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大きな目玉に見つめられ
419 大きな目玉に見つめられ ◆7UVu2HG5Qo sage 2008/02/11(月) 17:36:48 ID:lt7R4sF7
目玉がいっぱい出てくる。見た目が少しグロ?
空気読まずにいきなり投下。
夜、さびれた道路の曲がり角。
二人の少女は、息を潜めて影の中に姿を隠し、遠くにいる物体を観察した。
その物体は、道路のむこう側を目指して不気味に動いていた。
それは、ひと一人ぐらい大きなスライムのような生き物だった。
体のまわりに触手がうねうねと動き、体の真ん中には大きな目玉を生やしている。
そして目玉で左右を確認しながら、不定形の体を蠕動させ進んでいた。
「ねえ、睦美、あいつどこへ行こうとしているかしら?こんな時間帯で、しかもこんな人気の無い場所で」
目がキラッとしてて、小柄で活発そうな女の子は、小声で言った。
「分からないわ。これはあくまでも私の推測だけど、あいつは仲間のところへ帰ろうとしているんじゃないかしら」
ポニーテールで、どこか大人っぽい冷静さを持つ美貌の少女は答えた。
「人間を襲って散々悪事をしといて!あんな化け物、絶対許さないわ!」
「ええ、私達の手で倒さねば……しっ!」
ポニーテールの少女は小柄の少女に注意を呼びかけると、二人は目線を回収し、頭を引いた。
化け物の目玉はきょろりと二人のいる角を見つめる。
(ばれかた?)
(いやまだよ、鈴華ちゃん、)
ポニーテールの少女は小柄の女子をおさえる。
その時、一匹の野良犬が側の壁上から飛び降り、化け物の横に立った。
野良犬は化け物の不気味な目玉を見つけると、全身の毛を立たせて威嚇した。
スライムの黒い体は蠢き、犬の方へ近づく。
犬はワンワンと高らかに吠えた後、突然スライムの方へ飛びつき、鋭い前歯でスライムの目玉を噛み付こうとした。
しかし、その前歯が大きな目玉に届こうとした瞬間、地面にへばりついていたスライムは突如飛び跳ねて、犬の体を四方から包んだ。
犬はきゃんと鳴き声をあげ、スライムの肉片から頭だけ露出し、残りの胴体は内側に陥ったままだった。
その四肢がスライムの中で懸命にもがいている様子は、外側からでもはっきり確認できる。
だが、犬が脱出できる気配はいっこうに無かった。
小柄の女子は思わず出ようとする。
彼女の肩にもう一人の手が置けられた。
振り返ると、ポニーテールの少女はゆっくりと首を横に振る。
(睦美さん、あの犬を助けなきゃ!)
(鈴華ちゃん、だめだ。敵はこいつ一体だと限らないし、いま動いて残りのものを取り逃がしたら、またどこかで増殖して大変なことになるわ)
(くっ……)
鈴華は睦美の言うことを正しいと判断したか、ただこぶしを強く握り締めて目の前の惨劇を見つめた。
ついに犬の頭部まで、スライムに覆われてしまった。
中から抵抗する勢いが徐々に感じられなくなり、やがて生き物の気配がなくなった。
スライムは塊状から散開すると、中から再び目玉が現るが、野良犬の姿はもうどこにもいなかった。
あの哀れな犬は、化け物に食われてしまった。
同じ生物として、あまりにもむごい最期を鈴華は嘆いた。
スライムはというと、まるで何事もなかったかのように、再び前進し始めた。
420 大きな目玉に見つめられ(2/10) ◆vPNY1/7866 sage 2008/02/11(月) 17:40:43 ID:lt7R4sF7
それの姿が遠くなったことを確認し、睦美は囁いた。
「鈴華ちゃん、あの化け物たちの生命力は侮れない。確実に全滅させるのに、私達全員でとりかかる必要あるわ」
「でも、ほかの人を呼びに行っている間、あいつを見失ってしまうよ」
「そこで、鈴華ちゃんに頼むわ。薫たちのとこへ行って、彼女達にこの場所を伝えてちょうだい。
ここは私が尾行を続けるわ」
睦美の提案に鈴華は首を横に振った。
「……いや、ここは私に任せて。睦美には土遁術があるから、速く彼女達をつれて来れるでしょ?
ここは私に任せて、睦美が薫達を呼びに行って!」
鈴華はまっすぐな眼差しで睦美を見つめる。
睦美はしばらく考えた後、うんと頷く。
「分かった、あなたの言うとおりだわ。しかし、慎重にね。もしやばいと思ったら、逃げていいからね!」
「へへん、私は灯のやつと違うから、そんなヘマはしないよ!」
鈴華の勝ち気な笑顔を見て、睦美も微笑をこぼした。
「分かった。じゃあ、ここは頼むわ!」
そう言って、睦美は片手を地面に触れ、目を閉じて静かに瞑想した。
次の瞬間、彼女の体は土の中に沈んだ。
その姿が消えたのを確認した後、鈴華は真剣な表情を浮かべて、化け物の行方を追った。
金子 鈴華(かねこ すずか)、睦美とは同じ学校の生徒である。
特殊な霊術を操り、睦美と同じく町の平和を守る五行戦隊の成員である。
彼女は仲間とともに、町に現われる妖獣を討ち滅ぼしてきたが、
最近出現したこのスライム状の化け物は特に手ごわい。
生命力が強い上に、繁殖力も高い。
今まで分かってきたことは、その不気味な化け物はみな大きな目玉を持っていて、その目玉が彼らの弱点である。
彼らは生き物であれば、なんでも捕食してしまう。
不定形の躯体には打撃攻撃が効きづらく、一般の銃器もダメージが与えられず、五行戦隊の霊力による攻撃でしか倒れない。
幸いなことに、彼らは不定形をとっているため、運動スピードはきわめて低い。
時折見せる瞬発力さえ注意していれば、一般人でも避難する時間がある。
彼らの外見はほとんどゲル状や塊状であり、リーチも短いため、落ち着いていれば対処はできる。
ただ恐ろしいことは、彼らが人間を襲う時は、ほとんど集団で現れることだ。
そして、まるで細胞分裂のように簡単に繁殖するため、彼らを殲滅するのは非常に難しい。
しかし、例え敵がどんなに強くても、鈴華は町の平和を乱す妖獣の存在を許さない。
鈴華は身軽に階段をのぼり続け、やがて丘の上にある公園へとたどり着く。
ここでスライムの姿が消えた。
鈴華はしばらく茂みの中に潜み、目を凝らして公園の中を見渡した。
公園の中央に小さな広場があり、その周りを木々や茂みが囲む。
一陣の夜風が吹き通り、葉っぱや枝たちを優しく揺らす。
鈴華は公園内の隅々まで目を凝らすが、動いているような物体は見当たらなかった。
(見失ったのか?……いや、あいつは確かに広場の中央で消えた……!)
彼女は首から下げた金色の宝玉を手でいじくりながら、黙考した。
このまま化け物が現れるまで、ずっとここで待つのか。
もし化け物はすでに他の場所へ逃げたとしたら、彼女は睦美たちに合わせる顔は無い。
意を決めて茂みから立ち上がると、鈴華はスライムが消えた場所へ走り出した。
広場一帯は薄い砂で覆われている。
白い砂は月光に浴びられ、幻想的な輝きを放つ。
鈴華は空を見たり、四方を見渡したりするが、スライムの気配はいっこうになかった。
421 大きな目玉に見つめられ(3/10) ◆vPNY1/7866 sage 2008/02/11(月) 17:41:41 ID:lt7R4sF7
彼女はポケットから、一本の細い鉄棒を取り出し、それをひとさし指の上に乗せた。
「妖気を隠したって、無駄だよ。絶対尻尾を掴んでやるから!
……邪悪なる魔物の行方を我に示せ、急急如律令!」
鈴華が呪文を唱えたともに、彼女の指に止まっていた鉄棒がいきなり急速に回り始めた。
彼女の霊術により操られた鉄棒は、方位磁石のように妖気がする方向を指すのだ。
やがて鉄棒が徐々に減速し、そしてついに彼女の指上で勢いを失った。
しかし、最後に止まりそうになったとき、鉄棒はなんと彼女の指から滑り落ちた。
思いがけない現象に、鈴華はきょとんとした。
視線が地面に突き刺さった鉄棒に止まると、彼女は何かを悟ったようにしゃがみこむ。
その場で砂をゆっくりかきわけると、やがて地面に奇妙な筋目が現れた。
一体なんなのかと思った次の瞬間、その筋目は突如大きな目玉がとして鈴華の足元に見開く。
「っ!」
間一髪のところで、鈴華は上へジャンプした。
彼女がさきほど立っていた場所を、スライムは地面下から押し包んだ。
無事着地した鈴華は、砂から全体像を晒す目玉スライムを見て、不敵の微笑を浮かべた。
「やっぱり現れたのね!私を食おうなんて、百年速いわ!」
鈴華は首からさげた宝玉を握り締め、強く念じた。
宝玉がまぶしく輝きだすと、白い光が溢れ出て鈴華を包む。
次の瞬間、光の中から戦闘服を身に纏った美しい姿が出てきた。
黄色いリボンがショートヘアを飾り、リボンの上には金色の鈴がチリンチリンと鳴る。
白を基調とした萌黄色のワンピースは小柄な体にフィットし、彼女の活発なイメージとはぴったりだった。
スカートの下からほっそりとした太ももが見え、健気な可愛さを演出する。
「天誅地滅、悪の道。義気凛然、人の道。正義を守る、一振りの鋭き刃――白金の鈴華、いざ参上!」
滔々とした前口上とともに、鈴華は凛とスライムの前に立ちはだかる。
彼女は向かってくるスライムに対し、落ち着いて手のひらに霊力を集めた。
一筋まばゆい光が放った後、彼女の右手には一本の流麗な紋様が刻まれた刀が握られた。
「人々の平和をおびやかし、罪の無い命を食らうなんて、私が許さないわ!」
刃が一閃すると同時に、鈴華はスライムのそばを通り抜けた。
スライムの体半分がしぶきを放ちながらぶっとび、ただの黒い水溜まりとなって地面にしみこむ。
残された半分は大きな目玉を中心に、シュルシュルと異様な音を立てながら蠢く。
「急所を避けられたか。だが、次ははずさない!」
鈴華は刀を構えなおし、スライムに飛びつこうとした。
その時だった。
スライムの残された半分の体は、突然振動して何かの形を作り始めた。
「な、なに?」
まるでガムのように姿形が変えていきながら、それはやがて一匹の動物の姿に収束した。
「ま、まさか!」
あまりにも驚く光景に、鈴華は目をそらすことができなかった。
ついさっきゲル状だったスライムが、一匹の犬の姿になった。
それはまるで、さきほどスライムに飲み込まれたあの野良犬のようだった。
ただはっきりと違うところは、目の前の犬は全身を黒く染めていることと、
その顔面には、一つの目しかなかったことだ。
その一つの目はというのは、普通の二個分よりも大きく、その顔面の前で不気味に見開く。
あまりにもグロテスクな外見に、鈴華は身の毛がよだつ思いをした。
422 大きな目玉に見つめられ(4/10) ◆vPNY1/7866 sage 2008/02/11(月) 17:42:33 ID:lt7R4sF7
この化け物が他の生き物に変形できるなんて、初めて知ったことだ。
彼女はなぜスライムはこのような変形ができたのか、思い巡らした。
(まさか、さっきの食われた犬が、原因なのか?)
「わううううぅうう!」
犬スライムは突然鳴きだし、ドでかい目玉でぎょろりと鈴華を捕らえ、凄まじい勢いで飛び掛ってきた。
「なにっ?」
鈴華にとって、あまりにも予想外のスピードだった。
我に返ったとき、彼女はもはやその猛烈なアタックを完全に避けられない距離にいた。
鈴華はすぐに反省した。
なんでもありの妖魔相手に、自分は既成の概念に囚われるべきではなかった。
彼女は霊力を手に集め、意識を集中した。
次の瞬間、彼女の手に握られた刀は、盾と変化した。
鈴華はその盾を力いっぱい前方に突き出すと、犬スライムの鋭利な牙が砕かれた。
勢いに負けて吹き飛ばされる犬スライムを、鈴華は二度と逃さなかった。
今度は盾を長槍に変え、相手の目玉を一直線貫いた。
「がおぉぉ――!」
犬スライムは大きく吠え、前足で空を切り裂くが、その攻撃はもちろん離れている鈴華に届くことはない。
鈴華は更に槍をえぐると、犬スライムの目玉は破裂し、大量の白い濁液を噴き出す。
やがて黒い躯体も地面に倒れ、ただの水溜りと化した。
敵が絶命したことを確認すると、鈴華は槍を引っこ抜いた。
目玉スライムがほかの生物にとりつく光景は、彼女にとってあまりにも衝撃が大きい。
彼女は静かにまわりを見て、背中に冷え汗を流した。
いつの間にか公園の周りに、数十匹もの目玉スライムが現れた。
そして信じがたいことに、いくつかの目玉は木々に寄生し、根っこもろとも動いて鈴華の方へ近づく。
「これはちょっとやばいかな?」
化け物たちは鈴華を取り巻くように、徐々に迫ってくる。
鈴華は武器を強く握り締め、睦美の言葉を思い出した。
やばいと思ったら、逃げていいから。
「そう言われちゃうと、私ますます逃げたくなくなっちゃうんだよねー。
みんなが来るまで、持ちこたえてみせるわ!」
鈴華は一度苦笑いをこぼして、それからは真顔になって全身の霊力を高めた。
「まとめてやっつけてあげるわ!究極金遁奥義、『三千刃の陣』!」
彼女は両手で素早く臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前と次々印を結び、空に向けて手をかざした。
次の瞬間、天から剣、刀、矢、戟などさまざま凶器が雨のように降り注いだ。
大量の霊力を消費するこの大技は、範囲内のいかなる者をも殺戮する究極な技である。
五行戦隊の五人のうち、鈴華の殺傷力は公認で一番高い。
彼女はどんな妖魔に対しても、瞬時に鋭器を作り出しやっつけることができるのだ。
そしてこの究極奥義は、発動した際ほかの四人達も退避しなければならないほど凶悪である。
武器は次から次へと作り出され、地面にへばりつくスライム達を串刺しにする。
目玉を破壊されたスライム達は、次々と白い粘液を散らしながら消えていく。
423 大きな目玉に見つめられ(5/10) ◆vPNY1/7866 sage 2008/02/11(月) 17:43:50 ID:lt7R4sF7
「はぁ、はぁ……」
やがて術が収まると、鈴花は乱れた息を整えた。
これだけ大きい術を発動したため、彼女の体力は一気に消耗した。
その凄まじい攻撃に、目玉スライム達は一度全滅したように見えた。
しかし、しばらく時間が立つと、鈴華の周りに再び目玉スライムが集まり始めた。
「う、うそ……?まだ、生き残りがいるの?」
彼女は素早く一本の鉄槌を作り出し、飛び掛ってきた一匹のスライムを打ち返した。
その目玉から白い濁液が飛び散り、至近距離だったために鈴華の身にかかった。
しかし、すぐ側までやってきたスライム達は、彼女に汚れを取り除く時間を与えない。
彼女は二匹目を叩き潰し、三匹目をぶっとばした後、木に取り付いた目玉の枝攻撃を避け、後ろへ飛びのいた。
目玉を潰すたびに、その白い液体が彼女の体にねばつく。
やがて、十数体の目玉スライムを倒した後、鈴華は自分の動きが段々鈍くなったことに気付いた。
(はぁ、はぁ……おかしいわ。体がどんどん、だるくなっていくわ)
蠢くスライム群を前に、鈴華はハンマーを肩に担いで、目に染みこんだ汗を拭いた。
それを機に、腕にかかった粘液は、彼女のかわいい顔に付着した。
(なんだ、この変な匂い……頭がくらくらしてしまうわ)
鈴華は意識が薄くなったのを感じ、慌てて頭を振って冷静さを取り戻そうとした。
その時、彼女を囲む目玉スライムは、突如一箇所に集まり始めた。
そして、お互いの体を絡めたかと思いきや、一つの大きな塊に合体した。
「な、なんなの?」
鈴華はその不気味な光景を見て、呆然とした。
塊のところどころに目がついており、その中央部にはとりわけ大きい目玉が見開き、鈴華のほうを向いた。
『シュッシュッシュ、それだけ我が支配液を浴びてもまだ正気でいられるとは、さすがは五行戦隊』
「頭の中に、声が聞こえてくる……?まさか、今お前が喋ってるのか?」
『いかにも。我こそ百目怪の総合意思、地上を支配する者だ』
「ふん、そのくだらない野望、私達五行戦隊が食い止めて見せるわ!」
『シューシュシュシュシュ。生きる者たる宿命は、弱き者を略奪し、強き者に服従する。
人間ごとき貧弱な下等生物に、この大地を支配する資格は無い』
「そんなことを言って、お前みたいな塊になにができる?今からそのでっかいめんたまを潰しにいくわ!」
『シュッシュー、愚かななり。あなたはまだ己の立場に気付いておらんようだな』
「ひ、ひゃっ!……なによこれ!」
鈴華は突然、自分の足が地中へ引きずられた感がした。
彼女は慌てて足元を見ると、自分が踏んでいるのは砂ではなく、スライムの死骸からできた黒の水溜りであった。
あたりを見渡すと、いつの間にか公園の土は全部禍々しい黒の水溜りになっていた。
「くっ……!足が、取れない……!」
黒い水に漬かった部分は、まるで麻痺したかのように、一切の感覚が伝わらなかった。
そして、黒池の表面では、無数の白い目玉が次々と見開き、一斉に鈴華のほうを見つめる。
そのあまりにもおぞましい光景に、鈴華はぞっと背筋を冷やした。
彼女の体はゆっくりと黒池の中へ沈んでいき、そして白い目玉は彼女の足首を、ふくらはぎを、太ももを這い上がる。
その蛆虫のような蠕動する感触に、彼女はむず痒い思いをした。
「く、来るな!」
鈴華は二本の短剣を作り出し、目玉を次々と切り伏せた。
目玉の傷口から、やっぱり白い粘液がほとばしり、彼女の戦闘服を更に汚す。
「くっ、これじゃあきりが無いわ!」
『シュッシュッシュ、そのまま霊力を使い果たすまで、待っているがいいシュ』
424 大きな目玉に見つめられ(6/10) ◆vPNY1/7866 sage 2008/02/11(月) 17:44:35 ID:lt7R4sF7
「冗談じゃないわ……こんな妖術、私の陣で破ってやるわ!もう一回……究極金遁奥義、『三千刃の陣』!」
鈴華は再び九つの印を結び、術を放った。
次の瞬間、空から無数の武器が現われ、一斉に黒い池へ突き刺さる。
あまたの目玉が破壊され、白い濁液となって四散する。
「これで、どうだ!……な、なに?」
鈴華が喜ぶのもつかの間、彼女が作り出した武器は、なんと全て池の中へ引きずり込まれて行った。
やがて、池の中では白い目玉がまた見開き始める。
「そ、そんなバカな……こいつは、不死身なのか?」
鈴華は呆然と立ち止まってしまった。
一回の戦いでは最高でも一回しか使わなかった奥義で、今日だけで二度も使った。
そのため、今の彼女には霊力がほとんど残っておらず、黒い液体から脱出するだけの体力もなかった。
ついに膝まで池の中に沈み、膝より下の肉体は一切の感覚を失った。
池の一部が盛り上がり、そこからたくさんの目がついた肉塊が再び現われた。
『シュシュシュ、残念だったね、五行戦隊も一人しかいないじゃ本来の力が出せないシュ』
「なんだと!」
『あなたたち五行戦隊の最も恐ろしいところは、五行相生を利用し、無限の霊力を生み出せるところだシュ。
すなわち、一人でも欠けていれば、その無限の力は崩れ、無敵ではなくなるシュー』
「私一人だって、勝ってみせるわ!」
『それは無理だシュ。あなたの霊力属性は金、我にダメージを与えるとしても、
我が再生する前に完全に倒すのは至難だシュー。五つの属性が揃って、はじめて我を滅ぼすことができるのだシュ』
「くっ……ふん、だったらいい事を教えてやるわ。私の仲間もすぐここにやってくる。その時、絶対あなたを倒す!」
『シュッシュシュシュ。そのことなら、心配は無いシュ。なぜなら、あなたはもうすぐ我の仲間となるだシュ。
そうすれば、五人は永遠に揃わなくなるシュよ』
「な、なんだと!私があなた達化け物のいうことを聞くなんて、するわけ無いわ!」
『シュシュ、その言葉は、もう少し痛い目にあってもらったあとに聞くシュ!』
百目怪の正面にある一番大きな目玉は突然妖しく輝くと、そこから一条の怪光線が発射された。
「させるか!」
鈴華は瞬時に鉄の盾を作り出し、怪光線を遮った。
『悪あがきもそれまでだシュ』
百目怪は左右から体を伸ばして鈴華の両手を包み、それらを無理やり体の横へ移動させた。
「くっ、気持ち悪い、離しなさい!」
『これであなたも無防備だシュ。もう一度食らえ!』
百目怪の目玉から再び怪光線が発射されると、今度は鈴華の胴体に直撃した。
「きゃ――!」
悪しきエネルギーが彼女の全体を襲う。
直撃をくらっても、普段なら霊力を溜めることによって被害を減らすこともできるが、
霊力を使い果たした彼女にはそれだけの力はなかった。
やがてダメージが溜まり、黄色の戦闘服が解除されてしまい、いつもの私服に戻った。
『シューッシュシュシュ、もうあなたを守るものは無くなったシュ!』
百目怪は鈴華の体に近づき、目玉から白い液体を吐き出した。
彼女の服が粘液にふれると溶かされ、その下の綺麗な柔肌を露出させる。
鈴華は恥ずかしさのあまりに顔を真っ赤に染めた。
外気にふれた肌は少女特有の無垢のみずみずしさを帯びていた。
しかし、白い粘液が付着した途端、彼女の肌は妖しい変化を迎える。
「な、なに?体が、変に感じる……どんどん熱くなる……」
『シュシュシュシュ、さきほどまでは戦闘服に守られたようだが、今度は直接だからな』
「この白いべとべとは、なんなの?」
『これは、お前たち人間を支配する液体だシュ。
我々は、つい最近あなた達人間が地球の支配者になっている理由を掴めた』
「えっ?」
425 大きな目玉に見つめられ(7/10) ◆vPNY1/7866 sage 2008/02/11(月) 17:45:59 ID:lt7R4sF7
『あなた達人間は、肉体が弱くても、高い学習能力を備わり、数々の災害を乗り越えてきた。
その適応能力は、確かに他の種族には見られない。特に、
あなた達五行戦隊が妖魔を次々と倒したように、人間は困難を乗り越えるたびに、強くなっていく』
「くっ、うっ……よく、分かってるじゃない」
『だから、我は一つの作戦を考えた。これからは人間に寄生し、人間の力を我らのために使役しようと』
「な、なんだと?」
『もちろん、我々には貧弱な素材はいらない。強い人間だけに寄生し、そうでない人間は我らの栄養分となってもらう。
我々には、寄生した対象と同化し、その能力を奪い取る力があるだシュ』
百目怪の恐ろしい言葉を聞きながら、鈴華は思わず鳥肌が立った。
『喜ぶが良い。我々が選んだ最初の強き人間は、あなたたち五人なのだ』
「や、やめて!放してよ!」
『さあ、我の支配液を存分に浴び、身も心も我らに晒すがよい!』
次の瞬間、百目から今までに無いおびただしい量の白汁がほとばしり、鈴華の裸を浴びてゆく。
粘液に捉われたは肌に甘い痺れが流れ、相手に降参するかのようにビクビク蠢いた。
『人間は快感に弱い。我が支配液は、我に支配されやすいよう、原始たる欲望を引き出されるのだ』
「あ、あっ……ああ!」
鈴華は胸の奥底から湧き上がるいやらしい感情に、自分の頬を赤く染めた。
(こんな時に、私……なにを考えてるんだ!)
彼女の四肢には、ところどころ目玉を生やした黒い触手に這う。
太ももの裏に触手がなめずるように蠢くと、鈴華はたまらず嬌声をあげてしまい、腰から力が抜けそうになった。
(だめ、このままじゃ……本当に変になっちゃう……)
『シュシュシュ、いまさらあがいても無駄だシュ』
百目怪から細い触手が伸びて、鈴華の頬に這い、彼女の口を無理やりこじ開けた。
「うがっ、ううああ!」
『さあ、これを飲み込むが良い』
鈴華の口の中に無数のミミズが束に纏まったような触手が伸びてきた。
その先端は彼女の舌に絡みつき、白い目玉を流し込んだ。
「うーん、むむっん!」
圧力とともに、大きな異物が喉を通していく違和感に、鈴華は思わず涙目になった。
けがれを知らない素肌にいくつかの触手や目玉が這い回り、
彼女の形のいい臍や胸を覆いかぶさったり吸ったりする。
体中から伝わる不快感も、白い支配液のせいで、いつかは快感となって彼女の体を支配した。
「ぐうぅぅぅぅ……ぶはーっ!はぁ、はぁ……」
ようやく触手から解放された口は、空気を求めて荒く呼吸する。
『どうだい?我らの目玉を呑み込んだら、あなたも……』
百目怪が喋っている最中だった。
鈴華は口を開けたまま、顔を忽然百目怪のほうに向けた。
一本の鋭い短刀が彼女の口から出てきたと思いきや、猛スピードで吐き出され、百目怪の目玉に深く突き刺さった。
その大きな目玉は短刀を中心にひび割れ、やがて多くの白い汁を飛ばしながらしぼんだ。
「はぁ、はぁ、これが、私の取って置きの攻撃よ!これでもうおしまいだ!」
『シュシュシュシュ、どうやらあなたは、大きな誤解を抱いているようだシュ。
我々の弱点は確かに目玉である。しかし、集合体となった時、目が全て破壊されない限り、我々は敗れないシュ!』
百目怪の他の一つの目玉が大きく拡張した。
彼はその目が中央に来るよう塊を動かすと、すっかり元通りに復元した。
「そ、そんな……」
『あなた達五人の力がそろわない限り、我は不滅だシュ!
さあ、己が変わっていく過程を、存分に感じるがいい!』
百目怪がそう言うと、鈴華は突然自分の肉体のところどころからむず痒い感じがした。
彼女は自分を見下ろすと、なんと恐ろしいことに、首と胸の間には大きな割れ目のような筋が縦に現われた。
426 大きな目玉に見つめられ(8/10) ◆vPNY1/7866 sage 2008/02/11(月) 17:47:06 ID:lt7R4sF7
「な、なにが起きてるの?」
次の瞬間、その大きな縦筋から妖しい感触が広がった。
ぞっとするようなもどかしさに、鈴華は思わず体を蠢かせた。
『シュシュシュ……さっきあなたに飲ませた目玉は、我のしもべとなる契機。
その割れ目が完全に見開き目玉となったとき、あなたも我々の仲間だ』
「そ、そんな!やだ!」
筋目が薄っすらと見開いた瞬間、鈴華の全身に電撃のような衝撃が走った。
「きゃ、きゃああぁー!」
あまりにもの鋭い快感に、鈴華は全身から汗が噴き出て、ぽかんとあけた口からよだれを垂らした。
目玉の場所からじんわりとした痺れが広がり、鈴華の体を支配する。
「や、やだ……私が、化け物に……なっちゃう!」
『さあ、あなたの全てを目玉に委ねなさい。さすれば楽になるシュ』
「ふ、ふざけるな……あんたなんかに負けるもんか!」
鈴華はぐっと胸に力を入れ、残されたかすかな霊力を縦の筋目に集中させた。
筋目の邪悪な妖力が抑えられ、目玉の見開き具合は減少した。
『シュシュ、無駄なあがきを。我の中に取り込んでじっくりと楽しませてあげよう』
鈴華の手足にまとった黒い液体は突然収縮し、彼女の体を丸ごと水溜りの中へ引きずった。
予想外な展開に鈴華は息を変える暇もなく、全身がどろどろとした黒液の中に包まれた。
『案ずるな。この再生液は、我らの同胞の肉体からなるもの。
あなたの体を少しずつ蝕んで、邪悪なエネルギーを注ぐであろう』
「ぐっ……ううん!」
鈴華は上も下も真っ黒の空間に囚われ、ただ耐えるしかなかった。
そして、何本かの細い触手が、彼女の秘所をまさぐる。
「むごぉっ?!」
目玉を口中に含んだまま、鈴華は悲鳴をあげた。
まだ男をしらない可憐な秘所は、触手に優しくほぐされると、
やがて鈴華の意識を裏切り、動きたいがままに動き出す。
(ああ、き、気持ち良い……)
鈴華は知らず知らず体をくねらせ、粘液による愛撫を最大限に受けられるようにした。
邪悪な黒液に犯される肌。
その表面に黒い汁がへばりついて、やがて小さな目玉が見開く。
目玉が生成する数が一つ一つ増えていくたびに、鈴華は自分の体に異物が融合させられるような快感を味わう。
淫欲に堕ちはじめた彼女には、霊力の保護も徐々に薄れていく。
それと同時に、彼女の胸部中央にある大きな目玉は段々と大きく見開き始める。
(あっ、ああ……どんどん目玉が生えてくる……体が敏感になっちゃう!)
鈴華は目をつむり、下腹部から押し寄せる快感をこらえようとした。
秘所の中が触手のイボイボにかき回されると、彼女は悔しいながらも背筋を曲げて迎合してしまう。
触手は時に優しく、時に激しく伸縮を繰り返す。
触手全体に生えている目玉が微妙に蠢き、鈴華をじっくりと絶頂へと誘ってゆく。
(もう、だめ……私、もう耐えられない!)
たまりきった黒い欲望に、鈴華の理性を捨てはじめる。
彼女は自ら口をあけまわりの粘液を呑み込み、四方の粘液に小柄の胴体をこすり合わせる。
そして、最大の波が秘所に襲ってきたとき、彼女は体をピンと伸ばし、声にならない呻きをあげた。
(イッちゃう、私……イッちゃうよ!)
熱い液体が彼女の下腹部にほとばしる。
鈴華はその液体をすべて受け止め、頭の中は雷撃にうたれた後のように考えが定まらない。
体が激しく痙攣し出した瞬間、彼女の胸部にあった目玉がぐばっと一杯に見開いた。
白身に囲まれた金色の瞳はせわしく上下左右に動き回り、生まれたばかりの敏感さを鈴華と共有する。
(ああ、私……化け物に……負けちゃった……)
鈴華は最後にそう思い、意識が途切れた。
疲れ果てた体は、暗闇のどん底へ沈む。
427 大きな目玉に見つめられ(9/10) ◆vPNY1/7866 sage 2008/02/11(月) 17:48:00 ID:lt7R4sF7
どれぐらい時間が過ぎただろうか。
鈴華は心地よい波の上に浮かんだ感じがした。
(ここは……どこ?)
彼女はゆっくり目を開けると、上下左右に黒い粘液の壁があることに気付いた。
体は粘液の中に半身だけ沈んでいて、生ぬるい黒液に浸した肌はだるくて気持ちいい。
立ち上がってみると、体には怪我が一つもなかった。
ただ一箇所、胸部についている大きな目玉を除いて。
「い、いや――!」
鈴華は両手で自分の頭を抱え、これは悪夢だと自分に言い聞かせた。
目玉は鈴華の意のままに動き、金色の瞳をうごめかす。
感触がリアルなだけに、鈴華の小柄な体がわなないた。
その時、彼女の前に大きな肉塊が盛り上がった。
『気がついたようだシュ。どうだ、新しく生まれ変わった気分は』
「な、なんなのよ……これ、とれないじゃないか」
『それはもうあなたの体の一部。あなたは、すでに我々の一員なのだシュ』
「う、うそよ!私は、町の平和を守るのよ!あなた達妖獣を倒す使命があるのよ!」
『シュシュシュ、よくぞ言ってくれた。しかし、あなたにも感じるはずだシュ。
ほーら、体中から、悪の妖力が満ち溢れているシュよ?』
「えっ?」
鈴華は胸の目玉を見下ろすと、思わず変な気分になった。
目玉たちに体を犯されたシーンが次々とよみがえり、肉体はまるでその続きを求めるかのように火照り始めた。
いやらしい念頭が走馬灯のように、彼女の頭に浮かび上がる。
「あ、ああ……!」
鈴華は体をビクビク震わせると、秘所から一本のうねうねした触手がのぞき出た。
その触手には、不規則な形で数個の目を生やしてあった。
鈴華は曖昧な笑顔を浮かばせてその触手を優しく撫でると、背筋がビクッとした。
まるで体の一部となった触手は、刺激を受けると今まで味わったことも無い快楽が込み上がる。
「ああ、気持ちいい……手が、手が止まらないよ!」
彼女は膝を床につき、虚ろな目で自ら体をまさぐり始めた。
『それでいいだシュ。あなたは、これから我々の仲間を増やすための母体になってもらうシュ。
繁殖本能に忠実に従うがいいシュ』
「はい!あぁ、はぁん……母体、繁殖?」
『そう。我々の子孫を産むためのメスだシュ』
「そ、そんな……!」
あまりにも卑猥な表現に、鈴華は秘所をまさぐりながら涙を流した。
『シュシュシュシュ。さあ、これを受け取るがいいシュ』
百目怪は肉塊の一部を盛り上げると、そこから一つの黄色い玉が現われた。
「そ、それは……私の、金遁玉?」
『そうだシュ。あなたが五行戦隊の一人として使っていた霊玉だ。これに我の邪悪な妖力を注入した。
後は、かつての持ち主であるあなたが自らそれを汚染するのだシュ』
百目怪の触手から霊玉を受け取ると、鈴華のどす黒い欲望がそれに反応した。
金色だった宝玉は徐々に鈍く輝き、その外見も目玉そのものに変化した。
鈴華は五行戦隊に変身するような要領でそれを握り締めると、黄色い目玉からどす黒い妖力が放たれ、
彼女の体を包んで変身した。
428 大きな目玉に見つめられ(10/10) ◆vPNY1/7866 sage 2008/02/11(月) 17:51:46 ID:lt7R4sF7
萌黄色のワンピースだったはずの姿は、黒を基調にした暗い黄色の肉布に覆われた。
胸のやや小さめの二つの膨らむは肉布にぬめりと包まれ、それより上は全て露出し、
綺麗な柔肌や不気味な目玉を晒した。
湿気を含んだ肉布は、まるで這うように彼女の胴体にぴったりとくっつき、
ヘソや背中の部分は切り取られて外気にふれさせる。
スカートだったはずの下半身も、肉布がハイレグ状に彼女の秘所にフィットする。
雪白い二の腕や太ももを強調するかのように、その先の部分だけを肉布が覆う。
横から見れば分かるように、肉布の裏側には、びっしりと無数の突起が生えている。
肉布が絶えず蠢くことによって、その主である鈴華は常に愛撫を受け続ける。
変身が終わった後、今度はその肉布のところどころに小さな目玉が見開かれる。
胸の二つの膨らみ、秘所の真上、腕や足などと目玉の数が増える。
そして、鈴華はまるで絶頂を迎えたときの快感を覚える。
それらの目玉を操って動かすと、周辺の景色がはっきりと彼女の脳内に浮かび上がる。
彼女は敏感になった体を抱きしめ、恍惚の表情を浮かべた。
「ああ、なんて……なんて素敵な感じだろう」
『そう、あなたはもうその快感から逃れられない。
これから我の仲間を増やすために、その可憐な肢体を差し出してもらおう』
「はい……」
四方の壁から迫り来る触手に対し、鈴華は逃げるところか、自ら四つん這いになった。
『シュシュシュ……完全に我が虜と化したな。たとえあなたのかつての仲間が助けに来たとしても、
あなたは喜んで我に従い、やつらと戦う。そうであろう?』
「はい、百目さま。今度はあいつらを堕とし、私と同じように百目さまの忠実なしもべとして仕立てて見せます」
鈴華は淫靡な笑みを浮かべた。
彼女の両目は、その胸の上にある大きな目玉と同様に、邪悪な輝きを放ち始めた。
<つづく>
今回は以上です。
どきがむねむねしたせいでミスまくった俺はチキン。
日本語が変な箇所が多数あった気がする。面目ない。
中学校の時もっとまじめに国語を勉強すべきだったな。
後の展開が連鎖悪堕ちなので、どっちに投稿すべきか悩みました。
あっちのスレは寄生苦手な人がいるかもと思って、こっちにしました。
目玉がいっぱい出てくる。見た目が少しグロ?
空気読まずにいきなり投下。
夜、さびれた道路の曲がり角。
二人の少女は、息を潜めて影の中に姿を隠し、遠くにいる物体を観察した。
その物体は、道路のむこう側を目指して不気味に動いていた。
それは、ひと一人ぐらい大きなスライムのような生き物だった。
体のまわりに触手がうねうねと動き、体の真ん中には大きな目玉を生やしている。
そして目玉で左右を確認しながら、不定形の体を蠕動させ進んでいた。
「ねえ、睦美、あいつどこへ行こうとしているかしら?こんな時間帯で、しかもこんな人気の無い場所で」
目がキラッとしてて、小柄で活発そうな女の子は、小声で言った。
「分からないわ。これはあくまでも私の推測だけど、あいつは仲間のところへ帰ろうとしているんじゃないかしら」
ポニーテールで、どこか大人っぽい冷静さを持つ美貌の少女は答えた。
「人間を襲って散々悪事をしといて!あんな化け物、絶対許さないわ!」
「ええ、私達の手で倒さねば……しっ!」
ポニーテールの少女は小柄の少女に注意を呼びかけると、二人は目線を回収し、頭を引いた。
化け物の目玉はきょろりと二人のいる角を見つめる。
(ばれかた?)
(いやまだよ、鈴華ちゃん、)
ポニーテールの少女は小柄の女子をおさえる。
その時、一匹の野良犬が側の壁上から飛び降り、化け物の横に立った。
野良犬は化け物の不気味な目玉を見つけると、全身の毛を立たせて威嚇した。
スライムの黒い体は蠢き、犬の方へ近づく。
犬はワンワンと高らかに吠えた後、突然スライムの方へ飛びつき、鋭い前歯でスライムの目玉を噛み付こうとした。
しかし、その前歯が大きな目玉に届こうとした瞬間、地面にへばりついていたスライムは突如飛び跳ねて、犬の体を四方から包んだ。
犬はきゃんと鳴き声をあげ、スライムの肉片から頭だけ露出し、残りの胴体は内側に陥ったままだった。
その四肢がスライムの中で懸命にもがいている様子は、外側からでもはっきり確認できる。
だが、犬が脱出できる気配はいっこうに無かった。
小柄の女子は思わず出ようとする。
彼女の肩にもう一人の手が置けられた。
振り返ると、ポニーテールの少女はゆっくりと首を横に振る。
(睦美さん、あの犬を助けなきゃ!)
(鈴華ちゃん、だめだ。敵はこいつ一体だと限らないし、いま動いて残りのものを取り逃がしたら、またどこかで増殖して大変なことになるわ)
(くっ……)
鈴華は睦美の言うことを正しいと判断したか、ただこぶしを強く握り締めて目の前の惨劇を見つめた。
ついに犬の頭部まで、スライムに覆われてしまった。
中から抵抗する勢いが徐々に感じられなくなり、やがて生き物の気配がなくなった。
スライムは塊状から散開すると、中から再び目玉が現るが、野良犬の姿はもうどこにもいなかった。
あの哀れな犬は、化け物に食われてしまった。
同じ生物として、あまりにもむごい最期を鈴華は嘆いた。
スライムはというと、まるで何事もなかったかのように、再び前進し始めた。
420 大きな目玉に見つめられ(2/10) ◆vPNY1/7866 sage 2008/02/11(月) 17:40:43 ID:lt7R4sF7
それの姿が遠くなったことを確認し、睦美は囁いた。
「鈴華ちゃん、あの化け物たちの生命力は侮れない。確実に全滅させるのに、私達全員でとりかかる必要あるわ」
「でも、ほかの人を呼びに行っている間、あいつを見失ってしまうよ」
「そこで、鈴華ちゃんに頼むわ。薫たちのとこへ行って、彼女達にこの場所を伝えてちょうだい。
ここは私が尾行を続けるわ」
睦美の提案に鈴華は首を横に振った。
「……いや、ここは私に任せて。睦美には土遁術があるから、速く彼女達をつれて来れるでしょ?
ここは私に任せて、睦美が薫達を呼びに行って!」
鈴華はまっすぐな眼差しで睦美を見つめる。
睦美はしばらく考えた後、うんと頷く。
「分かった、あなたの言うとおりだわ。しかし、慎重にね。もしやばいと思ったら、逃げていいからね!」
「へへん、私は灯のやつと違うから、そんなヘマはしないよ!」
鈴華の勝ち気な笑顔を見て、睦美も微笑をこぼした。
「分かった。じゃあ、ここは頼むわ!」
そう言って、睦美は片手を地面に触れ、目を閉じて静かに瞑想した。
次の瞬間、彼女の体は土の中に沈んだ。
その姿が消えたのを確認した後、鈴華は真剣な表情を浮かべて、化け物の行方を追った。
金子 鈴華(かねこ すずか)、睦美とは同じ学校の生徒である。
特殊な霊術を操り、睦美と同じく町の平和を守る五行戦隊の成員である。
彼女は仲間とともに、町に現われる妖獣を討ち滅ぼしてきたが、
最近出現したこのスライム状の化け物は特に手ごわい。
生命力が強い上に、繁殖力も高い。
今まで分かってきたことは、その不気味な化け物はみな大きな目玉を持っていて、その目玉が彼らの弱点である。
彼らは生き物であれば、なんでも捕食してしまう。
不定形の躯体には打撃攻撃が効きづらく、一般の銃器もダメージが与えられず、五行戦隊の霊力による攻撃でしか倒れない。
幸いなことに、彼らは不定形をとっているため、運動スピードはきわめて低い。
時折見せる瞬発力さえ注意していれば、一般人でも避難する時間がある。
彼らの外見はほとんどゲル状や塊状であり、リーチも短いため、落ち着いていれば対処はできる。
ただ恐ろしいことは、彼らが人間を襲う時は、ほとんど集団で現れることだ。
そして、まるで細胞分裂のように簡単に繁殖するため、彼らを殲滅するのは非常に難しい。
しかし、例え敵がどんなに強くても、鈴華は町の平和を乱す妖獣の存在を許さない。
鈴華は身軽に階段をのぼり続け、やがて丘の上にある公園へとたどり着く。
ここでスライムの姿が消えた。
鈴華はしばらく茂みの中に潜み、目を凝らして公園の中を見渡した。
公園の中央に小さな広場があり、その周りを木々や茂みが囲む。
一陣の夜風が吹き通り、葉っぱや枝たちを優しく揺らす。
鈴華は公園内の隅々まで目を凝らすが、動いているような物体は見当たらなかった。
(見失ったのか?……いや、あいつは確かに広場の中央で消えた……!)
彼女は首から下げた金色の宝玉を手でいじくりながら、黙考した。
このまま化け物が現れるまで、ずっとここで待つのか。
もし化け物はすでに他の場所へ逃げたとしたら、彼女は睦美たちに合わせる顔は無い。
意を決めて茂みから立ち上がると、鈴華はスライムが消えた場所へ走り出した。
広場一帯は薄い砂で覆われている。
白い砂は月光に浴びられ、幻想的な輝きを放つ。
鈴華は空を見たり、四方を見渡したりするが、スライムの気配はいっこうになかった。
421 大きな目玉に見つめられ(3/10) ◆vPNY1/7866 sage 2008/02/11(月) 17:41:41 ID:lt7R4sF7
彼女はポケットから、一本の細い鉄棒を取り出し、それをひとさし指の上に乗せた。
「妖気を隠したって、無駄だよ。絶対尻尾を掴んでやるから!
……邪悪なる魔物の行方を我に示せ、急急如律令!」
鈴華が呪文を唱えたともに、彼女の指に止まっていた鉄棒がいきなり急速に回り始めた。
彼女の霊術により操られた鉄棒は、方位磁石のように妖気がする方向を指すのだ。
やがて鉄棒が徐々に減速し、そしてついに彼女の指上で勢いを失った。
しかし、最後に止まりそうになったとき、鉄棒はなんと彼女の指から滑り落ちた。
思いがけない現象に、鈴華はきょとんとした。
視線が地面に突き刺さった鉄棒に止まると、彼女は何かを悟ったようにしゃがみこむ。
その場で砂をゆっくりかきわけると、やがて地面に奇妙な筋目が現れた。
一体なんなのかと思った次の瞬間、その筋目は突如大きな目玉がとして鈴華の足元に見開く。
「っ!」
間一髪のところで、鈴華は上へジャンプした。
彼女がさきほど立っていた場所を、スライムは地面下から押し包んだ。
無事着地した鈴華は、砂から全体像を晒す目玉スライムを見て、不敵の微笑を浮かべた。
「やっぱり現れたのね!私を食おうなんて、百年速いわ!」
鈴華は首からさげた宝玉を握り締め、強く念じた。
宝玉がまぶしく輝きだすと、白い光が溢れ出て鈴華を包む。
次の瞬間、光の中から戦闘服を身に纏った美しい姿が出てきた。
黄色いリボンがショートヘアを飾り、リボンの上には金色の鈴がチリンチリンと鳴る。
白を基調とした萌黄色のワンピースは小柄な体にフィットし、彼女の活発なイメージとはぴったりだった。
スカートの下からほっそりとした太ももが見え、健気な可愛さを演出する。
「天誅地滅、悪の道。義気凛然、人の道。正義を守る、一振りの鋭き刃――白金の鈴華、いざ参上!」
滔々とした前口上とともに、鈴華は凛とスライムの前に立ちはだかる。
彼女は向かってくるスライムに対し、落ち着いて手のひらに霊力を集めた。
一筋まばゆい光が放った後、彼女の右手には一本の流麗な紋様が刻まれた刀が握られた。
「人々の平和をおびやかし、罪の無い命を食らうなんて、私が許さないわ!」
刃が一閃すると同時に、鈴華はスライムのそばを通り抜けた。
スライムの体半分がしぶきを放ちながらぶっとび、ただの黒い水溜まりとなって地面にしみこむ。
残された半分は大きな目玉を中心に、シュルシュルと異様な音を立てながら蠢く。
「急所を避けられたか。だが、次ははずさない!」
鈴華は刀を構えなおし、スライムに飛びつこうとした。
その時だった。
スライムの残された半分の体は、突然振動して何かの形を作り始めた。
「な、なに?」
まるでガムのように姿形が変えていきながら、それはやがて一匹の動物の姿に収束した。
「ま、まさか!」
あまりにも驚く光景に、鈴華は目をそらすことができなかった。
ついさっきゲル状だったスライムが、一匹の犬の姿になった。
それはまるで、さきほどスライムに飲み込まれたあの野良犬のようだった。
ただはっきりと違うところは、目の前の犬は全身を黒く染めていることと、
その顔面には、一つの目しかなかったことだ。
その一つの目はというのは、普通の二個分よりも大きく、その顔面の前で不気味に見開く。
あまりにもグロテスクな外見に、鈴華は身の毛がよだつ思いをした。
422 大きな目玉に見つめられ(4/10) ◆vPNY1/7866 sage 2008/02/11(月) 17:42:33 ID:lt7R4sF7
この化け物が他の生き物に変形できるなんて、初めて知ったことだ。
彼女はなぜスライムはこのような変形ができたのか、思い巡らした。
(まさか、さっきの食われた犬が、原因なのか?)
「わううううぅうう!」
犬スライムは突然鳴きだし、ドでかい目玉でぎょろりと鈴華を捕らえ、凄まじい勢いで飛び掛ってきた。
「なにっ?」
鈴華にとって、あまりにも予想外のスピードだった。
我に返ったとき、彼女はもはやその猛烈なアタックを完全に避けられない距離にいた。
鈴華はすぐに反省した。
なんでもありの妖魔相手に、自分は既成の概念に囚われるべきではなかった。
彼女は霊力を手に集め、意識を集中した。
次の瞬間、彼女の手に握られた刀は、盾と変化した。
鈴華はその盾を力いっぱい前方に突き出すと、犬スライムの鋭利な牙が砕かれた。
勢いに負けて吹き飛ばされる犬スライムを、鈴華は二度と逃さなかった。
今度は盾を長槍に変え、相手の目玉を一直線貫いた。
「がおぉぉ――!」
犬スライムは大きく吠え、前足で空を切り裂くが、その攻撃はもちろん離れている鈴華に届くことはない。
鈴華は更に槍をえぐると、犬スライムの目玉は破裂し、大量の白い濁液を噴き出す。
やがて黒い躯体も地面に倒れ、ただの水溜りと化した。
敵が絶命したことを確認すると、鈴華は槍を引っこ抜いた。
目玉スライムがほかの生物にとりつく光景は、彼女にとってあまりにも衝撃が大きい。
彼女は静かにまわりを見て、背中に冷え汗を流した。
いつの間にか公園の周りに、数十匹もの目玉スライムが現れた。
そして信じがたいことに、いくつかの目玉は木々に寄生し、根っこもろとも動いて鈴華の方へ近づく。
「これはちょっとやばいかな?」
化け物たちは鈴華を取り巻くように、徐々に迫ってくる。
鈴華は武器を強く握り締め、睦美の言葉を思い出した。
やばいと思ったら、逃げていいから。
「そう言われちゃうと、私ますます逃げたくなくなっちゃうんだよねー。
みんなが来るまで、持ちこたえてみせるわ!」
鈴華は一度苦笑いをこぼして、それからは真顔になって全身の霊力を高めた。
「まとめてやっつけてあげるわ!究極金遁奥義、『三千刃の陣』!」
彼女は両手で素早く臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前と次々印を結び、空に向けて手をかざした。
次の瞬間、天から剣、刀、矢、戟などさまざま凶器が雨のように降り注いだ。
大量の霊力を消費するこの大技は、範囲内のいかなる者をも殺戮する究極な技である。
五行戦隊の五人のうち、鈴華の殺傷力は公認で一番高い。
彼女はどんな妖魔に対しても、瞬時に鋭器を作り出しやっつけることができるのだ。
そしてこの究極奥義は、発動した際ほかの四人達も退避しなければならないほど凶悪である。
武器は次から次へと作り出され、地面にへばりつくスライム達を串刺しにする。
目玉を破壊されたスライム達は、次々と白い粘液を散らしながら消えていく。
423 大きな目玉に見つめられ(5/10) ◆vPNY1/7866 sage 2008/02/11(月) 17:43:50 ID:lt7R4sF7
「はぁ、はぁ……」
やがて術が収まると、鈴花は乱れた息を整えた。
これだけ大きい術を発動したため、彼女の体力は一気に消耗した。
その凄まじい攻撃に、目玉スライム達は一度全滅したように見えた。
しかし、しばらく時間が立つと、鈴華の周りに再び目玉スライムが集まり始めた。
「う、うそ……?まだ、生き残りがいるの?」
彼女は素早く一本の鉄槌を作り出し、飛び掛ってきた一匹のスライムを打ち返した。
その目玉から白い濁液が飛び散り、至近距離だったために鈴華の身にかかった。
しかし、すぐ側までやってきたスライム達は、彼女に汚れを取り除く時間を与えない。
彼女は二匹目を叩き潰し、三匹目をぶっとばした後、木に取り付いた目玉の枝攻撃を避け、後ろへ飛びのいた。
目玉を潰すたびに、その白い液体が彼女の体にねばつく。
やがて、十数体の目玉スライムを倒した後、鈴華は自分の動きが段々鈍くなったことに気付いた。
(はぁ、はぁ……おかしいわ。体がどんどん、だるくなっていくわ)
蠢くスライム群を前に、鈴華はハンマーを肩に担いで、目に染みこんだ汗を拭いた。
それを機に、腕にかかった粘液は、彼女のかわいい顔に付着した。
(なんだ、この変な匂い……頭がくらくらしてしまうわ)
鈴華は意識が薄くなったのを感じ、慌てて頭を振って冷静さを取り戻そうとした。
その時、彼女を囲む目玉スライムは、突如一箇所に集まり始めた。
そして、お互いの体を絡めたかと思いきや、一つの大きな塊に合体した。
「な、なんなの?」
鈴華はその不気味な光景を見て、呆然とした。
塊のところどころに目がついており、その中央部にはとりわけ大きい目玉が見開き、鈴華のほうを向いた。
『シュッシュッシュ、それだけ我が支配液を浴びてもまだ正気でいられるとは、さすがは五行戦隊』
「頭の中に、声が聞こえてくる……?まさか、今お前が喋ってるのか?」
『いかにも。我こそ百目怪の総合意思、地上を支配する者だ』
「ふん、そのくだらない野望、私達五行戦隊が食い止めて見せるわ!」
『シューシュシュシュシュ。生きる者たる宿命は、弱き者を略奪し、強き者に服従する。
人間ごとき貧弱な下等生物に、この大地を支配する資格は無い』
「そんなことを言って、お前みたいな塊になにができる?今からそのでっかいめんたまを潰しにいくわ!」
『シュッシュー、愚かななり。あなたはまだ己の立場に気付いておらんようだな』
「ひ、ひゃっ!……なによこれ!」
鈴華は突然、自分の足が地中へ引きずられた感がした。
彼女は慌てて足元を見ると、自分が踏んでいるのは砂ではなく、スライムの死骸からできた黒の水溜りであった。
あたりを見渡すと、いつの間にか公園の土は全部禍々しい黒の水溜りになっていた。
「くっ……!足が、取れない……!」
黒い水に漬かった部分は、まるで麻痺したかのように、一切の感覚が伝わらなかった。
そして、黒池の表面では、無数の白い目玉が次々と見開き、一斉に鈴華のほうを見つめる。
そのあまりにもおぞましい光景に、鈴華はぞっと背筋を冷やした。
彼女の体はゆっくりと黒池の中へ沈んでいき、そして白い目玉は彼女の足首を、ふくらはぎを、太ももを這い上がる。
その蛆虫のような蠕動する感触に、彼女はむず痒い思いをした。
「く、来るな!」
鈴華は二本の短剣を作り出し、目玉を次々と切り伏せた。
目玉の傷口から、やっぱり白い粘液がほとばしり、彼女の戦闘服を更に汚す。
「くっ、これじゃあきりが無いわ!」
『シュッシュッシュ、そのまま霊力を使い果たすまで、待っているがいいシュ』
424 大きな目玉に見つめられ(6/10) ◆vPNY1/7866 sage 2008/02/11(月) 17:44:35 ID:lt7R4sF7
「冗談じゃないわ……こんな妖術、私の陣で破ってやるわ!もう一回……究極金遁奥義、『三千刃の陣』!」
鈴華は再び九つの印を結び、術を放った。
次の瞬間、空から無数の武器が現われ、一斉に黒い池へ突き刺さる。
あまたの目玉が破壊され、白い濁液となって四散する。
「これで、どうだ!……な、なに?」
鈴華が喜ぶのもつかの間、彼女が作り出した武器は、なんと全て池の中へ引きずり込まれて行った。
やがて、池の中では白い目玉がまた見開き始める。
「そ、そんなバカな……こいつは、不死身なのか?」
鈴華は呆然と立ち止まってしまった。
一回の戦いでは最高でも一回しか使わなかった奥義で、今日だけで二度も使った。
そのため、今の彼女には霊力がほとんど残っておらず、黒い液体から脱出するだけの体力もなかった。
ついに膝まで池の中に沈み、膝より下の肉体は一切の感覚を失った。
池の一部が盛り上がり、そこからたくさんの目がついた肉塊が再び現われた。
『シュシュシュ、残念だったね、五行戦隊も一人しかいないじゃ本来の力が出せないシュ』
「なんだと!」
『あなたたち五行戦隊の最も恐ろしいところは、五行相生を利用し、無限の霊力を生み出せるところだシュ。
すなわち、一人でも欠けていれば、その無限の力は崩れ、無敵ではなくなるシュー』
「私一人だって、勝ってみせるわ!」
『それは無理だシュ。あなたの霊力属性は金、我にダメージを与えるとしても、
我が再生する前に完全に倒すのは至難だシュー。五つの属性が揃って、はじめて我を滅ぼすことができるのだシュ』
「くっ……ふん、だったらいい事を教えてやるわ。私の仲間もすぐここにやってくる。その時、絶対あなたを倒す!」
『シュッシュシュシュ。そのことなら、心配は無いシュ。なぜなら、あなたはもうすぐ我の仲間となるだシュ。
そうすれば、五人は永遠に揃わなくなるシュよ』
「な、なんだと!私があなた達化け物のいうことを聞くなんて、するわけ無いわ!」
『シュシュ、その言葉は、もう少し痛い目にあってもらったあとに聞くシュ!』
百目怪の正面にある一番大きな目玉は突然妖しく輝くと、そこから一条の怪光線が発射された。
「させるか!」
鈴華は瞬時に鉄の盾を作り出し、怪光線を遮った。
『悪あがきもそれまでだシュ』
百目怪は左右から体を伸ばして鈴華の両手を包み、それらを無理やり体の横へ移動させた。
「くっ、気持ち悪い、離しなさい!」
『これであなたも無防備だシュ。もう一度食らえ!』
百目怪の目玉から再び怪光線が発射されると、今度は鈴華の胴体に直撃した。
「きゃ――!」
悪しきエネルギーが彼女の全体を襲う。
直撃をくらっても、普段なら霊力を溜めることによって被害を減らすこともできるが、
霊力を使い果たした彼女にはそれだけの力はなかった。
やがてダメージが溜まり、黄色の戦闘服が解除されてしまい、いつもの私服に戻った。
『シューッシュシュシュ、もうあなたを守るものは無くなったシュ!』
百目怪は鈴華の体に近づき、目玉から白い液体を吐き出した。
彼女の服が粘液にふれると溶かされ、その下の綺麗な柔肌を露出させる。
鈴華は恥ずかしさのあまりに顔を真っ赤に染めた。
外気にふれた肌は少女特有の無垢のみずみずしさを帯びていた。
しかし、白い粘液が付着した途端、彼女の肌は妖しい変化を迎える。
「な、なに?体が、変に感じる……どんどん熱くなる……」
『シュシュシュシュ、さきほどまでは戦闘服に守られたようだが、今度は直接だからな』
「この白いべとべとは、なんなの?」
『これは、お前たち人間を支配する液体だシュ。
我々は、つい最近あなた達人間が地球の支配者になっている理由を掴めた』
「えっ?」
425 大きな目玉に見つめられ(7/10) ◆vPNY1/7866 sage 2008/02/11(月) 17:45:59 ID:lt7R4sF7
『あなた達人間は、肉体が弱くても、高い学習能力を備わり、数々の災害を乗り越えてきた。
その適応能力は、確かに他の種族には見られない。特に、
あなた達五行戦隊が妖魔を次々と倒したように、人間は困難を乗り越えるたびに、強くなっていく』
「くっ、うっ……よく、分かってるじゃない」
『だから、我は一つの作戦を考えた。これからは人間に寄生し、人間の力を我らのために使役しようと』
「な、なんだと?」
『もちろん、我々には貧弱な素材はいらない。強い人間だけに寄生し、そうでない人間は我らの栄養分となってもらう。
我々には、寄生した対象と同化し、その能力を奪い取る力があるだシュ』
百目怪の恐ろしい言葉を聞きながら、鈴華は思わず鳥肌が立った。
『喜ぶが良い。我々が選んだ最初の強き人間は、あなたたち五人なのだ』
「や、やめて!放してよ!」
『さあ、我の支配液を存分に浴び、身も心も我らに晒すがよい!』
次の瞬間、百目から今までに無いおびただしい量の白汁がほとばしり、鈴華の裸を浴びてゆく。
粘液に捉われたは肌に甘い痺れが流れ、相手に降参するかのようにビクビク蠢いた。
『人間は快感に弱い。我が支配液は、我に支配されやすいよう、原始たる欲望を引き出されるのだ』
「あ、あっ……ああ!」
鈴華は胸の奥底から湧き上がるいやらしい感情に、自分の頬を赤く染めた。
(こんな時に、私……なにを考えてるんだ!)
彼女の四肢には、ところどころ目玉を生やした黒い触手に這う。
太ももの裏に触手がなめずるように蠢くと、鈴華はたまらず嬌声をあげてしまい、腰から力が抜けそうになった。
(だめ、このままじゃ……本当に変になっちゃう……)
『シュシュシュ、いまさらあがいても無駄だシュ』
百目怪から細い触手が伸びて、鈴華の頬に這い、彼女の口を無理やりこじ開けた。
「うがっ、ううああ!」
『さあ、これを飲み込むが良い』
鈴華の口の中に無数のミミズが束に纏まったような触手が伸びてきた。
その先端は彼女の舌に絡みつき、白い目玉を流し込んだ。
「うーん、むむっん!」
圧力とともに、大きな異物が喉を通していく違和感に、鈴華は思わず涙目になった。
けがれを知らない素肌にいくつかの触手や目玉が這い回り、
彼女の形のいい臍や胸を覆いかぶさったり吸ったりする。
体中から伝わる不快感も、白い支配液のせいで、いつかは快感となって彼女の体を支配した。
「ぐうぅぅぅぅ……ぶはーっ!はぁ、はぁ……」
ようやく触手から解放された口は、空気を求めて荒く呼吸する。
『どうだい?我らの目玉を呑み込んだら、あなたも……』
百目怪が喋っている最中だった。
鈴華は口を開けたまま、顔を忽然百目怪のほうに向けた。
一本の鋭い短刀が彼女の口から出てきたと思いきや、猛スピードで吐き出され、百目怪の目玉に深く突き刺さった。
その大きな目玉は短刀を中心にひび割れ、やがて多くの白い汁を飛ばしながらしぼんだ。
「はぁ、はぁ、これが、私の取って置きの攻撃よ!これでもうおしまいだ!」
『シュシュシュシュ、どうやらあなたは、大きな誤解を抱いているようだシュ。
我々の弱点は確かに目玉である。しかし、集合体となった時、目が全て破壊されない限り、我々は敗れないシュ!』
百目怪の他の一つの目玉が大きく拡張した。
彼はその目が中央に来るよう塊を動かすと、すっかり元通りに復元した。
「そ、そんな……」
『あなた達五人の力がそろわない限り、我は不滅だシュ!
さあ、己が変わっていく過程を、存分に感じるがいい!』
百目怪がそう言うと、鈴華は突然自分の肉体のところどころからむず痒い感じがした。
彼女は自分を見下ろすと、なんと恐ろしいことに、首と胸の間には大きな割れ目のような筋が縦に現われた。
426 大きな目玉に見つめられ(8/10) ◆vPNY1/7866 sage 2008/02/11(月) 17:47:06 ID:lt7R4sF7
「な、なにが起きてるの?」
次の瞬間、その大きな縦筋から妖しい感触が広がった。
ぞっとするようなもどかしさに、鈴華は思わず体を蠢かせた。
『シュシュシュ……さっきあなたに飲ませた目玉は、我のしもべとなる契機。
その割れ目が完全に見開き目玉となったとき、あなたも我々の仲間だ』
「そ、そんな!やだ!」
筋目が薄っすらと見開いた瞬間、鈴華の全身に電撃のような衝撃が走った。
「きゃ、きゃああぁー!」
あまりにもの鋭い快感に、鈴華は全身から汗が噴き出て、ぽかんとあけた口からよだれを垂らした。
目玉の場所からじんわりとした痺れが広がり、鈴華の体を支配する。
「や、やだ……私が、化け物に……なっちゃう!」
『さあ、あなたの全てを目玉に委ねなさい。さすれば楽になるシュ』
「ふ、ふざけるな……あんたなんかに負けるもんか!」
鈴華はぐっと胸に力を入れ、残されたかすかな霊力を縦の筋目に集中させた。
筋目の邪悪な妖力が抑えられ、目玉の見開き具合は減少した。
『シュシュ、無駄なあがきを。我の中に取り込んでじっくりと楽しませてあげよう』
鈴華の手足にまとった黒い液体は突然収縮し、彼女の体を丸ごと水溜りの中へ引きずった。
予想外な展開に鈴華は息を変える暇もなく、全身がどろどろとした黒液の中に包まれた。
『案ずるな。この再生液は、我らの同胞の肉体からなるもの。
あなたの体を少しずつ蝕んで、邪悪なエネルギーを注ぐであろう』
「ぐっ……ううん!」
鈴華は上も下も真っ黒の空間に囚われ、ただ耐えるしかなかった。
そして、何本かの細い触手が、彼女の秘所をまさぐる。
「むごぉっ?!」
目玉を口中に含んだまま、鈴華は悲鳴をあげた。
まだ男をしらない可憐な秘所は、触手に優しくほぐされると、
やがて鈴華の意識を裏切り、動きたいがままに動き出す。
(ああ、き、気持ち良い……)
鈴華は知らず知らず体をくねらせ、粘液による愛撫を最大限に受けられるようにした。
邪悪な黒液に犯される肌。
その表面に黒い汁がへばりついて、やがて小さな目玉が見開く。
目玉が生成する数が一つ一つ増えていくたびに、鈴華は自分の体に異物が融合させられるような快感を味わう。
淫欲に堕ちはじめた彼女には、霊力の保護も徐々に薄れていく。
それと同時に、彼女の胸部中央にある大きな目玉は段々と大きく見開き始める。
(あっ、ああ……どんどん目玉が生えてくる……体が敏感になっちゃう!)
鈴華は目をつむり、下腹部から押し寄せる快感をこらえようとした。
秘所の中が触手のイボイボにかき回されると、彼女は悔しいながらも背筋を曲げて迎合してしまう。
触手は時に優しく、時に激しく伸縮を繰り返す。
触手全体に生えている目玉が微妙に蠢き、鈴華をじっくりと絶頂へと誘ってゆく。
(もう、だめ……私、もう耐えられない!)
たまりきった黒い欲望に、鈴華の理性を捨てはじめる。
彼女は自ら口をあけまわりの粘液を呑み込み、四方の粘液に小柄の胴体をこすり合わせる。
そして、最大の波が秘所に襲ってきたとき、彼女は体をピンと伸ばし、声にならない呻きをあげた。
(イッちゃう、私……イッちゃうよ!)
熱い液体が彼女の下腹部にほとばしる。
鈴華はその液体をすべて受け止め、頭の中は雷撃にうたれた後のように考えが定まらない。
体が激しく痙攣し出した瞬間、彼女の胸部にあった目玉がぐばっと一杯に見開いた。
白身に囲まれた金色の瞳はせわしく上下左右に動き回り、生まれたばかりの敏感さを鈴華と共有する。
(ああ、私……化け物に……負けちゃった……)
鈴華は最後にそう思い、意識が途切れた。
疲れ果てた体は、暗闇のどん底へ沈む。
427 大きな目玉に見つめられ(9/10) ◆vPNY1/7866 sage 2008/02/11(月) 17:48:00 ID:lt7R4sF7
どれぐらい時間が過ぎただろうか。
鈴華は心地よい波の上に浮かんだ感じがした。
(ここは……どこ?)
彼女はゆっくり目を開けると、上下左右に黒い粘液の壁があることに気付いた。
体は粘液の中に半身だけ沈んでいて、生ぬるい黒液に浸した肌はだるくて気持ちいい。
立ち上がってみると、体には怪我が一つもなかった。
ただ一箇所、胸部についている大きな目玉を除いて。
「い、いや――!」
鈴華は両手で自分の頭を抱え、これは悪夢だと自分に言い聞かせた。
目玉は鈴華の意のままに動き、金色の瞳をうごめかす。
感触がリアルなだけに、鈴華の小柄な体がわなないた。
その時、彼女の前に大きな肉塊が盛り上がった。
『気がついたようだシュ。どうだ、新しく生まれ変わった気分は』
「な、なんなのよ……これ、とれないじゃないか」
『それはもうあなたの体の一部。あなたは、すでに我々の一員なのだシュ』
「う、うそよ!私は、町の平和を守るのよ!あなた達妖獣を倒す使命があるのよ!」
『シュシュシュ、よくぞ言ってくれた。しかし、あなたにも感じるはずだシュ。
ほーら、体中から、悪の妖力が満ち溢れているシュよ?』
「えっ?」
鈴華は胸の目玉を見下ろすと、思わず変な気分になった。
目玉たちに体を犯されたシーンが次々とよみがえり、肉体はまるでその続きを求めるかのように火照り始めた。
いやらしい念頭が走馬灯のように、彼女の頭に浮かび上がる。
「あ、ああ……!」
鈴華は体をビクビク震わせると、秘所から一本のうねうねした触手がのぞき出た。
その触手には、不規則な形で数個の目を生やしてあった。
鈴華は曖昧な笑顔を浮かばせてその触手を優しく撫でると、背筋がビクッとした。
まるで体の一部となった触手は、刺激を受けると今まで味わったことも無い快楽が込み上がる。
「ああ、気持ちいい……手が、手が止まらないよ!」
彼女は膝を床につき、虚ろな目で自ら体をまさぐり始めた。
『それでいいだシュ。あなたは、これから我々の仲間を増やすための母体になってもらうシュ。
繁殖本能に忠実に従うがいいシュ』
「はい!あぁ、はぁん……母体、繁殖?」
『そう。我々の子孫を産むためのメスだシュ』
「そ、そんな……!」
あまりにも卑猥な表現に、鈴華は秘所をまさぐりながら涙を流した。
『シュシュシュシュ。さあ、これを受け取るがいいシュ』
百目怪は肉塊の一部を盛り上げると、そこから一つの黄色い玉が現われた。
「そ、それは……私の、金遁玉?」
『そうだシュ。あなたが五行戦隊の一人として使っていた霊玉だ。これに我の邪悪な妖力を注入した。
後は、かつての持ち主であるあなたが自らそれを汚染するのだシュ』
百目怪の触手から霊玉を受け取ると、鈴華のどす黒い欲望がそれに反応した。
金色だった宝玉は徐々に鈍く輝き、その外見も目玉そのものに変化した。
鈴華は五行戦隊に変身するような要領でそれを握り締めると、黄色い目玉からどす黒い妖力が放たれ、
彼女の体を包んで変身した。
428 大きな目玉に見つめられ(10/10) ◆vPNY1/7866 sage 2008/02/11(月) 17:51:46 ID:lt7R4sF7
萌黄色のワンピースだったはずの姿は、黒を基調にした暗い黄色の肉布に覆われた。
胸のやや小さめの二つの膨らむは肉布にぬめりと包まれ、それより上は全て露出し、
綺麗な柔肌や不気味な目玉を晒した。
湿気を含んだ肉布は、まるで這うように彼女の胴体にぴったりとくっつき、
ヘソや背中の部分は切り取られて外気にふれさせる。
スカートだったはずの下半身も、肉布がハイレグ状に彼女の秘所にフィットする。
雪白い二の腕や太ももを強調するかのように、その先の部分だけを肉布が覆う。
横から見れば分かるように、肉布の裏側には、びっしりと無数の突起が生えている。
肉布が絶えず蠢くことによって、その主である鈴華は常に愛撫を受け続ける。
変身が終わった後、今度はその肉布のところどころに小さな目玉が見開かれる。
胸の二つの膨らみ、秘所の真上、腕や足などと目玉の数が増える。
そして、鈴華はまるで絶頂を迎えたときの快感を覚える。
それらの目玉を操って動かすと、周辺の景色がはっきりと彼女の脳内に浮かび上がる。
彼女は敏感になった体を抱きしめ、恍惚の表情を浮かべた。
「ああ、なんて……なんて素敵な感じだろう」
『そう、あなたはもうその快感から逃れられない。
これから我の仲間を増やすために、その可憐な肢体を差し出してもらおう』
「はい……」
四方の壁から迫り来る触手に対し、鈴華は逃げるところか、自ら四つん這いになった。
『シュシュシュ……完全に我が虜と化したな。たとえあなたのかつての仲間が助けに来たとしても、
あなたは喜んで我に従い、やつらと戦う。そうであろう?』
「はい、百目さま。今度はあいつらを堕とし、私と同じように百目さまの忠実なしもべとして仕立てて見せます」
鈴華は淫靡な笑みを浮かべた。
彼女の両目は、その胸の上にある大きな目玉と同様に、邪悪な輝きを放ち始めた。
<つづく>
今回は以上です。
どきがむねむねしたせいでミスまくった俺はチキン。
日本語が変な箇所が多数あった気がする。面目ない。
中学校の時もっとまじめに国語を勉強すべきだったな。
後の展開が連鎖悪堕ちなので、どっちに投稿すべきか悩みました。
あっちのスレは寄生苦手な人がいるかもと思って、こっちにしました。
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