くなった気がするが彼の体には生命力が――精気が足りていない。
「……グリーズ様、いつ目を覚ますんですか?」
「…さぁ、そればっかりは分からないわ。そもそもあたしは医者じゃないし。
まあ、色々やる事はやってるから人体には少し詳しいけどね?」
「そんな無責任なっ」
「死亡が確定するよりかはマシでしょう?」
「だまれアネモネ! 無様に生き恥を晒すくらいなら死んだ方がましだ!」
ほんとここは馬鹿ばっかりね――そんな呟きがネーアから聞こえた気がした。
「あんた達ねぇ…死にたがりもたいがいにしなさいよ?
人間の生存本能はどこに置いて来、」
「――グリーズ様、心臓止まってる」
女の魔術士の呟きに、周囲の人間が硬直した。
234 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:33:56 ID:Q2wLCt6z
「…嘘でしょ?」
「謀ったな魔物めっ!! もう容赦はせんっ!」
「グリーズ様の弔い合戦だ!」
周りの門下生達が次々と剣を引き抜く。
彼らの瞳には例外無く憎悪が浮かび上がり、二匹の魔物へと殺気を漲らせる。
「ちょ、ちょっと早まらないのっ! 心臓止まってるならまた動かせばいいじゃない!
電気ショックとかあるでしょっ!?」
「黙れっ! これ以上、グリーズ様の体を穢させてなるものかぁっ!!」
「うわっもう、しょうがないわねぇ! この馬鹿どもはっ」
何人かの門下生達がネーアに向かって切り掛かって来る。
「っ!? 皆止めてっ! このアネモネは敵じゃないっ」
「マリオン様の頼みでもそれは聞けませんっ」
「大体そのアネモネはグリーズ様を殺した悪魔の仲間だっ」
いがみ合い、剣先を突きつける門下生達をリオは他人事のように見ていた。
(どうして、皆そんなに怒っているの?)
グリーズは助けられるというのに。
「ちょっと退いて下さい」
「えっ、あのっ」
隣に座る女魔術士を強引に引き剥がし、グリーズへと密着する。
「な、何をする気よっ」
女達の声を無視し、グリーズの頬に手を這わす。
蓄えられた立派な髭。
皺ばかりの顔。
分厚い眉や、ごわごわのブロンドの髪を撫でる。
瞳を閉じた彼の顔は、とても愛しかった。
「父様…」
瞳を閉じ、グリーズの顔へと唇を寄せる。
ネコマタが精気を吸う事が出来るなら。
精気を分け与える事も出来る筈だ。
パセットや彼女の同僚達に魔力を分け与えたように、自分の精気をグリーズに注げばいい。
(私が、絶対救ってみせます)
そうして、リオは最愛の父親に口付けをした。
***
最初に視界に飛び込んできたのは愛する娘の顔だった。
猫耳を生やし、牙を生やし、オッドアイも獣のそれとなっているが、関係ない。
「父様ぁ…っ」
抱きついてくる娘を反射的に受け止める。
恐る恐る、その桃色の髪に触れてみると、あいつの髪と同じ感触がした。
(これは夢、か?)
死んだと、思ったのだが。
娘に勝ちを譲り、腹に大穴を空けられた。致命傷だった筈だが。
「ふふふ。ネーアさんが治してくれたんですよ」
(…そうか、生き長らえたか…)
それも、いいだろう。
娘に行った数々の行い、それらを死んで償おうと思ったのだが。
「そんな簡単に、死なないで下さい。
私、まだまだ父様としたい事が一杯あるんです」
泣き笑いの表情を浮かべる愛娘の顔を見て、まだまだ死ねないなと思った。
235 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:35:06 ID:Q2wLCt6z
体を起こし、周りを見渡すとドルキの門下生達が四名ほど、心配げな表情を浮かべている。
(心配を掛けたようだな)
「ワシに構うな。大事無い」
「ほ、本当に大丈夫なのですかっ?」
「大丈夫だと言っている」
むしろリオと戦う前より元気になったのではないだろうか。
体中から力が湧き出してくるようだ。
(それに、ゆっくりと寝てはおられんようだからな)
リオの体をそっと押しやり、二本の脚でしっかりと立ち上がる。
その姿を見て数人の門下生達が狐に摘まれたような顔をした。
だが復活したグリーズに気付かずネーアに、あるいはマリオンにさえ剣を向ける者が居る。
グリーズはそれを憤慨に思いながら大きく息を吸い込んで、
「全員ッ、剣を収めよッッ!!!!」
鼓膜をつんざく大音量で声を張り上げた。
その様相は正に鶴の一声。
殺気立っていた門下生達の動きがぴたりと止まると、一様にグリーズへと視線を向ける。
「グリーズ様っ!?」
「そ、そんなまさかっ」
露骨に浮き足立つ教え子達を見て嘆かわしく思う。
実戦では何が起こるか分からない。常に冷静に対処しろと常日頃から教えているのだが。
「二度は言わんぞ…!」
仏頂面に怒気を孕ませ、門下生達を睨み付ける。
それで殆どの門下生達は渋々と剣を収めていった。
「納得出来ませんっ!」
ところが一人、無謀にもグリーズに食って掛かる者が居た。
「マリオン様は兎も角っ、この二匹は街に侵入した魔物の一味ですよ!?
ドルキ様に手傷を負わせ、あまつさえ貴方にも重症を負わせた!
そんな化け物を野放しに、」
「今、化け物と言ったか?」
ひっ、と食って掛かった男が息を呑んだ。
グリーズが発する、殺気さえ孕んだ怒りを感じて、腰が引ける。
「このワシの娘と、命の恩人向かって、貴様は化け物と言ったのかっ?」
「あ、あぁぁ…っ」
グリーズに睨み付けられた男は哀れにも恐怖に足を竦ませ、歯をガチガチと鳴らしている。
蛇に睨まれた蛙の気持ちが少しでも分かっただろうか。
「だが、貴様の言う事も一理ある。
リビディスタの戦士として、魔物を倒す事は至極真っ当な判断と言えよう。
故に、チャンスをやる」
右手から魔術陣を展開。
青く発光するそれから、屋敷の地下に安置された宝物庫から剣を転移させる。
魔術陣から生え出すように出現したのは大きな剣だ。
リオに利用された物に比べれば一回りも二回りも小さい。
それはツヴァイハンダーと呼ばれる騎乗兵を倒す為に造られた両手持ちの大剣だ。
「リビディスタの戦士なら、その強さを以って己の正しさを証明してみせよ」
ざしっ…!
両手で剣を地面へと突き刺し、眼前の男を見据える。
236 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:36:37 ID:Q2wLCt6z
グリーズの背後はリオとの戦闘で使われた愛剣が何本も突き刺さっていた。
今の彼の姿は剣神アレスのレリーフそのままの姿だ。
その威風堂々とした姿にリオやネーアを含め、全ての人間が言葉を忘れて見入り――
「…も、申し訳ありません…っ」
グリーズに楯突いた男は震える手で、剣を収めた。
***
そのおよそ五時間後。
街に侵入した魔物と、結界の外に集結していた魔物をリビディスタの戦士達が撃退した。
ドルキの激励が効いていたのか、門下生達の活躍振りは目覚ましいものだった。
死人はおろか、怪我人も殆ど出なかったのだ。
意気揚々と凱旋する彼らを街の住民達は大手を振って喜び、喝采した。
奇跡的にも街の住民達にも殆ど被害は出ていない。
せいぜい民家がいくつか潰されたくらいだ。
今回の騒動で最も深手を負ったのはグリーズとドルキの二人とも言える。
その二人も今ではすっかり傷を癒し、回復している。
リオ=リビディスタが行方不明になってからおよそ20時間。
街一つ丸々飲み込んだ盛大な親子喧嘩は一応の収束を見せた。
***
全てが上手くいった。そう思っていた。
でもそれは只の思い込みで、問題は何も解決していない。
リオの身も心も、未だに悪魔のまま、人間に戻る手段も無い。
父親との和解は済ませたが、こんな体では屋敷に戻る事も叶わない。
何より、母を殺した魔女を再び襲ってしまうかもしれない。
その時は、今度こそお互い無事では済まないだろう。
仮に、リオが屋敷に戻るとしてもだ。
ネーアとクロトが取り残された形になってしまう。
そんなのは嫌だった。
――そうか。答えは最初から決まっていたのだ。
「私、リビディスタを出ていきます」
かくして、リビディスタから末娘が姿を消した。
「――あれ…? リオッち?」
大切な友達を一人残したまま。
次回、永久の果肉最終回、
『ずっと一緒』
237 乙×風 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:37:58 ID:Q2wLCt6z
お疲れ様です。シリーズ本編は今回で終了。
後は大団円(?)目指して詰めるのみですね。
しかしドルキの虐待シーンはちょっとやりすぎたかな。
まあもっと懲らしめてやっても良かったですが。
バトルシーンもちと気合が入り過ぎましたか。
エロが無くてもちゃんと読んで頂いていれば作者冥利に尽きるんですが。さてさて。
その辺りの感想もお待ちしております。
宜しければ誤字脱字等のご指摘も合わせてお願いします。
次回はエピローグのみとなります。
そしてエピローグの次には後日談と称してエロオンリー話をやる予定です。
あれ? 予定より一話多くなってる? きっと気のせいですねw
尚次回はエチシーン入れる予定です。
メインキャラの中で約一名、まだ処女のオニャノコが居ますよね?
潔く散って貰いますw あの子だけ綺麗なままなのは不公平ですからw
それではまた来週お会いしましょう。
幼女万歳。
>>211様
すいません。ドルキのエロシーンとか無理です。作者的に。
設定が30代とかだったら若作りにしてまだまだエロもいけたと思いますが。
という訳で十三話投下です。
(エロ無し、暴力的表現有り、バトル多め、流血有り<微>、決着、ちと長いかも)
NGワードをお確かめ下さい。
エロが無いのはご容赦を。
前回に引き続きバトル多め、というかほぼ全編通してバトルです。
それでも、と思われる方はお読み下さい。
以下本編です。25レス程消費します。
213 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:03:37 ID:Q2wLCt6z
第十三話 愛憎劇―後編―
実の母親を殴り飛ばしたところで、マリオンは正気に戻った。
「…あ、やっちゃった」
『ドルキ様ーーっ!?』
外野がやいのやいのと慌てふためいている。
まあ、自慢の娘に問答無用で殴り倒されたのだから当然か。
しかしよくもまあこの程度の攻撃が通用したものだ。
魔女とか名乗っているが実は大した事無いのではないかと思ってしまう。
(母様、弱い)
当然だが。
不器用なマリオンが母親の気持ちに気付く事はなかった。
ドルキがどれだけマリオンに愛を注いでいたか。
汚らわしい腹違いの娘の存在もあればこそ、正当な血筋の末娘であるマリオンには手を掛けたのだ。
しかし、ドルキはそのマリオンに口汚い言葉で罵られ、あまつさえ攻撃された。
その時の動揺が彼女の判断を鈍らせ――今に至る。
だが殴った本人がドルキの愛情に気付いていないのだから、皮肉な話である。
「マリオン様、お退き下さい!」
周りの門下生達がドルキを取り囲み、回復魔術を掛け始める。
他にも貴女は正気か、だの、悪魔にたぶらかされてる、だの大変五月蝿い。
折角溜まったストレスを発散させたのにまたイライラしてしまう。
構っていたらキリが無いと判断し、突っかかってくる門下生達を取り合えず無視。
リオの元へと駆け寄った。
「……姉様…」
ドルキの拘束魔術から開放されたリオは呆然としながらこちらを見上げている。
鮮やかな桃色の髪は不自然な色をしながら伸び。
背中からは蝙蝠の翼。そして二本の尻尾。愛らしい猫耳。
それに卑猥なゴスロリ衣装を見ていると、彼女が人間でなくなってしまったと痛感する。
「――ほんとに、悪魔になったんだね」
「…っ」
びくり、と妹の体が震える。
(あ、しまった)
こちらを上目遣いで見上げる少女の目は捨て犬のそれと同じだ。
いや、この場合捨て猫か。いやいやそんな事はどうでもいい。
きっと人間を止めた事に少なからずコンプレックスを抱いている筈だ。
だというのに今の言い方は、ない。
(ほんと、私は喋るのがへたくそ)
自分の不器用っぷりが恨めしい。
「大丈夫。私はリオがどんな姿になっても、気にしない」
たとえ、いつかアネモネになってしまうとしても、妹は妹だ。
愛らしい猫目が、『両方とも血のような赤だとしても』、それは変わらない。
「っ……姉様ぁ…」
うるうると瞳を潤ませながら最愛の妹が見詰めてくる。
(う。可愛い)
二年も見ない間に随分と見違えてしまった気がする。
最後に見た時はもっと小さかった気がするが。
そんな事を思いながら改めて妹の姿を観察する。
(あの、でも、やっぱりその格好は、目のやり場に困る)
開いた胸元から明らかに自分より成長した膨らみが覗いている。
それに何だかいい匂いがしてきて――どきどきする。
そんなこちらの心中を察してか妹は微笑み、小さな口を開く。
「姉様、助けてくれてありがとう」
「と、当然の事、しただけ…」
クールぶっても、照れ隠しというのはバレバレなのだろう。
妹はくすくすと可笑しそうに笑ってから言葉を続けた。
214 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:05:13 ID:Q2wLCt6z
「お陰で義母様に止めを刺す事が出来ます」
一瞬、何を言ったのか理解できなかった。
そしてそれを理解する暇も無く、リオが先手を打った。
「『姉様はそこで見ていて下さい』」
赤い猫目が、魔力を放つ。
それはマリオンの精神を容易く侵蝕した。
体から力が抜け落ち、膝をついてしまう。
リオに対して心を開いていた為、チャームの影響を強く受けてしまった。
(……だめ、りお…)
妹の表情が豹変していた。
捨てられた小動物から、残虐な悪魔へと。
だが、靄の掛かったような意識の中、マリオンは彼女を見詰める事しか出来ない。
ゆっくりと立ち上がるリオに周りの門下生達が気付いた。
その直後にリオが力を解放する。
小さな体から黒い霧を噴き出し、周囲の人間達を制圧する。
黒い霧は彼女の魔力そのものであり、人間にとっては毒以外何物でもない。
それを吸い込んだ門下生達が、一人、また一人と膝を折っていく。
命に別状は無いが、行動を制限するだけなら十分だった。
「さあ、これで邪魔者は居なくなったかな♪」
リオは足取りも軽く、倒れ伏すドルキに元へと向かう。
腕を背に回し、恋人に会う少女のように笑顔を浮かべた悪魔は人畜無害そうに見えたが――
「さっきのお返し、しないとね♪」
スキップでもするようにリオはドルキに近付くと、
まるでボールでも蹴るように、親の体を蹴飛ばした。
どすっ、と肉を打つ音が響き、ドルキの体が宙を舞う。
悪夢を見ているようだった。
母親が植え込みの木の幹にぶつかり、地面に落ちる瞬間を呆然と見詰める事しか出来ない。
先程マリオン自らドルキに暴力を振るったが、あれは我を忘れていただけだ。
今、目の前で行われているのはもっと残虐的な行為。
「あはっ♪ 飛んだ飛んだー♪」
翼を広げ、悪魔がドルキを追いかける。
ドルキは地面で何度も咳を吐いた。
びしゃり、と音がして、地面に赤い液体が散る。
老体には過度の暴力だったのだ。このままでは本当に死んでしまう。
ところが淫魔は血反吐を吐いた女を見ても笑顔を絶やさない。
それどころか地面に倒れ伏したドルキに近付くと、ブロンドを鷲掴みにし、引き上げた。
「なーに? 義母様もう死にそうなの?
リオ、つまんなーい。もっと…遊んでよぉっ!!」
掴み上げたドルキの頭を地面に叩きつける。
加減はしたのだろう。地面に脳髄をぶちまけるような事は無かったのが救いだった。
だがマリオンに殴られた頬は青く腫れ上がっていた。
地面に叩きつけられた衝撃で鼻がひしゃげた。
更にぶちぶちと金髪が千切れ、ドルキの顔は見るも無残な事になっている。
「あははははっ!! 義母様変な顔ーーっ♪」
腹を抱えて笑い声を上げるリオ。
狂気を含んだ、少女の声に混じって、『助けて…』とドルキの懇願が聞こえた気がした。
「うにゃぁ? なーに? 聞こえなーい♪」
だが淫魔は許しを請うドルキに容赦しない。
じゃきん、と笑顔で爪を伸ばし、ドルキの頬にあてがう。
「ひ、あぁぁぁぁっっ!?」
ぎぎぎぎ、と顔面を横断する爪の感触にドルキが悲鳴を上げる。
無残だった顔が爪に引き裂かれ更に無残な事になった。
ドルキの悲鳴が余程良かったのか、リオは艶かしい吐息を漏らす。
215 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:06:42 ID:Q2wLCt6z
「はぁ…♪ はぁ…♪ 義母様の悲鳴…気持ちいい…♪
おマンコ、濡れちゃうよぉ…♪」
リオはドルキの血が付着した爪先にぞろり、と舌を這わせる。
「ねぇ? 義母様ぁ…♪ もっと、義母様の悲鳴をリオに聞かせてぇ…♪
義母様の絶望する声をリオに聞かせてぇ…♪ ねぇ、どうすればいい声で鳴くのぉ?
痛い事すればいい? それとも、そのお顔をもっとぐちょぐちょにすればいい?
――あ、そうだ! 両方同時にしよう!
目玉を抉り取るの! きっといい悲鳴で鳴いてくれるよね!?
あはっ――あははははははははははははっっっ!!!」
駄目だ。今のリオは、狂ってる。
彼女を救ったのは、間違いだったのだろうか。
他に何か、方法があったのだろうか。
このままでは、取り返しの付かない事になってしまう気がする。
ドルキを殺してしまったら、きっともうリオは戻って来ない。
その魂すら、完全に邪悪に染まり、人の心を忘れてしまうのだろう。
(私、また、リオを助けられない…)
マリオンの頬を涙が伝った。
悔しかった。リオの事を思って行動してきたこの十年余りの歳月。
それらが全て無駄なのだと言われている気がした。
どれだけ努力しても、結局誰も報われない。
妹の命は助かるかもしれないが、魔へと堕ちた彼女は悪逆非道の限りを尽くすだろう。
それでは何の救いにもならない。
誰か、誰か。
リオを止めて。
自分では、妹を止められない。
彼女を愛する余り、彼女の本質が見えていなかった。
世界に絶望し、他者を恨み、何より孤独を知っているものだけが、リオを理解出来るのだ。
そうでない者以外、彼女を止める事なんて出来ないのだ。
けれど、そんな人間が、ここに居るのだろうか。
「悪い子はどこだああぁぁぁっっ!!!」
その声は空から響いた。
リオがそれの存在に気付き、獣の目で空を見据える。
次の瞬間、美しい花が空から降ってきた。
正門から続く石畳の通路を踏み砕き、一匹の魔物が大地に降り立つ。
着地の衝撃で黒い霧が吹き飛ばされ、薄暗い視界に日の光が差した。
浅葱色の肌。
腰まで伸びる、肌と同じ色の髪。
女神にも引けを取らないほど美しい顔立ち。
豊満な、果実を思わせる双房。
上半身は絶世の美女。
下半身に肉の花を持つ魔物。
(……来るのが、遅い…)
胸の前で偉そうに腕を組むアネモネを見て、マリオンは救われた気がした。
「…ネーアさん…」
だが、感動の再会である筈なのに淫魔の表情は晴れない。
それがマリオンには気に掛かってしょうがなかった。
「あたしだけじゃないわよ」
アネモネの言葉に答えるように、二人目の乱入者が姿を表した。
全身を覆う赤い鎧。
216 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:08:03 ID:Q2wLCt6z
獅子の鬣を連想させるブロンドの髪。
顎下まで立派な髭を生やし、顔には深い皺が刻まれている。
もうすぐ五十を迎える男の顔だ。だが、その眼光はどこまでも鋭い。
凶暴な獣性を真紅の鎧に封じ込めているようだった。
「父様…」
父グリーズの登場に淫魔の顔が僅かに強張った。
***
「随分と派手にやらかしてるみたいじゃない」
地上に降り立ったネーアは辺りを見回しながら眼前の仲魔に喋りかけた。
周りはリオの放つ黒い霧のせいで死屍累々といった様子だ。
「殺したの?」
「いえ? 皆さん生きてますよ? 第一そんな酷い事私がするわけないじゃないですか。
女の子は皆、アネモネになってもらうんですから♪
あ――そうだ。私も質問があります。どうしてネーアさんと父様が一緒に居るんですか?」
「ああ、そうね…説明しないとね」
立場を考えれば、二人が戦っても不思議ではないのだ。寧ろ、それが自然と言えよう。
ちらりと背後のグリーズに目配りをする。
彼は任せると言った様子で軽く頷いた。物臭な男だ。
「リオに会いに行く途中でばったり会っちゃってね。
貴女の居場所を教える代わりにここまで案内させてもらったの。
それと、クロトの安全も、ね」
「クロトさん? クロトさんが生きてるんですか!?」
「アドニスの繋がりは切れてるだろうから、やっぱり死んだと思った?
大丈夫よ。首を撥ねられただけだから。すぐにくっつくわ。
撥ねられた本人は自分が死んだと思ってるでしょうけどね」
アネモネと戦闘経験が無いものなら、切っても死なないなどとは思わないだろう。
しかし、かの剣神ともあろう人間が、その程度の事を知らないものなのだろうか?
「…そうですか。安心しました――でも私がやる事に代わりはありません」
リオが見せびらかすようにドルキの体を引きずり上げる。
滅茶苦茶にされた女性の顔面を見て、二人の顔が僅かに強張った。
「私は、この女に復讐します」
淫魔らしい、愛らしさと淫靡さを同時に備えた姿よりも、その性格の豹変振りに驚く。
「…変わったわね、リオ」
無邪気に微笑みながら大胆な発言をする少女に、諦めにも似た感情が胸を満たす。
この少女を『こちら側』に引き込んだのは間違いなく自分だ。
だが肉体が変わっても、精神がここまで堕ちるとは夢にも見ていなかった。
「それが、貴女の義理の母親?」
「はい。――うふふ♪ ネーアさん?
私達いまぁ、親子の絆を育んでいるところですぅ♪」
何も見ていなければそれが歳相応の少女が言う台詞に聞こえる。
だがリオが小さな手で引きずり上げているのはぼろ雑巾のようになった人間の体だ。
息も絶え絶えで、見てるこちらが痛々しく思えてしまう。
昨日の夜までは、他人を思いやれる優しい娘だった。
それが今では身内を笑顔でリンチするような残虐な性格になってしまった。
(…あたしのせいね)
リオに種子を植え付けたのは双方合意の下で行われた事だ。
しかし、孤独に耐え切れなかったネーアの弱さも原因の一つであるかもしれない。
自分がもっとしっかりしていれば、こんな事にはならなかった。
そう思うと、本当にやり切れない。
「リオ。引き上げるわよ」
「……え? …え? …引き上げるって…何言ってるんですか、ネーアさん」
「昨日の夜にも言ったでしょ? 目立ち過ぎだわ。もうここには居られない」
いや、それもある。
だが本音はリオにこれ以上悪事を働いて欲しく無かったのだ。
きっとそこの義理の母を殺してしまったら、理性のタガが外れてしまうだろう。
他人を貶め、命を奪う行為に快楽を覚えるようになってしまうだろう。
217 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:10:16 ID:Q2wLCt6z
人を止めたとしても、そうはなって欲しくないのだ。
「……嫌です」
「あのねぇ。我侭言わないの。
人間達に延々と追いかけられるのがどれだけ苦痛か、話してあげたでしょう?
貴女も同じ目に遭いたいの?」
「襲ってくるなら、追い払えばいい」
リオの声のトーンが下がる。
ぞくり、とした。
先程まで無邪気な笑顔を浮かべていたのに、今その愛らしい顔は能面のように無表情だ。
「しつこいなら、殺せばいい」
獣の双眸に射抜かれ、本能が警鐘を鳴らした。
この娘は、危険だ、と。
真紅の両目を見ながら何とか説得する方法を考える。
「リオ、忘れないで。私達は人間が居ないと繁殖も出来ない。
ただ殺すだけならいつかあたし達自身が滅びるわよ」
「そんな事ありませんよう」
ふと、リオの顔が歳相応の少女のものへと破綻した。
「例えば――ほらっ、この街を私達で占領するんです!
アドニスの花をいっぱい咲かせてっ、必要最低限の人間だけを残して『飼う』んです!
鎖で繋いでぇ、エッチして人間の子供を産ませるだけの家畜にしちゃうんです!
そうすれば、アネモネを好きなだけ増やせますよ! 永遠に!」
名案だとばかりにリオは表情を輝かせた。
「…成る程、確かにあたし達アネモネからすればそれは理想の世界ね」
「ですよねっ? ネーアさんもそう思いますよね!?」
孤独と、人間達に追い掛け回されるストレスから開放される。
それだけでリオの考えは魅力的に聞こえた。
アネモネは水と日の光さえあれば半永久的に生きられるのだ。
アドニスの中で、人間の『餌』も生成出来るので何も問題は無い。
そしてこの街には結界がある。
事を知って追いかけて来た人間も、そうそう簡単には街には侵入出来ない。
ここをアネモネの拠点とするには最高の場所と言えた。
「でも駄目」
「――どうしてですか」
「今の、本当にあたし達の事を思って考えてくれていたのなら、まあ、いいわ。
でも、違うでしょ?」
リオのそれは、目的ではなく、手段なのだ。
彼女は、ネーアの、アネモネの未来を考えて語っているわけではない。
それは彼女の言動や行動を見ていれば馬鹿でも分かる。
「リオ、貴女はね。自分の復讐を果たす為にこの街を支配しようとしているの。
それは私の為なんかじゃない。リオ自身の我侭の為よ。
復讐を正当化する為に、あたし達アネモネを利用しないで」
(…言い過ぎたかしら)
だがここでその事をはっきりしておかないと彼女は間違いに気付かないかもしれない。
それに、ネーアは信じている。
リオの中にはまだ人の心が残っていると。
「どうして分かってくれないんですか」
獣の瞳がこちらを見据えた。
まるで石ころでも見るような目つきに、再び背筋に冷たいものが走る。
「私、ずっとずっとネーアさんの事を考えてたのに。
どうしたら喜んでくれるか一生懸命考えたのに」
違う。それは良い訳だ。
いや、ひょっとしたら本気でそう思っていた時もあったのかもしれない。
218 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:11:32 ID:Q2wLCt6z
でも今は違う筈だ。
赤くなった両目は、復讐に酔っているようにしか見えない。
どうやって自分を殺した女を苦しめてやろうか、それしか頭にないのだ。
「……ネーアさんも私を裏切るんですね。
父様と同じように。私を捨てるんですね」
「それは違うわ。あたしは今でもリオの味方よ。だからこそ、」
「うるさい裏切り者」
淫魔の肩が震えていた。
(しまった…あたしの馬鹿っ)
相手が年端も行かない子供だという事を失念していた。
正論だけで説得出来たのなら、誰も苦労はしない。
こちらから譲歩して、彼女の意思を少しでも尊重すべきだった。
「…私の味方は姉様だけ」
悪魔がドルキを放り捨て、翼を広げてマリオンの傍らへと移動する。
「……リオ…」
チャームでも掛けられていたのだろうか。
今まで事の成り行きを呆然と見ていただけのマリオンの瞳に、意思の光が戻る。
その傍らに悪魔が着地した。
「ね? 姉様だけは、私の味方だよね?
私が何をしても、許してくれるよね?」
そう問い掛けるリオの表情は歳相応の少女のそれと同じだった。
好きな人に嫌われたくない。
この人だけは甘えていい。
そんな、感情が垣間見える。
だが、マリオンはそれを理解せずに言葉を発した。
「お願いリオ。元のリオに戻って」
それも最悪のタイミングで、最悪の言葉を。
(…馬鹿…っ)
どうしてもっと慎重になれない。
何故そんなにも不器用なのだ。
自分が見限られた以上、マリオンがリオの支えにならなければならないというのに。
そのマリオンにさえ今の自分を否定されたリオは、一体どうなる?
だが、マリオンが不器用なのは元からだ。
それに同じミスをした自分が、彼女を責める資格などない。しかし、
「……姉様まで…」
ふらふらとリオがマリオンから離れた。
その足取りはおぼつかなく、まるで悪夢の中を彷徨う子供だ。
いや、今の彼女にとっては正に今この状況は悪夢以外の何でもなかった。
信じていた者達に裏切られ、独りぼっちになってしまう悪夢。
(何か、何か言葉を掛けてあげないと)
リオは首を振り、両手で頭を抱えている。
このままでは、孤独でリオが潰れてしまう。
思い出せ、この二百年間を。
たった一人で、人間という敵だらけの世界の中を生き抜いてきた苦痛を。
その重圧に、十二歳の子供が耐えられる訳が無い。
「リオ聞いて、あたしは、」
「――きらい」
「…リオ?」
ぼそりと呟いた彼女の言葉。
219 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:12:39 ID:Q2wLCt6z
それは悲しみの嘆きではない。
「義母様も、父様も、姉様も、ネーアさんもっ…っ!
嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌いきらいきらいきらいキライキライキライっ」
世界を憎む呪詛だ。
「みんな死んじゃええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!!!」
闇が膨れ上がった。
リオを中心に爆発的に放射される黒い霧に、マリオンの体が吹き飛ばされる。
「うああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁっっっっ!!!!!!!」
悪魔の魔力に、地面に転がっていたドルキや、門下生達も吹き飛んだ。
ネーアは地面に触手を突き立てながら体を固定し、衝撃波をやり過ごす。
更に飛ばされるマリオンの体を何とか捕まえ、横目でグリーズの様子を伺った。
赤い鎧が吹き付ける黒い霧を遮っていた。グリーズは涼しい顔のままリオを見詰めている。
「…失敗か」
吹き荒れる魔力の中、ぽつりと彼の呟きが聞こえた。
リオの居場所を教える条件として、クロトの安全、ネーアの同行。
それにもう一つ、リオの説得を引き受ける、という三つの条件を要求したのだ。
街の領主が相手だというのに我ながら身勝手な要求だなとは思った。
しかし意外にも彼は懐の深さを示し、その三つの要求全てを呑んでくれた。
今頃クロトは魔術士達により街の外へと転移させられただろう。
そして彼のエスコートのお陰でこの屋敷まで、無事辿り付けた。
(リオの説得は、出来なかったけど)
歯痒い。分かったつもりで、彼女の事を全然理解してあげられなかった。
森の中でマリオンにあれだけ偉そうな事を言っておいて――自分が情けない。
(こうなったら強硬手段ね)
力ずくでリオの戦闘能力を奪い、それから再び説得する。
これだけの被害を出しておいてグリーズがそれを認めてくれるかは甚だ疑問だが。
今は現状を何とかするしかない。
幸い、魔力総量ならばまだこちらの方が上だ。
『繋がり』を利用した、強制力もある。こちらが有利な事には、
「――え?」
(ちょっと、何これ? あの子の魔力、どんどん上昇している!?)
これだけの量の魔力を放出しておきながら、減るどころか増えている?
一体どんな手を使っているのか、それを考え――ふと気付いた。
屋敷の中に、同類達の反応がある。
恐らくリオが屋敷に潜入した際種付けした者達だろうが――
その者達のアドニスから急激に力が失われていくのだ。
このままではアドニスが枯れ果ててしまう、それくらいの勢いで。
そして失われていく魔力と反比例するように膨れ上がるリオの魔力。
(『繋がり』を利用して、アドニスから直接魔力を吸収しているの!?)
吸精能力を持ったネコマタと魔力の扱いに長けた悪魔。
そしてアドニスを胎内に持つリオだけが可能な芸当なのだろう。
それを理解した瞬間、がくん、と体から力が抜けた。
「そんな、あたし、までっ」
「あはははははははははっっ!!! すごいっ!! 力が溢れてくる!!」
狂ったように笑うリオの魔力は既にこちらと引けを取らない。
「『止めなさい、リオ』!!」
「っ!?」
びくり、と悪魔の体が仰け反った。
そう思った次の瞬間にはにんまり、と彼女は不敵な笑みを浮かべる。
「い、や、で、す♪」
悪魔が腕を一薙ぎ。
それだけで黒い霧がうねり、烈風となり、こちらに叩き付けられた!
220 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:14:11 ID:Q2wLCt6z
「きゃあっ!?」
触手で固定していた地面ごと巨体が吹き飛ばされる。
マリオンを放り出しはしなかったものの、べちゃり、と無様に着地した。
(強制力も効かないっ)
そしてこの体からも魔力が奪われていく。
十やそこらの生まれたての魔物に下克上を突き付けられ、絶体絶命を迎えていた。
(これは、本気でやばいわね)
リビディスタの門下生達が戦術を組んで挑み掛かれば勝てるだろう。
だが彼らの主戦力は街の外で待機している魔物達の殲滅で手一杯だ。
魔物達を倒したその頃には屋敷の人間は全滅である。
となれば最後の望みは。
ネーアの縋る視線に答えるように、一人の男が地を蹴った。
***
リオは視界の端で、何かが猛烈に近付いてくるのを捉えた。
特殊な加工がされた鎧はある程度の魔力耐性を所持しているらしい。
こちらが放つ魔力をものともせず一直線に突っ込んで来た。
さしずめそれは赤い弾丸。
年齢を感じさせない鋭い踏み込みに、こちらも爪を伸ばし、迎撃を試みる。
(ふふふ♪ 今の私なら、父様だって倒せる♪)
屋敷のメイド達やパセットに植え付けたアドニス。
更にネーアからも魔力を吸収し、今では全快状態のネーアと同等の力を得ている。
ただ、あの赤い鎧は精神防御能力すらもあるようで、彼の思考を読む事は出来なかった。
まあ、その程度、丁度いいハンデになるだろう。
向こうは五十近い老体。
対してこちらは魔力を補充したばかりの魔物。
負ける筈が無い。
人を止め、手にした力を思う存分見せ付けてやる。
(大体、父様丸腰じゃないですか)
黒い霧の中を掛ける男の手は空っぽだ。
かと思った瞬間、その手から青い魔術陣が生み出される。
(ああ、そっか。そう言えば父様、剣を転移させる魔術を使えるんですね)
あらゆる剣を状況に応じて使い分ける。
それが剣神と謳われる由縁だ。
だが種が明かされていれば怖いものではない。
力でねじ伏せてやる。
「行くぞ」
ご丁寧にも父親は攻撃前に声を掛けてくれた。
子供だと思って舐めているのか。
その手に握れられているのは細い、変わった意匠の黒い鞘。
『反り』のある刀身を封じ込めた鞘を左手に携え、右手でその柄に触れる。
刀身の大きさはそれほどではない。
鯉口を切り、闇の烈風の中僅かに覗いたそれは細く、薄い。
そんなナマクラ、へし折ってやる。
こちらから間合いを詰める。
右手に魔力を集約。ブレード状に固定した赤い爪を振り被り――袈裟切りに叩き付ける!
同時に、グリーズが黒い鞘から刀身を引き抜いた。
常人には捕らえる事の出来ない神懸り的な居合いも、今のリオはしっかりと捉えていた。
ぎいん!
赤い爪と異国の剣。それが交わった瞬間、高々と剣戟の音が響き――
「――えっ!?」
あっさりと消滅した赤い爪を見て、愕然とした。
そしてそれを見逃すグリーズでは無かった。
221 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:15:24 ID:Q2wLCt6z
返す刀が悪魔の首を狙う。
「こ、のぉっ!!」
左手の爪に瞬間的に魔力を集約。
惜しみなく魔力を消費して、頑丈な刃を生成した。
ぎいいいいぃぃぃんんっ!!
白刃と赤い爪が、鍔迫り合い、魔力の光を散らす。
それが予想外だったのか、グリーズが『ほう…』と感嘆の声を静かに漏らした。
(どうですか、父様? 驚きましたか?
舐めないで下さい。私はもう、一人前のモンスターなんですよぉ!!)
左手で攻撃を受けている間に右手に再び赤い刃を生み出す。
それをがら空きになったグリーズの左脇に繰り出そうと思った――その直前、
赤い鎧が僅かに捻れた。
グリーズが逆時計回りに体を回転させたのである。
それだけで白刃を受け止めていた左の刃が紙切れのように引き裂かれた。
「っ!!?」
ひゅんっ、と耳元で風切り音が唸る。
反射的に翼をはためかせて後方へと跳躍、斬撃を回避する。
(危なかった…!)
反応が一瞬でも遅れていたら首を切り落とされていた。
何が五十近くの老体だ。冗談じゃない。
楽に倒せると思ったのがそもそもの間違いだった。
これだけの魔力を得ても、やった対等に渡り合える――とでも言うのか。
ぎり、とリオは歯を食いしばりグリーズを睨み付けた。
彼は鉄面皮のまま、こちらを見据えるだけだ。
あれだけ重そうな鎧を着ているのに汗一つかいていない。化け物じゃないのか。
(魔力の放射は、無駄かも)
先程から爆発的に垂れ流している黒い霧もあの鎧の前では目くらまし程度にしかならない。
大量に吸収した魔力も無限ではない以上、使い過ぎは只の浪費だ。
リオは自身の体から放射していた黒い霧を再び自分の体へと吸収する。
庭とも言える玄関先に日の光が再び差し込み、視界が回復していく。
「片刃の剣は、叩く事よりも切る事に特化されている。
この剣もそうだ。刀身の『反り』は叩き付けただけでは効果を成さない。
これを引くか、押すか、そうする事で初めて対象を『切る』事が出来る」
「そう、でしたね」
姉の剣の訓練を何度か見た事があるが、そんな話をしていたかもしれない。
何年も前の事なのでうろ覚えだったが、今しがた体で経験して、それを思い知らされた。
「そして――」
グリーズが鞘を放り投げ、剣を地面に突き立てる。
と思った瞬間には何かがこちらに向かい飛来してきた。
「っ!?」
ひゅひゅんっ!!
こちらの体を射抜こうとするのは二本のナイフだ。
それを大きく横に跳躍し、かわす。
「距離をとったからと言って安心するな。
ワシは、何処からでも貴様を狙えるぞ」
じゃらり、と両手で計八本のナイフを扇状に広げて見せる。
さっきはあれを投擲して攻撃してきたのか。
「だったら、こっちにも考えがありますっ」
ばさり。翼をはためかせて飛び立つ。
グリーズは屋敷の地下にある専用の武器庫から獲物を転移させ、手元へと呼び寄せる。
その数も有限ではあるだろう。
だがあのサイズのナイフくらいならほぼ無限と言って差し支えないほどのストックが在る。
弾切れを狙うには時間が掛かりすぎる。
それなら、こちらも同じ事をしてやればいい。
リオは体内に蓄積させた魔力を消費。中空に大量の赤い刃を生成する。
大きさはグリーズが手に持つナイフとほぼ同等。それらの刃先がグリーズに狙いを定める。
222 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:16:54 ID:Q2wLCt6z
「…む」
「いけぇぇぇっっ!!!」
ひゅひゅひゅひゅん!!
リオの掛け声と同時に、魔力の刃がグリーズに向けて降り注いだ!!
ずががががががががががっっ!!!
「…おっかないわね…っ」
少し離れた所でネーアが小さく声を上げていた。
グリーズを狙う赤い雨とも言うべき攻撃は石畳の地面を粉砕し、辺りに破片を撒き散らす。
赤い雨に穿たれた地面は深く掘り返され、その下の土を露出させた。
人間が喰らえば、その鎧ごとミンチにしてしまうほどの威力だ。
だがそれも当たれば、の話だ。
「このっ、このぉっ」
リオは次々と赤い刃を生み出してはグリーズへと放つが――当たらない。
鎧を着たままグリーズが軽やかなに地を駆ける。
その動きは五十近くの中年とは思えない程、素早い。
グリーズは植え込みの木を縫うように庭の中を縦横無尽に駆け回る。
「このっ! 速いっ、当たらないっ――にゃうっ!?」
不意に飛んできた八本のナイフを空中でなんとか回避する。
グリーズが走りながら投擲したものだ。
(き、器用な事をっ)
だが飛び回りながら攻撃すれば、向こうの攻撃もなかなか当たらない。
疲れて動きが鈍くなった所を仕留める!
と思った矢先に彼の体が屋敷の陰に隠れて見えなくなった。
「に、逃げるの!?」
いや、追いかけて来たところを不意打ちを食らわすつもりだ。
ここは慎重になって――いやいや、こちらが尻込みをしている間に体力を回復させる気か?
(技術では、敵わないのは分かってる)
まともに戦っては勝てない。
となれば向こうのスタミナ切れを狙うのがやはり得策なのだ。
人質を取る事も考えたが――それは何だか嫌だった。
卑劣な手段を用いるのは、ドルキだけでいい。
(私は、実力で父様を倒すっ)
決意を固めて中庭の方角へと走り去ったグリーズを追う。
ただこれが罠である事は分かっている。
文字通り足元を掬われないよう、注意しながら建物の角から顔を出した。
(――居ない?)
逡巡していたのはほんの数秒だ。その間に、どこに消えたというのだ。
「どこを見ている」
声は『頭上』から聞こえた。
「え?」
慌てて振り仰げば、上から長大な剣を構えたグリーズが降って来た。
(っ、何で、上からっ!?)
避けられるタイミングではない。
慌ててブレードを両手で生成。それを交差して、剣を受ける。
次の瞬間、二の腕に千切れるかと思うほどの衝撃が走った。
良く見ればグリーズが振り下ろしたのは彼の背丈よりも遥かに長い剣だ。
ツヴァイハンダーと呼ばれる両手持ちの大剣よりも更に大きい。
剣などと言うのもおこがましい、鉄板だ。
どうやって屋敷の上まで上ったのか知らないが、こんな物を叩き付けられたら、
(お、ちるっ)
落ちるだけなら兎も角、地面と剣でサンドイッチにされてしまう。冗談じゃなかった。
「こ、のおおぉぉぉっっ!!!」
自由落下する体を捻り、一方向に目掛けて魔力を放出する。
噴出した黒い霧は推進力となり、体を捻った動きを合わせて小さな体を回転させた。
がんっ!!
裂帛の掛け声と共にリオが放ったのは蹴りだ。
223 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:18:25 ID:Q2wLCt6z
体を回転させ、斬撃から横に脱出しながら、同時にその剣の腹を蹴り飛ばす。
「っ…!」
破れかぶれの行動だったそれは功を制した。
蹴り飛ばされた大剣は中庭の中央に弾き飛ばされ、リオは蹴りの反動を利用して着地した。
「と、ととととっ…!」
と思ったが脚にも腕にも負担が掛かっていたらしい。
たたら踏んで、その場で情けなく尻餅をついてしまう。
(生きていただけ、よしとしなきゃね)
鎧同士が擦りあう音を立てながら、グリーズが僅かに離れた位置に着地した。
あいも変わらずポーカーフェイスで、うんざりしてしまう。
「良く凌いだものな」
「…お褒め頂き光栄です」
「だが油断していたのも事実だ。
自分が飛べるからと言って、相手が常に自分よりも下に居ると思わない事だ」
言いながらグリーズは屋敷のある一点を指差した。
そこはグリーズを追撃するリオから見て、丁度死角になっていた場所だ。
建物の角から少し離れた壁に、剣が何本が突き刺さっている。
剣は屋敷の上を目指し、およそ一、二メートル間隔で突き立てられていた。
「まさか、壁に突き刺した剣を足場にして、上ったのっ?」
「空を飛ぶ魔物相手には重宝する戦術だ。
そういうものに限って、まさか相手が自分より高い場所にいるとは思わないだろうからな」
「…くっ」
図星を突かれて、歯噛みした。
伊達に歳は食っていないという事か、実戦経験が違いすぎる。
下手な戦術は、こちらの身を滅ぼすだけだ。
(だったらっ)
再び両手にブレードを生成。
「真っ向勝負ですっ!」
「その意気や良し」
突っ込むリオに答えるように、グリーズも両手から剣を生み出した。
***
剣戟の音が高々と響いていた。
両手にブレードを生成したリオと、同じく二本の曲刀を生み出したグリーズ。
父と子が、真正面から切り結んでいる。
(……凄い)
リオとグリーズの切り合いを見詰めながら、マリオンは心底感心していた。
何が凄いかって、あのグリーズとまともにリオが戦っている、という事が、だ。
最初は怒りに我を忘れたリオにどうしようかと頭を悩ませていた。
だが親子で繰り広げられる死闘は意気を呑むほど激しく、目が離せない。
気が付けばマリオンは剣神と悪魔の戦いに見惚れてしまっていた。
「……助けないの?」
この体を抱きとめるアネモネの女が至極当然の疑問を口にした。
助ける対象がリオだとしてもグリーズだとしても。
戦いを止めなければどちらかが死ぬ事になるだろう。
「そんな事しない」
だがそれは、父親の――剣神に対する侮辱だ。
「何となく、分かったの」
「何を?」
「父様の事」
今まで、グリーズという個人を何も理解してなかった。
無表情で。口数が少なくて。何を考えているか分からない。
リオをレイプした鬼畜かと思ったら、アネモネのネーアをこの場まで案内してくれた。
リオを陵辱した父が、本当の父なのか。
それとも――
224 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:19:41 ID:Q2wLCt6z
『違わないわよ。あの人、ちゃんと優しいところもあるもの。
病気だって分かった時、真っ先に様子を見に来てくれたしね。
週に一度はお見舞いに来てくれるし。不器用だけなのよ』
リオの母、リシュテアが遺してくれた言葉を思い出す。
彼女が言った通り、グリーズは不器用なだけで、優しい人間なのだろうか。
結局どちらが本当の彼なのかは分からない。
だが、一つだけはっきりしている事が分かる。
彼は今、リオとの戦いを愉しんでいる。
「攻撃が単調だ。そんな事ではすぐに裏をかかれる」
「うるさいっ! じゃあ、こうだっ」
ブレードによる斬撃に混じり、不意に赤い爪による射撃攻撃が放たれた。
だがそれも読まれていたのかグリーズが二本の剣で弾き、防御している。
「攻撃のバリエーションを増やすのはいい。だが、決定打にはならんな」
「くぅっ…!」
グリーズとリオが切り結ぶ度に彼は何かしらのアドバイスを与えているようだった。
そしてリオも彼の言葉を覚え、学習し、急激に成長しているのだ。戦士として。
グリーズは、そうして成長しているリオと戦う事を、愉しんでいるように見える。
(そういえば、私も、父様に剣を教えてもらった時は、こんな感じだった)
足りない所、至らない所を淡々と指摘される。
そして体が間違いを直すまで何度も何度も同じ訓練が繰り返される。
当時のマリオンはそんなグリーズに優しさは感じる事は無かったが……
(父様…嬉しそう…?)
リオと切り結ぶグリーズはかつて無いほど口数が多い。
それにリオの繰り出す攻撃や挙動に微かだが表情を動かしている。
笑みの形に。
「くっ、正面からじゃっ」
「来ないのか? ならばこちらから行くぞ」
距離を取ったリオを追いかけるようにグリーズが踏み込む。
リオは二本のブレードで迎撃しょうとするが――
ぎんっ! ぎんっ、ぎぃんっ!
一回、二回、三回と、剣を交える毎に小さな体が後退する。
グリーズのから放たれる斬撃は一発一発が重く、速い。
それを二本の腕からあらゆる角度、速度で放たれるのだ。
緩急のついたその連撃はまさしく電光石火。
赤い刃と交わる度に火花を散らし、悪魔の細腕を跳ね上げる。
「このっ…はなれろぉ!!」
ばしゅう!
悪魔がグリーズ目掛けて魔力を放射した。
黒い霧は赤い鎧の防御効果によりすぐに霧散した。
「目眩ましか」
グリーズの言葉のすぐ後に赤い凶弾が彼を貫こうと飛来する。
それをあっさりと二刀で弾き飛ばした。
「……ほう。魔力の放射を目眩ましと移動に使うか。成る程、線がいい」
ほらまただ。
リオのアクションに対して、グリーズが僅かに微笑んだ気がした。
彼は、リオと決闘している――のではないのだろう。
恐らく、稽古をつけているつもりなのだ。
「リオよ。気付いただろう。戦いには――人には間合いというものがある。
個人の力を最大限に発揮出来る距離だ。
このワシと正面から切り結ぼうなどと、愚の骨頂と言えよう」
「……みたいですね」
225 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:21:29 ID:Q2wLCt6z
「逆に、貴様にはそれが無い。
戦い方に幅はあっても、自分を活かせる間合いが無い。
一対一の戦いにおいては。
相手の間合いに入らず、いかに自分の間合いで戦うかが勝利の鍵となる。
リオよ。先ずは、自分の間合いを見つけろ……でなければ死ぬだけだ」
「敵に塩を送っているのですか? …余裕ですね、父様?」
「…そうでもない」
(あ、笑ったっ)
自嘲気味に言った彼は、確かに笑っていた。
慣れない顔の筋肉を引き攣らせて、子供が見たら泣きそうな顔だったけど。
実の娘との決闘の最中、剣神と謳われた男は人間らしい、笑みを浮かべていた。
「父様、今笑ってたっ?」
「…みたいね…なんか、あの人、想像していたのとはイメージ違うわねぇ。
本当にリオをレイプした人と同一人物なのかしら?」
(それはこっちが聞きたい)
だが真実は当人達しか知らない事だ。
自分達には、この戦いを見届ける事しか出来ない。
勿論、リオが危機的状況に陥るような事になれば割り込むつもりだが。
グリーズの表情を見ていれば、彼は間違っても娘を殺すような事は無いと確信できた。
***
(良くぞ、ここまで成長した)
射出された赤い爪を弾き飛ばしながらグリーズは感嘆していた。
リオが居なくなった時は本気で心配したものだ。
あの体で森にでも入ったら命は無い。
だが妻であるドルキを蔑ろにも出来なかった。
自分を慕い、これまで背中を預け、子を産み、そして共に歩んで来た伴侶。
周りが見えなくなる時もあるが、彼女を愛しているのもまた事実なのだ。
そのドルキが、愛人であるリシュテアを憎む理由も分かる。
そしてその娘を憎む理由も。
何より母子揃ってグリーズと交わったのだ。
ドルキにしてみれば寝取られたようなものなのだろう。
彼女には悪い事をした。
それはリオにも言える。
かつてリシュテアと交わった時の様に鬼畜のように責め立ててしまった。
慙愧の念に駆られながら、それでもリオを求めて止まなかった。
娘の瞳が。香りが。その髪までも。
リシュテアの面影を強く遺していたせいで、歯止めが利かなかったのだ。
「ふっ、シャアァァッ!!」
魔力の放射を利用し、リオが急激に間合いを詰める。
振りかざされた赤い凶刃を受け止め、流れのまま受け流す。
勢い余った娘の体は僅かに離れた地面へと吹き飛び、すぐに体勢を整え着地した。
娘は傷付いただろう。
心も、体も。
だがそうやって彼女を傷つける事が、彼女を屋敷に置く為の理由にもなったのだ。
剣も魔法も使えないのだからせめて夜伽の相手だけでも勤めろ、と。
そんな言い訳を続けて、ドルキと、リオの二人をずっと苦しめてきた。
だからリオの行方不明は他言無用で、信頼出来る門下生だけに娘の捜索を依頼した。
ドルキの精神的負担も考え、何らかの形でリビディスタからは出て行ってもらおう。
そう考え、準備していた矢先の事なので素早く対応する事も出来た。
事が上手く運べば、ドルキの精神も安定する。
リオは隣町の娼館『セイレン』に引き渡される予定だった。
226 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:22:45 ID:Q2wLCt6z
『セイレン』はリシュテアの勤めていた店で、今も営業を続けている。
店にはリシュテアに好意的なスタッフが何人も居る。
彼女達はリシュテアの忘れ形見であるリオの到着を心待ちにしている筈だった。
(それがまさか、アネモネに拾われるとはな)
再びリオが突貫してくる。
学習が早い。正面に立っての切り合いはめっきり減ってしまった。
今ではこうやって着かず離れずの距離から一撃離脱の戦術を取っていた。
これがモンスターリオの『間合い』らしい。
悪魔の飛行能力。ネコマタの俊敏さ。
それに魔力放射による急速移動を使い、縦横無尽に駆け回る。
目で追い切れない事は無いが、中々速い。
腕利きの門下生でも捉えるのは難しいだろう。
「しゃあっ!!」
ぎいんっ! ぎいんっ!
息をつく暇も無くリオのヒット&アウェイが続く。
勘を掴んできたのか回数を重ねる毎に速さと一撃の重みが増してきた。
この鎧には魔力遮断の効果以外に、筋力強化や、体力増強の効果をも持つ。
先程から人外の力と真っ向から切り合い、力で押し勝っている事にはそういう理由がある。
だが、それにも限度はあるのだ。
戦い方を徐々に学び、急激に強さを増していくリオに、段々と手加減する余裕が無くなる。
(…流石に堪えるな。歳には勝てんか)
そうだ。ネーアと名乗ったアネモネ。
彼女はどことなくリシュテアと似ていた。
顔の形も、声も、髪も、何もかも違うが、纏っている空気、というか雰囲気が似ていた。
モンスターの分際で人間臭く、他人の世話を焼きたがる不思議な女だった。
リオにアドニスの種子を植え付け、悪魔へと堕とした張本人でもあるらしい。
だが、それが魔物の凶暴性に任せて行った事ではないのだろう。
それは人間的な優しさや思考の末の選択であったと理解出来る。
(クロトの身の安全。屋敷までの連れ添い。リオの説得、か)
リオの居場所を聞き出すのに求められた条件だ。
街の領主である自分に対し臆さず、よくもまあこうも傲慢に物を頼んだものだ。
その厚かましさもリシュテアそっくりだった。
だからだろう。周りの門下生達の声もろくに聞かずに、ネーアの言葉に従ってしまった。
説得が失敗したのも、仕方が無い。
今のリオは心までもが魔へと堕ちてしまっている。
聞く耳など有って無いようなものだ。
それに、
(説得が成功していたら。こうして一戦交わる事も無かったか)
襲い掛かるリオの攻撃を受け流そうと剣を走らせ、
同時に悪魔がその軌道を大きく変えた。
「っ!?」
(魔力噴射かっ)
矢のように一直線に伸びてきたブレードの突き。
それが交差する直前でリオが横へと魔力を噴射した。
只の突きが、体を回転させながらの斬撃へと一瞬で切り替わり、反応が僅かに遅れる。
ぎいぃんっ!
二人の影が交差し、リオが地面へと着地する。
「…これでも、駄目なんだ」
「いや、危なかった」
227 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:23:58 ID:Q2wLCt6z
鎧の左わき腹部分がばっくりと切り裂かれている。
反応が遅れた分、ブレードが鎧を掠ったのだ。
対魔力防御も兼ねた鎧がこうも易々と破壊されるのだから直撃を受ければ只では済まない。
(本当に、良くもここまで強くなったものだ)
行方不明になってから一日と経たない内に非力な少女は立派な戦士になっていた。
魔物になった影響も少なくはないだろう。
だが咄嗟の機転や、飲み込みの速さ、それに戦いのセンス。
それらは魔物になっただけでは身につかないものだ。
あえて言うなら、それらは生まれ持ったリオの才能。
(お前は、本当に、ワシの娘なのだな)
健康な体で育っていれば、今頃立派な戦士になっていたかもしれない。
それも、詮無い事か。
(そろそろ、潮時か)
深呼吸をし、高鳴る心臓を落ち着かせる。
反応が遅れたのは不意を突かれた事だけが原因ではない。
疲労が溜まってきたからだ。
(血湧き肉踊るが…年寄りには少し堪えるな)
リオと戦う前から魔物を迎撃していたのだ。
鎧の力を差し引いても、体力が持たない。
それを悟られないように立ち振る舞っては来たが所詮はやせ我慢。
「もう、終わりにするか」
ひびの入った二本の曲刀を地面に突き刺し、新たな剣を呼び出す。
オーソドックスな、両刃の剣だ。
決闘も終局を迎えようとするこのタイミングで使うのだから、勿論考えがある。
切り結ぶ度に少しずつ移動し、今では二人とも玄関前の広場に居るのだ。
ここには、地面に突き刺さったままのムラマサが存在する。
耐魔力効果を持った異国の名剣。
物理攻撃の殆どを、魔力で生成した刃に頼るリオにとってこれは天敵。
だがムラマサを使っていたのは最初だけだ。
時間も経ち、一度手放した武器を使い回されるとは思うまい。
だが刀に向かって一目散に向かえばリオもその意図に気付いてしまうだろう。
それでは意味が無い。
「…父様?」
「少し名残惜しいが…楽しかったぞ」
言ってから自分でも驚く。が、さもありなん。
戦う事しか出来ない根っからの武人が、娘と対等に渡り合ってきたのだ。
あの、リビディスタの汚点とまで言われてきたリオが、剣神である自分と、である。
嬉しいに、決まっていた。
娘の成長を誇りに思う。
「…え…?」
案の定というか、リオは呆気に取られた顔をしていた。
殺し合いの最中、敵から掛けられた言葉はアドバイスでもなんでもない。
毒気が抜ける――とまではいかないものの、人間らしい言葉に困惑しているようだった。
(だがそれでは困るな)
「行くぞ。リオ」
まだだ。まだ伸びる筈だ。
生まれ持つ天賦の才を、この目に見せてみろ。
「最後の教訓だ。利用出来る物は何でも利用しろ」
無論、それは人質を取る、という意味では無い。
遮蔽物や地面に落ちている武器となり得る物。
地形や敵の携帯物など、戦場に常に目を見張り、利用しろという事だ。
転移させた剣を大地へと突き立てた。
ずんっ!!
同時に大地が鳴った。
地鳴りと共に足元が揺れ――突如石畳の床をめくり上げて、大地が隆起した。
ずどんっ!! ずどんっ!!
228 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:25:35 ID:Q2wLCt6z
「っ!?」
リオの足元から、その小さな体をミンチにしようと大地が襲う。
隆起した地面の先は尖り、直撃すれば風穴が開いてしまう。
リオはそれを嫌がり、後方へと下がった。
その隙を見逃さず、ムラマサの元へと走り、回収する。
隆起した地面が視界を塞いでおり、リオからは見えなかっただろう。
大地の隆起は一瞬で元に戻る。
美しい広場を滅茶苦茶に破壊した岩の槍は崩れ、砂塵となって視界を殺す。
グリーズはその中に踏み込んだ。
ムラマサを鞘に納刀し、いつでも居合いを放てるようにする。
同時に黒い霧が吹き付けてきた。
間合いを詰めるこちらに対する牽制なのだろう。
構わない。このまま突っ込んで、
黒い霧の中に、爛々と光る猫目を見た気がした。
打ち合うつもりなのだろう。
視界が悪いなら人外の瞳を持つ方が有利と踏んだのか。
それもいい、だが賭けはこちらの勝ちだ。
ぶうんっ。
黒い霧の中、旋風が巻き起こる。
(そういえば、ブレードの光が見えんな)
構わず鞘から白刃を滑らせて、
眼前から鉄板とも言うべき巨大な剣が振り下ろされた。
「っ!?」
反射的に居合いの角度をずらす。
本来ならば真横一文字に『切り裂く』太刀筋を、斜め下へと『受け流す』太刀筋へ。
だが、
ぎぃんっ!
圧倒的な質量の前に、あっけなくムラマサが粉砕された。
当たり前だ。どれだけ技術が高くとも、刀で鉄板は切れない。
(ワシの剣を使うか…っ)
ずがぁんっ!!
リオの身の丈の倍以上がある大剣が、地面を粉砕し、土と石をばら撒く。
剣の軌道を逸らしたお陰で体への直撃は防いだが、腕に激痛が走っていた。
骨にひびでも入ったか。
それでもリオは容赦しない。
地面を穿つ大剣を引き抜き、振りかぶり、
「うああぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
横薙ぎの一撃が襲い掛かる。
回避は無理だ。リーチが長すぎてかわし切れない。
両手に剣を転移。
それを交差した瞬間、体が粉々になるような衝撃が走った。
***
「うああぁぁぁぁぁっっ!!」
ぎぃいぃんっ!!
返す刀がグリーズの体を弾き飛ばした。
防御の為に交差した二本の剣を粉砕し、赤い鎧の胸部を砕く。
決まったか?
229 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:26:30 ID:Q2wLCt6z
咄嗟の思い付きだった。
利用出来る物は何でも利用しろ。
その言葉にグリーズが使った規格外の大剣を使おうと思ったのだ。
大地の隆起により互いの視界が塞がれた時。
魔力を鎖状へと変換し、中庭に突き刺さったままの大剣を絡め取り、手元へと引き寄せた。
魔力の霧を放射すれば向こうの視界を更に封じる事が出来る。
結果、グリーズに読み勝つ事が出来た。
向こうがあの刀を使わなければ、また少し違った結果になるかもしれなかったが。
兎も角これで終わりだ。
あのダメージではいくらグリーズと言えども――
(…いや、まだっ)
赤い鎧を纏った英雄は無様に地面に倒れる事無く着地した。
顔を上げたグリーズの目から戦意は消えていない。
鋭い眼光が、未だに負けを認めないようにこちらを見据えている。
(だったらっ)
大剣を放り投げ、両手にブレードを形成する。
ダメージも与えた。動きも鈍っている。
もう、彼との戦力差は殆ど無い筈だ。
「父様あぁぁぁっ!!」
何の策も無しに突っ込む。
ブレードへ魔力を惜しみなく注ぎ込み、赤い刃を最強の剣へと変える。
対してグリーズも両手に再び剣を転移させ、こちらへと果敢に踏み込んできた。
疲労を感じさせない獅子奮迅の勢いだ。
青い瞳が、殺気すら放ち、こちらを睨みつける。
(容赦はしませんっ!)
背中から魔力を噴射、後方へとGが掛かり急加速する。
地から脚が離れ、悪魔の体はまるで矢のようにグリーズへと突貫した。
瞬く間に、二人の距離が縮まっていく。
その中で、リオは次の手を既に考えていた。
この突進で終わるとは思っていない。きっと回避されるだろう。
だが魔力噴射を利用して再突撃を仕掛ける。
グリーズはもうこちらの速さに対応し切れない。
当たるまで、何度でも何度でも突撃してやる。
「ああぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
眼前のグリーズを見据える。
彼はこちらを迎撃しようと脚を止め、両手に持った二本の剣を振りかぶった。
ぎりぎりのタイミングだ。
向こうが捨て身の覚悟で切り替えして来れば、こちらも只では済まない。
グリーズを倒しても、この後リビディスタの門下生達とも戦わなければならないのだ。
体力を少しでも温存しておく必要がある。それは分かっているのだが。
(構うもんかっ)
後の事なんて考えていられない。
だって、こんなにも『楽しいのだ』。
あの父との戦いが。血湧き肉踊る死闘が。
それを無下に出来る訳が無い。
手を抜く事も、尻尾を巻いて逃げる事も、打算で戦う事もありえない。
自分の出せる力を全て使い、敵を倒す。それが、快感なのだ。
だから後先の事など考えない。
今は目の前の敵を、鼻先まで迫った父親を倒し、
『少し名残惜しいが…楽しかったぞ』
230 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:27:55 ID:Q2wLCt6z
(あ…何で、)
このタイミングで、雑念が。
先程のグリーズの言葉が、微笑が、脳内でリフレインされ、動きが僅かに鈍る。
だがコンマ何秒の時間すら、この戦いでは致命的だ。
ほら、グリーズの剣が今にも、この体を叩き切ろうと振り抜かれ――
――無い。
彼は剣を振りかぶったままで、こちらに攻撃してこない。
まるで時が止まったかのようにその体は硬直したままで、
直後に、赤い凶刃が深々とグリーズの腹へと突き刺さった。
突進の勢いのまま、彼を刺してしまった。
『…それでいい』
鎧を貫通した腕から、グリーズの思考が伝わって来た。
『最後の最後で油断したな……危うく切ってしまう所だった』
(…え?)
危うく、切ってしまう? 何だそれは。
まるで、最初から殺す気が無かったような言い方ではないか。
(…まさか、さっきの)
こちらの隙を狙って攻撃しなかったのは、ワザとなのか。
「…どうして…?」
ブレードを解除する。これはもう必要ない。
こちらの勝ちだ。
ただ、この勝利はおそらく『最初から約束された』ものなのだろう。
グリーズと視線が交わった。
さっきまで殺気を纏わりつかせていた戦士のそれとは違う。
彼は、穏やかな――そう。父親の顔をしていた。
『気付いたか…流石、リシュテアの娘だな……勘がいい』
「そんなの誰でも気付きます! 母様の娘だとかそんなの関係無い!
卑怯ですっ! 父様っ、ワザと負けるだなんてっ、そんなの納得出来ません!」
『……そうか…心が読めるのか…鎧が無ければ、ワシは最初から負けていたな』
「そ、そんな事、やってみないと、」
びしゃり。
「きゃっ!?」
唐突に、顔面に熱い何かが吹き付けられた。
目には入らなかったものの開いた左手で目元を拭う。
そして再び目を開いた時、視界が真っ赤に染まっていた。
グリーズの血だ。
「…あ…ああぁぁぁっ…!?」
(わ、わたし、なんで、こんなっ)
戦いの興奮が冷め、人間的な感情が蘇る。
(死んじゃうっ、父様が死んじゃうっ)
慌てて腕を引き抜く。
げぼっ、と血の塊が再びグリーズの口から零れ、黒いスカートを赤く染めた。
「父様、父様っ」
呼びかけると返事の代わりに掌を握られた。
豆だらけの大きな手。
昨日までは、この手は幼い体を叩き、蹂躙するものだと思っていた。
だが今は…違う。
温もりを感じるのだ。彼の穏やかな心と共に。
『喋らなくてもいい、というのは便利なものだな……
勝負は、お前の勝ちだ……リオよ…』
231 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:29:22 ID:Q2wLCt6z
「そ、そんな事、」
『どうした…? もっと喜べ…仮にもワシに勝ったのだ…誇ってもいい』
「そんなの…っ、そんなのどうだっていいですっ!
確かに、父様と戦っている時、少し楽しかったっ!
でも、私、父様の命まで、欲しくなんか無いっ!」
そうだ。
ドルキに復讐する事も大切だ。これはいまでも変わらない。
でもそれとは別に、もう一つささやかな願いを持っている事に今更気付いた。
「私、父様にもっと甘えたかった!」
自分には母親は居ないが、父親なら居る。
ならその男に甘えれば良かったのだと気付いたのだ。
「エッチな事も、剣の修行でも、何だってやります!
でも、その分だけ、私に甘えさせて下さいっ。
一緒に、ご飯を食べたり、一緒に本を読んだりっ…!
そんな当たり前の事で良いんですっ!
ちゃんと、私の『お父さん』をして下さいっ!!」
悲痛な声が、広場に響き渡った。
『…すまん。駄目な父親だったな』
そっと、血に濡れたグリーズの右手が頬を触る。
熱い血潮が左の頬へと塗りたくられると、それを離すまいと上から押さえつけた。
『以前写真で見せてもらった事がある……
幼い日のリシュテアとそっくりだ…』
「だったらっ、私に、もっと母様の事、教えて下さいっ!
私っ、何も知らないんですっ!
母様の顔もっ、声もっ、好きな物とかっ、嫌いな物とかっ…
全部、全部教えてくださいよっ!
父様、剣神なんでしょう!? 英雄なんでしょう!?
こんな事で、死にませんよねっ!?」
自分でも無茶な事を言っているのは分かっている。
だがネコマタの眼が、彼から大量の血液と共に精気が抜け落ちていくのを捉えるのだ。
『無茶な事を言う…そんなところまで…あいつに似たのか?』
ふ、と口の端から血を流したままグリーズが不器用に微笑んだ。
穏やかなブルーの瞳に、少女の顔が映っている。
猫耳を生やした悪魔の瞳は、青と赤の猫眼だ。
父と同じ、ブルーの右目だ。
『やはり、お前はワシの娘だよ…愛しい……我が子……よ……』
彼の手から力が抜ける。
抜ける空のような瞳から徐々に意思の光が消えていく。
グリーズから、命の火が消える。
「…あ、ヤダ…っ、死んじゃ嫌ですっ! 父様っ、父様ぁっっ!!」
「……リオ、退いて」
瀕死のグリーズに泣き付く所を、背中から引っ張られた。
232 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:31:14 ID:Q2wLCt6z
振り向くと、強張った表情をしたマリオンが立っている。
「…姉様…っ、父様がっ、父様がっ」
「分かってる」
マリオンがグリーズを治癒しようと試みる。
回復を意味する白い魔術陣がグリーズの体を取り囲み、淡い光で包み始めた。
春の木漏れ日を連想させる暖かな光が、グリーズの腹に開いた傷を徐々に塞いでいく。
「ほら!! アンタ達も回復魔術が使えるでしょうっ!! 何をぐずぐずしているの!?
この人はアンタ達の大将でしょうが! 死んじゃってもいいの!?」
遠巻きに見ていたネーアが、何時の間にか眼を覚ましていた門下生達に檄を飛ばす。
治癒専門の魔術士達が顔を見合わせると、事態の深刻さに気付きグリーズへと駆け寄った。
白い魔術陣が一つ二つと数を増やし、グリーズの全身を眩い光が包み込む。
しかし何重にも治癒魔術が発動しているにも関わらず、彼の顔は土気色のままだ。
血が足りない。傷が塞がっても、それでは意味が無いのだ。
そしてそれを理解しているのだろう。
門下生達の諦めに似た表情を浮かべたいた。
『こんなの無理よ…』
『駄目、助からない…』
『この化け物のせいだ…』
『グリーズ様が…グリーズ様が…っ』
彼女達の絶望の声が聞こえる。
口に出さなくても、心の中では諦めていているのだ。
そして誰のせいで剣神と呼ばれた男が生死を彷徨っているのか。
彼が死んだら怒りの矛先を誰に向ければいいのか。
密かに叩き付けられる憎悪を敏感に感じ取って、リオはすっかり萎縮してしまった。
だがその中で、マリオンだけは希望を捨てていなかった。
『絶対助ける』
無駄だと分かっていても治癒魔術を止める気配は無い。
『本当に、不器用なんだから。
私ちゃんと分かった。父様、最初からリオを殺す気なんて無かった。
ずっと手を抜いて戦ってた。馬鹿。甲斐性無し。鬼。鬼畜っ』
「さっさと眼を覚ませこの駄目オヤジっ!」
悲鳴同然に叫んだマリオンの瞳にも薄っすらと涙が浮かんでいた。
「リオに謝って! 眼を覚ましてっ、酷い事して済まなかった、って! 謝るのっ!
死ぬならそれから死ねばいいっ! この子の事も、考えてっ」
俯き、喚き散らすマリオンの姿は普段の彼女から想像出来ない。
生の感情を剥き出しにした彼女の姿に、門下生達も、リオも唖然としてしまう。
「マリオン様…お気持ちは分かりますが…」
「もう、無理です…私達の手には、負えません…」
「そんな事、無いっ、父様はっ」
「治癒魔術だって万能じゃないんですっ。
傷を塞ぐくらいがせいぜいで、死人を生き返らす事は勿論、致命傷だって治せないっ。
そんなのマリオン様でもご存知でしょうっ?」
例えるなら水が注がれたグラスが割れたとする。
治癒魔術は割れたグラスを直す事は出来るが、零れてしまった水はそのままなのだ。
「それじゃあ、『中身』を戻せばいいのね?」
何時の間にか近付いていたネーアが女の魔術士に問いかける。
「それが出来たら苦労しませんっ! 大体貴方達魔物が攻めて来たから、」
「罪を償えって言うなら、後でいくらでも償ってあげるわ。
でも、今はまだ出来る事があるでしょう?」
「そんな事っあるわけ、」
「あるわよ? 血が足りないなら、家族から貰えばいいじゃない。
幸い、血の繋がった娘さんがここには二人も居るわ」
言ってネーアはリオをマリオンを見詰め、ウィンクを一つ。
(あ、そうか…)
ネーアの試みを読み取り、リオは僅かに顔をほころばせた。
まだ、絶望するには早い。
233 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:32:34 ID:Q2wLCt6z
ネーアが触手を一本伸ばし、マリオンへと向ける。
その先端からは、注射器のような細い針が生え出していた。
「マリオン。腕を出して。血を抜くわ」
「…分かった」
「正気ですか!? ろくな設備も無いのに、輸血作業をっ!?」
「しかも魔物の手を借りるなんて、信じられませんっ」
「他に方法があるの?」
「それは…っ、でもっ」
「無いなら黙って見てて」
「――もういいかしら?」
ネーアの問い掛けにマリオンが頷く。
グローブを外して剥き出しになった細腕に、細い針が突き刺さった。
「失敗したら今度は縦に真っ二つにするから」
「馬鹿にしないでよね。あたしを誰だと思ってるの」
(…ネーアさんに姉様、何時の間にかとっても仲良しになってる)
自分が見ていない所で何かあったのだろう。
事が終わればそれも聞いてみたいと思った。
「――はい終わり。ほら、次はリオの番よ」
「はい。お願いしますネーアさん」
「貴女はあたしから散々魔力を吸ったからね。その分多めに血取るわよ」
返事をする前に針が刺さった。
僅かな痛みと共に、血液が抜き取られていく。
十秒か二十秒か、その待っている時間がもどかしい。
「――よし。こんなものね――どう、リオ? 辛くない?」
「大丈夫です。もっと取っても良かったくらいです」
「体力は温存しておきなさい。じゃないと――
眼を覚ましたお父さんに、元気な笑顔を見せられないでしょ?」
「あ、はいっ」
だが、楽観も出来ない。
いくら血の繋がった家族とは言え素人のする輸血など分の悪い賭けでしかないのだ。
拒否反応が出ればその場で終わりである。
リオはネーアが作業しやすいようにグリーズの腕からガントレットを外す。
「ありがと」
全員が固唾を呑んで見守る中、触手の針がグリーズの腕へと突き刺さった。
今、彼の中に娘二人の血液が静かに注入されている。
(父様…っ)
ごつごつとした腕を両手で握り締める。
人外の瞳が、自分と姉の血が僅かな精気を運んで父の体内へと流れ込んでいるのを見た。
「拒絶反応は、無いようね」
ネーアの言葉に一同が緊張と共に大きく息を吐き出した。
輸血自体は無事成功と言ったところか。
ネーアが体内で二人の血液を弄繰り回してグリーズの血と混じり易くしたらしい。
つくづくアネモネとは便利な体だ。
(でも、駄目…)
顔色は少し良くなった気がするが彼の体には生命力が――精気が足りていない。
「……グリーズ様、いつ目を覚ますんですか?」
「…さぁ、そればっかりは分からないわ。そもそもあたしは医者じゃないし。
まあ、色々やる事はやってるから人体には少し詳しいけどね?」
「そんな無責任なっ」
「死亡が確定するよりかはマシでしょう?」
「だまれアネモネ! 無様に生き恥を晒すくらいなら死んだ方がましだ!」
ほんとここは馬鹿ばっかりね――そんな呟きがネーアから聞こえた気がした。
「あんた達ねぇ…死にたがりもたいがいにしなさいよ?
人間の生存本能はどこに置いて来、」
「――グリーズ様、心臓止まってる」
女の魔術士の呟きに、周囲の人間が硬直した。
234 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:33:56 ID:Q2wLCt6z
「…嘘でしょ?」
「謀ったな魔物めっ!! もう容赦はせんっ!」
「グリーズ様の弔い合戦だ!」
周りの門下生達が次々と剣を引き抜く。
彼らの瞳には例外無く憎悪が浮かび上がり、二匹の魔物へと殺気を漲らせる。
「ちょ、ちょっと早まらないのっ! 心臓止まってるならまた動かせばいいじゃない!
電気ショックとかあるでしょっ!?」
「黙れっ! これ以上、グリーズ様の体を穢させてなるものかぁっ!!」
「うわっもう、しょうがないわねぇ! この馬鹿どもはっ」
何人かの門下生達がネーアに向かって切り掛かって来る。
「っ!? 皆止めてっ! このアネモネは敵じゃないっ」
「マリオン様の頼みでもそれは聞けませんっ」
「大体そのアネモネはグリーズ様を殺した悪魔の仲間だっ」
いがみ合い、剣先を突きつける門下生達をリオは他人事のように見ていた。
(どうして、皆そんなに怒っているの?)
グリーズは助けられるというのに。
「ちょっと退いて下さい」
「えっ、あのっ」
隣に座る女魔術士を強引に引き剥がし、グリーズへと密着する。
「な、何をする気よっ」
女達の声を無視し、グリーズの頬に手を這わす。
蓄えられた立派な髭。
皺ばかりの顔。
分厚い眉や、ごわごわのブロンドの髪を撫でる。
瞳を閉じた彼の顔は、とても愛しかった。
「父様…」
瞳を閉じ、グリーズの顔へと唇を寄せる。
ネコマタが精気を吸う事が出来るなら。
精気を分け与える事も出来る筈だ。
パセットや彼女の同僚達に魔力を分け与えたように、自分の精気をグリーズに注げばいい。
(私が、絶対救ってみせます)
そうして、リオは最愛の父親に口付けをした。
***
最初に視界に飛び込んできたのは愛する娘の顔だった。
猫耳を生やし、牙を生やし、オッドアイも獣のそれとなっているが、関係ない。
「父様ぁ…っ」
抱きついてくる娘を反射的に受け止める。
恐る恐る、その桃色の髪に触れてみると、あいつの髪と同じ感触がした。
(これは夢、か?)
死んだと、思ったのだが。
娘に勝ちを譲り、腹に大穴を空けられた。致命傷だった筈だが。
「ふふふ。ネーアさんが治してくれたんですよ」
(…そうか、生き長らえたか…)
それも、いいだろう。
娘に行った数々の行い、それらを死んで償おうと思ったのだが。
「そんな簡単に、死なないで下さい。
私、まだまだ父様としたい事が一杯あるんです」
泣き笑いの表情を浮かべる愛娘の顔を見て、まだまだ死ねないなと思った。
235 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:35:06 ID:Q2wLCt6z
体を起こし、周りを見渡すとドルキの門下生達が四名ほど、心配げな表情を浮かべている。
(心配を掛けたようだな)
「ワシに構うな。大事無い」
「ほ、本当に大丈夫なのですかっ?」
「大丈夫だと言っている」
むしろリオと戦う前より元気になったのではないだろうか。
体中から力が湧き出してくるようだ。
(それに、ゆっくりと寝てはおられんようだからな)
リオの体をそっと押しやり、二本の脚でしっかりと立ち上がる。
その姿を見て数人の門下生達が狐に摘まれたような顔をした。
だが復活したグリーズに気付かずネーアに、あるいはマリオンにさえ剣を向ける者が居る。
グリーズはそれを憤慨に思いながら大きく息を吸い込んで、
「全員ッ、剣を収めよッッ!!!!」
鼓膜をつんざく大音量で声を張り上げた。
その様相は正に鶴の一声。
殺気立っていた門下生達の動きがぴたりと止まると、一様にグリーズへと視線を向ける。
「グリーズ様っ!?」
「そ、そんなまさかっ」
露骨に浮き足立つ教え子達を見て嘆かわしく思う。
実戦では何が起こるか分からない。常に冷静に対処しろと常日頃から教えているのだが。
「二度は言わんぞ…!」
仏頂面に怒気を孕ませ、門下生達を睨み付ける。
それで殆どの門下生達は渋々と剣を収めていった。
「納得出来ませんっ!」
ところが一人、無謀にもグリーズに食って掛かる者が居た。
「マリオン様は兎も角っ、この二匹は街に侵入した魔物の一味ですよ!?
ドルキ様に手傷を負わせ、あまつさえ貴方にも重症を負わせた!
そんな化け物を野放しに、」
「今、化け物と言ったか?」
ひっ、と食って掛かった男が息を呑んだ。
グリーズが発する、殺気さえ孕んだ怒りを感じて、腰が引ける。
「このワシの娘と、命の恩人向かって、貴様は化け物と言ったのかっ?」
「あ、あぁぁ…っ」
グリーズに睨み付けられた男は哀れにも恐怖に足を竦ませ、歯をガチガチと鳴らしている。
蛇に睨まれた蛙の気持ちが少しでも分かっただろうか。
「だが、貴様の言う事も一理ある。
リビディスタの戦士として、魔物を倒す事は至極真っ当な判断と言えよう。
故に、チャンスをやる」
右手から魔術陣を展開。
青く発光するそれから、屋敷の地下に安置された宝物庫から剣を転移させる。
魔術陣から生え出すように出現したのは大きな剣だ。
リオに利用された物に比べれば一回りも二回りも小さい。
それはツヴァイハンダーと呼ばれる騎乗兵を倒す為に造られた両手持ちの大剣だ。
「リビディスタの戦士なら、その強さを以って己の正しさを証明してみせよ」
ざしっ…!
両手で剣を地面へと突き刺し、眼前の男を見据える。
236 永久の果肉13 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:36:37 ID:Q2wLCt6z
グリーズの背後はリオとの戦闘で使われた愛剣が何本も突き刺さっていた。
今の彼の姿は剣神アレスのレリーフそのままの姿だ。
その威風堂々とした姿にリオやネーアを含め、全ての人間が言葉を忘れて見入り――
「…も、申し訳ありません…っ」
グリーズに楯突いた男は震える手で、剣を収めた。
***
そのおよそ五時間後。
街に侵入した魔物と、結界の外に集結していた魔物をリビディスタの戦士達が撃退した。
ドルキの激励が効いていたのか、門下生達の活躍振りは目覚ましいものだった。
死人はおろか、怪我人も殆ど出なかったのだ。
意気揚々と凱旋する彼らを街の住民達は大手を振って喜び、喝采した。
奇跡的にも街の住民達にも殆ど被害は出ていない。
せいぜい民家がいくつか潰されたくらいだ。
今回の騒動で最も深手を負ったのはグリーズとドルキの二人とも言える。
その二人も今ではすっかり傷を癒し、回復している。
リオ=リビディスタが行方不明になってからおよそ20時間。
街一つ丸々飲み込んだ盛大な親子喧嘩は一応の収束を見せた。
***
全てが上手くいった。そう思っていた。
でもそれは只の思い込みで、問題は何も解決していない。
リオの身も心も、未だに悪魔のまま、人間に戻る手段も無い。
父親との和解は済ませたが、こんな体では屋敷に戻る事も叶わない。
何より、母を殺した魔女を再び襲ってしまうかもしれない。
その時は、今度こそお互い無事では済まないだろう。
仮に、リオが屋敷に戻るとしてもだ。
ネーアとクロトが取り残された形になってしまう。
そんなのは嫌だった。
――そうか。答えは最初から決まっていたのだ。
「私、リビディスタを出ていきます」
かくして、リビディスタから末娘が姿を消した。
「――あれ…? リオッち?」
大切な友達を一人残したまま。
次回、永久の果肉最終回、
『ずっと一緒』
237 乙×風 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/17(月) 18:37:58 ID:Q2wLCt6z
お疲れ様です。シリーズ本編は今回で終了。
後は大団円(?)目指して詰めるのみですね。
しかしドルキの虐待シーンはちょっとやりすぎたかな。
まあもっと懲らしめてやっても良かったですが。
バトルシーンもちと気合が入り過ぎましたか。
エロが無くてもちゃんと読んで頂いていれば作者冥利に尽きるんですが。さてさて。
その辺りの感想もお待ちしております。
宜しければ誤字脱字等のご指摘も合わせてお願いします。
次回はエピローグのみとなります。
そしてエピローグの次には後日談と称してエロオンリー話をやる予定です。
あれ? 予定より一話多くなってる? きっと気のせいですねw
尚次回はエチシーン入れる予定です。
メインキャラの中で約一名、まだ処女のオニャノコが居ますよね?
潔く散って貰いますw あの子だけ綺麗なままなのは不公平ですからw
それではまた来週お会いしましょう。
幼女万歳。
永久の果肉12
178 乙×風 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:17:07 ID:Wai8M9kP
大変お待たせしました。乙×風です。
さあ、今日も頑張って養情晩剤を投下、じゃないや、投与します。
今回はパセットが漲りますよぉ。
同僚のメイド達を犯しては種付けし、犯しては種付けし。
いやシーン自体は少ないです。すんません。尺が取れませんでした。
(アドニス開花、種付け、バトル多め)
NGワードはそんな感じです。
名前有りの女の子(メイド達)をもっと増やして寄生拡大シーンを増量したかったです。
でもそれじゃ無限の果肉の二の轍を踏むんで、あえてばっさりと削除しました。
あれ? 寄生スレに投下する意味ががが
そんな訳ですが。それでも読みたい、という方のみお進み下さい。
以下本編です。20レスほど消費します。
179 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:18:46 ID:Wai8M9kP
第十二話 愛憎劇(前編)
『っ…クロトさんが…』
腹のアドニスを通して主の狼狽した声を聞いた。
丁度パセットが屋敷の門をくぐったところだった。
(クロト様が、どうかしたんですか?)
クロトとは余り面識も無いパセットだったが、リオからアドニスを授かった者同士だ。
それは姉妹と言えない事も無いだろう。
アドニスの繋がりはリオとのそれに比べれば細いが、微かにクロトを感じる事も出来た。
だが今はそれが無い。
『リンクが、切れた…もっとちゃんと意識を繋げておけば良かった…
そうすれば、何か手助けが出来たかもしれないのに…』
心優しい淫魔は仲魔が消えてしまった事を悲しんでいるようだった。
アドニスを通して、彼女の心が僅かに流れ込んでくる。
(何か、何でもいいから励ましてあげないと)
『…ありがとうパセットちゃん。でも、大丈夫。その気持ちだけでも頑張れるから。
クロトさんは私の考えどおり、リビディスタの目を惹きつけてくれたんだと思う。
じゃないと防御の得意なあの人が、簡単にやられる筈が無い。
パセットちゃんは予定通り屋敷に潜入して種を蒔いて。私もすぐに向かうから』
(はい。リオ様)
『私、クロトさんの働きを無駄にしないから。絶対復讐を遂げてみせる。
でも、パセットちゃん? 危なくなったら、すぐに逃げてね?
クロトさんが消えて、パセットちゃんまで消えたら、私、今度こそ…』
それからは言葉にならなかった。
が、主が自分をそれほど大切にしてくれているのは言葉が無くとも理解出来た。
『これは命令だからね、パセットちゃん』
(分かりました)
繋がりを通しての命令は決して逆らう事は出来ない。
もしそんな時が来れば、主を見捨てて逃げる可能性もあるのだ。
そしてそんな事が起きないようにと、パセットは祈った。
「あ!? 貴女! 今までどこに行っていたの!?」
突如横合いから掛けられた声に振り向く。
声の主は女性だ。歳は19。やや細身の体躯にメイド服をそつなく着こなしている。
三つ編みの黒髪と丸い眼鏡が特徴的だ。
彼女の名はメナンティ。
面倒見が良い人柄ではあるが、生真面目で融通が利かない。
パセットの姉貴分とも言える女だった。
今も腰に手を当てながらパセットを正面から見据えている。
「勝手に屋敷から居なくなっちゃうし! 街は大変な事になってるし!
リオ様は行方不明だって噂だし! いつの間にかマリオン様も帰ってきてたって話しだし!
もう一杯一杯なのよ! 余計な心配を掛けさせないで頂戴! 分かった!?
分かったら返事!!」
「…はい」
「…何よ。えらく素直じゃない…? 気持ち悪いわねぇ。
ひょっとして何か変な物でも食べたんじゃない?」
メナンティが訝しげな視線を送ってきた。
それもそうだろう。こちらは一度は精神を壊され、人格が変わってしまったのだ。
元気の塊のような過去の自分と比べれば、今の自分は別人と言っても差し支えない。
もっとも、腹にアドニスの種子を植え付けられれば誰だって大なり小なり変わると思うが。
「食べるのは、今からです」
ふ、と思わず口元が緩む。
腹の中のアドニスが目の前のメスを前に興奮している。
下着の奥から、濃厚な催淫ガスを噴出し、辺りに甘酸っぱい香りを漂わせた。
「…食べるって…何を…?」
聞き返すメナンティの体が僅かに脱力した。
「…え…? あれ? 何この、匂い…ふらふらする…」
立ち眩みを起こしたように眼鏡の侍女の体が傾く。
それを素早く脇から支えると、耳元で囁いた。
180 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:20:28 ID:Wai8M9kP
「お機嫌が優れませんか? ならお部屋までお連れしますよ?
――そこなら、誰も邪魔は入りませんから」
メナンティの肩を背負って、歩き出す。
主から受け取った魔力のお陰か、女一人くらいなら楽に支えられる。
「邪魔、って…何の話を、しているのよ?」
「嫌ですねぇ。さっき、何を食べるか、ってお聞きになっていたじゃないですか」
くすくすと笑う。
腹のアドニスが疼いてしょうがない。
種付けの快楽がどれほどのものか、早く味わってみたい。
その気持ちが、腹の魔物から溢れてくるもので、自分の意思ではないと分かっている。
だが元より主に捧げたこの体、この魂。
穢れるというならどこまでも穢れてみせよう。
主の為に。
「パセットが食べるのはメナンティさんですよ」
***
パセットがメナンティを拉致しようとしているその頃。
ドルキは屋敷の庭園に整列する戦士達を眺めていた。
彼らはこのリビディスタで厳しい訓練に耐え、力をつけてきたエリート達である。
剣を、槍を、弓を、或いは魔術を。
それぞれに秀でた者達が集まり、チームを組み、魔物どもを殲滅する。
計百名余の戦士達。
一挙一動乱さずに整列する彼らの精悍な立ち姿にドルキは感銘すら覚えた。
これが愛する者と共にこの三十年で作り上げてきた集大成だ。
これさえあれば、魔物の数百や数千など、恐れるに足らず。
「これは、訓練ではありません」
最強の私兵団に、厳かに語りかける。
「こうしている間にも魔物達が街へ侵入し、何の罪の無い民が犠牲となっています。
一足先にグリーズ様が殲滅にあたっていますが、いくら英雄と言えど限度があります」
ドルキは静かに、だが徐々に戦士達の闘志に火を点けていく。
演説紛いの行為にも熱が入り、声も大きくなる。
実際、ドルキは僅かに悦に浸っていた。
愛する人と育て上げてきた最強の戦士達。その真価が今問われようとしているのだ。
興奮しない筈が無い。
だから、こっそりと庭の反対側から侵入した淫魔の存在にも最後まで気付かなかった。
普段の彼女ならそんな失態を犯す事は無かっただろう。
だがリオが消え、グリーズが戦っている。
そしてリビディスタの総力を上げての戦いが始まろうとする時。
その瞬間に、ドルキに僅かな油断が生まれていたのだ。
「さあ! 今こそ貴方達の力を試す時です!
厳しい訓練を耐え抜き、磨き上げた技術を! そして力を!
あの醜い化け物共に見せてやりましょう!
そしてそれが終わった時、貴方達は英雄となるのです!」
おお、歓声が上がる。
戦いの前、士気の向上は必要不可欠だ。
それは一対一の決闘でも組織戦でも変わらない。
ドルキは出陣していく戦士達に激励を与えていく。
呑気なものだった。
この間にも、屋敷の中では淫魔の策略は進んでいるというのに。
***
181 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:21:51 ID:Wai8M9kP
屋敷の中、赤い絨毯の引かれた通路を、二人の侍女が歩いていた。
栗色のツインテールをした十代半ばの少女。
それから三つ編みを下げた眼鏡の女性だ。
「ここですよね」
ツインテールの少女、パセットは肩を貸しているメナンティに問い掛ける。
目の前はメナンティの自室だ。
パセットは荒い息を吐くだけで返事をしないメナンティに微笑みかける。
そして本人の了承も無しに部屋へと踏み込んだ。
気真面目な彼女の性分を表すように、部屋の中には必要最低限の家具以外は何も無い。
パセットは殺風景な部屋を我が物顔で闊歩し、ベッドへ一直線に向かう。
酷く、子宮が疼いていた。
「着きましたよ」
ベッドに着くとやや乱暴にメナンティの体を横たわらせる。
きゃ、と彼女は短い悲鳴を上げると潤んだ瞳でこちらを見上げてきた。
「そんな目をしなくても、ちゃんとしてあげます」
「な、何を…っ」
「惚けないで下さい。アソコ、疼いてしょうがないんですよね?」
こちらの指摘に彼女は泣きそうな顔をした。
眼鏡の向こうの黒い瞳には、羞恥と、それ以上の欲情が垣間見えた。
――ずぐん。
「…っあっ…!?」
(すご、いっ、アソコっ、じくじくしてるっ)
発情しているメスを嗅ぎつけて、アドニスが活動を開始したのだ。
子宮に根付いた種子が芽を伸ばし、生殖器として胎外へと伸び出て行く。
(ひゃっ、お腹の中、気持ちいいっ、奥から、出てくるっ)
「ぱ、パセット?」
「め、メナンティ、さんっ、パセットも、同じなんですっ。
今、とっても、興奮してるんですっ。み、見て下さいっ」
スカートをたくし上げる。
リオの魔力によって編まれたメイド服は外見だけを取り繕うものだ。
よってパセットは下着を着けていない。
窓の外から降り注ぐ日の光が、スカートの下、未成熟な割れ目を照らし出す。
だがそこは十代半ばの少女のものとは思えないほど濡れぼそっている。
まるで場慣れした娼婦の女性器のようなグロテスクさと淫靡さを醸し出していたのだ。
(あ、メナンティさんに、見られてるっ、パセットのおマンコ、視線が刺さってるっ)
知り合いに、と言うより主人以外の人間に最も恥ずかしい場所を見られ、頭が茹で上がる。
直後に腹から衝撃が来た。
「ひゃ、あぁっ…! 出て、出てくるぅっ!」
アドニスの芽が、子宮口を押し広げ、膣壁を擦りながら下がってくる。
子宮の内側から敏感な肉壁を拡張される感覚に、脳髄が痺れ、膝が笑う。
「ひゃ、ぁんっ! これ、気持ちいいっ、お花っ、オマタから出てくるの気持ちいいっ!
あ、あっ! いいっ! いっちゃうっ! パセット、いっちゃうよぉぉっ!!」
ずり、ずりりりりぃっ!
「ひゃううううんっっ!!?」
子宮から陰唇に掛けて痺れるような官能に満たされた。
あまりの快楽にあっけなくアクメを迎え、スカートを持ち上げる手がぷるぷると震える。
濃厚なアドニスの催淫香が鼻をついた。
「ひ、ひぃっ…!?」
怯えるメナンティを焦点を失った瞳でぼんやりと見詰める。
彼女の視線を目で追えば、自分の股で『ぐぱぁ』と花開くアドニスの姿があった。
(はぁ…♪ これでパセットも、リオ様と同じ♪)
「そ、それっ、何、何なのっ?」
「あ、はっ…んっ…! はぁっ…、はぁ…♪
こ、これはぁっ…、女の子を、とってもぉ、気持ちよくしてくれる魔物さんですぅ…。
そんなに怯えなくてもぉ、……んっ…♪ はぁっ…♪ はぁ……大丈夫、ですよぉ?
痛い事も、怖い事も、なーんにも、ありませんから♪」
こちらもベッドに上がり、怯えるメナンティを押し倒した。
催淫香のせいで抵抗は少ない。
182 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:23:09 ID:Wai8M9kP
仰向けになったメイドのスカートを捲り上げると、色っぽい黒の下着が現れる。
「へー。メナンティさん、エッチなパンツ穿いてるんですね」
「あ、貴女には関係無いっ」
「そう言わないで下さい」
黒い生地の真ん中には、くっきりと充血した陰唇の形が浮き上がっている。
リオ以外、同性の性器なんてじっくり見る事は無かったので何だか新鮮な気分だった。
「べちょべちょだぁ♪」
「きゃぁっ!?」
黒い下着に浮き上がったヴァギナを中心に徐々に愛液の染みが拡がっていた。
それを押し込んでみると、ずぶずぶと指が沈み込み、じゅくぅ、と音を立てる。
メナンティは快楽に戦慄いて、目を白黒させていた。
「嘘、どうしてこんな、敏感にっ」
「もっと、気持ちよくなりますよ」
パセットもそうでした、と付け加えてから彼女の体液をぺろりと舐める。
酸味の効いた、愛液の味に頭がクラクラする。
ぎゅるり、と腹の中で何かが蠢いた。
「あっ!? ん、ひゃぁ、ぁっ…んっ! ぁあっ…!」
花開いたアドニスの奥から、今度は生殖器がせり上がって来た。
ずるずると敏感な茎の中を、敏感な触手が押し通り、甘美すぎる快楽が弾ける。
ずるるるぅっ!
「ひゃぁぅぅんっっ…♪」
「ひっ」
花冠の中心から、雌しべに相当する生殖器が生え出した。
(は、花の中、とっても気持ちいいっ、パセット、またイっちゃったぁ♪)
花の中もこの生殖器もパセットの神経と完全に繋がっている。
敏感な第二の膣とも言うべき器官を犯され、また、犯す感覚に腰砕けになっていた。
だがそれだけではアドニスの本能は満足しない。
「はぁ、はぁっ…♪ メナンティさんっ♪」
「あ、嫌っ…! やめ、なさいっ」
「いや、嫌ですっ、もう、止められませんっ♪」
つっかえ棒のように伸ばしてくる手を払いのけ、下着を下へとずらす。
きゃ、と漏れたメナンティの悲鳴は羞恥によるものか恐怖によるものか。或いは――
(メナンティさんのアソコ、エロイ…よぉ♪)
充血し、解れ、ひくひくと脈打つ肉のアケビ。
粘液に濡れたそこに見入ってしまう。
が、それも一瞬だった。
すぐに腹の底から目の前のメスを犯してやりたいという衝動に駆られてしまう。
「はぁっ、はあっ! メナンティさんっ、犯しますっ! 種付け、しますっ」
雌しべ触手を解れたヴァギナにあてがい、ぐ、と腹に力を込める。
ず、ずりゅりゅりゅっ…!
「あっ!? ああぁぁぁぁぁっ!!!」
「ひゃ、ひゃわぁんっ♪」
大した抵抗も無く、生殖器がメナンティの中へと挿入される。
どうやら彼女は処女では無かったらしい。
人柄の割にはなかなかどうして、侮れなかった。
(これが、女の子の中っ)
発情した肉の泥濘が、全方位から敏感な触手を締め上げてくる。
具合の良さ、という点ならリオやクロトの花の中には劣るだろう。
だが、雌しべ触手自体がフタナリペニスよりも敏感だった事。
それに、本能に従い女を犯しているという状況が、パセットを過剰なまで興奮させていた。
「いいっ、いいよぉっ♪」
ずっちゅっ、ずっちゅっ、ずっちゅっ。
「んああっ!? これっ、すごいぃっ!」
快楽に流されるままピストンを始めると、途端にメナンティがあられもなく喘ぎ出した。
処女であった自分ですらはしたなく喘いだのだ。
破瓜の痛みをとうに克服した女性に、アドニスの責めは只甘い。
堅物だと思われたメナンティの表情が、見る見るうちに蕩けていく。
「メナンティ、さんっ、はっ、ぁっ! エッチな、顔してますっ」
183 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:24:23 ID:Wai8M9kP
「だってぇ、は、ぁあんっ!? あっ、ぁあっ! そ、そこぉっ!」
「ひゃうん♪」
触手の疣がGスポットを削ったらしい。
膣穴が収斂し、メナンティの喉から一オクターブ高い声が漏れた。
「はっ! んっ! メナンティさん、パセットの触手、きゅうきゅう締め付けてますっ、
触手、そんなに気持ちいいんですかっ?」
ごつん、と子宮口を突き上げる。
それでけで目前の女は甘い声を上げて白状した。
「いいっ、触手っ、いいのっ! お願いっ、もっとしてぇっ」
「あはっ。メナンティさん溜まって、たんですねっ。
はっ! はっ…! んっ! こ、こんなにっ、乱れてっ!
は、あぅっ…!? すごい、締め付けっ…!
メナンティさんっ、真面目だと思ってたのにっ、こんなにスケベだったなんてっ」
指摘すると年上の侍女はいやいやと首を振った。
「…だって、私っ、真面目だからっ、男なんて出来ないしっ…!」
それだけで何を言わんとしているか理解出来た。
成長期の女が彼氏も作れず、性的欲求を持て余す――良くある事だ。
パセットにはそういう感情は理解出来なかったが。
ここに来る前、故郷の姉がそういう悩みを抱えていた事を今でも覚えている。
「んっ! はっ! 大丈夫ですよっ? もう、寂しくはありませんっ。
パセットを、この花を受け入れてっ…! そうすればっ…幸せになれるからっ」
ぱつぱつぱつっ…!
「あっ!? あぁっ! ほんと、ほんとにっ!?」
小刻みなピストンでメナンティの正常な思考を奪う。
生真面目な女程、一度固い鎧が剥がれてしまえばもろいものだ。
恥骨同士がぶつかり、結合部で粘液が潰れる音が響く。
触手を突き入れる度にメナンティの体が弾み、ベッドを軋ませる。
あんあんと甘い喘ぎを上げながらだらしなく涎を垂らす女の眼鏡が熱気に曇っていた。
その曇りを舌を這わせて取り除くと、レンズ越しの瞳に優しく微笑みかける。
「うんっ。そうして皆で、リオ様の為に働くのっ…!
皆繋がってるからっ…寂しくないからっ」
がつんっ。大きく子宮口を突き上げる。
「あぁんっ!?」
「ねっ? どうっ? 気持ちいいよねっ!? ずっとこうしていられるよっ!?
いいでしょっ!? だから、パセットの仲間にしてあげるっ…!
メナンティさんにも、種子を、植え付けてあげるっ」
「い、いやぁ…っ、そんなの…いらない…っ」
「嘘ばっかりっ、さっきからメナンティさんのアソコっ…!
パセットの触手を咥えて全然離さないものっ…!
ほらっ! ほらぁっ…! いいんですよねっ!?
触手チンポにメロメロになって、これ無しじゃもう生きていけないんですよねっ」
じゅぽっ、じゅぽっ、じゅぽっ!
「ぁぁんっ! あっ! そうっ! そうなのぉっ! 触手っ、気持ちいいのぉっ!」
「あはっ! じゃぁもっと気持ち良くしてあげますっ!
だからおねだりしてくださいっ! 触手チンポで種付けして下さいっ、って!」
「は、はいっ! …しょ、触手、…んぽで…っ――
触手チンポで種付けして下さいっ!」
(あぁ、メナンティさん、エロイよぉ…パセット、酷い事言わせてるう♪)
眉をハの字に寄せて、メナンティは媚びた表情を浮かべていた。
腹の中のアドニスが、眼前のメスが種付けの準備を終えた事を感知する。
どくどくと、子宮の中から精液が迸り、茎の中を通る。
「ひゃわっ!? あっ! くるっ! メナンティさんにっ!
あっ、あっ、ぁうんっ! 精液どぴゅどぴゅしちゃうっ!
アドニスの種、植え付けちゃうっ!」
「く、下さいっ、私に種子をっ、花の種子を下さいっ!
あぁぁっ!? ああん! ああぁっ! ああぁっ!
私もっ、いきますっ! あぁんっ! ついてっ、もっとついてぇ!
無茶苦茶に犯して種付けしてぇぇぇっ!!」
184 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:26:02 ID:Wai8M9kP
眼鏡の向こうの黒い瞳は、快楽でどんよりと曇っていた。
理知的な表情は消えうせ、雌の本能が剥き出しになっている。
正気を失ったメナンティは、今やただの獣だった。
「ひゃうんっ、わうんっ! もうだめっ! でちゃうでちゃうっ!
せーえきでちゃうよぉあぁぁっ! いく、いっくっ!
触手チンポでしゃせいしますっ! あぁぁっ! ひゃっ! あううんっ!
あぁぁっ! ぁあぁっ! あぁぁぁっひゃううううぅぅぅぅんっっっ!!!」
びゅるっ!! どぴゅっ、どぴゅどぴゅっ!!
「わぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!!!!?」
「ああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあっっっ!!!?」
射精の快感に頭が真っ白になる。
(すごいぃっ!!? これっ、だめぇぇぇっ!!)
敏感な花の中を柔らかい種子と粘性の高い体液が迸る。
放尿するのとは比べ物にならない開放感と快楽だ。
(フタナリチンポより、もっときもちいいぃっ!!)
だと言うのに絶頂を迎えたメナンティの膣がきゅうきゅうと締め付ける。
それが肉壁に雑巾絞りされるような感触が更なる射精に繋がった。
びゅーびゅーと底を知らないように白濁液を注ぎ込む。
「あひぃっ♪ んわぁうんんんんっ♪」
パセットは犬らしく舌を垂らし、くいくいと腰を使いながら射精の快感に耽る。
メナンティもだらしなく顔を弛緩させていた。
二人してアヘ顔を晒しながら、下になったメナンティの顔にだらだらと涎を零していく。
辺りにアドニスの催淫香と、女の発情臭が一層濃く、立ち込めた。
びゅしゅっ。
結合部から何かが噴出し、花弁の粘膜を叩く。
メナンティが潮を吹いたのだった。
その直後、快楽でぶっとんだ頭が部屋の扉が開く音をぼんやりと知覚した。
背中越しに、入り口の方へと視線を向ける。
「――あ、やってるやってる♪」
(……ぁ…リオ…様…だぁ…)
笑顔で入室してきたゴスロリ姿のリオを見つけると、それだけで嬉しくなってしまう。
主人は人の姿だったが情事の余韻が残るベッドに近付くと、そこで徐に淫魔へと変身する。
「種付け終わった? ――あ、いいよ。口に出さなくて。疲れてるでしょ?
心を読むから、思考するだけでいいよ♪」
主の心遣いに胸が幸せで一杯になる。
(種付けは、無事、終了しましたぁ…)
「そっか♪ ね? どうだった? 気持ちよかったでしょ♪」
(腰が抜けましたぁ…♪)
「うんうん♪ 気に入ってもらって良かった♪ ――さて、それじゃぁ、と。
パセットちゃん? 触手チンポ抜いてくれる?」
「…? はい」
言われた通り触手を引き抜く。
だが、アクメを迎えた肉の壷は卑猥な形状の雌しべを必死に咥えて離さない。
後ろ髪を引かれるような思いで腰を引くとずるり、と触手が引っこ抜けた。
甘い愉悦が走り、びゅるり、と一度射精。
ひゃうん♪ と甘い声を上げてしまう。
「パセットちゃん、ワンちゃんみたい♪ 可愛いにゃぁ♪」
ご主人様がベッドに上がり、こちらに身を寄せてきた。
彼女はすぐ隣に腰を落ち着けすりすりと頬擦りをしてくる。
(ひゃうん♪ 幸せですぅ♪)
「――うにゃうにゃ。いけない。いけない。甘えてるとあっと言う間に時間が経っちゃう」
もっと甘えてくれてもいいのだが、主人は首をぶるぶると振って気を取り直した。
主人はメナンティの下腹部――子宮の上に手をかざす。
その小さな掌から魔術陣が現れた。
ばしゅうぅ。
「んひゃあぁぁぁぁぁぁっっ!?」
かと思うと、そこから黒い霧が噴出し、メナンティの体へと吸い込まれる。
主人が何をしているのか、パセットには何となく理解した。
185 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:27:21 ID:Wai8M9kP
あの黒い霧は淫魔の魔力だ。
先程居住区で、この身に男性の象徴を無理矢理生えさせられた時と同じ。
恐らくメナンティに自分の魔力を注いでいるのだろう。
「当ったりー♪ こうするとね? お腹のアドニスが早く成長すると思うの♪
今は一人でも多く、アネモネになって欲しいからね♪」
「あの、それじゃパセットは、どうしましょう?」
「うにゃ? する事は変わらないよ? 私がメイドさん達を連れてくるから。
パセットちゃんはそのメイドさん達をどんどん犯っちゃって種付けしてね♪」
「…分かりました」
主人の頼みだ断る理由も無かった。
「はい♪ ――んにゃ、こっちはこれくらいかな?」
主人が魔力注入を終える。
当のメナンティはと言うと、子宮に対し淫魔の凶悪な魔力注入を受けて息も絶え絶えだ。
どくん。
「あっはあぁぁぁぁっっ」
突如メナンティが目を向いて悲鳴を上げた。
捲り上げられたスカートの下。
アドニスを植え付けられた子宮が不気味に脈打っている。
(あ、ほんとに、成長してるんだぁ)
二人が僅かに息を荒くしながら見守る中、メナンティの中のアドニスが急速に育っていく。
ずるるるるっっ!
「んああぁぁぁぁぁぁぁっっ!?」
そして数十秒と待たない内にメナンティの膣から肉の花が咲いた。
ぐぱあ、と四枚の花弁を広げ、アドニスの花の匂いを撒き散らす。
何と言うか。自分の時はひたすら気持ち良くてこんな事考える暇も無かったのだが。
(お花が咲く瞬間、エロ過ぎ…)
ドキドキが止まらないではないか。
「よし。これでオーケーにゃぁ♪」
顔を赤くさせた主人が身軽な動作でベッドを降りる。
残りのメイド達を攫ってくるのだろう。
しかしその間自分は何をすればいいのだろうか。
「うにゃ? その人と遊んでくれててもいいよ♪
パセットちゃん、まだまだエッチしたいでしょ?」
図星を突かれ、赤面しながら素直に頷いた。
主人は小悪魔的な笑みを浮かべると「ごゆっくりにゃぁ♪」と言い残して部屋を出た。
「……」
そうなると自然と、パセットの目はメナンティへと吸い寄せられる。
だらしなく広げられた股にはアドニスの花が張り付き、こんこんと粘液を垂れ流している。
部屋に漂う催淫臭が濃くなっていた。
収まっていた欲情の炎が再び灯る。
眼下には花を生やした衝撃で痴呆のように涎を垂らすメナンティのアヘ顔がある。
その顔がとても愛しく思え――その唇に唇を合わせた。
「さあ、もっと気持ちいい事、教えてあげますね」
湧き上がる情動のまま、メナンティの花の中に雌しべ触手を挿入した。
***
討伐隊全てを送り出すのに一刻も掛からなかった。
彼らを見送ったドルキは、傍らの門下生達に、持ち場に着くように命じる。
十人にも満たない彼等は屋敷を防衛する為に残した戦力だ。
(少し時間は掛かりましたが、これで大丈夫でしょう)
後は討伐隊とグリーズが魔物達を殲滅してくれるだろう。
大なり小なり被害は出るだろうが、負けるような事は無い筈だ。
ドルキは自室に戻り、一息つこうと思い立った。
先程は久しぶりに大声を上げたので喉が渇いていたのだ。
適当な侍女を捕まえて茶でも淹れさせよう。
そう、思ってからふと気付いた。
(…静か過ぎますね)
186 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:28:47 ID:Wai8M9kP
屋敷の中には現在ドルキと、数名の門下生と、侍女しかいない。
合わせて二十名と居ないのだが、それを差し引いても人の気配が少なすぎる。
嫌な予感がした。
ドルキは探索魔術を発動する。
自身を中心に魔力を放射し、半径1キロ以上に及び、その中の人間と魔物を識別する。
「――これはっ」
屋敷の中に、魔物の反応が二つ存在した。
内一つはかなり強大な力を持っている。
もう片割れは大した事はないのだが、問題があった。
二匹の魔物と、数名の人間が同じ部屋に居るのだ。
ここは確か、侍女のメナンティの寝室だった筈だ。
(なんたる失態でしょうっ)
何が茶でも淹れさせようか、だ。弛み過ぎだ。
興奮の余り、周りを見ていなかった。
魔物が屋敷に入り込む隙なんて、いくらでもあったのだ。
(こんな事なら屋敷にも結界を張っておくべきでした)
魔術士は元来、自分の領地には何かしらの防御を用意するものだ。
だが、ここにはそれが無いのだ。
城壁の結界を過大評価していた為である。
だがそれも後の祭り。
兎も角、屋敷に侵入した魔物の排除を行う。
屋敷内を巡回中の門下生と合流してから向かおうかと考えたが、自分一人で十分だろう。
潜入した魔物はそこそこの力を持っているようだが、正直敵ではない。
それに今、恐らく奴らは『食事中』なのだろう。今なら隙だらけの筈だ。
そうと決まれば早速実行に移す。
転移魔術を使用し、件の寝室の目前へと一瞬で移動した。
扉を挿んだ向こう側から禍々しい気配を感じる。
ドルキはそれに気圧される事無く、扉を開け放った。
「あぁぁっっ!? もうダメェっ! それ以上、注がないでぇ!」
「あはっ…! あはははっ! 触手チンポぉ…、気持ちいいよぉっ」
「あっ! あっ! もっとっ、もっと突いて下さいっ!」
(これは…)
部屋の中では人外による饗宴が開かれていた。
悪魔の姿をした少女を筆頭に、屋敷のメイド達が肉体を絡ませ合っている。
メイド達は股から花のようなものを生やし、まだ生えていないメイドを犯しているのだ。
(アドニスっ)
寝室に篭っていた桃色のガスに理性を溶かされる前に防御魔術を展開する。
「あ? 義母様? ふふふ。随分とゆっくりしていらしたようですね?
お陰でここのメイドさん達は大体種付けが終わりました」
悪魔の姿をした少女が、犯していたメイドを解放し、立ち上がる。
「あ、貴女はっ」
股からアドニスの花を咲かせた悪魔。
猫耳と二本の尻尾。それに蝙蝠の翼を持った少女の髪は鮮やかな桃色だった。
「御機嫌よう義母様。リオ=リビディスタは帰って参りました」
はしたないデザインのスカートを摘み、少女は慇懃に頭を下げる。
「貴女に、復讐する為に」
ぎらりと光る猫目は両方とも血の色のように赤い。
「その姿…悪魔へと堕ちましたか。
それにアドニスの花まで宿して……あぁ、成る程。
森の中で野垂れ死になる前にアネモネに拾われたのですね。
ですがそれだけではその姿は説明出来ません」
「ふふふ。私は、というより母様が人外の血を持っていたそうです。
私はアネモネと交わった時に先祖帰りをしたのです」
187 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:30:00 ID:Wai8M9kP
「成る程…貴女も、貴女の親も、泥棒猫だとは思っていましたが。
まさか本当の猫だったとは、思っても見ませんでしたね」
「私も、腹違いの母親に毒殺を画策されるとは夢にも思いませんでした」
「さあ? 何の話でしょうか?」
(流石あの女の娘、と言ったところでしょうか。鋭い勘をしています)
「惚けるつもりですか? まあ、いいです。どっちにしろ私のする事には変わりませんから」
じゃきん、と真紅の爪を伸ばし、束ね、刃とする。
腰を落とし、感情の無い瞳で見据えるその姿は悪魔というよりも獣だ。
聞く耳は、まだ持っているだろうか。
「貴女の望みは何です?」
「言った筈です。復讐ですよ。私を殺そうとした貴女への。
いえ、それだけならまだ許せた。
けれど、貴女はその為に私の唯一の親友まで利用する気だった。
私には、それが許せない」
「偉そうな口をききますね。許せない、ですか。それはこちら台詞です。
貴女はあの人の体を奪った。いえ、体だけではなく心も。
あの人の心も、体も、全て私の物だというのに。
四十年以上、あの人の為に尽くしてきたと言うのに。
それを貴女は、一瞬で奪い去った!」
下位の攻撃魔術を不意打ち気味に放つ。
きぃん、とガラスを弾いたような音。
と同時に浄化作用を持った光が高熱を持ちながら悪魔へと伸びる。
だが、高速で飛来する光の帯を、少女は半歩体をずらしてあっさりとかわす。
魔術の発射音は兎も角、その威力は凄まじい。
光の帯は部屋の壁をバターのように溶かし、大穴を開けると外へと突き抜けた。
「蛙の子は蛙なのですよ。毒婦の娘も毒婦。
だから貴女は死んで当然なのです。
私のグリーズを誘惑し、穢した貴女はその罪を償う為に、死ぬべきなのです」
「……それが義母様の本心、なんですね」
「ええ。そうですとも。それとも優しい言葉を掛けてもらえると期待していたのですか?」
「まさか。あ、そうです。一つ質問してもいいでしょうか?」
「いいですよ。冥土の土産にして差し上げましょう」
「今の魔術、私は弾き返す事も出来ました。
そうなったらこの部屋の中のメイドさん達にも当たっていたかもしれない。
その事を考慮はしなかったのですか?」
何かと思えばそんな事か。
「侍女の一人や二人、死んだ所でいくらでも代わりは居ます。
それがどうかしましたか?」
「……成る程、良く分かりました」
「そうですか。なら心置きなく死んでくださいますね?」
「いえ? 死ぬのは、貴女だ!」
突如飛び掛ってくるリオ。防御結界を前面に集中させる。
菱形の魔力の壁が前面に何枚も重なり合い、積層を成す。
その正面から、悪魔は突っ込んだ!
ぎいいいいいいんんっっ!!!
刃と化した爪と結界がせめぎ合い、甲高い音を立てながら魔力の余波を撒き散らす。
(ほう。中々やりますね?)
魔力を爪に収束させているのだろう。悪魔の攻撃は鋭い。
一枚目の結界に、ひびが入っていた。真紅の爪は結界の中を徐々に押し進んでいるのだ。
時間を掛ければ、この結果は破られてしまうだろう。
だが力押しだけでは戦いに勝てない。
ばりぃん。ガラスが割れるように、一枚目の結界が音を立てて砕け散った。
破壊されたのではない。破損した防御結界を自ら破棄したのだ。
続けざまに破棄した結界の魔力をその場で集約。
それは魔術陣となり、攻撃を繰り出しているリオを捕捉する。
「……っ!?」
「吹き飛びなさい」
新たに発生した魔術陣から爆音が響いた!
188 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:31:33 ID:Wai8M9kP
「んにゃぁっっっ!?」
風の攻撃魔術を正面から食らい、悪魔の体が吹き飛ぶ。
今のは防御結界の魔力残滓をそのまま攻撃魔術に転化した技だ。
防御から攻撃へと速やかに転じるので不意打ちや迎撃に使用出来る。
だが、取り回しが良い分、威力が格段に落ちる。
至近距離から爆風を食らわせたが、ダメージは殆ど無いだろう。
悪魔は盛大に吹っ飛んで行っただけだ。
「こちらは、暫くなら放っておいても大丈夫ですね」
それでも部屋の中は台風の直撃を受けたように滅茶苦茶になっていた。
家具が引っくり返り、侍女達があられもない姿で折り重なって気絶している。
アドニスの成長がやや速い気もするが、まあ、今しばらくは大丈夫だろう。
この戦いが終わってから種子を浄化してやればアネモネになる事はない。
それよりも今は眼前の化け物を退治してやらないと。
ドルキは悠然と歩みを進め、自分で開けた部屋の大穴をくぐる。
その向こうは正門へと繋がる庭だ。
剣神アレスのレリーフが飾られた正門から屋敷の玄関までおよそ五百メートル程。
その間、一定間隔に設けられた植え込みから、春の来訪を遂げる花が咲いている。
玄関口の前には二つ、噴水も設置されている。
これら、屋敷の美しい外観は戦いに傷付いた戦士達の心を少しでも癒そうとした配慮だ。
「いたたた…っ…にゃぁ…っ? びちょびちょにゃぁ…」
吹き飛んだ淫魔は片方の噴水に突っ込んだらしい。
水瓶を掲げた女神像を模した噴水が壊れ、女神の腰から上が無くなっていた。
屋敷の外を警備していた門下生達が異常を感じ取って駆けつけてくる。
「ドルキ様! これは一体っ」
「こいつ、悪魔か!? いつの間に侵入した!?」
「ドルキ様、ここは我らにお任せを!」
「いや待て! この悪魔、どこかで見た気が…」
「下がりなさい! この魔物は私自らが倒して見せましょう!」
そうだ。そうでもしなければ、この溜飲が下がる事はない。
「ふふふ。そうこなくっちゃ♪」
倒れていたリオが反動を付けて起き上がった。
ぶるぶるぶるぶるっ!
四つん這いの格好で体を振り、衣服と髪の水気を飛ばす。
まるで本物の猫のようだった。
「余裕ですね? まあ、いいでしょう。
そうだ、貴女に母親らしい事を一つしてあげましょう。
リビディスタの者なのです。戦い方くらいは教えてあげようではないですか」
ただし、授業料は命で以って払ってもらう。
「さあ、魔術師との戦い方を教えてあげましょう」
正面へ積層の結界を展開しながら、改めて攻撃魔術を発動させる。
先程とは違い、『殲滅』を主眼に置いた攻撃魔術だ。
発動にやや時間が掛かるが、威力はある。
リオとの距離は大分離れているので発動を潰される事も無いだろう。
この時点で悪魔は回避を余儀無くされているのだ。
ドルキを中心に赤の魔術陣が発生した。
赤は攻撃魔術を表す色だ。
その赤い魔術陣から、複数の魔術陣が生み出され、リオに向かい飛来していく。
「? 何これ?」
小型の魔術陣は攻撃をするでもなく、リオの周囲を旋回しているだけだ。
初見では、それが何なのか知る由も無いだろう。
魔術陣内部の文字を読み解けば、それが『反射』を意味するものだと理解出来るだろうが。
リオには魔術文字を解読出来るほどの知識は無かった。
小型の魔術陣自体は攻撃を行う事は無い。これの役割は、
「蜂の巣になりなさい」
「っ!?」
189 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:33:02 ID:Wai8M9kP
悪魔が何かに気付いたように顔を上げた。
だがもう遅い。
地面の大型魔術陣から、連続的に光を放つ!
光の帯となってリオに襲い掛かるそれは、先程部屋に穴を開けたもに比べれば威力は低い。
だが、直撃を受ければ風穴が開くだろう。
その光を、リオの周囲に滞空させた小型魔術陣に向けて解き放つ。
魔術陣は彼女を取り囲むように、合計12箇所に配置していた。
ほぼ全方位とも言えるが、唯一真上にだけは魔術陣が無い。
リオも気付いただろう。これらの魔術陣が、光を反射させるものであると。
しかしそれが判っていても全方位に配置されたそれから逃れる事は出来ない。
唯一真上にだけは反射陣を設置していないが、この一瞬でその事に気付ける事も無い筈だ。
光の帯は高速で反射陣へと飛来した。
光は反射陣に吸収されると、その中で刹那の間停滞し、
次の瞬間、リオが真上へと大きく跳躍した。
(なんですって?)
翼をはためかせて悪魔の体が急上昇する。
その一瞬後に、彼女が居た空間を十二方向から光の帯が撃ち抜いた。
勘の良い娘だ。唯一の逃げ場所である真上方向に運良く逃げ込むとは。
「あー、怖かったぁー♪ もうちょっとで死んじゃうところだった♪」
上空から緊張感の無い声が聞こえる。
リオは翼をはためかせながら滞空していた。
体が上下に軽く揺さぶられる度にスカートの中身が見え、汚らわしく思えてしまう。
逆に駆けつけて来た男供は破廉恥な格好をした悪魔の姿に魅入っているようだった。
気に入らない。事が終われば何かしらのペナルティを課してやろう。
そんな考えが顔に出てしまっていたのか上空の悪魔が、ふふふ、といやらしく笑う。
その笑い方まで、あの女とそっくりだと思った。
「…義母様? 義母様は私の母様の事を――いえ、やっぱり、やーめたっ」
「? 何を言っているのです?」
笑っていたかと思えば急に神妙な顔つきになったり、かと思えば無邪気な表情を浮かべる。
悪魔へと身を堕としたこの娘が何を考えているのか全く分からない。
(分かる必要もありませんが)
ドルキは気を取り直し、次なる一手を打つ。
滞空しているあの悪魔を叩き落してくれよう。
ドルキは両の掌から魔術陣を生み出す。
右手と左手で異なる魔術を同時に起動させる技だ。
右手の青い魔術陣は結界を生成させるもの。
大して左手の赤い魔術陣は下位の風撃魔術だ。
屋敷の中で悪魔を外に吹き飛ばしたものと同じである。
それの威力をやや上昇させ、風力を鉄槌のように対象物へと叩き落す。
「今度は逃がしませんよ」
言葉と同時に結界魔術が発動した。
滞空する悪魔の真下に魔術陣が現れ、その真上へと魔力の壁を形成していく。
この結界、硬度はイマイチだが表面には人間をレア程度に焼く程の電流が流れている。
結界を破壊しようと迂闊に攻撃すれば、かえってダメージを与える仕組みだ。
きいいん――!
円筒状に悪魔を捕らえた結界が高速に回転し、その表面に魔力の雷撃を生み出す。
言わばこれは有刺鉄線で作られた檻だ。
悪魔は閉じ込められた事に気付くと、先程と同じように真上へと逃げようとする。
「逃がさないと言いました!」
だが風の魔術は発動している。
上空に不自然な気流が生まれ、大気が渦巻いている。
結界の内側。そして悪魔の頭上だ。退路は塞がれた。
そこから脱出する為にはダメージを覚悟で、結界を打ち破って外に出るしかない。
でなければ、圧縮された空気の槌に押し潰され、地面に叩き付けられるだけだ。
そうして動きが鈍ったところで本命を叩き込む。
190 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:34:11 ID:Wai8M9kP
「それは面倒だにゃー」
にゃー? にゃー、とは一体何だ。何の冗談だ。
疑問符を浮かべるドルキの上空で、悪魔は爪を展開した。
禍々しい魔力を収束させ、一本のブレードを作り出す。
と同時にそれを結界に突き込んだ!
ばじじじじじっ!!
「ぎにゃあぁぁぁっっ!?」
悪魔が獣の悲鳴を上げた。帯電している結界に直接攻撃したのだ。当然だった。
だがドルキは焦燥感すら覚えていた。
あの化け物は、こちらが攻撃を繰り出す度に最適な行動を取っている。
今回もそうだ。電撃によりダメージは与えられるだろうが、それが致命傷にはならない。
先に結界が破壊される。
「う、にゃあぁぁぁぁっ!! 砕けろぉぉっ!!」
耳障りな帯電音の中、悪魔が咆哮し、赤い刃に力を込めた。
「くっ」
同時に風の槌を開放する。上空から打ち下ろされるそれは魔力充填を終えていない。
直撃しても予定していたダメージより少ない。それでもむざむざ脱出されるよりマシだ。
ごうっ!
風の槌が唸り、悪魔を押し潰そうと襲い掛かる。
だがその直前に結界が音を立てて砕け散った。
悪魔が結界から脱出。その背後を風の槌が通り過ぎる。
ずどん!
星でも降ってきたかのような衝撃。音。
そして一足遅れて地上に突風が吹き荒れた。
事の成り行きを見守っていた門下生達が、強風に煽られ、地面を転がっていく。
魔術を使える者達は防御結界を張り、何とか事無きを得たようだった。
こちらも防御結界を張り、攻撃魔術の余波から身を守る。
(しくじりました…)
結界を保持していればこの衝撃やらなんやらが全て密閉空間で炸裂した訳である。
いくら悪魔と言えど無事では済まない筈だったのだが。
「ふにゃぁ…っ、危なかったにゃぁ…っ」
上空に退避していた悪魔が胸を撫で下ろしている。
「ふふふ。まだ胸がドキドキしてる♪ 義母様っ、殺し合うのって楽しいね♪」
「…化け物が…」
能天気に笑う少女の姿をした悪魔に、神経を逆撫でされてしまう。
だが、頭に血を上らせる訳にはいかない。
二度の攻撃を凌いだ悪魔の器量。素人同然の彼女にそれほどの力があるとは思えない。
何か、からくりがあるのではないのだろうか。例えば――
(読心能力、ですか?)
「あれ? もう気付かれちゃった。流石義母様♪ 魔女の二つ名は伊達じゃないね♪」
地面に降り立ち、悪魔は淫靡に微笑む。
「それで? まだ戦うの? 魔術士なんて思考が読まれれば何も出来ないんじゃないの?」
ざわり、と周囲の人間達がどよめいた。
確かに、技術で戦う戦士とは違い、魔術師は戦術で戦うものだ。
思考が先読みされれば、まともに戦えはしないだろう。
「――成る程、貴女のその髪は悪魔『シュトリ』の証だった訳ですね。
成る程成る程。あの女の勘の良さは化け物の力の一端だった訳ですか。
それにしても、他人の心を覗き見るとは。
下品な能力ですね。あの女に相応しいと言えましょう」
不敵な笑みを浮かべ、悪魔を挑発する。
悪魔はそれが挑発だと分かってはいるだろうが――
「母様を、侮辱するなぁっ!」
精神も幼いただの子供に、感情を御する事など出来はしなかった。
一直線に、こちらへと突っ込んでくる。
地を這うように、前傾姿勢で突貫するその姿は野生の猛獣そのもの。
この瞬間、新たな魔術を発動する。
それは読心能力を持った魔物に対抗する為にドルキが自ら開発した精神防御魔術。
191 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:35:16 ID:Wai8M9kP
青い魔術陣が表れ、ドルキの体を淡い光で包み込むと、それは一瞬で消滅した。
見た目は何も変わらないが、効果はすぐに現れるだろう。
(今度こそ引導を渡してあげましょう)
***
「母様を、侮辱するなぁっ!」
つい頭に血が上ってしまい、無謀な突撃を仕掛けてしまう。
それが罠かも知れないとは思うが、思考を読めるのだから致命的なミスは避けられる筈だ。
『馬鹿な娘です。こうも簡単に挑発に乗ってくれるとは』
うるさい。今すぐその喉笛を掻き切ってやる。
いや、それじゃ気が済まない。
自分を、パセットを。
そしてあろう事か他のメイド達まで平気で切り捨てるようなこの女を、許せはしない。
苦痛を与えながら、嬲り殺してやる。
そして絶望するドルキの眼前で、グリーズを魅了し、寝取ってやるのだ。
それはきっとこの上なく楽しいだろう。
想像しただけで、気分が高揚する。
ドルキは動かない。しかし防御結界は展開した。
『先程はしくじりましたが今度はそうはいきません』
結界がその姿形を徐々に変えていく。
菱形を連ねたようなタイル状の防御壁は強く発光し、ドルキを包み込む。
『思考が読まれるのならば、読まれても対処出来ないような戦術を取ればいいのです。
私は今から上位の魔術を使用します。
誘導性が強く、貫通能力に優れた光の攻撃魔術。
今度は避ける事も防ぐ事も出来ないでしょう。
最善の策は――そうですねぇ。
私が魔術を発動する前にこの結果を破壊し、私を倒す事でしょうね。
まあ、貴女に出来るとは思いませんが』
「そんなの、やってみなければ分からないよ」
相手は結界を張っているとはいえ棒立ちだ。
溜め込んだ魔力を一点に集中させ、攻撃すれば結界だって破壊出来る筈。
ドルキに向かって走りながら、リオは右手の爪に力を込めた。
(今度は、こっちの番っ)
溜まった鬱憤を晴らすべく、右の爪から展開した赤いブレードを振りかぶり、
その脚が、急に止まった。
「うにゃぁっ!?」
がくんと前方につんのめり、体勢を大きく崩す。
まるで脚を引っ掴まれたような感覚を不思議に思い、地面を見た。
(何これっ!?)
足元には何時の間にか青い魔術陣が展開していた。
その中から光の鎖のようなものが生え出し、脚を拘束しているのだ。
バインドと呼ばれる束縛の魔術だ。
主に素早い敵の動きを抑えたり、時間稼ぎに使用される補助魔術である。
(い、いつの間にこんなものを!?)
読心能力は今も発動している。
簡単なトラップだが、それを仕掛けようとする以上、大なり小なり思考をする必要がある。
それを捉えられない筈がなかった。
「簡単に引っ掛かりましたね。所詮は子供、いえ、畜生ですね」
「どういう事っ」
「私程の魔術士ともなれば精神に干渉する能力の対策くらい持っているという事です。
そう。貴女が今読み取っているのはフェイク。
私が魔術で作り出した、擬似的な思考なのです」
「そ、そんな事が…」
192 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:36:32 ID:Wai8M9kP
上位の光の攻撃魔術や、結界を破壊すればいい――云々は全て偽の情報だと言う事か。
「それを知らずに突っ込んで来てくれた貴女はいい的です。
バインドで動けないでしょう? この状態なら結界を使用する必要もありません」
防御結界が消える。
そしてその後に、赤く、大きな魔術陣が形成された。
「まあ、この防御結界も今から発動する攻撃魔術の目眩ましに過ぎないのですが」
赤い魔術陣に光が収束する。
動きを封じられたこの身では、回避は不可能だ。
死の気配が、すぐ近くまで迫っていた。
眼前の光は、この身を焼く業火の炎となるだろう。
(この絶望的な状況から逃れる為にはっ)
「さあ、貴女もこの私の手で地獄に送ってさしあげましょう。『あの女と同様に』」
引っ掛かる物言いに、一瞬思考が止まる。
だが魔術陣の光が一際大きく輝くと、リオは最後の掛けに出た。
「『お義母様っ、私を助けて』!」
光の魔術が解き放たれる。
「う、にゃあぁぁぁぁっっ!!?」
赤い魔術陣から放たれたそれは、一言で表すなら光の奔流だ。
浄化作用をもった眩い光は、熱量も有しており対象物を焼き尽くす。
虫眼鏡で太陽光を収束させるのとはレベルが違う。
直撃を受ければ、生まれたての悪魔など消し炭に出来る。
光の魔術はドルキの得意分野で、この光の砲撃とも言える魔術はドルキの十八番だった。
だが、
「っ、賢しい真似をっ」
声を荒げたのはドルキの方だ。
光の魔術は、軌道を大きく外れている。
この体を直撃する筈だった光の奔流は髪を焦がしただけで、空へと吸い込まれた。
魔術の余波で旋風が巻き起こり、熱波がひび割れた肌を炙る。
土壇場でドルキにチャームを掛けたのだ。
自分に対して魅了の魔術を使用するとは夢にも思っていなかったのだろう。
油断していたドルキはチャームの効果を受け、一瞬だったが手元を狂わせた。
が、それでも無傷では済まなかった。
リオは砲撃の余波に吹き飛ばされ、ドルキから少し離れた地面に転がる。
かと思えば身動きの取れない体に再び拘束魔術が発動した。
「にゃ、にゃぁっ…!?」
青い魔術陣から白い光が伸び、体を雁字搦めにされる。
「さあ、これで本当に万事休すですね」
ドルキはこちらの恐怖心を煽るように、ゆっくりと近付いてきた。
それは絶望の足音だ。死神の近付く気配だ。
だがこの女に復讐を果たすまでは、死んでも死に切れるものではない。
そうだ。さっきこの女は言った。
母を殺したのは自分だと。それがもし本当なら――
リオは憎しみの篭った猫目でドルキを睨みつけた。
「何か言いたい事でもあるようですね」
「…さっき、義母様は言った。
『貴女もこの私の手で地獄に送ってさしあげましょう。あの女と同様に』って。
その言い方じゃ、まるで義母様が…」
自分も含め屋敷の人間はリシュテアの死因が病死だと思っていた。
だが実際は、
『そうです。私が殺しました』
時間が止まる。
衝撃の事実に戦いの最中だという事も忘れ、呆然としてしまう。
(殺した? 病死じゃ、なかったの?)
193 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:37:30 ID:Wai8M9kP
「まるで私が、何ですか? まさか私があの女を殺したとでも?
根拠の無い言い掛かりですね。不愉快です」
ドルキは思考で真実を伝えつつ、言動ではまるで被害者のように取り繕っていた。
だが彼女がうっすらと笑みを浮かべている事に気付くと、胸の内から怒りが溢れ出す。
そんな、こちらの内心を尻目に彼女は思考で真実を語る。
『毒を盛ったのですよ。特別に取り寄せた物です。
遅効性で、本人が無自覚のまま体を蝕んでいき、気が付いた頃には手遅れ――
そういうものです。お陰で誰も気付きませんでしたね。
あの人も、それ以外の人間も、彼女が運悪く病に掛かったとしか思わなかった。
全て、私の計画通りだったのです』
「うああぁぁぁぁぁっっっ!!!」
怒りで視界が真っ赤に染まった。
「貴女が、貴女が母様を殺したああぁぁっっ!!」
「は? 何ですかいきなり。まるで私があの女を殺したような口振りですね。
成る程、さも私が加害者だと周りの人間に思わせる。それが悪魔の手口という訳ですか」
「うるさいっ、うるさいっ! あなたの方がよっぽど悪魔だ!
私の母様を殺して! 私も殺そうとして! パセットちゃんまで巻き込むつもりだった!
許さない! 殺してやる! 絶対に殺してやる!」
『貴女が何を言っても、誰も信じませんよ。
此処は貴女の居るべき所では無いのです』
ドルキの言動と思考はちぐはぐだ。
そのせいで、リオは真実を知って憤っているのに周りの人間にはその理由が伝わらない。
今もリオは孤立無縁だ。誰も味方などしてくれない。
しかし流石に大声を上げる悪魔に、流石の門下生達も戸惑いを隠せないようだ。
それはドルキとリシュテアの関係は皆知っているからである。
周りの人間から見れば、殺人の疑いも無くは無いのだ。
だがリビディスタの創立者の一人であり、メディアの称号を持つ偉大な魔術師。
そしてアドニスの花を宿した悪魔。
観衆は、一体どちらの言葉を信用するだろうか。
「さっきから何ですか。人を殺人鬼呼ばわりして。
目上の者に対する態度ではありませんね。
――貴方達も。このような化け物の言葉に耳を貸してはいけません。
悪魔は人の心に付け入り、堕落させる魔物です。
鬼気迫る表情ですが、あれは演技ですよ。
分かりますか? 貴方達は騙されているのですよ」
「――な、成る程…」
「確かに。悪魔は悪知恵を働かせる魔物だ」
「そうか。ならばリオ様の姿をしているのも、我々を油断させる為かっ? なんと卑劣なっ」
ドルキの言葉で彼女に対する猜疑心は少しづつ消えていくようだった。
伊達に歳を食ってはいないという事か。
そうだ。悪魔は人を騙す。人を誘惑する。
門下生達はそれを知っているからドルキの言葉を鵜呑みにしてしまったのだ。
真の悪魔はドルキの方だと言うのに。
『これで分かりましたか? 貴女は一人なのですよ』
「貴女という人はあぁっっ!!」
怒りに任せて暴れ回る。
だがバインドのせいで芋虫のように地面をのたうつだけ。
『あっはっはっは。無様ですねぇ? いい気味です。
森の中で魔物に食われて居た方がまだ幸せだったのではないですか?』
「うああぁぁぁぁぁっっ!!!」
(悔しいっ! ネーアさんに助けられて、人間を止めてまで復讐を決めたのに!
こんな最低の人間に、いいようにされるなんてっ!)
憎しみの篭った目でドルキを睨み付ける。
194 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:38:27 ID:Wai8M9kP
魔力を乗せ、殺意を乗せ、耐性の無い者ならそれだけで戦意を喪失してしまうだろう。
だが非情な魔術師は不敵に笑うだけだった。
「ふぅ。ここまで来ると見苦しいばかりですね。
もういいでしょう。貴女の『親子ごっこ』にも飽きました。
――死になさい」
動けないこちらに向けて、掌をかざす。
一足で踏み込める距離だ。外しようが無い。
そしてこちらの悪足掻きすら想定し、防御結界を張る。
(私、死ぬの…?)
これは、もう詰みだ。どうしようもない。
(ごめんなさい。パセットちゃん。ごめんなさいクロトさん。
ごめんなさいネーアさん。私、負けちゃったよ…)
せめて、せめてこの人の皮を被った悪魔に、一太刀でも食らわせてやりたかった。
「さようなら。地獄であの女が待っていますよ」
赤い魔術陣から光が解き放たれた。
死ぬ。死ぬのか。いや、だとしても。
最後まで、抵抗し続けてやる。
死が確定した中で、リオはドルキの瞳から目を逸らさなかった。
もしこの世から消えても、化けて出てやる。
それくらいの意気込みで魔女の瞳を睨み付けて、
視界を、何かが遮った。
ドルキとの間に立ち塞がるように。
何者かが突然虚空から現れる。
同時にその誰かは防御結界を展開し、リオを狙った下位の攻撃魔術を弾き飛ばした。
ぎいいいいんっ!!
魔術同士が干渉し合い、摩擦を生み、耳障りな音を立てる。
辺りに眩い光を撒き散らすと、眼前の茜色のマントがはためいた。
マントの中央には『ヘスペリス』と描かれた刺繍。
「あ、貴女はっ」
ドルキが驚きの声を上げた。
周囲の人間達も、突然の乱入者に戸惑いを隠せない様子だ。
「良かった。今度は、間に合った」
乱入者から紡がれた声は美しく、聞き惚れてしまいそうだった。
(この声、どこかで…)
もうずっと聞いていない、だが聞いた事のある、女性の声だった。
ヘスペリスの女が振り向く。
流水のようなブロンドの髪。抜けるような空と同じ色の瞳。
その人物はグリーズの血を継いでいるとすぐに分かった。
「ただいま。リオ」
その女は女神のように美しい顔を僅かにはにかませた。
「姉、様…? どうして…?」
訳が、分からない。
姉は優秀だ。若くしてヘスペリスに入り、将来を約束されている。
そんな姉がどうして屋敷に戻ってきたのだ。
いや、それよりも。
(どうして、私を庇ったの?)
自分なんて姉に比べれば何の取り得も無い存在。
リビディスタの名を借りた、只の人形のようなものだ。
母の違う姉妹は、接点も殆ど持っていない。
そんな姉が、今更どうしてこの身を庇うというのだ。
「ん」
ぎゅ、とマリオンがこの身を抱き締めた。
バインド越しに、人の温もりと、彼女の思考が伝わってくる。
195 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:41:55 ID:Wai8M9kP
『遅れてごめんなさい』
『良い子にしてた?』
『寂しくはなかった?』
『手紙、出せば良かった。ごめん』
『助けられなくてごめん』
『でももう離さない』
『人間じゃなくなっても。リオはリオ』
『だから私が、守る』
(え…うそ…これが、姉様の、本心…?)
何だこれは。自分の事ばっかりじゃないか。
知らなかった。自分の味方は、屋敷の中ではパセットだけかと思っていた。
でも、こんなに身近に自分を思ってくれる人が居た。
『今まで助けられなかった分。
これからはリオの事、ずっと守り続ける。
その為に私は強くなったから』
「ふぇ…っ」
胸の内から何かが込み上げてくる。
殺伐とした愛憎劇の中、差し伸べられた希望の手。
自分の事を思い、大切にしてくれる者の意思が、絶望と憎悪にささくれた心を癒す。
「ふええぇぇぇぇぇんっっ!!」
気が付いたら泣きじゃくっていた。
さっきまでドルキと死闘を繰り広げていた悪魔はもうそこに居ない。
「姉様ぁぁっ!! 姉様ぁぁっっ!」
びーびーと子供のように泣く。
その姿に周りの人間は――ドルキさえもが唖然とした様子だった。
だが誰もが失念していたのだ。
目の前の悪魔の姿をした少女が、元はたった十二歳の子供であるという事に。
そしてそれを理解しているのは、この場でマリオンただ一人だけだった。
束縛されながらも、顔を姉の首元に押付ける。
マリオンはそれに応えるように、髪を梳いてくれた。
「よしよし」
その撫で方は、ネーアに比べれば雑で、不器用だったけれども。
『もう、大丈夫だから。大丈夫だからね』
彼女の思い遣りがあれば、それで十分だった。
「びええぇぇぇぇん!!」
門下生達とドルキが見守る中。
再開を果たした姉妹はずっと抱き締めあっていた。
***
そうしてどれくらいの時間が過ぎただろうか。
「あらあら。まあまあ。マリオン、いつの間にか帰っていたのですね。
少しばかり慌しくしていましたから気が付きませんでした」
痺れを切らしたドルキが口を開いた。
ところがマリオンは肩越しにこちらを一目見ただけで、リオをあやす作業に戻ってしまう。
その姿を見て、ふとドルキは思い出した。
(まさかマリオンは、この娘に感情移入しているのですか?)
元よりマリオンはあの女に好意を抱いていた。
駄目だと言っているのにこちらの目を盗んでは、何度もあの女の元を訪ねたくらいだ。
そしてリオはその女の娘だ。何かしら思う所があるのかもしれない。
しかしもしもそうだったとしたら。面倒な事になる。
(説得するしかありませんね)
196 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:43:34 ID:Wai8M9kP
その娘はもう悪魔だ。貴女の知っているリオではない。
涙も、嗚咽も、全て貴女を騙し、利用する為の演技だ、と。
「マリオン。気持ちは分かります。貴女はその娘を気に掛けているのですね?
ですが騙されてはいけません。その娘は悪魔へと堕ちてしまったのです。
もう貴女の知ってい、」
「黙れクソババア」
「く、クソ…? ――今何と言いましたか?」
実の娘の口から出た下品な言葉に耳を疑ってしまった。
しかもそれが自分に対する中傷なのだからますます信じられない。
マリオンはこちらの問い掛けには答えずが、ゆらり、と立ち上がった。
その顔はグリーズを連想させるポーカーフェイスのままだ。
しかし、誰が見ても彼女が腸が煮えくり返りそうなほど激怒しているのが分かった。
その背後に怒りのオーラまでも幻視しそうなほど。
(……あのマリオンが私に楯突いている?)
あの女に懐いているのは知っていたが、それでもこちらの言う事を大人しく聞いていた。
見えないところで癇癪を起こしたりする事はあったようだが、年頃の女なら普通だろう。
手塩を育ててきた実の母親に歯向かう理由にはならない。
正直、マリオンが何を怒っているのか分からなかった。
だからドルキは混乱した。
そこの憎き女の娘の味方をする理由が分からなかった。
(私よりも、あの女の娘を取るというのですか?
いえ、きっとマリオンは感情的になっているだけです。
冷静になれば、私の方が正しいと分かってくれる筈)
ここは何とか宥めて、彼女に落ち着いて貰わなければ。
でなければそこの淫魔を片付ける事も出来ない。
「マリオン。良くお聞きなさい。その娘は私の命を奪おうとしたのです。
貴女の知っているリオという娘は、そんな蛮行をするような人間でしたか?」
マリオンは返事をする代わりにこちらに向かって一歩踏み出した。
「違うでしょう? あの娘は自己主張の出来ない、大人しい娘でした。
それが、血が繋がっていないとはいえ母親を殺すなど……ありえるのでしょうか?」
聞いているのか聞いていないのか。
マリオンはこちらを怒りの眼差しで見詰めたまま、一歩、また一歩と近付いてくる。
嫌な予感がした。
「マリオン? 聞いているのですか?
――ああ、そうですね。私にも、少しばかり非はあるのかもしれません。
ですが命を奪いに来た魔物を、どうして見逃す事が出来るでしょうか?」
マリオンとの距離が縮まる。
一足で踏み込める所まで近付けば、彼女の怒気がより鮮明に感じられた。
殺意すら篭った視線に射抜かれ、額に汗が滲む。
「そ、そうそうっ。
この娘は私の命を狙うどころか、屋敷のメイド達まで手を出したのですよ?
全員、アドニスの種子を植え付けられたようです。
何の罪も無い娘達まで巻き込むなんて、非情な悪魔のする事です。
人間の仕業とは思え、」
マリオンの怒気が膨れ上がった。
「お前が、言うなあぁぁぁぁっっ!!!」
マリオンの真下に青い魔術陣が展開。
それは光の粒子を噴出し、彼女の右手へと収束していく。
(強化の魔術っ)
まずい。リオとの戦いでこちらは消耗している。
強化された攻撃をまともに喰らえば只では済まない。
197 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:47:11 ID:Wai8M9kP
迎撃か、防御か。どちらかを行わなければ。
(止むを得ませんっ)
即席で光の攻撃魔術を発動。
威力は低いが鎧の覆われてない部分に穴を開けるくらいは出来る。
脚を封じて、距離を取る。
ドルキはマリオンの細い足に狙いを定め、
次の瞬間彼女の体が掻き消えた。
しまった――そう思った時にはもう遅い。
背後に転移したマリオンが、拳を握り締め、渾身の一撃を放つ!
「死、ねえぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!」
(防御っ)
マリオンの腕が届く直前、何とか防御魔術を発動。
ぎいいいいいぃぃぃぃぃんっっ!!
耳障りな音と共に、防御結界とマリオンの腕の間で魔力の光が火花となって撒き散る。
が、マリオンの拳が光のタイルにめり込み、一つ、また一つと光の粒となって消えていく。
不安定な体勢から発動した防御結界では、怒りに我を忘れたマリオンの前では無力。
呆然とするドルキの前で、マリオンの右腕が結界に深く食い込んだ。
ばりぃんっ――防御結界が、攻撃の負荷に耐え切れずに粉砕されて、
「めぎれっ!?」
結界を突き抜けたマリオンの拳が、ドルキの厚化粧の上に食い込んだ。
***
マリオンは気付いていなかった。
リオがかつての優しい少女では無くなっている事に。
ドルキの言葉が、真実であったという事に。
ドルキを怒りのままに殴り飛ばし。
そしてリオを助け出せばそれで全てが上手くいくと思っていた。
「お陰で義母様に止めを刺す事が出来ます」
甘かった。
笑顔で母を殺すと言う妹に愕然とする。
悪魔の残虐性を表し、マリオンにチャームを掛けるとリオはドルキをいたぶり始める。
無邪気な少女の顔をしたまま、腹を蹴り、爪で顔を引き裂く。
狂ったように笑う妹に、マリオンは自分が取り返しのつかない事をしたと気付いた。
「悪い子はどこだああぁぁぁっっ!!!」
しかし。絶望的なこの状況に、一匹のアネモネが乱入した。
彼女の名前はネーア。
いや、ネーアだけではない。
あのグリーズまでもが、ドルキの危機に駆けつけた。
ネーアとグリーズ。
二百年の長寿を誇る最強のアネモネ。
リビディスタの長にして剣神の称号を持つ戦士。
この二人が居れば恐れるものなど無い。
次回、永久の果肉十三話、
愛憎劇―後編―
愛と憎しみに彩られた最悪の親子喧嘩。これにて決着。
198 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:48:35 ID:Wai8M9kP
はーい。お疲れ様でした。
しかし読み返してみるとラストシーンの引き方ってばないですねぇ。
シリアスなのかギャグなのかw
いつものように誤字脱字感想等お待ちしておりますー。
さて。予定通り本編は次回投稿分で終了予定です。
エロシーンも、多分ありません。
まあ、その代わりと言っては何ですが。
エピローグというか後日談にてエロオンリーのお話をやるつもりです。
マリオンのエロとか各キャラの和姦などなどやり残したエロをしたいですね。
今回はこの辺りで失礼します。
また来週お会いしましょー。
洋女っ、晩、ざぁぁぁぁぁぁいい!!!
うん。これはちょっとわざとらs
大変お待たせしました。乙×風です。
さあ、今日も頑張って養情晩剤を投下、じゃないや、投与します。
今回はパセットが漲りますよぉ。
同僚のメイド達を犯しては種付けし、犯しては種付けし。
いやシーン自体は少ないです。すんません。尺が取れませんでした。
(アドニス開花、種付け、バトル多め)
NGワードはそんな感じです。
名前有りの女の子(メイド達)をもっと増やして寄生拡大シーンを増量したかったです。
でもそれじゃ無限の果肉の二の轍を踏むんで、あえてばっさりと削除しました。
あれ? 寄生スレに投下する意味ががが
そんな訳ですが。それでも読みたい、という方のみお進み下さい。
以下本編です。20レスほど消費します。
179 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:18:46 ID:Wai8M9kP
第十二話 愛憎劇(前編)
『っ…クロトさんが…』
腹のアドニスを通して主の狼狽した声を聞いた。
丁度パセットが屋敷の門をくぐったところだった。
(クロト様が、どうかしたんですか?)
クロトとは余り面識も無いパセットだったが、リオからアドニスを授かった者同士だ。
それは姉妹と言えない事も無いだろう。
アドニスの繋がりはリオとのそれに比べれば細いが、微かにクロトを感じる事も出来た。
だが今はそれが無い。
『リンクが、切れた…もっとちゃんと意識を繋げておけば良かった…
そうすれば、何か手助けが出来たかもしれないのに…』
心優しい淫魔は仲魔が消えてしまった事を悲しんでいるようだった。
アドニスを通して、彼女の心が僅かに流れ込んでくる。
(何か、何でもいいから励ましてあげないと)
『…ありがとうパセットちゃん。でも、大丈夫。その気持ちだけでも頑張れるから。
クロトさんは私の考えどおり、リビディスタの目を惹きつけてくれたんだと思う。
じゃないと防御の得意なあの人が、簡単にやられる筈が無い。
パセットちゃんは予定通り屋敷に潜入して種を蒔いて。私もすぐに向かうから』
(はい。リオ様)
『私、クロトさんの働きを無駄にしないから。絶対復讐を遂げてみせる。
でも、パセットちゃん? 危なくなったら、すぐに逃げてね?
クロトさんが消えて、パセットちゃんまで消えたら、私、今度こそ…』
それからは言葉にならなかった。
が、主が自分をそれほど大切にしてくれているのは言葉が無くとも理解出来た。
『これは命令だからね、パセットちゃん』
(分かりました)
繋がりを通しての命令は決して逆らう事は出来ない。
もしそんな時が来れば、主を見捨てて逃げる可能性もあるのだ。
そしてそんな事が起きないようにと、パセットは祈った。
「あ!? 貴女! 今までどこに行っていたの!?」
突如横合いから掛けられた声に振り向く。
声の主は女性だ。歳は19。やや細身の体躯にメイド服をそつなく着こなしている。
三つ編みの黒髪と丸い眼鏡が特徴的だ。
彼女の名はメナンティ。
面倒見が良い人柄ではあるが、生真面目で融通が利かない。
パセットの姉貴分とも言える女だった。
今も腰に手を当てながらパセットを正面から見据えている。
「勝手に屋敷から居なくなっちゃうし! 街は大変な事になってるし!
リオ様は行方不明だって噂だし! いつの間にかマリオン様も帰ってきてたって話しだし!
もう一杯一杯なのよ! 余計な心配を掛けさせないで頂戴! 分かった!?
分かったら返事!!」
「…はい」
「…何よ。えらく素直じゃない…? 気持ち悪いわねぇ。
ひょっとして何か変な物でも食べたんじゃない?」
メナンティが訝しげな視線を送ってきた。
それもそうだろう。こちらは一度は精神を壊され、人格が変わってしまったのだ。
元気の塊のような過去の自分と比べれば、今の自分は別人と言っても差し支えない。
もっとも、腹にアドニスの種子を植え付けられれば誰だって大なり小なり変わると思うが。
「食べるのは、今からです」
ふ、と思わず口元が緩む。
腹の中のアドニスが目の前のメスを前に興奮している。
下着の奥から、濃厚な催淫ガスを噴出し、辺りに甘酸っぱい香りを漂わせた。
「…食べるって…何を…?」
聞き返すメナンティの体が僅かに脱力した。
「…え…? あれ? 何この、匂い…ふらふらする…」
立ち眩みを起こしたように眼鏡の侍女の体が傾く。
それを素早く脇から支えると、耳元で囁いた。
180 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:20:28 ID:Wai8M9kP
「お機嫌が優れませんか? ならお部屋までお連れしますよ?
――そこなら、誰も邪魔は入りませんから」
メナンティの肩を背負って、歩き出す。
主から受け取った魔力のお陰か、女一人くらいなら楽に支えられる。
「邪魔、って…何の話を、しているのよ?」
「嫌ですねぇ。さっき、何を食べるか、ってお聞きになっていたじゃないですか」
くすくすと笑う。
腹のアドニスが疼いてしょうがない。
種付けの快楽がどれほどのものか、早く味わってみたい。
その気持ちが、腹の魔物から溢れてくるもので、自分の意思ではないと分かっている。
だが元より主に捧げたこの体、この魂。
穢れるというならどこまでも穢れてみせよう。
主の為に。
「パセットが食べるのはメナンティさんですよ」
***
パセットがメナンティを拉致しようとしているその頃。
ドルキは屋敷の庭園に整列する戦士達を眺めていた。
彼らはこのリビディスタで厳しい訓練に耐え、力をつけてきたエリート達である。
剣を、槍を、弓を、或いは魔術を。
それぞれに秀でた者達が集まり、チームを組み、魔物どもを殲滅する。
計百名余の戦士達。
一挙一動乱さずに整列する彼らの精悍な立ち姿にドルキは感銘すら覚えた。
これが愛する者と共にこの三十年で作り上げてきた集大成だ。
これさえあれば、魔物の数百や数千など、恐れるに足らず。
「これは、訓練ではありません」
最強の私兵団に、厳かに語りかける。
「こうしている間にも魔物達が街へ侵入し、何の罪の無い民が犠牲となっています。
一足先にグリーズ様が殲滅にあたっていますが、いくら英雄と言えど限度があります」
ドルキは静かに、だが徐々に戦士達の闘志に火を点けていく。
演説紛いの行為にも熱が入り、声も大きくなる。
実際、ドルキは僅かに悦に浸っていた。
愛する人と育て上げてきた最強の戦士達。その真価が今問われようとしているのだ。
興奮しない筈が無い。
だから、こっそりと庭の反対側から侵入した淫魔の存在にも最後まで気付かなかった。
普段の彼女ならそんな失態を犯す事は無かっただろう。
だがリオが消え、グリーズが戦っている。
そしてリビディスタの総力を上げての戦いが始まろうとする時。
その瞬間に、ドルキに僅かな油断が生まれていたのだ。
「さあ! 今こそ貴方達の力を試す時です!
厳しい訓練を耐え抜き、磨き上げた技術を! そして力を!
あの醜い化け物共に見せてやりましょう!
そしてそれが終わった時、貴方達は英雄となるのです!」
おお、歓声が上がる。
戦いの前、士気の向上は必要不可欠だ。
それは一対一の決闘でも組織戦でも変わらない。
ドルキは出陣していく戦士達に激励を与えていく。
呑気なものだった。
この間にも、屋敷の中では淫魔の策略は進んでいるというのに。
***
181 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:21:51 ID:Wai8M9kP
屋敷の中、赤い絨毯の引かれた通路を、二人の侍女が歩いていた。
栗色のツインテールをした十代半ばの少女。
それから三つ編みを下げた眼鏡の女性だ。
「ここですよね」
ツインテールの少女、パセットは肩を貸しているメナンティに問い掛ける。
目の前はメナンティの自室だ。
パセットは荒い息を吐くだけで返事をしないメナンティに微笑みかける。
そして本人の了承も無しに部屋へと踏み込んだ。
気真面目な彼女の性分を表すように、部屋の中には必要最低限の家具以外は何も無い。
パセットは殺風景な部屋を我が物顔で闊歩し、ベッドへ一直線に向かう。
酷く、子宮が疼いていた。
「着きましたよ」
ベッドに着くとやや乱暴にメナンティの体を横たわらせる。
きゃ、と彼女は短い悲鳴を上げると潤んだ瞳でこちらを見上げてきた。
「そんな目をしなくても、ちゃんとしてあげます」
「な、何を…っ」
「惚けないで下さい。アソコ、疼いてしょうがないんですよね?」
こちらの指摘に彼女は泣きそうな顔をした。
眼鏡の向こうの黒い瞳には、羞恥と、それ以上の欲情が垣間見えた。
――ずぐん。
「…っあっ…!?」
(すご、いっ、アソコっ、じくじくしてるっ)
発情しているメスを嗅ぎつけて、アドニスが活動を開始したのだ。
子宮に根付いた種子が芽を伸ばし、生殖器として胎外へと伸び出て行く。
(ひゃっ、お腹の中、気持ちいいっ、奥から、出てくるっ)
「ぱ、パセット?」
「め、メナンティ、さんっ、パセットも、同じなんですっ。
今、とっても、興奮してるんですっ。み、見て下さいっ」
スカートをたくし上げる。
リオの魔力によって編まれたメイド服は外見だけを取り繕うものだ。
よってパセットは下着を着けていない。
窓の外から降り注ぐ日の光が、スカートの下、未成熟な割れ目を照らし出す。
だがそこは十代半ばの少女のものとは思えないほど濡れぼそっている。
まるで場慣れした娼婦の女性器のようなグロテスクさと淫靡さを醸し出していたのだ。
(あ、メナンティさんに、見られてるっ、パセットのおマンコ、視線が刺さってるっ)
知り合いに、と言うより主人以外の人間に最も恥ずかしい場所を見られ、頭が茹で上がる。
直後に腹から衝撃が来た。
「ひゃ、あぁっ…! 出て、出てくるぅっ!」
アドニスの芽が、子宮口を押し広げ、膣壁を擦りながら下がってくる。
子宮の内側から敏感な肉壁を拡張される感覚に、脳髄が痺れ、膝が笑う。
「ひゃ、ぁんっ! これ、気持ちいいっ、お花っ、オマタから出てくるの気持ちいいっ!
あ、あっ! いいっ! いっちゃうっ! パセット、いっちゃうよぉぉっ!!」
ずり、ずりりりりぃっ!
「ひゃううううんっっ!!?」
子宮から陰唇に掛けて痺れるような官能に満たされた。
あまりの快楽にあっけなくアクメを迎え、スカートを持ち上げる手がぷるぷると震える。
濃厚なアドニスの催淫香が鼻をついた。
「ひ、ひぃっ…!?」
怯えるメナンティを焦点を失った瞳でぼんやりと見詰める。
彼女の視線を目で追えば、自分の股で『ぐぱぁ』と花開くアドニスの姿があった。
(はぁ…♪ これでパセットも、リオ様と同じ♪)
「そ、それっ、何、何なのっ?」
「あ、はっ…んっ…! はぁっ…、はぁ…♪
こ、これはぁっ…、女の子を、とってもぉ、気持ちよくしてくれる魔物さんですぅ…。
そんなに怯えなくてもぉ、……んっ…♪ はぁっ…♪ はぁ……大丈夫、ですよぉ?
痛い事も、怖い事も、なーんにも、ありませんから♪」
こちらもベッドに上がり、怯えるメナンティを押し倒した。
催淫香のせいで抵抗は少ない。
182 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:23:09 ID:Wai8M9kP
仰向けになったメイドのスカートを捲り上げると、色っぽい黒の下着が現れる。
「へー。メナンティさん、エッチなパンツ穿いてるんですね」
「あ、貴女には関係無いっ」
「そう言わないで下さい」
黒い生地の真ん中には、くっきりと充血した陰唇の形が浮き上がっている。
リオ以外、同性の性器なんてじっくり見る事は無かったので何だか新鮮な気分だった。
「べちょべちょだぁ♪」
「きゃぁっ!?」
黒い下着に浮き上がったヴァギナを中心に徐々に愛液の染みが拡がっていた。
それを押し込んでみると、ずぶずぶと指が沈み込み、じゅくぅ、と音を立てる。
メナンティは快楽に戦慄いて、目を白黒させていた。
「嘘、どうしてこんな、敏感にっ」
「もっと、気持ちよくなりますよ」
パセットもそうでした、と付け加えてから彼女の体液をぺろりと舐める。
酸味の効いた、愛液の味に頭がクラクラする。
ぎゅるり、と腹の中で何かが蠢いた。
「あっ!? ん、ひゃぁ、ぁっ…んっ! ぁあっ…!」
花開いたアドニスの奥から、今度は生殖器がせり上がって来た。
ずるずると敏感な茎の中を、敏感な触手が押し通り、甘美すぎる快楽が弾ける。
ずるるるぅっ!
「ひゃぁぅぅんっっ…♪」
「ひっ」
花冠の中心から、雌しべに相当する生殖器が生え出した。
(は、花の中、とっても気持ちいいっ、パセット、またイっちゃったぁ♪)
花の中もこの生殖器もパセットの神経と完全に繋がっている。
敏感な第二の膣とも言うべき器官を犯され、また、犯す感覚に腰砕けになっていた。
だがそれだけではアドニスの本能は満足しない。
「はぁ、はぁっ…♪ メナンティさんっ♪」
「あ、嫌っ…! やめ、なさいっ」
「いや、嫌ですっ、もう、止められませんっ♪」
つっかえ棒のように伸ばしてくる手を払いのけ、下着を下へとずらす。
きゃ、と漏れたメナンティの悲鳴は羞恥によるものか恐怖によるものか。或いは――
(メナンティさんのアソコ、エロイ…よぉ♪)
充血し、解れ、ひくひくと脈打つ肉のアケビ。
粘液に濡れたそこに見入ってしまう。
が、それも一瞬だった。
すぐに腹の底から目の前のメスを犯してやりたいという衝動に駆られてしまう。
「はぁっ、はあっ! メナンティさんっ、犯しますっ! 種付け、しますっ」
雌しべ触手を解れたヴァギナにあてがい、ぐ、と腹に力を込める。
ず、ずりゅりゅりゅっ…!
「あっ!? ああぁぁぁぁぁっ!!!」
「ひゃ、ひゃわぁんっ♪」
大した抵抗も無く、生殖器がメナンティの中へと挿入される。
どうやら彼女は処女では無かったらしい。
人柄の割にはなかなかどうして、侮れなかった。
(これが、女の子の中っ)
発情した肉の泥濘が、全方位から敏感な触手を締め上げてくる。
具合の良さ、という点ならリオやクロトの花の中には劣るだろう。
だが、雌しべ触手自体がフタナリペニスよりも敏感だった事。
それに、本能に従い女を犯しているという状況が、パセットを過剰なまで興奮させていた。
「いいっ、いいよぉっ♪」
ずっちゅっ、ずっちゅっ、ずっちゅっ。
「んああっ!? これっ、すごいぃっ!」
快楽に流されるままピストンを始めると、途端にメナンティがあられもなく喘ぎ出した。
処女であった自分ですらはしたなく喘いだのだ。
破瓜の痛みをとうに克服した女性に、アドニスの責めは只甘い。
堅物だと思われたメナンティの表情が、見る見るうちに蕩けていく。
「メナンティ、さんっ、はっ、ぁっ! エッチな、顔してますっ」
183 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:24:23 ID:Wai8M9kP
「だってぇ、は、ぁあんっ!? あっ、ぁあっ! そ、そこぉっ!」
「ひゃうん♪」
触手の疣がGスポットを削ったらしい。
膣穴が収斂し、メナンティの喉から一オクターブ高い声が漏れた。
「はっ! んっ! メナンティさん、パセットの触手、きゅうきゅう締め付けてますっ、
触手、そんなに気持ちいいんですかっ?」
ごつん、と子宮口を突き上げる。
それでけで目前の女は甘い声を上げて白状した。
「いいっ、触手っ、いいのっ! お願いっ、もっとしてぇっ」
「あはっ。メナンティさん溜まって、たんですねっ。
はっ! はっ…! んっ! こ、こんなにっ、乱れてっ!
は、あぅっ…!? すごい、締め付けっ…!
メナンティさんっ、真面目だと思ってたのにっ、こんなにスケベだったなんてっ」
指摘すると年上の侍女はいやいやと首を振った。
「…だって、私っ、真面目だからっ、男なんて出来ないしっ…!」
それだけで何を言わんとしているか理解出来た。
成長期の女が彼氏も作れず、性的欲求を持て余す――良くある事だ。
パセットにはそういう感情は理解出来なかったが。
ここに来る前、故郷の姉がそういう悩みを抱えていた事を今でも覚えている。
「んっ! はっ! 大丈夫ですよっ? もう、寂しくはありませんっ。
パセットを、この花を受け入れてっ…! そうすればっ…幸せになれるからっ」
ぱつぱつぱつっ…!
「あっ!? あぁっ! ほんと、ほんとにっ!?」
小刻みなピストンでメナンティの正常な思考を奪う。
生真面目な女程、一度固い鎧が剥がれてしまえばもろいものだ。
恥骨同士がぶつかり、結合部で粘液が潰れる音が響く。
触手を突き入れる度にメナンティの体が弾み、ベッドを軋ませる。
あんあんと甘い喘ぎを上げながらだらしなく涎を垂らす女の眼鏡が熱気に曇っていた。
その曇りを舌を這わせて取り除くと、レンズ越しの瞳に優しく微笑みかける。
「うんっ。そうして皆で、リオ様の為に働くのっ…!
皆繋がってるからっ…寂しくないからっ」
がつんっ。大きく子宮口を突き上げる。
「あぁんっ!?」
「ねっ? どうっ? 気持ちいいよねっ!? ずっとこうしていられるよっ!?
いいでしょっ!? だから、パセットの仲間にしてあげるっ…!
メナンティさんにも、種子を、植え付けてあげるっ」
「い、いやぁ…っ、そんなの…いらない…っ」
「嘘ばっかりっ、さっきからメナンティさんのアソコっ…!
パセットの触手を咥えて全然離さないものっ…!
ほらっ! ほらぁっ…! いいんですよねっ!?
触手チンポにメロメロになって、これ無しじゃもう生きていけないんですよねっ」
じゅぽっ、じゅぽっ、じゅぽっ!
「ぁぁんっ! あっ! そうっ! そうなのぉっ! 触手っ、気持ちいいのぉっ!」
「あはっ! じゃぁもっと気持ち良くしてあげますっ!
だからおねだりしてくださいっ! 触手チンポで種付けして下さいっ、って!」
「は、はいっ! …しょ、触手、…んぽで…っ――
触手チンポで種付けして下さいっ!」
(あぁ、メナンティさん、エロイよぉ…パセット、酷い事言わせてるう♪)
眉をハの字に寄せて、メナンティは媚びた表情を浮かべていた。
腹の中のアドニスが、眼前のメスが種付けの準備を終えた事を感知する。
どくどくと、子宮の中から精液が迸り、茎の中を通る。
「ひゃわっ!? あっ! くるっ! メナンティさんにっ!
あっ、あっ、ぁうんっ! 精液どぴゅどぴゅしちゃうっ!
アドニスの種、植え付けちゃうっ!」
「く、下さいっ、私に種子をっ、花の種子を下さいっ!
あぁぁっ!? ああん! ああぁっ! ああぁっ!
私もっ、いきますっ! あぁんっ! ついてっ、もっとついてぇ!
無茶苦茶に犯して種付けしてぇぇぇっ!!」
184 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:26:02 ID:Wai8M9kP
眼鏡の向こうの黒い瞳は、快楽でどんよりと曇っていた。
理知的な表情は消えうせ、雌の本能が剥き出しになっている。
正気を失ったメナンティは、今やただの獣だった。
「ひゃうんっ、わうんっ! もうだめっ! でちゃうでちゃうっ!
せーえきでちゃうよぉあぁぁっ! いく、いっくっ!
触手チンポでしゃせいしますっ! あぁぁっ! ひゃっ! あううんっ!
あぁぁっ! ぁあぁっ! あぁぁぁっひゃううううぅぅぅぅんっっっ!!!」
びゅるっ!! どぴゅっ、どぴゅどぴゅっ!!
「わぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!!!!?」
「ああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあっっっ!!!?」
射精の快感に頭が真っ白になる。
(すごいぃっ!!? これっ、だめぇぇぇっ!!)
敏感な花の中を柔らかい種子と粘性の高い体液が迸る。
放尿するのとは比べ物にならない開放感と快楽だ。
(フタナリチンポより、もっときもちいいぃっ!!)
だと言うのに絶頂を迎えたメナンティの膣がきゅうきゅうと締め付ける。
それが肉壁に雑巾絞りされるような感触が更なる射精に繋がった。
びゅーびゅーと底を知らないように白濁液を注ぎ込む。
「あひぃっ♪ んわぁうんんんんっ♪」
パセットは犬らしく舌を垂らし、くいくいと腰を使いながら射精の快感に耽る。
メナンティもだらしなく顔を弛緩させていた。
二人してアヘ顔を晒しながら、下になったメナンティの顔にだらだらと涎を零していく。
辺りにアドニスの催淫香と、女の発情臭が一層濃く、立ち込めた。
びゅしゅっ。
結合部から何かが噴出し、花弁の粘膜を叩く。
メナンティが潮を吹いたのだった。
その直後、快楽でぶっとんだ頭が部屋の扉が開く音をぼんやりと知覚した。
背中越しに、入り口の方へと視線を向ける。
「――あ、やってるやってる♪」
(……ぁ…リオ…様…だぁ…)
笑顔で入室してきたゴスロリ姿のリオを見つけると、それだけで嬉しくなってしまう。
主人は人の姿だったが情事の余韻が残るベッドに近付くと、そこで徐に淫魔へと変身する。
「種付け終わった? ――あ、いいよ。口に出さなくて。疲れてるでしょ?
心を読むから、思考するだけでいいよ♪」
主の心遣いに胸が幸せで一杯になる。
(種付けは、無事、終了しましたぁ…)
「そっか♪ ね? どうだった? 気持ちよかったでしょ♪」
(腰が抜けましたぁ…♪)
「うんうん♪ 気に入ってもらって良かった♪ ――さて、それじゃぁ、と。
パセットちゃん? 触手チンポ抜いてくれる?」
「…? はい」
言われた通り触手を引き抜く。
だが、アクメを迎えた肉の壷は卑猥な形状の雌しべを必死に咥えて離さない。
後ろ髪を引かれるような思いで腰を引くとずるり、と触手が引っこ抜けた。
甘い愉悦が走り、びゅるり、と一度射精。
ひゃうん♪ と甘い声を上げてしまう。
「パセットちゃん、ワンちゃんみたい♪ 可愛いにゃぁ♪」
ご主人様がベッドに上がり、こちらに身を寄せてきた。
彼女はすぐ隣に腰を落ち着けすりすりと頬擦りをしてくる。
(ひゃうん♪ 幸せですぅ♪)
「――うにゃうにゃ。いけない。いけない。甘えてるとあっと言う間に時間が経っちゃう」
もっと甘えてくれてもいいのだが、主人は首をぶるぶると振って気を取り直した。
主人はメナンティの下腹部――子宮の上に手をかざす。
その小さな掌から魔術陣が現れた。
ばしゅうぅ。
「んひゃあぁぁぁぁぁぁっっ!?」
かと思うと、そこから黒い霧が噴出し、メナンティの体へと吸い込まれる。
主人が何をしているのか、パセットには何となく理解した。
185 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:27:21 ID:Wai8M9kP
あの黒い霧は淫魔の魔力だ。
先程居住区で、この身に男性の象徴を無理矢理生えさせられた時と同じ。
恐らくメナンティに自分の魔力を注いでいるのだろう。
「当ったりー♪ こうするとね? お腹のアドニスが早く成長すると思うの♪
今は一人でも多く、アネモネになって欲しいからね♪」
「あの、それじゃパセットは、どうしましょう?」
「うにゃ? する事は変わらないよ? 私がメイドさん達を連れてくるから。
パセットちゃんはそのメイドさん達をどんどん犯っちゃって種付けしてね♪」
「…分かりました」
主人の頼みだ断る理由も無かった。
「はい♪ ――んにゃ、こっちはこれくらいかな?」
主人が魔力注入を終える。
当のメナンティはと言うと、子宮に対し淫魔の凶悪な魔力注入を受けて息も絶え絶えだ。
どくん。
「あっはあぁぁぁぁっっ」
突如メナンティが目を向いて悲鳴を上げた。
捲り上げられたスカートの下。
アドニスを植え付けられた子宮が不気味に脈打っている。
(あ、ほんとに、成長してるんだぁ)
二人が僅かに息を荒くしながら見守る中、メナンティの中のアドニスが急速に育っていく。
ずるるるるっっ!
「んああぁぁぁぁぁぁぁっっ!?」
そして数十秒と待たない内にメナンティの膣から肉の花が咲いた。
ぐぱあ、と四枚の花弁を広げ、アドニスの花の匂いを撒き散らす。
何と言うか。自分の時はひたすら気持ち良くてこんな事考える暇も無かったのだが。
(お花が咲く瞬間、エロ過ぎ…)
ドキドキが止まらないではないか。
「よし。これでオーケーにゃぁ♪」
顔を赤くさせた主人が身軽な動作でベッドを降りる。
残りのメイド達を攫ってくるのだろう。
しかしその間自分は何をすればいいのだろうか。
「うにゃ? その人と遊んでくれててもいいよ♪
パセットちゃん、まだまだエッチしたいでしょ?」
図星を突かれ、赤面しながら素直に頷いた。
主人は小悪魔的な笑みを浮かべると「ごゆっくりにゃぁ♪」と言い残して部屋を出た。
「……」
そうなると自然と、パセットの目はメナンティへと吸い寄せられる。
だらしなく広げられた股にはアドニスの花が張り付き、こんこんと粘液を垂れ流している。
部屋に漂う催淫臭が濃くなっていた。
収まっていた欲情の炎が再び灯る。
眼下には花を生やした衝撃で痴呆のように涎を垂らすメナンティのアヘ顔がある。
その顔がとても愛しく思え――その唇に唇を合わせた。
「さあ、もっと気持ちいい事、教えてあげますね」
湧き上がる情動のまま、メナンティの花の中に雌しべ触手を挿入した。
***
討伐隊全てを送り出すのに一刻も掛からなかった。
彼らを見送ったドルキは、傍らの門下生達に、持ち場に着くように命じる。
十人にも満たない彼等は屋敷を防衛する為に残した戦力だ。
(少し時間は掛かりましたが、これで大丈夫でしょう)
後は討伐隊とグリーズが魔物達を殲滅してくれるだろう。
大なり小なり被害は出るだろうが、負けるような事は無い筈だ。
ドルキは自室に戻り、一息つこうと思い立った。
先程は久しぶりに大声を上げたので喉が渇いていたのだ。
適当な侍女を捕まえて茶でも淹れさせよう。
そう、思ってからふと気付いた。
(…静か過ぎますね)
186 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:28:47 ID:Wai8M9kP
屋敷の中には現在ドルキと、数名の門下生と、侍女しかいない。
合わせて二十名と居ないのだが、それを差し引いても人の気配が少なすぎる。
嫌な予感がした。
ドルキは探索魔術を発動する。
自身を中心に魔力を放射し、半径1キロ以上に及び、その中の人間と魔物を識別する。
「――これはっ」
屋敷の中に、魔物の反応が二つ存在した。
内一つはかなり強大な力を持っている。
もう片割れは大した事はないのだが、問題があった。
二匹の魔物と、数名の人間が同じ部屋に居るのだ。
ここは確か、侍女のメナンティの寝室だった筈だ。
(なんたる失態でしょうっ)
何が茶でも淹れさせようか、だ。弛み過ぎだ。
興奮の余り、周りを見ていなかった。
魔物が屋敷に入り込む隙なんて、いくらでもあったのだ。
(こんな事なら屋敷にも結界を張っておくべきでした)
魔術士は元来、自分の領地には何かしらの防御を用意するものだ。
だが、ここにはそれが無いのだ。
城壁の結界を過大評価していた為である。
だがそれも後の祭り。
兎も角、屋敷に侵入した魔物の排除を行う。
屋敷内を巡回中の門下生と合流してから向かおうかと考えたが、自分一人で十分だろう。
潜入した魔物はそこそこの力を持っているようだが、正直敵ではない。
それに今、恐らく奴らは『食事中』なのだろう。今なら隙だらけの筈だ。
そうと決まれば早速実行に移す。
転移魔術を使用し、件の寝室の目前へと一瞬で移動した。
扉を挿んだ向こう側から禍々しい気配を感じる。
ドルキはそれに気圧される事無く、扉を開け放った。
「あぁぁっっ!? もうダメェっ! それ以上、注がないでぇ!」
「あはっ…! あはははっ! 触手チンポぉ…、気持ちいいよぉっ」
「あっ! あっ! もっとっ、もっと突いて下さいっ!」
(これは…)
部屋の中では人外による饗宴が開かれていた。
悪魔の姿をした少女を筆頭に、屋敷のメイド達が肉体を絡ませ合っている。
メイド達は股から花のようなものを生やし、まだ生えていないメイドを犯しているのだ。
(アドニスっ)
寝室に篭っていた桃色のガスに理性を溶かされる前に防御魔術を展開する。
「あ? 義母様? ふふふ。随分とゆっくりしていらしたようですね?
お陰でここのメイドさん達は大体種付けが終わりました」
悪魔の姿をした少女が、犯していたメイドを解放し、立ち上がる。
「あ、貴女はっ」
股からアドニスの花を咲かせた悪魔。
猫耳と二本の尻尾。それに蝙蝠の翼を持った少女の髪は鮮やかな桃色だった。
「御機嫌よう義母様。リオ=リビディスタは帰って参りました」
はしたないデザインのスカートを摘み、少女は慇懃に頭を下げる。
「貴女に、復讐する為に」
ぎらりと光る猫目は両方とも血の色のように赤い。
「その姿…悪魔へと堕ちましたか。
それにアドニスの花まで宿して……あぁ、成る程。
森の中で野垂れ死になる前にアネモネに拾われたのですね。
ですがそれだけではその姿は説明出来ません」
「ふふふ。私は、というより母様が人外の血を持っていたそうです。
私はアネモネと交わった時に先祖帰りをしたのです」
187 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:30:00 ID:Wai8M9kP
「成る程…貴女も、貴女の親も、泥棒猫だとは思っていましたが。
まさか本当の猫だったとは、思っても見ませんでしたね」
「私も、腹違いの母親に毒殺を画策されるとは夢にも思いませんでした」
「さあ? 何の話でしょうか?」
(流石あの女の娘、と言ったところでしょうか。鋭い勘をしています)
「惚けるつもりですか? まあ、いいです。どっちにしろ私のする事には変わりませんから」
じゃきん、と真紅の爪を伸ばし、束ね、刃とする。
腰を落とし、感情の無い瞳で見据えるその姿は悪魔というよりも獣だ。
聞く耳は、まだ持っているだろうか。
「貴女の望みは何です?」
「言った筈です。復讐ですよ。私を殺そうとした貴女への。
いえ、それだけならまだ許せた。
けれど、貴女はその為に私の唯一の親友まで利用する気だった。
私には、それが許せない」
「偉そうな口をききますね。許せない、ですか。それはこちら台詞です。
貴女はあの人の体を奪った。いえ、体だけではなく心も。
あの人の心も、体も、全て私の物だというのに。
四十年以上、あの人の為に尽くしてきたと言うのに。
それを貴女は、一瞬で奪い去った!」
下位の攻撃魔術を不意打ち気味に放つ。
きぃん、とガラスを弾いたような音。
と同時に浄化作用を持った光が高熱を持ちながら悪魔へと伸びる。
だが、高速で飛来する光の帯を、少女は半歩体をずらしてあっさりとかわす。
魔術の発射音は兎も角、その威力は凄まじい。
光の帯は部屋の壁をバターのように溶かし、大穴を開けると外へと突き抜けた。
「蛙の子は蛙なのですよ。毒婦の娘も毒婦。
だから貴女は死んで当然なのです。
私のグリーズを誘惑し、穢した貴女はその罪を償う為に、死ぬべきなのです」
「……それが義母様の本心、なんですね」
「ええ。そうですとも。それとも優しい言葉を掛けてもらえると期待していたのですか?」
「まさか。あ、そうです。一つ質問してもいいでしょうか?」
「いいですよ。冥土の土産にして差し上げましょう」
「今の魔術、私は弾き返す事も出来ました。
そうなったらこの部屋の中のメイドさん達にも当たっていたかもしれない。
その事を考慮はしなかったのですか?」
何かと思えばそんな事か。
「侍女の一人や二人、死んだ所でいくらでも代わりは居ます。
それがどうかしましたか?」
「……成る程、良く分かりました」
「そうですか。なら心置きなく死んでくださいますね?」
「いえ? 死ぬのは、貴女だ!」
突如飛び掛ってくるリオ。防御結界を前面に集中させる。
菱形の魔力の壁が前面に何枚も重なり合い、積層を成す。
その正面から、悪魔は突っ込んだ!
ぎいいいいいいんんっっ!!!
刃と化した爪と結界がせめぎ合い、甲高い音を立てながら魔力の余波を撒き散らす。
(ほう。中々やりますね?)
魔力を爪に収束させているのだろう。悪魔の攻撃は鋭い。
一枚目の結界に、ひびが入っていた。真紅の爪は結界の中を徐々に押し進んでいるのだ。
時間を掛ければ、この結果は破られてしまうだろう。
だが力押しだけでは戦いに勝てない。
ばりぃん。ガラスが割れるように、一枚目の結界が音を立てて砕け散った。
破壊されたのではない。破損した防御結界を自ら破棄したのだ。
続けざまに破棄した結界の魔力をその場で集約。
それは魔術陣となり、攻撃を繰り出しているリオを捕捉する。
「……っ!?」
「吹き飛びなさい」
新たに発生した魔術陣から爆音が響いた!
188 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:31:33 ID:Wai8M9kP
「んにゃぁっっっ!?」
風の攻撃魔術を正面から食らい、悪魔の体が吹き飛ぶ。
今のは防御結界の魔力残滓をそのまま攻撃魔術に転化した技だ。
防御から攻撃へと速やかに転じるので不意打ちや迎撃に使用出来る。
だが、取り回しが良い分、威力が格段に落ちる。
至近距離から爆風を食らわせたが、ダメージは殆ど無いだろう。
悪魔は盛大に吹っ飛んで行っただけだ。
「こちらは、暫くなら放っておいても大丈夫ですね」
それでも部屋の中は台風の直撃を受けたように滅茶苦茶になっていた。
家具が引っくり返り、侍女達があられもない姿で折り重なって気絶している。
アドニスの成長がやや速い気もするが、まあ、今しばらくは大丈夫だろう。
この戦いが終わってから種子を浄化してやればアネモネになる事はない。
それよりも今は眼前の化け物を退治してやらないと。
ドルキは悠然と歩みを進め、自分で開けた部屋の大穴をくぐる。
その向こうは正門へと繋がる庭だ。
剣神アレスのレリーフが飾られた正門から屋敷の玄関までおよそ五百メートル程。
その間、一定間隔に設けられた植え込みから、春の来訪を遂げる花が咲いている。
玄関口の前には二つ、噴水も設置されている。
これら、屋敷の美しい外観は戦いに傷付いた戦士達の心を少しでも癒そうとした配慮だ。
「いたたた…っ…にゃぁ…っ? びちょびちょにゃぁ…」
吹き飛んだ淫魔は片方の噴水に突っ込んだらしい。
水瓶を掲げた女神像を模した噴水が壊れ、女神の腰から上が無くなっていた。
屋敷の外を警備していた門下生達が異常を感じ取って駆けつけてくる。
「ドルキ様! これは一体っ」
「こいつ、悪魔か!? いつの間に侵入した!?」
「ドルキ様、ここは我らにお任せを!」
「いや待て! この悪魔、どこかで見た気が…」
「下がりなさい! この魔物は私自らが倒して見せましょう!」
そうだ。そうでもしなければ、この溜飲が下がる事はない。
「ふふふ。そうこなくっちゃ♪」
倒れていたリオが反動を付けて起き上がった。
ぶるぶるぶるぶるっ!
四つん這いの格好で体を振り、衣服と髪の水気を飛ばす。
まるで本物の猫のようだった。
「余裕ですね? まあ、いいでしょう。
そうだ、貴女に母親らしい事を一つしてあげましょう。
リビディスタの者なのです。戦い方くらいは教えてあげようではないですか」
ただし、授業料は命で以って払ってもらう。
「さあ、魔術師との戦い方を教えてあげましょう」
正面へ積層の結界を展開しながら、改めて攻撃魔術を発動させる。
先程とは違い、『殲滅』を主眼に置いた攻撃魔術だ。
発動にやや時間が掛かるが、威力はある。
リオとの距離は大分離れているので発動を潰される事も無いだろう。
この時点で悪魔は回避を余儀無くされているのだ。
ドルキを中心に赤の魔術陣が発生した。
赤は攻撃魔術を表す色だ。
その赤い魔術陣から、複数の魔術陣が生み出され、リオに向かい飛来していく。
「? 何これ?」
小型の魔術陣は攻撃をするでもなく、リオの周囲を旋回しているだけだ。
初見では、それが何なのか知る由も無いだろう。
魔術陣内部の文字を読み解けば、それが『反射』を意味するものだと理解出来るだろうが。
リオには魔術文字を解読出来るほどの知識は無かった。
小型の魔術陣自体は攻撃を行う事は無い。これの役割は、
「蜂の巣になりなさい」
「っ!?」
189 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:33:02 ID:Wai8M9kP
悪魔が何かに気付いたように顔を上げた。
だがもう遅い。
地面の大型魔術陣から、連続的に光を放つ!
光の帯となってリオに襲い掛かるそれは、先程部屋に穴を開けたもに比べれば威力は低い。
だが、直撃を受ければ風穴が開くだろう。
その光を、リオの周囲に滞空させた小型魔術陣に向けて解き放つ。
魔術陣は彼女を取り囲むように、合計12箇所に配置していた。
ほぼ全方位とも言えるが、唯一真上にだけは魔術陣が無い。
リオも気付いただろう。これらの魔術陣が、光を反射させるものであると。
しかしそれが判っていても全方位に配置されたそれから逃れる事は出来ない。
唯一真上にだけは反射陣を設置していないが、この一瞬でその事に気付ける事も無い筈だ。
光の帯は高速で反射陣へと飛来した。
光は反射陣に吸収されると、その中で刹那の間停滞し、
次の瞬間、リオが真上へと大きく跳躍した。
(なんですって?)
翼をはためかせて悪魔の体が急上昇する。
その一瞬後に、彼女が居た空間を十二方向から光の帯が撃ち抜いた。
勘の良い娘だ。唯一の逃げ場所である真上方向に運良く逃げ込むとは。
「あー、怖かったぁー♪ もうちょっとで死んじゃうところだった♪」
上空から緊張感の無い声が聞こえる。
リオは翼をはためかせながら滞空していた。
体が上下に軽く揺さぶられる度にスカートの中身が見え、汚らわしく思えてしまう。
逆に駆けつけて来た男供は破廉恥な格好をした悪魔の姿に魅入っているようだった。
気に入らない。事が終われば何かしらのペナルティを課してやろう。
そんな考えが顔に出てしまっていたのか上空の悪魔が、ふふふ、といやらしく笑う。
その笑い方まで、あの女とそっくりだと思った。
「…義母様? 義母様は私の母様の事を――いえ、やっぱり、やーめたっ」
「? 何を言っているのです?」
笑っていたかと思えば急に神妙な顔つきになったり、かと思えば無邪気な表情を浮かべる。
悪魔へと身を堕としたこの娘が何を考えているのか全く分からない。
(分かる必要もありませんが)
ドルキは気を取り直し、次なる一手を打つ。
滞空しているあの悪魔を叩き落してくれよう。
ドルキは両の掌から魔術陣を生み出す。
右手と左手で異なる魔術を同時に起動させる技だ。
右手の青い魔術陣は結界を生成させるもの。
大して左手の赤い魔術陣は下位の風撃魔術だ。
屋敷の中で悪魔を外に吹き飛ばしたものと同じである。
それの威力をやや上昇させ、風力を鉄槌のように対象物へと叩き落す。
「今度は逃がしませんよ」
言葉と同時に結界魔術が発動した。
滞空する悪魔の真下に魔術陣が現れ、その真上へと魔力の壁を形成していく。
この結界、硬度はイマイチだが表面には人間をレア程度に焼く程の電流が流れている。
結界を破壊しようと迂闊に攻撃すれば、かえってダメージを与える仕組みだ。
きいいん――!
円筒状に悪魔を捕らえた結界が高速に回転し、その表面に魔力の雷撃を生み出す。
言わばこれは有刺鉄線で作られた檻だ。
悪魔は閉じ込められた事に気付くと、先程と同じように真上へと逃げようとする。
「逃がさないと言いました!」
だが風の魔術は発動している。
上空に不自然な気流が生まれ、大気が渦巻いている。
結界の内側。そして悪魔の頭上だ。退路は塞がれた。
そこから脱出する為にはダメージを覚悟で、結界を打ち破って外に出るしかない。
でなければ、圧縮された空気の槌に押し潰され、地面に叩き付けられるだけだ。
そうして動きが鈍ったところで本命を叩き込む。
190 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:34:11 ID:Wai8M9kP
「それは面倒だにゃー」
にゃー? にゃー、とは一体何だ。何の冗談だ。
疑問符を浮かべるドルキの上空で、悪魔は爪を展開した。
禍々しい魔力を収束させ、一本のブレードを作り出す。
と同時にそれを結界に突き込んだ!
ばじじじじじっ!!
「ぎにゃあぁぁぁっっ!?」
悪魔が獣の悲鳴を上げた。帯電している結界に直接攻撃したのだ。当然だった。
だがドルキは焦燥感すら覚えていた。
あの化け物は、こちらが攻撃を繰り出す度に最適な行動を取っている。
今回もそうだ。電撃によりダメージは与えられるだろうが、それが致命傷にはならない。
先に結界が破壊される。
「う、にゃあぁぁぁぁっ!! 砕けろぉぉっ!!」
耳障りな帯電音の中、悪魔が咆哮し、赤い刃に力を込めた。
「くっ」
同時に風の槌を開放する。上空から打ち下ろされるそれは魔力充填を終えていない。
直撃しても予定していたダメージより少ない。それでもむざむざ脱出されるよりマシだ。
ごうっ!
風の槌が唸り、悪魔を押し潰そうと襲い掛かる。
だがその直前に結界が音を立てて砕け散った。
悪魔が結界から脱出。その背後を風の槌が通り過ぎる。
ずどん!
星でも降ってきたかのような衝撃。音。
そして一足遅れて地上に突風が吹き荒れた。
事の成り行きを見守っていた門下生達が、強風に煽られ、地面を転がっていく。
魔術を使える者達は防御結界を張り、何とか事無きを得たようだった。
こちらも防御結界を張り、攻撃魔術の余波から身を守る。
(しくじりました…)
結界を保持していればこの衝撃やらなんやらが全て密閉空間で炸裂した訳である。
いくら悪魔と言えど無事では済まない筈だったのだが。
「ふにゃぁ…っ、危なかったにゃぁ…っ」
上空に退避していた悪魔が胸を撫で下ろしている。
「ふふふ。まだ胸がドキドキしてる♪ 義母様っ、殺し合うのって楽しいね♪」
「…化け物が…」
能天気に笑う少女の姿をした悪魔に、神経を逆撫でされてしまう。
だが、頭に血を上らせる訳にはいかない。
二度の攻撃を凌いだ悪魔の器量。素人同然の彼女にそれほどの力があるとは思えない。
何か、からくりがあるのではないのだろうか。例えば――
(読心能力、ですか?)
「あれ? もう気付かれちゃった。流石義母様♪ 魔女の二つ名は伊達じゃないね♪」
地面に降り立ち、悪魔は淫靡に微笑む。
「それで? まだ戦うの? 魔術士なんて思考が読まれれば何も出来ないんじゃないの?」
ざわり、と周囲の人間達がどよめいた。
確かに、技術で戦う戦士とは違い、魔術師は戦術で戦うものだ。
思考が先読みされれば、まともに戦えはしないだろう。
「――成る程、貴女のその髪は悪魔『シュトリ』の証だった訳ですね。
成る程成る程。あの女の勘の良さは化け物の力の一端だった訳ですか。
それにしても、他人の心を覗き見るとは。
下品な能力ですね。あの女に相応しいと言えましょう」
不敵な笑みを浮かべ、悪魔を挑発する。
悪魔はそれが挑発だと分かってはいるだろうが――
「母様を、侮辱するなぁっ!」
精神も幼いただの子供に、感情を御する事など出来はしなかった。
一直線に、こちらへと突っ込んでくる。
地を這うように、前傾姿勢で突貫するその姿は野生の猛獣そのもの。
この瞬間、新たな魔術を発動する。
それは読心能力を持った魔物に対抗する為にドルキが自ら開発した精神防御魔術。
191 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:35:16 ID:Wai8M9kP
青い魔術陣が表れ、ドルキの体を淡い光で包み込むと、それは一瞬で消滅した。
見た目は何も変わらないが、効果はすぐに現れるだろう。
(今度こそ引導を渡してあげましょう)
***
「母様を、侮辱するなぁっ!」
つい頭に血が上ってしまい、無謀な突撃を仕掛けてしまう。
それが罠かも知れないとは思うが、思考を読めるのだから致命的なミスは避けられる筈だ。
『馬鹿な娘です。こうも簡単に挑発に乗ってくれるとは』
うるさい。今すぐその喉笛を掻き切ってやる。
いや、それじゃ気が済まない。
自分を、パセットを。
そしてあろう事か他のメイド達まで平気で切り捨てるようなこの女を、許せはしない。
苦痛を与えながら、嬲り殺してやる。
そして絶望するドルキの眼前で、グリーズを魅了し、寝取ってやるのだ。
それはきっとこの上なく楽しいだろう。
想像しただけで、気分が高揚する。
ドルキは動かない。しかし防御結界は展開した。
『先程はしくじりましたが今度はそうはいきません』
結界がその姿形を徐々に変えていく。
菱形を連ねたようなタイル状の防御壁は強く発光し、ドルキを包み込む。
『思考が読まれるのならば、読まれても対処出来ないような戦術を取ればいいのです。
私は今から上位の魔術を使用します。
誘導性が強く、貫通能力に優れた光の攻撃魔術。
今度は避ける事も防ぐ事も出来ないでしょう。
最善の策は――そうですねぇ。
私が魔術を発動する前にこの結果を破壊し、私を倒す事でしょうね。
まあ、貴女に出来るとは思いませんが』
「そんなの、やってみなければ分からないよ」
相手は結界を張っているとはいえ棒立ちだ。
溜め込んだ魔力を一点に集中させ、攻撃すれば結界だって破壊出来る筈。
ドルキに向かって走りながら、リオは右手の爪に力を込めた。
(今度は、こっちの番っ)
溜まった鬱憤を晴らすべく、右の爪から展開した赤いブレードを振りかぶり、
その脚が、急に止まった。
「うにゃぁっ!?」
がくんと前方につんのめり、体勢を大きく崩す。
まるで脚を引っ掴まれたような感覚を不思議に思い、地面を見た。
(何これっ!?)
足元には何時の間にか青い魔術陣が展開していた。
その中から光の鎖のようなものが生え出し、脚を拘束しているのだ。
バインドと呼ばれる束縛の魔術だ。
主に素早い敵の動きを抑えたり、時間稼ぎに使用される補助魔術である。
(い、いつの間にこんなものを!?)
読心能力は今も発動している。
簡単なトラップだが、それを仕掛けようとする以上、大なり小なり思考をする必要がある。
それを捉えられない筈がなかった。
「簡単に引っ掛かりましたね。所詮は子供、いえ、畜生ですね」
「どういう事っ」
「私程の魔術士ともなれば精神に干渉する能力の対策くらい持っているという事です。
そう。貴女が今読み取っているのはフェイク。
私が魔術で作り出した、擬似的な思考なのです」
「そ、そんな事が…」
192 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:36:32 ID:Wai8M9kP
上位の光の攻撃魔術や、結界を破壊すればいい――云々は全て偽の情報だと言う事か。
「それを知らずに突っ込んで来てくれた貴女はいい的です。
バインドで動けないでしょう? この状態なら結界を使用する必要もありません」
防御結界が消える。
そしてその後に、赤く、大きな魔術陣が形成された。
「まあ、この防御結界も今から発動する攻撃魔術の目眩ましに過ぎないのですが」
赤い魔術陣に光が収束する。
動きを封じられたこの身では、回避は不可能だ。
死の気配が、すぐ近くまで迫っていた。
眼前の光は、この身を焼く業火の炎となるだろう。
(この絶望的な状況から逃れる為にはっ)
「さあ、貴女もこの私の手で地獄に送ってさしあげましょう。『あの女と同様に』」
引っ掛かる物言いに、一瞬思考が止まる。
だが魔術陣の光が一際大きく輝くと、リオは最後の掛けに出た。
「『お義母様っ、私を助けて』!」
光の魔術が解き放たれる。
「う、にゃあぁぁぁぁっっ!!?」
赤い魔術陣から放たれたそれは、一言で表すなら光の奔流だ。
浄化作用をもった眩い光は、熱量も有しており対象物を焼き尽くす。
虫眼鏡で太陽光を収束させるのとはレベルが違う。
直撃を受ければ、生まれたての悪魔など消し炭に出来る。
光の魔術はドルキの得意分野で、この光の砲撃とも言える魔術はドルキの十八番だった。
だが、
「っ、賢しい真似をっ」
声を荒げたのはドルキの方だ。
光の魔術は、軌道を大きく外れている。
この体を直撃する筈だった光の奔流は髪を焦がしただけで、空へと吸い込まれた。
魔術の余波で旋風が巻き起こり、熱波がひび割れた肌を炙る。
土壇場でドルキにチャームを掛けたのだ。
自分に対して魅了の魔術を使用するとは夢にも思っていなかったのだろう。
油断していたドルキはチャームの効果を受け、一瞬だったが手元を狂わせた。
が、それでも無傷では済まなかった。
リオは砲撃の余波に吹き飛ばされ、ドルキから少し離れた地面に転がる。
かと思えば身動きの取れない体に再び拘束魔術が発動した。
「にゃ、にゃぁっ…!?」
青い魔術陣から白い光が伸び、体を雁字搦めにされる。
「さあ、これで本当に万事休すですね」
ドルキはこちらの恐怖心を煽るように、ゆっくりと近付いてきた。
それは絶望の足音だ。死神の近付く気配だ。
だがこの女に復讐を果たすまでは、死んでも死に切れるものではない。
そうだ。さっきこの女は言った。
母を殺したのは自分だと。それがもし本当なら――
リオは憎しみの篭った猫目でドルキを睨みつけた。
「何か言いたい事でもあるようですね」
「…さっき、義母様は言った。
『貴女もこの私の手で地獄に送ってさしあげましょう。あの女と同様に』って。
その言い方じゃ、まるで義母様が…」
自分も含め屋敷の人間はリシュテアの死因が病死だと思っていた。
だが実際は、
『そうです。私が殺しました』
時間が止まる。
衝撃の事実に戦いの最中だという事も忘れ、呆然としてしまう。
(殺した? 病死じゃ、なかったの?)
193 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:37:30 ID:Wai8M9kP
「まるで私が、何ですか? まさか私があの女を殺したとでも?
根拠の無い言い掛かりですね。不愉快です」
ドルキは思考で真実を伝えつつ、言動ではまるで被害者のように取り繕っていた。
だが彼女がうっすらと笑みを浮かべている事に気付くと、胸の内から怒りが溢れ出す。
そんな、こちらの内心を尻目に彼女は思考で真実を語る。
『毒を盛ったのですよ。特別に取り寄せた物です。
遅効性で、本人が無自覚のまま体を蝕んでいき、気が付いた頃には手遅れ――
そういうものです。お陰で誰も気付きませんでしたね。
あの人も、それ以外の人間も、彼女が運悪く病に掛かったとしか思わなかった。
全て、私の計画通りだったのです』
「うああぁぁぁぁぁっっっ!!!」
怒りで視界が真っ赤に染まった。
「貴女が、貴女が母様を殺したああぁぁっっ!!」
「は? 何ですかいきなり。まるで私があの女を殺したような口振りですね。
成る程、さも私が加害者だと周りの人間に思わせる。それが悪魔の手口という訳ですか」
「うるさいっ、うるさいっ! あなたの方がよっぽど悪魔だ!
私の母様を殺して! 私も殺そうとして! パセットちゃんまで巻き込むつもりだった!
許さない! 殺してやる! 絶対に殺してやる!」
『貴女が何を言っても、誰も信じませんよ。
此処は貴女の居るべき所では無いのです』
ドルキの言動と思考はちぐはぐだ。
そのせいで、リオは真実を知って憤っているのに周りの人間にはその理由が伝わらない。
今もリオは孤立無縁だ。誰も味方などしてくれない。
しかし流石に大声を上げる悪魔に、流石の門下生達も戸惑いを隠せないようだ。
それはドルキとリシュテアの関係は皆知っているからである。
周りの人間から見れば、殺人の疑いも無くは無いのだ。
だがリビディスタの創立者の一人であり、メディアの称号を持つ偉大な魔術師。
そしてアドニスの花を宿した悪魔。
観衆は、一体どちらの言葉を信用するだろうか。
「さっきから何ですか。人を殺人鬼呼ばわりして。
目上の者に対する態度ではありませんね。
――貴方達も。このような化け物の言葉に耳を貸してはいけません。
悪魔は人の心に付け入り、堕落させる魔物です。
鬼気迫る表情ですが、あれは演技ですよ。
分かりますか? 貴方達は騙されているのですよ」
「――な、成る程…」
「確かに。悪魔は悪知恵を働かせる魔物だ」
「そうか。ならばリオ様の姿をしているのも、我々を油断させる為かっ? なんと卑劣なっ」
ドルキの言葉で彼女に対する猜疑心は少しづつ消えていくようだった。
伊達に歳を食ってはいないという事か。
そうだ。悪魔は人を騙す。人を誘惑する。
門下生達はそれを知っているからドルキの言葉を鵜呑みにしてしまったのだ。
真の悪魔はドルキの方だと言うのに。
『これで分かりましたか? 貴女は一人なのですよ』
「貴女という人はあぁっっ!!」
怒りに任せて暴れ回る。
だがバインドのせいで芋虫のように地面をのたうつだけ。
『あっはっはっは。無様ですねぇ? いい気味です。
森の中で魔物に食われて居た方がまだ幸せだったのではないですか?』
「うああぁぁぁぁぁっっ!!!」
(悔しいっ! ネーアさんに助けられて、人間を止めてまで復讐を決めたのに!
こんな最低の人間に、いいようにされるなんてっ!)
憎しみの篭った目でドルキを睨み付ける。
194 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:38:27 ID:Wai8M9kP
魔力を乗せ、殺意を乗せ、耐性の無い者ならそれだけで戦意を喪失してしまうだろう。
だが非情な魔術師は不敵に笑うだけだった。
「ふぅ。ここまで来ると見苦しいばかりですね。
もういいでしょう。貴女の『親子ごっこ』にも飽きました。
――死になさい」
動けないこちらに向けて、掌をかざす。
一足で踏み込める距離だ。外しようが無い。
そしてこちらの悪足掻きすら想定し、防御結界を張る。
(私、死ぬの…?)
これは、もう詰みだ。どうしようもない。
(ごめんなさい。パセットちゃん。ごめんなさいクロトさん。
ごめんなさいネーアさん。私、負けちゃったよ…)
せめて、せめてこの人の皮を被った悪魔に、一太刀でも食らわせてやりたかった。
「さようなら。地獄であの女が待っていますよ」
赤い魔術陣から光が解き放たれた。
死ぬ。死ぬのか。いや、だとしても。
最後まで、抵抗し続けてやる。
死が確定した中で、リオはドルキの瞳から目を逸らさなかった。
もしこの世から消えても、化けて出てやる。
それくらいの意気込みで魔女の瞳を睨み付けて、
視界を、何かが遮った。
ドルキとの間に立ち塞がるように。
何者かが突然虚空から現れる。
同時にその誰かは防御結界を展開し、リオを狙った下位の攻撃魔術を弾き飛ばした。
ぎいいいいんっ!!
魔術同士が干渉し合い、摩擦を生み、耳障りな音を立てる。
辺りに眩い光を撒き散らすと、眼前の茜色のマントがはためいた。
マントの中央には『ヘスペリス』と描かれた刺繍。
「あ、貴女はっ」
ドルキが驚きの声を上げた。
周囲の人間達も、突然の乱入者に戸惑いを隠せない様子だ。
「良かった。今度は、間に合った」
乱入者から紡がれた声は美しく、聞き惚れてしまいそうだった。
(この声、どこかで…)
もうずっと聞いていない、だが聞いた事のある、女性の声だった。
ヘスペリスの女が振り向く。
流水のようなブロンドの髪。抜けるような空と同じ色の瞳。
その人物はグリーズの血を継いでいるとすぐに分かった。
「ただいま。リオ」
その女は女神のように美しい顔を僅かにはにかませた。
「姉、様…? どうして…?」
訳が、分からない。
姉は優秀だ。若くしてヘスペリスに入り、将来を約束されている。
そんな姉がどうして屋敷に戻ってきたのだ。
いや、それよりも。
(どうして、私を庇ったの?)
自分なんて姉に比べれば何の取り得も無い存在。
リビディスタの名を借りた、只の人形のようなものだ。
母の違う姉妹は、接点も殆ど持っていない。
そんな姉が、今更どうしてこの身を庇うというのだ。
「ん」
ぎゅ、とマリオンがこの身を抱き締めた。
バインド越しに、人の温もりと、彼女の思考が伝わってくる。
195 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:41:55 ID:Wai8M9kP
『遅れてごめんなさい』
『良い子にしてた?』
『寂しくはなかった?』
『手紙、出せば良かった。ごめん』
『助けられなくてごめん』
『でももう離さない』
『人間じゃなくなっても。リオはリオ』
『だから私が、守る』
(え…うそ…これが、姉様の、本心…?)
何だこれは。自分の事ばっかりじゃないか。
知らなかった。自分の味方は、屋敷の中ではパセットだけかと思っていた。
でも、こんなに身近に自分を思ってくれる人が居た。
『今まで助けられなかった分。
これからはリオの事、ずっと守り続ける。
その為に私は強くなったから』
「ふぇ…っ」
胸の内から何かが込み上げてくる。
殺伐とした愛憎劇の中、差し伸べられた希望の手。
自分の事を思い、大切にしてくれる者の意思が、絶望と憎悪にささくれた心を癒す。
「ふええぇぇぇぇぇんっっ!!」
気が付いたら泣きじゃくっていた。
さっきまでドルキと死闘を繰り広げていた悪魔はもうそこに居ない。
「姉様ぁぁっ!! 姉様ぁぁっっ!」
びーびーと子供のように泣く。
その姿に周りの人間は――ドルキさえもが唖然とした様子だった。
だが誰もが失念していたのだ。
目の前の悪魔の姿をした少女が、元はたった十二歳の子供であるという事に。
そしてそれを理解しているのは、この場でマリオンただ一人だけだった。
束縛されながらも、顔を姉の首元に押付ける。
マリオンはそれに応えるように、髪を梳いてくれた。
「よしよし」
その撫で方は、ネーアに比べれば雑で、不器用だったけれども。
『もう、大丈夫だから。大丈夫だからね』
彼女の思い遣りがあれば、それで十分だった。
「びええぇぇぇぇん!!」
門下生達とドルキが見守る中。
再開を果たした姉妹はずっと抱き締めあっていた。
***
そうしてどれくらいの時間が過ぎただろうか。
「あらあら。まあまあ。マリオン、いつの間にか帰っていたのですね。
少しばかり慌しくしていましたから気が付きませんでした」
痺れを切らしたドルキが口を開いた。
ところがマリオンは肩越しにこちらを一目見ただけで、リオをあやす作業に戻ってしまう。
その姿を見て、ふとドルキは思い出した。
(まさかマリオンは、この娘に感情移入しているのですか?)
元よりマリオンはあの女に好意を抱いていた。
駄目だと言っているのにこちらの目を盗んでは、何度もあの女の元を訪ねたくらいだ。
そしてリオはその女の娘だ。何かしら思う所があるのかもしれない。
しかしもしもそうだったとしたら。面倒な事になる。
(説得するしかありませんね)
196 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:43:34 ID:Wai8M9kP
その娘はもう悪魔だ。貴女の知っているリオではない。
涙も、嗚咽も、全て貴女を騙し、利用する為の演技だ、と。
「マリオン。気持ちは分かります。貴女はその娘を気に掛けているのですね?
ですが騙されてはいけません。その娘は悪魔へと堕ちてしまったのです。
もう貴女の知ってい、」
「黙れクソババア」
「く、クソ…? ――今何と言いましたか?」
実の娘の口から出た下品な言葉に耳を疑ってしまった。
しかもそれが自分に対する中傷なのだからますます信じられない。
マリオンはこちらの問い掛けには答えずが、ゆらり、と立ち上がった。
その顔はグリーズを連想させるポーカーフェイスのままだ。
しかし、誰が見ても彼女が腸が煮えくり返りそうなほど激怒しているのが分かった。
その背後に怒りのオーラまでも幻視しそうなほど。
(……あのマリオンが私に楯突いている?)
あの女に懐いているのは知っていたが、それでもこちらの言う事を大人しく聞いていた。
見えないところで癇癪を起こしたりする事はあったようだが、年頃の女なら普通だろう。
手塩を育ててきた実の母親に歯向かう理由にはならない。
正直、マリオンが何を怒っているのか分からなかった。
だからドルキは混乱した。
そこの憎き女の娘の味方をする理由が分からなかった。
(私よりも、あの女の娘を取るというのですか?
いえ、きっとマリオンは感情的になっているだけです。
冷静になれば、私の方が正しいと分かってくれる筈)
ここは何とか宥めて、彼女に落ち着いて貰わなければ。
でなければそこの淫魔を片付ける事も出来ない。
「マリオン。良くお聞きなさい。その娘は私の命を奪おうとしたのです。
貴女の知っているリオという娘は、そんな蛮行をするような人間でしたか?」
マリオンは返事をする代わりにこちらに向かって一歩踏み出した。
「違うでしょう? あの娘は自己主張の出来ない、大人しい娘でした。
それが、血が繋がっていないとはいえ母親を殺すなど……ありえるのでしょうか?」
聞いているのか聞いていないのか。
マリオンはこちらを怒りの眼差しで見詰めたまま、一歩、また一歩と近付いてくる。
嫌な予感がした。
「マリオン? 聞いているのですか?
――ああ、そうですね。私にも、少しばかり非はあるのかもしれません。
ですが命を奪いに来た魔物を、どうして見逃す事が出来るでしょうか?」
マリオンとの距離が縮まる。
一足で踏み込める所まで近付けば、彼女の怒気がより鮮明に感じられた。
殺意すら篭った視線に射抜かれ、額に汗が滲む。
「そ、そうそうっ。
この娘は私の命を狙うどころか、屋敷のメイド達まで手を出したのですよ?
全員、アドニスの種子を植え付けられたようです。
何の罪も無い娘達まで巻き込むなんて、非情な悪魔のする事です。
人間の仕業とは思え、」
マリオンの怒気が膨れ上がった。
「お前が、言うなあぁぁぁぁっっ!!!」
マリオンの真下に青い魔術陣が展開。
それは光の粒子を噴出し、彼女の右手へと収束していく。
(強化の魔術っ)
まずい。リオとの戦いでこちらは消耗している。
強化された攻撃をまともに喰らえば只では済まない。
197 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:47:11 ID:Wai8M9kP
迎撃か、防御か。どちらかを行わなければ。
(止むを得ませんっ)
即席で光の攻撃魔術を発動。
威力は低いが鎧の覆われてない部分に穴を開けるくらいは出来る。
脚を封じて、距離を取る。
ドルキはマリオンの細い足に狙いを定め、
次の瞬間彼女の体が掻き消えた。
しまった――そう思った時にはもう遅い。
背後に転移したマリオンが、拳を握り締め、渾身の一撃を放つ!
「死、ねえぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!」
(防御っ)
マリオンの腕が届く直前、何とか防御魔術を発動。
ぎいいいいいぃぃぃぃぃんっっ!!
耳障りな音と共に、防御結界とマリオンの腕の間で魔力の光が火花となって撒き散る。
が、マリオンの拳が光のタイルにめり込み、一つ、また一つと光の粒となって消えていく。
不安定な体勢から発動した防御結界では、怒りに我を忘れたマリオンの前では無力。
呆然とするドルキの前で、マリオンの右腕が結界に深く食い込んだ。
ばりぃんっ――防御結界が、攻撃の負荷に耐え切れずに粉砕されて、
「めぎれっ!?」
結界を突き抜けたマリオンの拳が、ドルキの厚化粧の上に食い込んだ。
***
マリオンは気付いていなかった。
リオがかつての優しい少女では無くなっている事に。
ドルキの言葉が、真実であったという事に。
ドルキを怒りのままに殴り飛ばし。
そしてリオを助け出せばそれで全てが上手くいくと思っていた。
「お陰で義母様に止めを刺す事が出来ます」
甘かった。
笑顔で母を殺すと言う妹に愕然とする。
悪魔の残虐性を表し、マリオンにチャームを掛けるとリオはドルキをいたぶり始める。
無邪気な少女の顔をしたまま、腹を蹴り、爪で顔を引き裂く。
狂ったように笑う妹に、マリオンは自分が取り返しのつかない事をしたと気付いた。
「悪い子はどこだああぁぁぁっっ!!!」
しかし。絶望的なこの状況に、一匹のアネモネが乱入した。
彼女の名前はネーア。
いや、ネーアだけではない。
あのグリーズまでもが、ドルキの危機に駆けつけた。
ネーアとグリーズ。
二百年の長寿を誇る最強のアネモネ。
リビディスタの長にして剣神の称号を持つ戦士。
この二人が居れば恐れるものなど無い。
次回、永久の果肉十三話、
愛憎劇―後編―
愛と憎しみに彩られた最悪の親子喧嘩。これにて決着。
198 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:48:35 ID:Wai8M9kP
はーい。お疲れ様でした。
しかし読み返してみるとラストシーンの引き方ってばないですねぇ。
シリアスなのかギャグなのかw
いつものように誤字脱字感想等お待ちしておりますー。
さて。予定通り本編は次回投稿分で終了予定です。
エロシーンも、多分ありません。
まあ、その代わりと言っては何ですが。
エピローグというか後日談にてエロオンリーのお話をやるつもりです。
マリオンのエロとか各キャラの和姦などなどやり残したエロをしたいですね。
今回はこの辺りで失礼します。
また来週お会いしましょー。
洋女っ、晩、ざぁぁぁぁぁぁいい!!!
うん。これはちょっとわざとらs
永久の果肉11
89 乙×風 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:05:04 ID:gpT5qXPc
>>79氏
GJでした。
ワサビと醤油は基本ですがおろし生姜も結構いけますよ。たこの刺身的に。
最近は暗い話ばかり書いてるので純正和姦寄生とかとっても癒されました。
この調子でチンコ虫もSS化ですね。わかります。
>>70氏
百合はあれども幼女同士でドロドロねちょねちょとHするてのはあんまりないんですよね。
だからやりました(キリッ
あ。誤字の指摘ありがとうございます。
どうやら肝心なシーンで台詞回しがおかしくなるのが多いようですね私は。
はい。という訳で投下です。
NGワードは、
(騎上位? 人外化、逆レイプ、種付け、バトル)
花形の魔物の上に跨って自分で腰を使うオニャノコってエロイと思います。
こう、女の子座りで。
目の前の花弁に手を付いてクイクイと。
そんな感じのエロシーンあります。
というわけで以下本編です。18レス程消費します。ごゆっくりどうぞー。
90 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:06:58 ID:gpT5qXPc
第十一話 愛と絶望に満たされた街
ふと誰かに呼ばれたような気がしてクロトは目を覚ました。
淫臭漂うベッドの上で、ゆっくりと体を起こす。
辺りをぼんやりと見渡すと、息も絶え絶えになった男が四人、大の字で床に倒れている。
そして二つあるベッドの間には、成長したアドニスの花が咲いていた。
(…私の…花…)
寄生されていたとはいえ、この腹から生み出した魔の花は子供のようなものだ。
快楽付けされ、倫理観が曲げられてしまった感性は、肉の花を愛しく思う。
「おっきく…なってるの…?」
ラフレシア型の花は、今やその直径を二メートル近くまで肥大化させていた。
ついさっきまではこの腹に収まっていた筈なのに、何という成長速度だろうか。
メイドの少女を通して、淫魔から大量の魔力を注がれたせいだった。
(…あ…良い匂い…)
意識がはっきりしてくると、この巨大な花から甘い香りが漂ってくるのが分かる。
それに誘われるように、四つん這いでアドニスの元へと近付いた。
しゅるしゅる。
「きゃぁんっ」
花弁の付け根から生えた何本もの触手がクロトの体を捕らえる。
恐怖感は無い。突然の事に驚いただけだ。
おしべ触手は、顔に似合わずグラマラスな体を持ち上げ、花の真上へと移動させる。
(あ、匂い、濃い…)
花の真上まで運ばれると、催淫香もずっと濃密だ。
頭がくらくらして、胸が高鳴る。
じゅん、と膣が新鮮な愛液を搾り出して、子宮が疼くのを感じた。
(おマンコみたい…)
眼下に広がるアドニスの花は、まるで巨大な女性器だ。
肉ヒダが連なる花弁の内側。それに大陰唇を思わせる花の中央部。
肉色をしたそれらが甘い香りを放つ粘液に濡れて艶かしく輝いている。
と、その中央部からずるずると音を立てながら生殖器が生え出した。
多重のエラ。亀頭部分の大量の疣。
間違いない。淫魔が股から生やしていたモノと同じ形状だ。
だが成体となったアドニスの生殖器はそこで倒れている男達の二の腕と同じほど太い。
(こ、こんなのに…犯されたら…)
きっと今度こそ狂ってしまうかもしれない。
そうだ。そうやって人間の心を壊されて、アネモネへと変わっていくのだろう。
「…あは…」
ぞくぞくした。壊れた感情が、自分が魔物へと変わっていく予感に倒錯的な官能を覚える。
体を持ち上げている触手から徐々に力が抜け、クロトの高度を下げる。
女芯へと狙いを定めて、細い肢体が余りにも太い肉棒へと緩慢に近付く。
そして、ぐちり、とその先端が埋没した。
「んあぁっ!?」
(すごっ、おっき、すぎるぅ)
出産した直後でぽっかりと開いたヴァギナ。その穴に合わせたかのようなサイズだった。
――体を拘束していた触手が急に離れた。
ともすれば重力に引かれ、体が落ちる。
次の瞬間訪れるであろう刺激に期待して、クロトは淫靡な笑みを浮かべた。
ずるるるるっ!
「んああぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁああぁぁぁぁっっ!!?」
極太の触手は拡張された産道を更に押し広げ、あっと言う間に子宮の内側まで入り込んだ。
(中、中までっ、入ってきてるぅっ!!)
腹を圧迫する感覚がやや苦しく、涙目でひゅーひゅーと空気を取り入れる。
91 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:08:41 ID:gpT5qXPc
視線を下げれば巨根を受け入れた下腹部が、歪な形に盛り上がっていた。
全部入っている。あのおぞましくも、いやらしい触手が。
(はっ、あっ、苦しいけど、熱くてっ、気持ち良いっ…!)
圧迫感もあるが快楽もある。
いや、それ以上に――何と言うのか『しっくりくるのだ』。
この花はついさっきまでこの腹の中で育った魔物だ。
それが元の鞘に戻るのだから、当然なのかもしれない。
言わば、この触手は自分専用。この体を犯す為に生まれてきた。
そして、散々犯された女性器はアドニスの寄生から解放された後でも敏感だ。
それを、こんな凶悪なモノで掘り返されたら。
「んっ、んんんっ!」
クロトは自ら腰を動かし始めた。
女の子座りの体勢から、正面の花弁に手を突き、腰を持ち上げる。
「あっ!? あぁぁぁあぁぁぁっっ!!」
ごりごりと子宮口を。Gスポットを触手に削られる。
(何これっ!? 気持ち、良すぎてっ)
ブツブツとした亀頭部分が子宮口を内側から抉る。
やすりでも掛けるように、多重エラがガリガリと膣内の『しこり』を削る。
視界で何度も火花が散った。
二箇所から与えられる桃色の刺激が背筋を駆け上がり、半開きの口から喘ぎとなって出る。
予想以上の快楽に、力が抜けていく。
持ち上げた腰が、徐々に落下して、
ずりゅりゅりゅっ!
「いああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!?」
どすん、と子宮の奥に触手の先端を打ち付けてしまう。
腹の底を突き破られてしまいそうな感覚だった。
だが卑猥な形状をした触手に肉の穴がかき乱され。
あまつさえ性感帯となった子宮を揺さぶられ。
その激感にクロトは前後不覚に陥った。
「…あっ…! っ、…はっ、ぁあっ…っ♪」
軽く達したらしい。
舌を垂らし、ぶしゅう、と結合部から潮を吹く。
揺さぶられた子宮が、きゅん、と痙攣して触手を締め付けた。
(いいっ、これ、いいっ)
子宮ごと犯される快感。その味を覚えてしまったクロトは再び腰を動かす。
ずるるるるっ――
「あうんんんんっ…!」
ゆっくりと触手を引き抜き――
ずりゅりゅっ!
「んああぁぁんっっ!!」
――落とす。
肉の穴が耕され、どんどん敏感になっていく。
子宮の奥を突かれる度に、今まで味わった事の無い法悦を感じた。
「いいっ! これいいっ!! ああぁぁぁぁっっ!!!」
ずりゅりゅっ! ずるるるるっ…! ずりゅりゅっ!! ずるるるるっ――
大陰唇から子宮の奥まで。20センチ以上の肉のチューブを自らの意思で責め立てる。
ピストンのペースも徐々に上昇し、捻りや回転と言った動きまで混じり始めた。
「んああぁっ! いいっ! お花っ! 気持ちいいのっ!!
あぁっ!? イクぅっ! ああっ! ぁっ! あぁっ! あっ! あっ! あ!
凄いのっ、きちゃうきちゃう!! ああぁっ!」
じゅぷじゅぷと結合部から卑猥な音が響いていた。
濃密なアドニスの催淫香にクロトの発情臭が混じる。
空気に混じり、下品な音を立てる本気汁はクロトが感じている証拠だ。
腹の圧迫感は殆ど無い。それが霞んでしまうほどの快楽が、彼女を襲っていた。
舌を垂らし、眉根をハの字に寄せ、涙と鼻水と涎を垂らしている。
だらしなく弛んだ頬や、半開きの口はまさしくメスそのもの。
92 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:11:41 ID:gpT5qXPc
もう、快楽を貪る事しか考えられなかった。
「あっ!! あぁっ!! イクっ、イクイクイクイク!!
アクメって、クサマンコびくびくさせますぅっ!! あぁぁっ!?
あっ! あっ、あっ、あっ! あっ、あ、あ、あ、あ、あぁん!!
んおあおああぁぁぁっっらめぇあぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
絶頂。
自分で宣言したとおり子宮を、膣を収斂させ、触手を何度も締め付ける。
その瞬間。
先端から糸状の触手が溢れ出し子宮を内側から貫いた!
「んぎいいいぃぃぃぃぃっっっっ!!!!?」
痛みとも快楽ともつかない刺激に、クロトが白目を剥く。
子宮を刺し貫き、ミクロ単位の穴をいくつもあけた極細触手が内臓へと侵入。
自身を神経の根として、クロトの体を犯し始めた。
「おおあぁぁっ、あぁ、あ、あ、あ、あっ、あぁ、ああぁぁぁぁぁっっ…!!」
体中に、生殖器から溢れ出した触手が満たされていく。
細いミミズか何かに、体の隅々まで犯されるような感覚だ。
(……気持ちいいっ!)
だがそんなおぞましい感覚すらも、今のクロトには快感だった。
びゅるっ! どびゅっ! どぷどぷどぷどぷ!!
「んひゃあぁぁぇぇあぇぁえええぇぁあぁぁぁぁぁっっ!!?」
突如子宮内で大量の射精。
熱い粘液の感触に、子宮が再び悦びに打ち震える。
更に子種をせがむように何度も痙攣し、触手から精を搾り取る。
同時に、体中に広がった繊毛触手も、何かしらの液体を滲み出していた。
(熱いいっ!!? 熱いィィイ!! あはぁっ!!!)
体の内側から熱湯が溢れ出すような感覚に、クロトは悶絶した。
潮だけでは飽き足らず、股から小水を漏らし、アドニスの糧にする。
直後に変異が始まった。
体中に根を下ろした繊毛触手がクロトの体を作り変えていく。
絹のような肌が鮮やかな浅葱色へと染まっていく。
元でも大きめのバストが一回りも二回りも肥大化した。
子宮を姦通していた雌しべ触手の疣から繊毛触手が生え出し、内側から串刺しにする。
それすらも神経としてクロトの内臓に根ざしていく。
「んああぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁっっっ!!!?」
(気持ちいいひぃぃっ!!)
体を内側から作り変えられる感覚。それは快楽だった。
子宮を中心に、どろどろと溶かされ、一つに融合していく。
子宮に根ざした神経の束はクロトと同化し、もうアドニスから離れる事は出来ない。
(変わっていく…! 私、アネモネになっていく…!)
白魚のような脚は、大陰唇を彷彿とさせる花の中央部分に何時の間にか飲み込まれていた。
どうなったのか視認する事は出来なかったが、アドニスの花と同化したのだろう。
股から下の感覚が無くなっていた。
更にずるずると、触手を貪欲に咥え込んだ結合部すらもアドニスへと飲み込まれていく。
(一緒に、なるんですね…この花と…)
もう二本の脚で歩く事は出来ないだろう。その事に後悔はない。
この肉の花の下に生えた大量の触手が脚の代わりだからだ。
そしてより卑猥になった体は男も女も誘惑する。あのグリーズも。
催淫香につられて寄ってくるメス達をこの体で溺れさせ、種付けをしていくのだ。
そしてそれはとてもすばらしい事だと思った。
「あはあぁぁぁぁあぁっっっ…♪」
歓喜の涙が頬を伝い、流れる。
歯車が噛みあうように、本体であるアドニスと神経が完全に繋がった。
まるで下半身が肥大化してしまったようだ。
(あ、触手…動かせる…)
花弁の根元から伸びるおしべ状の触手を眼前でゆらゆらと動かす。
地に付いた触手の一本一本にも神経が通っているようだ。
93 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:13:10 ID:gpT5qXPc
薄汚れた絨毯を踏みしているのが分かる。
「はあぁぁぁぁぁっっ…♪」
感嘆の溜息を吐き出す。
同時におしべ触手から、ブシュウと催淫ガスが噴出した。
(…あはぁ…♪ ガスを噴出すのも…なんか気持ちいいです…♪)
体中に精力が溢れている。
だが頭の中はまるでぬるま湯につかっているようだ。
ただひたすらに甘く、緩い愉悦に全身が覆われている。
『おめでとうクロトさん』
その時、腹の底から声が聞こえた気がした。
下半身のアドニスが、その声を我が主と認識する。
『完全にアネモネになったみたいだね』
(…あ、リオ様、ですか…?)
意識を集中すれば、アドニス本体を通して淫魔の気配を感じる事が出来た。
今は、移動中、だろうか。特に火照った体を持て余している訳でもないようだ。
離れていてもアドニス同士で繋がっている。それを感慨深く思った。
『うん。ほったらかしにしちゃってごめんね? ね、今どんな気分?』
(あはぁ♪ 何だかふわふわして、夢の中にいるみたいですぅ…♪)
『――そっか。アネモネになったらそんな感じなんだね。
……あ、今私ね、北東の城壁に来て皆に結界を解除してもらってるとこなの。
私はこのまま北上して屋敷を目指すから、クロトさんは南西と北西の結界を解除して?』
(はい♪ おおせのままに♪)
そうだ。主である淫魔は、リビディスタの奥様に復讐をする為にこの街に侵入した。
そして結界の解除は彼女との『約束』を叶えて貰う為の条件だった。
(あぁ、グリーズ様、グリーズ様、私、早く貴方様に会いたいです…)
会って、滾るこの想いの赴くまま、情事に耽りたい。
だからその為にも、今は働かなくては。
『あ、そうだ。今パセットちゃんが一足先に屋敷に向かってるの。
クロトさんは出来るだけ派手に暴れてもらえるかな?
そうすればパセットちゃんも安全に屋敷に潜入出来ると思うから』
(お任せ下さい♪ 沢山女の子に種付けをして、この快感を教え込んで差し上げます♪)
『うん。よろしくね』
それっきり主の声は聞こえなくなった。
どぉん。変わりにすぐ近くで爆発音。
森の魔物達が侵入しているのだろう。住民の悲鳴らしい声が外から響いてくる。
クロトは得意の探索魔術を起動した。
アドニスの真下に、青い魔術陣が展開し、周囲に魔力の波動を放出する。
アネモネとなり人外の力を手に入れたクロトのそれは、人の時よりも強化されていた。
魔力は波紋となり半径四キロ周囲へと広がっていく。
(はぁ…♪ 人間、沢山いるぅ♪)
南東の城壁からモンスターが侵入しているらしい。
街の外から侵入する赤い光点から逃げるように、青い光点が街の中央へと移動していた。
クロトが居るこの小屋は南西の城壁からやや街の中央寄りの場所に位置している。
逃げ惑う人々は路地裏を通り、中央通りへと集っているようだった。
アレエスの街の中心には要塞がある。
リビディスタの屋敷よりも大きいそこは、有事の際、住民が避難する場所となっていた。
街の大結界の発生装置が安置している場所でもある。
そういえば、魔物達の侵入を図るならその装置を無効化する手段もある筈なのだ。
どうして淫魔は、部分的に結界の解除をしていくなど回りくどい事をするのだろう。
要塞内に侵入するリスクが高すぎると考えたのだろうか。
(まあ、どうでもいいですね)
今は、城壁の結界を解除する事だけを考えればいい。
その過程で、出来るだけ多くの女達に種付けをしよう。
はぁ、と甘い吐息を漏らすとクロトは移動を開始した。
94 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:15:00 ID:gpT5qXPc
***
「あんっ♪ にゃんっ♪ はぁっ♪ いいっ♪
お兄さんのおチンポっ♪ とってもいいよう♪」
北東の城壁内にて。リオは結界術士達の逆レイプに励んでいた。
アドニスの催淫香を居住空間の中に満たし、甘い喘ぎを上げている。
これだけならいつもどおりなのだが。
「うわ、暫く見ない間にエロエロになってるわねぇ」
横合いからの声にだらしなく弛緩した顔を向ける。
「あっ!? メデューサのお姉さん!」
そこには朝方、森の中で出会った魔物の姿があった。
いや、それだけではない。
街の外へと続く重い門は開かれ、そこから多種多様なモンスター達が侵入しているのだ。
リオ達は屋上へと続く階段の踊り場で性交を愉しんでいた。
もしも床でこんな事をしていたら魔物達の進撃に踏み潰されていただろう。
「さっき出会った時もいきなり空飛んできたから驚いたけど。
こうやって人間を『食べて』いるところ見るともっと驚くわぁ」
「あー。お姉さんにはあげませんよぉ。この人達はリオが捕まえたんですから♪」
「はいはい。街に侵入出来たのもアンタのお陰だからね。
それくらいは譲ったげるよ。ところでアンタ。
さっき森で会った時は目両方と赤じゃなかったっけ?
なんで今片方青になってるの?」
「うにゃ?」
(あ、そういえば。そうかも)
自分の瞳が何色かなんて気にしていなかったが、改めて指摘されると首をひねってしまう。
青になったり赤になったり、忙しい右目だ。
「さあ? わかんないです♪」
何よそれ、とメデューサが胡散臭そうなものを見る目つきでこちらを睨んだ。
「あーそれにしても臭い臭いっ。アドニス臭い!!
あたしゃもう行くよ? こんな所、一秒でも長居したくないからねっ」
言い捨てると尻尾をのたうたせながら階段を器用に下りていく。
それを見送るとなんとなく自分の胸元や脇に鼻を押付けすんすんと匂いを嗅いだ。
(…そんなに酷いんだ。私達の匂い…?)
アドニスの催淫香は人間には甘く香るが凶悪な魔物には悪臭なのだ。
どうにも実感を伴わなかったが、嫌がるメデューサや急ぎ足で城壁をくぐる魔物を見ると。
「うーん。やっぱり効いてるんだねー」
などとしんみり思ってしまう。
セックスの際にも他の魔物に邪魔にされないので有益な能力だった。進化の賜物だろうか。
(さあ、もうちょっと愉しみたいけど…屋敷に向かったパセットちゃんも気になるし。
他の結界はクロトさんに任せて私も屋敷に向かおうかな?)
胎内のアドニスを通して、先程クロトが完全にアネモネ化したのを確認した。
今も彼女がどのような状況なのか大体把握出来る。
向こうも、ある程度ならこちらの思考や状態を感じる事が出来る筈だ。
(アドニスって、繋がってるんだね)
犯したものと犯されたもの。
上下の関係は厳しく、被害者は自分を犯したアネモネに逆らう事は出来ない。
だが、こうやって互いを感じる事が出来ればそこに摩擦は生まれない。
同し種同士争う事も無いだろう。この世で最も統制の取れた種族。
(皆がアネモネになれば、誰も悲しい思いをしなくて済むのかな?)
例えば、親が子供を殺そうとしたり。
その子供が、親に復讐をしようとしたり。
そんな事が起きない、平和な世界になるのではないのだろうか。
「まさかね」
そんな事はありえないだろうけど、ついそんな夢物語を思い描いてしまった。
でもこの街だけなら、そんな世界にしてもいい。そう思った。
その矢先に、
「きゃあぁぁぁあああぁぁぁぁぁっっ!!?」
95 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:17:05 ID:gpT5qXPc
街の中から女の悲鳴が木霊した。猫耳がぴくりと持ち上がる。
「にゃっ?」
魔物達から逃げそびれたのだろう。この世の終わりかと思わせるような悲痛な叫びだった。
(……どっちにしろ移動するつもりだったし)
「またね。お兄さん達」
いつものように感謝のキスを二人の結界術士にプレゼント。
その後、足取りも軽く、階段を駆け上がる。
屋上に頭を出すとその真上をびゅん、とハーピーが一匹通り過ぎた。
ここの――北東の結界が解除されているので、この辺りからは空からも侵入したい放題だ。
それを何となく見送ると、リオは見張り台から街を見渡した。
(あ、親子連れだ)
城壁から少し離れた民家の前で、母親と思しき女性とその娘が魔物達に取り囲まれていた。
「げへへへっ。もう逃げられないどっ」
下品な笑い声を上げながら近付くのは豚面をした魔物だ。
肥満気味の巨体を揺らしながら、涎を垂らすそのモンスターはトロルという。
一応知性を持った魔物だが強暴で好色だとモンスター図鑑に載っていたのを思い出した。
「お願いしますっ! 私はどうなっても構いません! でも、この子だけはっ」
(…ふぅん。あんなお母さんも居るんだね…)
自分の体を身代わりに、子供だけを助けるというのか。
まるで母親の鏡だ。どこかの鬼ババアに爪の垢でも煎じて飲ましてやりたい。
「ぎゃっぎゃっぎゃっ!! そいつは無理な相談だなぁ?
お前はいい体してるからぁ、たーぷり可愛がってやるけどよぉ。
このチビはそうもいかねえだろぉ? しょんべん臭えしぃ。好みじゃねえんだぁ。
だからこいつは食ってやるよぉ。お前の目の前でなぁ?
あぎゃっぎゃっぎゃっぎゃっ!!」
「…最低…」
自分もすでに人に身ではないのだが。
ああいう下品な輩を見ると流石に不快になる。
このまま見過ごせば母親は死ぬまで陵辱され、娘も食い殺されてしまうだろう。
(…どうしよう…)
こうなるのは最初から分かっていた筈だ。
自分の復讐のせいで、何の罪も無い人間が犠牲になってしまう。
覚悟、していた筈だ。
だが、どうやら納得は出来ていなかったらしい。
(…私、悩んでるの? もう、身も心も魔物になったと思ったのに)
両手を握り締める。
パセットに注ぎ、消耗した分の魔力は、さっき二人の結界術士から補充した。
体の奥から、人外の力が溢れ出しているのが分かる。
「さぁっ、先ずは腹ごしらえだぁ! ここんところいいもん食ってなかったからなぁ!
このガキを食って、それからお前も犯してやるぅ!!」
「いやああぁぁぁっっ!! おかーさん! おかーさぁんっ!!」
母親の腕から、娘が奪われた。
泣きぼくろが愛らしい、おさげ髪の少女は、自分と同い年くらいだろうか。
その周りでは興奮した豚どもが群れながら汚い言葉で囃し立てている。
少女の顔が絶望に染まる。
必死の形相で、母親が娘に向かって手を伸ばしていた。
「――決めた」
見張り台の縁に手を掛け、勢いを付けて外へと飛び出す。
地面までの高さはざっと五十メートル程。
地面に激突すれば、即死は免れない。
だがリオは背中の蝙蝠の翼をはためかすと、トロルの群れへと一直線に突っ込んでいく。
風を切る音が耳元で唸った。
(悪魔の血が混じっていて良かった)
空を飛ぶだけだが、その悪魔の力が、人を救う為に使われようとしている。
96 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:19:06 ID:gpT5qXPc
それを考えると胸の奥から何か形容し難い感情が溢れ出してきた。
その感覚を噛み締めながら、
「女の子を、」
ふとこちらに気付いた先頭のトロルに、
「苛めるにゃぁあぁぁぁっっっ!!!」
渾身の飛び蹴りを喰らわせた!
「ぷぎいっっ!?」
べきゃぁ、という物凄い打撃音がしてトロルの顔面が潰れると、彼方へと吹っ飛ぶ。
でっぷりとした巨体が高速で錐揉み回転させながら弧を描いて飛翔し――
ずどん、と音を立てて十軒程隣の民家の屋根に激突した。
助けられた親子もトロル達も突然の出来事に口を『あ』の字に開けたまま硬直している。
その間に地面に着地したリオは、素早く親子とトロル達の間に滑り込んだ。
「な、なんだてめぇ!?」
「俺らのボスになんて真似しやがる!」
「こんな事してただで済むと思うなっ」
「お前から、」
「フシャーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!!!!」
口々と吼えるトロル達に、牙を剥き出しにして威嚇した。
四つん這いの姿勢で尻尾と髪を逆立て、赤と青の猫目で睨み付ける。
トロル達はそんなリオの気迫に押されて『ひぃっ』と情け無い声を出した。
「何してるの? 早く逃げて」
ところが背中の親子ときたら未だに状況が判らないのか、呆然としたままだ。
魔物に襲われていたところを魔物に助けられる、という状況が彼女を混乱させていた。
「え……? あの…?」
「その子がどうなってもいいの!?」
「…っ!?」
肩越しに喝を入れてやると、それでようやく母親は弾かれたように動き出した。
娘を抱き上げ、中央通りの方へと駆け出していく。
「ちゃんとその子を守らないと私が許さないからっ…!
その子を泣かしたらっ、許さないから!」
走り去る親子の背中に向けて、言葉を投げかける。
そんな事を言われなくても分かっているのだろう。
シュトリの力は、母親が強い決意と感謝の気持ちを抱いているのを感じた。
(私のお母さんが生きていたら。
同じような事があっても私の事、守ろうとしてくれたかな?)
体を張って、この身を救おうとしてくれただろうか。
だが顔も、人柄もよく知らない母親を想像する事は出来なかった。
(居ない人の事を考えても、しょうがないか)
だがもし今も母が生きていたら。
沢山、甘えたりする事は出来たのだろう。
それを思うと胸がきゅん、と苦しくなった。
「あっ、逃げるぞっ」
「お、追え! 久しぶりの獲物を、」
「フーーーーーーーーーっっっ!!!」
『ひぃっ』
追い掛けようとするトロル達を再び牽制。少し八つ当たり気味だった。
「なんだよこのチビ、メチャクチャおっかねぇ…っ」
97 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:20:43 ID:gpT5qXPc
(…こんな可愛い子におっかないんなんて、失礼な豚さん)
何なら全員、今此処で『食べて』しまおうか。
どろり、とした感情が溢れ出して来る。
それは淫魔の――いや、悪魔の血が持っている凶暴性だ。
欲望のままに他者を貶め、快楽を求めるリオの心の闇。
「ふふふ。おっかない? なーにトロルさん達。
リオみたいなちっちゃな女の子に怯えてるの? かーわいー♪」
煽った瞬間、馬鹿共は牙を剥き出しにして口々と喚き散らす。
やれ、舐めるなだの、やれチビのくせにだの、頭の悪そうな台詞を吐き出していく。
「ふーん? そう思うなら、リオの事、好きにしてみればいいんだよ?
ふふふ。溜まってるんでしょ? いいよ♪
リオがぁ、トロルさん達のくっさいザーメンカラカラになるまで搾り取ってあげる♪
――あ、そうだ。どうせ童貞ちゃんだよね♪ 優しくしてあげないと駄目だね♪」
『て、てめーーーーーぇぇぇっ!!!』
トロル達の怒りが頂点に達した。
目を血走らせ、地面を踏みしめながらこちらへと近付いてくる。
怒りに興奮したトロル達の股座から、濃い精気が溢れ出しているのが分かった。
思わずぺろり、と舌なめずりをし、
その瞬間、
「ありがとー! 猫耳の悪魔さん!」
と、背中から女の子の声が聞こえた。
「……ぁ…」
それだけでどす黒い気持ちが霧散し、代わりに幸せな気持ちが溢れてくる。
(あ、ありがとう、って言われちゃった)
ネーアに言われたのを除けば、本当に久しぶりだった。
というより最後にありがとう、と言われたのがいつか思い出せない。
ほわほわとした気持ちが溢れ出してきて、気恥ずかしくて頬がほんのりと紅く色づいた。
「でもっ、おパンツくらい穿いた方がいいよー!? 風邪引いちゃうよー!?」
「よ、余計なお世話にゃぁっ!」
他人に指摘されたせいか、淫魔状態の格好が無性に恥ずかしく思えてきた。
こんな羞恥心とは無縁のような衣服をよく考え付いたものだ。
素面ではとても着ていられない。
「はあ? なんだこいつ? 照れてやがんのか?」
「見た目の割には人間臭いな」
「俺らと同じモンスターの癖に人間助けやがるし」
「う、うるさいにゃ! あの人達はねぇ、えー、そのっ、だからぁ――
そ、そう! リオが後で食べるの! あの人達はリオの獲物なの!!
助けたわけじゃにゃいの!! 断じて!」
何と言うツンデレだろうか。これでは怪しまれても仕方が無い。
現に豚面の胡散臭い視線が次々と突き刺さって痛い。
「そんな事はどうでもいいんだよっ」
「そうだそうだ! 言ったからには責任とって俺達の相手をしろ!」
口々と文句を言うトロル達。
それでもこちらに手を出してこない当たり小心者というか虎の威を借りた猫というか。
いや、猫はこっちだった。
「ごめんね? なんか、そんな気分じゃなくなっちゃった♪」
ウィンク一つしてリオは飛び立った。
「ってそりゃねーよ!!」
足元からトロル達の文句や野次が次々と飛んでくる。
「べー、だ」
空からあっかんべーで答えてやると地団太を踏んでトロル達が悔しがった。
それを指刺しながら上空で腹を抱えて笑う。
(あー、面白かった♪ そだ、あの人達、無事かな?)
逃げた親子を上空から探すと、丁度街の警備兵に保護されているところを発見した。
「…良かった…」
98 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:22:15 ID:gpT5qXPc
折角助けたのだから事が終わるまで生き残って欲しい。
そう。ドルキに復讐する時まで。
(…やっぱり、私は義母様の事、許せそうにない)
パセットと交わってから少し人間らしい感情を取り戻せた気がするが、それとこれは別だ。
ドルキに復讐を果たした後、出来るだけ多くのアドニスの花を咲かせよう。
そうすれば、ネーアの恩返しにもなる筈だ。
「そうだ。パセットちゃん、どうしてるかな?」
今頃屋敷に侵入出来ただろうか。
色んなところで混乱が拡がれば、ドルキの意識も逸らせるし、戦力も分散する。
今はひたすら、状況をかき乱してやる必要があるのだ。
(あー、飛んでると警備の人に見つかるかな?)
下手をすると遠距離から狙撃系の魔術で撃ち落とされるかもしれない。
リオは路地に降り立つと、アドニスを通じて、パセットと連絡を取るのだった。
***
一方その頃。
アネモネへと変異したクロトは街の中央通にて人外の生を謳歌していた。
様々な露天が立ち並ぶ大通りの一角が、ピンク色の霧に包まれている。
「…こんな所に、アネモネが…っ」
「うふふ♪ そんな事どうでもいいじゃないですかぁ♪
皆で一緒に気持ちよくなりましょう?」
運悪く催淫ガスを吸い込み、その場にへたり込む人間が何人も居た。
警備の者。住民。併せて十人は下らない。正に選り取り見取り。
クロトは顔を赤くしながら欲情する体に抗う人々の中から、うら若い女性に目を留めた。
歳は自分と同じ、二十歳程だろうか。
短い黒髪の下に、鋭い眼光が輝いている。
体が言う事は聞かなくても、その心だけは折れていないようだった。
「――あぁ。誰かと思ったらティーシャさんじゃないですかぁ♪」
魔術士のローブに身を包んだ女は、クロトと同期のリビディスタの門下生だった。
「…クロト…? まさかお前、クロトなのか!?」
精悍な顔つきは中性的な印象を与えるが、その言動も男勝りだった。
赤い外套に身を包んだ彼女の名はティーシャ。
七つ星の、攻撃魔術に長けた魔術師だ。
「せいかーい♪ 私ねぇ、リオ様に犯されてぇ、アネモネになってしまったんですぅ♪」
「リオ、様に…? なんだ? 何を言ってるんだ!?」
「あーそっかぁ、ティーシャさんはリオ様が行方不明になった事知らなかったですよね?
でも、それはもういいんです。うふふふ。ねえティーシャさん?
アネモネってすごいんですよぉ? なんか、全身が気持ちいいんです♪
頭がぼーってして、ずーっと夢見心地なんです♪
こうやってガスを撒くのも――あぁん…♪」
ぶしゅうと催淫ガスを触手から噴出して、その快感に甘い声を漏らす。
「はぁ…気持ちいい…♪
でもぉ、女の子に種付けする時は、もっと気持ち良いんですよぉ?」
触手を動かし、腰を砕けのティーシャへとゆっくりと近付く。
「よ、寄るなっ! それ以上近付くと、攻撃するぞっ」
「攻撃? まさか私に、魔術を撃つんですかぁ?」
「そうだっ、だから、動くなっ、私は、お前を、」
「くすくすっ。催淫ガスを吸い込んだまま魔術が使えるわけないじゃないですかぁ。
ほんとは体が疼いてしょうがないんでしょう?
おマンコがじくじくして、指でぐちゅぐちゅ掻き回したいんでしょう?」
「く、クロトっ、お前、何て言葉をっ」
猥語に羞恥心を煽られたティーシャが赤い顔を更に赤くさせた。
直情系でボーイッシュな彼女も、猥談においては自分と同じく純情系だ。
そんな彼女の反応を愛しく思いながら、腹の中で生殖器が疼くのを感じた。
「あぁ、ティーシャさんっ、可愛いっ、とても可愛いです!」
(種付けしたいっ、我慢出来ないっ!
ティーシャさんのおマンコに、びゅるびゅるザーメン注いで種子を植え付けたい!)
99 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:23:46 ID:gpT5qXPc
はぁ、はぁ、と息を荒げるクロトに貞操の危機を感じたのだろう。
ティーシャは手にしていたロッドをこちらに突きつけると、
「く、来るなぁあっっ」
ロッドの先から魔術陣が生み出される。
陣の色は攻撃を意味する赤。その中心から、拳大の火球が生み出された。
(あ、凄いです。このガスの中でまともな攻撃魔術を使えるなんて)
関心した瞬間。火球がこちらに向かって飛来した。
どおんっ!!
大気を振るわせる爆発音。
着弾の瞬間に衝撃波が生まれ、熱気と風圧がガスを吹き飛ばす。
力加減を誤ったのか周囲の住民達が爆風に煽られて地面を転がった。
「しまったっ!?」
魔術を使った本人が顔を青くしていた。
一般人を巻き込んでしまった事。
それに何より知人に向けて容赦の無い攻撃を行った事に、後悔する。
だが。
「くすくす」
爆煙を挿んだ向こう側に笑い声。
風が煙を徐々に晴らしていく。
その先に、無傷で佇むアネモネの姿があった。
「…防御魔術…っ、アネモネになっても使えたのかっ」
ひし形のタイルを繋ぎ合わせたような光の壁が、クロトの全身を覆っていた。
「はい♪ それどころかアドニスと融合した事で魔力の総量も上がってるみたいです♪
私達魔術士としては良い事尽くしですねぇ♪」
「馬鹿を言うな! 人を捨ててまで、そんな力なんて必要ないっ」
「真面目ですねぇティーシャさんはぁ。
その凝り固まった頭を、私が柔らかくしてあげますね♪」
ぶしゅう、と再び催淫ガスを撒き散らす。
「…っ!? くそっ」
防御魔術でガスを防ごうとするが、ティーシャは攻撃専門だ。
圧倒的な力の差に、魔力で編み出された光の壁があっと言う間に崩壊する。
さっきと同じだった。
突如横合いの路地から出現したアネモネがガスを撒き散らし、こちらの動きを封じる。
「抵抗なんて無駄ですよぉ? 諦めて、私に種付けされて下さい♪
大丈夫です♪ 催淫効果たっぷりの体液を沢山使ってあげますから。
ちーっとも痛くありませんよぉ? くすくすっ。くすくすくすくすっ」
笑いながら触手を伸ばす。
あ、と声を上げる間もなく、ティーシャの体を拘束した。
「は、離せっ――うわっ!?」
暴れる彼女の体を引き上げ、花弁の上に招待する。
びりいっ――おしべ触手を使い、魔術士の衣服を乱雑に引き裂く。
「ば、馬鹿っ、やめろっ! お前は正気を失ってるんだ!
屋敷に戻ってちゃんとした治療を受ければ――むぐぅっ!?」
おしべ触手でけたたましい口を塞ぐ。
むーと唸るだけになった女を微笑ましく眺め、それでも込み上げる欲情は抑えられない。
息をやや荒げながらぼろぼろになった衣服を脱がす。
その下から現れたのは魔術師とは思えないほど引き締まった肢体。
二の腕にも腹にも、余分な脂肪は付いておらず、脚は力強く、しなやかだ。
まるで野生の肉食動物を彷彿とさせるスタイルに、はう、と感嘆の息を漏らしてしまう。
「けれど胸は控えめですねぇ」
「んんーー!! ぼふぇーばぼめまま!!」
余計なお世話だ、とでも言いたいのだろうか。
「くすくす。何もそんなに悲観する事はありませんよぉ?
アネモネになれば、スタイルだってよくなるんですからねぇ?」
ティーシャの目前で見せ付けるように、自らの胸を寄せて上げる。
ぼよぉん、とまるで生き物のように跳ねる二つの脂肪の塊にティーシャが目を見張った。
100 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:25:06 ID:gpT5qXPc
催淫ガスの中で男衆がおおっ、とどよめく。
「だからぁ、ティーシャさんもぉ、心置きなくアネモネになって下さいねぇ♪」
体を持ち上げる。
触手が、腕を万歳の格好に縛り上げ、彼女の股下を目線の高さまで吊り上げる。
嫌がる彼女を無視し、きつく閉じられた股を開いていく。
「むー!! んーーんーー!!」
触手に開脚させられると、そこにはきらきらと濡れ輝く羞恥の丘がある。
うっすらと恥毛を帯びたそこは閉じられ、だがその割れ目から一筋の愛液が流れている。
クロトはそこに鼻先を押付けるとすんすんと匂いを嗅ぎ始めた。
ティーシャの唸り声が大きくなり、がくがくと体が震える。
「あはぁ…♪ ティーシャさんのおマンコ、とっても良い匂いがしますぅ♪
処女の、乙女のおマンコの匂いですぅ♪」
鼻先に愛液を付着させながらうっとりと呟く。
「でもぉ、まだあんまり濡れてませんねぇ? 少し解しておきましょうかぁ♪」
言うや否やティーシャの口に突っ込んでいた触手をピストンさせた!
じゅぷっ! じゅぷっ!
「んっ!? んむぅっ!!」
「あはっ♪ これぇっ…! 触手、とっても感じちゃいますぅっ♪
ティーシャさんの口マンコっ、いいっ♪ 気持ち良いんですぅ♪」
親指大の触手を三本口に突っ込まれたティーシャは目を白黒させながら口姦に悶える。
少し苦しそうだが、こちらは加減出来そうに無い。
アネモネと化した心に、人間の良心など残っていないのだ。
ただ、人間の頃の性格や記憶はそのまま引き継がれるので、趣味や嗜好は変わらない。
痛がる姿は見たくないので、媚薬をたっぷり注いでやるのだ。
(あぁ、それにしても、お口の中、気持ちいいです…♪)
突っ込んだ触手の胴を口蓋へと擦り付ける。
或いは先端を開き、その舌ごと咥え込み、吸引する。
他にも先端から繊毛触手を生やし、歯茎や下の裏などを嘗め回した。
触手の性感は鋭く、それら一連の行為に蕩けそうな快感を覚えてしまう。
かと思えば、触手の生え際から熱い何かがせり上がって来るのを感じた。
「あぁっ!? 射精しますぅっ。ティーシャさんの口マンコにっ…!
熱いお汁、いっぱい噴出しちゃいますぅ! あっ! あっ! あっ!
いいっ! 触手気持ちいいっ! 出る出るっ! 出ますっ!
あっはぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁっっ!!」
びゅるびゅるっ!! どぴゅどぴゅどぴゅっ!
「んむぅぅぅっっ!?」
頭が真っ白になった。
触手の中を体液が通る感触は男性の射精とは比べ物にならないくらい気持ち良い。
そもそも男の輸精管よりも敏感な触手のそれは、男のそれとは長さが全く違う。
ペニスから噴出す射精の快感を二倍、三倍と長く味わう事が出来るのだ。
それも複数本同時に。
ともなれば男の快楽を全く知らなかったクロトが、その快楽に溺れるのも無理はない。
「…あっ…っ、はっ…♪ っ、あぁっ…っ、…♪」
体を痙攣させながら、初めての射精『もどき』の快感に酔い痴れる。
ぼんやりとティーシャを見ると口から大量の体液を吐き出しているのが見えた。
加減を間違えて多く出し過ぎたらしい。無色透明のそれは催淫効果を持った蜜だ。
更に言うと、彼女を拘束していた別の触手の先端からも蜜を吐き出していた。
催淫ガスの原液とも言えるそれらが、クロトとティーシャの体をべたべたに汚していく。
傾き始めた太陽に二人の裸体が照らされて、ぬらぬらと淫靡に輝いていた。
(もう、十分ですね…♪)
口の中から束ねていた触手を引き抜く。
おえぇっ、と下品にえずくと、ティーシャは盛大にむせ始めた。
「がはっ! げはっ、げほぉっ!! はぁっ! はぁっ! くそっ! げほっ!」
「あらあら、ごめんなさい? 初めてこんな事するから、加減を間違えてしまいました。
苦しかったですよね?」
「あ、当たり前だっ」
「そうですか。でも、もう大丈夫ですよ?」
「な、何…? ――うっ?」
101 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:26:24 ID:gpT5qXPc
ティーシャが自分の体に異変が起きていると気付いた時にはもう遅い。
「あっ、あぁぁぁぁっっ!?」
目を見開き、がくがくと体を痙攣させ始める。
先程噴出した蜜は催淫ガスの原液。それを惜しむ事無く口内と体中にぶちまけたのだ。
今、ティーシャの体は想像絶する疼きが襲っているのだろう。
「あ、あついぃっ! 体がぁ!」
「熱いだけですかぁ? 切ないんじゃないんですか? くすくす。こことか、ね?」
ぞろり。クロトが眼前の割れ目に舌を這わせた。
「ひああぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!?」
それだけでティ-シャは高みへと打ち上げられる。
体を痙攣させ、上と下の口からだらだらと涎を垂らした。
「あらぁ? ひょっとしてもうイったんですかぁ?
ちょっとお薬を使いすぎたみたいですねぇ? くすくす♪」
「あ、あぁっ…!」
呻くティーシャからは完全に力が抜けていた。
抵抗する意思も無いらしく、吊り上げられた状態のまま体をぐったりと弛緩させている。
だというのに彼女の下半身だけは何かをねだるように小さく揺すられているのだ。
「あはぁ♪ ねぇねぇティーシャさん? 気付いています?
貴女のおマンコ、もうドロドロですよぉ♪」
一度アクメを迎えたティーシャのヴァギナは大きく口を開き、内部を露出させていた。
露になった肉ビラが、グロテスクにひくひくと蠢動している。
「いやぁ…、見ないでぇ…」
羞恥心を訴える言葉もボーイッシュな彼女からは考えられないほど色気を帯びている。
アクメから降りてきた彼女は、はぁ、と艶かしい吐息を漏らした。
「…あ、嘘…、アソコ、ジンジン疼くの、全然治ってない…!」
「くすくす。これだけの蜜を浴びたんですから、簡単に収まりませんよ?」
「そ、そんなぁ…いやだ…っ、こんなのっ、おかしくなるっ」
「大丈夫、大丈夫ですよティーシャさぁん?」
ずるずるずるっ!
アドニスから生殖器を引き出す。
体の内側から敏感な触手が生え出す感覚に背筋がぞくぞくした。
(はぁっ♪ 触手チンポ引き出すの、気持ち良いっ♪)
「えぇっ!? そ、それっ」
ティーシャと言えば目の前に現れたとんでもない大きさの触手に狼狽している。
いや――鎌首をもたげる、その雌しべ触手に熱い視線を送っているのか。
目元を潤ませ、艶かしい吐息が敏感な粘膜を刺激した。
「そうですよぉ? これがぁ、ティーシャちゃんの処女マンコに入っちゃうんですぅ。
どうですかぁ? 大きいでしょぉ? 気持ちよさそうでしょぉ?
くすくすっ。そんな目で見なくても、ちゃぁんとハメハメしてあげますからねぇ♪」
「い、いらないっ、大体、そんなの入る訳がないっ」
「大丈夫ですよぉ。私だって入ったんですからぁ♪」
ぐちり、とその先端をティーシャの割れ目にあてがう。
それだけで甘く、蕩けるような刺激がクロトを襲う。
人外化し、ぐずぐずに溶かされた理性が更に溶かされ、アネモネとしての本能だけが残る。
即ち、人間のメスへの種付け。
「ティーシャさんっ、私、もう我慢出来ませんっ。
ティーシャさんの事、ずぼずぼ犯してあげますっ」
「い、嫌だっ! 私はっ、アネモネなんかになりたくないぃっ!!」
泣き叫んで嫌がるティーシャを肴に、
ずりりりりっ!!
「いぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁっっ!!?」
処女を頂いた。
「ふあぁっ!?」
(何これっ、触手チンポ、とっても締め付けられますぅっ)
元でも敏感な雌しべの性感に翻弄されているというのに。
ヴァギナに絞め付けされる感触に更に追い討ちを掛けられてしまう。
「す、凄いですっ! 触手チンポっ、気持ちよすぎですっ」
人外の快楽に堕ちたクロトはあっさりと飲み込まれ、それを貪ろうと触手を操った。
102 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:27:49 ID:gpT5qXPc
じゅぷっ! じゅぷっ! じゅぷっ!
「ひぎっ!? ぎ、ぁっ!? ひうっ!!」
「あぁっ! いいっ! ティーシャちゃんの処女マンコっ!
きつきつでっ! あぁんっ♪ 蕩けてしまいますぅっ♪」
先端に生えている疣疣の一つ一つが陰核のように敏感なのだ。
それが処女膜の残骸に引っ掛かったり。
或いは、肉ヒダに磨かれたりする度に脳内がピンク色に染まる。
この快楽は人間の時には味わえなかった物だ。
それをもっと味わいたいと思い、ティーシャの体を抱き寄せる。
「んああぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁっっ!!?」
熱い抱擁を交わすと、ティーシャの股ぐらは花肉の真上へと押付けるような形となる。
痛みからかそれ以外のものからか。
狂ったような声をあげるティーシャの体をぐりぐりと触手へと押付ける。
アドニス本体が破瓜の血を啜った。
(あぁ、堪りませんっ♪ 人間の女の体っ♪)
いやらしく肥大化したニップルをティーシャのそれに押付け、蕾同士で擦り付けあう。
催淫粘液に濡れた柔肌同士がニチャニチャと音を立てて、もどかしい性感が生まれた。
あうん、と色っぽい声が漏れる。それはティーシャのものだった。
桜色の先端が触れ合う度に、きゅん、と雌しべが締め付けられるのだ。
「くすくす。ティーシャさん、チクビが好きなんですかぁ?
おっぱいが小さい人って感じやすいって言いますけど、ほんとだったんですねぇ♪
いいですよぉ♪ いっぱい感じさせてあげますぅ♪」
しゅるしゅるとおしべ触手を生やす。
起伏の少ない肉紐のような触手。その膨らんだ先端が開き、内部が露出する。
「えぇい♪」
ぱくり。
「んやああぁぁぁっっっ!?」
柔毛がびっしりと生えたおしべ触手に乳首を咥え込まれ、ティーシャが仰け反る。
(あっ♪ ティーシャさんのおマンコ、きゅん、ってなりましたぁ♪)
「やっぱり、おっぱいがいいんですねぇ♪ それそれぇ♪」
おしべを操る。
こりこりとしたピンク色の蕾を舐めしゃぶり、或いは柔毛でしごき立てる。
「ひやあぁっ!? おっぱいっ、おっぱいばっかりっ…!
んああぁぁぁっ!!? だめぇっ! 気持ちいいっ! 気持ちいいっ!」
雌しべに姦通されたままティーシャが喘ぎ悶える。
催淫液がいい塩梅に体に回ってきたようだ。
涎を垂らしながら彼女は悦んでいる。
快楽が強すぎるのか瞳が濁り、意思の光が消えかかっていた。
破瓜の痛みも、もう殆ど残っていないだろう。
「はぁっ…! はぁっ…! ティーシャさんっ、エロくなってきましたっ!
どうですかぁ? 気持ちいいですよねぇっ、でもおマンコはもっといいですよぉっ」
ごつんっ、と子宮口を雌しべの先端で小突く。
「ひやああぁぁぁぁぁっっ!!!?」
「あぁんっ♪ 触手チンポっ、締め付けられるぅっ♪
ねっ♪ いいでしょうっ? おマンコいいですよねぇっ?
もっとハメハメしてあげますっ」
じゅぷっ! じゅぷっ! じゅぷっ!
「ひやっ!? んあぁっ! ひいんっ!」
「あぁっ♪ いいっ♪ 処女マンコ気持ちよすぎますぅっ♪
あぁっ♪ ああぁぁっ♪ 種子がっ、種子が出ちゃいますっ♪」
雌しべの根元から熱い何かが込み上げてくる。
それは人間で言うところの射精直前の感覚に似ていた。
初の種付けを予感して、際限なく興奮してしまう。
雌しべ触手を何度も何度もピストンさせ、ティーシャの中を蹂躙する。
「あぁぁっ!! すごいっ! 触手っ! ごりごりされてっ!
お腹捲れるぅ! おかしくなるぅ!」
103 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:29:30 ID:gpT5qXPc
「わ、わたしもっ…! ティーシャさんの処女マンコに…!
あぁんっ♪ もう、触手チンポ止まりません! ティーシャさんに種付けするまでっ!
――あぁっ!? 来たっ、来ましたっ! 触手チンポにっ!
ドロドロザーメンと、アドニスの種子が! あぁんっ♪ もう、ダメですぅっ♪」
どくどくと触手ペニスが脈動する。
「あぁっ!? 出ますっ! あぁっ♪ ああぁぁっ♪ すごいっ♪
ああぁっ♪ いいっ♪ あぁっ♪ ああっ、あっ、あっあっ、ああっ♪
出るっ、出ますっ! 触手チンポからっ! あぁんっ♪
こってりザーメンとっ…! あっ、あぁぁ、あぁっ♪ 種子がっ♪
出しちゃう種付けしますっ、ああぁっ! あぁぁっ! ああぁっっっ!
ティーシャさんに、種付けしますぅぅ、ああぁぁぁぁぁああああぁぁぁああっ!!」
子宮口に先端を食い込ませる。
同時に繊毛触手が生え出し、子宮口をこじ開けた!
びゅるるっ! どぴゅどぴゅどぴゅっ!!
「あはああぁぁぁぁぁぁぁっっっ♪」
「んやあああぁぁぁぁっっ!!? あちゅいぃっ!!?」
(すごっ、いっ、ですっ♪ しゃせー、気持ちよすぎですぅ!)
雌しべの中を精液と種子が通り抜ける。
種子が噴出する精液に推し進められて、細い輸精管を無理矢理拡張させられるのだ。
輸精管と同じくらいの性感帯となった尿道で結石が詰まったようなものだ。
その感覚は正に法悦。
未知の快楽にクロトは打ち震え、涎を垂らし、ティーシャを力強く抱きしめる。
その拍子に咥えていた二つの頂点を、思い切り吸引してしまった。
ちゅううううぅぅぅっ!
「うああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!?」
びくびくびくびくっ!!
中出しされた挙句、乳首を吸引されたティーシャがアクメを迎えた。
「あうっ!? ティーシャさぁんっ、すごい、おマンコっ!
触手チンポっ、もがれちゃうっ! 千切れちゃうっ! ああぁぁぁんっ!?
駄目ぇっ! また、また射精しちゃうっ! ザーメン出るぅっ!!」
びゅるるっ! どくどくどくっ!
「ああっぁぁぁんっっっ♪」
凶悪な絞め付けに再び射精。
ティーシャの子宮にどくどくと栄養を注ぐ。
陵辱されている当人はと言うと熱い熱いとうわ言の様に呟きながら白目を剥いていた。
大量射精をされたせいで子宮が膨らみ、下腹部が僅かに張っているのが分かる。
じょろろろろろろ――
(あっ♪ ティーシャさん、おしっこ漏らしてるぅ)
水分、特に人間の体液はアネモネにとってご馳走だ。
花の中央、陰唇のような部分がうぞうぞと蠢き、真上から零れ落ちる尿を啜る。
その味や匂いは同化したクロトにも伝わり、彼女はうっとりとした。
「はぁ…♪ おしっこ、美味しいぃ♪」
(種付けも出来て、とっても幸せですぅ♪)
ぎゅ、とティーシャの体を抱き寄せる。
種付けをした女は自分の部下であり、仲間だ。
今まで以上に彼女が愛しく思えてしまう。
「これでティーシャさんも、私の仲間ですからねぇ♪」
ちゅぅ、と親愛の証に、唇同士を合わせ、
突如、催淫ガス突き抜けて何かが飛来した。
ぎいんっ!
反射的に防御結界を展開し、無粋な横槍を受け流す。
甲高い音を立てながら地面に転がったのは一本の短剣だ。
投擲用に特化されているらしく、刃渡り40センチ程度のシンプルな黒剣だった。
「……もう。誰ですかぁ? 折角ティーシャさんと仲良しになっていたのにぃ」
返事の代わりに再び刀剣が飛んできた。今度は四本。
催淫ガスを突き抜けて、デザインも大きさも異なる剣が僅かな時間に投擲される。
104 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:32:26 ID:gpT5qXPc
ぎんっ、ぎぎぎんっ!
「硬いな」
全ての剣を難なく防ぐと、ガスの向こうから男の声がした。
抑揚の無い声だ。その質も渋く、低い。
聞いた事のある、声だった。
(あ、まさか…この声は…)
人間を止めてもこの声を忘れる訳が無かった。
クロトの尊敬と恋慕の対象。
リビディスタの長。
剣神と謳われた最強の戦士。
ガスの向こうから、グリーズ=リビディスタが現れた。
彼が大地を踏みしめる度に、赤い甲冑が金属擦れの音を立てる。
重量感のあるその鎧には魔術による防御効果が付与されていた。
催淫ガスの効果は無く、彼は鉄面皮のままだ。
「――クロトか?」
その彼の眉が、僅かに跳ねた気がした。
「はぁい、そうです。グリーズ様ぁ♪ 私は、クロトでございますぅ♪」
ティーシャを花弁の上へと下ろし、グリーズへ満面の笑みを送る。
「アネモネへと堕ちたか……リオはどうした?」
「くすくす。私はですねぇ。そのリオ様に犯されて、アネモネになったんですよぉ?」
再び彼の片眉が跳ねる。それも先程に比べて大きく。
グリーズをずっと見てきたクロトには判る。
今彼は、狼狽しているのだ。
実の娘が人外である、と知らされた事に。
「リオは、どこに居る?」
「くすくす。グリーズ様の頼みでもそれは聞けませんねぇ?
ご自分でお探し下さぁい♪ でもその前にぃ…私と一つになりましょう♪」
触手を展開し、グリーズへと近付く。
「私、ずっとグリーズ様の事をお慕いしていたんですぅ。
好きだったんですぅ。だからぁ、お願いしますぅ。
私と、エッチしてくださぁい♪」
しゅるっ――グリーズへと触手を伸ばす。
剣を投げ放った彼は丸腰だ。恐れる事は無い。
そう思った次の瞬間、『グリーズの両手に一本ずつ、片刃の剣が握られていた』。
二本の剣が閃く。
齢五十近くとは思えないほど軽やかな動きで、体を回転させていた。
獅子のたてがみを彷彿とさせるブロンドの髪が舞い、ネービーブルーの外套がはためく。
まるでワルツでも踊っているような動きに、目が奪われてしまった。
そしてその間に、捕獲用に伸ばした八本の触手が全て切断されていた。
(……はぁ、素敵です…グリーズ様ぁ♪)
いやいや、感心している場合ではない。
丸腰だと思って手を出したのは安直過ぎたと言えよう。
何故なら彼の能力は――
「残念だが。お前を受け入れる訳にはいかぬ」
手にした二本の剣を地面へと突き刺し、グリーズは両手を空ける。
その掌から、青く光る魔術陣が生み出されていた。
そこを境界に、『新たな武器が出現する』。
彼の手には、墨を流したような黒い鞘が収まっていた。
――剣神と謳われたグリーズの力。
それは転移魔術だ。
但し、自分が転移するのではない。
リビディスタの屋敷に安置された彼専用の武器庫から、『得物』を転移させるのだ。
そして彼はありとあらゆる刀剣の扱いに長けている。
105 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:33:50 ID:gpT5qXPc
更に、今まで培ってきた富と、傭兵時代に偶然手に入れた名剣の数々。
グリーズは戦う相手によって常に最適な武器を選び、手元へと引き寄せる。
剣神とは、あらゆる剣を扱う彼に与えられた称号なのだ。
「くすくす。流石は私のグリーズ様♪ 一筋縄ではいきませんねぇ?
ですが私の防御魔術も負けてはいませんよぉ?」
上昇した魔力を惜しみなく使い、防御結界を張る。
タイル状の物理障壁はドラゴンのテイルアタックすらも弾き返す代物だ。
それを二重、三重、四重と重ね掛けしていく。
戦術クラスの魔術攻撃ですら防御する事が可能だろう。
「なら試すか?」
(…あ…グリーズ様、笑った…?)
僅かだったが、彼の唇の端が釣り上がった気がした。
根っからの武人なのだろう。
自分の力を試す。その事に喜びを見出す男なのだ。
それがクロトには野蛮だとは思えない。自分の力を誇示する事なんて、誰だってする。
グリーズが踏み込んできた。
黒い鞘を腰溜めに構えたまま、左の親指で変わった意匠の鍔を弾く。
同時に前面に魔術障壁を収束させ、
グリーズの刀剣が、閃いた。
遠く離れていたにも関わらず、クロトには抜刀の瞬間を目に収める事が出来なかった。
彼の剣は既に振り抜かれており日の光を受けて刀身が美しく輝いている。
(…そんな…)
良く見ると結界が真横一文字に切り裂かれている。
ばりぃん、とガラスが割れるような音と共に結界が砕け散った。
紙でも切るように、彼の斬激が結界を切り裂いたのだった。
それも剣の間合いの遥か遠くで。
グリーズは居合いの際の剣圧だけで結界を破壊したのだ。
「ムラマサ、と言う異国の魔剣だ。魔力を無効化する力がある」
ひゅんひゅん、と刀剣を回転させ、鞘に収める。
「対魔術士用の切り札だ」
「…道理で私の結界があっさりと破られた訳ですね」
「まだ続けるか? 勝ち目は無いぞ」
「くすくす。おかしな事を言いますね?
続けるも何も完全にアネモネと化した私は、もう人間に戻れません。
人間に倒されるか、人間を襲うか。その二択しか無いのです。
それなのに、グリーズ様は私にどうするかお尋ねになっています。
くすくす。どうしてですか? まさか、躊躇っておられるのですか?
そうですよね? 私のような化け物でも、気を遣ってくれているのですね?
ああっ、なんてお優しいグリーズ様! 大好きですグリーズ様っ!」
魔物の本能が溢れ出す。
それは狂おしい程の愛と交わり、只、眼前の男の精を貪り尽くしたくなる。
「グリーズ様ああぁぁぁぁっっっ!!!」
触手を展開し、グリーズへと伸ばす。
それは攻撃といっても差し支えの無い勢いだった。
触手に魔力を通し、硬度を上げているのだ。
それが雨あられと言った具合に、グリーズ目掛けて降り注ぐ。
どがどがどがどがっ!!
触手が地面に穴を穿つ。まるで槍でも刺さったようだ。
だが、そんな死の雨の中をグリーズは躊躇無く踏み込んで来た。
体に大穴を開けようとする肉の槍を最低限の動きで避け、あるいはムラマサで迎撃する。
元より十歩と離れていなかった距離は、あっと言う間に縮まった。
106 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:35:37 ID:gpT5qXPc
グリーズが跳躍する。
赤い甲冑は見た目以上に軽量らしい。
彼は花弁の上へと着地すると、こちらの喉元に刀を突きつける。
その鮮やかな動きに、攻撃しながらもクロトは見とれてしまった。
「何か言い残す事はあるか?」
問われて反射的に口を開き、すぐにそれを噤んだ。
死への恐怖は無い。
助けて下さい。リオ様と仲良くして下さい。ティーシャを連れて帰らないで。
言いたい事は色々ある筈だった。
だが結局。ここ死に際に来て、口をついた言葉は、
「貴方を愛しています」
グリーズはすまない、と呟いた。
それが答えだった。分かり切っていた答えだった。
だが、想いを告げられた、その事実だけで救われた気がした。
僅かに表情を曇らせる愛しい人に、満面の笑みを送る。
直後に白刃が閃いた。
***
リビディスタの戦士達、その実力が試される時が来た。
人間同士の訓練でもない。
森の中の、訓練と言う名目で行われていた『狩り』でもない。
森の魔物達との総力戦が今、始まろうとしている。
ドルキは思う。
グリーズと共に作り上げてきたリビディスタの家。そして最強の戦士達。
それらが有象無象の化け物どもに負ける筈が無い。
ドルキは出陣する門下生達に激励を与え、彼らの壮観な姿に興奮すら覚えた。
そのせいで死んでいたと思っていた娘が屋敷に入り込んだ事にも気付かない。
リオは、そんなドルキを嘲笑いながらパセットと共に屋敷の従者達を次々と犯していく。
パセットも同僚達を犯す悦びに目覚めてしまい、屋敷の中のメイド達を全て支配した。
さあ、復讐を始めよう。
準備は整った。
門下生達を送り出したリビディスタにはもうろくな戦力は残っていない。
囮になり、散っていったクロトの為にも、あの女に、引導を渡してくれる。
次回、永久の果肉十二話、
『愛憎劇―前編―』
107 乙×風 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:37:48 ID:gpT5qXPc
グリーズの能力は金色の弓兵職な彼の宝具と同じですね。
剣神のレリーフもどこぞの固有結界をイメージしています。
剣が沢山地面に突き刺さってる感じのですね。
補足ですがグリーズが使っていたムラマサはレプリカで本物ではありませんw
剣自体はちゃんと使えるので本人は本物と信じているという設定ですw
ちなみに作者は、今回エロよりもリオとトロル達のシーンがお気に入りです。
猫娘かぁいいよ猫娘。
さあ、物語もいよいよクライマックスです。
次回はリオとドルキとのタイマンですね。
バトルメインになりますが、前半にパセットが同僚に種付けするシーンも入れる予定です。
シナリオ構成は次の『愛憎劇』を前編、後編と二話使い、決着。
その次でエピローグで丸々一話使うとして。
あと三回の投稿でシリーズ完結予定です。
うっはぁ、長かったなぁw まあ、一息つくのは少し早いですけどw
という訳で寄生スレの皆様、よろしければもう少しお付き合い下さいね。
あ。いつものように誤字脱字感想等なんでもお待ちしておりますー。
それでは今週はこの辺で。また来週お会いしましょう。
養女っ、ばん、ざああぁぁぁぁぁぁぁぁぁいいっっ!!!!
>>79氏
GJでした。
ワサビと醤油は基本ですがおろし生姜も結構いけますよ。たこの刺身的に。
最近は暗い話ばかり書いてるので純正和姦寄生とかとっても癒されました。
この調子でチンコ虫もSS化ですね。わかります。
>>70氏
百合はあれども幼女同士でドロドロねちょねちょとHするてのはあんまりないんですよね。
だからやりました(キリッ
あ。誤字の指摘ありがとうございます。
どうやら肝心なシーンで台詞回しがおかしくなるのが多いようですね私は。
はい。という訳で投下です。
NGワードは、
(騎上位? 人外化、逆レイプ、種付け、バトル)
花形の魔物の上に跨って自分で腰を使うオニャノコってエロイと思います。
こう、女の子座りで。
目の前の花弁に手を付いてクイクイと。
そんな感じのエロシーンあります。
というわけで以下本編です。18レス程消費します。ごゆっくりどうぞー。
90 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:06:58 ID:gpT5qXPc
第十一話 愛と絶望に満たされた街
ふと誰かに呼ばれたような気がしてクロトは目を覚ました。
淫臭漂うベッドの上で、ゆっくりと体を起こす。
辺りをぼんやりと見渡すと、息も絶え絶えになった男が四人、大の字で床に倒れている。
そして二つあるベッドの間には、成長したアドニスの花が咲いていた。
(…私の…花…)
寄生されていたとはいえ、この腹から生み出した魔の花は子供のようなものだ。
快楽付けされ、倫理観が曲げられてしまった感性は、肉の花を愛しく思う。
「おっきく…なってるの…?」
ラフレシア型の花は、今やその直径を二メートル近くまで肥大化させていた。
ついさっきまではこの腹に収まっていた筈なのに、何という成長速度だろうか。
メイドの少女を通して、淫魔から大量の魔力を注がれたせいだった。
(…あ…良い匂い…)
意識がはっきりしてくると、この巨大な花から甘い香りが漂ってくるのが分かる。
それに誘われるように、四つん這いでアドニスの元へと近付いた。
しゅるしゅる。
「きゃぁんっ」
花弁の付け根から生えた何本もの触手がクロトの体を捕らえる。
恐怖感は無い。突然の事に驚いただけだ。
おしべ触手は、顔に似合わずグラマラスな体を持ち上げ、花の真上へと移動させる。
(あ、匂い、濃い…)
花の真上まで運ばれると、催淫香もずっと濃密だ。
頭がくらくらして、胸が高鳴る。
じゅん、と膣が新鮮な愛液を搾り出して、子宮が疼くのを感じた。
(おマンコみたい…)
眼下に広がるアドニスの花は、まるで巨大な女性器だ。
肉ヒダが連なる花弁の内側。それに大陰唇を思わせる花の中央部。
肉色をしたそれらが甘い香りを放つ粘液に濡れて艶かしく輝いている。
と、その中央部からずるずると音を立てながら生殖器が生え出した。
多重のエラ。亀頭部分の大量の疣。
間違いない。淫魔が股から生やしていたモノと同じ形状だ。
だが成体となったアドニスの生殖器はそこで倒れている男達の二の腕と同じほど太い。
(こ、こんなのに…犯されたら…)
きっと今度こそ狂ってしまうかもしれない。
そうだ。そうやって人間の心を壊されて、アネモネへと変わっていくのだろう。
「…あは…」
ぞくぞくした。壊れた感情が、自分が魔物へと変わっていく予感に倒錯的な官能を覚える。
体を持ち上げている触手から徐々に力が抜け、クロトの高度を下げる。
女芯へと狙いを定めて、細い肢体が余りにも太い肉棒へと緩慢に近付く。
そして、ぐちり、とその先端が埋没した。
「んあぁっ!?」
(すごっ、おっき、すぎるぅ)
出産した直後でぽっかりと開いたヴァギナ。その穴に合わせたかのようなサイズだった。
――体を拘束していた触手が急に離れた。
ともすれば重力に引かれ、体が落ちる。
次の瞬間訪れるであろう刺激に期待して、クロトは淫靡な笑みを浮かべた。
ずるるるるっ!
「んああぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁああぁぁぁぁっっ!!?」
極太の触手は拡張された産道を更に押し広げ、あっと言う間に子宮の内側まで入り込んだ。
(中、中までっ、入ってきてるぅっ!!)
腹を圧迫する感覚がやや苦しく、涙目でひゅーひゅーと空気を取り入れる。
91 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:08:41 ID:gpT5qXPc
視線を下げれば巨根を受け入れた下腹部が、歪な形に盛り上がっていた。
全部入っている。あのおぞましくも、いやらしい触手が。
(はっ、あっ、苦しいけど、熱くてっ、気持ち良いっ…!)
圧迫感もあるが快楽もある。
いや、それ以上に――何と言うのか『しっくりくるのだ』。
この花はついさっきまでこの腹の中で育った魔物だ。
それが元の鞘に戻るのだから、当然なのかもしれない。
言わば、この触手は自分専用。この体を犯す為に生まれてきた。
そして、散々犯された女性器はアドニスの寄生から解放された後でも敏感だ。
それを、こんな凶悪なモノで掘り返されたら。
「んっ、んんんっ!」
クロトは自ら腰を動かし始めた。
女の子座りの体勢から、正面の花弁に手を突き、腰を持ち上げる。
「あっ!? あぁぁぁあぁぁぁっっ!!」
ごりごりと子宮口を。Gスポットを触手に削られる。
(何これっ!? 気持ち、良すぎてっ)
ブツブツとした亀頭部分が子宮口を内側から抉る。
やすりでも掛けるように、多重エラがガリガリと膣内の『しこり』を削る。
視界で何度も火花が散った。
二箇所から与えられる桃色の刺激が背筋を駆け上がり、半開きの口から喘ぎとなって出る。
予想以上の快楽に、力が抜けていく。
持ち上げた腰が、徐々に落下して、
ずりゅりゅりゅっ!
「いああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!?」
どすん、と子宮の奥に触手の先端を打ち付けてしまう。
腹の底を突き破られてしまいそうな感覚だった。
だが卑猥な形状をした触手に肉の穴がかき乱され。
あまつさえ性感帯となった子宮を揺さぶられ。
その激感にクロトは前後不覚に陥った。
「…あっ…! っ、…はっ、ぁあっ…っ♪」
軽く達したらしい。
舌を垂らし、ぶしゅう、と結合部から潮を吹く。
揺さぶられた子宮が、きゅん、と痙攣して触手を締め付けた。
(いいっ、これ、いいっ)
子宮ごと犯される快感。その味を覚えてしまったクロトは再び腰を動かす。
ずるるるるっ――
「あうんんんんっ…!」
ゆっくりと触手を引き抜き――
ずりゅりゅっ!
「んああぁぁんっっ!!」
――落とす。
肉の穴が耕され、どんどん敏感になっていく。
子宮の奥を突かれる度に、今まで味わった事の無い法悦を感じた。
「いいっ! これいいっ!! ああぁぁぁぁっっ!!!」
ずりゅりゅっ! ずるるるるっ…! ずりゅりゅっ!! ずるるるるっ――
大陰唇から子宮の奥まで。20センチ以上の肉のチューブを自らの意思で責め立てる。
ピストンのペースも徐々に上昇し、捻りや回転と言った動きまで混じり始めた。
「んああぁっ! いいっ! お花っ! 気持ちいいのっ!!
あぁっ!? イクぅっ! ああっ! ぁっ! あぁっ! あっ! あっ! あ!
凄いのっ、きちゃうきちゃう!! ああぁっ!」
じゅぷじゅぷと結合部から卑猥な音が響いていた。
濃密なアドニスの催淫香にクロトの発情臭が混じる。
空気に混じり、下品な音を立てる本気汁はクロトが感じている証拠だ。
腹の圧迫感は殆ど無い。それが霞んでしまうほどの快楽が、彼女を襲っていた。
舌を垂らし、眉根をハの字に寄せ、涙と鼻水と涎を垂らしている。
だらしなく弛んだ頬や、半開きの口はまさしくメスそのもの。
92 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:11:41 ID:gpT5qXPc
もう、快楽を貪る事しか考えられなかった。
「あっ!! あぁっ!! イクっ、イクイクイクイク!!
アクメって、クサマンコびくびくさせますぅっ!! あぁぁっ!?
あっ! あっ、あっ、あっ! あっ、あ、あ、あ、あ、あぁん!!
んおあおああぁぁぁっっらめぇあぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
絶頂。
自分で宣言したとおり子宮を、膣を収斂させ、触手を何度も締め付ける。
その瞬間。
先端から糸状の触手が溢れ出し子宮を内側から貫いた!
「んぎいいいぃぃぃぃぃっっっっ!!!!?」
痛みとも快楽ともつかない刺激に、クロトが白目を剥く。
子宮を刺し貫き、ミクロ単位の穴をいくつもあけた極細触手が内臓へと侵入。
自身を神経の根として、クロトの体を犯し始めた。
「おおあぁぁっ、あぁ、あ、あ、あ、あっ、あぁ、ああぁぁぁぁぁっっ…!!」
体中に、生殖器から溢れ出した触手が満たされていく。
細いミミズか何かに、体の隅々まで犯されるような感覚だ。
(……気持ちいいっ!)
だがそんなおぞましい感覚すらも、今のクロトには快感だった。
びゅるっ! どびゅっ! どぷどぷどぷどぷ!!
「んひゃあぁぁぇぇあぇぁえええぇぁあぁぁぁぁぁっっ!!?」
突如子宮内で大量の射精。
熱い粘液の感触に、子宮が再び悦びに打ち震える。
更に子種をせがむように何度も痙攣し、触手から精を搾り取る。
同時に、体中に広がった繊毛触手も、何かしらの液体を滲み出していた。
(熱いいっ!!? 熱いィィイ!! あはぁっ!!!)
体の内側から熱湯が溢れ出すような感覚に、クロトは悶絶した。
潮だけでは飽き足らず、股から小水を漏らし、アドニスの糧にする。
直後に変異が始まった。
体中に根を下ろした繊毛触手がクロトの体を作り変えていく。
絹のような肌が鮮やかな浅葱色へと染まっていく。
元でも大きめのバストが一回りも二回りも肥大化した。
子宮を姦通していた雌しべ触手の疣から繊毛触手が生え出し、内側から串刺しにする。
それすらも神経としてクロトの内臓に根ざしていく。
「んああぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁっっっ!!!?」
(気持ちいいひぃぃっ!!)
体を内側から作り変えられる感覚。それは快楽だった。
子宮を中心に、どろどろと溶かされ、一つに融合していく。
子宮に根ざした神経の束はクロトと同化し、もうアドニスから離れる事は出来ない。
(変わっていく…! 私、アネモネになっていく…!)
白魚のような脚は、大陰唇を彷彿とさせる花の中央部分に何時の間にか飲み込まれていた。
どうなったのか視認する事は出来なかったが、アドニスの花と同化したのだろう。
股から下の感覚が無くなっていた。
更にずるずると、触手を貪欲に咥え込んだ結合部すらもアドニスへと飲み込まれていく。
(一緒に、なるんですね…この花と…)
もう二本の脚で歩く事は出来ないだろう。その事に後悔はない。
この肉の花の下に生えた大量の触手が脚の代わりだからだ。
そしてより卑猥になった体は男も女も誘惑する。あのグリーズも。
催淫香につられて寄ってくるメス達をこの体で溺れさせ、種付けをしていくのだ。
そしてそれはとてもすばらしい事だと思った。
「あはあぁぁぁぁあぁっっっ…♪」
歓喜の涙が頬を伝い、流れる。
歯車が噛みあうように、本体であるアドニスと神経が完全に繋がった。
まるで下半身が肥大化してしまったようだ。
(あ、触手…動かせる…)
花弁の根元から伸びるおしべ状の触手を眼前でゆらゆらと動かす。
地に付いた触手の一本一本にも神経が通っているようだ。
93 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:13:10 ID:gpT5qXPc
薄汚れた絨毯を踏みしているのが分かる。
「はあぁぁぁぁぁっっ…♪」
感嘆の溜息を吐き出す。
同時におしべ触手から、ブシュウと催淫ガスが噴出した。
(…あはぁ…♪ ガスを噴出すのも…なんか気持ちいいです…♪)
体中に精力が溢れている。
だが頭の中はまるでぬるま湯につかっているようだ。
ただひたすらに甘く、緩い愉悦に全身が覆われている。
『おめでとうクロトさん』
その時、腹の底から声が聞こえた気がした。
下半身のアドニスが、その声を我が主と認識する。
『完全にアネモネになったみたいだね』
(…あ、リオ様、ですか…?)
意識を集中すれば、アドニス本体を通して淫魔の気配を感じる事が出来た。
今は、移動中、だろうか。特に火照った体を持て余している訳でもないようだ。
離れていてもアドニス同士で繋がっている。それを感慨深く思った。
『うん。ほったらかしにしちゃってごめんね? ね、今どんな気分?』
(あはぁ♪ 何だかふわふわして、夢の中にいるみたいですぅ…♪)
『――そっか。アネモネになったらそんな感じなんだね。
……あ、今私ね、北東の城壁に来て皆に結界を解除してもらってるとこなの。
私はこのまま北上して屋敷を目指すから、クロトさんは南西と北西の結界を解除して?』
(はい♪ おおせのままに♪)
そうだ。主である淫魔は、リビディスタの奥様に復讐をする為にこの街に侵入した。
そして結界の解除は彼女との『約束』を叶えて貰う為の条件だった。
(あぁ、グリーズ様、グリーズ様、私、早く貴方様に会いたいです…)
会って、滾るこの想いの赴くまま、情事に耽りたい。
だからその為にも、今は働かなくては。
『あ、そうだ。今パセットちゃんが一足先に屋敷に向かってるの。
クロトさんは出来るだけ派手に暴れてもらえるかな?
そうすればパセットちゃんも安全に屋敷に潜入出来ると思うから』
(お任せ下さい♪ 沢山女の子に種付けをして、この快感を教え込んで差し上げます♪)
『うん。よろしくね』
それっきり主の声は聞こえなくなった。
どぉん。変わりにすぐ近くで爆発音。
森の魔物達が侵入しているのだろう。住民の悲鳴らしい声が外から響いてくる。
クロトは得意の探索魔術を起動した。
アドニスの真下に、青い魔術陣が展開し、周囲に魔力の波動を放出する。
アネモネとなり人外の力を手に入れたクロトのそれは、人の時よりも強化されていた。
魔力は波紋となり半径四キロ周囲へと広がっていく。
(はぁ…♪ 人間、沢山いるぅ♪)
南東の城壁からモンスターが侵入しているらしい。
街の外から侵入する赤い光点から逃げるように、青い光点が街の中央へと移動していた。
クロトが居るこの小屋は南西の城壁からやや街の中央寄りの場所に位置している。
逃げ惑う人々は路地裏を通り、中央通りへと集っているようだった。
アレエスの街の中心には要塞がある。
リビディスタの屋敷よりも大きいそこは、有事の際、住民が避難する場所となっていた。
街の大結界の発生装置が安置している場所でもある。
そういえば、魔物達の侵入を図るならその装置を無効化する手段もある筈なのだ。
どうして淫魔は、部分的に結界の解除をしていくなど回りくどい事をするのだろう。
要塞内に侵入するリスクが高すぎると考えたのだろうか。
(まあ、どうでもいいですね)
今は、城壁の結界を解除する事だけを考えればいい。
その過程で、出来るだけ多くの女達に種付けをしよう。
はぁ、と甘い吐息を漏らすとクロトは移動を開始した。
94 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:15:00 ID:gpT5qXPc
***
「あんっ♪ にゃんっ♪ はぁっ♪ いいっ♪
お兄さんのおチンポっ♪ とってもいいよう♪」
北東の城壁内にて。リオは結界術士達の逆レイプに励んでいた。
アドニスの催淫香を居住空間の中に満たし、甘い喘ぎを上げている。
これだけならいつもどおりなのだが。
「うわ、暫く見ない間にエロエロになってるわねぇ」
横合いからの声にだらしなく弛緩した顔を向ける。
「あっ!? メデューサのお姉さん!」
そこには朝方、森の中で出会った魔物の姿があった。
いや、それだけではない。
街の外へと続く重い門は開かれ、そこから多種多様なモンスター達が侵入しているのだ。
リオ達は屋上へと続く階段の踊り場で性交を愉しんでいた。
もしも床でこんな事をしていたら魔物達の進撃に踏み潰されていただろう。
「さっき出会った時もいきなり空飛んできたから驚いたけど。
こうやって人間を『食べて』いるところ見るともっと驚くわぁ」
「あー。お姉さんにはあげませんよぉ。この人達はリオが捕まえたんですから♪」
「はいはい。街に侵入出来たのもアンタのお陰だからね。
それくらいは譲ったげるよ。ところでアンタ。
さっき森で会った時は目両方と赤じゃなかったっけ?
なんで今片方青になってるの?」
「うにゃ?」
(あ、そういえば。そうかも)
自分の瞳が何色かなんて気にしていなかったが、改めて指摘されると首をひねってしまう。
青になったり赤になったり、忙しい右目だ。
「さあ? わかんないです♪」
何よそれ、とメデューサが胡散臭そうなものを見る目つきでこちらを睨んだ。
「あーそれにしても臭い臭いっ。アドニス臭い!!
あたしゃもう行くよ? こんな所、一秒でも長居したくないからねっ」
言い捨てると尻尾をのたうたせながら階段を器用に下りていく。
それを見送るとなんとなく自分の胸元や脇に鼻を押付けすんすんと匂いを嗅いだ。
(…そんなに酷いんだ。私達の匂い…?)
アドニスの催淫香は人間には甘く香るが凶悪な魔物には悪臭なのだ。
どうにも実感を伴わなかったが、嫌がるメデューサや急ぎ足で城壁をくぐる魔物を見ると。
「うーん。やっぱり効いてるんだねー」
などとしんみり思ってしまう。
セックスの際にも他の魔物に邪魔にされないので有益な能力だった。進化の賜物だろうか。
(さあ、もうちょっと愉しみたいけど…屋敷に向かったパセットちゃんも気になるし。
他の結界はクロトさんに任せて私も屋敷に向かおうかな?)
胎内のアドニスを通して、先程クロトが完全にアネモネ化したのを確認した。
今も彼女がどのような状況なのか大体把握出来る。
向こうも、ある程度ならこちらの思考や状態を感じる事が出来る筈だ。
(アドニスって、繋がってるんだね)
犯したものと犯されたもの。
上下の関係は厳しく、被害者は自分を犯したアネモネに逆らう事は出来ない。
だが、こうやって互いを感じる事が出来ればそこに摩擦は生まれない。
同し種同士争う事も無いだろう。この世で最も統制の取れた種族。
(皆がアネモネになれば、誰も悲しい思いをしなくて済むのかな?)
例えば、親が子供を殺そうとしたり。
その子供が、親に復讐をしようとしたり。
そんな事が起きない、平和な世界になるのではないのだろうか。
「まさかね」
そんな事はありえないだろうけど、ついそんな夢物語を思い描いてしまった。
でもこの街だけなら、そんな世界にしてもいい。そう思った。
その矢先に、
「きゃあぁぁぁあああぁぁぁぁぁっっ!!?」
95 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:17:05 ID:gpT5qXPc
街の中から女の悲鳴が木霊した。猫耳がぴくりと持ち上がる。
「にゃっ?」
魔物達から逃げそびれたのだろう。この世の終わりかと思わせるような悲痛な叫びだった。
(……どっちにしろ移動するつもりだったし)
「またね。お兄さん達」
いつものように感謝のキスを二人の結界術士にプレゼント。
その後、足取りも軽く、階段を駆け上がる。
屋上に頭を出すとその真上をびゅん、とハーピーが一匹通り過ぎた。
ここの――北東の結界が解除されているので、この辺りからは空からも侵入したい放題だ。
それを何となく見送ると、リオは見張り台から街を見渡した。
(あ、親子連れだ)
城壁から少し離れた民家の前で、母親と思しき女性とその娘が魔物達に取り囲まれていた。
「げへへへっ。もう逃げられないどっ」
下品な笑い声を上げながら近付くのは豚面をした魔物だ。
肥満気味の巨体を揺らしながら、涎を垂らすそのモンスターはトロルという。
一応知性を持った魔物だが強暴で好色だとモンスター図鑑に載っていたのを思い出した。
「お願いしますっ! 私はどうなっても構いません! でも、この子だけはっ」
(…ふぅん。あんなお母さんも居るんだね…)
自分の体を身代わりに、子供だけを助けるというのか。
まるで母親の鏡だ。どこかの鬼ババアに爪の垢でも煎じて飲ましてやりたい。
「ぎゃっぎゃっぎゃっ!! そいつは無理な相談だなぁ?
お前はいい体してるからぁ、たーぷり可愛がってやるけどよぉ。
このチビはそうもいかねえだろぉ? しょんべん臭えしぃ。好みじゃねえんだぁ。
だからこいつは食ってやるよぉ。お前の目の前でなぁ?
あぎゃっぎゃっぎゃっぎゃっ!!」
「…最低…」
自分もすでに人に身ではないのだが。
ああいう下品な輩を見ると流石に不快になる。
このまま見過ごせば母親は死ぬまで陵辱され、娘も食い殺されてしまうだろう。
(…どうしよう…)
こうなるのは最初から分かっていた筈だ。
自分の復讐のせいで、何の罪も無い人間が犠牲になってしまう。
覚悟、していた筈だ。
だが、どうやら納得は出来ていなかったらしい。
(…私、悩んでるの? もう、身も心も魔物になったと思ったのに)
両手を握り締める。
パセットに注ぎ、消耗した分の魔力は、さっき二人の結界術士から補充した。
体の奥から、人外の力が溢れ出しているのが分かる。
「さぁっ、先ずは腹ごしらえだぁ! ここんところいいもん食ってなかったからなぁ!
このガキを食って、それからお前も犯してやるぅ!!」
「いやああぁぁぁっっ!! おかーさん! おかーさぁんっ!!」
母親の腕から、娘が奪われた。
泣きぼくろが愛らしい、おさげ髪の少女は、自分と同い年くらいだろうか。
その周りでは興奮した豚どもが群れながら汚い言葉で囃し立てている。
少女の顔が絶望に染まる。
必死の形相で、母親が娘に向かって手を伸ばしていた。
「――決めた」
見張り台の縁に手を掛け、勢いを付けて外へと飛び出す。
地面までの高さはざっと五十メートル程。
地面に激突すれば、即死は免れない。
だがリオは背中の蝙蝠の翼をはためかすと、トロルの群れへと一直線に突っ込んでいく。
風を切る音が耳元で唸った。
(悪魔の血が混じっていて良かった)
空を飛ぶだけだが、その悪魔の力が、人を救う為に使われようとしている。
96 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:19:06 ID:gpT5qXPc
それを考えると胸の奥から何か形容し難い感情が溢れ出してきた。
その感覚を噛み締めながら、
「女の子を、」
ふとこちらに気付いた先頭のトロルに、
「苛めるにゃぁあぁぁぁっっっ!!!」
渾身の飛び蹴りを喰らわせた!
「ぷぎいっっ!?」
べきゃぁ、という物凄い打撃音がしてトロルの顔面が潰れると、彼方へと吹っ飛ぶ。
でっぷりとした巨体が高速で錐揉み回転させながら弧を描いて飛翔し――
ずどん、と音を立てて十軒程隣の民家の屋根に激突した。
助けられた親子もトロル達も突然の出来事に口を『あ』の字に開けたまま硬直している。
その間に地面に着地したリオは、素早く親子とトロル達の間に滑り込んだ。
「な、なんだてめぇ!?」
「俺らのボスになんて真似しやがる!」
「こんな事してただで済むと思うなっ」
「お前から、」
「フシャーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!!!!」
口々と吼えるトロル達に、牙を剥き出しにして威嚇した。
四つん這いの姿勢で尻尾と髪を逆立て、赤と青の猫目で睨み付ける。
トロル達はそんなリオの気迫に押されて『ひぃっ』と情け無い声を出した。
「何してるの? 早く逃げて」
ところが背中の親子ときたら未だに状況が判らないのか、呆然としたままだ。
魔物に襲われていたところを魔物に助けられる、という状況が彼女を混乱させていた。
「え……? あの…?」
「その子がどうなってもいいの!?」
「…っ!?」
肩越しに喝を入れてやると、それでようやく母親は弾かれたように動き出した。
娘を抱き上げ、中央通りの方へと駆け出していく。
「ちゃんとその子を守らないと私が許さないからっ…!
その子を泣かしたらっ、許さないから!」
走り去る親子の背中に向けて、言葉を投げかける。
そんな事を言われなくても分かっているのだろう。
シュトリの力は、母親が強い決意と感謝の気持ちを抱いているのを感じた。
(私のお母さんが生きていたら。
同じような事があっても私の事、守ろうとしてくれたかな?)
体を張って、この身を救おうとしてくれただろうか。
だが顔も、人柄もよく知らない母親を想像する事は出来なかった。
(居ない人の事を考えても、しょうがないか)
だがもし今も母が生きていたら。
沢山、甘えたりする事は出来たのだろう。
それを思うと胸がきゅん、と苦しくなった。
「あっ、逃げるぞっ」
「お、追え! 久しぶりの獲物を、」
「フーーーーーーーーーっっっ!!!」
『ひぃっ』
追い掛けようとするトロル達を再び牽制。少し八つ当たり気味だった。
「なんだよこのチビ、メチャクチャおっかねぇ…っ」
97 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:20:43 ID:gpT5qXPc
(…こんな可愛い子におっかないんなんて、失礼な豚さん)
何なら全員、今此処で『食べて』しまおうか。
どろり、とした感情が溢れ出して来る。
それは淫魔の――いや、悪魔の血が持っている凶暴性だ。
欲望のままに他者を貶め、快楽を求めるリオの心の闇。
「ふふふ。おっかない? なーにトロルさん達。
リオみたいなちっちゃな女の子に怯えてるの? かーわいー♪」
煽った瞬間、馬鹿共は牙を剥き出しにして口々と喚き散らす。
やれ、舐めるなだの、やれチビのくせにだの、頭の悪そうな台詞を吐き出していく。
「ふーん? そう思うなら、リオの事、好きにしてみればいいんだよ?
ふふふ。溜まってるんでしょ? いいよ♪
リオがぁ、トロルさん達のくっさいザーメンカラカラになるまで搾り取ってあげる♪
――あ、そうだ。どうせ童貞ちゃんだよね♪ 優しくしてあげないと駄目だね♪」
『て、てめーーーーーぇぇぇっ!!!』
トロル達の怒りが頂点に達した。
目を血走らせ、地面を踏みしめながらこちらへと近付いてくる。
怒りに興奮したトロル達の股座から、濃い精気が溢れ出しているのが分かった。
思わずぺろり、と舌なめずりをし、
その瞬間、
「ありがとー! 猫耳の悪魔さん!」
と、背中から女の子の声が聞こえた。
「……ぁ…」
それだけでどす黒い気持ちが霧散し、代わりに幸せな気持ちが溢れてくる。
(あ、ありがとう、って言われちゃった)
ネーアに言われたのを除けば、本当に久しぶりだった。
というより最後にありがとう、と言われたのがいつか思い出せない。
ほわほわとした気持ちが溢れ出してきて、気恥ずかしくて頬がほんのりと紅く色づいた。
「でもっ、おパンツくらい穿いた方がいいよー!? 風邪引いちゃうよー!?」
「よ、余計なお世話にゃぁっ!」
他人に指摘されたせいか、淫魔状態の格好が無性に恥ずかしく思えてきた。
こんな羞恥心とは無縁のような衣服をよく考え付いたものだ。
素面ではとても着ていられない。
「はあ? なんだこいつ? 照れてやがんのか?」
「見た目の割には人間臭いな」
「俺らと同じモンスターの癖に人間助けやがるし」
「う、うるさいにゃ! あの人達はねぇ、えー、そのっ、だからぁ――
そ、そう! リオが後で食べるの! あの人達はリオの獲物なの!!
助けたわけじゃにゃいの!! 断じて!」
何と言うツンデレだろうか。これでは怪しまれても仕方が無い。
現に豚面の胡散臭い視線が次々と突き刺さって痛い。
「そんな事はどうでもいいんだよっ」
「そうだそうだ! 言ったからには責任とって俺達の相手をしろ!」
口々と文句を言うトロル達。
それでもこちらに手を出してこない当たり小心者というか虎の威を借りた猫というか。
いや、猫はこっちだった。
「ごめんね? なんか、そんな気分じゃなくなっちゃった♪」
ウィンク一つしてリオは飛び立った。
「ってそりゃねーよ!!」
足元からトロル達の文句や野次が次々と飛んでくる。
「べー、だ」
空からあっかんべーで答えてやると地団太を踏んでトロル達が悔しがった。
それを指刺しながら上空で腹を抱えて笑う。
(あー、面白かった♪ そだ、あの人達、無事かな?)
逃げた親子を上空から探すと、丁度街の警備兵に保護されているところを発見した。
「…良かった…」
98 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:22:15 ID:gpT5qXPc
折角助けたのだから事が終わるまで生き残って欲しい。
そう。ドルキに復讐する時まで。
(…やっぱり、私は義母様の事、許せそうにない)
パセットと交わってから少し人間らしい感情を取り戻せた気がするが、それとこれは別だ。
ドルキに復讐を果たした後、出来るだけ多くのアドニスの花を咲かせよう。
そうすれば、ネーアの恩返しにもなる筈だ。
「そうだ。パセットちゃん、どうしてるかな?」
今頃屋敷に侵入出来ただろうか。
色んなところで混乱が拡がれば、ドルキの意識も逸らせるし、戦力も分散する。
今はひたすら、状況をかき乱してやる必要があるのだ。
(あー、飛んでると警備の人に見つかるかな?)
下手をすると遠距離から狙撃系の魔術で撃ち落とされるかもしれない。
リオは路地に降り立つと、アドニスを通じて、パセットと連絡を取るのだった。
***
一方その頃。
アネモネへと変異したクロトは街の中央通にて人外の生を謳歌していた。
様々な露天が立ち並ぶ大通りの一角が、ピンク色の霧に包まれている。
「…こんな所に、アネモネが…っ」
「うふふ♪ そんな事どうでもいいじゃないですかぁ♪
皆で一緒に気持ちよくなりましょう?」
運悪く催淫ガスを吸い込み、その場にへたり込む人間が何人も居た。
警備の者。住民。併せて十人は下らない。正に選り取り見取り。
クロトは顔を赤くしながら欲情する体に抗う人々の中から、うら若い女性に目を留めた。
歳は自分と同じ、二十歳程だろうか。
短い黒髪の下に、鋭い眼光が輝いている。
体が言う事は聞かなくても、その心だけは折れていないようだった。
「――あぁ。誰かと思ったらティーシャさんじゃないですかぁ♪」
魔術士のローブに身を包んだ女は、クロトと同期のリビディスタの門下生だった。
「…クロト…? まさかお前、クロトなのか!?」
精悍な顔つきは中性的な印象を与えるが、その言動も男勝りだった。
赤い外套に身を包んだ彼女の名はティーシャ。
七つ星の、攻撃魔術に長けた魔術師だ。
「せいかーい♪ 私ねぇ、リオ様に犯されてぇ、アネモネになってしまったんですぅ♪」
「リオ、様に…? なんだ? 何を言ってるんだ!?」
「あーそっかぁ、ティーシャさんはリオ様が行方不明になった事知らなかったですよね?
でも、それはもういいんです。うふふふ。ねえティーシャさん?
アネモネってすごいんですよぉ? なんか、全身が気持ちいいんです♪
頭がぼーってして、ずーっと夢見心地なんです♪
こうやってガスを撒くのも――あぁん…♪」
ぶしゅうと催淫ガスを触手から噴出して、その快感に甘い声を漏らす。
「はぁ…気持ちいい…♪
でもぉ、女の子に種付けする時は、もっと気持ち良いんですよぉ?」
触手を動かし、腰を砕けのティーシャへとゆっくりと近付く。
「よ、寄るなっ! それ以上近付くと、攻撃するぞっ」
「攻撃? まさか私に、魔術を撃つんですかぁ?」
「そうだっ、だから、動くなっ、私は、お前を、」
「くすくすっ。催淫ガスを吸い込んだまま魔術が使えるわけないじゃないですかぁ。
ほんとは体が疼いてしょうがないんでしょう?
おマンコがじくじくして、指でぐちゅぐちゅ掻き回したいんでしょう?」
「く、クロトっ、お前、何て言葉をっ」
猥語に羞恥心を煽られたティーシャが赤い顔を更に赤くさせた。
直情系でボーイッシュな彼女も、猥談においては自分と同じく純情系だ。
そんな彼女の反応を愛しく思いながら、腹の中で生殖器が疼くのを感じた。
「あぁ、ティーシャさんっ、可愛いっ、とても可愛いです!」
(種付けしたいっ、我慢出来ないっ!
ティーシャさんのおマンコに、びゅるびゅるザーメン注いで種子を植え付けたい!)
99 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:23:46 ID:gpT5qXPc
はぁ、はぁ、と息を荒げるクロトに貞操の危機を感じたのだろう。
ティーシャは手にしていたロッドをこちらに突きつけると、
「く、来るなぁあっっ」
ロッドの先から魔術陣が生み出される。
陣の色は攻撃を意味する赤。その中心から、拳大の火球が生み出された。
(あ、凄いです。このガスの中でまともな攻撃魔術を使えるなんて)
関心した瞬間。火球がこちらに向かって飛来した。
どおんっ!!
大気を振るわせる爆発音。
着弾の瞬間に衝撃波が生まれ、熱気と風圧がガスを吹き飛ばす。
力加減を誤ったのか周囲の住民達が爆風に煽られて地面を転がった。
「しまったっ!?」
魔術を使った本人が顔を青くしていた。
一般人を巻き込んでしまった事。
それに何より知人に向けて容赦の無い攻撃を行った事に、後悔する。
だが。
「くすくす」
爆煙を挿んだ向こう側に笑い声。
風が煙を徐々に晴らしていく。
その先に、無傷で佇むアネモネの姿があった。
「…防御魔術…っ、アネモネになっても使えたのかっ」
ひし形のタイルを繋ぎ合わせたような光の壁が、クロトの全身を覆っていた。
「はい♪ それどころかアドニスと融合した事で魔力の総量も上がってるみたいです♪
私達魔術士としては良い事尽くしですねぇ♪」
「馬鹿を言うな! 人を捨ててまで、そんな力なんて必要ないっ」
「真面目ですねぇティーシャさんはぁ。
その凝り固まった頭を、私が柔らかくしてあげますね♪」
ぶしゅう、と再び催淫ガスを撒き散らす。
「…っ!? くそっ」
防御魔術でガスを防ごうとするが、ティーシャは攻撃専門だ。
圧倒的な力の差に、魔力で編み出された光の壁があっと言う間に崩壊する。
さっきと同じだった。
突如横合いの路地から出現したアネモネがガスを撒き散らし、こちらの動きを封じる。
「抵抗なんて無駄ですよぉ? 諦めて、私に種付けされて下さい♪
大丈夫です♪ 催淫効果たっぷりの体液を沢山使ってあげますから。
ちーっとも痛くありませんよぉ? くすくすっ。くすくすくすくすっ」
笑いながら触手を伸ばす。
あ、と声を上げる間もなく、ティーシャの体を拘束した。
「は、離せっ――うわっ!?」
暴れる彼女の体を引き上げ、花弁の上に招待する。
びりいっ――おしべ触手を使い、魔術士の衣服を乱雑に引き裂く。
「ば、馬鹿っ、やめろっ! お前は正気を失ってるんだ!
屋敷に戻ってちゃんとした治療を受ければ――むぐぅっ!?」
おしべ触手でけたたましい口を塞ぐ。
むーと唸るだけになった女を微笑ましく眺め、それでも込み上げる欲情は抑えられない。
息をやや荒げながらぼろぼろになった衣服を脱がす。
その下から現れたのは魔術師とは思えないほど引き締まった肢体。
二の腕にも腹にも、余分な脂肪は付いておらず、脚は力強く、しなやかだ。
まるで野生の肉食動物を彷彿とさせるスタイルに、はう、と感嘆の息を漏らしてしまう。
「けれど胸は控えめですねぇ」
「んんーー!! ぼふぇーばぼめまま!!」
余計なお世話だ、とでも言いたいのだろうか。
「くすくす。何もそんなに悲観する事はありませんよぉ?
アネモネになれば、スタイルだってよくなるんですからねぇ?」
ティーシャの目前で見せ付けるように、自らの胸を寄せて上げる。
ぼよぉん、とまるで生き物のように跳ねる二つの脂肪の塊にティーシャが目を見張った。
100 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:25:06 ID:gpT5qXPc
催淫ガスの中で男衆がおおっ、とどよめく。
「だからぁ、ティーシャさんもぉ、心置きなくアネモネになって下さいねぇ♪」
体を持ち上げる。
触手が、腕を万歳の格好に縛り上げ、彼女の股下を目線の高さまで吊り上げる。
嫌がる彼女を無視し、きつく閉じられた股を開いていく。
「むー!! んーーんーー!!」
触手に開脚させられると、そこにはきらきらと濡れ輝く羞恥の丘がある。
うっすらと恥毛を帯びたそこは閉じられ、だがその割れ目から一筋の愛液が流れている。
クロトはそこに鼻先を押付けるとすんすんと匂いを嗅ぎ始めた。
ティーシャの唸り声が大きくなり、がくがくと体が震える。
「あはぁ…♪ ティーシャさんのおマンコ、とっても良い匂いがしますぅ♪
処女の、乙女のおマンコの匂いですぅ♪」
鼻先に愛液を付着させながらうっとりと呟く。
「でもぉ、まだあんまり濡れてませんねぇ? 少し解しておきましょうかぁ♪」
言うや否やティーシャの口に突っ込んでいた触手をピストンさせた!
じゅぷっ! じゅぷっ!
「んっ!? んむぅっ!!」
「あはっ♪ これぇっ…! 触手、とっても感じちゃいますぅっ♪
ティーシャさんの口マンコっ、いいっ♪ 気持ち良いんですぅ♪」
親指大の触手を三本口に突っ込まれたティーシャは目を白黒させながら口姦に悶える。
少し苦しそうだが、こちらは加減出来そうに無い。
アネモネと化した心に、人間の良心など残っていないのだ。
ただ、人間の頃の性格や記憶はそのまま引き継がれるので、趣味や嗜好は変わらない。
痛がる姿は見たくないので、媚薬をたっぷり注いでやるのだ。
(あぁ、それにしても、お口の中、気持ちいいです…♪)
突っ込んだ触手の胴を口蓋へと擦り付ける。
或いは先端を開き、その舌ごと咥え込み、吸引する。
他にも先端から繊毛触手を生やし、歯茎や下の裏などを嘗め回した。
触手の性感は鋭く、それら一連の行為に蕩けそうな快感を覚えてしまう。
かと思えば、触手の生え際から熱い何かがせり上がって来るのを感じた。
「あぁっ!? 射精しますぅっ。ティーシャさんの口マンコにっ…!
熱いお汁、いっぱい噴出しちゃいますぅ! あっ! あっ! あっ!
いいっ! 触手気持ちいいっ! 出る出るっ! 出ますっ!
あっはぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁっっ!!」
びゅるびゅるっ!! どぴゅどぴゅどぴゅっ!
「んむぅぅぅっっ!?」
頭が真っ白になった。
触手の中を体液が通る感触は男性の射精とは比べ物にならないくらい気持ち良い。
そもそも男の輸精管よりも敏感な触手のそれは、男のそれとは長さが全く違う。
ペニスから噴出す射精の快感を二倍、三倍と長く味わう事が出来るのだ。
それも複数本同時に。
ともなれば男の快楽を全く知らなかったクロトが、その快楽に溺れるのも無理はない。
「…あっ…っ、はっ…♪ っ、あぁっ…っ、…♪」
体を痙攣させながら、初めての射精『もどき』の快感に酔い痴れる。
ぼんやりとティーシャを見ると口から大量の体液を吐き出しているのが見えた。
加減を間違えて多く出し過ぎたらしい。無色透明のそれは催淫効果を持った蜜だ。
更に言うと、彼女を拘束していた別の触手の先端からも蜜を吐き出していた。
催淫ガスの原液とも言えるそれらが、クロトとティーシャの体をべたべたに汚していく。
傾き始めた太陽に二人の裸体が照らされて、ぬらぬらと淫靡に輝いていた。
(もう、十分ですね…♪)
口の中から束ねていた触手を引き抜く。
おえぇっ、と下品にえずくと、ティーシャは盛大にむせ始めた。
「がはっ! げはっ、げほぉっ!! はぁっ! はぁっ! くそっ! げほっ!」
「あらあら、ごめんなさい? 初めてこんな事するから、加減を間違えてしまいました。
苦しかったですよね?」
「あ、当たり前だっ」
「そうですか。でも、もう大丈夫ですよ?」
「な、何…? ――うっ?」
101 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:26:24 ID:gpT5qXPc
ティーシャが自分の体に異変が起きていると気付いた時にはもう遅い。
「あっ、あぁぁぁぁっっ!?」
目を見開き、がくがくと体を痙攣させ始める。
先程噴出した蜜は催淫ガスの原液。それを惜しむ事無く口内と体中にぶちまけたのだ。
今、ティーシャの体は想像絶する疼きが襲っているのだろう。
「あ、あついぃっ! 体がぁ!」
「熱いだけですかぁ? 切ないんじゃないんですか? くすくす。こことか、ね?」
ぞろり。クロトが眼前の割れ目に舌を這わせた。
「ひああぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!?」
それだけでティ-シャは高みへと打ち上げられる。
体を痙攣させ、上と下の口からだらだらと涎を垂らした。
「あらぁ? ひょっとしてもうイったんですかぁ?
ちょっとお薬を使いすぎたみたいですねぇ? くすくす♪」
「あ、あぁっ…!」
呻くティーシャからは完全に力が抜けていた。
抵抗する意思も無いらしく、吊り上げられた状態のまま体をぐったりと弛緩させている。
だというのに彼女の下半身だけは何かをねだるように小さく揺すられているのだ。
「あはぁ♪ ねぇねぇティーシャさん? 気付いています?
貴女のおマンコ、もうドロドロですよぉ♪」
一度アクメを迎えたティーシャのヴァギナは大きく口を開き、内部を露出させていた。
露になった肉ビラが、グロテスクにひくひくと蠢動している。
「いやぁ…、見ないでぇ…」
羞恥心を訴える言葉もボーイッシュな彼女からは考えられないほど色気を帯びている。
アクメから降りてきた彼女は、はぁ、と艶かしい吐息を漏らした。
「…あ、嘘…、アソコ、ジンジン疼くの、全然治ってない…!」
「くすくす。これだけの蜜を浴びたんですから、簡単に収まりませんよ?」
「そ、そんなぁ…いやだ…っ、こんなのっ、おかしくなるっ」
「大丈夫、大丈夫ですよティーシャさぁん?」
ずるずるずるっ!
アドニスから生殖器を引き出す。
体の内側から敏感な触手が生え出す感覚に背筋がぞくぞくした。
(はぁっ♪ 触手チンポ引き出すの、気持ち良いっ♪)
「えぇっ!? そ、それっ」
ティーシャと言えば目の前に現れたとんでもない大きさの触手に狼狽している。
いや――鎌首をもたげる、その雌しべ触手に熱い視線を送っているのか。
目元を潤ませ、艶かしい吐息が敏感な粘膜を刺激した。
「そうですよぉ? これがぁ、ティーシャちゃんの処女マンコに入っちゃうんですぅ。
どうですかぁ? 大きいでしょぉ? 気持ちよさそうでしょぉ?
くすくすっ。そんな目で見なくても、ちゃぁんとハメハメしてあげますからねぇ♪」
「い、いらないっ、大体、そんなの入る訳がないっ」
「大丈夫ですよぉ。私だって入ったんですからぁ♪」
ぐちり、とその先端をティーシャの割れ目にあてがう。
それだけで甘く、蕩けるような刺激がクロトを襲う。
人外化し、ぐずぐずに溶かされた理性が更に溶かされ、アネモネとしての本能だけが残る。
即ち、人間のメスへの種付け。
「ティーシャさんっ、私、もう我慢出来ませんっ。
ティーシャさんの事、ずぼずぼ犯してあげますっ」
「い、嫌だっ! 私はっ、アネモネなんかになりたくないぃっ!!」
泣き叫んで嫌がるティーシャを肴に、
ずりりりりっ!!
「いぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁっっ!!?」
処女を頂いた。
「ふあぁっ!?」
(何これっ、触手チンポ、とっても締め付けられますぅっ)
元でも敏感な雌しべの性感に翻弄されているというのに。
ヴァギナに絞め付けされる感触に更に追い討ちを掛けられてしまう。
「す、凄いですっ! 触手チンポっ、気持ちよすぎですっ」
人外の快楽に堕ちたクロトはあっさりと飲み込まれ、それを貪ろうと触手を操った。
102 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:27:49 ID:gpT5qXPc
じゅぷっ! じゅぷっ! じゅぷっ!
「ひぎっ!? ぎ、ぁっ!? ひうっ!!」
「あぁっ! いいっ! ティーシャちゃんの処女マンコっ!
きつきつでっ! あぁんっ♪ 蕩けてしまいますぅっ♪」
先端に生えている疣疣の一つ一つが陰核のように敏感なのだ。
それが処女膜の残骸に引っ掛かったり。
或いは、肉ヒダに磨かれたりする度に脳内がピンク色に染まる。
この快楽は人間の時には味わえなかった物だ。
それをもっと味わいたいと思い、ティーシャの体を抱き寄せる。
「んああぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁっっ!!?」
熱い抱擁を交わすと、ティーシャの股ぐらは花肉の真上へと押付けるような形となる。
痛みからかそれ以外のものからか。
狂ったような声をあげるティーシャの体をぐりぐりと触手へと押付ける。
アドニス本体が破瓜の血を啜った。
(あぁ、堪りませんっ♪ 人間の女の体っ♪)
いやらしく肥大化したニップルをティーシャのそれに押付け、蕾同士で擦り付けあう。
催淫粘液に濡れた柔肌同士がニチャニチャと音を立てて、もどかしい性感が生まれた。
あうん、と色っぽい声が漏れる。それはティーシャのものだった。
桜色の先端が触れ合う度に、きゅん、と雌しべが締め付けられるのだ。
「くすくす。ティーシャさん、チクビが好きなんですかぁ?
おっぱいが小さい人って感じやすいって言いますけど、ほんとだったんですねぇ♪
いいですよぉ♪ いっぱい感じさせてあげますぅ♪」
しゅるしゅるとおしべ触手を生やす。
起伏の少ない肉紐のような触手。その膨らんだ先端が開き、内部が露出する。
「えぇい♪」
ぱくり。
「んやああぁぁぁっっっ!?」
柔毛がびっしりと生えたおしべ触手に乳首を咥え込まれ、ティーシャが仰け反る。
(あっ♪ ティーシャさんのおマンコ、きゅん、ってなりましたぁ♪)
「やっぱり、おっぱいがいいんですねぇ♪ それそれぇ♪」
おしべを操る。
こりこりとしたピンク色の蕾を舐めしゃぶり、或いは柔毛でしごき立てる。
「ひやあぁっ!? おっぱいっ、おっぱいばっかりっ…!
んああぁぁぁっ!!? だめぇっ! 気持ちいいっ! 気持ちいいっ!」
雌しべに姦通されたままティーシャが喘ぎ悶える。
催淫液がいい塩梅に体に回ってきたようだ。
涎を垂らしながら彼女は悦んでいる。
快楽が強すぎるのか瞳が濁り、意思の光が消えかかっていた。
破瓜の痛みも、もう殆ど残っていないだろう。
「はぁっ…! はぁっ…! ティーシャさんっ、エロくなってきましたっ!
どうですかぁ? 気持ちいいですよねぇっ、でもおマンコはもっといいですよぉっ」
ごつんっ、と子宮口を雌しべの先端で小突く。
「ひやああぁぁぁぁぁっっ!!!?」
「あぁんっ♪ 触手チンポっ、締め付けられるぅっ♪
ねっ♪ いいでしょうっ? おマンコいいですよねぇっ?
もっとハメハメしてあげますっ」
じゅぷっ! じゅぷっ! じゅぷっ!
「ひやっ!? んあぁっ! ひいんっ!」
「あぁっ♪ いいっ♪ 処女マンコ気持ちよすぎますぅっ♪
あぁっ♪ ああぁぁっ♪ 種子がっ、種子が出ちゃいますっ♪」
雌しべの根元から熱い何かが込み上げてくる。
それは人間で言うところの射精直前の感覚に似ていた。
初の種付けを予感して、際限なく興奮してしまう。
雌しべ触手を何度も何度もピストンさせ、ティーシャの中を蹂躙する。
「あぁぁっ!! すごいっ! 触手っ! ごりごりされてっ!
お腹捲れるぅ! おかしくなるぅ!」
103 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:29:30 ID:gpT5qXPc
「わ、わたしもっ…! ティーシャさんの処女マンコに…!
あぁんっ♪ もう、触手チンポ止まりません! ティーシャさんに種付けするまでっ!
――あぁっ!? 来たっ、来ましたっ! 触手チンポにっ!
ドロドロザーメンと、アドニスの種子が! あぁんっ♪ もう、ダメですぅっ♪」
どくどくと触手ペニスが脈動する。
「あぁっ!? 出ますっ! あぁっ♪ ああぁぁっ♪ すごいっ♪
ああぁっ♪ いいっ♪ あぁっ♪ ああっ、あっ、あっあっ、ああっ♪
出るっ、出ますっ! 触手チンポからっ! あぁんっ♪
こってりザーメンとっ…! あっ、あぁぁ、あぁっ♪ 種子がっ♪
出しちゃう種付けしますっ、ああぁっ! あぁぁっ! ああぁっっっ!
ティーシャさんに、種付けしますぅぅ、ああぁぁぁぁぁああああぁぁぁああっ!!」
子宮口に先端を食い込ませる。
同時に繊毛触手が生え出し、子宮口をこじ開けた!
びゅるるっ! どぴゅどぴゅどぴゅっ!!
「あはああぁぁぁぁぁぁぁっっっ♪」
「んやあああぁぁぁぁっっ!!? あちゅいぃっ!!?」
(すごっ、いっ、ですっ♪ しゃせー、気持ちよすぎですぅ!)
雌しべの中を精液と種子が通り抜ける。
種子が噴出する精液に推し進められて、細い輸精管を無理矢理拡張させられるのだ。
輸精管と同じくらいの性感帯となった尿道で結石が詰まったようなものだ。
その感覚は正に法悦。
未知の快楽にクロトは打ち震え、涎を垂らし、ティーシャを力強く抱きしめる。
その拍子に咥えていた二つの頂点を、思い切り吸引してしまった。
ちゅううううぅぅぅっ!
「うああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!?」
びくびくびくびくっ!!
中出しされた挙句、乳首を吸引されたティーシャがアクメを迎えた。
「あうっ!? ティーシャさぁんっ、すごい、おマンコっ!
触手チンポっ、もがれちゃうっ! 千切れちゃうっ! ああぁぁぁんっ!?
駄目ぇっ! また、また射精しちゃうっ! ザーメン出るぅっ!!」
びゅるるっ! どくどくどくっ!
「ああっぁぁぁんっっっ♪」
凶悪な絞め付けに再び射精。
ティーシャの子宮にどくどくと栄養を注ぐ。
陵辱されている当人はと言うと熱い熱いとうわ言の様に呟きながら白目を剥いていた。
大量射精をされたせいで子宮が膨らみ、下腹部が僅かに張っているのが分かる。
じょろろろろろろ――
(あっ♪ ティーシャさん、おしっこ漏らしてるぅ)
水分、特に人間の体液はアネモネにとってご馳走だ。
花の中央、陰唇のような部分がうぞうぞと蠢き、真上から零れ落ちる尿を啜る。
その味や匂いは同化したクロトにも伝わり、彼女はうっとりとした。
「はぁ…♪ おしっこ、美味しいぃ♪」
(種付けも出来て、とっても幸せですぅ♪)
ぎゅ、とティーシャの体を抱き寄せる。
種付けをした女は自分の部下であり、仲間だ。
今まで以上に彼女が愛しく思えてしまう。
「これでティーシャさんも、私の仲間ですからねぇ♪」
ちゅぅ、と親愛の証に、唇同士を合わせ、
突如、催淫ガス突き抜けて何かが飛来した。
ぎいんっ!
反射的に防御結界を展開し、無粋な横槍を受け流す。
甲高い音を立てながら地面に転がったのは一本の短剣だ。
投擲用に特化されているらしく、刃渡り40センチ程度のシンプルな黒剣だった。
「……もう。誰ですかぁ? 折角ティーシャさんと仲良しになっていたのにぃ」
返事の代わりに再び刀剣が飛んできた。今度は四本。
催淫ガスを突き抜けて、デザインも大きさも異なる剣が僅かな時間に投擲される。
104 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:32:26 ID:gpT5qXPc
ぎんっ、ぎぎぎんっ!
「硬いな」
全ての剣を難なく防ぐと、ガスの向こうから男の声がした。
抑揚の無い声だ。その質も渋く、低い。
聞いた事のある、声だった。
(あ、まさか…この声は…)
人間を止めてもこの声を忘れる訳が無かった。
クロトの尊敬と恋慕の対象。
リビディスタの長。
剣神と謳われた最強の戦士。
ガスの向こうから、グリーズ=リビディスタが現れた。
彼が大地を踏みしめる度に、赤い甲冑が金属擦れの音を立てる。
重量感のあるその鎧には魔術による防御効果が付与されていた。
催淫ガスの効果は無く、彼は鉄面皮のままだ。
「――クロトか?」
その彼の眉が、僅かに跳ねた気がした。
「はぁい、そうです。グリーズ様ぁ♪ 私は、クロトでございますぅ♪」
ティーシャを花弁の上へと下ろし、グリーズへ満面の笑みを送る。
「アネモネへと堕ちたか……リオはどうした?」
「くすくす。私はですねぇ。そのリオ様に犯されて、アネモネになったんですよぉ?」
再び彼の片眉が跳ねる。それも先程に比べて大きく。
グリーズをずっと見てきたクロトには判る。
今彼は、狼狽しているのだ。
実の娘が人外である、と知らされた事に。
「リオは、どこに居る?」
「くすくす。グリーズ様の頼みでもそれは聞けませんねぇ?
ご自分でお探し下さぁい♪ でもその前にぃ…私と一つになりましょう♪」
触手を展開し、グリーズへと近付く。
「私、ずっとグリーズ様の事をお慕いしていたんですぅ。
好きだったんですぅ。だからぁ、お願いしますぅ。
私と、エッチしてくださぁい♪」
しゅるっ――グリーズへと触手を伸ばす。
剣を投げ放った彼は丸腰だ。恐れる事は無い。
そう思った次の瞬間、『グリーズの両手に一本ずつ、片刃の剣が握られていた』。
二本の剣が閃く。
齢五十近くとは思えないほど軽やかな動きで、体を回転させていた。
獅子のたてがみを彷彿とさせるブロンドの髪が舞い、ネービーブルーの外套がはためく。
まるでワルツでも踊っているような動きに、目が奪われてしまった。
そしてその間に、捕獲用に伸ばした八本の触手が全て切断されていた。
(……はぁ、素敵です…グリーズ様ぁ♪)
いやいや、感心している場合ではない。
丸腰だと思って手を出したのは安直過ぎたと言えよう。
何故なら彼の能力は――
「残念だが。お前を受け入れる訳にはいかぬ」
手にした二本の剣を地面へと突き刺し、グリーズは両手を空ける。
その掌から、青く光る魔術陣が生み出されていた。
そこを境界に、『新たな武器が出現する』。
彼の手には、墨を流したような黒い鞘が収まっていた。
――剣神と謳われたグリーズの力。
それは転移魔術だ。
但し、自分が転移するのではない。
リビディスタの屋敷に安置された彼専用の武器庫から、『得物』を転移させるのだ。
そして彼はありとあらゆる刀剣の扱いに長けている。
105 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:33:50 ID:gpT5qXPc
更に、今まで培ってきた富と、傭兵時代に偶然手に入れた名剣の数々。
グリーズは戦う相手によって常に最適な武器を選び、手元へと引き寄せる。
剣神とは、あらゆる剣を扱う彼に与えられた称号なのだ。
「くすくす。流石は私のグリーズ様♪ 一筋縄ではいきませんねぇ?
ですが私の防御魔術も負けてはいませんよぉ?」
上昇した魔力を惜しみなく使い、防御結界を張る。
タイル状の物理障壁はドラゴンのテイルアタックすらも弾き返す代物だ。
それを二重、三重、四重と重ね掛けしていく。
戦術クラスの魔術攻撃ですら防御する事が可能だろう。
「なら試すか?」
(…あ…グリーズ様、笑った…?)
僅かだったが、彼の唇の端が釣り上がった気がした。
根っからの武人なのだろう。
自分の力を試す。その事に喜びを見出す男なのだ。
それがクロトには野蛮だとは思えない。自分の力を誇示する事なんて、誰だってする。
グリーズが踏み込んできた。
黒い鞘を腰溜めに構えたまま、左の親指で変わった意匠の鍔を弾く。
同時に前面に魔術障壁を収束させ、
グリーズの刀剣が、閃いた。
遠く離れていたにも関わらず、クロトには抜刀の瞬間を目に収める事が出来なかった。
彼の剣は既に振り抜かれており日の光を受けて刀身が美しく輝いている。
(…そんな…)
良く見ると結界が真横一文字に切り裂かれている。
ばりぃん、とガラスが割れるような音と共に結界が砕け散った。
紙でも切るように、彼の斬激が結界を切り裂いたのだった。
それも剣の間合いの遥か遠くで。
グリーズは居合いの際の剣圧だけで結界を破壊したのだ。
「ムラマサ、と言う異国の魔剣だ。魔力を無効化する力がある」
ひゅんひゅん、と刀剣を回転させ、鞘に収める。
「対魔術士用の切り札だ」
「…道理で私の結界があっさりと破られた訳ですね」
「まだ続けるか? 勝ち目は無いぞ」
「くすくす。おかしな事を言いますね?
続けるも何も完全にアネモネと化した私は、もう人間に戻れません。
人間に倒されるか、人間を襲うか。その二択しか無いのです。
それなのに、グリーズ様は私にどうするかお尋ねになっています。
くすくす。どうしてですか? まさか、躊躇っておられるのですか?
そうですよね? 私のような化け物でも、気を遣ってくれているのですね?
ああっ、なんてお優しいグリーズ様! 大好きですグリーズ様っ!」
魔物の本能が溢れ出す。
それは狂おしい程の愛と交わり、只、眼前の男の精を貪り尽くしたくなる。
「グリーズ様ああぁぁぁぁっっっ!!!」
触手を展開し、グリーズへと伸ばす。
それは攻撃といっても差し支えの無い勢いだった。
触手に魔力を通し、硬度を上げているのだ。
それが雨あられと言った具合に、グリーズ目掛けて降り注ぐ。
どがどがどがどがっ!!
触手が地面に穴を穿つ。まるで槍でも刺さったようだ。
だが、そんな死の雨の中をグリーズは躊躇無く踏み込んで来た。
体に大穴を開けようとする肉の槍を最低限の動きで避け、あるいはムラマサで迎撃する。
元より十歩と離れていなかった距離は、あっと言う間に縮まった。
106 永久の果肉11 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:35:37 ID:gpT5qXPc
グリーズが跳躍する。
赤い甲冑は見た目以上に軽量らしい。
彼は花弁の上へと着地すると、こちらの喉元に刀を突きつける。
その鮮やかな動きに、攻撃しながらもクロトは見とれてしまった。
「何か言い残す事はあるか?」
問われて反射的に口を開き、すぐにそれを噤んだ。
死への恐怖は無い。
助けて下さい。リオ様と仲良くして下さい。ティーシャを連れて帰らないで。
言いたい事は色々ある筈だった。
だが結局。ここ死に際に来て、口をついた言葉は、
「貴方を愛しています」
グリーズはすまない、と呟いた。
それが答えだった。分かり切っていた答えだった。
だが、想いを告げられた、その事実だけで救われた気がした。
僅かに表情を曇らせる愛しい人に、満面の笑みを送る。
直後に白刃が閃いた。
***
リビディスタの戦士達、その実力が試される時が来た。
人間同士の訓練でもない。
森の中の、訓練と言う名目で行われていた『狩り』でもない。
森の魔物達との総力戦が今、始まろうとしている。
ドルキは思う。
グリーズと共に作り上げてきたリビディスタの家。そして最強の戦士達。
それらが有象無象の化け物どもに負ける筈が無い。
ドルキは出陣する門下生達に激励を与え、彼らの壮観な姿に興奮すら覚えた。
そのせいで死んでいたと思っていた娘が屋敷に入り込んだ事にも気付かない。
リオは、そんなドルキを嘲笑いながらパセットと共に屋敷の従者達を次々と犯していく。
パセットも同僚達を犯す悦びに目覚めてしまい、屋敷の中のメイド達を全て支配した。
さあ、復讐を始めよう。
準備は整った。
門下生達を送り出したリビディスタにはもうろくな戦力は残っていない。
囮になり、散っていったクロトの為にも、あの女に、引導を渡してくれる。
次回、永久の果肉十二話、
『愛憎劇―前編―』
107 乙×風 ◆VBguGDzqNI sage 2010/04/19(月) 18:37:48 ID:gpT5qXPc
グリーズの能力は金色の弓兵職な彼の宝具と同じですね。
剣神のレリーフもどこぞの固有結界をイメージしています。
剣が沢山地面に突き刺さってる感じのですね。
補足ですがグリーズが使っていたムラマサはレプリカで本物ではありませんw
剣自体はちゃんと使えるので本人は本物と信じているという設定ですw
ちなみに作者は、今回エロよりもリオとトロル達のシーンがお気に入りです。
猫娘かぁいいよ猫娘。
さあ、物語もいよいよクライマックスです。
次回はリオとドルキとのタイマンですね。
バトルメインになりますが、前半にパセットが同僚に種付けするシーンも入れる予定です。
シナリオ構成は次の『愛憎劇』を前編、後編と二話使い、決着。
その次でエピローグで丸々一話使うとして。
あと三回の投稿でシリーズ完結予定です。
うっはぁ、長かったなぁw まあ、一息つくのは少し早いですけどw
という訳で寄生スレの皆様、よろしければもう少しお付き合い下さいね。
あ。いつものように誤字脱字感想等なんでもお待ちしておりますー。
それでは今週はこの辺で。また来週お会いしましょう。
養女っ、ばん、ざああぁぁぁぁぁぁぁぁぁいいっっ!!!!
オオヌシ様
75 【オオヌシ様】(1) sage 2010/04/16(金) 13:11:08 ID:WsbeGLKu
赤井夕子(あかいゆうこ)、二十歳。この春から大学一年生。
眼がくりくりとしたタヌキ顔が子供っぽく見えるおかげで、年を言わなきゃ誰も二浪と思わない。
夕子という名前は『赤い夕日が校舎を云々』とかいう懐メロから祖父がつけたらしいけど。
幼い頃からのあだ名は「赤いタコ」、略して「赤タコ」または、そのまま「タコ」。
そうだよね、そうなっちゃうよね。
そして、その名前のせいではないだろうけど――
「……ひゃうんっ!? あひゃぁぁぁぁぁっ……!?」
人の腕ほどの太さもあるタコの足がぬるぬると、夕子の両乳房を舐めるように撫で回す。
ご丁寧にもちゅぱちゅぱと、吸盤で乳首を吸いながら。
別の足は夕子に覚悟を促すように、つんつんと尻穴を突っついてくる。
「ひゃあっ!? おしりらめっ! おしりらめぇぇぇぇぇ……!!」
悲鳴を上げる夕子の頭の中に声が響く――いまや彼女と「同化」した《オオヌシ様》の声が。
『何がダメなものか。我らは五感を共有しておるのだ。ほれ、欲しくてたまらないのであろう』
ぬぷり……ぬぷぬぷと、尻穴のすぼまりを難なく押し拡げ、タコの足は夕子の腸内に呑み込まれていった。
「あへぁっ!? らめっ……んひぃぃぃぃぃっ♪」
夕子は随喜に泣き咽びながら、囚われの肢体をわななかせる。
彼女は四本の長大なタコの足に手足を絡めとられて、宙に吊り上げられていた――
そのタコの足は乳房や尻穴を蹂躙するものと同様、彼女自身の女陰から生え出ているのだが。
奇妙にもあるいは器用にも、タコの足は女陰から生えた付け根の部分では半分ほどの太さに縮まっていた。
とはいえ人の腕の半分の太さのモノを八本も銜え込んで、夕子の女陰は無惨なほど拡げられている。
そう、タコの足は八本。四本は夕子の手足を縛め、二本は左右の乳房を舐り、一本は尻穴を犯している。
そして残る一本は夕子の唇をなぞり、口腔奉仕を強いようとしていた。
『ほれ……銜えるのだ。五感を共有するということは、我の味わう快楽を、ぬしもまた味わうということ』
「いやぁぁぁ……せめてお醤油とワサビつけてぇぇぇ……♪」
76 【オオヌシ様】(2) sage 2010/04/16(金) 13:17:25 ID:WsbeGLKu
『弄(いろ)うな。ほれ、覚悟いたせ』
「んぁむっ!? んぁぁぁぁぁ……っ♪」
タコの足を口にねじ込まれ、夕子は快感に打ち震えた。
吸盤が舌にこすられる感触が《オオヌシ様》を介し、性の歓びとして伝わってくるのだ。
タコの足を口いっぱいに頬張り、ぎこちないながらも懸命にそれを舐り上げる。
乳房と尻穴を同時に責められ、意識が飛びそうになりながらだ。
「んくぅぅぅぅぅ……♪」
ここは夕子の下宿であるワンルームマンション。
二浪の末に手に入れた大学生活――その四年間を過ごすべき自室で、彼女は肉体を弄ばれているのだった。
もとより、それを覚悟しての下宿暮らしであったのだが。
それを示すように、この部屋にはベッドがない。
《オオヌシ様》と同化した夕子は睡眠を必要とせず、毎晩、夜通し犯されているのである。
さらには、いまのように昼間でも、休講で時間が空けば大学から徒歩七分の自室に帰って犯される。
《オオヌシ様》が夕子を犯したいと望んだときは、夕子の身体も疼いてしまうから拒絶という選択肢はない。
「んくっ♪ んくっ♪ んくぅぅぅーーーっ♪」
眼の前で白い光が弾けたように感じて、夕子は、びくっびくっとその身をのた打たせた。イッたのだ。
ちゅぷり、ぬぷりと、口と尻穴を犯していたタコ足が抜けて、夕子は恍惚と吐息をつく。
「ぷはぁぁぁぁぁ……♪」
夕子の身体がゆっくりと床に下ろされて、手足や乳房を縛めていたタコの足がほどけていった。
夕子は足腰に力が入らず、ぺたんとその場に座り込んでしまう。
タコの足は、するすると彼女の女陰に引っ込んでいく。
夕子はタコ足が収納されていく自らの股間を見下ろして、
「あはっ♪ 四次元オマ○コ♪」
『我のほかは迎え入れさせぬがな。ぬしは一生涯、人間の男を知らずに生きるのだ』
「ふふっ、わかってるって♪ 《オオヌシ様》に拾われてなきゃ、無かった生命だものね♪」
夕子は微笑む。
77 【オオヌシ様】(3) sage 2010/04/16(金) 13:22:03 ID:WsbeGLKu
二度目の大学受験に失敗して、二浪が確定した翌日。
夕子は、海を訪れていた。
初めから死のうと思って来たわけではない。現実逃避したかっただけだ。
それでも、岬の先端の誰もいない展望台から冬晴れの海を眺めているうちに、ふと思いついてしまった。
ここから飛び降りれば、いろいろ楽になれるんじゃないかと。
夕子は後先も考えずその思いつきを実行に移し、すぐに激しく後悔した。
岬から十数メートル下の海面に叩きつけられた衝撃は相当のものだったが意識を失えるほどではなかった。
次の瞬間には鼻と口から大量の冷たい海水を吸い込み、息ができなくなった。
痛い! 苦しい! 死ぬ! 嫌だ! 誰か……助けて!!
そして、《オオヌシ様》に拾われたのだ――
夕子はシャワーを浴びながら、胎内に棲むモノに話しかけた。
「……あの、《オオヌシ様》?」
『何だ?』
「その……よかったです」
頬を朱に染めながら言う夕子に、《オオヌシ様》は呆れたように、
『ふむ……ぬしは時折おかしなことを申す』
「おかしいですか?」
『我らは五感を共有しておる。ぬしが絶頂に至るほど快感を味わったのは我にも伝わっておるのだぞ』
「そういう意味じゃなくて、わたし、《オオヌシ様》に感謝してるというか……」
『ふむ?』
夕子と同化したタコの妖(あやかし)は興味深げに相槌を打つ。
『確かに我は、ぬしの生命を救い、受験に必要な英単語や公式を暗記し、本番で幾つか問題も解いたが』
「その分、勉強時間を削って犯されましたけど、そのことでもなくてですね……」
夕子は愛おしげに眼を細め、《オオヌシ様》を宿した腹を撫でた。
「わたし、《オオヌシ様》のおかげで女の歓びを知ったというか、女に生まれてよかったと初めて思えた」
『それは快楽という意味ばかりではなさそうだな……ふむ』
「もちろんそれだけじゃないです。自分が生まれ変わったのがわかるんですよ」
だって、と、夕子は自嘲ばかりではない笑顔で言葉を繋ぎ、
「《オオヌシ様》と出会う前のわたし、デブでバカで根暗で、どうしようもなかったですもん」
78 【オオヌシ様】(4完) sage 2010/04/16(金) 13:30:51 ID:WsbeGLKu
『確かに出会うた頃、ぬしは土左衛門のようであったな』
「土左衛門って水死体? 《オオヌシ様》それ言いすぎでしょ」
夕子はくすくす笑う。
「でも毎晩エッチしてるおかげで、すっかり体重は落ちたし、いくら食べても太らなくなったし」
『ぬしは怠惰に過ぎるのだ。受験生の頃からして、勉強を始めたと思ったらすぐに飽きて菓子など貪りおる』
「《オオヌシ様》だって、そんなわたしを犯しまくったじゃない? 遊んでる暇があるなら犯すぞって」
笑う夕子に、《オオヌシ様》は『む……』と低く呻き、
『ぬしは、よく笑うようになったの。初めの頃は、口を開くことも大儀そうにしておったのに』
「いまは毎日、楽しいですもん。大学の友達ともうまくやれてるし。あのね、やっぱり女は見た目ですよ」
『ふむ……?』
「周りの態度が違いますもん。友達もそうだし、街で買い物するときなんかも。デブだった頃と、いまとは」
『それは、ぬし自身が変わったからではないか。笑う門には福来たると昔から申してな……』
《オオヌシ様》は答えながら、夕子の女陰から再びタコ足を伸ばし、ちゅるりと陰核を撫でた。
「ひゃっ!? 《オオヌシ様》っ!?」
『ぬしが可愛らしいことを申すでな、再び犯してやりたくなった』
ちゅぷちゅぷと吸盤で陰核を吸われ、夕子は身悶える。
「ひゃぅっ!? ダメっ……次の講義に間に合わなくなっちゃうっ!!」
『友人にメールで代返を頼めばよかろう。いまのぬしなら、それくらい頼める相手は、いくらでもおろう?』
「それはそうだけど……はぁぁぁんっ!?」
『ほれ、早よう風呂場を出て友人にメールいたせ。ぬしが正気を保っておられるうちにな』
「ひゃぁんっ!? クリは弱いのぉっ、ダメだってばぁ、言うこと聞きますから、赦してぇぇぇ……!!」
夕子は腰が抜けそうになりながら、壁に手をついて辛うじて身体を支え、ふらふらと風呂場を出る。
生命を助けられて、大学にも合格できて。
《オオヌシ様》には感謝してるけど、代償も充分、払ってるよなあ。
よがり乱れる寸前の頭の片隅で、夕子は思うのであった。 【完】
赤井夕子(あかいゆうこ)、二十歳。この春から大学一年生。
眼がくりくりとしたタヌキ顔が子供っぽく見えるおかげで、年を言わなきゃ誰も二浪と思わない。
夕子という名前は『赤い夕日が校舎を云々』とかいう懐メロから祖父がつけたらしいけど。
幼い頃からのあだ名は「赤いタコ」、略して「赤タコ」または、そのまま「タコ」。
そうだよね、そうなっちゃうよね。
そして、その名前のせいではないだろうけど――
「……ひゃうんっ!? あひゃぁぁぁぁぁっ……!?」
人の腕ほどの太さもあるタコの足がぬるぬると、夕子の両乳房を舐めるように撫で回す。
ご丁寧にもちゅぱちゅぱと、吸盤で乳首を吸いながら。
別の足は夕子に覚悟を促すように、つんつんと尻穴を突っついてくる。
「ひゃあっ!? おしりらめっ! おしりらめぇぇぇぇぇ……!!」
悲鳴を上げる夕子の頭の中に声が響く――いまや彼女と「同化」した《オオヌシ様》の声が。
『何がダメなものか。我らは五感を共有しておるのだ。ほれ、欲しくてたまらないのであろう』
ぬぷり……ぬぷぬぷと、尻穴のすぼまりを難なく押し拡げ、タコの足は夕子の腸内に呑み込まれていった。
「あへぁっ!? らめっ……んひぃぃぃぃぃっ♪」
夕子は随喜に泣き咽びながら、囚われの肢体をわななかせる。
彼女は四本の長大なタコの足に手足を絡めとられて、宙に吊り上げられていた――
そのタコの足は乳房や尻穴を蹂躙するものと同様、彼女自身の女陰から生え出ているのだが。
奇妙にもあるいは器用にも、タコの足は女陰から生えた付け根の部分では半分ほどの太さに縮まっていた。
とはいえ人の腕の半分の太さのモノを八本も銜え込んで、夕子の女陰は無惨なほど拡げられている。
そう、タコの足は八本。四本は夕子の手足を縛め、二本は左右の乳房を舐り、一本は尻穴を犯している。
そして残る一本は夕子の唇をなぞり、口腔奉仕を強いようとしていた。
『ほれ……銜えるのだ。五感を共有するということは、我の味わう快楽を、ぬしもまた味わうということ』
「いやぁぁぁ……せめてお醤油とワサビつけてぇぇぇ……♪」
76 【オオヌシ様】(2) sage 2010/04/16(金) 13:17:25 ID:WsbeGLKu
『弄(いろ)うな。ほれ、覚悟いたせ』
「んぁむっ!? んぁぁぁぁぁ……っ♪」
タコの足を口にねじ込まれ、夕子は快感に打ち震えた。
吸盤が舌にこすられる感触が《オオヌシ様》を介し、性の歓びとして伝わってくるのだ。
タコの足を口いっぱいに頬張り、ぎこちないながらも懸命にそれを舐り上げる。
乳房と尻穴を同時に責められ、意識が飛びそうになりながらだ。
「んくぅぅぅぅぅ……♪」
ここは夕子の下宿であるワンルームマンション。
二浪の末に手に入れた大学生活――その四年間を過ごすべき自室で、彼女は肉体を弄ばれているのだった。
もとより、それを覚悟しての下宿暮らしであったのだが。
それを示すように、この部屋にはベッドがない。
《オオヌシ様》と同化した夕子は睡眠を必要とせず、毎晩、夜通し犯されているのである。
さらには、いまのように昼間でも、休講で時間が空けば大学から徒歩七分の自室に帰って犯される。
《オオヌシ様》が夕子を犯したいと望んだときは、夕子の身体も疼いてしまうから拒絶という選択肢はない。
「んくっ♪ んくっ♪ んくぅぅぅーーーっ♪」
眼の前で白い光が弾けたように感じて、夕子は、びくっびくっとその身をのた打たせた。イッたのだ。
ちゅぷり、ぬぷりと、口と尻穴を犯していたタコ足が抜けて、夕子は恍惚と吐息をつく。
「ぷはぁぁぁぁぁ……♪」
夕子の身体がゆっくりと床に下ろされて、手足や乳房を縛めていたタコの足がほどけていった。
夕子は足腰に力が入らず、ぺたんとその場に座り込んでしまう。
タコの足は、するすると彼女の女陰に引っ込んでいく。
夕子はタコ足が収納されていく自らの股間を見下ろして、
「あはっ♪ 四次元オマ○コ♪」
『我のほかは迎え入れさせぬがな。ぬしは一生涯、人間の男を知らずに生きるのだ』
「ふふっ、わかってるって♪ 《オオヌシ様》に拾われてなきゃ、無かった生命だものね♪」
夕子は微笑む。
77 【オオヌシ様】(3) sage 2010/04/16(金) 13:22:03 ID:WsbeGLKu
二度目の大学受験に失敗して、二浪が確定した翌日。
夕子は、海を訪れていた。
初めから死のうと思って来たわけではない。現実逃避したかっただけだ。
それでも、岬の先端の誰もいない展望台から冬晴れの海を眺めているうちに、ふと思いついてしまった。
ここから飛び降りれば、いろいろ楽になれるんじゃないかと。
夕子は後先も考えずその思いつきを実行に移し、すぐに激しく後悔した。
岬から十数メートル下の海面に叩きつけられた衝撃は相当のものだったが意識を失えるほどではなかった。
次の瞬間には鼻と口から大量の冷たい海水を吸い込み、息ができなくなった。
痛い! 苦しい! 死ぬ! 嫌だ! 誰か……助けて!!
そして、《オオヌシ様》に拾われたのだ――
夕子はシャワーを浴びながら、胎内に棲むモノに話しかけた。
「……あの、《オオヌシ様》?」
『何だ?』
「その……よかったです」
頬を朱に染めながら言う夕子に、《オオヌシ様》は呆れたように、
『ふむ……ぬしは時折おかしなことを申す』
「おかしいですか?」
『我らは五感を共有しておる。ぬしが絶頂に至るほど快感を味わったのは我にも伝わっておるのだぞ』
「そういう意味じゃなくて、わたし、《オオヌシ様》に感謝してるというか……」
『ふむ?』
夕子と同化したタコの妖(あやかし)は興味深げに相槌を打つ。
『確かに我は、ぬしの生命を救い、受験に必要な英単語や公式を暗記し、本番で幾つか問題も解いたが』
「その分、勉強時間を削って犯されましたけど、そのことでもなくてですね……」
夕子は愛おしげに眼を細め、《オオヌシ様》を宿した腹を撫でた。
「わたし、《オオヌシ様》のおかげで女の歓びを知ったというか、女に生まれてよかったと初めて思えた」
『それは快楽という意味ばかりではなさそうだな……ふむ』
「もちろんそれだけじゃないです。自分が生まれ変わったのがわかるんですよ」
だって、と、夕子は自嘲ばかりではない笑顔で言葉を繋ぎ、
「《オオヌシ様》と出会う前のわたし、デブでバカで根暗で、どうしようもなかったですもん」
78 【オオヌシ様】(4完) sage 2010/04/16(金) 13:30:51 ID:WsbeGLKu
『確かに出会うた頃、ぬしは土左衛門のようであったな』
「土左衛門って水死体? 《オオヌシ様》それ言いすぎでしょ」
夕子はくすくす笑う。
「でも毎晩エッチしてるおかげで、すっかり体重は落ちたし、いくら食べても太らなくなったし」
『ぬしは怠惰に過ぎるのだ。受験生の頃からして、勉強を始めたと思ったらすぐに飽きて菓子など貪りおる』
「《オオヌシ様》だって、そんなわたしを犯しまくったじゃない? 遊んでる暇があるなら犯すぞって」
笑う夕子に、《オオヌシ様》は『む……』と低く呻き、
『ぬしは、よく笑うようになったの。初めの頃は、口を開くことも大儀そうにしておったのに』
「いまは毎日、楽しいですもん。大学の友達ともうまくやれてるし。あのね、やっぱり女は見た目ですよ」
『ふむ……?』
「周りの態度が違いますもん。友達もそうだし、街で買い物するときなんかも。デブだった頃と、いまとは」
『それは、ぬし自身が変わったからではないか。笑う門には福来たると昔から申してな……』
《オオヌシ様》は答えながら、夕子の女陰から再びタコ足を伸ばし、ちゅるりと陰核を撫でた。
「ひゃっ!? 《オオヌシ様》っ!?」
『ぬしが可愛らしいことを申すでな、再び犯してやりたくなった』
ちゅぷちゅぷと吸盤で陰核を吸われ、夕子は身悶える。
「ひゃぅっ!? ダメっ……次の講義に間に合わなくなっちゃうっ!!」
『友人にメールで代返を頼めばよかろう。いまのぬしなら、それくらい頼める相手は、いくらでもおろう?』
「それはそうだけど……はぁぁぁんっ!?」
『ほれ、早よう風呂場を出て友人にメールいたせ。ぬしが正気を保っておられるうちにな』
「ひゃぁんっ!? クリは弱いのぉっ、ダメだってばぁ、言うこと聞きますから、赦してぇぇぇ……!!」
夕子は腰が抜けそうになりながら、壁に手をついて辛うじて身体を支え、ふらふらと風呂場を出る。
生命を助けられて、大学にも合格できて。
《オオヌシ様》には感謝してるけど、代償も充分、払ってるよなあ。
よがり乱れる寸前の頭の片隅で、夕子は思うのであった。 【完】