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永久の果肉4
52 乙×風 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/01(月) 17:49:19 ID:HoCjqtG/
皆様お待たせしました。
永久の果肉、続きです。
しかし前回投稿分のレスを読ませてもらいますとロリコン変態紳士様がなんと多い事か。
話やキャラもそれなりに練り込んでくれるので感情移入してくれるのはほんと嬉しいです。
仕事のし甲斐もあるというものですな。
さて今回のお話ではエチ無しの予定でしたがほんのちょっと入れました。
シチュは『触手が刺さったままでピロートーク』。みたいな?
うん。一応NGワードも書いておきましょう。
(本番無し、微エロ、ピロートーク、ネタバレ過去話、糖分多め)
ネーアが過去話を語ります。
無限の果肉のおさらいと、その結末についてですね。
あわわ。こんな中途半端な形で終わらせてしまってほんと勿体無い事をしてしまった。
重ね重ね、皆様にはご迷惑をおかけします。
うん。前書きも長いですね。この辺りにしておきます。
では、ごゆっくりどうぞ。
以下本編で11レス消費します。
77 乙×風 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:42:44 ID:EDjw+FzK
あー。皆様、ご心配をおかけしました。乙×風です。
ちゃんとこれからも投下し続けますのでご安心下さい。
というか私のキャラがどうにも一人歩きしていますねw
私は只の幼女が好きな訳ではありません!
ヤンデレロリッ子。ロリババア。それにエロリっ子が好きなだけの只のおたくです!(キリッ
それはともかく。先日のようなサイバーテロはもうこりごりですな。
タイミングも悪かったですが……なんで前書きだけ投下出来たのか不思議です。
お陰で図らずとも皆様に対して壮絶な焦らしプレイをw
何やら今週の土曜日に第二波があるとかないとか。どれだけ暇なんでしょう。
まあ、愚痴っても仕方ないですね。
ここから先が本編となります。NGワード等は月曜日のレスにて確認下さいませ。
ではごゆるりと。
78 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:45:07 ID:EDjw+FzK
第四話 血の秘密
激しい性交の直後、ネーアは後悔していた。
(や、やっちゃったぁっ)
「あたしの馬鹿、馬鹿っ、やりすぎよぉっ」
白目を剥いて気絶しているリオを見下ろしながら、ネーアは頭を抱えていた。
よほど具合が良かったのだろう。
少女は潮とか尿とか精液とか愛液とか、諸々の体液を結合部から噴出している。
それを美味しそうだなぁ、と見詰めて――顔を振って邪念を払った。
「反省しなさいよあたし…」
(うわもう自己嫌悪で死にたいわ)
病弱な人間の娘をどれだけ徹底的に陵辱すれば気が済むのだ。
いや、でもリオに限っては普通の女の子と一線を画していた、というか。
父親の調教のせいか、もう、兎に角エロかった。
(人間じゃなくてサキュバスか何かじゃないのこの娘?)
当人の話を聞く限り父親も母親も人間のようだが。
ネーアはさっきリオを犯しながら一瞬背筋に冷たいものをが走ったのだ。
スイッチが切り替わってまるで別人のように、淫乱に豹変したリオ。
フェラをした直後と同じだ。この娘は何か一定の条件で、性格が反転している。
気がする。気がするだけ?
(でも、一瞬、この娘、瞳の色が変わったような?)
紅と蒼のオッドアイが、両方とも血のような真紅に変わった気がする。
「まあ、あんまり考えてもしょうがないわよね」
今は目下、マグロ状態になってしまったリオの安否が心配だ。
体に相当な負担が掛かった筈だ。
フェラの時飲ませた蜜は、こんな虚弱な娘に種付けをする為に、滋養効果があるものだが。
一体どれほど効いているのか。
これでもし死んだりしたら夢見が悪くなるなんてレベルの話じゃない。
一生もののトラウマになりそうだ。
(ああ、それにしても。
気絶してるのにリオのアソコッたら今でもキュウキュウ締め付けて、たまんないわ)
「ってだから自重しなさいあたし」
これ以上負担を掛けるのも可哀想だ。
種子の定着を助長する為にも生殖器で子宮に蓋をした方がいいのだが、今は抜いておこう。
「――ぬいちゃ、や、れすぅ…」
「り、リオ!?」
呂律の回らない声が耳朶に沁み込んだ。
うっすらと開いた瞼の下のオッドアイが、こちらを見詰めていた。
大した体力だ。あんなハードプレイの後、すぐに喋れるようになるなんて。
虚弱体質とか信じられない。
「貴女、大丈夫なのっ?」
「んん…っ、気持ちよかったれふぅ…」
「いやそうじゃなくて」
(あー、そんな口が利けるなら大丈夫かしら)
なんだかどっと疲れた気がした。
最近体力的にも精神的にも疲労が絶えなかったし、種子を植え付けるのも消耗するのだ。
暫くは活動を控えた方がいいかもしれない。
「リオ。悪いけど少し体動かすわよ」
「ふえ? ――ぁにゃぁんっ」
小さな体に触手を巻きつけて持ち上げる。
雌しべの触手は突き刺さったままだ。
そのまま自分の胸へと抱き寄せて、徐々に体に巻きつけた触手の力を弱めていく。
すると当然、重力に引かれてリオの体は下降して、
「あっ!? にゃっ! あぁっ! ふかっ、いっ、よっ! あ、はぁっ…!」
花冠の中心部から真上へと生え出した雌しべ触手へと体重を預ける。
きゅうきゅうと敏感な触手が締め付けられて、うっとりとしてしまう。
「大丈夫。大丈夫よ、リオ」
はあ、と熱い吐息をリオの前髪に噴きかけながら、彼女の体をしっかりと抱き締めた。
79 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:46:41 ID:EDjw+FzK
幼子独特のぷにぷにとした感触が堪らない。久しぶりの人肌の温もりに心が癒される。
「はぁ、はぁっ、…んっ…ネーア、さん?」
「なぁに?」
「わたし、ネーアさんのものに、なったんですね」
「ええ、そう。種子はちゃんとリオの子宮に定着している。
あとは『栄養』をあげれば、立派なアドニスが咲くわ。
そうすれば、リオはあたしと同じになる」
もう、戻れないわよ。
桃色の髪を梳きながら、静かに付け足した。
「ネーアさん。私、後悔してませんから」
きゅう、とリオから抱きついてきた。
まるで赤子が母親に甘えるように。
いや、実際そうなのかもしれない。
誕生と共に母を失い義母から憎しみを受けて育った彼女は誰にも甘える事は出来なかった。
(あたしが、お母さんの代わりなのね)
まあ、それもいいだろう。
誰にも甘えられない孤独は『誰よりもこの自分が知っている』。
だからこそこの子を仲間にしようと思ったのだ。
あまりにも不遇な彼女を、自分と重ねて。
「あたしって、ひょっとして信頼されてる?」
冗談交じりの問い掛けだった。
リオが顔を上げる。どこまでも屈託のない、太陽のような笑顔がそこにあった。
「はいっ」
その余りにも真っ直ぐな表情に思わず顔を赤くしてそっぽを向く。
背中がむず痒いような、でも心地良いような、何だか複雑な気持ちだった。
本当に我ながら、人間臭い魔物だな、と思う。
「も、もう変な子ね。
酷い事ばっかりされてきたのに、そうそう簡単に誰かを信用出来るものなの?」
「ネーアさん、優しいから」
「…そうでもないわよ」
そうだ、優しいなら、後先考えずあんな陵辱まがいの性交など誰がするものか。
自分は魔物だ。本能の赴くまま女を犯して、種を植え付け、快楽を貪る化け物だ。
「覚えておきなさいリオ。人を止めたら、本能に抗えなくなるわ。
どれだけ理性を保っても、魔物としての衝動には逆らえないの。
例えそれが、大切なものを傷付ける事になってもね」
「私の事、心配してくれたんですか?」
「そりゃ、そうよ。病弱だ、ってきいてたから。
だからあたし、もっと優しくするつもりだったのに。それなのにあんなに激しくして。
本当、馬鹿よねあたし。最低だわ。ごめんなさいリオ」
「ほら、やっぱり優しいじゃないですか」
「え…?」
リオはずっと笑顔だった。
「私の事、気遣ってくれてる。
出会ったばかりなのに、家族みたいに、心配してくれる。
それに自分のした事を悔やんで、それにちゃんと謝ってくれました」
「…だってそれは、その、当然じゃないの…?」
「私の家族は、そうじゃなかったですから」
「そう……大変だったわね…」
「そうですけど、でも、おかげでこうしてネーアさんと出会う事が出来ました。
お義母さまに殺す、って言われなかったら、私達、出会う事もなかったと思うんです。
だから、お義母様にもお父様にも、少しだけ感謝してるんですよ」
あんまりにも健気だった。
誰だこんな子を殺すとか言う母親は。見つけていびり倒してやる。
父親もだ。オナホ触手で赤球が出るまで精を吸い尽くして裸に引ん剥いて逆さに吊るすぞ。
(それに比べてリオったらっ)
「ああんもう可愛い!!」
80 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:48:25 ID:EDjw+FzK
リオの可愛さに胸がきゅんきゅんした。
母性が疼いて猫可愛がりしたくなる。
というか、する。
「きゃ、ネ、ネーアさんっ?」
「可愛い! 可愛い! 可愛い!」
ちゅっ、ちゅっ、と顔にキスの雨を降らせる。
いやらしい口付けではない。あくまでじゃれあうように。
性的な欲求は種付けを行った事で随分大人しくなった。
それでも素面に戻ったリオはこんなキスでも顔を真っ赤にして俯くのだ。
『あうぅ…』とか言いながら。
それがまたとんでもなく可愛く思える。悶え殺す気だろうかこの娘は。
「んー。リオったらこのギャップが堪んないわね♪」
「え? ギャップ、って何ですか?」
「なぁに言ってるのよ。エッチの時なんかもうエロエロだったじゃない?
リオはHの時性格変わっちゃうのね♪」
「あ、あれはっ」
「『セックス気持ちいいよぉ!』とか叫んでたわよねぇ?」
「ちちちちちちちがいます!! あ、あれはっ」
「『触手チンポ、びくびいくしてるからぁ!』とかねぇ?」
「やあぁぁぁぁっ!! 言わないで下さい!! あれは私じゃありません!」
「そーいえば喘いでる時は『にゃーにゃーっ』って、まるで猫みたいだったし」
「ですからそれは…っ、その、つい言っちゃうんですよぉ…」
涙目になりながら弁解するリオに真にハートブレイク一歩手前。
お父様の時はこんなんじゃないのに、と弁明する姿が、もうっ、
「たまらないわぁ! このまま第二ラウンドいっちゃいましょう!?
っていうかするわ! 覚悟なさいリオ! アネモネの真髄見せてあげるわ!」
「いえあの流石に疲れたので今日はお休みさせて下さいー!?」
「あはははっ。冗談よ冗談。そこまで無理させられないって」
「もうっ、意地悪です、ネーアさん」
「ごめんごめん、謝るからさ。許してちょうだい。ね?」
頭を撫でてご機嫌を取る。胸元で、うー、と可愛らしい呻き声が上がる。
『……』
不意に会話が途切れた。
さらさらと、桃色の髪を梳く音が響く。
僅かにそよぐ風が木々を揺らし、虫達が美しい声を上げる。
夜の帳が下りた森に、静かで優しい音色が響いた。
二人の間に舞い降りた沈黙は、気まずい物ではない。
密着した互いの体温から優しさが伝わってくる。
出会ってものの一時間程度しか経っていないのに、二人には確かな絆がある。
それは先程、少女の腹に種子を植え付けた事で確固なものとなった。
「寒くない?」
「ん。平気ですよ。ネーアさん。あったかいですから」
「ふふ。ありがと」
再び沈黙。
このまま少し眠ってしまおうかと思ったが、一つ、気がかりな事があった。
リオの事だ。
セックスの時のあの豹変振り。先程は茶化したが、どうにも引っ掛かるのだ。
それに体液を飲ませたとはいえ情事への耐性の高さ。
瞳の色が変化したのも、気のせいでは無いかもしれない。
「…あ…っ」
「リオ? どうかしたの?」
「あの、その、なんか、お腹、じわあっ、って熱くなって…」
「種子が定着しているのよ。
神経とか、徐々に繋がっていくから、暫くはその感覚が続くわ。
悪いけど少し辛抱してちょうだい?」
「あ、はいっ」
子宮に入り込んだ種子が神経の根を下ろしているのだ。
下腹部が疼くのだろう。リオは触手と繋がったまま腰を揺すり始める。
81 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:50:20 ID:EDjw+FzK
「んっ…はぁっ…んんっ…」
(ちょっと辛そうね)
切なそうに吐息を吐くリオを見ながらどうしたものかと思案する。
そもそも普通なら種子の定着はもっと時間を掛けて行うはずだったような。
(――あ、ら? この子の魔力…上昇してる?)
ふと気付く。
エッチ前に比べて魔力が上昇しているのだ。
それは種子の定着と、彼女の子宮の疼きと同調するように徐々に。だが確実に。
アネモネと化せば魔力は上昇するが、ここまで劇的に変わるものではない。
(もしかしてこの子…)
頭の中である仮説が組みあがった。
成る程、これなら確かに性行為中の、あの豹変にも納得出来る。
「リオ。辛い?」
「はぁ…はぁっ…だい、丈夫です…」
「本当?」
体を少し離し、正面からリオと視線を交わせる。
少女の右目が、ゆっくりと赤と青に明滅していた。
「――疲れた顔をしてるわ。今日はもう寝ましょう?」
返事を待たずに、触手からガスを噴出させる。
アドニスの花本体から生成し、催眠効果を持ったガスだ。
リオが、きゃ、と僅かに驚いた声を上げる。
かと思うとすぐにトロン、とした表情になった。
「あ…私、まだまだ、ネーアさんと…お話、したいのに…。
私、ネーアさんの事、何にも知らない、のに…」
「そういえば、そうね。あたし、自分の事なーんにも話してないものね。
でもそれはまた今度にしましょう? 今は、ゆっくり休みなさい」
きゅ、とリオの顔を胸元に抱き寄せる。
それから丁寧に髪の毛を梳いてやった。
「……ネーア、さん……」
それだけで、この小さな女の子は眠ってしまった。
すーすーと可愛らしい寝息を立てている。
本当に可愛い子だ。
桃色の髪も。甘い匂いも。その仕草も。声も。オッドアイも。
他人を引き付けてやまない。
人間としての理性を残したままとはいえ、人外のネーアが、こうも魅了されたのだ。
彼女の魅力は天性のものだ。
そしてそれは恐らく彼女の母親から受け継いだものなのだろう。
「リオ。貴女、元からあたし達と同類なのかもしれないわよ…」
呟く声は、夜風に流れ、溶ける。
***
メイド達の朝は早い。
この日も、リオの世話係パセットは夜が白み始めると共に目を覚ます。
むくり、と身を起こすと欠伸と共に伸び。
「よっし」
両頬を軽く叩いて気合を入れるとベッドから飛び降りて身支度を開始。
鏡台の前で栗色の髪を梳き始める。
「あー。今日も頑固者ですなー」
パセットは癖毛持ちだ。
頭頂部から耳辺りに掛けて髪が外側へと跳ねる。
そのせいで、犬耳に見えなくもない髪形になってしまう。
「リオっちの髪はあんなにサラサラなのにねー。
ええい! 遺伝子の性能の差が外見の決定的差ではない事を、教えてやる!」
82 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:52:08 ID:EDjw+FzK
意地になって髪を触る。
ツインテール。ポニーテール。三つ編み。サイドテール。
(……うん。今日はツインテールな気分である)
「よしっ。パセットは可愛い!」
鏡の前で笑顔でサムズアップ。
自分でやってて空しくなってきた。
(リオっちはいいよねぇ。お母さん似で。パセットなんて明らかにお父さん似です。
この狸みたいな顔とかね!)
実際リオの母親を見た事は無いが少なくともこの屋敷に住む旦那様とは似ても似つかない。
あの桃色の髪も、オッドアイも、可愛い顔も母親から受け継いだものだろう。
そもそも体が弱いという時点で屈強な戦士である旦那様とは違う。
優秀な戦士の血を受け継いでいる筈なのだが。
「そーいえば最近リオっちのオッパイおっきくなってる気がするなー」
自分の方が二つ年上の筈だがリオの方が明らかに発育がいい気がする。
今日こそは脱がして確かめる気だった。主に触診で。
でも絶対リオの方が大きい自身がある。
(は!? これも遺伝子の差か!? おのれ遺伝子! 許すまじ遺伝子!
まあいいや。世の中、いろんな需要があるのさ。
貧相な体の方が好きな野郎にパセットは貰われるよ! きっと!)
「こっちの娘はちっちゃいぞー♪」
なんて意味不明な歌を歌いながら自室を出る。
すれ違う同僚のお姉さま方が珍獣でも見るような目付きでこちらを見るが気にも留めない。
それはパセットの人柄故だ。
兎に角前向きな性格なのである。多少の事があってもへこたれない。
だから最初、リビディスタの『汚点』とまで言われたリオの世話を押付けられた時。
やりがいのある仕事だと思ったのだ。
「昨日のご飯は食べたかなー♪」
晩御飯を抜いていたので夜食として軽いものを作ってこっそり置いていたのだ。
食べていてくれるとありがたい、というか嬉しい。
そう言えば昨日は大したおしゃべりも出来ずに追い出されてしまった。
実はたまにあるのだ。ああやって体を触ろうとすると情緒不安定になる事が。
昨日は特に酷かった気がするが、パセットの方は特に気にしていない。
あの日かー、しょうがないなー、程度にしか思ってないのだ。
「今日は、オッパイ揉ましてねー♪」
すれ違うお姉さま方の視線が突き刺さる。
勿論パセットは気にせず紅い絨毯の敷かれた廊下をもくもくと歩いた。
目指すは屋敷の離れ。屋敷の庭園の隅にある建物だ。
リオはそこで生活していた。
仮にもリビディスタの末娘である彼女が何故母屋で寝泊り出来ないのか。
それは奥様が腹違いの娘であるリオを嫌って隔離したから、というのがメイド達の見解だ。
そういえばこんな噂もある。
『旦那様が人目を忍んでリオ様と密会している』、と。
「旦那様はロリコンだー♪ っとととこれはマズイなー」
口ずさんでから慌てて周囲に人が居ないか確かめる。
離れへと続く中庭の道は清清しい朝の陽光が降り注ぐばかりで自分以外誰も居ない。
まあ、本当のところ。パセットはそれを只の噂としか思っていない。
というか自分の娘を手篭めにする父親なんて居るわけがないと思っている。
「ほんとだったらぶん殴るぞー? 旦那様ー♪」
その辺も今日、それとなく聞いてみようかな思った。
そして離れに到着。ドアをノックする。
「お嬢様。本日もご機嫌麗しゅうござんした!!」
無駄に声を大きく、無駄にテンションを上げ、意味不明な言葉遣いがパセット流の挨拶だ。 更に脳内で勝手に色々シチュエーションを捏造して盛り上げる。
「入るよー? 踏み込むよー? 何!? 着替え中だと!? ならば尚の事ッ!」
ばたんと蝶番が軋むほど音を立てて入り口を開く。
83 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:53:51 ID:EDjw+FzK
「おはようございました!!!」
静寂が、パセットを迎えた。
「ありゃ? リオっち?」
そこにはもぬけの殻になったベッドと。
料理と共にひっくり返された銀食器しかない。
その光景を見て、パセットの脳は一つの結論に達した。
「分かったかくれんぼだ!」
(ほっほーう。体力では敵わないと思って知的戦術で勝負を挑む気だね?)
よろしい。ならばかくれんぼだ。
「先ずはベッドの下!」
居ない。
「んじゃクローゼットの中!」
居ない。
「むう。一筋縄ではいかないとな? そうこなくては遊び甲斐が無いというもの!
パセットも負けず嫌いだからね! 頑張って見つけるよ!」
再びリオの捜索開始。
と言っても離れ自体は小さな建物だ。
親を失ったリオがリビディスタに引き取られる際、納屋であった所を改装したのだ。
故に大きさも四メートル四方の部屋が二つ連なっているだけ。
片方は寝室、もう片方は書籍だ。
厠も風呂も、母屋までいかなければならない。全く不自由なものだ。
兎も角そういうわけで。
パセットは薄々気付いていた。
ここには隠れる所など無いも同然。
だがそれを認めたくは無かった。
空元気も元気と言う言葉に従い、離れの中を隅から隅まで探して。
「リオっち…いい加減出てきてよ…もう、パセットの負けでいいからさ…」
部屋の中をリオの着替えや書籍で散らかし、部屋の真ん中で力無く尻餅を付く。
見当たらない。こんな朝早くから一体何処に行ったのだ。
「……うんっ! 分かった! きっとトイレだな!」
都合の良い思考回路はとことん前向きに考える。
(だったら仕方が無いなあ。よしっ。部屋の中に隠れて帰ってきた所を驚かす!
無駄な体力を使わせた罰だ! どさくさに紛れてオッパイも揉む! 揉みまくる!)
「はーやく帰ってこないかなー♪」
だが、いつまで待っても、部屋の主は帰ってこない。
そしてそれから一時間も経った頃。
パセットは青い顔をしながら屋敷の中を探し回った。
探し人は見つからなかった。
***
昔話をしましょうか。
むかーしむかし、あるお屋敷に偉大な魔術師が住んでいました。
彼はおおらかで、優しい人物でした。
身寄りの無い小さな子供達を拾い、自分の屋敷に住まわせていたのです。
当然の事ですが。
顔も良く、人柄も良く、頭も良い彼は、自分が拾った女の子達に慕われる事になります。
そしてこれも当然事ですが。
拾われた少女達全てが、彼のような善人ではありませんでした。
84 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:55:19 ID:EDjw+FzK
アーネという女の子が居ました。彼女は、彼が最後に拾った孤児でした。
ところが彼女は物覚えが悪く、使用人として働く事になってからも粗相ばかり。
彼はそんな彼女に目を掛け、優しく接しました。
そしてそれが火に油を注ぐ行為だとは思ってもみなかったようです。
役立たずの上、彼に特別扱いされるアーネに、他の使用人達は嫉妬しました。
陰湿な虐めを施し、数々の性的虐待を加えました。
処女も散らされました。
ですが何の事情も知らない彼は、落ち込むアーネを見かねて優しく接してくれます。
それが新たな嫉妬を生み――屋敷の中に淀んだ悪循環を生み出しました。
虐待は日を追う毎に酷くなり――そんなある日、アーネは運命の出会いを果たします。
彼女は偶然にも彼が封印した魔物、アドニスと出会ったのです。
異形の姿に最初はアーネも戸惑いました。
ですが使用人達に散々な目に遭わさていたからでしょう、すぐに魔物を受け入れたのです。
それどころかアーネは子宮にアドニスの種をもらい、歓喜しました。
何の役にも立たない自分が、初めて誰かの役に立てる――と。
アドニスに見初められてからのアーネは変わりました。
苦手だった仕事をそつなくこなし、仲間のいびりにも屈しません。
何より美しくなりました。
アドニスは魔物とは言え、彼女にとっては主で、男だったのですから、当然でした。
変化したアーネは使用人達に疑われる事になります。
一体あの娘に何があったのか――と。
そして皆が寝静まった夜、魔物と密会するところを見つかってしまいます。
使用人達は話合い、魔物とアーネの処断を考えました。
このようなおぞましい化け物、焼き払ってしまえ――と。
ところがアーネは自分達の逢瀬が見つかっていると気付いていなかったのです。
何時ものように何本もの触手に犯され、愛され。
愛の言葉を囁き、乱れ、別れの挨拶をしました。
そして次の日の夜、焼き払われた魔物の死骸を目にする事になります。
アーネは悲しみに明け暮れ――それが終われば怒り狂いました。
主を殺した犯人を見つけ、復讐する事を誓いました。
そしてそれは速やかに行われる事になります。
胎内に植え付けられた種子がアーネに命じます。
女を犯せ、仲間を増やせ――と。
アーネはそれに従い、次々と使用人達を襲いました。
一人、二人、三人。
一人犯せば、その者が別の者を襲います。
そうして復讐を始め三日も経った頃。
最初にアドニスの種子を受けたアーネは花へと成長したそれを出産しました。
アーネに犯された女達も次々とアドニスの花を産み落とします。
復讐を始めて一週間も経った頃、屋敷の中はアドニスの花で埋め尽くされました。
廊下で、客室で。場所を問わず、花に跨り、犯される女達が悩ましい嬌声を上げます。
彼女達は皆幸せそうに犯されていました。
花と同化し、アネモネと化すのも時間の問題です。
そしてアーネは既に完全なアネモネと化していました。
本能の赴くまま女を犯し、仲間を増やす魔物になっていたのです。
それを救ったのは彼でした。
彼は魔術を使い、使用人達からアドニスを分離させ、浄化したのです。
ですがアーネはそうはいきません。
彼女の体はアドニスと完全に同化しているのです。浄化は彼女の消滅を意味します。
85 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:56:43 ID:EDjw+FzK
優しい彼にはそれは出来ませんでした。封印する事も、拒否しました。
彼はアーネに特別に目を掛けてきたのです。
魔物と化した彼女を、退治したり、封印するような事は出来ません。
彼は最後の手段を使いました。
それはアーネの体はそのまま、心だけを浄化するというものでした。
魔術が発動し、アーネは人間の心を取り戻します。
ですがその代償に、彼は命を失いました。
どうか僕の分まで、生きてくれ――と言い残して。
アーネは決心しました。
この命は彼を犠牲にしてまで貰ったのだ。絶対無駄にしない――と。
かくして彼女は屋敷を飛び出し、当ての無い旅を始めました。
めでたしめでたし。
――じゃないわよねぇ。ほんと。
大変なのよ? アネモネの一人身って。人肌は恋しくなるし。
体はすぐに火照って欲情するし。
だからって田舎で女の子一人でも『食べて』みなさいよ?
すごい勢いで増えちゃうのよ? もう鼠算式に。
一回それやっちゃってねー。あの時は失敗したわぁ。
人間達に目を付けられて、しつこくしつこく追い掛け回されたのよー。
もー堪ったもんじゃなかったわ。おかげで逃げるのは得意になったけれどねえ。
――あっ、いいのよ寝てなさい。これ、独り言だから。返事しなくてもいいの。
それで、えー、どこまで話したかしら?
あそうそう。逃亡生活ね。これって現在進行形なんだけど。もうほんと不便だわー。
中途半端に良心が残ってるとねー、人間相手にも同情しちゃってねー。
アネモネになってからは人間が使う魔術とかと似たようなものも使えるんだけど。
殺しちゃうわけにもいかないじゃない? かわいそーだし。何より寝覚めは悪いし。
でもでもっ、向こうはあたしの事本気でやりに来るのよ!?
あたしは手加減してるってのに不公平だと思わない!?
――あー、えっと、あはは。ごめんごめん。独り言だから。答えなくていいから。
ごほん。それは兎も角。
そんなこんなで、もー疲れちゃったのよ。
悔しいし、何よりあの人の意思もあるから、簡単に死にたい、なんて言わないけど。
溜息ばっかり出ちゃう。
「でも。もう私が居ます」
我慢出来ずに、口を開いていた。それをネーアは笑顔で返す。
「もう。独り言だって言ってるのに。この子は。
でもほんと、その通りなのよ。リオに出会えたおかげで、救われた気がするわ」
「それは、私も同じです」
「そう? なら良かったわ」
くすくすとお互い笑いあう。
(でも、ネーアさん。
自分の昔話が恥ずかしいからって、女の子の名前を『アーネ』にするのって)
ひっくり返しただけで安直すぎではないだろうか。
なんて、失礼な事を考えていると、突然ネーアが口を開いた。
「あたしね。リオの事、他人とは思えなかったのよ」
「はい。私も、そう思いました」
さっきの『独り言』。あれはどう解釈してもネーアの生い立ちだ。
そしてそれはリオが思っているより、遥かに辛く、悲しい話だった。
悲劇のヒロイン気取りだった自分が少し恥ずかしい。
86 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:58:02 ID:EDjw+FzK
「本当はね。リオの事見つけた時は仲間にする気なかったんだけど。
貴女の話を聞いて、考えが変わったわ。というか放っておけなかった。
まるで、昔の自分を見ている気がしたの」
「…はい」
「人を止める事で手に入るものもある――それを貴女なら分かってくれると思った。
今思えば、これってあたしの我が侭でしかないんだけど」
「大丈夫ですよネーアさん。私も、同じ思いですから」
「…うん…ありがと…」
少し寂びそうに、でも嬉しそうに笑うネーアの顔が目に焼きついた。
大魔術師ウラヌスが死亡したアドニス大量発生事件がおよそ二百年。
事の張本人であるネーアが今までどのように生きてきたか。
どのような想いだったか。
今の泣き笑いのような表情が全てを物語っている気がした。
「あーっ、何だか疲れちゃったわ。あたしも一眠りしよっかな」
「あ、それじゃ私も」
「んー。それは無理かも」
「え? どうしてです?」
「今は少し落ち着いているけど、リオのお腹の種子ね。
すぐにまた疼き始めるわよ。そうなったらもう抑えられないと思う」
「え、ええ!? じゃ、じゃあどうすればいいんですか!?」
「リオ。それが『人間を止める』って事よ」
「あ…」
「あたしと一緒に生きたいと思うなら、それだけは覚悟して。
貴女はもう、人間と同じようには生きられない。
人を襲い、仲間を増やす。それだけしか考えられない化け物になるの。
理性は、一応は残るわ。記憶もね。
でも魔物としての本能には絶対逆らえない。あたしも昔はそうだったから。
だから魔物、っていうのよ」
今更ながらだが。本当に自分はアネモネへと変わってしまうんだなぁ、と思う。
まあ、リビディスタで家族に殺されるよりかはマシだ。
それに、
「私、ネーアさんと一緒に居たいから……だから頑張ります」
「そう…だったら、もうあたしは何も言わないわ。
リオと二人で、魔物としての生を謳歌する事にしましょう。
そうねー…試しにこの街をアドニスの花で埋め尽くしましょうか?」
「いえあのっ、いきなりそんな大きな目標を設定されてもっ」
「そう? でもあたし達アネモネなんて、増える事が存在意義みたいなものよ?」
「あのでも、お話を聞いているとあまり派手に動いても目を付けられるようですから」
「はー。そうなのよねぇ。だから面倒臭いのよー。
こう、誰にも邪魔されずに一日中エッチしていたいわぁ」
(……ネーアさん、いやらしいです)
「まあ、今はそんなの無理ね。夢物語だわ。リオの言うとおり、堅実に行きましょう。
そうねー……当初の目標は貴女の種子の成長ね。
取り合えず街に行ってエッチしまくってきなさい」
絶句した。
「ん? 何? どうしたの? リオ? まさか知らない訳じゃないでしょ?
アドニスは男の精液を吸って成長するのよ」
「いえ。知っていましたけど。あんまり深く考えないようにしていました」
「あー。あーあーあーあー。そうよねぇ。普通知らない男とエッチするの嫌よねえ?
うんうん。リオも女の子だからね」
そう言ってネーアは気味の悪いくらいにっこりと笑顔を浮かべる。
甘い事言ってるんじゃ無いわよ? と言外に叱咤されている気がした。
「えと、その…頑張って来ます。
あのでも私、途中で倒れちゃったりしないでしょうか?」
「んー。種は大分定着しているから、体力だけならもう普通の人間と変わらない筈よ?」
「ほんとですか!?」
87 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:59:26 ID:EDjw+FzK
「…どうしていきなりテンションが上がるのかしら?」
「だってだってっ、体力ついたらな走ったりしても大丈夫じゃないですか!?
あの試しにの辺を走ってきてもいいですか!?」
元より本の虫だったので、健康的な体で外を好きなだけ走り回ってみたかった。
それが今叶う。嬉しくない筈が無い。
「そっか。人を止める事で得るものもある――その一つね」
「はいっ!」
「快楽もそうよねー?」
「も、もう! ネーアさんはすぐそうやっていやらしい話を振ってっ」
「あははっ。ごめんごめん。でもアネモネってエロスの権化みたいなものよ?
猥談の一つや二つ、笑って流すくらいじゃないと」
(十二歳の女の子に求める事じゃありませんよね、それ?)
だがそれも『人間の世界』の話だ。
これから踏み込むのは、魔物としての領域。
ふと、思った。
「ネーアさん? お仕事をしている時のお母様って、どんな気持ちだったんでしょうか?」
「リオのお母さん? 売春婦してたんだっけ?
んー……そーねー。まあ、あたし達と違って、お金を稼ぐ為にエッチするんだから。
やっぱり嫌々していたんじゃない? まあ、相手とか気分にもよるだろうけど」
「お母様…すごいです。私、お父様の時でもあんなに辛かったのに。
それを知らない人ばっかりが相手だなんて…」
「多分、才能があったのよ。それも生まれ持ったとびきりのね」
「え?」
ネーアは何故か上機嫌で笑っていた。
自信満々で、まるで母の事を知っているように言う彼女の態度に疑問を覚える。
「それにリオ、貴女はそんなお母さんの血を受け継いでいるの。
大丈夫。貴女もきっとエッチの才能あるわ! あたしが保障してあげる!」
「そんな保障いりませんー!?」
夜が明け、白み始めた空の下。
森の中で、二人の笑い声が静かに響く。
***
リオは山を降り、リビディスタの屋敷を迂回すると街へと向かった。
わざわざ屋敷から遠ざかるように移動した事には理由がある。
近付きたくないのだ。いや、近付けないのだ。
子宮の中のアドニスの花のせいか、それとも何か別の要因があるのか。
屋敷周辺に張り巡らされた結界の影響をもろに受けてしまう。
すでにこの身が人よりも魔へと近付いてしまった証拠だった。
現に何分も山道を歩いているのに息一つ切れない。
健康になった体が嬉しくて、山の中を無駄に走り回った。
そんな時である。
がさり――茂みが揺れ、その向こうから異形の影が現れた。
「…ひ…っ」
「あらぁ?」
人語を発した異形は下半身が蛇、上半身が人の女――メデューサと呼ばれる魔物だった。
リオは失念していた。
この森はリビディスタの戦士達が実戦を行うほど、魔物が多いのだ。
昨晩、ネーアと二人っきりになれたのは、彼女が何かしらの手段を講じていたからだろう。
「なかなか美味しそうなおチビちゃんじゃない?」
ちろちろと舌を動かしながら下半身をくねらせてメデューサが接近する。
リオはすっかり腰を抜かしていて、逃げる事も出来ない。
(ネーアさんっ、助けてぇ!?)
88 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 18:01:09 ID:EDjw+FzK
「おチビちゃん? あなたに選ばせてあげるわ。石になりたい?
それとも頭からバリバリ食べられたい?」
「あ、あのあの、どっちも嫌です!」
「そう♪ じゃあ石になりながら頭からバリバリ食べられたいのね♪」
「違いますー!?」
「ふふふ馬鹿な娘ね。こんな所に護衛も付けずに一人身で来るだなんて。
これじゃ食べてくださいって言っているようなも――うん?」
メデューサの動きが止まった。
訝しげな様子でリオを見詰めている。クンクンと鼻を鳴らして、
「――なあんだ。『お仲間』じゃない。あなたアネモネでしょ? 匂うわ。
アドニスの花のいやーな匂いがする。紛らわしいわね。人間と勘違いしちゃったわ」
「え?」
指摘されて自分の匂いを嗅ぐ。
ネーアの匂いが移っているのか、自分の体臭以外にも甘酸っぱい花の香りがした。
リオは知らなかったがアドニスの催淫香は人間を誘惑する事だけが目的ではない。
この香りは凶悪な魔物達には悪臭に感じられ、それらを追い払う効果もある。
昨晩、二人がこの森の中で何の気兼ねも無く情事に耽られたのにはそういう理由があった。
「ああいや待って。なんか『アネモネ以外』にも混じってるわね? 混合種かしら?」
「え? それってどういう、」
「あーもう期待して損しちゃった。久しぶりの獲物だと思ったのに。
人間の娘を食べるなんて贅沢、一度でもいいからしてみたかったのに。
ここってあれよねー? 街はあんなに近くにあるのに中には入りづらいしぃ。
でも向こうからは殺気立った魔術師とか剣士とか流れ込んでくるしでサイアク。
そうそう。ちょっと聞いてよ!」
気が付いたらメデューサのお姉さんと気軽に世間話をしていた。
ひょっとして自分は人間に生まれてきた事自体が間違いなんじゃないかと思う。
いや、母親に失礼かもしれないがそう思わずにはいられなかった。
(…なんか、魔物さんって、怖いイメージがあるけど…皆割りと普通にお話出来るね?)
自分だけかも知れないが。
「さっきもさぁ、むさいオッサンが三人でいきなり絡んできたのよ?
いつもの剣士達と違って装備が貧弱でねえ、あんまり強そうじゃ無かったのよ。
それでこれは日頃の鬱憤を晴らすチャンスだと思ったわけね」
「は、はい…」
「ところが連中、なんか殺気立ってる上にやたら強くてさぁ。
傭兵かしらね? 危うく殺されちゃうところだったわ」
「えぇ? どこか怪我とかしたんですか!?」
「ええ。髪を切られたわ。もう治ったけどねぇ」
しゃー、と髪の毛と同化してウネウネしている蛇が鳴く。
つくづく自分の常識が通用しない世界だなぁ、と実感した。
「そうそう! こう見えてもわたしって結構いい体してると思わない?」
「え? ええと…」
言われて青白い色をした上半身に目を向ける。
体型としてはスレンダー型、と言ったところだった。
リオよりは成熟しているが、ネーアとは比べるべくもない。
人間なら十八くらいだろうが、それにしては胸のサイズが自分とさほど変わらない気が。
「ちょっとどこ見てるのよ!? 上じゃなくて下よ下! ほら見なさいよ!
この太さ! この長さ! 鱗の色も艶もそこらのメデューサなんかには負けないわ!」
(…あ…そっちなんですか?)
駄目だ。人間の常識が全く通用しない。
「それがあのオッサンどもと来たら!
『胸の小さい女に用はねぇ!!』って言うのよ!?
失礼しちゃうわもう! 何よあんた達だって下半身でものを見てるくせに!
なんで私の下半身を見ないのかしら! 胸がなんだっていうのよ!」
ひょっとして自分の体にコンプレックスでもあるんだろうか。考えても答えは出ない。
「あなたも気を付けなさいよ? あのオッサンども、まだこの辺りにいるかもしれないわ。
人間じゃないってばれたら、殺されちゃうわよ? あなたちっこいし」
「あ、はい…気を付けます…」
89 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 18:05:53 ID:EDjw+FzK
「それじゃ私は行くわ。あーどこかに人間の捨て子でも落ちていないかしら。
お腹空いたわー」
「あ、あの!?」
「ん? 何よ?」
去り際のメデューサに声を掛ける。
普段ならこういう野暮ったい事を聞かないのだが。
人間をやめて、気さくに魔物と会話が出来たからだろう。
ネーアと出会った時から疑問に思っていた事を口にした。
「あの…裸じゃ、恥ずかしくありませんか?」
「はあ? 裸が恥ずかしくてメデューサが出来るわけないでしょが。
それに体につられて寄ってくる馬鹿な男もいるしね。
っていうかそういうの、アネモネであるあんた達が本分でしょうに」
それじゃあね、と今度こそメデューサは背を向けて森の中へと消えていく。
何だか色々と為になる話が出来た気がした。
「モンスターって実はあんまり怖くないのかなぁ?」
人間の方がよっぽど怖い、と思う自分は心まで魔物になっているのか、と思った。
***
以上で第四話終了です。
うん。週に一回この分量を投下とか、かつてないペースです。
誤字とかありそう。皆様、見つけたら是非ご報告をお願いします。
勿論感想もお待ちしております。
尚、テロ中の書き込みにあった『ネーアの変異シーンを入れてほしい』という要望ですが。
ひょっとしたら後々の話で差し入れられるかもしれません。
まあ、無理かもしれませんが。あまり期待しないで下さい。
ちなみに次の話は大体書き終わってます。現在推敲中と言ったところですか。
サイバーアタック中に悶々としながら書いた分ですね。
40KBオーバーですがwww なんだこの筆の速さはwww 何だこの量はwww
おかげで一話一話のボリュームが増してしまって皆様お疲れでしょう。
大変申し訳ないです。
というわけで次回はいよいよリオ覚醒話です。
リオ関係は色々複線を張ってましたが一気に消化しますよ。正体とか。
おかげでエロエロです。全編エロシーンです。あ、成る程。だから筆がのっているのかwww
とまあそんな感じで、次回も宜しくお願いします。
最後に恒例になりつつある、アレを。
幼女ぉ!! 万歳ぃ!!
――これもそろそろ自重した方がいいのでしょうか。
皆様お待たせしました。
永久の果肉、続きです。
しかし前回投稿分のレスを読ませてもらいますとロリコン変態紳士様がなんと多い事か。
話やキャラもそれなりに練り込んでくれるので感情移入してくれるのはほんと嬉しいです。
仕事のし甲斐もあるというものですな。
さて今回のお話ではエチ無しの予定でしたがほんのちょっと入れました。
シチュは『触手が刺さったままでピロートーク』。みたいな?
うん。一応NGワードも書いておきましょう。
(本番無し、微エロ、ピロートーク、ネタバレ過去話、糖分多め)
ネーアが過去話を語ります。
無限の果肉のおさらいと、その結末についてですね。
あわわ。こんな中途半端な形で終わらせてしまってほんと勿体無い事をしてしまった。
重ね重ね、皆様にはご迷惑をおかけします。
うん。前書きも長いですね。この辺りにしておきます。
では、ごゆっくりどうぞ。
以下本編で11レス消費します。
77 乙×風 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:42:44 ID:EDjw+FzK
あー。皆様、ご心配をおかけしました。乙×風です。
ちゃんとこれからも投下し続けますのでご安心下さい。
というか私のキャラがどうにも一人歩きしていますねw
私は只の幼女が好きな訳ではありません!
ヤンデレロリッ子。ロリババア。それにエロリっ子が好きなだけの只のおたくです!(キリッ
それはともかく。先日のようなサイバーテロはもうこりごりですな。
タイミングも悪かったですが……なんで前書きだけ投下出来たのか不思議です。
お陰で図らずとも皆様に対して壮絶な焦らしプレイをw
何やら今週の土曜日に第二波があるとかないとか。どれだけ暇なんでしょう。
まあ、愚痴っても仕方ないですね。
ここから先が本編となります。NGワード等は月曜日のレスにて確認下さいませ。
ではごゆるりと。
78 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:45:07 ID:EDjw+FzK
第四話 血の秘密
激しい性交の直後、ネーアは後悔していた。
(や、やっちゃったぁっ)
「あたしの馬鹿、馬鹿っ、やりすぎよぉっ」
白目を剥いて気絶しているリオを見下ろしながら、ネーアは頭を抱えていた。
よほど具合が良かったのだろう。
少女は潮とか尿とか精液とか愛液とか、諸々の体液を結合部から噴出している。
それを美味しそうだなぁ、と見詰めて――顔を振って邪念を払った。
「反省しなさいよあたし…」
(うわもう自己嫌悪で死にたいわ)
病弱な人間の娘をどれだけ徹底的に陵辱すれば気が済むのだ。
いや、でもリオに限っては普通の女の子と一線を画していた、というか。
父親の調教のせいか、もう、兎に角エロかった。
(人間じゃなくてサキュバスか何かじゃないのこの娘?)
当人の話を聞く限り父親も母親も人間のようだが。
ネーアはさっきリオを犯しながら一瞬背筋に冷たいものをが走ったのだ。
スイッチが切り替わってまるで別人のように、淫乱に豹変したリオ。
フェラをした直後と同じだ。この娘は何か一定の条件で、性格が反転している。
気がする。気がするだけ?
(でも、一瞬、この娘、瞳の色が変わったような?)
紅と蒼のオッドアイが、両方とも血のような真紅に変わった気がする。
「まあ、あんまり考えてもしょうがないわよね」
今は目下、マグロ状態になってしまったリオの安否が心配だ。
体に相当な負担が掛かった筈だ。
フェラの時飲ませた蜜は、こんな虚弱な娘に種付けをする為に、滋養効果があるものだが。
一体どれほど効いているのか。
これでもし死んだりしたら夢見が悪くなるなんてレベルの話じゃない。
一生もののトラウマになりそうだ。
(ああ、それにしても。
気絶してるのにリオのアソコッたら今でもキュウキュウ締め付けて、たまんないわ)
「ってだから自重しなさいあたし」
これ以上負担を掛けるのも可哀想だ。
種子の定着を助長する為にも生殖器で子宮に蓋をした方がいいのだが、今は抜いておこう。
「――ぬいちゃ、や、れすぅ…」
「り、リオ!?」
呂律の回らない声が耳朶に沁み込んだ。
うっすらと開いた瞼の下のオッドアイが、こちらを見詰めていた。
大した体力だ。あんなハードプレイの後、すぐに喋れるようになるなんて。
虚弱体質とか信じられない。
「貴女、大丈夫なのっ?」
「んん…っ、気持ちよかったれふぅ…」
「いやそうじゃなくて」
(あー、そんな口が利けるなら大丈夫かしら)
なんだかどっと疲れた気がした。
最近体力的にも精神的にも疲労が絶えなかったし、種子を植え付けるのも消耗するのだ。
暫くは活動を控えた方がいいかもしれない。
「リオ。悪いけど少し体動かすわよ」
「ふえ? ――ぁにゃぁんっ」
小さな体に触手を巻きつけて持ち上げる。
雌しべの触手は突き刺さったままだ。
そのまま自分の胸へと抱き寄せて、徐々に体に巻きつけた触手の力を弱めていく。
すると当然、重力に引かれてリオの体は下降して、
「あっ!? にゃっ! あぁっ! ふかっ、いっ、よっ! あ、はぁっ…!」
花冠の中心部から真上へと生え出した雌しべ触手へと体重を預ける。
きゅうきゅうと敏感な触手が締め付けられて、うっとりとしてしまう。
「大丈夫。大丈夫よ、リオ」
はあ、と熱い吐息をリオの前髪に噴きかけながら、彼女の体をしっかりと抱き締めた。
79 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:46:41 ID:EDjw+FzK
幼子独特のぷにぷにとした感触が堪らない。久しぶりの人肌の温もりに心が癒される。
「はぁ、はぁっ、…んっ…ネーア、さん?」
「なぁに?」
「わたし、ネーアさんのものに、なったんですね」
「ええ、そう。種子はちゃんとリオの子宮に定着している。
あとは『栄養』をあげれば、立派なアドニスが咲くわ。
そうすれば、リオはあたしと同じになる」
もう、戻れないわよ。
桃色の髪を梳きながら、静かに付け足した。
「ネーアさん。私、後悔してませんから」
きゅう、とリオから抱きついてきた。
まるで赤子が母親に甘えるように。
いや、実際そうなのかもしれない。
誕生と共に母を失い義母から憎しみを受けて育った彼女は誰にも甘える事は出来なかった。
(あたしが、お母さんの代わりなのね)
まあ、それもいいだろう。
誰にも甘えられない孤独は『誰よりもこの自分が知っている』。
だからこそこの子を仲間にしようと思ったのだ。
あまりにも不遇な彼女を、自分と重ねて。
「あたしって、ひょっとして信頼されてる?」
冗談交じりの問い掛けだった。
リオが顔を上げる。どこまでも屈託のない、太陽のような笑顔がそこにあった。
「はいっ」
その余りにも真っ直ぐな表情に思わず顔を赤くしてそっぽを向く。
背中がむず痒いような、でも心地良いような、何だか複雑な気持ちだった。
本当に我ながら、人間臭い魔物だな、と思う。
「も、もう変な子ね。
酷い事ばっかりされてきたのに、そうそう簡単に誰かを信用出来るものなの?」
「ネーアさん、優しいから」
「…そうでもないわよ」
そうだ、優しいなら、後先考えずあんな陵辱まがいの性交など誰がするものか。
自分は魔物だ。本能の赴くまま女を犯して、種を植え付け、快楽を貪る化け物だ。
「覚えておきなさいリオ。人を止めたら、本能に抗えなくなるわ。
どれだけ理性を保っても、魔物としての衝動には逆らえないの。
例えそれが、大切なものを傷付ける事になってもね」
「私の事、心配してくれたんですか?」
「そりゃ、そうよ。病弱だ、ってきいてたから。
だからあたし、もっと優しくするつもりだったのに。それなのにあんなに激しくして。
本当、馬鹿よねあたし。最低だわ。ごめんなさいリオ」
「ほら、やっぱり優しいじゃないですか」
「え…?」
リオはずっと笑顔だった。
「私の事、気遣ってくれてる。
出会ったばかりなのに、家族みたいに、心配してくれる。
それに自分のした事を悔やんで、それにちゃんと謝ってくれました」
「…だってそれは、その、当然じゃないの…?」
「私の家族は、そうじゃなかったですから」
「そう……大変だったわね…」
「そうですけど、でも、おかげでこうしてネーアさんと出会う事が出来ました。
お義母さまに殺す、って言われなかったら、私達、出会う事もなかったと思うんです。
だから、お義母様にもお父様にも、少しだけ感謝してるんですよ」
あんまりにも健気だった。
誰だこんな子を殺すとか言う母親は。見つけていびり倒してやる。
父親もだ。オナホ触手で赤球が出るまで精を吸い尽くして裸に引ん剥いて逆さに吊るすぞ。
(それに比べてリオったらっ)
「ああんもう可愛い!!」
80 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:48:25 ID:EDjw+FzK
リオの可愛さに胸がきゅんきゅんした。
母性が疼いて猫可愛がりしたくなる。
というか、する。
「きゃ、ネ、ネーアさんっ?」
「可愛い! 可愛い! 可愛い!」
ちゅっ、ちゅっ、と顔にキスの雨を降らせる。
いやらしい口付けではない。あくまでじゃれあうように。
性的な欲求は種付けを行った事で随分大人しくなった。
それでも素面に戻ったリオはこんなキスでも顔を真っ赤にして俯くのだ。
『あうぅ…』とか言いながら。
それがまたとんでもなく可愛く思える。悶え殺す気だろうかこの娘は。
「んー。リオったらこのギャップが堪んないわね♪」
「え? ギャップ、って何ですか?」
「なぁに言ってるのよ。エッチの時なんかもうエロエロだったじゃない?
リオはHの時性格変わっちゃうのね♪」
「あ、あれはっ」
「『セックス気持ちいいよぉ!』とか叫んでたわよねぇ?」
「ちちちちちちちがいます!! あ、あれはっ」
「『触手チンポ、びくびいくしてるからぁ!』とかねぇ?」
「やあぁぁぁぁっ!! 言わないで下さい!! あれは私じゃありません!」
「そーいえば喘いでる時は『にゃーにゃーっ』って、まるで猫みたいだったし」
「ですからそれは…っ、その、つい言っちゃうんですよぉ…」
涙目になりながら弁解するリオに真にハートブレイク一歩手前。
お父様の時はこんなんじゃないのに、と弁明する姿が、もうっ、
「たまらないわぁ! このまま第二ラウンドいっちゃいましょう!?
っていうかするわ! 覚悟なさいリオ! アネモネの真髄見せてあげるわ!」
「いえあの流石に疲れたので今日はお休みさせて下さいー!?」
「あはははっ。冗談よ冗談。そこまで無理させられないって」
「もうっ、意地悪です、ネーアさん」
「ごめんごめん、謝るからさ。許してちょうだい。ね?」
頭を撫でてご機嫌を取る。胸元で、うー、と可愛らしい呻き声が上がる。
『……』
不意に会話が途切れた。
さらさらと、桃色の髪を梳く音が響く。
僅かにそよぐ風が木々を揺らし、虫達が美しい声を上げる。
夜の帳が下りた森に、静かで優しい音色が響いた。
二人の間に舞い降りた沈黙は、気まずい物ではない。
密着した互いの体温から優しさが伝わってくる。
出会ってものの一時間程度しか経っていないのに、二人には確かな絆がある。
それは先程、少女の腹に種子を植え付けた事で確固なものとなった。
「寒くない?」
「ん。平気ですよ。ネーアさん。あったかいですから」
「ふふ。ありがと」
再び沈黙。
このまま少し眠ってしまおうかと思ったが、一つ、気がかりな事があった。
リオの事だ。
セックスの時のあの豹変振り。先程は茶化したが、どうにも引っ掛かるのだ。
それに体液を飲ませたとはいえ情事への耐性の高さ。
瞳の色が変化したのも、気のせいでは無いかもしれない。
「…あ…っ」
「リオ? どうかしたの?」
「あの、その、なんか、お腹、じわあっ、って熱くなって…」
「種子が定着しているのよ。
神経とか、徐々に繋がっていくから、暫くはその感覚が続くわ。
悪いけど少し辛抱してちょうだい?」
「あ、はいっ」
子宮に入り込んだ種子が神経の根を下ろしているのだ。
下腹部が疼くのだろう。リオは触手と繋がったまま腰を揺すり始める。
81 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:50:20 ID:EDjw+FzK
「んっ…はぁっ…んんっ…」
(ちょっと辛そうね)
切なそうに吐息を吐くリオを見ながらどうしたものかと思案する。
そもそも普通なら種子の定着はもっと時間を掛けて行うはずだったような。
(――あ、ら? この子の魔力…上昇してる?)
ふと気付く。
エッチ前に比べて魔力が上昇しているのだ。
それは種子の定着と、彼女の子宮の疼きと同調するように徐々に。だが確実に。
アネモネと化せば魔力は上昇するが、ここまで劇的に変わるものではない。
(もしかしてこの子…)
頭の中である仮説が組みあがった。
成る程、これなら確かに性行為中の、あの豹変にも納得出来る。
「リオ。辛い?」
「はぁ…はぁっ…だい、丈夫です…」
「本当?」
体を少し離し、正面からリオと視線を交わせる。
少女の右目が、ゆっくりと赤と青に明滅していた。
「――疲れた顔をしてるわ。今日はもう寝ましょう?」
返事を待たずに、触手からガスを噴出させる。
アドニスの花本体から生成し、催眠効果を持ったガスだ。
リオが、きゃ、と僅かに驚いた声を上げる。
かと思うとすぐにトロン、とした表情になった。
「あ…私、まだまだ、ネーアさんと…お話、したいのに…。
私、ネーアさんの事、何にも知らない、のに…」
「そういえば、そうね。あたし、自分の事なーんにも話してないものね。
でもそれはまた今度にしましょう? 今は、ゆっくり休みなさい」
きゅ、とリオの顔を胸元に抱き寄せる。
それから丁寧に髪の毛を梳いてやった。
「……ネーア、さん……」
それだけで、この小さな女の子は眠ってしまった。
すーすーと可愛らしい寝息を立てている。
本当に可愛い子だ。
桃色の髪も。甘い匂いも。その仕草も。声も。オッドアイも。
他人を引き付けてやまない。
人間としての理性を残したままとはいえ、人外のネーアが、こうも魅了されたのだ。
彼女の魅力は天性のものだ。
そしてそれは恐らく彼女の母親から受け継いだものなのだろう。
「リオ。貴女、元からあたし達と同類なのかもしれないわよ…」
呟く声は、夜風に流れ、溶ける。
***
メイド達の朝は早い。
この日も、リオの世話係パセットは夜が白み始めると共に目を覚ます。
むくり、と身を起こすと欠伸と共に伸び。
「よっし」
両頬を軽く叩いて気合を入れるとベッドから飛び降りて身支度を開始。
鏡台の前で栗色の髪を梳き始める。
「あー。今日も頑固者ですなー」
パセットは癖毛持ちだ。
頭頂部から耳辺りに掛けて髪が外側へと跳ねる。
そのせいで、犬耳に見えなくもない髪形になってしまう。
「リオっちの髪はあんなにサラサラなのにねー。
ええい! 遺伝子の性能の差が外見の決定的差ではない事を、教えてやる!」
82 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:52:08 ID:EDjw+FzK
意地になって髪を触る。
ツインテール。ポニーテール。三つ編み。サイドテール。
(……うん。今日はツインテールな気分である)
「よしっ。パセットは可愛い!」
鏡の前で笑顔でサムズアップ。
自分でやってて空しくなってきた。
(リオっちはいいよねぇ。お母さん似で。パセットなんて明らかにお父さん似です。
この狸みたいな顔とかね!)
実際リオの母親を見た事は無いが少なくともこの屋敷に住む旦那様とは似ても似つかない。
あの桃色の髪も、オッドアイも、可愛い顔も母親から受け継いだものだろう。
そもそも体が弱いという時点で屈強な戦士である旦那様とは違う。
優秀な戦士の血を受け継いでいる筈なのだが。
「そーいえば最近リオっちのオッパイおっきくなってる気がするなー」
自分の方が二つ年上の筈だがリオの方が明らかに発育がいい気がする。
今日こそは脱がして確かめる気だった。主に触診で。
でも絶対リオの方が大きい自身がある。
(は!? これも遺伝子の差か!? おのれ遺伝子! 許すまじ遺伝子!
まあいいや。世の中、いろんな需要があるのさ。
貧相な体の方が好きな野郎にパセットは貰われるよ! きっと!)
「こっちの娘はちっちゃいぞー♪」
なんて意味不明な歌を歌いながら自室を出る。
すれ違う同僚のお姉さま方が珍獣でも見るような目付きでこちらを見るが気にも留めない。
それはパセットの人柄故だ。
兎に角前向きな性格なのである。多少の事があってもへこたれない。
だから最初、リビディスタの『汚点』とまで言われたリオの世話を押付けられた時。
やりがいのある仕事だと思ったのだ。
「昨日のご飯は食べたかなー♪」
晩御飯を抜いていたので夜食として軽いものを作ってこっそり置いていたのだ。
食べていてくれるとありがたい、というか嬉しい。
そう言えば昨日は大したおしゃべりも出来ずに追い出されてしまった。
実はたまにあるのだ。ああやって体を触ろうとすると情緒不安定になる事が。
昨日は特に酷かった気がするが、パセットの方は特に気にしていない。
あの日かー、しょうがないなー、程度にしか思ってないのだ。
「今日は、オッパイ揉ましてねー♪」
すれ違うお姉さま方の視線が突き刺さる。
勿論パセットは気にせず紅い絨毯の敷かれた廊下をもくもくと歩いた。
目指すは屋敷の離れ。屋敷の庭園の隅にある建物だ。
リオはそこで生活していた。
仮にもリビディスタの末娘である彼女が何故母屋で寝泊り出来ないのか。
それは奥様が腹違いの娘であるリオを嫌って隔離したから、というのがメイド達の見解だ。
そういえばこんな噂もある。
『旦那様が人目を忍んでリオ様と密会している』、と。
「旦那様はロリコンだー♪ っとととこれはマズイなー」
口ずさんでから慌てて周囲に人が居ないか確かめる。
離れへと続く中庭の道は清清しい朝の陽光が降り注ぐばかりで自分以外誰も居ない。
まあ、本当のところ。パセットはそれを只の噂としか思っていない。
というか自分の娘を手篭めにする父親なんて居るわけがないと思っている。
「ほんとだったらぶん殴るぞー? 旦那様ー♪」
その辺も今日、それとなく聞いてみようかな思った。
そして離れに到着。ドアをノックする。
「お嬢様。本日もご機嫌麗しゅうござんした!!」
無駄に声を大きく、無駄にテンションを上げ、意味不明な言葉遣いがパセット流の挨拶だ。 更に脳内で勝手に色々シチュエーションを捏造して盛り上げる。
「入るよー? 踏み込むよー? 何!? 着替え中だと!? ならば尚の事ッ!」
ばたんと蝶番が軋むほど音を立てて入り口を開く。
83 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:53:51 ID:EDjw+FzK
「おはようございました!!!」
静寂が、パセットを迎えた。
「ありゃ? リオっち?」
そこにはもぬけの殻になったベッドと。
料理と共にひっくり返された銀食器しかない。
その光景を見て、パセットの脳は一つの結論に達した。
「分かったかくれんぼだ!」
(ほっほーう。体力では敵わないと思って知的戦術で勝負を挑む気だね?)
よろしい。ならばかくれんぼだ。
「先ずはベッドの下!」
居ない。
「んじゃクローゼットの中!」
居ない。
「むう。一筋縄ではいかないとな? そうこなくては遊び甲斐が無いというもの!
パセットも負けず嫌いだからね! 頑張って見つけるよ!」
再びリオの捜索開始。
と言っても離れ自体は小さな建物だ。
親を失ったリオがリビディスタに引き取られる際、納屋であった所を改装したのだ。
故に大きさも四メートル四方の部屋が二つ連なっているだけ。
片方は寝室、もう片方は書籍だ。
厠も風呂も、母屋までいかなければならない。全く不自由なものだ。
兎も角そういうわけで。
パセットは薄々気付いていた。
ここには隠れる所など無いも同然。
だがそれを認めたくは無かった。
空元気も元気と言う言葉に従い、離れの中を隅から隅まで探して。
「リオっち…いい加減出てきてよ…もう、パセットの負けでいいからさ…」
部屋の中をリオの着替えや書籍で散らかし、部屋の真ん中で力無く尻餅を付く。
見当たらない。こんな朝早くから一体何処に行ったのだ。
「……うんっ! 分かった! きっとトイレだな!」
都合の良い思考回路はとことん前向きに考える。
(だったら仕方が無いなあ。よしっ。部屋の中に隠れて帰ってきた所を驚かす!
無駄な体力を使わせた罰だ! どさくさに紛れてオッパイも揉む! 揉みまくる!)
「はーやく帰ってこないかなー♪」
だが、いつまで待っても、部屋の主は帰ってこない。
そしてそれから一時間も経った頃。
パセットは青い顔をしながら屋敷の中を探し回った。
探し人は見つからなかった。
***
昔話をしましょうか。
むかーしむかし、あるお屋敷に偉大な魔術師が住んでいました。
彼はおおらかで、優しい人物でした。
身寄りの無い小さな子供達を拾い、自分の屋敷に住まわせていたのです。
当然の事ですが。
顔も良く、人柄も良く、頭も良い彼は、自分が拾った女の子達に慕われる事になります。
そしてこれも当然事ですが。
拾われた少女達全てが、彼のような善人ではありませんでした。
84 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:55:19 ID:EDjw+FzK
アーネという女の子が居ました。彼女は、彼が最後に拾った孤児でした。
ところが彼女は物覚えが悪く、使用人として働く事になってからも粗相ばかり。
彼はそんな彼女に目を掛け、優しく接しました。
そしてそれが火に油を注ぐ行為だとは思ってもみなかったようです。
役立たずの上、彼に特別扱いされるアーネに、他の使用人達は嫉妬しました。
陰湿な虐めを施し、数々の性的虐待を加えました。
処女も散らされました。
ですが何の事情も知らない彼は、落ち込むアーネを見かねて優しく接してくれます。
それが新たな嫉妬を生み――屋敷の中に淀んだ悪循環を生み出しました。
虐待は日を追う毎に酷くなり――そんなある日、アーネは運命の出会いを果たします。
彼女は偶然にも彼が封印した魔物、アドニスと出会ったのです。
異形の姿に最初はアーネも戸惑いました。
ですが使用人達に散々な目に遭わさていたからでしょう、すぐに魔物を受け入れたのです。
それどころかアーネは子宮にアドニスの種をもらい、歓喜しました。
何の役にも立たない自分が、初めて誰かの役に立てる――と。
アドニスに見初められてからのアーネは変わりました。
苦手だった仕事をそつなくこなし、仲間のいびりにも屈しません。
何より美しくなりました。
アドニスは魔物とは言え、彼女にとっては主で、男だったのですから、当然でした。
変化したアーネは使用人達に疑われる事になります。
一体あの娘に何があったのか――と。
そして皆が寝静まった夜、魔物と密会するところを見つかってしまいます。
使用人達は話合い、魔物とアーネの処断を考えました。
このようなおぞましい化け物、焼き払ってしまえ――と。
ところがアーネは自分達の逢瀬が見つかっていると気付いていなかったのです。
何時ものように何本もの触手に犯され、愛され。
愛の言葉を囁き、乱れ、別れの挨拶をしました。
そして次の日の夜、焼き払われた魔物の死骸を目にする事になります。
アーネは悲しみに明け暮れ――それが終われば怒り狂いました。
主を殺した犯人を見つけ、復讐する事を誓いました。
そしてそれは速やかに行われる事になります。
胎内に植え付けられた種子がアーネに命じます。
女を犯せ、仲間を増やせ――と。
アーネはそれに従い、次々と使用人達を襲いました。
一人、二人、三人。
一人犯せば、その者が別の者を襲います。
そうして復讐を始め三日も経った頃。
最初にアドニスの種子を受けたアーネは花へと成長したそれを出産しました。
アーネに犯された女達も次々とアドニスの花を産み落とします。
復讐を始めて一週間も経った頃、屋敷の中はアドニスの花で埋め尽くされました。
廊下で、客室で。場所を問わず、花に跨り、犯される女達が悩ましい嬌声を上げます。
彼女達は皆幸せそうに犯されていました。
花と同化し、アネモネと化すのも時間の問題です。
そしてアーネは既に完全なアネモネと化していました。
本能の赴くまま女を犯し、仲間を増やす魔物になっていたのです。
それを救ったのは彼でした。
彼は魔術を使い、使用人達からアドニスを分離させ、浄化したのです。
ですがアーネはそうはいきません。
彼女の体はアドニスと完全に同化しているのです。浄化は彼女の消滅を意味します。
85 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:56:43 ID:EDjw+FzK
優しい彼にはそれは出来ませんでした。封印する事も、拒否しました。
彼はアーネに特別に目を掛けてきたのです。
魔物と化した彼女を、退治したり、封印するような事は出来ません。
彼は最後の手段を使いました。
それはアーネの体はそのまま、心だけを浄化するというものでした。
魔術が発動し、アーネは人間の心を取り戻します。
ですがその代償に、彼は命を失いました。
どうか僕の分まで、生きてくれ――と言い残して。
アーネは決心しました。
この命は彼を犠牲にしてまで貰ったのだ。絶対無駄にしない――と。
かくして彼女は屋敷を飛び出し、当ての無い旅を始めました。
めでたしめでたし。
――じゃないわよねぇ。ほんと。
大変なのよ? アネモネの一人身って。人肌は恋しくなるし。
体はすぐに火照って欲情するし。
だからって田舎で女の子一人でも『食べて』みなさいよ?
すごい勢いで増えちゃうのよ? もう鼠算式に。
一回それやっちゃってねー。あの時は失敗したわぁ。
人間達に目を付けられて、しつこくしつこく追い掛け回されたのよー。
もー堪ったもんじゃなかったわ。おかげで逃げるのは得意になったけれどねえ。
――あっ、いいのよ寝てなさい。これ、独り言だから。返事しなくてもいいの。
それで、えー、どこまで話したかしら?
あそうそう。逃亡生活ね。これって現在進行形なんだけど。もうほんと不便だわー。
中途半端に良心が残ってるとねー、人間相手にも同情しちゃってねー。
アネモネになってからは人間が使う魔術とかと似たようなものも使えるんだけど。
殺しちゃうわけにもいかないじゃない? かわいそーだし。何より寝覚めは悪いし。
でもでもっ、向こうはあたしの事本気でやりに来るのよ!?
あたしは手加減してるってのに不公平だと思わない!?
――あー、えっと、あはは。ごめんごめん。独り言だから。答えなくていいから。
ごほん。それは兎も角。
そんなこんなで、もー疲れちゃったのよ。
悔しいし、何よりあの人の意思もあるから、簡単に死にたい、なんて言わないけど。
溜息ばっかり出ちゃう。
「でも。もう私が居ます」
我慢出来ずに、口を開いていた。それをネーアは笑顔で返す。
「もう。独り言だって言ってるのに。この子は。
でもほんと、その通りなのよ。リオに出会えたおかげで、救われた気がするわ」
「それは、私も同じです」
「そう? なら良かったわ」
くすくすとお互い笑いあう。
(でも、ネーアさん。
自分の昔話が恥ずかしいからって、女の子の名前を『アーネ』にするのって)
ひっくり返しただけで安直すぎではないだろうか。
なんて、失礼な事を考えていると、突然ネーアが口を開いた。
「あたしね。リオの事、他人とは思えなかったのよ」
「はい。私も、そう思いました」
さっきの『独り言』。あれはどう解釈してもネーアの生い立ちだ。
そしてそれはリオが思っているより、遥かに辛く、悲しい話だった。
悲劇のヒロイン気取りだった自分が少し恥ずかしい。
86 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:58:02 ID:EDjw+FzK
「本当はね。リオの事見つけた時は仲間にする気なかったんだけど。
貴女の話を聞いて、考えが変わったわ。というか放っておけなかった。
まるで、昔の自分を見ている気がしたの」
「…はい」
「人を止める事で手に入るものもある――それを貴女なら分かってくれると思った。
今思えば、これってあたしの我が侭でしかないんだけど」
「大丈夫ですよネーアさん。私も、同じ思いですから」
「…うん…ありがと…」
少し寂びそうに、でも嬉しそうに笑うネーアの顔が目に焼きついた。
大魔術師ウラヌスが死亡したアドニス大量発生事件がおよそ二百年。
事の張本人であるネーアが今までどのように生きてきたか。
どのような想いだったか。
今の泣き笑いのような表情が全てを物語っている気がした。
「あーっ、何だか疲れちゃったわ。あたしも一眠りしよっかな」
「あ、それじゃ私も」
「んー。それは無理かも」
「え? どうしてです?」
「今は少し落ち着いているけど、リオのお腹の種子ね。
すぐにまた疼き始めるわよ。そうなったらもう抑えられないと思う」
「え、ええ!? じゃ、じゃあどうすればいいんですか!?」
「リオ。それが『人間を止める』って事よ」
「あ…」
「あたしと一緒に生きたいと思うなら、それだけは覚悟して。
貴女はもう、人間と同じようには生きられない。
人を襲い、仲間を増やす。それだけしか考えられない化け物になるの。
理性は、一応は残るわ。記憶もね。
でも魔物としての本能には絶対逆らえない。あたしも昔はそうだったから。
だから魔物、っていうのよ」
今更ながらだが。本当に自分はアネモネへと変わってしまうんだなぁ、と思う。
まあ、リビディスタで家族に殺されるよりかはマシだ。
それに、
「私、ネーアさんと一緒に居たいから……だから頑張ります」
「そう…だったら、もうあたしは何も言わないわ。
リオと二人で、魔物としての生を謳歌する事にしましょう。
そうねー…試しにこの街をアドニスの花で埋め尽くしましょうか?」
「いえあのっ、いきなりそんな大きな目標を設定されてもっ」
「そう? でもあたし達アネモネなんて、増える事が存在意義みたいなものよ?」
「あのでも、お話を聞いているとあまり派手に動いても目を付けられるようですから」
「はー。そうなのよねぇ。だから面倒臭いのよー。
こう、誰にも邪魔されずに一日中エッチしていたいわぁ」
(……ネーアさん、いやらしいです)
「まあ、今はそんなの無理ね。夢物語だわ。リオの言うとおり、堅実に行きましょう。
そうねー……当初の目標は貴女の種子の成長ね。
取り合えず街に行ってエッチしまくってきなさい」
絶句した。
「ん? 何? どうしたの? リオ? まさか知らない訳じゃないでしょ?
アドニスは男の精液を吸って成長するのよ」
「いえ。知っていましたけど。あんまり深く考えないようにしていました」
「あー。あーあーあーあー。そうよねぇ。普通知らない男とエッチするの嫌よねえ?
うんうん。リオも女の子だからね」
そう言ってネーアは気味の悪いくらいにっこりと笑顔を浮かべる。
甘い事言ってるんじゃ無いわよ? と言外に叱咤されている気がした。
「えと、その…頑張って来ます。
あのでも私、途中で倒れちゃったりしないでしょうか?」
「んー。種は大分定着しているから、体力だけならもう普通の人間と変わらない筈よ?」
「ほんとですか!?」
87 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 17:59:26 ID:EDjw+FzK
「…どうしていきなりテンションが上がるのかしら?」
「だってだってっ、体力ついたらな走ったりしても大丈夫じゃないですか!?
あの試しにの辺を走ってきてもいいですか!?」
元より本の虫だったので、健康的な体で外を好きなだけ走り回ってみたかった。
それが今叶う。嬉しくない筈が無い。
「そっか。人を止める事で得るものもある――その一つね」
「はいっ!」
「快楽もそうよねー?」
「も、もう! ネーアさんはすぐそうやっていやらしい話を振ってっ」
「あははっ。ごめんごめん。でもアネモネってエロスの権化みたいなものよ?
猥談の一つや二つ、笑って流すくらいじゃないと」
(十二歳の女の子に求める事じゃありませんよね、それ?)
だがそれも『人間の世界』の話だ。
これから踏み込むのは、魔物としての領域。
ふと、思った。
「ネーアさん? お仕事をしている時のお母様って、どんな気持ちだったんでしょうか?」
「リオのお母さん? 売春婦してたんだっけ?
んー……そーねー。まあ、あたし達と違って、お金を稼ぐ為にエッチするんだから。
やっぱり嫌々していたんじゃない? まあ、相手とか気分にもよるだろうけど」
「お母様…すごいです。私、お父様の時でもあんなに辛かったのに。
それを知らない人ばっかりが相手だなんて…」
「多分、才能があったのよ。それも生まれ持ったとびきりのね」
「え?」
ネーアは何故か上機嫌で笑っていた。
自信満々で、まるで母の事を知っているように言う彼女の態度に疑問を覚える。
「それにリオ、貴女はそんなお母さんの血を受け継いでいるの。
大丈夫。貴女もきっとエッチの才能あるわ! あたしが保障してあげる!」
「そんな保障いりませんー!?」
夜が明け、白み始めた空の下。
森の中で、二人の笑い声が静かに響く。
***
リオは山を降り、リビディスタの屋敷を迂回すると街へと向かった。
わざわざ屋敷から遠ざかるように移動した事には理由がある。
近付きたくないのだ。いや、近付けないのだ。
子宮の中のアドニスの花のせいか、それとも何か別の要因があるのか。
屋敷周辺に張り巡らされた結界の影響をもろに受けてしまう。
すでにこの身が人よりも魔へと近付いてしまった証拠だった。
現に何分も山道を歩いているのに息一つ切れない。
健康になった体が嬉しくて、山の中を無駄に走り回った。
そんな時である。
がさり――茂みが揺れ、その向こうから異形の影が現れた。
「…ひ…っ」
「あらぁ?」
人語を発した異形は下半身が蛇、上半身が人の女――メデューサと呼ばれる魔物だった。
リオは失念していた。
この森はリビディスタの戦士達が実戦を行うほど、魔物が多いのだ。
昨晩、ネーアと二人っきりになれたのは、彼女が何かしらの手段を講じていたからだろう。
「なかなか美味しそうなおチビちゃんじゃない?」
ちろちろと舌を動かしながら下半身をくねらせてメデューサが接近する。
リオはすっかり腰を抜かしていて、逃げる事も出来ない。
(ネーアさんっ、助けてぇ!?)
88 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 18:01:09 ID:EDjw+FzK
「おチビちゃん? あなたに選ばせてあげるわ。石になりたい?
それとも頭からバリバリ食べられたい?」
「あ、あのあの、どっちも嫌です!」
「そう♪ じゃあ石になりながら頭からバリバリ食べられたいのね♪」
「違いますー!?」
「ふふふ馬鹿な娘ね。こんな所に護衛も付けずに一人身で来るだなんて。
これじゃ食べてくださいって言っているようなも――うん?」
メデューサの動きが止まった。
訝しげな様子でリオを見詰めている。クンクンと鼻を鳴らして、
「――なあんだ。『お仲間』じゃない。あなたアネモネでしょ? 匂うわ。
アドニスの花のいやーな匂いがする。紛らわしいわね。人間と勘違いしちゃったわ」
「え?」
指摘されて自分の匂いを嗅ぐ。
ネーアの匂いが移っているのか、自分の体臭以外にも甘酸っぱい花の香りがした。
リオは知らなかったがアドニスの催淫香は人間を誘惑する事だけが目的ではない。
この香りは凶悪な魔物達には悪臭に感じられ、それらを追い払う効果もある。
昨晩、二人がこの森の中で何の気兼ねも無く情事に耽られたのにはそういう理由があった。
「ああいや待って。なんか『アネモネ以外』にも混じってるわね? 混合種かしら?」
「え? それってどういう、」
「あーもう期待して損しちゃった。久しぶりの獲物だと思ったのに。
人間の娘を食べるなんて贅沢、一度でもいいからしてみたかったのに。
ここってあれよねー? 街はあんなに近くにあるのに中には入りづらいしぃ。
でも向こうからは殺気立った魔術師とか剣士とか流れ込んでくるしでサイアク。
そうそう。ちょっと聞いてよ!」
気が付いたらメデューサのお姉さんと気軽に世間話をしていた。
ひょっとして自分は人間に生まれてきた事自体が間違いなんじゃないかと思う。
いや、母親に失礼かもしれないがそう思わずにはいられなかった。
(…なんか、魔物さんって、怖いイメージがあるけど…皆割りと普通にお話出来るね?)
自分だけかも知れないが。
「さっきもさぁ、むさいオッサンが三人でいきなり絡んできたのよ?
いつもの剣士達と違って装備が貧弱でねえ、あんまり強そうじゃ無かったのよ。
それでこれは日頃の鬱憤を晴らすチャンスだと思ったわけね」
「は、はい…」
「ところが連中、なんか殺気立ってる上にやたら強くてさぁ。
傭兵かしらね? 危うく殺されちゃうところだったわ」
「えぇ? どこか怪我とかしたんですか!?」
「ええ。髪を切られたわ。もう治ったけどねぇ」
しゃー、と髪の毛と同化してウネウネしている蛇が鳴く。
つくづく自分の常識が通用しない世界だなぁ、と実感した。
「そうそう! こう見えてもわたしって結構いい体してると思わない?」
「え? ええと…」
言われて青白い色をした上半身に目を向ける。
体型としてはスレンダー型、と言ったところだった。
リオよりは成熟しているが、ネーアとは比べるべくもない。
人間なら十八くらいだろうが、それにしては胸のサイズが自分とさほど変わらない気が。
「ちょっとどこ見てるのよ!? 上じゃなくて下よ下! ほら見なさいよ!
この太さ! この長さ! 鱗の色も艶もそこらのメデューサなんかには負けないわ!」
(…あ…そっちなんですか?)
駄目だ。人間の常識が全く通用しない。
「それがあのオッサンどもと来たら!
『胸の小さい女に用はねぇ!!』って言うのよ!?
失礼しちゃうわもう! 何よあんた達だって下半身でものを見てるくせに!
なんで私の下半身を見ないのかしら! 胸がなんだっていうのよ!」
ひょっとして自分の体にコンプレックスでもあるんだろうか。考えても答えは出ない。
「あなたも気を付けなさいよ? あのオッサンども、まだこの辺りにいるかもしれないわ。
人間じゃないってばれたら、殺されちゃうわよ? あなたちっこいし」
「あ、はい…気を付けます…」
89 永久の果肉4 ◆VBguGDzqNI sage 2010/03/04(木) 18:05:53 ID:EDjw+FzK
「それじゃ私は行くわ。あーどこかに人間の捨て子でも落ちていないかしら。
お腹空いたわー」
「あ、あの!?」
「ん? 何よ?」
去り際のメデューサに声を掛ける。
普段ならこういう野暮ったい事を聞かないのだが。
人間をやめて、気さくに魔物と会話が出来たからだろう。
ネーアと出会った時から疑問に思っていた事を口にした。
「あの…裸じゃ、恥ずかしくありませんか?」
「はあ? 裸が恥ずかしくてメデューサが出来るわけないでしょが。
それに体につられて寄ってくる馬鹿な男もいるしね。
っていうかそういうの、アネモネであるあんた達が本分でしょうに」
それじゃあね、と今度こそメデューサは背を向けて森の中へと消えていく。
何だか色々と為になる話が出来た気がした。
「モンスターって実はあんまり怖くないのかなぁ?」
人間の方がよっぽど怖い、と思う自分は心まで魔物になっているのか、と思った。
***
以上で第四話終了です。
うん。週に一回この分量を投下とか、かつてないペースです。
誤字とかありそう。皆様、見つけたら是非ご報告をお願いします。
勿論感想もお待ちしております。
尚、テロ中の書き込みにあった『ネーアの変異シーンを入れてほしい』という要望ですが。
ひょっとしたら後々の話で差し入れられるかもしれません。
まあ、無理かもしれませんが。あまり期待しないで下さい。
ちなみに次の話は大体書き終わってます。現在推敲中と言ったところですか。
サイバーアタック中に悶々としながら書いた分ですね。
40KBオーバーですがwww なんだこの筆の速さはwww 何だこの量はwww
おかげで一話一話のボリュームが増してしまって皆様お疲れでしょう。
大変申し訳ないです。
というわけで次回はいよいよリオ覚醒話です。
リオ関係は色々複線を張ってましたが一気に消化しますよ。正体とか。
おかげでエロエロです。全編エロシーンです。あ、成る程。だから筆がのっているのかwww
とまあそんな感じで、次回も宜しくお願いします。
最後に恒例になりつつある、アレを。
幼女ぉ!! 万歳ぃ!!
――これもそろそろ自重した方がいいのでしょうか。
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