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(最後の人間の決断)
86 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:03:55 ID:ApPeRrxg
どうも、こんばんは~。
さて、とりあえず予告どおり作品をお見舞いさせていただきます。お覚悟を。
まっ、御託は並べず、とりあえず今から投下します。
お時間があれば見てってくだせぇ、だんな。
ちょっとだけ注意。不埒は後半集中、今回もENDが二つ、以上。
87 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:05:51 ID:ApPeRrxg
(1-1)
暗い。今自分は地面に接しているのか、それとも闇の中へと落下して行っているのかも分からないぐらいの暗闇が私の視界を覆っていた。
首を動かして周りを見ようとすることもままならない。まるで全身に血が通っていないかのように身体が重い。
しかし、その私の身体が突如揺り動かされた。私の力によるものではない。そして、私の視界に段々と光が灯り始めた。
「……ら? あ……た! 目が覚め……かしら?」
暗闇の中に差し込まれた光が私の目をくらませる。しかし、それを遮ろうと自然に右手が動いていた。
そして段々と肌寒い空気が私の身体を包んでいくのを感じる。それに刺激されるように、段々と目が光に慣れていく。
「あぁ、良かった。無事みたいね。あなた大丈夫?!」
「だ、れ?」
私は目の前で私を覗き込んでいる金髪の女性を見て、疑問を口にした。
その人物が私の身体を支え、上体を起こし上げてくれた。水の音がする。ここは……何処だろうか?
「怖かったわね。もう大丈夫よ。私はジェニファー。大統領のSPよ。あなたの名前は?」
ジェニファーさんが私の身体を軽く抱きしめながら聞いてきた。私は答えようと頭を働かせる。
「私は……え、私は……私は……分からない。分からない! 私は、だれ!?」
思い出せない。私の年齢も、私の家族も、私自身の顔さえ今の私には分からない。
「お、落ち着いて! まさか……記憶喪失?」
「はぁ、はぁ……、分からない。何も思い出せない、です」
「そう……でも。無理もないかもしれないわ。とりあえずここを出ましょう。危険だわ」
そう言って私に肩を貸して、ゆっくりと立ち上がらせてくれた。それでここがバスルームだと言う事に気付いた。
バスルームから小さな部屋通り抜けると、そこはどうやらホテルの部屋のようだった。その横長のベットにジェニファーさんが私をゆっくりと降ろした。
「ちょっと待ってて。更衣室からあなたの服を取ってくるから。出来れば、左にある鏡を見といてくれる? 何かを思い出すかもしれないわ」
私を残して出てきたばかりの更衣室にジェニファーさんは戻って行った。
私は左に顔を向けて、そこに映る……一人の人間の姿を確認した。白い肌とその肩に掛かる茶色い髪、あどけなさが残る童顔、しかし胸は大きい。でもその全てが私にとっては違和感のあるものだった。
そして足音共にジェニファーさんが私の元へ戻ってくると、苦笑いをしながら声をかけてきた。
「……その様子だと思い出してないみたいね。はい、これ。ちゃんと着替えを持って入ってたみたいね。汚れた服の隣にこれがあったわ」
ジェニファーさんはそう言って私にジーパンと白いTシャツ、そしてピンクのブルゾンと下着類をベットにおいた。
「とりあえず着替えながら聞いて欲しいのだけど、世界が今どういう状況におかれているか、覚えてる?」
「……ごめんなさい。まったく持って覚えてないです」
私は首を振った。するとジェニファーさんは微笑みながら首を振ってこう言った。
「大丈夫よ。今から説明するから安心して」
88 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:06:34 ID:ApPeRrxg
(1-2)
少し恥ずかしかったが、下着を身につけながら彼女の話に私は耳を傾けた。
「今から3ヶ月前ぐらい前から、人々に寄生体が寄生し始めたの。……と言っても、本当は1年以上前にこの国で見つかった寄生体が研究所から逃げ出したのだけれどね」
ジェニファーさんが黒いスーツの胸ポケットから手帳を取り出し、その中からなにか紙のようなものを取り出して私に見せた。
それは黒い液体で……そう、スライムのような物体が写された写真だった。
「この寄生体は人間の穴と言う穴から侵入するわ。それから3日ほどその体内に潜伏。そして3日後、男性なら肛門から、女性なら……膣から子供を産むように、自分の姿かたちが同じ生物が産まれるの」
ジェニファーさんはそう言って写真をしまうと、ゆっくりとベッドの右横へと移動してその場に屈んだ。
私もジーパンを履きながらそれを目で追うと、なにやらその床にピンクシーツが何重にも掛けられ、それが何かを隠すようにしかれている事に気づいた。
「ごめんなさい……見たくはないかもしれないけど、これを見れば何かを思い出すかもしれないから」
それだけ言うと、ジェニファーさんは一思いにそのシーツを引き剥がした。ピンクのシーツが私の視界を一瞬だけ隠す。
そしてそれが私の視界からずれると……一人の人間の姿があった。白い肌とその肩に掛かる茶色い髪、そしてそこに映る顔はどれも……先ほど見たことのあるものだ。
「これがあなたが産んだ寄生体。胸の大きさとか、顔の形が微妙に違うけど……そっくりでしょ? これがさっきあなたに覆いかぶさっていたの」
ジェニファーさんが私の顔を覗きこみながら話し、やがてシーツを元に戻した。
「……あまり、見ないほうが良いわ。私が後頭部の横から銃弾を撃っていて……あなたと違う部分が決定的にあるから」
そこからジェニファーさんが離れても、私はまだそれに目を奪われていた。果たして、このシーツのピンクの着色は……元々、シーツに彩色されたものだったのだろうか?
その答えを導き出す前に、私はジェニファーさんにTシャツを押し付けられた。その顔には微笑みを浮かべているが、これ以上私に横を向かせることは許してくれなさそうだった。
「この寄生体は自分が生み出されたあと、その宿主を抱きしめて……全身で溶かして身体に取り込むの。そして新しいスライム状の寄生体を一匹産む。食べた宿主の身体はその栄養素になるの。あなたはその一歩手前、おそらく寄生体の自分が生み出された直後に私に助けられたの」
それじゃあ……つまり、寄生体の自分を自分で産んで、それが寄生体じゃない自分を食べて、それがスライムの寄生体を一匹産む。つまり……。
「このままだとこの星は人間の形をした寄生体に乗っ取られる。大統領はそれを防ぐために今、動こうとしているの」
「い、一体……何をするつもりなんですか?」
私はジェニファーさんの顔を見たままブルゾンを着て、私の着替えを終わらした。それと同時にジェニファーさんも口を開いた。
「地球上から寄生体と、人間の両方のほとんどを今から……殺します」
そう言った瞬間、左のほうから大きな音が聞こえ、部屋の中にジェニファーさんと同じような格好をしたがたいのいい男が飛び込んできて、私を一瞥したあと、ジェニファーさんにこう言った。
「ジェニー、大統領が決断した。軍はもう当てにならない。今から突撃を敢行するとのことだ」
「……了解です。ごめんなさい、すぐに出発するわ。一緒に行きましょう」
「で、でも、私は寄生されたってことですよね? そ、それなのに私を連れて行っても」
「安心して。あなたの身体からはもう寄生体は出て行っている。寄生されてもそこから出て行った後なら、あなたの体内にはもう寄生体は残っていない。逆に外を歩いている人間よりよっぽど信頼できるわ」
ジェニファーさんが差し出した手を私が取るとゆっくりと私をベットから引き上げてくれた。
「残念だけど、ここにはあなたの服以外は何もなかったわ。……じゃあ、行きましょう」
89 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:07:18 ID:ApPeRrxg
(1-3)
「君が隣の部屋にいた少女だね。ジェニーによれば記憶喪失らしいが、私のことは分かるかね?」
白い髪のスーツを着た中年過ぎぐらいの男性が私に笑顔で話しかけてきた。
「だ、大統領、さん……です」
私は名前が分からなかったが、車の中で一人だけ格好が違うため、私はそう答えた。
「ははは、その様子だと私のことを覚えていなかったようだね。私はジョン・シルバー。現アメリカ合衆国の大統領をさせてもらっている。よろしく……ええと」
「ア、アリスです。ジェニファーさんに、とりあえずの名前を考えてもらいました」
「おお、そうか。よろしく、アリス。次の選挙には我が党に一票頼むよ」
私は差し出された大きな右手を慌てて掴んだ。大統領さんは楽しそうに笑顔で言ったが、握手を終えると苦笑いになりこう続けた。
「もっとも、党も、国も、人類さえも存続できるか分からないがね」
「ご安心を、大統領。私達が絶対にあなたをセーフルームまでお連れします」
「ありがとう、頼りにしているよ、ジェニー」
私の隣のジェニファーさんは大統領さんの言葉に敬礼をした。しかし……この車の中には私と大統領、そしてジェニファーさんと先ほどの男のSP、それと運転中の男のSP。わずかに5人だけしかいないのだ。
あのホテルには私達以外に誰もいなかった。ジェニファーさんによれば、大統領と彼の3人のSPはこのホテルに避難して偶然にも私が居た部屋の隣に入ったらしい。
暫くすると、隣の部屋からなにやら騒がし音がしてきて、ジェニファーさんが見に来てくれたところを私は助けられたらしかった。
「アリス、今私達はニューヨークの郊外にある緊急用施設に向かっている。その理由、君にも教えておこう」
大統領さんが表情を真剣なものに変えて、私にその理由を話し始めた。
「これからいく施設にはある設備がある。一つは隔離シェルター。別名セーフルームと呼んでいる。ここでなら、たとえこの国が水没しても一ヶ月ぐらいなら充分生きていける」
眉間に皺を寄せて大統領さんが続ける。
「更にもう一つ……あるミサイルの発射装置がその部屋にある。そのミサイルとはまる1ヶ月、地球上全てを低酸素状態、人間なら確実に死んでしまうような状態にさせるミサイルだ。唯一安全なのが、セーフルームなんだ」
「……つ、つまりそのセーフルームに残っている人間以外は」
「死ぬだろう。同時に世界中に電子機器を破壊、停止できる小型ミサイルも撃つ。寄生体は人間と基本的には同じ構造をしている。酸素がなければ生きてはいけない。おそらく1ヶ月の低酸素状態で地球もそれなりの被害は受けるはずだが、なんとか持ちこたえられるはずだ」
大統領さんがそれを言い切った瞬間、窓を幕で囲って車内灯をつけただけの車中が突然、大きな轟音と共に揺れだした。
「っ、見つかってしまいました! 一気に駆け抜けますから、捕まっててください!」
運転手のSPが叫ぶ声も、轟音でしばらく馬鹿になった耳ではなんとか聞こえる程度だ。
後部座席にいる2人のSPは車内の幕を破るように開くと、のどかな農村を走るこの車に併走するようにパトカーが何台もいた。
「そこの車止まりなさい! 我々は人間だ!」
パトカーから聞こえる声にジェニファーさんが怒りの声を上げた。
「だったらさっきの轟音はなんなのよ!」
2人のSPは窓を開け、手に持ったマシンガンのような銃をそれらの車に向けて発砲しだした。すぐ隣から聞こえるけたたましい音に私は耳を塞ぐ。
「君は伏せていなさい! 目も瞑って、何も見ちゃいけない!」
そう言いながらも大統領さん自身は拳銃を持って併走するパトカーに向かって発砲をしている。……私もやらなくちゃ。
私は後ろの荷物を漁って大統領と同じような拳銃取り出すと、窓からパトカーに狙いを定め、引き金を絞ぼりきった。
「きゃあああ!」
「ぐあああああああああああああ!」
大きな反動と銃声で私は思わず悲鳴を上げて尻餅を着いたが、どこかから私のものではない叫び声も聞こえた。
起き上がりながら窓の外を見てみると、先ほどのパトカーが全ていなくなっていた。
私は唖然とするジェニファーさんの視線の先を追うと、離れ行く車の後方で大破する何台ものパトカーが見えた。
「……なんという少女だ。よければ私のSPになってくれないかね?」
大統領が額に手をやってそう言うと、小さな笑いが車内に生まれた。
90 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:07:50 ID:ApPeRrxg
1-4)
「大統領、見えました!」
運転手が大きな声でフロントガラスの先に映るその大きな建物を示した。
「なんだか、大きな天文台みたいですね」
「いや、実際そうなんだよ。ここは普段は、天文台として一般公開もしている」
大統領さんはそう説明しながら、近づいてくる天文台を見ながら厳しそうな顔をした。
「誰も……いなければいいんですが」
「どうだろうな。この施設の存在を知っている人物は僅かしかいないが、それでもその機密を知っていてこの車に乗っていない人物は何人もいる」
大統領さんがジェニファーさんの言葉に頭を振った。
「大統領。では、作戦通りに行きますよ」
ジェニファーさんがそう言うと、大統領さんの表情が一気に曇った。やはり、不安なのだろうか?
「……すまない。よろしく頼む」
大統領の言葉に運転席と後部座席に座っていた二人の男のSPが力強く頷いた。
そして車は道を外れたところでゆっくりと停車し、後部座席にいた男のSPが無言でドアを開いた。
「大統領、アリスさん、降りてください。ここから歩きます」
「え? な、なんで私達だけ降りるんですか?」
私の言葉に一斉に皆、目を逸らした。その中でジェニファーさんが小さな声で私に言った。
「彼ら二人には……囮になってもらいます」
「お、囮?」
「このまま正面から突っ込んで、もし待ち伏せされていたらまずいことになる。だから私たちは裏口から侵入する」
ジェニファーさんと大統領さんが暗い表情で私に説明をした。
「大統領、ジェニー、それとお嬢さん、どうかご無事で」
「奴らは俺らが引き付けておきます。手はずどおり、もしいつか私たちがセーフルームに近づいても絶対に開けないで下さい。それは多分、私たちではないと思いますから」
そんな二人とは対照的に、車に残った二人の男のSPの表情には笑顔が浮かんでいた。
「二人とも……よろしく頼む」
大統領さんはそんな二人に向かって敬礼をした。ジェニファーさんもそれに続き、私も流れそうな涙をこらえながらそうした。
すると彼ら二人も真剣な顔で敬礼をし、そして後部座席のドアが閉じられると二人を乗せた車は天文台へと動き出した。
「……行こう。我々は彼らの勇気を無駄にしてはならない」
その車を見て涙を流してしまった私の肩に、大統領の大きな手が優しく載せられた。
「うぅっ、ぐすっ、……はい」
私は涙をブルゾンの袖で乱暴に拭き取ると、ジェニファーさんを先頭に、それに私と大統領が続くように歩き出した。
91 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:08:36 ID:ApPeRrxg
(1-5)
「あの二人、派手にやってくれているな」
目の前の天文台の反対側から、爆音やら銃撃音が絶え間なく聞こえている。聞こえているということは、あの二人はまだ生きているということなのだろう。
「開きました。ここからは一気に駆け抜けます。……準備はいいですか?」
ジェニファーさんが私と大統領さんに向かって確認をした。大統領は足首や手首などを回し、私はスニーカーの紐を結びなおした。
「では、行きます!」
大きなマシンガンを片手に、ジェニファーさんがドアを蹴破って建物に侵入するやいなや、こちらを振り向かずに走り出した。私と大統領もそれに続く。
そこはいきなり道が3つに分かれていたが、ジェニファーさんは迷わずに右に曲がる。それからも何度も通路を曲がったり、部屋を通り抜けたりする。
「くっ……銃声が……」
かなりの距離を走ってからこぼしたジェニファーさんの声で私もいつの間にか銃声も、爆音も消えていることに気付いた。階段も何度か降りたが、決して地下に潜っているから聞こえなくなったわけではないのだろう。
「もうすぐだ。アリス、頑張れ!」
私を心配してくれる大統領も、もう汗だくで走り方も最初に比べるとかなりおかしくなっている。
もちろん、私も例外ではない。先ほどから視界が揺れに揺れて仕方がない。頭も酸欠のために痛み、足だって今にももつれそうだ。
「ん!? あれだ! あのエレベータに乗り込め!」
大統領さんが指をさす先に銀色のドアがあり、先に辿り着いたジェニファーさんが横のパネルを操作している。
「ああ! なんで下の階にエレベータが下りているのよ!?」
ジェニファーさんが表示板を睨みつけて、壁を殴りつけた。表示板は『30』という数字から段々と数を減らしてきている。ここは地下5階、あと25階分を上ってきてもらわないといけない。
「いたぞ!」
しかしその時、背後からそんな叫び声が聞こえて、次の瞬間には銃声も聞こえ出した。
「くっ! ジェニファー、応戦するぞ!」
「はい! アリスさん、こっちに隠れて!」
私とジェニファーさんは通路を挟んで、大統領さんの向かい側の通路の横の壁に背中から張り付き、ジェニファーさんが通路の向こうへと銃撃を開始し、大統領も拳銃を取り出すと同じように発砲し始めた。
その時、私はジェニファーさんが撃ち終わると同時に、彼女の拳銃を手渡し、交代に渡されたマシンガンの弾倉を入れ替え、拳銃を撃ち終わった彼女から拳銃と交代にマシンガンを渡した。
「もう少しです! あと、10階でここに着きます!」
私はジェニファーさんに最後の弾倉を入れ終わったマシンガンを渡しながら叫んだ。
……『10』、『9』、『8』、『7』、『6』。
チーン、という音が一瞬だけ銃声の合間に鳴り、銀色のドアが左右に開いた。
「二人とも乗るんだ! 私がここを食い止める!」
大統領さんが銃撃を続けながらそう叫んだ。そして片手を青いスーツの内側に突っ込むと、こちらに何かを投げてきた。
「それがセーフルームを開ける唯一の鍵だ! 急げ、奴らが来る!」
「大統領、しかし!」
「行け! ジェニファー!」
あんなに優しい顔つきからは想像できないほどの剣幕で叫んだ大統領さんの言葉に押されるように、ジェニファーさんは私の身体を抱え込むようにしてエレベータに飛び込むと、エレベータのドアが静かに閉じられた。
92 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:09:04 ID:ApPeRrxg
(1-6)
銃声が遠いていくなか、ジェニファーさんは何も言わずに私の身体を抱きしめて一層強く抱きしめてこう言った。
「私……大統領を……守れなかった……くっ」
悲しみを噛み締めるようにジェニファーさんが零した。しかし、ゆっくりと私から離れると涙を拭きながらパネルの下を先ほど貰った鍵で開き、何かのケーブルを引き抜いた。
「これで……このエレベータはもう二度と上には昇らない。あとはセーフルームであのボタンを押したあとに動くエレベータが、唯一の地上への出口」
ケーブルを投げ捨て、鍵をパネルから引き抜くとそれを大事そうに握り締めた。
やがてパネルの上部の階数表示が『30』へと変わり、そしてチーンという音ともにエレベータが開かれた。
「待ってたわ。ジェニー」
「なっ!? リリィ?!」
開かれたドアの先で、ジェニファーさんと同じ黒いスーツを着た女性がこちらに拳銃を構えて立っていた。赤毛が混じったショートヘアーに、狼にように鋭い目つきのいかにもSPという女性だった。
「くっ!」
ワンテンポ遅れて、ジェニファーさんが持っていたマシンガンを構えようとそれを持ち上げた。しかし……。
「くあああああ!」
重い一発の銃声と共にジェニファーさんの右腕から血飛沫が上がると、彼女のマシンガンがエレベータの床にがしゃんと落ちた。
「あっと、あなたも動かないでちょうだいね。動いたら、ジェニーの頭に虫食い穴が開くわよ」
私に向かって微笑みながらリリィと呼ばれた女性は釘を刺した。
「さっ、二人ともそこから出てちょうだい。このエレベータは使えないみたいね。まぁ、暫くすれば迎えが来るでしょう」
リリィさんに脅されて私とジェニファーさんはゆっくりとエレベータの外に出た。
「はぁ……これで面白くなりそうね。くっくく……あはははははは!」
私とジェニファーさんがリリィさんに銃を向けられながら、目の前で楽しそうに笑う彼女を見ていた。
しかし突然、ジェニファーさんが握り締めたままの左手を開いてセーフルームの鍵を落とし、それと地面が接触する音が聞こえると同時にリリィさんさんに肩から突っ込んだ。同時に、彼女はもう一つ何か黒いものを地面に落とした。
「っ! アリス、それで彼女を撃って!」
私はジェニファーさんの腰から落とされた黒いもの……彼女の拳銃を持ってリリィさんに構える。
「ぐっ! 待ちなさい!」
ジェニファーさんに馬乗りされているリリィさんが、自らの持っている拳銃をジェニファーさんの唯一のふくよかな部分である胸に向かって突きつけていた。
しかしジェニファーさんは私に向かって叫んだ。臆する表情さえ見せずに。
「撃って、アリス! 撃てぇえええええ!」
93 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:09:40 ID:ApPeRrxg
(1-7)
私はそのジェニファーさんの必死の叫びに、リリィさんに向かって狙いをつけた拳銃の引き金を絞りきっていた。
一発の発砲音にほんのわずかに遅れて、もう一発の銃声が重なった。
リリィさんの額に穴が開き、彼女に馬乗りになっていたジェニファーさんがその横に崩れるように倒れた。黒いスーツの背中から、同系色の穴が開いている。
「ジェニファーさん!」
ジェニファーさんに駆け寄って、私はその顔を持ち上げた。彼女が咳をすると、その口から血が吐き出され、彼女の白くなった顔を赤く染め上げていく。
「ゴホッ! よ、よか、た……じ、実は……この階は、ミサイル、撃っても……すぐ酸素、消えないから……リ、ィ……死なない、とこ、だった……」
「ジェニファーさん! そうだ、セーフルームに治療薬ぐらいは」
「む、り……あ、ても……治せ、ない……しん、ぞう……貫通……してる……」
血を口の端から垂らしながら私の両目から流れ出した涙をジェニファーさんが震える手で拭き取り、ニコリと笑うと擦れた声で言った。
「い、き……て、せ、かい……お、わり……み、と、ど……け……て……」
その言葉を最後に首がカクりと横に垂れた。私の涙が彼女の頬に落ちても、彼女の表情は何一つ変わらなかった。
その時、地面がわずかにゆれ、耳に重い響きが小さく届いた。おそらく、上の階の人たちがこちらに降りてこようとしているのだろう。……ジェニファーさんの遺体をセーフルームに運ぶ余裕はなさそうだ。
私は涙を拭うのもせずに、ただ目を見開いたままのジェニファーさんの両目を閉じると、地面に落ちていた鍵を拾ってエレベータの間逆にある大きい扉へと近づいた。
その右の壁の鍵穴に鍵を差込てゆっくりとまわすと、その大きな扉が軋みながら開かれた。
もう一度耳に届いた轟音に私はせかされるようにその内部の部屋に入ると、点滅とブザーを鳴らしている『CLOSE』と書かれた赤いボタンを押して大きな扉を閉めた。
そして広いとはいえない部屋の奥で今度はブザー音が鳴り同じように点滅をしている部分があった。そこには『ALL CLEAR』と書かれた赤いボタンがあった。
私は迷わずそれを押した。すると、そのボタンの下から薄いガラスに守られた……そう、学校の消火栓の緊急用のボタンのようなそれが出てきた。
深呼吸を一つした後、私はそれを拳で叩き割り、内部のボタンを押した。
間を置かずに建物が大きく揺らぎ始め、私はとても立っていられずにその場に膝を着いてその振動に耐えた。しかし、耐えられないような音が絶えず耳を刺激している。
やがてその揺れと音が収まると、私は近くにあったいくつものテレビに近づいた。どうやらこの建物内の監視映像らしかった。
そこには建物内の人間が泡を吹きつつ倒れていく様子が映し出されていた。私は思わず目を背けてそのテレビから遠ざかった。
壁に寄りかかって誰もいない薄暗い部屋の中で一人、私は膝を抱えて暗闇に視界を投じた。もう何も……何も考えたくはなかった。
94 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:13:23 ID:ApPeRrxg
(1-8)
私は壁の穴から勝手に出てきたカンパンと水を口に運んでいた。決して美味しくはない。
水を口に含んで私は自分を罵った。あんなに人が死んでいく様を見ながら、一日もしてしまえばお腹がすいてしまっていた自分を。
それももう三日目。最初の日は映像を鮮明に思い出してしまい、食べたものをすぐに吐いてしまったものだが、今では淡々と食べられるようになっていた。
しっかりとカンパンを水で押し込んでから、私はちらりと監視映像を見た。そこに見えるのは誰もいない建物の内部か、動かなくなった人間の山。
その映像を見た私は、思う。一体私は何のために生きているのかと。私の人生が仮に80年だとして、おそらく私が10代だと考えれば、残りの60年余りを一体どうやって一人で消化すればいいのか、と。
自殺しようと考えたこともあった。しかし、ジェニファーさんが命懸けで私を守ってくれたのだ。それを無駄にすることはしたくはない。……でも、私に何をどうしろと言うのだろうか。
そんな事を考えていたとき、私の下腹部がズキズキと痛み出した。くぅうう……消化器官が調子悪いのだろうか?
しかし、その痛みが段々と別のものに代わっていく……。えっ……なんで? なんで……気持ち良いんだろう?
それはまるで……自慰行為をしたときの快感に似ていた。そしてそれは私の官能を徐々に高ぶらせていく。
「はぁ、はぁ、くぅぅうあああ! な、なんでぇ? はぁあああ、だめ、だめ! な、何かでちゃぅううううう!」
愛液が出て絶頂に達しそうな感覚が私を襲う。何故? 私はそんな興奮するようなものなんてみてないのに……。
しかし、私の膣から今にも愛液が外の空気を吸いたくてたまらない、とでも言うかのように私の絶頂を誘っている。
「きゃあああああ、だめぇえええええええええ!」
私はそう言いながらも膣から液体を放出させた。しかしそれだけでは私の官能は納まらず、膣の奥から何かが這い出てこようとしている。
「ぃゃあああああ、な、なにか、でてきちゃぅぅうううううう!」
そしてその一部が私の膣から頭を出した。それはまるで暗闇が私の膣から生まれてくるかのようなほど真っ黒でぬるりとした液体だった。
「はぁ、こ、すれてるぅう、くふぁああああ。そ、こぁああああらめぇえええええ!」
私の感じやすい部分をわざと通っているかのように刺激したまま、私の膣からそれは絶え間なく這い出てくる。
「ひぃ、ひぃ、ふぅううう、くぅん! ……ひぃ、ひぃ」
呼吸をラマーズ法のようにすると、その物体が私の中から出てくるのも大分楽になってくる。痛いわけではないが、絶え間なく快感が襲ってくると息をするのさえも忘れてしまう。
「ひぃああ、いぁぁあああ! ひぃ、ふぁああああああああああああ!」
たっぷり10分ほどは掛かっただろうか。私から生まれた闇の水溜りは大きな水溜りぐらいの大きさで私の膣の前に溜まっていた。
95 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:13:52 ID:ApPeRrxg
(1-9)
それが呼吸さえもが疲労する行為に感じるほど疲れ切った私の目の前で、地震で揺れる液体のように揺れ動いている。
そう、思った次の瞬間、いきなりその水溜りが噴水の水のように宙に向かって立ち上り始めたかと思うと、人の形を作り始めたのだ。
長い髪が毛の一本一本まで生え、その下に輪郭が出来ていき、目と鼻と口、耳などがそこに加わっていく。
細い首が途中で生まれ、胸の部分で大きな膨らみが生まれる。そこからくびれる様におなかが出来ていき、恥部の割れ目が出来ると水が二つに分かれていく。
そして長くて細い華奢な足が完成すると同時に、その足下にあった水溜りは既になくなっていて、目の前には黒いマネキンのような人影が出来ていた。
次の瞬間、その身体がまるで光を放つかのように一瞬で彩色されていった。長い茶色い髪、童顔だといわれる顔、その割に成長していると笑われる胸、そしていくら食べても太らないと自慢のお腹……どれも見覚えがあるものだった。
「な、んで……私が……」
「ありがとう、私。私を産んでくれて」
私が産んだ私はそう言って、ニヤリと不敵に笑うと、彼女の出産の疲れで動けないでいる私に馬乗りになってきた。やっと終わらない快感から解き放たれた濡れた膣が、同じような彼女のそれと重なり、私に新しい快感を与え始めた。
「ねぇ、何か思い出さない? ふふっ、私はもう思い出したよ」
そう言って私の上に乗っかっている私が、彼女の下にいる私に向かってそう言ってきた。確かに、この光景はいつか見たことがあった。
「その顔だと思い出してない、って顔ね。じゃあ、こう言えば思い出すかしら」
私に乗っかる私が少しだけ考えたような仕草をして、こう言った。
「えっと……大丈夫だよ、レラ……お姉ちゃんに全てまかせて……」
その言葉を聞いた瞬間、私の頭の中に情報の津波が襲ってきた。
96 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:15:11 ID:ApPeRrxg
(1-10)
「レラ~、お待たせ~」
こんな状況なのにやけに間延びした声で、リムお姉ちゃんがバスルームに入ってきた。
「お姉ちゃん、大丈夫? やけにトイレ長かったみたいだけど」
「あ、うん。ほら、食事のあとにすぐ逃げ出したからトイレ行く暇なくてさぁ、いやぁ快便だったわ」
そう言ってお姉ちゃんは私の身体の背中に回ると、不意に抱きついてきたのだ。
「わ! な、なに?! どうしたの、お姉ちゃん!?」
「レラ、怖かった。レラを助けたとき、私本当はあなたを見捨てようか一瞬だけ迷っちゃった……」
「あ、当たり前だよ! あんなに人がいっぱい襲ってきたんだから! それに……お姉ちゃんは、結局私を助けてくれた。襲ってきた男の人をぶん殴って、さ」
私は胸の辺りに巻かれたお姉ちゃんの腕を抱きしめた。今浴びているシャワーのお湯より優しくて温かいぬくもりが伝わってくる。
「ふふ……じゃあ、私のこと大好き?」
「もちろん、お姉ちゃん」
私がそう言うと、後ろから私の頬にキスをし、そしてその次の瞬間、信じられない力で私を押し倒したのだ。
「きゃああ! い、痛ったぁ~……お、お姉ちゃん大丈……」
私の上に乗りかかるお姉ちゃんの顔は……何故かとても楽しそうだった。
「ごめんね。でも、これからは優しくやってあげるから……じゃあ、ちょっと濡らそうか」
そう言うとお姉ちゃんが私の視界の下の方へとフェードアウトしていった。
それを私が上体を起こして追おうとした瞬間、私の……恥ずかしい部分をぬめりとした感触が襲った。
「ひゃあ! お、お姉ちゃん?!」
私は思わず手でその部分を覆おうとしたが、お姉ちゃんの手が私の手を抑えた。
「んんっ、大丈夫だよ、レラ……お姉ちゃんに全てまかせて……」
そう言って私の秘所を一定の感覚で優しく舐めてくる。私は足を閉じようとするが、その刺激が襲ってくるたびに足から力が抜けてそれすらままならない。
「あんっ! ひぃっ! お、お姉ちゃん、んあっ! や、めてぇ……」
「あっ、レラ、あなたの蜜が出てきたよ。んんっ、か~んろかんろ、あはっ」
「やぁあぁああ、おねえちゃんにぃいいいいい、すわえてるぅううう!」
秘所の中に姉の舌が段々と侵入して、私の入り口を嘗め回してくる。私は思わずその刺激に身体を浮き上がらせてしまう。
「んんっ、ふぅ。もうそろそろ大丈夫でしょ。これで痛くならないわ」
そしてさっきの映像を逆回しするように、私の視界の下から姉がフェードインしてくる。自分の口をぺろりと嘗め回しながら。
「はぁ、はぁ……おねえちゃん、いったいどうして?」
「ふふ、大丈夫。ちょっと待ってね。……ぁ、ふぁっ、でぇ、でてきたぁあ」
お姉ちゃんが火照った顔で自身の秘所をいじっている。その顔は悦にいったものだ。
「んぁあああああっ!」
そして大きく身体を仰け反らせたかと思うと、黒くて長い触手のようなものをそこから出してきたのだ。
「きゃぁあああああ!」
「ふぁぁああ、もう我慢できない。いくねぇ、レラ」
97 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:16:49 ID:ApPeRrxg
(1-11)★ちょっとグロいかも
悲鳴を上げる私に赤く染まった顔で微笑み掛けると、その黒い触手が私の視界から消え去り、そして私の恥部に何かの異物感を感じた。それが何なのかなど、見なくても分かっている。
「ぁああぁあああ! はいってぇえええ、こないでぇえええええええ!」
そんな叫び声を私が上げても無駄だった。その触手は私への遠慮などまったく気にもせずに私の奥へと侵入してくる。
「きゃはぁあああん! レラのなかぁああ、あついぃいいいいいいい!」
「らめぇえええええ! ぬいてぇえええええええ、おねえちゃんんんんんぁああああああああ!」
私はお姉ちゃんのよがる姿に必死に助けを求める。しかしお姉ちゃんは私の入り口と自身の入り口を重ねるようにして小刻みに前後している。まるで男の人がしてるみたいに。
やがて前かがみになってたお姉ちゃんの胸と、私の胸が重なる。同じぐらいの大きさの胸がお互いをもみ合って、互いに刺激を送り送られている。
「はぁあん、れらぁああ、そんな顔してたらぁあ、わたしもっといじめちゃぅうううう!」
お姉ちゃんがそう言うと同時に、私の中を蹂躙している触手の速度が一気に上がる。それに対する悲鳴を上げようとしたときには、姉に唇を奪われていた。
「んんっ! んんんんんっ! んんんんんんんんんんんんんんん!」
私は舌を絡ませようとしてくるお姉ちゃんをもう受け入れていた。それは間近にあるお姉ちゃんの顔が、いかにも気持よさそうにしていたからだ。
おそらくそれは私とて同じことだろう。もう私の中は、触手を拒むどころかそれを楽しんでいる。それを私のものにしてしまいたいぐらいに。
「んぁあああ、いくよぉぉおおおおお、うけとってぇ、れらぁああああああああああ!」
「ふぁあああああああああんっ、なにかぁあああああくるぅううううううううううう!」
私は揺れ動く視界で、それが私の中に入ってくる瞬間を見た。お姉ちゃんの女の部分が大きく私の気持いい部分から離れたと思ったら、お姉ちゃんの中から出ていた触手がそこから離れて私の中に消えていった。
「んぁあああああああ、わたしのなかでぇええええ、おねえちゃんのがうごくぅううううううう!」
「はぁはぁ、あは、だいじょうぶ、もうすぐわたしとおなじになれるからぁ……あははははは」
私とそっくりな顔のお姉ちゃんが楽しそうに笑っている。双子の私の姉が、妹の私を犯して楽しそうに笑っている。
だから私も同じように笑った。だって私達は双子なんだから、片方が笑ったら同じように笑わなきゃ、それこそおかしいことだ。
そうして大声で笑っていたときだった。突如、姉は頭から私の左側へと思い切り倒れた。そしてバスルームに反響するように銃声が響いている。
私が左を見ると、飛び散った脳漿や頭部の皮膚のカケラがバスルームの壁にべったりと赤黒い色を塗っている。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
私はそれを見て発狂した。怒りと恐怖と、悲しみと……いや、感情の全てを爆発させるように叫んでいた。
叫びながら私の頭がボーッとしてきた。かすんだ視界の中で金髪の女性が私に何かを話しかけている。
しかし、その声は私の耳に届くことはなく、私はそのまま暗闇へと引きずりこまれた。
98 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:17:22 ID:ApPeRrxg
(1-12)
「うぁ……あぁ……」
リムお姉ちゃんと私は、双子の姉妹だった。性格はちょっと違っていたけど……。
私が着ているこの服も……これは着替えなんかじゃない。リムお姉ちゃんがあの時着ていた服だ。綺麗に畳まれていたのは、それを一度も着ていなかったからじゃない。お姉ちゃんが自分の服をしっかりと畳んだからだ……。
「そ……んな……じゃあ……ジェニファーさんが殺したのは……」
「双子のリム姉さんでしょうね。最も、寄生体のリム姉さんだったみたいだけど。ほら、あの時トイレ長かったから、多分あのときに産んだんだよ。それで食べられちゃったんだろうね。姉さんは寄生体の自分に。そして私の養分となったのね」
自分の身体を抱きしめて微笑みながら目を瞑る寄生体の私。
「でも、まさかこんなことになるとはね。もう、私の仲間はみんな死んじゃったでしょうね。もちろん、あなたの仲間もね……ふふっ、怖い? これから一ヶ月は私と二人きりでここで過ごすのよ?」
「……った。」
私は涙と言葉を同時に零した。私に乗りかかっている寄生体の私が首をかしげて聞き返してくる。
「え? なんて言ったのかしら?」
「よかったぁ……よかった……わたし、もうずっと……ひとりぼっちなんじゃないかって……ううっ」
私は寄生体の私の腕を引っ張って、無理矢理に抱きしめた。
「あらあら、このままだと、私はあなたを溶かしちゃうわよ? 知ってるでしょ? 寄生体が宿主から出たあと、こうやって宿主を食べるのは?」
「それでもいい。一人ぼっちで生きていくより……ずっとまし」
私はそう言って一層強く、私と同じ身体を抱きしめる。同じ大きさの胸が押し合い、私は同じ私の顔に向かって唇を近づけた。
そのまま彼女の口の中に私の舌を入れようとするが、彼女はゆっくりと私から離れて口を人差し指で拭うとこう言った。
「ふふふ、う~そ。そんなことしない。あなたしか人間がいなくなったならもう寄生体を増やす必要もないし……なによりあなた、可愛い顔してるから」
優しく微笑んで私の唇についばむように軽く触れ、そしてもう一度微笑んでから再度唇を重ね合わせてきた。私はすかさず彼女の口の中に自分の舌を滑り込ませる。彼女もそれを優しく受け入れてくれた。
「ああんっ、んんっんっ、んんん~」
「んっ、んんんっ」
私には彼女の身体、彼女の動きが手に取るように分かった。だから、私が喜ぶように彼女の口内を蹂躙していく。
相手の歯茎を舐めまわし、そして舌を突きあうようにしてから、滑りあうようにお互い絡ませあう。
目の前にあるのは私と同じ顔なのに……それなのに、その顔はとても綺麗で可愛かった。鏡で自分を見ていたときはそんなこと感じないのに……私、おかしくなってるのかな……。
「んん~っ……ねぇ、あなたはジェニファーに新しい名前貰ったでしょ? だから私がレラ。あなたがアリス。んふ、これでいいでしょ?」
「いい、それでいいからぁ、もっとぉきもちよぉくしてぇ……れらぁ、おねがぃ……」
「ふふ、分かった。アリスのこと、もっと可愛がってあげる……」
同じ顔なのに、私には到底出せないような笑顔をレラは私に向けてきた。
堪らなくなって私はレラの身体を強引に引き寄せると、その豊満な胸の可愛らしい先っぽを咥えた。するとレラはお人形のような手で私の頭を優しく撫でてくれる。
「いいよぉ、ありすぅ。あぅう……」
「んっあ、えへへ……れらぁのちくびが、きゅんってたってるぅ……かわぃい……」
99 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:19:02 ID:ApPeRrxg
(1-13)
私の唾液で濡れたレラの胸の先っぽが、まるで赤ちゃんが二本足でゆっくりと立ち上がろうとするみたいに大きくなっていく。
それを再び咥えて、舌で転がすように舐めながら、時折アマガミをしてそのたびに反応するレラの顔を私は楽しんでいた。
「うあぁぁぁ、きもちぃぃ……くあっ!? そ、んなぁかまないでぇ……そんなことぉされたらぁ……おかしくなっちゃうよぉぉ……」
レラの口からそんな声が出ていても、彼女は自ら私の顔に胸をくっつけようとしてきている……。まったくぅ……正直じゃないんだから。
天邪鬼な彼女をいさめるように、柔らかい胸をもみながら、その先端を断続的にアマガミする。
「くっ、ひぃ、だぁ、めぇ、あぁ、たぁ、まぁ、がぁ、おぉ、かぁ、しぃ、くぅ、なぁ、るぅ!」
私がアマガミするたびにレラは言葉を切った。何とも可愛らしいその反応に私はさらにアマガミを続けてあげる。
「あああああんっ、れちゃぅううううううううううううう!」
レラが太もも辺りについていた自分の秘所を私の同じ部分にあてがうと、その部分が密着するように身体を抱きしめて、大きな嬌声を上げて達した。
彼女の秘所から出た温かいお汁がそのまま私の中にゆっくりと垂れながら入ってきた。
顔をずらしてその部分を見てみると、それはどうやら何の変哲もない愛液のようだった。やっぱり寄生体でも人間なんだ、と私はその時改めて思った。
「くはぁ、はぁ……ごめん……わたしだけ、いっちゃったぁ……こんどは、アリスのば~ん」
口で息をしながら私の上からどいたレラは、私を起き上がらせると、先ほどとそれぞれの体位を入れ替わるようにレラが下になり、手を引っ張って私を自分の上にのせてくれた。
そしてゆっくりと私の胸にレラの顔が埋まっていく。私は先ほどレラがやってくれたように頭を優しく撫でてあげる。
やがて彼女は顔を上げると、私のようにいきなり乳首を咥えるようなことはせずに、優しい手つきで私の胸を揉みほぐしてきた。
「はぁあ、これぇええ、きもちぃいい……」
そんな彼女の手さばきは見事なるものだった。私は先ほど咥えながらただ揉みくちゃに彼女の胸をいじるだけだったが、レラのは力加減や揉み方を絶えず変化させて私を飽きさせない。
「あぁ……そんなかおしてるといじめたくなっちゃうな……」
レラはそう言って再び私の胸の顔を近づけたと思いきや、突然私の胸に短く鋭い痛みが駆け抜けた。
「ひぁああっ!」
あまりの気持ちよさで先ほどまでぼやけていた頭が一瞬で覚醒される。レラはそんな私の様子に不敵に笑っていた。
「んふふ……さっきのわたしのきもちわかったぁ? からだがおなじだから、よぉくわかるでしょ?」
言われてみると、痛みと反比例するようにじわじわと快感が胸から伝わってきた。こんな……感じだったんだ……。
「も、もしかして……おこってる、の?」
「ふふ、ぎゃ~く。きもちよかったから、アリスにもやってあげようとおもって」
「あぁ、ありがと……うれしい」
私の言葉にレラはにっこりと笑うと、私の乳首を優しく咥えた。彼女の舌で私の乳首は踊らされている。
「ふぁああ、すごぉぉいいぃぃぃ……あんっ!」
優しい刺激に身を任せようとすると、突然のアマガミが乱入してそれを許さない。
100 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:19:43 ID:ApPeRrxg
(1-14)
「そ、そんなぁつよく、しないでぇえ……」
「んぁっ、わたしにもこれぐらいのつよさでやってたんだよ、アリスはぁ」
頬を膨らまして不満そうな表情でレラは言った。こ、こんなつよくしてたんだ、わたし……。
「でもだいじょうぶ……なれてきたらそれもきもちよくなるから……は~むっ」
レラが再び私の乳首を咥えて優しい刺激と鋭い刺激を交互に送ってくる。
「んっ、ふぁっ! ああっ、やんっ! そ、んあ! こう、ごに! しな、いでぇ!」
私はそのアメとムチの刺激に身をよじらせた。私は鋭い刺激を断続的に送っていたのに、彼女はそれに優しい刺激を混ぜることによって、それぞれの刺激を高めあっている。
「ひいぁっ! いっ、くぅううううううううううううう!」
ついに耐え切れなくなって私がそう叫ぶと、レラは先ほどのように素早く私の秘所と彼女の秘所をぴったりとつけてきた。それが更に刺激を与えて私は、いってしまった。
「やぁあああああああああんっ、でてるぅうううううううう!」
「ふぁあああああああああんっ、きてるぅうううううううう!」
私から出た愛液が、今度はレラの中に浸入していく。レラがまるでそれを一滴も逃すまいとするように身体を強く抱きしめてきた。
「あっはぁぁ、わたしのとぉ、アリスのがぁまざってはいってきてるうぅ……じゃあこんどはぁ、いっしょにいこっかぁ」
レラが今度は何をしてくれるのかと楽しみにしながら、私は彼女の上を降りて横に座った。
するとレラが上体を起こすと、足をM字に開いて私に自分のおま○こを見えるような位置に座ると、右手がゆっくりとその中へと潜り込んで行った。
「ひぃああああっ、これだけぇいっちゃいそう……くぅはあぁぁん……」
ぐちゃぐちゃに濡れたおま○こからいやらしい水音を鳴らしながら、快感に身をよじるレラに私は見入っていた。
「んはぁ、みぃつけぇた。みてて、ねぇ……いくよぉ……んはぁああああああああああああ!」
右手が完全に彼女の中に消えそうになったとき、レラはそう言って右手を一息に引き抜いた。
その手には……見覚えのある黒い触手が握られていた。
「あぁ、それはぁおねぇちゃんが、きせいしてくれたときのだぁ」
「はぁはぁはぁ……これはわたしのからだのいちぶだから、きせいはできないんだけど、これでぇいっしょに、いこっ?」
レラが両手を広げて私に微笑み掛ける。私はもちろん迷わずにその胸に飛び込む。
「じゃあ、ゆっくりときてぇ……これをぉありすのなかにぃ、いれてあげてぇ」
101 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:20:06 ID:ApPeRrxg
(1-15)
右手で触手を固定して私への侵入を待つレラを、私は両手を彼女の首に、両足を彼女の腰に巻きつけるように抱いて、私への入り口をその触手のまるっこいさきっぽにあてがった。
「ふあぁぁぁ……もうがまんできないぃい! はやくきてぇえええ!」
「うん、いっくよぉ……くっ、ふぁあああああああああ!」
「ああああああああああああああんっ!」
私は一息に腰を下ろしきった。濡れた私の中にすっぽりとレラの触手が入ってきた。とてつもない快感の嵐が頭を一気に真っ白にしてしまう。
「つつまれてるぅうう! アリスのあったかいなかにぃ、わたしのがぁつつまれてるよぉぉぉおおお!」
「きゃぅううううううう! えへへ……レラのぉ、たべちゃったああぁぁぁ……」
身体の中でピクピクとレラのものが痙攣している。同じようにレラ自身も虚ろな目で挿入の快感に浸っているようだった。
私はその無防備な唇を奪い、そのままゆっくりと子宮近くまで侵入している触手を抜いていく。それでも彼女の触手は筒にでも包まれているように元気に起きている。
「んんんんんんっ! ぷはぁ、やだぁ! ぬかないでぇええ!」
レラが私の身体を抱きしめて、私の行為を止めようとする。その子供のように必死にすがる顔がまた可愛らしい。
私は触手が抜ける直前で止まると、安心したような顔をしたレラに向かって彼女がするような不適な笑みを浮かべると、再び一気に腰を下ろした。
「ぁああああああああああんっ!」
「はぁあああああああああんっ!」
私は再び侵入された快感に、レラは再び挿入した快感に甘い嬌声を二人揃って合唱した。
しかし私の動きはそれで一段落はしない。お互いの太ももが重なったと同時にまた一気に腰を浮かせて触手を抜いていく。
「ひぃあああああああああああ!?」
解き放たれていく触手の快感にレラが声を上げたと同時に、一気に腰を下ろして再び彼女の触手を下の口で食べすすんでいく。
「んぁああああああああああああ!」
それを素早く繰り返して私はレラを快感の頂点へと誘っていく……なんて思いながら、結局は自分の快感を貪るために腰を動かしているのだけれど、ね。
「きゃはぁんっ! ふぁあぁ! くぅうううう!」
「あああああんっ! らぁあああ! めぇえええ! ありすぅううううう、いくぅうううううううう!」
「きてぇええええええ! れらぁああああああああああ!」
レラの触手が私の腰の動き以上に素早く動き始め、私も快感の頂点が目の前に訪れた。
「いっくぅうううううううううう! ふぁあああぁあああああああああああ!」
「きゃああああああああああああ! あっつぃいいいいいいいいいいいいい!」
私の中にレラの愛液が触手を通して直接注ぎ込まれる。同時に触手は私が出す愛液は吸っているようで、私は暫く達したあともその快感に身をよがらせることになった。
「ありがと……おいしかったよぉ、ありすのぉ……」
「はぁはぁ……こちらこそ……れらぁ……もっと、もっとあなたのにおい、わたしにつけてぇ」
レラの胸の中に顔を埋めて私は懇願した。
「……こわいんだ……わかるよ……わたしもおなじ……」
その言葉に私は顔を胸から離して彼女の顔を見た。彼女はニコリと微笑んで続ける。
「だぁいじょうぶ……もうはなれない……ううん、はなれなれない」
私の髪を撫でつけ、そのまま私の首に顔を近づけると優しく舐め始めた。私もそれを真似て彼女の首筋を舐めつける。
「これで……もうだいじょうぶ……アリスにわたしのにおいがついたよぉ……」
「うん……レラにもわたしのにおい、ついたぁ……」
二人して顔を見合わせると、ニコリと笑って再び交わりを再開した。
(終)
どうも、こんばんは~。
さて、とりあえず予告どおり作品をお見舞いさせていただきます。お覚悟を。
まっ、御託は並べず、とりあえず今から投下します。
お時間があれば見てってくだせぇ、だんな。
ちょっとだけ注意。不埒は後半集中、今回もENDが二つ、以上。
87 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:05:51 ID:ApPeRrxg
(1-1)
暗い。今自分は地面に接しているのか、それとも闇の中へと落下して行っているのかも分からないぐらいの暗闇が私の視界を覆っていた。
首を動かして周りを見ようとすることもままならない。まるで全身に血が通っていないかのように身体が重い。
しかし、その私の身体が突如揺り動かされた。私の力によるものではない。そして、私の視界に段々と光が灯り始めた。
「……ら? あ……た! 目が覚め……かしら?」
暗闇の中に差し込まれた光が私の目をくらませる。しかし、それを遮ろうと自然に右手が動いていた。
そして段々と肌寒い空気が私の身体を包んでいくのを感じる。それに刺激されるように、段々と目が光に慣れていく。
「あぁ、良かった。無事みたいね。あなた大丈夫?!」
「だ、れ?」
私は目の前で私を覗き込んでいる金髪の女性を見て、疑問を口にした。
その人物が私の身体を支え、上体を起こし上げてくれた。水の音がする。ここは……何処だろうか?
「怖かったわね。もう大丈夫よ。私はジェニファー。大統領のSPよ。あなたの名前は?」
ジェニファーさんが私の身体を軽く抱きしめながら聞いてきた。私は答えようと頭を働かせる。
「私は……え、私は……私は……分からない。分からない! 私は、だれ!?」
思い出せない。私の年齢も、私の家族も、私自身の顔さえ今の私には分からない。
「お、落ち着いて! まさか……記憶喪失?」
「はぁ、はぁ……、分からない。何も思い出せない、です」
「そう……でも。無理もないかもしれないわ。とりあえずここを出ましょう。危険だわ」
そう言って私に肩を貸して、ゆっくりと立ち上がらせてくれた。それでここがバスルームだと言う事に気付いた。
バスルームから小さな部屋通り抜けると、そこはどうやらホテルの部屋のようだった。その横長のベットにジェニファーさんが私をゆっくりと降ろした。
「ちょっと待ってて。更衣室からあなたの服を取ってくるから。出来れば、左にある鏡を見といてくれる? 何かを思い出すかもしれないわ」
私を残して出てきたばかりの更衣室にジェニファーさんは戻って行った。
私は左に顔を向けて、そこに映る……一人の人間の姿を確認した。白い肌とその肩に掛かる茶色い髪、あどけなさが残る童顔、しかし胸は大きい。でもその全てが私にとっては違和感のあるものだった。
そして足音共にジェニファーさんが私の元へ戻ってくると、苦笑いをしながら声をかけてきた。
「……その様子だと思い出してないみたいね。はい、これ。ちゃんと着替えを持って入ってたみたいね。汚れた服の隣にこれがあったわ」
ジェニファーさんはそう言って私にジーパンと白いTシャツ、そしてピンクのブルゾンと下着類をベットにおいた。
「とりあえず着替えながら聞いて欲しいのだけど、世界が今どういう状況におかれているか、覚えてる?」
「……ごめんなさい。まったく持って覚えてないです」
私は首を振った。するとジェニファーさんは微笑みながら首を振ってこう言った。
「大丈夫よ。今から説明するから安心して」
88 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:06:34 ID:ApPeRrxg
(1-2)
少し恥ずかしかったが、下着を身につけながら彼女の話に私は耳を傾けた。
「今から3ヶ月前ぐらい前から、人々に寄生体が寄生し始めたの。……と言っても、本当は1年以上前にこの国で見つかった寄生体が研究所から逃げ出したのだけれどね」
ジェニファーさんが黒いスーツの胸ポケットから手帳を取り出し、その中からなにか紙のようなものを取り出して私に見せた。
それは黒い液体で……そう、スライムのような物体が写された写真だった。
「この寄生体は人間の穴と言う穴から侵入するわ。それから3日ほどその体内に潜伏。そして3日後、男性なら肛門から、女性なら……膣から子供を産むように、自分の姿かたちが同じ生物が産まれるの」
ジェニファーさんはそう言って写真をしまうと、ゆっくりとベッドの右横へと移動してその場に屈んだ。
私もジーパンを履きながらそれを目で追うと、なにやらその床にピンクシーツが何重にも掛けられ、それが何かを隠すようにしかれている事に気づいた。
「ごめんなさい……見たくはないかもしれないけど、これを見れば何かを思い出すかもしれないから」
それだけ言うと、ジェニファーさんは一思いにそのシーツを引き剥がした。ピンクのシーツが私の視界を一瞬だけ隠す。
そしてそれが私の視界からずれると……一人の人間の姿があった。白い肌とその肩に掛かる茶色い髪、そしてそこに映る顔はどれも……先ほど見たことのあるものだ。
「これがあなたが産んだ寄生体。胸の大きさとか、顔の形が微妙に違うけど……そっくりでしょ? これがさっきあなたに覆いかぶさっていたの」
ジェニファーさんが私の顔を覗きこみながら話し、やがてシーツを元に戻した。
「……あまり、見ないほうが良いわ。私が後頭部の横から銃弾を撃っていて……あなたと違う部分が決定的にあるから」
そこからジェニファーさんが離れても、私はまだそれに目を奪われていた。果たして、このシーツのピンクの着色は……元々、シーツに彩色されたものだったのだろうか?
その答えを導き出す前に、私はジェニファーさんにTシャツを押し付けられた。その顔には微笑みを浮かべているが、これ以上私に横を向かせることは許してくれなさそうだった。
「この寄生体は自分が生み出されたあと、その宿主を抱きしめて……全身で溶かして身体に取り込むの。そして新しいスライム状の寄生体を一匹産む。食べた宿主の身体はその栄養素になるの。あなたはその一歩手前、おそらく寄生体の自分が生み出された直後に私に助けられたの」
それじゃあ……つまり、寄生体の自分を自分で産んで、それが寄生体じゃない自分を食べて、それがスライムの寄生体を一匹産む。つまり……。
「このままだとこの星は人間の形をした寄生体に乗っ取られる。大統領はそれを防ぐために今、動こうとしているの」
「い、一体……何をするつもりなんですか?」
私はジェニファーさんの顔を見たままブルゾンを着て、私の着替えを終わらした。それと同時にジェニファーさんも口を開いた。
「地球上から寄生体と、人間の両方のほとんどを今から……殺します」
そう言った瞬間、左のほうから大きな音が聞こえ、部屋の中にジェニファーさんと同じような格好をしたがたいのいい男が飛び込んできて、私を一瞥したあと、ジェニファーさんにこう言った。
「ジェニー、大統領が決断した。軍はもう当てにならない。今から突撃を敢行するとのことだ」
「……了解です。ごめんなさい、すぐに出発するわ。一緒に行きましょう」
「で、でも、私は寄生されたってことですよね? そ、それなのに私を連れて行っても」
「安心して。あなたの身体からはもう寄生体は出て行っている。寄生されてもそこから出て行った後なら、あなたの体内にはもう寄生体は残っていない。逆に外を歩いている人間よりよっぽど信頼できるわ」
ジェニファーさんが差し出した手を私が取るとゆっくりと私をベットから引き上げてくれた。
「残念だけど、ここにはあなたの服以外は何もなかったわ。……じゃあ、行きましょう」
89 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:07:18 ID:ApPeRrxg
(1-3)
「君が隣の部屋にいた少女だね。ジェニーによれば記憶喪失らしいが、私のことは分かるかね?」
白い髪のスーツを着た中年過ぎぐらいの男性が私に笑顔で話しかけてきた。
「だ、大統領、さん……です」
私は名前が分からなかったが、車の中で一人だけ格好が違うため、私はそう答えた。
「ははは、その様子だと私のことを覚えていなかったようだね。私はジョン・シルバー。現アメリカ合衆国の大統領をさせてもらっている。よろしく……ええと」
「ア、アリスです。ジェニファーさんに、とりあえずの名前を考えてもらいました」
「おお、そうか。よろしく、アリス。次の選挙には我が党に一票頼むよ」
私は差し出された大きな右手を慌てて掴んだ。大統領さんは楽しそうに笑顔で言ったが、握手を終えると苦笑いになりこう続けた。
「もっとも、党も、国も、人類さえも存続できるか分からないがね」
「ご安心を、大統領。私達が絶対にあなたをセーフルームまでお連れします」
「ありがとう、頼りにしているよ、ジェニー」
私の隣のジェニファーさんは大統領さんの言葉に敬礼をした。しかし……この車の中には私と大統領、そしてジェニファーさんと先ほどの男のSP、それと運転中の男のSP。わずかに5人だけしかいないのだ。
あのホテルには私達以外に誰もいなかった。ジェニファーさんによれば、大統領と彼の3人のSPはこのホテルに避難して偶然にも私が居た部屋の隣に入ったらしい。
暫くすると、隣の部屋からなにやら騒がし音がしてきて、ジェニファーさんが見に来てくれたところを私は助けられたらしかった。
「アリス、今私達はニューヨークの郊外にある緊急用施設に向かっている。その理由、君にも教えておこう」
大統領さんが表情を真剣なものに変えて、私にその理由を話し始めた。
「これからいく施設にはある設備がある。一つは隔離シェルター。別名セーフルームと呼んでいる。ここでなら、たとえこの国が水没しても一ヶ月ぐらいなら充分生きていける」
眉間に皺を寄せて大統領さんが続ける。
「更にもう一つ……あるミサイルの発射装置がその部屋にある。そのミサイルとはまる1ヶ月、地球上全てを低酸素状態、人間なら確実に死んでしまうような状態にさせるミサイルだ。唯一安全なのが、セーフルームなんだ」
「……つ、つまりそのセーフルームに残っている人間以外は」
「死ぬだろう。同時に世界中に電子機器を破壊、停止できる小型ミサイルも撃つ。寄生体は人間と基本的には同じ構造をしている。酸素がなければ生きてはいけない。おそらく1ヶ月の低酸素状態で地球もそれなりの被害は受けるはずだが、なんとか持ちこたえられるはずだ」
大統領さんがそれを言い切った瞬間、窓を幕で囲って車内灯をつけただけの車中が突然、大きな轟音と共に揺れだした。
「っ、見つかってしまいました! 一気に駆け抜けますから、捕まっててください!」
運転手のSPが叫ぶ声も、轟音でしばらく馬鹿になった耳ではなんとか聞こえる程度だ。
後部座席にいる2人のSPは車内の幕を破るように開くと、のどかな農村を走るこの車に併走するようにパトカーが何台もいた。
「そこの車止まりなさい! 我々は人間だ!」
パトカーから聞こえる声にジェニファーさんが怒りの声を上げた。
「だったらさっきの轟音はなんなのよ!」
2人のSPは窓を開け、手に持ったマシンガンのような銃をそれらの車に向けて発砲しだした。すぐ隣から聞こえるけたたましい音に私は耳を塞ぐ。
「君は伏せていなさい! 目も瞑って、何も見ちゃいけない!」
そう言いながらも大統領さん自身は拳銃を持って併走するパトカーに向かって発砲をしている。……私もやらなくちゃ。
私は後ろの荷物を漁って大統領と同じような拳銃取り出すと、窓からパトカーに狙いを定め、引き金を絞ぼりきった。
「きゃあああ!」
「ぐあああああああああああああ!」
大きな反動と銃声で私は思わず悲鳴を上げて尻餅を着いたが、どこかから私のものではない叫び声も聞こえた。
起き上がりながら窓の外を見てみると、先ほどのパトカーが全ていなくなっていた。
私は唖然とするジェニファーさんの視線の先を追うと、離れ行く車の後方で大破する何台ものパトカーが見えた。
「……なんという少女だ。よければ私のSPになってくれないかね?」
大統領が額に手をやってそう言うと、小さな笑いが車内に生まれた。
90 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:07:50 ID:ApPeRrxg
1-4)
「大統領、見えました!」
運転手が大きな声でフロントガラスの先に映るその大きな建物を示した。
「なんだか、大きな天文台みたいですね」
「いや、実際そうなんだよ。ここは普段は、天文台として一般公開もしている」
大統領さんはそう説明しながら、近づいてくる天文台を見ながら厳しそうな顔をした。
「誰も……いなければいいんですが」
「どうだろうな。この施設の存在を知っている人物は僅かしかいないが、それでもその機密を知っていてこの車に乗っていない人物は何人もいる」
大統領さんがジェニファーさんの言葉に頭を振った。
「大統領。では、作戦通りに行きますよ」
ジェニファーさんがそう言うと、大統領さんの表情が一気に曇った。やはり、不安なのだろうか?
「……すまない。よろしく頼む」
大統領の言葉に運転席と後部座席に座っていた二人の男のSPが力強く頷いた。
そして車は道を外れたところでゆっくりと停車し、後部座席にいた男のSPが無言でドアを開いた。
「大統領、アリスさん、降りてください。ここから歩きます」
「え? な、なんで私達だけ降りるんですか?」
私の言葉に一斉に皆、目を逸らした。その中でジェニファーさんが小さな声で私に言った。
「彼ら二人には……囮になってもらいます」
「お、囮?」
「このまま正面から突っ込んで、もし待ち伏せされていたらまずいことになる。だから私たちは裏口から侵入する」
ジェニファーさんと大統領さんが暗い表情で私に説明をした。
「大統領、ジェニー、それとお嬢さん、どうかご無事で」
「奴らは俺らが引き付けておきます。手はずどおり、もしいつか私たちがセーフルームに近づいても絶対に開けないで下さい。それは多分、私たちではないと思いますから」
そんな二人とは対照的に、車に残った二人の男のSPの表情には笑顔が浮かんでいた。
「二人とも……よろしく頼む」
大統領さんはそんな二人に向かって敬礼をした。ジェニファーさんもそれに続き、私も流れそうな涙をこらえながらそうした。
すると彼ら二人も真剣な顔で敬礼をし、そして後部座席のドアが閉じられると二人を乗せた車は天文台へと動き出した。
「……行こう。我々は彼らの勇気を無駄にしてはならない」
その車を見て涙を流してしまった私の肩に、大統領の大きな手が優しく載せられた。
「うぅっ、ぐすっ、……はい」
私は涙をブルゾンの袖で乱暴に拭き取ると、ジェニファーさんを先頭に、それに私と大統領が続くように歩き出した。
91 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:08:36 ID:ApPeRrxg
(1-5)
「あの二人、派手にやってくれているな」
目の前の天文台の反対側から、爆音やら銃撃音が絶え間なく聞こえている。聞こえているということは、あの二人はまだ生きているということなのだろう。
「開きました。ここからは一気に駆け抜けます。……準備はいいですか?」
ジェニファーさんが私と大統領さんに向かって確認をした。大統領は足首や手首などを回し、私はスニーカーの紐を結びなおした。
「では、行きます!」
大きなマシンガンを片手に、ジェニファーさんがドアを蹴破って建物に侵入するやいなや、こちらを振り向かずに走り出した。私と大統領もそれに続く。
そこはいきなり道が3つに分かれていたが、ジェニファーさんは迷わずに右に曲がる。それからも何度も通路を曲がったり、部屋を通り抜けたりする。
「くっ……銃声が……」
かなりの距離を走ってからこぼしたジェニファーさんの声で私もいつの間にか銃声も、爆音も消えていることに気付いた。階段も何度か降りたが、決して地下に潜っているから聞こえなくなったわけではないのだろう。
「もうすぐだ。アリス、頑張れ!」
私を心配してくれる大統領も、もう汗だくで走り方も最初に比べるとかなりおかしくなっている。
もちろん、私も例外ではない。先ほどから視界が揺れに揺れて仕方がない。頭も酸欠のために痛み、足だって今にももつれそうだ。
「ん!? あれだ! あのエレベータに乗り込め!」
大統領さんが指をさす先に銀色のドアがあり、先に辿り着いたジェニファーさんが横のパネルを操作している。
「ああ! なんで下の階にエレベータが下りているのよ!?」
ジェニファーさんが表示板を睨みつけて、壁を殴りつけた。表示板は『30』という数字から段々と数を減らしてきている。ここは地下5階、あと25階分を上ってきてもらわないといけない。
「いたぞ!」
しかしその時、背後からそんな叫び声が聞こえて、次の瞬間には銃声も聞こえ出した。
「くっ! ジェニファー、応戦するぞ!」
「はい! アリスさん、こっちに隠れて!」
私とジェニファーさんは通路を挟んで、大統領さんの向かい側の通路の横の壁に背中から張り付き、ジェニファーさんが通路の向こうへと銃撃を開始し、大統領も拳銃を取り出すと同じように発砲し始めた。
その時、私はジェニファーさんが撃ち終わると同時に、彼女の拳銃を手渡し、交代に渡されたマシンガンの弾倉を入れ替え、拳銃を撃ち終わった彼女から拳銃と交代にマシンガンを渡した。
「もう少しです! あと、10階でここに着きます!」
私はジェニファーさんに最後の弾倉を入れ終わったマシンガンを渡しながら叫んだ。
……『10』、『9』、『8』、『7』、『6』。
チーン、という音が一瞬だけ銃声の合間に鳴り、銀色のドアが左右に開いた。
「二人とも乗るんだ! 私がここを食い止める!」
大統領さんが銃撃を続けながらそう叫んだ。そして片手を青いスーツの内側に突っ込むと、こちらに何かを投げてきた。
「それがセーフルームを開ける唯一の鍵だ! 急げ、奴らが来る!」
「大統領、しかし!」
「行け! ジェニファー!」
あんなに優しい顔つきからは想像できないほどの剣幕で叫んだ大統領さんの言葉に押されるように、ジェニファーさんは私の身体を抱え込むようにしてエレベータに飛び込むと、エレベータのドアが静かに閉じられた。
92 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:09:04 ID:ApPeRrxg
(1-6)
銃声が遠いていくなか、ジェニファーさんは何も言わずに私の身体を抱きしめて一層強く抱きしめてこう言った。
「私……大統領を……守れなかった……くっ」
悲しみを噛み締めるようにジェニファーさんが零した。しかし、ゆっくりと私から離れると涙を拭きながらパネルの下を先ほど貰った鍵で開き、何かのケーブルを引き抜いた。
「これで……このエレベータはもう二度と上には昇らない。あとはセーフルームであのボタンを押したあとに動くエレベータが、唯一の地上への出口」
ケーブルを投げ捨て、鍵をパネルから引き抜くとそれを大事そうに握り締めた。
やがてパネルの上部の階数表示が『30』へと変わり、そしてチーンという音ともにエレベータが開かれた。
「待ってたわ。ジェニー」
「なっ!? リリィ?!」
開かれたドアの先で、ジェニファーさんと同じ黒いスーツを着た女性がこちらに拳銃を構えて立っていた。赤毛が混じったショートヘアーに、狼にように鋭い目つきのいかにもSPという女性だった。
「くっ!」
ワンテンポ遅れて、ジェニファーさんが持っていたマシンガンを構えようとそれを持ち上げた。しかし……。
「くあああああ!」
重い一発の銃声と共にジェニファーさんの右腕から血飛沫が上がると、彼女のマシンガンがエレベータの床にがしゃんと落ちた。
「あっと、あなたも動かないでちょうだいね。動いたら、ジェニーの頭に虫食い穴が開くわよ」
私に向かって微笑みながらリリィと呼ばれた女性は釘を刺した。
「さっ、二人ともそこから出てちょうだい。このエレベータは使えないみたいね。まぁ、暫くすれば迎えが来るでしょう」
リリィさんに脅されて私とジェニファーさんはゆっくりとエレベータの外に出た。
「はぁ……これで面白くなりそうね。くっくく……あはははははは!」
私とジェニファーさんがリリィさんに銃を向けられながら、目の前で楽しそうに笑う彼女を見ていた。
しかし突然、ジェニファーさんが握り締めたままの左手を開いてセーフルームの鍵を落とし、それと地面が接触する音が聞こえると同時にリリィさんさんに肩から突っ込んだ。同時に、彼女はもう一つ何か黒いものを地面に落とした。
「っ! アリス、それで彼女を撃って!」
私はジェニファーさんの腰から落とされた黒いもの……彼女の拳銃を持ってリリィさんに構える。
「ぐっ! 待ちなさい!」
ジェニファーさんに馬乗りされているリリィさんが、自らの持っている拳銃をジェニファーさんの唯一のふくよかな部分である胸に向かって突きつけていた。
しかしジェニファーさんは私に向かって叫んだ。臆する表情さえ見せずに。
「撃って、アリス! 撃てぇえええええ!」
93 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:09:40 ID:ApPeRrxg
(1-7)
私はそのジェニファーさんの必死の叫びに、リリィさんに向かって狙いをつけた拳銃の引き金を絞りきっていた。
一発の発砲音にほんのわずかに遅れて、もう一発の銃声が重なった。
リリィさんの額に穴が開き、彼女に馬乗りになっていたジェニファーさんがその横に崩れるように倒れた。黒いスーツの背中から、同系色の穴が開いている。
「ジェニファーさん!」
ジェニファーさんに駆け寄って、私はその顔を持ち上げた。彼女が咳をすると、その口から血が吐き出され、彼女の白くなった顔を赤く染め上げていく。
「ゴホッ! よ、よか、た……じ、実は……この階は、ミサイル、撃っても……すぐ酸素、消えないから……リ、ィ……死なない、とこ、だった……」
「ジェニファーさん! そうだ、セーフルームに治療薬ぐらいは」
「む、り……あ、ても……治せ、ない……しん、ぞう……貫通……してる……」
血を口の端から垂らしながら私の両目から流れ出した涙をジェニファーさんが震える手で拭き取り、ニコリと笑うと擦れた声で言った。
「い、き……て、せ、かい……お、わり……み、と、ど……け……て……」
その言葉を最後に首がカクりと横に垂れた。私の涙が彼女の頬に落ちても、彼女の表情は何一つ変わらなかった。
その時、地面がわずかにゆれ、耳に重い響きが小さく届いた。おそらく、上の階の人たちがこちらに降りてこようとしているのだろう。……ジェニファーさんの遺体をセーフルームに運ぶ余裕はなさそうだ。
私は涙を拭うのもせずに、ただ目を見開いたままのジェニファーさんの両目を閉じると、地面に落ちていた鍵を拾ってエレベータの間逆にある大きい扉へと近づいた。
その右の壁の鍵穴に鍵を差込てゆっくりとまわすと、その大きな扉が軋みながら開かれた。
もう一度耳に届いた轟音に私はせかされるようにその内部の部屋に入ると、点滅とブザーを鳴らしている『CLOSE』と書かれた赤いボタンを押して大きな扉を閉めた。
そして広いとはいえない部屋の奥で今度はブザー音が鳴り同じように点滅をしている部分があった。そこには『ALL CLEAR』と書かれた赤いボタンがあった。
私は迷わずそれを押した。すると、そのボタンの下から薄いガラスに守られた……そう、学校の消火栓の緊急用のボタンのようなそれが出てきた。
深呼吸を一つした後、私はそれを拳で叩き割り、内部のボタンを押した。
間を置かずに建物が大きく揺らぎ始め、私はとても立っていられずにその場に膝を着いてその振動に耐えた。しかし、耐えられないような音が絶えず耳を刺激している。
やがてその揺れと音が収まると、私は近くにあったいくつものテレビに近づいた。どうやらこの建物内の監視映像らしかった。
そこには建物内の人間が泡を吹きつつ倒れていく様子が映し出されていた。私は思わず目を背けてそのテレビから遠ざかった。
壁に寄りかかって誰もいない薄暗い部屋の中で一人、私は膝を抱えて暗闇に視界を投じた。もう何も……何も考えたくはなかった。
94 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:13:23 ID:ApPeRrxg
(1-8)
私は壁の穴から勝手に出てきたカンパンと水を口に運んでいた。決して美味しくはない。
水を口に含んで私は自分を罵った。あんなに人が死んでいく様を見ながら、一日もしてしまえばお腹がすいてしまっていた自分を。
それももう三日目。最初の日は映像を鮮明に思い出してしまい、食べたものをすぐに吐いてしまったものだが、今では淡々と食べられるようになっていた。
しっかりとカンパンを水で押し込んでから、私はちらりと監視映像を見た。そこに見えるのは誰もいない建物の内部か、動かなくなった人間の山。
その映像を見た私は、思う。一体私は何のために生きているのかと。私の人生が仮に80年だとして、おそらく私が10代だと考えれば、残りの60年余りを一体どうやって一人で消化すればいいのか、と。
自殺しようと考えたこともあった。しかし、ジェニファーさんが命懸けで私を守ってくれたのだ。それを無駄にすることはしたくはない。……でも、私に何をどうしろと言うのだろうか。
そんな事を考えていたとき、私の下腹部がズキズキと痛み出した。くぅうう……消化器官が調子悪いのだろうか?
しかし、その痛みが段々と別のものに代わっていく……。えっ……なんで? なんで……気持ち良いんだろう?
それはまるで……自慰行為をしたときの快感に似ていた。そしてそれは私の官能を徐々に高ぶらせていく。
「はぁ、はぁ、くぅぅうあああ! な、なんでぇ? はぁあああ、だめ、だめ! な、何かでちゃぅううううう!」
愛液が出て絶頂に達しそうな感覚が私を襲う。何故? 私はそんな興奮するようなものなんてみてないのに……。
しかし、私の膣から今にも愛液が外の空気を吸いたくてたまらない、とでも言うかのように私の絶頂を誘っている。
「きゃあああああ、だめぇえええええええええ!」
私はそう言いながらも膣から液体を放出させた。しかしそれだけでは私の官能は納まらず、膣の奥から何かが這い出てこようとしている。
「ぃゃあああああ、な、なにか、でてきちゃぅぅうううううう!」
そしてその一部が私の膣から頭を出した。それはまるで暗闇が私の膣から生まれてくるかのようなほど真っ黒でぬるりとした液体だった。
「はぁ、こ、すれてるぅう、くふぁああああ。そ、こぁああああらめぇえええええ!」
私の感じやすい部分をわざと通っているかのように刺激したまま、私の膣からそれは絶え間なく這い出てくる。
「ひぃ、ひぃ、ふぅううう、くぅん! ……ひぃ、ひぃ」
呼吸をラマーズ法のようにすると、その物体が私の中から出てくるのも大分楽になってくる。痛いわけではないが、絶え間なく快感が襲ってくると息をするのさえも忘れてしまう。
「ひぃああ、いぁぁあああ! ひぃ、ふぁああああああああああああ!」
たっぷり10分ほどは掛かっただろうか。私から生まれた闇の水溜りは大きな水溜りぐらいの大きさで私の膣の前に溜まっていた。
95 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:13:52 ID:ApPeRrxg
(1-9)
それが呼吸さえもが疲労する行為に感じるほど疲れ切った私の目の前で、地震で揺れる液体のように揺れ動いている。
そう、思った次の瞬間、いきなりその水溜りが噴水の水のように宙に向かって立ち上り始めたかと思うと、人の形を作り始めたのだ。
長い髪が毛の一本一本まで生え、その下に輪郭が出来ていき、目と鼻と口、耳などがそこに加わっていく。
細い首が途中で生まれ、胸の部分で大きな膨らみが生まれる。そこからくびれる様におなかが出来ていき、恥部の割れ目が出来ると水が二つに分かれていく。
そして長くて細い華奢な足が完成すると同時に、その足下にあった水溜りは既になくなっていて、目の前には黒いマネキンのような人影が出来ていた。
次の瞬間、その身体がまるで光を放つかのように一瞬で彩色されていった。長い茶色い髪、童顔だといわれる顔、その割に成長していると笑われる胸、そしていくら食べても太らないと自慢のお腹……どれも見覚えがあるものだった。
「な、んで……私が……」
「ありがとう、私。私を産んでくれて」
私が産んだ私はそう言って、ニヤリと不敵に笑うと、彼女の出産の疲れで動けないでいる私に馬乗りになってきた。やっと終わらない快感から解き放たれた濡れた膣が、同じような彼女のそれと重なり、私に新しい快感を与え始めた。
「ねぇ、何か思い出さない? ふふっ、私はもう思い出したよ」
そう言って私の上に乗っかっている私が、彼女の下にいる私に向かってそう言ってきた。確かに、この光景はいつか見たことがあった。
「その顔だと思い出してない、って顔ね。じゃあ、こう言えば思い出すかしら」
私に乗っかる私が少しだけ考えたような仕草をして、こう言った。
「えっと……大丈夫だよ、レラ……お姉ちゃんに全てまかせて……」
その言葉を聞いた瞬間、私の頭の中に情報の津波が襲ってきた。
96 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:15:11 ID:ApPeRrxg
(1-10)
「レラ~、お待たせ~」
こんな状況なのにやけに間延びした声で、リムお姉ちゃんがバスルームに入ってきた。
「お姉ちゃん、大丈夫? やけにトイレ長かったみたいだけど」
「あ、うん。ほら、食事のあとにすぐ逃げ出したからトイレ行く暇なくてさぁ、いやぁ快便だったわ」
そう言ってお姉ちゃんは私の身体の背中に回ると、不意に抱きついてきたのだ。
「わ! な、なに?! どうしたの、お姉ちゃん!?」
「レラ、怖かった。レラを助けたとき、私本当はあなたを見捨てようか一瞬だけ迷っちゃった……」
「あ、当たり前だよ! あんなに人がいっぱい襲ってきたんだから! それに……お姉ちゃんは、結局私を助けてくれた。襲ってきた男の人をぶん殴って、さ」
私は胸の辺りに巻かれたお姉ちゃんの腕を抱きしめた。今浴びているシャワーのお湯より優しくて温かいぬくもりが伝わってくる。
「ふふ……じゃあ、私のこと大好き?」
「もちろん、お姉ちゃん」
私がそう言うと、後ろから私の頬にキスをし、そしてその次の瞬間、信じられない力で私を押し倒したのだ。
「きゃああ! い、痛ったぁ~……お、お姉ちゃん大丈……」
私の上に乗りかかるお姉ちゃんの顔は……何故かとても楽しそうだった。
「ごめんね。でも、これからは優しくやってあげるから……じゃあ、ちょっと濡らそうか」
そう言うとお姉ちゃんが私の視界の下の方へとフェードアウトしていった。
それを私が上体を起こして追おうとした瞬間、私の……恥ずかしい部分をぬめりとした感触が襲った。
「ひゃあ! お、お姉ちゃん?!」
私は思わず手でその部分を覆おうとしたが、お姉ちゃんの手が私の手を抑えた。
「んんっ、大丈夫だよ、レラ……お姉ちゃんに全てまかせて……」
そう言って私の秘所を一定の感覚で優しく舐めてくる。私は足を閉じようとするが、その刺激が襲ってくるたびに足から力が抜けてそれすらままならない。
「あんっ! ひぃっ! お、お姉ちゃん、んあっ! や、めてぇ……」
「あっ、レラ、あなたの蜜が出てきたよ。んんっ、か~んろかんろ、あはっ」
「やぁあぁああ、おねえちゃんにぃいいいいい、すわえてるぅううう!」
秘所の中に姉の舌が段々と侵入して、私の入り口を嘗め回してくる。私は思わずその刺激に身体を浮き上がらせてしまう。
「んんっ、ふぅ。もうそろそろ大丈夫でしょ。これで痛くならないわ」
そしてさっきの映像を逆回しするように、私の視界の下から姉がフェードインしてくる。自分の口をぺろりと嘗め回しながら。
「はぁ、はぁ……おねえちゃん、いったいどうして?」
「ふふ、大丈夫。ちょっと待ってね。……ぁ、ふぁっ、でぇ、でてきたぁあ」
お姉ちゃんが火照った顔で自身の秘所をいじっている。その顔は悦にいったものだ。
「んぁあああああっ!」
そして大きく身体を仰け反らせたかと思うと、黒くて長い触手のようなものをそこから出してきたのだ。
「きゃぁあああああ!」
「ふぁぁああ、もう我慢できない。いくねぇ、レラ」
97 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:16:49 ID:ApPeRrxg
(1-11)★ちょっとグロいかも
悲鳴を上げる私に赤く染まった顔で微笑み掛けると、その黒い触手が私の視界から消え去り、そして私の恥部に何かの異物感を感じた。それが何なのかなど、見なくても分かっている。
「ぁああぁあああ! はいってぇえええ、こないでぇえええええええ!」
そんな叫び声を私が上げても無駄だった。その触手は私への遠慮などまったく気にもせずに私の奥へと侵入してくる。
「きゃはぁあああん! レラのなかぁああ、あついぃいいいいいいい!」
「らめぇえええええ! ぬいてぇえええええええ、おねえちゃんんんんんぁああああああああ!」
私はお姉ちゃんのよがる姿に必死に助けを求める。しかしお姉ちゃんは私の入り口と自身の入り口を重ねるようにして小刻みに前後している。まるで男の人がしてるみたいに。
やがて前かがみになってたお姉ちゃんの胸と、私の胸が重なる。同じぐらいの大きさの胸がお互いをもみ合って、互いに刺激を送り送られている。
「はぁあん、れらぁああ、そんな顔してたらぁあ、わたしもっといじめちゃぅうううう!」
お姉ちゃんがそう言うと同時に、私の中を蹂躙している触手の速度が一気に上がる。それに対する悲鳴を上げようとしたときには、姉に唇を奪われていた。
「んんっ! んんんんんっ! んんんんんんんんんんんんんんん!」
私は舌を絡ませようとしてくるお姉ちゃんをもう受け入れていた。それは間近にあるお姉ちゃんの顔が、いかにも気持よさそうにしていたからだ。
おそらくそれは私とて同じことだろう。もう私の中は、触手を拒むどころかそれを楽しんでいる。それを私のものにしてしまいたいぐらいに。
「んぁあああ、いくよぉぉおおおおお、うけとってぇ、れらぁああああああああああ!」
「ふぁあああああああああんっ、なにかぁあああああくるぅううううううううううう!」
私は揺れ動く視界で、それが私の中に入ってくる瞬間を見た。お姉ちゃんの女の部分が大きく私の気持いい部分から離れたと思ったら、お姉ちゃんの中から出ていた触手がそこから離れて私の中に消えていった。
「んぁあああああああ、わたしのなかでぇええええ、おねえちゃんのがうごくぅううううううう!」
「はぁはぁ、あは、だいじょうぶ、もうすぐわたしとおなじになれるからぁ……あははははは」
私とそっくりな顔のお姉ちゃんが楽しそうに笑っている。双子の私の姉が、妹の私を犯して楽しそうに笑っている。
だから私も同じように笑った。だって私達は双子なんだから、片方が笑ったら同じように笑わなきゃ、それこそおかしいことだ。
そうして大声で笑っていたときだった。突如、姉は頭から私の左側へと思い切り倒れた。そしてバスルームに反響するように銃声が響いている。
私が左を見ると、飛び散った脳漿や頭部の皮膚のカケラがバスルームの壁にべったりと赤黒い色を塗っている。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
私はそれを見て発狂した。怒りと恐怖と、悲しみと……いや、感情の全てを爆発させるように叫んでいた。
叫びながら私の頭がボーッとしてきた。かすんだ視界の中で金髪の女性が私に何かを話しかけている。
しかし、その声は私の耳に届くことはなく、私はそのまま暗闇へと引きずりこまれた。
98 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:17:22 ID:ApPeRrxg
(1-12)
「うぁ……あぁ……」
リムお姉ちゃんと私は、双子の姉妹だった。性格はちょっと違っていたけど……。
私が着ているこの服も……これは着替えなんかじゃない。リムお姉ちゃんがあの時着ていた服だ。綺麗に畳まれていたのは、それを一度も着ていなかったからじゃない。お姉ちゃんが自分の服をしっかりと畳んだからだ……。
「そ……んな……じゃあ……ジェニファーさんが殺したのは……」
「双子のリム姉さんでしょうね。最も、寄生体のリム姉さんだったみたいだけど。ほら、あの時トイレ長かったから、多分あのときに産んだんだよ。それで食べられちゃったんだろうね。姉さんは寄生体の自分に。そして私の養分となったのね」
自分の身体を抱きしめて微笑みながら目を瞑る寄生体の私。
「でも、まさかこんなことになるとはね。もう、私の仲間はみんな死んじゃったでしょうね。もちろん、あなたの仲間もね……ふふっ、怖い? これから一ヶ月は私と二人きりでここで過ごすのよ?」
「……った。」
私は涙と言葉を同時に零した。私に乗りかかっている寄生体の私が首をかしげて聞き返してくる。
「え? なんて言ったのかしら?」
「よかったぁ……よかった……わたし、もうずっと……ひとりぼっちなんじゃないかって……ううっ」
私は寄生体の私の腕を引っ張って、無理矢理に抱きしめた。
「あらあら、このままだと、私はあなたを溶かしちゃうわよ? 知ってるでしょ? 寄生体が宿主から出たあと、こうやって宿主を食べるのは?」
「それでもいい。一人ぼっちで生きていくより……ずっとまし」
私はそう言って一層強く、私と同じ身体を抱きしめる。同じ大きさの胸が押し合い、私は同じ私の顔に向かって唇を近づけた。
そのまま彼女の口の中に私の舌を入れようとするが、彼女はゆっくりと私から離れて口を人差し指で拭うとこう言った。
「ふふふ、う~そ。そんなことしない。あなたしか人間がいなくなったならもう寄生体を増やす必要もないし……なによりあなた、可愛い顔してるから」
優しく微笑んで私の唇についばむように軽く触れ、そしてもう一度微笑んでから再度唇を重ね合わせてきた。私はすかさず彼女の口の中に自分の舌を滑り込ませる。彼女もそれを優しく受け入れてくれた。
「ああんっ、んんっんっ、んんん~」
「んっ、んんんっ」
私には彼女の身体、彼女の動きが手に取るように分かった。だから、私が喜ぶように彼女の口内を蹂躙していく。
相手の歯茎を舐めまわし、そして舌を突きあうようにしてから、滑りあうようにお互い絡ませあう。
目の前にあるのは私と同じ顔なのに……それなのに、その顔はとても綺麗で可愛かった。鏡で自分を見ていたときはそんなこと感じないのに……私、おかしくなってるのかな……。
「んん~っ……ねぇ、あなたはジェニファーに新しい名前貰ったでしょ? だから私がレラ。あなたがアリス。んふ、これでいいでしょ?」
「いい、それでいいからぁ、もっとぉきもちよぉくしてぇ……れらぁ、おねがぃ……」
「ふふ、分かった。アリスのこと、もっと可愛がってあげる……」
同じ顔なのに、私には到底出せないような笑顔をレラは私に向けてきた。
堪らなくなって私はレラの身体を強引に引き寄せると、その豊満な胸の可愛らしい先っぽを咥えた。するとレラはお人形のような手で私の頭を優しく撫でてくれる。
「いいよぉ、ありすぅ。あぅう……」
「んっあ、えへへ……れらぁのちくびが、きゅんってたってるぅ……かわぃい……」
99 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:19:02 ID:ApPeRrxg
(1-13)
私の唾液で濡れたレラの胸の先っぽが、まるで赤ちゃんが二本足でゆっくりと立ち上がろうとするみたいに大きくなっていく。
それを再び咥えて、舌で転がすように舐めながら、時折アマガミをしてそのたびに反応するレラの顔を私は楽しんでいた。
「うあぁぁぁ、きもちぃぃ……くあっ!? そ、んなぁかまないでぇ……そんなことぉされたらぁ……おかしくなっちゃうよぉぉ……」
レラの口からそんな声が出ていても、彼女は自ら私の顔に胸をくっつけようとしてきている……。まったくぅ……正直じゃないんだから。
天邪鬼な彼女をいさめるように、柔らかい胸をもみながら、その先端を断続的にアマガミする。
「くっ、ひぃ、だぁ、めぇ、あぁ、たぁ、まぁ、がぁ、おぉ、かぁ、しぃ、くぅ、なぁ、るぅ!」
私がアマガミするたびにレラは言葉を切った。何とも可愛らしいその反応に私はさらにアマガミを続けてあげる。
「あああああんっ、れちゃぅううううううううううううう!」
レラが太もも辺りについていた自分の秘所を私の同じ部分にあてがうと、その部分が密着するように身体を抱きしめて、大きな嬌声を上げて達した。
彼女の秘所から出た温かいお汁がそのまま私の中にゆっくりと垂れながら入ってきた。
顔をずらしてその部分を見てみると、それはどうやら何の変哲もない愛液のようだった。やっぱり寄生体でも人間なんだ、と私はその時改めて思った。
「くはぁ、はぁ……ごめん……わたしだけ、いっちゃったぁ……こんどは、アリスのば~ん」
口で息をしながら私の上からどいたレラは、私を起き上がらせると、先ほどとそれぞれの体位を入れ替わるようにレラが下になり、手を引っ張って私を自分の上にのせてくれた。
そしてゆっくりと私の胸にレラの顔が埋まっていく。私は先ほどレラがやってくれたように頭を優しく撫でてあげる。
やがて彼女は顔を上げると、私のようにいきなり乳首を咥えるようなことはせずに、優しい手つきで私の胸を揉みほぐしてきた。
「はぁあ、これぇええ、きもちぃいい……」
そんな彼女の手さばきは見事なるものだった。私は先ほど咥えながらただ揉みくちゃに彼女の胸をいじるだけだったが、レラのは力加減や揉み方を絶えず変化させて私を飽きさせない。
「あぁ……そんなかおしてるといじめたくなっちゃうな……」
レラはそう言って再び私の胸の顔を近づけたと思いきや、突然私の胸に短く鋭い痛みが駆け抜けた。
「ひぁああっ!」
あまりの気持ちよさで先ほどまでぼやけていた頭が一瞬で覚醒される。レラはそんな私の様子に不敵に笑っていた。
「んふふ……さっきのわたしのきもちわかったぁ? からだがおなじだから、よぉくわかるでしょ?」
言われてみると、痛みと反比例するようにじわじわと快感が胸から伝わってきた。こんな……感じだったんだ……。
「も、もしかして……おこってる、の?」
「ふふ、ぎゃ~く。きもちよかったから、アリスにもやってあげようとおもって」
「あぁ、ありがと……うれしい」
私の言葉にレラはにっこりと笑うと、私の乳首を優しく咥えた。彼女の舌で私の乳首は踊らされている。
「ふぁああ、すごぉぉいいぃぃぃ……あんっ!」
優しい刺激に身を任せようとすると、突然のアマガミが乱入してそれを許さない。
100 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:19:43 ID:ApPeRrxg
(1-14)
「そ、そんなぁつよく、しないでぇえ……」
「んぁっ、わたしにもこれぐらいのつよさでやってたんだよ、アリスはぁ」
頬を膨らまして不満そうな表情でレラは言った。こ、こんなつよくしてたんだ、わたし……。
「でもだいじょうぶ……なれてきたらそれもきもちよくなるから……は~むっ」
レラが再び私の乳首を咥えて優しい刺激と鋭い刺激を交互に送ってくる。
「んっ、ふぁっ! ああっ、やんっ! そ、んあ! こう、ごに! しな、いでぇ!」
私はそのアメとムチの刺激に身をよじらせた。私は鋭い刺激を断続的に送っていたのに、彼女はそれに優しい刺激を混ぜることによって、それぞれの刺激を高めあっている。
「ひいぁっ! いっ、くぅううううううううううううう!」
ついに耐え切れなくなって私がそう叫ぶと、レラは先ほどのように素早く私の秘所と彼女の秘所をぴったりとつけてきた。それが更に刺激を与えて私は、いってしまった。
「やぁあああああああああんっ、でてるぅうううううううう!」
「ふぁあああああああああんっ、きてるぅうううううううう!」
私から出た愛液が、今度はレラの中に浸入していく。レラがまるでそれを一滴も逃すまいとするように身体を強く抱きしめてきた。
「あっはぁぁ、わたしのとぉ、アリスのがぁまざってはいってきてるうぅ……じゃあこんどはぁ、いっしょにいこっかぁ」
レラが今度は何をしてくれるのかと楽しみにしながら、私は彼女の上を降りて横に座った。
するとレラが上体を起こすと、足をM字に開いて私に自分のおま○こを見えるような位置に座ると、右手がゆっくりとその中へと潜り込んで行った。
「ひぃああああっ、これだけぇいっちゃいそう……くぅはあぁぁん……」
ぐちゃぐちゃに濡れたおま○こからいやらしい水音を鳴らしながら、快感に身をよじるレラに私は見入っていた。
「んはぁ、みぃつけぇた。みてて、ねぇ……いくよぉ……んはぁああああああああああああ!」
右手が完全に彼女の中に消えそうになったとき、レラはそう言って右手を一息に引き抜いた。
その手には……見覚えのある黒い触手が握られていた。
「あぁ、それはぁおねぇちゃんが、きせいしてくれたときのだぁ」
「はぁはぁはぁ……これはわたしのからだのいちぶだから、きせいはできないんだけど、これでぇいっしょに、いこっ?」
レラが両手を広げて私に微笑み掛ける。私はもちろん迷わずにその胸に飛び込む。
「じゃあ、ゆっくりときてぇ……これをぉありすのなかにぃ、いれてあげてぇ」
101 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/30(日) 23:20:06 ID:ApPeRrxg
(1-15)
右手で触手を固定して私への侵入を待つレラを、私は両手を彼女の首に、両足を彼女の腰に巻きつけるように抱いて、私への入り口をその触手のまるっこいさきっぽにあてがった。
「ふあぁぁぁ……もうがまんできないぃい! はやくきてぇえええ!」
「うん、いっくよぉ……くっ、ふぁあああああああああ!」
「ああああああああああああああんっ!」
私は一息に腰を下ろしきった。濡れた私の中にすっぽりとレラの触手が入ってきた。とてつもない快感の嵐が頭を一気に真っ白にしてしまう。
「つつまれてるぅうう! アリスのあったかいなかにぃ、わたしのがぁつつまれてるよぉぉぉおおお!」
「きゃぅううううううう! えへへ……レラのぉ、たべちゃったああぁぁぁ……」
身体の中でピクピクとレラのものが痙攣している。同じようにレラ自身も虚ろな目で挿入の快感に浸っているようだった。
私はその無防備な唇を奪い、そのままゆっくりと子宮近くまで侵入している触手を抜いていく。それでも彼女の触手は筒にでも包まれているように元気に起きている。
「んんんんんんっ! ぷはぁ、やだぁ! ぬかないでぇええ!」
レラが私の身体を抱きしめて、私の行為を止めようとする。その子供のように必死にすがる顔がまた可愛らしい。
私は触手が抜ける直前で止まると、安心したような顔をしたレラに向かって彼女がするような不適な笑みを浮かべると、再び一気に腰を下ろした。
「ぁああああああああああんっ!」
「はぁあああああああああんっ!」
私は再び侵入された快感に、レラは再び挿入した快感に甘い嬌声を二人揃って合唱した。
しかし私の動きはそれで一段落はしない。お互いの太ももが重なったと同時にまた一気に腰を浮かせて触手を抜いていく。
「ひぃあああああああああああ!?」
解き放たれていく触手の快感にレラが声を上げたと同時に、一気に腰を下ろして再び彼女の触手を下の口で食べすすんでいく。
「んぁああああああああああああ!」
それを素早く繰り返して私はレラを快感の頂点へと誘っていく……なんて思いながら、結局は自分の快感を貪るために腰を動かしているのだけれど、ね。
「きゃはぁんっ! ふぁあぁ! くぅうううう!」
「あああああんっ! らぁあああ! めぇえええ! ありすぅううううう、いくぅうううううううう!」
「きてぇええええええ! れらぁああああああああああ!」
レラの触手が私の腰の動き以上に素早く動き始め、私も快感の頂点が目の前に訪れた。
「いっくぅうううううううううう! ふぁあああぁあああああああああああ!」
「きゃああああああああああああ! あっつぃいいいいいいいいいいいいい!」
私の中にレラの愛液が触手を通して直接注ぎ込まれる。同時に触手は私が出す愛液は吸っているようで、私は暫く達したあともその快感に身をよがらせることになった。
「ありがと……おいしかったよぉ、ありすのぉ……」
「はぁはぁ……こちらこそ……れらぁ……もっと、もっとあなたのにおい、わたしにつけてぇ」
レラの胸の中に顔を埋めて私は懇願した。
「……こわいんだ……わかるよ……わたしもおなじ……」
その言葉に私は顔を胸から離して彼女の顔を見た。彼女はニコリと微笑んで続ける。
「だぁいじょうぶ……もうはなれない……ううん、はなれなれない」
私の髪を撫でつけ、そのまま私の首に顔を近づけると優しく舐め始めた。私もそれを真似て彼女の首筋を舐めつける。
「これで……もうだいじょうぶ……アリスにわたしのにおいがついたよぉ……」
「うん……レラにもわたしのにおい、ついたぁ……」
二人して顔を見合わせると、ニコリと笑って再び交わりを再開した。
(終)
(ゆうと私 Another)
33 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:42:31 ID:fJEpl7/7
……素晴らしいアスキーアートまで書かれた32様までの流れを無駄にしてしまっていいのか迷ったのですが……申し訳ありません。あまり時間がないので失礼します。
こんばんは。前回のスレッドの終盤にて、無駄に長い駄作を投下した者です。
スレッド利用者の皆様にはご迷惑をお掛けいたしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
あの後、私は一昨日まで旅行に出ておりましたが、携帯電話から皆様のご感想をありがとう読ませていただいておりました。
いただいた感想の中で、お気づきになられていた方もいたようですが、確かに別な終わり方をいくつか考えていました。
その中で、最初に考え出したものを、先日投下させていただいた次第です。
しかし、その感想で「感動した」という感想を貰ったのですが……正直、申し訳ないことを、と反省しております。
それはこのスレッドが培ってきた「雰囲気」というものを、ぶち壊してしまったような後ろめたさがあったからです。
なのでそれを償う……という言い方はあまりにこじ付けですが、もう一つ考えていたものを昨日書き上げました。
それを投下させてもらってもよろしいでしょうか?
……と聞いてしまえば、前回の投下の際に掛けてしまったご迷惑を再びお掛けすることになります。
なので、先に謝らせて頂きます。
お目を汚すような駄作を長々と勝手に投下します。本当に申し訳ありません。
一応、前回の設定を無理矢理に纏めたものも投下させていただきます。
長々としている本編からお分かりいただけると思いますが、纏め下手なためほとんど意味不明であるとは思いますが……。
もし、ご興味のある方はご覧下さい。
また、これから投下する物語は【ストーリー説明】にある
****************
の部分まではまったく同じストーリー展開なので、レス数を節約のためにも割愛させていただきます。ご了承下さい。
そこからは別のストーリーとなりますが、前回の話の設定のせいで矛盾している部分も多々ありますが、そちらもご了承下さい。
長々と申し訳ありませんでした。
では、これからまず、設定を投下させていただきます。
お時間有り余っているときにでも読んでいただけたら幸いです。
では、失礼します。
34 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:43:36 ID:fJEpl7/7
【ストーリー説明】
この地球に寄生体として舞い降りた私は、この3日間で寄生もせずに人間という生き物に絶望していた。
私がこのまま寄生せずに生きられるのはあと4日、なんとか理想に一番近い宿主を探さなければ。
しかし、その4日目の探索も無駄足に終わろうとしていた。そんな時、一人の少女が私を拉致した。
彼女の名前は「さえきかおる」と言い、自ら「ゆう」という愛称をつけていた。
そんな彼女は15歳の頃ほとんど捨てられるような形で親から離され、その後好きだった男友達の策略で集団に強姦されていた。
私はそんな境遇の彼女に「なんで?」と思わず聞いてしまう。何故なら、なぜそんな酷いことばかりに彼女が合わなければならないのか納得いかなかったからだ。
それを聞いた彼女は「私にも分からないよ!」と怒りを露にした。そう、誰よりも彼女自身がその原因を知りたかったのだ。
あまりに馬鹿なことを聞いてしまった私は彼女に謝り、そしてゆうは私を優しく抱きしめてくれた。
そして彼女は私に自らの本名をくれた。私がうまれて始めて寄生をしたのは、彼女の本名だった。
それから2日経った6日目。ゆうが玄関を元気よく飛び出して行った。……見事に鍵を掛け忘れて。
*************
私はゆうが鍵を忘れていることも考えて、その鍵は閉めずに開けておき、私はこの身体で最後となる見聞に出掛けた。
この日の夜、ゆうが信頼している仕事先の「オーナー」をという人物を「食べ」、これからは彼女に擬態して、ゆうに会うということを決めていた。
はじめは寄生対象として見ていたゆうに、私は寄生する事も躊躇するぐらいに好きになっていたから。
しかしゆうは夜遅くになっても帰って来ない。私は玄関の鍵を開けたまま、彼女が帰ってくることをひたすら待った。
そして帰ってきたゆうは、突然暴れだして部屋をメチャクチャにしてしまった。
今日のゆうはオーナーの珍しき頼み事で、開店後の店内でも仕事を手伝っていた。そこに、酔った男が乱入し、ゆうを襲おうとしたのだ。
その男が言っていたのは「オーナーの言う通りだ」と言う言葉。ゆうはもう誰も信じられないと言った。
だから私はゆうに寄生して一緒になった。
ゆうに寄生した私が向かったのは、オーナーのお店。
そこから出てきた従業員のあやかを「食べ」、彼女に擬態をすると、私はオーナーを撲殺した。
それから2週間経ち、一つの宿主の身体に合計2週間以上とどまってしまった私と、宿主のゆうの身体が腐敗を始め、私はそのままゆうと一緒に天国へと旅立った。
【寄生体の能力】
・宿主に寄生して、自らの子供(寄生体)を産ませる能力と宿主の記憶を得る能力。
→宿主がいない状態で生きていられるのは7日間のみ。一度寄生した後は、本体だけでの活動はほぼ不可能。
→最終使命は、全人類への寄生。
→一人の宿主に寄生できるのは合計で2週間。
・人間を溶解して「食べる」ことによって身体の構成と、宿主の記憶を得る能力。
・その情報を使って、宿主の身体を変化させる能力。
【登場人物】
ゆう(本名:さえき かおる)
両親が離婚し、母方に引き取られたが、母親の再婚の際にお腹にいた子供のために、中学卒業と同時に一人暮らしを始めた。
それから1年は仕送りを送られていたが、その後打ち切られ、母親と連絡もつかなくなった。
なんとか生活費を稼ぐため、中学時代の好きだった男友達の紹介で仕事を見つけたが、そこで強姦をされてしまう。
以来、男が大嫌いなったが、なんとか昼間のキャバクラで掃除などをする仕事を見つけられ、現在に至る。
オーナー(本名:?)
ゆうが働くキャバクラの若干24歳の若き女オーナー。
以上、前回までの設定
35 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:46:31 ID:fJEpl7/7
(2-1) (前回の1-18から派生)
「じゃあ気をつけて人捜ししてきてね。明日は土曜日で休みだから一緒に探してあげるからね」
「うん、ありがとう。ゆうも気をつけてね」
「りょーかいしました! 行ってきま~す!」
そしてゆうは元気よく家の外へと飛び出して行った。
「行ってらっしゃ~い」
……見事に家の鍵を閉め忘れていった。
「さすがのゆうも……家の鍵ぐらい、持ってってるよね?」
心配になったが、ゆうだって一人暮らしの経験は長いのだ。幾らなんでもそれぐらいは忘れまい。
私はドアの鍵を内側から閉めて、一応元栓などがしっかりと閉まっているかを確認すると、この身体での最後の見聞のために少しだけ窓を開けると、そこから外の世界へと飛び出した。
……時計を見れば既に10時を回っている。しかし、この狭い部屋にゆうはまだ帰ってこない。
私が見聞を終えて夕方に帰ってくると、ゆうから電話があり今日は少しだけ遅くなるとのことだった。
それは少しだけ私の不安感を駆り立てたが、それでもあのお店のオーナーなら信頼できるだろうと私は信じて、ひたすらゆうの帰りを待った。
でも……それにしても遅くないだろうか。私はたまらずに窓を開けて身を乗り出し、地上3階からの階下の暗闇に目を凝らした。しかし、やはりゆうの姿は無い。
その時だった。玄関のドアからまるでドア自体が壊されようとしているかのような荒々しい音が聞こえたのは。
36 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:47:42 ID:fJEpl7/7
「開けて! 開けてよ! ここを、開けてぇええええええええ!」
そんな声に私はすぐに玄関に近づいて、ドアに張り付くと身体を広げでその一部分からの視界で覗き穴を覗いた。そこには髪を振り乱して、必死な形相でドアを叩き続けるゆうがいた。
私がすぐさまドアの鍵を開くと、間髪居れずにドアが開かれ、そして素早く閉じられた。それと同時にゆうが荒々しい息を整えることもせずに私の身体の上からドアの鍵と、そしてドアチェーンを閉めた。
「ゆう、大丈夫!? ごめんなさい、私が鍵なんてしてしまったから」
私はそう言いながらゆうの視界に入るように、彼女の左脇の靴箱の上に移動した。しかし、彼女は肩で息をしながら俯いてしまっている。
そんなゆうに私がもう一回声を掛けようとした瞬間、変化が起きた。
「あああああああああああああああああああ!」
まるで獣のような咆哮でゆうは私の位置と逆にあった電話機を、その電話台ごと蹴り飛ばした。
そして靴のまま部屋に上がり込むと、テーブルを蹴り飛ばして、持っていたバックも私が開けたままの窓から外に投げようとした。
その時だった。まるで雰囲気に似合わない電子音がそのバックから聞こえた。
「あああああああああ…………」
叫び続けていたゆうの行動が止まり、そして彼女はバックから携帯電話機を取り出した。小さなぬいぐるみが携帯電話機の振動と共に点滅をしている。
ゆうは荒い息をしながらそれを、電子音を奏で続けるそれを睨むように見ていたが、やがて意を決したようにボタンを押して音楽を消すと、ゆっくりとそれを耳に当てた。
『ゆうちゃん! ゆうちゃんね!? 大丈夫!? 怪我はしてない!?』
私はゆうの近くの箪笥に移動して、携帯電話機から発せられる聞き覚えのある声を聞いた。これは……オーナー?
ゆうの顔を見ると、怒りを噛み締めるように歯を食いしばり、携帯電話機を握りつぶせそうなほどの力で持っていた。
「……ずっと……ずっと最初から……こうするつもりだったんですね?」
『ごめんなさい、ゆうちゃん! でも、違うの! 私はあなたを』
「うるさい! ……私の事情知ってるのに……あなたはそれを」
『ごめんなさい! 本当にごめんなさい! ゆうちゃん、ごめんなさい!』
携帯電話機から聞こえるオーナーの声は大きな声なのに、なぜか弱々しさを持っていた。
しかしオーナーの言葉はゆうの怒りを一層強くさせてしまった。
ゆうは携帯電話機を持っていない右手をいきなり振り上げると、壁に掛かっていた鏡の中心に小指の方から拳をたたきつけた。亀裂がそこから四方八方へと広がっていく。
「……聞きたくない。……あなたの嘘の言葉じゃ、私の傷は絶対に癒せない!」
『っ! ……そうよね。でも、私が死んであなたが人を、せめて女の子だけでもまだ信じてくれるなら、私はすぐにそうする』
「……」
ゆうはそのオーナーの言葉を聞いて目をそれまでより少しだけ大きく見開いた。
『ゆうちゃん。……多分、あなたがこの電話に出てくれたのはまだ本当にわずか、私を信じてくれていたからだと思うの。だから、何の解決にも……いいえ、あなたはもっと怒るかもしれないけど、ちょっとだけでも私の話を聞いて欲しい』
「……」
ゆうは迷うように視線を泳がしている。それはゆうが彼女自身を取り巻いてきた不安と、今彼女に差し出されている希望が戦っているからだろう。
私はゆうの右側の肩に飛びついて、携帯電話機を当てている耳とは逆の耳に身体を近づけてこう言った。
「もし、あなたをもう一度でも騙そうとしたら私が食べる。彼女の中に入り込んで、ぐちゃぐちゃに溶かし尽くす」
そんな私の言葉にゆうがこちらを向いた。任せとけ、と言うように私は液体の身体を震わす。ゆうも私の食事を何度も世話しているから、それがけして誇張的な表現ではないことを理解しているはずだ。
私の様子を見てゆうは目を閉じた。……後は彼女が決めることだ。私に言える事は、もう何もない。
やがてゆうは目を開くと、こう言った。
「……私の家の住所を、教えます」
37 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:50:35 ID:fJEpl7/7
(2-3)
「ゆう……」
私は袋に入れ終わった鏡の破片を身体に載せて、ゆうの近くまで運んだ。
「ありがとう、かおる」
静かな笑顔で私にそう言うと、彼女は袋に向かって「ごめんね」と謝って、それをゴミ箱に捨てた。
「手、大丈夫?」
私は包帯が巻かれた右手がやはり心配になって彼女に聞いた。すると、彼女は私をその右手で撫でてくれた。
「大丈夫だよ。やっぱり優しい子だね、かおるは」
身体全体でゆうの温かい手のぬくもりを感じ、私は絶対に彼女を守ることをもう一度決意した。
オーナーはゆうの住んでいるところを知らなかったらしい。なんとオーナー自身がそれを聞くことを拒んだという。
ゆうはポツリと、あれも私を信頼させるためだったのかな、とこぼしていた。よく考えれば、オーナーに住んでいる場所を教えているのなら、ゆうがここに帰ってくることもなかっただろう。
ゆうは私を撫でることをやめ、そっと私の身体を持ち上げると胸に抱いてこう言った。
「ありがとう」
その一瞬後、玄関のドアを叩く音がした。ゆうの顔が少しだけ怯えた表情を見せる。
そして胸に抱く私を先ほど元に戻したテーブルに置いて、そっと立ち上がった。
最後にちらりと私を見ると力強く頷いてゆうは玄関へと向かった。
私は近くの壁に張り付く、そこから天井へと移動しながら玄関へと向かった。既にゆうは迷いない動きで、オーナーを家の中に入れていた。
両者とも無言。黒い上着に身を包んでいるオーナーはゆうに頭を下げたが、家の鍵を開けてさっさと茶の間へと進むゆうを見てそれに追従した。もちろん私もそれに続く。
「ゆうちゃん……、いいえ、佐伯薫さん」
茶の間に入って背中を向けたまま立ち止まったゆうに向かって、彼女の本名をオーナーは言った。いや、もうゆうだけの名前でもないのだが。
「本当に、申し訳ありませんでした」
そのまま背中を向けたままのゆうにオーナーは床に頭をピタリと付けた。確かこれは、この国の人が相手に謝罪の意を伝えるための手段で……土下座、っていってたかな。
「……それをしに、あなたは来たのですか?」
振り返ったゆうがそれを見下して一言こぼした。それを聞いてオーナーはゆっくりと上半身を上げて首を振った。
「いいえ、言い訳を……聞いていただけますか?」
それを聞いて向かい側にゆうがオーナーと同じように膝を折った。ゆうはオーナーをただ無機質な視線で見て言葉を待っていた。
「店が開いて暫くしたら週末という事もあり、いつもより少し忙しくなりました。その最中、酔ったお客様の一人が佐伯さんの居たあの部屋に入ろうとして、その時お客様は既にドアに手を掛けていたため、
私はとにかくそこからお客様を引き離し、そのお客様が覗いた部屋の中の様子を誤魔化そうと、『今日、新しく働きたいって子が面接に来たんです。
今書類を書いてもらっているので、絶対に中にお入りにならないで下さい。おそらく近いうちに、お会いできると思いますので』と言い、なんとかお席にお戻りいただいたんです」
オーナーは見た目に似合わないしっかりとした口調と言葉遣いで話していった。私自身、この星に来てからわずか6日しか経っていないが、
見た目がオーナーと同じほどの年齢でここまで敬語を慣れた口調で話す人物は見たことがなかった。果たしてそれはよく出来た演技なのか、それとも……。
「……多分、あの男は部屋の中の様子までは、その時見ていなかったと思います」
「え!? な、なぜそのようなことをご存知なんですか?」
ゆうの言葉に驚きを全面に表すオーナー。しかし、その間も敬語は崩れない。
「あの男は部屋に入って開口一番に……『オーナーの言う通りだ』と、そう言っていましたから」
ゆうの証言にオーナーは目を見開き、その焦点をゆうから外すと、震えた左手で口を覆った。
38 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:51:54 ID:fJEpl7/7
(2-4)
そのまま少しばかりの沈黙が流れた。ゆうは口を開かないオーナーを前にしても微動だにせず、ただそれをじっと見ていた。同じように私も天井からそれを見ていた。
「……ごめんなさい」
沈黙を破ったのはオーナーのその一言。そして彼女はそのまま震えながら、そう土下座をまた、ゆう向かってしたのだ。
「何からなにまで、本当にごめんなさい。佐伯さんに……男の人に会いたくない佐伯さんに無理を言って私の仕事を手伝わせてしまったことから……私の軽率な発言で佐伯さんの傷を抉るような事件を起こしてしまったことまで……何もかも、本当にごめんなさい」
擦れる声でオーナーは土下座をしたままそう言った。ゆうはそれを目を細めて見下していた。
そして顔を上げると頬から流れる涙を拭く事もせず、赤く腫らした目でゆうのことをしっかりと見据えてこう続けた。
「もちろん、こんなことをして許してもらおうなど思っていません。もちろん、償えるのでしたら何でも……いえ、厚かましいですがこの命で償わせてください」
そこまでオーナーは震え、擦れた声でもしっかりとした口調で話し続けていた。しかし、突然口ごもるようにゆうから視線を外す。ゆうは相変わらず何も言わずにそれを見ている。
しかし、今度の沈黙は10秒と続かなかった。
「一つだけ……ただ一つだけ、お約束していただきたいことがあります」
そう話すオーナーの声は依然擦れはしているが、もう震えはしていなかった。
「何ですか?」
ゆうがそう聞いたのも、おそらくそうしたオーナーの語調の変化に気付いたからだろう。
「佐伯さんが男性をお嫌いなのは重々承知しております。ただもし……本日の私のせいで、女性さえも……いえ、人間全てが信じられなくなったとしてしまったのならば、それだけは考え直していただけませんか?」
オーナーは少し身を乗り出してた。しかし、ゆうはそれに対して静かな微笑みでこう言った。
「随分と勝手なことを言いますね」
「申し訳ありません。ただ、佐伯さん自身が一番ご存知のはずです。誰も信じずにこの世の中を生きて行くことは決して不可能だと」
オーナーの言葉にゆうの笑顔が消え去る。そして自らが傷つけられた過去を思い出したかのように、表情が怒りを孕んだものへと変わった。
「暫く時間がかかってもいいんです。ただ、いつか。もう一度だけ、誰かを信じてください、お願いします!」
そう言い切ると同時に再び頭を下げた。太ももの上に置いた拳を握り締めながら、ゆうは硬く目を瞑っていた。
そして小さい声でこうこぼした。
「あなたが死んで、誰が喜ぶんですか?」
ゆうの目は依然として瞑ったままであり、オーナーも顔を上げる様子はなくただじっとその土下座の体勢を維持している。
「あなたが死んだら、私は笑えるんですか? あなたが死んだら、私の傷はなくなるんですか? あなたが死んだら……私に何が残るんですか?」
ゆうはそう言って目を開いた。しかしオーナーは顔を上げない。
「……私が信じている人は、まだ居ます。……いえ、人ではないですが」
39 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:52:47 ID:fJEpl7/7
(2-5)
ゆうのそんな告白に、オーナーは顔を上げて怪訝そうな表情をしてゆうの顔を覗きこんでいる。私はゆうの言葉に迷うことなく、天井からテーブルに向かって飛び降りた。
私の身体はテーブルに叩きつけられると同時に四散し、そして初めてゆうと出会ったときと同じようにまたゆっくりと集まっていく。口を抑えながら私が修復していく様子をオーナーは目を見開いたまま、瞬きもせず見ていた。
程なくしてテーブルの上に収束した私を、ゆうがゆっくりと持ち上げてその胸へと抱いてくれた。そして私の身体を撫でながらこう言った。
「この子が、私にはいます」
ゆうの顔を唖然とした表情で見ていたオーナーは、そのまま私へと視線を写した。
「会ったのは……たしか一昨日の事です。ただ、もっとずっと前から私と会ってたみたいにこの子は私に優しくしてくれます」
それを聞いていたオーナーの顔から驚きの色合いが消えていく。ただ私を温度のない目でじっと見つめていた。
「私の過去を話した人はほとんどこう言ったんですよ。『私も分かるよ、その気持ち』、『いいことあるよ、これから』……」
そう言って顔を天井に向ける。
「元気付けてくれるのは分かります。でも、この子はこう言ったんですよ。『なんでそんなことされるの?』って」
その言葉にオーナーが僅かに驚愕の色を取り戻した。それに気付いたのかは分からないがゆうは続けた。
「レイプされた私自身もいまだにそう思います。『なんで?』って。でも分からないから、だから自分で理由らしい理由考えて、名前までつけて無理矢理踏ん切りをつけてるんです」
そして顔を下げて私を見ると苦笑いをした。私は先ほどと同じように身体を震わせて元気付ける。
「オーナーの言うとおり、一人で生きていくにはこの世の中は……辛いことばかりです。ただ、この子が……私の痛みを分かって、そして私の傷を癒すのではなく、優しさと言う愛情を注いでくれるこの子が居る限り……私は生きていけると思います。この、優しい子となら……」
そう力強く言ったゆうが、私に向けた笑顔に……ゆう本人は気付けなかっただろうが、私は少しだけ視線を彼女から外してしまった。
「私の話は以上です。ただ……あなたが死んでも私の傷が癒されることはない。それだけは覚えておいてください」
オーナーは自分の方を向かないでそう言ったゆうを見ながらそれを聞いた後、ふと私に視線を移すとこんなことを聞いてきた。
「あなたは、私に対してお怒りではないのですか?」
私は少しだけ答えに困ったが、ここは自分に正直に答えることにした。
「分からない。ただ、もしゆうがあのまま暴れていたのら、私はあなたを憎くて殺したかもしれない」
自分で聞いておきながらオーナーは私が話し出すと、少し驚いたような顔をした。その後、私に向かってこう言った。
「あなたにも謝るべきでした。本当にごめんなさい」
オーナーは深々と頭を下げて、私にそう言うとゆうの方を見た。ゆうは相変わらず、私のほうしか見ていない。
それを見たオーナーはゆっくりと立ち上がると、そこでまた一礼をして、静かに玄関から出て行った。
ドアが閉まる音がすると、ゆうは私を見ていた両目を閉じて、こんなことを言った。
「私は……」
ゆうがこぼしたその言葉に、私はある提案をした。
40 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:53:28 ID:fJEpl7/7
(2-6)
窓から家の下に素早く降りるとそこにオーナーは居た。口には、確かあれは……そうマスクを着用していた。テレビで言っていたがどうやら病気が流行っていてマスクをつけて外出するようにと言っていた気がする。
そしてゆっくりとした足取りで歩き出す。時間は確かゆうの家を出たのが深夜1時過ぎで、住宅が多い周辺は大分暗かった。
そのまま数分間歩くと、車の通りが激しい道路へと出た。そこから道路に面したところで数分待つと、近づいてきた車を止めて乗車した。私はその外側の天井に張り付き、身体を平らにして目立たないようにした。色が私と同じ緑であることも好都合だった。
外気を切り裂きながら走ること約15分。私は時より車の中をこっそりと確認したが、オーナーは流れる風景を横の窓からずっと見ているようだった。
そして人通りの激しい電車の駅前に着いた、そこでオーナーは車から降りると再び歩き出した。向かう方向はやはりお店のほうだ。
私はそれにこっそりと追従する。できるだけ電飾の少ないビルにへばりつきながら、スーツを着込んだ人間の雄の間をすり抜けていくオーナーを見失わないように注視をする。時より、フラフラと倒れこむ雄もいた。
そして3分と経たないうちに、昨日私がゆうにこっそりと着いてきたあのお店へと入っていった。とりあえずは一安心と言えるだろう。
私はゆうのためにオーナーの尾行を彼女に提案したのだ。オーナーがゆうのことを騙そうとしたとはもうゆうは思ってはいなかったのだが、それを信じれる証拠がないのもまた事実だった。だから私はそれを確かめに来たのだ。
正直、今日中に確かめられるとは限らないが私にはもう今日しか時間はない。私はもう、オーナーを「食べる」つもりはなかった。それはゆうとの関係がやはり以前のものと変わってしまったからだ。
もちろん、それでもオーナーがゆうにとって一番身近な人間であることには変わりなかったが、もうゆう自身がオーナーと向き合いたくない可能性もあったからだ。それではオーナーを食べても意味がない。
そのため私が考えていたゆうとの関係を保ちながら使命を果たす手段は、見事にパアとなってしまったが、今はそれよりゆうの安全の確保が最優先だった。
もし、オーナーがゆうを裏切ったならばこれから誰かがゆうの家に襲いに行く可能性がないともいえなかった。オーナーはゆうの家の場所を知ってしまったのだから、それをそう例えばこの店の常連に教えたりするかもしれない。
可能性が限りなく低くはあったが安全のため最善を尽くしたかった。ゆうは一人しかないのだから。
とりあえず私はゆうに近くのホテルに泊まるように勧めたが、ゆうは24時間営業のファミレスに居るといった。そちらのほうが人が多いし安全だとのことだ。
これでとりあえずは安心だろう。後は私がオーナーを監視し、怪しい行動をとったら……「食べる」。
私はそう決意して店の中に侵入した。
41 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:54:45 ID:fJEpl7/7
(2-7)
それから閉店の5時まで、オーナーは店の中を忙しそうに走り回っていた。天井や椅子の陰に隠れて客との会話も盗み聞きしてみたが、それらしい会話はされていなかった。
「オーナー、お疲れ様でした~。お先、失礼しま~す」
「はい、ゲホゲホ、お疲れ様」
「オーナー、大丈夫ですか? 最近咳が多くなってるみたいですけど、流行のインフルエンザの事もありますから病院に行ってみたほうが……」
「大丈夫大丈夫。ささっ、あやかちゃんは早く帰って今日はのんびり休んでね」
あやかは不安そうな顔をして咳き込んだオーナーを心配したが、オーナーの笑顔に押し切られる形でお店を後にした。
残ったオーナーそれを見送ると、カウンター席に座ってお酒らしきものを飲みはじめた。
静かな店内に響くのは、オーナーが傾けるコップの中にある氷と、オーナーのこんな独り言。
「流石に、お客様殴っちゃったのはまずかったかなぁ……ゲホ、ゲホ」
そう言ってオーナーは自らの右手をプラプラと目の前で振り、そして小さく笑っていた。
それからしばらく一人でウィスキーを飲んでいたが、段々と咳が強く、長く続くようになってきていた。
「ゲホ、ゲホ、……病院……いや、節約しなきゃ。とりあえず、ゲホ、帰って寝よう」
オーナーは苦しそうに咳き込むと、それごと飲み込むかのようにウィスキーを一気に飲み干して、席を立った。
その直後だった。オーナーの身体が、先ほど外を歩いていた酔っ払いのようにフラフラと足元がおぼつかなくなり、そしてバタンと倒れた。そして今までにないほど、強く長く咳き込み始めた。
そしてそのまま立ち上がることも出来ずに咳を続けていたオーナーの口から出た何かが、白っぽい床に赤い点を打った。
あれは……血、じゃないよね?
そう思った直後、それが今までよりもっと大きく吐き出される。床がオーナーの咳のたびに、段々と赤くなっていく。
私はたまらず、天井から壁伝いにオーナーの下に移動した。
「どうしたんですか!?」
「ゲホゲホゲホ、君は、どう……して……ここ、に?! ぐぅ……ゴボォ!」
オーナーは私を見てそう言ったが、表情を変える暇もなく咳を続けていた。
やがて咳が少しずつ収まっていく。しかし、オーナーの顔色が明らかにおかしい。
「はぁ、はぁ……だ、大丈夫。ゲホゲホ……」
ゆっくりとオーナーは上半身を起こした。しかし、立ち上がる力はないらしく目もどこか虚ろに見える。
「携帯電話機で、ゆうに知らせてください!」
「ぐっ、ダメ。それより、聞いて欲しいことが、あるの」
オーナーは私をゆうがしたように胸に抱き上げた。ゆうと同じで温かいだが、その奥底で心臓が悲鳴を上げるように早鳴りしている。
「私ねぇ、親に、売られたんだ。離婚して、くっ、母親と住んで、13の時、父親のところに」
そこまで言うと、擦れた呼吸で息を吸っては吐き、吐いては吸ってを苦しそうに続け、やがてまた口を開いた。
「はぁ、はぁ、お母さん、お金貰って、私は、ゲホゲホグボォ……私立の学校に……」
「もういいです! とにかく……そう、病院に!」
「父親、愛人、たくさん居て……その癖、私には清楚に、って……だから嫌になって逃げて、ここ、開いたの」
そこまで話すと、床に倒れこんだ。そして咳をしながら私を宙に掲げるように伸ばしてこう言った。
「私ね……君と、同じこと、ゆうちゃんに、ゲボ、言ったんだ……。面接で……っ、机、殴って……なぎながら」
苦しそうにしながらも、子供のように笑った。
「あんがい……きみ、と私……ゲホゲホ、似ているのかも、ね」
そう言って優しく微笑んだオーナー。しかし、その直後今までより多くの血が咳とともに吐き出され、オーナーの顔を血で塗りたくった。
42 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:55:49 ID:fJEpl7/7
(2-8)
「ゲゲホッ! 私……もう、だめ……。ガン、まっき……肺、弱かった、の……」
だめって……それはつまり、死……ぬってこと?
「な、なんで!? さっきまであんなに……」
私がそう言うと、力ない笑顔のまま舌を出した。……我慢、していたんですか……。
「ゆう、ちゃん、ゲホッ…っ、よ、ろし、く」
そう言って私を床に降ろした。赤い血だまりの上に、緑色の私の身体が着地する。
「お……ね、……が、い」
「……だめ、絶対に」
私は反射的にそう言っていた。しかし私の方を向きながら目の焦点は既に合っていない。
「し、ま……す」
「私は、今日ゆうの前から消えます」
私の言葉に、虚ろになっていたオーナーの目がわずかに光を取り戻す。
「……えっ? ……なん、で? どう、して?」
「私の身体も限界なんです。このまま19時間経てば、私は死にます」
オーナーの顔に絶望の色が浮かんでいく。でも、それでいい。今は、ゆうが一人になってしまうということだけ、それだけを考えて。
「そん、な……」
「それが嫌なら、ちょっとだけ私に時間を下さい。あなたを助けて見せます」
「無、理……だ、よ」
「じゃあ、ゆうを一人にしますか? あわよくば新しく誰かのことを信じられるかもしれませんが、数日後にはあなたと天国でお会いすることになってしまうかもしれませんよ?」
私の非情な言葉に、悔しそうに唇を噛み締めるオーナー。
「あなたがゆうに人を信じろと言うのなら、あなたは今、私を信じてください。いいですね? 必ず助けますから、それまでしぶとく耐えてください」
私はそう言うと、オーナーの返事も聞かずにすぐさま入り口のドアの隙間から外に這い出た。
力強くオーナーにああは言ったが、100%の確信があったわけではない。ただ、おそらく出来るであろうという過信と、とにかくゆうの力になりたいという思いだけがそこにはあった。
外は暗闇が切り裂かれ始めていて、驚くことに誰一人通りの前にはいなかった。
「っ、嘘でしょ……」
私は予想外のことに焦りを感じながら、とにかく人間を探した。
その時、向かいの路地の奥のドアが開かれ、そこから若い女が携帯電話機を片手に出てきた。
私は瞬時にその女の前に移動すると、こちらに女が視線を向ける前にその口に飛び込んだ。
43 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:57:04 ID:fJEpl7/7
(2-9)
「んんっ?! んんんんんんん!?」
言葉にならない声を上げている女の中に、私は自らの身体をドンドン浸入させて行く。
「んっ、ぷはっ! な、なに……わ、私、今……何を飲んだ、の?」
そんな声が身体の中に浸入しきった私の耳に届く。……ただ、ひとつあなたに私が言えるのはこれだけ。
「ごめんなさい」
私は彼女の身体の中でそう言って、その女の身体を中から一気に溶解し、「食べ始めた」。初めて味わう甘美なる人間の味を噛み締めることもなく、ただひたすらすぐに食べ終えることに集中する。
「えっ?! なっ、何!? なん、の、こ……は」
女は驚きの声を上げていたが、すぐにその声も上げられなくなった。彼女には、もう口もなければ喉もない。溶けていく身体だってもうあなたのものではない。既に私の身体の一部となっている。
そんな彼女の中で私はこう願った。この人間が、ゆうや……オーナーとは違う素晴らしい人間ではないように、と。
そして彼女の身体を完全に「食べて」その身体の情報を全て得たと同時に、その答えは私に流れ込んできた。彼女の記憶という形で。
どうやら彼女はストリップ劇場の新人で中々の人気ダンサーだったようだ。年齢は21歳。昼間は喫茶店で働いている。去年までは大学に通っていたらしいが、今年の春に中退したようだ。しかしそんな情報よりも今は最優先すべきものが他にあった。
私に流れ込んでくる記憶の中に病院で診察を受けたという記憶、それが重要だった。しかし、私が懸念するような記憶は流れ込んでこない。
それを確認するや否や、私は急いでオーナーの元へと戻った。オーナーは苦しそうにしながら、擦れた呼吸でかろうじて意識を取り留めていた。
「オーナー、確認させてください! ガンに掛かっているのは、肺だけですか?」
私はオーナーの下半身に移動して、紫の艶やかなワンピースの中に潜り込みながら白い下着をずらした。
「ゲホゲホゲホ、ちょ、っと……なにして、……リ、ンパ、せつにも……てんい、して、る……グホォゲホゲホ! っ……」
オーナーは私の突然の行動に驚いたようだが、私の質問にはしっかりと答えてくれた。それは他でもないゆうのためだろう。
「分かりました。……私が必ず、あなたとゆうを救ってみせます」
私は既にオーナーの服の中にいるため彼女の顔は見えなかったが、オーナーのこんな言葉が私の心に響いた。
「やっぱり……ゲホゲホ、ゆうちゃんの言ってた通り、君は、優しい……子」
そう言われて私は……やっぱり、オーナーのことも好きであるということが分かった。
そしてもし、ゆうのことがなかったとしても、私は彼女を助けたいと心から思った。
「ひっ、あっ、な、にか、ゲホゲホゲホ! ……はいってぇ、くぅるぅう」
オーナーは咳をしながらも、今まで聞くことなかった甘い声を上げた。それが私の官能をわずかにくすぐるが、それを楽しんでいる暇など今はない。
「くっはぁああ! そ、んあ、はげし、すぎぃいいい!」
そんな声が私の浸入に更なる加速を加える。
「ああっ! ゲホゲホ、いっ、たいぃいい!」
その時だった。突如、オーナーが痛みの悲鳴を上げた。私の身体もそこで止まってしまった。そして目の前にあるものを凝視した。
「これって……処女膜……?」
私は先ほど食べた女の記憶からそれを特定した。……でも、これってつまり……。
「ゲホゲ、ゲホォ!」
そんな間にもオーナーの咳が私の耳に届く。くっ、小さな穴はところどころにあるけど、そこからじっくりと浸入していく時間はない!
「オーナー、ごめんなさい!」
私は少しだけ手前に身体を戻すと、勢いをつけてそれを一息に破り抜けた。
「ひぎぃいぁああああ! ゲホゲホォ、いぁぁああああいいぃいいい!」
オーナーはガンと、処女を喪失するという2重の痛みに大きな悲鳴を上げた。しかし、もうそこから子宮にはすぐに到着し、私はそこからオーナーの身体に私を根付け始めた。
「ゲホォホォ……くふぅ……頭が……」
オーナーの声が弱々しくなり始め、私も段々と意識が朦朧とし始める。
そして突然、私にもとてつもない痛みが広がり始める。それは私とオーナーが繋がりはじめた何よりの証拠。オーナー、は、こんな……痛みに。
「間に……あって……」
オーナーの口から私の言葉が紡ぎだされる。私はただ、薄れいく意識の中、とにかく必死でそれを願い続けた。
胸の奥底で、何かがうごめきそれを変えていく。その感触をわずかに感じながら、私は意識を失った。
44 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:58:12 ID:fJEpl7/7
(2-10)
「……ナー。オー……! を、……して……さい! オーナー……!」
私は暗闇の意識の中、聞こえた声の方向に向けて、うっすらと目を開けた。
「ゆ……う?」
ぼやけた輪郭の主に向かって私は声を掛けた。その輪郭が私の声で上下に動く。
「オーナー! ……よか……った、一体、何が……いえ、今、人を呼んで来ます」
ゆうの声が私を現実に意識を引き戻させる。そして、立ち上がろうとしたゆうの身体を、私は抱きつくように止めた。
「だ、め」
「え……オー、ナー?」
何か、声が聞こえたが私の意識がまたしても段々と暗闇に引き戻され始めた。しかし、胸の辺りに先ほど感じた痛みはないあたり、どうやら私の考えは上手くいったようだ。
「もう少し……寝かせて」
私はそれだけを言うのが精一杯で、言い終わると同時に私はゆうに全体重を預けた。
「オーナー?! オー……! ……」
そして私の意識はまた暗闇の中へと引きずり込まれた。
それから何時間が経ったのだろうか。私は、宙に浮いて闇の中を漂う感覚から、ゆっくりと身体に何かの感触を覚えて目を覚ました。
「あっ、オーナー!」
今度はその声がはっきりと聞こえた。目を開けてみると、私を横から覗き込むゆうの顔もしっかりと確認できた。
「大丈夫ですか? 一体、何があったんですか。それに、あのメールは?」
「メー、ル?」
ゆうの単語を繰り返すと、頭の中に存在するオーナーの記憶が私の頭をよぎる。
「『助けてあげて』」
「そうです。……あの、もしかして、かおる……オーナーが先ほどマンションで会ったあの子に、何かあったんですか?」
ゆうの声が、わずかに震えていた。それは多分、私を心配してくれているから。
「あの子は……オーナーのことを尾行しに行ったんです。私が、もう一度オーナーを信頼できるように。……どこに行ったか、知りませんか?」
私の顔を真剣な眼差しで見ているゆうの視線から、明らかな焦りが感じられる。
「……ゆう」
「え……ゆう、って……」
オーナーは普段からゆうのことを『ゆうちゃん』と呼ぶ。いや、店の従業員は皆親しみを込めて『ちゃん』付けをしている。
「私の、話を聞いてくれる? ゆう」
「……かおる、なの?」
半開きにした口で、私にゆうが問いかけてきた。
私は頷いて事情を話し始めた。
45 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/22(土) 00:00:08 ID:fJEpl7/7
(2-11)
「……それで、オーナーの身体に寄生して、私は肺と転移が見られた部分をその『食べた』女の人のものに変化させたの」
「そこに、私がやってきた、と」
話は30分ほどに及んでいる。ゆうは、まず私がオーナーに寄生している事に疑問を持ったが、私が口から本体である緑色の身体をわずかに吐き出して彼女に見せると、彼女は驚きながらも納得した。
それからは比較的に私が話すことを、ゆうが黙って聞く形になり、説明はスムーズに終わった。
「じゃあ、今オーナーの意識は身体の中で眠っているってこと?」
「うん。私が出て行かない限り、目覚めることはない。例え死んでもね」
「生きてるんだよね、ちゃんと」
私は力強く頷く。するとゆうは、大きく息を吐いて笑顔を見せながらこう言った。
「よかったぁ……。う~ん、とりあえず今はかおるなんだよね?」
私は再度頷く。すると、ゆうの顔から笑顔が消え、真剣な目をしてこう言った。
「ちゃんと連絡してくれなきゃダメでしょ! 下手したら、君とオーナーの二人とも死んじゃうところだったんだよ!」
ゆうが大きな声で対面に座る私を叱る。私はゆうに初めて説教をされて、身を縮めこませた。
「まったくぅ……。でも、ありがとう。オーナーがもし死んでたら……私は多分、とても後悔したと思う。もちろん、君が死んでしまっていても、ね」
ゆうはそう言って優しく笑いかけてくれた。そして気の抜けたように席に持たれるとこうこぼした。
「ふぅ、やっぱりオーナーに向かってこんな風に叱るのって緊張するなぁ。部屋に来てくれたときはそんなに気にしなかったのに」
そう言って悪戯っぽくゆうは笑った。私はそれを見てゆっくりと立ち上がった。
「ちょっと、ここで待っててくれるかな、ゆう」
「え……う、うん。なにかあったの?」
私はそんなゆうを心配させないように笑い掛けると、お店から外に出た。眩しい太陽が暗い店内に慣れていた私の目を、ギラギラと刺激する。
そんな炎天下の中、私は今の時間帯には少し目立つ格好のまま、あるところに向かって歩き出した。
途中人通りの少ないところで、顔と身体を先ほど食べたダンサーのもの、『相沢 晴香』のものに変化させた。オーナーと背丈は似ていたが、胸の辺りが少し寂しい感じで、私はワンピースを胸の辺りで押さえながら走った。
そこは相沢晴香が昼間働いているバイト先である駅の近くの喫茶店だ。今日は休日と言うこともあってかなり繁盛している。
そこからぐるりと回り、ゴミ捨て場の目の前と、立地的にはあまり従業員に優しくない裏口に回ると、私はいつも相沢晴香がそうしているように店に入った。
46 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/22(土) 00:01:00 ID:TZvhuugr
(2-12)
「おはようございま~す」
間延びした声で私が入ると、廊下でゴミを両手に立っていた中年の眼鏡を掛けた男性店長が私を見て首をかしげながら近寄ってきた。
「あれ、相沢さん今日、シフト午後からじゃなかったっけ、まだ2時間ぐらいあるけど?」
私は相沢の記憶を反芻し、できるだけ不自然にならないように集中してこう言った。
「あ~、ちょっとヒマしちゃってて、ダメですか、早めに入っちゃ?」
「あっはっは。そんなことあるわけないだろ? こんなに忙しいんだ。こっちは嬉しい限りだよ。はい、鍵どうぞ」
そう言って私にロッカーの鍵を渡して狭い廊下の道を譲ると、私は軽く頭を下げながらその脇を通って、控え室兼更衣室の一室に足を踏み入れた。まったく、ちらちらと人の胸を見なさんな。
「あっ、晴香さん、こんにちは。お疲れ様で~す」
「やっほ~、ちぃちゃん。」
私は中で座っていた後輩『水川 千秋』に片手を上げて挨拶をした。彼女はケータイを片手で誰かにメール打っていたようだった。
しかし私が入るや否や、携帯を閉じるとロッカーから自らの仕事着を取り出した。メイド服という名の仕事着を。
そう、ここは駅前に新しくできたメイド喫茶だった。こんな大人向けの歓楽街にも、世の中の流行に押されるように去年建てられたお店だ。
「あ、使用中の札出しておくね」
私はその存在を思い出して、部屋の中のドアに付いている『使用中』という札を、ドアの外に貼り付け鍵を閉めた。
「あっと、すいません」
水川千秋はどちらかといえば抜けている性格で、よくこの札を付け忘れる。まぁ、それが幸いして、部屋に私と彼女の二人だけの空間を作り出せた。
私は服を脱ぎ始めた水川千秋の背後にゆっくりと近寄り、彼女の身体に手を掛けようとした。
その時、不意に水川千秋は私の方へと振り返るとこんなことを言ってきた。
「そう言えば晴香さん、今日はいつもにまして派手な服着てますね~」
「え、あぁ、うん。ちょっと、ね」
「あぁ~、男ですか?」
「ち、違う違う!」
私は慌ててそう誤魔化すと、反対にある自分のロッカーを開けた。しかし、相変わらず水川千秋はこちらを見てニヤニヤと笑っている。確か彼女は高校生だから、そういう出会いに飢えた年頃なのだろう。
仕方なく私は自分の仕事着を取り出した。残念ながら、携帯を持っていないためそれを見るフリなどはできず、何もしていないのも怪しまれると思ったからだ。
「きっとメチャクチャイケメンなんだろうなぁ~。いいなぁ~、見たいなぁ~」
背後でいやらしく私に声を向ける水川千秋。そのため彼女の着替えはまったく持って進んでいない。
それからもいやらしい皮肉を掛けられながら、私はあっという間に着替えが進み、もう黒いオーバーニーソックスを履き終え、後は白いカチューシャをつければ終わり……って私は何をしてるんだろう。
「あ、ヤバ。急がないと」
やっと自らの着替えに本格着手し始めた。私が白を基調としたメイド服で、彼女が黒を基調としたそれなのはあのスケベ店長の独断によるものだ。
そのため、私のは白いブラウスと黒いスカートを別々に履く必要があったのだが、彼女のそれは上下一体のワンピースのため頭から被るだけで実質済む。
私はその瞬間を狙ったのだが、彼女は私の順序とは逆に座ってソックスから履いて行き、更に靴まで履く。おそらく、メイド服を着たらすぐにでも出れるように準備しているのだろう。
その様子を今度はじろじろと私は見ていたが、相当焦っているらしく彼女はこちらに目などくれない。
その隙に私はこっそりと邪魔な下着をスカートから見えないぐらいにまで降ろした。
そして水川千秋が頭からメイド服を被り視界が失われた瞬間、私は椅子に座っていた彼女を押し倒した。
47 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/22(土) 00:02:14 ID:fJEpl7/7
(2-13)
「えっ?! きゃあ!」
当然ながらの声を上げて、腰の部分でメイド服がめくれているとううあられの無い姿で、私に乗り抱えられた。
「あ、あの、ど、どうしたんですか……晴香さん」
さりげなく腰までメイド服を降ろそうとしているが、その手を私が軽く握って抑える。
「なっ、ちょ、ちょっと! 離し……んっ!」
私は反論する間も与えずに自らの唇で彼女の唇をむさぼる。そのまま舌を滑り込ませて、彼女を中を少しずつ浸食する。
「んんっ、んっ、ぷはっ! はぁ、はぁ……」
私は唇を離すと、驚いたまま声も上げない彼女に見て妖しく笑い、そのままゆっくりと彼女の下着を私と同じように降ろし始めた。
しかしそれでも彼女は声を上げない。私はそれを疑問に思ってこう聞いてみた。
「何で声を上げないの? あなた、恥ずかしくないの?」
私がそう聞くと、水川千秋はなんと自ら顔を上げると私の唇に自分の唇を重ね合わせてきた。
「んっ?! んんっ、んんんんっ……あっ、はぁはぁ」
「はぁはぁ、えへへ……晴香さん、もっとしてぇ」
意外な声が彼女の口からこぼれる。しかし、彼女の表情からそれが嘘であるとは私には思えない。元々、その気がある女性なのだろうか?
しかしそんなことは、私自身どうでもよくなってきていた。ただ、その悦に酔った顔を見ていると、私も自然に笑ってしまい、そしてこう言った。
「ふふ、分かった。きもちよぉーく、してあげるねぇ」
私はそう言って、自らのスカートを捲り上げてあらわになった秘所を、ちぃちゃんの秘所と重ね合わせた。
「きゃっはぁ! ふぅぁああああ、きもちいぃぃ」
「ああっ! いぃ! いぃよぉぉお、ちぃちゃん!」
自然と私の腰が動いて、私のちぃちゃんの秘所が塗れた体液をお互いに交換し合っている。
「ち、ちぃちゃんのぉお、あったかくてぇええ、きもちいぃいぃぃい!」
「はるかぁ、さんのもぉおおお、やっばぁぁああい、くぅ、はぁああああん!」
私はただ快感を求める頭で、一つだけ、顔と身体をオーナーのものに戻し始めた。胸のサイズが大きくなったため、服に圧迫感を覚えるが、それも今は関係ない。
「いぃぃやああ、かわぃいかぉおおお! おっきぃ、むねぇええ! それでぇ、それでぇもっとわたしぃをいかせてぇええええ!」
「くぅはぁあああん! いいよぉぉお、これでぇえええ、いっちゃぇえええええええ!」
私はそう言ってお互いの秘所から愛液が飛び出すと同時に、擦り合わせたちぃちゃんの穴を目指してオーナーの穴から私の本体を射出した。
「はぁあああああんんぅう! なにかがぁ……なにか、きてるよぉお……」
そう言って水川千秋は疲れきったように静かになった。その間も私は素早く水川千秋の身体の奥へと進んでいく。
そしてまたしても処女膜に出会った。やはり彼女の子宮へと続く道をふさいでいる。
「そうだ……これなら痛みは少ないかも」
私はある方法を思いつき、処女膜に近づくとそれに身体を張り付け、ゆっくりと処女膜を溶解していった。
「はぁああ……なんかぁ、あったかくてぇぃ、きもちぃいいぃ……」
そんな甘い声がくぐもった音で彼女の中に居る私にも聞こえた。蕩ける様な甘い味のそれを溶かしつくし、私は浸入を再開した。
そのまま子宮に到着すると、私の身体が水川千秋へと根付き始めた。そして私の意識も段々薄れていく。
48 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/22(土) 00:05:47 ID:TZvhuugr
(2-14)
「う……んんんっ」
しかし、そのまま視界に靄が掛かったようにぼやけた後、すぐに気持ちよさそうに寝ている白いメイド姿のオーナーが私の視界に入った。
私はその身体を抱きかかえながらゆっくりと上半身を起き上がらせる。24歳の若きオーナーがメイド服で眠っている姿は、どこか神秘的な神秘的なものを感じさせる。
そして、その彼女の中には既に私の子を産める器官が備わっている感じたら、私は彼女が愛おしくなりその唇に軽く自らの唇を重ねた。
「ううんっ……んっ」
するとオーナーは眩しそうに瞼に皺を寄せながら、ゆっくりと目を開いた。
「あなたは……誰?」
目を瞬かせながら彼女は起きた。私はそんな彼女にこれだけを言う。
「あなたのお店でゆうが待っています。私と一緒に来てください」
それだけを言うと、私は彼女の手を引っ張って無理矢理に廊下に出た。すると廊下に居たスケベ店長がまたしても嫌らしい視線をしてこちらを見た。
「あっと千秋ちゃん、すぐにフロアに……って、あ、あんたは……な、なんで」
私の後ろに居たオーナーを見て、スケベ店長の顔が変わっていき、後ろにあとずさったところでダンボールに頭をぶつけ、そして眼鏡が落ちた。
「あっ、あなたは!?」
オーナーが驚きの声を上げ、それを見た私も、私の中にあるオーナーの記憶のそれも比較的新しい部分にその眼鏡が取れた中年男性の顔があることに気付いた。
「あ、あんたが……ゆうのことを……」
その記憶とは、昨日の夜にゆうが会計手伝いをしていたあの部屋に入り、そして……オーナーに殴られ、逃げていった男だった。
「き、昨日はよくもやってくれたなぁ!? い、慰謝料払え! そ、それにあの金も!」
そんな風にヒステリックに叫ぶ男に、オーナーは頭を下げてこう言った。
「も、申し訳ありませんでした!」
……なんで? オーナーなんで謝るの? こいつ、ゆうのこと、泣かしたんだよ?
しかし、それもオーナーの記憶がある今なら分かった。オーナーは元々誰にでも優しい人であり、更にオーナーはこの男にかなりの金を借りている。
あのオーナーのお店の経営状態は、かなり悪かったようで、オーナーはガンの治療費さえも店舗の経営のために我慢していたのだ。そして借金の額もかなり大きい。
それは全て……一生懸命働いてくれる女の子たちを、もちろんその中にいるゆうも守るため。
「……慰謝料、借金共に、利子100%つけて返してあげるわよ!」
私はオーナーの手を離すと、全速力でその最低の外道の目の前まで近寄ると、硬く握り締めた拳を頬にめり込ませた。
「ひぃぎゃああぁああああ!」
あの清楚なオーナーに殴られて、逃げ帰る程度の男なのだ。だからか弱い高校生の水川千秋に殴られても、やはり何とも情けない声を上げた。
そのまま裏口のドアに寄りかかったその最悪な男に、私はいつかのテレビで見た懇親のドロップキックを見舞った。
「ぎゃああああああああああああああああああ!」
何とも情けない声でドアを背中でぶち開け、そのままゴミの山に突っ込んでいった。そのゴミは確かこの外道が先ほど運んでいたものと似ている。
「ゴミの日も守れないとは、さすが外道……」
私は記憶の中にあったゴミの日の一覧を思い出すと、燃えるゴミが火曜日と金曜日であったことに気付き、ゴミに頭から突っ込んだ外道にそう吐き捨てた。
49 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/22(土) 00:06:47 ID:fJEpl7/7
(2-15)
「さっ、オーナー行きますよ!」
私は呆然としているオーナーの右手を無理矢理掴むと、お店のフロアのほうから覗き込んでいたお客様と仕事仲間から逃げるように裏口から飛び出した。
しかし結局、オーナーのお店に戻るためにはメイド喫茶店の表を通るのが一番近く、そこを通ったときは賑わっているお客から歓声と拍手をいただいた。
それから人通りが激しくなったお店への道を、黒いメイド服を来た私が白いメイド服を来たオーナーを引っ張りながら走り抜ける。当然、道行く人が物珍しそうに皆こちらを見ていた。
「こ、この格好は、は、恥ずかしいよぉ……」
そんな可愛らしい声が後ろから聞こえ、それが頬を赤らめたオーナーの声であることに私は小さく笑う。当然私も恥ずかしいわけだが。
程なくして私たちはオーナーのお店へと辿り着いた。途端にゆうがこちらに駆け寄ってきた。
「オーナー!? それとも、かおる!? そ、それより一体その格好は……、それに……あ、あなたはどちら様でしょうか?」
ゆうはいっぺんにオーナーと私に質問を投げかけてきた。しかし、私もオーナーも人通りの中を全力疾走で駆け抜けてきたため、息を切らして答えられない。
ふと、圧迫されていたオーナーの胸のボタンがピーンと吹き飛び、たわわに実ったそれがむき出しになった。
「きゃあ!」
オーナーが上げた小さく可愛らしい悲鳴に、私もゆうも一瞬押し黙ったが、やがてクスクスと小さく笑い出した。
「じゃあ、本当に私のガンを」
「はい。一応肺とリンパ節は、あの相沢晴香さんのものに代わっているでしょうから大丈夫でしょう」
私がそうオーナーに言うと、オーナーは複雑な表情でこう言った。
「でも、それじゃその、相沢さんは私の代わりに死んでしまったんですね」
「……すいません。本当は男のそれにしようとしたんですが、通りにはその時間誰も居なくて」
私の言葉にオーナーは首を振る。
「それでも誰かが死ぬのに代わりはない……。あ、けど、あなたを恨んでいるわけじゃないですよ? こうして生きていられて私は本当に嬉しいです」
そう言ってニコリと笑ったオーナーの顔が私にはとても嬉しかった。
「かおる……」
その時、私の隣に座っていたゆうが、不意に私の名前を呼んだ。
「本当に、かおるなんだよね?」
水川千秋の身体の私は、その言葉にゆっくりと頷き、そしてこう聞いた。
「ゆうは……あんなふうに、緑色の身体をした私じゃなきゃ、嫌い?」
私の言葉に、ゆうは迷いなく私を抱きしめた。水川千秋の身体の私を。
「そんなことないよー。私は優しい君が大好き。どんな身体でも、君は私に優しくしてくれると信じてるから」
「ゆう……」
私はそのゆうの優しい言葉。
「これから、かおるはどうするの?」
「……使命を果たすために、この地球の全人類に寄生する。ただ……やっぱり男は全員『食べる』」
身体を離してゆうとオーナーの顔を見ると、二人はそれぞれ微笑んでこういった。
「私は男が嫌いだから……そんな世界があるなら見て見たいと思う」
「ゆう……」
「男が全員大嫌いと言うわけではないですが……かおるちゃんとゆうちゃんが大好きなのは確かなこと。だから私も二人とずっと一緒に居たい」
「オーナー……」
私は、愛する優しき二人を前に決意した。
「やっちゃい……ますか」
50 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/22(土) 00:08:47 ID:TZvhuugr
(2-16)
「んんっ、はぁ、さいこう……」
私はそう言って寄生したばかりの身体を持ち上げた。傍らには先ほどまで私が寄生していた同じ大学の生徒が眠っている。
その彼女を私は更衣室のソファーに優しく寝かせると、自らの衣服を整えて更衣室を後にした。
通り行く外国人……と言っても今の私、つまりジェニファーの視点では同じ国民なのだが、その生徒の中を通り過ぎ、大学を後にした。
ニューヨークの町並みを歩いて高層マンションの一室に私が帰ってくると、二人の日本人女性が私を出迎えた。
「お帰り~、かおる」
「お疲れ様、かおるちゃん」
家を出たときとはまったく姿かたちが違う私を見ても、彼女達はいつものように私に接してくれた。
ゆうは私の身体を物珍しそうに触る。顔を引っ張ったり、胸を触ったりと、遠慮がない。
オーナー……もとい『すず』もいつものように、そんな様子を見て、穏やかな微笑みを浮かべている。
「そう言えば、去年より1億人近くも人口が減ったって、アジア圏で、それも男が特に」
ゆうが私の胸に顔を埋めながら言ってきた。私はその頭を撫でると、今度はすずが話しかけてくる。
「かおるちゃんや子供達がこの1年間頑張ったから、ね」
私はその言葉に首を振った。多分、私より子供たちのほうがずっと頑張っていると思う。
「はぁああ、どうしよ、かおるぅぅ……疼いてきちゃった」
私の胸から顔を上げたゆうが、赤い顔をして私を見た。視線をすずに移すと、恥ずかしそうにしながらもこちらに寄ってきて、そのまま私にしだれかかって来た。
「……二人とも、元気ですねぇ」
「あぁ、酷い! 自分は寄生するときに楽しんできてるからって!」
「そ、そうだ、そうだ!」
私の言葉に反論したゆう、それに同意するようにすずが続く。
その二人の股間が盛り上がっている。その正体は、ゆうに寄生した時とすずにもう一度寄生し直したときにつけた雄の性器だ。私が食べた雄の中でも、マシなものを選んで二人の身体を変化させた。
ゆうはあれから私に寄生されることを自ら望んでくれた。その股間に男のものを生やす事も、だ。彼女曰く、男がいなくなるためならこれぐらいなんともない、とのことだ。今ではめっきり楽しんでいるようだが、男は相変わらず大嫌いだ。
それは何も二人だけにしたわけではない。雄がいなくなっても人間が子孫を残せる様に、私は子供達にも2回の寄生につきに1度はこれを生やさせるようにさせている。
しかし……、まさかあの二人がここまで貪欲になるとは思いもしなかったが。
「まぁ、いいけど。じゃあ、楽しみましょうか」
「うんうん、さすがかおる、優しい子だね」
私の頭を優しく撫でてくれるゆう。
「ありがとう、かおるちゃん」
私の頬に優しいキスをしてくれるすず。
そして私たちは隣のベッドルームに向かった。もちろん、私だってこれからの行為が楽しみで仕方ない。
だって、私は二人が大好きだから。
(終)
51 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/22(土) 00:22:47 ID:TZvhuugr
書いたものをひたすら番号をつけながら貼り付ける作業なのですが……自らの文章を流し読みしていると……我ながら酷い、と頭を抱えてしまいます。
それと、>>36は 一応(2-2)となります。まったく意味はないのですが、申し訳ありません。
これはもう自分が好きな【寄生】、【捕食】、【擬態】という三原則をなんともご都合主義的にちりばめたのですが……
もうその設定云々ではないですね。文章の貧弱さで泣けてきました。
もっと酷い部分はありますが、あまり自分で言うのも五月蝿いと思われますので、失礼させていただきます。
……近いうちにまた、酷い駄作をお見舞いしに来るかもしれませんが、どうか冷たい視線でお迎えいただければ幸いです。
本当にありがとうございました。
……素晴らしいアスキーアートまで書かれた32様までの流れを無駄にしてしまっていいのか迷ったのですが……申し訳ありません。あまり時間がないので失礼します。
こんばんは。前回のスレッドの終盤にて、無駄に長い駄作を投下した者です。
スレッド利用者の皆様にはご迷惑をお掛けいたしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
あの後、私は一昨日まで旅行に出ておりましたが、携帯電話から皆様のご感想をありがとう読ませていただいておりました。
いただいた感想の中で、お気づきになられていた方もいたようですが、確かに別な終わり方をいくつか考えていました。
その中で、最初に考え出したものを、先日投下させていただいた次第です。
しかし、その感想で「感動した」という感想を貰ったのですが……正直、申し訳ないことを、と反省しております。
それはこのスレッドが培ってきた「雰囲気」というものを、ぶち壊してしまったような後ろめたさがあったからです。
なのでそれを償う……という言い方はあまりにこじ付けですが、もう一つ考えていたものを昨日書き上げました。
それを投下させてもらってもよろしいでしょうか?
……と聞いてしまえば、前回の投下の際に掛けてしまったご迷惑を再びお掛けすることになります。
なので、先に謝らせて頂きます。
お目を汚すような駄作を長々と勝手に投下します。本当に申し訳ありません。
一応、前回の設定を無理矢理に纏めたものも投下させていただきます。
長々としている本編からお分かりいただけると思いますが、纏め下手なためほとんど意味不明であるとは思いますが……。
もし、ご興味のある方はご覧下さい。
また、これから投下する物語は【ストーリー説明】にある
****************
の部分まではまったく同じストーリー展開なので、レス数を節約のためにも割愛させていただきます。ご了承下さい。
そこからは別のストーリーとなりますが、前回の話の設定のせいで矛盾している部分も多々ありますが、そちらもご了承下さい。
長々と申し訳ありませんでした。
では、これからまず、設定を投下させていただきます。
お時間有り余っているときにでも読んでいただけたら幸いです。
では、失礼します。
34 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:43:36 ID:fJEpl7/7
【ストーリー説明】
この地球に寄生体として舞い降りた私は、この3日間で寄生もせずに人間という生き物に絶望していた。
私がこのまま寄生せずに生きられるのはあと4日、なんとか理想に一番近い宿主を探さなければ。
しかし、その4日目の探索も無駄足に終わろうとしていた。そんな時、一人の少女が私を拉致した。
彼女の名前は「さえきかおる」と言い、自ら「ゆう」という愛称をつけていた。
そんな彼女は15歳の頃ほとんど捨てられるような形で親から離され、その後好きだった男友達の策略で集団に強姦されていた。
私はそんな境遇の彼女に「なんで?」と思わず聞いてしまう。何故なら、なぜそんな酷いことばかりに彼女が合わなければならないのか納得いかなかったからだ。
それを聞いた彼女は「私にも分からないよ!」と怒りを露にした。そう、誰よりも彼女自身がその原因を知りたかったのだ。
あまりに馬鹿なことを聞いてしまった私は彼女に謝り、そしてゆうは私を優しく抱きしめてくれた。
そして彼女は私に自らの本名をくれた。私がうまれて始めて寄生をしたのは、彼女の本名だった。
それから2日経った6日目。ゆうが玄関を元気よく飛び出して行った。……見事に鍵を掛け忘れて。
*************
私はゆうが鍵を忘れていることも考えて、その鍵は閉めずに開けておき、私はこの身体で最後となる見聞に出掛けた。
この日の夜、ゆうが信頼している仕事先の「オーナー」をという人物を「食べ」、これからは彼女に擬態して、ゆうに会うということを決めていた。
はじめは寄生対象として見ていたゆうに、私は寄生する事も躊躇するぐらいに好きになっていたから。
しかしゆうは夜遅くになっても帰って来ない。私は玄関の鍵を開けたまま、彼女が帰ってくることをひたすら待った。
そして帰ってきたゆうは、突然暴れだして部屋をメチャクチャにしてしまった。
今日のゆうはオーナーの珍しき頼み事で、開店後の店内でも仕事を手伝っていた。そこに、酔った男が乱入し、ゆうを襲おうとしたのだ。
その男が言っていたのは「オーナーの言う通りだ」と言う言葉。ゆうはもう誰も信じられないと言った。
だから私はゆうに寄生して一緒になった。
ゆうに寄生した私が向かったのは、オーナーのお店。
そこから出てきた従業員のあやかを「食べ」、彼女に擬態をすると、私はオーナーを撲殺した。
それから2週間経ち、一つの宿主の身体に合計2週間以上とどまってしまった私と、宿主のゆうの身体が腐敗を始め、私はそのままゆうと一緒に天国へと旅立った。
【寄生体の能力】
・宿主に寄生して、自らの子供(寄生体)を産ませる能力と宿主の記憶を得る能力。
→宿主がいない状態で生きていられるのは7日間のみ。一度寄生した後は、本体だけでの活動はほぼ不可能。
→最終使命は、全人類への寄生。
→一人の宿主に寄生できるのは合計で2週間。
・人間を溶解して「食べる」ことによって身体の構成と、宿主の記憶を得る能力。
・その情報を使って、宿主の身体を変化させる能力。
【登場人物】
ゆう(本名:さえき かおる)
両親が離婚し、母方に引き取られたが、母親の再婚の際にお腹にいた子供のために、中学卒業と同時に一人暮らしを始めた。
それから1年は仕送りを送られていたが、その後打ち切られ、母親と連絡もつかなくなった。
なんとか生活費を稼ぐため、中学時代の好きだった男友達の紹介で仕事を見つけたが、そこで強姦をされてしまう。
以来、男が大嫌いなったが、なんとか昼間のキャバクラで掃除などをする仕事を見つけられ、現在に至る。
オーナー(本名:?)
ゆうが働くキャバクラの若干24歳の若き女オーナー。
以上、前回までの設定
35 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:46:31 ID:fJEpl7/7
(2-1) (前回の1-18から派生)
「じゃあ気をつけて人捜ししてきてね。明日は土曜日で休みだから一緒に探してあげるからね」
「うん、ありがとう。ゆうも気をつけてね」
「りょーかいしました! 行ってきま~す!」
そしてゆうは元気よく家の外へと飛び出して行った。
「行ってらっしゃ~い」
……見事に家の鍵を閉め忘れていった。
「さすがのゆうも……家の鍵ぐらい、持ってってるよね?」
心配になったが、ゆうだって一人暮らしの経験は長いのだ。幾らなんでもそれぐらいは忘れまい。
私はドアの鍵を内側から閉めて、一応元栓などがしっかりと閉まっているかを確認すると、この身体での最後の見聞のために少しだけ窓を開けると、そこから外の世界へと飛び出した。
……時計を見れば既に10時を回っている。しかし、この狭い部屋にゆうはまだ帰ってこない。
私が見聞を終えて夕方に帰ってくると、ゆうから電話があり今日は少しだけ遅くなるとのことだった。
それは少しだけ私の不安感を駆り立てたが、それでもあのお店のオーナーなら信頼できるだろうと私は信じて、ひたすらゆうの帰りを待った。
でも……それにしても遅くないだろうか。私はたまらずに窓を開けて身を乗り出し、地上3階からの階下の暗闇に目を凝らした。しかし、やはりゆうの姿は無い。
その時だった。玄関のドアからまるでドア自体が壊されようとしているかのような荒々しい音が聞こえたのは。
36 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:47:42 ID:fJEpl7/7
「開けて! 開けてよ! ここを、開けてぇええええええええ!」
そんな声に私はすぐに玄関に近づいて、ドアに張り付くと身体を広げでその一部分からの視界で覗き穴を覗いた。そこには髪を振り乱して、必死な形相でドアを叩き続けるゆうがいた。
私がすぐさまドアの鍵を開くと、間髪居れずにドアが開かれ、そして素早く閉じられた。それと同時にゆうが荒々しい息を整えることもせずに私の身体の上からドアの鍵と、そしてドアチェーンを閉めた。
「ゆう、大丈夫!? ごめんなさい、私が鍵なんてしてしまったから」
私はそう言いながらゆうの視界に入るように、彼女の左脇の靴箱の上に移動した。しかし、彼女は肩で息をしながら俯いてしまっている。
そんなゆうに私がもう一回声を掛けようとした瞬間、変化が起きた。
「あああああああああああああああああああ!」
まるで獣のような咆哮でゆうは私の位置と逆にあった電話機を、その電話台ごと蹴り飛ばした。
そして靴のまま部屋に上がり込むと、テーブルを蹴り飛ばして、持っていたバックも私が開けたままの窓から外に投げようとした。
その時だった。まるで雰囲気に似合わない電子音がそのバックから聞こえた。
「あああああああああ…………」
叫び続けていたゆうの行動が止まり、そして彼女はバックから携帯電話機を取り出した。小さなぬいぐるみが携帯電話機の振動と共に点滅をしている。
ゆうは荒い息をしながらそれを、電子音を奏で続けるそれを睨むように見ていたが、やがて意を決したようにボタンを押して音楽を消すと、ゆっくりとそれを耳に当てた。
『ゆうちゃん! ゆうちゃんね!? 大丈夫!? 怪我はしてない!?』
私はゆうの近くの箪笥に移動して、携帯電話機から発せられる聞き覚えのある声を聞いた。これは……オーナー?
ゆうの顔を見ると、怒りを噛み締めるように歯を食いしばり、携帯電話機を握りつぶせそうなほどの力で持っていた。
「……ずっと……ずっと最初から……こうするつもりだったんですね?」
『ごめんなさい、ゆうちゃん! でも、違うの! 私はあなたを』
「うるさい! ……私の事情知ってるのに……あなたはそれを」
『ごめんなさい! 本当にごめんなさい! ゆうちゃん、ごめんなさい!』
携帯電話機から聞こえるオーナーの声は大きな声なのに、なぜか弱々しさを持っていた。
しかしオーナーの言葉はゆうの怒りを一層強くさせてしまった。
ゆうは携帯電話機を持っていない右手をいきなり振り上げると、壁に掛かっていた鏡の中心に小指の方から拳をたたきつけた。亀裂がそこから四方八方へと広がっていく。
「……聞きたくない。……あなたの嘘の言葉じゃ、私の傷は絶対に癒せない!」
『っ! ……そうよね。でも、私が死んであなたが人を、せめて女の子だけでもまだ信じてくれるなら、私はすぐにそうする』
「……」
ゆうはそのオーナーの言葉を聞いて目をそれまでより少しだけ大きく見開いた。
『ゆうちゃん。……多分、あなたがこの電話に出てくれたのはまだ本当にわずか、私を信じてくれていたからだと思うの。だから、何の解決にも……いいえ、あなたはもっと怒るかもしれないけど、ちょっとだけでも私の話を聞いて欲しい』
「……」
ゆうは迷うように視線を泳がしている。それはゆうが彼女自身を取り巻いてきた不安と、今彼女に差し出されている希望が戦っているからだろう。
私はゆうの右側の肩に飛びついて、携帯電話機を当てている耳とは逆の耳に身体を近づけてこう言った。
「もし、あなたをもう一度でも騙そうとしたら私が食べる。彼女の中に入り込んで、ぐちゃぐちゃに溶かし尽くす」
そんな私の言葉にゆうがこちらを向いた。任せとけ、と言うように私は液体の身体を震わす。ゆうも私の食事を何度も世話しているから、それがけして誇張的な表現ではないことを理解しているはずだ。
私の様子を見てゆうは目を閉じた。……後は彼女が決めることだ。私に言える事は、もう何もない。
やがてゆうは目を開くと、こう言った。
「……私の家の住所を、教えます」
37 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:50:35 ID:fJEpl7/7
(2-3)
「ゆう……」
私は袋に入れ終わった鏡の破片を身体に載せて、ゆうの近くまで運んだ。
「ありがとう、かおる」
静かな笑顔で私にそう言うと、彼女は袋に向かって「ごめんね」と謝って、それをゴミ箱に捨てた。
「手、大丈夫?」
私は包帯が巻かれた右手がやはり心配になって彼女に聞いた。すると、彼女は私をその右手で撫でてくれた。
「大丈夫だよ。やっぱり優しい子だね、かおるは」
身体全体でゆうの温かい手のぬくもりを感じ、私は絶対に彼女を守ることをもう一度決意した。
オーナーはゆうの住んでいるところを知らなかったらしい。なんとオーナー自身がそれを聞くことを拒んだという。
ゆうはポツリと、あれも私を信頼させるためだったのかな、とこぼしていた。よく考えれば、オーナーに住んでいる場所を教えているのなら、ゆうがここに帰ってくることもなかっただろう。
ゆうは私を撫でることをやめ、そっと私の身体を持ち上げると胸に抱いてこう言った。
「ありがとう」
その一瞬後、玄関のドアを叩く音がした。ゆうの顔が少しだけ怯えた表情を見せる。
そして胸に抱く私を先ほど元に戻したテーブルに置いて、そっと立ち上がった。
最後にちらりと私を見ると力強く頷いてゆうは玄関へと向かった。
私は近くの壁に張り付く、そこから天井へと移動しながら玄関へと向かった。既にゆうは迷いない動きで、オーナーを家の中に入れていた。
両者とも無言。黒い上着に身を包んでいるオーナーはゆうに頭を下げたが、家の鍵を開けてさっさと茶の間へと進むゆうを見てそれに追従した。もちろん私もそれに続く。
「ゆうちゃん……、いいえ、佐伯薫さん」
茶の間に入って背中を向けたまま立ち止まったゆうに向かって、彼女の本名をオーナーは言った。いや、もうゆうだけの名前でもないのだが。
「本当に、申し訳ありませんでした」
そのまま背中を向けたままのゆうにオーナーは床に頭をピタリと付けた。確かこれは、この国の人が相手に謝罪の意を伝えるための手段で……土下座、っていってたかな。
「……それをしに、あなたは来たのですか?」
振り返ったゆうがそれを見下して一言こぼした。それを聞いてオーナーはゆっくりと上半身を上げて首を振った。
「いいえ、言い訳を……聞いていただけますか?」
それを聞いて向かい側にゆうがオーナーと同じように膝を折った。ゆうはオーナーをただ無機質な視線で見て言葉を待っていた。
「店が開いて暫くしたら週末という事もあり、いつもより少し忙しくなりました。その最中、酔ったお客様の一人が佐伯さんの居たあの部屋に入ろうとして、その時お客様は既にドアに手を掛けていたため、
私はとにかくそこからお客様を引き離し、そのお客様が覗いた部屋の中の様子を誤魔化そうと、『今日、新しく働きたいって子が面接に来たんです。
今書類を書いてもらっているので、絶対に中にお入りにならないで下さい。おそらく近いうちに、お会いできると思いますので』と言い、なんとかお席にお戻りいただいたんです」
オーナーは見た目に似合わないしっかりとした口調と言葉遣いで話していった。私自身、この星に来てからわずか6日しか経っていないが、
見た目がオーナーと同じほどの年齢でここまで敬語を慣れた口調で話す人物は見たことがなかった。果たしてそれはよく出来た演技なのか、それとも……。
「……多分、あの男は部屋の中の様子までは、その時見ていなかったと思います」
「え!? な、なぜそのようなことをご存知なんですか?」
ゆうの言葉に驚きを全面に表すオーナー。しかし、その間も敬語は崩れない。
「あの男は部屋に入って開口一番に……『オーナーの言う通りだ』と、そう言っていましたから」
ゆうの証言にオーナーは目を見開き、その焦点をゆうから外すと、震えた左手で口を覆った。
38 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:51:54 ID:fJEpl7/7
(2-4)
そのまま少しばかりの沈黙が流れた。ゆうは口を開かないオーナーを前にしても微動だにせず、ただそれをじっと見ていた。同じように私も天井からそれを見ていた。
「……ごめんなさい」
沈黙を破ったのはオーナーのその一言。そして彼女はそのまま震えながら、そう土下座をまた、ゆう向かってしたのだ。
「何からなにまで、本当にごめんなさい。佐伯さんに……男の人に会いたくない佐伯さんに無理を言って私の仕事を手伝わせてしまったことから……私の軽率な発言で佐伯さんの傷を抉るような事件を起こしてしまったことまで……何もかも、本当にごめんなさい」
擦れる声でオーナーは土下座をしたままそう言った。ゆうはそれを目を細めて見下していた。
そして顔を上げると頬から流れる涙を拭く事もせず、赤く腫らした目でゆうのことをしっかりと見据えてこう続けた。
「もちろん、こんなことをして許してもらおうなど思っていません。もちろん、償えるのでしたら何でも……いえ、厚かましいですがこの命で償わせてください」
そこまでオーナーは震え、擦れた声でもしっかりとした口調で話し続けていた。しかし、突然口ごもるようにゆうから視線を外す。ゆうは相変わらず何も言わずにそれを見ている。
しかし、今度の沈黙は10秒と続かなかった。
「一つだけ……ただ一つだけ、お約束していただきたいことがあります」
そう話すオーナーの声は依然擦れはしているが、もう震えはしていなかった。
「何ですか?」
ゆうがそう聞いたのも、おそらくそうしたオーナーの語調の変化に気付いたからだろう。
「佐伯さんが男性をお嫌いなのは重々承知しております。ただもし……本日の私のせいで、女性さえも……いえ、人間全てが信じられなくなったとしてしまったのならば、それだけは考え直していただけませんか?」
オーナーは少し身を乗り出してた。しかし、ゆうはそれに対して静かな微笑みでこう言った。
「随分と勝手なことを言いますね」
「申し訳ありません。ただ、佐伯さん自身が一番ご存知のはずです。誰も信じずにこの世の中を生きて行くことは決して不可能だと」
オーナーの言葉にゆうの笑顔が消え去る。そして自らが傷つけられた過去を思い出したかのように、表情が怒りを孕んだものへと変わった。
「暫く時間がかかってもいいんです。ただ、いつか。もう一度だけ、誰かを信じてください、お願いします!」
そう言い切ると同時に再び頭を下げた。太ももの上に置いた拳を握り締めながら、ゆうは硬く目を瞑っていた。
そして小さい声でこうこぼした。
「あなたが死んで、誰が喜ぶんですか?」
ゆうの目は依然として瞑ったままであり、オーナーも顔を上げる様子はなくただじっとその土下座の体勢を維持している。
「あなたが死んだら、私は笑えるんですか? あなたが死んだら、私の傷はなくなるんですか? あなたが死んだら……私に何が残るんですか?」
ゆうはそう言って目を開いた。しかしオーナーは顔を上げない。
「……私が信じている人は、まだ居ます。……いえ、人ではないですが」
39 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:52:47 ID:fJEpl7/7
(2-5)
ゆうのそんな告白に、オーナーは顔を上げて怪訝そうな表情をしてゆうの顔を覗きこんでいる。私はゆうの言葉に迷うことなく、天井からテーブルに向かって飛び降りた。
私の身体はテーブルに叩きつけられると同時に四散し、そして初めてゆうと出会ったときと同じようにまたゆっくりと集まっていく。口を抑えながら私が修復していく様子をオーナーは目を見開いたまま、瞬きもせず見ていた。
程なくしてテーブルの上に収束した私を、ゆうがゆっくりと持ち上げてその胸へと抱いてくれた。そして私の身体を撫でながらこう言った。
「この子が、私にはいます」
ゆうの顔を唖然とした表情で見ていたオーナーは、そのまま私へと視線を写した。
「会ったのは……たしか一昨日の事です。ただ、もっとずっと前から私と会ってたみたいにこの子は私に優しくしてくれます」
それを聞いていたオーナーの顔から驚きの色合いが消えていく。ただ私を温度のない目でじっと見つめていた。
「私の過去を話した人はほとんどこう言ったんですよ。『私も分かるよ、その気持ち』、『いいことあるよ、これから』……」
そう言って顔を天井に向ける。
「元気付けてくれるのは分かります。でも、この子はこう言ったんですよ。『なんでそんなことされるの?』って」
その言葉にオーナーが僅かに驚愕の色を取り戻した。それに気付いたのかは分からないがゆうは続けた。
「レイプされた私自身もいまだにそう思います。『なんで?』って。でも分からないから、だから自分で理由らしい理由考えて、名前までつけて無理矢理踏ん切りをつけてるんです」
そして顔を下げて私を見ると苦笑いをした。私は先ほどと同じように身体を震わせて元気付ける。
「オーナーの言うとおり、一人で生きていくにはこの世の中は……辛いことばかりです。ただ、この子が……私の痛みを分かって、そして私の傷を癒すのではなく、優しさと言う愛情を注いでくれるこの子が居る限り……私は生きていけると思います。この、優しい子となら……」
そう力強く言ったゆうが、私に向けた笑顔に……ゆう本人は気付けなかっただろうが、私は少しだけ視線を彼女から外してしまった。
「私の話は以上です。ただ……あなたが死んでも私の傷が癒されることはない。それだけは覚えておいてください」
オーナーは自分の方を向かないでそう言ったゆうを見ながらそれを聞いた後、ふと私に視線を移すとこんなことを聞いてきた。
「あなたは、私に対してお怒りではないのですか?」
私は少しだけ答えに困ったが、ここは自分に正直に答えることにした。
「分からない。ただ、もしゆうがあのまま暴れていたのら、私はあなたを憎くて殺したかもしれない」
自分で聞いておきながらオーナーは私が話し出すと、少し驚いたような顔をした。その後、私に向かってこう言った。
「あなたにも謝るべきでした。本当にごめんなさい」
オーナーは深々と頭を下げて、私にそう言うとゆうの方を見た。ゆうは相変わらず、私のほうしか見ていない。
それを見たオーナーはゆっくりと立ち上がると、そこでまた一礼をして、静かに玄関から出て行った。
ドアが閉まる音がすると、ゆうは私を見ていた両目を閉じて、こんなことを言った。
「私は……」
ゆうがこぼしたその言葉に、私はある提案をした。
40 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:53:28 ID:fJEpl7/7
(2-6)
窓から家の下に素早く降りるとそこにオーナーは居た。口には、確かあれは……そうマスクを着用していた。テレビで言っていたがどうやら病気が流行っていてマスクをつけて外出するようにと言っていた気がする。
そしてゆっくりとした足取りで歩き出す。時間は確かゆうの家を出たのが深夜1時過ぎで、住宅が多い周辺は大分暗かった。
そのまま数分間歩くと、車の通りが激しい道路へと出た。そこから道路に面したところで数分待つと、近づいてきた車を止めて乗車した。私はその外側の天井に張り付き、身体を平らにして目立たないようにした。色が私と同じ緑であることも好都合だった。
外気を切り裂きながら走ること約15分。私は時より車の中をこっそりと確認したが、オーナーは流れる風景を横の窓からずっと見ているようだった。
そして人通りの激しい電車の駅前に着いた、そこでオーナーは車から降りると再び歩き出した。向かう方向はやはりお店のほうだ。
私はそれにこっそりと追従する。できるだけ電飾の少ないビルにへばりつきながら、スーツを着込んだ人間の雄の間をすり抜けていくオーナーを見失わないように注視をする。時より、フラフラと倒れこむ雄もいた。
そして3分と経たないうちに、昨日私がゆうにこっそりと着いてきたあのお店へと入っていった。とりあえずは一安心と言えるだろう。
私はゆうのためにオーナーの尾行を彼女に提案したのだ。オーナーがゆうのことを騙そうとしたとはもうゆうは思ってはいなかったのだが、それを信じれる証拠がないのもまた事実だった。だから私はそれを確かめに来たのだ。
正直、今日中に確かめられるとは限らないが私にはもう今日しか時間はない。私はもう、オーナーを「食べる」つもりはなかった。それはゆうとの関係がやはり以前のものと変わってしまったからだ。
もちろん、それでもオーナーがゆうにとって一番身近な人間であることには変わりなかったが、もうゆう自身がオーナーと向き合いたくない可能性もあったからだ。それではオーナーを食べても意味がない。
そのため私が考えていたゆうとの関係を保ちながら使命を果たす手段は、見事にパアとなってしまったが、今はそれよりゆうの安全の確保が最優先だった。
もし、オーナーがゆうを裏切ったならばこれから誰かがゆうの家に襲いに行く可能性がないともいえなかった。オーナーはゆうの家の場所を知ってしまったのだから、それをそう例えばこの店の常連に教えたりするかもしれない。
可能性が限りなく低くはあったが安全のため最善を尽くしたかった。ゆうは一人しかないのだから。
とりあえず私はゆうに近くのホテルに泊まるように勧めたが、ゆうは24時間営業のファミレスに居るといった。そちらのほうが人が多いし安全だとのことだ。
これでとりあえずは安心だろう。後は私がオーナーを監視し、怪しい行動をとったら……「食べる」。
私はそう決意して店の中に侵入した。
41 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:54:45 ID:fJEpl7/7
(2-7)
それから閉店の5時まで、オーナーは店の中を忙しそうに走り回っていた。天井や椅子の陰に隠れて客との会話も盗み聞きしてみたが、それらしい会話はされていなかった。
「オーナー、お疲れ様でした~。お先、失礼しま~す」
「はい、ゲホゲホ、お疲れ様」
「オーナー、大丈夫ですか? 最近咳が多くなってるみたいですけど、流行のインフルエンザの事もありますから病院に行ってみたほうが……」
「大丈夫大丈夫。ささっ、あやかちゃんは早く帰って今日はのんびり休んでね」
あやかは不安そうな顔をして咳き込んだオーナーを心配したが、オーナーの笑顔に押し切られる形でお店を後にした。
残ったオーナーそれを見送ると、カウンター席に座ってお酒らしきものを飲みはじめた。
静かな店内に響くのは、オーナーが傾けるコップの中にある氷と、オーナーのこんな独り言。
「流石に、お客様殴っちゃったのはまずかったかなぁ……ゲホ、ゲホ」
そう言ってオーナーは自らの右手をプラプラと目の前で振り、そして小さく笑っていた。
それからしばらく一人でウィスキーを飲んでいたが、段々と咳が強く、長く続くようになってきていた。
「ゲホ、ゲホ、……病院……いや、節約しなきゃ。とりあえず、ゲホ、帰って寝よう」
オーナーは苦しそうに咳き込むと、それごと飲み込むかのようにウィスキーを一気に飲み干して、席を立った。
その直後だった。オーナーの身体が、先ほど外を歩いていた酔っ払いのようにフラフラと足元がおぼつかなくなり、そしてバタンと倒れた。そして今までにないほど、強く長く咳き込み始めた。
そしてそのまま立ち上がることも出来ずに咳を続けていたオーナーの口から出た何かが、白っぽい床に赤い点を打った。
あれは……血、じゃないよね?
そう思った直後、それが今までよりもっと大きく吐き出される。床がオーナーの咳のたびに、段々と赤くなっていく。
私はたまらず、天井から壁伝いにオーナーの下に移動した。
「どうしたんですか!?」
「ゲホゲホゲホ、君は、どう……して……ここ、に?! ぐぅ……ゴボォ!」
オーナーは私を見てそう言ったが、表情を変える暇もなく咳を続けていた。
やがて咳が少しずつ収まっていく。しかし、オーナーの顔色が明らかにおかしい。
「はぁ、はぁ……だ、大丈夫。ゲホゲホ……」
ゆっくりとオーナーは上半身を起こした。しかし、立ち上がる力はないらしく目もどこか虚ろに見える。
「携帯電話機で、ゆうに知らせてください!」
「ぐっ、ダメ。それより、聞いて欲しいことが、あるの」
オーナーは私をゆうがしたように胸に抱き上げた。ゆうと同じで温かいだが、その奥底で心臓が悲鳴を上げるように早鳴りしている。
「私ねぇ、親に、売られたんだ。離婚して、くっ、母親と住んで、13の時、父親のところに」
そこまで言うと、擦れた呼吸で息を吸っては吐き、吐いては吸ってを苦しそうに続け、やがてまた口を開いた。
「はぁ、はぁ、お母さん、お金貰って、私は、ゲホゲホグボォ……私立の学校に……」
「もういいです! とにかく……そう、病院に!」
「父親、愛人、たくさん居て……その癖、私には清楚に、って……だから嫌になって逃げて、ここ、開いたの」
そこまで話すと、床に倒れこんだ。そして咳をしながら私を宙に掲げるように伸ばしてこう言った。
「私ね……君と、同じこと、ゆうちゃんに、ゲボ、言ったんだ……。面接で……っ、机、殴って……なぎながら」
苦しそうにしながらも、子供のように笑った。
「あんがい……きみ、と私……ゲホゲホ、似ているのかも、ね」
そう言って優しく微笑んだオーナー。しかし、その直後今までより多くの血が咳とともに吐き出され、オーナーの顔を血で塗りたくった。
42 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:55:49 ID:fJEpl7/7
(2-8)
「ゲゲホッ! 私……もう、だめ……。ガン、まっき……肺、弱かった、の……」
だめって……それはつまり、死……ぬってこと?
「な、なんで!? さっきまであんなに……」
私がそう言うと、力ない笑顔のまま舌を出した。……我慢、していたんですか……。
「ゆう、ちゃん、ゲホッ…っ、よ、ろし、く」
そう言って私を床に降ろした。赤い血だまりの上に、緑色の私の身体が着地する。
「お……ね、……が、い」
「……だめ、絶対に」
私は反射的にそう言っていた。しかし私の方を向きながら目の焦点は既に合っていない。
「し、ま……す」
「私は、今日ゆうの前から消えます」
私の言葉に、虚ろになっていたオーナーの目がわずかに光を取り戻す。
「……えっ? ……なん、で? どう、して?」
「私の身体も限界なんです。このまま19時間経てば、私は死にます」
オーナーの顔に絶望の色が浮かんでいく。でも、それでいい。今は、ゆうが一人になってしまうということだけ、それだけを考えて。
「そん、な……」
「それが嫌なら、ちょっとだけ私に時間を下さい。あなたを助けて見せます」
「無、理……だ、よ」
「じゃあ、ゆうを一人にしますか? あわよくば新しく誰かのことを信じられるかもしれませんが、数日後にはあなたと天国でお会いすることになってしまうかもしれませんよ?」
私の非情な言葉に、悔しそうに唇を噛み締めるオーナー。
「あなたがゆうに人を信じろと言うのなら、あなたは今、私を信じてください。いいですね? 必ず助けますから、それまでしぶとく耐えてください」
私はそう言うと、オーナーの返事も聞かずにすぐさま入り口のドアの隙間から外に這い出た。
力強くオーナーにああは言ったが、100%の確信があったわけではない。ただ、おそらく出来るであろうという過信と、とにかくゆうの力になりたいという思いだけがそこにはあった。
外は暗闇が切り裂かれ始めていて、驚くことに誰一人通りの前にはいなかった。
「っ、嘘でしょ……」
私は予想外のことに焦りを感じながら、とにかく人間を探した。
その時、向かいの路地の奥のドアが開かれ、そこから若い女が携帯電話機を片手に出てきた。
私は瞬時にその女の前に移動すると、こちらに女が視線を向ける前にその口に飛び込んだ。
43 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:57:04 ID:fJEpl7/7
(2-9)
「んんっ?! んんんんんんん!?」
言葉にならない声を上げている女の中に、私は自らの身体をドンドン浸入させて行く。
「んっ、ぷはっ! な、なに……わ、私、今……何を飲んだ、の?」
そんな声が身体の中に浸入しきった私の耳に届く。……ただ、ひとつあなたに私が言えるのはこれだけ。
「ごめんなさい」
私は彼女の身体の中でそう言って、その女の身体を中から一気に溶解し、「食べ始めた」。初めて味わう甘美なる人間の味を噛み締めることもなく、ただひたすらすぐに食べ終えることに集中する。
「えっ?! なっ、何!? なん、の、こ……は」
女は驚きの声を上げていたが、すぐにその声も上げられなくなった。彼女には、もう口もなければ喉もない。溶けていく身体だってもうあなたのものではない。既に私の身体の一部となっている。
そんな彼女の中で私はこう願った。この人間が、ゆうや……オーナーとは違う素晴らしい人間ではないように、と。
そして彼女の身体を完全に「食べて」その身体の情報を全て得たと同時に、その答えは私に流れ込んできた。彼女の記憶という形で。
どうやら彼女はストリップ劇場の新人で中々の人気ダンサーだったようだ。年齢は21歳。昼間は喫茶店で働いている。去年までは大学に通っていたらしいが、今年の春に中退したようだ。しかしそんな情報よりも今は最優先すべきものが他にあった。
私に流れ込んでくる記憶の中に病院で診察を受けたという記憶、それが重要だった。しかし、私が懸念するような記憶は流れ込んでこない。
それを確認するや否や、私は急いでオーナーの元へと戻った。オーナーは苦しそうにしながら、擦れた呼吸でかろうじて意識を取り留めていた。
「オーナー、確認させてください! ガンに掛かっているのは、肺だけですか?」
私はオーナーの下半身に移動して、紫の艶やかなワンピースの中に潜り込みながら白い下着をずらした。
「ゲホゲホゲホ、ちょ、っと……なにして、……リ、ンパ、せつにも……てんい、して、る……グホォゲホゲホ! っ……」
オーナーは私の突然の行動に驚いたようだが、私の質問にはしっかりと答えてくれた。それは他でもないゆうのためだろう。
「分かりました。……私が必ず、あなたとゆうを救ってみせます」
私は既にオーナーの服の中にいるため彼女の顔は見えなかったが、オーナーのこんな言葉が私の心に響いた。
「やっぱり……ゲホゲホ、ゆうちゃんの言ってた通り、君は、優しい……子」
そう言われて私は……やっぱり、オーナーのことも好きであるということが分かった。
そしてもし、ゆうのことがなかったとしても、私は彼女を助けたいと心から思った。
「ひっ、あっ、な、にか、ゲホゲホゲホ! ……はいってぇ、くぅるぅう」
オーナーは咳をしながらも、今まで聞くことなかった甘い声を上げた。それが私の官能をわずかにくすぐるが、それを楽しんでいる暇など今はない。
「くっはぁああ! そ、んあ、はげし、すぎぃいいい!」
そんな声が私の浸入に更なる加速を加える。
「ああっ! ゲホゲホ、いっ、たいぃいい!」
その時だった。突如、オーナーが痛みの悲鳴を上げた。私の身体もそこで止まってしまった。そして目の前にあるものを凝視した。
「これって……処女膜……?」
私は先ほど食べた女の記憶からそれを特定した。……でも、これってつまり……。
「ゲホゲ、ゲホォ!」
そんな間にもオーナーの咳が私の耳に届く。くっ、小さな穴はところどころにあるけど、そこからじっくりと浸入していく時間はない!
「オーナー、ごめんなさい!」
私は少しだけ手前に身体を戻すと、勢いをつけてそれを一息に破り抜けた。
「ひぎぃいぁああああ! ゲホゲホォ、いぁぁああああいいぃいいい!」
オーナーはガンと、処女を喪失するという2重の痛みに大きな悲鳴を上げた。しかし、もうそこから子宮にはすぐに到着し、私はそこからオーナーの身体に私を根付け始めた。
「ゲホォホォ……くふぅ……頭が……」
オーナーの声が弱々しくなり始め、私も段々と意識が朦朧とし始める。
そして突然、私にもとてつもない痛みが広がり始める。それは私とオーナーが繋がりはじめた何よりの証拠。オーナー、は、こんな……痛みに。
「間に……あって……」
オーナーの口から私の言葉が紡ぎだされる。私はただ、薄れいく意識の中、とにかく必死でそれを願い続けた。
胸の奥底で、何かがうごめきそれを変えていく。その感触をわずかに感じながら、私は意識を失った。
44 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/21(金) 23:58:12 ID:fJEpl7/7
(2-10)
「……ナー。オー……! を、……して……さい! オーナー……!」
私は暗闇の意識の中、聞こえた声の方向に向けて、うっすらと目を開けた。
「ゆ……う?」
ぼやけた輪郭の主に向かって私は声を掛けた。その輪郭が私の声で上下に動く。
「オーナー! ……よか……った、一体、何が……いえ、今、人を呼んで来ます」
ゆうの声が私を現実に意識を引き戻させる。そして、立ち上がろうとしたゆうの身体を、私は抱きつくように止めた。
「だ、め」
「え……オー、ナー?」
何か、声が聞こえたが私の意識がまたしても段々と暗闇に引き戻され始めた。しかし、胸の辺りに先ほど感じた痛みはないあたり、どうやら私の考えは上手くいったようだ。
「もう少し……寝かせて」
私はそれだけを言うのが精一杯で、言い終わると同時に私はゆうに全体重を預けた。
「オーナー?! オー……! ……」
そして私の意識はまた暗闇の中へと引きずり込まれた。
それから何時間が経ったのだろうか。私は、宙に浮いて闇の中を漂う感覚から、ゆっくりと身体に何かの感触を覚えて目を覚ました。
「あっ、オーナー!」
今度はその声がはっきりと聞こえた。目を開けてみると、私を横から覗き込むゆうの顔もしっかりと確認できた。
「大丈夫ですか? 一体、何があったんですか。それに、あのメールは?」
「メー、ル?」
ゆうの単語を繰り返すと、頭の中に存在するオーナーの記憶が私の頭をよぎる。
「『助けてあげて』」
「そうです。……あの、もしかして、かおる……オーナーが先ほどマンションで会ったあの子に、何かあったんですか?」
ゆうの声が、わずかに震えていた。それは多分、私を心配してくれているから。
「あの子は……オーナーのことを尾行しに行ったんです。私が、もう一度オーナーを信頼できるように。……どこに行ったか、知りませんか?」
私の顔を真剣な眼差しで見ているゆうの視線から、明らかな焦りが感じられる。
「……ゆう」
「え……ゆう、って……」
オーナーは普段からゆうのことを『ゆうちゃん』と呼ぶ。いや、店の従業員は皆親しみを込めて『ちゃん』付けをしている。
「私の、話を聞いてくれる? ゆう」
「……かおる、なの?」
半開きにした口で、私にゆうが問いかけてきた。
私は頷いて事情を話し始めた。
45 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/22(土) 00:00:08 ID:fJEpl7/7
(2-11)
「……それで、オーナーの身体に寄生して、私は肺と転移が見られた部分をその『食べた』女の人のものに変化させたの」
「そこに、私がやってきた、と」
話は30分ほどに及んでいる。ゆうは、まず私がオーナーに寄生している事に疑問を持ったが、私が口から本体である緑色の身体をわずかに吐き出して彼女に見せると、彼女は驚きながらも納得した。
それからは比較的に私が話すことを、ゆうが黙って聞く形になり、説明はスムーズに終わった。
「じゃあ、今オーナーの意識は身体の中で眠っているってこと?」
「うん。私が出て行かない限り、目覚めることはない。例え死んでもね」
「生きてるんだよね、ちゃんと」
私は力強く頷く。するとゆうは、大きく息を吐いて笑顔を見せながらこう言った。
「よかったぁ……。う~ん、とりあえず今はかおるなんだよね?」
私は再度頷く。すると、ゆうの顔から笑顔が消え、真剣な目をしてこう言った。
「ちゃんと連絡してくれなきゃダメでしょ! 下手したら、君とオーナーの二人とも死んじゃうところだったんだよ!」
ゆうが大きな声で対面に座る私を叱る。私はゆうに初めて説教をされて、身を縮めこませた。
「まったくぅ……。でも、ありがとう。オーナーがもし死んでたら……私は多分、とても後悔したと思う。もちろん、君が死んでしまっていても、ね」
ゆうはそう言って優しく笑いかけてくれた。そして気の抜けたように席に持たれるとこうこぼした。
「ふぅ、やっぱりオーナーに向かってこんな風に叱るのって緊張するなぁ。部屋に来てくれたときはそんなに気にしなかったのに」
そう言って悪戯っぽくゆうは笑った。私はそれを見てゆっくりと立ち上がった。
「ちょっと、ここで待っててくれるかな、ゆう」
「え……う、うん。なにかあったの?」
私はそんなゆうを心配させないように笑い掛けると、お店から外に出た。眩しい太陽が暗い店内に慣れていた私の目を、ギラギラと刺激する。
そんな炎天下の中、私は今の時間帯には少し目立つ格好のまま、あるところに向かって歩き出した。
途中人通りの少ないところで、顔と身体を先ほど食べたダンサーのもの、『相沢 晴香』のものに変化させた。オーナーと背丈は似ていたが、胸の辺りが少し寂しい感じで、私はワンピースを胸の辺りで押さえながら走った。
そこは相沢晴香が昼間働いているバイト先である駅の近くの喫茶店だ。今日は休日と言うこともあってかなり繁盛している。
そこからぐるりと回り、ゴミ捨て場の目の前と、立地的にはあまり従業員に優しくない裏口に回ると、私はいつも相沢晴香がそうしているように店に入った。
46 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/22(土) 00:01:00 ID:TZvhuugr
(2-12)
「おはようございま~す」
間延びした声で私が入ると、廊下でゴミを両手に立っていた中年の眼鏡を掛けた男性店長が私を見て首をかしげながら近寄ってきた。
「あれ、相沢さん今日、シフト午後からじゃなかったっけ、まだ2時間ぐらいあるけど?」
私は相沢の記憶を反芻し、できるだけ不自然にならないように集中してこう言った。
「あ~、ちょっとヒマしちゃってて、ダメですか、早めに入っちゃ?」
「あっはっは。そんなことあるわけないだろ? こんなに忙しいんだ。こっちは嬉しい限りだよ。はい、鍵どうぞ」
そう言って私にロッカーの鍵を渡して狭い廊下の道を譲ると、私は軽く頭を下げながらその脇を通って、控え室兼更衣室の一室に足を踏み入れた。まったく、ちらちらと人の胸を見なさんな。
「あっ、晴香さん、こんにちは。お疲れ様で~す」
「やっほ~、ちぃちゃん。」
私は中で座っていた後輩『水川 千秋』に片手を上げて挨拶をした。彼女はケータイを片手で誰かにメール打っていたようだった。
しかし私が入るや否や、携帯を閉じるとロッカーから自らの仕事着を取り出した。メイド服という名の仕事着を。
そう、ここは駅前に新しくできたメイド喫茶だった。こんな大人向けの歓楽街にも、世の中の流行に押されるように去年建てられたお店だ。
「あ、使用中の札出しておくね」
私はその存在を思い出して、部屋の中のドアに付いている『使用中』という札を、ドアの外に貼り付け鍵を閉めた。
「あっと、すいません」
水川千秋はどちらかといえば抜けている性格で、よくこの札を付け忘れる。まぁ、それが幸いして、部屋に私と彼女の二人だけの空間を作り出せた。
私は服を脱ぎ始めた水川千秋の背後にゆっくりと近寄り、彼女の身体に手を掛けようとした。
その時、不意に水川千秋は私の方へと振り返るとこんなことを言ってきた。
「そう言えば晴香さん、今日はいつもにまして派手な服着てますね~」
「え、あぁ、うん。ちょっと、ね」
「あぁ~、男ですか?」
「ち、違う違う!」
私は慌ててそう誤魔化すと、反対にある自分のロッカーを開けた。しかし、相変わらず水川千秋はこちらを見てニヤニヤと笑っている。確か彼女は高校生だから、そういう出会いに飢えた年頃なのだろう。
仕方なく私は自分の仕事着を取り出した。残念ながら、携帯を持っていないためそれを見るフリなどはできず、何もしていないのも怪しまれると思ったからだ。
「きっとメチャクチャイケメンなんだろうなぁ~。いいなぁ~、見たいなぁ~」
背後でいやらしく私に声を向ける水川千秋。そのため彼女の着替えはまったく持って進んでいない。
それからもいやらしい皮肉を掛けられながら、私はあっという間に着替えが進み、もう黒いオーバーニーソックスを履き終え、後は白いカチューシャをつければ終わり……って私は何をしてるんだろう。
「あ、ヤバ。急がないと」
やっと自らの着替えに本格着手し始めた。私が白を基調としたメイド服で、彼女が黒を基調としたそれなのはあのスケベ店長の独断によるものだ。
そのため、私のは白いブラウスと黒いスカートを別々に履く必要があったのだが、彼女のそれは上下一体のワンピースのため頭から被るだけで実質済む。
私はその瞬間を狙ったのだが、彼女は私の順序とは逆に座ってソックスから履いて行き、更に靴まで履く。おそらく、メイド服を着たらすぐにでも出れるように準備しているのだろう。
その様子を今度はじろじろと私は見ていたが、相当焦っているらしく彼女はこちらに目などくれない。
その隙に私はこっそりと邪魔な下着をスカートから見えないぐらいにまで降ろした。
そして水川千秋が頭からメイド服を被り視界が失われた瞬間、私は椅子に座っていた彼女を押し倒した。
47 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/22(土) 00:02:14 ID:fJEpl7/7
(2-13)
「えっ?! きゃあ!」
当然ながらの声を上げて、腰の部分でメイド服がめくれているとううあられの無い姿で、私に乗り抱えられた。
「あ、あの、ど、どうしたんですか……晴香さん」
さりげなく腰までメイド服を降ろそうとしているが、その手を私が軽く握って抑える。
「なっ、ちょ、ちょっと! 離し……んっ!」
私は反論する間も与えずに自らの唇で彼女の唇をむさぼる。そのまま舌を滑り込ませて、彼女を中を少しずつ浸食する。
「んんっ、んっ、ぷはっ! はぁ、はぁ……」
私は唇を離すと、驚いたまま声も上げない彼女に見て妖しく笑い、そのままゆっくりと彼女の下着を私と同じように降ろし始めた。
しかしそれでも彼女は声を上げない。私はそれを疑問に思ってこう聞いてみた。
「何で声を上げないの? あなた、恥ずかしくないの?」
私がそう聞くと、水川千秋はなんと自ら顔を上げると私の唇に自分の唇を重ね合わせてきた。
「んっ?! んんっ、んんんんっ……あっ、はぁはぁ」
「はぁはぁ、えへへ……晴香さん、もっとしてぇ」
意外な声が彼女の口からこぼれる。しかし、彼女の表情からそれが嘘であるとは私には思えない。元々、その気がある女性なのだろうか?
しかしそんなことは、私自身どうでもよくなってきていた。ただ、その悦に酔った顔を見ていると、私も自然に笑ってしまい、そしてこう言った。
「ふふ、分かった。きもちよぉーく、してあげるねぇ」
私はそう言って、自らのスカートを捲り上げてあらわになった秘所を、ちぃちゃんの秘所と重ね合わせた。
「きゃっはぁ! ふぅぁああああ、きもちいぃぃ」
「ああっ! いぃ! いぃよぉぉお、ちぃちゃん!」
自然と私の腰が動いて、私のちぃちゃんの秘所が塗れた体液をお互いに交換し合っている。
「ち、ちぃちゃんのぉお、あったかくてぇええ、きもちいぃいぃぃい!」
「はるかぁ、さんのもぉおおお、やっばぁぁああい、くぅ、はぁああああん!」
私はただ快感を求める頭で、一つだけ、顔と身体をオーナーのものに戻し始めた。胸のサイズが大きくなったため、服に圧迫感を覚えるが、それも今は関係ない。
「いぃぃやああ、かわぃいかぉおおお! おっきぃ、むねぇええ! それでぇ、それでぇもっとわたしぃをいかせてぇええええ!」
「くぅはぁあああん! いいよぉぉお、これでぇえええ、いっちゃぇえええええええ!」
私はそう言ってお互いの秘所から愛液が飛び出すと同時に、擦り合わせたちぃちゃんの穴を目指してオーナーの穴から私の本体を射出した。
「はぁあああああんんぅう! なにかがぁ……なにか、きてるよぉお……」
そう言って水川千秋は疲れきったように静かになった。その間も私は素早く水川千秋の身体の奥へと進んでいく。
そしてまたしても処女膜に出会った。やはり彼女の子宮へと続く道をふさいでいる。
「そうだ……これなら痛みは少ないかも」
私はある方法を思いつき、処女膜に近づくとそれに身体を張り付け、ゆっくりと処女膜を溶解していった。
「はぁああ……なんかぁ、あったかくてぇぃ、きもちぃいいぃ……」
そんな甘い声がくぐもった音で彼女の中に居る私にも聞こえた。蕩ける様な甘い味のそれを溶かしつくし、私は浸入を再開した。
そのまま子宮に到着すると、私の身体が水川千秋へと根付き始めた。そして私の意識も段々薄れていく。
48 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/22(土) 00:05:47 ID:TZvhuugr
(2-14)
「う……んんんっ」
しかし、そのまま視界に靄が掛かったようにぼやけた後、すぐに気持ちよさそうに寝ている白いメイド姿のオーナーが私の視界に入った。
私はその身体を抱きかかえながらゆっくりと上半身を起き上がらせる。24歳の若きオーナーがメイド服で眠っている姿は、どこか神秘的な神秘的なものを感じさせる。
そして、その彼女の中には既に私の子を産める器官が備わっている感じたら、私は彼女が愛おしくなりその唇に軽く自らの唇を重ねた。
「ううんっ……んっ」
するとオーナーは眩しそうに瞼に皺を寄せながら、ゆっくりと目を開いた。
「あなたは……誰?」
目を瞬かせながら彼女は起きた。私はそんな彼女にこれだけを言う。
「あなたのお店でゆうが待っています。私と一緒に来てください」
それだけを言うと、私は彼女の手を引っ張って無理矢理に廊下に出た。すると廊下に居たスケベ店長がまたしても嫌らしい視線をしてこちらを見た。
「あっと千秋ちゃん、すぐにフロアに……って、あ、あんたは……な、なんで」
私の後ろに居たオーナーを見て、スケベ店長の顔が変わっていき、後ろにあとずさったところでダンボールに頭をぶつけ、そして眼鏡が落ちた。
「あっ、あなたは!?」
オーナーが驚きの声を上げ、それを見た私も、私の中にあるオーナーの記憶のそれも比較的新しい部分にその眼鏡が取れた中年男性の顔があることに気付いた。
「あ、あんたが……ゆうのことを……」
その記憶とは、昨日の夜にゆうが会計手伝いをしていたあの部屋に入り、そして……オーナーに殴られ、逃げていった男だった。
「き、昨日はよくもやってくれたなぁ!? い、慰謝料払え! そ、それにあの金も!」
そんな風にヒステリックに叫ぶ男に、オーナーは頭を下げてこう言った。
「も、申し訳ありませんでした!」
……なんで? オーナーなんで謝るの? こいつ、ゆうのこと、泣かしたんだよ?
しかし、それもオーナーの記憶がある今なら分かった。オーナーは元々誰にでも優しい人であり、更にオーナーはこの男にかなりの金を借りている。
あのオーナーのお店の経営状態は、かなり悪かったようで、オーナーはガンの治療費さえも店舗の経営のために我慢していたのだ。そして借金の額もかなり大きい。
それは全て……一生懸命働いてくれる女の子たちを、もちろんその中にいるゆうも守るため。
「……慰謝料、借金共に、利子100%つけて返してあげるわよ!」
私はオーナーの手を離すと、全速力でその最低の外道の目の前まで近寄ると、硬く握り締めた拳を頬にめり込ませた。
「ひぃぎゃああぁああああ!」
あの清楚なオーナーに殴られて、逃げ帰る程度の男なのだ。だからか弱い高校生の水川千秋に殴られても、やはり何とも情けない声を上げた。
そのまま裏口のドアに寄りかかったその最悪な男に、私はいつかのテレビで見た懇親のドロップキックを見舞った。
「ぎゃああああああああああああああああああ!」
何とも情けない声でドアを背中でぶち開け、そのままゴミの山に突っ込んでいった。そのゴミは確かこの外道が先ほど運んでいたものと似ている。
「ゴミの日も守れないとは、さすが外道……」
私は記憶の中にあったゴミの日の一覧を思い出すと、燃えるゴミが火曜日と金曜日であったことに気付き、ゴミに頭から突っ込んだ外道にそう吐き捨てた。
49 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/22(土) 00:06:47 ID:fJEpl7/7
(2-15)
「さっ、オーナー行きますよ!」
私は呆然としているオーナーの右手を無理矢理掴むと、お店のフロアのほうから覗き込んでいたお客様と仕事仲間から逃げるように裏口から飛び出した。
しかし結局、オーナーのお店に戻るためにはメイド喫茶店の表を通るのが一番近く、そこを通ったときは賑わっているお客から歓声と拍手をいただいた。
それから人通りが激しくなったお店への道を、黒いメイド服を来た私が白いメイド服を来たオーナーを引っ張りながら走り抜ける。当然、道行く人が物珍しそうに皆こちらを見ていた。
「こ、この格好は、は、恥ずかしいよぉ……」
そんな可愛らしい声が後ろから聞こえ、それが頬を赤らめたオーナーの声であることに私は小さく笑う。当然私も恥ずかしいわけだが。
程なくして私たちはオーナーのお店へと辿り着いた。途端にゆうがこちらに駆け寄ってきた。
「オーナー!? それとも、かおる!? そ、それより一体その格好は……、それに……あ、あなたはどちら様でしょうか?」
ゆうはいっぺんにオーナーと私に質問を投げかけてきた。しかし、私もオーナーも人通りの中を全力疾走で駆け抜けてきたため、息を切らして答えられない。
ふと、圧迫されていたオーナーの胸のボタンがピーンと吹き飛び、たわわに実ったそれがむき出しになった。
「きゃあ!」
オーナーが上げた小さく可愛らしい悲鳴に、私もゆうも一瞬押し黙ったが、やがてクスクスと小さく笑い出した。
「じゃあ、本当に私のガンを」
「はい。一応肺とリンパ節は、あの相沢晴香さんのものに代わっているでしょうから大丈夫でしょう」
私がそうオーナーに言うと、オーナーは複雑な表情でこう言った。
「でも、それじゃその、相沢さんは私の代わりに死んでしまったんですね」
「……すいません。本当は男のそれにしようとしたんですが、通りにはその時間誰も居なくて」
私の言葉にオーナーは首を振る。
「それでも誰かが死ぬのに代わりはない……。あ、けど、あなたを恨んでいるわけじゃないですよ? こうして生きていられて私は本当に嬉しいです」
そう言ってニコリと笑ったオーナーの顔が私にはとても嬉しかった。
「かおる……」
その時、私の隣に座っていたゆうが、不意に私の名前を呼んだ。
「本当に、かおるなんだよね?」
水川千秋の身体の私は、その言葉にゆっくりと頷き、そしてこう聞いた。
「ゆうは……あんなふうに、緑色の身体をした私じゃなきゃ、嫌い?」
私の言葉に、ゆうは迷いなく私を抱きしめた。水川千秋の身体の私を。
「そんなことないよー。私は優しい君が大好き。どんな身体でも、君は私に優しくしてくれると信じてるから」
「ゆう……」
私はそのゆうの優しい言葉。
「これから、かおるはどうするの?」
「……使命を果たすために、この地球の全人類に寄生する。ただ……やっぱり男は全員『食べる』」
身体を離してゆうとオーナーの顔を見ると、二人はそれぞれ微笑んでこういった。
「私は男が嫌いだから……そんな世界があるなら見て見たいと思う」
「ゆう……」
「男が全員大嫌いと言うわけではないですが……かおるちゃんとゆうちゃんが大好きなのは確かなこと。だから私も二人とずっと一緒に居たい」
「オーナー……」
私は、愛する優しき二人を前に決意した。
「やっちゃい……ますか」
50 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/22(土) 00:08:47 ID:TZvhuugr
(2-16)
「んんっ、はぁ、さいこう……」
私はそう言って寄生したばかりの身体を持ち上げた。傍らには先ほどまで私が寄生していた同じ大学の生徒が眠っている。
その彼女を私は更衣室のソファーに優しく寝かせると、自らの衣服を整えて更衣室を後にした。
通り行く外国人……と言っても今の私、つまりジェニファーの視点では同じ国民なのだが、その生徒の中を通り過ぎ、大学を後にした。
ニューヨークの町並みを歩いて高層マンションの一室に私が帰ってくると、二人の日本人女性が私を出迎えた。
「お帰り~、かおる」
「お疲れ様、かおるちゃん」
家を出たときとはまったく姿かたちが違う私を見ても、彼女達はいつものように私に接してくれた。
ゆうは私の身体を物珍しそうに触る。顔を引っ張ったり、胸を触ったりと、遠慮がない。
オーナー……もとい『すず』もいつものように、そんな様子を見て、穏やかな微笑みを浮かべている。
「そう言えば、去年より1億人近くも人口が減ったって、アジア圏で、それも男が特に」
ゆうが私の胸に顔を埋めながら言ってきた。私はその頭を撫でると、今度はすずが話しかけてくる。
「かおるちゃんや子供達がこの1年間頑張ったから、ね」
私はその言葉に首を振った。多分、私より子供たちのほうがずっと頑張っていると思う。
「はぁああ、どうしよ、かおるぅぅ……疼いてきちゃった」
私の胸から顔を上げたゆうが、赤い顔をして私を見た。視線をすずに移すと、恥ずかしそうにしながらもこちらに寄ってきて、そのまま私にしだれかかって来た。
「……二人とも、元気ですねぇ」
「あぁ、酷い! 自分は寄生するときに楽しんできてるからって!」
「そ、そうだ、そうだ!」
私の言葉に反論したゆう、それに同意するようにすずが続く。
その二人の股間が盛り上がっている。その正体は、ゆうに寄生した時とすずにもう一度寄生し直したときにつけた雄の性器だ。私が食べた雄の中でも、マシなものを選んで二人の身体を変化させた。
ゆうはあれから私に寄生されることを自ら望んでくれた。その股間に男のものを生やす事も、だ。彼女曰く、男がいなくなるためならこれぐらいなんともない、とのことだ。今ではめっきり楽しんでいるようだが、男は相変わらず大嫌いだ。
それは何も二人だけにしたわけではない。雄がいなくなっても人間が子孫を残せる様に、私は子供達にも2回の寄生につきに1度はこれを生やさせるようにさせている。
しかし……、まさかあの二人がここまで貪欲になるとは思いもしなかったが。
「まぁ、いいけど。じゃあ、楽しみましょうか」
「うんうん、さすがかおる、優しい子だね」
私の頭を優しく撫でてくれるゆう。
「ありがとう、かおるちゃん」
私の頬に優しいキスをしてくれるすず。
そして私たちは隣のベッドルームに向かった。もちろん、私だってこれからの行為が楽しみで仕方ない。
だって、私は二人が大好きだから。
(終)
51 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/22(土) 00:22:47 ID:TZvhuugr
書いたものをひたすら番号をつけながら貼り付ける作業なのですが……自らの文章を流し読みしていると……我ながら酷い、と頭を抱えてしまいます。
それと、>>36は 一応(2-2)となります。まったく意味はないのですが、申し訳ありません。
これはもう自分が好きな【寄生】、【捕食】、【擬態】という三原則をなんともご都合主義的にちりばめたのですが……
もうその設定云々ではないですね。文章の貧弱さで泣けてきました。
もっと酷い部分はありますが、あまり自分で言うのも五月蝿いと思われますので、失礼させていただきます。
……近いうちにまた、酷い駄作をお見舞いしに来るかもしれませんが、どうか冷たい視線でお迎えいただければ幸いです。
本当にありがとうございました。
堕ちた即死
8 堕ちた即死 sage 2009/08/19(水) 03:09:56 ID:gjVurqgW
妙な電波を受信したので即死回避用のネタを書いてみました。
「まだ小さいわね。」
エロパロ森と呼ばれる深き森の一角。
凛々しい顔立ちの少女が鋭い目つきを向けていた。
少女の視線の先には、彼女の背丈の半ばほどの大きさの白いブヨブヨとした塊がある。
「まだ30レス行っていない。やれるっ!」
そう言うと少女は腰に下げた鞘から刀を抜く。
彼女は『即死者』という存在だ。
白い塊、人々の黒き欲望が集まった『スレ』と呼ばれる物体が巨大化する前にそれを消滅させる戦士だった。
ちなみにスレの大きさを表す単位をレスという。
少女が刀を構えた瞬間、塊から白い触手が彼女に向かって伸ばされる。
「ふんっ!」
それを一振りで叩き切る少女。
だが続けざまに幾本もの触手が伸びていく。
(無駄な抵抗よ……えっ、レスが増えていく!?)
落ち着き払った表情で刀を振るう少女。
だがその顔に突如動揺が走る。
スレがその身を振るわせながら徐々に大きさを増し始めたのだ。
(マズイ! 30レスを超えてしまう!)
必死にスレに刀を振るおうとする少女だが、伸びる触手に邪魔され近づくことが出来ない。
そしてついにスレが30レスを超えてしまった。
ビュウッ!
「くそぉっ!」
今までとは桁が違う、数え切れないほどの触手がスレから少女に襲い掛かる。
何本かは斬り捨てたが、抵抗もむなしく彼女は触手に捕らえられてしまった。
「く、こんなもの!」
必死に手足の束縛を外そうとする少女。
だが触手は悠々と彼女の身体を運び、スレの本体に乗せる。
「ひゃぁっ!」
少女は白いブヨブヨのスレに半ば沈み込むような形で乗っかってしまった。
スレはまるでとても柔らかいソファーに寝そべったような感触だ。
少女はスレに触れて、その所々は柔らかい固体、所々は生温い液体と奇妙な構造をしていることを知った。
「ひゃうっ!」
少女が奇妙な声を上げる。
彼女の股間、そこを覆う何層もの衣服をスレが染み透ってきたのだ。
気色悪い感触を敏感な部分で感じてしまい嫌悪の情を抱く少女。
だがスレはそこに留まらず、秘所へを進み始める。
「あひぃっ! ひいいやあああぁぁっっっ!!」
桃肉を濡らし、処女膜の狭まりをもぬるりと通り越して進むスレ。
「いややああああぁぁぁぁっっっ!! もう入ってこないでええぇぇぇえええっっっ!!」
凛々しい瞳から涙を零して泣き叫ぶ少女。
だがその哀願も空しく、スレは彼女の膣を埋め尽くすほどの量で侵入してしまった。
「いやぁぁぁ……気持ち悪いよぉぉ……。」
吊りあがっていた形の良い眉をハの字に下げてしまい、少女は弱々しい声を漏らす。
彼女既に『即死者』ではなく、もはやスレに捕らえられた哀れな犠牲者でしかなかった。
9 堕ちた即死 sage 2009/08/19(水) 03:11:14 ID:gjVurqgW
堕ちた戦士の秘壺にスレは強力な催淫エキスを放出する。
瞬く間に粘膜から吸収されたそれは少女の未成熟な身体の隅々まで回っていく。
「ひぃやああぁぁぁ……わたしが……わたしじゃなくなるぅ…………だれか……たす……。」
少女の頭を侵すスレエキス。
理知的で勇ましい精神を持っていたその脳は真っ白な光に包まれ、光が晴れた後には快楽を楽しむ感情しか残っていなかった。
少女の胸と尻の肉を侵すスレエキス。
これから長きに渡る責めに耐えられるよう、肉付きの薄い胸と尻をムッチリと大きくしてしまう。
少女の子宮を侵すスレエキス。
子宮筋の締まりを緩くし、子宮口を広げてスレが侵入し易い様に少女の子宮を改造した。
「あぎゅうううぅぅぅ!!」
スレが子宮を犯しはじめ、目を見開く少女。
「いやあああぁぁっっ!! ぎもぢいいいぃぃぃっっっ!! ぎもぢいいよおおおおぉぉぉっっっ!!!」
その口からの叫びは苦痛ではなく快感に満ちたものだった。
「もうしゅれ、スレから離れられないイイィィィいい!! 」
少女は激しい快感で拘束された身体を動かせるだけバタつかせる。
「イクウウウウゥゥゥッッ!!!………アグィっ! いったのにまたぁぁぁっっ!!! ヒイイイィィィイイッッッ!!」
身体を突っ張らせる彼女。
その膣にどんどん白いスレが侵入を続けていく。
「……あぁ…………ひぃぁ………」
長い時間が過ぎ、少女は地に倒れ伏していた。
全身に白濁液がこびり付き、そのお腹は大きく膨れ上がってしまっている。
辺りにスレの姿は無く、無惨な少女の姿だけがそこにはあった。
「はぎゅいぃっっ!!」
突然彼女は目を見開いて叫ぶと、ガクガクと身体を揺らしながら立ち上がる。
「ス、スレざまぁ……わかりましたぁぁ……。」
いないはずのスレに応じるような声を出す少女。
実はスレはその大きく膨らんだ子宮に寄生してしまったのだ。
自由に動け、戦闘能力のある少女の身体を手に入れたスレ。
「はい゛ぃぃっ……"書き手"を探しまずぅぅっ!」
虚ろな瞳を彷徨わせながらふらふらと歩く少女。
スレは彼女を使って新たなる獲物『SSを投下してくれる書き手さま』を探し始めたのだ。
スレを刈り取る戦士『即死者』の少女。
敗北しスレの虜となった少女は数百レスまでスレが成長しdat落ちという安息の日が来るまで解放されることは無い。
妙な電波を受信したので即死回避用のネタを書いてみました。
「まだ小さいわね。」
エロパロ森と呼ばれる深き森の一角。
凛々しい顔立ちの少女が鋭い目つきを向けていた。
少女の視線の先には、彼女の背丈の半ばほどの大きさの白いブヨブヨとした塊がある。
「まだ30レス行っていない。やれるっ!」
そう言うと少女は腰に下げた鞘から刀を抜く。
彼女は『即死者』という存在だ。
白い塊、人々の黒き欲望が集まった『スレ』と呼ばれる物体が巨大化する前にそれを消滅させる戦士だった。
ちなみにスレの大きさを表す単位をレスという。
少女が刀を構えた瞬間、塊から白い触手が彼女に向かって伸ばされる。
「ふんっ!」
それを一振りで叩き切る少女。
だが続けざまに幾本もの触手が伸びていく。
(無駄な抵抗よ……えっ、レスが増えていく!?)
落ち着き払った表情で刀を振るう少女。
だがその顔に突如動揺が走る。
スレがその身を振るわせながら徐々に大きさを増し始めたのだ。
(マズイ! 30レスを超えてしまう!)
必死にスレに刀を振るおうとする少女だが、伸びる触手に邪魔され近づくことが出来ない。
そしてついにスレが30レスを超えてしまった。
ビュウッ!
「くそぉっ!」
今までとは桁が違う、数え切れないほどの触手がスレから少女に襲い掛かる。
何本かは斬り捨てたが、抵抗もむなしく彼女は触手に捕らえられてしまった。
「く、こんなもの!」
必死に手足の束縛を外そうとする少女。
だが触手は悠々と彼女の身体を運び、スレの本体に乗せる。
「ひゃぁっ!」
少女は白いブヨブヨのスレに半ば沈み込むような形で乗っかってしまった。
スレはまるでとても柔らかいソファーに寝そべったような感触だ。
少女はスレに触れて、その所々は柔らかい固体、所々は生温い液体と奇妙な構造をしていることを知った。
「ひゃうっ!」
少女が奇妙な声を上げる。
彼女の股間、そこを覆う何層もの衣服をスレが染み透ってきたのだ。
気色悪い感触を敏感な部分で感じてしまい嫌悪の情を抱く少女。
だがスレはそこに留まらず、秘所へを進み始める。
「あひぃっ! ひいいやあああぁぁっっっ!!」
桃肉を濡らし、処女膜の狭まりをもぬるりと通り越して進むスレ。
「いややああああぁぁぁぁっっっ!! もう入ってこないでええぇぇぇえええっっっ!!」
凛々しい瞳から涙を零して泣き叫ぶ少女。
だがその哀願も空しく、スレは彼女の膣を埋め尽くすほどの量で侵入してしまった。
「いやぁぁぁ……気持ち悪いよぉぉ……。」
吊りあがっていた形の良い眉をハの字に下げてしまい、少女は弱々しい声を漏らす。
彼女既に『即死者』ではなく、もはやスレに捕らえられた哀れな犠牲者でしかなかった。
9 堕ちた即死 sage 2009/08/19(水) 03:11:14 ID:gjVurqgW
堕ちた戦士の秘壺にスレは強力な催淫エキスを放出する。
瞬く間に粘膜から吸収されたそれは少女の未成熟な身体の隅々まで回っていく。
「ひぃやああぁぁぁ……わたしが……わたしじゃなくなるぅ…………だれか……たす……。」
少女の頭を侵すスレエキス。
理知的で勇ましい精神を持っていたその脳は真っ白な光に包まれ、光が晴れた後には快楽を楽しむ感情しか残っていなかった。
少女の胸と尻の肉を侵すスレエキス。
これから長きに渡る責めに耐えられるよう、肉付きの薄い胸と尻をムッチリと大きくしてしまう。
少女の子宮を侵すスレエキス。
子宮筋の締まりを緩くし、子宮口を広げてスレが侵入し易い様に少女の子宮を改造した。
「あぎゅうううぅぅぅ!!」
スレが子宮を犯しはじめ、目を見開く少女。
「いやあああぁぁっっ!! ぎもぢいいいぃぃぃっっっ!! ぎもぢいいよおおおおぉぉぉっっっ!!!」
その口からの叫びは苦痛ではなく快感に満ちたものだった。
「もうしゅれ、スレから離れられないイイィィィいい!! 」
少女は激しい快感で拘束された身体を動かせるだけバタつかせる。
「イクウウウウゥゥゥッッ!!!………アグィっ! いったのにまたぁぁぁっっ!!! ヒイイイィィィイイッッッ!!」
身体を突っ張らせる彼女。
その膣にどんどん白いスレが侵入を続けていく。
「……あぁ…………ひぃぁ………」
長い時間が過ぎ、少女は地に倒れ伏していた。
全身に白濁液がこびり付き、そのお腹は大きく膨れ上がってしまっている。
辺りにスレの姿は無く、無惨な少女の姿だけがそこにはあった。
「はぎゅいぃっっ!!」
突然彼女は目を見開いて叫ぶと、ガクガクと身体を揺らしながら立ち上がる。
「ス、スレざまぁ……わかりましたぁぁ……。」
いないはずのスレに応じるような声を出す少女。
実はスレはその大きく膨らんだ子宮に寄生してしまったのだ。
自由に動け、戦闘能力のある少女の身体を手に入れたスレ。
「はい゛ぃぃっ……"書き手"を探しまずぅぅっ!」
虚ろな瞳を彷徨わせながらふらふらと歩く少女。
スレは彼女を使って新たなる獲物『SSを投下してくれる書き手さま』を探し始めたのだ。
スレを刈り取る戦士『即死者』の少女。
敗北しスレの虜となった少女は数百レスまでスレが成長しdat落ちという安息の日が来るまで解放されることは無い。
(ゆうと私 後編)
970 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:26:47 ID:WA9DI9va
(1-13)
私は台所に向かうゆうに付いて行き、そして彼女の料理のお手伝いをした。とは言っても、硬化させた身体で冷蔵庫からお肉や野菜を取り出して彼女に手渡すぐらいしかできないのだが、
ゆうは私がそうするたびに「ありがとう」と声を掛けて私を撫でてくれた。
それからあっという間に料理は終わり、茶の間には綺麗に盛り付けをされた料理が並んでいた。
「はい、じゃあいただきます」
「いただきます」
それぞれのお皿にゆうがおかずを取り分けてから、ゆうの音頭に合わせて私もそう言った。
「あー、そんな無理しないで」
ゆうが苦笑いしながら私に言った。私が何をしようとしていたかと言うと、ゆうと同じようにお箸で料理をつまもうとしていたのだ。
しかし、いくら身体を硬化させてもこの2本の棒を上手く操るのはとても難しかった。
「けど、私みたいな食べ方は行儀が悪いって今日のテレビで言ってたから」
私の言葉にゆうは目を丸くして、それから少しの間を空けて楽しそうに笑った。
「あはははは、そんな番組見たんだ。勉強熱心なことだね。私なんかそんなの見てたらすぐに寝ちゃうよ」
そうは言うものの、ゆうは今日の番組でやっていたお箸の持ち方はしっかりと出来ている。流石、ゆう。
「けど、気にしなくてもいいよ。かおるはかおるなりの食べ方で食べていいよ」
「でも……」
私が反論しようとすると、ゆうはさっと私の前に掌をかざしそれを制した。
「じゃあ、こうしようか」
そう言ってゆうは、私のお皿の料理をお箸でつまむと、なんとそれを私の身体の上に優しく置いてくれたのだ。……優しすぎるよ、ゆう。
「ありがとう、ゆう」
「いえいえ、どうぞ」
そう言って私にそれを食べるように彼女は言った。私は身体の中心に料理を入り込ませると、それを溶解させて味わった。
「美味しい!」
言うまでもなかったが、言わずにはいれなかった。ゆうが作ってくれた野菜炒めは、お手製のソースが牛の肉にも野菜にもうまく絡んでいて、とても美味しかった。
「へっへ~ん。ありがと」
少し恥ずかしそうにはにかんで彼女は自分でもそれを口にし、そして満足そうに笑った。
971 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:29:28 ID:WA9DI9va
「んっん~、おはよー」
「おはよう、ゆう」
窓から差し込む朝日でゆうが目を覚ました。その胸に抱きしめられたままの私も挨拶を返した。
ゆうは目覚まし時計もないのにきっちりと起きる。この数日間彼女を見ていると……こう言ってはなんだが、意外としっかりとした人間であるように感じる。
「さぁさぁ、朝のお通じ~」
そう言ってゆうは私をテーブルに置くと、トイレに消えていった。程なくしてトイレからこんな声が聞こえた。
「あぁ、紙がない!?」
私はいそいそと冷蔵庫の中身を覗いた。よかった、間違えてここに入れたわけではないらしい。
「こらぁ~! いくらなんでもそんなところに入れないってば!」
冷蔵庫を開ける音でゆうも私がどこを確認したのか気付いたのだろう。トイレの中から反論する声が聞こえた。
そこで私はあることを思い出して家の窓に近づいて下を覗いた。すると、彼女の自転車のカゴにおそらくゆうが探しているものであろうそれがあった。
……しっかりしてる……しっかり、してる……しっかり、して……。
「じゃあ気をつけて人捜ししてきてね。明日は土曜日で休みだから一緒に探してあげるからね」
「うん、ありがとう。ゆうも気をつけてね」
「りょーかいしました! 行ってきま~す!」
そしてゆうは元気よく家の外へと飛び出して行った。
「行ってらっしゃ~い」
……見事に家の鍵を閉め忘れていった。
私はそれを閉めようとしたが、ゆうが家の鍵さえも忘れてしまっている可能性を考えやっぱり鍵は閉めないままにしておくことにした。
部屋を見渡した。綺麗に整頓されたゆうの大切なぬいぐるみの数々。一緒に食事をした茶の間のテーブル。そして一緒に寝たベッド。
決して広いとは言えない部屋にそうしたものが詰まっている。しかし掃除はしっかりと欠かさずしている綺麗な部屋。
私は今日の夜、ここを立つ予定だ。
明日までに寄生できればいいのだが、明日はゆうの仕事の休みの日と言うこともあって、彼女と私が一日をずっと一緒に過ごさなければならなくなる可能性もあったから、
今日の夜にお別れを言うことに決めたのだ。
それまで私はどう過ごそうか考えていたが、この6日目を迎えたこの身体で動き回れるのは今日で最後になるということで、もう一度だけ街を見て回ることにした。
別に人間の身体に寄生するようになれば嫌というほどこの街で過ごすことになるのだろうが、それでもやはりそれからでは見えなくなってしまうようなものがあるような気がして、私はそう決めた。
最後にガスなどの元栓が締まっているかどうかだけ確認すると、私はこの身体での最後の見聞を始めるため、ドアの隙間から街へと繰り出した。
972 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:38:08 ID:WA9DI9va
(1-15)
さて、その見聞はさしていつもと変わらないものだった。特別何か新しい発見をしたわけでもなければ、当然ながらゆう以上の素晴らしい人間もいなかった。そんな人間が存在しているとも思えないが。
それでもこの身体で最後になるということだけで、随分と見えるものが違った。空の色も、太陽の照りつけも、風が通り抜ける音も、
寄生したらきっと違うものに見えたり聞こえたり感じたりするんだろうな、と思うと嬉しくもあり哀しくもあった。
しかし、全ての人間に寄生し終わってしまったらどうするのだろうか? それから2週間経ってしまえばその最後に寄生した宿主の身体は腐り始め、そのままだと私も新しい宿主を見つけられずに一緒に腐ってしまうはずだが……。
まぁ、細かいこと考えても仕方ないか。それより、これからドンドンと産まれる事になる卵について考えるべきことがある。それはまずその私の子供たちの寄生対象だ。それに対して一つの制約を子供達に私は出す決意をしていた。
私の子供達はこれから宿主になった後からその宿主から私が抜け出した後もずっと、昼間はそれまでと同じように社会に溶け込ませ、夜になったら卵を産んでもらうことになっている。これは一応、生殖能力が高いことが望ましい。つまり若い人間だ。
あまりに年老いた人間だと、身体に私たちの種がなじむ前に腐敗が始まる可能性が高く、卵の数もあまり望めない。だから年齢が高めの個体は基本的にチャンスだと「食べる」ことにする。
これは私が制約を出す以前の問題で、基本的に種の本能としてそう命じられている。
そうでなければ、雄でも雌でも卵を産むことは可能だ。
しかし、私はゆうが嫌いな雄にそんなことをさせるつもりはない。なぜなら、卵を産むときにはその産む個体がそれを拒まないようにかなり快感が伴うようにされているからだ。そんな素敵なものをゆうが嫌いな雄に味あわせるつもりはない。
だからこうすることにした。子供達がチャンスだと思ったときがあれば、人間の雄を「食べなさい」ということに。年老いた個体と同じようにね。
私はつまり、人間の雄の絶滅を図ることにしたのだ。
しかしそれでも雌の人間も生殖相手が居なくなってしまって絶滅することになるのではないか? そうも考えたが、その不安を抹消する方法も考えた。おそらくその方法なら雌の人間が子を宿すことも可能だろう。もちろん人間の子供を、雌だけで、だ。
うん、これならうまくいくでしょ。我ながらグッドなアイディアだ。
さてと、後はゆうとお別れにどういう言葉を言うか考えようと思ったんだけど……。
「ゆう、遅いなぁ」
私は壁に掛かっている時計を見た。長針が12を指し、短針が5を指している。外を見てももう辺りは真っ赤に染まっている。昨日なら一緒にご飯を作り始めている時間だ。これからお別れの言葉を考えるなら、
ゆうがまだ帰ってこないのは好都合なのだが、ゆうに何かがあったのではないかと不安がよぎる。
その時、玄関の近くの電話機が電子音を鳴らし始めた。私はすぐにそれに近寄るものの、果たしてこれに出ていいものなのかどうか迷った。一応、人間が使っている様子を何度が見たことはあるから使えるとは思うのだが。
そう迷っていると、電子音が鳴り止み機械的な女性の声がこう話し始めた。
「ただいま留守にしております。ご用件がある方は、ピーッという発信音の後にメッセージをお願いします」
そしてピーッ、という発信音が鳴った。
「あ、私。ゆうです。かおる、まだ帰ってないかな?」
そこから聞こえてきたゆうの声に私はすぐに見よう見真似で受話器を持ち上げ、身体に近づけてこう言った。
「こちらかおる、こちらかおる、聞こえますか?」
「あはははは! またテレビで覚えたのかな?」
ゆうが楽しそうに笑った。まさに彼女の言うとおり、今日帰ってきてから見ていたテレビでなにやら緑色のヘルメットを被った人間の雄がそう喋っていたのを見たため、
あまり人間の雄が喋っていたことを真似したくなかったが、それ以外の言葉が思いつかずそう言ってしまった。
「そういう時はね、もしもし、って言えばいいんだよ」
そうだ。そう言えばこれを使う人間は皆そう言っていた。あまりに焦ってしまってそんなことさえ忘れてしまっていた。
973 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:40:37 ID:WA9DI9va
(1-16)
「でね、ちょっと今日オーナーがちょっとだけ仕事を手伝って欲しいって言うからちょっと遅くなるね。あ、男の人に会わなきゃいけない仕事じゃないから安心してね。ちょっと会計の整理を手伝って欲しいんだって」
「あっ、そうなんだ。大変そうだけど、大丈夫?」
「うん。ゴメンね。オーナーが私にそんな頼みごとをするなんて本当に珍しいから、できるだけ力になりたいんだ。本当にごめん。終わったらすぐに帰るからね」
「そんな、私のことは心配しなくていいから。とにかく気をつけてね?」
「ふふ、ありがとう。お腹すいたら、冷蔵庫の中に果物とかあるからそれ食べていいからね?」
「りょーかいしました!」
私は朝のゆうの調子をまねてそう言った。電話口からまた笑い声が聞こえる。
「じゃあね、かおる。また後で!」
「うん、頑張ってね!」
私がそう言うと電話機の画面に「通話終了」という文字が浮かび上がり、私は受話器を元の場所に戻した。そういえば忙しそうにしてたもんね、あのオーナーさん。
さて、じゃあ私は別れの挨拶をゆっくりと考えることにしますか。なにせあの優しいゆうに伝える感謝の気持ちを全て言葉にしていれば、何時間あっても足りないだろうから。
ゆうも疲れて帰ってくるだろうから、できるだけ短くそして納得のいく言葉が思いつくように、私は頭を働かせ始めた。
……それを考え始めてから、もう5時間が経とうとしている。いまだ鍵が掛かっていないドアをゆうが開けて帰ってくる様子はない。
あの電話から3時間ほど過ぎたあたりから私は不安になり始めたのだが、そのたびに大丈夫だろうと、ゆうとあのオーナーを信じて待っていた。
しかしそれにしてももう遅すぎるのでないのだろうか? 時計を見れば既に10時を回っている。私にはよく会計の整理と言う仕事が分からないが、
ゆうにとって5時間と言うのが「ちょっとだけ」という言葉の範囲に入るのだろうか。
いや、その可能性はあるかもしれない。だってあのゆうのことだから、オーナーに気を使ってそう言ったのかもしれないし、ただ単に彼女にとっては5時間はあっという間の時間なのかもしれない。
でも……でも、とてつもない不安が私を襲っている。まるでこの夜の暗闇がゆうのことを包み込み、二度と私の元にあの太陽のような笑顔を見せてくれないのではないかという不安が。
私はたまらず窓を開けて、外を見た。道の街灯と付近の家からのわずかな明かりだけが暗闇を照らしているが、そのどこにもゆうの姿は無い。
その時だった。玄関を荒々しく開ける音が私の身体を揺らした。どうやらすれ違いだったらしい。
とにかく私は玄関へと急いだ。そこには、肩で息をしながら俯くゆうがいた。
「ゆう!」
私は靴箱の上に移動して、それを出迎えた。しかし、明らかに様子がおかしいことにすぐに気付いた。
ふと彼女が背にしているドアを見ると、鍵もドアのチェーンもしっかりと閉まっているのが見えた。帰ってきてすぐに閉めたのだろう。
しかしそんな動作が出来たのに、なぜ彼女は靴も脱がず、そして私に声を掛けてもくれないのだろう。
そう思っていた矢先だった。
974 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:42:13 ID:WA9DI9va
(1-17)
「あああああああああああああああああああ!」
まるで獣のような咆哮でゆうは私の位置と逆にあった電話機を、その電話台ごと蹴り飛ばした。
そして靴のまま部屋に上がり込むと、テーブルを蹴り飛ばして、持っていたバックも私が開けたままの窓から外に投げ飛ばした。ピンクの可愛いお財布、可愛い絵柄のハンカチ、点滅する小さなぬいぐるみが付いた携帯電話機が下へと落ちていった。
「うわああああああああああああ! ああああああああああああああ!」
その様子に、私は彼女に近づきながらもただの一言も声を発することが出来なかった。ただその部屋が崩壊していく様子をまるでテレビの映像を見ているかのように、ただただ、それを見ていた。
「はぁ、はぁ、はぁ……はぁ」
とても先ほどの同じ部屋とは思えなくなってしまったときに、彼女はへたりと床に座り込んだ。
箪笥の上で硬直していた私もそれでやっとこれが現実であることを理解した。ふと隣を見ればこの箪笥に乗っていたぬいぐるみなどは、まるで何もなかったかのように少しも被害を受けていなかった。
私はそこから降りると、ゆっくりと彼女の背後から近づき始めた。その肩は帰ってきてから今もまだ震え続けている。
そして私は彼女の目の前に回りこむと、ゆっくりと俯いている彼女の視線に入るように彼女のスカートに昇って、その顔を見上げた。
その時、暗闇が包んだその顔から私に向かって雫が落ちた。身体の中に入り込んだそれを、無意識のうちに私は溶解して身体に取り込んだ。
味は、いつかゆうに食べさせてもらった塩という調味料に似ていた。そして温かい温度だった。
ただ、温かいはずなのにそれはとても冷たかった。矛盾しているのに、どう考え直してもそれは温かく冷たいものだった。
「ううっ……うっ……うわあああああ!」
彼女はまた咆哮した。しかしそれは怒りの咆哮ではなく、悲しみの咆哮だった。私を胸に抱えてそのまま彼女は大声で泣き出したのだ。私が触れている胸から感じるのは、いつものような温かさ。
しかし、そのもっと奥の方から、先ほどの涙のような冷たさを私は確かに感じた。
975 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:43:23 ID:WA9DI9va
(1-18)
「ゆう……」
それから暫くして私は落ち着いてきたゆうに、そっと声を掛けた。
「……だめ。もう、だめ」
ゆうがこぼすように言葉を発し、その真っ赤な目で私を見た。
「私、もうだめだよ……。何も、何もかも、もうやだよ……」
そして再び目を閉じると、また小さな雫がいくつか落ちた。
「一体……何があったの?」
私は思わず聞いてしまった。しかし、ゆうは暫く目を閉じたまま、苦しそうに唇を噛んでいるだけで何も話してくれなかった。
しかし、やがてゆっくりと唇から歯を引き離すと、私に語り始めた。
「私は本当はお客さんが使う個室に行った。……手伝いに集中するために。オーナーがいつも居る場所、従業員の人が控え室で使うから。……オーナーは誰も来ないようにするから安心してね、って言ってた。
それからは、書類見ながら数字を足したり引いたりしてたの。そしたら……ううっ」
そこでまたゆうは唇を噛み締めた。
「ゆう、もういいから。お願いだから、それ以上思い出さないで」
私はそれを見てたまらずそう言った。自分で聞き出したのに何と言う勝手なことを、と思ったが、それ以上にもうゆうに悲しい思い出を掘り返させたくなかった。なんて酷なことを彼女に聞いてしまったのだろう。
しかしゆうは首を小さく振ると、話を続け始めてしまった。まるで怯えを抑えるように私を一層強く抱きしめて。
「酔っ払った男の人が来て、私を見て『オーナーの言う通りだ』って言って……私を……押し倒して……。私はその人の事、何とか蹴り飛ばして……後はもうひたすらに走って、走って……」
そう言うと彼女は私を抱きしめる力を少しだけ弱めた。
「ごめんなさい。ごめんなさい、ゆい」
「……なんでかおるが謝るの?」
ゆうは力なく笑って私を見て、そして顔を上げると天井の明かりを見ながら呟いた。
「私、みんな嫌い。だいっきらい。男も女もみんな、みんなだいだいだいっ嫌い。もう……死にたいよ」
……なんで……なんでよ。なんでゆうばっかりこんな目に……。酷いよ。やめてよ。もうお願いだから傷つけないであげてよ!
……いや、もう無理だよ。だってゆうが無理だって言ってるんだもん。それなのにこれ以上頑張れなんて彼女に言えるわけがないよ。
「……もう私には君だけしかいないよ。ねぇ、お願い。かおるだけは私と一緒に居て。私を好きになって。私を……愛して」
私はそれを聞いて、とても嬉しかった。私が彼女に愛されていることが分かったから。
「うん」
だから私は、彼女と一緒になることにした。
976 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:44:48 ID:WA9DI9va
(1-19)
「本当に、後悔しない?」
私は目の前の「穴」を前にして、改めてゆうに聞いた。
「もちろん。君と一緒になれるんだから」
ゆうは私に優しく微笑みかけ、私が入りやすいように、自らの両手でその穴を開いてくれた。綺麗なゆうの中に私はすぐにでも飛び込みたくなった。
しかし、それでもやはり不安に思ってしまう。彼女に私が寄生体であることだけを話し、最初に人間に寄生できるという事を教えるいなや、それから先の話も聞かずにすぐに「じゃあ一緒になろう」と言い出したからだ。
「ねぇ、話だけでも最後まで」
「もぉ~、心配性だなぁ。……ふふっ、ほらほら」
不敵に笑ったゆうが、私を持ち上げるとなんと自ら自分の穴に私を静かに押し付け始めた。
「んっ、気持ちいい。気持ちいいよぉ、かおる」
「ゆ、ゆう……」
私はゆうが光悦とした表情でよがる姿を見て、段々と今すぐにゆうと一緒になりたいという気持ちが湧き上がってきてしまった。ゆうは私を無理矢理自らの穴に入れ込もうとせず、私自身が自ら入るのを待っててくれている。
「じゃ、じゃあ……入るよ?」
「んんっ、あっ、い、いいよぉ」
私はそんなゆうを見ていてついに我慢の限界に達し、ゆっくりと彼女の中へと入っていった。
「ふぁあああ! はぁ……んっ、気持ちいいよぉ」
私が少し入っただけで、ゆうは甘い声を上げた。ゆうの中は暗闇に包まれているが、その中はゆうの優しい温かさで包まれていて、私自身もすごく心地よい……そう、つまり気持ちよかった。
「ゆうが……絡みついて、くるぅう」
私もゆうの中の感触に思わずそんな声を上げてしまう。
「くぅうんん……ああっ!」
ゆっくりとゆうの身体を味わいながら、私の身体の半分ほどが彼女の中に入りきろうとしたとき、ゆうが甘く吼えた。
「だ、大丈夫? ゆう」
「んんっ、ごめん。ちょっとそこが、その気持ちよかったから……」
ゆうが恥ずかしげに私にそう告げた。少しだけ赤く染まった頬が何とも可愛らしい。
それを見て私は少しだけ悪戯することにした。
977 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:45:54 ID:WA9DI9va
(1-20)
「えっ?! んあっ、っくふぅう! ちょ、ちょっと!?」
「んはぁああ。ねぇ、どう?」
私はそのゆうが気持ちよくなれる場所を素早く何度も行き来して刺激をした。とたんに、ゆうが身体を仰け反らせて身悶え始めた。
「やあぁん、す、すごぃい、すごいよかおるぅううう!」
「んんっ?! ゆ、ゆう!?」
突然、ゆうが液体を放ち、私の身体にそれが入り込んだ。その液体がゆうの体液であることに私は気付くと、すぐに溶解を始めた。
「美味しい……美味しいよぉ、ゆう」
「だ、だめっ、恥ずかしい! んんっ、恥ずかしい……けど、気持ちいい」
ゆうの顔はもう真っ赤で、肩で息をし始めている。
「ねぇ、もういいでしょ? そろそろ、来て?」
ゆうが優しく、そして妖しい微笑みで私を誘った。私はその微笑みに吸い込まれるように、ゆうへの浸入を再開した。
「かおるぅ、そう、そのまま来てぇ。どんどん、あっ、私の中に来てぇええ!」
吸い込まれるように私はゆうの中へと進んでいく。私の視界にもう、ゆうの顔は見えなくなっていた。
「くぅん、ゆう、もう少しだよ。もう少しで、一緒になれる、一緒になれるぅう、あぁああ!」
「ふぁああああん! かおるぅううううううう!」
ゆうが最後に甘美なる鳴き声を上げて、首をもたげた。それは私の身体が完全にゆうの中に入り、もう身体に根付き始めている結果だった。
「ゆう……ゆう……一緒だよ……一緒……」
私の意識も少しずつ途切れ始めてきた。おそらく始めての寄生の為に、身体が変化しているからだろう。
私の身体が宙に浮いているような感覚に包まれる。
薄れ行く意識の中で私が感じ続けていたのは、やはりこんな感覚だった。
「ゆう……気持ちいい……よぉ……」
978 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:47:32 ID:WA9DI9va
(1-21)
「んっ……んっんー」
私は自分の声としては聞きなれない声を上げた。身体が少し重い。意識もまだぼやけたままだ。
それから数分掛けて身体の各部の動きを確かめながら、なんとか身体を起こすことが出来た。
そしてまず自分の手を私の視界の範囲に移動させ、それが私を優しく突いてくれた白くて綺麗な指であることを確認した。
次に頭を動かして私を何度も抱きしめてくれたあの柔らかい胸を視界に入れる。そこには確かに二つの山があった。
私はその上に手を当てて、私が以前のように胸の上から感じていたのと同じ鼓動なのかを確かめた。確かめるまでもなかったが、やはりそれは私を愛してくれたゆうの鼓動で間違いなかった。
そして今は、手を当てなくてもそれを自らの身体の中から感じることが出来る。
そして私はゆっくりと立ちあがり、傾いた鏡の前に立った。そこに居たのは……私が愛して止まない「ゆう」の姿そのものだ。私は、一緒になれたのだ。愛しのゆうと。
思わず身体を抱きしめて、そして顔が自然と笑顔になってしまう。それも当然、私が大好きなゆうの笑顔である。それがまた嬉しくて私はもっと笑う。
しかし、そのとき頭が重くなり、そして多くの映像がテレビのように私の目の前を電光石火で駆け抜けていった。
私は思わず壁に左手を当てて、倒れそうになった身体を支える。右手で自分の右目の視界を少し遮るようにして今の映像と記憶を思い出してみた。
そこには鮮明にゆうの思い出があった。裏切られた友達の顔、いや荒瀬昇の顔。ゆうをレイプした中年の親父の顔が狂気の笑いを浮かべている。優しくしてくれたオーナーとの多くの思い出と私との出会いの記憶。そして……昨日の裏切りの映像も。
私は鏡をちらりと見た。そこに映る私の瞳は、いつかのゆうが輝きを失った目そのものだった。今ならゆうの気持ちが痛いほど分かる。
ゆうが私を愛していたことが真実だといま分かったのと同じように、ゆうが裏切られて本当に悲しかったこともまた本当に理解したからだ。今の私以上にゆうの怒りを分かる人物など居ないだろう。
何故なら私とゆうは一緒になれたのだから。彼女の喜びも、彼女の痛みも、彼女の悲しみも、彼女の……怒りも全て私のものでもあるのだ。
私は右手を思い切り握ると、鏡に向かってストレートパンチを繰り出した。鏡の砕ける音と共に私の拳に痛みが伝わってきた。ゆうも同じように汚されても汚されてもそのたびに綺麗にしてきたガラスのハートを、そのたびに誰かに割られてきたのだ。
しかし、彼女の受けた痛みはこの拳の痛みの何十倍以上のものだ。
「ごめんね、ゆう」
私はゆうに拳を傷つけてしまったことを謝り、手の甲を伝う血を吸って、傷を舐めてすぐに治癒を完了させた。そこにはしっかりと綺麗なゆうの右手が何事もなかったかのように存在している。
私は時計を見た。ゆうとの甘い時間を過ごしてから、私が意識を失っていたのは7時間ほどらしい。開け放たれた窓から外を見ると夜の暗闇が太陽の光によって切り裂かれ始めている。
私はひび割れた鏡に映るゆうに笑いながらこう言った。
「行こっか、ゆう」
私はいつものように笑ったはずなのに、鏡の向こうの私が随分恐ろしく笑っているように見えたのは、おそらく鏡が割れてしまったからなのだろう。
979 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:51:06 ID:WA9DI9va
(1-22)
私は唯一の無傷の生還者である箪笥君から代わりのお気に入りである服を引っ張り出して、すぐに着替えると随分と変わってしまった部屋を後にした。帰ってきたら掃除しよう。
部屋の鍵をしっかりと閉めて、街に繰り出した私が向かうのはもちろんあのお店。オーナーは居るかなぁ?
自転車をここにそのまま置いて帰ってしまったため、いつもより時間が掛かってしまったが、私が店の近くに来たときにちょうど従業員の子が一人、店から出てくるところだった。
私はわざと彼女に見つかるようにして、店へと近づいた。すると予想通り彼女が私を見て驚いたように目を見開くと、こちらに駆け寄って来てこう言った。
「ねぇ、あなた確か昼間ここで清掃してくれてる人だよね?! 何かオーナーが昨日大騒ぎしてたわよ、あなたを捜してって」
「そうなんですか。それで、オーナーはまだ店の中に居ます?」
「あ、うん。まだ居るよ。ほら、今日と明日は月に二回のお休みだから私が最後にお店を閉めることになってたんだけど、なんかまだオーナーは仕事があるらしいから残るって」
「あ、良かったぁ」
私は安心した素振りを見せてその女の子に笑いかけた。彼女はそれからあわせるように笑いかけてくる。確か彼女はこの店に入ったばかりの新人だが、20歳になりたての女の子らしい。
一応、オーナーの方針でお酒が飲めて、親に迷惑を掛けずに済む歳になってからということで、ここで働く従業員は20歳が最低雇用条件だといっていた。
昨日までは従業員のことを考えた決まりのように思えたが、今となってはそれもおそらく警察に検挙されないために仕方なくそうしたのだろう。
しかし私の場合は違う。昼間のお仕事と言うことで私を雇い、そして最初からこうして私をだましてお金をもうけるための算段をしておいたからあんな昼間の仕事でも多くのお金をくれていたのだ。
「あの、ちょっといいですか?」
私はその新人の女の子を路地の方へと誘った。彼女は首を傾げて私を見ながらも頷いて着いて来てくれた。
「どうかしたの? オーナーに会いづらいのなら私が伝言だけでもしてあげるけど」
路地の中ほどまで進んだ辺りで私が立ち止まると、彼女が私の背中に向けてそう声を掛けた。そんな面倒な手間は必要ないですよ。
「いいえ、大丈夫です。あ、服にゴミが付いてますよ」
私は振り返って彼女にそう告げると、少しずつ彼女との距離を縮めた。彼女は驚いたように、服を確認し始める。
そしてそのまま私がすぐ目の前まで来たところで、やっとこちらに顔を戻した。
私は彼女に笑いかけて、そしてその唇に自らの唇を押し当てた。と、同時に身体に腕を回して彼女の動きを封じる。ゆうより年下なのに華奢な身体つきなのは、やはり生き方の辛さが違うからだろうか?
というより彼女の胸はゆうのものより貧相で、身体に密着している分余計にそう感じてしまうのだろう。
「んんんっ!? んんっ! んんんんっ!」
彼女が必死に私から離れようとするが、逃がしてあげるつもりはない。私は彼女をあやすように笑うと、ゆっくりと浸入を始めた。
「んんっ?! んんんんんっ!」
彼女の口の中に浸入した寄生体の私を彼女は拒もうと必死になっている。そんな必死になっちゃってもだ~め。
980 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:53:39 ID:WA9DI9va
(1-23)
「んぐっ!? んんんんんんんっ!」
私はそんな彼女の抵抗をあっさりと通過すると、彼女の口から本格的に体内へと浸入を始めた。曲がりくねった彼女の中をどんどん私が支配していく。
「ん……んんっ……んぁっ」
そして段々と彼女の顔が光悦としたものになっていき、しまいには私を自ら体内に招きいれようと私を美味しそうに飲み始めている。
私はそれを見て彼女の身体を拘束する目的のものから、抱きしめることが目的のものへと変化させて、ひたすらに私を飲んでいるその頭を優しく撫でた。
いつかゆうが私にそうしてくれたように。すると彼女も私を抱きしめてくれた。
そして彼女の身体に私の寄生体が十分に浸透したところで、私は彼女を「食べはじめた」。
「んんっ? ……んんっ……んっ」
彼女は溶解が始まった自分の身体に少し驚いたようだったが、それもすぐに消え失せたようで私の舌に自分の舌を絡めたり、唾液を美味しそうに飲んだりしていた。
細胞をいじることによる変化なので、痛みを伴うことはない。それと同時になるべく快楽を感じるように神経に信号を送ったりしている。
そして彼女の身体が段々と私の寄生体と同じように緑色の身体に変化していく。顔は私に絡めていた舌も、だらだらと解け始めてきた。
私はそれを見計らって、彼女の身体を今の宿主であるゆうの身体に口から取り込み始めた。吸い込まなくても口から勝手に浸入してくるそれを私は気持ちよく迎え入れていた。
やがて私を抱きしめていた腕の部分の感触もなくなり、履き手がいなくなった黒いニーソックスがへたりとハイヒール居の上に落ちた。
そして最後に白と黒のワンピースがその上に落ちた。
「んぁ。……あはははは、美味しかったよ。ごちそう様」
私は唇を人差し指で拭うと、そこに付いた彼女の身体のわずかな残り部分と彼女の唾液を、ぺろりと舐めて彼女を一滴残らず「食べ終えた」。
「すいませんオーナー、忘れ物しちゃいました!」
私は頭を掻きながら店の中へと入った。カウンター席に座っていたオーナーはケータイをいじりながら忙しそうな顔をしていたが、
私がそう言うと少しだけ笑って、ウィスキーが入ったグラスを傾けた。カランとグラスの中の氷が音を立てる。
私は頭を下げながらその後ろを通り、控え室に入って目的のものを捜した。
うん、こんなものでいいでしょ。
私はそれを見つけると、片手に持ち上げて身体の後ろに隠すように持って控え室を出た。
981 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:55:19 ID:WA9DI9va
(1-24)
「忘れ物はちゃんとあった?」
「あ、はい。ありました」
私は空いている手を頭に当てて、そのまま頭を軽く何度か下げた。オーナーは少しだけ安心したように笑って、再びケータイをいじりはじめた。
それを見た私はゆっくりとオーナーに近づく。彼女には私がその先のドアに近づいているように思えるだろうが、そこを私が再びくぐるのは少しだけ先になるかな。
オーナーはそのまま私に気付かないままケータイをいじくり回し、私はもうその身体の横までやって来た。見ようとすればケータイの文字すらも見えそうだが、それはまだ先だ。先に、やることがある。
そして私はオーナーの背後でピタリと足を止め、彼女の方へと向き直って顔だけ元に戻った。
私が持っていたものを振り上げ始めたそのとき、オーナーがこちらを振り向きながらこんな間抜けなことを言っていた。
「あれ……その服って、ゆうちゃんがよく着てたやつじゃ」
言い終える前に高そうな赤ワインのビンが彼女の頭を直撃し、破片が赤い雫を反射させながら四散していく。
彼女は体勢を崩して椅子から転げ落ちながら悲鳴を上げた。カウンターのへりの向こうへと携帯電話機が消えていく。後でしっかりと回収しよっと。
「くあああああああっ! ちょ……っと、ううっ、どう……したの……?」
頭を抑えながらゆっくりとした動作で彼女は私を見た。先ほどとは顔が違う私を、視界に捉えた瞬間、彼女の目がどんどん大きく開かれていく。
「ゆ、ゆう……ちゃん?! なんで……? さっきまで……そこには……」
私はにっこりと笑うと、今度は身体を元に戻して、顔をさっきの新人、つまり源氏名で「あやか」ちゃんと呼ばれる子のものに変化させた。余裕があったシャツの服の部分が、大きくなった胸に押されてに苦しそうに膨らんでいく。
「なん……なの? いえ……今は……そんなことより」
オーナーは頭を振るうとゆっくりと身体を動かして頭を地面にピタリとつけた。そう、それはいわゆる土下座という体勢だ。さてさて、一体どんなつもりでしょうか。
いや、分かってる。そうやって命乞いをするんでしょ。昼間のドラマでそういうのよくやってますよねー、そういうの。
私は肩をすくめながら顔を元に戻して、ゆうの身体と顔でその腹を蹴り飛ばした。
「ぐぅう! うげぇ、げぇ……ごめ……んなさい、ごめんなさい」
蛙のようにひっくり返ったのに先ほどの土下座体勢をしようとしているのか、身体を起き上がらせようとしながら今度は言葉までつけてきた。なんていう外道なんだろう。
あそこまでゆうを傷つけておいて、あなたはまだ謝れば自分を殺さずにいてくれると思っているんだ。
私はその強欲さに呆れながらもあまりに見苦しいので、手っ取り早く終わらせようと、手の指紋をあやかのものに変えてから彼女が転がった椅子を持ち上げて、オーナーの胸の少し上辺りを片足で踏みつけて動けないようにした。
「ごめん……なさい。ごめ……んなさい」
その間も彼女は私に向かって謝り続ける。目には涙まで浮かべて、まったく持ってあなたは演技派なお方だ。その特技で私もゆうも騙したんですね。
私はもうため息を吐くほどあきれ返り、そして一思いに持っていた椅子をオーナーの頭に向かって振り下ろした。彼女は目を見開く間も、悲鳴を上げることさえ出来ずに息絶えた。
982 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:58:46 ID:WA9DI9va
(1-24)
達成感に浸るまでもなくその椅子を床に放り投げ、私はカウンターの向こう側へと回りこみ、携帯電話機が落ちていったであろう場所に移動した。
そこで私が目にしたのは、シンクの中に置いてあったアイスペールの中で浮かぶ携帯電話機だった。……どうやら氷が溶けてしまって中身がほとんど水になってしまっていたようだ。
私はそれをゆっくりと持ち上げると真っ黒な液晶を目に入り、何度か起動方法を試してみたが、その液晶画面に光ることはなかった。
拳を握り締めながらも、どうしようもないことは私自身がよく分かっていた。ゆうとあやかの記憶にパソコンを忙しくいじくるオーナーの姿もあるが、残念なことにゆうもあやかもパソコンの動かし方を知らないようだった。
これではあの中にゆうを襲った者の手掛かりが存在していても意味がない。
背に腹は変えられずとも、床に倒れている外道の身体を「たべる」ことは絶対にしたくなかった。こんな奴の姿かたちと記憶が残ると思ったら虫唾が走る。
私は大きなため息を一つ吐いて、なんとかふんぎりを付けるとカウンターを乗り越えて裏口へと顔を向けた。
その途中目に入ったウィスキーが注がれているグラスを私はオーナー投げつけた。
バラバラに割れていく破片がオーナーの死体に降りかかる様を見ても心が晴れることはなかったが、それでもなんとかふんぎりをつけて私はオーナーの屍を踏み越え、裏口から店を後にした。
真っ暗な部屋のベッドの上で、私は自分の身体を抱いていた。ゆう、やっぱりあなたの身体は温かいね。
顔を上げると、しっかりと整頓された部屋が私の視界に入ってくる。ゆう、やっぱりあなたの部屋は綺麗だね。
近くに置いてあった手鏡を手に取る。ゆう、やっぱりあなたは可愛いね。
電話線を抜いた電話機のボタンを押して、あの日のゆうの僅かな言葉を聞く。ゆう、やっぱりあなたは優しいね。
「……だめ。もう、だめ」
私の頬から流せなかった涙が流れる。この2週間、ずっと流し続けた温かい涙が、また流れ始めた。
「私、もうだめだよ……。何も、何もかも、もうやだよ……。ゆう……」
抱えた膝に目頭をつけた。一人でこの部屋を見ていたら、涙が止まらなくなってしまうから。
一体私はこれからどうすればいいのだろうか、あれからずっと私は頭を悩ませ続けた。
もうゆうは私しか愛してくれない。人間の雄も雌もゆうはだいっきらいになってしまった。
じゃあ、私が人間に寄生したら……彼女は私をだいっきらいになってしまうのではないか? いや……優しい彼女のことだ。きっと本心は嫌いでも私の前では笑ってくれるかもしれない。
しかし、そんなの私には耐えられない。それに私が見たいのはそんな彼女が無理した笑いではない。
ただ純粋で、綺麗で、可愛く、そして優しい笑顔なのだ。無理をした笑顔には、無理をした優しさしかない。
でもこのままではゆうの身体は腐り始めてしまう。もちろん、私も一緒に。だから私はまず、彼女の身体から出て行こうと思った。
つまり、ゆうに身体を返して私は死のうと。彼女なら私の子供を産むことに自体は、おそらく喜んでくれるはず。
しかしだからと言って一体何が彼女に残るのだろうか? 結局、彼女が産んだ子供達も人間に寄生をしなければ生きていけない。
そんな子供達に向かって、無理矢理な笑顔を強制させ続ける人生を送らせようと言うのか? そうなったらおそらく彼女は自らの優しさに縛られ、私の子供を産み続けるために自ら死ぬことも許されない人生を送るだろう。
だからと言って、彼女に私の子供を産ませないようにして私だけが死んでも、もう何も信じられない彼女はおそらくすぐに自殺をするだろう。
そう、なにより私の今の宿主が他ならぬゆう自身だからこそ、これらの予想は全て外れることがないだろうと確信を持ててしまった。
そして……結局、ゆうの笑いを取り戻し、私とゆうが共に生きる手段はなかった。
983 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:59:53 ID:WA9DI9va
(1-26)
だから私は決めた。
一緒に天国に行こうと。
私は身体をベットに横たえた。もう、実際のところ身体が重くなり始めていた。正直、ここまで早く腐敗が進むとは予想外だったが、いい踏ん切りになっただろう。
なるべく身体が見えないように私は天井を向いて首を動かそうとはしなかった。目も閉じて視界を完全に遮る。ゆうの綺麗な指が腐り行く過程など絶対に見たくなかった。
……ねぇ、ゆう。私たち、天国に行ってもずっと一緒だよ? ず~っと、ずっと。きっと、ゆうだってもう悲しい涙は流さなくてすむと思う。だって天国なんだもん。流すとしたらそれは嬉しい涙だけだと思うよ。
あはははは、やっぱりゆうも楽しみだよね。分かるよ、分かる。だって私はあなたの痛みも、悲しみも全て知ってるんだもん。
えっ? あまりに楽しみで眠れないって? あはは、気が早いなぁ。でもきっと天国は面白くて寝るのも惜しいぐらいな世界だと思うよ。
だから今のうちに思う存分寝て、起きたら思う存分楽しもうよ。ねっ?
あ、うん、ありがとう。やっぱりやさしいなゆうは。ゆうもいい夢見てね。
じゃあおやすみ、ゆう。
984 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 01:04:12 ID:WA9DI9va
これで、以上です
何とも分かりづらいので、最後に「終」ぐらいの文字を入れればよかったのですが、
すいません。忘れてしまいました。
更にまたしても番号の割り振りミスが……。
982は本来(1-25)となります。申し訳ありませんでした。
最後に投稿するに当たって、多くの方にご迷惑をお掛けしてしまったことを心よりお詫び申し上げます。
本当に申し訳ありませんでした。
(1-13)
私は台所に向かうゆうに付いて行き、そして彼女の料理のお手伝いをした。とは言っても、硬化させた身体で冷蔵庫からお肉や野菜を取り出して彼女に手渡すぐらいしかできないのだが、
ゆうは私がそうするたびに「ありがとう」と声を掛けて私を撫でてくれた。
それからあっという間に料理は終わり、茶の間には綺麗に盛り付けをされた料理が並んでいた。
「はい、じゃあいただきます」
「いただきます」
それぞれのお皿にゆうがおかずを取り分けてから、ゆうの音頭に合わせて私もそう言った。
「あー、そんな無理しないで」
ゆうが苦笑いしながら私に言った。私が何をしようとしていたかと言うと、ゆうと同じようにお箸で料理をつまもうとしていたのだ。
しかし、いくら身体を硬化させてもこの2本の棒を上手く操るのはとても難しかった。
「けど、私みたいな食べ方は行儀が悪いって今日のテレビで言ってたから」
私の言葉にゆうは目を丸くして、それから少しの間を空けて楽しそうに笑った。
「あはははは、そんな番組見たんだ。勉強熱心なことだね。私なんかそんなの見てたらすぐに寝ちゃうよ」
そうは言うものの、ゆうは今日の番組でやっていたお箸の持ち方はしっかりと出来ている。流石、ゆう。
「けど、気にしなくてもいいよ。かおるはかおるなりの食べ方で食べていいよ」
「でも……」
私が反論しようとすると、ゆうはさっと私の前に掌をかざしそれを制した。
「じゃあ、こうしようか」
そう言ってゆうは、私のお皿の料理をお箸でつまむと、なんとそれを私の身体の上に優しく置いてくれたのだ。……優しすぎるよ、ゆう。
「ありがとう、ゆう」
「いえいえ、どうぞ」
そう言って私にそれを食べるように彼女は言った。私は身体の中心に料理を入り込ませると、それを溶解させて味わった。
「美味しい!」
言うまでもなかったが、言わずにはいれなかった。ゆうが作ってくれた野菜炒めは、お手製のソースが牛の肉にも野菜にもうまく絡んでいて、とても美味しかった。
「へっへ~ん。ありがと」
少し恥ずかしそうにはにかんで彼女は自分でもそれを口にし、そして満足そうに笑った。
971 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:29:28 ID:WA9DI9va
「んっん~、おはよー」
「おはよう、ゆう」
窓から差し込む朝日でゆうが目を覚ました。その胸に抱きしめられたままの私も挨拶を返した。
ゆうは目覚まし時計もないのにきっちりと起きる。この数日間彼女を見ていると……こう言ってはなんだが、意外としっかりとした人間であるように感じる。
「さぁさぁ、朝のお通じ~」
そう言ってゆうは私をテーブルに置くと、トイレに消えていった。程なくしてトイレからこんな声が聞こえた。
「あぁ、紙がない!?」
私はいそいそと冷蔵庫の中身を覗いた。よかった、間違えてここに入れたわけではないらしい。
「こらぁ~! いくらなんでもそんなところに入れないってば!」
冷蔵庫を開ける音でゆうも私がどこを確認したのか気付いたのだろう。トイレの中から反論する声が聞こえた。
そこで私はあることを思い出して家の窓に近づいて下を覗いた。すると、彼女の自転車のカゴにおそらくゆうが探しているものであろうそれがあった。
……しっかりしてる……しっかり、してる……しっかり、して……。
「じゃあ気をつけて人捜ししてきてね。明日は土曜日で休みだから一緒に探してあげるからね」
「うん、ありがとう。ゆうも気をつけてね」
「りょーかいしました! 行ってきま~す!」
そしてゆうは元気よく家の外へと飛び出して行った。
「行ってらっしゃ~い」
……見事に家の鍵を閉め忘れていった。
私はそれを閉めようとしたが、ゆうが家の鍵さえも忘れてしまっている可能性を考えやっぱり鍵は閉めないままにしておくことにした。
部屋を見渡した。綺麗に整頓されたゆうの大切なぬいぐるみの数々。一緒に食事をした茶の間のテーブル。そして一緒に寝たベッド。
決して広いとは言えない部屋にそうしたものが詰まっている。しかし掃除はしっかりと欠かさずしている綺麗な部屋。
私は今日の夜、ここを立つ予定だ。
明日までに寄生できればいいのだが、明日はゆうの仕事の休みの日と言うこともあって、彼女と私が一日をずっと一緒に過ごさなければならなくなる可能性もあったから、
今日の夜にお別れを言うことに決めたのだ。
それまで私はどう過ごそうか考えていたが、この6日目を迎えたこの身体で動き回れるのは今日で最後になるということで、もう一度だけ街を見て回ることにした。
別に人間の身体に寄生するようになれば嫌というほどこの街で過ごすことになるのだろうが、それでもやはりそれからでは見えなくなってしまうようなものがあるような気がして、私はそう決めた。
最後にガスなどの元栓が締まっているかどうかだけ確認すると、私はこの身体での最後の見聞を始めるため、ドアの隙間から街へと繰り出した。
972 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:38:08 ID:WA9DI9va
(1-15)
さて、その見聞はさしていつもと変わらないものだった。特別何か新しい発見をしたわけでもなければ、当然ながらゆう以上の素晴らしい人間もいなかった。そんな人間が存在しているとも思えないが。
それでもこの身体で最後になるということだけで、随分と見えるものが違った。空の色も、太陽の照りつけも、風が通り抜ける音も、
寄生したらきっと違うものに見えたり聞こえたり感じたりするんだろうな、と思うと嬉しくもあり哀しくもあった。
しかし、全ての人間に寄生し終わってしまったらどうするのだろうか? それから2週間経ってしまえばその最後に寄生した宿主の身体は腐り始め、そのままだと私も新しい宿主を見つけられずに一緒に腐ってしまうはずだが……。
まぁ、細かいこと考えても仕方ないか。それより、これからドンドンと産まれる事になる卵について考えるべきことがある。それはまずその私の子供たちの寄生対象だ。それに対して一つの制約を子供達に私は出す決意をしていた。
私の子供達はこれから宿主になった後からその宿主から私が抜け出した後もずっと、昼間はそれまでと同じように社会に溶け込ませ、夜になったら卵を産んでもらうことになっている。これは一応、生殖能力が高いことが望ましい。つまり若い人間だ。
あまりに年老いた人間だと、身体に私たちの種がなじむ前に腐敗が始まる可能性が高く、卵の数もあまり望めない。だから年齢が高めの個体は基本的にチャンスだと「食べる」ことにする。
これは私が制約を出す以前の問題で、基本的に種の本能としてそう命じられている。
そうでなければ、雄でも雌でも卵を産むことは可能だ。
しかし、私はゆうが嫌いな雄にそんなことをさせるつもりはない。なぜなら、卵を産むときにはその産む個体がそれを拒まないようにかなり快感が伴うようにされているからだ。そんな素敵なものをゆうが嫌いな雄に味あわせるつもりはない。
だからこうすることにした。子供達がチャンスだと思ったときがあれば、人間の雄を「食べなさい」ということに。年老いた個体と同じようにね。
私はつまり、人間の雄の絶滅を図ることにしたのだ。
しかしそれでも雌の人間も生殖相手が居なくなってしまって絶滅することになるのではないか? そうも考えたが、その不安を抹消する方法も考えた。おそらくその方法なら雌の人間が子を宿すことも可能だろう。もちろん人間の子供を、雌だけで、だ。
うん、これならうまくいくでしょ。我ながらグッドなアイディアだ。
さてと、後はゆうとお別れにどういう言葉を言うか考えようと思ったんだけど……。
「ゆう、遅いなぁ」
私は壁に掛かっている時計を見た。長針が12を指し、短針が5を指している。外を見てももう辺りは真っ赤に染まっている。昨日なら一緒にご飯を作り始めている時間だ。これからお別れの言葉を考えるなら、
ゆうがまだ帰ってこないのは好都合なのだが、ゆうに何かがあったのではないかと不安がよぎる。
その時、玄関の近くの電話機が電子音を鳴らし始めた。私はすぐにそれに近寄るものの、果たしてこれに出ていいものなのかどうか迷った。一応、人間が使っている様子を何度が見たことはあるから使えるとは思うのだが。
そう迷っていると、電子音が鳴り止み機械的な女性の声がこう話し始めた。
「ただいま留守にしております。ご用件がある方は、ピーッという発信音の後にメッセージをお願いします」
そしてピーッ、という発信音が鳴った。
「あ、私。ゆうです。かおる、まだ帰ってないかな?」
そこから聞こえてきたゆうの声に私はすぐに見よう見真似で受話器を持ち上げ、身体に近づけてこう言った。
「こちらかおる、こちらかおる、聞こえますか?」
「あはははは! またテレビで覚えたのかな?」
ゆうが楽しそうに笑った。まさに彼女の言うとおり、今日帰ってきてから見ていたテレビでなにやら緑色のヘルメットを被った人間の雄がそう喋っていたのを見たため、
あまり人間の雄が喋っていたことを真似したくなかったが、それ以外の言葉が思いつかずそう言ってしまった。
「そういう時はね、もしもし、って言えばいいんだよ」
そうだ。そう言えばこれを使う人間は皆そう言っていた。あまりに焦ってしまってそんなことさえ忘れてしまっていた。
973 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:40:37 ID:WA9DI9va
(1-16)
「でね、ちょっと今日オーナーがちょっとだけ仕事を手伝って欲しいって言うからちょっと遅くなるね。あ、男の人に会わなきゃいけない仕事じゃないから安心してね。ちょっと会計の整理を手伝って欲しいんだって」
「あっ、そうなんだ。大変そうだけど、大丈夫?」
「うん。ゴメンね。オーナーが私にそんな頼みごとをするなんて本当に珍しいから、できるだけ力になりたいんだ。本当にごめん。終わったらすぐに帰るからね」
「そんな、私のことは心配しなくていいから。とにかく気をつけてね?」
「ふふ、ありがとう。お腹すいたら、冷蔵庫の中に果物とかあるからそれ食べていいからね?」
「りょーかいしました!」
私は朝のゆうの調子をまねてそう言った。電話口からまた笑い声が聞こえる。
「じゃあね、かおる。また後で!」
「うん、頑張ってね!」
私がそう言うと電話機の画面に「通話終了」という文字が浮かび上がり、私は受話器を元の場所に戻した。そういえば忙しそうにしてたもんね、あのオーナーさん。
さて、じゃあ私は別れの挨拶をゆっくりと考えることにしますか。なにせあの優しいゆうに伝える感謝の気持ちを全て言葉にしていれば、何時間あっても足りないだろうから。
ゆうも疲れて帰ってくるだろうから、できるだけ短くそして納得のいく言葉が思いつくように、私は頭を働かせ始めた。
……それを考え始めてから、もう5時間が経とうとしている。いまだ鍵が掛かっていないドアをゆうが開けて帰ってくる様子はない。
あの電話から3時間ほど過ぎたあたりから私は不安になり始めたのだが、そのたびに大丈夫だろうと、ゆうとあのオーナーを信じて待っていた。
しかしそれにしてももう遅すぎるのでないのだろうか? 時計を見れば既に10時を回っている。私にはよく会計の整理と言う仕事が分からないが、
ゆうにとって5時間と言うのが「ちょっとだけ」という言葉の範囲に入るのだろうか。
いや、その可能性はあるかもしれない。だってあのゆうのことだから、オーナーに気を使ってそう言ったのかもしれないし、ただ単に彼女にとっては5時間はあっという間の時間なのかもしれない。
でも……でも、とてつもない不安が私を襲っている。まるでこの夜の暗闇がゆうのことを包み込み、二度と私の元にあの太陽のような笑顔を見せてくれないのではないかという不安が。
私はたまらず窓を開けて、外を見た。道の街灯と付近の家からのわずかな明かりだけが暗闇を照らしているが、そのどこにもゆうの姿は無い。
その時だった。玄関を荒々しく開ける音が私の身体を揺らした。どうやらすれ違いだったらしい。
とにかく私は玄関へと急いだ。そこには、肩で息をしながら俯くゆうがいた。
「ゆう!」
私は靴箱の上に移動して、それを出迎えた。しかし、明らかに様子がおかしいことにすぐに気付いた。
ふと彼女が背にしているドアを見ると、鍵もドアのチェーンもしっかりと閉まっているのが見えた。帰ってきてすぐに閉めたのだろう。
しかしそんな動作が出来たのに、なぜ彼女は靴も脱がず、そして私に声を掛けてもくれないのだろう。
そう思っていた矢先だった。
974 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:42:13 ID:WA9DI9va
(1-17)
「あああああああああああああああああああ!」
まるで獣のような咆哮でゆうは私の位置と逆にあった電話機を、その電話台ごと蹴り飛ばした。
そして靴のまま部屋に上がり込むと、テーブルを蹴り飛ばして、持っていたバックも私が開けたままの窓から外に投げ飛ばした。ピンクの可愛いお財布、可愛い絵柄のハンカチ、点滅する小さなぬいぐるみが付いた携帯電話機が下へと落ちていった。
「うわああああああああああああ! ああああああああああああああ!」
その様子に、私は彼女に近づきながらもただの一言も声を発することが出来なかった。ただその部屋が崩壊していく様子をまるでテレビの映像を見ているかのように、ただただ、それを見ていた。
「はぁ、はぁ、はぁ……はぁ」
とても先ほどの同じ部屋とは思えなくなってしまったときに、彼女はへたりと床に座り込んだ。
箪笥の上で硬直していた私もそれでやっとこれが現実であることを理解した。ふと隣を見ればこの箪笥に乗っていたぬいぐるみなどは、まるで何もなかったかのように少しも被害を受けていなかった。
私はそこから降りると、ゆっくりと彼女の背後から近づき始めた。その肩は帰ってきてから今もまだ震え続けている。
そして私は彼女の目の前に回りこむと、ゆっくりと俯いている彼女の視線に入るように彼女のスカートに昇って、その顔を見上げた。
その時、暗闇が包んだその顔から私に向かって雫が落ちた。身体の中に入り込んだそれを、無意識のうちに私は溶解して身体に取り込んだ。
味は、いつかゆうに食べさせてもらった塩という調味料に似ていた。そして温かい温度だった。
ただ、温かいはずなのにそれはとても冷たかった。矛盾しているのに、どう考え直してもそれは温かく冷たいものだった。
「ううっ……うっ……うわあああああ!」
彼女はまた咆哮した。しかしそれは怒りの咆哮ではなく、悲しみの咆哮だった。私を胸に抱えてそのまま彼女は大声で泣き出したのだ。私が触れている胸から感じるのは、いつものような温かさ。
しかし、そのもっと奥の方から、先ほどの涙のような冷たさを私は確かに感じた。
975 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:43:23 ID:WA9DI9va
(1-18)
「ゆう……」
それから暫くして私は落ち着いてきたゆうに、そっと声を掛けた。
「……だめ。もう、だめ」
ゆうがこぼすように言葉を発し、その真っ赤な目で私を見た。
「私、もうだめだよ……。何も、何もかも、もうやだよ……」
そして再び目を閉じると、また小さな雫がいくつか落ちた。
「一体……何があったの?」
私は思わず聞いてしまった。しかし、ゆうは暫く目を閉じたまま、苦しそうに唇を噛んでいるだけで何も話してくれなかった。
しかし、やがてゆっくりと唇から歯を引き離すと、私に語り始めた。
「私は本当はお客さんが使う個室に行った。……手伝いに集中するために。オーナーがいつも居る場所、従業員の人が控え室で使うから。……オーナーは誰も来ないようにするから安心してね、って言ってた。
それからは、書類見ながら数字を足したり引いたりしてたの。そしたら……ううっ」
そこでまたゆうは唇を噛み締めた。
「ゆう、もういいから。お願いだから、それ以上思い出さないで」
私はそれを見てたまらずそう言った。自分で聞き出したのに何と言う勝手なことを、と思ったが、それ以上にもうゆうに悲しい思い出を掘り返させたくなかった。なんて酷なことを彼女に聞いてしまったのだろう。
しかしゆうは首を小さく振ると、話を続け始めてしまった。まるで怯えを抑えるように私を一層強く抱きしめて。
「酔っ払った男の人が来て、私を見て『オーナーの言う通りだ』って言って……私を……押し倒して……。私はその人の事、何とか蹴り飛ばして……後はもうひたすらに走って、走って……」
そう言うと彼女は私を抱きしめる力を少しだけ弱めた。
「ごめんなさい。ごめんなさい、ゆい」
「……なんでかおるが謝るの?」
ゆうは力なく笑って私を見て、そして顔を上げると天井の明かりを見ながら呟いた。
「私、みんな嫌い。だいっきらい。男も女もみんな、みんなだいだいだいっ嫌い。もう……死にたいよ」
……なんで……なんでよ。なんでゆうばっかりこんな目に……。酷いよ。やめてよ。もうお願いだから傷つけないであげてよ!
……いや、もう無理だよ。だってゆうが無理だって言ってるんだもん。それなのにこれ以上頑張れなんて彼女に言えるわけがないよ。
「……もう私には君だけしかいないよ。ねぇ、お願い。かおるだけは私と一緒に居て。私を好きになって。私を……愛して」
私はそれを聞いて、とても嬉しかった。私が彼女に愛されていることが分かったから。
「うん」
だから私は、彼女と一緒になることにした。
976 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:44:48 ID:WA9DI9va
(1-19)
「本当に、後悔しない?」
私は目の前の「穴」を前にして、改めてゆうに聞いた。
「もちろん。君と一緒になれるんだから」
ゆうは私に優しく微笑みかけ、私が入りやすいように、自らの両手でその穴を開いてくれた。綺麗なゆうの中に私はすぐにでも飛び込みたくなった。
しかし、それでもやはり不安に思ってしまう。彼女に私が寄生体であることだけを話し、最初に人間に寄生できるという事を教えるいなや、それから先の話も聞かずにすぐに「じゃあ一緒になろう」と言い出したからだ。
「ねぇ、話だけでも最後まで」
「もぉ~、心配性だなぁ。……ふふっ、ほらほら」
不敵に笑ったゆうが、私を持ち上げるとなんと自ら自分の穴に私を静かに押し付け始めた。
「んっ、気持ちいい。気持ちいいよぉ、かおる」
「ゆ、ゆう……」
私はゆうが光悦とした表情でよがる姿を見て、段々と今すぐにゆうと一緒になりたいという気持ちが湧き上がってきてしまった。ゆうは私を無理矢理自らの穴に入れ込もうとせず、私自身が自ら入るのを待っててくれている。
「じゃ、じゃあ……入るよ?」
「んんっ、あっ、い、いいよぉ」
私はそんなゆうを見ていてついに我慢の限界に達し、ゆっくりと彼女の中へと入っていった。
「ふぁあああ! はぁ……んっ、気持ちいいよぉ」
私が少し入っただけで、ゆうは甘い声を上げた。ゆうの中は暗闇に包まれているが、その中はゆうの優しい温かさで包まれていて、私自身もすごく心地よい……そう、つまり気持ちよかった。
「ゆうが……絡みついて、くるぅう」
私もゆうの中の感触に思わずそんな声を上げてしまう。
「くぅうんん……ああっ!」
ゆっくりとゆうの身体を味わいながら、私の身体の半分ほどが彼女の中に入りきろうとしたとき、ゆうが甘く吼えた。
「だ、大丈夫? ゆう」
「んんっ、ごめん。ちょっとそこが、その気持ちよかったから……」
ゆうが恥ずかしげに私にそう告げた。少しだけ赤く染まった頬が何とも可愛らしい。
それを見て私は少しだけ悪戯することにした。
977 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:45:54 ID:WA9DI9va
(1-20)
「えっ?! んあっ、っくふぅう! ちょ、ちょっと!?」
「んはぁああ。ねぇ、どう?」
私はそのゆうが気持ちよくなれる場所を素早く何度も行き来して刺激をした。とたんに、ゆうが身体を仰け反らせて身悶え始めた。
「やあぁん、す、すごぃい、すごいよかおるぅううう!」
「んんっ?! ゆ、ゆう!?」
突然、ゆうが液体を放ち、私の身体にそれが入り込んだ。その液体がゆうの体液であることに私は気付くと、すぐに溶解を始めた。
「美味しい……美味しいよぉ、ゆう」
「だ、だめっ、恥ずかしい! んんっ、恥ずかしい……けど、気持ちいい」
ゆうの顔はもう真っ赤で、肩で息をし始めている。
「ねぇ、もういいでしょ? そろそろ、来て?」
ゆうが優しく、そして妖しい微笑みで私を誘った。私はその微笑みに吸い込まれるように、ゆうへの浸入を再開した。
「かおるぅ、そう、そのまま来てぇ。どんどん、あっ、私の中に来てぇええ!」
吸い込まれるように私はゆうの中へと進んでいく。私の視界にもう、ゆうの顔は見えなくなっていた。
「くぅん、ゆう、もう少しだよ。もう少しで、一緒になれる、一緒になれるぅう、あぁああ!」
「ふぁああああん! かおるぅううううううう!」
ゆうが最後に甘美なる鳴き声を上げて、首をもたげた。それは私の身体が完全にゆうの中に入り、もう身体に根付き始めている結果だった。
「ゆう……ゆう……一緒だよ……一緒……」
私の意識も少しずつ途切れ始めてきた。おそらく始めての寄生の為に、身体が変化しているからだろう。
私の身体が宙に浮いているような感覚に包まれる。
薄れ行く意識の中で私が感じ続けていたのは、やはりこんな感覚だった。
「ゆう……気持ちいい……よぉ……」
978 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:47:32 ID:WA9DI9va
(1-21)
「んっ……んっんー」
私は自分の声としては聞きなれない声を上げた。身体が少し重い。意識もまだぼやけたままだ。
それから数分掛けて身体の各部の動きを確かめながら、なんとか身体を起こすことが出来た。
そしてまず自分の手を私の視界の範囲に移動させ、それが私を優しく突いてくれた白くて綺麗な指であることを確認した。
次に頭を動かして私を何度も抱きしめてくれたあの柔らかい胸を視界に入れる。そこには確かに二つの山があった。
私はその上に手を当てて、私が以前のように胸の上から感じていたのと同じ鼓動なのかを確かめた。確かめるまでもなかったが、やはりそれは私を愛してくれたゆうの鼓動で間違いなかった。
そして今は、手を当てなくてもそれを自らの身体の中から感じることが出来る。
そして私はゆっくりと立ちあがり、傾いた鏡の前に立った。そこに居たのは……私が愛して止まない「ゆう」の姿そのものだ。私は、一緒になれたのだ。愛しのゆうと。
思わず身体を抱きしめて、そして顔が自然と笑顔になってしまう。それも当然、私が大好きなゆうの笑顔である。それがまた嬉しくて私はもっと笑う。
しかし、そのとき頭が重くなり、そして多くの映像がテレビのように私の目の前を電光石火で駆け抜けていった。
私は思わず壁に左手を当てて、倒れそうになった身体を支える。右手で自分の右目の視界を少し遮るようにして今の映像と記憶を思い出してみた。
そこには鮮明にゆうの思い出があった。裏切られた友達の顔、いや荒瀬昇の顔。ゆうをレイプした中年の親父の顔が狂気の笑いを浮かべている。優しくしてくれたオーナーとの多くの思い出と私との出会いの記憶。そして……昨日の裏切りの映像も。
私は鏡をちらりと見た。そこに映る私の瞳は、いつかのゆうが輝きを失った目そのものだった。今ならゆうの気持ちが痛いほど分かる。
ゆうが私を愛していたことが真実だといま分かったのと同じように、ゆうが裏切られて本当に悲しかったこともまた本当に理解したからだ。今の私以上にゆうの怒りを分かる人物など居ないだろう。
何故なら私とゆうは一緒になれたのだから。彼女の喜びも、彼女の痛みも、彼女の悲しみも、彼女の……怒りも全て私のものでもあるのだ。
私は右手を思い切り握ると、鏡に向かってストレートパンチを繰り出した。鏡の砕ける音と共に私の拳に痛みが伝わってきた。ゆうも同じように汚されても汚されてもそのたびに綺麗にしてきたガラスのハートを、そのたびに誰かに割られてきたのだ。
しかし、彼女の受けた痛みはこの拳の痛みの何十倍以上のものだ。
「ごめんね、ゆう」
私はゆうに拳を傷つけてしまったことを謝り、手の甲を伝う血を吸って、傷を舐めてすぐに治癒を完了させた。そこにはしっかりと綺麗なゆうの右手が何事もなかったかのように存在している。
私は時計を見た。ゆうとの甘い時間を過ごしてから、私が意識を失っていたのは7時間ほどらしい。開け放たれた窓から外を見ると夜の暗闇が太陽の光によって切り裂かれ始めている。
私はひび割れた鏡に映るゆうに笑いながらこう言った。
「行こっか、ゆう」
私はいつものように笑ったはずなのに、鏡の向こうの私が随分恐ろしく笑っているように見えたのは、おそらく鏡が割れてしまったからなのだろう。
979 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:51:06 ID:WA9DI9va
(1-22)
私は唯一の無傷の生還者である箪笥君から代わりのお気に入りである服を引っ張り出して、すぐに着替えると随分と変わってしまった部屋を後にした。帰ってきたら掃除しよう。
部屋の鍵をしっかりと閉めて、街に繰り出した私が向かうのはもちろんあのお店。オーナーは居るかなぁ?
自転車をここにそのまま置いて帰ってしまったため、いつもより時間が掛かってしまったが、私が店の近くに来たときにちょうど従業員の子が一人、店から出てくるところだった。
私はわざと彼女に見つかるようにして、店へと近づいた。すると予想通り彼女が私を見て驚いたように目を見開くと、こちらに駆け寄って来てこう言った。
「ねぇ、あなた確か昼間ここで清掃してくれてる人だよね?! 何かオーナーが昨日大騒ぎしてたわよ、あなたを捜してって」
「そうなんですか。それで、オーナーはまだ店の中に居ます?」
「あ、うん。まだ居るよ。ほら、今日と明日は月に二回のお休みだから私が最後にお店を閉めることになってたんだけど、なんかまだオーナーは仕事があるらしいから残るって」
「あ、良かったぁ」
私は安心した素振りを見せてその女の子に笑いかけた。彼女はそれからあわせるように笑いかけてくる。確か彼女はこの店に入ったばかりの新人だが、20歳になりたての女の子らしい。
一応、オーナーの方針でお酒が飲めて、親に迷惑を掛けずに済む歳になってからということで、ここで働く従業員は20歳が最低雇用条件だといっていた。
昨日までは従業員のことを考えた決まりのように思えたが、今となってはそれもおそらく警察に検挙されないために仕方なくそうしたのだろう。
しかし私の場合は違う。昼間のお仕事と言うことで私を雇い、そして最初からこうして私をだましてお金をもうけるための算段をしておいたからあんな昼間の仕事でも多くのお金をくれていたのだ。
「あの、ちょっといいですか?」
私はその新人の女の子を路地の方へと誘った。彼女は首を傾げて私を見ながらも頷いて着いて来てくれた。
「どうかしたの? オーナーに会いづらいのなら私が伝言だけでもしてあげるけど」
路地の中ほどまで進んだ辺りで私が立ち止まると、彼女が私の背中に向けてそう声を掛けた。そんな面倒な手間は必要ないですよ。
「いいえ、大丈夫です。あ、服にゴミが付いてますよ」
私は振り返って彼女にそう告げると、少しずつ彼女との距離を縮めた。彼女は驚いたように、服を確認し始める。
そしてそのまま私がすぐ目の前まで来たところで、やっとこちらに顔を戻した。
私は彼女に笑いかけて、そしてその唇に自らの唇を押し当てた。と、同時に身体に腕を回して彼女の動きを封じる。ゆうより年下なのに華奢な身体つきなのは、やはり生き方の辛さが違うからだろうか?
というより彼女の胸はゆうのものより貧相で、身体に密着している分余計にそう感じてしまうのだろう。
「んんんっ!? んんっ! んんんんっ!」
彼女が必死に私から離れようとするが、逃がしてあげるつもりはない。私は彼女をあやすように笑うと、ゆっくりと浸入を始めた。
「んんっ?! んんんんんっ!」
彼女の口の中に浸入した寄生体の私を彼女は拒もうと必死になっている。そんな必死になっちゃってもだ~め。
980 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:53:39 ID:WA9DI9va
(1-23)
「んぐっ!? んんんんんんんっ!」
私はそんな彼女の抵抗をあっさりと通過すると、彼女の口から本格的に体内へと浸入を始めた。曲がりくねった彼女の中をどんどん私が支配していく。
「ん……んんっ……んぁっ」
そして段々と彼女の顔が光悦としたものになっていき、しまいには私を自ら体内に招きいれようと私を美味しそうに飲み始めている。
私はそれを見て彼女の身体を拘束する目的のものから、抱きしめることが目的のものへと変化させて、ひたすらに私を飲んでいるその頭を優しく撫でた。
いつかゆうが私にそうしてくれたように。すると彼女も私を抱きしめてくれた。
そして彼女の身体に私の寄生体が十分に浸透したところで、私は彼女を「食べはじめた」。
「んんっ? ……んんっ……んっ」
彼女は溶解が始まった自分の身体に少し驚いたようだったが、それもすぐに消え失せたようで私の舌に自分の舌を絡めたり、唾液を美味しそうに飲んだりしていた。
細胞をいじることによる変化なので、痛みを伴うことはない。それと同時になるべく快楽を感じるように神経に信号を送ったりしている。
そして彼女の身体が段々と私の寄生体と同じように緑色の身体に変化していく。顔は私に絡めていた舌も、だらだらと解け始めてきた。
私はそれを見計らって、彼女の身体を今の宿主であるゆうの身体に口から取り込み始めた。吸い込まなくても口から勝手に浸入してくるそれを私は気持ちよく迎え入れていた。
やがて私を抱きしめていた腕の部分の感触もなくなり、履き手がいなくなった黒いニーソックスがへたりとハイヒール居の上に落ちた。
そして最後に白と黒のワンピースがその上に落ちた。
「んぁ。……あはははは、美味しかったよ。ごちそう様」
私は唇を人差し指で拭うと、そこに付いた彼女の身体のわずかな残り部分と彼女の唾液を、ぺろりと舐めて彼女を一滴残らず「食べ終えた」。
「すいませんオーナー、忘れ物しちゃいました!」
私は頭を掻きながら店の中へと入った。カウンター席に座っていたオーナーはケータイをいじりながら忙しそうな顔をしていたが、
私がそう言うと少しだけ笑って、ウィスキーが入ったグラスを傾けた。カランとグラスの中の氷が音を立てる。
私は頭を下げながらその後ろを通り、控え室に入って目的のものを捜した。
うん、こんなものでいいでしょ。
私はそれを見つけると、片手に持ち上げて身体の後ろに隠すように持って控え室を出た。
981 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:55:19 ID:WA9DI9va
(1-24)
「忘れ物はちゃんとあった?」
「あ、はい。ありました」
私は空いている手を頭に当てて、そのまま頭を軽く何度か下げた。オーナーは少しだけ安心したように笑って、再びケータイをいじりはじめた。
それを見た私はゆっくりとオーナーに近づく。彼女には私がその先のドアに近づいているように思えるだろうが、そこを私が再びくぐるのは少しだけ先になるかな。
オーナーはそのまま私に気付かないままケータイをいじくり回し、私はもうその身体の横までやって来た。見ようとすればケータイの文字すらも見えそうだが、それはまだ先だ。先に、やることがある。
そして私はオーナーの背後でピタリと足を止め、彼女の方へと向き直って顔だけ元に戻った。
私が持っていたものを振り上げ始めたそのとき、オーナーがこちらを振り向きながらこんな間抜けなことを言っていた。
「あれ……その服って、ゆうちゃんがよく着てたやつじゃ」
言い終える前に高そうな赤ワインのビンが彼女の頭を直撃し、破片が赤い雫を反射させながら四散していく。
彼女は体勢を崩して椅子から転げ落ちながら悲鳴を上げた。カウンターのへりの向こうへと携帯電話機が消えていく。後でしっかりと回収しよっと。
「くあああああああっ! ちょ……っと、ううっ、どう……したの……?」
頭を抑えながらゆっくりとした動作で彼女は私を見た。先ほどとは顔が違う私を、視界に捉えた瞬間、彼女の目がどんどん大きく開かれていく。
「ゆ、ゆう……ちゃん?! なんで……? さっきまで……そこには……」
私はにっこりと笑うと、今度は身体を元に戻して、顔をさっきの新人、つまり源氏名で「あやか」ちゃんと呼ばれる子のものに変化させた。余裕があったシャツの服の部分が、大きくなった胸に押されてに苦しそうに膨らんでいく。
「なん……なの? いえ……今は……そんなことより」
オーナーは頭を振るうとゆっくりと身体を動かして頭を地面にピタリとつけた。そう、それはいわゆる土下座という体勢だ。さてさて、一体どんなつもりでしょうか。
いや、分かってる。そうやって命乞いをするんでしょ。昼間のドラマでそういうのよくやってますよねー、そういうの。
私は肩をすくめながら顔を元に戻して、ゆうの身体と顔でその腹を蹴り飛ばした。
「ぐぅう! うげぇ、げぇ……ごめ……んなさい、ごめんなさい」
蛙のようにひっくり返ったのに先ほどの土下座体勢をしようとしているのか、身体を起き上がらせようとしながら今度は言葉までつけてきた。なんていう外道なんだろう。
あそこまでゆうを傷つけておいて、あなたはまだ謝れば自分を殺さずにいてくれると思っているんだ。
私はその強欲さに呆れながらもあまりに見苦しいので、手っ取り早く終わらせようと、手の指紋をあやかのものに変えてから彼女が転がった椅子を持ち上げて、オーナーの胸の少し上辺りを片足で踏みつけて動けないようにした。
「ごめん……なさい。ごめ……んなさい」
その間も彼女は私に向かって謝り続ける。目には涙まで浮かべて、まったく持ってあなたは演技派なお方だ。その特技で私もゆうも騙したんですね。
私はもうため息を吐くほどあきれ返り、そして一思いに持っていた椅子をオーナーの頭に向かって振り下ろした。彼女は目を見開く間も、悲鳴を上げることさえ出来ずに息絶えた。
982 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:58:46 ID:WA9DI9va
(1-24)
達成感に浸るまでもなくその椅子を床に放り投げ、私はカウンターの向こう側へと回りこみ、携帯電話機が落ちていったであろう場所に移動した。
そこで私が目にしたのは、シンクの中に置いてあったアイスペールの中で浮かぶ携帯電話機だった。……どうやら氷が溶けてしまって中身がほとんど水になってしまっていたようだ。
私はそれをゆっくりと持ち上げると真っ黒な液晶を目に入り、何度か起動方法を試してみたが、その液晶画面に光ることはなかった。
拳を握り締めながらも、どうしようもないことは私自身がよく分かっていた。ゆうとあやかの記憶にパソコンを忙しくいじくるオーナーの姿もあるが、残念なことにゆうもあやかもパソコンの動かし方を知らないようだった。
これではあの中にゆうを襲った者の手掛かりが存在していても意味がない。
背に腹は変えられずとも、床に倒れている外道の身体を「たべる」ことは絶対にしたくなかった。こんな奴の姿かたちと記憶が残ると思ったら虫唾が走る。
私は大きなため息を一つ吐いて、なんとかふんぎりを付けるとカウンターを乗り越えて裏口へと顔を向けた。
その途中目に入ったウィスキーが注がれているグラスを私はオーナー投げつけた。
バラバラに割れていく破片がオーナーの死体に降りかかる様を見ても心が晴れることはなかったが、それでもなんとかふんぎりをつけて私はオーナーの屍を踏み越え、裏口から店を後にした。
真っ暗な部屋のベッドの上で、私は自分の身体を抱いていた。ゆう、やっぱりあなたの身体は温かいね。
顔を上げると、しっかりと整頓された部屋が私の視界に入ってくる。ゆう、やっぱりあなたの部屋は綺麗だね。
近くに置いてあった手鏡を手に取る。ゆう、やっぱりあなたは可愛いね。
電話線を抜いた電話機のボタンを押して、あの日のゆうの僅かな言葉を聞く。ゆう、やっぱりあなたは優しいね。
「……だめ。もう、だめ」
私の頬から流せなかった涙が流れる。この2週間、ずっと流し続けた温かい涙が、また流れ始めた。
「私、もうだめだよ……。何も、何もかも、もうやだよ……。ゆう……」
抱えた膝に目頭をつけた。一人でこの部屋を見ていたら、涙が止まらなくなってしまうから。
一体私はこれからどうすればいいのだろうか、あれからずっと私は頭を悩ませ続けた。
もうゆうは私しか愛してくれない。人間の雄も雌もゆうはだいっきらいになってしまった。
じゃあ、私が人間に寄生したら……彼女は私をだいっきらいになってしまうのではないか? いや……優しい彼女のことだ。きっと本心は嫌いでも私の前では笑ってくれるかもしれない。
しかし、そんなの私には耐えられない。それに私が見たいのはそんな彼女が無理した笑いではない。
ただ純粋で、綺麗で、可愛く、そして優しい笑顔なのだ。無理をした笑顔には、無理をした優しさしかない。
でもこのままではゆうの身体は腐り始めてしまう。もちろん、私も一緒に。だから私はまず、彼女の身体から出て行こうと思った。
つまり、ゆうに身体を返して私は死のうと。彼女なら私の子供を産むことに自体は、おそらく喜んでくれるはず。
しかしだからと言って一体何が彼女に残るのだろうか? 結局、彼女が産んだ子供達も人間に寄生をしなければ生きていけない。
そんな子供達に向かって、無理矢理な笑顔を強制させ続ける人生を送らせようと言うのか? そうなったらおそらく彼女は自らの優しさに縛られ、私の子供を産み続けるために自ら死ぬことも許されない人生を送るだろう。
だからと言って、彼女に私の子供を産ませないようにして私だけが死んでも、もう何も信じられない彼女はおそらくすぐに自殺をするだろう。
そう、なにより私の今の宿主が他ならぬゆう自身だからこそ、これらの予想は全て外れることがないだろうと確信を持ててしまった。
そして……結局、ゆうの笑いを取り戻し、私とゆうが共に生きる手段はなかった。
983 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 00:59:53 ID:WA9DI9va
(1-26)
だから私は決めた。
一緒に天国に行こうと。
私は身体をベットに横たえた。もう、実際のところ身体が重くなり始めていた。正直、ここまで早く腐敗が進むとは予想外だったが、いい踏ん切りになっただろう。
なるべく身体が見えないように私は天井を向いて首を動かそうとはしなかった。目も閉じて視界を完全に遮る。ゆうの綺麗な指が腐り行く過程など絶対に見たくなかった。
……ねぇ、ゆう。私たち、天国に行ってもずっと一緒だよ? ず~っと、ずっと。きっと、ゆうだってもう悲しい涙は流さなくてすむと思う。だって天国なんだもん。流すとしたらそれは嬉しい涙だけだと思うよ。
あはははは、やっぱりゆうも楽しみだよね。分かるよ、分かる。だって私はあなたの痛みも、悲しみも全て知ってるんだもん。
えっ? あまりに楽しみで眠れないって? あはは、気が早いなぁ。でもきっと天国は面白くて寝るのも惜しいぐらいな世界だと思うよ。
だから今のうちに思う存分寝て、起きたら思う存分楽しもうよ。ねっ?
あ、うん、ありがとう。やっぱりやさしいなゆうは。ゆうもいい夢見てね。
じゃあおやすみ、ゆう。
984 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/18(火) 01:04:12 ID:WA9DI9va
これで、以上です
何とも分かりづらいので、最後に「終」ぐらいの文字を入れればよかったのですが、
すいません。忘れてしまいました。
更にまたしても番号の割り振りミスが……。
982は本来(1-25)となります。申し訳ありませんでした。
最後に投稿するに当たって、多くの方にご迷惑をお掛けしてしまったことを心よりお詫び申し上げます。
本当に申し訳ありませんでした。
(スレ11埋め)
958 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2009/08/17(月) 22:47:18 ID:C4m4zeYv
ぐじゅり、という粘液質の物が擦れる音。
その音が聞こえた瞬間、>>999の股間から何かが現れた。
>>999の異常な姿に激しくおびえる>>1000。
「ほら・・・>>1000、見てよ。生えちゃった。
あなたのことが大好きなの。私、あなたと一緒になりたいの」
>>1000は>>999の本音を聞くが、しかしその身体を見た以上は恐怖しか覚えなかった。
じりじりと後ずさる>>1000。
しかし、それを追うかのように近づいてくる>>999。
「はぁ、はぁ、おびえてる? 怖い? ねぇ、>>1000・・・」
959 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2009/08/17(月) 22:51:29 ID:C4m4zeYv
「こ、怖いに決まってるよ・・・ ねぇ、一体どうしちゃったのよ>>999!」
「簡単な話だよ。あたし、>>998先生に貴女が大好きだって相談したんだよ。
大好き・・・、友達としてじゃなくて、Hとかする相手としても大好きだって」
「・・・!」
>>1000は>>999の告白を聞き、その異常性が深刻な物であると確信した。
だが、ここは校内でも最も人通りも少ない、地下1階の資料室。
おまけに広さも無い。
>>1000は逃げたくて仕方ないが、しかしそのチャンスは訪れそうにない。
「ね、ねぇ・・・、考え直すからさ! こないだの『嫌い』は冗談なの」
「もう、遅いよ>>1000。あたし、あなたを愛するためだけの身体になったから」
「え・・・!?」
>>999はなおも近づいてくる。
そこで>>1000は気づいてしまった。
>>999が近づくその一歩一歩こどに、彼女の股間から生えるものが脈打つことに。
「あは・・・、気づいた? これはただのち○こじゃないんだよ?」
960 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2009/08/17(月) 22:56:26 ID:C4m4zeYv
「ち、ち○こって・・・」
「知らないわけないよね? 男の子のアレだって」
>>999はそんなことを言いつつも、更に距離を詰めてくる。
先ほどから同じように後ずさる>>1000だったが、いよいよそれも最後の時が来た。
ついに>>1000の背後は壁しか無い状態となったのだ。
「こうやって、>>1000に近づいてる間もね。あたし、>>1000を愛してるとこをイメージしちゃうんだ。
そうすると、なんだか本当に愛してるみたいな感じになっちゃってさ・・・
ま○こもち○こも、両方とっても気持ちよくなれちゃうの」
「ひっ・・・」
逃げる場所を失った>>1000は、あと2メートル程度に近づいた>>999の姿を見ることしか出来ない。
「>>998先生はね・・・、愛するのは良いことだって教えてくれたんだよ。・・・んんぅ」
くぐもった声と同時に、>>999の股間は更に凶悪な物へと進化していく。
最初に生えた物の周囲から、細い管のような触手が現れたのだ。
961 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2009/08/17(月) 23:01:51 ID:C4m4zeYv
「ふふ、どうかな? >>998先生がくれた子。>>1000を愛するためだけの子なんだよ」
言うと、>>999は股間の中心にあるそれを両手で包むように握った。
そして・・・
「こう、やって・・・、擦るとね、あっ、どん、どん、気持ちよく・・・、なる、の」
「え・・・、それって」
>>1000の頭の中では「自慰行為」という語が浮かぶ。
しかし・・・、男性が行うような行為を>>999が行っている現実はおかしかった。
「ね、ねぇ! 今から病院行こう? ね? きっと治るからさ」
>>1000は>>999が何か悪性の病に冒されていると勝手な判断をした。
だが、その発言と姿は結果として・・・
「あん、あたし、病気なんだ、よ? でね、そのまんま>>1000を愛しちゃうと、>>1000にも、
伝染っちゃうか、ら、>>998先生、に、この子をもらった、んだよ・・・あ、出る、出ちゃう!!」
>>999が股間のそれを擦る速度は、どんどん速まっていた。
やがて股間のそれは硬度を増し、また膨張していき・・・、
「ああああっ!」
びくん、と大きくそれははねると、先端からは黒く濁ったゲル状の液体が大量に放たれた。
962 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2009/08/17(月) 23:05:38 ID:C4m4zeYv
液体はそのまま、>>1000の全身に浴びせられる。
「だめ、止まらないぃぃいいいい! >>998先生の、言う通り、だぁああ!」
「>>999、やめて、やめてぇぇええ!」
>>1000はパニック状態に陥るが、もはや>>999を止めることは出来ない。
「あぁ、>>1000、犯す、犯すうううう」
「いやああああ!」
壁際に追い詰められていた>>1000は、瞬くまま>>999の股間の触手に捕らわれる。
そしてそのまま・・・
「入れるよ、入れちゃうよぉ」
「だめ、やめてぇ!!」
ずぶずぶと音が聞こえるかのように、>>999の股間のそれは>>1000の中へと侵略していく。
勿論、先ほどから黒く濁った液体は止まらないままだ。
「あったかい、あったかいよぉお・・・、もっとも出すの、>>1000の中に出すのぉ」
「あっ、あっ・・・」
その凄まじいまでの性愛を全身で受け止めることしか出来ない>>1000。
もはや言葉を発することすら不可能なまでに、彼女は>>999の愛を享受していた。
963 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2009/08/17(月) 23:09:28 ID:C4m4zeYv
「・・・」
別室では白衣の人影が立っていた。
その耳にはカナル式のイヤホン。
「ふふ・・・、>>999は本当に>>1000が大好きなのね」
呟くと、傍らに設置されているコンピュータを操作し始める。
「すぐに>>1000の子宮は黒精で満たされる。二人はこの校舎に無限の性愛をもたらす」
イヤホンからは、別室の>>999と>>1000の声。
コンピュータにはその別室の映像と何らかの計算結果。
「もうじきお盆だしね。くく・・・」
満足そうな笑みを浮かべ、白衣の人影はキーボードを操作し始めた。
964 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2009/08/17(月) 23:13:39 ID:C4m4zeYv
「も、だ、め、ゆる、し・・・」
「大好きだよ、大好きぃ、>>1000、だいすきぃ、はぁ、いい、だいすき」
自らの愛を言葉で、身体で、性愛で表現する>>999。
もはや>>1000はそれに耐えられないのか、まともな声は出ない。
しかし。
「たす、け、・・・ ああ、あああ・・・」
救助を求めるような声をわずかに上げていた>>1000だったが、様子が変化した。
虚ろな目つきで、か細いうめき声を上げはじめたのだ。
だが>>999はそんなことを感じさえもせず、ひたすらに>>1000を突き上げ、腰を打ち付け、
そして自らの黒い欲望を>>1000の中へはき出し続ける。
「あああ・・・」
>>1000は自分の中に放たれた液体が、自分を変えていることを感じた。
身体の様々な部分が、至る場所の細胞が、自分の思考が。
全てが別な物に変わっていく・・・
965 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2009/08/17(月) 23:18:11 ID:C4m4zeYv
「>>999。離して」
突然、はっきりとした声を>>1000を上げたかと思うと、>>999を吹き飛ばした。
どけたのではなく、部屋の反対側へ吹き飛ばしたのだ。
「>>999。あたしを仲間にして、愛するつもりだったんでしょ」
「う・・・」
「それは無理。だって」
そこまで言うと、>>1000の身体が変化しはじめた。
美しい黒髪は青く微細な触手に。
肌には妖しい模様が浮かび、秘所はまるで食虫植物のような形状の触手。
「あたし・・・、適性があるから」
突如として>>1000は>>999の目前へと移動した。
既に人外である>>999の目にも見えなかったのだ。
「さぁ、あたしの僕に」
>>1000の口から太い触手が現れると、>>999の口内へと入り込んでいく。
966 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2009/08/17(月) 23:22:07 ID:C4m4zeYv
>>999は抵抗しない。
むしろ、抵抗出来ない様子であった。
>>999の口内に突入した触手は先端が分かれ、彼女を>>1000の僕とするべく活動する。
脳に入り込んだ物は>>999の脳を溶かし、再構築を行う。
各種の臓器に入り込んだ物は、>>1000の種族として相応しいものへと作り替える。
性器に入り込んだ物は、その性器を>>999と同様のものへと作り替えた。
「立って」
「・・・」
>>1000の命令に従い、>>999は立ち上がる。
その姿は>>1000と同じような物であった。
「行こう。あたし達が永遠に愛し合える世界を作るの」
>>999と>>1000は部屋を出る。
残されたのは、二人の激しい性愛の後であった・・・
967 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2009/08/17(月) 23:22:47 ID:C4m4zeYv
投下しておられた方がいたので、埋め側でやってみました。
久々に早く帰れたので・・・
まだしばらくちゃんと時間作れそうにないですOTL
ぐじゅり、という粘液質の物が擦れる音。
その音が聞こえた瞬間、>>999の股間から何かが現れた。
>>999の異常な姿に激しくおびえる>>1000。
「ほら・・・>>1000、見てよ。生えちゃった。
あなたのことが大好きなの。私、あなたと一緒になりたいの」
>>1000は>>999の本音を聞くが、しかしその身体を見た以上は恐怖しか覚えなかった。
じりじりと後ずさる>>1000。
しかし、それを追うかのように近づいてくる>>999。
「はぁ、はぁ、おびえてる? 怖い? ねぇ、>>1000・・・」
959 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2009/08/17(月) 22:51:29 ID:C4m4zeYv
「こ、怖いに決まってるよ・・・ ねぇ、一体どうしちゃったのよ>>999!」
「簡単な話だよ。あたし、>>998先生に貴女が大好きだって相談したんだよ。
大好き・・・、友達としてじゃなくて、Hとかする相手としても大好きだって」
「・・・!」
>>1000は>>999の告白を聞き、その異常性が深刻な物であると確信した。
だが、ここは校内でも最も人通りも少ない、地下1階の資料室。
おまけに広さも無い。
>>1000は逃げたくて仕方ないが、しかしそのチャンスは訪れそうにない。
「ね、ねぇ・・・、考え直すからさ! こないだの『嫌い』は冗談なの」
「もう、遅いよ>>1000。あたし、あなたを愛するためだけの身体になったから」
「え・・・!?」
>>999はなおも近づいてくる。
そこで>>1000は気づいてしまった。
>>999が近づくその一歩一歩こどに、彼女の股間から生えるものが脈打つことに。
「あは・・・、気づいた? これはただのち○こじゃないんだよ?」
960 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2009/08/17(月) 22:56:26 ID:C4m4zeYv
「ち、ち○こって・・・」
「知らないわけないよね? 男の子のアレだって」
>>999はそんなことを言いつつも、更に距離を詰めてくる。
先ほどから同じように後ずさる>>1000だったが、いよいよそれも最後の時が来た。
ついに>>1000の背後は壁しか無い状態となったのだ。
「こうやって、>>1000に近づいてる間もね。あたし、>>1000を愛してるとこをイメージしちゃうんだ。
そうすると、なんだか本当に愛してるみたいな感じになっちゃってさ・・・
ま○こもち○こも、両方とっても気持ちよくなれちゃうの」
「ひっ・・・」
逃げる場所を失った>>1000は、あと2メートル程度に近づいた>>999の姿を見ることしか出来ない。
「>>998先生はね・・・、愛するのは良いことだって教えてくれたんだよ。・・・んんぅ」
くぐもった声と同時に、>>999の股間は更に凶悪な物へと進化していく。
最初に生えた物の周囲から、細い管のような触手が現れたのだ。
961 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2009/08/17(月) 23:01:51 ID:C4m4zeYv
「ふふ、どうかな? >>998先生がくれた子。>>1000を愛するためだけの子なんだよ」
言うと、>>999は股間の中心にあるそれを両手で包むように握った。
そして・・・
「こう、やって・・・、擦るとね、あっ、どん、どん、気持ちよく・・・、なる、の」
「え・・・、それって」
>>1000の頭の中では「自慰行為」という語が浮かぶ。
しかし・・・、男性が行うような行為を>>999が行っている現実はおかしかった。
「ね、ねぇ! 今から病院行こう? ね? きっと治るからさ」
>>1000は>>999が何か悪性の病に冒されていると勝手な判断をした。
だが、その発言と姿は結果として・・・
「あん、あたし、病気なんだ、よ? でね、そのまんま>>1000を愛しちゃうと、>>1000にも、
伝染っちゃうか、ら、>>998先生、に、この子をもらった、んだよ・・・あ、出る、出ちゃう!!」
>>999が股間のそれを擦る速度は、どんどん速まっていた。
やがて股間のそれは硬度を増し、また膨張していき・・・、
「ああああっ!」
びくん、と大きくそれははねると、先端からは黒く濁ったゲル状の液体が大量に放たれた。
962 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2009/08/17(月) 23:05:38 ID:C4m4zeYv
液体はそのまま、>>1000の全身に浴びせられる。
「だめ、止まらないぃぃいいいい! >>998先生の、言う通り、だぁああ!」
「>>999、やめて、やめてぇぇええ!」
>>1000はパニック状態に陥るが、もはや>>999を止めることは出来ない。
「あぁ、>>1000、犯す、犯すうううう」
「いやああああ!」
壁際に追い詰められていた>>1000は、瞬くまま>>999の股間の触手に捕らわれる。
そしてそのまま・・・
「入れるよ、入れちゃうよぉ」
「だめ、やめてぇ!!」
ずぶずぶと音が聞こえるかのように、>>999の股間のそれは>>1000の中へと侵略していく。
勿論、先ほどから黒く濁った液体は止まらないままだ。
「あったかい、あったかいよぉお・・・、もっとも出すの、>>1000の中に出すのぉ」
「あっ、あっ・・・」
その凄まじいまでの性愛を全身で受け止めることしか出来ない>>1000。
もはや言葉を発することすら不可能なまでに、彼女は>>999の愛を享受していた。
963 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2009/08/17(月) 23:09:28 ID:C4m4zeYv
「・・・」
別室では白衣の人影が立っていた。
その耳にはカナル式のイヤホン。
「ふふ・・・、>>999は本当に>>1000が大好きなのね」
呟くと、傍らに設置されているコンピュータを操作し始める。
「すぐに>>1000の子宮は黒精で満たされる。二人はこの校舎に無限の性愛をもたらす」
イヤホンからは、別室の>>999と>>1000の声。
コンピュータにはその別室の映像と何らかの計算結果。
「もうじきお盆だしね。くく・・・」
満足そうな笑みを浮かべ、白衣の人影はキーボードを操作し始めた。
964 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2009/08/17(月) 23:13:39 ID:C4m4zeYv
「も、だ、め、ゆる、し・・・」
「大好きだよ、大好きぃ、>>1000、だいすきぃ、はぁ、いい、だいすき」
自らの愛を言葉で、身体で、性愛で表現する>>999。
もはや>>1000はそれに耐えられないのか、まともな声は出ない。
しかし。
「たす、け、・・・ ああ、あああ・・・」
救助を求めるような声をわずかに上げていた>>1000だったが、様子が変化した。
虚ろな目つきで、か細いうめき声を上げはじめたのだ。
だが>>999はそんなことを感じさえもせず、ひたすらに>>1000を突き上げ、腰を打ち付け、
そして自らの黒い欲望を>>1000の中へはき出し続ける。
「あああ・・・」
>>1000は自分の中に放たれた液体が、自分を変えていることを感じた。
身体の様々な部分が、至る場所の細胞が、自分の思考が。
全てが別な物に変わっていく・・・
965 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2009/08/17(月) 23:18:11 ID:C4m4zeYv
「>>999。離して」
突然、はっきりとした声を>>1000を上げたかと思うと、>>999を吹き飛ばした。
どけたのではなく、部屋の反対側へ吹き飛ばしたのだ。
「>>999。あたしを仲間にして、愛するつもりだったんでしょ」
「う・・・」
「それは無理。だって」
そこまで言うと、>>1000の身体が変化しはじめた。
美しい黒髪は青く微細な触手に。
肌には妖しい模様が浮かび、秘所はまるで食虫植物のような形状の触手。
「あたし・・・、適性があるから」
突如として>>1000は>>999の目前へと移動した。
既に人外である>>999の目にも見えなかったのだ。
「さぁ、あたしの僕に」
>>1000の口から太い触手が現れると、>>999の口内へと入り込んでいく。
966 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2009/08/17(月) 23:22:07 ID:C4m4zeYv
>>999は抵抗しない。
むしろ、抵抗出来ない様子であった。
>>999の口内に突入した触手は先端が分かれ、彼女を>>1000の僕とするべく活動する。
脳に入り込んだ物は>>999の脳を溶かし、再構築を行う。
各種の臓器に入り込んだ物は、>>1000の種族として相応しいものへと作り替える。
性器に入り込んだ物は、その性器を>>999と同様のものへと作り替えた。
「立って」
「・・・」
>>1000の命令に従い、>>999は立ち上がる。
その姿は>>1000と同じような物であった。
「行こう。あたし達が永遠に愛し合える世界を作るの」
>>999と>>1000は部屋を出る。
残されたのは、二人の激しい性愛の後であった・・・
967 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2009/08/17(月) 23:22:47 ID:C4m4zeYv
投下しておられた方がいたので、埋め側でやってみました。
久々に早く帰れたので・・・
まだしばらくちゃんと時間作れそうにないですOTL