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五行戦隊 第二話
709 ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:29:34 ID:2vLMwDxE
>>419の続き、五行戦隊~大きな目玉に見つめられ~の第二話です。
目玉がいっぱい生えて、ちょっとグロかも?
長くなってしまった。反省中。
悪堕ち的な寄生ものです。
710 五行戦隊 第二話(1/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:31:02 ID:2vLMwDxE
鈴華が失踪する前の状況を、睦美は淡々と述べていた。
二人が偶然目玉妖怪を見つけたこと、そのあとを追ったこと、
そして睦美だけ仲間のところに戻り、鈴華は一人で追跡をし続けたこと。
睦美は終始落ち着いた口調で、順を追って説明した。
そんな彼女の話を、一人の少女は静かに聞き続ける。
睦美の同級生であり、藤村翠という名の女の子だった。
彼女が語り終わるまで、翠は一言もまじえず、時々眼鏡の下にある双眸を光らせた。
睦美の話が一段落ついたとき、翠はやっと一言の感想を述べた。
「あなたのせいじゃありません」
「えっ?何が?」
予想外の発言に、睦美は思わず聞き返した。
「鈴華ちゃんがいなくなったのは、睦美さんのせいじゃありません」
「誰でも私のせいだとは言ってないのだが」
「睦美さん自身がそう思っています。顔には出してないものの、私にはそう感じられます」
翠の清らかな瞳は、まっすぐ睦美の顔を捉えた。
睦美はしばらく彼女を見返すが、ついに負けて視線をそらした。
「その時の睦美さんの判断は、間違ってなんかいませんわ。なのに、今のあなたは、
あの時鈴華ちゃんと一緒にいれば……という後悔の念がいっぱい。私には、そう見えます」
翠の言葉を聞いて、睦美は思わず苦笑した。
仲間の中では、睦美は翠のことが一番苦手なのだ。
彼女はため息を吐き、
「あの目玉妖怪が、犬を一匹丸ごと飲み込んだ光景を思い出すと……
もし鈴華の身に何か起きたと思うと、私は自分が許せないわ」
「だけど、まだそうと決まったわけじゃないでしょう?私達が勝手に殺したら、かわいそうですもの。
鈴華ちゃんは強い子ですよ。だから、妖怪たちの巣窟を一刻も早く見つけて、鈴華ちゃんを救いましょう」
翠はそう言うと、ニコッと微笑んだ。
その笑顔は睦美の緊張しきった心を解き、感情を緩ませた。
「ええ、まったくあなたの言うとおりだわ」
睦美は一笑すると、自分が感情を整理する余裕ができたことに気付いた。
翠のゆったりとした雰囲気と触れ合うたびに、睦美は翠という人間を不思議思うのだった。
藤村翠は、優しい女の子である。
腰までかかるロングヘアと、縁の大きいメガネが彼女のトレードマーク。
趣味は家のベランダにある植物の手入れや、お花鑑賞とのこと。
五行戦隊が結成された当初、チームワークは結構ぎくしゃくしていた。
そんな中、いつもみんなをうまく静めたのが、翠の役割だった。
灯をたしなめ、鈴華をさとし、清見に忠言し、睦美をいさめる。
そうしているうちに、みんながまた一丸となって敵と戦う。
決して突出した存在ではないが、肝心なときに心強いと感じる存在なのだ。
妖獣と戦闘するときでも、彼女の木遁術はチームのサポート役を徹している。
そのおかげで、睦美たち自分達よりも強い敵を倒すことが何度もできた。
彼女がいるだけで、睦美を含め、他のメンバー達にある種の安心感が与えられる。
ふと、睦美は生徒会室の窓外に、掌に乗るぐらい小さな火の玉が漂っているのを見かけた。
彼女は窓を開けると、火の玉がふんわりと飛んできた。
手を伸ばしてつかまえると、火の玉は彼女の手の上で止まり、おもむろに球状から矢印の形に変化した。
「灯ちゃんの信号火ですわね」
「どうやらあの化け物の形跡を発見したらしい。いこう、翠!」
睦美は強い意志がこもった顔構えとなった。
彼女のいきいきとした表情を見て、翠は優しい笑みをほころばせる。
711 五行戦隊 第二話(2/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:32:17 ID:2vLMwDxE
火の玉の矢印に従って駆けると、しばらくして、二人は町のはずれにある廃れた工場前にたどり着いた。
そこではすでに戦闘が開始していた。
赤と青のバトルコスチュームを身にまとった二人の少女の周りに、大量の目玉スライムが囲んであった。
彼女達はそれぞれ灯(あかり)と清見で、睦美や翠と同じく五行戦隊の一員である。
目玉スライムは黒い腐肉の真ん中に目玉を生やし、それが多数集まって不気味な動きを見せながら二人に近づく。
しかし数こそ圧倒的に多いが、戦況はどうやら二人の方が優勢だった。
灯が爆裂パンチを繰り出し目玉スライムを焼き払い、
清見は渦潮を作り出し巻き込んだ目玉スライムをことごとく粉砕する。
ただし、目玉スライム達の中に、一つだけ他より一回り大きいスライムがいた。
それの肉体は、まるで巨大化したヒトデのような五角形をし、下側の二本足を使って地面に立っていた。
体の表面は暗い黄色を呈し、その真ん中にはやはり大きな目玉が見開く。
ただ、その瞳は金色な輝きを放ち、色が目立つだけあってより一層のグロテスクを持つ。
巨大ヒトデ型の目玉スライムは灯や清見の戦いぶりを観戦していたが、
睦美や翠が現われると、彼女達に向けてがん飛ばした。
はじめて見る目玉妖怪の異種に、睦美と翠は驚きを感じつつ、警戒心を高めた。
二人はそれぞれ首にかけた勾玉を握って変身をした。
「天誅地滅、悪の道。有言実行、人の道。信念を守る、一座の連なる峰――高嶺の睦美、いざ参上」
「天誅地滅、悪の道。寛仁大度、人の道。平和を守る、一輪の芳ばしき花卉――若葉の翠、同じく参上」
口上と共にまぶしい輝きを放つと、二人は灯や清見と同じコンセプトのバトルスーツを身に着けた。
見た目には大差なく白を基調としたワンピース型だが、睦美のほうは更に褐色を帯びており、
そして翠は緑色の度合いを多く含んでいた。
彼女達に土や木の属性の霊力が宿ると、髪の色もそれぞれ褐色や緑色に染まった。
「ストーンスプラッシュ!」
「ローズウィップ!」
二人はそれぞれ必殺技を繰り出して目玉スライムを蹴散らしている間、清見はすばやく二人の方へ駆けついた。
「清見、状況はどうだい?」
睦美は清見を襲おうとするスライムをその目玉ごと岩石で押しつぶし、彼女に声をかけた。
「いつもの目玉妖怪だけど、今度はちょっと変わったやつが一匹混ざってる」
「変わったやつ?」
睦美と翠は清見の目線に沿って、今ちょうど灯と交戦し始めた黄色い化け物をとらえる。
灯はその化け物と一定の間合いを保ちつつ、遠くから火炎弾を放って様子を見ていた。
化け物は柔らかそうな肉体をぶるぶる震わせ触手を伸ばすが、灯は決してその触手に触られまいと避け続ける。
触手は鞭のようにしなり、彼女の体を打とうとする。
その間、時折まるで刃物が風を切るような鋭い音が聞こえる。
「私も灯も、あの黄色い化け物に手を焼いている」
「なんなの?あんなやつ、今まで見たこと無いわ。目玉妖怪の新種か?」
「分からない。しかし、あれには今までの目玉妖怪に無かった攻撃手段を――」
「みんな気をつけて!こっちに来ますわ」
翠は清見の話を遮り、注意を喚起した。
彼女の喚起よりも数秒前に、金色スライムは灯の爆砕拳を避け、
突然体をバネのように縮ませて、翠達のほうへ跳ね飛んできたのだ。
金色スライムの移動開始と翠の言葉はさほど間隔を空けていなかった。
しかし、睦美や清見が振り返った時、金色スライムはすでに彼女達の目の前に現われた。
その猛烈なスピードは、彼女達が今まで抱いていた「目玉スライムはノロい」という常識を完全に覆した。
翠がいち早く気付いたおかげで、三人は間一髪のところ別の場所へ回避できた。
三人が立っていた位置は、金色スライムにがぶりと食い覆われた。
その跡は、まるで鋭利な刃物が豆腐をえぐったように、綺麗に削り取られる。
712 五行戦隊 第二話(3/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:33:00 ID:2vLMwDxE
「なんだこいつはっ」
睦美は空中で両手を一度合わせた、着地した後すぐにしゃがみこみ、地面を思いっきり叩いた。
彼女の前にある土は轟音を立てながらせり上がり、大きな岩石が突き出てきた。
「叩き潰す。いけっ!」
睦美が強く念じると、岩石はものすごい勢いで金色スライムの方へ飛んだ。
だが敵の方を見ると、睦美は夢にも思わない光景を見てしまった。
金色スライムの目玉から、一本の大剣が突き出た。
次の瞬間、スライムの腕(に相当するような触手)がその剣を掴んで、ぶーんと振り回した。
車一台分の体積がある岩石は、あっさりと両断された。
睦美が攻撃している間に、翠は金色スライムの裏側に回りこんだ。
右手の掌をスライムの背中に向け、左手でそれを支える。
そして精神を集中し霊力を駆使すると、彼女の右腕を一本の木が絡めはじめる。
幹はすぐに成長し、そこから無数の葉っぱや枝を散り始めた。
その葉っぱは鉄片のように鋭く、枝は鉄棒ように硬い。
それら全部、金色スライムの巨体を目指して鋭い角度を描いて飛んでいった。
このとき、金色スライムはようやく睦美の岩石を切り落とし、翠のほうを振り返った。
いくらスピードが速くなっても、この攻撃は避けられるはずが無い。
翠はそう思っていた。
確かに彼女の予想通り、葉っぱや枝は全て金色スライムに命中した。
彼女の予想外のところを言うと、枝葉が敵に届く直前、金色スライムは変形したことだった。
翠は思わず首をかしげた。
今までの戦いで、目玉妖怪は姿形をある程度変化できると知っているが、
それでも彼女は今の金色スライムの変化を理解できなかった。
金色スライムはその大きな目玉を隠すように、肉体をヒトデ型から丸い塊状に変えた。
そして、柔らかそうな肉質は硬く変化し、その表面は金属の光沢を放っていた。
枝葉はその塊に激突すると、次々と弾き飛ばされた。
耳を塞ぎたくなるような鋭い金属音が、広場全体を響き渡る。
全ての攻撃を弾いたあと、金色スライムは再び肉を伸ばし、傷一つ負わないヒトデ型に戻った。
灯や清見、睦美は彼女の側に駆け付く。
翠はおっとりとした構えで、三人に自分の意見を述べた。
「あの黄色い目玉さん、とても強いですわ」
「「「感心している場合か」」」
三人はそれぞれつっこみを入れた後、睦美は改めて尋ねた。
「清見、あいつは一体なんなの?」
清見が答えようとする前に、灯が先に割り込んだ。
「あんなデタラメなやつ、見たこと無いぜ。触手が鋭い刃物に化けるわ、剣とか槍とか見境無しに出すわ。
こっちが攻撃しようとすると、体を硬くして全部跳ね返してくれるし」
「はい。どうやらあの金色の目玉妖怪には、金属を自由自在に操る能力があるみたいだわ」
「そ、それって……まるで鈴華みたいじゃないか」
睦美はそう言って、言葉を失った。
鈴華が失踪した事と、目玉スライムの新種が出てきた事。
その両者の間に、なんらかの関係がある、と睦美は直感した。
同じ考え方なのか、清見は意味ありげの表情で睦美を見つめる。
彼女達の憂いを拭うように、灯は赤いショートヘアをかきわけ、屈強な笑みを浮かばせる。
「とにかく睦美も翠も来た事だし、あの厄介なやつをぶっとばすぜ!」
いつもなら、ここで鈴華が対抗意識をはって何かを言うのだが、それが無いだけで灯は少し寂しかった。
「みんなの力が合わされば、どんな敵にも負けませんわ」
翠のほほえましい一言は、各人の緊張を和らげた。
713 五行戦隊 第二話(4/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:34:01 ID:2vLMwDxE
その時、金色スライムは突然奇声をあげ、そのおぞましい巨体を震わせた。
「シュルゥウウウ――!」
ヒトデ型の肉体が強張ると、真ん中にある目玉から肉筋が枝分かれ、その全身に網目状の模様で分布した。
暗黄色の肉がところどころ盛り上がり、小剣、短刀、鎌、鉄の矢と、次から次へ武器が生成される。
スライムは金色の瞳ぐるりとまわし、翠たち四人を見定めた。
その魔色の輝きを見て、彼女達は一斉に危険な感知した。
次の瞬間、スライムの表面に浮かび上がった武器は、まるで弾丸のように四方八方へ吐き飛ばされた。
翠たちは例外なく戸惑った。
無数の武器を作り出して放出するその技は、その厄介な所まで、鈴華のそれととてつもなく似ていた。
四人の中で、灯が一番速く反応した。
彼女は常に闘争心を燃やしていた。
例え敵がどんな手を使ってこようと、彼女はいつも一番手となって敵とぶつかってきた。
だから今回も、彼女は率先して刃たちに立ち向かった。
「させるかよ!」
灯は仲間達と金色スライムの間に飛び、手を赤く燃やした。
「はぁ――っ!爆炎砕ぃっ!」
灯が思いっきり拳を打ち出すと、彼女の前方に大きな爆発が生じた。
その範囲に向けられた武器は瞬時に溶かされ、蒸発してしまった。
ほかの方向へ飛ばされた武器は、そのまま刃物の雨となって地面に突き刺さり、
生き残っていた黒スライム達を問答無用に刺し滅した。
金色スライムの残虐な攻撃に、灯たちは眉をしかめた。
「シュルルルルッ!」
金色スライムは体を丸めて、灯が作り出した炎の壁を飛び越えて、彼女の方へ跳ねてきた。
灯が炎のパンチを繰り出そうとした瞬間、金色スライムは目玉をまばたき、そこから一条の光を放った。
「あっ」
灯はその怪光線を浴びた途端、金縛りにあったように拳を掲げたまま、動かなくなった。
次の瞬間、スライムの眼球から一本のナイフが突き出て、彼女の喉仏に狙いを定めた。
刃物の冷たい殺気を肌で感じたとき、灯は全身に冷え汗をかいた。
ナイフが眼球から射出する直前、翠は灯と金色スライムの間に割り込み、
そのまま肩で灯を突き飛ばし後、右手から茨の鞭を操った。
ナイフが翠の左肩を突き刺さる。
一拍を置いて、翠のローズウィップが、金色スライムの体を巻きあげた。
翠の顔に一抹の赤みが浮かび、痛みのせいか顔を歪めた。
それを目のあたりにして、灯の怒りが頂点に達した。
灯は自分が傷つくよりも、仲間の傷を十倍痛く感じる性格をしている。
「絶対に、ゆるさねぇー!」
灯は巻きつかれた金色スライムの真正面に飛び入り、拳に渾身の力をこめて目玉の中へぶちこんだ。
彼女は怒りのあまりに霊力を使うことさえ忘れ、ただ力任せに殴打した。
「ギイィィィ!!」
スライムの悲鳴は夜空を横切る。
体にノコギリのようなギザギザの刃が立ち、茨の絡めを断ち切ると、金色スライムは素早く後退した。
しかし、灯の第二のパンチはすぐそばまでやってきた。
今度は激しい炎気を携わりながら。
スライムはとっさに体を丸めて、体全体を鉄の塊のように硬くさせた。
しかし、灯の怒気がこもった炎拳は、その硬い体を溶かし、金色スライムの巨体をまるごと激しくぶっ飛ばした。
金色スライムはもう一度悲鳴をあげ、欠けた体を丸めながら地面を跳ね、高速なスピードでこの場から逃げた。
714 五行戦隊 第二話(5/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:34:49 ID:2vLMwDxE
灯はそれ以上の追撃をせず、心配の表情で振り返った。
彼女が翠のほうへ寄った時、睦美と清見はすでに翠の傷を確認し終わった。
「翠、大丈夫か?」
「はい、灯さんが目玉妖怪に勝ったおかげですわ」
「なに言ってる、オレのほうこそ、お前に助けられて……」
その時、灯は睦美と清美の神妙な表情に気付いた。
彼女はすぐさま翠の肩の傷を見た。
緑色のバトルコスチュームは横に破れた跡が残り、その下にある白肌に一筋の傷口が見える。
「無い」
清見はボソッと呟く。
彼女の唐突な発言に、灯は戸惑った。
「ない?」
「無い。」
「何が?」
「翠を傷つけたナイフなんだけど、どこにも見当たらないの」
「そんな細かいこと、いちいち気にしてる場合か」
灯は呆れた様子で言った。
しかし、睦美もおかしい箇所を指摘した。
「血も出てないんだ」
灯は改めて見ると、確かに傷口は大きさのわりに、血が一滴もこぼしていなかった。
「それどころか、痛みすらまったく感じないのです」
と、翠は他人事のようにおっとりとしていた。
四人の中で、清見は一番冴えていた。
彼女はすぐに自分の見解を述べた。
「ナイフが刺さったはずなのに、傷口は横に向かって細く伸びている。翠、その時一体何が起きた?あの刃物はどこへ消えた?」
「ナイフが突き刺さった時は、『やられた!』と思ったけど、痛みがまったく無かったから、よく見ませんでした。
あの後……確か、ナイフが中へ入ったような感じだったですわ」
「『入った』。つまり中にあるのね」 清見の神妙な言い草に、睦美と灯は顔を見合わせた。
翠は清見を見て、何かを悟ったのか、髪の毛の中から一粒のタネを摘み取り、それを自分の傷口の中へ埋め込んだ。
「成れっ!」
翠は小声で一喝すると、肩の傷口から小さな植物が苗を伸ばして生長した。
彼女は唇を噛み締め、痛みを我慢しながらそれを茎ごと引き抜くと、その根っこは一つの目玉を連れ出した。
苗は目玉に根付き、その養分を吸い尽くすと、
目玉はたちまちただの溶液となって地面に垂れ落ち、むせ返るような甘い匂いを発散した後消えた。
灯は驚きのあまり、口をぽかんと開けたままとなった。
翠は続けて薬草で傷口を塗り塞いだ。
「あの目玉妖怪の狙いは、人体に攻撃した後目玉を体内に残して、内側から攻撃するつもりだったのね」
清見は身の毛がよだつような解説を、淡々と述べた。
灯はそのおぞましい光景を想像しただけで、思わず身が震えた。
「なんて恐ろしい化け物だ……」
「ああ、ますますほっとけないな。あいつは重傷を負ってるから、遠くへ逃げられないはずだ。町に入られる前に、追うわよ」
「ええ、町に逃してしまいましたら、一般人に被害が出てしまいますわ」
翠がそう言って立ち上がると、睦美は彼女に向かって手を振った。
「あの化け物のを追うのは、私達三人だ」
「私なら大丈夫ですわ、この薬草でなら……」
睦美は慌てて一歩踏み出し、延々と続く自製薬草の宣伝文句を断ち切った。
「この薬草でなら三十分で元通りの特効性薬草なのかもしれないが、あいつをやっつけことなら私達三人で充分だわ。
それに、あいつがデタラメに攻撃したおかげでほかの目玉妖怪も全滅したみたいだけど、
万が一生き残りがいるかもしれない。翠にはこの場に残って、それを確認してほしいわ」
「うっ……分かりました」
あからさま薬草の話題を打ち切られたのを感じ、翠は涙目になった。
715 五行戦隊 第二話(6/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:35:32 ID:2vLMwDxE
「じゃあ後は頼んだよ。清美、灯、あの化け物の妖気を追うわよ」
「はい」
「すぐあいつをぶっとばして、翠の恨みを晴らしてくるよ」
三人はそう言った後、暗い夜景色のむこうへ姿をかき消した。
睦美たちがいなくなった後、翠はため息を吐いた。
「私の薬草、そんなに不味いのかしら。確かに味と匂いはほんの少しだけきついけど、
効き目の方は抜群なのに」
翠は傷ついたメンバーにこの薬草を使おうとする時、四人とも揃って遠慮した情景を思い返した。
夜の廃工場前の広場は、冷たくて人気がなかった。
金色スライムが妖気で作り出した武器は、その妖気が尽きたと同時に雲散した。
ただ残されたのは、スライムたちの死骸である黒い水溜まりであった。
翠はその汚れた大地に向かって、沢山のタネをまいた。
数日もすれば、タネたちは成長しながら汚れを吸収し、無害なものに分解する。
他人を傷つけたくない優しさを持つ翠は、その力を一番良く使いこなしてきた。
しばらく経つと繁々と現れる植物達を想像すると、翠は自分のタネに期待をこめずにいられなかった。
睦美が彼女に気遣っている事は、よく分かっていた。
五行戦隊のメンバー達はそれぞれ五つの属性を持ち、その中で翠の属性は木である。
彼女の弱点属性は金。
金の属性を持つ妖獣と戦うのは、彼女にとって最初から不利となる。
そしてもう一つ、彼女はよりによって金の属性を持つ物質に、傷つけられてしまった。
弱点属性である物に傷つけられるのは、極めて不吉な事であり、
これから起こりえる凶事を警戒しなければならない。
迷信っぽいことだが、彼女達は五行術を扱うだけあって、忌避したいところである。
翠はふと自分達に聖なる勾玉を授けた人物のことを思い浮かんだ。
(陽子先生が戻ってきたら、きっと鈴華ちゃんを見つかる方法も……)
陽子先生の明るい笑顔を思い出しながら、ふと、翠は一匹の蠢いている影を見つけた。
「まだ生き残りがいたのね」
彼女はその黒スライムの側までやってくると、「あっ」と声をあげた。
スライムが伸ばした触手の先には、金色の鈴が掲げられていた。
チリン、チリンと鳴る音色は、その持ち主と同じ可愛いものだった。
翠はその音を聞くと、鈴華が人懐っこい笑顔を浮かべて、鈴を髪に結っている姿を思い浮かべた。
「あなたはそれをどこで?鈴華の身に何が起きたのです?」
黒スライムはただ白い目玉をにょろりと動かし、鈴を鳴らしながら廃工場の方へ蠢いた。
「あらら、どうやら私はデートに誘われたようですね」
翠は睦美たちが消えた方向をしばらく見つめた後、ついに意志を固めて黒スライムのあとを追った。
廃工場の中では、錆付いた機械が沢山残されていた。
ガラスの無い窓から月光が多少注ぐが、中はやはり暗かった。
スライムの色は黒く、暗闇とほとんど区別がつかないが、その白い目玉は光を反射してよく見える。
それだけに白さが目立ち、まるで暗闇のかで浮遊しているようで不気味だった。
翠は歩きながら、さきほどの戦いを思い返した。
彼女は肩が傷つけられたとき、痛みはまったく無かった、と他の三人に説明した。
しかし、灯は確かにナイフが刺さったとき、翠が顔をしかめたのを見た。
翠は別に嘘をついていなかった。
ただし、彼女はその時に感じた感触を、口では言わなかった。
716 五行戦隊 第二話(7/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:36:55 ID:2vLMwDxE
言えなかった。
ナイフが刺さったとき、身体を躍らせるような甘美な快感が走ったなんて、
とても伝えられるものではなかった。
翠自身もその時の感じを疑っていた。
ナイフが体に傷をつけた瞬間、甘い痺れがじんわりと広がり、
体がまるでぬるい湯に浸しているようにけだるい気持ちよさに満たされた。
その時、翠は思わず身をかがめ、頭に押し寄せる快楽の波をこらえた。
胸はせつなくなり、戦いの場とはまったくそぐわない情欲が、自然と膨らんだ。
あまりにも恥ずかしいことだったため、彼女は睦美たちにその感触を打ち解けることも叶わなかった。
あの後、快感はすぐに収まったが、甘い痺れ感は肩から腕、
胸と徐々に広がり、それがあの目玉を摘出するまで続いていた。
おそらく、それは目玉妖怪が持つ特殊な能力か何かだろう。
内部から人体を攻撃するのなら、なぜわざわざ痛みを与えないようにするのか。
快感のことも清見にも話したら、目玉妖怪の狙いが分かるかもしれないと思うと、翠は今となって少し後悔した。
やがて翠は工場の奥にある一室の前に導かれると、スライムはそこで止まり、ただ翠の顔を睨んだ。
目玉以外の顔パーツが無いため、翠にはスライムの感情が読み取れない。
彼女は部屋の入り口に立ち、扉を開けた。
部屋の中は、より深い暗闇に包まれた。
翠は警戒心を高め、目を慣らしながら、耳に入ってくる異様な音声を分別した。
何かが蠢く音の中に、人間の喘ぎ声が混じっていた。
それはまだいたいけさを残す少女の声であった。
「誰かいますか?一体どこにいるんですか?」
翠は高らかに声をあげると、その女性は一瞬驚いたのか、喘ぎ声は途絶えてしまった。
そして、
「み、翠……ちゃん……」
と、何かを我慢しているような、くぐもった声が届いた。
翠はその声を聞くとびっくりした。
「鈴華ちゃん、あなたなの?」
「……いや、来ないで!」
悲鳴に近い叫びに阻まれ、翠が踏み出た足は止まった。
「来ないで、お願い……そのまま、帰って……」
「どうしてなの?私はあなたをここから助け出しますわ」
「私は、もう……いいのだ、翠ちゃんは帰って、
ほかの人にも伝ってちょうだい……もう、私のことはいいって……」
鈴華の泣きそうな声に、翠はますます驚いた。
彼女は暗闇に慣れた目で部屋中を見渡すと、床には得体の知れない黒い肉片が張り付いていた。
その上には無数の目玉が生えていて、彼女に対して攻撃する気配もなく、ただじっと見つめてくる。
それだけ多くの目玉に見つめられるのは珍しい光景だったが、
翠はがんばって心から嫌悪の感情を追い払った。
「鈴華ちゃん、私達は仲間ですわ。例え何があっても、私はあなたを助けます!」
翠は固い意志で言うと、声がするほうへ移動しはじめた。
足が床を踏むたびに、肉片の生暖かさや弾力的な感触が伝わってくる。
「はぁ……やめて、ああぁん……お願い、それ以上来ないで!」
鈴華の悲鳴は彼女の剣のように鋭かったが、それでも翠の仲間を助ける意思は揺らなかった。
金具箱が並ぶ棚を越えると、翠はついに部屋の奥にいる鈴花の姿を見つけた。
「いやー、見ないで……うっ、ああああぁん――っ!」
一際大きい悲鳴とともに、鈴華の変わり果てた姿は、翠の目に入った。
717 五行戦隊 第二話(8/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:37:45 ID:2vLMwDxE
小柄で可愛らしい、明るくて健気だったはずの鈴華。
それが今、頬を火照らせ、口を大きく開けて息を乱し、獣のような目付きをした少女となっていた。
彼女のツインテールは、変身した後の金髪のままだった。
しかし、その下に着ている服は、いつもの服装と異なっていた。
いや、それを服と呼んでいいかすら、翠には分からなかった。
一言でまとめると、それは暗黄色と黒色の布地に、白目玉がたくさんくっついた衣装だった。
粘液に富む布地はべったりと彼女の素肌に吸い付き、その表面には細かい肉筋が枝分かれる。
大きく切り取られた胸元から真っ白な乳肌をはみ出し、
露出した背中やへそも魅惑的なラインを見せ付ける。
下半身ではその布が扇情的な形として、彼女の秘所やお尻の溝を隠す。
そして一番驚くことに、彼女のあらわになっている胸の上部の肌に、
なんと大きな目玉が一つ見開いていた。
翠はまるで幻でも見ているような気分になった。
ふと、彼女は去年のとき、陽子先生やみんなで一緒に海に行ったことを思い出した。
あの時、確か鈴華の体はまだ幼さが残っていた。
胸はそれほど大きくなかったし、それが灯にからかわれ二人が口論にもなった。
しかし今の鈴華の胸は、その幼げの可愛い顔に反して、
色香が漂い丁度いい具合に膨らんだ胸となっている。
胴体もお尻も、見る者の淫欲を掻きだすような、妖しい魅力を放っていた。
彼女の肌にぴったりと張る布地は、絶えず小さく蠢いていた。
翠はその動きに気付いたとき、最初は自分の錯覚では無いかと思った。
しかし、目をよく凝らして観察すると、翠は衝撃の真実を知った。
鈴華の服というのは、肉片や無数の小さい突起が集まって組成したものである。
彼女の素肌に接している面では、そのイボイボたちはぬめりと貼りながら、たえず肌を刺激しているのだ。
そのためか、鈴華はさっきから荒い息を吐き続け、体を小刻みに震わせていたのだ。
彼女の肌に汗が肉布の粘液と混じり、そのねっとりとした肉体にへばり付く。
そして秘所を覆う肉布からは、より濃い液体が彼女の太ももをつたって垂れている。
床から数本の触手が伸びて、彼女の体に巻き付いていた。
触手には同じく目玉が生えてあり、鈴華の艶かしくなった柔肌に淫らな粘液をこすりつける。
「はぁん、お願い、私を見ないで……あぁん!」
鈴華は切ない表情で、悩ましい息をはいた。
あのプライドの高い鈴華が、こんな乱れた姿を晒すことに、翠は夢にも思わなかった。
彼女はすぐに一つの決断を下した。
「鈴華ちゃん、すぐにあなたを助けますわ!」
翠は一本の綺麗な花を握り締め、鈴華のほうへ近づいた。
すぐさま幾本もの触手が床から伸びてくる。
翠は握った手を開くと、そこには花の姿はもうどこにも無く、
代わりに彼女の手から蔓の塊が急速に成長し、彼女の片腕を何重も巻き付いた。
彼女は蔓をしなるようにふるわすと、蔓は触手と絡め合った。
五行戦隊の中では、翠はよく他人のサポートをしている。
彼女は灯や鈴華ほどハイパワーな攻撃力を持たないが、小技類の攻防を最も得意としていた。
蔓の鞭は自由自在に伸びて、床の触手や鈴華を縛っている触手をいっぺんに絡め取った。
翠は蔓を通して霊力を伝わせると、触手の上に新芽が萌え始めた。
新芽は速やかに苗へと成長し、栄養分を吸い取られた触手は徐々に萎縮した。
やがて花を咲き、花粉を外へ飛ばして生命を終えたとき、搾り尽くされた触手はもとの弾力を失い、
ひび割れながら地面へ崩れた。
718 五行戦隊 第二話(9/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:38:31 ID:2vLMwDxE
翠は鈴華の側へ駆け寄り、彼女の体を抱え起こした。
「鈴華ちゃん、しっかりして!今すぐあなたから、その変な布を剥がしてあげますわ」
そう言って、翠は鈴華の素肌を這う肉布に手をかけた。
その時。
「えへへ、なに……言ってるのよ……」
倒れ伏した鈴華は、突然翠の両腕を掴んだ。
「えっ?」
彼女の手から伝わる強い力に、翠は戸惑った。
「こんな気持ちいい服を、私から奪うというの?いくら翠ちゃんでも、それは許さないわ!」
その時、翠が見た鈴華の表情は、ちょっぴりおませな明るい顔ではなく、淫らな邪念に満ちたものであった。
次の瞬間、鈴華の両手が光った。
翠はすかさず彼女から離れるが、その手首にはすでに重たい手錠が装着されてしまった。
翠が戸惑っている間に、鈴華は次にその両足を掴んだ。
カチャリという音がすると、翠の両足首に重たい鉄輪をはめられた。
四肢の重さに耐え切れず、翠は思わず四つん這いになって床に伏せた。
「まだまだよ!」
鈴華は手をかざすと、そこから数本のチェーンが伸びて、翠の全身を縛りあげた。
彼女のうなじに首輪がはめられ、その首輪と手足の鉄輪との間に数本の鎖が繋がり、
身動きの自由を完全に奪った。
鈴華は仕上げにと手に握っている鎖を引っ張ると、
鎖は翠の体を強く締め付け、彼女を恥ずかしい体勢に固定した。
「ふふっ、もうこれで動けないでしょう。私の封印の鎖に縛られる者はどうなるか、
翠ちゃんも良く知ってるでしょ?特に、あなたにとって弱点である属性に囚われるとね!」
「鈴華ちゃん、一体どういうことですか?私はあなたを助けに……!」
翠の真剣な表情を、鈴華は嘲笑するかのように見下ろした。
「ふふふふ……それ残念だったわね。どうせなら、もっと速く助けに来たらよかったのに」
彼女の邪悪に染まった目付きに触れると、翠は背筋がぞっとした。
「これも全部、翠ちゃんのせいだからね。私があなたを襲おうとしているのを一生懸命我慢したのよ?
私が来ちゃだめって言ったのに、わざわざ私の恥ずかしいところを見るなんて。
これでもう、後戻りはできないわ。あなたにも、私と同じ目にあってもらうからね!」
鈴華はその可愛らしい顔を、黒い欲望で歪めた。
彼女の鎖骨より下に生えた目玉は、金色の輝きを放っていた。
「鈴華ちゃん、それは……!」
「いいでしょ?私が百目様より頂いた目玉なのよ。これによって、私も百目様の一部になれたのよ!」
「鈴華ちゃん、しっかりして!あなたはそれに操られています!」
「ふふふ、まだ分かっていないようだね。私はすでに身も心も、百目様の同胞となったのよ」
鈴華は邪悪な笑みをこぼした。
彼女の喜びに呼応して、床の肉片たちは一段と激しく蠢いた。
「何を言ってるの?鈴華ちゃん、あなたは妖獣たちと戦い、人間の正義を守る五行戦隊です!」
「うふふ……じゃあ、翠ちゃんにも見せてあげるわ。私が百目様の子を産むところを」
「ええ?」
鈴華の発言を、翠はすぐに理解できなかった。
彼女は指を鳴らすと、床の一部が盛り上がり、黒い床から二人の男性が吐き出された。
二人とも裸のままで、白目を向けていた。
彼らの体に黒スライムが何匹か張り付き、そしてどちらも股間の一物がいきり立っていた。
「さあ、翠ちゃん。これから何が起きるか、想像できるかな?」
鈴華は挑発的な笑みを見せると、彼女の秘所を覆っていた肉布は、淫裂ごと左右へ開いた。
外気に触れた性器から濃密な愛液が垂れ落ち、いやらしい匂いを漂わせた。
彼女はその液体をすくい、わざとらしく指でもてあそんだ。
「鈴華ちゃん、やめて……!あなたはそんなことをする人間じゃないはずですわ!」
「もう遅い。百目様に調教されてから、私の体は、もう目玉たちが無いと生きていけない体になったのよ」
鈴華は淡い笑みを一瞬だけ見せ、それから二人の男の間に入った。
719 五行戦隊 第二話(10/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:39:17 ID:2vLMwDxE
「さあ。あなた達、いっぱい我慢したでしょう?その汚らわしいチンポを使って、私の体を汚してね」
鈴華が小悪魔的な笑みを向けると、男達はまるで獲物を得た獣のように、鈴華の小さな体を捕らえた。
「あぁん、いいわ……存分に私を犯しちゃって!」
男達の一物は醜く腫れ上がっていた。
彼らは前後から鈴華の穴に挿入し、今まで溜まった欲望を一気に爆発させるかのように、激しく動かした。
「うっ……あぁん、うっんん……はぁん、何度味わっても、この感じはたまらないわ!」
鈴華は恍惚の笑みで、男達に蹂躙されるままに腰を動かした。
彼女が身に纏った肉布は彼女の肌から分離し、
粘液に溢れたイボイボの肉片となって彼女の全身を撫で回した。
体に生えていた目玉は、彼女自身の喜悦を表すかのように、妖しい輝きを放っていた。
「そ、そんな……」
翠は変わり果てた仲間の姿を見て、言いようの無い切ない気持ちに充満した。
目の前で、大事な仲間がよがり狂っている。
しかし、鈴華の妖艶な姿を見続けると、翠はやがて悲しみ以外の感情が心に浮かび、
目をそらすことができなくなってしまった。
鈴華の悩ましい喘ぎ声は翠の心を焦らし、グロテスクな行為が彼女の心をくすぐる。
やがて、鈴華は一際大きい呻き声をあげると、彼女の前後の穴から白い濁液が溢れかえった。
そのとき鈴華の顔に浮かんだ淫らな笑顔は、まるで邪悪な伝染病のように翠の体に染みこむ。
三人が何度も交わった後、ついに精気を使い果たしたのか、男達は尽きて床に倒れた。
「うふふ、おいしかったわ……」
鈴華は秘所から零れ落ちる精液をすくい取って、それを口の中に含んだ。
彼女の体は男や触手が出した液体にまみれて、淫靡な匂いを放つ。
「これで二人の精液は採取した。それらを使って、すぐに私の子が生まれるわ」
「いったい、どういうことなの?」
「私のお腹の中は、百目様の子である目玉を、産み落とせように作りかえられてる。
人間の男の精子を受精すると、目玉の卵が産み落とされ、そして成長した後人間たちに寄生する。
寄生された男は私の奴隷となり、女は新たな目玉を孕む苗床になる。
ふふふ、素敵でしょ?考えただけでぞくぞくしちゃうわ」
鈴華の冷酷な笑い声を聞いて、翠は自分の身が氷河に落とされたような、寒い思いをした。
突然、鈴華は恍惚な表情を浮かばせ、床に膝をついた。
「あはぁん!お腹の、中から、くっ……ッ来るわ!……あああぁん――」
彼女は虚ろな目で天井を見て、夢中になって自分の胸を揉んでいた。
下腹部が膨らむにつれ、鈴華の喘ぎ声は段々と大きくなる。
そしてついに、彼女の秘所を通り、二つの白い卵がボコッ、ボコッと産み落とされた。
拳ほど大きいその卵は、白い粘液に塗れていた。
「はぁ、はぁ……私の、可愛い子供達……」
疲れ果てた鈴華は、その卵を頬まで持ってきて、いとおしげに撫でる。
翠は悲しい感情に支配され、懸命に体をもがいた。
金属の拘束具に囚われたため、彼女は身動き一つ取れないだけでなく、霊力も発揮しづらくなっている。
(でも、まだ手はあるはずよ……)
翠のつややかなロングヘアは、さきほどからこっそりと地面に垂れていた。
その中からゆっくりではあるが、何本もの蔓が伸び床に付着していた。
(お願い……早く成長して!)
翠は心底では焦りながらも、鈴華の気を逸らそうと話しかけた。
「その目玉たちの目的は、いったいなんですか?」
「ふふ、百目様はほかの生物に寄生し、その遺伝子を取り込んで、独自の進化を遂げることができるわ。
寄生者のメスを使って繁殖することで、今までよりも生命力の強い新種ができる」
鈴華は淡々とした口調は、翠により大きな衝撃を与える。
720 五行戦隊 第二話(11/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:40:13 ID:2vLMwDxE
「新種って……」
翠は彼女が手にしている卵を見つめた。
その中心部に金色の濁りができると、段々と瞳の形に凝縮し、完全な目玉となった。
「この金色の目玉は、私の能力を受け継いでいるわ」
「なっ……!」
翠はさきほど対峙した金色スライムのことを思い出した。
あのスライムは、確かに鈴華と同じような能力を持っていた。
鈴華は新生の目玉を持って、失神した男達のほうへ行った。
「さあ、翠ちゃんにも見せてあげるわ。人間に目玉が寄生するところをね!」
と、鈴華は男達の胸にその目玉をそっと置いた。
目玉の表面に沢山の筋が浮かび上がり、それと同時に目玉は男たちの胸の中へずぶりずぶりとねじり込む。
筋はやがて男達の胸筋と融合し、一体化した。
目玉の体積が完全に胸部に含まれた時、男たちのからだ全体に筋の模様が浮かび上がった。
彼らの体は震えながら、口から大量の泡を吐きだした。
そして、その体も徐々に崩壊し、黒い液体に溶け始める。
「あ~あ、やっぱり低俗な欲望しか無い男達みたいだね。人型さえ保てられないなんて、器の小さい精神力だわ」
鈴華は不満げに鼻を鳴らした。
男達の体はまるで粘っこい餅のように変形し続ける。
人間の原型が完全に崩れ、全てが黒い半溶液になった後、金色の目玉を中心に据えた巨体の目玉妖怪が誕生した。
「ふふふ、なんて醜い姿かしら。まあ、町でひっかけたチンピラだから、そんなもんか」
鈴華が人命をなんとも思わない構え方は、翠を震撼させた。
「彼らは、どうなってしまったの?」
「寄生された人間は、もともとの精神によって変化する。こんな醜い姿になったということは、
彼らの心も最初から薄汚いということよ。まあ、こんな原始的な形になってりゃ、この後はただ欲望のままに赴くだろう。
彼ら三人なら、人間だった時のように、少女を犯して寄生液を与えるわ」
「三人……だと?」
「そうよ。あら、外で戦ったとき、見なかったかしら?一人目はすぐに成長できたから、先に野放しちゃったわ」
鈴華は意地悪そうな笑顔で翠を見つめた。
彼女の笑顔は可愛らしいものだが、今では同時に悪意が潜んでいた。
「私達はさっき……もともと人間だったものと戦っていた?」
翠は呆然となった。
今頃仲間達があの金色の目玉妖怪を倒しているじゃないかと思うと、翠の心は苦しく締め付けられた。
「こいつらは人型が崩れたから、たぶん目玉を潰しちゃうともう生きていられないね。
ああ、でも翠が罪悪感を負う必要なんて、無いんだよ?こいつらが情けないのが悪いんだし」
「鈴華ちゃんっ!」
自分の名前を呼ばれて、鈴華はビクッとした。
彼女は初めて翠にこれほど重い口調で呼ばれた。
まっすぐな目線の中に、凛とした正義の意志がこめられる。
そんな翠の目を見ると、鈴華はなぜか動じてしまう。
彼女はそれを受け流そうと、軽く微笑んだ。
「ふふ、翠ちゃんを怒らしちゃった?本当に怖いわ。さあ、あなたがそれ以上苦しまないうちに、
私と同じ目玉を植えつけてやるわ。翠ちゃんの潔白が心が邪悪に染められる姿を、私に見せて!」
「そんなことはさせないわ」
翠がそう呟いた瞬間、彼女の周りから緑色の蔓が一斉に伸び始めた。
鈴華は驚きし、すぐさま後ろへ飛び退いた。
彼女が両手を翻すと二本のダガーを手に握り、目の前まで襲ってきた蔓を三段に切り裂いた。
その間に、翠の周りに生えた熱帯植物は溶解液を分泌し、翠の体を束縛する金属を錆び付かせた。
脆くなった金属具を自力で断ち切ると、翠は立ち上がった。
「あちゃ、拘束がとかれちゃったか」
「鈴華ちゃん、あなたにこれ以上の過ちを許せませんわ!」
721 五行戦隊 第二話(13/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:41:00 ID:2vLMwDxE
「ふふふ、それはできるかな。仮にも、私はあなたの弱点属性を持っているわよ?
この子達だけでも、充分苦戦するじゃないの」
鈴華は指示を下すと、生まれたばかりの二匹の目玉スライムは、金色のヒトデ状に色や形を変化させた。
「動かないで!」
翠は印を結ぶと、巨大な食虫植物が二匹の金色スライムを丸ごと飲み込む。
しかし、すぐに金色スライムの体から沢山の刃物が突き出て、翠が作り出した植物達を切り裂いた。
そして、金色スライムたちはそれぞれ斧や鉄槌などを振り回しながら、翠に近づく。
(くっ……やはりこのままじゃ分が悪いわ……)
翠は身軽に避けながら、対策を考えた。
黒い床は彼女に踏まれるとぼよよーんと弾き、彼女の動きを鈍らせる。
絶え間なく生える黒い触手も、彼女の動きをけん制する。
そして鈴華は腕を組みながら、楽しそうに翠が追い詰められる光景を見ていた。
(このまま私に勝ち目が無い……霊力をほとんど消耗しちゃうけど、あの術を使うしかないかしら)
翠は意を決すと、掌に握ったものを金色スライム達に向かって放り投げた。
無数のピンク色の花びらが宙を散り、スライム達や鈴華の視界を花一色に覆った。
スライム達の追撃から逃れた間に、翠は素早く九字真言の印を結び始めた。
「させないわ!」
いち早く反応した鈴華は、翠の居場所をめがけて数個の手裏剣を放り投げ、
それから床の黒い液体から一丁の大鎌を取り出し、突進してきた。
「木遁……万緑叢の陣っ」
翠がそう唱えると、彼女の解き放った霊力はあたりを充満した。
鈴華がけん制のために放った手裏剣を、翠は避けることなく、ただ印を結び続ける。
次の瞬間、彼女がいる場所を中心に、次々と植物が芽生えた。
黒い床の上に、美しい花が咲き乱れ、堅実な樹が成長し、瞬く間に部屋中が植物園と化した。
鈴華が放った大鎌攻撃は翠の体に届く直前に、その間に盛り上がった一本の木に阻まれた。
鎌は木を貫くと、すぐに刃の表面に緑苔が生え渡り、鈴華の握り手を目指して鎌を侵食し続ける。
「ちっ」
鈴華は仕方なく大鎌を手放すと、鎌はやがて深い緑に覆われ、木の一部になった。
木々の生長はなお止まらなかった。
最初は黒い葉っぱを生やしていたが、何度も葉が何度も散り成長を繰り返すたびに、
やがて鮮やかな緑色の葉っぱを生えるようになった。
いつの間に床の黒い液体が大量の落ち葉や花びらに覆われ、すっかり見えなくなってしまった。
二匹の金色スライムは「シュルシュルシュル」と不気味な音をたてて、
どうしていいか分からない様子で目玉をぐるぐる回した。
鈴華は翠の気配を探りながら、高らかに声をはりあげる。
「翠ちゃん、やるじゃない。でもこんな大掛かりの術は、何回も使える術じゃないわね」
すると、木々の合間から翠の落ち着いた声が返ってきた。
「確かにあなたの言うとおりですわ。だけど忘れないで、彼らはちゃんと生命を持っているもの。
この術を一度起動すれば、あとは彼らだけでも勝手に成長します」
「あなたの霊力無しに、この術陣をいつまで維持できるのかしら」
「それなら心配無いわ。私の霊力がなくても、栄養となってくれるものがいっぱいありますわ」
「……まさか」
鈴華は顔色を変えて床を観察した。
目玉スライムの躯体となるべく黒い溶液は、なんと植物たちの根から通して吸収されていた。
「植物たちの生命力は強い。どんな穢れた物質でも、彼らは一生懸命がんばって、
無害な物質に分解してくれる」
「そこか!」
鈴華の手が一閃すると、一振りの鋭利な刃が吹き飛んだ。
その刃と出会った木々は、次々と切り倒され、綺麗な切り口を残した。
722 五行戦隊 第二話(13/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:43:17 ID:2vLMwDxE
***番号ミス。前レスは12番、そして本レスが本来の13番です***
「無駄よ。今の私はこの茂みの一部になっている。
あなたは、この部屋中の全ての植物たちの相手にしてるようなものですわ」
翠の声はどことなく、密林の合間を響き渡る。
「それならば私の金遁術で目障りの植物を切り倒すまで」
「それも無駄ですよ。植物たちの死骸はまた、次の生命を育みます。
あなたが傷つけた木も、残された株も、そこから新たな命が誕生します」
翠の言葉と同時に、木々の傷口から新たな緑色の苗が生え始めた。
「真正面からでは、確かに私は鈴華ちゃんに勝つことができません。
しかし、邪悪に汚れたあなたの心は、自然の力にかないませんわ!」
翠の強い意志がこもった言葉が終わると、
四方八方から蔓が伸びて、鈴華や二匹の金色スライムを取り込もうとした。
鈴華が中指や人差し指を立てて念じると、彼女の身を守るように十数本の剣が周りに浮遊した。
蔓は彼女に触れようとすると、剣はその先端を音も無く切り落とす。
しかし、蔓は一本二本だけに留まらず、まるで無尽蔵のように鈴華を襲う。
二匹の金色スライムはそれぞれ刃を作り出して防戦するが、やがてそのうちの一匹が蔓に足場を絡められる。
そのスライムの真正面に現われた翠は、一本のバラの花を投げ飛ばした。
バラがスライムの目玉に突き刺さると、そこからおびただしい量の茎が生え出た。
中核である目玉は茎に潰され、ただの黒い水溜まりとなって崩れた。
「現われたな!」
鈴華は翠を目掛けて、四本の短刀を放り投げた。
翠は地面を蹴り上げると、彼女の前に無数の落ち葉が踊るように舞い上がり、彼女の姿をかき消した。
短刀は落ち葉の群れを貫き、通り過ぎる。
翠の声が密林の中を響く。
「あなたの刃物がいくら鋭いとしても、私に当たらなければ意味がありません」
「ふん、逃げてるばっかりじゃ、私を倒せないわ」
「それはどうかしら」
翠が言い終わると、突然場に一面の花が咲き始めた。
色とりどりのお花畑はその鮮やかな花弁を開き、甘い香りを放っていた。
花は鈴華や金色スライムを向き定めると、一斉に胞子を飛ばした。
「くっ……!」
鈴華はすぐさま木の枝に飛び上がったが、反応に遅れた金色スライムは満身に胞子を受けてしまった。
すかさず現われた翠は、手にしているローズウィップを華麗に舞うと、
痺れて動けなくなったスライムの目玉を摘み取った。
「あまいわ!」
鈴華は翠の前に飛び降り、手にしている大剣で翠の腹を突き刺した。
「ああぁっ」
翠は愕然とした表情で鈴華を見つめた。
しかし次の瞬間、彼女の顔は数本のひびが縦に割れ、皮膚も肉体も褐色の木質に変化した。
最後になると、翠の体はただの丸太となった。
「ふふふ……木遁術で逃げられたみたいだけど、さすがに傷を負ったみたいだね」
鈴華は剣先から滴る白い汁を見て、意味深長な笑みをこぼした。
「鈴華、もう降参しなさい。次こそ、あなたの番ですわ」
「そうね、もうやる必要は無いわ。この剣に傷つけられた時点で、もうあなたの負けよ」
「なに?」
鈴華は翠に見せびらかすかのように、大剣をかざした。
その大剣の先端から絶えず白い汁が滴り、鍔より上は大きな目玉が生えてあった。
そのため、大剣の形状は決してスマートとは言えず、不気味な構造となっている。
723 五行戦隊 第二話(14/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:44:19 ID:2vLMwDxE
「この妖眼剣こそ、私が生まれ変わった後、手に入れた新しい能力よ。
翠ちゃんもそろそろ感じてきた頃じゃない?傷口から、どんどん広がっているのを」
鈴華の挑発っぽい口調に、返事はなかった。
「ふふっ、何も言い返さないところをみると、やはり効き目が出たらしいね。
いいわ、この剣に傷つけられるとどうなるか、見せてあげるよ」
そう言うと、鈴華は両手で大剣を握り締め、側に立つ一本の大木を縦に斬り付ける。
大木の斬り口から白い汁が噴き出て、しばらくするとそこから一つの目玉がぐばっと見開いた。
「そ、それは……!」
「この呪われた剣で付けられた傷に、目玉が寄生され、そして私に支配されてしまうのよ!」
鈴華がそう言うと、大木の目玉はぐるりと動き、数本の蔓を放った。
蔓は木々の間を渡り、茂る枝葉の群れから一人の少女を引きずり出す。
「うっ!」
翠の四肢はがっしりと囚われた。
鈴華は彼女が握り締めたタネを奪い取り、
「なるほど。これで傷口から目玉を摘み取ろうとしたのね。
でも残念だわ、後もう少しのところで私に捕まっちゃね」
と、鈴華は翠の太もも、腕、首に次々と浅い斬り傷をつける。
「ああぁー!」
刃に切られるたびに、翠の口から甲高い喘ぎ声が漏れる。
傷口からは血が流れない代わりに、白い汁を滴る。
そこから甘い痺れが広がり、時間が立つとともに快感と化して、翠の肉体を支配下に置く。
彼女の目つきは徐々に虚ろなものとなり、快感に委ねてしまいたい気持ちが体中に広がる。
「霊力でいくらか遅らせられるけど、いつまで我慢できるかな?」
鈴華は余裕の笑みを作ると、翠が作り出した木々を大剣で斬りつけた。
目玉を寄生された樹木は、やがて禍々しい妖樹と化し、
目玉が生えた蔓を伸ばして他の樹木を襲い、同じ目玉を植えつける。
またたく間に、部屋中はどす黒い妖気が充満し、床は再び黒い液体が溢れかえった。
妖樹が増えたことで、翠を捕らえる蔓は増え、彼女の体をいやらしく絡め始める。
「あっ……ああぁん!」
「ふふ、どうかしら?自分が作り出したものたちに弄ばれる気分は」
翠は顔をしかめて、快感に抗えながら霊力を傷口に集中させた。
その時、一本の蔓は彼女のスカートの下をもぐり、彼女の下着をもぎ取った。
「えっ?」
翠が驚く間もなく、蔓は彼女の敏感な箇所をなぞりはじめる。
「あああっ!」
両足を絡める蔓は、彼女の秘所がよく見せるように左右へ広げる。
ぞくりとする刺激が背筋を貫いた瞬間、翠の気が一瞬遠くなった。
その隙に、彼女の横腹にあった最初の傷口から、一つ目の目玉がぐばっと見開いた。
「いやぁあああ!」
とびきり大きい悲鳴をあげると、翠は体をえびのようにそらした。
(な、なんなの、この感触は……)
翠の開けっぱなしになった口から、よだれが溢れ出た。
彼女は焦点の定まらない目で前方を見つめ、空白になった頭に意識を呼び戻そうとした。
秘所からおびただしい量の愛液が溢れ、蔓触手たちを喜ばした。
(こ、こんなに、か、かんじるなんて……わたし、耐えられないわ……)
翠は虚ろの目で自分の横腹を見ると、バルトスーツの裂け目の下から、妖しげな目玉がこちらを見かえした。
「とても可愛らしい目玉だわ。これで、翠ちゃんも私達の仲間入りだね」
鈴華は翠の側に歩み、その柔らかい舌で新生の目玉を愛おしそうに舐めた。
次の瞬間、翠の全身は雷撃をうけたような快感が走った。
「いやああぁー!」
「やっぱり生まれたては敏感なのね。ふふふ、思う存分いじめてあげちゃうわ」
鈴華は小悪魔な笑顔をつくると、そのまま目玉を優しく舐め続けた。
「ああん……そ、そんな、だめー!」
翠の体はビクリとうねった。
彼女を絡める蔓はバトルスーツを破り、湿気を帯びた先端でその下にある柔肌を愛撫する。
724 五行戦隊 第二話(15/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:45:04 ID:2vLMwDxE
「どう、気持ちいいでしょ?この快感を一度味わったら、もう絶対に元に戻れなくなるわ!」
鈴華がくすくす笑っているうちに、翠の太ももに二つ目の目玉が見開いた。
「はああぁぁあん――!」
翠は声にならない悲鳴を上げ、精神の限界を超えるような絶頂を味わった。
彼女の集中力がなくなると、傷口の目玉が見開くスピードも速くなった。
蔓についている目玉はぐにょりと動き、翠が快感に溺れる過程を見届けた。
「もう、だめ……お願い、もう、やめて……」
「そんな弱々しい言葉を吐くなんて、翠ちゃんらしくないわ。
さあ、もっと素直になって、目玉たちの虜になりなさい!」
鈴華が悪に染まった表情で言うと、彼女の身にまとっていた肉布は、一斉に彼女から離れた。
肉布の裏側のついている無数の突起は、翠に向けて、いやらしくうねうねと蠢く。
「ああっ……」
翠はその肉片が自分の体に吸い付く光景を想像した、思わず体をくねらせた。
「あらあら、ひょっとして期待しているのかな?いいわ、すぐに最高の悦びを分けてあげるわ」
鈴華は意地悪い笑みを浮かべた。
肉布が取れた後の裸体は、いたいけな雰囲気を持ちながらも、すっかり妖艶な色香を漂わせていた。
翠は彼女の下腹部を見ると、驚くあまり目を見開いた。
鈴華の可憐な秘所から、一本の触手が突き出て、鎌首をもたげていた。
その触手に目玉が沢山生えていて、不気味な目線を翠に差し向ける。
「そ、それは……」
「驚いたみたいだね。でも、もうすぐ翠ちゃんも私のようになるわ」
「や、やめて!」
「ふふふ、不安なのも今のうち。この子の虜になったらもう最後、
あとはこの子無しでは生きていられなくなっちゃうわ」
鈴華はそう言うと、そっと翠に口付けをした。
彼女の口からはねっとりとした粘液と、数個の目玉が流れ込み、翠の口に含まされる。
翠はされるがままに、恍惚の表情となって粘液や目玉を飲み込んでしまった。
「ふふっ、くだらない正義の心を捨て、私と同じ百目様の忠実のしもべになろうね」
鈴華の触手の先端が翠の濡れきった秘所をまさぐり、ゆっくりと中へ侵入した。
「ああぁん、う、っく……はぁん!」
触手が一寸進むごとに、翠は体をこわばらせ、あでやかな吐息を漏らす。
触手に生えている目玉の凹凸は、ほどよく彼女の襞を刺激し、快楽の津波を起こして彼女の神経を削る。
鈴華がまとっていた肉布は、湿気を帯びたまま翠の胴体を包む。
「ああぁん!」
翠はたまらず悩ましい声をあげてしまった。
肉布の一面にびっしり付いた突起は絶えず蠢き、翠のあらゆる敏感な場所と接触を繰り返す。
「くっ……う、うっ……うぅ!」
自分の体が異形たちに蹂躙されるのを分かっていなが、翠にはそれと抵抗する意思が徐々に薄れた。
やがて、彼女と鈴華を結ぶ触手にあわせて、自ら腰を淫らに動かし始めた。
(だ、だめ、もう止まらない……体が勝手に動いてしまう!)
悔しい涙を溢れさせながらも、翠は満たされる喘ぎ声をあげた。
彼女の体中に寄生した目玉が肉布に愛撫されるたびに、翠の体がその喜びに追随しいやらしくくねる。
「はぁ、はぁ……翠ちゃんの中、すごく気持ちいいわ……」
鈴華は目を細めて、自分の秘所から伝わる触手の快感に浸した。
秘所に異形を生やしている背徳感と、かつての仲間を犯している罪悪感は、鈴華の快感を更に高めていた。
「はぁん、段々きつくなってきたわ。もうイキそうなのね?
いいわ、一緒にイキましょうっ……快楽の底まで、一緒に堕ちようね!」
翠を包む肉布がより一層激しく蠢き、彼女を絶頂へと導いた。
そしてついに、鈴華の触手が一際大きく膨張した。
「あああぁああ!」
翠は大きな悲鳴を上げると、触手は彼女の中で白い粘液をほとばしった。
725 五行戦隊 第二話(16/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:46:09 ID:2vLMwDxE
翠は体をこわばらせ、異形から噴き出る熱い液体を受け止めた。
絡めていた蔓も解き、彼女の無力な躯体を床に置いた。
邪悪なものにけがされた堕落感が、翠の疲れ果てた精神を支配した。
しかし、そんな彼女を休ませることなく、次の異変はすぐに訪れる。
鈴華は翠から触手を抜き取り、翠に取り付いた肉布をもとの服の形に戻すと、彼女の様子を静観した。
翠は苦悶の表情を浮かべ、両手で自分の胸元を押さえた。
彼女の鎖骨と谷間との間に邪悪な妖気が渦巻きはじめた。
翠は自分の胸から何かが飛び出しそうな感じで、切ない呻き声をあげた。
やがて、彼女の白い素肌の上に、一つの縦に長い割れ目が出来た。
「ああぁ……!」
胸元をおさえる翠に、床から溢れる黒い粘液が集まる。
その粘液は翠のぼろぼろになったバトルスーツを飲み込み、そこから更に色や形を変化した。
胸部の割れ目は徐々に広がり、やがて一つの大きな目玉がゆっくりと見開く。
その目玉はほかのものと違い、真ん中にある瞳はダークグリーンの輝きを放つ。
彼女を取り込んだ粘液も、新たな肉布となって彼女の体を覆った。
その形は元のバトルコスチュームと似ているが、ところどころ禍々しい邪悪な紋様を浮かんでいた。
もともと聖なる白だった布地が黒に変わり、明るい緑色だった部分も暗緑色に変化した。
肉片をつなぎ合わせたような材質となり、その表面に沢山の目玉が生え、不規則な動きで見渡す。
露出度も元のバトルコスチュームを遥かに上回り、切り取られた部分から妖艶な肢体が垣間見える。
小さな突起を無数に備えた裏側は、ぬめりと翠の肌に吸い付き、宿主に絶えず快楽の波を送る。
秘所を覆う布地は中へ触手が伸び、宿主の生殖器を蹂躙し続ける。
そして、翠が邪悪の力に染まったことを象徴するかのように、
彼女が首にかけた聖なる勾玉は、緑色の丸い目玉に変化した。
「これが……私……」
翠は最後に自分の胸元に生えた目玉を見て、意識が暗闇に沈んだ。
「うふふ、私の可愛い翠ちゃん……これでこれからずっと一緒にいられるわね」
鈴華は邪悪な笑顔をみせると、眠る翠に優しく口づけをした。
彼女達を見守るかのように、周囲の目玉達はまばたきをし続けた。
***
「翠……おい、翠ってば!」
「はっ!」
急に我に帰った翠は、驚いた表情で前を見た。
セーラー服を着た灯は腕を組み、不満げに頬を膨らます。
翠は不自然な笑顔を作った。
「灯ちゃん、ど……どうしたのですか?」
「どうもこうも、さっきからずっと呼びかけてるのに、翠ったらちっとも返事しないんだから」
「ご、ごめん……私、どうやらぼうっとしてたみたいで……」
「昨日あの目玉野郎をやっつけてから、なんか様子がおかしかったぞ。大丈夫か?怪我が痛んでいないのか?」
「え、ええ……も、もう大丈夫ですわ」
灯の心配そうな視線に耐えられず、翠は顔をうつむき、
「ちょっと、体調が優れなくて……疲れたかもしれませんわ……」
「だったら無理して学校に来ること無いのに。帰りはオレが送ってやろうか」
「い、いいえ!大丈夫です」
灯の熱意のこもった意気込みを、翠は慌てて謝絶した。
726 五行戦隊 第二話(17/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:46:51 ID:2vLMwDxE
さきほどからじっと翠を見つめた清見は、無表情のまま口を開いた。
「翠、昨日私達が離れた後、何かあったのか?」
翠の心はビクッと跳ねたが、努めて明るい表情を作った。
「……いいえ、なんでもありませんわ。どうして?」
「いえ、ただなんとなく……」
清見の澄みきった瞳を、翠は直視することが出来なかった。
「分かったよ。家に帰って、ちゃんとゆっくり休むんだぞ。さあ清見、一緒に帰ろ」
「はい」
清見は最後に翠を一瞥すると、灯とともに翠の家と反対方向へ去った。
彼女達の後姿が見えなくなると、翠はついに我慢しきれず、熱い吐息を漏らした。
清楚のセーラー服の下、誰も触っていないのに、勝手にうねり始めた。
(速く……速く家に帰らないと……)
翠は残りわずかな理性で欲望を抑え、ふらついた足で帰路についた。
彼女は自宅前までやってくると、玄関からもたれるように入った。
家中の様子は変わり果てていた。
四面の壁は薄暗いピンク色の植物に覆われ、むせかえるような甘ったるい香りが漂ってくる。
「あら、随分と速かったじゃないの」
翠の目の前に、邪悪な笑みを浮かべる鈴華の立ち姿があった。
彼女が身にまとう黒と暗黄色の肉布は、小刻みに脈打つ。
「鈴、華……はああぁん!」
玄関が閉まるや否や、翠はもう耐えきれないといった様子で、あわただしくセーラー服を脱ぎ捨てた。
その下から、鈴華と形が似た肉布の服が現われる。
翠は顔を火照らせ、肉布の上から自分の胸や秘所をまさぐった。
「どうだったかしら?一日中それに犯され続けた感想は」
「もう、だめ……こんなの……耐えられないわ……はああぁん!」
翠の秘所を覆う肉布が蠢くと、翠は色っぽい悲鳴をあげた。
「ふふふ、まわりのクラスメートに知られたら、どうな顔をするかしらね。普段あんな優等生の翠が、
ずっとエッチなことを考えながら授業を受けてきたなんて」
「言わないで……そんなこと言わないで……ああぁん!」
翠は顔を火照らせな、指で自分の濡れきった秘所をかき回した。
「はぁん……気持ちいい……ああぁん……手が、止まらない」
翠は後ろめたい気持ちでいながらも、恍惚の表情を浮かべて自慰に耽った。
彼女からいやらしい喘ぎ声が発するたびに、彼女の肉布に生える目玉が妖しく光る。
「ふふふ、いいわ。そうやってどんどん堕落して、素直なしもべとなっていくのよ」
鈴華は振り返って、家の中の光景を見つめた。
家中に不気味な形をした植物が生え、その上に無数の目玉が見開いていた。
奥では、数人の女性は裸のまま目玉のついた蔓を身を絡められ、その体をいやらしくくねらせていた。
ある者はほかの者と体に生える目玉を舐め合い、ある者は目玉が生えた触手に秘所を貫かれ、
そしてある者は嬌声をあげながら目玉の卵を産み落としていた。
彼女達はいずれも近所の一般人で、目玉に寄生され虜となった者だった。
その集団の中に、翠の母親の姿もいた。
727 五行戦隊 第二話(18/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:47:46 ID:2vLMwDxE
リビングの中央にはいくつか巨大な妖花が咲き、そこから甘い香りが漂う。
花の周りには、ピンク色の大きな実が床に垂れ下がる。
時折、果実は中からビクンと振動する。
「ふふふ……取り込まれた人間達も、順調に育ってるようだね。
彼女達が目玉の虜になったとき、また新たな目玉を産み落とす存在となる」
「うっ、うう……」
翠は後ろめたい気持ちで彼女達の痴態を見つめながらも、自慰の手をやめることができなかった。
時間が立つにつれ、彼女は徐々に屈服し始めた。
ピンポーン
突然、インターホンが鳴り響いた。
「はっ?」
翠は驚いた表情を浮かべながらも、自慰の手をやめることができず、そこから動くことが出来なかった。
インターホンが三回ほど鳴った後、玄関の取っ手が回った。
開けられた玄関口に、一人の少女が驚いた表情で立っていた。
彼女はまさか鍵が掛けてないと予想できなかった様子だったが、
翠の家中の異様な光景を見ると、その顔は更なる驚愕に変わった。
「美紗緒……ちゃん?」
翠は戸惑いながら、自分のクラスメートの名前を呼び上げた。
美紗緒と呼ばれた少女は、呆然と翠の変わり果てた姿を見つめた。
彼女の手に、一本の傘を握っていた。
「翠ちゃん……この前借りた傘を返し忘れたから、返そうと思って……そ、その……これはいったい?」
その瞬間、家の奥から数本の蔓が急速に伸びて、戸惑う美紗緒の体をがっしりと捕まえた。
「きゃっ、何よこれ……きゃっんむぐ……」
悲鳴をあげようとした美紗緒の口に、一本の蔓が入り込んだ。
蔓はそのまま美紗緒の体を引きずり、家奥にある妖花の中へ戻った。
そしてすぐに、妖花の花弁は閉じ始めた。
「うっ、何よ、これは……ああ、ああぁん!」
花の中でくぐもった悲鳴が上がると、それが徐々に快楽の喘ぎ声に変化した。
やがて声が静まると、花びらは散り、大きな果実となって現われた。
その中には、うっすらと膝を抱えている少女の輪郭が見える。
「み、美紗緒ちゃん……」
「ふふふ、せっかく翠ちゃんのために、ここへ来たというのに」
「ああ、また、私のせいで……」
「大丈夫だよ。彼女が目玉に寄生され、あの実の中で成長した後、
きっと翠ちゃんのことを感謝するよ。うふふふ……」
鈴華はそう言うと、翠を押し倒し、彼女の胸元に生えている目玉を舐めた。
「はぁん!」
翠は悩ましい声をあげると、彼女の体に貼りつく肉布もそれに呼応して激しく蠢いた。
彼女の秘所から、一本の目玉を生やした触手が伸び始めた。
「ふふふ、随分といやらしくなってきたじゃない。はあ、私も我慢できなくなったわ」
鈴華も恍惚した表情で自分の秘所をかき回すと、そこから一本の触手を摘み取りだした。
二つの触手は白い粘液を携わりながら、お互いの体を絡めた。
女達の欲望にまみれた淫らな喘ぎ声は、甘い空気と一体化して、いつまでも続いた。
<つづく>
>>419の続き、五行戦隊~大きな目玉に見つめられ~の第二話です。
目玉がいっぱい生えて、ちょっとグロかも?
長くなってしまった。反省中。
悪堕ち的な寄生ものです。
710 五行戦隊 第二話(1/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:31:02 ID:2vLMwDxE
鈴華が失踪する前の状況を、睦美は淡々と述べていた。
二人が偶然目玉妖怪を見つけたこと、そのあとを追ったこと、
そして睦美だけ仲間のところに戻り、鈴華は一人で追跡をし続けたこと。
睦美は終始落ち着いた口調で、順を追って説明した。
そんな彼女の話を、一人の少女は静かに聞き続ける。
睦美の同級生であり、藤村翠という名の女の子だった。
彼女が語り終わるまで、翠は一言もまじえず、時々眼鏡の下にある双眸を光らせた。
睦美の話が一段落ついたとき、翠はやっと一言の感想を述べた。
「あなたのせいじゃありません」
「えっ?何が?」
予想外の発言に、睦美は思わず聞き返した。
「鈴華ちゃんがいなくなったのは、睦美さんのせいじゃありません」
「誰でも私のせいだとは言ってないのだが」
「睦美さん自身がそう思っています。顔には出してないものの、私にはそう感じられます」
翠の清らかな瞳は、まっすぐ睦美の顔を捉えた。
睦美はしばらく彼女を見返すが、ついに負けて視線をそらした。
「その時の睦美さんの判断は、間違ってなんかいませんわ。なのに、今のあなたは、
あの時鈴華ちゃんと一緒にいれば……という後悔の念がいっぱい。私には、そう見えます」
翠の言葉を聞いて、睦美は思わず苦笑した。
仲間の中では、睦美は翠のことが一番苦手なのだ。
彼女はため息を吐き、
「あの目玉妖怪が、犬を一匹丸ごと飲み込んだ光景を思い出すと……
もし鈴華の身に何か起きたと思うと、私は自分が許せないわ」
「だけど、まだそうと決まったわけじゃないでしょう?私達が勝手に殺したら、かわいそうですもの。
鈴華ちゃんは強い子ですよ。だから、妖怪たちの巣窟を一刻も早く見つけて、鈴華ちゃんを救いましょう」
翠はそう言うと、ニコッと微笑んだ。
その笑顔は睦美の緊張しきった心を解き、感情を緩ませた。
「ええ、まったくあなたの言うとおりだわ」
睦美は一笑すると、自分が感情を整理する余裕ができたことに気付いた。
翠のゆったりとした雰囲気と触れ合うたびに、睦美は翠という人間を不思議思うのだった。
藤村翠は、優しい女の子である。
腰までかかるロングヘアと、縁の大きいメガネが彼女のトレードマーク。
趣味は家のベランダにある植物の手入れや、お花鑑賞とのこと。
五行戦隊が結成された当初、チームワークは結構ぎくしゃくしていた。
そんな中、いつもみんなをうまく静めたのが、翠の役割だった。
灯をたしなめ、鈴華をさとし、清見に忠言し、睦美をいさめる。
そうしているうちに、みんながまた一丸となって敵と戦う。
決して突出した存在ではないが、肝心なときに心強いと感じる存在なのだ。
妖獣と戦闘するときでも、彼女の木遁術はチームのサポート役を徹している。
そのおかげで、睦美たち自分達よりも強い敵を倒すことが何度もできた。
彼女がいるだけで、睦美を含め、他のメンバー達にある種の安心感が与えられる。
ふと、睦美は生徒会室の窓外に、掌に乗るぐらい小さな火の玉が漂っているのを見かけた。
彼女は窓を開けると、火の玉がふんわりと飛んできた。
手を伸ばしてつかまえると、火の玉は彼女の手の上で止まり、おもむろに球状から矢印の形に変化した。
「灯ちゃんの信号火ですわね」
「どうやらあの化け物の形跡を発見したらしい。いこう、翠!」
睦美は強い意志がこもった顔構えとなった。
彼女のいきいきとした表情を見て、翠は優しい笑みをほころばせる。
711 五行戦隊 第二話(2/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:32:17 ID:2vLMwDxE
火の玉の矢印に従って駆けると、しばらくして、二人は町のはずれにある廃れた工場前にたどり着いた。
そこではすでに戦闘が開始していた。
赤と青のバトルコスチュームを身にまとった二人の少女の周りに、大量の目玉スライムが囲んであった。
彼女達はそれぞれ灯(あかり)と清見で、睦美や翠と同じく五行戦隊の一員である。
目玉スライムは黒い腐肉の真ん中に目玉を生やし、それが多数集まって不気味な動きを見せながら二人に近づく。
しかし数こそ圧倒的に多いが、戦況はどうやら二人の方が優勢だった。
灯が爆裂パンチを繰り出し目玉スライムを焼き払い、
清見は渦潮を作り出し巻き込んだ目玉スライムをことごとく粉砕する。
ただし、目玉スライム達の中に、一つだけ他より一回り大きいスライムがいた。
それの肉体は、まるで巨大化したヒトデのような五角形をし、下側の二本足を使って地面に立っていた。
体の表面は暗い黄色を呈し、その真ん中にはやはり大きな目玉が見開く。
ただ、その瞳は金色な輝きを放ち、色が目立つだけあってより一層のグロテスクを持つ。
巨大ヒトデ型の目玉スライムは灯や清見の戦いぶりを観戦していたが、
睦美や翠が現われると、彼女達に向けてがん飛ばした。
はじめて見る目玉妖怪の異種に、睦美と翠は驚きを感じつつ、警戒心を高めた。
二人はそれぞれ首にかけた勾玉を握って変身をした。
「天誅地滅、悪の道。有言実行、人の道。信念を守る、一座の連なる峰――高嶺の睦美、いざ参上」
「天誅地滅、悪の道。寛仁大度、人の道。平和を守る、一輪の芳ばしき花卉――若葉の翠、同じく参上」
口上と共にまぶしい輝きを放つと、二人は灯や清見と同じコンセプトのバトルスーツを身に着けた。
見た目には大差なく白を基調としたワンピース型だが、睦美のほうは更に褐色を帯びており、
そして翠は緑色の度合いを多く含んでいた。
彼女達に土や木の属性の霊力が宿ると、髪の色もそれぞれ褐色や緑色に染まった。
「ストーンスプラッシュ!」
「ローズウィップ!」
二人はそれぞれ必殺技を繰り出して目玉スライムを蹴散らしている間、清見はすばやく二人の方へ駆けついた。
「清見、状況はどうだい?」
睦美は清見を襲おうとするスライムをその目玉ごと岩石で押しつぶし、彼女に声をかけた。
「いつもの目玉妖怪だけど、今度はちょっと変わったやつが一匹混ざってる」
「変わったやつ?」
睦美と翠は清見の目線に沿って、今ちょうど灯と交戦し始めた黄色い化け物をとらえる。
灯はその化け物と一定の間合いを保ちつつ、遠くから火炎弾を放って様子を見ていた。
化け物は柔らかそうな肉体をぶるぶる震わせ触手を伸ばすが、灯は決してその触手に触られまいと避け続ける。
触手は鞭のようにしなり、彼女の体を打とうとする。
その間、時折まるで刃物が風を切るような鋭い音が聞こえる。
「私も灯も、あの黄色い化け物に手を焼いている」
「なんなの?あんなやつ、今まで見たこと無いわ。目玉妖怪の新種か?」
「分からない。しかし、あれには今までの目玉妖怪に無かった攻撃手段を――」
「みんな気をつけて!こっちに来ますわ」
翠は清見の話を遮り、注意を喚起した。
彼女の喚起よりも数秒前に、金色スライムは灯の爆砕拳を避け、
突然体をバネのように縮ませて、翠達のほうへ跳ね飛んできたのだ。
金色スライムの移動開始と翠の言葉はさほど間隔を空けていなかった。
しかし、睦美や清見が振り返った時、金色スライムはすでに彼女達の目の前に現われた。
その猛烈なスピードは、彼女達が今まで抱いていた「目玉スライムはノロい」という常識を完全に覆した。
翠がいち早く気付いたおかげで、三人は間一髪のところ別の場所へ回避できた。
三人が立っていた位置は、金色スライムにがぶりと食い覆われた。
その跡は、まるで鋭利な刃物が豆腐をえぐったように、綺麗に削り取られる。
712 五行戦隊 第二話(3/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:33:00 ID:2vLMwDxE
「なんだこいつはっ」
睦美は空中で両手を一度合わせた、着地した後すぐにしゃがみこみ、地面を思いっきり叩いた。
彼女の前にある土は轟音を立てながらせり上がり、大きな岩石が突き出てきた。
「叩き潰す。いけっ!」
睦美が強く念じると、岩石はものすごい勢いで金色スライムの方へ飛んだ。
だが敵の方を見ると、睦美は夢にも思わない光景を見てしまった。
金色スライムの目玉から、一本の大剣が突き出た。
次の瞬間、スライムの腕(に相当するような触手)がその剣を掴んで、ぶーんと振り回した。
車一台分の体積がある岩石は、あっさりと両断された。
睦美が攻撃している間に、翠は金色スライムの裏側に回りこんだ。
右手の掌をスライムの背中に向け、左手でそれを支える。
そして精神を集中し霊力を駆使すると、彼女の右腕を一本の木が絡めはじめる。
幹はすぐに成長し、そこから無数の葉っぱや枝を散り始めた。
その葉っぱは鉄片のように鋭く、枝は鉄棒ように硬い。
それら全部、金色スライムの巨体を目指して鋭い角度を描いて飛んでいった。
このとき、金色スライムはようやく睦美の岩石を切り落とし、翠のほうを振り返った。
いくらスピードが速くなっても、この攻撃は避けられるはずが無い。
翠はそう思っていた。
確かに彼女の予想通り、葉っぱや枝は全て金色スライムに命中した。
彼女の予想外のところを言うと、枝葉が敵に届く直前、金色スライムは変形したことだった。
翠は思わず首をかしげた。
今までの戦いで、目玉妖怪は姿形をある程度変化できると知っているが、
それでも彼女は今の金色スライムの変化を理解できなかった。
金色スライムはその大きな目玉を隠すように、肉体をヒトデ型から丸い塊状に変えた。
そして、柔らかそうな肉質は硬く変化し、その表面は金属の光沢を放っていた。
枝葉はその塊に激突すると、次々と弾き飛ばされた。
耳を塞ぎたくなるような鋭い金属音が、広場全体を響き渡る。
全ての攻撃を弾いたあと、金色スライムは再び肉を伸ばし、傷一つ負わないヒトデ型に戻った。
灯や清見、睦美は彼女の側に駆け付く。
翠はおっとりとした構えで、三人に自分の意見を述べた。
「あの黄色い目玉さん、とても強いですわ」
「「「感心している場合か」」」
三人はそれぞれつっこみを入れた後、睦美は改めて尋ねた。
「清見、あいつは一体なんなの?」
清見が答えようとする前に、灯が先に割り込んだ。
「あんなデタラメなやつ、見たこと無いぜ。触手が鋭い刃物に化けるわ、剣とか槍とか見境無しに出すわ。
こっちが攻撃しようとすると、体を硬くして全部跳ね返してくれるし」
「はい。どうやらあの金色の目玉妖怪には、金属を自由自在に操る能力があるみたいだわ」
「そ、それって……まるで鈴華みたいじゃないか」
睦美はそう言って、言葉を失った。
鈴華が失踪した事と、目玉スライムの新種が出てきた事。
その両者の間に、なんらかの関係がある、と睦美は直感した。
同じ考え方なのか、清見は意味ありげの表情で睦美を見つめる。
彼女達の憂いを拭うように、灯は赤いショートヘアをかきわけ、屈強な笑みを浮かばせる。
「とにかく睦美も翠も来た事だし、あの厄介なやつをぶっとばすぜ!」
いつもなら、ここで鈴華が対抗意識をはって何かを言うのだが、それが無いだけで灯は少し寂しかった。
「みんなの力が合わされば、どんな敵にも負けませんわ」
翠のほほえましい一言は、各人の緊張を和らげた。
713 五行戦隊 第二話(4/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:34:01 ID:2vLMwDxE
その時、金色スライムは突然奇声をあげ、そのおぞましい巨体を震わせた。
「シュルゥウウウ――!」
ヒトデ型の肉体が強張ると、真ん中にある目玉から肉筋が枝分かれ、その全身に網目状の模様で分布した。
暗黄色の肉がところどころ盛り上がり、小剣、短刀、鎌、鉄の矢と、次から次へ武器が生成される。
スライムは金色の瞳ぐるりとまわし、翠たち四人を見定めた。
その魔色の輝きを見て、彼女達は一斉に危険な感知した。
次の瞬間、スライムの表面に浮かび上がった武器は、まるで弾丸のように四方八方へ吐き飛ばされた。
翠たちは例外なく戸惑った。
無数の武器を作り出して放出するその技は、その厄介な所まで、鈴華のそれととてつもなく似ていた。
四人の中で、灯が一番速く反応した。
彼女は常に闘争心を燃やしていた。
例え敵がどんな手を使ってこようと、彼女はいつも一番手となって敵とぶつかってきた。
だから今回も、彼女は率先して刃たちに立ち向かった。
「させるかよ!」
灯は仲間達と金色スライムの間に飛び、手を赤く燃やした。
「はぁ――っ!爆炎砕ぃっ!」
灯が思いっきり拳を打ち出すと、彼女の前方に大きな爆発が生じた。
その範囲に向けられた武器は瞬時に溶かされ、蒸発してしまった。
ほかの方向へ飛ばされた武器は、そのまま刃物の雨となって地面に突き刺さり、
生き残っていた黒スライム達を問答無用に刺し滅した。
金色スライムの残虐な攻撃に、灯たちは眉をしかめた。
「シュルルルルッ!」
金色スライムは体を丸めて、灯が作り出した炎の壁を飛び越えて、彼女の方へ跳ねてきた。
灯が炎のパンチを繰り出そうとした瞬間、金色スライムは目玉をまばたき、そこから一条の光を放った。
「あっ」
灯はその怪光線を浴びた途端、金縛りにあったように拳を掲げたまま、動かなくなった。
次の瞬間、スライムの眼球から一本のナイフが突き出て、彼女の喉仏に狙いを定めた。
刃物の冷たい殺気を肌で感じたとき、灯は全身に冷え汗をかいた。
ナイフが眼球から射出する直前、翠は灯と金色スライムの間に割り込み、
そのまま肩で灯を突き飛ばし後、右手から茨の鞭を操った。
ナイフが翠の左肩を突き刺さる。
一拍を置いて、翠のローズウィップが、金色スライムの体を巻きあげた。
翠の顔に一抹の赤みが浮かび、痛みのせいか顔を歪めた。
それを目のあたりにして、灯の怒りが頂点に達した。
灯は自分が傷つくよりも、仲間の傷を十倍痛く感じる性格をしている。
「絶対に、ゆるさねぇー!」
灯は巻きつかれた金色スライムの真正面に飛び入り、拳に渾身の力をこめて目玉の中へぶちこんだ。
彼女は怒りのあまりに霊力を使うことさえ忘れ、ただ力任せに殴打した。
「ギイィィィ!!」
スライムの悲鳴は夜空を横切る。
体にノコギリのようなギザギザの刃が立ち、茨の絡めを断ち切ると、金色スライムは素早く後退した。
しかし、灯の第二のパンチはすぐそばまでやってきた。
今度は激しい炎気を携わりながら。
スライムはとっさに体を丸めて、体全体を鉄の塊のように硬くさせた。
しかし、灯の怒気がこもった炎拳は、その硬い体を溶かし、金色スライムの巨体をまるごと激しくぶっ飛ばした。
金色スライムはもう一度悲鳴をあげ、欠けた体を丸めながら地面を跳ね、高速なスピードでこの場から逃げた。
714 五行戦隊 第二話(5/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:34:49 ID:2vLMwDxE
灯はそれ以上の追撃をせず、心配の表情で振り返った。
彼女が翠のほうへ寄った時、睦美と清見はすでに翠の傷を確認し終わった。
「翠、大丈夫か?」
「はい、灯さんが目玉妖怪に勝ったおかげですわ」
「なに言ってる、オレのほうこそ、お前に助けられて……」
その時、灯は睦美と清美の神妙な表情に気付いた。
彼女はすぐさま翠の肩の傷を見た。
緑色のバトルコスチュームは横に破れた跡が残り、その下にある白肌に一筋の傷口が見える。
「無い」
清見はボソッと呟く。
彼女の唐突な発言に、灯は戸惑った。
「ない?」
「無い。」
「何が?」
「翠を傷つけたナイフなんだけど、どこにも見当たらないの」
「そんな細かいこと、いちいち気にしてる場合か」
灯は呆れた様子で言った。
しかし、睦美もおかしい箇所を指摘した。
「血も出てないんだ」
灯は改めて見ると、確かに傷口は大きさのわりに、血が一滴もこぼしていなかった。
「それどころか、痛みすらまったく感じないのです」
と、翠は他人事のようにおっとりとしていた。
四人の中で、清見は一番冴えていた。
彼女はすぐに自分の見解を述べた。
「ナイフが刺さったはずなのに、傷口は横に向かって細く伸びている。翠、その時一体何が起きた?あの刃物はどこへ消えた?」
「ナイフが突き刺さった時は、『やられた!』と思ったけど、痛みがまったく無かったから、よく見ませんでした。
あの後……確か、ナイフが中へ入ったような感じだったですわ」
「『入った』。つまり中にあるのね」 清見の神妙な言い草に、睦美と灯は顔を見合わせた。
翠は清見を見て、何かを悟ったのか、髪の毛の中から一粒のタネを摘み取り、それを自分の傷口の中へ埋め込んだ。
「成れっ!」
翠は小声で一喝すると、肩の傷口から小さな植物が苗を伸ばして生長した。
彼女は唇を噛み締め、痛みを我慢しながらそれを茎ごと引き抜くと、その根っこは一つの目玉を連れ出した。
苗は目玉に根付き、その養分を吸い尽くすと、
目玉はたちまちただの溶液となって地面に垂れ落ち、むせ返るような甘い匂いを発散した後消えた。
灯は驚きのあまり、口をぽかんと開けたままとなった。
翠は続けて薬草で傷口を塗り塞いだ。
「あの目玉妖怪の狙いは、人体に攻撃した後目玉を体内に残して、内側から攻撃するつもりだったのね」
清見は身の毛がよだつような解説を、淡々と述べた。
灯はそのおぞましい光景を想像しただけで、思わず身が震えた。
「なんて恐ろしい化け物だ……」
「ああ、ますますほっとけないな。あいつは重傷を負ってるから、遠くへ逃げられないはずだ。町に入られる前に、追うわよ」
「ええ、町に逃してしまいましたら、一般人に被害が出てしまいますわ」
翠がそう言って立ち上がると、睦美は彼女に向かって手を振った。
「あの化け物のを追うのは、私達三人だ」
「私なら大丈夫ですわ、この薬草でなら……」
睦美は慌てて一歩踏み出し、延々と続く自製薬草の宣伝文句を断ち切った。
「この薬草でなら三十分で元通りの特効性薬草なのかもしれないが、あいつをやっつけことなら私達三人で充分だわ。
それに、あいつがデタラメに攻撃したおかげでほかの目玉妖怪も全滅したみたいだけど、
万が一生き残りがいるかもしれない。翠にはこの場に残って、それを確認してほしいわ」
「うっ……分かりました」
あからさま薬草の話題を打ち切られたのを感じ、翠は涙目になった。
715 五行戦隊 第二話(6/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:35:32 ID:2vLMwDxE
「じゃあ後は頼んだよ。清美、灯、あの化け物の妖気を追うわよ」
「はい」
「すぐあいつをぶっとばして、翠の恨みを晴らしてくるよ」
三人はそう言った後、暗い夜景色のむこうへ姿をかき消した。
睦美たちがいなくなった後、翠はため息を吐いた。
「私の薬草、そんなに不味いのかしら。確かに味と匂いはほんの少しだけきついけど、
効き目の方は抜群なのに」
翠は傷ついたメンバーにこの薬草を使おうとする時、四人とも揃って遠慮した情景を思い返した。
夜の廃工場前の広場は、冷たくて人気がなかった。
金色スライムが妖気で作り出した武器は、その妖気が尽きたと同時に雲散した。
ただ残されたのは、スライムたちの死骸である黒い水溜まりであった。
翠はその汚れた大地に向かって、沢山のタネをまいた。
数日もすれば、タネたちは成長しながら汚れを吸収し、無害なものに分解する。
他人を傷つけたくない優しさを持つ翠は、その力を一番良く使いこなしてきた。
しばらく経つと繁々と現れる植物達を想像すると、翠は自分のタネに期待をこめずにいられなかった。
睦美が彼女に気遣っている事は、よく分かっていた。
五行戦隊のメンバー達はそれぞれ五つの属性を持ち、その中で翠の属性は木である。
彼女の弱点属性は金。
金の属性を持つ妖獣と戦うのは、彼女にとって最初から不利となる。
そしてもう一つ、彼女はよりによって金の属性を持つ物質に、傷つけられてしまった。
弱点属性である物に傷つけられるのは、極めて不吉な事であり、
これから起こりえる凶事を警戒しなければならない。
迷信っぽいことだが、彼女達は五行術を扱うだけあって、忌避したいところである。
翠はふと自分達に聖なる勾玉を授けた人物のことを思い浮かんだ。
(陽子先生が戻ってきたら、きっと鈴華ちゃんを見つかる方法も……)
陽子先生の明るい笑顔を思い出しながら、ふと、翠は一匹の蠢いている影を見つけた。
「まだ生き残りがいたのね」
彼女はその黒スライムの側までやってくると、「あっ」と声をあげた。
スライムが伸ばした触手の先には、金色の鈴が掲げられていた。
チリン、チリンと鳴る音色は、その持ち主と同じ可愛いものだった。
翠はその音を聞くと、鈴華が人懐っこい笑顔を浮かべて、鈴を髪に結っている姿を思い浮かべた。
「あなたはそれをどこで?鈴華の身に何が起きたのです?」
黒スライムはただ白い目玉をにょろりと動かし、鈴を鳴らしながら廃工場の方へ蠢いた。
「あらら、どうやら私はデートに誘われたようですね」
翠は睦美たちが消えた方向をしばらく見つめた後、ついに意志を固めて黒スライムのあとを追った。
廃工場の中では、錆付いた機械が沢山残されていた。
ガラスの無い窓から月光が多少注ぐが、中はやはり暗かった。
スライムの色は黒く、暗闇とほとんど区別がつかないが、その白い目玉は光を反射してよく見える。
それだけに白さが目立ち、まるで暗闇のかで浮遊しているようで不気味だった。
翠は歩きながら、さきほどの戦いを思い返した。
彼女は肩が傷つけられたとき、痛みはまったく無かった、と他の三人に説明した。
しかし、灯は確かにナイフが刺さったとき、翠が顔をしかめたのを見た。
翠は別に嘘をついていなかった。
ただし、彼女はその時に感じた感触を、口では言わなかった。
716 五行戦隊 第二話(7/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:36:55 ID:2vLMwDxE
言えなかった。
ナイフが刺さったとき、身体を躍らせるような甘美な快感が走ったなんて、
とても伝えられるものではなかった。
翠自身もその時の感じを疑っていた。
ナイフが体に傷をつけた瞬間、甘い痺れがじんわりと広がり、
体がまるでぬるい湯に浸しているようにけだるい気持ちよさに満たされた。
その時、翠は思わず身をかがめ、頭に押し寄せる快楽の波をこらえた。
胸はせつなくなり、戦いの場とはまったくそぐわない情欲が、自然と膨らんだ。
あまりにも恥ずかしいことだったため、彼女は睦美たちにその感触を打ち解けることも叶わなかった。
あの後、快感はすぐに収まったが、甘い痺れ感は肩から腕、
胸と徐々に広がり、それがあの目玉を摘出するまで続いていた。
おそらく、それは目玉妖怪が持つ特殊な能力か何かだろう。
内部から人体を攻撃するのなら、なぜわざわざ痛みを与えないようにするのか。
快感のことも清見にも話したら、目玉妖怪の狙いが分かるかもしれないと思うと、翠は今となって少し後悔した。
やがて翠は工場の奥にある一室の前に導かれると、スライムはそこで止まり、ただ翠の顔を睨んだ。
目玉以外の顔パーツが無いため、翠にはスライムの感情が読み取れない。
彼女は部屋の入り口に立ち、扉を開けた。
部屋の中は、より深い暗闇に包まれた。
翠は警戒心を高め、目を慣らしながら、耳に入ってくる異様な音声を分別した。
何かが蠢く音の中に、人間の喘ぎ声が混じっていた。
それはまだいたいけさを残す少女の声であった。
「誰かいますか?一体どこにいるんですか?」
翠は高らかに声をあげると、その女性は一瞬驚いたのか、喘ぎ声は途絶えてしまった。
そして、
「み、翠……ちゃん……」
と、何かを我慢しているような、くぐもった声が届いた。
翠はその声を聞くとびっくりした。
「鈴華ちゃん、あなたなの?」
「……いや、来ないで!」
悲鳴に近い叫びに阻まれ、翠が踏み出た足は止まった。
「来ないで、お願い……そのまま、帰って……」
「どうしてなの?私はあなたをここから助け出しますわ」
「私は、もう……いいのだ、翠ちゃんは帰って、
ほかの人にも伝ってちょうだい……もう、私のことはいいって……」
鈴華の泣きそうな声に、翠はますます驚いた。
彼女は暗闇に慣れた目で部屋中を見渡すと、床には得体の知れない黒い肉片が張り付いていた。
その上には無数の目玉が生えていて、彼女に対して攻撃する気配もなく、ただじっと見つめてくる。
それだけ多くの目玉に見つめられるのは珍しい光景だったが、
翠はがんばって心から嫌悪の感情を追い払った。
「鈴華ちゃん、私達は仲間ですわ。例え何があっても、私はあなたを助けます!」
翠は固い意志で言うと、声がするほうへ移動しはじめた。
足が床を踏むたびに、肉片の生暖かさや弾力的な感触が伝わってくる。
「はぁ……やめて、ああぁん……お願い、それ以上来ないで!」
鈴華の悲鳴は彼女の剣のように鋭かったが、それでも翠の仲間を助ける意思は揺らなかった。
金具箱が並ぶ棚を越えると、翠はついに部屋の奥にいる鈴花の姿を見つけた。
「いやー、見ないで……うっ、ああああぁん――っ!」
一際大きい悲鳴とともに、鈴華の変わり果てた姿は、翠の目に入った。
717 五行戦隊 第二話(8/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:37:45 ID:2vLMwDxE
小柄で可愛らしい、明るくて健気だったはずの鈴華。
それが今、頬を火照らせ、口を大きく開けて息を乱し、獣のような目付きをした少女となっていた。
彼女のツインテールは、変身した後の金髪のままだった。
しかし、その下に着ている服は、いつもの服装と異なっていた。
いや、それを服と呼んでいいかすら、翠には分からなかった。
一言でまとめると、それは暗黄色と黒色の布地に、白目玉がたくさんくっついた衣装だった。
粘液に富む布地はべったりと彼女の素肌に吸い付き、その表面には細かい肉筋が枝分かれる。
大きく切り取られた胸元から真っ白な乳肌をはみ出し、
露出した背中やへそも魅惑的なラインを見せ付ける。
下半身ではその布が扇情的な形として、彼女の秘所やお尻の溝を隠す。
そして一番驚くことに、彼女のあらわになっている胸の上部の肌に、
なんと大きな目玉が一つ見開いていた。
翠はまるで幻でも見ているような気分になった。
ふと、彼女は去年のとき、陽子先生やみんなで一緒に海に行ったことを思い出した。
あの時、確か鈴華の体はまだ幼さが残っていた。
胸はそれほど大きくなかったし、それが灯にからかわれ二人が口論にもなった。
しかし今の鈴華の胸は、その幼げの可愛い顔に反して、
色香が漂い丁度いい具合に膨らんだ胸となっている。
胴体もお尻も、見る者の淫欲を掻きだすような、妖しい魅力を放っていた。
彼女の肌にぴったりと張る布地は、絶えず小さく蠢いていた。
翠はその動きに気付いたとき、最初は自分の錯覚では無いかと思った。
しかし、目をよく凝らして観察すると、翠は衝撃の真実を知った。
鈴華の服というのは、肉片や無数の小さい突起が集まって組成したものである。
彼女の素肌に接している面では、そのイボイボたちはぬめりと貼りながら、たえず肌を刺激しているのだ。
そのためか、鈴華はさっきから荒い息を吐き続け、体を小刻みに震わせていたのだ。
彼女の肌に汗が肉布の粘液と混じり、そのねっとりとした肉体にへばり付く。
そして秘所を覆う肉布からは、より濃い液体が彼女の太ももをつたって垂れている。
床から数本の触手が伸びて、彼女の体に巻き付いていた。
触手には同じく目玉が生えてあり、鈴華の艶かしくなった柔肌に淫らな粘液をこすりつける。
「はぁん、お願い、私を見ないで……あぁん!」
鈴華は切ない表情で、悩ましい息をはいた。
あのプライドの高い鈴華が、こんな乱れた姿を晒すことに、翠は夢にも思わなかった。
彼女はすぐに一つの決断を下した。
「鈴華ちゃん、すぐにあなたを助けますわ!」
翠は一本の綺麗な花を握り締め、鈴華のほうへ近づいた。
すぐさま幾本もの触手が床から伸びてくる。
翠は握った手を開くと、そこには花の姿はもうどこにも無く、
代わりに彼女の手から蔓の塊が急速に成長し、彼女の片腕を何重も巻き付いた。
彼女は蔓をしなるようにふるわすと、蔓は触手と絡め合った。
五行戦隊の中では、翠はよく他人のサポートをしている。
彼女は灯や鈴華ほどハイパワーな攻撃力を持たないが、小技類の攻防を最も得意としていた。
蔓の鞭は自由自在に伸びて、床の触手や鈴華を縛っている触手をいっぺんに絡め取った。
翠は蔓を通して霊力を伝わせると、触手の上に新芽が萌え始めた。
新芽は速やかに苗へと成長し、栄養分を吸い取られた触手は徐々に萎縮した。
やがて花を咲き、花粉を外へ飛ばして生命を終えたとき、搾り尽くされた触手はもとの弾力を失い、
ひび割れながら地面へ崩れた。
718 五行戦隊 第二話(9/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:38:31 ID:2vLMwDxE
翠は鈴華の側へ駆け寄り、彼女の体を抱え起こした。
「鈴華ちゃん、しっかりして!今すぐあなたから、その変な布を剥がしてあげますわ」
そう言って、翠は鈴華の素肌を這う肉布に手をかけた。
その時。
「えへへ、なに……言ってるのよ……」
倒れ伏した鈴華は、突然翠の両腕を掴んだ。
「えっ?」
彼女の手から伝わる強い力に、翠は戸惑った。
「こんな気持ちいい服を、私から奪うというの?いくら翠ちゃんでも、それは許さないわ!」
その時、翠が見た鈴華の表情は、ちょっぴりおませな明るい顔ではなく、淫らな邪念に満ちたものであった。
次の瞬間、鈴華の両手が光った。
翠はすかさず彼女から離れるが、その手首にはすでに重たい手錠が装着されてしまった。
翠が戸惑っている間に、鈴華は次にその両足を掴んだ。
カチャリという音がすると、翠の両足首に重たい鉄輪をはめられた。
四肢の重さに耐え切れず、翠は思わず四つん這いになって床に伏せた。
「まだまだよ!」
鈴華は手をかざすと、そこから数本のチェーンが伸びて、翠の全身を縛りあげた。
彼女のうなじに首輪がはめられ、その首輪と手足の鉄輪との間に数本の鎖が繋がり、
身動きの自由を完全に奪った。
鈴華は仕上げにと手に握っている鎖を引っ張ると、
鎖は翠の体を強く締め付け、彼女を恥ずかしい体勢に固定した。
「ふふっ、もうこれで動けないでしょう。私の封印の鎖に縛られる者はどうなるか、
翠ちゃんも良く知ってるでしょ?特に、あなたにとって弱点である属性に囚われるとね!」
「鈴華ちゃん、一体どういうことですか?私はあなたを助けに……!」
翠の真剣な表情を、鈴華は嘲笑するかのように見下ろした。
「ふふふふ……それ残念だったわね。どうせなら、もっと速く助けに来たらよかったのに」
彼女の邪悪に染まった目付きに触れると、翠は背筋がぞっとした。
「これも全部、翠ちゃんのせいだからね。私があなたを襲おうとしているのを一生懸命我慢したのよ?
私が来ちゃだめって言ったのに、わざわざ私の恥ずかしいところを見るなんて。
これでもう、後戻りはできないわ。あなたにも、私と同じ目にあってもらうからね!」
鈴華はその可愛らしい顔を、黒い欲望で歪めた。
彼女の鎖骨より下に生えた目玉は、金色の輝きを放っていた。
「鈴華ちゃん、それは……!」
「いいでしょ?私が百目様より頂いた目玉なのよ。これによって、私も百目様の一部になれたのよ!」
「鈴華ちゃん、しっかりして!あなたはそれに操られています!」
「ふふふ、まだ分かっていないようだね。私はすでに身も心も、百目様の同胞となったのよ」
鈴華は邪悪な笑みをこぼした。
彼女の喜びに呼応して、床の肉片たちは一段と激しく蠢いた。
「何を言ってるの?鈴華ちゃん、あなたは妖獣たちと戦い、人間の正義を守る五行戦隊です!」
「うふふ……じゃあ、翠ちゃんにも見せてあげるわ。私が百目様の子を産むところを」
「ええ?」
鈴華の発言を、翠はすぐに理解できなかった。
彼女は指を鳴らすと、床の一部が盛り上がり、黒い床から二人の男性が吐き出された。
二人とも裸のままで、白目を向けていた。
彼らの体に黒スライムが何匹か張り付き、そしてどちらも股間の一物がいきり立っていた。
「さあ、翠ちゃん。これから何が起きるか、想像できるかな?」
鈴華は挑発的な笑みを見せると、彼女の秘所を覆っていた肉布は、淫裂ごと左右へ開いた。
外気に触れた性器から濃密な愛液が垂れ落ち、いやらしい匂いを漂わせた。
彼女はその液体をすくい、わざとらしく指でもてあそんだ。
「鈴華ちゃん、やめて……!あなたはそんなことをする人間じゃないはずですわ!」
「もう遅い。百目様に調教されてから、私の体は、もう目玉たちが無いと生きていけない体になったのよ」
鈴華は淡い笑みを一瞬だけ見せ、それから二人の男の間に入った。
719 五行戦隊 第二話(10/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:39:17 ID:2vLMwDxE
「さあ。あなた達、いっぱい我慢したでしょう?その汚らわしいチンポを使って、私の体を汚してね」
鈴華が小悪魔的な笑みを向けると、男達はまるで獲物を得た獣のように、鈴華の小さな体を捕らえた。
「あぁん、いいわ……存分に私を犯しちゃって!」
男達の一物は醜く腫れ上がっていた。
彼らは前後から鈴華の穴に挿入し、今まで溜まった欲望を一気に爆発させるかのように、激しく動かした。
「うっ……あぁん、うっんん……はぁん、何度味わっても、この感じはたまらないわ!」
鈴華は恍惚の笑みで、男達に蹂躙されるままに腰を動かした。
彼女が身に纏った肉布は彼女の肌から分離し、
粘液に溢れたイボイボの肉片となって彼女の全身を撫で回した。
体に生えていた目玉は、彼女自身の喜悦を表すかのように、妖しい輝きを放っていた。
「そ、そんな……」
翠は変わり果てた仲間の姿を見て、言いようの無い切ない気持ちに充満した。
目の前で、大事な仲間がよがり狂っている。
しかし、鈴華の妖艶な姿を見続けると、翠はやがて悲しみ以外の感情が心に浮かび、
目をそらすことができなくなってしまった。
鈴華の悩ましい喘ぎ声は翠の心を焦らし、グロテスクな行為が彼女の心をくすぐる。
やがて、鈴華は一際大きい呻き声をあげると、彼女の前後の穴から白い濁液が溢れかえった。
そのとき鈴華の顔に浮かんだ淫らな笑顔は、まるで邪悪な伝染病のように翠の体に染みこむ。
三人が何度も交わった後、ついに精気を使い果たしたのか、男達は尽きて床に倒れた。
「うふふ、おいしかったわ……」
鈴華は秘所から零れ落ちる精液をすくい取って、それを口の中に含んだ。
彼女の体は男や触手が出した液体にまみれて、淫靡な匂いを放つ。
「これで二人の精液は採取した。それらを使って、すぐに私の子が生まれるわ」
「いったい、どういうことなの?」
「私のお腹の中は、百目様の子である目玉を、産み落とせように作りかえられてる。
人間の男の精子を受精すると、目玉の卵が産み落とされ、そして成長した後人間たちに寄生する。
寄生された男は私の奴隷となり、女は新たな目玉を孕む苗床になる。
ふふふ、素敵でしょ?考えただけでぞくぞくしちゃうわ」
鈴華の冷酷な笑い声を聞いて、翠は自分の身が氷河に落とされたような、寒い思いをした。
突然、鈴華は恍惚な表情を浮かばせ、床に膝をついた。
「あはぁん!お腹の、中から、くっ……ッ来るわ!……あああぁん――」
彼女は虚ろな目で天井を見て、夢中になって自分の胸を揉んでいた。
下腹部が膨らむにつれ、鈴華の喘ぎ声は段々と大きくなる。
そしてついに、彼女の秘所を通り、二つの白い卵がボコッ、ボコッと産み落とされた。
拳ほど大きいその卵は、白い粘液に塗れていた。
「はぁ、はぁ……私の、可愛い子供達……」
疲れ果てた鈴華は、その卵を頬まで持ってきて、いとおしげに撫でる。
翠は悲しい感情に支配され、懸命に体をもがいた。
金属の拘束具に囚われたため、彼女は身動き一つ取れないだけでなく、霊力も発揮しづらくなっている。
(でも、まだ手はあるはずよ……)
翠のつややかなロングヘアは、さきほどからこっそりと地面に垂れていた。
その中からゆっくりではあるが、何本もの蔓が伸び床に付着していた。
(お願い……早く成長して!)
翠は心底では焦りながらも、鈴華の気を逸らそうと話しかけた。
「その目玉たちの目的は、いったいなんですか?」
「ふふ、百目様はほかの生物に寄生し、その遺伝子を取り込んで、独自の進化を遂げることができるわ。
寄生者のメスを使って繁殖することで、今までよりも生命力の強い新種ができる」
鈴華は淡々とした口調は、翠により大きな衝撃を与える。
720 五行戦隊 第二話(11/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:40:13 ID:2vLMwDxE
「新種って……」
翠は彼女が手にしている卵を見つめた。
その中心部に金色の濁りができると、段々と瞳の形に凝縮し、完全な目玉となった。
「この金色の目玉は、私の能力を受け継いでいるわ」
「なっ……!」
翠はさきほど対峙した金色スライムのことを思い出した。
あのスライムは、確かに鈴華と同じような能力を持っていた。
鈴華は新生の目玉を持って、失神した男達のほうへ行った。
「さあ、翠ちゃんにも見せてあげるわ。人間に目玉が寄生するところをね!」
と、鈴華は男達の胸にその目玉をそっと置いた。
目玉の表面に沢山の筋が浮かび上がり、それと同時に目玉は男たちの胸の中へずぶりずぶりとねじり込む。
筋はやがて男達の胸筋と融合し、一体化した。
目玉の体積が完全に胸部に含まれた時、男たちのからだ全体に筋の模様が浮かび上がった。
彼らの体は震えながら、口から大量の泡を吐きだした。
そして、その体も徐々に崩壊し、黒い液体に溶け始める。
「あ~あ、やっぱり低俗な欲望しか無い男達みたいだね。人型さえ保てられないなんて、器の小さい精神力だわ」
鈴華は不満げに鼻を鳴らした。
男達の体はまるで粘っこい餅のように変形し続ける。
人間の原型が完全に崩れ、全てが黒い半溶液になった後、金色の目玉を中心に据えた巨体の目玉妖怪が誕生した。
「ふふふ、なんて醜い姿かしら。まあ、町でひっかけたチンピラだから、そんなもんか」
鈴華が人命をなんとも思わない構え方は、翠を震撼させた。
「彼らは、どうなってしまったの?」
「寄生された人間は、もともとの精神によって変化する。こんな醜い姿になったということは、
彼らの心も最初から薄汚いということよ。まあ、こんな原始的な形になってりゃ、この後はただ欲望のままに赴くだろう。
彼ら三人なら、人間だった時のように、少女を犯して寄生液を与えるわ」
「三人……だと?」
「そうよ。あら、外で戦ったとき、見なかったかしら?一人目はすぐに成長できたから、先に野放しちゃったわ」
鈴華は意地悪そうな笑顔で翠を見つめた。
彼女の笑顔は可愛らしいものだが、今では同時に悪意が潜んでいた。
「私達はさっき……もともと人間だったものと戦っていた?」
翠は呆然となった。
今頃仲間達があの金色の目玉妖怪を倒しているじゃないかと思うと、翠の心は苦しく締め付けられた。
「こいつらは人型が崩れたから、たぶん目玉を潰しちゃうともう生きていられないね。
ああ、でも翠が罪悪感を負う必要なんて、無いんだよ?こいつらが情けないのが悪いんだし」
「鈴華ちゃんっ!」
自分の名前を呼ばれて、鈴華はビクッとした。
彼女は初めて翠にこれほど重い口調で呼ばれた。
まっすぐな目線の中に、凛とした正義の意志がこめられる。
そんな翠の目を見ると、鈴華はなぜか動じてしまう。
彼女はそれを受け流そうと、軽く微笑んだ。
「ふふ、翠ちゃんを怒らしちゃった?本当に怖いわ。さあ、あなたがそれ以上苦しまないうちに、
私と同じ目玉を植えつけてやるわ。翠ちゃんの潔白が心が邪悪に染められる姿を、私に見せて!」
「そんなことはさせないわ」
翠がそう呟いた瞬間、彼女の周りから緑色の蔓が一斉に伸び始めた。
鈴華は驚きし、すぐさま後ろへ飛び退いた。
彼女が両手を翻すと二本のダガーを手に握り、目の前まで襲ってきた蔓を三段に切り裂いた。
その間に、翠の周りに生えた熱帯植物は溶解液を分泌し、翠の体を束縛する金属を錆び付かせた。
脆くなった金属具を自力で断ち切ると、翠は立ち上がった。
「あちゃ、拘束がとかれちゃったか」
「鈴華ちゃん、あなたにこれ以上の過ちを許せませんわ!」
721 五行戦隊 第二話(13/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:41:00 ID:2vLMwDxE
「ふふふ、それはできるかな。仮にも、私はあなたの弱点属性を持っているわよ?
この子達だけでも、充分苦戦するじゃないの」
鈴華は指示を下すと、生まれたばかりの二匹の目玉スライムは、金色のヒトデ状に色や形を変化させた。
「動かないで!」
翠は印を結ぶと、巨大な食虫植物が二匹の金色スライムを丸ごと飲み込む。
しかし、すぐに金色スライムの体から沢山の刃物が突き出て、翠が作り出した植物達を切り裂いた。
そして、金色スライムたちはそれぞれ斧や鉄槌などを振り回しながら、翠に近づく。
(くっ……やはりこのままじゃ分が悪いわ……)
翠は身軽に避けながら、対策を考えた。
黒い床は彼女に踏まれるとぼよよーんと弾き、彼女の動きを鈍らせる。
絶え間なく生える黒い触手も、彼女の動きをけん制する。
そして鈴華は腕を組みながら、楽しそうに翠が追い詰められる光景を見ていた。
(このまま私に勝ち目が無い……霊力をほとんど消耗しちゃうけど、あの術を使うしかないかしら)
翠は意を決すと、掌に握ったものを金色スライム達に向かって放り投げた。
無数のピンク色の花びらが宙を散り、スライム達や鈴華の視界を花一色に覆った。
スライム達の追撃から逃れた間に、翠は素早く九字真言の印を結び始めた。
「させないわ!」
いち早く反応した鈴華は、翠の居場所をめがけて数個の手裏剣を放り投げ、
それから床の黒い液体から一丁の大鎌を取り出し、突進してきた。
「木遁……万緑叢の陣っ」
翠がそう唱えると、彼女の解き放った霊力はあたりを充満した。
鈴華がけん制のために放った手裏剣を、翠は避けることなく、ただ印を結び続ける。
次の瞬間、彼女がいる場所を中心に、次々と植物が芽生えた。
黒い床の上に、美しい花が咲き乱れ、堅実な樹が成長し、瞬く間に部屋中が植物園と化した。
鈴華が放った大鎌攻撃は翠の体に届く直前に、その間に盛り上がった一本の木に阻まれた。
鎌は木を貫くと、すぐに刃の表面に緑苔が生え渡り、鈴華の握り手を目指して鎌を侵食し続ける。
「ちっ」
鈴華は仕方なく大鎌を手放すと、鎌はやがて深い緑に覆われ、木の一部になった。
木々の生長はなお止まらなかった。
最初は黒い葉っぱを生やしていたが、何度も葉が何度も散り成長を繰り返すたびに、
やがて鮮やかな緑色の葉っぱを生えるようになった。
いつの間に床の黒い液体が大量の落ち葉や花びらに覆われ、すっかり見えなくなってしまった。
二匹の金色スライムは「シュルシュルシュル」と不気味な音をたてて、
どうしていいか分からない様子で目玉をぐるぐる回した。
鈴華は翠の気配を探りながら、高らかに声をはりあげる。
「翠ちゃん、やるじゃない。でもこんな大掛かりの術は、何回も使える術じゃないわね」
すると、木々の合間から翠の落ち着いた声が返ってきた。
「確かにあなたの言うとおりですわ。だけど忘れないで、彼らはちゃんと生命を持っているもの。
この術を一度起動すれば、あとは彼らだけでも勝手に成長します」
「あなたの霊力無しに、この術陣をいつまで維持できるのかしら」
「それなら心配無いわ。私の霊力がなくても、栄養となってくれるものがいっぱいありますわ」
「……まさか」
鈴華は顔色を変えて床を観察した。
目玉スライムの躯体となるべく黒い溶液は、なんと植物たちの根から通して吸収されていた。
「植物たちの生命力は強い。どんな穢れた物質でも、彼らは一生懸命がんばって、
無害な物質に分解してくれる」
「そこか!」
鈴華の手が一閃すると、一振りの鋭利な刃が吹き飛んだ。
その刃と出会った木々は、次々と切り倒され、綺麗な切り口を残した。
722 五行戦隊 第二話(13/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:43:17 ID:2vLMwDxE
***番号ミス。前レスは12番、そして本レスが本来の13番です***
「無駄よ。今の私はこの茂みの一部になっている。
あなたは、この部屋中の全ての植物たちの相手にしてるようなものですわ」
翠の声はどことなく、密林の合間を響き渡る。
「それならば私の金遁術で目障りの植物を切り倒すまで」
「それも無駄ですよ。植物たちの死骸はまた、次の生命を育みます。
あなたが傷つけた木も、残された株も、そこから新たな命が誕生します」
翠の言葉と同時に、木々の傷口から新たな緑色の苗が生え始めた。
「真正面からでは、確かに私は鈴華ちゃんに勝つことができません。
しかし、邪悪に汚れたあなたの心は、自然の力にかないませんわ!」
翠の強い意志がこもった言葉が終わると、
四方八方から蔓が伸びて、鈴華や二匹の金色スライムを取り込もうとした。
鈴華が中指や人差し指を立てて念じると、彼女の身を守るように十数本の剣が周りに浮遊した。
蔓は彼女に触れようとすると、剣はその先端を音も無く切り落とす。
しかし、蔓は一本二本だけに留まらず、まるで無尽蔵のように鈴華を襲う。
二匹の金色スライムはそれぞれ刃を作り出して防戦するが、やがてそのうちの一匹が蔓に足場を絡められる。
そのスライムの真正面に現われた翠は、一本のバラの花を投げ飛ばした。
バラがスライムの目玉に突き刺さると、そこからおびただしい量の茎が生え出た。
中核である目玉は茎に潰され、ただの黒い水溜まりとなって崩れた。
「現われたな!」
鈴華は翠を目掛けて、四本の短刀を放り投げた。
翠は地面を蹴り上げると、彼女の前に無数の落ち葉が踊るように舞い上がり、彼女の姿をかき消した。
短刀は落ち葉の群れを貫き、通り過ぎる。
翠の声が密林の中を響く。
「あなたの刃物がいくら鋭いとしても、私に当たらなければ意味がありません」
「ふん、逃げてるばっかりじゃ、私を倒せないわ」
「それはどうかしら」
翠が言い終わると、突然場に一面の花が咲き始めた。
色とりどりのお花畑はその鮮やかな花弁を開き、甘い香りを放っていた。
花は鈴華や金色スライムを向き定めると、一斉に胞子を飛ばした。
「くっ……!」
鈴華はすぐさま木の枝に飛び上がったが、反応に遅れた金色スライムは満身に胞子を受けてしまった。
すかさず現われた翠は、手にしているローズウィップを華麗に舞うと、
痺れて動けなくなったスライムの目玉を摘み取った。
「あまいわ!」
鈴華は翠の前に飛び降り、手にしている大剣で翠の腹を突き刺した。
「ああぁっ」
翠は愕然とした表情で鈴華を見つめた。
しかし次の瞬間、彼女の顔は数本のひびが縦に割れ、皮膚も肉体も褐色の木質に変化した。
最後になると、翠の体はただの丸太となった。
「ふふふ……木遁術で逃げられたみたいだけど、さすがに傷を負ったみたいだね」
鈴華は剣先から滴る白い汁を見て、意味深長な笑みをこぼした。
「鈴華、もう降参しなさい。次こそ、あなたの番ですわ」
「そうね、もうやる必要は無いわ。この剣に傷つけられた時点で、もうあなたの負けよ」
「なに?」
鈴華は翠に見せびらかすかのように、大剣をかざした。
その大剣の先端から絶えず白い汁が滴り、鍔より上は大きな目玉が生えてあった。
そのため、大剣の形状は決してスマートとは言えず、不気味な構造となっている。
723 五行戦隊 第二話(14/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:44:19 ID:2vLMwDxE
「この妖眼剣こそ、私が生まれ変わった後、手に入れた新しい能力よ。
翠ちゃんもそろそろ感じてきた頃じゃない?傷口から、どんどん広がっているのを」
鈴華の挑発っぽい口調に、返事はなかった。
「ふふっ、何も言い返さないところをみると、やはり効き目が出たらしいね。
いいわ、この剣に傷つけられるとどうなるか、見せてあげるよ」
そう言うと、鈴華は両手で大剣を握り締め、側に立つ一本の大木を縦に斬り付ける。
大木の斬り口から白い汁が噴き出て、しばらくするとそこから一つの目玉がぐばっと見開いた。
「そ、それは……!」
「この呪われた剣で付けられた傷に、目玉が寄生され、そして私に支配されてしまうのよ!」
鈴華がそう言うと、大木の目玉はぐるりと動き、数本の蔓を放った。
蔓は木々の間を渡り、茂る枝葉の群れから一人の少女を引きずり出す。
「うっ!」
翠の四肢はがっしりと囚われた。
鈴華は彼女が握り締めたタネを奪い取り、
「なるほど。これで傷口から目玉を摘み取ろうとしたのね。
でも残念だわ、後もう少しのところで私に捕まっちゃね」
と、鈴華は翠の太もも、腕、首に次々と浅い斬り傷をつける。
「ああぁー!」
刃に切られるたびに、翠の口から甲高い喘ぎ声が漏れる。
傷口からは血が流れない代わりに、白い汁を滴る。
そこから甘い痺れが広がり、時間が立つとともに快感と化して、翠の肉体を支配下に置く。
彼女の目つきは徐々に虚ろなものとなり、快感に委ねてしまいたい気持ちが体中に広がる。
「霊力でいくらか遅らせられるけど、いつまで我慢できるかな?」
鈴華は余裕の笑みを作ると、翠が作り出した木々を大剣で斬りつけた。
目玉を寄生された樹木は、やがて禍々しい妖樹と化し、
目玉が生えた蔓を伸ばして他の樹木を襲い、同じ目玉を植えつける。
またたく間に、部屋中はどす黒い妖気が充満し、床は再び黒い液体が溢れかえった。
妖樹が増えたことで、翠を捕らえる蔓は増え、彼女の体をいやらしく絡め始める。
「あっ……ああぁん!」
「ふふ、どうかしら?自分が作り出したものたちに弄ばれる気分は」
翠は顔をしかめて、快感に抗えながら霊力を傷口に集中させた。
その時、一本の蔓は彼女のスカートの下をもぐり、彼女の下着をもぎ取った。
「えっ?」
翠が驚く間もなく、蔓は彼女の敏感な箇所をなぞりはじめる。
「あああっ!」
両足を絡める蔓は、彼女の秘所がよく見せるように左右へ広げる。
ぞくりとする刺激が背筋を貫いた瞬間、翠の気が一瞬遠くなった。
その隙に、彼女の横腹にあった最初の傷口から、一つ目の目玉がぐばっと見開いた。
「いやぁあああ!」
とびきり大きい悲鳴をあげると、翠は体をえびのようにそらした。
(な、なんなの、この感触は……)
翠の開けっぱなしになった口から、よだれが溢れ出た。
彼女は焦点の定まらない目で前方を見つめ、空白になった頭に意識を呼び戻そうとした。
秘所からおびただしい量の愛液が溢れ、蔓触手たちを喜ばした。
(こ、こんなに、か、かんじるなんて……わたし、耐えられないわ……)
翠は虚ろの目で自分の横腹を見ると、バルトスーツの裂け目の下から、妖しげな目玉がこちらを見かえした。
「とても可愛らしい目玉だわ。これで、翠ちゃんも私達の仲間入りだね」
鈴華は翠の側に歩み、その柔らかい舌で新生の目玉を愛おしそうに舐めた。
次の瞬間、翠の全身は雷撃をうけたような快感が走った。
「いやああぁー!」
「やっぱり生まれたては敏感なのね。ふふふ、思う存分いじめてあげちゃうわ」
鈴華は小悪魔な笑顔をつくると、そのまま目玉を優しく舐め続けた。
「ああん……そ、そんな、だめー!」
翠の体はビクリとうねった。
彼女を絡める蔓はバトルスーツを破り、湿気を帯びた先端でその下にある柔肌を愛撫する。
724 五行戦隊 第二話(15/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:45:04 ID:2vLMwDxE
「どう、気持ちいいでしょ?この快感を一度味わったら、もう絶対に元に戻れなくなるわ!」
鈴華がくすくす笑っているうちに、翠の太ももに二つ目の目玉が見開いた。
「はああぁぁあん――!」
翠は声にならない悲鳴を上げ、精神の限界を超えるような絶頂を味わった。
彼女の集中力がなくなると、傷口の目玉が見開くスピードも速くなった。
蔓についている目玉はぐにょりと動き、翠が快感に溺れる過程を見届けた。
「もう、だめ……お願い、もう、やめて……」
「そんな弱々しい言葉を吐くなんて、翠ちゃんらしくないわ。
さあ、もっと素直になって、目玉たちの虜になりなさい!」
鈴華が悪に染まった表情で言うと、彼女の身にまとっていた肉布は、一斉に彼女から離れた。
肉布の裏側のついている無数の突起は、翠に向けて、いやらしくうねうねと蠢く。
「ああっ……」
翠はその肉片が自分の体に吸い付く光景を想像した、思わず体をくねらせた。
「あらあら、ひょっとして期待しているのかな?いいわ、すぐに最高の悦びを分けてあげるわ」
鈴華は意地悪い笑みを浮かべた。
肉布が取れた後の裸体は、いたいけな雰囲気を持ちながらも、すっかり妖艶な色香を漂わせていた。
翠は彼女の下腹部を見ると、驚くあまり目を見開いた。
鈴華の可憐な秘所から、一本の触手が突き出て、鎌首をもたげていた。
その触手に目玉が沢山生えていて、不気味な目線を翠に差し向ける。
「そ、それは……」
「驚いたみたいだね。でも、もうすぐ翠ちゃんも私のようになるわ」
「や、やめて!」
「ふふふ、不安なのも今のうち。この子の虜になったらもう最後、
あとはこの子無しでは生きていられなくなっちゃうわ」
鈴華はそう言うと、そっと翠に口付けをした。
彼女の口からはねっとりとした粘液と、数個の目玉が流れ込み、翠の口に含まされる。
翠はされるがままに、恍惚の表情となって粘液や目玉を飲み込んでしまった。
「ふふっ、くだらない正義の心を捨て、私と同じ百目様の忠実のしもべになろうね」
鈴華の触手の先端が翠の濡れきった秘所をまさぐり、ゆっくりと中へ侵入した。
「ああぁん、う、っく……はぁん!」
触手が一寸進むごとに、翠は体をこわばらせ、あでやかな吐息を漏らす。
触手に生えている目玉の凹凸は、ほどよく彼女の襞を刺激し、快楽の津波を起こして彼女の神経を削る。
鈴華がまとっていた肉布は、湿気を帯びたまま翠の胴体を包む。
「ああぁん!」
翠はたまらず悩ましい声をあげてしまった。
肉布の一面にびっしり付いた突起は絶えず蠢き、翠のあらゆる敏感な場所と接触を繰り返す。
「くっ……う、うっ……うぅ!」
自分の体が異形たちに蹂躙されるのを分かっていなが、翠にはそれと抵抗する意思が徐々に薄れた。
やがて、彼女と鈴華を結ぶ触手にあわせて、自ら腰を淫らに動かし始めた。
(だ、だめ、もう止まらない……体が勝手に動いてしまう!)
悔しい涙を溢れさせながらも、翠は満たされる喘ぎ声をあげた。
彼女の体中に寄生した目玉が肉布に愛撫されるたびに、翠の体がその喜びに追随しいやらしくくねる。
「はぁ、はぁ……翠ちゃんの中、すごく気持ちいいわ……」
鈴華は目を細めて、自分の秘所から伝わる触手の快感に浸した。
秘所に異形を生やしている背徳感と、かつての仲間を犯している罪悪感は、鈴華の快感を更に高めていた。
「はぁん、段々きつくなってきたわ。もうイキそうなのね?
いいわ、一緒にイキましょうっ……快楽の底まで、一緒に堕ちようね!」
翠を包む肉布がより一層激しく蠢き、彼女を絶頂へと導いた。
そしてついに、鈴華の触手が一際大きく膨張した。
「あああぁああ!」
翠は大きな悲鳴を上げると、触手は彼女の中で白い粘液をほとばしった。
725 五行戦隊 第二話(16/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:46:09 ID:2vLMwDxE
翠は体をこわばらせ、異形から噴き出る熱い液体を受け止めた。
絡めていた蔓も解き、彼女の無力な躯体を床に置いた。
邪悪なものにけがされた堕落感が、翠の疲れ果てた精神を支配した。
しかし、そんな彼女を休ませることなく、次の異変はすぐに訪れる。
鈴華は翠から触手を抜き取り、翠に取り付いた肉布をもとの服の形に戻すと、彼女の様子を静観した。
翠は苦悶の表情を浮かべ、両手で自分の胸元を押さえた。
彼女の鎖骨と谷間との間に邪悪な妖気が渦巻きはじめた。
翠は自分の胸から何かが飛び出しそうな感じで、切ない呻き声をあげた。
やがて、彼女の白い素肌の上に、一つの縦に長い割れ目が出来た。
「ああぁ……!」
胸元をおさえる翠に、床から溢れる黒い粘液が集まる。
その粘液は翠のぼろぼろになったバトルスーツを飲み込み、そこから更に色や形を変化した。
胸部の割れ目は徐々に広がり、やがて一つの大きな目玉がゆっくりと見開く。
その目玉はほかのものと違い、真ん中にある瞳はダークグリーンの輝きを放つ。
彼女を取り込んだ粘液も、新たな肉布となって彼女の体を覆った。
その形は元のバトルコスチュームと似ているが、ところどころ禍々しい邪悪な紋様を浮かんでいた。
もともと聖なる白だった布地が黒に変わり、明るい緑色だった部分も暗緑色に変化した。
肉片をつなぎ合わせたような材質となり、その表面に沢山の目玉が生え、不規則な動きで見渡す。
露出度も元のバトルコスチュームを遥かに上回り、切り取られた部分から妖艶な肢体が垣間見える。
小さな突起を無数に備えた裏側は、ぬめりと翠の肌に吸い付き、宿主に絶えず快楽の波を送る。
秘所を覆う布地は中へ触手が伸び、宿主の生殖器を蹂躙し続ける。
そして、翠が邪悪の力に染まったことを象徴するかのように、
彼女が首にかけた聖なる勾玉は、緑色の丸い目玉に変化した。
「これが……私……」
翠は最後に自分の胸元に生えた目玉を見て、意識が暗闇に沈んだ。
「うふふ、私の可愛い翠ちゃん……これでこれからずっと一緒にいられるわね」
鈴華は邪悪な笑顔をみせると、眠る翠に優しく口づけをした。
彼女達を見守るかのように、周囲の目玉達はまばたきをし続けた。
***
「翠……おい、翠ってば!」
「はっ!」
急に我に帰った翠は、驚いた表情で前を見た。
セーラー服を着た灯は腕を組み、不満げに頬を膨らます。
翠は不自然な笑顔を作った。
「灯ちゃん、ど……どうしたのですか?」
「どうもこうも、さっきからずっと呼びかけてるのに、翠ったらちっとも返事しないんだから」
「ご、ごめん……私、どうやらぼうっとしてたみたいで……」
「昨日あの目玉野郎をやっつけてから、なんか様子がおかしかったぞ。大丈夫か?怪我が痛んでいないのか?」
「え、ええ……も、もう大丈夫ですわ」
灯の心配そうな視線に耐えられず、翠は顔をうつむき、
「ちょっと、体調が優れなくて……疲れたかもしれませんわ……」
「だったら無理して学校に来ること無いのに。帰りはオレが送ってやろうか」
「い、いいえ!大丈夫です」
灯の熱意のこもった意気込みを、翠は慌てて謝絶した。
726 五行戦隊 第二話(17/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:46:51 ID:2vLMwDxE
さきほどからじっと翠を見つめた清見は、無表情のまま口を開いた。
「翠、昨日私達が離れた後、何かあったのか?」
翠の心はビクッと跳ねたが、努めて明るい表情を作った。
「……いいえ、なんでもありませんわ。どうして?」
「いえ、ただなんとなく……」
清見の澄みきった瞳を、翠は直視することが出来なかった。
「分かったよ。家に帰って、ちゃんとゆっくり休むんだぞ。さあ清見、一緒に帰ろ」
「はい」
清見は最後に翠を一瞥すると、灯とともに翠の家と反対方向へ去った。
彼女達の後姿が見えなくなると、翠はついに我慢しきれず、熱い吐息を漏らした。
清楚のセーラー服の下、誰も触っていないのに、勝手にうねり始めた。
(速く……速く家に帰らないと……)
翠は残りわずかな理性で欲望を抑え、ふらついた足で帰路についた。
彼女は自宅前までやってくると、玄関からもたれるように入った。
家中の様子は変わり果てていた。
四面の壁は薄暗いピンク色の植物に覆われ、むせかえるような甘ったるい香りが漂ってくる。
「あら、随分と速かったじゃないの」
翠の目の前に、邪悪な笑みを浮かべる鈴華の立ち姿があった。
彼女が身にまとう黒と暗黄色の肉布は、小刻みに脈打つ。
「鈴、華……はああぁん!」
玄関が閉まるや否や、翠はもう耐えきれないといった様子で、あわただしくセーラー服を脱ぎ捨てた。
その下から、鈴華と形が似た肉布の服が現われる。
翠は顔を火照らせ、肉布の上から自分の胸や秘所をまさぐった。
「どうだったかしら?一日中それに犯され続けた感想は」
「もう、だめ……こんなの……耐えられないわ……はああぁん!」
翠の秘所を覆う肉布が蠢くと、翠は色っぽい悲鳴をあげた。
「ふふふ、まわりのクラスメートに知られたら、どうな顔をするかしらね。普段あんな優等生の翠が、
ずっとエッチなことを考えながら授業を受けてきたなんて」
「言わないで……そんなこと言わないで……ああぁん!」
翠は顔を火照らせな、指で自分の濡れきった秘所をかき回した。
「はぁん……気持ちいい……ああぁん……手が、止まらない」
翠は後ろめたい気持ちでいながらも、恍惚の表情を浮かべて自慰に耽った。
彼女からいやらしい喘ぎ声が発するたびに、彼女の肉布に生える目玉が妖しく光る。
「ふふふ、いいわ。そうやってどんどん堕落して、素直なしもべとなっていくのよ」
鈴華は振り返って、家の中の光景を見つめた。
家中に不気味な形をした植物が生え、その上に無数の目玉が見開いていた。
奥では、数人の女性は裸のまま目玉のついた蔓を身を絡められ、その体をいやらしくくねらせていた。
ある者はほかの者と体に生える目玉を舐め合い、ある者は目玉が生えた触手に秘所を貫かれ、
そしてある者は嬌声をあげながら目玉の卵を産み落としていた。
彼女達はいずれも近所の一般人で、目玉に寄生され虜となった者だった。
その集団の中に、翠の母親の姿もいた。
727 五行戦隊 第二話(18/18) ◆vPNY1/7866 sage 2008/03/13(木) 02:47:46 ID:2vLMwDxE
リビングの中央にはいくつか巨大な妖花が咲き、そこから甘い香りが漂う。
花の周りには、ピンク色の大きな実が床に垂れ下がる。
時折、果実は中からビクンと振動する。
「ふふふ……取り込まれた人間達も、順調に育ってるようだね。
彼女達が目玉の虜になったとき、また新たな目玉を産み落とす存在となる」
「うっ、うう……」
翠は後ろめたい気持ちで彼女達の痴態を見つめながらも、自慰の手をやめることができなかった。
時間が立つにつれ、彼女は徐々に屈服し始めた。
ピンポーン
突然、インターホンが鳴り響いた。
「はっ?」
翠は驚いた表情を浮かべながらも、自慰の手をやめることができず、そこから動くことが出来なかった。
インターホンが三回ほど鳴った後、玄関の取っ手が回った。
開けられた玄関口に、一人の少女が驚いた表情で立っていた。
彼女はまさか鍵が掛けてないと予想できなかった様子だったが、
翠の家中の異様な光景を見ると、その顔は更なる驚愕に変わった。
「美紗緒……ちゃん?」
翠は戸惑いながら、自分のクラスメートの名前を呼び上げた。
美紗緒と呼ばれた少女は、呆然と翠の変わり果てた姿を見つめた。
彼女の手に、一本の傘を握っていた。
「翠ちゃん……この前借りた傘を返し忘れたから、返そうと思って……そ、その……これはいったい?」
その瞬間、家の奥から数本の蔓が急速に伸びて、戸惑う美紗緒の体をがっしりと捕まえた。
「きゃっ、何よこれ……きゃっんむぐ……」
悲鳴をあげようとした美紗緒の口に、一本の蔓が入り込んだ。
蔓はそのまま美紗緒の体を引きずり、家奥にある妖花の中へ戻った。
そしてすぐに、妖花の花弁は閉じ始めた。
「うっ、何よ、これは……ああ、ああぁん!」
花の中でくぐもった悲鳴が上がると、それが徐々に快楽の喘ぎ声に変化した。
やがて声が静まると、花びらは散り、大きな果実となって現われた。
その中には、うっすらと膝を抱えている少女の輪郭が見える。
「み、美紗緒ちゃん……」
「ふふふ、せっかく翠ちゃんのために、ここへ来たというのに」
「ああ、また、私のせいで……」
「大丈夫だよ。彼女が目玉に寄生され、あの実の中で成長した後、
きっと翠ちゃんのことを感謝するよ。うふふふ……」
鈴華はそう言うと、翠を押し倒し、彼女の胸元に生えている目玉を舐めた。
「はぁん!」
翠は悩ましい声をあげると、彼女の体に貼りつく肉布もそれに呼応して激しく蠢いた。
彼女の秘所から、一本の目玉を生やした触手が伸び始めた。
「ふふふ、随分といやらしくなってきたじゃない。はあ、私も我慢できなくなったわ」
鈴華も恍惚した表情で自分の秘所をかき回すと、そこから一本の触手を摘み取りだした。
二つの触手は白い粘液を携わりながら、お互いの体を絡めた。
女達の欲望にまみれた淫らな喘ぎ声は、甘い空気と一体化して、いつまでも続いた。
<つづく>
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