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永久の果肉6
213 乙×風 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:18:17 ID:O3sWphaW
ふう……全く触手がもげてもげてしょうがない。
贖いの巫女の方GJでした。もし続きがあるなら期待しています。
パクリ云々については……私からはあまり強く言えません。
読者の方の気持ちも理解出来ます。
ですが初めてのSS、それに加えて退魔モノというメジャーなジャンル。
設定やシチュが被るのもしょうがないしょう。
どっちが正しいとかそういう問題ではないと思います。
なのでパクリ云々に関しては、あくまで読者の一意見として受け止めるといいと思います。
その意見を生かすも殺すも作家次第。ってな感じです。
以前の私が書いた退魔モノのシチュも、とあるエロ漫画からパクったものですからねw
だから『パクり』という言葉に過剰に囚われる必要もないです。
ですがそれに甘えるのもどうかと思うのです。
大なり小なり自分なりの味付けをして、作品の個性を出せばいいじゃないでしょうか?
神社参りや、旅行が趣味ならそれで得た知識も大きなアドバンテージになるでしょう。
私は基本面倒臭がりなので必要最低限の資料集め以外は全くしませんしw
祝詞とかさっぱりです。
リアル巫女さんも私は年に一回見れたらいい方なのでちょっぴり羨ましいですよぉ。
さて。何様だよお前的な世話焼きもそろそろ見苦しくなってきたでしょうか。
ここからは私のターンといきましょう。
いつものように永久の果肉、投下します。
前回エロ話だったので今回はエロ控え目です。
前半はマリオンの過去話や死んだリオのお母さんのお話です。
後半は覚醒リオの悪巧み。新キャラの女魔術士がその毒牙に掛かります。
以下NGワードです。
(過去話、新キャラ追加、股からお花、エロ微量)
ではどうぞ。16レス消費します。
214 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:20:42 ID:O3sWphaW
第六話 リビディスタの事情
それは今から十二年前のお話。
『あら、マリオン! 良く来てくれたわね!』
思い出の中、その女性の笑顔は輝いて見えた。
腰まで伸びる桃色の髪。赤と緑のオッドアイ。女として成熟した体。
自分には無い魅力を、その女性は全て持っていた。
彼女の名前はリシュテア=セイレン。
リビディスタの隣町で娼館を運営している女性だ。
訳あってリビディスタの街に引っ越してきた。
リオの母親である。
『ほんとマリオンくらいよ? 私のところに来てくれるのは。
あの人もたまに来てくれるけど、すぐに帰っちゃうし。ドルキなんて来る筈もないし。
親があんなのじゃマリオンも苦労するでしょう?』
『うん。してる。お父様もお母様も厳しい』
武芸の家柄であるリビディスタの末娘として生まれたマリオン。
この時、彼女はまだ六歳だったが既に両親から英才教育を施される。
他者より優秀であれ。他者よりも強くあれ。親も超える戦士となれ。
剣の特訓を見物させられ。文字の読み書きと共に魔術の基礎を叩き込まれる。
だが若干六歳の少女にとってそれは苦痛でしかなかった。
けれどリシュテアと一緒にいる間は、楽しい。
彼女の家は代々娼館を営むらしく、そのおかげで色んな人達と出会ったらしい。
歴史があれば評判もいい。店の女達もだ。
そしてそれを取り仕切るリシュテアもまた、いい女だった。
気さくで人付き合いが得意。面倒見の良い姉御肌。
その上見た目も特徴的でスタイルは完璧だ。
母のドルキも魔術師としては優秀だが、リシュテアの足元にも及ばない。
人間として。また女として。
だからマリオンは隙を見てはリシュテアに会いに行くのだ。
こっそりと屋敷を抜け出して。
帰ったらきっと母の雷が落ちるだろう。別に構わないが。
『ごめんなさいね。折角来てもらったのに、ろくなもてなしも出来なくて』
そう言って女性は儚く笑う。
『いい。私が勝手に来てるだけ』
『そう言ってくれると助かるわ――あ、そうだ!
ちょっと待っててね? こないだあの人が美味しい紅茶を持ってきてくれたのよ。
素直に大丈夫か? 調子はどうだ? とか言えばいいのに。
あの人ってば物で人のご機嫌取ろうとするんだから。ほんと不器用。
という訳でちょっと待っててね?』
『あ、別にいい。無理しないで』
『えー。折角のお客様だもの。お茶くらい淹れさせてよ』
『でも、横になってないと』
『マリオンが来るまで、ずっと横になっていたわ。
少しは立って動かないと、足が退化しちゃうもの』
『いや。しないし』
よっこいせっと――声を上げてベッドから降りるリシュテアを不安な面持ちで見詰める。
寝巻き姿で床に降り立つリシュテア。その彼女のお腹は異常な程膨らんでいた。
彼女は妊婦だった。もうすぐ妊娠十ヶ月だ。体に無理をさせられる時期ではない。
『っ!? げほっ! げほ!』
『ほら。もう、横になって』
急にむせ込んだリシュテアをベッドに押し戻す。彼女の顔色は悪い。
妊娠のせいだけではない、病に掛かっていたのだ。
215 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:22:38 ID:O3sWphaW
リビディスタのお抱えの医者が薬を持ってきてくれるが、妊娠中なので強い物も使えない。
タイミングが悪いとしか言いようが無かった。
『お茶、自分で淹れるから。お義母様の分も』
『うー。ごめんなさいねぇ? もてなすどころかこんな事までさせて』
『お義母様に無茶させるよりかマシ』
『でもマリオン? 貴女お茶の淹れ方知ってる?』
『――知らない』
『全く。あの脳筋どもは。仮にも良家のお嬢様なんだから。
お茶の淹れ方の一つや二つ教えなさいっていうの――マリオン、私が指示するわ』
その後、リシュテアの言葉に従い、マリオンは初めての給仕をする事になる。
息が詰まりそうな剣と魔術の勉強よりも、それはよっぽど楽しかった。
だが結果の程はと言うと。
『――熱っ!?』
『あ、ごめんなさい…そう言えばお義母様、猫舌だった』
『あーん。いいのよ。普通の人なら丁度いい熱さだと思うし』
『私、ふーふーする』
『ふふふ。ありがとう。マリオンは優しい子ね』
『ふーふー』
褒められるのが恥ずかしくて、照れ隠しにリシュテアの紅茶を必死に冷ましていた。
その間、リシュテアは色々話を振ってくる。
この街は活気もあって人も多いけど華がない、とか。
武装している剣士が殺気立ってておっかない、とか。
いい薬草が取れる筈なのに私には何の役にも立たない、とか。
将来はどうするの、とか。他にも――
『ねえマリオン? この子の名前、どうしようか考えているんだけど』
リシュテアが、自分を腹を撫でながら問いかけてきた。
本当に幸せそうな顔をしていた。まるで聖母のような。
(ドルキお母様も、私がお腹の中に居た頃はあんな顔を浮かべていた?)
自分の母が慈しみの表情を浮かべるところはちょっと想像出来なかった。
むしろ気持ち悪い。あの人には仏頂面しか似合わない。
『女の子? 男の子?』
『女の子よ。半分しか血は繋がってないけど貴女の妹よ』
『妹…』
その言葉の響きに、胸がジーンとしたのを覚えている。
お姉さんになる。その事実が少し誇らしかった。
そしてもし妹が生まれたら、自分のように辛い目にあって欲しくない、そう思った。
『――リオ。リオがいい』
『リオか――うん! 決定! 可愛い名前じゃない!』
『え? いいの? リオで?』
『何よマリオンが言い出したんじゃない。
――ってあら? マリオン? リオ? マリオン――
貴女、自分の名前から二文字取っただけ?』
『ばれた』
『あははは! 何よそれ! もうちょっと考えてよ! 私の大事な娘なのに!』
『じゃ、じゃあ、お義母様は何か考えたの?』
『んーそうねぇ――クロとか!』
『いやそれダメだと思う』
『じゃあシロで!』
『どうして猫っぽいの?』
『にゃーん♪』
『…………』
『やだちょっと白い目で見ないでよっ。
自慢じゃないけどね、私の猫さんのコスプレとか、お客様に大うけなんだからね。
元気になったら、マリオンにも見せてあげる』
『歳、考えれば?』
『何か言ったか小娘』
笑顔で言ったその時のリシュテアが怖い事怖い事。目が笑っていなかった。殺気を感じた。
子供心に大人の女性を怒らしたら命が無い、と感じたのを覚えている。
216 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:24:35 ID:O3sWphaW
『――ってお母様が言ってた』
だから取り敢えずは母に罪をなすりつけた。
『って、ああドルキねっ? あはははっ。嫌だわ私ったら早まっちゃって。
それにしても――ふふふ。あのアバズレ。いつか目に物見せてやるわ♪』
ほんと。大人の女は怖い。
(でも、面白い)
リシュテアと話をしている時だけが、安息の時間。
だが。それがすぐに潰える事になるとは、この時思ってもみなかった。
『――それでね。あの人ったらベッドの上だとまるで野獣みたいになるの』
『男は皆、狼だ』
『いいえマリオン。あの人の場合、そんな生易しいものじゃないわ。
鞭は使うわ。汚い言葉は使うわ。人の事を畜生扱いするわ。問答無用で中出しするわ。
あいつは鬼ね。悪魔ね。何が英雄よ。ただの鬼畜だわ』
『…あのお義母様? ひょっとしてお父様の事、嫌い?』
『んー。まぁ、どっちかって言うと、嫌いかな?』
『え。でもお義母様。お父様と……その、何度も……』
『エッチしたわよ? そりゃもう何度も何度も。なかなか会えなかったからね。
一日で四、五回くらい平気でやってたわ』
『――あの。一応、私、まだ六歳なんで。そういう生々しい話は』
『いいじゃない。どうせ他に誰も聞いてないんだし。
それに女ってね、体よりも心の方が先に大人になるものよ。
耳年増くらいで丁度いいの――って話が逸れたわね。ええと――』
『どうしてお父様とそんなに愛し合えたの? 嫌いなのに』
『あそうそうそれ! 私、というよりセイレンの家系がね?
あんまり子宝に恵まれないのよ。だからする時はもう、しまくりなの』
『……どういう事?』
『赤ちゃんが欲しかったから沢山エッチしたのよ。当然じゃない』
断じて当然ではないと思った。
『――ああ、言葉足らずだったわね。
ほら、あの人ってスケベな上に甲斐性無しで鬼畜で脳筋だけど。
一応剣神、なんて称号が貰えるくらい凄い戦士じゃない。
私はその遺伝子が欲しかったのよ。お金持ちだったしね』
『お義母様、変わってる』
『あははっ。私もそう思うわ。正直、白馬に乗った王子様とか柄じゃないわね。
そんなもやしみたいな男いるかー! ってなっちゃう。
やっぱり男はワイルドなのがいいわ』
――そうすれば、生まれてくる子もきっと元気に育ってくれるから――
穏やかに笑いながらそう言ったリシュテアの顔を見てなんとなく気付いた。
『……お父様よりも、赤ちゃんの方が好き、って事?』
『そう! 正にその通り! マリオン賢い!
ああでもね? あの人の事だってどうしようも無いくらい嫌いなわけじゃないわよ?
あの人ね、あれでも結構寂しがり屋なのよ。それでドルキの性格がアレでしょ?
家じゃ甘えられないからって私に甘えてくるのよ? 体を求めてくるのはそれが理由かな。
けどあの性格でしょ? 素直に、甘えさせてくれ、って言えないのよね。
だからエッチの時も鬼畜になっちゃうのよ。ほんと、男って見栄っ張りばっかりだわ。
でもでも♪ おっかしいと思わない? あの剣神様が、私みたいな女に甘えてるのよ♪
巷じゃね、そーいうのをツンデレって言うんだって。
…あれ? ムッツリスケベだったかしら?』
『それなんか違う気がする』
『違わないわよ。あの人、ちゃんと優しいところもあるもの。
病気だって分かった時、真っ先に様子を見に来てくれたしね。
週に一度はお見舞いに来てくれるし。不器用だけなのよ』
『……そうだったんだ』
父も母も厳格だ。だがすぐに感情的になる母と違って父は感情を表に出さない。
217 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:26:33 ID:O3sWphaW
マリオンも感情表現が苦手な子供だったので、性格は父に似たのかもしれなかった。
いつも眉間に皺を寄せていて、会話も必要最低限。
何を考えているか想像もつかない人物。それがマリオンから見た父の人間像だ。
『お義母様。父様の事、良く分かってるね。私、父様の事、全然分からない』
『ふふふ。それはしょうがないわ。私もね、今言った事全部に確証は無いの。
女の直感、って言うのかしら? 肌を通して相手の心が何となく分かっちゃうのよ』
『凄いぜ姉貴』
『そんな言葉どこで覚えたのよ……まあ、そんな訳だから。
あの人、そんなに悪い人じゃないのよ。エッチの時以外はね』
その言葉で、マリオンはふと気付いてしまった。
一度、屋敷を抜け出してリシュテアに会いに行くところを父に見られた事がある。
その時はてっきり、何処に行くのか詰問されるのかと思ったのだが。
まるで何も見えなかったように無視された。
今思えば、あれはリシュテアに会いに行くのを黙認していたからなのかもしれない。
『そういえば、私、お義母様に会いに行っても、お父様に怒られた事が無い』
母にはシコタマ怒られるが。
父も、厳しい性格をしているので、こういう事は絶対に許さないと思うのだが。
『ほらやっぱり。多分、あの人はね?
自分で私の相手をするよりか、貴女に相手をさせた方がいい、とでも思ってるのよ?
ほんと、素直じゃないんだから。いいマリオン?
貴女はあの人みたいに捻くれた大人になっちゃ駄目だからね?』
『…頑張る』
『よし。それでこそ私の娘だ!』
くしゃくしゃと髪を乱雑に撫でられる。
髪の毛が無茶苦茶になってしまうが、この瞬間がマリオンにとっては一番幸せな時だった。
しかし、
『――げほっ! げはっ! げほげほっ!!』
『お義母様っ』
急に咳き込んだリシュテアに駆け寄る。
ぴしゃり、と口元を押さえた彼女の掌に紅い液体が飛び散った。
それが血であるとすぐに分かり、息を呑む。
『はっ――はぁっ…! ――ふふふ。参ったわね。
丈夫だけが取り柄だったのに。運が無かったのかしら。
妊娠中に、変な病気に掛かっちゃって』
『私、お医者様を呼んでくる!』
『待ってマリオン』
背中に掛かった声は思ったよりもずっと強く、はっきりしていた。
土気色をした顔は死人のよう。なのにオッドアイには誰よりも強い意志が宿っている。
『私、貴女にお願いがあるの。聞いてくれる?』
『うん』
『お腹のこの子、リオはリビディスタの屋敷に置いて欲しいの』
『え?』
『私は、ドルキに毛嫌いされてるから、屋敷に入れてもらえないけど。
リオは、あの人の娘でもあるから、まあ大丈夫なんじゃないかなって。
実は私の家の家訓に、娘には必ず家を引き継がせろ、ってのがあるんだけど。
正直その気はないのよ。娘に娼館の仕事を教えるのもアレだし。
それになんだかんだ言ってこの商売も楽じゃないしね。
稼ぎは不安定だし。変な病気は移されるし。ろくな事がないのよ。
私、この子にはそんな思いをさせたくないわ。
だから、リオはリビディスタに引き取ってもらって、立派なレディになってもらうの』
『でも、私の家は、』
『知ってるわ。かの名門リビディスタ。魔術と、剣のエリートを養成する武門の家柄。
でも大丈夫。リオにだって才能あるわ。あの人の血を受け継いでるもの。
それに私だって魔術使えるわよ?』
『え。うそ』
218 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:28:07 ID:O3sWphaW
『チャームだけね♪』
『…なるほど』』
からからと笑うリシュテアを見ているとさっきまで血反吐を吐いていたとは思えない。
けれど彼女に救う病魔は、確実にその命を蝕んでいた。
『マリオン。私、長くないかも知れない』
『え?』
『自分の体だしね。分かるの。もう、ぎりぎりよ。
でも、安心して。この子だけは、産んでみせる。それまで、絶対死なない。
ええ。死んでやるもんですか』
『――絶対死ぬみたいに言わないで。私、お義母様がいなくなったらっ』
『ふふふ。マリオンは甘えんぼね。でも貴女もうお姉さんなのよ? しっかりしないと』
『うん…』
『いい子ね。この子も。貴女が守るのよ?
私の娘というだけで、この子はきっと辛い目に遭ってしまうと思うから。
だからこの子が一人前になるまでは、貴女が守ってあげるの。
お姉さんである貴女が、ね? 約束出来るかしら?』
『うん。約束する。リオは、私が守る』
『そう。じゃあ指切りしよう?』
『何それ?』
『ああ。私の家に古くから伝わる――まじないみたいなものよ?』
『どうするの?』
『こう、小指同士を絡めて、呪文を唱えるの。二人一緒にね』
『呪文? どんな?』
『教えてあげる』
ゆーびきーりげーんまーん。
うーそつーいたーら針千本のーます。
『指切った♪』
『指切った』
じっと自分の小指を見詰めた。
リシュテアの血に触れて、紅く穢れた小さな指を。
『――指切ったのに痛くないよ?』
『これをした人たちは皆そう言うわ♪』
『針千本も飲んだら死んじゃうよ?』
『それは約束を破ったら。破らなければ大丈夫よ』
『…がくがくぶるぶる。私はお義母様に脅迫されている』
『あはははっ。そんな事無いわよ。そんな事しなくても、貴女は約束を守ってくれるもの』
だってマリオンは優しい子だから。
だから、お願い。
リオを。私の娘を。どうか守ってあげて。
それから一週間後。
リオは無事誕生し、リシュテアは死んだ。
***
時は戻って。リオが淫魔として覚醒した直前の出来事である。
マリオン=リビディスタは我が家の門をくぐった。
ヘスペリスとして王都に着任してからおよそ二年。
今も、アネモネ追跡の任務の途中だが――図らずとも久しぶりの帰郷となった。
「帰ってきた」
屋敷の大きな門には見慣れたレリーフが描かれている。
筋骨隆々とした男が右手と左手に剣を携え、その背後に幾本の剣を突き刺さっている――
最強の戦士、剣神アレスの肖像だ。
219 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:29:37 ID:O3sWphaW
それを眺めていると、里帰りした、という気分になってくる。
「っ!? マリオン様!?」
「お勤めご苦労様」
「はっ! 恐縮です!」
武装した見張りの門番二人に労いの言葉を掛けると、敬礼と羨望の眼差しが返ってきた。
歳なら自分よりも三つほど上に見えるが、彼らからすれば自分は有名人だ。
この顔も、名前も、肩書きも、全て知っているだろう。
だからこそ彼らの、まるで女神でも見ているような視線が少し恥ずかしい。
「――本物だ。本物のマリオン様だ!」
「なんというか、こう。気品というかオーラが溢れ出ているようだったなあ」
「俺、下っ端だけど、この仕事やってて良かった、って思う」
「ああ、俺もだ」
背後から聞こえる門番二人の会話を聞いていると背筋が痒くなってきた。
頬が赤らんでいるのが自分でも分かる。
(しっかりしなさい私)
久しぶりの里帰りとは言え、両親は二人とも厳格な人物だ。
へらへらしていたら何を言われるか分かったものではない。気合を入れないと。
だがそれよりも先に、する事があった。
(リオに会わないと)
この世でたった一人の大切な妹。
マリオンがリビディスタを出たのは王都で成果を上げて、両親に一人前と認めて貰う為だ。
そしてその暁には、リオを引き渡してもらい、二人で王都で住むつもりだった。
実際王都でヘスペリスとして活躍し、今では十分な蓄えがある。
リオと二人で生活するだけなら何の問題も無い。
今日は両親にその事を報告しようとも思っていたのだ。
ただ少し心配だったのは、この屋敷に残してきたリオ本人の事だ。
母親のリシュテアが妊娠した直後に彼女は病に掛かった。
しかもこの地で取れる薬草では治癒不可な珍しい病だ。
金に物を言わせて薬を取り寄せる事も出来た。
だが、それでは母体への負担が掛かり過ぎ、結果的にお腹の子供も死んでしまう。
故に特効薬は使えなかった。
そして大した薬も使えなかった彼女の症状は次第に悪化し、体力をすり減らし。
リオを生んでからすぐに他界した。
しかも問題はそれだけではない。
病を患っていた間に出産した事で、娘のリオは先天的な虚弱体質になってしまった。
武芸の家リビディスタに、病弱な妾の子がいる。
魔力感知の結果、リオに魔術師の才能が無いと判明した事が、状況をさらに悪くした。
(正直、私は少し信じられないけど)
リシュテアにはチャーム程度の魔術ならば使えたと言う。
その血を引くリオにもそれくらいの魔力はあると思うのだが。
能力としては戦士である父の血を受け継いでしまったのだろうか。
まあ、それは兎も角。リオは屋敷の中で完全に孤立してしまったである。
生前のリシュテアが懸念していた通りだった。
そしてそんな中に一人置いて王都に行ってしまったのは本当に申し訳ないと思っている。
だがそれも未来の試金石を稼ぐ為に必要な事だった。
それにここにはマリオン自ら声を掛け、雇ったメイドが居る。
リオ専属の世話係パセットだ。
彼女なら自分が居ない間もリオの面倒を見てくれる。
明るく、表裏の無い、とてもいい子だ。庶民の出だが、能力も高い。
きっとリオの友達になってくれる。
パセットがいるから、心置きなくこの家を出る事が出来た。
(リオ、もう少しだから)
リシュテアとの約束。リオを守る事。彼女の姉として。
その約束を、一時も忘れた事は無い。
(お義母様。お義母様との約束、もう少しで果たせそうです)
220 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:31:51 ID:O3sWphaW
「マリオン様!?」
屋敷の離れへと向かう途中、庭園でパセットの姿を見た。
リオの様子を聞こうかと思ったが――どうにも様子がおかしい。
息を切らし、顔は蒼褪めて、あの人懐っこい笑顔が不安と狼狽で歪んでいる。
嫌な予感がした。
あのパセットがこんな表情をしているなんて、ただ事ではない。
「どうしたの?」
悠長に挨拶をしている状況ではないらしい。単刀直入に尋ねた。
嫌な予感は、的中した。
「リオっちが、居なくなったんです!」
(居なくなった? 行方不明って事? 何で?)
「どういう事?」
「昨日の夜までは確かに居たんです! お昼頃に起こしてっ、いつもみたいにふざけて!
でも、気分が悪い、ってリオっちに追い出されて!
でもでもっ、食べないと元気にならないから、夜に、様子見ついでに食事を持って行って!
その時は確かに居たんです! でもっ、でもっ、今日目が覚めて部屋に行ったら!
もぬけの空で! 何で! どうしてっ!?」
(どうして、ってそんなのこっちが聞きたい)
パセットのいう事を聞いていると徐々に苛々が募ってきた。
行方不明? 追い出された? 何だそれは?
「役立たず」
「ひっ! ご、ごめんなさい! マリオン様っ」
「ごめんさないじゃ済まない。何の為に貴女を雇ったと、」
そこまで言って、ふと、パセットがぽろぽろと涙を流している事に気付いた。
そうだ。リオが突然居なくなってショックを受けたのはパセットも同じ。
それもリオが物心付いた時からずっと傍に居たのだ。
パセットとリオの関係は主従というよりも友達のそれに近い。
友達のリオが突然居なくなって、一番悲しい思いをしているのは誰だ。
「ごめんなさい。ちょっと言い過ぎた」
すぐ頭に血が上ってしまうのは自分の悪いところだ。
パセットはずっと自分の代わりにリオの面倒を見てくれた子だ。
感謝はしても、泣かすような事をしてはいけない。
(冷静にならないと…)
「パセット。屋敷の中はもう探した?」
「ぐすっ…ひくっ…それが、お屋敷の中には、どこにも居なくてっ」
「リオの体ならそんな遠くに行けない筈。手分けして探そう」
言ってからある事に気付く。
屋敷の中が静か過ぎるのだ。リビディスタの令嬢が行方不明になったというのに。
そう言えば門番の青年二人も、暢気なものだった。何かおかしい。
「リオが居なくなった事、お父様とお母様には報告した?」
「しました! でも、奥様は『反抗期なのでしょう。放っておきなさい』って!
旦那様は旦那様で『探す必要は無い』の一点張りでっ。おかしいですよっ。
リオっち。体弱いから、家出なんて出来るわけないのに!」
パセットの言葉の意味を考える。
母親は、まあいい。元々リオの事を毛嫌いしていた彼女の事だ。
悩みの種が消えてくれた、程度にしか思っていないのだろう。
だが父親の、この淡白な反応はどういう事だ?
探す必要は無い? ドルキと同じく、放っておけ、という事か?
仮にも自分の娘が行方不明になったのに心配ではないのだろうか?
(……どっちにしろ、冷たい事には変わりない)
「それだけじゃないんです!
旦那様っ、リオっちが居なくなった事、誰にも口外するなってっ。
余計な事はするなってっ!
それじゃまるで『探すな』って言ってるみたいじゃないですか!」
「…何それ」
それでは誰かがリオを保護する可能性すら消えてしまう。
リオが家に戻って来なければ、野垂れ死ぬ可能性すらある。
まあ、あの外見だ。屋敷の者が見つければ保護するだろうが。
221 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:33:55 ID:O3sWphaW
心配な事には変わりない。
『あの人、ちゃんと優しいところもあるもの』
ふと、古い記憶から、尊敬するリシュテアの言葉を掘り起こした。
父は、見た目によらず優しい人間だと。
厳しく、感情を出さない人間だがそれは単に不器用なだけだと。
だがその言葉も、今の状況ではなんの説得力も無かった。
(お義母様。お父様は貴女が思っているよりも酷い人だった)
「パセット。貴女は屋敷の外を探して。
屋敷に残ってる門下生に声を掛けて、一緒に探すの」
「え、でもそれじゃ旦那様の言いつけを破る事に…」
「構わない。責任は私が取る。『マリオン様の命令だ』って言えばいいから」
「わ、分かりました! パセットは命に代えてもリオっちを見つけます!」
「危ない事はしなくていいから。…私は森を探してくる」
「森って、街の外ですか!? どうしてです!?」
「最悪の事態も、考えておかないと」
もし、何かしらの理由でアレエスの街を出てしまったら。
この城壁の向こう側は魔物の巣窟だ。虚弱体質のリオに生き延びる術は無い。
そして屋敷の北側には、森へと続く訓練用の出入り口があるのだ。
そこからならばリオ単身でも外に出る事が出来る。
(まさか…お母様、この事を想定して、結界の性質を…)
アレエスの街を取り囲む結界は外に出るのは自由だが中に入る事は出来ない。
これは表向き、門下生達の為という事になっているが。
自殺願望を持った者を――リオを後押しする為、と解釈する事も出来る。
「それじゃ私は行く。あんまり無理をしないで」
「あ――お気遣いありがとうございます!
マリオン様もどうかお気をつけて!」
「ん」
返事と同時に転移魔術を起動させる。
今は一秒でも時間が惜しい。歩いて移動する暇は無かった。
転移先はここから一番近い、城壁の勝手口。
リオが街を出るなら、そこを使う確立が高い。
「待ってて。リオ」
足元から溢れる転移の光が、マリオンの体を包み込んだ。
***
アレエスの街を守る城壁は巨大だ。
周囲の森には凶悪な魔物達が潜んでおり、それらから街を守る為には当然の事だ。
城壁は、高く、分厚い。
見張り台は当然として、ある程度の居住空間すらあった。
しかし大きくは無い。二、三人が談笑したり、本を読むくらいのスペースのものだ。
大抵の場合、此処には結界術士と呼ばれる魔術師が常駐している。
彼らは街を守る結界に干渉出来る者達だ。
森へ訓練に出かけた戦士達を迎え入れる為、結界を解除する事が仕事である。
また、有事の際には結界の強度を上昇させ、敵の侵入を防ぐ役割も担っていた。
しかし基本的に彼ら彼女達は暇人である。
仕事量が圧倒的に少ないからだ。
だからする事と言えば同じ結界術士同士で愚痴を零し合うか、勤勉に励むくらいだ。
だがこの日は違った。
「リオ様の姿を見かけませんでしたか?」
居住空間にて下っ端魔術師の前に現れたのは美しい女だ。
緩やかにウェーブのかかった銀髪。
しなやかな体躯を包むのは蒼の法衣だ。肩の部分には紋章が張られいる。
杖と、それに灯る8つの星。これは魔術師としての位を表すエンブレムだ。
222 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:35:27 ID:O3sWphaW
見習いなら杖のみ。見習いを卒業でその杖に光が一つ灯る。
そしてその後も、魔物を退治したり、称号持ちの人物の推薦にて光は一つずつ増えていく。
光の数は最大で十二。それ以上は固有の称号を得られる事になる。
ドルキの『メディア』や、グリーズの『アレス』がそれに当たる。
と言えばリビディスタの創設者であるこの二人がどれだけ強いか想像も容易い筈だ。
そして星無しが当たり前の結界魔術師達にとって、目の前の女魔術師も相当な実力だった。
彼女の名前はクロト=ラプキンズ
ドルキも一目置いている、優秀な魔術師だ。今年で二十歳を迎えた。
自分に厳しく、他人に優しくが彼女のスタンス。
それに加え、歳の割には幼い顔立ちや、ぱっちりとした瞳。
可愛らしさと可憐さを併せ持ったその容姿に惹かれる者も多い。
おっとりとして純情。同性にも異性にも人気のある人格者った。
そんな彼女がこのような、出来損ない達の吹き溜まりに来た事には勿論理由がある。
「リオ様ですか? いえ、我々は見ていません」
「そうですか……」
(やっぱり、そう簡単には見つからない…か…)
クロトはリビディスタの長であるグリーズからある命を受けていた。
行方不明になった娘を探して欲しい、と。
ただしこれには条件があった。
一つ。彼女が居なくなった事を出来るだけ口外しない事。
二つ。発見した場合は速やかに保護する事。
三つ。保護した場合。屋敷には連れ戻さず所定の場所へと護送する事。
以上である。尚、所定の場所と言うのは山を一つ越えた隣街だ。
そしてこの命令は他にも何人かの優秀な人員に与えているらしい。
実に奇妙な話だった。
リビディスタの門下生全員で事に当たればすぐにでも見つかる筈なのに、そうしない。
条件も、隠密行動を前提としたものばかり。
屋敷にいる誰かにリオの捜索を勘付かれたくない――そんな風に思える。
勿論理由を聞いた。返答は得られなかったが、恐らく込み入った事情なのだろう。
ドルキとリオの関係はリビディスタに居るものなら誰でも知っている。
それに加えてグリーズとリオの近親相姦疑惑。
恐らく首を突っ込んではいけない話なのだろう。
(近親相姦なんて…只の噂だと思うんだけど…)
実のところ、クロトはグリーズに恋愛感情を抱いていた。
彼の強さに惚れこんだのもある。が、彼が時折見せる優しさに心を打たれたのだ。
訓練を終えた後、極稀に労いの品が門下生宛てに届けられている事がある。
それがグリーズからの贈り物だという事に、クロトは気付いていた。
ポーカーフェイスの下に不器用な優しさが隠れているのだ、と。
そのグリーズからの直々の命。なんとしても果たさなければならない。
「そのリオ様が、どうかされたのですか?」
「…いえ。なんでもありません」
愛想笑いで結界術士達を誤魔化す。
ふわふわとした優しい笑みに結界術士達がだらしなく頬を緩める。
しかしクロト本人は心中は穏やかでなかった。
探査魔術を駆使して足取りを何とか追ってきたが、リオはどうやら街の中にはいない。
(森の中に入った可能性が高い…でも、そうなると…)
生存している確率も低いだろう。病弱の少女が一人、生きていける場所ではない。
急がなければならない。いっその事、この者達にも捜索を手伝わせようか。
グリーズを裏切る事になるが、娘が死ぬよりかはいいだろう。
クロトは訝しげな表情を浮かべる結界術士達を見渡し、
「…あの、実は貴方達に、」
どん。大きな音が外から響いた。
「…っ!? 何だ!?」
結界術士達が血相を変える。
どうやら結界になんらかの異常があるようだ。さっきの音と何か関係があるのだろうか。
「結界術士っ! 結界を解けっ! 早く!」
223 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:37:12 ID:O3sWphaW
階段の上から見張り台の怒声が響いた。
「女の子が魔物に追われてる!」
考えるよりも先に体が動いていた。
「ごめんなさい!」
二人の結界術士を押し退け、城壁の外へと通じる通用門を開く。
視界が開け、眼前に乱立する木々が現れる。
門から三歩ほど離れた位置に薄い光の膜があり、それがアレエスを守る結界である。
結界の外側には騎士甲冑に身を包んだ一人の中年男性が仰向けに倒れていた。
外傷は無い。恐らく結界に向けて投げつけられてしまったのだろう。気絶しているだけだ。
そして――
「誰かぁ! 誰か助けて下さい!」
森の中からこちらへと駆けてくるのは一人の少女。
遠目からでも分かる鮮やかな桃色の髪。そして赤と蒼のオッドアイ。
見違える筈も無い。探し人のリオだ。
クロトは駆け出した。加速の魔術を使い一息で彼女の元へと踏み込む。
「…!? 貴女はっ」
「お話は後にしましょう?」
ゴシックロリータの衣装を身に纏った小さな体を抱きかかえ、結界を越える。
術士達がきちんと仕事をしたらしく、すんなりと城壁の中に入る事が出来た。
「暫くここに居て下さいね。外に居る騎士の方を連れてきますから」
「は、はいっ、気をつけて下さいっ」
(怖い目に遭っている筈なのに、人を気遣う事が出来るんですね)
流石、グリーズの娘だと思った。
だが悠長にもしていられない。魔物はそこまで迫っている。近くに気配がするからだ。
まるですぐ傍にいるように。
クロトは再び門を開け、外に飛び出す。
(…あ…れ…?)
そして違和感に気付いた。魔物の姿が見当たらないのだ。気配は近くにあるというのに。
まあいい。取り敢えずは騎士を結界内に運び込めればいい。
結界を越えれば魔物にはどちらにしろ手は出せないのだから。
クロトは男を担ぎ上げようとし――あまりの重さにすぐに諦めた。
大人一人の重量に加えて騎士の甲冑だ、女の細腕では到底持ち上げられない。
引きずって運ぼうかとも思ったがそれも無理だった。
「見張り番の方! この方を運んでいただけませんか!?」
「あっ――は、はいっ、ただ今参ります!」
見張り台の男に声を掛けるとすぐに彼は応じてくれた。
これで、取り敢えずは当面の問題はクリア、か。
警戒はしながらも男の到着を待つ。
魔物の気配は未だに近くにあるが、攻めあぐねているか襲い掛かってはこない。
臆病な性格なのだろうか。
(……でも、この人を倒している)
仰向けになった男の甲冑は強烈な打撃を受けたように腹部がへこんでいる。
パワー型のモンスターに攻撃されて、吹き飛ばされたのだろう。
ミノタウロスか。サイクロプスか。その辺りだろうか。
そこでふと気付いた。
「魔物の姿を、誰も見てない?」
見張り番の男は言った、女の子が魔物に追われている、と。
襲われている、ではなく、追われている、だ。
そうだ。誰でも、必死の形相で女の子が走っていれば魔物に追われていると思い込む。
この森ならなお更。
クロトは探索魔術を起動させた。
地面に青白い魔術陣が浮かび上がると、それを起点に魔力の波紋が広がっていく。
これは周囲の魔物や人間を発見する為の魔術。
自分を中心に、魔物なら赤で、人間なら青の光点として脳裏に描かれるのだ。
224 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:38:59 ID:O3sWphaW
(魔物の姿を誰も見てないらなら、森の中から騎士の人を投げつけた事になる)
「――あれ…?」
ところが雑木林の向こうに魔物の反応を示す赤い光点は無い。
もっと奥に行けば反応はあるだろう。
防御もそうだが探索魔術はクロトの十八番だ。その効果範囲は半径三キロにも及ぶ。
魔力の波紋はゆっくりと森の中へと広がっていき、
そこでふと気付いた。
結界の内側に、赤い光点が一つある事に。
「えっ!? えぇ!? 嘘っ」
探索魔術を解除して自分が今し方出て来た門を見据える。
魔物が、侵入していた? いつのまに?
(そんなぁ、ありえないです。
さっき私が飛び出したタイミングで、魔物が結界内に入る事なんて出来ない)
そこまで考えて、ふと気付いた。
さっき自分が中に招き入れたのは『リオにしか見えない』少女一人だという事に。
「…まさか」
嫌な予感が背中を走った。ひょっとしたら自分はとんでもないミスを犯したのではないか。
クロトは騎士を放置し、再び門をくぐった。
重い、鋼のドアを手前に引き、空ける。
「っ!? これって!?」
城壁の内側に設けられた居住スペース。
その五メートル四方程度の空間内は、黒い霧のようなものが充満していた。
「おかえりなさい。魔術師のお姉さん」
笑顔で迎えたのは黒いゴスロリ服を着たリオだ。
そして彼女の傍らには結界術士が二人、それに見張り台の男が一人倒れ伏している。
間違いない。魔物の気配はこの少女、リオから放たれていた。
それを認めた瞬間。意識が研ぎ澄まされる。
普段はおっとりとしたクロトだが、これでも幾度か死線を潜り抜けた一流の魔術師だ。
部屋に充満している黒いガスは毒性のもの、と推測し、即座に防御魔術を展開する。
「ふふふ。凄いなぁ。一瞬で的確な判断をしてる。八つ星ともなると伊達じゃないんですね」
「リオ様、これは…一体――いえ、貴女は本当にリオ様なんですか?」
探索魔術では間違いなく魔物を示す赤い光点がそこにあった。
この状況下では、疑いようが無い。
「? ああ。魔物さんがリオ=リビディスタに化けてると思っているですね。
でもそれは外れ。私は、リオ=リビディスタ本人。
それよりも私はお姉さんの事が聞きたいな。私の事、探している様子だったし」
正直に話すべきか少し悩んだ。目の前の少女は自分がリオ本人だと主張している。
だがこの状況でそれを信じるべきではない。
(でも、もし本当に本人なら…事情を知ってもらった方がいいんじゃ?)
そしてもしも偽者なら――その時は倒してしまえばいいだけの話だ。
「良かった♪ お姉さん話す気になってくれたみたい♪」
(…え? あれ? 今、私顔に出てた?)
思考を先読みされている気がした。
「私はクロト=ラプキンズ。ドルキ様の門下生です。
グリーズ様より特命を受けて、リオ様を保護しに来ました」
「――え?」
少女は目を見開き、信じられない、と言った表情を浮かべた。
その反応に、むしろこちらが困惑してしまう。
自分がした事を分かっているなら、親が助けを寄越す事を想像出来る筈だ。
だがリオは、まるで助けられる事を想定していなかったような様子である。
「助ける? 父様が? 私を?」
「そうですよ? 私の他にも何名が腕を立つ者を選んでいたようです。全員で十名程でした。
大勢で探した方が効率が良いと思いますけど…きっと何か理由があるのでしょうね」
「――他の人に見つからないように、とか?」
225 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:40:47 ID:O3sWphaW
「え、ええ。この事は口外しないようにと指示を受けましたから。
内密に事を運ぶ理由があったのだと思います」
「そっか――やっぱりそうなんだ…」
リオは肩を落とし、俯いている。
安心しているのか、それとも落胆しているのか表情が読めない。
だが精神的に不安定になっているのは確かな筈だ。
クロトは彼女を励ますように言葉を掛ける。
「リオ様の身に何があったのか私は知りません。
ドルキ様との間柄も重々承知しています。
ですが――ですけど…今一度グリーズ様とお話をしてみればいかかですか?」
余計なお世話なのかもしれないが、クロトはリオを連れて帰る気だった。
父と娘がこんな形で離れ離れになるのはあんまりだと思ったからである。
「ほんとに、何も知らない」
「え?」
リオが顔を上げる。
恐ろしい程、明るい顔をしていた。
笑顔の裏側に狂気が垣間見えた気がして、背筋に悪寒が走る。
「だって今帰ったら、父様と義母様に殺されちゃうから♪」
「…そんな…何を仰っているのですかっ」
「信じられない? でもねクロトさん。
私は、父様と義母様が二人で私を殺そう、っていう話をしているのを聞いたの。
しかも友達のパセットを利用してね? だから屋敷を出たんだよ?」
「そんな事、信じられません!」
ドルキに限っては、まあ百歩譲ってありえるとしよう。
だがグリーズに関しては娘殺しの疑いなど、認められる筈もない。
「よりにもよってあのグリーズ様が、リオ様を…! きっと何かの間違いです!」
「? クロトさん、やけに父様の肩を持つね? どうして?」
「そ、それは…っ」
お慕いしているから、そう正直に話せばどれだけ楽か。
だがグリーズは妻子持ちで、リビディスタ家の長だ。
この恋心が絶対に叶わない事を知っている。
そしてそれを他人に打ち明ける事も、クロトには出来なかった。
「あの人は、本当は優しい方なんです! 少し不器用な、」
「あははははははははははは!!!」
クロトの言い訳は、リオの狂った哄笑に両断された。
リオは、可笑しくて可笑しくて堪らない、と言った様子で腹を抱えて笑う。
それが不気味であると同時に、腹が立つ。
グリーズへの想いを、侮辱された気がしたのだ。
「一体何がおかしいんですかっ」
「あはははっ! ごめ、ごめんなさいっ! ふふふっ…! あはははっ!
そっかっ、そっかぁっ。そういう事かぁっ! ふふふっ。成る程ねぇ。
それなら父様を擁護したくもなるよね?」
「…何を、言って、」
「だってクロトさん、好きなんでしょ? 父様の事が?」
図星を言い当てられて口が『あ』の形で固まる。
(ど、どうして!? 私、そんなに分かり易いの!?)
「クロトさん。幸せだね。才能があって。美人で。性格もいい。人気もあるし。
でも一番幸せな事は『好きな人の汚い所を見ていない』事だと思う」
「ど、どういう意味ですかっ」
「一つ、いい事を教えてあげるね?
屋敷の噂、知っているよね? 私が父様とエッチしている、っていう」
「え、エッ……だ、駄目ですリオ様! 仮にもリビディスタの令嬢ともあろうお方が!
そんな卑猥な言葉を使っては駄目ですぅ!」
「…うわ…クロトさん…純情……皆に人気があるのもしょうがないね。
ふふふ♪ 妬ましいな♪ 羨ましいな♪ その人気、私にも分けてくれればいいのに♪」
226 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:42:06 ID:O3sWphaW
「ちゃ、茶化さないで下さい!」
「割と本気なんだけど……まあいっか♪
そう、それでね。さっきの話の続き。あの噂、ほんとだから」
あっけらかんと衝撃の事実を告白され、今度こそ言葉を失った。
ふらふらと後ずさり、鼠色の壁面に背中を押付ける。
「…そんな……ありえません…」
実の娘を強姦する? そんな馬鹿な事があってたまるか。
あの人に限って、そんな愚かな事をする筈がない。
「クロトさんってば乙女なんだね♪ 頭の中、綺麗な父様ばっかり。
本当の父様の事、何も知らないのにね」
くすり、と目の前の少女が笑った。
人の闇を、穢れた部分を知ってしまった者、特有の笑みだ。
甘い蜜の味を覚え、自らの欲望を、他人の不幸を求める者の笑みだ。
これが、若干十二歳の少女が浮かべる顔か? これでは堕落した大人と変わらない。
「ねえ? クロトさん? ベッドの上の父様は、凄いんだよ?」
「っ! な、なんですか、いきなりっ」
手を後ろ手に組んで、少女はゆっくりと近付いてくる。
暗い、濁った微笑を浮かべたまま。
「剣の訓練をする時も厳しいけど…ベッドの上じゃね、父様は獣なの」
「こ、来ないで下さい!」
「ううん。きっと夜の父様がほんとの父様。
剣を持つ時は、自分を抑えているだけ。
一度でも欲望を開放すれば、あの人は悪魔になる。
嫌がる私を無理矢理犯して、」
「い、嫌ッ! 聞きたくない!」
「いう事を聞かなかったら叩かれるんだよ?
ふふふ。痛かったなぁ…おかげで私、どんどん体がエッチになっちゃった」
「そっ、そんなの嘘に決まってます!」
「それなのに義母様と結託して私を殺そうとするんだもの。
ふふふ。ほんとおかしい。そんなあの人に優しさなんてあるわけない」
ばじり。リオが伸ばした手が、クロトの防御魔術に弾かれた。
「痛っ…!」
火傷した時のように、慌ててリオが手を引っ込める。
クロトは防御と探索に秀でた魔術師だ。
彼女の使う防御魔術は効果が強く、巨人族の鉄拳すらも跳ね返す。
そうだ。大丈夫だ。彼女の言葉も、きっとこちらの動揺を誘う虚言だ。騙されるな。
そして防御魔術がある以上、目の前の少女に自分が倒される心配はない。
少し、冷静になってきた。
(結局、この女の子は一体何者? 何の目的でアレエスに侵入したの?)
「仮に、もし仮に貴女の言う事が本当だとします」
赤く腫れた手にふぅふぅと息を吹きかけて、そう言ってるのにぃ、と少女は呟いた。
「もしそうだとして。何の為にこの街に潜入したのですか?」
「……私はね。森の中である魔物さんに命を救われたの。
私はその魔物さんに恩返しがしたいだけ。そう、例えば――
この街を、アドニスの花で埋め尽くしたり、とかね?」
少女の瞳が、見開かれる。
瞳孔が猫目のように細まり、オッドアイの瞳が両方とも赤く染まった。
「ねえクロトさん?『リオのお願い。防御魔術を解いて』♪」
甘ったるい、猫撫で声が耳朶に響く。
人外の瞳に意識が吸い取られるような感覚した。
(これは…チャームの、魔術…っ)
完全なる不意打ちに、精神防御をする余裕が無かった。
物理障壁では防御不能の精神攻撃に、抵抗の意思が萎えていく。
彼女の言葉に、無条件で従いたくなってくる。
――気が付けば、防御魔術を解いていた。
「ありがとうクロトさん♪ 私、クロトさんの事大好き♪」
227 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:43:41 ID:O3sWphaW
「……っ!?」
抱き付かれ、唇を奪われた。
(私の、ファーストキス…、なのにっ…!)
それも唇を触れ合わせる、そんな生易しいものじゃない。
舌を差し入れ、涎を流し込まれ、ぐちゅぐちゅと攪拌される。
「ふは…ちゅっ。ちゅぅっ。クロト、さぁんっ♪ ちゅるるっ♪」
「――っ!? んんっー!?」
鼻先をくすぐる少女の吐息。唾液が混ざる卑猥な音。そして粘膜同士が擦れる感触。
そのどれもがとてつもなく甘い。特に少女の唾液。まるで蜂蜜のようだった。
官能的、背徳的な行為に心臓が早鐘を打つ。
だがその鼓動はどこか心地良く、まるで夢見心地の気分だ。
(力が…入らない…)
精気を吸われているのか。
濃厚なキスに心は昂ぶるのに、体に力が入らない。
「ちゅぅぅぅぅぅ♪ ――ぷはぁ♪ あー美味しかった♪」
最後に混ぜ合わさった二人分の唾液を啜り取られ、少女から解放される。
精気を吸って満足したのか桃髪の少女の肌はツヤツヤだ。
「これはもう必要ないかな♪」
部屋を満たす黒い霧が少女へと収束されていく。
と同時に渦巻き、彼女の体を包み込んだ。
黒い霧はゴシックロリータの衣服を卑猥に引き裂き、
黒いパンプスにドクロのアクセサリーを追加し、
彼女の桃色の髪先から、暗い紫色の髪を生やす。
さらに頭から猫耳を生やして、
ばさり。蝙蝠の翼が少女の背中から生え、はためいた。
「変身完了♪ どうクロトさん? この格好♪」
(…なんて…いやらしい格好…)
剥き出しの肩や、深いスリットからちらりと覗く内股。
下着を着けていないのか、すこし屈めば未成熟な割れ目が見えてしまいそうだ。
「ふふふ。ね? いやらしいでしょ?
リオはねぇ。森の中でアネモネさんとエッチして、魔物になっちゃったの。
どうもご先祖様が淫魔だったらしくて、先祖帰りしちゃった♪」
(そんな…事が…)
「あるみたい♪ だからぁ、リオは本物のリオだけどぉ、淫魔だから♪
エッチな事して精気を吸うのが生き甲斐なの♪
しかもぉ――んっ…」
はぁ…はぁ…と淫魔の少女は色っぽく息を荒げる。
もどかしげに太股を擦り合わせ、辺りに淫魔のフェロモンを撒き散らした。
少女の甘い体臭に、脳髄が痺れてくる。
「はぁ…♪ 私の子宮には、ん――はぁ…っ、アドニスの種が、植え付けられてて、
はぁっ、はあっ――あはっ♪ 成長してるっ♪ 子宮の中で、びくびくしてるよお♪
さっき、外のおじさんと、その仲間の人とも、沢山エッチしたから、育ってるんだぁ…♪」
左右にばっくりと割れたスカートを摘み、引き上げる。
毛も生えていないツルツルの性器が晒された。
だがそこは白っぽい愛液を流し、しとどに濡れそぼっている。
陰唇の内側が丸見えになるまで解れ、サーモンピンクの肉ビラがひくひくと蠢動していた。
普段ならそんなグロテスクでいやらしい同性の性器など、目を背けるだけだ。
だが淫魔に魅了された精神は、少女のドロドロの性器に見とれてしまう。
リオはそんなクロトの視線が気に入ったのかうっとりと顔を緩ませて、
「――あっ!? しきゅーっ、びくびくするよぉっ! アドニスが、育ってっ!
ああぁ! 芽に、なってるよぉ! にゃっ! あっ! あっ! 出てくる!
出てきちゃうっ! リオのドロドロおマンコからっ、アドニスの花、咲いちゃうっ!
咲くっ、あっ!? にゃっ! だめっ! イくっ、イって!
にゃはぁっ!? にゃっ、あ! あぁっ! にゃっ、んにゃぁぁぁぁぁぁああぁっ!!」
ずるずるずるずるっ!
少女がスカートを摘み上げたままガクガクと体を痙攣させた。
228 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:45:13 ID:O3sWphaW
イってしまったのだろう。顔をだらしなく弛緩させ、舌を垂らし、涎を零している。
そしてその少女の股間からは、肉の花が咲いた。
くちゃぁ、と音を立てて四つの花弁が上下左右に開く。
花弁の内側は陰唇のように粘液に濡れ、肉色の粘膜をてらてらと卑猥に輝かせていた。
そのあまりにも淫靡な光景にクロトは生唾を飲み込む。
「あはぁ♪ リオのおマンコから、お花咲いちゃったぁ♪」
淫魔の少女は絶頂の余韻を噛み締めているようだった。
「にゃぁん♪ これ、気持ちいい♪ 膣の内側が、ごりごりされてるぅ♪
お腹の内側からおチンポに犯されてるみたい♪」
(いやぁ…そんないやらしい言葉、使わないで下さいぃ…)
ドキドキ、してしまうから。
いつもは仲間達の猥談についていけず、一人蚊帳の外になるというのに。
少女の淫魔特有のフェロモン。アドニスの花から放たれる催淫香。
この二重の匂いに心がかき乱されてしまう。
「ふふふ。クロトさん? 我慢しないで? 自分に素直になろ?
エッチな気分になって、どうしようもないんでしょ?
リオはね、心が読めるから。そういうの分かっちゃうの」
成る程。会話をしていると考えが読まれていた気がしたのはそういう事か。
だが、だとしたら尚更この少女には歯が立たない。戦いようが、無い。
「そうそう。別にリオもクロトさんと戦う気なんて無いから。
リオはねぇ。クロトさんに気持ちよくなって欲しいの♪」
「……ぁっ」
ゆっくりと、壊れ物でも扱うように押し倒される。
蒼の法衣をシーツ代わりに石畳の上に敷き、そこにゆっくりと組み伏せられる。
抵抗する気力は無い。
只、何をされるのかは薄々感づいていたので、恥ずかしさに顔を背けるくらいは出来た。
「クロトさん可愛い♪ ネーアさんの気持ち、分かった気がする♪」
ネーアという人物が一体誰なのかを想像する前に、キスの嵐が降ってきた。
ちゅっ、ちゅっ、と頬左の項に、右の頬に、或いは唇に、時にはおでこに。
更にキスをされながら、服も脱がされる。
胸元の留め金を外され、法衣が左右に開く。
その下から現れたのはブラウスと、脛まで伸びるスカート。
淫魔はブラウスのボタンを手際良く外し、スカートの横側にある留め金も外す。
Eカップのブラとリボンの付いた白いショーツが曝け出された。
「いや…見ないで、下さい…」
下着姿を他人に見られている。そう思うと羞恥心で頭が茹で上がった。
いやいやと首を振るが自分では何をしているか理解していない。
晒された半裸の体は肉付きが良く、女性特有の丸みを帯びたラインを持っている。
胸も尻も成熟し『くびれ』もある。清純なイメージとは裏腹に艶かしい体だった。
「うわ…♪ クロトさん着痩せするタイプだったんだね♪
エッチな体してる♪ きっと父様も気に入ると思うよ♪」
(……え? グリーズ、様が?)
少し大きめの胸などはどちらかと言えば邪魔だった。
肩は凝るし、同性からはからかわれるし、男達からは下品な目で見られる。
青の法衣もこの体を隠す為に着ているようなものだ。
だが、愛しのグリーズはそんな体の方が喜ぶと言う。
「うん♪ でもね? クロトさんはもっと綺麗になれるよ?
そしたら父様、きっとクロトさんにメロメロになっちゃうね♪」
それは悪魔の囁きだった。
人間の弱みに付け込み、堕落させる。悪魔達の十八番。
普段ならそんな甘い言葉に騙される事はないだろう。
だが、
「ねぇ? クロトさん? 父様と一緒になりたいでしょ?
繋がりたいんでしょ? いいよ、リオがその願いを叶えてあげても?」
「あ、ああ…」
229 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:47:17 ID:O3sWphaW
耳元で囁く淫魔の声が、心に染み渡ってくる。
抗い難い、甘ったるい悪魔の魔力が精神を冒す。
「でもその代わり、リオのお願いも聞いて欲しいの。
ね? どうする? 私のお願い、聞いてくれる?
聞いてくれたら、クロトさんの願いも叶えてあげる。
父様とずっとずっーと一緒に居させてあげる」
淫魔のチャームに毒された心では、誘惑を振り切る事が出来なかった。
「……私は…グリーズ様と…一緒に、なりたい…」
意思の光が消えた瞳に、邪悪に笑う少女が映る。
***
以上で六話終了です。
あ、そうだ忘れてました。
前回の投稿分、冒頭では第七話になってましたが第五話の間違いです。
プロット段階では七話だったのを、そのまま使ってしまったらしいです。
なんつーうっかりさん。細かいミスがほんと直らない。
ドウスレバインダ-。まあ性格なんでしょうけれどねぇ。
そして前回の感想を頂いた住人の方にも感謝感激雨あられです。
淫魔状態のリオは自分でもお気に入りです。
頭の中で常に誘惑してきやがる困ったちゃんですよ。
ちなみにシュトリの設定は四年間暖めてきたと言うよりただ単に使い回――ゲフンゲフン!
さて次回はリオとクロトの本格エッチです。
ここに来て新キャラかよ。みたいな?
次回以降もちらちら出番があります。エロ的な意味で。
おっとり純情娘が種子を植え付けられてエロエロ展開だ!
乱文失礼。今回はこの辺で失礼します。
それではまた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――ヨウジョバンザーイ。
ふう……全く触手がもげてもげてしょうがない。
贖いの巫女の方GJでした。もし続きがあるなら期待しています。
パクリ云々については……私からはあまり強く言えません。
読者の方の気持ちも理解出来ます。
ですが初めてのSS、それに加えて退魔モノというメジャーなジャンル。
設定やシチュが被るのもしょうがないしょう。
どっちが正しいとかそういう問題ではないと思います。
なのでパクリ云々に関しては、あくまで読者の一意見として受け止めるといいと思います。
その意見を生かすも殺すも作家次第。ってな感じです。
以前の私が書いた退魔モノのシチュも、とあるエロ漫画からパクったものですからねw
だから『パクり』という言葉に過剰に囚われる必要もないです。
ですがそれに甘えるのもどうかと思うのです。
大なり小なり自分なりの味付けをして、作品の個性を出せばいいじゃないでしょうか?
神社参りや、旅行が趣味ならそれで得た知識も大きなアドバンテージになるでしょう。
私は基本面倒臭がりなので必要最低限の資料集め以外は全くしませんしw
祝詞とかさっぱりです。
リアル巫女さんも私は年に一回見れたらいい方なのでちょっぴり羨ましいですよぉ。
さて。何様だよお前的な世話焼きもそろそろ見苦しくなってきたでしょうか。
ここからは私のターンといきましょう。
いつものように永久の果肉、投下します。
前回エロ話だったので今回はエロ控え目です。
前半はマリオンの過去話や死んだリオのお母さんのお話です。
後半は覚醒リオの悪巧み。新キャラの女魔術士がその毒牙に掛かります。
以下NGワードです。
(過去話、新キャラ追加、股からお花、エロ微量)
ではどうぞ。16レス消費します。
214 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:20:42 ID:O3sWphaW
第六話 リビディスタの事情
それは今から十二年前のお話。
『あら、マリオン! 良く来てくれたわね!』
思い出の中、その女性の笑顔は輝いて見えた。
腰まで伸びる桃色の髪。赤と緑のオッドアイ。女として成熟した体。
自分には無い魅力を、その女性は全て持っていた。
彼女の名前はリシュテア=セイレン。
リビディスタの隣町で娼館を運営している女性だ。
訳あってリビディスタの街に引っ越してきた。
リオの母親である。
『ほんとマリオンくらいよ? 私のところに来てくれるのは。
あの人もたまに来てくれるけど、すぐに帰っちゃうし。ドルキなんて来る筈もないし。
親があんなのじゃマリオンも苦労するでしょう?』
『うん。してる。お父様もお母様も厳しい』
武芸の家柄であるリビディスタの末娘として生まれたマリオン。
この時、彼女はまだ六歳だったが既に両親から英才教育を施される。
他者より優秀であれ。他者よりも強くあれ。親も超える戦士となれ。
剣の特訓を見物させられ。文字の読み書きと共に魔術の基礎を叩き込まれる。
だが若干六歳の少女にとってそれは苦痛でしかなかった。
けれどリシュテアと一緒にいる間は、楽しい。
彼女の家は代々娼館を営むらしく、そのおかげで色んな人達と出会ったらしい。
歴史があれば評判もいい。店の女達もだ。
そしてそれを取り仕切るリシュテアもまた、いい女だった。
気さくで人付き合いが得意。面倒見の良い姉御肌。
その上見た目も特徴的でスタイルは完璧だ。
母のドルキも魔術師としては優秀だが、リシュテアの足元にも及ばない。
人間として。また女として。
だからマリオンは隙を見てはリシュテアに会いに行くのだ。
こっそりと屋敷を抜け出して。
帰ったらきっと母の雷が落ちるだろう。別に構わないが。
『ごめんなさいね。折角来てもらったのに、ろくなもてなしも出来なくて』
そう言って女性は儚く笑う。
『いい。私が勝手に来てるだけ』
『そう言ってくれると助かるわ――あ、そうだ!
ちょっと待っててね? こないだあの人が美味しい紅茶を持ってきてくれたのよ。
素直に大丈夫か? 調子はどうだ? とか言えばいいのに。
あの人ってば物で人のご機嫌取ろうとするんだから。ほんと不器用。
という訳でちょっと待っててね?』
『あ、別にいい。無理しないで』
『えー。折角のお客様だもの。お茶くらい淹れさせてよ』
『でも、横になってないと』
『マリオンが来るまで、ずっと横になっていたわ。
少しは立って動かないと、足が退化しちゃうもの』
『いや。しないし』
よっこいせっと――声を上げてベッドから降りるリシュテアを不安な面持ちで見詰める。
寝巻き姿で床に降り立つリシュテア。その彼女のお腹は異常な程膨らんでいた。
彼女は妊婦だった。もうすぐ妊娠十ヶ月だ。体に無理をさせられる時期ではない。
『っ!? げほっ! げほ!』
『ほら。もう、横になって』
急にむせ込んだリシュテアをベッドに押し戻す。彼女の顔色は悪い。
妊娠のせいだけではない、病に掛かっていたのだ。
215 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:22:38 ID:O3sWphaW
リビディスタのお抱えの医者が薬を持ってきてくれるが、妊娠中なので強い物も使えない。
タイミングが悪いとしか言いようが無かった。
『お茶、自分で淹れるから。お義母様の分も』
『うー。ごめんなさいねぇ? もてなすどころかこんな事までさせて』
『お義母様に無茶させるよりかマシ』
『でもマリオン? 貴女お茶の淹れ方知ってる?』
『――知らない』
『全く。あの脳筋どもは。仮にも良家のお嬢様なんだから。
お茶の淹れ方の一つや二つ教えなさいっていうの――マリオン、私が指示するわ』
その後、リシュテアの言葉に従い、マリオンは初めての給仕をする事になる。
息が詰まりそうな剣と魔術の勉強よりも、それはよっぽど楽しかった。
だが結果の程はと言うと。
『――熱っ!?』
『あ、ごめんなさい…そう言えばお義母様、猫舌だった』
『あーん。いいのよ。普通の人なら丁度いい熱さだと思うし』
『私、ふーふーする』
『ふふふ。ありがとう。マリオンは優しい子ね』
『ふーふー』
褒められるのが恥ずかしくて、照れ隠しにリシュテアの紅茶を必死に冷ましていた。
その間、リシュテアは色々話を振ってくる。
この街は活気もあって人も多いけど華がない、とか。
武装している剣士が殺気立ってておっかない、とか。
いい薬草が取れる筈なのに私には何の役にも立たない、とか。
将来はどうするの、とか。他にも――
『ねえマリオン? この子の名前、どうしようか考えているんだけど』
リシュテアが、自分を腹を撫でながら問いかけてきた。
本当に幸せそうな顔をしていた。まるで聖母のような。
(ドルキお母様も、私がお腹の中に居た頃はあんな顔を浮かべていた?)
自分の母が慈しみの表情を浮かべるところはちょっと想像出来なかった。
むしろ気持ち悪い。あの人には仏頂面しか似合わない。
『女の子? 男の子?』
『女の子よ。半分しか血は繋がってないけど貴女の妹よ』
『妹…』
その言葉の響きに、胸がジーンとしたのを覚えている。
お姉さんになる。その事実が少し誇らしかった。
そしてもし妹が生まれたら、自分のように辛い目にあって欲しくない、そう思った。
『――リオ。リオがいい』
『リオか――うん! 決定! 可愛い名前じゃない!』
『え? いいの? リオで?』
『何よマリオンが言い出したんじゃない。
――ってあら? マリオン? リオ? マリオン――
貴女、自分の名前から二文字取っただけ?』
『ばれた』
『あははは! 何よそれ! もうちょっと考えてよ! 私の大事な娘なのに!』
『じゃ、じゃあ、お義母様は何か考えたの?』
『んーそうねぇ――クロとか!』
『いやそれダメだと思う』
『じゃあシロで!』
『どうして猫っぽいの?』
『にゃーん♪』
『…………』
『やだちょっと白い目で見ないでよっ。
自慢じゃないけどね、私の猫さんのコスプレとか、お客様に大うけなんだからね。
元気になったら、マリオンにも見せてあげる』
『歳、考えれば?』
『何か言ったか小娘』
笑顔で言ったその時のリシュテアが怖い事怖い事。目が笑っていなかった。殺気を感じた。
子供心に大人の女性を怒らしたら命が無い、と感じたのを覚えている。
216 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:24:35 ID:O3sWphaW
『――ってお母様が言ってた』
だから取り敢えずは母に罪をなすりつけた。
『って、ああドルキねっ? あはははっ。嫌だわ私ったら早まっちゃって。
それにしても――ふふふ。あのアバズレ。いつか目に物見せてやるわ♪』
ほんと。大人の女は怖い。
(でも、面白い)
リシュテアと話をしている時だけが、安息の時間。
だが。それがすぐに潰える事になるとは、この時思ってもみなかった。
『――それでね。あの人ったらベッドの上だとまるで野獣みたいになるの』
『男は皆、狼だ』
『いいえマリオン。あの人の場合、そんな生易しいものじゃないわ。
鞭は使うわ。汚い言葉は使うわ。人の事を畜生扱いするわ。問答無用で中出しするわ。
あいつは鬼ね。悪魔ね。何が英雄よ。ただの鬼畜だわ』
『…あのお義母様? ひょっとしてお父様の事、嫌い?』
『んー。まぁ、どっちかって言うと、嫌いかな?』
『え。でもお義母様。お父様と……その、何度も……』
『エッチしたわよ? そりゃもう何度も何度も。なかなか会えなかったからね。
一日で四、五回くらい平気でやってたわ』
『――あの。一応、私、まだ六歳なんで。そういう生々しい話は』
『いいじゃない。どうせ他に誰も聞いてないんだし。
それに女ってね、体よりも心の方が先に大人になるものよ。
耳年増くらいで丁度いいの――って話が逸れたわね。ええと――』
『どうしてお父様とそんなに愛し合えたの? 嫌いなのに』
『あそうそうそれ! 私、というよりセイレンの家系がね?
あんまり子宝に恵まれないのよ。だからする時はもう、しまくりなの』
『……どういう事?』
『赤ちゃんが欲しかったから沢山エッチしたのよ。当然じゃない』
断じて当然ではないと思った。
『――ああ、言葉足らずだったわね。
ほら、あの人ってスケベな上に甲斐性無しで鬼畜で脳筋だけど。
一応剣神、なんて称号が貰えるくらい凄い戦士じゃない。
私はその遺伝子が欲しかったのよ。お金持ちだったしね』
『お義母様、変わってる』
『あははっ。私もそう思うわ。正直、白馬に乗った王子様とか柄じゃないわね。
そんなもやしみたいな男いるかー! ってなっちゃう。
やっぱり男はワイルドなのがいいわ』
――そうすれば、生まれてくる子もきっと元気に育ってくれるから――
穏やかに笑いながらそう言ったリシュテアの顔を見てなんとなく気付いた。
『……お父様よりも、赤ちゃんの方が好き、って事?』
『そう! 正にその通り! マリオン賢い!
ああでもね? あの人の事だってどうしようも無いくらい嫌いなわけじゃないわよ?
あの人ね、あれでも結構寂しがり屋なのよ。それでドルキの性格がアレでしょ?
家じゃ甘えられないからって私に甘えてくるのよ? 体を求めてくるのはそれが理由かな。
けどあの性格でしょ? 素直に、甘えさせてくれ、って言えないのよね。
だからエッチの時も鬼畜になっちゃうのよ。ほんと、男って見栄っ張りばっかりだわ。
でもでも♪ おっかしいと思わない? あの剣神様が、私みたいな女に甘えてるのよ♪
巷じゃね、そーいうのをツンデレって言うんだって。
…あれ? ムッツリスケベだったかしら?』
『それなんか違う気がする』
『違わないわよ。あの人、ちゃんと優しいところもあるもの。
病気だって分かった時、真っ先に様子を見に来てくれたしね。
週に一度はお見舞いに来てくれるし。不器用だけなのよ』
『……そうだったんだ』
父も母も厳格だ。だがすぐに感情的になる母と違って父は感情を表に出さない。
217 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:26:33 ID:O3sWphaW
マリオンも感情表現が苦手な子供だったので、性格は父に似たのかもしれなかった。
いつも眉間に皺を寄せていて、会話も必要最低限。
何を考えているか想像もつかない人物。それがマリオンから見た父の人間像だ。
『お義母様。父様の事、良く分かってるね。私、父様の事、全然分からない』
『ふふふ。それはしょうがないわ。私もね、今言った事全部に確証は無いの。
女の直感、って言うのかしら? 肌を通して相手の心が何となく分かっちゃうのよ』
『凄いぜ姉貴』
『そんな言葉どこで覚えたのよ……まあ、そんな訳だから。
あの人、そんなに悪い人じゃないのよ。エッチの時以外はね』
その言葉で、マリオンはふと気付いてしまった。
一度、屋敷を抜け出してリシュテアに会いに行くところを父に見られた事がある。
その時はてっきり、何処に行くのか詰問されるのかと思ったのだが。
まるで何も見えなかったように無視された。
今思えば、あれはリシュテアに会いに行くのを黙認していたからなのかもしれない。
『そういえば、私、お義母様に会いに行っても、お父様に怒られた事が無い』
母にはシコタマ怒られるが。
父も、厳しい性格をしているので、こういう事は絶対に許さないと思うのだが。
『ほらやっぱり。多分、あの人はね?
自分で私の相手をするよりか、貴女に相手をさせた方がいい、とでも思ってるのよ?
ほんと、素直じゃないんだから。いいマリオン?
貴女はあの人みたいに捻くれた大人になっちゃ駄目だからね?』
『…頑張る』
『よし。それでこそ私の娘だ!』
くしゃくしゃと髪を乱雑に撫でられる。
髪の毛が無茶苦茶になってしまうが、この瞬間がマリオンにとっては一番幸せな時だった。
しかし、
『――げほっ! げはっ! げほげほっ!!』
『お義母様っ』
急に咳き込んだリシュテアに駆け寄る。
ぴしゃり、と口元を押さえた彼女の掌に紅い液体が飛び散った。
それが血であるとすぐに分かり、息を呑む。
『はっ――はぁっ…! ――ふふふ。参ったわね。
丈夫だけが取り柄だったのに。運が無かったのかしら。
妊娠中に、変な病気に掛かっちゃって』
『私、お医者様を呼んでくる!』
『待ってマリオン』
背中に掛かった声は思ったよりもずっと強く、はっきりしていた。
土気色をした顔は死人のよう。なのにオッドアイには誰よりも強い意志が宿っている。
『私、貴女にお願いがあるの。聞いてくれる?』
『うん』
『お腹のこの子、リオはリビディスタの屋敷に置いて欲しいの』
『え?』
『私は、ドルキに毛嫌いされてるから、屋敷に入れてもらえないけど。
リオは、あの人の娘でもあるから、まあ大丈夫なんじゃないかなって。
実は私の家の家訓に、娘には必ず家を引き継がせろ、ってのがあるんだけど。
正直その気はないのよ。娘に娼館の仕事を教えるのもアレだし。
それになんだかんだ言ってこの商売も楽じゃないしね。
稼ぎは不安定だし。変な病気は移されるし。ろくな事がないのよ。
私、この子にはそんな思いをさせたくないわ。
だから、リオはリビディスタに引き取ってもらって、立派なレディになってもらうの』
『でも、私の家は、』
『知ってるわ。かの名門リビディスタ。魔術と、剣のエリートを養成する武門の家柄。
でも大丈夫。リオにだって才能あるわ。あの人の血を受け継いでるもの。
それに私だって魔術使えるわよ?』
『え。うそ』
218 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:28:07 ID:O3sWphaW
『チャームだけね♪』
『…なるほど』』
からからと笑うリシュテアを見ているとさっきまで血反吐を吐いていたとは思えない。
けれど彼女に救う病魔は、確実にその命を蝕んでいた。
『マリオン。私、長くないかも知れない』
『え?』
『自分の体だしね。分かるの。もう、ぎりぎりよ。
でも、安心して。この子だけは、産んでみせる。それまで、絶対死なない。
ええ。死んでやるもんですか』
『――絶対死ぬみたいに言わないで。私、お義母様がいなくなったらっ』
『ふふふ。マリオンは甘えんぼね。でも貴女もうお姉さんなのよ? しっかりしないと』
『うん…』
『いい子ね。この子も。貴女が守るのよ?
私の娘というだけで、この子はきっと辛い目に遭ってしまうと思うから。
だからこの子が一人前になるまでは、貴女が守ってあげるの。
お姉さんである貴女が、ね? 約束出来るかしら?』
『うん。約束する。リオは、私が守る』
『そう。じゃあ指切りしよう?』
『何それ?』
『ああ。私の家に古くから伝わる――まじないみたいなものよ?』
『どうするの?』
『こう、小指同士を絡めて、呪文を唱えるの。二人一緒にね』
『呪文? どんな?』
『教えてあげる』
ゆーびきーりげーんまーん。
うーそつーいたーら針千本のーます。
『指切った♪』
『指切った』
じっと自分の小指を見詰めた。
リシュテアの血に触れて、紅く穢れた小さな指を。
『――指切ったのに痛くないよ?』
『これをした人たちは皆そう言うわ♪』
『針千本も飲んだら死んじゃうよ?』
『それは約束を破ったら。破らなければ大丈夫よ』
『…がくがくぶるぶる。私はお義母様に脅迫されている』
『あはははっ。そんな事無いわよ。そんな事しなくても、貴女は約束を守ってくれるもの』
だってマリオンは優しい子だから。
だから、お願い。
リオを。私の娘を。どうか守ってあげて。
それから一週間後。
リオは無事誕生し、リシュテアは死んだ。
***
時は戻って。リオが淫魔として覚醒した直前の出来事である。
マリオン=リビディスタは我が家の門をくぐった。
ヘスペリスとして王都に着任してからおよそ二年。
今も、アネモネ追跡の任務の途中だが――図らずとも久しぶりの帰郷となった。
「帰ってきた」
屋敷の大きな門には見慣れたレリーフが描かれている。
筋骨隆々とした男が右手と左手に剣を携え、その背後に幾本の剣を突き刺さっている――
最強の戦士、剣神アレスの肖像だ。
219 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:29:37 ID:O3sWphaW
それを眺めていると、里帰りした、という気分になってくる。
「っ!? マリオン様!?」
「お勤めご苦労様」
「はっ! 恐縮です!」
武装した見張りの門番二人に労いの言葉を掛けると、敬礼と羨望の眼差しが返ってきた。
歳なら自分よりも三つほど上に見えるが、彼らからすれば自分は有名人だ。
この顔も、名前も、肩書きも、全て知っているだろう。
だからこそ彼らの、まるで女神でも見ているような視線が少し恥ずかしい。
「――本物だ。本物のマリオン様だ!」
「なんというか、こう。気品というかオーラが溢れ出ているようだったなあ」
「俺、下っ端だけど、この仕事やってて良かった、って思う」
「ああ、俺もだ」
背後から聞こえる門番二人の会話を聞いていると背筋が痒くなってきた。
頬が赤らんでいるのが自分でも分かる。
(しっかりしなさい私)
久しぶりの里帰りとは言え、両親は二人とも厳格な人物だ。
へらへらしていたら何を言われるか分かったものではない。気合を入れないと。
だがそれよりも先に、する事があった。
(リオに会わないと)
この世でたった一人の大切な妹。
マリオンがリビディスタを出たのは王都で成果を上げて、両親に一人前と認めて貰う為だ。
そしてその暁には、リオを引き渡してもらい、二人で王都で住むつもりだった。
実際王都でヘスペリスとして活躍し、今では十分な蓄えがある。
リオと二人で生活するだけなら何の問題も無い。
今日は両親にその事を報告しようとも思っていたのだ。
ただ少し心配だったのは、この屋敷に残してきたリオ本人の事だ。
母親のリシュテアが妊娠した直後に彼女は病に掛かった。
しかもこの地で取れる薬草では治癒不可な珍しい病だ。
金に物を言わせて薬を取り寄せる事も出来た。
だが、それでは母体への負担が掛かり過ぎ、結果的にお腹の子供も死んでしまう。
故に特効薬は使えなかった。
そして大した薬も使えなかった彼女の症状は次第に悪化し、体力をすり減らし。
リオを生んでからすぐに他界した。
しかも問題はそれだけではない。
病を患っていた間に出産した事で、娘のリオは先天的な虚弱体質になってしまった。
武芸の家リビディスタに、病弱な妾の子がいる。
魔力感知の結果、リオに魔術師の才能が無いと判明した事が、状況をさらに悪くした。
(正直、私は少し信じられないけど)
リシュテアにはチャーム程度の魔術ならば使えたと言う。
その血を引くリオにもそれくらいの魔力はあると思うのだが。
能力としては戦士である父の血を受け継いでしまったのだろうか。
まあ、それは兎も角。リオは屋敷の中で完全に孤立してしまったである。
生前のリシュテアが懸念していた通りだった。
そしてそんな中に一人置いて王都に行ってしまったのは本当に申し訳ないと思っている。
だがそれも未来の試金石を稼ぐ為に必要な事だった。
それにここにはマリオン自ら声を掛け、雇ったメイドが居る。
リオ専属の世話係パセットだ。
彼女なら自分が居ない間もリオの面倒を見てくれる。
明るく、表裏の無い、とてもいい子だ。庶民の出だが、能力も高い。
きっとリオの友達になってくれる。
パセットがいるから、心置きなくこの家を出る事が出来た。
(リオ、もう少しだから)
リシュテアとの約束。リオを守る事。彼女の姉として。
その約束を、一時も忘れた事は無い。
(お義母様。お義母様との約束、もう少しで果たせそうです)
220 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:31:51 ID:O3sWphaW
「マリオン様!?」
屋敷の離れへと向かう途中、庭園でパセットの姿を見た。
リオの様子を聞こうかと思ったが――どうにも様子がおかしい。
息を切らし、顔は蒼褪めて、あの人懐っこい笑顔が不安と狼狽で歪んでいる。
嫌な予感がした。
あのパセットがこんな表情をしているなんて、ただ事ではない。
「どうしたの?」
悠長に挨拶をしている状況ではないらしい。単刀直入に尋ねた。
嫌な予感は、的中した。
「リオっちが、居なくなったんです!」
(居なくなった? 行方不明って事? 何で?)
「どういう事?」
「昨日の夜までは確かに居たんです! お昼頃に起こしてっ、いつもみたいにふざけて!
でも、気分が悪い、ってリオっちに追い出されて!
でもでもっ、食べないと元気にならないから、夜に、様子見ついでに食事を持って行って!
その時は確かに居たんです! でもっ、でもっ、今日目が覚めて部屋に行ったら!
もぬけの空で! 何で! どうしてっ!?」
(どうして、ってそんなのこっちが聞きたい)
パセットのいう事を聞いていると徐々に苛々が募ってきた。
行方不明? 追い出された? 何だそれは?
「役立たず」
「ひっ! ご、ごめんなさい! マリオン様っ」
「ごめんさないじゃ済まない。何の為に貴女を雇ったと、」
そこまで言って、ふと、パセットがぽろぽろと涙を流している事に気付いた。
そうだ。リオが突然居なくなってショックを受けたのはパセットも同じ。
それもリオが物心付いた時からずっと傍に居たのだ。
パセットとリオの関係は主従というよりも友達のそれに近い。
友達のリオが突然居なくなって、一番悲しい思いをしているのは誰だ。
「ごめんなさい。ちょっと言い過ぎた」
すぐ頭に血が上ってしまうのは自分の悪いところだ。
パセットはずっと自分の代わりにリオの面倒を見てくれた子だ。
感謝はしても、泣かすような事をしてはいけない。
(冷静にならないと…)
「パセット。屋敷の中はもう探した?」
「ぐすっ…ひくっ…それが、お屋敷の中には、どこにも居なくてっ」
「リオの体ならそんな遠くに行けない筈。手分けして探そう」
言ってからある事に気付く。
屋敷の中が静か過ぎるのだ。リビディスタの令嬢が行方不明になったというのに。
そう言えば門番の青年二人も、暢気なものだった。何かおかしい。
「リオが居なくなった事、お父様とお母様には報告した?」
「しました! でも、奥様は『反抗期なのでしょう。放っておきなさい』って!
旦那様は旦那様で『探す必要は無い』の一点張りでっ。おかしいですよっ。
リオっち。体弱いから、家出なんて出来るわけないのに!」
パセットの言葉の意味を考える。
母親は、まあいい。元々リオの事を毛嫌いしていた彼女の事だ。
悩みの種が消えてくれた、程度にしか思っていないのだろう。
だが父親の、この淡白な反応はどういう事だ?
探す必要は無い? ドルキと同じく、放っておけ、という事か?
仮にも自分の娘が行方不明になったのに心配ではないのだろうか?
(……どっちにしろ、冷たい事には変わりない)
「それだけじゃないんです!
旦那様っ、リオっちが居なくなった事、誰にも口外するなってっ。
余計な事はするなってっ!
それじゃまるで『探すな』って言ってるみたいじゃないですか!」
「…何それ」
それでは誰かがリオを保護する可能性すら消えてしまう。
リオが家に戻って来なければ、野垂れ死ぬ可能性すらある。
まあ、あの外見だ。屋敷の者が見つければ保護するだろうが。
221 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:33:55 ID:O3sWphaW
心配な事には変わりない。
『あの人、ちゃんと優しいところもあるもの』
ふと、古い記憶から、尊敬するリシュテアの言葉を掘り起こした。
父は、見た目によらず優しい人間だと。
厳しく、感情を出さない人間だがそれは単に不器用なだけだと。
だがその言葉も、今の状況ではなんの説得力も無かった。
(お義母様。お父様は貴女が思っているよりも酷い人だった)
「パセット。貴女は屋敷の外を探して。
屋敷に残ってる門下生に声を掛けて、一緒に探すの」
「え、でもそれじゃ旦那様の言いつけを破る事に…」
「構わない。責任は私が取る。『マリオン様の命令だ』って言えばいいから」
「わ、分かりました! パセットは命に代えてもリオっちを見つけます!」
「危ない事はしなくていいから。…私は森を探してくる」
「森って、街の外ですか!? どうしてです!?」
「最悪の事態も、考えておかないと」
もし、何かしらの理由でアレエスの街を出てしまったら。
この城壁の向こう側は魔物の巣窟だ。虚弱体質のリオに生き延びる術は無い。
そして屋敷の北側には、森へと続く訓練用の出入り口があるのだ。
そこからならばリオ単身でも外に出る事が出来る。
(まさか…お母様、この事を想定して、結界の性質を…)
アレエスの街を取り囲む結界は外に出るのは自由だが中に入る事は出来ない。
これは表向き、門下生達の為という事になっているが。
自殺願望を持った者を――リオを後押しする為、と解釈する事も出来る。
「それじゃ私は行く。あんまり無理をしないで」
「あ――お気遣いありがとうございます!
マリオン様もどうかお気をつけて!」
「ん」
返事と同時に転移魔術を起動させる。
今は一秒でも時間が惜しい。歩いて移動する暇は無かった。
転移先はここから一番近い、城壁の勝手口。
リオが街を出るなら、そこを使う確立が高い。
「待ってて。リオ」
足元から溢れる転移の光が、マリオンの体を包み込んだ。
***
アレエスの街を守る城壁は巨大だ。
周囲の森には凶悪な魔物達が潜んでおり、それらから街を守る為には当然の事だ。
城壁は、高く、分厚い。
見張り台は当然として、ある程度の居住空間すらあった。
しかし大きくは無い。二、三人が談笑したり、本を読むくらいのスペースのものだ。
大抵の場合、此処には結界術士と呼ばれる魔術師が常駐している。
彼らは街を守る結界に干渉出来る者達だ。
森へ訓練に出かけた戦士達を迎え入れる為、結界を解除する事が仕事である。
また、有事の際には結界の強度を上昇させ、敵の侵入を防ぐ役割も担っていた。
しかし基本的に彼ら彼女達は暇人である。
仕事量が圧倒的に少ないからだ。
だからする事と言えば同じ結界術士同士で愚痴を零し合うか、勤勉に励むくらいだ。
だがこの日は違った。
「リオ様の姿を見かけませんでしたか?」
居住空間にて下っ端魔術師の前に現れたのは美しい女だ。
緩やかにウェーブのかかった銀髪。
しなやかな体躯を包むのは蒼の法衣だ。肩の部分には紋章が張られいる。
杖と、それに灯る8つの星。これは魔術師としての位を表すエンブレムだ。
222 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:35:27 ID:O3sWphaW
見習いなら杖のみ。見習いを卒業でその杖に光が一つ灯る。
そしてその後も、魔物を退治したり、称号持ちの人物の推薦にて光は一つずつ増えていく。
光の数は最大で十二。それ以上は固有の称号を得られる事になる。
ドルキの『メディア』や、グリーズの『アレス』がそれに当たる。
と言えばリビディスタの創設者であるこの二人がどれだけ強いか想像も容易い筈だ。
そして星無しが当たり前の結界魔術師達にとって、目の前の女魔術師も相当な実力だった。
彼女の名前はクロト=ラプキンズ
ドルキも一目置いている、優秀な魔術師だ。今年で二十歳を迎えた。
自分に厳しく、他人に優しくが彼女のスタンス。
それに加え、歳の割には幼い顔立ちや、ぱっちりとした瞳。
可愛らしさと可憐さを併せ持ったその容姿に惹かれる者も多い。
おっとりとして純情。同性にも異性にも人気のある人格者った。
そんな彼女がこのような、出来損ない達の吹き溜まりに来た事には勿論理由がある。
「リオ様ですか? いえ、我々は見ていません」
「そうですか……」
(やっぱり、そう簡単には見つからない…か…)
クロトはリビディスタの長であるグリーズからある命を受けていた。
行方不明になった娘を探して欲しい、と。
ただしこれには条件があった。
一つ。彼女が居なくなった事を出来るだけ口外しない事。
二つ。発見した場合は速やかに保護する事。
三つ。保護した場合。屋敷には連れ戻さず所定の場所へと護送する事。
以上である。尚、所定の場所と言うのは山を一つ越えた隣街だ。
そしてこの命令は他にも何人かの優秀な人員に与えているらしい。
実に奇妙な話だった。
リビディスタの門下生全員で事に当たればすぐにでも見つかる筈なのに、そうしない。
条件も、隠密行動を前提としたものばかり。
屋敷にいる誰かにリオの捜索を勘付かれたくない――そんな風に思える。
勿論理由を聞いた。返答は得られなかったが、恐らく込み入った事情なのだろう。
ドルキとリオの関係はリビディスタに居るものなら誰でも知っている。
それに加えてグリーズとリオの近親相姦疑惑。
恐らく首を突っ込んではいけない話なのだろう。
(近親相姦なんて…只の噂だと思うんだけど…)
実のところ、クロトはグリーズに恋愛感情を抱いていた。
彼の強さに惚れこんだのもある。が、彼が時折見せる優しさに心を打たれたのだ。
訓練を終えた後、極稀に労いの品が門下生宛てに届けられている事がある。
それがグリーズからの贈り物だという事に、クロトは気付いていた。
ポーカーフェイスの下に不器用な優しさが隠れているのだ、と。
そのグリーズからの直々の命。なんとしても果たさなければならない。
「そのリオ様が、どうかされたのですか?」
「…いえ。なんでもありません」
愛想笑いで結界術士達を誤魔化す。
ふわふわとした優しい笑みに結界術士達がだらしなく頬を緩める。
しかしクロト本人は心中は穏やかでなかった。
探査魔術を駆使して足取りを何とか追ってきたが、リオはどうやら街の中にはいない。
(森の中に入った可能性が高い…でも、そうなると…)
生存している確率も低いだろう。病弱の少女が一人、生きていける場所ではない。
急がなければならない。いっその事、この者達にも捜索を手伝わせようか。
グリーズを裏切る事になるが、娘が死ぬよりかはいいだろう。
クロトは訝しげな表情を浮かべる結界術士達を見渡し、
「…あの、実は貴方達に、」
どん。大きな音が外から響いた。
「…っ!? 何だ!?」
結界術士達が血相を変える。
どうやら結界になんらかの異常があるようだ。さっきの音と何か関係があるのだろうか。
「結界術士っ! 結界を解けっ! 早く!」
223 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:37:12 ID:O3sWphaW
階段の上から見張り台の怒声が響いた。
「女の子が魔物に追われてる!」
考えるよりも先に体が動いていた。
「ごめんなさい!」
二人の結界術士を押し退け、城壁の外へと通じる通用門を開く。
視界が開け、眼前に乱立する木々が現れる。
門から三歩ほど離れた位置に薄い光の膜があり、それがアレエスを守る結界である。
結界の外側には騎士甲冑に身を包んだ一人の中年男性が仰向けに倒れていた。
外傷は無い。恐らく結界に向けて投げつけられてしまったのだろう。気絶しているだけだ。
そして――
「誰かぁ! 誰か助けて下さい!」
森の中からこちらへと駆けてくるのは一人の少女。
遠目からでも分かる鮮やかな桃色の髪。そして赤と蒼のオッドアイ。
見違える筈も無い。探し人のリオだ。
クロトは駆け出した。加速の魔術を使い一息で彼女の元へと踏み込む。
「…!? 貴女はっ」
「お話は後にしましょう?」
ゴシックロリータの衣装を身に纏った小さな体を抱きかかえ、結界を越える。
術士達がきちんと仕事をしたらしく、すんなりと城壁の中に入る事が出来た。
「暫くここに居て下さいね。外に居る騎士の方を連れてきますから」
「は、はいっ、気をつけて下さいっ」
(怖い目に遭っている筈なのに、人を気遣う事が出来るんですね)
流石、グリーズの娘だと思った。
だが悠長にもしていられない。魔物はそこまで迫っている。近くに気配がするからだ。
まるですぐ傍にいるように。
クロトは再び門を開け、外に飛び出す。
(…あ…れ…?)
そして違和感に気付いた。魔物の姿が見当たらないのだ。気配は近くにあるというのに。
まあいい。取り敢えずは騎士を結界内に運び込めればいい。
結界を越えれば魔物にはどちらにしろ手は出せないのだから。
クロトは男を担ぎ上げようとし――あまりの重さにすぐに諦めた。
大人一人の重量に加えて騎士の甲冑だ、女の細腕では到底持ち上げられない。
引きずって運ぼうかとも思ったがそれも無理だった。
「見張り番の方! この方を運んでいただけませんか!?」
「あっ――は、はいっ、ただ今参ります!」
見張り台の男に声を掛けるとすぐに彼は応じてくれた。
これで、取り敢えずは当面の問題はクリア、か。
警戒はしながらも男の到着を待つ。
魔物の気配は未だに近くにあるが、攻めあぐねているか襲い掛かってはこない。
臆病な性格なのだろうか。
(……でも、この人を倒している)
仰向けになった男の甲冑は強烈な打撃を受けたように腹部がへこんでいる。
パワー型のモンスターに攻撃されて、吹き飛ばされたのだろう。
ミノタウロスか。サイクロプスか。その辺りだろうか。
そこでふと気付いた。
「魔物の姿を、誰も見てない?」
見張り番の男は言った、女の子が魔物に追われている、と。
襲われている、ではなく、追われている、だ。
そうだ。誰でも、必死の形相で女の子が走っていれば魔物に追われていると思い込む。
この森ならなお更。
クロトは探索魔術を起動させた。
地面に青白い魔術陣が浮かび上がると、それを起点に魔力の波紋が広がっていく。
これは周囲の魔物や人間を発見する為の魔術。
自分を中心に、魔物なら赤で、人間なら青の光点として脳裏に描かれるのだ。
224 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:38:59 ID:O3sWphaW
(魔物の姿を誰も見てないらなら、森の中から騎士の人を投げつけた事になる)
「――あれ…?」
ところが雑木林の向こうに魔物の反応を示す赤い光点は無い。
もっと奥に行けば反応はあるだろう。
防御もそうだが探索魔術はクロトの十八番だ。その効果範囲は半径三キロにも及ぶ。
魔力の波紋はゆっくりと森の中へと広がっていき、
そこでふと気付いた。
結界の内側に、赤い光点が一つある事に。
「えっ!? えぇ!? 嘘っ」
探索魔術を解除して自分が今し方出て来た門を見据える。
魔物が、侵入していた? いつのまに?
(そんなぁ、ありえないです。
さっき私が飛び出したタイミングで、魔物が結界内に入る事なんて出来ない)
そこまで考えて、ふと気付いた。
さっき自分が中に招き入れたのは『リオにしか見えない』少女一人だという事に。
「…まさか」
嫌な予感が背中を走った。ひょっとしたら自分はとんでもないミスを犯したのではないか。
クロトは騎士を放置し、再び門をくぐった。
重い、鋼のドアを手前に引き、空ける。
「っ!? これって!?」
城壁の内側に設けられた居住スペース。
その五メートル四方程度の空間内は、黒い霧のようなものが充満していた。
「おかえりなさい。魔術師のお姉さん」
笑顔で迎えたのは黒いゴスロリ服を着たリオだ。
そして彼女の傍らには結界術士が二人、それに見張り台の男が一人倒れ伏している。
間違いない。魔物の気配はこの少女、リオから放たれていた。
それを認めた瞬間。意識が研ぎ澄まされる。
普段はおっとりとしたクロトだが、これでも幾度か死線を潜り抜けた一流の魔術師だ。
部屋に充満している黒いガスは毒性のもの、と推測し、即座に防御魔術を展開する。
「ふふふ。凄いなぁ。一瞬で的確な判断をしてる。八つ星ともなると伊達じゃないんですね」
「リオ様、これは…一体――いえ、貴女は本当にリオ様なんですか?」
探索魔術では間違いなく魔物を示す赤い光点がそこにあった。
この状況下では、疑いようが無い。
「? ああ。魔物さんがリオ=リビディスタに化けてると思っているですね。
でもそれは外れ。私は、リオ=リビディスタ本人。
それよりも私はお姉さんの事が聞きたいな。私の事、探している様子だったし」
正直に話すべきか少し悩んだ。目の前の少女は自分がリオ本人だと主張している。
だがこの状況でそれを信じるべきではない。
(でも、もし本当に本人なら…事情を知ってもらった方がいいんじゃ?)
そしてもしも偽者なら――その時は倒してしまえばいいだけの話だ。
「良かった♪ お姉さん話す気になってくれたみたい♪」
(…え? あれ? 今、私顔に出てた?)
思考を先読みされている気がした。
「私はクロト=ラプキンズ。ドルキ様の門下生です。
グリーズ様より特命を受けて、リオ様を保護しに来ました」
「――え?」
少女は目を見開き、信じられない、と言った表情を浮かべた。
その反応に、むしろこちらが困惑してしまう。
自分がした事を分かっているなら、親が助けを寄越す事を想像出来る筈だ。
だがリオは、まるで助けられる事を想定していなかったような様子である。
「助ける? 父様が? 私を?」
「そうですよ? 私の他にも何名が腕を立つ者を選んでいたようです。全員で十名程でした。
大勢で探した方が効率が良いと思いますけど…きっと何か理由があるのでしょうね」
「――他の人に見つからないように、とか?」
225 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:40:47 ID:O3sWphaW
「え、ええ。この事は口外しないようにと指示を受けましたから。
内密に事を運ぶ理由があったのだと思います」
「そっか――やっぱりそうなんだ…」
リオは肩を落とし、俯いている。
安心しているのか、それとも落胆しているのか表情が読めない。
だが精神的に不安定になっているのは確かな筈だ。
クロトは彼女を励ますように言葉を掛ける。
「リオ様の身に何があったのか私は知りません。
ドルキ様との間柄も重々承知しています。
ですが――ですけど…今一度グリーズ様とお話をしてみればいかかですか?」
余計なお世話なのかもしれないが、クロトはリオを連れて帰る気だった。
父と娘がこんな形で離れ離れになるのはあんまりだと思ったからである。
「ほんとに、何も知らない」
「え?」
リオが顔を上げる。
恐ろしい程、明るい顔をしていた。
笑顔の裏側に狂気が垣間見えた気がして、背筋に悪寒が走る。
「だって今帰ったら、父様と義母様に殺されちゃうから♪」
「…そんな…何を仰っているのですかっ」
「信じられない? でもねクロトさん。
私は、父様と義母様が二人で私を殺そう、っていう話をしているのを聞いたの。
しかも友達のパセットを利用してね? だから屋敷を出たんだよ?」
「そんな事、信じられません!」
ドルキに限っては、まあ百歩譲ってありえるとしよう。
だがグリーズに関しては娘殺しの疑いなど、認められる筈もない。
「よりにもよってあのグリーズ様が、リオ様を…! きっと何かの間違いです!」
「? クロトさん、やけに父様の肩を持つね? どうして?」
「そ、それは…っ」
お慕いしているから、そう正直に話せばどれだけ楽か。
だがグリーズは妻子持ちで、リビディスタ家の長だ。
この恋心が絶対に叶わない事を知っている。
そしてそれを他人に打ち明ける事も、クロトには出来なかった。
「あの人は、本当は優しい方なんです! 少し不器用な、」
「あははははははははははは!!!」
クロトの言い訳は、リオの狂った哄笑に両断された。
リオは、可笑しくて可笑しくて堪らない、と言った様子で腹を抱えて笑う。
それが不気味であると同時に、腹が立つ。
グリーズへの想いを、侮辱された気がしたのだ。
「一体何がおかしいんですかっ」
「あはははっ! ごめ、ごめんなさいっ! ふふふっ…! あはははっ!
そっかっ、そっかぁっ。そういう事かぁっ! ふふふっ。成る程ねぇ。
それなら父様を擁護したくもなるよね?」
「…何を、言って、」
「だってクロトさん、好きなんでしょ? 父様の事が?」
図星を言い当てられて口が『あ』の形で固まる。
(ど、どうして!? 私、そんなに分かり易いの!?)
「クロトさん。幸せだね。才能があって。美人で。性格もいい。人気もあるし。
でも一番幸せな事は『好きな人の汚い所を見ていない』事だと思う」
「ど、どういう意味ですかっ」
「一つ、いい事を教えてあげるね?
屋敷の噂、知っているよね? 私が父様とエッチしている、っていう」
「え、エッ……だ、駄目ですリオ様! 仮にもリビディスタの令嬢ともあろうお方が!
そんな卑猥な言葉を使っては駄目ですぅ!」
「…うわ…クロトさん…純情……皆に人気があるのもしょうがないね。
ふふふ♪ 妬ましいな♪ 羨ましいな♪ その人気、私にも分けてくれればいいのに♪」
226 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:42:06 ID:O3sWphaW
「ちゃ、茶化さないで下さい!」
「割と本気なんだけど……まあいっか♪
そう、それでね。さっきの話の続き。あの噂、ほんとだから」
あっけらかんと衝撃の事実を告白され、今度こそ言葉を失った。
ふらふらと後ずさり、鼠色の壁面に背中を押付ける。
「…そんな……ありえません…」
実の娘を強姦する? そんな馬鹿な事があってたまるか。
あの人に限って、そんな愚かな事をする筈がない。
「クロトさんってば乙女なんだね♪ 頭の中、綺麗な父様ばっかり。
本当の父様の事、何も知らないのにね」
くすり、と目の前の少女が笑った。
人の闇を、穢れた部分を知ってしまった者、特有の笑みだ。
甘い蜜の味を覚え、自らの欲望を、他人の不幸を求める者の笑みだ。
これが、若干十二歳の少女が浮かべる顔か? これでは堕落した大人と変わらない。
「ねえ? クロトさん? ベッドの上の父様は、凄いんだよ?」
「っ! な、なんですか、いきなりっ」
手を後ろ手に組んで、少女はゆっくりと近付いてくる。
暗い、濁った微笑を浮かべたまま。
「剣の訓練をする時も厳しいけど…ベッドの上じゃね、父様は獣なの」
「こ、来ないで下さい!」
「ううん。きっと夜の父様がほんとの父様。
剣を持つ時は、自分を抑えているだけ。
一度でも欲望を開放すれば、あの人は悪魔になる。
嫌がる私を無理矢理犯して、」
「い、嫌ッ! 聞きたくない!」
「いう事を聞かなかったら叩かれるんだよ?
ふふふ。痛かったなぁ…おかげで私、どんどん体がエッチになっちゃった」
「そっ、そんなの嘘に決まってます!」
「それなのに義母様と結託して私を殺そうとするんだもの。
ふふふ。ほんとおかしい。そんなあの人に優しさなんてあるわけない」
ばじり。リオが伸ばした手が、クロトの防御魔術に弾かれた。
「痛っ…!」
火傷した時のように、慌ててリオが手を引っ込める。
クロトは防御と探索に秀でた魔術師だ。
彼女の使う防御魔術は効果が強く、巨人族の鉄拳すらも跳ね返す。
そうだ。大丈夫だ。彼女の言葉も、きっとこちらの動揺を誘う虚言だ。騙されるな。
そして防御魔術がある以上、目の前の少女に自分が倒される心配はない。
少し、冷静になってきた。
(結局、この女の子は一体何者? 何の目的でアレエスに侵入したの?)
「仮に、もし仮に貴女の言う事が本当だとします」
赤く腫れた手にふぅふぅと息を吹きかけて、そう言ってるのにぃ、と少女は呟いた。
「もしそうだとして。何の為にこの街に潜入したのですか?」
「……私はね。森の中である魔物さんに命を救われたの。
私はその魔物さんに恩返しがしたいだけ。そう、例えば――
この街を、アドニスの花で埋め尽くしたり、とかね?」
少女の瞳が、見開かれる。
瞳孔が猫目のように細まり、オッドアイの瞳が両方とも赤く染まった。
「ねえクロトさん?『リオのお願い。防御魔術を解いて』♪」
甘ったるい、猫撫で声が耳朶に響く。
人外の瞳に意識が吸い取られるような感覚した。
(これは…チャームの、魔術…っ)
完全なる不意打ちに、精神防御をする余裕が無かった。
物理障壁では防御不能の精神攻撃に、抵抗の意思が萎えていく。
彼女の言葉に、無条件で従いたくなってくる。
――気が付けば、防御魔術を解いていた。
「ありがとうクロトさん♪ 私、クロトさんの事大好き♪」
227 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:43:41 ID:O3sWphaW
「……っ!?」
抱き付かれ、唇を奪われた。
(私の、ファーストキス…、なのにっ…!)
それも唇を触れ合わせる、そんな生易しいものじゃない。
舌を差し入れ、涎を流し込まれ、ぐちゅぐちゅと攪拌される。
「ふは…ちゅっ。ちゅぅっ。クロト、さぁんっ♪ ちゅるるっ♪」
「――っ!? んんっー!?」
鼻先をくすぐる少女の吐息。唾液が混ざる卑猥な音。そして粘膜同士が擦れる感触。
そのどれもがとてつもなく甘い。特に少女の唾液。まるで蜂蜜のようだった。
官能的、背徳的な行為に心臓が早鐘を打つ。
だがその鼓動はどこか心地良く、まるで夢見心地の気分だ。
(力が…入らない…)
精気を吸われているのか。
濃厚なキスに心は昂ぶるのに、体に力が入らない。
「ちゅぅぅぅぅぅ♪ ――ぷはぁ♪ あー美味しかった♪」
最後に混ぜ合わさった二人分の唾液を啜り取られ、少女から解放される。
精気を吸って満足したのか桃髪の少女の肌はツヤツヤだ。
「これはもう必要ないかな♪」
部屋を満たす黒い霧が少女へと収束されていく。
と同時に渦巻き、彼女の体を包み込んだ。
黒い霧はゴシックロリータの衣服を卑猥に引き裂き、
黒いパンプスにドクロのアクセサリーを追加し、
彼女の桃色の髪先から、暗い紫色の髪を生やす。
さらに頭から猫耳を生やして、
ばさり。蝙蝠の翼が少女の背中から生え、はためいた。
「変身完了♪ どうクロトさん? この格好♪」
(…なんて…いやらしい格好…)
剥き出しの肩や、深いスリットからちらりと覗く内股。
下着を着けていないのか、すこし屈めば未成熟な割れ目が見えてしまいそうだ。
「ふふふ。ね? いやらしいでしょ?
リオはねぇ。森の中でアネモネさんとエッチして、魔物になっちゃったの。
どうもご先祖様が淫魔だったらしくて、先祖帰りしちゃった♪」
(そんな…事が…)
「あるみたい♪ だからぁ、リオは本物のリオだけどぉ、淫魔だから♪
エッチな事して精気を吸うのが生き甲斐なの♪
しかもぉ――んっ…」
はぁ…はぁ…と淫魔の少女は色っぽく息を荒げる。
もどかしげに太股を擦り合わせ、辺りに淫魔のフェロモンを撒き散らした。
少女の甘い体臭に、脳髄が痺れてくる。
「はぁ…♪ 私の子宮には、ん――はぁ…っ、アドニスの種が、植え付けられてて、
はぁっ、はあっ――あはっ♪ 成長してるっ♪ 子宮の中で、びくびくしてるよお♪
さっき、外のおじさんと、その仲間の人とも、沢山エッチしたから、育ってるんだぁ…♪」
左右にばっくりと割れたスカートを摘み、引き上げる。
毛も生えていないツルツルの性器が晒された。
だがそこは白っぽい愛液を流し、しとどに濡れそぼっている。
陰唇の内側が丸見えになるまで解れ、サーモンピンクの肉ビラがひくひくと蠢動していた。
普段ならそんなグロテスクでいやらしい同性の性器など、目を背けるだけだ。
だが淫魔に魅了された精神は、少女のドロドロの性器に見とれてしまう。
リオはそんなクロトの視線が気に入ったのかうっとりと顔を緩ませて、
「――あっ!? しきゅーっ、びくびくするよぉっ! アドニスが、育ってっ!
ああぁ! 芽に、なってるよぉ! にゃっ! あっ! あっ! 出てくる!
出てきちゃうっ! リオのドロドロおマンコからっ、アドニスの花、咲いちゃうっ!
咲くっ、あっ!? にゃっ! だめっ! イくっ、イって!
にゃはぁっ!? にゃっ、あ! あぁっ! にゃっ、んにゃぁぁぁぁぁぁああぁっ!!」
ずるずるずるずるっ!
少女がスカートを摘み上げたままガクガクと体を痙攣させた。
228 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:45:13 ID:O3sWphaW
イってしまったのだろう。顔をだらしなく弛緩させ、舌を垂らし、涎を零している。
そしてその少女の股間からは、肉の花が咲いた。
くちゃぁ、と音を立てて四つの花弁が上下左右に開く。
花弁の内側は陰唇のように粘液に濡れ、肉色の粘膜をてらてらと卑猥に輝かせていた。
そのあまりにも淫靡な光景にクロトは生唾を飲み込む。
「あはぁ♪ リオのおマンコから、お花咲いちゃったぁ♪」
淫魔の少女は絶頂の余韻を噛み締めているようだった。
「にゃぁん♪ これ、気持ちいい♪ 膣の内側が、ごりごりされてるぅ♪
お腹の内側からおチンポに犯されてるみたい♪」
(いやぁ…そんないやらしい言葉、使わないで下さいぃ…)
ドキドキ、してしまうから。
いつもは仲間達の猥談についていけず、一人蚊帳の外になるというのに。
少女の淫魔特有のフェロモン。アドニスの花から放たれる催淫香。
この二重の匂いに心がかき乱されてしまう。
「ふふふ。クロトさん? 我慢しないで? 自分に素直になろ?
エッチな気分になって、どうしようもないんでしょ?
リオはね、心が読めるから。そういうの分かっちゃうの」
成る程。会話をしていると考えが読まれていた気がしたのはそういう事か。
だが、だとしたら尚更この少女には歯が立たない。戦いようが、無い。
「そうそう。別にリオもクロトさんと戦う気なんて無いから。
リオはねぇ。クロトさんに気持ちよくなって欲しいの♪」
「……ぁっ」
ゆっくりと、壊れ物でも扱うように押し倒される。
蒼の法衣をシーツ代わりに石畳の上に敷き、そこにゆっくりと組み伏せられる。
抵抗する気力は無い。
只、何をされるのかは薄々感づいていたので、恥ずかしさに顔を背けるくらいは出来た。
「クロトさん可愛い♪ ネーアさんの気持ち、分かった気がする♪」
ネーアという人物が一体誰なのかを想像する前に、キスの嵐が降ってきた。
ちゅっ、ちゅっ、と頬左の項に、右の頬に、或いは唇に、時にはおでこに。
更にキスをされながら、服も脱がされる。
胸元の留め金を外され、法衣が左右に開く。
その下から現れたのはブラウスと、脛まで伸びるスカート。
淫魔はブラウスのボタンを手際良く外し、スカートの横側にある留め金も外す。
Eカップのブラとリボンの付いた白いショーツが曝け出された。
「いや…見ないで、下さい…」
下着姿を他人に見られている。そう思うと羞恥心で頭が茹で上がった。
いやいやと首を振るが自分では何をしているか理解していない。
晒された半裸の体は肉付きが良く、女性特有の丸みを帯びたラインを持っている。
胸も尻も成熟し『くびれ』もある。清純なイメージとは裏腹に艶かしい体だった。
「うわ…♪ クロトさん着痩せするタイプだったんだね♪
エッチな体してる♪ きっと父様も気に入ると思うよ♪」
(……え? グリーズ、様が?)
少し大きめの胸などはどちらかと言えば邪魔だった。
肩は凝るし、同性からはからかわれるし、男達からは下品な目で見られる。
青の法衣もこの体を隠す為に着ているようなものだ。
だが、愛しのグリーズはそんな体の方が喜ぶと言う。
「うん♪ でもね? クロトさんはもっと綺麗になれるよ?
そしたら父様、きっとクロトさんにメロメロになっちゃうね♪」
それは悪魔の囁きだった。
人間の弱みに付け込み、堕落させる。悪魔達の十八番。
普段ならそんな甘い言葉に騙される事はないだろう。
だが、
「ねぇ? クロトさん? 父様と一緒になりたいでしょ?
繋がりたいんでしょ? いいよ、リオがその願いを叶えてあげても?」
「あ、ああ…」
229 永久の果肉6 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/15(月) 18:47:17 ID:O3sWphaW
耳元で囁く淫魔の声が、心に染み渡ってくる。
抗い難い、甘ったるい悪魔の魔力が精神を冒す。
「でもその代わり、リオのお願いも聞いて欲しいの。
ね? どうする? 私のお願い、聞いてくれる?
聞いてくれたら、クロトさんの願いも叶えてあげる。
父様とずっとずっーと一緒に居させてあげる」
淫魔のチャームに毒された心では、誘惑を振り切る事が出来なかった。
「……私は…グリーズ様と…一緒に、なりたい…」
意思の光が消えた瞳に、邪悪に笑う少女が映る。
***
以上で六話終了です。
あ、そうだ忘れてました。
前回の投稿分、冒頭では第七話になってましたが第五話の間違いです。
プロット段階では七話だったのを、そのまま使ってしまったらしいです。
なんつーうっかりさん。細かいミスがほんと直らない。
ドウスレバインダ-。まあ性格なんでしょうけれどねぇ。
そして前回の感想を頂いた住人の方にも感謝感激雨あられです。
淫魔状態のリオは自分でもお気に入りです。
頭の中で常に誘惑してきやがる困ったちゃんですよ。
ちなみにシュトリの設定は四年間暖めてきたと言うよりただ単に使い回――ゲフンゲフン!
さて次回はリオとクロトの本格エッチです。
ここに来て新キャラかよ。みたいな?
次回以降もちらちら出番があります。エロ的な意味で。
おっとり純情娘が種子を植え付けられてエロエロ展開だ!
乱文失礼。今回はこの辺で失礼します。
それではまた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――ヨウジョバンザーイ。
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