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永久の果肉12
178 乙×風 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:17:07 ID:Wai8M9kP
大変お待たせしました。乙×風です。
さあ、今日も頑張って養情晩剤を投下、じゃないや、投与します。
今回はパセットが漲りますよぉ。
同僚のメイド達を犯しては種付けし、犯しては種付けし。
いやシーン自体は少ないです。すんません。尺が取れませんでした。
(アドニス開花、種付け、バトル多め)
NGワードはそんな感じです。
名前有りの女の子(メイド達)をもっと増やして寄生拡大シーンを増量したかったです。
でもそれじゃ無限の果肉の二の轍を踏むんで、あえてばっさりと削除しました。
あれ? 寄生スレに投下する意味ががが
そんな訳ですが。それでも読みたい、という方のみお進み下さい。
以下本編です。20レスほど消費します。
179 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:18:46 ID:Wai8M9kP
第十二話 愛憎劇(前編)
『っ…クロトさんが…』
腹のアドニスを通して主の狼狽した声を聞いた。
丁度パセットが屋敷の門をくぐったところだった。
(クロト様が、どうかしたんですか?)
クロトとは余り面識も無いパセットだったが、リオからアドニスを授かった者同士だ。
それは姉妹と言えない事も無いだろう。
アドニスの繋がりはリオとのそれに比べれば細いが、微かにクロトを感じる事も出来た。
だが今はそれが無い。
『リンクが、切れた…もっとちゃんと意識を繋げておけば良かった…
そうすれば、何か手助けが出来たかもしれないのに…』
心優しい淫魔は仲魔が消えてしまった事を悲しんでいるようだった。
アドニスを通して、彼女の心が僅かに流れ込んでくる。
(何か、何でもいいから励ましてあげないと)
『…ありがとうパセットちゃん。でも、大丈夫。その気持ちだけでも頑張れるから。
クロトさんは私の考えどおり、リビディスタの目を惹きつけてくれたんだと思う。
じゃないと防御の得意なあの人が、簡単にやられる筈が無い。
パセットちゃんは予定通り屋敷に潜入して種を蒔いて。私もすぐに向かうから』
(はい。リオ様)
『私、クロトさんの働きを無駄にしないから。絶対復讐を遂げてみせる。
でも、パセットちゃん? 危なくなったら、すぐに逃げてね?
クロトさんが消えて、パセットちゃんまで消えたら、私、今度こそ…』
それからは言葉にならなかった。
が、主が自分をそれほど大切にしてくれているのは言葉が無くとも理解出来た。
『これは命令だからね、パセットちゃん』
(分かりました)
繋がりを通しての命令は決して逆らう事は出来ない。
もしそんな時が来れば、主を見捨てて逃げる可能性もあるのだ。
そしてそんな事が起きないようにと、パセットは祈った。
「あ!? 貴女! 今までどこに行っていたの!?」
突如横合いから掛けられた声に振り向く。
声の主は女性だ。歳は19。やや細身の体躯にメイド服をそつなく着こなしている。
三つ編みの黒髪と丸い眼鏡が特徴的だ。
彼女の名はメナンティ。
面倒見が良い人柄ではあるが、生真面目で融通が利かない。
パセットの姉貴分とも言える女だった。
今も腰に手を当てながらパセットを正面から見据えている。
「勝手に屋敷から居なくなっちゃうし! 街は大変な事になってるし!
リオ様は行方不明だって噂だし! いつの間にかマリオン様も帰ってきてたって話しだし!
もう一杯一杯なのよ! 余計な心配を掛けさせないで頂戴! 分かった!?
分かったら返事!!」
「…はい」
「…何よ。えらく素直じゃない…? 気持ち悪いわねぇ。
ひょっとして何か変な物でも食べたんじゃない?」
メナンティが訝しげな視線を送ってきた。
それもそうだろう。こちらは一度は精神を壊され、人格が変わってしまったのだ。
元気の塊のような過去の自分と比べれば、今の自分は別人と言っても差し支えない。
もっとも、腹にアドニスの種子を植え付けられれば誰だって大なり小なり変わると思うが。
「食べるのは、今からです」
ふ、と思わず口元が緩む。
腹の中のアドニスが目の前のメスを前に興奮している。
下着の奥から、濃厚な催淫ガスを噴出し、辺りに甘酸っぱい香りを漂わせた。
「…食べるって…何を…?」
聞き返すメナンティの体が僅かに脱力した。
「…え…? あれ? 何この、匂い…ふらふらする…」
立ち眩みを起こしたように眼鏡の侍女の体が傾く。
それを素早く脇から支えると、耳元で囁いた。
180 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:20:28 ID:Wai8M9kP
「お機嫌が優れませんか? ならお部屋までお連れしますよ?
――そこなら、誰も邪魔は入りませんから」
メナンティの肩を背負って、歩き出す。
主から受け取った魔力のお陰か、女一人くらいなら楽に支えられる。
「邪魔、って…何の話を、しているのよ?」
「嫌ですねぇ。さっき、何を食べるか、ってお聞きになっていたじゃないですか」
くすくすと笑う。
腹のアドニスが疼いてしょうがない。
種付けの快楽がどれほどのものか、早く味わってみたい。
その気持ちが、腹の魔物から溢れてくるもので、自分の意思ではないと分かっている。
だが元より主に捧げたこの体、この魂。
穢れるというならどこまでも穢れてみせよう。
主の為に。
「パセットが食べるのはメナンティさんですよ」
***
パセットがメナンティを拉致しようとしているその頃。
ドルキは屋敷の庭園に整列する戦士達を眺めていた。
彼らはこのリビディスタで厳しい訓練に耐え、力をつけてきたエリート達である。
剣を、槍を、弓を、或いは魔術を。
それぞれに秀でた者達が集まり、チームを組み、魔物どもを殲滅する。
計百名余の戦士達。
一挙一動乱さずに整列する彼らの精悍な立ち姿にドルキは感銘すら覚えた。
これが愛する者と共にこの三十年で作り上げてきた集大成だ。
これさえあれば、魔物の数百や数千など、恐れるに足らず。
「これは、訓練ではありません」
最強の私兵団に、厳かに語りかける。
「こうしている間にも魔物達が街へ侵入し、何の罪の無い民が犠牲となっています。
一足先にグリーズ様が殲滅にあたっていますが、いくら英雄と言えど限度があります」
ドルキは静かに、だが徐々に戦士達の闘志に火を点けていく。
演説紛いの行為にも熱が入り、声も大きくなる。
実際、ドルキは僅かに悦に浸っていた。
愛する人と育て上げてきた最強の戦士達。その真価が今問われようとしているのだ。
興奮しない筈が無い。
だから、こっそりと庭の反対側から侵入した淫魔の存在にも最後まで気付かなかった。
普段の彼女ならそんな失態を犯す事は無かっただろう。
だがリオが消え、グリーズが戦っている。
そしてリビディスタの総力を上げての戦いが始まろうとする時。
その瞬間に、ドルキに僅かな油断が生まれていたのだ。
「さあ! 今こそ貴方達の力を試す時です!
厳しい訓練を耐え抜き、磨き上げた技術を! そして力を!
あの醜い化け物共に見せてやりましょう!
そしてそれが終わった時、貴方達は英雄となるのです!」
おお、歓声が上がる。
戦いの前、士気の向上は必要不可欠だ。
それは一対一の決闘でも組織戦でも変わらない。
ドルキは出陣していく戦士達に激励を与えていく。
呑気なものだった。
この間にも、屋敷の中では淫魔の策略は進んでいるというのに。
***
181 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:21:51 ID:Wai8M9kP
屋敷の中、赤い絨毯の引かれた通路を、二人の侍女が歩いていた。
栗色のツインテールをした十代半ばの少女。
それから三つ編みを下げた眼鏡の女性だ。
「ここですよね」
ツインテールの少女、パセットは肩を貸しているメナンティに問い掛ける。
目の前はメナンティの自室だ。
パセットは荒い息を吐くだけで返事をしないメナンティに微笑みかける。
そして本人の了承も無しに部屋へと踏み込んだ。
気真面目な彼女の性分を表すように、部屋の中には必要最低限の家具以外は何も無い。
パセットは殺風景な部屋を我が物顔で闊歩し、ベッドへ一直線に向かう。
酷く、子宮が疼いていた。
「着きましたよ」
ベッドに着くとやや乱暴にメナンティの体を横たわらせる。
きゃ、と彼女は短い悲鳴を上げると潤んだ瞳でこちらを見上げてきた。
「そんな目をしなくても、ちゃんとしてあげます」
「な、何を…っ」
「惚けないで下さい。アソコ、疼いてしょうがないんですよね?」
こちらの指摘に彼女は泣きそうな顔をした。
眼鏡の向こうの黒い瞳には、羞恥と、それ以上の欲情が垣間見えた。
――ずぐん。
「…っあっ…!?」
(すご、いっ、アソコっ、じくじくしてるっ)
発情しているメスを嗅ぎつけて、アドニスが活動を開始したのだ。
子宮に根付いた種子が芽を伸ばし、生殖器として胎外へと伸び出て行く。
(ひゃっ、お腹の中、気持ちいいっ、奥から、出てくるっ)
「ぱ、パセット?」
「め、メナンティ、さんっ、パセットも、同じなんですっ。
今、とっても、興奮してるんですっ。み、見て下さいっ」
スカートをたくし上げる。
リオの魔力によって編まれたメイド服は外見だけを取り繕うものだ。
よってパセットは下着を着けていない。
窓の外から降り注ぐ日の光が、スカートの下、未成熟な割れ目を照らし出す。
だがそこは十代半ばの少女のものとは思えないほど濡れぼそっている。
まるで場慣れした娼婦の女性器のようなグロテスクさと淫靡さを醸し出していたのだ。
(あ、メナンティさんに、見られてるっ、パセットのおマンコ、視線が刺さってるっ)
知り合いに、と言うより主人以外の人間に最も恥ずかしい場所を見られ、頭が茹で上がる。
直後に腹から衝撃が来た。
「ひゃ、あぁっ…! 出て、出てくるぅっ!」
アドニスの芽が、子宮口を押し広げ、膣壁を擦りながら下がってくる。
子宮の内側から敏感な肉壁を拡張される感覚に、脳髄が痺れ、膝が笑う。
「ひゃ、ぁんっ! これ、気持ちいいっ、お花っ、オマタから出てくるの気持ちいいっ!
あ、あっ! いいっ! いっちゃうっ! パセット、いっちゃうよぉぉっ!!」
ずり、ずりりりりぃっ!
「ひゃううううんっっ!!?」
子宮から陰唇に掛けて痺れるような官能に満たされた。
あまりの快楽にあっけなくアクメを迎え、スカートを持ち上げる手がぷるぷると震える。
濃厚なアドニスの催淫香が鼻をついた。
「ひ、ひぃっ…!?」
怯えるメナンティを焦点を失った瞳でぼんやりと見詰める。
彼女の視線を目で追えば、自分の股で『ぐぱぁ』と花開くアドニスの姿があった。
(はぁ…♪ これでパセットも、リオ様と同じ♪)
「そ、それっ、何、何なのっ?」
「あ、はっ…んっ…! はぁっ…、はぁ…♪
こ、これはぁっ…、女の子を、とってもぉ、気持ちよくしてくれる魔物さんですぅ…。
そんなに怯えなくてもぉ、……んっ…♪ はぁっ…♪ はぁ……大丈夫、ですよぉ?
痛い事も、怖い事も、なーんにも、ありませんから♪」
こちらもベッドに上がり、怯えるメナンティを押し倒した。
催淫香のせいで抵抗は少ない。
182 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:23:09 ID:Wai8M9kP
仰向けになったメイドのスカートを捲り上げると、色っぽい黒の下着が現れる。
「へー。メナンティさん、エッチなパンツ穿いてるんですね」
「あ、貴女には関係無いっ」
「そう言わないで下さい」
黒い生地の真ん中には、くっきりと充血した陰唇の形が浮き上がっている。
リオ以外、同性の性器なんてじっくり見る事は無かったので何だか新鮮な気分だった。
「べちょべちょだぁ♪」
「きゃぁっ!?」
黒い下着に浮き上がったヴァギナを中心に徐々に愛液の染みが拡がっていた。
それを押し込んでみると、ずぶずぶと指が沈み込み、じゅくぅ、と音を立てる。
メナンティは快楽に戦慄いて、目を白黒させていた。
「嘘、どうしてこんな、敏感にっ」
「もっと、気持ちよくなりますよ」
パセットもそうでした、と付け加えてから彼女の体液をぺろりと舐める。
酸味の効いた、愛液の味に頭がクラクラする。
ぎゅるり、と腹の中で何かが蠢いた。
「あっ!? ん、ひゃぁ、ぁっ…んっ! ぁあっ…!」
花開いたアドニスの奥から、今度は生殖器がせり上がって来た。
ずるずると敏感な茎の中を、敏感な触手が押し通り、甘美すぎる快楽が弾ける。
ずるるるぅっ!
「ひゃぁぅぅんっっ…♪」
「ひっ」
花冠の中心から、雌しべに相当する生殖器が生え出した。
(は、花の中、とっても気持ちいいっ、パセット、またイっちゃったぁ♪)
花の中もこの生殖器もパセットの神経と完全に繋がっている。
敏感な第二の膣とも言うべき器官を犯され、また、犯す感覚に腰砕けになっていた。
だがそれだけではアドニスの本能は満足しない。
「はぁ、はぁっ…♪ メナンティさんっ♪」
「あ、嫌っ…! やめ、なさいっ」
「いや、嫌ですっ、もう、止められませんっ♪」
つっかえ棒のように伸ばしてくる手を払いのけ、下着を下へとずらす。
きゃ、と漏れたメナンティの悲鳴は羞恥によるものか恐怖によるものか。或いは――
(メナンティさんのアソコ、エロイ…よぉ♪)
充血し、解れ、ひくひくと脈打つ肉のアケビ。
粘液に濡れたそこに見入ってしまう。
が、それも一瞬だった。
すぐに腹の底から目の前のメスを犯してやりたいという衝動に駆られてしまう。
「はぁっ、はあっ! メナンティさんっ、犯しますっ! 種付け、しますっ」
雌しべ触手を解れたヴァギナにあてがい、ぐ、と腹に力を込める。
ず、ずりゅりゅりゅっ…!
「あっ!? ああぁぁぁぁぁっ!!!」
「ひゃ、ひゃわぁんっ♪」
大した抵抗も無く、生殖器がメナンティの中へと挿入される。
どうやら彼女は処女では無かったらしい。
人柄の割にはなかなかどうして、侮れなかった。
(これが、女の子の中っ)
発情した肉の泥濘が、全方位から敏感な触手を締め上げてくる。
具合の良さ、という点ならリオやクロトの花の中には劣るだろう。
だが、雌しべ触手自体がフタナリペニスよりも敏感だった事。
それに、本能に従い女を犯しているという状況が、パセットを過剰なまで興奮させていた。
「いいっ、いいよぉっ♪」
ずっちゅっ、ずっちゅっ、ずっちゅっ。
「んああっ!? これっ、すごいぃっ!」
快楽に流されるままピストンを始めると、途端にメナンティがあられもなく喘ぎ出した。
処女であった自分ですらはしたなく喘いだのだ。
破瓜の痛みをとうに克服した女性に、アドニスの責めは只甘い。
堅物だと思われたメナンティの表情が、見る見るうちに蕩けていく。
「メナンティ、さんっ、はっ、ぁっ! エッチな、顔してますっ」
183 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:24:23 ID:Wai8M9kP
「だってぇ、は、ぁあんっ!? あっ、ぁあっ! そ、そこぉっ!」
「ひゃうん♪」
触手の疣がGスポットを削ったらしい。
膣穴が収斂し、メナンティの喉から一オクターブ高い声が漏れた。
「はっ! んっ! メナンティさん、パセットの触手、きゅうきゅう締め付けてますっ、
触手、そんなに気持ちいいんですかっ?」
ごつん、と子宮口を突き上げる。
それでけで目前の女は甘い声を上げて白状した。
「いいっ、触手っ、いいのっ! お願いっ、もっとしてぇっ」
「あはっ。メナンティさん溜まって、たんですねっ。
はっ! はっ…! んっ! こ、こんなにっ、乱れてっ!
は、あぅっ…!? すごい、締め付けっ…!
メナンティさんっ、真面目だと思ってたのにっ、こんなにスケベだったなんてっ」
指摘すると年上の侍女はいやいやと首を振った。
「…だって、私っ、真面目だからっ、男なんて出来ないしっ…!」
それだけで何を言わんとしているか理解出来た。
成長期の女が彼氏も作れず、性的欲求を持て余す――良くある事だ。
パセットにはそういう感情は理解出来なかったが。
ここに来る前、故郷の姉がそういう悩みを抱えていた事を今でも覚えている。
「んっ! はっ! 大丈夫ですよっ? もう、寂しくはありませんっ。
パセットを、この花を受け入れてっ…! そうすればっ…幸せになれるからっ」
ぱつぱつぱつっ…!
「あっ!? あぁっ! ほんと、ほんとにっ!?」
小刻みなピストンでメナンティの正常な思考を奪う。
生真面目な女程、一度固い鎧が剥がれてしまえばもろいものだ。
恥骨同士がぶつかり、結合部で粘液が潰れる音が響く。
触手を突き入れる度にメナンティの体が弾み、ベッドを軋ませる。
あんあんと甘い喘ぎを上げながらだらしなく涎を垂らす女の眼鏡が熱気に曇っていた。
その曇りを舌を這わせて取り除くと、レンズ越しの瞳に優しく微笑みかける。
「うんっ。そうして皆で、リオ様の為に働くのっ…!
皆繋がってるからっ…寂しくないからっ」
がつんっ。大きく子宮口を突き上げる。
「あぁんっ!?」
「ねっ? どうっ? 気持ちいいよねっ!? ずっとこうしていられるよっ!?
いいでしょっ!? だから、パセットの仲間にしてあげるっ…!
メナンティさんにも、種子を、植え付けてあげるっ」
「い、いやぁ…っ、そんなの…いらない…っ」
「嘘ばっかりっ、さっきからメナンティさんのアソコっ…!
パセットの触手を咥えて全然離さないものっ…!
ほらっ! ほらぁっ…! いいんですよねっ!?
触手チンポにメロメロになって、これ無しじゃもう生きていけないんですよねっ」
じゅぽっ、じゅぽっ、じゅぽっ!
「ぁぁんっ! あっ! そうっ! そうなのぉっ! 触手っ、気持ちいいのぉっ!」
「あはっ! じゃぁもっと気持ち良くしてあげますっ!
だからおねだりしてくださいっ! 触手チンポで種付けして下さいっ、って!」
「は、はいっ! …しょ、触手、…んぽで…っ――
触手チンポで種付けして下さいっ!」
(あぁ、メナンティさん、エロイよぉ…パセット、酷い事言わせてるう♪)
眉をハの字に寄せて、メナンティは媚びた表情を浮かべていた。
腹の中のアドニスが、眼前のメスが種付けの準備を終えた事を感知する。
どくどくと、子宮の中から精液が迸り、茎の中を通る。
「ひゃわっ!? あっ! くるっ! メナンティさんにっ!
あっ、あっ、ぁうんっ! 精液どぴゅどぴゅしちゃうっ!
アドニスの種、植え付けちゃうっ!」
「く、下さいっ、私に種子をっ、花の種子を下さいっ!
あぁぁっ!? ああん! ああぁっ! ああぁっ!
私もっ、いきますっ! あぁんっ! ついてっ、もっとついてぇ!
無茶苦茶に犯して種付けしてぇぇぇっ!!」
184 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:26:02 ID:Wai8M9kP
眼鏡の向こうの黒い瞳は、快楽でどんよりと曇っていた。
理知的な表情は消えうせ、雌の本能が剥き出しになっている。
正気を失ったメナンティは、今やただの獣だった。
「ひゃうんっ、わうんっ! もうだめっ! でちゃうでちゃうっ!
せーえきでちゃうよぉあぁぁっ! いく、いっくっ!
触手チンポでしゃせいしますっ! あぁぁっ! ひゃっ! あううんっ!
あぁぁっ! ぁあぁっ! あぁぁぁっひゃううううぅぅぅぅんっっっ!!!」
びゅるっ!! どぴゅっ、どぴゅどぴゅっ!!
「わぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!!!!?」
「ああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあっっっ!!!?」
射精の快感に頭が真っ白になる。
(すごいぃっ!!? これっ、だめぇぇぇっ!!)
敏感な花の中を柔らかい種子と粘性の高い体液が迸る。
放尿するのとは比べ物にならない開放感と快楽だ。
(フタナリチンポより、もっときもちいいぃっ!!)
だと言うのに絶頂を迎えたメナンティの膣がきゅうきゅうと締め付ける。
それが肉壁に雑巾絞りされるような感触が更なる射精に繋がった。
びゅーびゅーと底を知らないように白濁液を注ぎ込む。
「あひぃっ♪ んわぁうんんんんっ♪」
パセットは犬らしく舌を垂らし、くいくいと腰を使いながら射精の快感に耽る。
メナンティもだらしなく顔を弛緩させていた。
二人してアヘ顔を晒しながら、下になったメナンティの顔にだらだらと涎を零していく。
辺りにアドニスの催淫香と、女の発情臭が一層濃く、立ち込めた。
びゅしゅっ。
結合部から何かが噴出し、花弁の粘膜を叩く。
メナンティが潮を吹いたのだった。
その直後、快楽でぶっとんだ頭が部屋の扉が開く音をぼんやりと知覚した。
背中越しに、入り口の方へと視線を向ける。
「――あ、やってるやってる♪」
(……ぁ…リオ…様…だぁ…)
笑顔で入室してきたゴスロリ姿のリオを見つけると、それだけで嬉しくなってしまう。
主人は人の姿だったが情事の余韻が残るベッドに近付くと、そこで徐に淫魔へと変身する。
「種付け終わった? ――あ、いいよ。口に出さなくて。疲れてるでしょ?
心を読むから、思考するだけでいいよ♪」
主の心遣いに胸が幸せで一杯になる。
(種付けは、無事、終了しましたぁ…)
「そっか♪ ね? どうだった? 気持ちよかったでしょ♪」
(腰が抜けましたぁ…♪)
「うんうん♪ 気に入ってもらって良かった♪ ――さて、それじゃぁ、と。
パセットちゃん? 触手チンポ抜いてくれる?」
「…? はい」
言われた通り触手を引き抜く。
だが、アクメを迎えた肉の壷は卑猥な形状の雌しべを必死に咥えて離さない。
後ろ髪を引かれるような思いで腰を引くとずるり、と触手が引っこ抜けた。
甘い愉悦が走り、びゅるり、と一度射精。
ひゃうん♪ と甘い声を上げてしまう。
「パセットちゃん、ワンちゃんみたい♪ 可愛いにゃぁ♪」
ご主人様がベッドに上がり、こちらに身を寄せてきた。
彼女はすぐ隣に腰を落ち着けすりすりと頬擦りをしてくる。
(ひゃうん♪ 幸せですぅ♪)
「――うにゃうにゃ。いけない。いけない。甘えてるとあっと言う間に時間が経っちゃう」
もっと甘えてくれてもいいのだが、主人は首をぶるぶると振って気を取り直した。
主人はメナンティの下腹部――子宮の上に手をかざす。
その小さな掌から魔術陣が現れた。
ばしゅうぅ。
「んひゃあぁぁぁぁぁぁっっ!?」
かと思うと、そこから黒い霧が噴出し、メナンティの体へと吸い込まれる。
主人が何をしているのか、パセットには何となく理解した。
185 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:27:21 ID:Wai8M9kP
あの黒い霧は淫魔の魔力だ。
先程居住区で、この身に男性の象徴を無理矢理生えさせられた時と同じ。
恐らくメナンティに自分の魔力を注いでいるのだろう。
「当ったりー♪ こうするとね? お腹のアドニスが早く成長すると思うの♪
今は一人でも多く、アネモネになって欲しいからね♪」
「あの、それじゃパセットは、どうしましょう?」
「うにゃ? する事は変わらないよ? 私がメイドさん達を連れてくるから。
パセットちゃんはそのメイドさん達をどんどん犯っちゃって種付けしてね♪」
「…分かりました」
主人の頼みだ断る理由も無かった。
「はい♪ ――んにゃ、こっちはこれくらいかな?」
主人が魔力注入を終える。
当のメナンティはと言うと、子宮に対し淫魔の凶悪な魔力注入を受けて息も絶え絶えだ。
どくん。
「あっはあぁぁぁぁっっ」
突如メナンティが目を向いて悲鳴を上げた。
捲り上げられたスカートの下。
アドニスを植え付けられた子宮が不気味に脈打っている。
(あ、ほんとに、成長してるんだぁ)
二人が僅かに息を荒くしながら見守る中、メナンティの中のアドニスが急速に育っていく。
ずるるるるっっ!
「んああぁぁぁぁぁぁぁっっ!?」
そして数十秒と待たない内にメナンティの膣から肉の花が咲いた。
ぐぱあ、と四枚の花弁を広げ、アドニスの花の匂いを撒き散らす。
何と言うか。自分の時はひたすら気持ち良くてこんな事考える暇も無かったのだが。
(お花が咲く瞬間、エロ過ぎ…)
ドキドキが止まらないではないか。
「よし。これでオーケーにゃぁ♪」
顔を赤くさせた主人が身軽な動作でベッドを降りる。
残りのメイド達を攫ってくるのだろう。
しかしその間自分は何をすればいいのだろうか。
「うにゃ? その人と遊んでくれててもいいよ♪
パセットちゃん、まだまだエッチしたいでしょ?」
図星を突かれ、赤面しながら素直に頷いた。
主人は小悪魔的な笑みを浮かべると「ごゆっくりにゃぁ♪」と言い残して部屋を出た。
「……」
そうなると自然と、パセットの目はメナンティへと吸い寄せられる。
だらしなく広げられた股にはアドニスの花が張り付き、こんこんと粘液を垂れ流している。
部屋に漂う催淫臭が濃くなっていた。
収まっていた欲情の炎が再び灯る。
眼下には花を生やした衝撃で痴呆のように涎を垂らすメナンティのアヘ顔がある。
その顔がとても愛しく思え――その唇に唇を合わせた。
「さあ、もっと気持ちいい事、教えてあげますね」
湧き上がる情動のまま、メナンティの花の中に雌しべ触手を挿入した。
***
討伐隊全てを送り出すのに一刻も掛からなかった。
彼らを見送ったドルキは、傍らの門下生達に、持ち場に着くように命じる。
十人にも満たない彼等は屋敷を防衛する為に残した戦力だ。
(少し時間は掛かりましたが、これで大丈夫でしょう)
後は討伐隊とグリーズが魔物達を殲滅してくれるだろう。
大なり小なり被害は出るだろうが、負けるような事は無い筈だ。
ドルキは自室に戻り、一息つこうと思い立った。
先程は久しぶりに大声を上げたので喉が渇いていたのだ。
適当な侍女を捕まえて茶でも淹れさせよう。
そう、思ってからふと気付いた。
(…静か過ぎますね)
186 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:28:47 ID:Wai8M9kP
屋敷の中には現在ドルキと、数名の門下生と、侍女しかいない。
合わせて二十名と居ないのだが、それを差し引いても人の気配が少なすぎる。
嫌な予感がした。
ドルキは探索魔術を発動する。
自身を中心に魔力を放射し、半径1キロ以上に及び、その中の人間と魔物を識別する。
「――これはっ」
屋敷の中に、魔物の反応が二つ存在した。
内一つはかなり強大な力を持っている。
もう片割れは大した事はないのだが、問題があった。
二匹の魔物と、数名の人間が同じ部屋に居るのだ。
ここは確か、侍女のメナンティの寝室だった筈だ。
(なんたる失態でしょうっ)
何が茶でも淹れさせようか、だ。弛み過ぎだ。
興奮の余り、周りを見ていなかった。
魔物が屋敷に入り込む隙なんて、いくらでもあったのだ。
(こんな事なら屋敷にも結界を張っておくべきでした)
魔術士は元来、自分の領地には何かしらの防御を用意するものだ。
だが、ここにはそれが無いのだ。
城壁の結界を過大評価していた為である。
だがそれも後の祭り。
兎も角、屋敷に侵入した魔物の排除を行う。
屋敷内を巡回中の門下生と合流してから向かおうかと考えたが、自分一人で十分だろう。
潜入した魔物はそこそこの力を持っているようだが、正直敵ではない。
それに今、恐らく奴らは『食事中』なのだろう。今なら隙だらけの筈だ。
そうと決まれば早速実行に移す。
転移魔術を使用し、件の寝室の目前へと一瞬で移動した。
扉を挿んだ向こう側から禍々しい気配を感じる。
ドルキはそれに気圧される事無く、扉を開け放った。
「あぁぁっっ!? もうダメェっ! それ以上、注がないでぇ!」
「あはっ…! あはははっ! 触手チンポぉ…、気持ちいいよぉっ」
「あっ! あっ! もっとっ、もっと突いて下さいっ!」
(これは…)
部屋の中では人外による饗宴が開かれていた。
悪魔の姿をした少女を筆頭に、屋敷のメイド達が肉体を絡ませ合っている。
メイド達は股から花のようなものを生やし、まだ生えていないメイドを犯しているのだ。
(アドニスっ)
寝室に篭っていた桃色のガスに理性を溶かされる前に防御魔術を展開する。
「あ? 義母様? ふふふ。随分とゆっくりしていらしたようですね?
お陰でここのメイドさん達は大体種付けが終わりました」
悪魔の姿をした少女が、犯していたメイドを解放し、立ち上がる。
「あ、貴女はっ」
股からアドニスの花を咲かせた悪魔。
猫耳と二本の尻尾。それに蝙蝠の翼を持った少女の髪は鮮やかな桃色だった。
「御機嫌よう義母様。リオ=リビディスタは帰って参りました」
はしたないデザインのスカートを摘み、少女は慇懃に頭を下げる。
「貴女に、復讐する為に」
ぎらりと光る猫目は両方とも血の色のように赤い。
「その姿…悪魔へと堕ちましたか。
それにアドニスの花まで宿して……あぁ、成る程。
森の中で野垂れ死になる前にアネモネに拾われたのですね。
ですがそれだけではその姿は説明出来ません」
「ふふふ。私は、というより母様が人外の血を持っていたそうです。
私はアネモネと交わった時に先祖帰りをしたのです」
187 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:30:00 ID:Wai8M9kP
「成る程…貴女も、貴女の親も、泥棒猫だとは思っていましたが。
まさか本当の猫だったとは、思っても見ませんでしたね」
「私も、腹違いの母親に毒殺を画策されるとは夢にも思いませんでした」
「さあ? 何の話でしょうか?」
(流石あの女の娘、と言ったところでしょうか。鋭い勘をしています)
「惚けるつもりですか? まあ、いいです。どっちにしろ私のする事には変わりませんから」
じゃきん、と真紅の爪を伸ばし、束ね、刃とする。
腰を落とし、感情の無い瞳で見据えるその姿は悪魔というよりも獣だ。
聞く耳は、まだ持っているだろうか。
「貴女の望みは何です?」
「言った筈です。復讐ですよ。私を殺そうとした貴女への。
いえ、それだけならまだ許せた。
けれど、貴女はその為に私の唯一の親友まで利用する気だった。
私には、それが許せない」
「偉そうな口をききますね。許せない、ですか。それはこちら台詞です。
貴女はあの人の体を奪った。いえ、体だけではなく心も。
あの人の心も、体も、全て私の物だというのに。
四十年以上、あの人の為に尽くしてきたと言うのに。
それを貴女は、一瞬で奪い去った!」
下位の攻撃魔術を不意打ち気味に放つ。
きぃん、とガラスを弾いたような音。
と同時に浄化作用を持った光が高熱を持ちながら悪魔へと伸びる。
だが、高速で飛来する光の帯を、少女は半歩体をずらしてあっさりとかわす。
魔術の発射音は兎も角、その威力は凄まじい。
光の帯は部屋の壁をバターのように溶かし、大穴を開けると外へと突き抜けた。
「蛙の子は蛙なのですよ。毒婦の娘も毒婦。
だから貴女は死んで当然なのです。
私のグリーズを誘惑し、穢した貴女はその罪を償う為に、死ぬべきなのです」
「……それが義母様の本心、なんですね」
「ええ。そうですとも。それとも優しい言葉を掛けてもらえると期待していたのですか?」
「まさか。あ、そうです。一つ質問してもいいでしょうか?」
「いいですよ。冥土の土産にして差し上げましょう」
「今の魔術、私は弾き返す事も出来ました。
そうなったらこの部屋の中のメイドさん達にも当たっていたかもしれない。
その事を考慮はしなかったのですか?」
何かと思えばそんな事か。
「侍女の一人や二人、死んだ所でいくらでも代わりは居ます。
それがどうかしましたか?」
「……成る程、良く分かりました」
「そうですか。なら心置きなく死んでくださいますね?」
「いえ? 死ぬのは、貴女だ!」
突如飛び掛ってくるリオ。防御結界を前面に集中させる。
菱形の魔力の壁が前面に何枚も重なり合い、積層を成す。
その正面から、悪魔は突っ込んだ!
ぎいいいいいいんんっっ!!!
刃と化した爪と結界がせめぎ合い、甲高い音を立てながら魔力の余波を撒き散らす。
(ほう。中々やりますね?)
魔力を爪に収束させているのだろう。悪魔の攻撃は鋭い。
一枚目の結界に、ひびが入っていた。真紅の爪は結界の中を徐々に押し進んでいるのだ。
時間を掛ければ、この結果は破られてしまうだろう。
だが力押しだけでは戦いに勝てない。
ばりぃん。ガラスが割れるように、一枚目の結界が音を立てて砕け散った。
破壊されたのではない。破損した防御結界を自ら破棄したのだ。
続けざまに破棄した結界の魔力をその場で集約。
それは魔術陣となり、攻撃を繰り出しているリオを捕捉する。
「……っ!?」
「吹き飛びなさい」
新たに発生した魔術陣から爆音が響いた!
188 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:31:33 ID:Wai8M9kP
「んにゃぁっっっ!?」
風の攻撃魔術を正面から食らい、悪魔の体が吹き飛ぶ。
今のは防御結界の魔力残滓をそのまま攻撃魔術に転化した技だ。
防御から攻撃へと速やかに転じるので不意打ちや迎撃に使用出来る。
だが、取り回しが良い分、威力が格段に落ちる。
至近距離から爆風を食らわせたが、ダメージは殆ど無いだろう。
悪魔は盛大に吹っ飛んで行っただけだ。
「こちらは、暫くなら放っておいても大丈夫ですね」
それでも部屋の中は台風の直撃を受けたように滅茶苦茶になっていた。
家具が引っくり返り、侍女達があられもない姿で折り重なって気絶している。
アドニスの成長がやや速い気もするが、まあ、今しばらくは大丈夫だろう。
この戦いが終わってから種子を浄化してやればアネモネになる事はない。
それよりも今は眼前の化け物を退治してやらないと。
ドルキは悠然と歩みを進め、自分で開けた部屋の大穴をくぐる。
その向こうは正門へと繋がる庭だ。
剣神アレスのレリーフが飾られた正門から屋敷の玄関までおよそ五百メートル程。
その間、一定間隔に設けられた植え込みから、春の来訪を遂げる花が咲いている。
玄関口の前には二つ、噴水も設置されている。
これら、屋敷の美しい外観は戦いに傷付いた戦士達の心を少しでも癒そうとした配慮だ。
「いたたた…っ…にゃぁ…っ? びちょびちょにゃぁ…」
吹き飛んだ淫魔は片方の噴水に突っ込んだらしい。
水瓶を掲げた女神像を模した噴水が壊れ、女神の腰から上が無くなっていた。
屋敷の外を警備していた門下生達が異常を感じ取って駆けつけてくる。
「ドルキ様! これは一体っ」
「こいつ、悪魔か!? いつの間に侵入した!?」
「ドルキ様、ここは我らにお任せを!」
「いや待て! この悪魔、どこかで見た気が…」
「下がりなさい! この魔物は私自らが倒して見せましょう!」
そうだ。そうでもしなければ、この溜飲が下がる事はない。
「ふふふ。そうこなくっちゃ♪」
倒れていたリオが反動を付けて起き上がった。
ぶるぶるぶるぶるっ!
四つん這いの格好で体を振り、衣服と髪の水気を飛ばす。
まるで本物の猫のようだった。
「余裕ですね? まあ、いいでしょう。
そうだ、貴女に母親らしい事を一つしてあげましょう。
リビディスタの者なのです。戦い方くらいは教えてあげようではないですか」
ただし、授業料は命で以って払ってもらう。
「さあ、魔術師との戦い方を教えてあげましょう」
正面へ積層の結界を展開しながら、改めて攻撃魔術を発動させる。
先程とは違い、『殲滅』を主眼に置いた攻撃魔術だ。
発動にやや時間が掛かるが、威力はある。
リオとの距離は大分離れているので発動を潰される事も無いだろう。
この時点で悪魔は回避を余儀無くされているのだ。
ドルキを中心に赤の魔術陣が発生した。
赤は攻撃魔術を表す色だ。
その赤い魔術陣から、複数の魔術陣が生み出され、リオに向かい飛来していく。
「? 何これ?」
小型の魔術陣は攻撃をするでもなく、リオの周囲を旋回しているだけだ。
初見では、それが何なのか知る由も無いだろう。
魔術陣内部の文字を読み解けば、それが『反射』を意味するものだと理解出来るだろうが。
リオには魔術文字を解読出来るほどの知識は無かった。
小型の魔術陣自体は攻撃を行う事は無い。これの役割は、
「蜂の巣になりなさい」
「っ!?」
189 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:33:02 ID:Wai8M9kP
悪魔が何かに気付いたように顔を上げた。
だがもう遅い。
地面の大型魔術陣から、連続的に光を放つ!
光の帯となってリオに襲い掛かるそれは、先程部屋に穴を開けたもに比べれば威力は低い。
だが、直撃を受ければ風穴が開くだろう。
その光を、リオの周囲に滞空させた小型魔術陣に向けて解き放つ。
魔術陣は彼女を取り囲むように、合計12箇所に配置していた。
ほぼ全方位とも言えるが、唯一真上にだけは魔術陣が無い。
リオも気付いただろう。これらの魔術陣が、光を反射させるものであると。
しかしそれが判っていても全方位に配置されたそれから逃れる事は出来ない。
唯一真上にだけは反射陣を設置していないが、この一瞬でその事に気付ける事も無い筈だ。
光の帯は高速で反射陣へと飛来した。
光は反射陣に吸収されると、その中で刹那の間停滞し、
次の瞬間、リオが真上へと大きく跳躍した。
(なんですって?)
翼をはためかせて悪魔の体が急上昇する。
その一瞬後に、彼女が居た空間を十二方向から光の帯が撃ち抜いた。
勘の良い娘だ。唯一の逃げ場所である真上方向に運良く逃げ込むとは。
「あー、怖かったぁー♪ もうちょっとで死んじゃうところだった♪」
上空から緊張感の無い声が聞こえる。
リオは翼をはためかせながら滞空していた。
体が上下に軽く揺さぶられる度にスカートの中身が見え、汚らわしく思えてしまう。
逆に駆けつけて来た男供は破廉恥な格好をした悪魔の姿に魅入っているようだった。
気に入らない。事が終われば何かしらのペナルティを課してやろう。
そんな考えが顔に出てしまっていたのか上空の悪魔が、ふふふ、といやらしく笑う。
その笑い方まで、あの女とそっくりだと思った。
「…義母様? 義母様は私の母様の事を――いえ、やっぱり、やーめたっ」
「? 何を言っているのです?」
笑っていたかと思えば急に神妙な顔つきになったり、かと思えば無邪気な表情を浮かべる。
悪魔へと身を堕としたこの娘が何を考えているのか全く分からない。
(分かる必要もありませんが)
ドルキは気を取り直し、次なる一手を打つ。
滞空しているあの悪魔を叩き落してくれよう。
ドルキは両の掌から魔術陣を生み出す。
右手と左手で異なる魔術を同時に起動させる技だ。
右手の青い魔術陣は結界を生成させるもの。
大して左手の赤い魔術陣は下位の風撃魔術だ。
屋敷の中で悪魔を外に吹き飛ばしたものと同じである。
それの威力をやや上昇させ、風力を鉄槌のように対象物へと叩き落す。
「今度は逃がしませんよ」
言葉と同時に結界魔術が発動した。
滞空する悪魔の真下に魔術陣が現れ、その真上へと魔力の壁を形成していく。
この結界、硬度はイマイチだが表面には人間をレア程度に焼く程の電流が流れている。
結界を破壊しようと迂闊に攻撃すれば、かえってダメージを与える仕組みだ。
きいいん――!
円筒状に悪魔を捕らえた結界が高速に回転し、その表面に魔力の雷撃を生み出す。
言わばこれは有刺鉄線で作られた檻だ。
悪魔は閉じ込められた事に気付くと、先程と同じように真上へと逃げようとする。
「逃がさないと言いました!」
だが風の魔術は発動している。
上空に不自然な気流が生まれ、大気が渦巻いている。
結界の内側。そして悪魔の頭上だ。退路は塞がれた。
そこから脱出する為にはダメージを覚悟で、結界を打ち破って外に出るしかない。
でなければ、圧縮された空気の槌に押し潰され、地面に叩き付けられるだけだ。
そうして動きが鈍ったところで本命を叩き込む。
190 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:34:11 ID:Wai8M9kP
「それは面倒だにゃー」
にゃー? にゃー、とは一体何だ。何の冗談だ。
疑問符を浮かべるドルキの上空で、悪魔は爪を展開した。
禍々しい魔力を収束させ、一本のブレードを作り出す。
と同時にそれを結界に突き込んだ!
ばじじじじじっ!!
「ぎにゃあぁぁぁっっ!?」
悪魔が獣の悲鳴を上げた。帯電している結界に直接攻撃したのだ。当然だった。
だがドルキは焦燥感すら覚えていた。
あの化け物は、こちらが攻撃を繰り出す度に最適な行動を取っている。
今回もそうだ。電撃によりダメージは与えられるだろうが、それが致命傷にはならない。
先に結界が破壊される。
「う、にゃあぁぁぁぁっ!! 砕けろぉぉっ!!」
耳障りな帯電音の中、悪魔が咆哮し、赤い刃に力を込めた。
「くっ」
同時に風の槌を開放する。上空から打ち下ろされるそれは魔力充填を終えていない。
直撃しても予定していたダメージより少ない。それでもむざむざ脱出されるよりマシだ。
ごうっ!
風の槌が唸り、悪魔を押し潰そうと襲い掛かる。
だがその直前に結界が音を立てて砕け散った。
悪魔が結界から脱出。その背後を風の槌が通り過ぎる。
ずどん!
星でも降ってきたかのような衝撃。音。
そして一足遅れて地上に突風が吹き荒れた。
事の成り行きを見守っていた門下生達が、強風に煽られ、地面を転がっていく。
魔術を使える者達は防御結界を張り、何とか事無きを得たようだった。
こちらも防御結界を張り、攻撃魔術の余波から身を守る。
(しくじりました…)
結界を保持していればこの衝撃やらなんやらが全て密閉空間で炸裂した訳である。
いくら悪魔と言えど無事では済まない筈だったのだが。
「ふにゃぁ…っ、危なかったにゃぁ…っ」
上空に退避していた悪魔が胸を撫で下ろしている。
「ふふふ。まだ胸がドキドキしてる♪ 義母様っ、殺し合うのって楽しいね♪」
「…化け物が…」
能天気に笑う少女の姿をした悪魔に、神経を逆撫でされてしまう。
だが、頭に血を上らせる訳にはいかない。
二度の攻撃を凌いだ悪魔の器量。素人同然の彼女にそれほどの力があるとは思えない。
何か、からくりがあるのではないのだろうか。例えば――
(読心能力、ですか?)
「あれ? もう気付かれちゃった。流石義母様♪ 魔女の二つ名は伊達じゃないね♪」
地面に降り立ち、悪魔は淫靡に微笑む。
「それで? まだ戦うの? 魔術士なんて思考が読まれれば何も出来ないんじゃないの?」
ざわり、と周囲の人間達がどよめいた。
確かに、技術で戦う戦士とは違い、魔術師は戦術で戦うものだ。
思考が先読みされれば、まともに戦えはしないだろう。
「――成る程、貴女のその髪は悪魔『シュトリ』の証だった訳ですね。
成る程成る程。あの女の勘の良さは化け物の力の一端だった訳ですか。
それにしても、他人の心を覗き見るとは。
下品な能力ですね。あの女に相応しいと言えましょう」
不敵な笑みを浮かべ、悪魔を挑発する。
悪魔はそれが挑発だと分かってはいるだろうが――
「母様を、侮辱するなぁっ!」
精神も幼いただの子供に、感情を御する事など出来はしなかった。
一直線に、こちらへと突っ込んでくる。
地を這うように、前傾姿勢で突貫するその姿は野生の猛獣そのもの。
この瞬間、新たな魔術を発動する。
それは読心能力を持った魔物に対抗する為にドルキが自ら開発した精神防御魔術。
191 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:35:16 ID:Wai8M9kP
青い魔術陣が表れ、ドルキの体を淡い光で包み込むと、それは一瞬で消滅した。
見た目は何も変わらないが、効果はすぐに現れるだろう。
(今度こそ引導を渡してあげましょう)
***
「母様を、侮辱するなぁっ!」
つい頭に血が上ってしまい、無謀な突撃を仕掛けてしまう。
それが罠かも知れないとは思うが、思考を読めるのだから致命的なミスは避けられる筈だ。
『馬鹿な娘です。こうも簡単に挑発に乗ってくれるとは』
うるさい。今すぐその喉笛を掻き切ってやる。
いや、それじゃ気が済まない。
自分を、パセットを。
そしてあろう事か他のメイド達まで平気で切り捨てるようなこの女を、許せはしない。
苦痛を与えながら、嬲り殺してやる。
そして絶望するドルキの眼前で、グリーズを魅了し、寝取ってやるのだ。
それはきっとこの上なく楽しいだろう。
想像しただけで、気分が高揚する。
ドルキは動かない。しかし防御結界は展開した。
『先程はしくじりましたが今度はそうはいきません』
結界がその姿形を徐々に変えていく。
菱形を連ねたようなタイル状の防御壁は強く発光し、ドルキを包み込む。
『思考が読まれるのならば、読まれても対処出来ないような戦術を取ればいいのです。
私は今から上位の魔術を使用します。
誘導性が強く、貫通能力に優れた光の攻撃魔術。
今度は避ける事も防ぐ事も出来ないでしょう。
最善の策は――そうですねぇ。
私が魔術を発動する前にこの結果を破壊し、私を倒す事でしょうね。
まあ、貴女に出来るとは思いませんが』
「そんなの、やってみなければ分からないよ」
相手は結界を張っているとはいえ棒立ちだ。
溜め込んだ魔力を一点に集中させ、攻撃すれば結界だって破壊出来る筈。
ドルキに向かって走りながら、リオは右手の爪に力を込めた。
(今度は、こっちの番っ)
溜まった鬱憤を晴らすべく、右の爪から展開した赤いブレードを振りかぶり、
その脚が、急に止まった。
「うにゃぁっ!?」
がくんと前方につんのめり、体勢を大きく崩す。
まるで脚を引っ掴まれたような感覚を不思議に思い、地面を見た。
(何これっ!?)
足元には何時の間にか青い魔術陣が展開していた。
その中から光の鎖のようなものが生え出し、脚を拘束しているのだ。
バインドと呼ばれる束縛の魔術だ。
主に素早い敵の動きを抑えたり、時間稼ぎに使用される補助魔術である。
(い、いつの間にこんなものを!?)
読心能力は今も発動している。
簡単なトラップだが、それを仕掛けようとする以上、大なり小なり思考をする必要がある。
それを捉えられない筈がなかった。
「簡単に引っ掛かりましたね。所詮は子供、いえ、畜生ですね」
「どういう事っ」
「私程の魔術士ともなれば精神に干渉する能力の対策くらい持っているという事です。
そう。貴女が今読み取っているのはフェイク。
私が魔術で作り出した、擬似的な思考なのです」
「そ、そんな事が…」
192 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:36:32 ID:Wai8M9kP
上位の光の攻撃魔術や、結界を破壊すればいい――云々は全て偽の情報だと言う事か。
「それを知らずに突っ込んで来てくれた貴女はいい的です。
バインドで動けないでしょう? この状態なら結界を使用する必要もありません」
防御結界が消える。
そしてその後に、赤く、大きな魔術陣が形成された。
「まあ、この防御結界も今から発動する攻撃魔術の目眩ましに過ぎないのですが」
赤い魔術陣に光が収束する。
動きを封じられたこの身では、回避は不可能だ。
死の気配が、すぐ近くまで迫っていた。
眼前の光は、この身を焼く業火の炎となるだろう。
(この絶望的な状況から逃れる為にはっ)
「さあ、貴女もこの私の手で地獄に送ってさしあげましょう。『あの女と同様に』」
引っ掛かる物言いに、一瞬思考が止まる。
だが魔術陣の光が一際大きく輝くと、リオは最後の掛けに出た。
「『お義母様っ、私を助けて』!」
光の魔術が解き放たれる。
「う、にゃあぁぁぁぁっっ!!?」
赤い魔術陣から放たれたそれは、一言で表すなら光の奔流だ。
浄化作用をもった眩い光は、熱量も有しており対象物を焼き尽くす。
虫眼鏡で太陽光を収束させるのとはレベルが違う。
直撃を受ければ、生まれたての悪魔など消し炭に出来る。
光の魔術はドルキの得意分野で、この光の砲撃とも言える魔術はドルキの十八番だった。
だが、
「っ、賢しい真似をっ」
声を荒げたのはドルキの方だ。
光の魔術は、軌道を大きく外れている。
この体を直撃する筈だった光の奔流は髪を焦がしただけで、空へと吸い込まれた。
魔術の余波で旋風が巻き起こり、熱波がひび割れた肌を炙る。
土壇場でドルキにチャームを掛けたのだ。
自分に対して魅了の魔術を使用するとは夢にも思っていなかったのだろう。
油断していたドルキはチャームの効果を受け、一瞬だったが手元を狂わせた。
が、それでも無傷では済まなかった。
リオは砲撃の余波に吹き飛ばされ、ドルキから少し離れた地面に転がる。
かと思えば身動きの取れない体に再び拘束魔術が発動した。
「にゃ、にゃぁっ…!?」
青い魔術陣から白い光が伸び、体を雁字搦めにされる。
「さあ、これで本当に万事休すですね」
ドルキはこちらの恐怖心を煽るように、ゆっくりと近付いてきた。
それは絶望の足音だ。死神の近付く気配だ。
だがこの女に復讐を果たすまでは、死んでも死に切れるものではない。
そうだ。さっきこの女は言った。
母を殺したのは自分だと。それがもし本当なら――
リオは憎しみの篭った猫目でドルキを睨みつけた。
「何か言いたい事でもあるようですね」
「…さっき、義母様は言った。
『貴女もこの私の手で地獄に送ってさしあげましょう。あの女と同様に』って。
その言い方じゃ、まるで義母様が…」
自分も含め屋敷の人間はリシュテアの死因が病死だと思っていた。
だが実際は、
『そうです。私が殺しました』
時間が止まる。
衝撃の事実に戦いの最中だという事も忘れ、呆然としてしまう。
(殺した? 病死じゃ、なかったの?)
193 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:37:30 ID:Wai8M9kP
「まるで私が、何ですか? まさか私があの女を殺したとでも?
根拠の無い言い掛かりですね。不愉快です」
ドルキは思考で真実を伝えつつ、言動ではまるで被害者のように取り繕っていた。
だが彼女がうっすらと笑みを浮かべている事に気付くと、胸の内から怒りが溢れ出す。
そんな、こちらの内心を尻目に彼女は思考で真実を語る。
『毒を盛ったのですよ。特別に取り寄せた物です。
遅効性で、本人が無自覚のまま体を蝕んでいき、気が付いた頃には手遅れ――
そういうものです。お陰で誰も気付きませんでしたね。
あの人も、それ以外の人間も、彼女が運悪く病に掛かったとしか思わなかった。
全て、私の計画通りだったのです』
「うああぁぁぁぁぁっっっ!!!」
怒りで視界が真っ赤に染まった。
「貴女が、貴女が母様を殺したああぁぁっっ!!」
「は? 何ですかいきなり。まるで私があの女を殺したような口振りですね。
成る程、さも私が加害者だと周りの人間に思わせる。それが悪魔の手口という訳ですか」
「うるさいっ、うるさいっ! あなたの方がよっぽど悪魔だ!
私の母様を殺して! 私も殺そうとして! パセットちゃんまで巻き込むつもりだった!
許さない! 殺してやる! 絶対に殺してやる!」
『貴女が何を言っても、誰も信じませんよ。
此処は貴女の居るべき所では無いのです』
ドルキの言動と思考はちぐはぐだ。
そのせいで、リオは真実を知って憤っているのに周りの人間にはその理由が伝わらない。
今もリオは孤立無縁だ。誰も味方などしてくれない。
しかし流石に大声を上げる悪魔に、流石の門下生達も戸惑いを隠せないようだ。
それはドルキとリシュテアの関係は皆知っているからである。
周りの人間から見れば、殺人の疑いも無くは無いのだ。
だがリビディスタの創立者の一人であり、メディアの称号を持つ偉大な魔術師。
そしてアドニスの花を宿した悪魔。
観衆は、一体どちらの言葉を信用するだろうか。
「さっきから何ですか。人を殺人鬼呼ばわりして。
目上の者に対する態度ではありませんね。
――貴方達も。このような化け物の言葉に耳を貸してはいけません。
悪魔は人の心に付け入り、堕落させる魔物です。
鬼気迫る表情ですが、あれは演技ですよ。
分かりますか? 貴方達は騙されているのですよ」
「――な、成る程…」
「確かに。悪魔は悪知恵を働かせる魔物だ」
「そうか。ならばリオ様の姿をしているのも、我々を油断させる為かっ? なんと卑劣なっ」
ドルキの言葉で彼女に対する猜疑心は少しづつ消えていくようだった。
伊達に歳を食ってはいないという事か。
そうだ。悪魔は人を騙す。人を誘惑する。
門下生達はそれを知っているからドルキの言葉を鵜呑みにしてしまったのだ。
真の悪魔はドルキの方だと言うのに。
『これで分かりましたか? 貴女は一人なのですよ』
「貴女という人はあぁっっ!!」
怒りに任せて暴れ回る。
だがバインドのせいで芋虫のように地面をのたうつだけ。
『あっはっはっは。無様ですねぇ? いい気味です。
森の中で魔物に食われて居た方がまだ幸せだったのではないですか?』
「うああぁぁぁぁぁっっ!!!」
(悔しいっ! ネーアさんに助けられて、人間を止めてまで復讐を決めたのに!
こんな最低の人間に、いいようにされるなんてっ!)
憎しみの篭った目でドルキを睨み付ける。
194 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:38:27 ID:Wai8M9kP
魔力を乗せ、殺意を乗せ、耐性の無い者ならそれだけで戦意を喪失してしまうだろう。
だが非情な魔術師は不敵に笑うだけだった。
「ふぅ。ここまで来ると見苦しいばかりですね。
もういいでしょう。貴女の『親子ごっこ』にも飽きました。
――死になさい」
動けないこちらに向けて、掌をかざす。
一足で踏み込める距離だ。外しようが無い。
そしてこちらの悪足掻きすら想定し、防御結界を張る。
(私、死ぬの…?)
これは、もう詰みだ。どうしようもない。
(ごめんなさい。パセットちゃん。ごめんなさいクロトさん。
ごめんなさいネーアさん。私、負けちゃったよ…)
せめて、せめてこの人の皮を被った悪魔に、一太刀でも食らわせてやりたかった。
「さようなら。地獄であの女が待っていますよ」
赤い魔術陣から光が解き放たれた。
死ぬ。死ぬのか。いや、だとしても。
最後まで、抵抗し続けてやる。
死が確定した中で、リオはドルキの瞳から目を逸らさなかった。
もしこの世から消えても、化けて出てやる。
それくらいの意気込みで魔女の瞳を睨み付けて、
視界を、何かが遮った。
ドルキとの間に立ち塞がるように。
何者かが突然虚空から現れる。
同時にその誰かは防御結界を展開し、リオを狙った下位の攻撃魔術を弾き飛ばした。
ぎいいいいんっ!!
魔術同士が干渉し合い、摩擦を生み、耳障りな音を立てる。
辺りに眩い光を撒き散らすと、眼前の茜色のマントがはためいた。
マントの中央には『ヘスペリス』と描かれた刺繍。
「あ、貴女はっ」
ドルキが驚きの声を上げた。
周囲の人間達も、突然の乱入者に戸惑いを隠せない様子だ。
「良かった。今度は、間に合った」
乱入者から紡がれた声は美しく、聞き惚れてしまいそうだった。
(この声、どこかで…)
もうずっと聞いていない、だが聞いた事のある、女性の声だった。
ヘスペリスの女が振り向く。
流水のようなブロンドの髪。抜けるような空と同じ色の瞳。
その人物はグリーズの血を継いでいるとすぐに分かった。
「ただいま。リオ」
その女は女神のように美しい顔を僅かにはにかませた。
「姉、様…? どうして…?」
訳が、分からない。
姉は優秀だ。若くしてヘスペリスに入り、将来を約束されている。
そんな姉がどうして屋敷に戻ってきたのだ。
いや、それよりも。
(どうして、私を庇ったの?)
自分なんて姉に比べれば何の取り得も無い存在。
リビディスタの名を借りた、只の人形のようなものだ。
母の違う姉妹は、接点も殆ど持っていない。
そんな姉が、今更どうしてこの身を庇うというのだ。
「ん」
ぎゅ、とマリオンがこの身を抱き締めた。
バインド越しに、人の温もりと、彼女の思考が伝わってくる。
195 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:41:55 ID:Wai8M9kP
『遅れてごめんなさい』
『良い子にしてた?』
『寂しくはなかった?』
『手紙、出せば良かった。ごめん』
『助けられなくてごめん』
『でももう離さない』
『人間じゃなくなっても。リオはリオ』
『だから私が、守る』
(え…うそ…これが、姉様の、本心…?)
何だこれは。自分の事ばっかりじゃないか。
知らなかった。自分の味方は、屋敷の中ではパセットだけかと思っていた。
でも、こんなに身近に自分を思ってくれる人が居た。
『今まで助けられなかった分。
これからはリオの事、ずっと守り続ける。
その為に私は強くなったから』
「ふぇ…っ」
胸の内から何かが込み上げてくる。
殺伐とした愛憎劇の中、差し伸べられた希望の手。
自分の事を思い、大切にしてくれる者の意思が、絶望と憎悪にささくれた心を癒す。
「ふええぇぇぇぇぇんっっ!!」
気が付いたら泣きじゃくっていた。
さっきまでドルキと死闘を繰り広げていた悪魔はもうそこに居ない。
「姉様ぁぁっ!! 姉様ぁぁっっ!」
びーびーと子供のように泣く。
その姿に周りの人間は――ドルキさえもが唖然とした様子だった。
だが誰もが失念していたのだ。
目の前の悪魔の姿をした少女が、元はたった十二歳の子供であるという事に。
そしてそれを理解しているのは、この場でマリオンただ一人だけだった。
束縛されながらも、顔を姉の首元に押付ける。
マリオンはそれに応えるように、髪を梳いてくれた。
「よしよし」
その撫で方は、ネーアに比べれば雑で、不器用だったけれども。
『もう、大丈夫だから。大丈夫だからね』
彼女の思い遣りがあれば、それで十分だった。
「びええぇぇぇぇん!!」
門下生達とドルキが見守る中。
再開を果たした姉妹はずっと抱き締めあっていた。
***
そうしてどれくらいの時間が過ぎただろうか。
「あらあら。まあまあ。マリオン、いつの間にか帰っていたのですね。
少しばかり慌しくしていましたから気が付きませんでした」
痺れを切らしたドルキが口を開いた。
ところがマリオンは肩越しにこちらを一目見ただけで、リオをあやす作業に戻ってしまう。
その姿を見て、ふとドルキは思い出した。
(まさかマリオンは、この娘に感情移入しているのですか?)
元よりマリオンはあの女に好意を抱いていた。
駄目だと言っているのにこちらの目を盗んでは、何度もあの女の元を訪ねたくらいだ。
そしてリオはその女の娘だ。何かしら思う所があるのかもしれない。
しかしもしもそうだったとしたら。面倒な事になる。
(説得するしかありませんね)
196 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:43:34 ID:Wai8M9kP
その娘はもう悪魔だ。貴女の知っているリオではない。
涙も、嗚咽も、全て貴女を騙し、利用する為の演技だ、と。
「マリオン。気持ちは分かります。貴女はその娘を気に掛けているのですね?
ですが騙されてはいけません。その娘は悪魔へと堕ちてしまったのです。
もう貴女の知ってい、」
「黙れクソババア」
「く、クソ…? ――今何と言いましたか?」
実の娘の口から出た下品な言葉に耳を疑ってしまった。
しかもそれが自分に対する中傷なのだからますます信じられない。
マリオンはこちらの問い掛けには答えずが、ゆらり、と立ち上がった。
その顔はグリーズを連想させるポーカーフェイスのままだ。
しかし、誰が見ても彼女が腸が煮えくり返りそうなほど激怒しているのが分かった。
その背後に怒りのオーラまでも幻視しそうなほど。
(……あのマリオンが私に楯突いている?)
あの女に懐いているのは知っていたが、それでもこちらの言う事を大人しく聞いていた。
見えないところで癇癪を起こしたりする事はあったようだが、年頃の女なら普通だろう。
手塩を育ててきた実の母親に歯向かう理由にはならない。
正直、マリオンが何を怒っているのか分からなかった。
だからドルキは混乱した。
そこの憎き女の娘の味方をする理由が分からなかった。
(私よりも、あの女の娘を取るというのですか?
いえ、きっとマリオンは感情的になっているだけです。
冷静になれば、私の方が正しいと分かってくれる筈)
ここは何とか宥めて、彼女に落ち着いて貰わなければ。
でなければそこの淫魔を片付ける事も出来ない。
「マリオン。良くお聞きなさい。その娘は私の命を奪おうとしたのです。
貴女の知っているリオという娘は、そんな蛮行をするような人間でしたか?」
マリオンは返事をする代わりにこちらに向かって一歩踏み出した。
「違うでしょう? あの娘は自己主張の出来ない、大人しい娘でした。
それが、血が繋がっていないとはいえ母親を殺すなど……ありえるのでしょうか?」
聞いているのか聞いていないのか。
マリオンはこちらを怒りの眼差しで見詰めたまま、一歩、また一歩と近付いてくる。
嫌な予感がした。
「マリオン? 聞いているのですか?
――ああ、そうですね。私にも、少しばかり非はあるのかもしれません。
ですが命を奪いに来た魔物を、どうして見逃す事が出来るでしょうか?」
マリオンとの距離が縮まる。
一足で踏み込める所まで近付けば、彼女の怒気がより鮮明に感じられた。
殺意すら篭った視線に射抜かれ、額に汗が滲む。
「そ、そうそうっ。
この娘は私の命を狙うどころか、屋敷のメイド達まで手を出したのですよ?
全員、アドニスの種子を植え付けられたようです。
何の罪も無い娘達まで巻き込むなんて、非情な悪魔のする事です。
人間の仕業とは思え、」
マリオンの怒気が膨れ上がった。
「お前が、言うなあぁぁぁぁっっ!!!」
マリオンの真下に青い魔術陣が展開。
それは光の粒子を噴出し、彼女の右手へと収束していく。
(強化の魔術っ)
まずい。リオとの戦いでこちらは消耗している。
強化された攻撃をまともに喰らえば只では済まない。
197 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:47:11 ID:Wai8M9kP
迎撃か、防御か。どちらかを行わなければ。
(止むを得ませんっ)
即席で光の攻撃魔術を発動。
威力は低いが鎧の覆われてない部分に穴を開けるくらいは出来る。
脚を封じて、距離を取る。
ドルキはマリオンの細い足に狙いを定め、
次の瞬間彼女の体が掻き消えた。
しまった――そう思った時にはもう遅い。
背後に転移したマリオンが、拳を握り締め、渾身の一撃を放つ!
「死、ねえぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!」
(防御っ)
マリオンの腕が届く直前、何とか防御魔術を発動。
ぎいいいいいぃぃぃぃぃんっっ!!
耳障りな音と共に、防御結界とマリオンの腕の間で魔力の光が火花となって撒き散る。
が、マリオンの拳が光のタイルにめり込み、一つ、また一つと光の粒となって消えていく。
不安定な体勢から発動した防御結界では、怒りに我を忘れたマリオンの前では無力。
呆然とするドルキの前で、マリオンの右腕が結界に深く食い込んだ。
ばりぃんっ――防御結界が、攻撃の負荷に耐え切れずに粉砕されて、
「めぎれっ!?」
結界を突き抜けたマリオンの拳が、ドルキの厚化粧の上に食い込んだ。
***
マリオンは気付いていなかった。
リオがかつての優しい少女では無くなっている事に。
ドルキの言葉が、真実であったという事に。
ドルキを怒りのままに殴り飛ばし。
そしてリオを助け出せばそれで全てが上手くいくと思っていた。
「お陰で義母様に止めを刺す事が出来ます」
甘かった。
笑顔で母を殺すと言う妹に愕然とする。
悪魔の残虐性を表し、マリオンにチャームを掛けるとリオはドルキをいたぶり始める。
無邪気な少女の顔をしたまま、腹を蹴り、爪で顔を引き裂く。
狂ったように笑う妹に、マリオンは自分が取り返しのつかない事をしたと気付いた。
「悪い子はどこだああぁぁぁっっ!!!」
しかし。絶望的なこの状況に、一匹のアネモネが乱入した。
彼女の名前はネーア。
いや、ネーアだけではない。
あのグリーズまでもが、ドルキの危機に駆けつけた。
ネーアとグリーズ。
二百年の長寿を誇る最強のアネモネ。
リビディスタの長にして剣神の称号を持つ戦士。
この二人が居れば恐れるものなど無い。
次回、永久の果肉十三話、
愛憎劇―後編―
愛と憎しみに彩られた最悪の親子喧嘩。これにて決着。
198 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:48:35 ID:Wai8M9kP
はーい。お疲れ様でした。
しかし読み返してみるとラストシーンの引き方ってばないですねぇ。
シリアスなのかギャグなのかw
いつものように誤字脱字感想等お待ちしておりますー。
さて。予定通り本編は次回投稿分で終了予定です。
エロシーンも、多分ありません。
まあ、その代わりと言っては何ですが。
エピローグというか後日談にてエロオンリーのお話をやるつもりです。
マリオンのエロとか各キャラの和姦などなどやり残したエロをしたいですね。
今回はこの辺りで失礼します。
また来週お会いしましょー。
洋女っ、晩、ざぁぁぁぁぁぁいい!!!
うん。これはちょっとわざとらs
大変お待たせしました。乙×風です。
さあ、今日も頑張って養情晩剤を投下、じゃないや、投与します。
今回はパセットが漲りますよぉ。
同僚のメイド達を犯しては種付けし、犯しては種付けし。
いやシーン自体は少ないです。すんません。尺が取れませんでした。
(アドニス開花、種付け、バトル多め)
NGワードはそんな感じです。
名前有りの女の子(メイド達)をもっと増やして寄生拡大シーンを増量したかったです。
でもそれじゃ無限の果肉の二の轍を踏むんで、あえてばっさりと削除しました。
あれ? 寄生スレに投下する意味ががが
そんな訳ですが。それでも読みたい、という方のみお進み下さい。
以下本編です。20レスほど消費します。
179 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:18:46 ID:Wai8M9kP
第十二話 愛憎劇(前編)
『っ…クロトさんが…』
腹のアドニスを通して主の狼狽した声を聞いた。
丁度パセットが屋敷の門をくぐったところだった。
(クロト様が、どうかしたんですか?)
クロトとは余り面識も無いパセットだったが、リオからアドニスを授かった者同士だ。
それは姉妹と言えない事も無いだろう。
アドニスの繋がりはリオとのそれに比べれば細いが、微かにクロトを感じる事も出来た。
だが今はそれが無い。
『リンクが、切れた…もっとちゃんと意識を繋げておけば良かった…
そうすれば、何か手助けが出来たかもしれないのに…』
心優しい淫魔は仲魔が消えてしまった事を悲しんでいるようだった。
アドニスを通して、彼女の心が僅かに流れ込んでくる。
(何か、何でもいいから励ましてあげないと)
『…ありがとうパセットちゃん。でも、大丈夫。その気持ちだけでも頑張れるから。
クロトさんは私の考えどおり、リビディスタの目を惹きつけてくれたんだと思う。
じゃないと防御の得意なあの人が、簡単にやられる筈が無い。
パセットちゃんは予定通り屋敷に潜入して種を蒔いて。私もすぐに向かうから』
(はい。リオ様)
『私、クロトさんの働きを無駄にしないから。絶対復讐を遂げてみせる。
でも、パセットちゃん? 危なくなったら、すぐに逃げてね?
クロトさんが消えて、パセットちゃんまで消えたら、私、今度こそ…』
それからは言葉にならなかった。
が、主が自分をそれほど大切にしてくれているのは言葉が無くとも理解出来た。
『これは命令だからね、パセットちゃん』
(分かりました)
繋がりを通しての命令は決して逆らう事は出来ない。
もしそんな時が来れば、主を見捨てて逃げる可能性もあるのだ。
そしてそんな事が起きないようにと、パセットは祈った。
「あ!? 貴女! 今までどこに行っていたの!?」
突如横合いから掛けられた声に振り向く。
声の主は女性だ。歳は19。やや細身の体躯にメイド服をそつなく着こなしている。
三つ編みの黒髪と丸い眼鏡が特徴的だ。
彼女の名はメナンティ。
面倒見が良い人柄ではあるが、生真面目で融通が利かない。
パセットの姉貴分とも言える女だった。
今も腰に手を当てながらパセットを正面から見据えている。
「勝手に屋敷から居なくなっちゃうし! 街は大変な事になってるし!
リオ様は行方不明だって噂だし! いつの間にかマリオン様も帰ってきてたって話しだし!
もう一杯一杯なのよ! 余計な心配を掛けさせないで頂戴! 分かった!?
分かったら返事!!」
「…はい」
「…何よ。えらく素直じゃない…? 気持ち悪いわねぇ。
ひょっとして何か変な物でも食べたんじゃない?」
メナンティが訝しげな視線を送ってきた。
それもそうだろう。こちらは一度は精神を壊され、人格が変わってしまったのだ。
元気の塊のような過去の自分と比べれば、今の自分は別人と言っても差し支えない。
もっとも、腹にアドニスの種子を植え付けられれば誰だって大なり小なり変わると思うが。
「食べるのは、今からです」
ふ、と思わず口元が緩む。
腹の中のアドニスが目の前のメスを前に興奮している。
下着の奥から、濃厚な催淫ガスを噴出し、辺りに甘酸っぱい香りを漂わせた。
「…食べるって…何を…?」
聞き返すメナンティの体が僅かに脱力した。
「…え…? あれ? 何この、匂い…ふらふらする…」
立ち眩みを起こしたように眼鏡の侍女の体が傾く。
それを素早く脇から支えると、耳元で囁いた。
180 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:20:28 ID:Wai8M9kP
「お機嫌が優れませんか? ならお部屋までお連れしますよ?
――そこなら、誰も邪魔は入りませんから」
メナンティの肩を背負って、歩き出す。
主から受け取った魔力のお陰か、女一人くらいなら楽に支えられる。
「邪魔、って…何の話を、しているのよ?」
「嫌ですねぇ。さっき、何を食べるか、ってお聞きになっていたじゃないですか」
くすくすと笑う。
腹のアドニスが疼いてしょうがない。
種付けの快楽がどれほどのものか、早く味わってみたい。
その気持ちが、腹の魔物から溢れてくるもので、自分の意思ではないと分かっている。
だが元より主に捧げたこの体、この魂。
穢れるというならどこまでも穢れてみせよう。
主の為に。
「パセットが食べるのはメナンティさんですよ」
***
パセットがメナンティを拉致しようとしているその頃。
ドルキは屋敷の庭園に整列する戦士達を眺めていた。
彼らはこのリビディスタで厳しい訓練に耐え、力をつけてきたエリート達である。
剣を、槍を、弓を、或いは魔術を。
それぞれに秀でた者達が集まり、チームを組み、魔物どもを殲滅する。
計百名余の戦士達。
一挙一動乱さずに整列する彼らの精悍な立ち姿にドルキは感銘すら覚えた。
これが愛する者と共にこの三十年で作り上げてきた集大成だ。
これさえあれば、魔物の数百や数千など、恐れるに足らず。
「これは、訓練ではありません」
最強の私兵団に、厳かに語りかける。
「こうしている間にも魔物達が街へ侵入し、何の罪の無い民が犠牲となっています。
一足先にグリーズ様が殲滅にあたっていますが、いくら英雄と言えど限度があります」
ドルキは静かに、だが徐々に戦士達の闘志に火を点けていく。
演説紛いの行為にも熱が入り、声も大きくなる。
実際、ドルキは僅かに悦に浸っていた。
愛する人と育て上げてきた最強の戦士達。その真価が今問われようとしているのだ。
興奮しない筈が無い。
だから、こっそりと庭の反対側から侵入した淫魔の存在にも最後まで気付かなかった。
普段の彼女ならそんな失態を犯す事は無かっただろう。
だがリオが消え、グリーズが戦っている。
そしてリビディスタの総力を上げての戦いが始まろうとする時。
その瞬間に、ドルキに僅かな油断が生まれていたのだ。
「さあ! 今こそ貴方達の力を試す時です!
厳しい訓練を耐え抜き、磨き上げた技術を! そして力を!
あの醜い化け物共に見せてやりましょう!
そしてそれが終わった時、貴方達は英雄となるのです!」
おお、歓声が上がる。
戦いの前、士気の向上は必要不可欠だ。
それは一対一の決闘でも組織戦でも変わらない。
ドルキは出陣していく戦士達に激励を与えていく。
呑気なものだった。
この間にも、屋敷の中では淫魔の策略は進んでいるというのに。
***
181 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:21:51 ID:Wai8M9kP
屋敷の中、赤い絨毯の引かれた通路を、二人の侍女が歩いていた。
栗色のツインテールをした十代半ばの少女。
それから三つ編みを下げた眼鏡の女性だ。
「ここですよね」
ツインテールの少女、パセットは肩を貸しているメナンティに問い掛ける。
目の前はメナンティの自室だ。
パセットは荒い息を吐くだけで返事をしないメナンティに微笑みかける。
そして本人の了承も無しに部屋へと踏み込んだ。
気真面目な彼女の性分を表すように、部屋の中には必要最低限の家具以外は何も無い。
パセットは殺風景な部屋を我が物顔で闊歩し、ベッドへ一直線に向かう。
酷く、子宮が疼いていた。
「着きましたよ」
ベッドに着くとやや乱暴にメナンティの体を横たわらせる。
きゃ、と彼女は短い悲鳴を上げると潤んだ瞳でこちらを見上げてきた。
「そんな目をしなくても、ちゃんとしてあげます」
「な、何を…っ」
「惚けないで下さい。アソコ、疼いてしょうがないんですよね?」
こちらの指摘に彼女は泣きそうな顔をした。
眼鏡の向こうの黒い瞳には、羞恥と、それ以上の欲情が垣間見えた。
――ずぐん。
「…っあっ…!?」
(すご、いっ、アソコっ、じくじくしてるっ)
発情しているメスを嗅ぎつけて、アドニスが活動を開始したのだ。
子宮に根付いた種子が芽を伸ばし、生殖器として胎外へと伸び出て行く。
(ひゃっ、お腹の中、気持ちいいっ、奥から、出てくるっ)
「ぱ、パセット?」
「め、メナンティ、さんっ、パセットも、同じなんですっ。
今、とっても、興奮してるんですっ。み、見て下さいっ」
スカートをたくし上げる。
リオの魔力によって編まれたメイド服は外見だけを取り繕うものだ。
よってパセットは下着を着けていない。
窓の外から降り注ぐ日の光が、スカートの下、未成熟な割れ目を照らし出す。
だがそこは十代半ばの少女のものとは思えないほど濡れぼそっている。
まるで場慣れした娼婦の女性器のようなグロテスクさと淫靡さを醸し出していたのだ。
(あ、メナンティさんに、見られてるっ、パセットのおマンコ、視線が刺さってるっ)
知り合いに、と言うより主人以外の人間に最も恥ずかしい場所を見られ、頭が茹で上がる。
直後に腹から衝撃が来た。
「ひゃ、あぁっ…! 出て、出てくるぅっ!」
アドニスの芽が、子宮口を押し広げ、膣壁を擦りながら下がってくる。
子宮の内側から敏感な肉壁を拡張される感覚に、脳髄が痺れ、膝が笑う。
「ひゃ、ぁんっ! これ、気持ちいいっ、お花っ、オマタから出てくるの気持ちいいっ!
あ、あっ! いいっ! いっちゃうっ! パセット、いっちゃうよぉぉっ!!」
ずり、ずりりりりぃっ!
「ひゃううううんっっ!!?」
子宮から陰唇に掛けて痺れるような官能に満たされた。
あまりの快楽にあっけなくアクメを迎え、スカートを持ち上げる手がぷるぷると震える。
濃厚なアドニスの催淫香が鼻をついた。
「ひ、ひぃっ…!?」
怯えるメナンティを焦点を失った瞳でぼんやりと見詰める。
彼女の視線を目で追えば、自分の股で『ぐぱぁ』と花開くアドニスの姿があった。
(はぁ…♪ これでパセットも、リオ様と同じ♪)
「そ、それっ、何、何なのっ?」
「あ、はっ…んっ…! はぁっ…、はぁ…♪
こ、これはぁっ…、女の子を、とってもぉ、気持ちよくしてくれる魔物さんですぅ…。
そんなに怯えなくてもぉ、……んっ…♪ はぁっ…♪ はぁ……大丈夫、ですよぉ?
痛い事も、怖い事も、なーんにも、ありませんから♪」
こちらもベッドに上がり、怯えるメナンティを押し倒した。
催淫香のせいで抵抗は少ない。
182 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:23:09 ID:Wai8M9kP
仰向けになったメイドのスカートを捲り上げると、色っぽい黒の下着が現れる。
「へー。メナンティさん、エッチなパンツ穿いてるんですね」
「あ、貴女には関係無いっ」
「そう言わないで下さい」
黒い生地の真ん中には、くっきりと充血した陰唇の形が浮き上がっている。
リオ以外、同性の性器なんてじっくり見る事は無かったので何だか新鮮な気分だった。
「べちょべちょだぁ♪」
「きゃぁっ!?」
黒い下着に浮き上がったヴァギナを中心に徐々に愛液の染みが拡がっていた。
それを押し込んでみると、ずぶずぶと指が沈み込み、じゅくぅ、と音を立てる。
メナンティは快楽に戦慄いて、目を白黒させていた。
「嘘、どうしてこんな、敏感にっ」
「もっと、気持ちよくなりますよ」
パセットもそうでした、と付け加えてから彼女の体液をぺろりと舐める。
酸味の効いた、愛液の味に頭がクラクラする。
ぎゅるり、と腹の中で何かが蠢いた。
「あっ!? ん、ひゃぁ、ぁっ…んっ! ぁあっ…!」
花開いたアドニスの奥から、今度は生殖器がせり上がって来た。
ずるずると敏感な茎の中を、敏感な触手が押し通り、甘美すぎる快楽が弾ける。
ずるるるぅっ!
「ひゃぁぅぅんっっ…♪」
「ひっ」
花冠の中心から、雌しべに相当する生殖器が生え出した。
(は、花の中、とっても気持ちいいっ、パセット、またイっちゃったぁ♪)
花の中もこの生殖器もパセットの神経と完全に繋がっている。
敏感な第二の膣とも言うべき器官を犯され、また、犯す感覚に腰砕けになっていた。
だがそれだけではアドニスの本能は満足しない。
「はぁ、はぁっ…♪ メナンティさんっ♪」
「あ、嫌っ…! やめ、なさいっ」
「いや、嫌ですっ、もう、止められませんっ♪」
つっかえ棒のように伸ばしてくる手を払いのけ、下着を下へとずらす。
きゃ、と漏れたメナンティの悲鳴は羞恥によるものか恐怖によるものか。或いは――
(メナンティさんのアソコ、エロイ…よぉ♪)
充血し、解れ、ひくひくと脈打つ肉のアケビ。
粘液に濡れたそこに見入ってしまう。
が、それも一瞬だった。
すぐに腹の底から目の前のメスを犯してやりたいという衝動に駆られてしまう。
「はぁっ、はあっ! メナンティさんっ、犯しますっ! 種付け、しますっ」
雌しべ触手を解れたヴァギナにあてがい、ぐ、と腹に力を込める。
ず、ずりゅりゅりゅっ…!
「あっ!? ああぁぁぁぁぁっ!!!」
「ひゃ、ひゃわぁんっ♪」
大した抵抗も無く、生殖器がメナンティの中へと挿入される。
どうやら彼女は処女では無かったらしい。
人柄の割にはなかなかどうして、侮れなかった。
(これが、女の子の中っ)
発情した肉の泥濘が、全方位から敏感な触手を締め上げてくる。
具合の良さ、という点ならリオやクロトの花の中には劣るだろう。
だが、雌しべ触手自体がフタナリペニスよりも敏感だった事。
それに、本能に従い女を犯しているという状況が、パセットを過剰なまで興奮させていた。
「いいっ、いいよぉっ♪」
ずっちゅっ、ずっちゅっ、ずっちゅっ。
「んああっ!? これっ、すごいぃっ!」
快楽に流されるままピストンを始めると、途端にメナンティがあられもなく喘ぎ出した。
処女であった自分ですらはしたなく喘いだのだ。
破瓜の痛みをとうに克服した女性に、アドニスの責めは只甘い。
堅物だと思われたメナンティの表情が、見る見るうちに蕩けていく。
「メナンティ、さんっ、はっ、ぁっ! エッチな、顔してますっ」
183 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:24:23 ID:Wai8M9kP
「だってぇ、は、ぁあんっ!? あっ、ぁあっ! そ、そこぉっ!」
「ひゃうん♪」
触手の疣がGスポットを削ったらしい。
膣穴が収斂し、メナンティの喉から一オクターブ高い声が漏れた。
「はっ! んっ! メナンティさん、パセットの触手、きゅうきゅう締め付けてますっ、
触手、そんなに気持ちいいんですかっ?」
ごつん、と子宮口を突き上げる。
それでけで目前の女は甘い声を上げて白状した。
「いいっ、触手っ、いいのっ! お願いっ、もっとしてぇっ」
「あはっ。メナンティさん溜まって、たんですねっ。
はっ! はっ…! んっ! こ、こんなにっ、乱れてっ!
は、あぅっ…!? すごい、締め付けっ…!
メナンティさんっ、真面目だと思ってたのにっ、こんなにスケベだったなんてっ」
指摘すると年上の侍女はいやいやと首を振った。
「…だって、私っ、真面目だからっ、男なんて出来ないしっ…!」
それだけで何を言わんとしているか理解出来た。
成長期の女が彼氏も作れず、性的欲求を持て余す――良くある事だ。
パセットにはそういう感情は理解出来なかったが。
ここに来る前、故郷の姉がそういう悩みを抱えていた事を今でも覚えている。
「んっ! はっ! 大丈夫ですよっ? もう、寂しくはありませんっ。
パセットを、この花を受け入れてっ…! そうすればっ…幸せになれるからっ」
ぱつぱつぱつっ…!
「あっ!? あぁっ! ほんと、ほんとにっ!?」
小刻みなピストンでメナンティの正常な思考を奪う。
生真面目な女程、一度固い鎧が剥がれてしまえばもろいものだ。
恥骨同士がぶつかり、結合部で粘液が潰れる音が響く。
触手を突き入れる度にメナンティの体が弾み、ベッドを軋ませる。
あんあんと甘い喘ぎを上げながらだらしなく涎を垂らす女の眼鏡が熱気に曇っていた。
その曇りを舌を這わせて取り除くと、レンズ越しの瞳に優しく微笑みかける。
「うんっ。そうして皆で、リオ様の為に働くのっ…!
皆繋がってるからっ…寂しくないからっ」
がつんっ。大きく子宮口を突き上げる。
「あぁんっ!?」
「ねっ? どうっ? 気持ちいいよねっ!? ずっとこうしていられるよっ!?
いいでしょっ!? だから、パセットの仲間にしてあげるっ…!
メナンティさんにも、種子を、植え付けてあげるっ」
「い、いやぁ…っ、そんなの…いらない…っ」
「嘘ばっかりっ、さっきからメナンティさんのアソコっ…!
パセットの触手を咥えて全然離さないものっ…!
ほらっ! ほらぁっ…! いいんですよねっ!?
触手チンポにメロメロになって、これ無しじゃもう生きていけないんですよねっ」
じゅぽっ、じゅぽっ、じゅぽっ!
「ぁぁんっ! あっ! そうっ! そうなのぉっ! 触手っ、気持ちいいのぉっ!」
「あはっ! じゃぁもっと気持ち良くしてあげますっ!
だからおねだりしてくださいっ! 触手チンポで種付けして下さいっ、って!」
「は、はいっ! …しょ、触手、…んぽで…っ――
触手チンポで種付けして下さいっ!」
(あぁ、メナンティさん、エロイよぉ…パセット、酷い事言わせてるう♪)
眉をハの字に寄せて、メナンティは媚びた表情を浮かべていた。
腹の中のアドニスが、眼前のメスが種付けの準備を終えた事を感知する。
どくどくと、子宮の中から精液が迸り、茎の中を通る。
「ひゃわっ!? あっ! くるっ! メナンティさんにっ!
あっ、あっ、ぁうんっ! 精液どぴゅどぴゅしちゃうっ!
アドニスの種、植え付けちゃうっ!」
「く、下さいっ、私に種子をっ、花の種子を下さいっ!
あぁぁっ!? ああん! ああぁっ! ああぁっ!
私もっ、いきますっ! あぁんっ! ついてっ、もっとついてぇ!
無茶苦茶に犯して種付けしてぇぇぇっ!!」
184 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:26:02 ID:Wai8M9kP
眼鏡の向こうの黒い瞳は、快楽でどんよりと曇っていた。
理知的な表情は消えうせ、雌の本能が剥き出しになっている。
正気を失ったメナンティは、今やただの獣だった。
「ひゃうんっ、わうんっ! もうだめっ! でちゃうでちゃうっ!
せーえきでちゃうよぉあぁぁっ! いく、いっくっ!
触手チンポでしゃせいしますっ! あぁぁっ! ひゃっ! あううんっ!
あぁぁっ! ぁあぁっ! あぁぁぁっひゃううううぅぅぅぅんっっっ!!!」
びゅるっ!! どぴゅっ、どぴゅどぴゅっ!!
「わぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!!!!?」
「ああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあっっっ!!!?」
射精の快感に頭が真っ白になる。
(すごいぃっ!!? これっ、だめぇぇぇっ!!)
敏感な花の中を柔らかい種子と粘性の高い体液が迸る。
放尿するのとは比べ物にならない開放感と快楽だ。
(フタナリチンポより、もっときもちいいぃっ!!)
だと言うのに絶頂を迎えたメナンティの膣がきゅうきゅうと締め付ける。
それが肉壁に雑巾絞りされるような感触が更なる射精に繋がった。
びゅーびゅーと底を知らないように白濁液を注ぎ込む。
「あひぃっ♪ んわぁうんんんんっ♪」
パセットは犬らしく舌を垂らし、くいくいと腰を使いながら射精の快感に耽る。
メナンティもだらしなく顔を弛緩させていた。
二人してアヘ顔を晒しながら、下になったメナンティの顔にだらだらと涎を零していく。
辺りにアドニスの催淫香と、女の発情臭が一層濃く、立ち込めた。
びゅしゅっ。
結合部から何かが噴出し、花弁の粘膜を叩く。
メナンティが潮を吹いたのだった。
その直後、快楽でぶっとんだ頭が部屋の扉が開く音をぼんやりと知覚した。
背中越しに、入り口の方へと視線を向ける。
「――あ、やってるやってる♪」
(……ぁ…リオ…様…だぁ…)
笑顔で入室してきたゴスロリ姿のリオを見つけると、それだけで嬉しくなってしまう。
主人は人の姿だったが情事の余韻が残るベッドに近付くと、そこで徐に淫魔へと変身する。
「種付け終わった? ――あ、いいよ。口に出さなくて。疲れてるでしょ?
心を読むから、思考するだけでいいよ♪」
主の心遣いに胸が幸せで一杯になる。
(種付けは、無事、終了しましたぁ…)
「そっか♪ ね? どうだった? 気持ちよかったでしょ♪」
(腰が抜けましたぁ…♪)
「うんうん♪ 気に入ってもらって良かった♪ ――さて、それじゃぁ、と。
パセットちゃん? 触手チンポ抜いてくれる?」
「…? はい」
言われた通り触手を引き抜く。
だが、アクメを迎えた肉の壷は卑猥な形状の雌しべを必死に咥えて離さない。
後ろ髪を引かれるような思いで腰を引くとずるり、と触手が引っこ抜けた。
甘い愉悦が走り、びゅるり、と一度射精。
ひゃうん♪ と甘い声を上げてしまう。
「パセットちゃん、ワンちゃんみたい♪ 可愛いにゃぁ♪」
ご主人様がベッドに上がり、こちらに身を寄せてきた。
彼女はすぐ隣に腰を落ち着けすりすりと頬擦りをしてくる。
(ひゃうん♪ 幸せですぅ♪)
「――うにゃうにゃ。いけない。いけない。甘えてるとあっと言う間に時間が経っちゃう」
もっと甘えてくれてもいいのだが、主人は首をぶるぶると振って気を取り直した。
主人はメナンティの下腹部――子宮の上に手をかざす。
その小さな掌から魔術陣が現れた。
ばしゅうぅ。
「んひゃあぁぁぁぁぁぁっっ!?」
かと思うと、そこから黒い霧が噴出し、メナンティの体へと吸い込まれる。
主人が何をしているのか、パセットには何となく理解した。
185 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:27:21 ID:Wai8M9kP
あの黒い霧は淫魔の魔力だ。
先程居住区で、この身に男性の象徴を無理矢理生えさせられた時と同じ。
恐らくメナンティに自分の魔力を注いでいるのだろう。
「当ったりー♪ こうするとね? お腹のアドニスが早く成長すると思うの♪
今は一人でも多く、アネモネになって欲しいからね♪」
「あの、それじゃパセットは、どうしましょう?」
「うにゃ? する事は変わらないよ? 私がメイドさん達を連れてくるから。
パセットちゃんはそのメイドさん達をどんどん犯っちゃって種付けしてね♪」
「…分かりました」
主人の頼みだ断る理由も無かった。
「はい♪ ――んにゃ、こっちはこれくらいかな?」
主人が魔力注入を終える。
当のメナンティはと言うと、子宮に対し淫魔の凶悪な魔力注入を受けて息も絶え絶えだ。
どくん。
「あっはあぁぁぁぁっっ」
突如メナンティが目を向いて悲鳴を上げた。
捲り上げられたスカートの下。
アドニスを植え付けられた子宮が不気味に脈打っている。
(あ、ほんとに、成長してるんだぁ)
二人が僅かに息を荒くしながら見守る中、メナンティの中のアドニスが急速に育っていく。
ずるるるるっっ!
「んああぁぁぁぁぁぁぁっっ!?」
そして数十秒と待たない内にメナンティの膣から肉の花が咲いた。
ぐぱあ、と四枚の花弁を広げ、アドニスの花の匂いを撒き散らす。
何と言うか。自分の時はひたすら気持ち良くてこんな事考える暇も無かったのだが。
(お花が咲く瞬間、エロ過ぎ…)
ドキドキが止まらないではないか。
「よし。これでオーケーにゃぁ♪」
顔を赤くさせた主人が身軽な動作でベッドを降りる。
残りのメイド達を攫ってくるのだろう。
しかしその間自分は何をすればいいのだろうか。
「うにゃ? その人と遊んでくれててもいいよ♪
パセットちゃん、まだまだエッチしたいでしょ?」
図星を突かれ、赤面しながら素直に頷いた。
主人は小悪魔的な笑みを浮かべると「ごゆっくりにゃぁ♪」と言い残して部屋を出た。
「……」
そうなると自然と、パセットの目はメナンティへと吸い寄せられる。
だらしなく広げられた股にはアドニスの花が張り付き、こんこんと粘液を垂れ流している。
部屋に漂う催淫臭が濃くなっていた。
収まっていた欲情の炎が再び灯る。
眼下には花を生やした衝撃で痴呆のように涎を垂らすメナンティのアヘ顔がある。
その顔がとても愛しく思え――その唇に唇を合わせた。
「さあ、もっと気持ちいい事、教えてあげますね」
湧き上がる情動のまま、メナンティの花の中に雌しべ触手を挿入した。
***
討伐隊全てを送り出すのに一刻も掛からなかった。
彼らを見送ったドルキは、傍らの門下生達に、持ち場に着くように命じる。
十人にも満たない彼等は屋敷を防衛する為に残した戦力だ。
(少し時間は掛かりましたが、これで大丈夫でしょう)
後は討伐隊とグリーズが魔物達を殲滅してくれるだろう。
大なり小なり被害は出るだろうが、負けるような事は無い筈だ。
ドルキは自室に戻り、一息つこうと思い立った。
先程は久しぶりに大声を上げたので喉が渇いていたのだ。
適当な侍女を捕まえて茶でも淹れさせよう。
そう、思ってからふと気付いた。
(…静か過ぎますね)
186 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:28:47 ID:Wai8M9kP
屋敷の中には現在ドルキと、数名の門下生と、侍女しかいない。
合わせて二十名と居ないのだが、それを差し引いても人の気配が少なすぎる。
嫌な予感がした。
ドルキは探索魔術を発動する。
自身を中心に魔力を放射し、半径1キロ以上に及び、その中の人間と魔物を識別する。
「――これはっ」
屋敷の中に、魔物の反応が二つ存在した。
内一つはかなり強大な力を持っている。
もう片割れは大した事はないのだが、問題があった。
二匹の魔物と、数名の人間が同じ部屋に居るのだ。
ここは確か、侍女のメナンティの寝室だった筈だ。
(なんたる失態でしょうっ)
何が茶でも淹れさせようか、だ。弛み過ぎだ。
興奮の余り、周りを見ていなかった。
魔物が屋敷に入り込む隙なんて、いくらでもあったのだ。
(こんな事なら屋敷にも結界を張っておくべきでした)
魔術士は元来、自分の領地には何かしらの防御を用意するものだ。
だが、ここにはそれが無いのだ。
城壁の結界を過大評価していた為である。
だがそれも後の祭り。
兎も角、屋敷に侵入した魔物の排除を行う。
屋敷内を巡回中の門下生と合流してから向かおうかと考えたが、自分一人で十分だろう。
潜入した魔物はそこそこの力を持っているようだが、正直敵ではない。
それに今、恐らく奴らは『食事中』なのだろう。今なら隙だらけの筈だ。
そうと決まれば早速実行に移す。
転移魔術を使用し、件の寝室の目前へと一瞬で移動した。
扉を挿んだ向こう側から禍々しい気配を感じる。
ドルキはそれに気圧される事無く、扉を開け放った。
「あぁぁっっ!? もうダメェっ! それ以上、注がないでぇ!」
「あはっ…! あはははっ! 触手チンポぉ…、気持ちいいよぉっ」
「あっ! あっ! もっとっ、もっと突いて下さいっ!」
(これは…)
部屋の中では人外による饗宴が開かれていた。
悪魔の姿をした少女を筆頭に、屋敷のメイド達が肉体を絡ませ合っている。
メイド達は股から花のようなものを生やし、まだ生えていないメイドを犯しているのだ。
(アドニスっ)
寝室に篭っていた桃色のガスに理性を溶かされる前に防御魔術を展開する。
「あ? 義母様? ふふふ。随分とゆっくりしていらしたようですね?
お陰でここのメイドさん達は大体種付けが終わりました」
悪魔の姿をした少女が、犯していたメイドを解放し、立ち上がる。
「あ、貴女はっ」
股からアドニスの花を咲かせた悪魔。
猫耳と二本の尻尾。それに蝙蝠の翼を持った少女の髪は鮮やかな桃色だった。
「御機嫌よう義母様。リオ=リビディスタは帰って参りました」
はしたないデザインのスカートを摘み、少女は慇懃に頭を下げる。
「貴女に、復讐する為に」
ぎらりと光る猫目は両方とも血の色のように赤い。
「その姿…悪魔へと堕ちましたか。
それにアドニスの花まで宿して……あぁ、成る程。
森の中で野垂れ死になる前にアネモネに拾われたのですね。
ですがそれだけではその姿は説明出来ません」
「ふふふ。私は、というより母様が人外の血を持っていたそうです。
私はアネモネと交わった時に先祖帰りをしたのです」
187 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:30:00 ID:Wai8M9kP
「成る程…貴女も、貴女の親も、泥棒猫だとは思っていましたが。
まさか本当の猫だったとは、思っても見ませんでしたね」
「私も、腹違いの母親に毒殺を画策されるとは夢にも思いませんでした」
「さあ? 何の話でしょうか?」
(流石あの女の娘、と言ったところでしょうか。鋭い勘をしています)
「惚けるつもりですか? まあ、いいです。どっちにしろ私のする事には変わりませんから」
じゃきん、と真紅の爪を伸ばし、束ね、刃とする。
腰を落とし、感情の無い瞳で見据えるその姿は悪魔というよりも獣だ。
聞く耳は、まだ持っているだろうか。
「貴女の望みは何です?」
「言った筈です。復讐ですよ。私を殺そうとした貴女への。
いえ、それだけならまだ許せた。
けれど、貴女はその為に私の唯一の親友まで利用する気だった。
私には、それが許せない」
「偉そうな口をききますね。許せない、ですか。それはこちら台詞です。
貴女はあの人の体を奪った。いえ、体だけではなく心も。
あの人の心も、体も、全て私の物だというのに。
四十年以上、あの人の為に尽くしてきたと言うのに。
それを貴女は、一瞬で奪い去った!」
下位の攻撃魔術を不意打ち気味に放つ。
きぃん、とガラスを弾いたような音。
と同時に浄化作用を持った光が高熱を持ちながら悪魔へと伸びる。
だが、高速で飛来する光の帯を、少女は半歩体をずらしてあっさりとかわす。
魔術の発射音は兎も角、その威力は凄まじい。
光の帯は部屋の壁をバターのように溶かし、大穴を開けると外へと突き抜けた。
「蛙の子は蛙なのですよ。毒婦の娘も毒婦。
だから貴女は死んで当然なのです。
私のグリーズを誘惑し、穢した貴女はその罪を償う為に、死ぬべきなのです」
「……それが義母様の本心、なんですね」
「ええ。そうですとも。それとも優しい言葉を掛けてもらえると期待していたのですか?」
「まさか。あ、そうです。一つ質問してもいいでしょうか?」
「いいですよ。冥土の土産にして差し上げましょう」
「今の魔術、私は弾き返す事も出来ました。
そうなったらこの部屋の中のメイドさん達にも当たっていたかもしれない。
その事を考慮はしなかったのですか?」
何かと思えばそんな事か。
「侍女の一人や二人、死んだ所でいくらでも代わりは居ます。
それがどうかしましたか?」
「……成る程、良く分かりました」
「そうですか。なら心置きなく死んでくださいますね?」
「いえ? 死ぬのは、貴女だ!」
突如飛び掛ってくるリオ。防御結界を前面に集中させる。
菱形の魔力の壁が前面に何枚も重なり合い、積層を成す。
その正面から、悪魔は突っ込んだ!
ぎいいいいいいんんっっ!!!
刃と化した爪と結界がせめぎ合い、甲高い音を立てながら魔力の余波を撒き散らす。
(ほう。中々やりますね?)
魔力を爪に収束させているのだろう。悪魔の攻撃は鋭い。
一枚目の結界に、ひびが入っていた。真紅の爪は結界の中を徐々に押し進んでいるのだ。
時間を掛ければ、この結果は破られてしまうだろう。
だが力押しだけでは戦いに勝てない。
ばりぃん。ガラスが割れるように、一枚目の結界が音を立てて砕け散った。
破壊されたのではない。破損した防御結界を自ら破棄したのだ。
続けざまに破棄した結界の魔力をその場で集約。
それは魔術陣となり、攻撃を繰り出しているリオを捕捉する。
「……っ!?」
「吹き飛びなさい」
新たに発生した魔術陣から爆音が響いた!
188 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:31:33 ID:Wai8M9kP
「んにゃぁっっっ!?」
風の攻撃魔術を正面から食らい、悪魔の体が吹き飛ぶ。
今のは防御結界の魔力残滓をそのまま攻撃魔術に転化した技だ。
防御から攻撃へと速やかに転じるので不意打ちや迎撃に使用出来る。
だが、取り回しが良い分、威力が格段に落ちる。
至近距離から爆風を食らわせたが、ダメージは殆ど無いだろう。
悪魔は盛大に吹っ飛んで行っただけだ。
「こちらは、暫くなら放っておいても大丈夫ですね」
それでも部屋の中は台風の直撃を受けたように滅茶苦茶になっていた。
家具が引っくり返り、侍女達があられもない姿で折り重なって気絶している。
アドニスの成長がやや速い気もするが、まあ、今しばらくは大丈夫だろう。
この戦いが終わってから種子を浄化してやればアネモネになる事はない。
それよりも今は眼前の化け物を退治してやらないと。
ドルキは悠然と歩みを進め、自分で開けた部屋の大穴をくぐる。
その向こうは正門へと繋がる庭だ。
剣神アレスのレリーフが飾られた正門から屋敷の玄関までおよそ五百メートル程。
その間、一定間隔に設けられた植え込みから、春の来訪を遂げる花が咲いている。
玄関口の前には二つ、噴水も設置されている。
これら、屋敷の美しい外観は戦いに傷付いた戦士達の心を少しでも癒そうとした配慮だ。
「いたたた…っ…にゃぁ…っ? びちょびちょにゃぁ…」
吹き飛んだ淫魔は片方の噴水に突っ込んだらしい。
水瓶を掲げた女神像を模した噴水が壊れ、女神の腰から上が無くなっていた。
屋敷の外を警備していた門下生達が異常を感じ取って駆けつけてくる。
「ドルキ様! これは一体っ」
「こいつ、悪魔か!? いつの間に侵入した!?」
「ドルキ様、ここは我らにお任せを!」
「いや待て! この悪魔、どこかで見た気が…」
「下がりなさい! この魔物は私自らが倒して見せましょう!」
そうだ。そうでもしなければ、この溜飲が下がる事はない。
「ふふふ。そうこなくっちゃ♪」
倒れていたリオが反動を付けて起き上がった。
ぶるぶるぶるぶるっ!
四つん這いの格好で体を振り、衣服と髪の水気を飛ばす。
まるで本物の猫のようだった。
「余裕ですね? まあ、いいでしょう。
そうだ、貴女に母親らしい事を一つしてあげましょう。
リビディスタの者なのです。戦い方くらいは教えてあげようではないですか」
ただし、授業料は命で以って払ってもらう。
「さあ、魔術師との戦い方を教えてあげましょう」
正面へ積層の結界を展開しながら、改めて攻撃魔術を発動させる。
先程とは違い、『殲滅』を主眼に置いた攻撃魔術だ。
発動にやや時間が掛かるが、威力はある。
リオとの距離は大分離れているので発動を潰される事も無いだろう。
この時点で悪魔は回避を余儀無くされているのだ。
ドルキを中心に赤の魔術陣が発生した。
赤は攻撃魔術を表す色だ。
その赤い魔術陣から、複数の魔術陣が生み出され、リオに向かい飛来していく。
「? 何これ?」
小型の魔術陣は攻撃をするでもなく、リオの周囲を旋回しているだけだ。
初見では、それが何なのか知る由も無いだろう。
魔術陣内部の文字を読み解けば、それが『反射』を意味するものだと理解出来るだろうが。
リオには魔術文字を解読出来るほどの知識は無かった。
小型の魔術陣自体は攻撃を行う事は無い。これの役割は、
「蜂の巣になりなさい」
「っ!?」
189 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:33:02 ID:Wai8M9kP
悪魔が何かに気付いたように顔を上げた。
だがもう遅い。
地面の大型魔術陣から、連続的に光を放つ!
光の帯となってリオに襲い掛かるそれは、先程部屋に穴を開けたもに比べれば威力は低い。
だが、直撃を受ければ風穴が開くだろう。
その光を、リオの周囲に滞空させた小型魔術陣に向けて解き放つ。
魔術陣は彼女を取り囲むように、合計12箇所に配置していた。
ほぼ全方位とも言えるが、唯一真上にだけは魔術陣が無い。
リオも気付いただろう。これらの魔術陣が、光を反射させるものであると。
しかしそれが判っていても全方位に配置されたそれから逃れる事は出来ない。
唯一真上にだけは反射陣を設置していないが、この一瞬でその事に気付ける事も無い筈だ。
光の帯は高速で反射陣へと飛来した。
光は反射陣に吸収されると、その中で刹那の間停滞し、
次の瞬間、リオが真上へと大きく跳躍した。
(なんですって?)
翼をはためかせて悪魔の体が急上昇する。
その一瞬後に、彼女が居た空間を十二方向から光の帯が撃ち抜いた。
勘の良い娘だ。唯一の逃げ場所である真上方向に運良く逃げ込むとは。
「あー、怖かったぁー♪ もうちょっとで死んじゃうところだった♪」
上空から緊張感の無い声が聞こえる。
リオは翼をはためかせながら滞空していた。
体が上下に軽く揺さぶられる度にスカートの中身が見え、汚らわしく思えてしまう。
逆に駆けつけて来た男供は破廉恥な格好をした悪魔の姿に魅入っているようだった。
気に入らない。事が終われば何かしらのペナルティを課してやろう。
そんな考えが顔に出てしまっていたのか上空の悪魔が、ふふふ、といやらしく笑う。
その笑い方まで、あの女とそっくりだと思った。
「…義母様? 義母様は私の母様の事を――いえ、やっぱり、やーめたっ」
「? 何を言っているのです?」
笑っていたかと思えば急に神妙な顔つきになったり、かと思えば無邪気な表情を浮かべる。
悪魔へと身を堕としたこの娘が何を考えているのか全く分からない。
(分かる必要もありませんが)
ドルキは気を取り直し、次なる一手を打つ。
滞空しているあの悪魔を叩き落してくれよう。
ドルキは両の掌から魔術陣を生み出す。
右手と左手で異なる魔術を同時に起動させる技だ。
右手の青い魔術陣は結界を生成させるもの。
大して左手の赤い魔術陣は下位の風撃魔術だ。
屋敷の中で悪魔を外に吹き飛ばしたものと同じである。
それの威力をやや上昇させ、風力を鉄槌のように対象物へと叩き落す。
「今度は逃がしませんよ」
言葉と同時に結界魔術が発動した。
滞空する悪魔の真下に魔術陣が現れ、その真上へと魔力の壁を形成していく。
この結界、硬度はイマイチだが表面には人間をレア程度に焼く程の電流が流れている。
結界を破壊しようと迂闊に攻撃すれば、かえってダメージを与える仕組みだ。
きいいん――!
円筒状に悪魔を捕らえた結界が高速に回転し、その表面に魔力の雷撃を生み出す。
言わばこれは有刺鉄線で作られた檻だ。
悪魔は閉じ込められた事に気付くと、先程と同じように真上へと逃げようとする。
「逃がさないと言いました!」
だが風の魔術は発動している。
上空に不自然な気流が生まれ、大気が渦巻いている。
結界の内側。そして悪魔の頭上だ。退路は塞がれた。
そこから脱出する為にはダメージを覚悟で、結界を打ち破って外に出るしかない。
でなければ、圧縮された空気の槌に押し潰され、地面に叩き付けられるだけだ。
そうして動きが鈍ったところで本命を叩き込む。
190 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:34:11 ID:Wai8M9kP
「それは面倒だにゃー」
にゃー? にゃー、とは一体何だ。何の冗談だ。
疑問符を浮かべるドルキの上空で、悪魔は爪を展開した。
禍々しい魔力を収束させ、一本のブレードを作り出す。
と同時にそれを結界に突き込んだ!
ばじじじじじっ!!
「ぎにゃあぁぁぁっっ!?」
悪魔が獣の悲鳴を上げた。帯電している結界に直接攻撃したのだ。当然だった。
だがドルキは焦燥感すら覚えていた。
あの化け物は、こちらが攻撃を繰り出す度に最適な行動を取っている。
今回もそうだ。電撃によりダメージは与えられるだろうが、それが致命傷にはならない。
先に結界が破壊される。
「う、にゃあぁぁぁぁっ!! 砕けろぉぉっ!!」
耳障りな帯電音の中、悪魔が咆哮し、赤い刃に力を込めた。
「くっ」
同時に風の槌を開放する。上空から打ち下ろされるそれは魔力充填を終えていない。
直撃しても予定していたダメージより少ない。それでもむざむざ脱出されるよりマシだ。
ごうっ!
風の槌が唸り、悪魔を押し潰そうと襲い掛かる。
だがその直前に結界が音を立てて砕け散った。
悪魔が結界から脱出。その背後を風の槌が通り過ぎる。
ずどん!
星でも降ってきたかのような衝撃。音。
そして一足遅れて地上に突風が吹き荒れた。
事の成り行きを見守っていた門下生達が、強風に煽られ、地面を転がっていく。
魔術を使える者達は防御結界を張り、何とか事無きを得たようだった。
こちらも防御結界を張り、攻撃魔術の余波から身を守る。
(しくじりました…)
結界を保持していればこの衝撃やらなんやらが全て密閉空間で炸裂した訳である。
いくら悪魔と言えど無事では済まない筈だったのだが。
「ふにゃぁ…っ、危なかったにゃぁ…っ」
上空に退避していた悪魔が胸を撫で下ろしている。
「ふふふ。まだ胸がドキドキしてる♪ 義母様っ、殺し合うのって楽しいね♪」
「…化け物が…」
能天気に笑う少女の姿をした悪魔に、神経を逆撫でされてしまう。
だが、頭に血を上らせる訳にはいかない。
二度の攻撃を凌いだ悪魔の器量。素人同然の彼女にそれほどの力があるとは思えない。
何か、からくりがあるのではないのだろうか。例えば――
(読心能力、ですか?)
「あれ? もう気付かれちゃった。流石義母様♪ 魔女の二つ名は伊達じゃないね♪」
地面に降り立ち、悪魔は淫靡に微笑む。
「それで? まだ戦うの? 魔術士なんて思考が読まれれば何も出来ないんじゃないの?」
ざわり、と周囲の人間達がどよめいた。
確かに、技術で戦う戦士とは違い、魔術師は戦術で戦うものだ。
思考が先読みされれば、まともに戦えはしないだろう。
「――成る程、貴女のその髪は悪魔『シュトリ』の証だった訳ですね。
成る程成る程。あの女の勘の良さは化け物の力の一端だった訳ですか。
それにしても、他人の心を覗き見るとは。
下品な能力ですね。あの女に相応しいと言えましょう」
不敵な笑みを浮かべ、悪魔を挑発する。
悪魔はそれが挑発だと分かってはいるだろうが――
「母様を、侮辱するなぁっ!」
精神も幼いただの子供に、感情を御する事など出来はしなかった。
一直線に、こちらへと突っ込んでくる。
地を這うように、前傾姿勢で突貫するその姿は野生の猛獣そのもの。
この瞬間、新たな魔術を発動する。
それは読心能力を持った魔物に対抗する為にドルキが自ら開発した精神防御魔術。
191 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:35:16 ID:Wai8M9kP
青い魔術陣が表れ、ドルキの体を淡い光で包み込むと、それは一瞬で消滅した。
見た目は何も変わらないが、効果はすぐに現れるだろう。
(今度こそ引導を渡してあげましょう)
***
「母様を、侮辱するなぁっ!」
つい頭に血が上ってしまい、無謀な突撃を仕掛けてしまう。
それが罠かも知れないとは思うが、思考を読めるのだから致命的なミスは避けられる筈だ。
『馬鹿な娘です。こうも簡単に挑発に乗ってくれるとは』
うるさい。今すぐその喉笛を掻き切ってやる。
いや、それじゃ気が済まない。
自分を、パセットを。
そしてあろう事か他のメイド達まで平気で切り捨てるようなこの女を、許せはしない。
苦痛を与えながら、嬲り殺してやる。
そして絶望するドルキの眼前で、グリーズを魅了し、寝取ってやるのだ。
それはきっとこの上なく楽しいだろう。
想像しただけで、気分が高揚する。
ドルキは動かない。しかし防御結界は展開した。
『先程はしくじりましたが今度はそうはいきません』
結界がその姿形を徐々に変えていく。
菱形を連ねたようなタイル状の防御壁は強く発光し、ドルキを包み込む。
『思考が読まれるのならば、読まれても対処出来ないような戦術を取ればいいのです。
私は今から上位の魔術を使用します。
誘導性が強く、貫通能力に優れた光の攻撃魔術。
今度は避ける事も防ぐ事も出来ないでしょう。
最善の策は――そうですねぇ。
私が魔術を発動する前にこの結果を破壊し、私を倒す事でしょうね。
まあ、貴女に出来るとは思いませんが』
「そんなの、やってみなければ分からないよ」
相手は結界を張っているとはいえ棒立ちだ。
溜め込んだ魔力を一点に集中させ、攻撃すれば結界だって破壊出来る筈。
ドルキに向かって走りながら、リオは右手の爪に力を込めた。
(今度は、こっちの番っ)
溜まった鬱憤を晴らすべく、右の爪から展開した赤いブレードを振りかぶり、
その脚が、急に止まった。
「うにゃぁっ!?」
がくんと前方につんのめり、体勢を大きく崩す。
まるで脚を引っ掴まれたような感覚を不思議に思い、地面を見た。
(何これっ!?)
足元には何時の間にか青い魔術陣が展開していた。
その中から光の鎖のようなものが生え出し、脚を拘束しているのだ。
バインドと呼ばれる束縛の魔術だ。
主に素早い敵の動きを抑えたり、時間稼ぎに使用される補助魔術である。
(い、いつの間にこんなものを!?)
読心能力は今も発動している。
簡単なトラップだが、それを仕掛けようとする以上、大なり小なり思考をする必要がある。
それを捉えられない筈がなかった。
「簡単に引っ掛かりましたね。所詮は子供、いえ、畜生ですね」
「どういう事っ」
「私程の魔術士ともなれば精神に干渉する能力の対策くらい持っているという事です。
そう。貴女が今読み取っているのはフェイク。
私が魔術で作り出した、擬似的な思考なのです」
「そ、そんな事が…」
192 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:36:32 ID:Wai8M9kP
上位の光の攻撃魔術や、結界を破壊すればいい――云々は全て偽の情報だと言う事か。
「それを知らずに突っ込んで来てくれた貴女はいい的です。
バインドで動けないでしょう? この状態なら結界を使用する必要もありません」
防御結界が消える。
そしてその後に、赤く、大きな魔術陣が形成された。
「まあ、この防御結界も今から発動する攻撃魔術の目眩ましに過ぎないのですが」
赤い魔術陣に光が収束する。
動きを封じられたこの身では、回避は不可能だ。
死の気配が、すぐ近くまで迫っていた。
眼前の光は、この身を焼く業火の炎となるだろう。
(この絶望的な状況から逃れる為にはっ)
「さあ、貴女もこの私の手で地獄に送ってさしあげましょう。『あの女と同様に』」
引っ掛かる物言いに、一瞬思考が止まる。
だが魔術陣の光が一際大きく輝くと、リオは最後の掛けに出た。
「『お義母様っ、私を助けて』!」
光の魔術が解き放たれる。
「う、にゃあぁぁぁぁっっ!!?」
赤い魔術陣から放たれたそれは、一言で表すなら光の奔流だ。
浄化作用をもった眩い光は、熱量も有しており対象物を焼き尽くす。
虫眼鏡で太陽光を収束させるのとはレベルが違う。
直撃を受ければ、生まれたての悪魔など消し炭に出来る。
光の魔術はドルキの得意分野で、この光の砲撃とも言える魔術はドルキの十八番だった。
だが、
「っ、賢しい真似をっ」
声を荒げたのはドルキの方だ。
光の魔術は、軌道を大きく外れている。
この体を直撃する筈だった光の奔流は髪を焦がしただけで、空へと吸い込まれた。
魔術の余波で旋風が巻き起こり、熱波がひび割れた肌を炙る。
土壇場でドルキにチャームを掛けたのだ。
自分に対して魅了の魔術を使用するとは夢にも思っていなかったのだろう。
油断していたドルキはチャームの効果を受け、一瞬だったが手元を狂わせた。
が、それでも無傷では済まなかった。
リオは砲撃の余波に吹き飛ばされ、ドルキから少し離れた地面に転がる。
かと思えば身動きの取れない体に再び拘束魔術が発動した。
「にゃ、にゃぁっ…!?」
青い魔術陣から白い光が伸び、体を雁字搦めにされる。
「さあ、これで本当に万事休すですね」
ドルキはこちらの恐怖心を煽るように、ゆっくりと近付いてきた。
それは絶望の足音だ。死神の近付く気配だ。
だがこの女に復讐を果たすまでは、死んでも死に切れるものではない。
そうだ。さっきこの女は言った。
母を殺したのは自分だと。それがもし本当なら――
リオは憎しみの篭った猫目でドルキを睨みつけた。
「何か言いたい事でもあるようですね」
「…さっき、義母様は言った。
『貴女もこの私の手で地獄に送ってさしあげましょう。あの女と同様に』って。
その言い方じゃ、まるで義母様が…」
自分も含め屋敷の人間はリシュテアの死因が病死だと思っていた。
だが実際は、
『そうです。私が殺しました』
時間が止まる。
衝撃の事実に戦いの最中だという事も忘れ、呆然としてしまう。
(殺した? 病死じゃ、なかったの?)
193 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:37:30 ID:Wai8M9kP
「まるで私が、何ですか? まさか私があの女を殺したとでも?
根拠の無い言い掛かりですね。不愉快です」
ドルキは思考で真実を伝えつつ、言動ではまるで被害者のように取り繕っていた。
だが彼女がうっすらと笑みを浮かべている事に気付くと、胸の内から怒りが溢れ出す。
そんな、こちらの内心を尻目に彼女は思考で真実を語る。
『毒を盛ったのですよ。特別に取り寄せた物です。
遅効性で、本人が無自覚のまま体を蝕んでいき、気が付いた頃には手遅れ――
そういうものです。お陰で誰も気付きませんでしたね。
あの人も、それ以外の人間も、彼女が運悪く病に掛かったとしか思わなかった。
全て、私の計画通りだったのです』
「うああぁぁぁぁぁっっっ!!!」
怒りで視界が真っ赤に染まった。
「貴女が、貴女が母様を殺したああぁぁっっ!!」
「は? 何ですかいきなり。まるで私があの女を殺したような口振りですね。
成る程、さも私が加害者だと周りの人間に思わせる。それが悪魔の手口という訳ですか」
「うるさいっ、うるさいっ! あなたの方がよっぽど悪魔だ!
私の母様を殺して! 私も殺そうとして! パセットちゃんまで巻き込むつもりだった!
許さない! 殺してやる! 絶対に殺してやる!」
『貴女が何を言っても、誰も信じませんよ。
此処は貴女の居るべき所では無いのです』
ドルキの言動と思考はちぐはぐだ。
そのせいで、リオは真実を知って憤っているのに周りの人間にはその理由が伝わらない。
今もリオは孤立無縁だ。誰も味方などしてくれない。
しかし流石に大声を上げる悪魔に、流石の門下生達も戸惑いを隠せないようだ。
それはドルキとリシュテアの関係は皆知っているからである。
周りの人間から見れば、殺人の疑いも無くは無いのだ。
だがリビディスタの創立者の一人であり、メディアの称号を持つ偉大な魔術師。
そしてアドニスの花を宿した悪魔。
観衆は、一体どちらの言葉を信用するだろうか。
「さっきから何ですか。人を殺人鬼呼ばわりして。
目上の者に対する態度ではありませんね。
――貴方達も。このような化け物の言葉に耳を貸してはいけません。
悪魔は人の心に付け入り、堕落させる魔物です。
鬼気迫る表情ですが、あれは演技ですよ。
分かりますか? 貴方達は騙されているのですよ」
「――な、成る程…」
「確かに。悪魔は悪知恵を働かせる魔物だ」
「そうか。ならばリオ様の姿をしているのも、我々を油断させる為かっ? なんと卑劣なっ」
ドルキの言葉で彼女に対する猜疑心は少しづつ消えていくようだった。
伊達に歳を食ってはいないという事か。
そうだ。悪魔は人を騙す。人を誘惑する。
門下生達はそれを知っているからドルキの言葉を鵜呑みにしてしまったのだ。
真の悪魔はドルキの方だと言うのに。
『これで分かりましたか? 貴女は一人なのですよ』
「貴女という人はあぁっっ!!」
怒りに任せて暴れ回る。
だがバインドのせいで芋虫のように地面をのたうつだけ。
『あっはっはっは。無様ですねぇ? いい気味です。
森の中で魔物に食われて居た方がまだ幸せだったのではないですか?』
「うああぁぁぁぁぁっっ!!!」
(悔しいっ! ネーアさんに助けられて、人間を止めてまで復讐を決めたのに!
こんな最低の人間に、いいようにされるなんてっ!)
憎しみの篭った目でドルキを睨み付ける。
194 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:38:27 ID:Wai8M9kP
魔力を乗せ、殺意を乗せ、耐性の無い者ならそれだけで戦意を喪失してしまうだろう。
だが非情な魔術師は不敵に笑うだけだった。
「ふぅ。ここまで来ると見苦しいばかりですね。
もういいでしょう。貴女の『親子ごっこ』にも飽きました。
――死になさい」
動けないこちらに向けて、掌をかざす。
一足で踏み込める距離だ。外しようが無い。
そしてこちらの悪足掻きすら想定し、防御結界を張る。
(私、死ぬの…?)
これは、もう詰みだ。どうしようもない。
(ごめんなさい。パセットちゃん。ごめんなさいクロトさん。
ごめんなさいネーアさん。私、負けちゃったよ…)
せめて、せめてこの人の皮を被った悪魔に、一太刀でも食らわせてやりたかった。
「さようなら。地獄であの女が待っていますよ」
赤い魔術陣から光が解き放たれた。
死ぬ。死ぬのか。いや、だとしても。
最後まで、抵抗し続けてやる。
死が確定した中で、リオはドルキの瞳から目を逸らさなかった。
もしこの世から消えても、化けて出てやる。
それくらいの意気込みで魔女の瞳を睨み付けて、
視界を、何かが遮った。
ドルキとの間に立ち塞がるように。
何者かが突然虚空から現れる。
同時にその誰かは防御結界を展開し、リオを狙った下位の攻撃魔術を弾き飛ばした。
ぎいいいいんっ!!
魔術同士が干渉し合い、摩擦を生み、耳障りな音を立てる。
辺りに眩い光を撒き散らすと、眼前の茜色のマントがはためいた。
マントの中央には『ヘスペリス』と描かれた刺繍。
「あ、貴女はっ」
ドルキが驚きの声を上げた。
周囲の人間達も、突然の乱入者に戸惑いを隠せない様子だ。
「良かった。今度は、間に合った」
乱入者から紡がれた声は美しく、聞き惚れてしまいそうだった。
(この声、どこかで…)
もうずっと聞いていない、だが聞いた事のある、女性の声だった。
ヘスペリスの女が振り向く。
流水のようなブロンドの髪。抜けるような空と同じ色の瞳。
その人物はグリーズの血を継いでいるとすぐに分かった。
「ただいま。リオ」
その女は女神のように美しい顔を僅かにはにかませた。
「姉、様…? どうして…?」
訳が、分からない。
姉は優秀だ。若くしてヘスペリスに入り、将来を約束されている。
そんな姉がどうして屋敷に戻ってきたのだ。
いや、それよりも。
(どうして、私を庇ったの?)
自分なんて姉に比べれば何の取り得も無い存在。
リビディスタの名を借りた、只の人形のようなものだ。
母の違う姉妹は、接点も殆ど持っていない。
そんな姉が、今更どうしてこの身を庇うというのだ。
「ん」
ぎゅ、とマリオンがこの身を抱き締めた。
バインド越しに、人の温もりと、彼女の思考が伝わってくる。
195 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:41:55 ID:Wai8M9kP
『遅れてごめんなさい』
『良い子にしてた?』
『寂しくはなかった?』
『手紙、出せば良かった。ごめん』
『助けられなくてごめん』
『でももう離さない』
『人間じゃなくなっても。リオはリオ』
『だから私が、守る』
(え…うそ…これが、姉様の、本心…?)
何だこれは。自分の事ばっかりじゃないか。
知らなかった。自分の味方は、屋敷の中ではパセットだけかと思っていた。
でも、こんなに身近に自分を思ってくれる人が居た。
『今まで助けられなかった分。
これからはリオの事、ずっと守り続ける。
その為に私は強くなったから』
「ふぇ…っ」
胸の内から何かが込み上げてくる。
殺伐とした愛憎劇の中、差し伸べられた希望の手。
自分の事を思い、大切にしてくれる者の意思が、絶望と憎悪にささくれた心を癒す。
「ふええぇぇぇぇぇんっっ!!」
気が付いたら泣きじゃくっていた。
さっきまでドルキと死闘を繰り広げていた悪魔はもうそこに居ない。
「姉様ぁぁっ!! 姉様ぁぁっっ!」
びーびーと子供のように泣く。
その姿に周りの人間は――ドルキさえもが唖然とした様子だった。
だが誰もが失念していたのだ。
目の前の悪魔の姿をした少女が、元はたった十二歳の子供であるという事に。
そしてそれを理解しているのは、この場でマリオンただ一人だけだった。
束縛されながらも、顔を姉の首元に押付ける。
マリオンはそれに応えるように、髪を梳いてくれた。
「よしよし」
その撫で方は、ネーアに比べれば雑で、不器用だったけれども。
『もう、大丈夫だから。大丈夫だからね』
彼女の思い遣りがあれば、それで十分だった。
「びええぇぇぇぇん!!」
門下生達とドルキが見守る中。
再開を果たした姉妹はずっと抱き締めあっていた。
***
そうしてどれくらいの時間が過ぎただろうか。
「あらあら。まあまあ。マリオン、いつの間にか帰っていたのですね。
少しばかり慌しくしていましたから気が付きませんでした」
痺れを切らしたドルキが口を開いた。
ところがマリオンは肩越しにこちらを一目見ただけで、リオをあやす作業に戻ってしまう。
その姿を見て、ふとドルキは思い出した。
(まさかマリオンは、この娘に感情移入しているのですか?)
元よりマリオンはあの女に好意を抱いていた。
駄目だと言っているのにこちらの目を盗んでは、何度もあの女の元を訪ねたくらいだ。
そしてリオはその女の娘だ。何かしら思う所があるのかもしれない。
しかしもしもそうだったとしたら。面倒な事になる。
(説得するしかありませんね)
196 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:43:34 ID:Wai8M9kP
その娘はもう悪魔だ。貴女の知っているリオではない。
涙も、嗚咽も、全て貴女を騙し、利用する為の演技だ、と。
「マリオン。気持ちは分かります。貴女はその娘を気に掛けているのですね?
ですが騙されてはいけません。その娘は悪魔へと堕ちてしまったのです。
もう貴女の知ってい、」
「黙れクソババア」
「く、クソ…? ――今何と言いましたか?」
実の娘の口から出た下品な言葉に耳を疑ってしまった。
しかもそれが自分に対する中傷なのだからますます信じられない。
マリオンはこちらの問い掛けには答えずが、ゆらり、と立ち上がった。
その顔はグリーズを連想させるポーカーフェイスのままだ。
しかし、誰が見ても彼女が腸が煮えくり返りそうなほど激怒しているのが分かった。
その背後に怒りのオーラまでも幻視しそうなほど。
(……あのマリオンが私に楯突いている?)
あの女に懐いているのは知っていたが、それでもこちらの言う事を大人しく聞いていた。
見えないところで癇癪を起こしたりする事はあったようだが、年頃の女なら普通だろう。
手塩を育ててきた実の母親に歯向かう理由にはならない。
正直、マリオンが何を怒っているのか分からなかった。
だからドルキは混乱した。
そこの憎き女の娘の味方をする理由が分からなかった。
(私よりも、あの女の娘を取るというのですか?
いえ、きっとマリオンは感情的になっているだけです。
冷静になれば、私の方が正しいと分かってくれる筈)
ここは何とか宥めて、彼女に落ち着いて貰わなければ。
でなければそこの淫魔を片付ける事も出来ない。
「マリオン。良くお聞きなさい。その娘は私の命を奪おうとしたのです。
貴女の知っているリオという娘は、そんな蛮行をするような人間でしたか?」
マリオンは返事をする代わりにこちらに向かって一歩踏み出した。
「違うでしょう? あの娘は自己主張の出来ない、大人しい娘でした。
それが、血が繋がっていないとはいえ母親を殺すなど……ありえるのでしょうか?」
聞いているのか聞いていないのか。
マリオンはこちらを怒りの眼差しで見詰めたまま、一歩、また一歩と近付いてくる。
嫌な予感がした。
「マリオン? 聞いているのですか?
――ああ、そうですね。私にも、少しばかり非はあるのかもしれません。
ですが命を奪いに来た魔物を、どうして見逃す事が出来るでしょうか?」
マリオンとの距離が縮まる。
一足で踏み込める所まで近付けば、彼女の怒気がより鮮明に感じられた。
殺意すら篭った視線に射抜かれ、額に汗が滲む。
「そ、そうそうっ。
この娘は私の命を狙うどころか、屋敷のメイド達まで手を出したのですよ?
全員、アドニスの種子を植え付けられたようです。
何の罪も無い娘達まで巻き込むなんて、非情な悪魔のする事です。
人間の仕業とは思え、」
マリオンの怒気が膨れ上がった。
「お前が、言うなあぁぁぁぁっっ!!!」
マリオンの真下に青い魔術陣が展開。
それは光の粒子を噴出し、彼女の右手へと収束していく。
(強化の魔術っ)
まずい。リオとの戦いでこちらは消耗している。
強化された攻撃をまともに喰らえば只では済まない。
197 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:47:11 ID:Wai8M9kP
迎撃か、防御か。どちらかを行わなければ。
(止むを得ませんっ)
即席で光の攻撃魔術を発動。
威力は低いが鎧の覆われてない部分に穴を開けるくらいは出来る。
脚を封じて、距離を取る。
ドルキはマリオンの細い足に狙いを定め、
次の瞬間彼女の体が掻き消えた。
しまった――そう思った時にはもう遅い。
背後に転移したマリオンが、拳を握り締め、渾身の一撃を放つ!
「死、ねえぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!」
(防御っ)
マリオンの腕が届く直前、何とか防御魔術を発動。
ぎいいいいいぃぃぃぃぃんっっ!!
耳障りな音と共に、防御結界とマリオンの腕の間で魔力の光が火花となって撒き散る。
が、マリオンの拳が光のタイルにめり込み、一つ、また一つと光の粒となって消えていく。
不安定な体勢から発動した防御結界では、怒りに我を忘れたマリオンの前では無力。
呆然とするドルキの前で、マリオンの右腕が結界に深く食い込んだ。
ばりぃんっ――防御結界が、攻撃の負荷に耐え切れずに粉砕されて、
「めぎれっ!?」
結界を突き抜けたマリオンの拳が、ドルキの厚化粧の上に食い込んだ。
***
マリオンは気付いていなかった。
リオがかつての優しい少女では無くなっている事に。
ドルキの言葉が、真実であったという事に。
ドルキを怒りのままに殴り飛ばし。
そしてリオを助け出せばそれで全てが上手くいくと思っていた。
「お陰で義母様に止めを刺す事が出来ます」
甘かった。
笑顔で母を殺すと言う妹に愕然とする。
悪魔の残虐性を表し、マリオンにチャームを掛けるとリオはドルキをいたぶり始める。
無邪気な少女の顔をしたまま、腹を蹴り、爪で顔を引き裂く。
狂ったように笑う妹に、マリオンは自分が取り返しのつかない事をしたと気付いた。
「悪い子はどこだああぁぁぁっっ!!!」
しかし。絶望的なこの状況に、一匹のアネモネが乱入した。
彼女の名前はネーア。
いや、ネーアだけではない。
あのグリーズまでもが、ドルキの危機に駆けつけた。
ネーアとグリーズ。
二百年の長寿を誇る最強のアネモネ。
リビディスタの長にして剣神の称号を持つ戦士。
この二人が居れば恐れるものなど無い。
次回、永久の果肉十三話、
愛憎劇―後編―
愛と憎しみに彩られた最悪の親子喧嘩。これにて決着。
198 永久の果肉12 ◆VBguGDzqNI sage 2010/05/10(月) 18:48:35 ID:Wai8M9kP
はーい。お疲れ様でした。
しかし読み返してみるとラストシーンの引き方ってばないですねぇ。
シリアスなのかギャグなのかw
いつものように誤字脱字感想等お待ちしておりますー。
さて。予定通り本編は次回投稿分で終了予定です。
エロシーンも、多分ありません。
まあ、その代わりと言っては何ですが。
エピローグというか後日談にてエロオンリーのお話をやるつもりです。
マリオンのエロとか各キャラの和姦などなどやり残したエロをしたいですね。
今回はこの辺りで失礼します。
また来週お会いしましょー。
洋女っ、晩、ざぁぁぁぁぁぁいい!!!
うん。これはちょっとわざとらs
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