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(帰り道での遭遇)
350 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/23(火) 01:44:55.80 ID:8lNbPl95
今日は特に暑かった。
流石に3日連続で約束を破ってしまったら、いくらあの子でも憤慨するかもしれない。
私はそんなことを思いながら通り慣れた路地を走り抜けていく。
「ああもう、……なんで今日も残業になっちゃうかなぁ……」
私はそそっかしく不器用で、おまけに頭が悪い。
今日の残業もそんなことが原因の些細なミスが重なったことによる遅れを取り戻さなくてはいけなくなったからだった。
いつもと同じ最悪な一日を私は頭の中で振り返り、あの子にメールも出していないことに気づいた。
まったく何をやってるんだ、私は!
足は止めずにカバンの中から携帯を取り出し、私は本文を打ち始めた。
「えっと……ご、ゴメン、違う、ゴメスじゃない! ええっと、ご、ゴメン、も、もうすぐ、つくから……って、わああ!」
送信ボタンを押そうとした瞬間、何かにつまづき私は大きくよろめいた。
そのままの勢いで私は斜め横にあった電柱に豪快な体当たりをかます。
ジーンと、鈍い電流が身体を伝っていくが、おかげでなんとか転ばずには済んだことにふぅと安堵の息を零した。
「あいたたた……やっぱり走りながらメールなんてしちゃいけないね……。ん? なんだろ、あれ」
ビリビリとしびれる左肩をさすりながら、私は自分がつまづいた何かに目を向けた。
それは……なんというか、ヘンだった。
いつも私を照らしてくれる電灯が今日はチカチカと点滅しているから、よくは見えなかったけど、それはどこかヘンだった。
いつの間にか肩の痛みも忘れ、私は引き寄せられるように明滅を繰り返す電灯の下に来ていた。
「まっくろ、だ……」
そう、真っ黒。
伝統の下にあったのは、真っ黒な人影のようなものだった。
マネキンに黒い全身タイツをかぶせて寝かせているかのようなそれは、私のいつもの日常にはとても似合わないものだった。
と、その時だった。
細かな明滅を繰り返していた電灯がぷっつりとその活動を止めた。
私は突然のことに思わず真上の電灯を見上げた。
べちゃ――
そんな音が鼓膜を揺らしたのと、電灯がいつものように明るく私を照らし始めたのは同時だった。
351 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/23(火) 01:45:28.90 ID:8lNbPl95
「んんんんっっっっ!!」
悲鳴が思わずお腹の中から溢れ出ていた。
だけどそれは私の身体が意図した音が出ることはなく、こもった叫び声となって私の中へと戻っていく。
それは私の口を、いや、顔の下半分を緑色に光るクラゲみたいな生物が塞いでいたからだった。
「んんんぅううううっぅつっ!」
そレを見て、私は更に狂ったように喉を震わす。
ただその私の声はクラゲの傘の部分をわずかに膨らましただけで、再び私の中に戻ってくる。
やばい、やばいやばいやばい怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!
頭の奥でありえないほどに早くなる鼓動の音。
それが鳴り響く中、私は息をすることも忘れて必死の抵抗をした。
「んっっっ! んぅぅぅぅぅ!」
まるでマスクを引っ掛けるように耳に絡みついたそのクラゲの触手を剥がそうと爪を引っ掛けてもがいた。
それでも外れないから、気持ち悪いけどクラゲの傘の部分を掴んで思いっきり引っ張った。
ギチギチと耳の付け根が悲鳴を上げるのも構わず、引っ張った。
すると、私の唇にずっと重なっていたクラゲの傘が少しだけ離れ、ヌメった私の唇が湿った空気を感じた。
そのスキに、私はすかさず大きく息を吸い込んでめいいっぱいの叫び声を放とうとした。
路地裏で人通りが少なく、右も左も塀に囲まれているけど、その向こうには家がある。
大声を出せばきっと誰かが気づく……!
だけども大きく吸い込んだ息はそのまま、私のお腹の中へと押し戻されていった。
「っ、ひぁっ、だ、んぐうううぅぅううううう!?」
助けを求めるための最初の言葉がわずかに出た瞬間、ぐにゃっとしたものが私の口の中に入り込んできた。
それが自らの身体を縦長に丸めたクラゲだと分かるまでに、そう時間はかからなかった。
ただ、このクラゲが私の抵抗を先読みしてそんな行動に出たのだと理解したとき、言いようのない恐怖が胸の中に広がった。
「ん、ぐぅう、ぐっ、ちゅ!」
助けを求めることなど二の次に押し込め、なんとかそれを吐き出そうと私はもがく。
ただ、呼吸さえもままならない私の身体は既にろくな抵抗もできず、異物感に苦しむ喉だけが最後の防衛線となっていた。
352 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/23(火) 01:46:10.17 ID:8lNbPl95
そして、その防衛線が必死の抵抗を続けているとき、私はハッと閃いた。
そうだ……気持ち悪いけど、噛んじゃえばいい!
唇からだらりとたれている傘の先端を噛み切れば、きっと痛みでひるむはず。
その好きに吐き出して、走れば……逃げられるっ!
その閃きに、仕事の時もこうやって頭が働けばなぁと、のんきな考えが一瞬頭をよぎった。
それだけこの閃きに、私は安堵感と確信を持っていた。
そう、タコ! タコと思って噛みつけばいい!
噛みついて犬みたいにブルブルと頭を震えば、きっと噛みちぎれる!
私はそう自分に言い聞かせ、顎を一瞬を緩め、そして一気に力を込め――
「んぁ……あ……ぁ……」
……え?
あれ……? あれ……?
何かが、おかしかった。
身体が、ない。
そう表現するのが一番近しい感覚が、ただ呆然と私の中に残った。
必死の抵抗を続けていた息の苦しさも、喉を支配していた異物感も、汗で湿ったブラウスの感触も……どこかに飛んでいってしまった。
まるで身体が空に飛んでいるかのようだった。
……なんだか、このままでいたいな……。
そんな思いが頭をよぎったとき、力の抜けた両目がそれを捉えた。
だらりと垂れ下がるクラゲの傘から伸びる2本の触手。
それが私の鼻の中に入り込んでいるところを。
ぷつん。
額の部分から後頭部に何かが通り抜けていくような感覚。
それと同時にクラゲは、まるでパチンコを放とうとしているゴムのように、その身を私の唇の向こうへと伸ばした。
「んっ、あ~ん♪」
なんとものんきな私の声。
でもそれは、私が意図して出したものではなかった。
その次の瞬間、クラゲはその身を一気に私の口の中へと飛び込ませてきた。
353 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/23(火) 01:47:27.05 ID:8lNbPl95
「ん♪ ……んぐぅっっぅううう!? んんんんんん!」
そのクラゲの動作の一瞬後になって、私の身体は感覚を取り戻し、本能的にそれを吐き出そうと喉を脈動させる。
だけどもまるでゲル状の何かが喉を降りていくかのように、それはゆっくりと私の中へと降下していく。
駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ぇえええええええ!
「んっ、ごく、んっ……」
あっけない音と共に、それは私の喉を通って、私の中へと取り込まれてしまった。
私は何が起きたかわからなくて、口をパクパクとさせながら、喉を掴む。
まるで、自分の命をここで終わらせるかのように。
それはまるで私の人間としての身体が生命の遺伝子として起こしている、拒絶反応のように感じられた。
『あらあら、ダメよ、そんなことしちゃ♪ 私の大切な身体なんだから』
聞いたことのない口調で、私の声が頭の中に響く。
……誰?
『くすっ、私が誰であるかなんてどうでもいいわ。だってそんなこと……意味がなくなるもの』
私の問いかけに、私の声で答えるそれ。
それ? ……それって……どれ……?
あれ……? 私って、ん……? あれ、私って、どれ……だっけ……?
『だから言ったでしょ。意味がなくなる、って』
意味? 意味……意味、って、なんだっけ?
あれ、なんで私、自分に向かってそんなこと聞いてるんだろう?
だって私は――。
「『“私”じゃない。くすっ。なに言ってんだろ、私』」
そう……私は、私。
さぁ、早く帰らないと。
あの子が待ってる。
「くすっ。えっと……待っててね。今、帰るから♪」
私はメールの本文にそう打ち込んで、送信ボタンを押した。
今日は特に暑かった。
流石に3日連続で約束を破ってしまったら、いくらあの子でも憤慨するかもしれない。
私はそんなことを思いながら通り慣れた路地を走り抜けていく。
「ああもう、……なんで今日も残業になっちゃうかなぁ……」
私はそそっかしく不器用で、おまけに頭が悪い。
今日の残業もそんなことが原因の些細なミスが重なったことによる遅れを取り戻さなくてはいけなくなったからだった。
いつもと同じ最悪な一日を私は頭の中で振り返り、あの子にメールも出していないことに気づいた。
まったく何をやってるんだ、私は!
足は止めずにカバンの中から携帯を取り出し、私は本文を打ち始めた。
「えっと……ご、ゴメン、違う、ゴメスじゃない! ええっと、ご、ゴメン、も、もうすぐ、つくから……って、わああ!」
送信ボタンを押そうとした瞬間、何かにつまづき私は大きくよろめいた。
そのままの勢いで私は斜め横にあった電柱に豪快な体当たりをかます。
ジーンと、鈍い電流が身体を伝っていくが、おかげでなんとか転ばずには済んだことにふぅと安堵の息を零した。
「あいたたた……やっぱり走りながらメールなんてしちゃいけないね……。ん? なんだろ、あれ」
ビリビリとしびれる左肩をさすりながら、私は自分がつまづいた何かに目を向けた。
それは……なんというか、ヘンだった。
いつも私を照らしてくれる電灯が今日はチカチカと点滅しているから、よくは見えなかったけど、それはどこかヘンだった。
いつの間にか肩の痛みも忘れ、私は引き寄せられるように明滅を繰り返す電灯の下に来ていた。
「まっくろ、だ……」
そう、真っ黒。
伝統の下にあったのは、真っ黒な人影のようなものだった。
マネキンに黒い全身タイツをかぶせて寝かせているかのようなそれは、私のいつもの日常にはとても似合わないものだった。
と、その時だった。
細かな明滅を繰り返していた電灯がぷっつりとその活動を止めた。
私は突然のことに思わず真上の電灯を見上げた。
べちゃ――
そんな音が鼓膜を揺らしたのと、電灯がいつものように明るく私を照らし始めたのは同時だった。
351 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/23(火) 01:45:28.90 ID:8lNbPl95
「んんんんっっっっ!!」
悲鳴が思わずお腹の中から溢れ出ていた。
だけどそれは私の身体が意図した音が出ることはなく、こもった叫び声となって私の中へと戻っていく。
それは私の口を、いや、顔の下半分を緑色に光るクラゲみたいな生物が塞いでいたからだった。
「んんんぅううううっぅつっ!」
そレを見て、私は更に狂ったように喉を震わす。
ただその私の声はクラゲの傘の部分をわずかに膨らましただけで、再び私の中に戻ってくる。
やばい、やばいやばいやばい怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!
頭の奥でありえないほどに早くなる鼓動の音。
それが鳴り響く中、私は息をすることも忘れて必死の抵抗をした。
「んっっっ! んぅぅぅぅぅ!」
まるでマスクを引っ掛けるように耳に絡みついたそのクラゲの触手を剥がそうと爪を引っ掛けてもがいた。
それでも外れないから、気持ち悪いけどクラゲの傘の部分を掴んで思いっきり引っ張った。
ギチギチと耳の付け根が悲鳴を上げるのも構わず、引っ張った。
すると、私の唇にずっと重なっていたクラゲの傘が少しだけ離れ、ヌメった私の唇が湿った空気を感じた。
そのスキに、私はすかさず大きく息を吸い込んでめいいっぱいの叫び声を放とうとした。
路地裏で人通りが少なく、右も左も塀に囲まれているけど、その向こうには家がある。
大声を出せばきっと誰かが気づく……!
だけども大きく吸い込んだ息はそのまま、私のお腹の中へと押し戻されていった。
「っ、ひぁっ、だ、んぐうううぅぅううううう!?」
助けを求めるための最初の言葉がわずかに出た瞬間、ぐにゃっとしたものが私の口の中に入り込んできた。
それが自らの身体を縦長に丸めたクラゲだと分かるまでに、そう時間はかからなかった。
ただ、このクラゲが私の抵抗を先読みしてそんな行動に出たのだと理解したとき、言いようのない恐怖が胸の中に広がった。
「ん、ぐぅう、ぐっ、ちゅ!」
助けを求めることなど二の次に押し込め、なんとかそれを吐き出そうと私はもがく。
ただ、呼吸さえもままならない私の身体は既にろくな抵抗もできず、異物感に苦しむ喉だけが最後の防衛線となっていた。
352 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/23(火) 01:46:10.17 ID:8lNbPl95
そして、その防衛線が必死の抵抗を続けているとき、私はハッと閃いた。
そうだ……気持ち悪いけど、噛んじゃえばいい!
唇からだらりとたれている傘の先端を噛み切れば、きっと痛みでひるむはず。
その好きに吐き出して、走れば……逃げられるっ!
その閃きに、仕事の時もこうやって頭が働けばなぁと、のんきな考えが一瞬頭をよぎった。
それだけこの閃きに、私は安堵感と確信を持っていた。
そう、タコ! タコと思って噛みつけばいい!
噛みついて犬みたいにブルブルと頭を震えば、きっと噛みちぎれる!
私はそう自分に言い聞かせ、顎を一瞬を緩め、そして一気に力を込め――
「んぁ……あ……ぁ……」
……え?
あれ……? あれ……?
何かが、おかしかった。
身体が、ない。
そう表現するのが一番近しい感覚が、ただ呆然と私の中に残った。
必死の抵抗を続けていた息の苦しさも、喉を支配していた異物感も、汗で湿ったブラウスの感触も……どこかに飛んでいってしまった。
まるで身体が空に飛んでいるかのようだった。
……なんだか、このままでいたいな……。
そんな思いが頭をよぎったとき、力の抜けた両目がそれを捉えた。
だらりと垂れ下がるクラゲの傘から伸びる2本の触手。
それが私の鼻の中に入り込んでいるところを。
ぷつん。
額の部分から後頭部に何かが通り抜けていくような感覚。
それと同時にクラゲは、まるでパチンコを放とうとしているゴムのように、その身を私の唇の向こうへと伸ばした。
「んっ、あ~ん♪」
なんとものんきな私の声。
でもそれは、私が意図して出したものではなかった。
その次の瞬間、クラゲはその身を一気に私の口の中へと飛び込ませてきた。
353 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/23(火) 01:47:27.05 ID:8lNbPl95
「ん♪ ……んぐぅっっぅううう!? んんんんんん!」
そのクラゲの動作の一瞬後になって、私の身体は感覚を取り戻し、本能的にそれを吐き出そうと喉を脈動させる。
だけどもまるでゲル状の何かが喉を降りていくかのように、それはゆっくりと私の中へと降下していく。
駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ぇえええええええ!
「んっ、ごく、んっ……」
あっけない音と共に、それは私の喉を通って、私の中へと取り込まれてしまった。
私は何が起きたかわからなくて、口をパクパクとさせながら、喉を掴む。
まるで、自分の命をここで終わらせるかのように。
それはまるで私の人間としての身体が生命の遺伝子として起こしている、拒絶反応のように感じられた。
『あらあら、ダメよ、そんなことしちゃ♪ 私の大切な身体なんだから』
聞いたことのない口調で、私の声が頭の中に響く。
……誰?
『くすっ、私が誰であるかなんてどうでもいいわ。だってそんなこと……意味がなくなるもの』
私の問いかけに、私の声で答えるそれ。
それ? ……それって……どれ……?
あれ……? 私って、ん……? あれ、私って、どれ……だっけ……?
『だから言ったでしょ。意味がなくなる、って』
意味? 意味……意味、って、なんだっけ?
あれ、なんで私、自分に向かってそんなこと聞いてるんだろう?
だって私は――。
「『“私”じゃない。くすっ。なに言ってんだろ、私』」
そう……私は、私。
さぁ、早く帰らないと。
あの子が待ってる。
「くすっ。えっと……待っててね。今、帰るから♪」
私はメールの本文にそう打ち込んで、送信ボタンを押した。
(転性)
332 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:33:08.10 ID:7QBX1G3o
暑い夏の日。
死に場所を求めていた僕が樹海の奥底で出くわしたバケモノ。
それは、地面から伸びる一本の図太い触手だった。
『ねぇ……食べて、いい? きみの全て、もらっていい?』
ニュルニュルと蠢くそれは蠅を飲み込む食虫植物のように、四方へその身を裂いた。
赤黒くドクドクと脈打つ触手の中から、ダラリと粘っこい液体が僕の顔へと垂れてくる。
「……いいよ」
もはや自分の答えなど必要なさそうにも感じたが、口が勝手に動いていた。
背中のリュックに入った無機質な縄で最後を遂げるよりも、
それはまだ苦しくなさそうに見えたからかもしれない。
『そう♪ じゃあ遠慮なく……』
暗闇が迫ってくる。
木陰の御蔭で免れていた湿度に混じった暑さとは違う、生物的な暖かさを肌の向こうで感じた。
程なくして、僕の身体を触手が締め付けてきた。
苦しさはあるものの、やはり始めに考えていた最後よりも痛みはない。
加えて少しずつ僕を奥へ奥へと飲み込もうとする触手の脈動は、
21年前にいたハジマリの場所を連想させ、僕の心を安心させた。
『ふふっ……おやすみなさい……』
そして僕は、バケモノに食べられた。
333 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:34:39.95 ID:7QBX1G3o
――あたたかい。
肌の向こうから感じるぬくもりに、ボクの頭から単語が溢れた。
その単語を堺に、ボクの意識は急速に微睡みから目覚め始めた。
ゆっくりと、瞼を開く。だけど何も見えない。
見えなくてもいいじゃないかとボクは思ったのだけど、
ボクの身体は勝手に瞬きを繰り返し、やがて緑色に染まった世界をボクに見せてみせた。
そんな世界でも、鬱蒼とした森が広がっているのがよく見えた。
それはいつか映画で見た、死闘を求めて宇宙を彷徨う某狩猟宇宙人の視界に似ていた。
視覚が戻ると、身体の五感が一気にスタートアップを始めた。
「ん……ん、ごポ……」
そして嗅覚を感じようと息を吸おうとしたとき、ボクは液体に包まれていることを理解した。
その液体の質感にボクは覚えを感じ……そして全てを思い出した。
その時だった。
瞼を閉じれば再び眠れそうなボクの周りの小さな空間が、いきなり崩壊を始めたのだ。
そしてボクの身体は重力に従い、地面へと落とされた。
「ぐっ! ゲホッ、ゲホッ……!」
背中を打つと同時に身体の中を行き渡っていたその液体を宙へ吐き出す。
随分と久しぶりに感じる重力に、ボクは思わず気持ちが悪くなった。
『大丈夫、落ち着いて……』
混乱にグルグルと回転する脳に、誰かの声が静かに響く。
明らかに耳の奥底から聞こえてくるその声は、不思議と不安定なボクの気持ちをスッと安定させた。
「っ、はぁ、はぁ……」
『そう、その調子……ゆっくりと呼吸を繰り返すの』
身体が本能的に覚えていた呼吸法で、程なくして視界も安定を取り戻していく。
緑色の世界が静まるのと引き換えに黒が主体の色が世界が目の前を包み込む。、
わずかな月明かりに照らされた足元のヒメジョオンに目の焦点が合わさるのと、ボクが疑問を口にしたのはほぼ同時だった。
「……なんで……」
『クスッ……残念? 死ねなくて』
その純粋なボクの落胆を楽しむように、頭の中の声がほくそ笑んだ。
334 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:35:33.27 ID:7QBX1G3o
『でも誰も殺すなんて言ってないしね。と言っても、もう1年も前だし覚えてない、か』
「いち、ねん……?」
唐突に聞かされた時の経過に、ボクは記憶の栞を辿った。
その中で一番手前にある記憶は……そう、この頭の中に響く声の主に食べられた記憶だった。
それはつい昨日のことのように感じられながらも、どこか形が古ぼけていた。
『ほら、後ろの“繭”。その中でアナタは1年間眠っていたのよ?』
「ま、ゆ……?」
頭の中の声に従い、ボクは背後を振り返った。
するとそこには薄緑色の薄皮に包まれた半球体がぽうっと存在していた。
その上部はまるで花が開いたかのように四方にめくれ、球体を維持している下部は透明な液体で満たされていた。
それが、さっきまでボクの身体を包み、満たしていたあの液体だということは容易に想像がついた。
そして……ようやくボクは、僕でなくなっていることに気づいた。
「こ、れ……だれ……?」
『誰って……アナタしかいないでしょ?』
困惑したボクの調子にわざと合わせるかのように、頭の中の声は答えた。
このか弱くも肉付きの良い華奢な腕も、月夜に照らされ白く光る肌も、下半身を隠すこの胸も……ボク?
いや……こんなの僕じゃない。
『うん。その身体は。アナタと私の……そう、きみと私の子供の身体』
ボクの否定を頭の中の声は肯定し、突拍子のない真実を口にした。
「ボクとキミの、こ、こど、も……?」
『そう。きみの精子を私の中で培養して作った子供。それが今のアナタの身体』
そんなのSFだ、と笑い飛ばすことは今のボクには到底できなかった。
ただただ困惑する頭で、なんとか現実を理解しようとすることだけが、ボクのできる唯一の努力だった。
335 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:36:52.19 ID:7QBX1G3o
”ここ”という言葉だけがやや右の方から聞こえ、ボクは促されるままに右の方向を向く。
するとそこには先ほどの繭と同じものがそこにあった。
薄い皮の向こうには確かに、僕の姿があった。
だけどその身体は体育座りのように丸くなり、まさしく眠っているかのようにふたつの瞼も静かに閉じられていた。
『言っとくけど、返さないわよ?』
ボクは意思を伝える前に、頭の中の声は返答をした。
「な、なんでよ!」
『当たり前でしょ。だって、もう私のだもん』
その頭の中の言葉を示すように、繭の中の僕はうっすらと目を開け、そしてニヤリとボクに笑いかけてきた。
薄皮の向こうにいる実像の僕のその表情に、ボクは思わず後退りをしてしまう。
しかしそれを踏ん張って、ボクは僕を取り戻そうと右足を一歩、繭の方向へと右足を――
「言っておくけど、この身体も私のモノだよ?」
踏み出せなかった。
持ち上がった右足が一瞬宙で停止すると、ボクの身体は急にボクの意思とは関係なく動き出した。
「この右足も、この右手も、この胸も、子宮も、脳みそも……そして、キミ自身も、ね。ふふっ」
ボクの身体でボク以上に自然に振舞うその身振り手振り口振りに、ボクは自分が一体どこにいるのかが分からなくなってしまう。
でも、たとえ身体がこの頭の中の声のモノだとしても、このボク自身はボクのものだ。
決して、頭の中の声のモノじゃない。
しかし下腹部から急にこみ上げてきた熱さが、そんなボクの答えをねじ伏せた。
336 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:37:48.95 ID:7QBX1G3o
「ふ、ぁ……! んっ、うぅ……」
突然のその感覚に嬌声が漏れ、思わず右手でむき出しの股間を覆い隠す。
それでも手のひらの向こうに存在する穴の奥底の場所からの火照りに、思わず両膝がくっつきあってしまう。
『ふふっ、感じてきたでしょ? 身体と、キミの心が』
再び頭の中に戻ってきた声は、いかにも自分がそうさせていると主張するように、嬉々とした口調で続ける。
『その気持ちよさはキミの身体が感じさせてるもの。でも、その感覚に“迷っている”のはキミの心自身、でしょ?』
そう。ボクは迷っていた。
ボクの身体の下腹部の火照りに応える方法は、本能的にわかっていた。
それは例えるなら、虫に刺されて痒くなったところを掻くような、ごくごく自然な行動だった。
『挿れたいんでしょ、その穴の中に指を』
頭の中の声が、ボクの心を代弁する。
ぷっくりと膨れた陰核に指先が触れるだけで、全身を痺れるような快感が走り抜ける。
ジリジリとくすぶっている欲求が、全てを飲み込む炎のように、その熱を上げていく。
『ねっ? キミのその綺麗な指先で、もっとグチャグチャにしたくない?』
「うっぅ……だ、ダメ、だよ、こん、なのっ……!」
内なる声から逃れるように頭を振るが、右手は股間から剥がれようとはしなかった。
一方で、左手が胸の突起を乱暴に揉みしだいていることにボクが気づいてしまったとき、
無意識下で右手の中指がボクの中へと滑り込んでしまった。
「ひっ、あっ!」
『あはっ、挿れちゃったね。ふふっ、気持ちいいでしょ?』
腹部に入り込んでくる異物感にボクは虚空を見上げ、快感の波に身を委ねる。
337 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:38:23.78 ID:7QBX1G3o
『ありゃまぁ、軽くイっちゃった?』
「だ、だめだよ、こんなの……」
『んふふ、そんなこと言いながらも身体はしっかりと素直なんだから』
「ふ、ぁ……!」
頭の中の声が言うとおりだった。
ボクは否定の言葉を口にしながらも、入り込んだ指で自らの中をかき回しつつ、
さらなる快感を求め続けていた。
どうすればもっと気持ちよくなれるのか、という純粋な気持ちでボクはひたすらに全身をまさぐり始めた。
「んぅ! ち、くびが、きもちい、っ!」
『ひぁ……私まで感じてきちゃった……♪』
先程まであった羞恥心は既に頭からはとっくのとうに剥がれ落ち、木の幹にもたれ掛かって白い息を吐き出し続けた。
ただ、ガサガサの木の幹は体に電流が走るたびボクの皮膚に引っかかり、その小さな苦痛がボクに少しだけ理性を残してくれていた。
そんな時、まるで慕ってくる動物のように、優しい力使いでボクの身体に何かが絡みついてきた。
「ひぁぅ! な、なに……!?」
『ふふっ、大丈夫。動かしてるのは私だから。ほら、こっちのほうがラクでしょ?』
ボクの両足と下腹部に巻き付いたそれは、見た目は森というよりジャングルに生い茂っていそうなツタのようだが、
そのウネウネとした動きは海をゆらめくタコを彷彿とさせた。
突如出現したその触手に、ボクは思わず呆然と身を硬直させてしまった。
『あ~もう、危なくなっていば。ほ、らっ♪』
その動きはまるで獲物ににじり寄るヘビのようだった。
下腹部に絡みついていた触手が乳首に、両足に絡みついていた触手は秘所に近づき、その丸っこい先端が開いたかと思うと、
粘りっけのある液体を垂らしながら、ぷっくりと膨れたそれぞれの敏感な部分に噛み付いてきたのだ。
その瞬間、ボクはまた快楽の渦の中へと一気に引きずり込まれた。
338 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:40:12.33 ID:7QBX1G3o
「っあぅ!? やっ、だっ、んんぅぅぅう!」
自分でいじった時とは全く別の刺激に、ボクの身体を激しい電流が駆け巡る。
しかしボクはどれだけ暴れようと、身体に絡みついた触手が丁寧に身体をつなぎとめてくれた。
それはまるで心地よく揺れるハンモックのようだった。
それでも触手の先端はしっかりとあまがみを続け、時折いやらしい音を立てて吸い付けてくる。
「っあぅううぅ! らっ、めっ! こんなっ、きもちよす、っぅう!」
『ひゃぅっ♪ そろそろ、かなっ……』
どこか艶っぽい頭の中の声がボクの高まりを後押しする。
木々の隙間から夜空を見上げ、何もしなくても快感を与えられるということに更なる快感を覚えながら、
ボクは何かが下腹部の奥から出ようとしているのを感じた。
それはオトコノコの時のあの気持ちよさに似ていて、自然と息が小刻みに震え始めた。
「で、るぅ……♪ なにか、出ちゃうっっっ……!」
『う、んっっ♪ いこっ、いっしょ、にっっ……!』
いっしょに、という言葉がボクの全てをぎゅっと抱き込むように感じ、身体から溢れる快感に身を委ねた。
「『ふっ、あっっっっっっっううううううう♪』」
頭を後ろに投げ出し、全身を支配する快感に何度も身体を震わせる。
音が消えた耳の奥底に時折、びしゃっと響く粘っこい音がボクがイッたことを実感させてくれていた。
『んぅぅ……たまんない♪ ほらっ、いっぱい出てる……♪」
「ぁっ♪ ……ぅ、ん……♪」
段々と快感の波が引いてくると、頭の中の声に従い、触手がボクの頭をゆっくりと持ち上げてくれた。
そしてボクは未だ快感が残る秘所に目をやると、その快感の小さな波に合わせて、
液体のようなものがびしゃりびしゃりとボクの中から外へと溢れ出ているのが見えた。
そのままボクはしばらくの間、先ほどの大波の余韻に浸りつつ、その様子を眺めていた。
339 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:41:44.09 ID:7QBX1G3o
『……よし、お疲れ様♪』
頭の中の声がそんな言葉を口にすると、触手たちは優しくボクを地面へと降ろしてくれた。
あれだけの快楽に身を委ねていたのに、不思議と身体に疲労感はなかった。
「ふぅ……ひゃっ!?」
火照ったままのむき出しのお尻に触れる、夜露に濡れた葉っぱの程よい冷たさに思考を停止していると、
爪先にぬるっとした感覚をボクは感じ、間の抜けた声を吐き出した。
『あっ、こら。だめだめ、暴れちゃ。その子、さっきキミが産んだ“子”よ』
「えっ? ひぅぅ!」
頭の中の声に疑問を抱いた一瞬の隙に、その感覚はボクの下腹部まで這い上がっていた。
その一瞬、ボクの下半身がぬらっと光るのを見て、ボクは目を凝らした。
そしてボクは気づいた。
その感覚の原因が、先ほどボクの中から溢れ出したあの液体であったことに。
見た目は無色透明な液体なのだが、月明かりに照らされた部分が妖しく煌き、
獲物を丸呑みするかのように脈動しながらボクの頭の方へと迫ってきていた。
本能的な危機感を感じながらも声を出すことも忘れ、しかし身体をよじらせてなんとかその動きを止めようとボクはもがく。
身体からそれをはじき飛ばそうと両手を払うものの、今度はその手の指先にしっかりと液体が絡みつき、
肩の方へとせり上がってくる。
やがて抵抗むなしく、ボクの首までの身体の表面はその液体に覆い尽くされてしまった。
心臓がドクンと脈を打つたびに小さな波を立てながら全身を愛撫するその液体を、ボクはなすすべもなく見つめていた。
「ぅぅ……え……? っぁ……!」
快感とは微妙に違う全身の感覚にボクが戸惑いの声を上げると、液体が繭の中のそれに似た緑色の光を発し始めた。
それらは全身を行き交う血液のように蠢き、何とも言えないもどかしさにもじもじと身体をくねらせた。
数秒ほど経つとその光と感覚はなりを潜め始め、ボクの身体は再び月明かりによって色付けがされた。
するとそこには、黒いセーラー服に身を包んだボクの姿があった。
342 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/22(月) 02:17:11.94 ID:L/Rb1QRm
『うんうん、よく似合ってる』
「こ、これって……?」
『それはさっきキミが産んだ子が擬態してくれてるの。ふふっ、よくできてるでしょ?』
擬態、という言葉にボクはこれが偽物なのかと思わず手が伸びた。
人工的なセーラー服の布地の感覚、スカートの裾の翻り具合、ツルツルとしたいやらしいパンストの締め付け具合。
とてもではないが偽物とは思えないその感覚にボクが驚いていると、不意に秘所を何かが撫でていった。
「ひゃうっ!?」
『あはは、キミが好きだからじゃれてるみたい。まぁ“おかあさん”だもんね』
「お、おかあさんって……ボク、が……?』
『もちろん。キミ自身、さっきその子が自分のナカから生まれたのを見たでしょ?』
そうは言われても理解が追いつかないボクに、頭の中の声は続ける。
『キミが宿ってるのは私が持ってきた“卵”とオトコノコのキミの“種”で産まれた子供のカラダ。
つまり、その子供においてキミはおとうさんで私がおかあさん、ってこと。ふふっ』
嬉々とた様子で説明する頭の中の声の言葉に、ボクはちらりと繭の中で眠る僕の身体を見た。
いつの間にかボクに笑いかけたあの不気味な表情はなりを潜め、彼はゆっくりと眠っているようだった。
『そしてその子供、つまり今のキミが寝ている間に、“種”を仕込んでおいたの。今度は私が、ね。
それがキミの中の“卵”と結びついてその子が生まれたの。まぁ本来、人の“卵”じゃ生まれないんだけど、
なんせ今のキミの身体は見た目こそ人間だけど、その中身は人間と“エイリアン”のハーフだからね』
饒舌に非現実的な言葉を羅列した頭の中の声は、やっとその正体をボクに明言した。
不思議とボクに大きな驚きなかった。
それは頭の中の声のとおり、ボクが既に人間じゃなくなっていることを裏付けているようにも感じた。
そのせいか、ボクの口からはひどく冷え切った質問が溢れた。
「目的は、地球の侵略、とか?」
『う~ん、そんな大それたものじゃないんだけど……。第一目的は私という個体の維持だけど、
まぁでもどうせなら、家族を増やしたいかな』
この星の外にも“家族”という概念があること、ボクは喜びと悲しみを覚えた。
343 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/22(月) 02:17:57.54 ID:L/Rb1QRm
『とは言っても、私たちはキミたちと違って安定した“肉体”がないの。ただ、生命体に宿って支配することができる。
いわゆる……そう、寄生。今の私は、ほらこの木に宿ってるの』
ゆらりと現れた触手が示す、繭の隣の木。
それはこの森の中でも一際小さい、わずか2mほどの小さな木だった。
『1年前にキミがこの森を訪れるよりも少し前に、私は不時着して、その時は寄生していた別の星の生命体……つまり、、
キミたちから見れば宇宙人の身体に宿ってたんだけどその身体が力尽きちゃって、
色々な設備とかも壊れちゃて……弱った私がやっと宿れたのはこの木だけだったの』
その言葉に合わせて、どこか自虐的に触手を震わせてかか、頭の中の声は続けた。
『でもこの木に宿ったのはいいけど、これだけ背が低いと陽の光も当たらないから光合成のエネルギーが手に入らなくて……、
かと言って別の何かに寄生し直すだけの力も残っていなかった。……正直、あの時はもう諦めてた』
「……そこに、僕がやってきた」
『ふふっ、そう。私と同じように、生きることを諦めたキミが、ね』
触手がふわりとボクの頬を愛でるように撫でた。
『そしてキミを取り込んだあと、私はキミだったものの“種”を食べて私自身を回復させてながら、
唯一残った私の“卵”にキミだったものの“種”を植え付けた。そして1年後の今日、やっとその卵が孵った』
「それが……この、身体」
『そう。私とキミの、子供』
ボクは改めて自分の身体を見下ろした。
白い指先、たわわに実った胸のふくらみ、華奢ながらも艶やかに伸びた足。
僕の“種”から生まれたというその身体を見てから、ボクは言った。
「じゃあなんで……ボクは自分自身の子供の身体に宿っているの?」
『その理由は簡単。私の力が完全じゃなくて、その身体に魂が作れなかったから、代わりにキミの魂を入れてあげたの。
人間ってそう考えるとすごいわよ? 無意識でも孕みさえすれば魂を作れちゃうんだから』
頭の中の声に言われて、ボクも確かにと少しだけ感心してしまう。
『魂っていうのは身体じゃなくて心から生まれるものだから。ほら、キミが生んだその子。
その子はキミが母体となっていたから魂が宿っているの』
その言葉に呼応するように、服に擬態しているボクの子供は優しくボクの身体を少し締め付けてきた。
きっと本来のセーラー服には存在していないであろうポカポカとした暖かさを、ボクは一瞬だけ感じた。
344 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/22(月) 02:20:12.09 ID:L/Rb1QRm
『私がキミをその身体に定着させて1年間育ててきた理由の一つは、つまり私の代わりにキミに子供を生んでもらうため。
もう一つは……』
焦らすように、頭の中の声は間を開ける。
だけどボク自身もはやそれは気になることではなく、頭の中の声もそれを察したのか、程なくしてもうひとつの理由を口にした。
『それはキミに興味を持ったから』
「ボク、に?」
どうとでも捉えることができそうなアバウトな答えにボクが聞き返すと、頭の中の声はなめらかに答えた。
『そっ。だって死にたい死にたいって自分の身体に言わせておきながら、心は生きたい生きたいって言ってるんだもん。
ヘンな子だなぁ、って思ったから』
「ボ、ボクは生きたいなんて思ってない!」
考えるよりも先に、口が先に動いていた。
それを待っていたかのように、頭の中の声は笑う。
『ほら。キミはよくも考えもせずに死にたいって言ってるだけ。死にたいんじゃなくて、死んで“楽になりたい”だけ』
「っ! ……ボクの……ボクの何が分かるんだよ、キミに!」
またしても口が勝手に動く。
この感覚を、ボクは1年前にも味わっていた。
そう、今と全く同じように目の前の触手へと僕は辛さをぶちまけ、そして彼女は僕の話を静かに聞き、そしてボクを優しく食べた。
だけどその時と、今は違った。
『そっ。じゃあ、死ねば』
「えっ……? ぐっ、うぐんんぅぅううううう!?」
それは一瞬の出来事だった。
目の前の触手がわずかに身をくねらせたかと思うと、乱暴にボクの口へと侵入してきたのだ。
さらにいつの間にか周りを取り囲んでいた触手に四肢が拘束される。その力はまるでボクを引き裂かんとするかのように容赦がない。
『このままキミの心を食べちゃえば、キミの心は死ねるわ。キミの望み通りに、ね』
一瞬、胸の奥から身体が引きずり出されるような感覚を感じ、そして何も感じなくなった。
ただ次の瞬間には口から続く異物感と共に、言いようのない苦しみが全身を襲った。
『ふふっ、今キミの心にアマガミしてあげたの。どう? 死にそうだったでしょ』
温かみを失った頭の中の声が冷ややかにボクに囁いた。
345 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/22(月) 02:20:46.62 ID:L/Rb1QRm
『まぁキミの元の身体は私の栄養分として、子供の身体は人間との接触に、それぞれだ~いじに使わせてもらうから、安心して』
先ほどこの身体がボクの意思とは無関係に言葉を喋ったことを思い出した。
そうだ。ボクはこの身体を使わせてもらっているに過ぎなかったんだ。
彼女にしてみれば、その逆。使わせて上げているに過ぎない。
なのにボクが死にたい死にたいといったのが、逆鱗に触れてしまったのだろう。
身体は苦しいはずなのに、頭の中はそんなことが考えられるくらいにボクは冷め切っていた。
それは捕食者と非捕食者の関係がどうしようもないぐらいに理解できたからであった。
でも、彼女はボクの心を食べることはしなかった。
「っ……んげほっ、ぐぅtゲホッゲホッ!」
突然ボクの中に入り込んだ触手が逆流して抜け出たかと思うと、四肢を拘束していた触手たちもボクを解放した。
地面に四つん這いになり、酸素を取り込むボクの背中を優しく撫でてくれる感覚を感じた。
それが身にまとっているボクの子供がしてくれていることだと、ボクはすぐに気づいた。
苦しいのに、胸がポカポカと暖かくなるその懐かしい感覚に、ボクは思いを巡らせてから言った。
「はぁはぁ……あり、がと」
ボクの言葉に、ボクの子供はまるで懐くかのようにボクの全身にその身をこすらせてきた。
『……キミのその身体はまだまだ不完全。5日間、外で活動したらまた私の中で作り直さないといけない。
その5日間だけ、私たちに協力してみない? それでも生きるのが嫌だったら、キミの心を食べてあげる。
もちろん、さっきみたいな痛さなんて感じさせないように、優しく、ね』
触手がボクの頬を撫で、それから顔の前で止まった。
この返答次第では、再びこの触手がボクの中に入り込み、きっとボクを殺してくれるだろう。
背中に感じた鳥肌のような感覚は、一体誰のものなんだろうと感じながら、ボクは考えた。
そしてボクは、その触手を握った。
それは体液で滑りながらも、身に纏ったボクの子供と同じような暖かさが確かにあった。
「……正直、生きたいとは思えないけど……その……」
うまく言葉にできないその思いに、ボクはセーラー服の袖を撫でた。
彼女はそのボクの仕草に、優しい声を掛けてくれた。
『ふふっ……5日間でどうしても嫌だったら、その子に気兼ねすることはないよ。
キミは死を選んでも、私がいるから。それに、その子もキミが苦しむことは、望んでないから』
「……うん。ありがとう」
『ぅ~、でもなんか妬けちゃうなぁ。一応私も、キミの家族なんだけどなぁ~』
その嫉妬心を表すかのように、目の前の触手は頭を垂れながらそっぽを向いた。
「……ぷっ。ふふふっ」
思わず笑いが溢れていた。
そんな風に自然と笑えたは何年ぶりだろうか、と思い出そうとしてボクはやめた。
だってボクはもう、生まれ変わったのだから。
『そう。キミはもう人間じゃない。私たち、エイリアンの家族』
「……うん。よろしく、ね」
『ふふっ、こちらこそ』
そしてボクの新たな生活が幕を開けた。
暑い夏の日。
死に場所を求めていた僕が樹海の奥底で出くわしたバケモノ。
それは、地面から伸びる一本の図太い触手だった。
『ねぇ……食べて、いい? きみの全て、もらっていい?』
ニュルニュルと蠢くそれは蠅を飲み込む食虫植物のように、四方へその身を裂いた。
赤黒くドクドクと脈打つ触手の中から、ダラリと粘っこい液体が僕の顔へと垂れてくる。
「……いいよ」
もはや自分の答えなど必要なさそうにも感じたが、口が勝手に動いていた。
背中のリュックに入った無機質な縄で最後を遂げるよりも、
それはまだ苦しくなさそうに見えたからかもしれない。
『そう♪ じゃあ遠慮なく……』
暗闇が迫ってくる。
木陰の御蔭で免れていた湿度に混じった暑さとは違う、生物的な暖かさを肌の向こうで感じた。
程なくして、僕の身体を触手が締め付けてきた。
苦しさはあるものの、やはり始めに考えていた最後よりも痛みはない。
加えて少しずつ僕を奥へ奥へと飲み込もうとする触手の脈動は、
21年前にいたハジマリの場所を連想させ、僕の心を安心させた。
『ふふっ……おやすみなさい……』
そして僕は、バケモノに食べられた。
333 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:34:39.95 ID:7QBX1G3o
――あたたかい。
肌の向こうから感じるぬくもりに、ボクの頭から単語が溢れた。
その単語を堺に、ボクの意識は急速に微睡みから目覚め始めた。
ゆっくりと、瞼を開く。だけど何も見えない。
見えなくてもいいじゃないかとボクは思ったのだけど、
ボクの身体は勝手に瞬きを繰り返し、やがて緑色に染まった世界をボクに見せてみせた。
そんな世界でも、鬱蒼とした森が広がっているのがよく見えた。
それはいつか映画で見た、死闘を求めて宇宙を彷徨う某狩猟宇宙人の視界に似ていた。
視覚が戻ると、身体の五感が一気にスタートアップを始めた。
「ん……ん、ごポ……」
そして嗅覚を感じようと息を吸おうとしたとき、ボクは液体に包まれていることを理解した。
その液体の質感にボクは覚えを感じ……そして全てを思い出した。
その時だった。
瞼を閉じれば再び眠れそうなボクの周りの小さな空間が、いきなり崩壊を始めたのだ。
そしてボクの身体は重力に従い、地面へと落とされた。
「ぐっ! ゲホッ、ゲホッ……!」
背中を打つと同時に身体の中を行き渡っていたその液体を宙へ吐き出す。
随分と久しぶりに感じる重力に、ボクは思わず気持ちが悪くなった。
『大丈夫、落ち着いて……』
混乱にグルグルと回転する脳に、誰かの声が静かに響く。
明らかに耳の奥底から聞こえてくるその声は、不思議と不安定なボクの気持ちをスッと安定させた。
「っ、はぁ、はぁ……」
『そう、その調子……ゆっくりと呼吸を繰り返すの』
身体が本能的に覚えていた呼吸法で、程なくして視界も安定を取り戻していく。
緑色の世界が静まるのと引き換えに黒が主体の色が世界が目の前を包み込む。、
わずかな月明かりに照らされた足元のヒメジョオンに目の焦点が合わさるのと、ボクが疑問を口にしたのはほぼ同時だった。
「……なんで……」
『クスッ……残念? 死ねなくて』
その純粋なボクの落胆を楽しむように、頭の中の声がほくそ笑んだ。
334 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:35:33.27 ID:7QBX1G3o
『でも誰も殺すなんて言ってないしね。と言っても、もう1年も前だし覚えてない、か』
「いち、ねん……?」
唐突に聞かされた時の経過に、ボクは記憶の栞を辿った。
その中で一番手前にある記憶は……そう、この頭の中に響く声の主に食べられた記憶だった。
それはつい昨日のことのように感じられながらも、どこか形が古ぼけていた。
『ほら、後ろの“繭”。その中でアナタは1年間眠っていたのよ?』
「ま、ゆ……?」
頭の中の声に従い、ボクは背後を振り返った。
するとそこには薄緑色の薄皮に包まれた半球体がぽうっと存在していた。
その上部はまるで花が開いたかのように四方にめくれ、球体を維持している下部は透明な液体で満たされていた。
それが、さっきまでボクの身体を包み、満たしていたあの液体だということは容易に想像がついた。
そして……ようやくボクは、僕でなくなっていることに気づいた。
「こ、れ……だれ……?」
『誰って……アナタしかいないでしょ?』
困惑したボクの調子にわざと合わせるかのように、頭の中の声は答えた。
このか弱くも肉付きの良い華奢な腕も、月夜に照らされ白く光る肌も、下半身を隠すこの胸も……ボク?
いや……こんなの僕じゃない。
『うん。その身体は。アナタと私の……そう、きみと私の子供の身体』
ボクの否定を頭の中の声は肯定し、突拍子のない真実を口にした。
「ボクとキミの、こ、こど、も……?」
『そう。きみの精子を私の中で培養して作った子供。それが今のアナタの身体』
そんなのSFだ、と笑い飛ばすことは今のボクには到底できなかった。
ただただ困惑する頭で、なんとか現実を理解しようとすることだけが、ボクのできる唯一の努力だった。
335 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:36:52.19 ID:7QBX1G3o
”ここ”という言葉だけがやや右の方から聞こえ、ボクは促されるままに右の方向を向く。
するとそこには先ほどの繭と同じものがそこにあった。
薄い皮の向こうには確かに、僕の姿があった。
だけどその身体は体育座りのように丸くなり、まさしく眠っているかのようにふたつの瞼も静かに閉じられていた。
『言っとくけど、返さないわよ?』
ボクは意思を伝える前に、頭の中の声は返答をした。
「な、なんでよ!」
『当たり前でしょ。だって、もう私のだもん』
その頭の中の言葉を示すように、繭の中の僕はうっすらと目を開け、そしてニヤリとボクに笑いかけてきた。
薄皮の向こうにいる実像の僕のその表情に、ボクは思わず後退りをしてしまう。
しかしそれを踏ん張って、ボクは僕を取り戻そうと右足を一歩、繭の方向へと右足を――
「言っておくけど、この身体も私のモノだよ?」
踏み出せなかった。
持ち上がった右足が一瞬宙で停止すると、ボクの身体は急にボクの意思とは関係なく動き出した。
「この右足も、この右手も、この胸も、子宮も、脳みそも……そして、キミ自身も、ね。ふふっ」
ボクの身体でボク以上に自然に振舞うその身振り手振り口振りに、ボクは自分が一体どこにいるのかが分からなくなってしまう。
でも、たとえ身体がこの頭の中の声のモノだとしても、このボク自身はボクのものだ。
決して、頭の中の声のモノじゃない。
しかし下腹部から急にこみ上げてきた熱さが、そんなボクの答えをねじ伏せた。
336 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:37:48.95 ID:7QBX1G3o
「ふ、ぁ……! んっ、うぅ……」
突然のその感覚に嬌声が漏れ、思わず右手でむき出しの股間を覆い隠す。
それでも手のひらの向こうに存在する穴の奥底の場所からの火照りに、思わず両膝がくっつきあってしまう。
『ふふっ、感じてきたでしょ? 身体と、キミの心が』
再び頭の中に戻ってきた声は、いかにも自分がそうさせていると主張するように、嬉々とした口調で続ける。
『その気持ちよさはキミの身体が感じさせてるもの。でも、その感覚に“迷っている”のはキミの心自身、でしょ?』
そう。ボクは迷っていた。
ボクの身体の下腹部の火照りに応える方法は、本能的にわかっていた。
それは例えるなら、虫に刺されて痒くなったところを掻くような、ごくごく自然な行動だった。
『挿れたいんでしょ、その穴の中に指を』
頭の中の声が、ボクの心を代弁する。
ぷっくりと膨れた陰核に指先が触れるだけで、全身を痺れるような快感が走り抜ける。
ジリジリとくすぶっている欲求が、全てを飲み込む炎のように、その熱を上げていく。
『ねっ? キミのその綺麗な指先で、もっとグチャグチャにしたくない?』
「うっぅ……だ、ダメ、だよ、こん、なのっ……!」
内なる声から逃れるように頭を振るが、右手は股間から剥がれようとはしなかった。
一方で、左手が胸の突起を乱暴に揉みしだいていることにボクが気づいてしまったとき、
無意識下で右手の中指がボクの中へと滑り込んでしまった。
「ひっ、あっ!」
『あはっ、挿れちゃったね。ふふっ、気持ちいいでしょ?』
腹部に入り込んでくる異物感にボクは虚空を見上げ、快感の波に身を委ねる。
337 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:38:23.78 ID:7QBX1G3o
『ありゃまぁ、軽くイっちゃった?』
「だ、だめだよ、こんなの……」
『んふふ、そんなこと言いながらも身体はしっかりと素直なんだから』
「ふ、ぁ……!」
頭の中の声が言うとおりだった。
ボクは否定の言葉を口にしながらも、入り込んだ指で自らの中をかき回しつつ、
さらなる快感を求め続けていた。
どうすればもっと気持ちよくなれるのか、という純粋な気持ちでボクはひたすらに全身をまさぐり始めた。
「んぅ! ち、くびが、きもちい、っ!」
『ひぁ……私まで感じてきちゃった……♪』
先程まであった羞恥心は既に頭からはとっくのとうに剥がれ落ち、木の幹にもたれ掛かって白い息を吐き出し続けた。
ただ、ガサガサの木の幹は体に電流が走るたびボクの皮膚に引っかかり、その小さな苦痛がボクに少しだけ理性を残してくれていた。
そんな時、まるで慕ってくる動物のように、優しい力使いでボクの身体に何かが絡みついてきた。
「ひぁぅ! な、なに……!?」
『ふふっ、大丈夫。動かしてるのは私だから。ほら、こっちのほうがラクでしょ?』
ボクの両足と下腹部に巻き付いたそれは、見た目は森というよりジャングルに生い茂っていそうなツタのようだが、
そのウネウネとした動きは海をゆらめくタコを彷彿とさせた。
突如出現したその触手に、ボクは思わず呆然と身を硬直させてしまった。
『あ~もう、危なくなっていば。ほ、らっ♪』
その動きはまるで獲物ににじり寄るヘビのようだった。
下腹部に絡みついていた触手が乳首に、両足に絡みついていた触手は秘所に近づき、その丸っこい先端が開いたかと思うと、
粘りっけのある液体を垂らしながら、ぷっくりと膨れたそれぞれの敏感な部分に噛み付いてきたのだ。
その瞬間、ボクはまた快楽の渦の中へと一気に引きずり込まれた。
338 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:40:12.33 ID:7QBX1G3o
「っあぅ!? やっ、だっ、んんぅぅぅう!」
自分でいじった時とは全く別の刺激に、ボクの身体を激しい電流が駆け巡る。
しかしボクはどれだけ暴れようと、身体に絡みついた触手が丁寧に身体をつなぎとめてくれた。
それはまるで心地よく揺れるハンモックのようだった。
それでも触手の先端はしっかりとあまがみを続け、時折いやらしい音を立てて吸い付けてくる。
「っあぅううぅ! らっ、めっ! こんなっ、きもちよす、っぅう!」
『ひゃぅっ♪ そろそろ、かなっ……』
どこか艶っぽい頭の中の声がボクの高まりを後押しする。
木々の隙間から夜空を見上げ、何もしなくても快感を与えられるということに更なる快感を覚えながら、
ボクは何かが下腹部の奥から出ようとしているのを感じた。
それはオトコノコの時のあの気持ちよさに似ていて、自然と息が小刻みに震え始めた。
「で、るぅ……♪ なにか、出ちゃうっっっ……!」
『う、んっっ♪ いこっ、いっしょ、にっっ……!』
いっしょに、という言葉がボクの全てをぎゅっと抱き込むように感じ、身体から溢れる快感に身を委ねた。
「『ふっ、あっっっっっっっううううううう♪』」
頭を後ろに投げ出し、全身を支配する快感に何度も身体を震わせる。
音が消えた耳の奥底に時折、びしゃっと響く粘っこい音がボクがイッたことを実感させてくれていた。
『んぅぅ……たまんない♪ ほらっ、いっぱい出てる……♪」
「ぁっ♪ ……ぅ、ん……♪」
段々と快感の波が引いてくると、頭の中の声に従い、触手がボクの頭をゆっくりと持ち上げてくれた。
そしてボクは未だ快感が残る秘所に目をやると、その快感の小さな波に合わせて、
液体のようなものがびしゃりびしゃりとボクの中から外へと溢れ出ているのが見えた。
そのままボクはしばらくの間、先ほどの大波の余韻に浸りつつ、その様子を眺めていた。
339 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/21(日) 03:41:44.09 ID:7QBX1G3o
『……よし、お疲れ様♪』
頭の中の声がそんな言葉を口にすると、触手たちは優しくボクを地面へと降ろしてくれた。
あれだけの快楽に身を委ねていたのに、不思議と身体に疲労感はなかった。
「ふぅ……ひゃっ!?」
火照ったままのむき出しのお尻に触れる、夜露に濡れた葉っぱの程よい冷たさに思考を停止していると、
爪先にぬるっとした感覚をボクは感じ、間の抜けた声を吐き出した。
『あっ、こら。だめだめ、暴れちゃ。その子、さっきキミが産んだ“子”よ』
「えっ? ひぅぅ!」
頭の中の声に疑問を抱いた一瞬の隙に、その感覚はボクの下腹部まで這い上がっていた。
その一瞬、ボクの下半身がぬらっと光るのを見て、ボクは目を凝らした。
そしてボクは気づいた。
その感覚の原因が、先ほどボクの中から溢れ出したあの液体であったことに。
見た目は無色透明な液体なのだが、月明かりに照らされた部分が妖しく煌き、
獲物を丸呑みするかのように脈動しながらボクの頭の方へと迫ってきていた。
本能的な危機感を感じながらも声を出すことも忘れ、しかし身体をよじらせてなんとかその動きを止めようとボクはもがく。
身体からそれをはじき飛ばそうと両手を払うものの、今度はその手の指先にしっかりと液体が絡みつき、
肩の方へとせり上がってくる。
やがて抵抗むなしく、ボクの首までの身体の表面はその液体に覆い尽くされてしまった。
心臓がドクンと脈を打つたびに小さな波を立てながら全身を愛撫するその液体を、ボクはなすすべもなく見つめていた。
「ぅぅ……え……? っぁ……!」
快感とは微妙に違う全身の感覚にボクが戸惑いの声を上げると、液体が繭の中のそれに似た緑色の光を発し始めた。
それらは全身を行き交う血液のように蠢き、何とも言えないもどかしさにもじもじと身体をくねらせた。
数秒ほど経つとその光と感覚はなりを潜め始め、ボクの身体は再び月明かりによって色付けがされた。
するとそこには、黒いセーラー服に身を包んだボクの姿があった。
342 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/22(月) 02:17:11.94 ID:L/Rb1QRm
『うんうん、よく似合ってる』
「こ、これって……?」
『それはさっきキミが産んだ子が擬態してくれてるの。ふふっ、よくできてるでしょ?』
擬態、という言葉にボクはこれが偽物なのかと思わず手が伸びた。
人工的なセーラー服の布地の感覚、スカートの裾の翻り具合、ツルツルとしたいやらしいパンストの締め付け具合。
とてもではないが偽物とは思えないその感覚にボクが驚いていると、不意に秘所を何かが撫でていった。
「ひゃうっ!?」
『あはは、キミが好きだからじゃれてるみたい。まぁ“おかあさん”だもんね』
「お、おかあさんって……ボク、が……?』
『もちろん。キミ自身、さっきその子が自分のナカから生まれたのを見たでしょ?』
そうは言われても理解が追いつかないボクに、頭の中の声は続ける。
『キミが宿ってるのは私が持ってきた“卵”とオトコノコのキミの“種”で産まれた子供のカラダ。
つまり、その子供においてキミはおとうさんで私がおかあさん、ってこと。ふふっ』
嬉々とた様子で説明する頭の中の声の言葉に、ボクはちらりと繭の中で眠る僕の身体を見た。
いつの間にかボクに笑いかけたあの不気味な表情はなりを潜め、彼はゆっくりと眠っているようだった。
『そしてその子供、つまり今のキミが寝ている間に、“種”を仕込んでおいたの。今度は私が、ね。
それがキミの中の“卵”と結びついてその子が生まれたの。まぁ本来、人の“卵”じゃ生まれないんだけど、
なんせ今のキミの身体は見た目こそ人間だけど、その中身は人間と“エイリアン”のハーフだからね』
饒舌に非現実的な言葉を羅列した頭の中の声は、やっとその正体をボクに明言した。
不思議とボクに大きな驚きなかった。
それは頭の中の声のとおり、ボクが既に人間じゃなくなっていることを裏付けているようにも感じた。
そのせいか、ボクの口からはひどく冷え切った質問が溢れた。
「目的は、地球の侵略、とか?」
『う~ん、そんな大それたものじゃないんだけど……。第一目的は私という個体の維持だけど、
まぁでもどうせなら、家族を増やしたいかな』
この星の外にも“家族”という概念があること、ボクは喜びと悲しみを覚えた。
343 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/22(月) 02:17:57.54 ID:L/Rb1QRm
『とは言っても、私たちはキミたちと違って安定した“肉体”がないの。ただ、生命体に宿って支配することができる。
いわゆる……そう、寄生。今の私は、ほらこの木に宿ってるの』
ゆらりと現れた触手が示す、繭の隣の木。
それはこの森の中でも一際小さい、わずか2mほどの小さな木だった。
『1年前にキミがこの森を訪れるよりも少し前に、私は不時着して、その時は寄生していた別の星の生命体……つまり、、
キミたちから見れば宇宙人の身体に宿ってたんだけどその身体が力尽きちゃって、
色々な設備とかも壊れちゃて……弱った私がやっと宿れたのはこの木だけだったの』
その言葉に合わせて、どこか自虐的に触手を震わせてかか、頭の中の声は続けた。
『でもこの木に宿ったのはいいけど、これだけ背が低いと陽の光も当たらないから光合成のエネルギーが手に入らなくて……、
かと言って別の何かに寄生し直すだけの力も残っていなかった。……正直、あの時はもう諦めてた』
「……そこに、僕がやってきた」
『ふふっ、そう。私と同じように、生きることを諦めたキミが、ね』
触手がふわりとボクの頬を愛でるように撫でた。
『そしてキミを取り込んだあと、私はキミだったものの“種”を食べて私自身を回復させてながら、
唯一残った私の“卵”にキミだったものの“種”を植え付けた。そして1年後の今日、やっとその卵が孵った』
「それが……この、身体」
『そう。私とキミの、子供』
ボクは改めて自分の身体を見下ろした。
白い指先、たわわに実った胸のふくらみ、華奢ながらも艶やかに伸びた足。
僕の“種”から生まれたというその身体を見てから、ボクは言った。
「じゃあなんで……ボクは自分自身の子供の身体に宿っているの?」
『その理由は簡単。私の力が完全じゃなくて、その身体に魂が作れなかったから、代わりにキミの魂を入れてあげたの。
人間ってそう考えるとすごいわよ? 無意識でも孕みさえすれば魂を作れちゃうんだから』
頭の中の声に言われて、ボクも確かにと少しだけ感心してしまう。
『魂っていうのは身体じゃなくて心から生まれるものだから。ほら、キミが生んだその子。
その子はキミが母体となっていたから魂が宿っているの』
その言葉に呼応するように、服に擬態しているボクの子供は優しくボクの身体を少し締め付けてきた。
きっと本来のセーラー服には存在していないであろうポカポカとした暖かさを、ボクは一瞬だけ感じた。
344 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/22(月) 02:20:12.09 ID:L/Rb1QRm
『私がキミをその身体に定着させて1年間育ててきた理由の一つは、つまり私の代わりにキミに子供を生んでもらうため。
もう一つは……』
焦らすように、頭の中の声は間を開ける。
だけどボク自身もはやそれは気になることではなく、頭の中の声もそれを察したのか、程なくしてもうひとつの理由を口にした。
『それはキミに興味を持ったから』
「ボク、に?」
どうとでも捉えることができそうなアバウトな答えにボクが聞き返すと、頭の中の声はなめらかに答えた。
『そっ。だって死にたい死にたいって自分の身体に言わせておきながら、心は生きたい生きたいって言ってるんだもん。
ヘンな子だなぁ、って思ったから』
「ボ、ボクは生きたいなんて思ってない!」
考えるよりも先に、口が先に動いていた。
それを待っていたかのように、頭の中の声は笑う。
『ほら。キミはよくも考えもせずに死にたいって言ってるだけ。死にたいんじゃなくて、死んで“楽になりたい”だけ』
「っ! ……ボクの……ボクの何が分かるんだよ、キミに!」
またしても口が勝手に動く。
この感覚を、ボクは1年前にも味わっていた。
そう、今と全く同じように目の前の触手へと僕は辛さをぶちまけ、そして彼女は僕の話を静かに聞き、そしてボクを優しく食べた。
だけどその時と、今は違った。
『そっ。じゃあ、死ねば』
「えっ……? ぐっ、うぐんんぅぅううううう!?」
それは一瞬の出来事だった。
目の前の触手がわずかに身をくねらせたかと思うと、乱暴にボクの口へと侵入してきたのだ。
さらにいつの間にか周りを取り囲んでいた触手に四肢が拘束される。その力はまるでボクを引き裂かんとするかのように容赦がない。
『このままキミの心を食べちゃえば、キミの心は死ねるわ。キミの望み通りに、ね』
一瞬、胸の奥から身体が引きずり出されるような感覚を感じ、そして何も感じなくなった。
ただ次の瞬間には口から続く異物感と共に、言いようのない苦しみが全身を襲った。
『ふふっ、今キミの心にアマガミしてあげたの。どう? 死にそうだったでしょ』
温かみを失った頭の中の声が冷ややかにボクに囁いた。
345 名無しさん@ピンキー sage 2013/04/22(月) 02:20:46.62 ID:L/Rb1QRm
『まぁキミの元の身体は私の栄養分として、子供の身体は人間との接触に、それぞれだ~いじに使わせてもらうから、安心して』
先ほどこの身体がボクの意思とは無関係に言葉を喋ったことを思い出した。
そうだ。ボクはこの身体を使わせてもらっているに過ぎなかったんだ。
彼女にしてみれば、その逆。使わせて上げているに過ぎない。
なのにボクが死にたい死にたいといったのが、逆鱗に触れてしまったのだろう。
身体は苦しいはずなのに、頭の中はそんなことが考えられるくらいにボクは冷め切っていた。
それは捕食者と非捕食者の関係がどうしようもないぐらいに理解できたからであった。
でも、彼女はボクの心を食べることはしなかった。
「っ……んげほっ、ぐぅtゲホッゲホッ!」
突然ボクの中に入り込んだ触手が逆流して抜け出たかと思うと、四肢を拘束していた触手たちもボクを解放した。
地面に四つん這いになり、酸素を取り込むボクの背中を優しく撫でてくれる感覚を感じた。
それが身にまとっているボクの子供がしてくれていることだと、ボクはすぐに気づいた。
苦しいのに、胸がポカポカと暖かくなるその懐かしい感覚に、ボクは思いを巡らせてから言った。
「はぁはぁ……あり、がと」
ボクの言葉に、ボクの子供はまるで懐くかのようにボクの全身にその身をこすらせてきた。
『……キミのその身体はまだまだ不完全。5日間、外で活動したらまた私の中で作り直さないといけない。
その5日間だけ、私たちに協力してみない? それでも生きるのが嫌だったら、キミの心を食べてあげる。
もちろん、さっきみたいな痛さなんて感じさせないように、優しく、ね』
触手がボクの頬を撫で、それから顔の前で止まった。
この返答次第では、再びこの触手がボクの中に入り込み、きっとボクを殺してくれるだろう。
背中に感じた鳥肌のような感覚は、一体誰のものなんだろうと感じながら、ボクは考えた。
そしてボクは、その触手を握った。
それは体液で滑りながらも、身に纏ったボクの子供と同じような暖かさが確かにあった。
「……正直、生きたいとは思えないけど……その……」
うまく言葉にできないその思いに、ボクはセーラー服の袖を撫でた。
彼女はそのボクの仕草に、優しい声を掛けてくれた。
『ふふっ……5日間でどうしても嫌だったら、その子に気兼ねすることはないよ。
キミは死を選んでも、私がいるから。それに、その子もキミが苦しむことは、望んでないから』
「……うん。ありがとう」
『ぅ~、でもなんか妬けちゃうなぁ。一応私も、キミの家族なんだけどなぁ~』
その嫉妬心を表すかのように、目の前の触手は頭を垂れながらそっぽを向いた。
「……ぷっ。ふふふっ」
思わず笑いが溢れていた。
そんな風に自然と笑えたは何年ぶりだろうか、と思い出そうとしてボクはやめた。
だってボクはもう、生まれ変わったのだから。
『そう。キミはもう人間じゃない。私たち、エイリアンの家族』
「……うん。よろしく、ね」
『ふふっ、こちらこそ』
そしてボクの新たな生活が幕を開けた。
魔界の種
321 魔界の種 sage 2013/03/31(日) 04:59:00.37 ID:h2DNH2Y5
私は魔王にさらわれたお姉ちゃんを助ける為に旅をしていた。
しかし旅の途中で悪い魔女に捕まってしまった。
目が覚めると小屋のようなところにいた。
体は動かせず、頭だけは動かせたので自分の体を見ると、裸にされ大の字で机に縛り付けられていた。
「おや、気が付いたようじゃのう」
「あなたはいったい何をするつもりなの!?」
「ひーっひっひっ、おまえには実験台になってもらうんじゃ」
「じ、実験台!? そんなの嫌!!」
「おや、そんなこと言っていいのかい? おまえなんて殺そうと思えばいつでも殺せるんじゃぞ」
そう言うとナイフを私の首元に近づけた。
「まあ逆らわないほうが身のためじゃな」
「くっ・・・」
魔女はナイフを引っ込めると直径10cm程の黒い楕円形の物をポケットから取り出した。
「これは魔界で採れる種らしくてのう、どうやら股間に入れるらしいのじゃが効果がよくわからんので試させてもらおうかのう」
「い、嫌・・・やめて!!」
私は涙目になりながら必死で拒否するも、魔女はニヤニヤしながら、種の先端から入れ始めた。
その時、急に種が生き物のようにウネウネと動き始めた。
「おやおや、元気のいい種じゃのう」
「あぁ、ううう・・・」
ぬるぬるしたモノが膣から入ってくる感触の不気味さに私はまともに声さえ出せなかった。
種だったモノは奥まで到達すると壁へとくっつき、根を伸ばし始めた。
体が急に熱くなってきたけどなんだか気持ちいい。
種だったモノはどんどん体の中で増殖と成長をし、私と融合していった。
「中はどうなってるかのう」
魔女が股間を覗きこんだ瞬間、突然そこから大量の触手が現れ、魔女の首を締め殺した。
そのまま魔女を股間へと引きずり込むと、いつの間にか膣内に生えていた鋭い歯でバリバリと噛み砕いた。
そして子宮内へと飲み込み、消化し始めた。
ふぅ、と私は一息つくとまずはヘソから触手を出して私を縛りつけていた縄をといた。
やっと自由になったと思ったその時、子宮だったところから体中へと何度も大きく脈動するのを感じた。
消化された魔女を栄養として私の幼い感じの残る体が成長を始めたのだ。
背が高くなり、胸も大きく、顔つきも大人っぽくなった。
「ふふふ、なんだか体がとても気持ちいいわ。さてと、お姉様を探しに行かないと」
私は魔王にさらわれたお姉ちゃんを助ける為に旅をしていた。
しかし旅の途中で悪い魔女に捕まってしまった。
目が覚めると小屋のようなところにいた。
体は動かせず、頭だけは動かせたので自分の体を見ると、裸にされ大の字で机に縛り付けられていた。
「おや、気が付いたようじゃのう」
「あなたはいったい何をするつもりなの!?」
「ひーっひっひっ、おまえには実験台になってもらうんじゃ」
「じ、実験台!? そんなの嫌!!」
「おや、そんなこと言っていいのかい? おまえなんて殺そうと思えばいつでも殺せるんじゃぞ」
そう言うとナイフを私の首元に近づけた。
「まあ逆らわないほうが身のためじゃな」
「くっ・・・」
魔女はナイフを引っ込めると直径10cm程の黒い楕円形の物をポケットから取り出した。
「これは魔界で採れる種らしくてのう、どうやら股間に入れるらしいのじゃが効果がよくわからんので試させてもらおうかのう」
「い、嫌・・・やめて!!」
私は涙目になりながら必死で拒否するも、魔女はニヤニヤしながら、種の先端から入れ始めた。
その時、急に種が生き物のようにウネウネと動き始めた。
「おやおや、元気のいい種じゃのう」
「あぁ、ううう・・・」
ぬるぬるしたモノが膣から入ってくる感触の不気味さに私はまともに声さえ出せなかった。
種だったモノは奥まで到達すると壁へとくっつき、根を伸ばし始めた。
体が急に熱くなってきたけどなんだか気持ちいい。
種だったモノはどんどん体の中で増殖と成長をし、私と融合していった。
「中はどうなってるかのう」
魔女が股間を覗きこんだ瞬間、突然そこから大量の触手が現れ、魔女の首を締め殺した。
そのまま魔女を股間へと引きずり込むと、いつの間にか膣内に生えていた鋭い歯でバリバリと噛み砕いた。
そして子宮内へと飲み込み、消化し始めた。
ふぅ、と私は一息つくとまずはヘソから触手を出して私を縛りつけていた縄をといた。
やっと自由になったと思ったその時、子宮だったところから体中へと何度も大きく脈動するのを感じた。
消化された魔女を栄養として私の幼い感じの残る体が成長を始めたのだ。
背が高くなり、胸も大きく、顔つきも大人っぽくなった。
「ふふふ、なんだか体がとても気持ちいいわ。さてと、お姉様を探しに行かないと」
地球によく似た・・・
210 地球によく似た・・・(1/5) sage 2013/01/25(金) 19:26:07.97 ID:AJk9kduf
そう言い突然彼女をベッドの上に押し倒し、その唇に自身の唇を顔ごと重ねる。
「んん、んんん!」
フローラの幹のような力強い手は彼女の頭を固定し、足の根と背中の蔦は彼女の手足にまきつき自由を奪う。それぞれの蔦は力強くもしなや
かに動き、茎のように比較的細い先端は器用に、そのまとっている粘液をなじませるように彼女の肌をくすぐる。彼女の口にはフローラの喉の
奥からから、なにか甘酸っぱい、とろみのついたものが吐き出される。こうして濃厚な口付けを二三分続けているうちに、彼女の目から反抗の
鋭さがなくなり、手足に力を感じられなくなったところでフローラは、根を彼女の足に巻きつけたままのっ状態で蔦を解き、上体を起き上がら
せて彼女の緊張のゆるんだ顔を観賞する。
とろけきった彼女の表情に満足し、フローラは
「どう、気分は? まるで天国にいるみたいでしょう」
「は、わ、わらしになにを・・・」
彼女はぼーっとして体に力を入れることができず、それでいてまるで天国へとのぼっていくような、非常に爽快な気分になり、夢見心地の快
さを感じる。その夢見心地も、男性であれば女性を抱く幻想を見るような、官能の心地よさをふくんだものであった。フローラはなにも答えず、
しばらく彼女の顔を魅入られたようにうっとりと眺めていたが、急に少しばかり険しい表情になり、
「わたしがあなたに質問しているのよ、あなたに質問する権利はないわ・・・まあいいわ、別の質問をすることにしましょ。――その前に、
もうあなたに服は要らないわね」
そういうとフローラは彼女の着ている服を乱暴に引き裂きながら下着まで裂いてしまう。
「あぁ、やめて・・・」
彼女は懇願するがもちろん聞き入れてもらえるはずがなく、とうとう大事なところまで晒されてしまった。そこは彼女自身のからだから出て
くるもので既にしめっていた。
「まぁ、いつの間にこんなに濡らしていたのね、なんていやらしい子」
「や、やめて、そんなこと言わないで」
「ねぇ、やっぱりあなたって、わたしのお母様――マリー様のことを想って、オナニーするの?」
フローラは妖艶な目で、問いただすように彼女の目を見つめる。
「へ、な、なにを・・・そ、そんな・・・こと」
彼女はかっと赤くなり、フローラの目線から逃れるように顔を左右へ振るが、さきほど飲まされた妙ななにかの影響もあって、視界はぼやけ、
意識は曖昧となり、からだはある部分は痙攣し。ある部分は弛緩し、とても逃れられるような状況ではない。フローラはそんな彼女をしかるよ
うに、
「ごまかすんじゃないの、正直に答えなさい!」
そして背中から生えている一本の蔦を彼女の割れ目に当て、さすりはじめる。二人の粘液がいやらしい音を立てながら混ざりあう。
「ひやっ、や、やめて、はっ、ひいぃ」
「正直に答えなきゃやめてあげないわよ、さあどうなの、してるの、してないの」
「し、してますううぅ」
彼女の顔は、恥ずかしさと気持ちよさが頂点に達し、真っ赤になる。フローラはまだ彼女を責め続ける。
「は、っや、ど、どうして、正直に、答えたのに・・・あぁ」
「ふふ、もっと詳しく答えてくれなきゃ。どれくらいのペースでしているわけ、月に一度、週に一度、それとも毎日?」
「それは・・・」
「さあ、正直に答えなさい!」
「っ!」
フローラは自身の蔦を彼女の割れ目の奥へ一気にのめりこませる。すると彼女は声も出せずに一瞬白目をむいてしまう。
(擦られているだけなのに・・・、どうしてこんなに)
蔦をいったん停止させ、フローラは彼女に顔を、互いに吐息が感じられるほどにまで近寄せ、相変わらずの糾弾するような顔で、
「さあ、答えるのよ」
身体的にも精神的にももうとても逃げられないと観念した彼女は、
「しゅ、週に・・・三日・・・ほど・・・」
フローラの顔は元のやさしい表情へと戻る。
「あらまあそんなに、なんていやらしい娘なんでしょう!」
「やだぁ、マリー様の顔で、そんなこと・・・言わないで、グスン」
彼女は涙目で切にお願いする。フローラの表情は優しくも、妖艶な感情を湛えた目はそのままだ。
211 地球によく似た・・・(2/5) sage 2013/01/25(金) 19:28:09.38 ID:AJk9kduf
「ふふ、どうして、もう恥ずかしがらなくていいのよ、わたしがあなたを解き放してあげるわ。かわいそうな子、よっぽど欲求不満を溜め込
んでいたんでしょ、よく耐え続けたわね」
フローラは再び彼女を優しく抱擁する、全身の蔦を、両腕に当たる部位は彼女の背中に回し、背中の六本の蔦は彼女の両腕にそれぞれ三本ず
つまきつけ、再び彼女のからだに絡めつける。服をはがされた分、彼女はフローラの粘液をまとった蔦の感覚を直に感じ取るようになり、涙を
流して泣きながらフローラのぬくもりに包まれてしまう。
「わたしの胸のなかで泣きたいだけ泣きなさい。もういいのよ、我慢しなくて。さあ、顔をよく見せて・・・」
彼女の顔を自分のほうへと向けると、もういちど彼女の唇に自分の唇を、今度はそっと、やさしく触れさせ、ほのかに甘く香り、爽やかで、
甘美な風味のある唾液に濡れた舌を彼女のなかへ進入させる。フローラは積極的に彼女の舌と自分の舌を絡めあわせ、お互いの粘液を交換し、
混ぜ合わせるように溶けあわせてゆく。
(ああぁ、温かくて、優しくて、清々しくて・・・とっても気持ちいい・・・。体が浄化されてゆくみたい・・・。変な気分だ、あんなにぬ
るぬるして気持ち悪かったのが、今じゃ私を優しく包み込んでくれてるみたいで・・・温泉に浸かっているみたいだし、毛布にくるまれている
みたいでもあるし・・・とっても、いい・・・)
その状態がどれだけつづいたことだろう、彼女のほうは、同じ女同士で快楽を極めるように進化した妖花として、遺伝子レベルでテクニック
を極めているフローラにアシストしてもらうほかなく、気持ちよくしてもらっている間にも彼女の精神は、無意識のうちにどんどんフローラに
依存してゆくのだった。フローラは彼女の味を十分堪能し、彼女の口内とつながっている粘液の糸を引きながら舌を離す。そして、お互いの混
ざり合ったよだれを口からあふれさせている彼女を見下ろしながら、彼女の心の中まで浸透するような、甘く、透き通った声で、
「今日はわたしがたっぷりと慰めてあげるから。・・・それこそ今まで我慢してきた分、たっぷりと・・・」
意味ありげな妖艶な微笑を浮かべたまま、フローラは自分の股間をまさぐり、多肉質の房に包まれた何かを取り出し、それを自分の蔦で扱き
はじめる。
「へ・・・、な、それ・・・」
彼女はなにかおかしなことにつっこまずにはいられないという顔をしているが、フローラはかまわずに、
「ねぇ、エリーって、・・・あっ・・・初体験は、もう経験済み?」
フローラは敏感な部分がさすられたような嬌声をあげながら、彼女に問う。エリーという親しげな呼びかけに一瞬誰のことだか惑ったが、自
分のことだと悟り、少し赤くなり、
「ま、まだです」
「そう、だったらちょうどいいわ。・・・はぁ・・・あっ、わたしが、初めての人になりましょう。夫婦になるんですし」
「へっ!?」
彼女は驚きとそれ以上の恐怖に顔が青くなってゆく一方で、フローラは楽しみと興奮でどんどん上気してゆく。
「そんなに・・・怖がらなくていいのよ・・・。痛いのは一瞬のことだから。私ならエリーを、っ・・・とことん気持ちよくさせてあげられ
るから・・・はぁ、はぁ。でも、その前に・・・ん、んんん、ああ、この子宮にまで響くような感覚・・・いい・・・、ちょっとあなたのかわ
いらしいおっぱいを借りるわよ」
そう言うとフローラは彼女の膨らみかけの乳房に自分のそれを使ってパイズリをはじめる。フローラが自分のそれをこすり付けるたびに、彼
女の胸の谷間は汗と粘液でてかてかと光ってゆく。
「ああっ、ああ!」
体が一種の状態異常に陥っている彼女は、つい素で愛らしい嬌声を上げてしまう。
「そんなに、かわいらしい声を上げて、あなたもまんざらでもないのね。わたしは、少し、あなたの、・・・ごめんね・・・はぁん、これの大
きさに、不満があるけど・・・。それにしても、こういうことを、されるのは、むしろ本望なのかしら?」
「そ、そんなこと、きかないでください。自分でも、もう、なにが、・・・ああ・・・なんだか・・・ああぁ!」
「いいのよ、もう、人間のしがらみに、・・・はぁっあ・・・と、とらわれなくても・・・わたしが、エリー、あなたを、解き放してあげる・・・
あ、ああ、そ、そろそろ出る!」
212 地球によく似た・・・(3/5) sage 2013/01/25(金) 19:29:38.28 ID:AJk9kduf
フローラのそれから黄色い花粉が噴き出す。彼女はもろにその花粉を顔に浴びてしまい、吸い込んでしまう。しばらくくしゃみが止まらない
彼女だったが、くしゃみが止んでくるにつれ、下半身をがくがくと震わせ、全身から汗を噴き出し、顔をさもあつそうに真っ赤に火照らせる。
股の間は彼女の愛液でシーツが濡れ、割れ目はひくついている。
「はあ、はあ、わたし・・・一体・・・」
「準備は万端ね。さあ、ここからが本番よ。これが・・・わたしの・・・はっぁん・・・はぁ、とっても敏感な・・・」
フローラのそれが、花開くように房を開いてゆき、粘液の糸を引きながら中から、太さが彼女の太ももに近いくらいに膨らんだ立派な雄しべ
をのぞかせる。それを見た瞬間、彼女は不本意にも余計に興奮してしまう。呼吸も苦しそうなほど荒い。
「はああっ!・・・・・・ああ!」
「あらあら、うふふ」
フローラは母親の、娘を温かく見守るような目で優しく彼女のその有り様を見届ける。
「ち、違うんですっ!・・・こ、これは・・・ハウン・・・体が・・・勝手に・・・ヒャン」
嬌声とともに潮をふかせ、自分でも何に対するのかよく分からない弁解をする。
「ああ、そんな・・・ハァン、ああ、ああ!」
「ふふ、可愛い娘、シーツをびしょびしょに濡らしちゃったわよ」
「ああ、ああ」
彼女は体じゅう震え上がりながらも、自分でも何がなんだか分からないまま、何か申し開きをするような、何かを言わなければならないが言
葉が見つからないというような困った表情を見せる。そんな彼女にフローラは妖しくも優しい声で、
「ふふ、いいのよ、何も言わなくて。わたしには分かるから。エリーのことなら何でも・・・」
フローラの不気味な優しさと包容力に恐怖するも、彼女はもう逃れられない。彼女はフローラのほうでも、興奮と妖艶な熱気にかられている
ことをその体や顔から感じ取ることができた。フローラも顔が蒸気で蒸れるように火照っており、性的な熱情を露にしていた。フローラはもう
何も言わずに、優しい微笑を浮かべたまま自分の頼もしいそれを、彼女の神聖な場所におさめ、後は互いに体の動くままにまかせ悦びと愉しみ
の時にひたりきる。
213 地球によく似た・・・(4/5) sage 2013/01/25(金) 19:31:11.44 ID:AJk9kduf
「ひ、痛っ」
処女を喪失するも、フローラの体から彼女の体へと侵されたその艶めかしい花粉、粘液などなどの妖しい効果と、フローラ自身の思いやりと
テクニックにより痛みは一瞬のことで、すぐに快楽の波が彼女をのみこむ。
「はあああぁぁ、き、気持ちいい」
フローラも快楽の刺激に悶え叫ぶ。
「はああああぁぁ、はあ、はあ、ひいいいいいい。ひ、響くううううう、子宮までえええ」
フローラの雄しべはまだまだ根元を残している。彼女は盛大に潮を吹き、よだれ垂らし、涙を流し、失禁までしてしまう。
「はああ、あ、はぁ、はぁ・・・、あああ! はいってくる、奥まではいってくる!」
「わ、わたしもっ・・・ょ、エリーぃいい、ひいいいいい。ま、まだまだ奥まで・・・ああっ、は、入るわ! ああ!」
ともに悶え叫びながらも、フローラの太くて長い雄しべは徐々に彼女の体内へ進入してゆき、とうとう子宮の入り口にまで到達してしまった。
あまりにも彼女を気持ちよくさせるのによく出来過ぎている、フローラの立派な、そしてフローラ自身誇らしいと思っている雄しべは、先のほ
うで彼女の子宮をつつくように押し上げている。
「ああああああ! ついてる、奥でついてるうううう!」
「わ、わたしも、ひい、イイ! エリー、気持ちいい! す、すごい・・・子宮と子宮が、か、あああ!」
花粉を製造する、人間の女性の卵巣と似た器官とつながっている雄しべから、フローラも、おそらく彼女以上に強力な快感におそわれる。子
宮と子宮をこすり合わせるような快感に、フローラは至高の悦びの笑みをあらわす。
(ああ、なんて初心(うぶ)でかたいしめつけ方! こんなかわいらしい子の最初の人になれるなんて、わたしはなんて幸せ者なんだろう! あ
あ、この子をわたしに授けてくださったお母様に感謝します! 偉大なるお母様! ああ! お母様! お母様! この子はまもなくお母様の
もとへと参ります、わたしが一緒にお連れします! この子もお母様の御身体によって清められ、お母様の聖なる娘となり、そして、わたした
ちはずっと幸せに・・・っ!)
フローラの熱情が頂点に達すると同時に、彼女の膣内に大量の花粉が注がれる。淫らな作用を持つ花粉をその淫らなことに弱い場所に注がれ
ることで、彼女はより深い悦楽におぼれてゆく。
「ひいいいい、ひ、ひもひよすぎるううう」
「ああああっ、ま、まだまだ、まだ出るわっ、ああっ!」
二人仲良く絶頂に達し、フローラは長い時間溜め込んでいたものを噴出させる。それは止むことを知らず、二人の絶頂も止まらない。
「ひいいいぃやああああ、止まらない、とまらないいいいいぃ、ひい、いぐ、いぐいぐうううう」
「ああ! 出る! もっと出る! 出て! わたしの花粉出てえええぇ、もっろ、もっろぉぉ」
やがては彼女たちの息が切れ掛かる寸前でやっとおさまった。
「はあ、はあ、はあ、きもち・・・よすぎる・・・」
「はぁああっ!・・・ああ、あはぁ」
214 地球によく似た・・・(5/5) sage 2013/01/25(金) 19:32:19.10 ID:AJk9kduf
二人は絶頂の余韻にひたる。彼女もフローラも、お互いの霊魂を共鳴させた後の、愛欲満たされた幸せそうなカップルの顔をしている。しか
しフローラは、
「まだ、まだまだ・・・花粉・・・残ってる・・・もっと、出したい」
フローラは雄しべを徐々に引き抜いてゆく。
「ひゃああぁ、こ、こすれるぅっ」
その感覚だけでもお互い喘ぎ叫ばずにはいられない。彼女が抜いてくれているのかと思い、実際まさに抜けようとしているところで急に、
「っ!!」
もう一度一気に子宮の入り口まで――否、今度はその勢いは入り口では止まらずにそのまま貫通してしまった、彼女の下半身は筋肉がすっか
りゆるんでしまっていた。あまりにも衝撃的な、意識がとびかけるほどの強烈な感覚に彼女は息をつまらせ声を出すこともできない。
「ひゃぁっ!」
フローラの体にも快楽の稲妻が一瞬にして体を駆け巡り、ぶるっと震え上がる。そしてそのまま声を震わせながら、
「はぁ、はぁ、まだまだぁ、まだまだわたしたちは気持ちよくなれるんだから」
彼女の目にはわずかに抵抗しようとする意志が浮かんだが、それも次に起こる快感の第二波によって瞬時に消え去る。フローラは、本能的な
性衝動にかられるままに腰を前後に振りながら、自分の体から出るものを彼女の膣内で擦り合わせ、混ぜ合わせ、溶け合わせはじめた。
「ひい、はあ、やあ、もう、やめて、気持ちいい、もう、だめになる、わたし、ひもちよすぎて、わだし・・・」
「ひゃっ、ああああぁああ、ひい、いいぃいいい! いい、いいじゃないの、今は、はああぁああ! そうよ、はあぁああっ、味わいなさい、
しっかりと、人間じゃ味わえない、この愉悦を、おおおお!」
フローラは愉悦という言葉に力をこめるように、雄しべを抜けるぎりぎりのところまで引いた後で、最後の言葉でとりわけ強く、一気に奥ま
で、再び彼女の子宮を突き抜けるほどに攻め込む。ふたりの快感はそれまでの最高の、それこそ天国にまで達せんとする域にまで上りつめる。
「ひぃやああああ! はぁはぁああああ!」
「おおおお、も、も、もうぅらめええ、わらし、わらしいい!」
その時フローラの雄しべからもう一度噴き出した花粉が、彼女の身も心もとろけさせ、彼女の意識はフローラとともに、フローラに先導され
るように、自分が今どこにいるのかも分からないままに天国の幻想の中をさまよいはじめる。
「マリー様、マリー様ぁあああ! 好き! 好き! 大好きぃ! わたしを、つれてって、独りにしないで、マリー様あああ!」
ふと、快楽の海の中から今までの寂しさが噴火したかのようにどっとあふれ、彼女は幻覚に襲われながら、強烈な快感を味わいながらも大い
に泣きじゃくる。フローラはそんな悲しい言葉を発する彼女の口に蓋をするように、或いは悲しい言葉ごと彼女の口を飲み込むように、そして
フローラ自身の欲求を満たそうと貪るように、彼女の唇にしゃぶりつく。二人の唇の間から、ねちゃねちゃと聞こえるいやらしい音や二人の喘
ぎ声に混ざって、フローラのあいまいな声が彼女の意識にまで響いてくる。
「ん、んんん、大丈夫よ、んんん、エリー、ああ、あああ! ・・・わたしが、むうぅ、マリー様の次女の、この、ぅ、んんん、フローラが、
ずっと一緒に・・・ああ、はぁゃああ、ま、また、ああ!」
「ふ、フローラ!? フローラ! フローラ様ああああ!」
彼女は初めてフローラという名前を叫び、自分でもよく理解できない快さを感じる。
「溶け合ってる! わたしの子宮とエリーの子宮、溶け合ってる! 感じる! 感じすぎちゃうううぅう!」
「フローラ様! フローラ様とわたし、ひとつに、ひとつに! はっああああ!」
二人の悦びの声は絶えることなく、永い時を幸福のままに過ごし続ける・・・
そう言い突然彼女をベッドの上に押し倒し、その唇に自身の唇を顔ごと重ねる。
「んん、んんん!」
フローラの幹のような力強い手は彼女の頭を固定し、足の根と背中の蔦は彼女の手足にまきつき自由を奪う。それぞれの蔦は力強くもしなや
かに動き、茎のように比較的細い先端は器用に、そのまとっている粘液をなじませるように彼女の肌をくすぐる。彼女の口にはフローラの喉の
奥からから、なにか甘酸っぱい、とろみのついたものが吐き出される。こうして濃厚な口付けを二三分続けているうちに、彼女の目から反抗の
鋭さがなくなり、手足に力を感じられなくなったところでフローラは、根を彼女の足に巻きつけたままのっ状態で蔦を解き、上体を起き上がら
せて彼女の緊張のゆるんだ顔を観賞する。
とろけきった彼女の表情に満足し、フローラは
「どう、気分は? まるで天国にいるみたいでしょう」
「は、わ、わらしになにを・・・」
彼女はぼーっとして体に力を入れることができず、それでいてまるで天国へとのぼっていくような、非常に爽快な気分になり、夢見心地の快
さを感じる。その夢見心地も、男性であれば女性を抱く幻想を見るような、官能の心地よさをふくんだものであった。フローラはなにも答えず、
しばらく彼女の顔を魅入られたようにうっとりと眺めていたが、急に少しばかり険しい表情になり、
「わたしがあなたに質問しているのよ、あなたに質問する権利はないわ・・・まあいいわ、別の質問をすることにしましょ。――その前に、
もうあなたに服は要らないわね」
そういうとフローラは彼女の着ている服を乱暴に引き裂きながら下着まで裂いてしまう。
「あぁ、やめて・・・」
彼女は懇願するがもちろん聞き入れてもらえるはずがなく、とうとう大事なところまで晒されてしまった。そこは彼女自身のからだから出て
くるもので既にしめっていた。
「まぁ、いつの間にこんなに濡らしていたのね、なんていやらしい子」
「や、やめて、そんなこと言わないで」
「ねぇ、やっぱりあなたって、わたしのお母様――マリー様のことを想って、オナニーするの?」
フローラは妖艶な目で、問いただすように彼女の目を見つめる。
「へ、な、なにを・・・そ、そんな・・・こと」
彼女はかっと赤くなり、フローラの目線から逃れるように顔を左右へ振るが、さきほど飲まされた妙ななにかの影響もあって、視界はぼやけ、
意識は曖昧となり、からだはある部分は痙攣し。ある部分は弛緩し、とても逃れられるような状況ではない。フローラはそんな彼女をしかるよ
うに、
「ごまかすんじゃないの、正直に答えなさい!」
そして背中から生えている一本の蔦を彼女の割れ目に当て、さすりはじめる。二人の粘液がいやらしい音を立てながら混ざりあう。
「ひやっ、や、やめて、はっ、ひいぃ」
「正直に答えなきゃやめてあげないわよ、さあどうなの、してるの、してないの」
「し、してますううぅ」
彼女の顔は、恥ずかしさと気持ちよさが頂点に達し、真っ赤になる。フローラはまだ彼女を責め続ける。
「は、っや、ど、どうして、正直に、答えたのに・・・あぁ」
「ふふ、もっと詳しく答えてくれなきゃ。どれくらいのペースでしているわけ、月に一度、週に一度、それとも毎日?」
「それは・・・」
「さあ、正直に答えなさい!」
「っ!」
フローラは自身の蔦を彼女の割れ目の奥へ一気にのめりこませる。すると彼女は声も出せずに一瞬白目をむいてしまう。
(擦られているだけなのに・・・、どうしてこんなに)
蔦をいったん停止させ、フローラは彼女に顔を、互いに吐息が感じられるほどにまで近寄せ、相変わらずの糾弾するような顔で、
「さあ、答えるのよ」
身体的にも精神的にももうとても逃げられないと観念した彼女は、
「しゅ、週に・・・三日・・・ほど・・・」
フローラの顔は元のやさしい表情へと戻る。
「あらまあそんなに、なんていやらしい娘なんでしょう!」
「やだぁ、マリー様の顔で、そんなこと・・・言わないで、グスン」
彼女は涙目で切にお願いする。フローラの表情は優しくも、妖艶な感情を湛えた目はそのままだ。
211 地球によく似た・・・(2/5) sage 2013/01/25(金) 19:28:09.38 ID:AJk9kduf
「ふふ、どうして、もう恥ずかしがらなくていいのよ、わたしがあなたを解き放してあげるわ。かわいそうな子、よっぽど欲求不満を溜め込
んでいたんでしょ、よく耐え続けたわね」
フローラは再び彼女を優しく抱擁する、全身の蔦を、両腕に当たる部位は彼女の背中に回し、背中の六本の蔦は彼女の両腕にそれぞれ三本ず
つまきつけ、再び彼女のからだに絡めつける。服をはがされた分、彼女はフローラの粘液をまとった蔦の感覚を直に感じ取るようになり、涙を
流して泣きながらフローラのぬくもりに包まれてしまう。
「わたしの胸のなかで泣きたいだけ泣きなさい。もういいのよ、我慢しなくて。さあ、顔をよく見せて・・・」
彼女の顔を自分のほうへと向けると、もういちど彼女の唇に自分の唇を、今度はそっと、やさしく触れさせ、ほのかに甘く香り、爽やかで、
甘美な風味のある唾液に濡れた舌を彼女のなかへ進入させる。フローラは積極的に彼女の舌と自分の舌を絡めあわせ、お互いの粘液を交換し、
混ぜ合わせるように溶けあわせてゆく。
(ああぁ、温かくて、優しくて、清々しくて・・・とっても気持ちいい・・・。体が浄化されてゆくみたい・・・。変な気分だ、あんなにぬ
るぬるして気持ち悪かったのが、今じゃ私を優しく包み込んでくれてるみたいで・・・温泉に浸かっているみたいだし、毛布にくるまれている
みたいでもあるし・・・とっても、いい・・・)
その状態がどれだけつづいたことだろう、彼女のほうは、同じ女同士で快楽を極めるように進化した妖花として、遺伝子レベルでテクニック
を極めているフローラにアシストしてもらうほかなく、気持ちよくしてもらっている間にも彼女の精神は、無意識のうちにどんどんフローラに
依存してゆくのだった。フローラは彼女の味を十分堪能し、彼女の口内とつながっている粘液の糸を引きながら舌を離す。そして、お互いの混
ざり合ったよだれを口からあふれさせている彼女を見下ろしながら、彼女の心の中まで浸透するような、甘く、透き通った声で、
「今日はわたしがたっぷりと慰めてあげるから。・・・それこそ今まで我慢してきた分、たっぷりと・・・」
意味ありげな妖艶な微笑を浮かべたまま、フローラは自分の股間をまさぐり、多肉質の房に包まれた何かを取り出し、それを自分の蔦で扱き
はじめる。
「へ・・・、な、それ・・・」
彼女はなにかおかしなことにつっこまずにはいられないという顔をしているが、フローラはかまわずに、
「ねぇ、エリーって、・・・あっ・・・初体験は、もう経験済み?」
フローラは敏感な部分がさすられたような嬌声をあげながら、彼女に問う。エリーという親しげな呼びかけに一瞬誰のことだか惑ったが、自
分のことだと悟り、少し赤くなり、
「ま、まだです」
「そう、だったらちょうどいいわ。・・・はぁ・・・あっ、わたしが、初めての人になりましょう。夫婦になるんですし」
「へっ!?」
彼女は驚きとそれ以上の恐怖に顔が青くなってゆく一方で、フローラは楽しみと興奮でどんどん上気してゆく。
「そんなに・・・怖がらなくていいのよ・・・。痛いのは一瞬のことだから。私ならエリーを、っ・・・とことん気持ちよくさせてあげられ
るから・・・はぁ、はぁ。でも、その前に・・・ん、んんん、ああ、この子宮にまで響くような感覚・・・いい・・・、ちょっとあなたのかわ
いらしいおっぱいを借りるわよ」
そう言うとフローラは彼女の膨らみかけの乳房に自分のそれを使ってパイズリをはじめる。フローラが自分のそれをこすり付けるたびに、彼
女の胸の谷間は汗と粘液でてかてかと光ってゆく。
「ああっ、ああ!」
体が一種の状態異常に陥っている彼女は、つい素で愛らしい嬌声を上げてしまう。
「そんなに、かわいらしい声を上げて、あなたもまんざらでもないのね。わたしは、少し、あなたの、・・・ごめんね・・・はぁん、これの大
きさに、不満があるけど・・・。それにしても、こういうことを、されるのは、むしろ本望なのかしら?」
「そ、そんなこと、きかないでください。自分でも、もう、なにが、・・・ああ・・・なんだか・・・ああぁ!」
「いいのよ、もう、人間のしがらみに、・・・はぁっあ・・・と、とらわれなくても・・・わたしが、エリー、あなたを、解き放してあげる・・・
あ、ああ、そ、そろそろ出る!」
212 地球によく似た・・・(3/5) sage 2013/01/25(金) 19:29:38.28 ID:AJk9kduf
フローラのそれから黄色い花粉が噴き出す。彼女はもろにその花粉を顔に浴びてしまい、吸い込んでしまう。しばらくくしゃみが止まらない
彼女だったが、くしゃみが止んでくるにつれ、下半身をがくがくと震わせ、全身から汗を噴き出し、顔をさもあつそうに真っ赤に火照らせる。
股の間は彼女の愛液でシーツが濡れ、割れ目はひくついている。
「はあ、はあ、わたし・・・一体・・・」
「準備は万端ね。さあ、ここからが本番よ。これが・・・わたしの・・・はっぁん・・・はぁ、とっても敏感な・・・」
フローラのそれが、花開くように房を開いてゆき、粘液の糸を引きながら中から、太さが彼女の太ももに近いくらいに膨らんだ立派な雄しべ
をのぞかせる。それを見た瞬間、彼女は不本意にも余計に興奮してしまう。呼吸も苦しそうなほど荒い。
「はああっ!・・・・・・ああ!」
「あらあら、うふふ」
フローラは母親の、娘を温かく見守るような目で優しく彼女のその有り様を見届ける。
「ち、違うんですっ!・・・こ、これは・・・ハウン・・・体が・・・勝手に・・・ヒャン」
嬌声とともに潮をふかせ、自分でも何に対するのかよく分からない弁解をする。
「ああ、そんな・・・ハァン、ああ、ああ!」
「ふふ、可愛い娘、シーツをびしょびしょに濡らしちゃったわよ」
「ああ、ああ」
彼女は体じゅう震え上がりながらも、自分でも何がなんだか分からないまま、何か申し開きをするような、何かを言わなければならないが言
葉が見つからないというような困った表情を見せる。そんな彼女にフローラは妖しくも優しい声で、
「ふふ、いいのよ、何も言わなくて。わたしには分かるから。エリーのことなら何でも・・・」
フローラの不気味な優しさと包容力に恐怖するも、彼女はもう逃れられない。彼女はフローラのほうでも、興奮と妖艶な熱気にかられている
ことをその体や顔から感じ取ることができた。フローラも顔が蒸気で蒸れるように火照っており、性的な熱情を露にしていた。フローラはもう
何も言わずに、優しい微笑を浮かべたまま自分の頼もしいそれを、彼女の神聖な場所におさめ、後は互いに体の動くままにまかせ悦びと愉しみ
の時にひたりきる。
213 地球によく似た・・・(4/5) sage 2013/01/25(金) 19:31:11.44 ID:AJk9kduf
「ひ、痛っ」
処女を喪失するも、フローラの体から彼女の体へと侵されたその艶めかしい花粉、粘液などなどの妖しい効果と、フローラ自身の思いやりと
テクニックにより痛みは一瞬のことで、すぐに快楽の波が彼女をのみこむ。
「はあああぁぁ、き、気持ちいい」
フローラも快楽の刺激に悶え叫ぶ。
「はああああぁぁ、はあ、はあ、ひいいいいいい。ひ、響くううううう、子宮までえええ」
フローラの雄しべはまだまだ根元を残している。彼女は盛大に潮を吹き、よだれ垂らし、涙を流し、失禁までしてしまう。
「はああ、あ、はぁ、はぁ・・・、あああ! はいってくる、奥まではいってくる!」
「わ、わたしもっ・・・ょ、エリーぃいい、ひいいいいい。ま、まだまだ奥まで・・・ああっ、は、入るわ! ああ!」
ともに悶え叫びながらも、フローラの太くて長い雄しべは徐々に彼女の体内へ進入してゆき、とうとう子宮の入り口にまで到達してしまった。
あまりにも彼女を気持ちよくさせるのによく出来過ぎている、フローラの立派な、そしてフローラ自身誇らしいと思っている雄しべは、先のほ
うで彼女の子宮をつつくように押し上げている。
「ああああああ! ついてる、奥でついてるうううう!」
「わ、わたしも、ひい、イイ! エリー、気持ちいい! す、すごい・・・子宮と子宮が、か、あああ!」
花粉を製造する、人間の女性の卵巣と似た器官とつながっている雄しべから、フローラも、おそらく彼女以上に強力な快感におそわれる。子
宮と子宮をこすり合わせるような快感に、フローラは至高の悦びの笑みをあらわす。
(ああ、なんて初心(うぶ)でかたいしめつけ方! こんなかわいらしい子の最初の人になれるなんて、わたしはなんて幸せ者なんだろう! あ
あ、この子をわたしに授けてくださったお母様に感謝します! 偉大なるお母様! ああ! お母様! お母様! この子はまもなくお母様の
もとへと参ります、わたしが一緒にお連れします! この子もお母様の御身体によって清められ、お母様の聖なる娘となり、そして、わたした
ちはずっと幸せに・・・っ!)
フローラの熱情が頂点に達すると同時に、彼女の膣内に大量の花粉が注がれる。淫らな作用を持つ花粉をその淫らなことに弱い場所に注がれ
ることで、彼女はより深い悦楽におぼれてゆく。
「ひいいいい、ひ、ひもひよすぎるううう」
「ああああっ、ま、まだまだ、まだ出るわっ、ああっ!」
二人仲良く絶頂に達し、フローラは長い時間溜め込んでいたものを噴出させる。それは止むことを知らず、二人の絶頂も止まらない。
「ひいいいぃやああああ、止まらない、とまらないいいいいぃ、ひい、いぐ、いぐいぐうううう」
「ああ! 出る! もっと出る! 出て! わたしの花粉出てえええぇ、もっろ、もっろぉぉ」
やがては彼女たちの息が切れ掛かる寸前でやっとおさまった。
「はあ、はあ、はあ、きもち・・・よすぎる・・・」
「はぁああっ!・・・ああ、あはぁ」
214 地球によく似た・・・(5/5) sage 2013/01/25(金) 19:32:19.10 ID:AJk9kduf
二人は絶頂の余韻にひたる。彼女もフローラも、お互いの霊魂を共鳴させた後の、愛欲満たされた幸せそうなカップルの顔をしている。しか
しフローラは、
「まだ、まだまだ・・・花粉・・・残ってる・・・もっと、出したい」
フローラは雄しべを徐々に引き抜いてゆく。
「ひゃああぁ、こ、こすれるぅっ」
その感覚だけでもお互い喘ぎ叫ばずにはいられない。彼女が抜いてくれているのかと思い、実際まさに抜けようとしているところで急に、
「っ!!」
もう一度一気に子宮の入り口まで――否、今度はその勢いは入り口では止まらずにそのまま貫通してしまった、彼女の下半身は筋肉がすっか
りゆるんでしまっていた。あまりにも衝撃的な、意識がとびかけるほどの強烈な感覚に彼女は息をつまらせ声を出すこともできない。
「ひゃぁっ!」
フローラの体にも快楽の稲妻が一瞬にして体を駆け巡り、ぶるっと震え上がる。そしてそのまま声を震わせながら、
「はぁ、はぁ、まだまだぁ、まだまだわたしたちは気持ちよくなれるんだから」
彼女の目にはわずかに抵抗しようとする意志が浮かんだが、それも次に起こる快感の第二波によって瞬時に消え去る。フローラは、本能的な
性衝動にかられるままに腰を前後に振りながら、自分の体から出るものを彼女の膣内で擦り合わせ、混ぜ合わせ、溶け合わせはじめた。
「ひい、はあ、やあ、もう、やめて、気持ちいい、もう、だめになる、わたし、ひもちよすぎて、わだし・・・」
「ひゃっ、ああああぁああ、ひい、いいぃいいい! いい、いいじゃないの、今は、はああぁああ! そうよ、はあぁああっ、味わいなさい、
しっかりと、人間じゃ味わえない、この愉悦を、おおおお!」
フローラは愉悦という言葉に力をこめるように、雄しべを抜けるぎりぎりのところまで引いた後で、最後の言葉でとりわけ強く、一気に奥ま
で、再び彼女の子宮を突き抜けるほどに攻め込む。ふたりの快感はそれまでの最高の、それこそ天国にまで達せんとする域にまで上りつめる。
「ひぃやああああ! はぁはぁああああ!」
「おおおお、も、も、もうぅらめええ、わらし、わらしいい!」
その時フローラの雄しべからもう一度噴き出した花粉が、彼女の身も心もとろけさせ、彼女の意識はフローラとともに、フローラに先導され
るように、自分が今どこにいるのかも分からないままに天国の幻想の中をさまよいはじめる。
「マリー様、マリー様ぁあああ! 好き! 好き! 大好きぃ! わたしを、つれてって、独りにしないで、マリー様あああ!」
ふと、快楽の海の中から今までの寂しさが噴火したかのようにどっとあふれ、彼女は幻覚に襲われながら、強烈な快感を味わいながらも大い
に泣きじゃくる。フローラはそんな悲しい言葉を発する彼女の口に蓋をするように、或いは悲しい言葉ごと彼女の口を飲み込むように、そして
フローラ自身の欲求を満たそうと貪るように、彼女の唇にしゃぶりつく。二人の唇の間から、ねちゃねちゃと聞こえるいやらしい音や二人の喘
ぎ声に混ざって、フローラのあいまいな声が彼女の意識にまで響いてくる。
「ん、んんん、大丈夫よ、んんん、エリー、ああ、あああ! ・・・わたしが、むうぅ、マリー様の次女の、この、ぅ、んんん、フローラが、
ずっと一緒に・・・ああ、はぁゃああ、ま、また、ああ!」
「ふ、フローラ!? フローラ! フローラ様ああああ!」
彼女は初めてフローラという名前を叫び、自分でもよく理解できない快さを感じる。
「溶け合ってる! わたしの子宮とエリーの子宮、溶け合ってる! 感じる! 感じすぎちゃうううぅう!」
「フローラ様! フローラ様とわたし、ひとつに、ひとつに! はっああああ!」
二人の悦びの声は絶えることなく、永い時を幸福のままに過ごし続ける・・・
五行戦隊第六話 『黒い水の中からの視線』
143 五行戦隊 sage 2012/12/24(月) 09:25:15.47 ID:uwOBuGIO
第六話 『黒い水の中からの視線』
適当あらすじ
使えば使うほど淫らになっていくことをしりながら力を使う翠
鈴華、睦美含め正義の味方だった者同士の戦いが始まる
一方、灯の前には後一歩で助けられたはずの清見が敵として立ちはだかる
金:×
木:×
水:×
火:○ ピンチ
土:○
144 五行戦隊 第六話(1/22) sage 2012/12/24(月) 09:27:13.32 ID:uwOBuGIO
一陣の湿った風が森の合間を撫ぜる。
綿密に降り続く小雨が濃霧のように夜空を覆い、
生暖かい空気を蒸し風呂のように閉じ込める。
森の中はまさに熱帯雨林のようだった。
そんな高温多湿な環境の中、一人の少女は木陰の後ろに縮こまっていた。
サウナ室のような息詰まる熱気にも関わらず、
少女は風邪を引いたかのように震えの止まらぬ両腕で体を抱きしめていた。
体を包むダークグリーン色のスーツは生き物のように
もぞもぞと動き、葉っぱから落ちる雨粒にうたれるとピクリと跳ねる。
露出した肌もすっかり敏感になったのか、
色っぽく染まったそれは風に撫でられて軽くわななく。
物音が目立たないよう、少女は呼吸を小刻みに分けてせわしく続けた。
その呼吸と同調するように触手スーツ上の妖眼が明滅を繰り返す。
吸気とともに緑色に輝き、吐気とともに暗くともる。
あたかもそのスーツは彼女の体の一部であるかのように。
あるいは彼女のほうこそスーツの一部であるかのように。
妖眼蟲に寄生されたその美少女――翠は、
今にも自慰してしまいたい衝動に焚き付けられていた。
彼女に宿るのは霊力ではなく、禍々しい妖力だった。
その妖力を駆使しようとするたびに、思考を絶するほどの淫欲が体から沸き起こる。
理由は分かっていた。
澄んだ霊力と違い、妖力の源は人間の濁りきった精気と欲望。
だが彼女はしばらく性行為をしていない。
淫らな情欲だけが体中を巡り、脳に望みを訴えかける。
淫欲だけならまだマシだった。
もっとつらいのは、この力を使おうとするたびに、
それが宿敵によって授けられた屈辱であると思い出してしまうことだった。
周囲の成長し続ける植物は、どれも邪悪な外見をしていた。
いやらしいしずくを分泌する蕾。
人の淫欲を誘う香りの肉の花。
女性器のような卑猥な割れ筋が生えた茎。
妖眼を見開く幹。
それらの外見は、正義の味方が使う技のイメージと遠く離れたものだった。
今この瞬間にも、自分の体がどんどん妖力に馴染んでいくのを感じてしまう。
かつて悪と戦った者として、これ以上ない屈辱と無念である。
(でも、この力でみんなを守れるのなら……)
悔しさを胸中に押し込めて、翠は両手を地面に突き立てた。
濃密な妖力は瞬時に地脈を通り、周囲の植物は一層狂ったように成長し出す。
翠はもともと辛抱強い少女である。
彼女のマイペースなところは、ほかの仲間にも安心感を与え続けた。
それと比べれば、鈴華は間違いなく短気者である。
普段からイタズラ好きな鈴華にとって、単純作業ほど退屈なものは無い。
145 五行戦隊 第六話(2/22) sage 2012/12/24(月) 09:28:57.28 ID:uwOBuGIO
「ああもう、面倒くさい!」
翠から離れ場所に、一人の黄色い少女が植物に囲まれていた。
彼女は煩わそうに言いながら、手にしている大バサミを放り投げた。
大バサミは空中を半回転して、
後ろを群がる赤薔薇に突き込み花びらを血飛沫のように斬り散らす。
だが、すぐにその空間を埋めるごとく新手の茨が伸び出る。
鈴華の小柄な体が地面に座り込む。
大きな瞳を広げ、不満げに歯軋りする姿は小動物のような愛着があった。
だが彼女が身に付けている暗黄色の触手スーツには、
翠と同様に悪の寄生眼が生えていた。
ふと一本の木が樹皮に妖眼を見開くと、地面からこっそり根を引き上げ、
少女の無防備な背中に向かって枝をのばす。
しかしその枝が動き出す直前、無数の剣影が樹木を梢の先まで木っ端微塵に切り裂く。
少女のまわりを、金銀銅鉄などさまざまな材質の剣が浮遊していた。
何も感付いていないように少女は駄々をこね続ける。
「つまんない! つまんないつまんないつまんない!
出てきなさいよ、こんなの卑怯じゃない。正々堂々と勝負しなさい!」
まるで子供のように地面に伏してじたばたする少女。
彼女の周囲三平方メートルは浮かぶ剣陣によって守られ、
苗一つ生えない禿地に刈り取られていた。
だがそのテリトリーから出れば、ジャングルのような密林が立ち並ぶ。
五歩先の景色さえ見通せないほど、植物が密集していた。
翠はただ気配を殺しながら、鈴華の動きを監視し続けた。
樹木に生えた妖眼を通し敵の一挙一動まで把握できる。
この力を忌みながらも、翠はその便利さを認めざるをえなかった。
地の利は一方的に翠にある。
もともとここは森林地形。
翠の気配を紛れこむのにこれ以上なく適している。
その上、天も味方していた。
五行相生において水は木を生む。
この雨の中であれば、もともと生命力に長けた翠の植物は、
更に氾濫するごとく成長することができる。
苦手属性であり、更に五行戦隊でも群を抜いた殺傷力を誇る鈴華に対し
翠は無理に戦うことをしない。
ただこうやって足止めできればいい。
できる限り長く。
突然、翠の妖眼の視界に変化が起きた。
鈴華は暴れることをやめ、ゆっくりと立ち上がったのだ。
「ずっと隠れていれば安全だと思ってるの? 翠ちゃんらしくないじゃない」
閃電のフラッシュが森を一瞬だけ照らす。
さきほどと打って変わって、鈴華の冷酷な笑みを映し出す。
子供が悪だくみのときに見せる、可愛らしい犬歯をのぞかせて。
「それとも、今の翠ちゃんはそうやって隠れてるのが精一杯なのかしら?」
146 五行戦隊 第六話(3/22) sage 2012/12/24(月) 09:31:38.82 ID:uwOBuGIO
鈴華の身を包んでいた触手スーツが解かれ、
うねる触肉の中から短剣、刀、斧などが析出される。
次の瞬間、それらの刃は弾丸のごとく周りへと発射された。
一本の鉄槍が真上のヤシの木に生えた妖眼を貫いたとき、
翠の視界情報はそこで途切れた。
鈴華を中心とした範囲内の植物が跡形もなく破砕され、
ただ次々と切り倒される感じだけが翠に伝わる。
何のつもりだろうか。
翠は更に身を縮ませて考えた。
この程度の破壊なら、時間さえあれば元の状態まで簡単に再生できる。
ならば鈴華の意図はほかにあるだろうか。
(痛……っ!)
翠は足元を見ると、一匹の小動物のような生き物が自分の右足首に噛み付いていた。
手のひらサイズの金属体ながら、
サメのような鋭い牙を使って触肉のブーツに食い込む。
その生物の頭にある一つ目が翠の視線と合うと、
牙の合間から「シュルル」と気味悪い笑い音を出す。
翠はすかさずその鉄塊を掴んだ。
腕を覆う触手グローブの一部が蔓に変形して、敵の目玉に種を植え付けて生え潰す。
周囲を見れば、木々に刺さった鈴華の刃が次々と同じような金属生命体に生成し、
軍団ピラニアにも勝る勢いで植物を食い散らす。
すぐに翠がいる木の幹だけ無事なのが目立つほどに。
しまった、と思ったときはすでに遅かった。
どこからともなく現われた鈴華は、
浮遊する十三本の剣を一本の妖眼剣に合体させ迅雷のごとく振り下ろした。
「そこよ!」
「くっ……!」
真ん中から両断された木から、翠は後ろに背を向けたまま飛び出す。
触手スーツの肩の部分が切り裂かれ、緑色の汁液を散らす。
鈴華が二撃目に切り替える直前、翠の懐から無数の木の葉が湧き出て、
宮廷舞踏会のダンサーのように両者の間を踊る。
その葉の群れを一振りで一掃した時、鈴華の前にはすでに誰もいなくなった。
十メートル離れた木の上で、翠は肩を押さえながら息を噛み殺した。
傷口から感じるのは痛みではなく快楽。
鈴華の剣には妖呪が込められて、
それに斬られた者は心を奪われ妖眼蟲に寄生されてしまう。
もとから寄生者である翠には寄生効果までは無いが、眼下では他の問題点があった。
鈴華が放った妖眼憑きの刃どもは、白蟻のように植物を次から次へと食い尽くす。
この森を制圧するのに十分なスピードである。
今まで見たことのない鈴華の術。
どうやら、妖魔の隷属化の恩恵を受けたのは自分だけではなかったようだ。
体を襲う淫欲はすでに限界まで達していた。
これ以上の打開策が無ければ敗れるのは必至。
しかし緊迫した状況とは裏腹に、
脳内では速く楽になりたいという欲情ばかりが増大する。
147 五行戦隊 第六話(4/22) sage 2012/12/24(月) 09:34:22.98 ID:uwOBuGIO
「翠ちゃん、動きが鈍ってたわよ?」
枝葉のむこうから、剣刃の緑汁を舐め取る鈴華の姿が見える。
彼女は得意げに笑いながら、土から伸び出た新芽を容赦なく踏み潰す。
「長期戦にしようって作戦みたいだったけど、一つ大事なことを忘れてない?
翠ちゃんって、前に私とエッチしてからどれくらい時間経ってるの」
(っ……!)
翠は思わず唇をかみ締める。
鈴華と繰り広げた淫らな行為が、その一言によって鮮明に蘇る。
森の反応を確かめるように、鈴華はにんまりと笑った。
「まさかとは思うけど……その時からずっと精液を摂取していないとか、
そんなこと無いよね? 翠ちゃんの体って男の精液無しでは生きていけないくらい
すごく淫乱だもん。ほら、私の寄生チンポをしゃぶった時の味、思い出してみてよ」
鈴華のかわいい金切り声から逃げるように、翠は自分耳を塞いだ。
しかし、そのセリフによって連想させられた異物のイメージはすでに隙をこじ開けた。
「あっ、そっか。ここに来るまで睦美や灯とずっと一緒だったもんね。
あの二人にそんな恥ずかしいこと見せられないよね。あれ、それじゃあオナニーも
全然できないじゃない? 可哀そうな翠。あなたがずっとオマンコを濡らして
期待しているのに、あの二人はまったく気付かなかったもん」
(やめて……そんなこと言わないで……!)
頭を左右に揺らしながら、翠は心の中で叫んだ。
必死に抑えつけた欲望の炎がじわりじわりと再燃する。
貪婪に精をむさぼる自分の浅ましい姿。
それを灯や睦美がさげすむような目で見つめる。
封印したつもりの劣情が鈴華のセリフに反応していとも簡単に釣り出される。
たとえそれが挑発だと知っても、翠は動揺を抑えることが不可能だった。
そのため、彼女は場の変化に素早く対応できなかった。
一匹の妖眼蟲は、土を押しのけながら地面を這い進んでいた。
葉脈の張った翡翠色の小さな蟲。
その蟲の存在を木の上から気付くと、翠は「アッ」と驚きの声をあげた。
だが彼女がアクションを取るよりも速く鈴華がその妖眼蟲を摘み上げる。
「こんなところに子供の妖眼蟲がいるよ」
鈴華の手中にあるのは、幼いスライムだった。
蟲の肉構造はまだ柔らかく、その小さな体は愛嬌さえあった。
「その子は……!」
「あれれ、この子ってあのとき翠が産んだ子供じゃない。
まだ宿主を見つけてないのに、母親の妖力を感じて、心配になってやってきたんだ。
まだ子供なのに、偉い偉い」
鈴華は小悪魔のような笑みを浮かべると、妖眼蟲の子供をいじくるように撫でた。
それを嫌がってか、蟲は「シュル、シュル」と幼げな奇音をあげる。
「その子を離しなさい!」
気配を隠すことさえ忘れ、翠は大声を出した。
反響する声に木々の枝が一斉に揺れる。
勇ましい口調ではあったが、翠は何か感情を噛み殺していると感じ取ると、
鈴華の笑みに悪意が増大する。
148 五行戦隊 第六話(5/22) sage 2012/12/24(月) 09:35:55.47 ID:uwOBuGIO
「ふーん、なんで?」
「その子は私達の戦いと関係ないはずです」
「イヤだ」
「な……に?」
「私が捕まえたんだから、何をしようと私の勝手でしょ」
鈴華は意地悪そうに笑いながら、
蟲の目玉を押したりつねったりコリコリしたりして遊んだ。
幼蟲はますます嫌がって、鋭い音を立て始めた。
一瞬森の全ての葉っぱが上向きに逆立ちしたことを鈴華は見逃さなかった。
「やめなさい! 妖眼蟲はあなたの仲間なんでしょ?
どうしてそんな酷いことをするのです」
「翠には関係無いでしょ?『正義の味方』なんだから」
「くっ……!」
遠目で鈴華にいじめられている妖眼蟲の姿に、
翠の胸は今まで感じたことも無いような痛みが貫く。
正義の味方である五行戦隊にとって、妖眼蟲は紛れもなく人類に害をなす敵。
そして翠個人としても、自分を陵辱した不倶戴天の相手である。
しかしなぜ、あの幼虫の救いを求める視線がこんなにも胸を突き刺すだろうか。
悲鳴が聞こえてくるたびに、
心の琴線が震えて裂かれたような気持ちを味わう。
それと比べれば、今までの人生で体験したどんな苦痛も微々たるものだった。
翠はついに懇願するように言葉を並べた。
「お願い、もう止めて……もうその子を離してあげて!」
「そう言われると、ますます痛めつけたくなるんだよね」
鈴華はくくくと笑い、手首をひるがえした。
妖眼剣の刃が蟲の目玉の横に宛がわれる。
「待って!」
悲鳴に近い叫びだった。
落葉とともに翠は飛び出し、鈴華の前で止まる。
妖眼蟲は彼女の姿に気付くと、
シュルシュルと音を立ててただ一つある目玉で彼女を見つめた。
そのいたいけな視線と触れた途端、翠の胸は愛憐と焦燥で破裂しそうになった。
再会できた喜びと同時に、凶刃の光に今まで無かった恐怖に身が震え上がる。
「お願い、もう止めて! 私がどうなってもいいから、その子を離して!」
五行戦隊の中でも特に穏和な性格で、仲間を優しく支える翠。
それが今では、まるでわが子を人質に取られた母親のように慌てきっている。
その変化に鈴華は腹から滑稽そうな笑いをこみ上げる。
「ハハハハ……正義の味方が妖魔の助命を願うなんて、本当に面白いわ。
この子が大事だって、認めるんだね?」
「ええ、認めるわ! 認めるから……だからその子を助けてあげて!」
「じゃあ今すぐ土下座して『百眼様ごめんなさい。もう二度と過ちをしないよう、
私を何百回も犯してメス奴隷だったことを思い出させてください』って謝りなさいよ」
「そ、そんなことは……」
「そう、できないのね」
149 五行戦隊 第六話(6/22) sage 2012/12/24(月) 09:37:49.85 ID:uwOBuGIO
小さく呟くと同時に、鈴華は前触れもなく剣を引いた。
刃が蟲の表面に切り傷を残し、一筋の汁が土にかかる。
蟲の悲鳴と翠の悲痛の声が同時に夜空をつんざく。
鈴華がポイと投げ捨てると同時に、翠の体はバネのように飛び出し、
その幼体を空中でキャッチする。
だがその直後、鈴華の放った鉄鎖が彼女の首を巻きつき、土に強くたたきつける。
それでも妖眼蟲を守るようにと、翠は胸を大事に抱え背中から地面と激突させた。
自分が受けたダメージよりも、翠は真っ先に幼蟲の傷の手当てをした。
息絶え絶えだった幼蟲は本能のようにもぞもぞ動き、
母親が露出させた乳首に吸い付く。
蠕動するごとに母乳を吸い出すと、体表面の斬り傷が癒着していく。
「命も顧みずに妖魔を助けるなんて、正義の味方と聞いて呆れるわ。
これで分かったでしょ? 翠ちゃんはもう、身も心も妖眼蟲のために存在してることを」
「全てあなたの言うとおり……私は妖眼蟲のために存在している。もう何を言われても、
あなたに従います。だから……だから、この子だけは見逃して下さい」
鈴華は翠に剣を向け、ニッコリ笑った。
泣き崩れる翠。
鎖で首を締められているのに、蟲を守るように抱えて必死の表情で哀願する彼女。
この瞬間から、悪と対峙する勇気を持つ五行戦隊の翠はいなくなった。
残るのは我が子を守るためなら、敵にも屈する一人のか弱い母親だけ。
「安心してよ。私の心が広いのは、翠ちゃんも昔からよく知っているでしょ? いいわよ」
翠の表情が明るくほころぶ様子を鑑賞してから、鈴華は言葉を続ける。
「ただし、ちゃんと罰を受けてもらったらね」
「えっ……?」
投げ渡された金属の物体を受け取ると、翠は驚きの声を上げた。
それは銀色の貞操帯だった。
股間を宛がう場所に二本のディルドーが怒張り、棒状の表面がいやらしく脈動する。
「それを自分の手で装着したら、大目に見てあげてもいいわ。あっ先に言っとくけど、
一度それを自分の手で装着しちゃうと、持ち主である私が許さない限り、
どうがんばってもはずせないの」
「そんな……!」
「嫌なら止めても良いわよ。ただし今度こそ、ざっくりしちゃうかも……」
「わ、分かったわ!」
鈴華の剣先が動いた途端、翠は全ての抵抗する意思を放棄した。
彼女は震えたまま立ち上がり、股間を覆っていた触手スーツは解かれる。
そのまま絶望に満ちた表情で貞操帯を自分の秘部に当てた。
「ひゃっ!?」
女性器の匂いを嗅ぎつけた途端、
貞操帯のディルドーは一気に伸びて少女の前後の穴を塞ぐ。
そのまま手足を伸びるかのように金属紐が尻に深く食い込み、後ろで連結する。
反応するよりも速く貞操帯は彼女の股間にぴったりと張り付き、
股間から尻にかけてのラインをいやらしく装飾する。
金属の正面プレートに、一つの妖眼がくぱっと見開く。
150 五行戦隊 第六話(7/22) sage 2012/12/24(月) 09:39:32.55 ID:uwOBuGIO
「はあああ……っ!」
翠はかすれた悲鳴をあげながら、苦しげに体を後ろに反らした。
ディルドーは彼女のさからいをまったく意に介さず、中へ中へとぐんぐん押し入る。
すでに高揚していた少女の体にとって、
その力強いピストン運動は壮絶なものだった。
そんな宿主の事情を考慮する気配もなく、
貞操帯はぴったりフィットしたのち「カチャリ」と鍵音を鳴らす。
「はああぁん、っうん……ううぅんっ!」
「あはは、これでもう浮気ができなくなっちゃった。
私の『目』がいつでも監視しているから」
鈴華は貞操帯の表面にある妖眼をなぞると、翠はビクンと大きく跳ねた。
プレートの裏側にびっしり生えた繊毛がむき出しになったクリトリスを撫で、
人外の快感を与える。
「はああぁん!」
「そんなに喜んでもらえるなんて嬉しいね。でもこれは一応罰なんだから、
翠ちゃんが絶対イケないようになってるんだ。翠ちゃんって、
あれから以来一度もセックスしてないんでしょ? あはは。
せめてここに来るまでオナニーでもしとけば良かったのにね!」
のた打ち回る仲間に対し、鈴華は悪戯が成功した子供のように哄笑を投げかける。
蟲の幼虫は心配そうに母親を追いすがるが、
その幼体を鈴華が容赦なく茂みの向こうへ蹴り飛ばす。
「やめて! あの子に手を出さないって約束したでしょ?」
「約束? 誰が?」
鈴華は肩を可愛らしくすくめた。
「私をここまでイライラさせといて、何を言っているの?
覚悟しなさいよ、翠ちゃんへの罰はまだまだこんなものじゃないんだから!」
「そんな……ああぁぁっ!」
鈴華は二つの金属リングを取り出すと、翠の左右の乳首にそれぞれはめた。
しかし翠の口から漏れ出た悲鳴は、すぐに快楽の喘ぎ声に変化する。
金色に輝くリングによって装飾された美乳は、
高級娼婦のようないやらしくも美しい光沢を放つ。
「うんうん、さっすが私。貞操帯と一緒で、淫乱な翠ちゃんによく似合ってるわ」
乳首をくくる金属リングをぺロリと舐める鈴華。
たったそれだけの衝撃で、翠は嬌声をあげてしまった。
両手でいくら貞操帯を掴んでも、奥深くまで固定したディルドーは絶妙な加減でかき回し、
決して尽きることの無い快楽を創造する。
そして乳首にあるピアスは常に意識を刺激し、翠は狂うことも気絶することも許されない。
未来永劫にも思えるもどかしさは、まさに地獄の拷問だった。
151 五行戦隊 第六話(8/22) sage 2012/12/24(月) 09:41:02.69 ID:uwOBuGIO
不意に鈴華は表情を収斂させ、足元から伝わる地面のわずかな振動に意識を集中する。
「そこ――っ!」
鈴華は剣を身丈よりも大きい鉄槌に変化させ、
すかさず地面に向かって力いっぱい叩きつけた。
ハンマーが接触した場所を中心に四方八方へと亀裂が走る。
だが土の中から堀り返されて出てきた人物に、鈴華は驚きを隠しきれなかった。
三人の少女だった。
少女たちは体にそれぞれ蔓、葉、花型の妖眼蟲を寄生していたが、
鈴華から重い一撃を受けたせいで三人とも目をグルグルさせて気絶していた。
ハッとなって空を見上げると、雨の中から無数の岩つぶてが降って来た。
鈴華の思考は電光石火のごとく閃く。
寄生娘たちを地下道に誘い込む。
次に地上にいる自分と互いに敵だと思わせて同士討ちさせる。
そのあいだ本人は上からの強襲。
決して能力に溺れることなく、最善の作戦を立てる堅実な攻め方。
「睦美、その程度で私に通じると思ってるのか――っ!」
鈴華はハンマーを空中に放り投げられると、そのまま十三本の刃に分離した。
岩石がその範囲に入るや否や、
剣の陣は目にも留まらぬ速さで何もかも砂粒までに斬り裂く。
五行戦隊で随一の攻撃力と守備力を兼ね備えた鈴華。
どんな相手に対しても、彼女は遅れを取るつもりは無い。
「それはどうかな」
「なにっ!?」
気絶した娘達から声が響いたと思いきや、
その下から二本の腕が伸び出て鈴華の足をがっちり掴んだ。
完全に不意を突かれ、一気に足首まで土中に引き込まれる。
「させるか!」
鈴華は素早く妖眼剣を呼び戻すと、迷わず両手で地面に刺しこんだ。
どんな金属をも切り裂く妖眼剣の前では、地面もアルミ箔とそう変わらない。
剣が柄まで一気に埋まると、足を掴んだ腕がピタッと止まった。
と鈴華がそう思った次の瞬間、そのまま妖眼剣を地中へと引きこまれてしまった。
まばたきする間もなく得物を失ってしまった鈴華。
ただ呆然とするほかなかった。
この妖眼剣は五行戦隊にいた頃から長らく鍛え上げた霊剣で、
鈴華が悪に屈した後それも邪悪な妖剣として寄生されてしまった。
数々の強敵を倒した相棒として、武器の中でも特にお気に入りだった。
しかし、今は当然愛剣の行方に気を取られている場合ではない。
一度動きを止めていた地中の両腕はそのまま鈴華の足首を強く掴み、
再び動き出したのだ。
今度は森の外へ向かって。
「睦美の土遁術……!」
翠の姿が木々に遮られて見えなくなったのを確認し、鈴華はチッと舌打ちをする。
最悪なタイミングだった。
あともう少しで翠を屈服させられたのに。
万全ではないにしても土属性に対し有利な分、
鈴華と二人分の力を合わせれば確実に睦美を圧倒できた。
152 五行戦隊 第六話(9/22) sage 2012/12/24(月) 09:42:32.20 ID:uwOBuGIO
砂漠の中を泳ぐ砂ザメのごとく、地中の腕が左右に土波を分けながら意のままに赴く。
そのジグザグ軌道のせいで鈴華は重心に振り回されるだけでなく、
次々と顔面に向かってくる障害物にも対応しなければならなかった。
葉っぱ木の枝野生の蔓食虫植物の袋と一通りの物体とぶつかった後、
鈴華はたまらず触手スーツから大鎌を取り出した。
ふと、彼女は目の前の進路に巨大な岩が迫ってくることに気付く。
時速八十キロまで上昇したスピードはすでに森を抜け、
まわりの景色を高速に後方へと投げ捨てる。
「ちょっと、冗談じゃない!」
枝に叩かれ赤くなった鼻をさする暇もなく、鈴華は両手で大鎌を振りかざした。
ジェットコースターの速度で迫り来る巨岩を真っ二つに切り裂く。
しかしそのすぐ後ろに、更に大きな岩壁がそびえ立っていた。
大きな轟音と同時に、岩壁に鈴華と等身大の空洞がくくり抜かれる。
「いったあああぁ!」
絶叫が夜空に伸びる。
鈴華は破片と灰をかぶった頭を抱え、目尻に大きな涙粒を溜めた。
接触する直前、体を覆う触手スーツを刃に変化させ岩壁を削ったおかげ、
間一髪で全力衝突を回避した。
が、触手スーツは頭部まで守っていなかったのだ。
「この……もう許さないんだから!」
鈴華は痛みをこらえて、大鎌を自分の足元に向かって一振りする。
足首を掴んでいた腕はバッサリ切断され、砂となって消え去る。
機を逃さずに鈴華は近くの高い木の上へジャンプし、
鎌を構えたまま全身の神経を尖らせる。
いつの間にか、森外の荒地に出てしまったようだ。
禿げ上がった地肌は雨水に沈み、荒れた広場に三、四の枯れ木がポツリと残るだけ。
砂地の中央に一つの入り口が開き、断層階段をのぼって一人の少女が現われる。
落ち着いた足取りの中に、不動の山のような気概を潜める。
褐色の戦隊服はまさに五行戦隊の一人、睦美のトレードマークであった。
「ひさしぶりだね、睦美。こうして私達二人っきりになるって」
「そうだね。最後に一緒に行動したのは、あなたが妖魔に捕らえられた日だったもの」
「少し前のことなのになんだかもう昔みたい。
あの時、二人で一緒に妖眼蟲を追いかけてたっけ」
雨の中で見つめ合う二つの視線。
たった一晩の出来事が二人の運命の分かれ道となった。
あの夜、仲間と連絡するために一時離脱した睦美。
睦美の代わりとなった妖眼蟲の監視役を買って出た鈴華。
言い表せない複雑な感情が二人の間を駆け巡る。
153 五行戦隊 第六話(10/22) sage 2012/12/24(月) 09:43:59.59 ID:uwOBuGIO
鈴華は睦美の特長をよく理解していた。
義に厚く、戦術眼に優れた一面を持ち合わせる。
長所はどんな場面でもオールマイティな力が発揮できること。
灯のように逆転性が強く、翠のように持久力に優れ、
清見のように柔軟性があって、鈴華のように守りに隙が無い。
全員分をフォローできる力と優れた決断力から、五行戦隊の隠れたチームリーダー役を果たす。
短所は得意とする地霊術には大味なものが多く、
地形に制限されてしまうと能力が百パーセント引き出せないことだ。
睦美は鈴華のことをよく考察していた。
小柄なかわいらしいイメージに反し、戦闘では勇猛果敢な働きぶりを見せる。
長所は五行戦隊の矛と盾を同時に担える攻守性能。
常に一番強い敵の攻撃から仲間を守り、常に一番硬い敵に最初の傷を与える。
相手を物理的に消滅させる力は単純でありながらその右に出る者はいない。
短所はテクニカルな技と意識が乏しく、
劣勢が確定してしまうとなかなか覆せないところ。
長いあいだ肩を並べて戦った者同士だけに、互いの手の内は知り尽くしている。
ただし、今は一点だけ変化が生じている。
睦美は妖魔化した後の鈴華のことをほとんど知らない。
「睦美がわざわざ私をここまで連れ出した理由は二つある。翠ちゃんの安全を守るため。
そしてもう一つは、森の中だと睦美と相性が悪いため。そうでしょ?」
触手スーツに覆われた胸を張りながら、得意げに語る鈴華。
睦美の反応はあくまでも冷静だった。
「そうだとして、どうする。今度は私を森まで連れ戻すのか」
「いいえ。睦美はここで戦うことが有利だと思ってるかもしれないが、実は私にとっても
好都合なんだよね。今までは翠がいるせいで、『あいつら』が阻まれていたから」
「あいつら?」
睦美が疑問を呈すると、ふと周囲の暗闇に無数の目玉が輝いていることに気付く。
目玉の数はなおも増え続け、睦美のいる砂場を取り囲むように現われる。
チリーン、チリーンと鳴る妖しい音色。
鈴華が髪飾りとなっている鈴を揺らすと、
数え切れないほどの金属スライムが現われる。
今まで睦美が戦った二、三匹の規模ではない。
大小様々の体を持つ一つ目妖魔が、のろのろと集まってきた。
鈴華は木の枝に座り両脚を嬉しそうに揺らす。
「どう? いっぱい人間から淫欲を吸って、私だけの妖魔軍団に作り上げたの。
この音を鳴らせば、どんな遠くからでも呼び寄せることができる」
「森にたくさんの人間を誘拐したのは、蟲を量産するためだったのか」
「ふふふ……睦美、あなたが絶対勝てない理由が一つあるの。霊力と違って、
私達の妖力は人間を堕落させて淫欲の虜にすればいくらでも集まるの。なにも私みずから
あなたと戦うことは無い。これだけ数で押せば、いくらあなたでも無理でしょ?」
154 五行戦隊 第六話(11/22) sage 2012/12/24(月) 09:45:24.27 ID:uwOBuGIO
「相変わらず子供じみた考えだな。単純であなたらしい」
「なによ!」
鈴華はぷんと頬を膨らませる。
「落ち着いたフリができるのも今のうちなんだから! 睦美を生け捕りにしたら、
ここにいる者達に一匹ずつ中出しさせてやるんだから!」
「一匹ずつと言わずに、全員同時にかかってきてもいいんだよ」
「そんなこと言っちゃって……もう土下座しても遅いんだからね!」
鈴華が鈴を激しく鳴らすと、妖眼蟲は互いに躯体から触手を伸ばし、
文字通り鉄の壁のスクラムを組んで押し寄せてきた。
一列目の蟲群れが睦美の近付くや否や、二列目の妖眼蟲が重ねるようにその上を登る。
鈍重な体をひしめく妖眼蟲。
金属同士がかすれる騒音が砂場を響き渡る。
鈴華はしたり顔でその光景を見つめた。
だが次第に彼女の表情が変化していく。
雨水に浸され泥沼状態になった地面は、まるでスポンジのように沈んでいき、
金色スライム達の重体を飲み込み始める。
砂場にアリジゴクの巣のような落とし穴が広がり、鈴華のいる木まで及んだ。
傾斜していく木から慌てて離れた直後、大木が傾きながら泥沼の中へ流れ込んでいく。
その泥沼の中心で、睦美は両手を素早く変えて印を結ぶ。
「鈴華、あなたはあれこれ考えてきたけど、基本的なことを忘れている」
「なにっ?」
「一つ、金はもともと土より生まれたこと。二つ、私が最も得意なのは乱戦であること。
そして三つ、正義は必ず悪に勝つこと!」
睦美はそのまま地面に両腕を叩きつけ、全身の霊力を解放した。
魂を込めた招来令術とともに、大きな砂の霊獣が地中から噴き出すように立ち上がる。
逆巻く泥沼に無数の金属スライムを巻き込んだまま、
血肉のごとくその泥で体を構成する。
龍に似た頭部が天を仰ぐと、地鳴りのような雄叫びを上げる。
霊獣の体の土砂はそのまま収縮して、
中に混ざってしまった妖魔をじりじり圧殺していく。
異物を石化して目玉を潰すたびに、妖魔が突きたてた刃が召喚獣の体内を貫く。
感覚をリンクしている睦美は、
無数の釘で内臓を打ち付けられるような痛みを感じ続ける。
だが、彼女には立ち止まる時間が残されていない。
(灯、清見……もう少し待っててくれ!)
こめかみに青筋を立てるほどの激痛と戦いながら、睦美は霊獣の肩から指示を出す。
「行け、土麒麟(ドキリン)!」
土の霊獣は天を遮るほどの泥砂を巻き起こすと、鈴華に向かって猛スピードで突進した。
155 五行戦隊 第六話(12/22) sage 2012/12/24(月) 09:46:42.09 ID:uwOBuGIO
□
灯はとても不思議な気分だった。
目の前にある無愛想な表情は、間違いなく清見本人のもの。
なのに昔とイメージが全然違うのはどうしてだろうか。
清見は水色のバトルスーツに代わり、
今では黒を基調とした青い触手スーツを身にまとう。
青いライン上に妖眼が見開き、かつての意趣を汲みつつ新たな魅力で宿主染め変える。
こびりつくように肉質の布地が体に張り付き、
胸の起伏や腰つきの勾配を惜しみなく描き出す。
下半身はスカートではなく、
レオタード式の肉布が太ももの間をいやらしく食い込み淫靡さを演出。
ノースリーブから露出した肩の白肌はまばゆく、
その先にある両腕は肉質のロンググローブに包まれた。
清見が右手を掲げると、腕を包んでいたグローブは幾本もの青い肉紐にほどき、
クラゲのようにふわふわと空中に浮かんだ。
灯はもどかしい感情に苛まれた。
今の清見の格好は驚くくらい彼女に似合っていた。
ダークブルーの雰囲気はその無表情をよく引き立て、
昔には無かった凄艶な色香を匂わせるようになる。
冷酷な視線に射られると、身も心も凍えるような気持ちにされてしまう。
それが脳内に鮮烈なイメージを焼き付けてしまい、
灯の中にある清見の昔の姿が思い出せない。
清見の姿が美しければ美しいほど、灯はいら立つような悔しいような気分に陥る。
翠の時もそうだったが、その感情は一体なんなのか、
灯自身にもうまく説明できなかった。
ほとんど身動きできない彼女には、ただその激昂を皮肉の言葉に変えて発散する。
「どうなの、その『新しい服』の着心地は」
「悪くない。宿主である私のイメージを瞬時に転写して具現化できる。
これなら私の力を最大限に引き出してくれるだろう」
そう言いながら、清見は腕を振り下ろした。
触手は途中から鞭のようにしなり、地面に倒れている灯の体を強くなぎ払う。
水しぶきが激しく散った。
「っ……!」
苦悶を眉に滲ませながらも、声一つあげず歯を食い縛る灯。
水の鞭によって学生服が裂かれ、その下の赤く腫れた素肌を雨空に晒す。
今の灯は変身前の姿に戻っていた。
雨の中で泥水に浸かる制服姿は彼女の敗北ぶりを痛々しく物語る。
護霊服の守護が無き今の彼女は、
妖力を帯びた攻撃に対しまったく無防備な状態である。
清見はかつての仲間を心配する素振りもなく、ただ興味津々と水触手をさわる。
「面白い性質。妖力をそのまま使用するのに、扱い方は霊力とほとんど変わらない。
まさに私達のような退魔術者を生かすためのシステム」
「まだそれほど経ってないのに、ずいぶんと馴染んでるんだね」
156 五行戦隊 第六話(13/22) sage 2012/12/24(月) 09:48:21.46 ID:uwOBuGIO
「鈴華と翠のおかげだ。二人に寄生した経験がそのまま私に伝えられる。
妖眼蟲同士は知識を共有し蓄積する。個体ごとゼロから勉強する人間より
ずっと合理的で素晴らしい」
「五行戦隊よりも?」
「そうよ」
カチン、と来た。
清見の言い草は完全に敵の肩入れをするものだった。
妖魔によって世界がどれほど損害を受けたか見てきた灯にとって、
それは何よりも許せなかった。
「今までオレたちが過ごしてきた時間は、全部どうでもよかったのか!
一緒に修行をして、一緒に枕投げして、一緒に戦ってきた時間が!」
「そう言ったつもりは無い。五行戦隊として身に付けた知識は、
これからもずっと役に立たせるつもりだ。妖眼蟲が人間世界を征服するために」
「このやろうっ!」
灯は何度も目を凝らして清見の顔を見つめた。
しかし清見の顔は学校裏の池水と同じようで、感情の揺れがまったく見つからない。
親友だから分かる、清見は本気でその言葉を言っている。
そして親友だからこそ、灯は清見にそんなことをさせるわけにはいかない。
「覚えてろよ、絶対一発殴ってやるから!
正義心を思い出させるくらい強烈なやつをな」
「ありがとう。でもそうなる前に、あなたの正義の心を私が消してあげるわ」
清見はそう言いながら右拳を突き出し、手をギュッと握り締めた。
彼女の右腕を包むロンググローブは濃い黒に変色し、
肉布全体が手首の方向へと波打つ。
表面にある妖眼は小波に乗る葉のように揺れ動く。
何もできないまま、灯はその不気味な光景をただ見上げるしかなかった。
肉布はまるで液体のようにうねる。
だが灯はすぐにそれは錯覚ではなく、本当に液体化していることに気付く。
握り拳の隙間から数滴の黒液がしたたる。
それが何を意味しているのか分からない。
たが持ち前の本能から、灯は反射的にそれを顔から避けようともがいた。
液体は彼女の顔面からはずれ、左胸あたりに垂れ落ちた。
「あ……っ!?」
灯はいきなり左胸に息ができないくらい重苦しいしびれを感じた。
深海に沈められたような気持ちになったが、それも最初の一瞬だけ。
すぐに痺れが鈍い疼きすりかえられ、
どんよりと沈殿していくような心地良さが芽生える。
灯はすぐさま自分を見下ろし、唖然となった。
水滴はコールタールのように粘度が高く、制服のブラウスやブラジャーまで浸透する。
禍々しい妖力が直接肌と触れ合う。
だが思ったほど不快な感触ではなかった。
粘液にまみれた部分にじんわりとした気だるさが生まれ、頭がぼんやりしてしまう。
157 五行戦隊 第六話(14/22) sage 2012/12/24(月) 09:49:38.83 ID:uwOBuGIO
「なに……これ?」
心地良さに流されないよう、灯は懸命に正気を維持する。
黒液が浸透しきった部分は、まるでラバーのように黒々とした光沢を帯びる。
手で拭き取ろうとしても、手のひらが液体を掴むだけで剥がし取ることができない。
そして驚くことに、黒粘液化はそのままゆっくりと周囲へ広がっていく。
「鈴華や翠を見て、私はあることを確信した。
もし五人とも寄生された場合、おそらく私が最も寄生能力を発揮できると」
清見は無表情のまま身を屈め、黒液を絞り出した手で灯の胸をさわった。
たっぷりと粘液を含んだ手のひらが、灯の胸を満遍なく塗りたくる。
「いやっ……!」
灯は喘ぎ声が出そうになるのを必死にやり過ごした。
コールタールの粘液を手が滑り、そのまま快感神経を撫でられているようだ。
乳房を鷲掴むと指の隙間から黒液が溢れ、ほどよい堕落感に変換される。
「うう、ううっ……悪いことをしてるのに、よくそんな……冷静でいられるのな!」
「前まで私もそこが不思議だった。寄生され意識を植えつけられたというのに、
ほとんどの人間は人格が独立していた。でも、その認識自体が間違いだった。
妖眼蟲は人間を変えるではなく、むしろその人間の本来の姿を取り戻した」
「馬鹿を言うな! 鈴華や翠のあれが本来の彼女たちだと言うのか?」
「その通りよ。本来の鈴華はひねくれ者で、翠の本性も淫乱なマゾヒストだった。
そして私は、陰湿な私のままで行動できる」
「ひゃああ……っ!」
灯の悲鳴が響き渡る。
清見は親指と中指で灯の乳首をはさみ、人差し指で先端をこねる。
黒液に寄生された布はまるで肌その物のようで、
その下にある乳首も胸の形も原型のまま黒くあらわす。
裸でいるよりも恥ずかしい光景だった。
清見が更に体を近づけたとき、突如灯は両目を大きく見開いた。
「いい加減に、しろおぉ!」
今までこっそり溜めていた霊力を全て拳に込め、灯は渾身の力で清見を殴った。
赤いパンチが触手スーツにめり込んだ瞬間、清見の体が後方へ倒れる。
だが、驚いたのは灯のほうだった。
清見は顔色一つ変えず、ゆっくりと立ち上がった。
攻撃を受けた部分は赤く焼け剥がれたが、寄生スーツはすぐに新しい触肉が再生し始めた。
予想していたダメージから遠く離れていた。
「私の攻撃をわざと防御せず、霊力と根性だけで私が一番近付いた時を狙う。
逆境におかれた灯らしい行動ね。ただ残念なのは、
今のままでは効果がまったくないことだ」
「属性が不利とはいえ、無傷だなんて……!」
ハッとなって灯は自分の右腕を見る。
いつの間にか、彼女の右手は黒い粘液にまみれていた。
真っ黒に染まった手のひらから、黒液が指の側面を越えて手の甲まで覆う。
更に雨粒をそのまま吸収しながら、腕の上部へとのぼる。
158 五行戦隊 第六話(15/22) sage 2012/12/24(月) 09:50:57.19 ID:uwOBuGIO
灯の右手は、さきほど胸の黒液を拭おうとした時に使った腕だった。
「まさか……!」
「それが私による妖眼蟲の新たな寄生能力。護霊服に守られた状態では難しいが、
普通の服を寄生化するのは簡単なこと」
清見のスーツは触手に分裂し、灯の体を撫でると同時に目玉を垂れ流す。
妖眼は灯の体に粘液をまぶしながら蠕動し、そのまま黒化した部分の中へねじ込む。
「はああ……っ!?」
灯は信じられないような現象を目にしてしまった。
目玉はこじ開けるように黒粘液に潜ると、そのまま目としてスーツ上で見開く。
妖眼が灯に寄生する都度に強い衝撃が全身を叩きつける。
「あなたも寄生の気持ち良さを思い知るわ」
清見はどこか嬉しそうに、灯に自分の体をくっつけた。
彼女の触手スーツは粘液化していて、そのまま灯に黒液を分け与える。
まるで電子レンジで加熱されたアイスクリームのように、
粘液と目玉は次々と垂れ落ち、灯の胸、臍、太ももなどを汚す。
服が同化されてしばらく経つと、黒い光沢を持つ触肉として生まれ変わる。
その部分から沸き起こる鈍い疼きが灯の神経を焦らす。
「くっ……離れやがれ!」
「もっと良いことしてあげようというのに、暴れられては情事も台無しね。
少しおとなしくなってもらう」
清見は目を細めると、突然灯と唇を重ね合わせた。
生まれてはじめて他人とかわした口付け。
あまりにも不意打ちだったので、
灯は清見が運んてきた液体をそのまま飲みこんでしまった。
体の温度が急上昇していく。
「ちょっと、なにをする……!?」
左手で口元を拭うと、指先を染める黒い液体が目に入る。
その液体も体のものと同様、アメーバのごとく指先を黒く広がる。
ねばっこい液体が喉元を通った変な感触が一生忘れないかもしれない。
恐ろしい気持ちが自然と胸中から生まれる。
「これで灯は外側だけでなく、内側からも寄生されることになった。楽しみ」
「そんな……あぁっ、ああああぅんっ!」
灯は両手が黒液まみれになっていることも忘れ、
何かの苦しみから逃げるように首元を押さえる。
体の奥に入り込んだ液体は、ドクドクとした溶鉱のように体内を燃やす。
その様子に目を細めながら、清見はさらに灯の両脚を開かせる。
「うわああ、ちょっと!」
灯は大慌てで赤面した。
裾を押さえようという行動は痺れのせいで不発に終わり、
捲くられたスカートの下から真っ白な下着が晒し出される。
スカートが壁になったせいか、下着はまだ浸蝕されていない。
159 五行戦隊 第六話(16/22) sage 2012/12/24(月) 09:52:15.89 ID:uwOBuGIO
「思ったとおり、なんの飾りっ気もないね。まあそれが灯の良いところだけど」
「よ、余計なお世話だ!」
「それをこれから私の色に染め上げると思うと、ゾクゾクする」
「くっ、この……!」
容赦無く股を宛がってくる少女に、灯はただ不安の目つきで睨むしかなかった。
清見の股間を覆っていた触帯は自動的に開き、その下にある媚肉を見せ付ける。
「妖魔による快楽は、人間の神経細胞による電子信号を送っているに過ぎない……
少し前までなら私もそう思っていた。でも、今なら鈴華や翠がそれに夢中した理由が分かる。
私達はもともと淫欲のために存在しているんだと」
目をやや潤わせながら、清見は指を自分の秘部へ伸ばした。
まるで見せ付けるようにクリトリスを摘み取り、媚肉の割れ目をなぞる。
相変わらず表情は無愛想なものの、徐々に赤める顔色は欲情をそそるものだった。
熱っぽい吐息が顔にふきかかるたびに、灯の顔から火が噴き出そうになる。
「はぁ……これが欲情という気持ち。思った以上くせになりそう」
「それはお前が操られて、そう感じるよう仕向けられただけだ!」
「そんなことは無い。前から私は灯のことが好き。その証拠にほら、私のここを見て」
指で広げられた綺麗なピンク色の割れ目。
そこからすでに大量の愛液がねっとりと溢れていた。
蜜液はポタ、ポタと下着に垂れ、そのことだけでも灯を十分に辱めた。
だが現実はこれだけでは終わらなかった。
清見の愛液を吸い取った下着は、まるで墨で染められたかのように、
禍々しい黒に変色し始めたのだ。
その形や材質も、清見が身に付けている触手スーツと同じような肉質に蠢く。
変化は蜜液の落下点からまわりへ伝わり、
驚く速さで下着全体を醜い肉布に変貌させる。
さっきよりも上回るような恐怖が灯を鞭打つ。
股間の大事な部分にぬるぬるした気味悪いものが当たり、
ねちゅねちゅ張り付くその肉布から、どす黒い淫靡な妖気を放つ。
「私が愛欲を感じたときに、浸蝕率が最も高くなる。
その力次第では、強力な聖結界すら溶かせる」
「なんて恐ろしいことを……!」
五行戦隊で一番大胆な灯でも、戦慄する気持ちが隠しきれなかった。
清見の霊力はもともと浄化に長けたタイプ。
その力で妖魔の瘴気を洗浄し、幾度も五行戦隊を窮地から救い出せた。
戦闘以外でも、瘴気におかされた一般人の後治療や解呪まで活躍する場面は多々ある。
そんな彼女の力が一変して妖魔に味方したら、どれほどの被害が出るだろうか。
だが焦る気持ちに反比例して、灯の体は徐々に火照り出した。
肌を黒く染める粘液は、彼女の服を溶かし、
ボーイッシュな体のラインを見事に再現する。
ほどよく膨らんだ胸の形。
余分な脂肪がなく鍛えられた太もも。
しなやかな腰つきや、へそまわりの魅力的なライン。
それらが黒液に覆われたことにより、妖しくも官能的な美しさを滲ませるようになる。
160 五行戦隊 第六話(17/22) sage 2012/12/24(月) 09:53:29.18 ID:uwOBuGIO
清見の触手スーツの妖眼が寄生するたびに、灯は快感を抑圧するような声を漏らす。
体を撫でまわる触肉の感触は、相変わらず気色悪いもの。
頭の中ではそう思っていた。
でも体がそれに同調してくれない。
つい数刻前と違った気持ちが、時間が経過していくとともに五感への発言権を強める。
「妖眼蟲に支配された人間は、体の全てが妖眼蟲の生殖に利するようになる。
男は糧となる精液を製造する機械となり、女は妖眼蟲を孕むための苗床になる」
「そんなの、まるで家畜じゃないか!」
「その通りよ」
「えっ?」
「妖眼蟲に支配されるようになれば、人間はずっと幸せになれる。争いや悩みもなく、
誰でも色欲を享受するだけの世界に。今の世界と比べたら、全然いいと思わない?」
「そんなの誰が幸せになると言うんだ!」
「どうかしら。灯だって、寄生された人間たちを今まで見てきたでしょ?」
灯は口をつぐんでしまった。
森の中にいる寄生された女性たちは、確かに誰一人として嫌な表情を見せなかった。
それどころか喜んで股を開き、男や妖眼蟲の陵辱を受け入れていた。
「そんなの、妖魔に操られたから……!」
「果たしてあなたがこの快感を味わったら、同じことを言い切れるかしら」
清見は薄笑いを浮かべつつ、互いの花弁を重ね合わせるように股を近づけた。
初めてあそこから感じる他人のぬくもりに、灯の顔が急速に熱した鉄のようになる。
「お、女同士で何をやろうってのか!」
「まあ。じゃあ男性とこういうことをしたかったのね」
「そんなこと言ってるわけじゃ……ぁいっ!?」
清見が互いの股を擦り合わせた途端、灯は言葉を喉に詰まらせた。
すでに触肉化した下着はもぞもぞと蠢き、灯のクリトリスを摘み出す。
充血しきった媚芽は軽くふれられるだけで悶絶する。
「ほら、灯と私のクリトリスが擦りあって……はぅんっ……気持ちいいでしょ?」
よっぽど刺激が強いか、清見でもこらえきれずに口から可愛らしい喘ぎ声がこぼれる。
そのギャップがまた灯を煽り立てる。
「だめ、そこは……!」
灯は脊髄を削り取られたような錯覚を覚えた。
触肉に変貌した下着はそのまま灯の太ももを愛撫し、清見の愛撫をサポートする。
緊張が緩んだことによって、体中の黒粘液はさらに速いスピードで広がっていく。
だが今の灯には寄生化に気をかけるほど余裕はなかった。
女の子同士で、それも今まで親友だった人物と淫らな行為をしている。
倒錯した背徳感が気持ち良さの中に紛れ込んで、頭から思考力を奪い去る。
「ううん……っ!」
不意に清見は自分の子宮に手を添え、眉を悩ましげに曲げた。
彼女が背筋をそらすと、恥部から突如一本の触手が伸び出た。
噴き出した淫液のしぶきは灯の顔にも数滴かかった。
しかし水滴から匂う濃厚な淫香よりも、灯の意識は清見の股間に釘付けとなった。
161 五行戦隊 第六話(18/22) sage 2012/12/24(月) 09:54:36.40 ID:uwOBuGIO
清らかな少女とは到底釣り合わない、黒々とした邪悪な剛直がそこにあった。
いやらしいイボイボが生えた表面に二、三の目玉が見開き、
この淫猥の造形に異常性を加える。
感情的に受け入れがたい光景だった。
討伐すべき敵の妖魔が、大事な親友の体内に寄生してしまっている。
これほど悔しいことはあるだろうか。
だが清見本人は嫌がる感情を見せず、むしろ以前にも増して嬉しそうに見えた。
今まで長く付き合っていて、清見がこれほど喜びを顔にした記憶はない。
その事実がまた灯に悔しいゾクゾク感をもたらす。
「驚いた? これが私の中に植えつけられた百眼様の分身。
今からこれを使ってあなたを犯してあげる」
「えっ……!?」
言われて初めて、灯はその一物の用途に注目した。
未経験ではあるが、清見の言葉が何をさしているのかすぐに感じ取った。
足を必死に閉じようとした矢先、清見の手によって簡単に押さえつけられる。
「灯はこういうの初めてなんだよね。好きな人がいるくせに」
「なっ……どこでそれを!」
「ふふふ、灯のことが全部分かっているから。妖眼蟲に寄生されて正直嬉しかったの。
ほかの男に灯の処女を奪われるくらいなら、私が頂いてやる」
なんの冗談だと怒号をあげようとしたが、
清見の目を見て灯は思わず言葉を引いてしまった。
今まで見たこともないくらいどんよりとして、冷酷で、
それでいて歪んだ邪悪な愛情が込められた瞳。
友情とはまったく異なる感情。
その瞬間、親友だったはずの清見の何もかもが未知のように感じた。
邪物の先端が割れ目に当たったとき、灯はようやく身震いすることを思い出す。
肉質の生暖かさと気色悪さは同時に背筋をなぞる。
陰茎触手の表面にある目玉はキョロキョロ動き、
灯の不気味がる気持ちをマックスレベルに押し上げる。
ワームのような湿った柔肉が秘部のまわりに吸い付く。
それだけでも身の毛がよだつ思いだった。
だが次の瞬間、清見は何の前触れもなく腰を一気に突き出した。
「いっ!? ひゃうっ……んあああぁっんん!」
どんな痛みでも耐えてやるつもりだった灯は、
数秒も経たないうちに悲鳴をあげてしまった。
裂かれたような鋭い刺激が奥深くまで届き、膣の形を異型のそれに変形させる。
一筋の血が太ももをつたって草地に垂れ落ちる。
目の前が真っ暗に沈んでいく。
目尻までこらえていた涙が、とうとう溢れ出る。
(そんな……好きな人がいるのに……初めては、好きな人に捧げようと決めたのに……)
162 五行戦隊 第六話(19/22) sage 2012/12/24(月) 09:56:01.36 ID:uwOBuGIO
仲間を宿敵に奪われた上で、更に自分の純潔まで汚されてしまった屈辱感。
心は灰クズのように燃え尽き、ちょっと息を吹きかけただけで散りばりそうだ。
それなのに。
それなのに、どうして体は真逆の反応を示し続けるのか?
息がどんどん荒くなって、心臓の暴動を制御することができない。
小刻みに震える肩口や背筋が、快感に浸る悦びを精一杯表現する。
一突き一突きするたびに剛直の表面が膣壁を摩擦し、
力強い感触を残しては引いていく。
分泌された淫液は迅速に膣内に染み渡って、
それに伴って最初に感じた痛みはすぐに快感に変換された。
黒光りする肌に薄っすらと汗のような黒液が浮かび、
粘液の濃度が前よりも増して一段と官能的な香りを放つ。
「おめでとう、これであなたも立派な『雌』になれたね」
「く……っ、はぁん!」
睨みつけて啖呵を切ろうとする灯。
だが異物が絶えず体内にねじり込んでくる感触に、すぐに意識が曖昧になってしまう。
媚液成分が膣内で吸収されると、瞬時に血管中を回る。
体の外だけでなく芯までも熱くなり、
敵意も勇気も快感の前では甘砂糖のように溶けていく。
邪物は時には優しくつつきながら、時には蹂躙するように一番深い部分まで埋め尽くす。
変化自在に蠢く能力は清見によって余すところ無く発揮され、
灯に抵抗心を構築する時間さえ与えず、征服される喜びを一方的に植えつける。
「ち、っくしょ……!」
灯は無意識のうちに体をくねらせた。
剛直がピストンするごとに、体が黒バターのようにとろけてしまう。
そんな彼女の変化を、清見は陶酔したような目つきで見守る。
「だんだん良くなってきたでしょ?」
「だ、誰が……こんな気持ち悪い物に」
「気持ち悪いと思うのは、まだ人間としての防衛本能が働いているから。
しかし寄生が細胞レベルまで進んだとき、あなたは根本から作り変えられる。
好物は妖眼蟲の食料である精液になり、快楽を求める。そして食事のために、
あなたは喜んで人間を襲うようになる」
「そんな勝手に決めつけない……で、っ……むぐっ!」
清見がまたいきなり顔を近付いて、灯の唇を奪う。
二度目のキスは、一度目と違って深い接吻だった。
灯は最初こそ抵抗したが、次第に力が入らないまま清見の舌を受け入れた。
互いの舌肉をいやらしく絡め合わせ、唾を共有する。
「はぁっ、ああぁん……!」
清見の顔が離れた後、灯は今まで以上焦点の合わない目で雨の曇り空を見上げた。
だらしなく開いた口元から黒い唾液が垂れ落ち、
喘ぎ声のオクターブが徐々に高まっていく。
163 五行戦隊 第六話(20/22) sage 2012/12/24(月) 09:57:28.27 ID:uwOBuGIO
「そろそろ頃合ね」
清見は挑発するような目線でねめつけながら、腰を振るスピードを一気にあげた。
醜悪の肉棒は少女達の股の間で現れたり隠れたりして、
表面に生えた目玉は邪悪な光を輝かせる。
まるで二人が感じる快楽を体現するように、
清見や灯の体に寄生している妖眼も呼応して点滅する。
「ああっ……!」
「はぁん、灯のあそこが締め付けて、離してくれない……」
「そんなこと、言うな……ああ、そこは、だめ――っ!」
「いっぱい感じて!」
ひときわ力強い一突きに、灯は飛び上がりそうな勢いで体を強張らせる。
寄生陰茎の頂点が膣内の一番深いところまで刺さり、
そのままドクンドクンと膨張する。
灯は清見の手を強く握り締め、足をつりそうになるほどピンと張った。
できる限りの悲鳴をあげ、彼女は無意識のうちに下腹部の奥に埋った肉棒を絞った。
一筋の濁液が寄生茎の先端から噴き出される。
「はああぁぁぁ――っ!」
「ううん……っ!」
二人の少女は同時に体を痙攣させた。
清見は触肉スーツから解放された白い背肌を、切なげに反らした。
永遠とも思える、天地が逆転するような快感。
二人の握り合った両手は恋人のように永く絡まり、
興奮が去った後の感触にゆっくりと浸す。
その美しくも倒錯した一幕に祝砲をあげるかのように暗雲の間を雷鳴が低くうなる。
「ふふふふ……これで灯は私側の人間になった」
清見は快楽がまだ冷めきれない表情で呟くと、息継ぎしながら灯から離れた。
両者の間を繋ぐ寄生根はふにゃりと軟化し、途中で二本に分裂した。
一端は清見の股間の中へ跡形も無く収納される。
しかし、もう一端はそのまま灯の膣内へ入り込んだ。
まだ余韻から回復しきれてない灯は、急激に下腹部から違和感を覚える。
「うがっ……!?」
イッたばかりの体がまるで売ることに慣れた娼婦のように、再び火照り出す。
膣内に残った肉棒の感触がそのまま奥へと進んでいくと、灯はカッと瞳孔を広げた。
自分の体外から触手がもぞもぞ進む光景がそこにあったのだ。
ミミズの物体が蠢くたびに、性器の奥部から鈍い痛みと鋭い快感が交互に響いてくる。
だが何よりもおぞましいのは、その触手が膣内へ徐々に消えていく事実だった。
「いやあああ――っ!」
ようやく我に返った灯は、残りの力全てを振り絞ってもがいた。
しかし体外に残る触手の体積はみるみるうちに減っていき、
嘔吐したくなるような悪寒がお腹に充満する。
膣内にねじ込む異物は、なおも奥へ奥へと進んだ。
164 五行戦隊 第六話(21/22) sage 2012/12/24(月) 10:06:12.78 ID:uwOBuGIO
「なんで、まだ……動くのよ? はぅ、くああぅん!」
吐き気を催す甘い痺れに、灯は表情を苦悶の色に染める。
寄生根は粘液状に変化しながら、膣内で極細い触手に伸長する。
絶え間なく分泌される淫液のせいで、違和感が徐々に満たすような幸福感に変換される。
「どう? 今頃、あの子はあなたの子宮頸を通っているはずよ」
「なん……だって?」
「感じるかしら。あなたの子宮は妖眼蟲を受け入れるために、
自ら口を開いていることを」
「そんなの……嘘だ!」
積み重なる快感の波に逆らえるよう、灯は必死に我を保とうとした。
しかし清見の言うとおり、体が勝手にもじもじ動いて触手の滑りを手助けする。
妖眼蟲が通った道筋は妖液が溢れ、いやしい愛液を導き出す。
お腹の中を満たされる充足感が、いつしか灯の感情を支配する。
「はあぁぁっ……ああああああっ!」
灯はついに甲高い悲鳴を絞り上げた。
それと同時に、彼女の下腹部に妖しい紫色の模様が浮かび上がる。
黒に染められた肌の中、嫌に目立つ妖しい目玉の模様が。
「おめでとう、着床は無事成功したね」
「ちゃく……しょう……?」
自分のおへそあたりに描かれた紋様を見て、灯は愕然とした。
その紫色の紋様は、触肉スーツと比べられないほど邪悪なオーラを放つ。
まるで淫らな烙印のように、少女の体が完全に奴隷化したことを象徴する。
「さっき言ったように、これから少しずつ、あなたの体が妖眼蟲の育成に適したものに
変化していく。あなたの子宮は妖眼蟲を育むための場所となり、
外敵から妖眼蟲の幼虫を守る……もちろん、霊術者からも」
清見は灯のへそあたりを優しくなぞった。
その指が色薄の模様に触れた瞬間、灯の神経は万雷に焼かれたような感覚が走る。
「かぁっ……!?」
まるで性器を直接ふられたような刺激に、灯は軽く絶頂を迎えた。
鋭い疼きが敏感な神経を突っ走り、頭のてっぺんから足のつま先まで一巡する。
清見の指が離れてしばらく経っても、雨粒や風の衝撃さえ敏感に感じてしまう。
「いま灯の体内に寄生させた蟲は百眼様の新たな分身だから、
ちゃんと大事に育てないとだめよ。人間の快楽を搾取しながら成虫まで育てれば、
そのときに紋様が一番濃い色に変色するの。そうすれば、
灯も私と同じ忠実で淫らな奴隷になれる」
「いやだよ……こんなもの、すぐに取ってやるよ!」
「残念だけど、これは私が産み出した特殊な妖眼蟲なの。たとえ高レベルの術者であっても、
一度子宮に植えられたら、本人の力だけでは決して取り除くことはできない」
「そんな……」
灯は涙をこらえながら悔しそうに唇をかみ締めた。
清見の余裕な態度を見る限り、自分の力だけでこの蟲を祓うのは困難のようだ。
だからといって、妖眼蟲が成虫になるまで体内に許すわけにはいかない。
(せめてその能力だけでも調べて、ほかの人に伝えなきゃ……)
165 五行戦隊 第六話(22/22) sage 2012/12/24(月) 10:11:43.79 ID:uwOBuGIO
――ビクン
「ええっ!?」
大きく震える体に、灯は驚いた。
体に残る最低限の霊力でさえ彼女のコントロールから離れ、
勝手に下腹部のところへ集まっていくのだ。
その代価として、甘い恍惚のような気持ち良さが脳内を占領する。
清見を助けるために霊力を吸収されたのと同じ感触だった。
「あああっ……!」
「大丈夫みたいだね」
「ど、どいうことなの?」
「妖眼蟲は寄生することで強靭な生命体を得るが、無防備な幼虫状態では、
初級退魔者にも簡単に浄化されてしまう。しかし私の能力を得たこの新種なら、
生存率をぐーんと上げることができる」
「そんな……体から霊力がどんどん吸われていく!」
「この幼虫は霊能力者に寄生することで、宿主の霊力を妖力に少しずつ変換しながら
成長することができるの。そして宿主の霊力自体がカプセルとなって、蟲の気配を一切
漏らさず隠蔽する。これが実用化されれば、世界中の退魔機関に対抗できる。
灯には、その第一実験者になってもらうの」
「ううぅ……そんな、こと……は……」
灯はおぼつかない口調で呟き、力なく地面に背中を預けてしまった。
そのまま、まぶたがゆっくりと閉じていく。
今晩彼女はすでに何度も激戦を繰り広げて、体の疲労は極限状態に達していた。
身も心もボロボロの今では、
霊力を吸い取られる気だるい快感がこの上なく心地良い。
「ふふふ……良いわよ、ゆっくり眠りなさい」
清見は灯の寝顔を撫でると、いとおしそうに口付けをした。
そして指を鳴らすと、彼女の足元から大量の水が湧き出て灯の体を取り囲む。
水はスライムとなって灯を完全におし包み、
ブヨブヨ変形しながら大きな球状となった。
ダークブルー色の水風船は徐々に不透明化し、中にいる人間の輪郭だけを外に見せる。
やがて少女のシルエットは出生を待つ赤子のように、
膝を抱えた体勢に固定していく。
スライムの表面に、ぐぱっと一つの妖眼が開く。
「今度そこから出てきた時、あなたは妖魔のしもべに生まれ変わる。
あなたの勾玉は私がちゃんと精液漬けにして汚してやるから、心配することは無いよ」
清見は灯の変身アイテムだった赤い宝玉を取り出し、小さく微笑んだ。
持ち主と離れ離れになる勾玉は、その守護力を完全に発揮することができない。
両者を別々に寄生できれば、その時間は大幅に短縮できるだろう。
「また五人一緒に戦おうね……今度は世界を淫楽に染めるために」
悪質な愉悦を言葉に込めながら、清見は水泡に背を向けて歩き出した。
性行為の途中で液化していた肉布は再び固体に戻り、もとの触手スーツとなって清見の体を包む。
その顔はすぐにいつもの冷淡さに戻った。
しかし彼女をよく知っている人物であれば、
その表情のどこかにドス黒い喜びが隠れていることに気付くだろう。
体から発散される淫香だけがその余韻を匂わせる。
雨でも流し落とせないほど、満開した花よりも濃厚な香りが。
第六話 『黒い水の中からの視線』
適当あらすじ
使えば使うほど淫らになっていくことをしりながら力を使う翠
鈴華、睦美含め正義の味方だった者同士の戦いが始まる
一方、灯の前には後一歩で助けられたはずの清見が敵として立ちはだかる
金:×
木:×
水:×
火:○ ピンチ
土:○
144 五行戦隊 第六話(1/22) sage 2012/12/24(月) 09:27:13.32 ID:uwOBuGIO
一陣の湿った風が森の合間を撫ぜる。
綿密に降り続く小雨が濃霧のように夜空を覆い、
生暖かい空気を蒸し風呂のように閉じ込める。
森の中はまさに熱帯雨林のようだった。
そんな高温多湿な環境の中、一人の少女は木陰の後ろに縮こまっていた。
サウナ室のような息詰まる熱気にも関わらず、
少女は風邪を引いたかのように震えの止まらぬ両腕で体を抱きしめていた。
体を包むダークグリーン色のスーツは生き物のように
もぞもぞと動き、葉っぱから落ちる雨粒にうたれるとピクリと跳ねる。
露出した肌もすっかり敏感になったのか、
色っぽく染まったそれは風に撫でられて軽くわななく。
物音が目立たないよう、少女は呼吸を小刻みに分けてせわしく続けた。
その呼吸と同調するように触手スーツ上の妖眼が明滅を繰り返す。
吸気とともに緑色に輝き、吐気とともに暗くともる。
あたかもそのスーツは彼女の体の一部であるかのように。
あるいは彼女のほうこそスーツの一部であるかのように。
妖眼蟲に寄生されたその美少女――翠は、
今にも自慰してしまいたい衝動に焚き付けられていた。
彼女に宿るのは霊力ではなく、禍々しい妖力だった。
その妖力を駆使しようとするたびに、思考を絶するほどの淫欲が体から沸き起こる。
理由は分かっていた。
澄んだ霊力と違い、妖力の源は人間の濁りきった精気と欲望。
だが彼女はしばらく性行為をしていない。
淫らな情欲だけが体中を巡り、脳に望みを訴えかける。
淫欲だけならまだマシだった。
もっとつらいのは、この力を使おうとするたびに、
それが宿敵によって授けられた屈辱であると思い出してしまうことだった。
周囲の成長し続ける植物は、どれも邪悪な外見をしていた。
いやらしいしずくを分泌する蕾。
人の淫欲を誘う香りの肉の花。
女性器のような卑猥な割れ筋が生えた茎。
妖眼を見開く幹。
それらの外見は、正義の味方が使う技のイメージと遠く離れたものだった。
今この瞬間にも、自分の体がどんどん妖力に馴染んでいくのを感じてしまう。
かつて悪と戦った者として、これ以上ない屈辱と無念である。
(でも、この力でみんなを守れるのなら……)
悔しさを胸中に押し込めて、翠は両手を地面に突き立てた。
濃密な妖力は瞬時に地脈を通り、周囲の植物は一層狂ったように成長し出す。
翠はもともと辛抱強い少女である。
彼女のマイペースなところは、ほかの仲間にも安心感を与え続けた。
それと比べれば、鈴華は間違いなく短気者である。
普段からイタズラ好きな鈴華にとって、単純作業ほど退屈なものは無い。
145 五行戦隊 第六話(2/22) sage 2012/12/24(月) 09:28:57.28 ID:uwOBuGIO
「ああもう、面倒くさい!」
翠から離れ場所に、一人の黄色い少女が植物に囲まれていた。
彼女は煩わそうに言いながら、手にしている大バサミを放り投げた。
大バサミは空中を半回転して、
後ろを群がる赤薔薇に突き込み花びらを血飛沫のように斬り散らす。
だが、すぐにその空間を埋めるごとく新手の茨が伸び出る。
鈴華の小柄な体が地面に座り込む。
大きな瞳を広げ、不満げに歯軋りする姿は小動物のような愛着があった。
だが彼女が身に付けている暗黄色の触手スーツには、
翠と同様に悪の寄生眼が生えていた。
ふと一本の木が樹皮に妖眼を見開くと、地面からこっそり根を引き上げ、
少女の無防備な背中に向かって枝をのばす。
しかしその枝が動き出す直前、無数の剣影が樹木を梢の先まで木っ端微塵に切り裂く。
少女のまわりを、金銀銅鉄などさまざまな材質の剣が浮遊していた。
何も感付いていないように少女は駄々をこね続ける。
「つまんない! つまんないつまんないつまんない!
出てきなさいよ、こんなの卑怯じゃない。正々堂々と勝負しなさい!」
まるで子供のように地面に伏してじたばたする少女。
彼女の周囲三平方メートルは浮かぶ剣陣によって守られ、
苗一つ生えない禿地に刈り取られていた。
だがそのテリトリーから出れば、ジャングルのような密林が立ち並ぶ。
五歩先の景色さえ見通せないほど、植物が密集していた。
翠はただ気配を殺しながら、鈴華の動きを監視し続けた。
樹木に生えた妖眼を通し敵の一挙一動まで把握できる。
この力を忌みながらも、翠はその便利さを認めざるをえなかった。
地の利は一方的に翠にある。
もともとここは森林地形。
翠の気配を紛れこむのにこれ以上なく適している。
その上、天も味方していた。
五行相生において水は木を生む。
この雨の中であれば、もともと生命力に長けた翠の植物は、
更に氾濫するごとく成長することができる。
苦手属性であり、更に五行戦隊でも群を抜いた殺傷力を誇る鈴華に対し
翠は無理に戦うことをしない。
ただこうやって足止めできればいい。
できる限り長く。
突然、翠の妖眼の視界に変化が起きた。
鈴華は暴れることをやめ、ゆっくりと立ち上がったのだ。
「ずっと隠れていれば安全だと思ってるの? 翠ちゃんらしくないじゃない」
閃電のフラッシュが森を一瞬だけ照らす。
さきほどと打って変わって、鈴華の冷酷な笑みを映し出す。
子供が悪だくみのときに見せる、可愛らしい犬歯をのぞかせて。
「それとも、今の翠ちゃんはそうやって隠れてるのが精一杯なのかしら?」
146 五行戦隊 第六話(3/22) sage 2012/12/24(月) 09:31:38.82 ID:uwOBuGIO
鈴華の身を包んでいた触手スーツが解かれ、
うねる触肉の中から短剣、刀、斧などが析出される。
次の瞬間、それらの刃は弾丸のごとく周りへと発射された。
一本の鉄槍が真上のヤシの木に生えた妖眼を貫いたとき、
翠の視界情報はそこで途切れた。
鈴華を中心とした範囲内の植物が跡形もなく破砕され、
ただ次々と切り倒される感じだけが翠に伝わる。
何のつもりだろうか。
翠は更に身を縮ませて考えた。
この程度の破壊なら、時間さえあれば元の状態まで簡単に再生できる。
ならば鈴華の意図はほかにあるだろうか。
(痛……っ!)
翠は足元を見ると、一匹の小動物のような生き物が自分の右足首に噛み付いていた。
手のひらサイズの金属体ながら、
サメのような鋭い牙を使って触肉のブーツに食い込む。
その生物の頭にある一つ目が翠の視線と合うと、
牙の合間から「シュルル」と気味悪い笑い音を出す。
翠はすかさずその鉄塊を掴んだ。
腕を覆う触手グローブの一部が蔓に変形して、敵の目玉に種を植え付けて生え潰す。
周囲を見れば、木々に刺さった鈴華の刃が次々と同じような金属生命体に生成し、
軍団ピラニアにも勝る勢いで植物を食い散らす。
すぐに翠がいる木の幹だけ無事なのが目立つほどに。
しまった、と思ったときはすでに遅かった。
どこからともなく現われた鈴華は、
浮遊する十三本の剣を一本の妖眼剣に合体させ迅雷のごとく振り下ろした。
「そこよ!」
「くっ……!」
真ん中から両断された木から、翠は後ろに背を向けたまま飛び出す。
触手スーツの肩の部分が切り裂かれ、緑色の汁液を散らす。
鈴華が二撃目に切り替える直前、翠の懐から無数の木の葉が湧き出て、
宮廷舞踏会のダンサーのように両者の間を踊る。
その葉の群れを一振りで一掃した時、鈴華の前にはすでに誰もいなくなった。
十メートル離れた木の上で、翠は肩を押さえながら息を噛み殺した。
傷口から感じるのは痛みではなく快楽。
鈴華の剣には妖呪が込められて、
それに斬られた者は心を奪われ妖眼蟲に寄生されてしまう。
もとから寄生者である翠には寄生効果までは無いが、眼下では他の問題点があった。
鈴華が放った妖眼憑きの刃どもは、白蟻のように植物を次から次へと食い尽くす。
この森を制圧するのに十分なスピードである。
今まで見たことのない鈴華の術。
どうやら、妖魔の隷属化の恩恵を受けたのは自分だけではなかったようだ。
体を襲う淫欲はすでに限界まで達していた。
これ以上の打開策が無ければ敗れるのは必至。
しかし緊迫した状況とは裏腹に、
脳内では速く楽になりたいという欲情ばかりが増大する。
147 五行戦隊 第六話(4/22) sage 2012/12/24(月) 09:34:22.98 ID:uwOBuGIO
「翠ちゃん、動きが鈍ってたわよ?」
枝葉のむこうから、剣刃の緑汁を舐め取る鈴華の姿が見える。
彼女は得意げに笑いながら、土から伸び出た新芽を容赦なく踏み潰す。
「長期戦にしようって作戦みたいだったけど、一つ大事なことを忘れてない?
翠ちゃんって、前に私とエッチしてからどれくらい時間経ってるの」
(っ……!)
翠は思わず唇をかみ締める。
鈴華と繰り広げた淫らな行為が、その一言によって鮮明に蘇る。
森の反応を確かめるように、鈴華はにんまりと笑った。
「まさかとは思うけど……その時からずっと精液を摂取していないとか、
そんなこと無いよね? 翠ちゃんの体って男の精液無しでは生きていけないくらい
すごく淫乱だもん。ほら、私の寄生チンポをしゃぶった時の味、思い出してみてよ」
鈴華のかわいい金切り声から逃げるように、翠は自分耳を塞いだ。
しかし、そのセリフによって連想させられた異物のイメージはすでに隙をこじ開けた。
「あっ、そっか。ここに来るまで睦美や灯とずっと一緒だったもんね。
あの二人にそんな恥ずかしいこと見せられないよね。あれ、それじゃあオナニーも
全然できないじゃない? 可哀そうな翠。あなたがずっとオマンコを濡らして
期待しているのに、あの二人はまったく気付かなかったもん」
(やめて……そんなこと言わないで……!)
頭を左右に揺らしながら、翠は心の中で叫んだ。
必死に抑えつけた欲望の炎がじわりじわりと再燃する。
貪婪に精をむさぼる自分の浅ましい姿。
それを灯や睦美がさげすむような目で見つめる。
封印したつもりの劣情が鈴華のセリフに反応していとも簡単に釣り出される。
たとえそれが挑発だと知っても、翠は動揺を抑えることが不可能だった。
そのため、彼女は場の変化に素早く対応できなかった。
一匹の妖眼蟲は、土を押しのけながら地面を這い進んでいた。
葉脈の張った翡翠色の小さな蟲。
その蟲の存在を木の上から気付くと、翠は「アッ」と驚きの声をあげた。
だが彼女がアクションを取るよりも速く鈴華がその妖眼蟲を摘み上げる。
「こんなところに子供の妖眼蟲がいるよ」
鈴華の手中にあるのは、幼いスライムだった。
蟲の肉構造はまだ柔らかく、その小さな体は愛嬌さえあった。
「その子は……!」
「あれれ、この子ってあのとき翠が産んだ子供じゃない。
まだ宿主を見つけてないのに、母親の妖力を感じて、心配になってやってきたんだ。
まだ子供なのに、偉い偉い」
鈴華は小悪魔のような笑みを浮かべると、妖眼蟲の子供をいじくるように撫でた。
それを嫌がってか、蟲は「シュル、シュル」と幼げな奇音をあげる。
「その子を離しなさい!」
気配を隠すことさえ忘れ、翠は大声を出した。
反響する声に木々の枝が一斉に揺れる。
勇ましい口調ではあったが、翠は何か感情を噛み殺していると感じ取ると、
鈴華の笑みに悪意が増大する。
148 五行戦隊 第六話(5/22) sage 2012/12/24(月) 09:35:55.47 ID:uwOBuGIO
「ふーん、なんで?」
「その子は私達の戦いと関係ないはずです」
「イヤだ」
「な……に?」
「私が捕まえたんだから、何をしようと私の勝手でしょ」
鈴華は意地悪そうに笑いながら、
蟲の目玉を押したりつねったりコリコリしたりして遊んだ。
幼蟲はますます嫌がって、鋭い音を立て始めた。
一瞬森の全ての葉っぱが上向きに逆立ちしたことを鈴華は見逃さなかった。
「やめなさい! 妖眼蟲はあなたの仲間なんでしょ?
どうしてそんな酷いことをするのです」
「翠には関係無いでしょ?『正義の味方』なんだから」
「くっ……!」
遠目で鈴華にいじめられている妖眼蟲の姿に、
翠の胸は今まで感じたことも無いような痛みが貫く。
正義の味方である五行戦隊にとって、妖眼蟲は紛れもなく人類に害をなす敵。
そして翠個人としても、自分を陵辱した不倶戴天の相手である。
しかしなぜ、あの幼虫の救いを求める視線がこんなにも胸を突き刺すだろうか。
悲鳴が聞こえてくるたびに、
心の琴線が震えて裂かれたような気持ちを味わう。
それと比べれば、今までの人生で体験したどんな苦痛も微々たるものだった。
翠はついに懇願するように言葉を並べた。
「お願い、もう止めて……もうその子を離してあげて!」
「そう言われると、ますます痛めつけたくなるんだよね」
鈴華はくくくと笑い、手首をひるがえした。
妖眼剣の刃が蟲の目玉の横に宛がわれる。
「待って!」
悲鳴に近い叫びだった。
落葉とともに翠は飛び出し、鈴華の前で止まる。
妖眼蟲は彼女の姿に気付くと、
シュルシュルと音を立ててただ一つある目玉で彼女を見つめた。
そのいたいけな視線と触れた途端、翠の胸は愛憐と焦燥で破裂しそうになった。
再会できた喜びと同時に、凶刃の光に今まで無かった恐怖に身が震え上がる。
「お願い、もう止めて! 私がどうなってもいいから、その子を離して!」
五行戦隊の中でも特に穏和な性格で、仲間を優しく支える翠。
それが今では、まるでわが子を人質に取られた母親のように慌てきっている。
その変化に鈴華は腹から滑稽そうな笑いをこみ上げる。
「ハハハハ……正義の味方が妖魔の助命を願うなんて、本当に面白いわ。
この子が大事だって、認めるんだね?」
「ええ、認めるわ! 認めるから……だからその子を助けてあげて!」
「じゃあ今すぐ土下座して『百眼様ごめんなさい。もう二度と過ちをしないよう、
私を何百回も犯してメス奴隷だったことを思い出させてください』って謝りなさいよ」
「そ、そんなことは……」
「そう、できないのね」
149 五行戦隊 第六話(6/22) sage 2012/12/24(月) 09:37:49.85 ID:uwOBuGIO
小さく呟くと同時に、鈴華は前触れもなく剣を引いた。
刃が蟲の表面に切り傷を残し、一筋の汁が土にかかる。
蟲の悲鳴と翠の悲痛の声が同時に夜空をつんざく。
鈴華がポイと投げ捨てると同時に、翠の体はバネのように飛び出し、
その幼体を空中でキャッチする。
だがその直後、鈴華の放った鉄鎖が彼女の首を巻きつき、土に強くたたきつける。
それでも妖眼蟲を守るようにと、翠は胸を大事に抱え背中から地面と激突させた。
自分が受けたダメージよりも、翠は真っ先に幼蟲の傷の手当てをした。
息絶え絶えだった幼蟲は本能のようにもぞもぞ動き、
母親が露出させた乳首に吸い付く。
蠕動するごとに母乳を吸い出すと、体表面の斬り傷が癒着していく。
「命も顧みずに妖魔を助けるなんて、正義の味方と聞いて呆れるわ。
これで分かったでしょ? 翠ちゃんはもう、身も心も妖眼蟲のために存在してることを」
「全てあなたの言うとおり……私は妖眼蟲のために存在している。もう何を言われても、
あなたに従います。だから……だから、この子だけは見逃して下さい」
鈴華は翠に剣を向け、ニッコリ笑った。
泣き崩れる翠。
鎖で首を締められているのに、蟲を守るように抱えて必死の表情で哀願する彼女。
この瞬間から、悪と対峙する勇気を持つ五行戦隊の翠はいなくなった。
残るのは我が子を守るためなら、敵にも屈する一人のか弱い母親だけ。
「安心してよ。私の心が広いのは、翠ちゃんも昔からよく知っているでしょ? いいわよ」
翠の表情が明るくほころぶ様子を鑑賞してから、鈴華は言葉を続ける。
「ただし、ちゃんと罰を受けてもらったらね」
「えっ……?」
投げ渡された金属の物体を受け取ると、翠は驚きの声を上げた。
それは銀色の貞操帯だった。
股間を宛がう場所に二本のディルドーが怒張り、棒状の表面がいやらしく脈動する。
「それを自分の手で装着したら、大目に見てあげてもいいわ。あっ先に言っとくけど、
一度それを自分の手で装着しちゃうと、持ち主である私が許さない限り、
どうがんばってもはずせないの」
「そんな……!」
「嫌なら止めても良いわよ。ただし今度こそ、ざっくりしちゃうかも……」
「わ、分かったわ!」
鈴華の剣先が動いた途端、翠は全ての抵抗する意思を放棄した。
彼女は震えたまま立ち上がり、股間を覆っていた触手スーツは解かれる。
そのまま絶望に満ちた表情で貞操帯を自分の秘部に当てた。
「ひゃっ!?」
女性器の匂いを嗅ぎつけた途端、
貞操帯のディルドーは一気に伸びて少女の前後の穴を塞ぐ。
そのまま手足を伸びるかのように金属紐が尻に深く食い込み、後ろで連結する。
反応するよりも速く貞操帯は彼女の股間にぴったりと張り付き、
股間から尻にかけてのラインをいやらしく装飾する。
金属の正面プレートに、一つの妖眼がくぱっと見開く。
150 五行戦隊 第六話(7/22) sage 2012/12/24(月) 09:39:32.55 ID:uwOBuGIO
「はあああ……っ!」
翠はかすれた悲鳴をあげながら、苦しげに体を後ろに反らした。
ディルドーは彼女のさからいをまったく意に介さず、中へ中へとぐんぐん押し入る。
すでに高揚していた少女の体にとって、
その力強いピストン運動は壮絶なものだった。
そんな宿主の事情を考慮する気配もなく、
貞操帯はぴったりフィットしたのち「カチャリ」と鍵音を鳴らす。
「はああぁん、っうん……ううぅんっ!」
「あはは、これでもう浮気ができなくなっちゃった。
私の『目』がいつでも監視しているから」
鈴華は貞操帯の表面にある妖眼をなぞると、翠はビクンと大きく跳ねた。
プレートの裏側にびっしり生えた繊毛がむき出しになったクリトリスを撫で、
人外の快感を与える。
「はああぁん!」
「そんなに喜んでもらえるなんて嬉しいね。でもこれは一応罰なんだから、
翠ちゃんが絶対イケないようになってるんだ。翠ちゃんって、
あれから以来一度もセックスしてないんでしょ? あはは。
せめてここに来るまでオナニーでもしとけば良かったのにね!」
のた打ち回る仲間に対し、鈴華は悪戯が成功した子供のように哄笑を投げかける。
蟲の幼虫は心配そうに母親を追いすがるが、
その幼体を鈴華が容赦なく茂みの向こうへ蹴り飛ばす。
「やめて! あの子に手を出さないって約束したでしょ?」
「約束? 誰が?」
鈴華は肩を可愛らしくすくめた。
「私をここまでイライラさせといて、何を言っているの?
覚悟しなさいよ、翠ちゃんへの罰はまだまだこんなものじゃないんだから!」
「そんな……ああぁぁっ!」
鈴華は二つの金属リングを取り出すと、翠の左右の乳首にそれぞれはめた。
しかし翠の口から漏れ出た悲鳴は、すぐに快楽の喘ぎ声に変化する。
金色に輝くリングによって装飾された美乳は、
高級娼婦のようないやらしくも美しい光沢を放つ。
「うんうん、さっすが私。貞操帯と一緒で、淫乱な翠ちゃんによく似合ってるわ」
乳首をくくる金属リングをぺロリと舐める鈴華。
たったそれだけの衝撃で、翠は嬌声をあげてしまった。
両手でいくら貞操帯を掴んでも、奥深くまで固定したディルドーは絶妙な加減でかき回し、
決して尽きることの無い快楽を創造する。
そして乳首にあるピアスは常に意識を刺激し、翠は狂うことも気絶することも許されない。
未来永劫にも思えるもどかしさは、まさに地獄の拷問だった。
151 五行戦隊 第六話(8/22) sage 2012/12/24(月) 09:41:02.69 ID:uwOBuGIO
不意に鈴華は表情を収斂させ、足元から伝わる地面のわずかな振動に意識を集中する。
「そこ――っ!」
鈴華は剣を身丈よりも大きい鉄槌に変化させ、
すかさず地面に向かって力いっぱい叩きつけた。
ハンマーが接触した場所を中心に四方八方へと亀裂が走る。
だが土の中から堀り返されて出てきた人物に、鈴華は驚きを隠しきれなかった。
三人の少女だった。
少女たちは体にそれぞれ蔓、葉、花型の妖眼蟲を寄生していたが、
鈴華から重い一撃を受けたせいで三人とも目をグルグルさせて気絶していた。
ハッとなって空を見上げると、雨の中から無数の岩つぶてが降って来た。
鈴華の思考は電光石火のごとく閃く。
寄生娘たちを地下道に誘い込む。
次に地上にいる自分と互いに敵だと思わせて同士討ちさせる。
そのあいだ本人は上からの強襲。
決して能力に溺れることなく、最善の作戦を立てる堅実な攻め方。
「睦美、その程度で私に通じると思ってるのか――っ!」
鈴華はハンマーを空中に放り投げられると、そのまま十三本の刃に分離した。
岩石がその範囲に入るや否や、
剣の陣は目にも留まらぬ速さで何もかも砂粒までに斬り裂く。
五行戦隊で随一の攻撃力と守備力を兼ね備えた鈴華。
どんな相手に対しても、彼女は遅れを取るつもりは無い。
「それはどうかな」
「なにっ!?」
気絶した娘達から声が響いたと思いきや、
その下から二本の腕が伸び出て鈴華の足をがっちり掴んだ。
完全に不意を突かれ、一気に足首まで土中に引き込まれる。
「させるか!」
鈴華は素早く妖眼剣を呼び戻すと、迷わず両手で地面に刺しこんだ。
どんな金属をも切り裂く妖眼剣の前では、地面もアルミ箔とそう変わらない。
剣が柄まで一気に埋まると、足を掴んだ腕がピタッと止まった。
と鈴華がそう思った次の瞬間、そのまま妖眼剣を地中へと引きこまれてしまった。
まばたきする間もなく得物を失ってしまった鈴華。
ただ呆然とするほかなかった。
この妖眼剣は五行戦隊にいた頃から長らく鍛え上げた霊剣で、
鈴華が悪に屈した後それも邪悪な妖剣として寄生されてしまった。
数々の強敵を倒した相棒として、武器の中でも特にお気に入りだった。
しかし、今は当然愛剣の行方に気を取られている場合ではない。
一度動きを止めていた地中の両腕はそのまま鈴華の足首を強く掴み、
再び動き出したのだ。
今度は森の外へ向かって。
「睦美の土遁術……!」
翠の姿が木々に遮られて見えなくなったのを確認し、鈴華はチッと舌打ちをする。
最悪なタイミングだった。
あともう少しで翠を屈服させられたのに。
万全ではないにしても土属性に対し有利な分、
鈴華と二人分の力を合わせれば確実に睦美を圧倒できた。
152 五行戦隊 第六話(9/22) sage 2012/12/24(月) 09:42:32.20 ID:uwOBuGIO
砂漠の中を泳ぐ砂ザメのごとく、地中の腕が左右に土波を分けながら意のままに赴く。
そのジグザグ軌道のせいで鈴華は重心に振り回されるだけでなく、
次々と顔面に向かってくる障害物にも対応しなければならなかった。
葉っぱ木の枝野生の蔓食虫植物の袋と一通りの物体とぶつかった後、
鈴華はたまらず触手スーツから大鎌を取り出した。
ふと、彼女は目の前の進路に巨大な岩が迫ってくることに気付く。
時速八十キロまで上昇したスピードはすでに森を抜け、
まわりの景色を高速に後方へと投げ捨てる。
「ちょっと、冗談じゃない!」
枝に叩かれ赤くなった鼻をさする暇もなく、鈴華は両手で大鎌を振りかざした。
ジェットコースターの速度で迫り来る巨岩を真っ二つに切り裂く。
しかしそのすぐ後ろに、更に大きな岩壁がそびえ立っていた。
大きな轟音と同時に、岩壁に鈴華と等身大の空洞がくくり抜かれる。
「いったあああぁ!」
絶叫が夜空に伸びる。
鈴華は破片と灰をかぶった頭を抱え、目尻に大きな涙粒を溜めた。
接触する直前、体を覆う触手スーツを刃に変化させ岩壁を削ったおかげ、
間一髪で全力衝突を回避した。
が、触手スーツは頭部まで守っていなかったのだ。
「この……もう許さないんだから!」
鈴華は痛みをこらえて、大鎌を自分の足元に向かって一振りする。
足首を掴んでいた腕はバッサリ切断され、砂となって消え去る。
機を逃さずに鈴華は近くの高い木の上へジャンプし、
鎌を構えたまま全身の神経を尖らせる。
いつの間にか、森外の荒地に出てしまったようだ。
禿げ上がった地肌は雨水に沈み、荒れた広場に三、四の枯れ木がポツリと残るだけ。
砂地の中央に一つの入り口が開き、断層階段をのぼって一人の少女が現われる。
落ち着いた足取りの中に、不動の山のような気概を潜める。
褐色の戦隊服はまさに五行戦隊の一人、睦美のトレードマークであった。
「ひさしぶりだね、睦美。こうして私達二人っきりになるって」
「そうだね。最後に一緒に行動したのは、あなたが妖魔に捕らえられた日だったもの」
「少し前のことなのになんだかもう昔みたい。
あの時、二人で一緒に妖眼蟲を追いかけてたっけ」
雨の中で見つめ合う二つの視線。
たった一晩の出来事が二人の運命の分かれ道となった。
あの夜、仲間と連絡するために一時離脱した睦美。
睦美の代わりとなった妖眼蟲の監視役を買って出た鈴華。
言い表せない複雑な感情が二人の間を駆け巡る。
153 五行戦隊 第六話(10/22) sage 2012/12/24(月) 09:43:59.59 ID:uwOBuGIO
鈴華は睦美の特長をよく理解していた。
義に厚く、戦術眼に優れた一面を持ち合わせる。
長所はどんな場面でもオールマイティな力が発揮できること。
灯のように逆転性が強く、翠のように持久力に優れ、
清見のように柔軟性があって、鈴華のように守りに隙が無い。
全員分をフォローできる力と優れた決断力から、五行戦隊の隠れたチームリーダー役を果たす。
短所は得意とする地霊術には大味なものが多く、
地形に制限されてしまうと能力が百パーセント引き出せないことだ。
睦美は鈴華のことをよく考察していた。
小柄なかわいらしいイメージに反し、戦闘では勇猛果敢な働きぶりを見せる。
長所は五行戦隊の矛と盾を同時に担える攻守性能。
常に一番強い敵の攻撃から仲間を守り、常に一番硬い敵に最初の傷を与える。
相手を物理的に消滅させる力は単純でありながらその右に出る者はいない。
短所はテクニカルな技と意識が乏しく、
劣勢が確定してしまうとなかなか覆せないところ。
長いあいだ肩を並べて戦った者同士だけに、互いの手の内は知り尽くしている。
ただし、今は一点だけ変化が生じている。
睦美は妖魔化した後の鈴華のことをほとんど知らない。
「睦美がわざわざ私をここまで連れ出した理由は二つある。翠ちゃんの安全を守るため。
そしてもう一つは、森の中だと睦美と相性が悪いため。そうでしょ?」
触手スーツに覆われた胸を張りながら、得意げに語る鈴華。
睦美の反応はあくまでも冷静だった。
「そうだとして、どうする。今度は私を森まで連れ戻すのか」
「いいえ。睦美はここで戦うことが有利だと思ってるかもしれないが、実は私にとっても
好都合なんだよね。今までは翠がいるせいで、『あいつら』が阻まれていたから」
「あいつら?」
睦美が疑問を呈すると、ふと周囲の暗闇に無数の目玉が輝いていることに気付く。
目玉の数はなおも増え続け、睦美のいる砂場を取り囲むように現われる。
チリーン、チリーンと鳴る妖しい音色。
鈴華が髪飾りとなっている鈴を揺らすと、
数え切れないほどの金属スライムが現われる。
今まで睦美が戦った二、三匹の規模ではない。
大小様々の体を持つ一つ目妖魔が、のろのろと集まってきた。
鈴華は木の枝に座り両脚を嬉しそうに揺らす。
「どう? いっぱい人間から淫欲を吸って、私だけの妖魔軍団に作り上げたの。
この音を鳴らせば、どんな遠くからでも呼び寄せることができる」
「森にたくさんの人間を誘拐したのは、蟲を量産するためだったのか」
「ふふふ……睦美、あなたが絶対勝てない理由が一つあるの。霊力と違って、
私達の妖力は人間を堕落させて淫欲の虜にすればいくらでも集まるの。なにも私みずから
あなたと戦うことは無い。これだけ数で押せば、いくらあなたでも無理でしょ?」
154 五行戦隊 第六話(11/22) sage 2012/12/24(月) 09:45:24.27 ID:uwOBuGIO
「相変わらず子供じみた考えだな。単純であなたらしい」
「なによ!」
鈴華はぷんと頬を膨らませる。
「落ち着いたフリができるのも今のうちなんだから! 睦美を生け捕りにしたら、
ここにいる者達に一匹ずつ中出しさせてやるんだから!」
「一匹ずつと言わずに、全員同時にかかってきてもいいんだよ」
「そんなこと言っちゃって……もう土下座しても遅いんだからね!」
鈴華が鈴を激しく鳴らすと、妖眼蟲は互いに躯体から触手を伸ばし、
文字通り鉄の壁のスクラムを組んで押し寄せてきた。
一列目の蟲群れが睦美の近付くや否や、二列目の妖眼蟲が重ねるようにその上を登る。
鈍重な体をひしめく妖眼蟲。
金属同士がかすれる騒音が砂場を響き渡る。
鈴華はしたり顔でその光景を見つめた。
だが次第に彼女の表情が変化していく。
雨水に浸され泥沼状態になった地面は、まるでスポンジのように沈んでいき、
金色スライム達の重体を飲み込み始める。
砂場にアリジゴクの巣のような落とし穴が広がり、鈴華のいる木まで及んだ。
傾斜していく木から慌てて離れた直後、大木が傾きながら泥沼の中へ流れ込んでいく。
その泥沼の中心で、睦美は両手を素早く変えて印を結ぶ。
「鈴華、あなたはあれこれ考えてきたけど、基本的なことを忘れている」
「なにっ?」
「一つ、金はもともと土より生まれたこと。二つ、私が最も得意なのは乱戦であること。
そして三つ、正義は必ず悪に勝つこと!」
睦美はそのまま地面に両腕を叩きつけ、全身の霊力を解放した。
魂を込めた招来令術とともに、大きな砂の霊獣が地中から噴き出すように立ち上がる。
逆巻く泥沼に無数の金属スライムを巻き込んだまま、
血肉のごとくその泥で体を構成する。
龍に似た頭部が天を仰ぐと、地鳴りのような雄叫びを上げる。
霊獣の体の土砂はそのまま収縮して、
中に混ざってしまった妖魔をじりじり圧殺していく。
異物を石化して目玉を潰すたびに、妖魔が突きたてた刃が召喚獣の体内を貫く。
感覚をリンクしている睦美は、
無数の釘で内臓を打ち付けられるような痛みを感じ続ける。
だが、彼女には立ち止まる時間が残されていない。
(灯、清見……もう少し待っててくれ!)
こめかみに青筋を立てるほどの激痛と戦いながら、睦美は霊獣の肩から指示を出す。
「行け、土麒麟(ドキリン)!」
土の霊獣は天を遮るほどの泥砂を巻き起こすと、鈴華に向かって猛スピードで突進した。
155 五行戦隊 第六話(12/22) sage 2012/12/24(月) 09:46:42.09 ID:uwOBuGIO
□
灯はとても不思議な気分だった。
目の前にある無愛想な表情は、間違いなく清見本人のもの。
なのに昔とイメージが全然違うのはどうしてだろうか。
清見は水色のバトルスーツに代わり、
今では黒を基調とした青い触手スーツを身にまとう。
青いライン上に妖眼が見開き、かつての意趣を汲みつつ新たな魅力で宿主染め変える。
こびりつくように肉質の布地が体に張り付き、
胸の起伏や腰つきの勾配を惜しみなく描き出す。
下半身はスカートではなく、
レオタード式の肉布が太ももの間をいやらしく食い込み淫靡さを演出。
ノースリーブから露出した肩の白肌はまばゆく、
その先にある両腕は肉質のロンググローブに包まれた。
清見が右手を掲げると、腕を包んでいたグローブは幾本もの青い肉紐にほどき、
クラゲのようにふわふわと空中に浮かんだ。
灯はもどかしい感情に苛まれた。
今の清見の格好は驚くくらい彼女に似合っていた。
ダークブルーの雰囲気はその無表情をよく引き立て、
昔には無かった凄艶な色香を匂わせるようになる。
冷酷な視線に射られると、身も心も凍えるような気持ちにされてしまう。
それが脳内に鮮烈なイメージを焼き付けてしまい、
灯の中にある清見の昔の姿が思い出せない。
清見の姿が美しければ美しいほど、灯はいら立つような悔しいような気分に陥る。
翠の時もそうだったが、その感情は一体なんなのか、
灯自身にもうまく説明できなかった。
ほとんど身動きできない彼女には、ただその激昂を皮肉の言葉に変えて発散する。
「どうなの、その『新しい服』の着心地は」
「悪くない。宿主である私のイメージを瞬時に転写して具現化できる。
これなら私の力を最大限に引き出してくれるだろう」
そう言いながら、清見は腕を振り下ろした。
触手は途中から鞭のようにしなり、地面に倒れている灯の体を強くなぎ払う。
水しぶきが激しく散った。
「っ……!」
苦悶を眉に滲ませながらも、声一つあげず歯を食い縛る灯。
水の鞭によって学生服が裂かれ、その下の赤く腫れた素肌を雨空に晒す。
今の灯は変身前の姿に戻っていた。
雨の中で泥水に浸かる制服姿は彼女の敗北ぶりを痛々しく物語る。
護霊服の守護が無き今の彼女は、
妖力を帯びた攻撃に対しまったく無防備な状態である。
清見はかつての仲間を心配する素振りもなく、ただ興味津々と水触手をさわる。
「面白い性質。妖力をそのまま使用するのに、扱い方は霊力とほとんど変わらない。
まさに私達のような退魔術者を生かすためのシステム」
「まだそれほど経ってないのに、ずいぶんと馴染んでるんだね」
156 五行戦隊 第六話(13/22) sage 2012/12/24(月) 09:48:21.46 ID:uwOBuGIO
「鈴華と翠のおかげだ。二人に寄生した経験がそのまま私に伝えられる。
妖眼蟲同士は知識を共有し蓄積する。個体ごとゼロから勉強する人間より
ずっと合理的で素晴らしい」
「五行戦隊よりも?」
「そうよ」
カチン、と来た。
清見の言い草は完全に敵の肩入れをするものだった。
妖魔によって世界がどれほど損害を受けたか見てきた灯にとって、
それは何よりも許せなかった。
「今までオレたちが過ごしてきた時間は、全部どうでもよかったのか!
一緒に修行をして、一緒に枕投げして、一緒に戦ってきた時間が!」
「そう言ったつもりは無い。五行戦隊として身に付けた知識は、
これからもずっと役に立たせるつもりだ。妖眼蟲が人間世界を征服するために」
「このやろうっ!」
灯は何度も目を凝らして清見の顔を見つめた。
しかし清見の顔は学校裏の池水と同じようで、感情の揺れがまったく見つからない。
親友だから分かる、清見は本気でその言葉を言っている。
そして親友だからこそ、灯は清見にそんなことをさせるわけにはいかない。
「覚えてろよ、絶対一発殴ってやるから!
正義心を思い出させるくらい強烈なやつをな」
「ありがとう。でもそうなる前に、あなたの正義の心を私が消してあげるわ」
清見はそう言いながら右拳を突き出し、手をギュッと握り締めた。
彼女の右腕を包むロンググローブは濃い黒に変色し、
肉布全体が手首の方向へと波打つ。
表面にある妖眼は小波に乗る葉のように揺れ動く。
何もできないまま、灯はその不気味な光景をただ見上げるしかなかった。
肉布はまるで液体のようにうねる。
だが灯はすぐにそれは錯覚ではなく、本当に液体化していることに気付く。
握り拳の隙間から数滴の黒液がしたたる。
それが何を意味しているのか分からない。
たが持ち前の本能から、灯は反射的にそれを顔から避けようともがいた。
液体は彼女の顔面からはずれ、左胸あたりに垂れ落ちた。
「あ……っ!?」
灯はいきなり左胸に息ができないくらい重苦しいしびれを感じた。
深海に沈められたような気持ちになったが、それも最初の一瞬だけ。
すぐに痺れが鈍い疼きすりかえられ、
どんよりと沈殿していくような心地良さが芽生える。
灯はすぐさま自分を見下ろし、唖然となった。
水滴はコールタールのように粘度が高く、制服のブラウスやブラジャーまで浸透する。
禍々しい妖力が直接肌と触れ合う。
だが思ったほど不快な感触ではなかった。
粘液にまみれた部分にじんわりとした気だるさが生まれ、頭がぼんやりしてしまう。
157 五行戦隊 第六話(14/22) sage 2012/12/24(月) 09:49:38.83 ID:uwOBuGIO
「なに……これ?」
心地良さに流されないよう、灯は懸命に正気を維持する。
黒液が浸透しきった部分は、まるでラバーのように黒々とした光沢を帯びる。
手で拭き取ろうとしても、手のひらが液体を掴むだけで剥がし取ることができない。
そして驚くことに、黒粘液化はそのままゆっくりと周囲へ広がっていく。
「鈴華や翠を見て、私はあることを確信した。
もし五人とも寄生された場合、おそらく私が最も寄生能力を発揮できると」
清見は無表情のまま身を屈め、黒液を絞り出した手で灯の胸をさわった。
たっぷりと粘液を含んだ手のひらが、灯の胸を満遍なく塗りたくる。
「いやっ……!」
灯は喘ぎ声が出そうになるのを必死にやり過ごした。
コールタールの粘液を手が滑り、そのまま快感神経を撫でられているようだ。
乳房を鷲掴むと指の隙間から黒液が溢れ、ほどよい堕落感に変換される。
「うう、ううっ……悪いことをしてるのに、よくそんな……冷静でいられるのな!」
「前まで私もそこが不思議だった。寄生され意識を植えつけられたというのに、
ほとんどの人間は人格が独立していた。でも、その認識自体が間違いだった。
妖眼蟲は人間を変えるではなく、むしろその人間の本来の姿を取り戻した」
「馬鹿を言うな! 鈴華や翠のあれが本来の彼女たちだと言うのか?」
「その通りよ。本来の鈴華はひねくれ者で、翠の本性も淫乱なマゾヒストだった。
そして私は、陰湿な私のままで行動できる」
「ひゃああ……っ!」
灯の悲鳴が響き渡る。
清見は親指と中指で灯の乳首をはさみ、人差し指で先端をこねる。
黒液に寄生された布はまるで肌その物のようで、
その下にある乳首も胸の形も原型のまま黒くあらわす。
裸でいるよりも恥ずかしい光景だった。
清見が更に体を近づけたとき、突如灯は両目を大きく見開いた。
「いい加減に、しろおぉ!」
今までこっそり溜めていた霊力を全て拳に込め、灯は渾身の力で清見を殴った。
赤いパンチが触手スーツにめり込んだ瞬間、清見の体が後方へ倒れる。
だが、驚いたのは灯のほうだった。
清見は顔色一つ変えず、ゆっくりと立ち上がった。
攻撃を受けた部分は赤く焼け剥がれたが、寄生スーツはすぐに新しい触肉が再生し始めた。
予想していたダメージから遠く離れていた。
「私の攻撃をわざと防御せず、霊力と根性だけで私が一番近付いた時を狙う。
逆境におかれた灯らしい行動ね。ただ残念なのは、
今のままでは効果がまったくないことだ」
「属性が不利とはいえ、無傷だなんて……!」
ハッとなって灯は自分の右腕を見る。
いつの間にか、彼女の右手は黒い粘液にまみれていた。
真っ黒に染まった手のひらから、黒液が指の側面を越えて手の甲まで覆う。
更に雨粒をそのまま吸収しながら、腕の上部へとのぼる。
158 五行戦隊 第六話(15/22) sage 2012/12/24(月) 09:50:57.19 ID:uwOBuGIO
灯の右手は、さきほど胸の黒液を拭おうとした時に使った腕だった。
「まさか……!」
「それが私による妖眼蟲の新たな寄生能力。護霊服に守られた状態では難しいが、
普通の服を寄生化するのは簡単なこと」
清見のスーツは触手に分裂し、灯の体を撫でると同時に目玉を垂れ流す。
妖眼は灯の体に粘液をまぶしながら蠕動し、そのまま黒化した部分の中へねじ込む。
「はああ……っ!?」
灯は信じられないような現象を目にしてしまった。
目玉はこじ開けるように黒粘液に潜ると、そのまま目としてスーツ上で見開く。
妖眼が灯に寄生する都度に強い衝撃が全身を叩きつける。
「あなたも寄生の気持ち良さを思い知るわ」
清見はどこか嬉しそうに、灯に自分の体をくっつけた。
彼女の触手スーツは粘液化していて、そのまま灯に黒液を分け与える。
まるで電子レンジで加熱されたアイスクリームのように、
粘液と目玉は次々と垂れ落ち、灯の胸、臍、太ももなどを汚す。
服が同化されてしばらく経つと、黒い光沢を持つ触肉として生まれ変わる。
その部分から沸き起こる鈍い疼きが灯の神経を焦らす。
「くっ……離れやがれ!」
「もっと良いことしてあげようというのに、暴れられては情事も台無しね。
少しおとなしくなってもらう」
清見は目を細めると、突然灯と唇を重ね合わせた。
生まれてはじめて他人とかわした口付け。
あまりにも不意打ちだったので、
灯は清見が運んてきた液体をそのまま飲みこんでしまった。
体の温度が急上昇していく。
「ちょっと、なにをする……!?」
左手で口元を拭うと、指先を染める黒い液体が目に入る。
その液体も体のものと同様、アメーバのごとく指先を黒く広がる。
ねばっこい液体が喉元を通った変な感触が一生忘れないかもしれない。
恐ろしい気持ちが自然と胸中から生まれる。
「これで灯は外側だけでなく、内側からも寄生されることになった。楽しみ」
「そんな……あぁっ、ああああぅんっ!」
灯は両手が黒液まみれになっていることも忘れ、
何かの苦しみから逃げるように首元を押さえる。
体の奥に入り込んだ液体は、ドクドクとした溶鉱のように体内を燃やす。
その様子に目を細めながら、清見はさらに灯の両脚を開かせる。
「うわああ、ちょっと!」
灯は大慌てで赤面した。
裾を押さえようという行動は痺れのせいで不発に終わり、
捲くられたスカートの下から真っ白な下着が晒し出される。
スカートが壁になったせいか、下着はまだ浸蝕されていない。
159 五行戦隊 第六話(16/22) sage 2012/12/24(月) 09:52:15.89 ID:uwOBuGIO
「思ったとおり、なんの飾りっ気もないね。まあそれが灯の良いところだけど」
「よ、余計なお世話だ!」
「それをこれから私の色に染め上げると思うと、ゾクゾクする」
「くっ、この……!」
容赦無く股を宛がってくる少女に、灯はただ不安の目つきで睨むしかなかった。
清見の股間を覆っていた触帯は自動的に開き、その下にある媚肉を見せ付ける。
「妖魔による快楽は、人間の神経細胞による電子信号を送っているに過ぎない……
少し前までなら私もそう思っていた。でも、今なら鈴華や翠がそれに夢中した理由が分かる。
私達はもともと淫欲のために存在しているんだと」
目をやや潤わせながら、清見は指を自分の秘部へ伸ばした。
まるで見せ付けるようにクリトリスを摘み取り、媚肉の割れ目をなぞる。
相変わらず表情は無愛想なものの、徐々に赤める顔色は欲情をそそるものだった。
熱っぽい吐息が顔にふきかかるたびに、灯の顔から火が噴き出そうになる。
「はぁ……これが欲情という気持ち。思った以上くせになりそう」
「それはお前が操られて、そう感じるよう仕向けられただけだ!」
「そんなことは無い。前から私は灯のことが好き。その証拠にほら、私のここを見て」
指で広げられた綺麗なピンク色の割れ目。
そこからすでに大量の愛液がねっとりと溢れていた。
蜜液はポタ、ポタと下着に垂れ、そのことだけでも灯を十分に辱めた。
だが現実はこれだけでは終わらなかった。
清見の愛液を吸い取った下着は、まるで墨で染められたかのように、
禍々しい黒に変色し始めたのだ。
その形や材質も、清見が身に付けている触手スーツと同じような肉質に蠢く。
変化は蜜液の落下点からまわりへ伝わり、
驚く速さで下着全体を醜い肉布に変貌させる。
さっきよりも上回るような恐怖が灯を鞭打つ。
股間の大事な部分にぬるぬるした気味悪いものが当たり、
ねちゅねちゅ張り付くその肉布から、どす黒い淫靡な妖気を放つ。
「私が愛欲を感じたときに、浸蝕率が最も高くなる。
その力次第では、強力な聖結界すら溶かせる」
「なんて恐ろしいことを……!」
五行戦隊で一番大胆な灯でも、戦慄する気持ちが隠しきれなかった。
清見の霊力はもともと浄化に長けたタイプ。
その力で妖魔の瘴気を洗浄し、幾度も五行戦隊を窮地から救い出せた。
戦闘以外でも、瘴気におかされた一般人の後治療や解呪まで活躍する場面は多々ある。
そんな彼女の力が一変して妖魔に味方したら、どれほどの被害が出るだろうか。
だが焦る気持ちに反比例して、灯の体は徐々に火照り出した。
肌を黒く染める粘液は、彼女の服を溶かし、
ボーイッシュな体のラインを見事に再現する。
ほどよく膨らんだ胸の形。
余分な脂肪がなく鍛えられた太もも。
しなやかな腰つきや、へそまわりの魅力的なライン。
それらが黒液に覆われたことにより、妖しくも官能的な美しさを滲ませるようになる。
160 五行戦隊 第六話(17/22) sage 2012/12/24(月) 09:53:29.18 ID:uwOBuGIO
清見の触手スーツの妖眼が寄生するたびに、灯は快感を抑圧するような声を漏らす。
体を撫でまわる触肉の感触は、相変わらず気色悪いもの。
頭の中ではそう思っていた。
でも体がそれに同調してくれない。
つい数刻前と違った気持ちが、時間が経過していくとともに五感への発言権を強める。
「妖眼蟲に支配された人間は、体の全てが妖眼蟲の生殖に利するようになる。
男は糧となる精液を製造する機械となり、女は妖眼蟲を孕むための苗床になる」
「そんなの、まるで家畜じゃないか!」
「その通りよ」
「えっ?」
「妖眼蟲に支配されるようになれば、人間はずっと幸せになれる。争いや悩みもなく、
誰でも色欲を享受するだけの世界に。今の世界と比べたら、全然いいと思わない?」
「そんなの誰が幸せになると言うんだ!」
「どうかしら。灯だって、寄生された人間たちを今まで見てきたでしょ?」
灯は口をつぐんでしまった。
森の中にいる寄生された女性たちは、確かに誰一人として嫌な表情を見せなかった。
それどころか喜んで股を開き、男や妖眼蟲の陵辱を受け入れていた。
「そんなの、妖魔に操られたから……!」
「果たしてあなたがこの快感を味わったら、同じことを言い切れるかしら」
清見は薄笑いを浮かべつつ、互いの花弁を重ね合わせるように股を近づけた。
初めてあそこから感じる他人のぬくもりに、灯の顔が急速に熱した鉄のようになる。
「お、女同士で何をやろうってのか!」
「まあ。じゃあ男性とこういうことをしたかったのね」
「そんなこと言ってるわけじゃ……ぁいっ!?」
清見が互いの股を擦り合わせた途端、灯は言葉を喉に詰まらせた。
すでに触肉化した下着はもぞもぞと蠢き、灯のクリトリスを摘み出す。
充血しきった媚芽は軽くふれられるだけで悶絶する。
「ほら、灯と私のクリトリスが擦りあって……はぅんっ……気持ちいいでしょ?」
よっぽど刺激が強いか、清見でもこらえきれずに口から可愛らしい喘ぎ声がこぼれる。
そのギャップがまた灯を煽り立てる。
「だめ、そこは……!」
灯は脊髄を削り取られたような錯覚を覚えた。
触肉に変貌した下着はそのまま灯の太ももを愛撫し、清見の愛撫をサポートする。
緊張が緩んだことによって、体中の黒粘液はさらに速いスピードで広がっていく。
だが今の灯には寄生化に気をかけるほど余裕はなかった。
女の子同士で、それも今まで親友だった人物と淫らな行為をしている。
倒錯した背徳感が気持ち良さの中に紛れ込んで、頭から思考力を奪い去る。
「ううん……っ!」
不意に清見は自分の子宮に手を添え、眉を悩ましげに曲げた。
彼女が背筋をそらすと、恥部から突如一本の触手が伸び出た。
噴き出した淫液のしぶきは灯の顔にも数滴かかった。
しかし水滴から匂う濃厚な淫香よりも、灯の意識は清見の股間に釘付けとなった。
161 五行戦隊 第六話(18/22) sage 2012/12/24(月) 09:54:36.40 ID:uwOBuGIO
清らかな少女とは到底釣り合わない、黒々とした邪悪な剛直がそこにあった。
いやらしいイボイボが生えた表面に二、三の目玉が見開き、
この淫猥の造形に異常性を加える。
感情的に受け入れがたい光景だった。
討伐すべき敵の妖魔が、大事な親友の体内に寄生してしまっている。
これほど悔しいことはあるだろうか。
だが清見本人は嫌がる感情を見せず、むしろ以前にも増して嬉しそうに見えた。
今まで長く付き合っていて、清見がこれほど喜びを顔にした記憶はない。
その事実がまた灯に悔しいゾクゾク感をもたらす。
「驚いた? これが私の中に植えつけられた百眼様の分身。
今からこれを使ってあなたを犯してあげる」
「えっ……!?」
言われて初めて、灯はその一物の用途に注目した。
未経験ではあるが、清見の言葉が何をさしているのかすぐに感じ取った。
足を必死に閉じようとした矢先、清見の手によって簡単に押さえつけられる。
「灯はこういうの初めてなんだよね。好きな人がいるくせに」
「なっ……どこでそれを!」
「ふふふ、灯のことが全部分かっているから。妖眼蟲に寄生されて正直嬉しかったの。
ほかの男に灯の処女を奪われるくらいなら、私が頂いてやる」
なんの冗談だと怒号をあげようとしたが、
清見の目を見て灯は思わず言葉を引いてしまった。
今まで見たこともないくらいどんよりとして、冷酷で、
それでいて歪んだ邪悪な愛情が込められた瞳。
友情とはまったく異なる感情。
その瞬間、親友だったはずの清見の何もかもが未知のように感じた。
邪物の先端が割れ目に当たったとき、灯はようやく身震いすることを思い出す。
肉質の生暖かさと気色悪さは同時に背筋をなぞる。
陰茎触手の表面にある目玉はキョロキョロ動き、
灯の不気味がる気持ちをマックスレベルに押し上げる。
ワームのような湿った柔肉が秘部のまわりに吸い付く。
それだけでも身の毛がよだつ思いだった。
だが次の瞬間、清見は何の前触れもなく腰を一気に突き出した。
「いっ!? ひゃうっ……んあああぁっんん!」
どんな痛みでも耐えてやるつもりだった灯は、
数秒も経たないうちに悲鳴をあげてしまった。
裂かれたような鋭い刺激が奥深くまで届き、膣の形を異型のそれに変形させる。
一筋の血が太ももをつたって草地に垂れ落ちる。
目の前が真っ暗に沈んでいく。
目尻までこらえていた涙が、とうとう溢れ出る。
(そんな……好きな人がいるのに……初めては、好きな人に捧げようと決めたのに……)
162 五行戦隊 第六話(19/22) sage 2012/12/24(月) 09:56:01.36 ID:uwOBuGIO
仲間を宿敵に奪われた上で、更に自分の純潔まで汚されてしまった屈辱感。
心は灰クズのように燃え尽き、ちょっと息を吹きかけただけで散りばりそうだ。
それなのに。
それなのに、どうして体は真逆の反応を示し続けるのか?
息がどんどん荒くなって、心臓の暴動を制御することができない。
小刻みに震える肩口や背筋が、快感に浸る悦びを精一杯表現する。
一突き一突きするたびに剛直の表面が膣壁を摩擦し、
力強い感触を残しては引いていく。
分泌された淫液は迅速に膣内に染み渡って、
それに伴って最初に感じた痛みはすぐに快感に変換された。
黒光りする肌に薄っすらと汗のような黒液が浮かび、
粘液の濃度が前よりも増して一段と官能的な香りを放つ。
「おめでとう、これであなたも立派な『雌』になれたね」
「く……っ、はぁん!」
睨みつけて啖呵を切ろうとする灯。
だが異物が絶えず体内にねじり込んでくる感触に、すぐに意識が曖昧になってしまう。
媚液成分が膣内で吸収されると、瞬時に血管中を回る。
体の外だけでなく芯までも熱くなり、
敵意も勇気も快感の前では甘砂糖のように溶けていく。
邪物は時には優しくつつきながら、時には蹂躙するように一番深い部分まで埋め尽くす。
変化自在に蠢く能力は清見によって余すところ無く発揮され、
灯に抵抗心を構築する時間さえ与えず、征服される喜びを一方的に植えつける。
「ち、っくしょ……!」
灯は無意識のうちに体をくねらせた。
剛直がピストンするごとに、体が黒バターのようにとろけてしまう。
そんな彼女の変化を、清見は陶酔したような目つきで見守る。
「だんだん良くなってきたでしょ?」
「だ、誰が……こんな気持ち悪い物に」
「気持ち悪いと思うのは、まだ人間としての防衛本能が働いているから。
しかし寄生が細胞レベルまで進んだとき、あなたは根本から作り変えられる。
好物は妖眼蟲の食料である精液になり、快楽を求める。そして食事のために、
あなたは喜んで人間を襲うようになる」
「そんな勝手に決めつけない……で、っ……むぐっ!」
清見がまたいきなり顔を近付いて、灯の唇を奪う。
二度目のキスは、一度目と違って深い接吻だった。
灯は最初こそ抵抗したが、次第に力が入らないまま清見の舌を受け入れた。
互いの舌肉をいやらしく絡め合わせ、唾を共有する。
「はぁっ、ああぁん……!」
清見の顔が離れた後、灯は今まで以上焦点の合わない目で雨の曇り空を見上げた。
だらしなく開いた口元から黒い唾液が垂れ落ち、
喘ぎ声のオクターブが徐々に高まっていく。
163 五行戦隊 第六話(20/22) sage 2012/12/24(月) 09:57:28.27 ID:uwOBuGIO
「そろそろ頃合ね」
清見は挑発するような目線でねめつけながら、腰を振るスピードを一気にあげた。
醜悪の肉棒は少女達の股の間で現れたり隠れたりして、
表面に生えた目玉は邪悪な光を輝かせる。
まるで二人が感じる快楽を体現するように、
清見や灯の体に寄生している妖眼も呼応して点滅する。
「ああっ……!」
「はぁん、灯のあそこが締め付けて、離してくれない……」
「そんなこと、言うな……ああ、そこは、だめ――っ!」
「いっぱい感じて!」
ひときわ力強い一突きに、灯は飛び上がりそうな勢いで体を強張らせる。
寄生陰茎の頂点が膣内の一番深いところまで刺さり、
そのままドクンドクンと膨張する。
灯は清見の手を強く握り締め、足をつりそうになるほどピンと張った。
できる限りの悲鳴をあげ、彼女は無意識のうちに下腹部の奥に埋った肉棒を絞った。
一筋の濁液が寄生茎の先端から噴き出される。
「はああぁぁぁ――っ!」
「ううん……っ!」
二人の少女は同時に体を痙攣させた。
清見は触肉スーツから解放された白い背肌を、切なげに反らした。
永遠とも思える、天地が逆転するような快感。
二人の握り合った両手は恋人のように永く絡まり、
興奮が去った後の感触にゆっくりと浸す。
その美しくも倒錯した一幕に祝砲をあげるかのように暗雲の間を雷鳴が低くうなる。
「ふふふふ……これで灯は私側の人間になった」
清見は快楽がまだ冷めきれない表情で呟くと、息継ぎしながら灯から離れた。
両者の間を繋ぐ寄生根はふにゃりと軟化し、途中で二本に分裂した。
一端は清見の股間の中へ跡形も無く収納される。
しかし、もう一端はそのまま灯の膣内へ入り込んだ。
まだ余韻から回復しきれてない灯は、急激に下腹部から違和感を覚える。
「うがっ……!?」
イッたばかりの体がまるで売ることに慣れた娼婦のように、再び火照り出す。
膣内に残った肉棒の感触がそのまま奥へと進んでいくと、灯はカッと瞳孔を広げた。
自分の体外から触手がもぞもぞ進む光景がそこにあったのだ。
ミミズの物体が蠢くたびに、性器の奥部から鈍い痛みと鋭い快感が交互に響いてくる。
だが何よりもおぞましいのは、その触手が膣内へ徐々に消えていく事実だった。
「いやあああ――っ!」
ようやく我に返った灯は、残りの力全てを振り絞ってもがいた。
しかし体外に残る触手の体積はみるみるうちに減っていき、
嘔吐したくなるような悪寒がお腹に充満する。
膣内にねじ込む異物は、なおも奥へ奥へと進んだ。
164 五行戦隊 第六話(21/22) sage 2012/12/24(月) 10:06:12.78 ID:uwOBuGIO
「なんで、まだ……動くのよ? はぅ、くああぅん!」
吐き気を催す甘い痺れに、灯は表情を苦悶の色に染める。
寄生根は粘液状に変化しながら、膣内で極細い触手に伸長する。
絶え間なく分泌される淫液のせいで、違和感が徐々に満たすような幸福感に変換される。
「どう? 今頃、あの子はあなたの子宮頸を通っているはずよ」
「なん……だって?」
「感じるかしら。あなたの子宮は妖眼蟲を受け入れるために、
自ら口を開いていることを」
「そんなの……嘘だ!」
積み重なる快感の波に逆らえるよう、灯は必死に我を保とうとした。
しかし清見の言うとおり、体が勝手にもじもじ動いて触手の滑りを手助けする。
妖眼蟲が通った道筋は妖液が溢れ、いやしい愛液を導き出す。
お腹の中を満たされる充足感が、いつしか灯の感情を支配する。
「はあぁぁっ……ああああああっ!」
灯はついに甲高い悲鳴を絞り上げた。
それと同時に、彼女の下腹部に妖しい紫色の模様が浮かび上がる。
黒に染められた肌の中、嫌に目立つ妖しい目玉の模様が。
「おめでとう、着床は無事成功したね」
「ちゃく……しょう……?」
自分のおへそあたりに描かれた紋様を見て、灯は愕然とした。
その紫色の紋様は、触肉スーツと比べられないほど邪悪なオーラを放つ。
まるで淫らな烙印のように、少女の体が完全に奴隷化したことを象徴する。
「さっき言ったように、これから少しずつ、あなたの体が妖眼蟲の育成に適したものに
変化していく。あなたの子宮は妖眼蟲を育むための場所となり、
外敵から妖眼蟲の幼虫を守る……もちろん、霊術者からも」
清見は灯のへそあたりを優しくなぞった。
その指が色薄の模様に触れた瞬間、灯の神経は万雷に焼かれたような感覚が走る。
「かぁっ……!?」
まるで性器を直接ふられたような刺激に、灯は軽く絶頂を迎えた。
鋭い疼きが敏感な神経を突っ走り、頭のてっぺんから足のつま先まで一巡する。
清見の指が離れてしばらく経っても、雨粒や風の衝撃さえ敏感に感じてしまう。
「いま灯の体内に寄生させた蟲は百眼様の新たな分身だから、
ちゃんと大事に育てないとだめよ。人間の快楽を搾取しながら成虫まで育てれば、
そのときに紋様が一番濃い色に変色するの。そうすれば、
灯も私と同じ忠実で淫らな奴隷になれる」
「いやだよ……こんなもの、すぐに取ってやるよ!」
「残念だけど、これは私が産み出した特殊な妖眼蟲なの。たとえ高レベルの術者であっても、
一度子宮に植えられたら、本人の力だけでは決して取り除くことはできない」
「そんな……」
灯は涙をこらえながら悔しそうに唇をかみ締めた。
清見の余裕な態度を見る限り、自分の力だけでこの蟲を祓うのは困難のようだ。
だからといって、妖眼蟲が成虫になるまで体内に許すわけにはいかない。
(せめてその能力だけでも調べて、ほかの人に伝えなきゃ……)
165 五行戦隊 第六話(22/22) sage 2012/12/24(月) 10:11:43.79 ID:uwOBuGIO
――ビクン
「ええっ!?」
大きく震える体に、灯は驚いた。
体に残る最低限の霊力でさえ彼女のコントロールから離れ、
勝手に下腹部のところへ集まっていくのだ。
その代価として、甘い恍惚のような気持ち良さが脳内を占領する。
清見を助けるために霊力を吸収されたのと同じ感触だった。
「あああっ……!」
「大丈夫みたいだね」
「ど、どいうことなの?」
「妖眼蟲は寄生することで強靭な生命体を得るが、無防備な幼虫状態では、
初級退魔者にも簡単に浄化されてしまう。しかし私の能力を得たこの新種なら、
生存率をぐーんと上げることができる」
「そんな……体から霊力がどんどん吸われていく!」
「この幼虫は霊能力者に寄生することで、宿主の霊力を妖力に少しずつ変換しながら
成長することができるの。そして宿主の霊力自体がカプセルとなって、蟲の気配を一切
漏らさず隠蔽する。これが実用化されれば、世界中の退魔機関に対抗できる。
灯には、その第一実験者になってもらうの」
「ううぅ……そんな、こと……は……」
灯はおぼつかない口調で呟き、力なく地面に背中を預けてしまった。
そのまま、まぶたがゆっくりと閉じていく。
今晩彼女はすでに何度も激戦を繰り広げて、体の疲労は極限状態に達していた。
身も心もボロボロの今では、
霊力を吸い取られる気だるい快感がこの上なく心地良い。
「ふふふ……良いわよ、ゆっくり眠りなさい」
清見は灯の寝顔を撫でると、いとおしそうに口付けをした。
そして指を鳴らすと、彼女の足元から大量の水が湧き出て灯の体を取り囲む。
水はスライムとなって灯を完全におし包み、
ブヨブヨ変形しながら大きな球状となった。
ダークブルー色の水風船は徐々に不透明化し、中にいる人間の輪郭だけを外に見せる。
やがて少女のシルエットは出生を待つ赤子のように、
膝を抱えた体勢に固定していく。
スライムの表面に、ぐぱっと一つの妖眼が開く。
「今度そこから出てきた時、あなたは妖魔のしもべに生まれ変わる。
あなたの勾玉は私がちゃんと精液漬けにして汚してやるから、心配することは無いよ」
清見は灯の変身アイテムだった赤い宝玉を取り出し、小さく微笑んだ。
持ち主と離れ離れになる勾玉は、その守護力を完全に発揮することができない。
両者を別々に寄生できれば、その時間は大幅に短縮できるだろう。
「また五人一緒に戦おうね……今度は世界を淫楽に染めるために」
悪質な愉悦を言葉に込めながら、清見は水泡に背を向けて歩き出した。
性行為の途中で液化していた肉布は再び固体に戻り、もとの触手スーツとなって清見の体を包む。
その顔はすぐにいつもの冷淡さに戻った。
しかし彼女をよく知っている人物であれば、
その表情のどこかにドス黒い喜びが隠れていることに気付くだろう。
体から発散される淫香だけがその余韻を匂わせる。
雨でも流し落とせないほど、満開した花よりも濃厚な香りが。