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INADVERTENCE
626 『INADVERTENCE』 ◆h4.Hpofy9o sage 2010/02/16(火) 18:27:33 ID:jBarBhNN
穴埋めいたす。ちょびっと食人等グロ表現あり。トリにて回避よろしく。容量関係で最後まで入らなかったらゴメン。
思えばその日は、おかしな事が色々とあったのに迂闊にも私はその一つ一つの点を
結び付けて考えることができなかった。
3月14日の早朝、私は仕事に向かうためにアパートの部屋を出た。いつものように
階段を通り、集合郵便受けで自分の部屋番のボックスから新聞を引き抜くと、一緒に
何かが引き出されたらしくパサリと物が落ちる音がした。
私は何だろうとコンクリートの床を見た。その音の主はどうやら白い物体を入れた
袋状の透明なビニールを可愛らしいリボンでラッピングした物だった。
『川上美鈴さん Happy White-day バレンタインのチョコをありがとう』
「は?」
袋の表面に張られたシールの文字を読んだ私のこの間抜けな反応には訳がある。
私はバレンタインデーには誰にもチョコを渡していないのだ。心ときめく男性と言う
ものもいないし、職場は殺伐としている所で新米の私がチョコなど出そうものなら
「そんな事で浮かれてる暇があるなら仕事を覚えろ!!」などと罵声が飛んできそうな
雰囲気の所なのだ。
まぁ、それでもひょっとして職場の誰かが「チョコは?」などと言った時のためにと
いかにも義理だと分かるように、苺とチョコが二段になった三角のポポロチョコを一箱
買って携行した一日であったが、結局そのような事もなく、帰り道、公園のベンチに座り
独りで食することになった。
と、ここで私は、大事なことを思い出し迂闊にもその意味不明の袋を鞄にしまって
出勤の途についた。
家の近くの公園、そうここでする事が“大事なこと”私は目的の対象を探す。
だが、茂みやベンチの下やごみ箱あたりを探してもふわっふわの白い仔猫は見当たらなかった。
実は、バレンタインのあの夜、私はここでチョコを食す折、迂闊にもひとつ取り落として
しまった。かなり探したのだが暗さもあり結局見つからず、仕方なく翌朝も探しに行って
その仔を見つけた。それ以来、失くしたチョコを探しつつその仔猫に餌をやっていたのだが……
見当たらない。
「良い飼い主に拾われたのなら良いが」
私は独りつぶやいた。するとどこかであの仔猫の甘えた鳴き声がしたような気がした。
まぁ、気のせいだろうと思った。だって自分の鞄の中から聞こえた気がしたなんて……。
少しさびしい様ななんとも言えない気持ちを抱えて出勤したが、勤め先でそんな事を
考えていたら一発でどやされてしまう。私は職場の玄関で気持ちを切り替え、自分の課に
入る時いつものように敬礼し声を張り上げて言った。
「おはようございますっ! 川上検査官、只今出勤いたしましたっ!」
あちらこちらから「おう、おはよう」と声がかかった。
ここは『触手管理局人的被害対策第2課』である。西暦2010年の獅子座流星群のあの夜、
流星にまぎれて地球に降り注いだ触手との攻防は未だに続いている。
街にゴミが無いのも――ゴミを落としてはいけないのもそのせいだ。触手の中には
無機物になら擬態できる物がいる。触手の質量から言って靴より小さな物が危険とされている。
私がポポロチョコひとつに必死になっているのもそのせいだ。
……つまり、ポポロチョコ紛失は物凄い失態である。バレれば始末書がきっと束で襲ってくる
だろう。私はポポロチョコはあの仔猫が食べたのであれば良いと願わずにはいられなかった。
と、まぁ、そんなこんなで一日の仕事を終え、家路につく。帰りにも公園に寄ったが
やはりあの仔猫はいなかった。
私はアパートに帰り着き、シャワーを浴びるとバスローブのまま缶ビールを呷った。
「アパートじゃなきゃ飼えたんだけどな……」そんな、今更どうにもならないことを呟きながら、
酔いが回った私はそのままベッドに倒れ込んで寝てしまった。
627 『INADVERTENCE』 ◆h4.Hpofy9o sage 2010/02/16(火) 18:28:30 ID:jBarBhNN
どれくらい眠ったろうか、私は違和感で目を覚ました。
――手が自由にならない?
まるで後ろ手に縛られているように動かない。なぜ? 誰が?
「誰っ!?」
返事はなかった。だが、ベッドサイドで何かがカサカサと音を立てた。こんな音がするものと
言えば、黒くて艶々してる6本足のアレか――じゃなくて、その音のする方を見ると今朝の
ホワイトデーの包みが落ちていて、私は鞄から出したっけ? などと思いつつも、その形状の
変化に気が付いた。その包みから白い紐状の何かが私の方に伸びていた。恐らくはその端が
私を拘束しているのだろう。
瞬間、酔いも醒めゾワッと毛が逆立つ、アレは触手! ならば猶予はない。私は身を捩って
拘束から逃れようとした。するとその抵抗に引きずられ、紐状の物に繋がった包みが宙に舞った。
そこで、可愛らしい包みは形状をゆがませ完璧な触手の一科の形状をなした。
――触手目流動体スライム属フィラム科
完璧な擬態をし、その能力からもかなりの知性が窺える。雌雄異体。それから、それから……
記憶の中からソレの弱点を探すが、焦り過ぎて何も浮かばない。
そうする間にも、ソレは幾本もの冷たい紐になって私の脚を這い上り、バスローブの中へ
潜り込んで来た。
「嫌ぁぁ!! やめて!! 怖い!!」
叫んだところで、どうにもならないと分かっているのに叫ばずにはいられなかった。
職業がら触手に寄生された者の末路をいくつか知っている。触手局に入局するとすぐに
見せられるビデオにあるのだ。
それは、歪んだ自分の趣味のため幾人もの患者を殺してきた死刑囚の元女医が、減刑を
条件に触手寄生の実験に臨んだ時の物だ。
触手が寄生すると女医は、カメラの前だというのに淫らな声で喘いだかと思うと、涎を流して、
髪を振り乱すなど、知的な女医の面影はどこにもなかった。そうするうちに過ぎる快楽から
触手を引きはがそうと手を伸ばした。悲劇はそこで起こった。伸ばした彼女の手は触手に
呑み込まれ、出てきた時は骨の一部しか残っていなかった。そのまま彼女は、絶叫とともに
肥大化する触手に呑まれて消えた。
他にも、触手の卵を産みつけられた人の腹を破って触手の仔がわらわらと出てくる映像や、
触手が肛門から入って数分後に腹がペコリとへこみ、内臓を食われ死んだ人の映像も視た。
その現実が、今ここにある危機。
「い、嫌っ! 嫌だぁっ!! やめっ! はぁん」
はぁん ……だと? 私は自分の口から出た声が信じられなかった。あんな不気味な触手に
躰を這いずり回られて、自分でも初めて聞く変な声を出すなどと……。
「やぁ、もう、だめぇ……そんなとこサワサワしないでぇ」
私はバカバカしいことに膣と肛門の間をくすぐるように動く触手にお願いをしていた。
何を言っているのだと頭の片隅では思うのに、その少ない理性の部分すらどんどん痺れたように
なって行く。これではあの女医のようではないか。そう思うと情けないことだが恐怖で躰が
震えてしまう。
「いやぁっ!! そんなとこ入ってこないでぇ!! 嫌、嫌、だめぇん……あぁん」
膣と肛門からの侵入を感じ、私は恐怖のあまり失神した。
私が意識を取り戻すと、手の自由が戻っていた。死んでもいない。あれは酒が見せた悪い夢
なのかと、変な夢を見た自分のアホさ加減にがっかりしながら起き上ろうとして再び違和感。
今回はダイレクトにとっても大事な部分に感じた。私は恐る恐る鏡を取って自分の大事な
部分を見てみた。
「嫌ぁぁぁぁぁぁっ!!」
628 『INADVERTENCE』 ◆h4.Hpofy9o sage 2010/02/16(火) 18:29:42 ID:jBarBhNN
エロイ事になった、じゃなくてえらい事になっていた。薄水色で透明で薄い板コンニャク
みたいなのが貼り付いていた。言わずと知れた触手である。夢だけと夢じゃなかった――。
それが、表面に貼り付いているだけならまだ救いもあるというものだが、どう見ても私の
体内に入り込んでいるとしか思えなかった。透明ゆえに見えてしまう。ぽっかりと口を開けた
膣と肛門。そう分かってる。感触がする、前と後ろに太い何かが入ってる感触が――。
ここで私はまた気を失いそうになったが、それは許されなかった。
「嫌? あ? 何? うご、動かないでぇ!! あぁん」
前と後ろと両方の穴で抽挿が始まり、私は身悶えた。すると信じられないことに声がした。
≪美鈴、痛くない? 大丈夫?≫
私の股間から……。クリトリスを震わせて。触手がしゃべってますよ?
「ひゃん、だめぇ……そんなとこブルブルさせないでぇ、あぁん」
≪え? あっ……じゃあ≫
それはまるで水が流れるように私の乳首に延びて、今度はそこが震えて声を出した。
≪ここならいい?≫
「嫌ぁっ!! どうしてそんなとこばっかりぃっ!!」
≪アレ? おかしいな? 今、美鈴が寝ている間に確認した、心地よく感じていると
反応があったとこなのに≫
触手は人間の感情などを汗の成分や心拍数から感知することができると習ったが研究は
間違いないようだ。
≪それじゃ、ここならいい?≫
胸を経由して延びた触手が私の唇の上で震えて口内に入り込んだ。そしてそのまま私の
口の中を隅々までつつきまわり、最後に舌を擦ってから吸い上げて出て行った。
「ふぁっ、あぁん」
口から出た触手は細く二つに分かれて私の頬を撫でるように這い上って耳に入り込んだ。
ぞくぞくする。触手はそこで優しい音を出した。
≪バレンタインのチョコありがとう≫
「何の事よっ!? ひゃん」
≪2月14日に夜の公園でボクにくれたでしょ?≫
私はあの無くしたポポロチョコの事かと瞬時に悟った。
「別に、アンタにやったわけじゃっ!! ふぁっ」
≪あ、それ知ってる。ツンデレって言うんだよね?≫
「違うからっ!!」
≪ボクはOKだよ≫
「な、何が? ひゃぁぁん」
時々変な声が出るのは、触手が私の膣と肛門を出たり入ったりしているせいだ。
≪つがいになること≫
「つ、つがい?」
ってあれか小鳥とか雌雄を一緒に飼うことだよね? え? え? え? それって??
「いや、いや、いや、そんなの望んでないしぃ……あはぁん」
≪ニンゲンって何かと嘘つきだよね。繁殖孔が水分を出すのって最高に気持ち良くって、
子孫を残したくなった時だって知ってるよ。こんなにびしょびしょにしておいて……
それにさっきから雄を誘う鳴き声を出してるでしょ?≫
「これは……あん、あ、ああぁん……違うの……」
629 『INADVERTENCE』 ◆h4.Hpofy9o sage 2010/02/16(火) 18:31:07 ID:jBarBhNN
≪ほら、また嘘言う。しょうがない。正直になるまでお仕置きだ≫
それから触手は激しい抽挿をしたかと思うと、ぴたりと動きを止めることを何度も繰り返した。
私はその焦らすような動きにもう訳が分からなくなって、尻を振りながら触手に向かって懇願していた。
「あぁん、あ、あぁん、もうどうにかしてぇ、もう、正直になりますからぁぁん」
≪わかった。じゃあボクとつがいになるね?≫
「あぁん、いい……いいの」
≪ボクと一緒に触手の森に来るね?≫
「あぁん、もう……イクイクイクゥゥゥゥッ!!」
私は膣内に注がれる熱い物を感じながら、あまりの快感にそのまま気を失い、気付くと見知らぬ森の
草の上に寝ていた。
「ここ……?」
≪触手の森だよ≫
「ど、ど、ど、ど、どうやって?」
≪みんなで力を合わせて自動車になって運んで来たんだ。マイハニー≫
「その、微妙にズレた人間情報はいったいどこから来るわけ?」
≪美鈴は知ってるでしょ? ボクらが風に乗せてメモリーを伝達できるって≫
――触手目流動体スライム属フィラム科――別名、詠う妖精
≪美鈴にチョコを貰った時、美鈴のホントの気持ちが分からなくて、暫く仔猫に擬態して
様子を見てたんだ。そしたら美鈴はとても優しくてボクは直ぐに気に入ったよ。
あぁ、でも、この星にこんな素敵なイベントがあってよかった。 さぁボク達の子どもを
作ろうね。きっと美鈴に似て可愛いよハニー≫
触手は無機物にしか擬態できなかったんじゃなかったのか? っと思ったが、その後は
もう何も考えられなかった。
「やぁぁん、そこはだめぇ……あぁん、気持ち良過ぎるのぉ、あん、あぁん」
≪美鈴ったら、ボクの受精管をそんなに締め付けて絞りだそうとするなんて、そんなに
欲しいならいっぱい注いであげるからね≫
「ひゃん、すごぉい」
こうして私は迂闊にも触手の妻になりました。
≪終≫
穴埋めいたす。ちょびっと食人等グロ表現あり。トリにて回避よろしく。容量関係で最後まで入らなかったらゴメン。
思えばその日は、おかしな事が色々とあったのに迂闊にも私はその一つ一つの点を
結び付けて考えることができなかった。
3月14日の早朝、私は仕事に向かうためにアパートの部屋を出た。いつものように
階段を通り、集合郵便受けで自分の部屋番のボックスから新聞を引き抜くと、一緒に
何かが引き出されたらしくパサリと物が落ちる音がした。
私は何だろうとコンクリートの床を見た。その音の主はどうやら白い物体を入れた
袋状の透明なビニールを可愛らしいリボンでラッピングした物だった。
『川上美鈴さん Happy White-day バレンタインのチョコをありがとう』
「は?」
袋の表面に張られたシールの文字を読んだ私のこの間抜けな反応には訳がある。
私はバレンタインデーには誰にもチョコを渡していないのだ。心ときめく男性と言う
ものもいないし、職場は殺伐としている所で新米の私がチョコなど出そうものなら
「そんな事で浮かれてる暇があるなら仕事を覚えろ!!」などと罵声が飛んできそうな
雰囲気の所なのだ。
まぁ、それでもひょっとして職場の誰かが「チョコは?」などと言った時のためにと
いかにも義理だと分かるように、苺とチョコが二段になった三角のポポロチョコを一箱
買って携行した一日であったが、結局そのような事もなく、帰り道、公園のベンチに座り
独りで食することになった。
と、ここで私は、大事なことを思い出し迂闊にもその意味不明の袋を鞄にしまって
出勤の途についた。
家の近くの公園、そうここでする事が“大事なこと”私は目的の対象を探す。
だが、茂みやベンチの下やごみ箱あたりを探してもふわっふわの白い仔猫は見当たらなかった。
実は、バレンタインのあの夜、私はここでチョコを食す折、迂闊にもひとつ取り落として
しまった。かなり探したのだが暗さもあり結局見つからず、仕方なく翌朝も探しに行って
その仔を見つけた。それ以来、失くしたチョコを探しつつその仔猫に餌をやっていたのだが……
見当たらない。
「良い飼い主に拾われたのなら良いが」
私は独りつぶやいた。するとどこかであの仔猫の甘えた鳴き声がしたような気がした。
まぁ、気のせいだろうと思った。だって自分の鞄の中から聞こえた気がしたなんて……。
少しさびしい様ななんとも言えない気持ちを抱えて出勤したが、勤め先でそんな事を
考えていたら一発でどやされてしまう。私は職場の玄関で気持ちを切り替え、自分の課に
入る時いつものように敬礼し声を張り上げて言った。
「おはようございますっ! 川上検査官、只今出勤いたしましたっ!」
あちらこちらから「おう、おはよう」と声がかかった。
ここは『触手管理局人的被害対策第2課』である。西暦2010年の獅子座流星群のあの夜、
流星にまぎれて地球に降り注いだ触手との攻防は未だに続いている。
街にゴミが無いのも――ゴミを落としてはいけないのもそのせいだ。触手の中には
無機物になら擬態できる物がいる。触手の質量から言って靴より小さな物が危険とされている。
私がポポロチョコひとつに必死になっているのもそのせいだ。
……つまり、ポポロチョコ紛失は物凄い失態である。バレれば始末書がきっと束で襲ってくる
だろう。私はポポロチョコはあの仔猫が食べたのであれば良いと願わずにはいられなかった。
と、まぁ、そんなこんなで一日の仕事を終え、家路につく。帰りにも公園に寄ったが
やはりあの仔猫はいなかった。
私はアパートに帰り着き、シャワーを浴びるとバスローブのまま缶ビールを呷った。
「アパートじゃなきゃ飼えたんだけどな……」そんな、今更どうにもならないことを呟きながら、
酔いが回った私はそのままベッドに倒れ込んで寝てしまった。
627 『INADVERTENCE』 ◆h4.Hpofy9o sage 2010/02/16(火) 18:28:30 ID:jBarBhNN
どれくらい眠ったろうか、私は違和感で目を覚ました。
――手が自由にならない?
まるで後ろ手に縛られているように動かない。なぜ? 誰が?
「誰っ!?」
返事はなかった。だが、ベッドサイドで何かがカサカサと音を立てた。こんな音がするものと
言えば、黒くて艶々してる6本足のアレか――じゃなくて、その音のする方を見ると今朝の
ホワイトデーの包みが落ちていて、私は鞄から出したっけ? などと思いつつも、その形状の
変化に気が付いた。その包みから白い紐状の何かが私の方に伸びていた。恐らくはその端が
私を拘束しているのだろう。
瞬間、酔いも醒めゾワッと毛が逆立つ、アレは触手! ならば猶予はない。私は身を捩って
拘束から逃れようとした。するとその抵抗に引きずられ、紐状の物に繋がった包みが宙に舞った。
そこで、可愛らしい包みは形状をゆがませ完璧な触手の一科の形状をなした。
――触手目流動体スライム属フィラム科
完璧な擬態をし、その能力からもかなりの知性が窺える。雌雄異体。それから、それから……
記憶の中からソレの弱点を探すが、焦り過ぎて何も浮かばない。
そうする間にも、ソレは幾本もの冷たい紐になって私の脚を這い上り、バスローブの中へ
潜り込んで来た。
「嫌ぁぁ!! やめて!! 怖い!!」
叫んだところで、どうにもならないと分かっているのに叫ばずにはいられなかった。
職業がら触手に寄生された者の末路をいくつか知っている。触手局に入局するとすぐに
見せられるビデオにあるのだ。
それは、歪んだ自分の趣味のため幾人もの患者を殺してきた死刑囚の元女医が、減刑を
条件に触手寄生の実験に臨んだ時の物だ。
触手が寄生すると女医は、カメラの前だというのに淫らな声で喘いだかと思うと、涎を流して、
髪を振り乱すなど、知的な女医の面影はどこにもなかった。そうするうちに過ぎる快楽から
触手を引きはがそうと手を伸ばした。悲劇はそこで起こった。伸ばした彼女の手は触手に
呑み込まれ、出てきた時は骨の一部しか残っていなかった。そのまま彼女は、絶叫とともに
肥大化する触手に呑まれて消えた。
他にも、触手の卵を産みつけられた人の腹を破って触手の仔がわらわらと出てくる映像や、
触手が肛門から入って数分後に腹がペコリとへこみ、内臓を食われ死んだ人の映像も視た。
その現実が、今ここにある危機。
「い、嫌っ! 嫌だぁっ!! やめっ! はぁん」
はぁん ……だと? 私は自分の口から出た声が信じられなかった。あんな不気味な触手に
躰を這いずり回られて、自分でも初めて聞く変な声を出すなどと……。
「やぁ、もう、だめぇ……そんなとこサワサワしないでぇ」
私はバカバカしいことに膣と肛門の間をくすぐるように動く触手にお願いをしていた。
何を言っているのだと頭の片隅では思うのに、その少ない理性の部分すらどんどん痺れたように
なって行く。これではあの女医のようではないか。そう思うと情けないことだが恐怖で躰が
震えてしまう。
「いやぁっ!! そんなとこ入ってこないでぇ!! 嫌、嫌、だめぇん……あぁん」
膣と肛門からの侵入を感じ、私は恐怖のあまり失神した。
私が意識を取り戻すと、手の自由が戻っていた。死んでもいない。あれは酒が見せた悪い夢
なのかと、変な夢を見た自分のアホさ加減にがっかりしながら起き上ろうとして再び違和感。
今回はダイレクトにとっても大事な部分に感じた。私は恐る恐る鏡を取って自分の大事な
部分を見てみた。
「嫌ぁぁぁぁぁぁっ!!」
628 『INADVERTENCE』 ◆h4.Hpofy9o sage 2010/02/16(火) 18:29:42 ID:jBarBhNN
エロイ事になった、じゃなくてえらい事になっていた。薄水色で透明で薄い板コンニャク
みたいなのが貼り付いていた。言わずと知れた触手である。夢だけと夢じゃなかった――。
それが、表面に貼り付いているだけならまだ救いもあるというものだが、どう見ても私の
体内に入り込んでいるとしか思えなかった。透明ゆえに見えてしまう。ぽっかりと口を開けた
膣と肛門。そう分かってる。感触がする、前と後ろに太い何かが入ってる感触が――。
ここで私はまた気を失いそうになったが、それは許されなかった。
「嫌? あ? 何? うご、動かないでぇ!! あぁん」
前と後ろと両方の穴で抽挿が始まり、私は身悶えた。すると信じられないことに声がした。
≪美鈴、痛くない? 大丈夫?≫
私の股間から……。クリトリスを震わせて。触手がしゃべってますよ?
「ひゃん、だめぇ……そんなとこブルブルさせないでぇ、あぁん」
≪え? あっ……じゃあ≫
それはまるで水が流れるように私の乳首に延びて、今度はそこが震えて声を出した。
≪ここならいい?≫
「嫌ぁっ!! どうしてそんなとこばっかりぃっ!!」
≪アレ? おかしいな? 今、美鈴が寝ている間に確認した、心地よく感じていると
反応があったとこなのに≫
触手は人間の感情などを汗の成分や心拍数から感知することができると習ったが研究は
間違いないようだ。
≪それじゃ、ここならいい?≫
胸を経由して延びた触手が私の唇の上で震えて口内に入り込んだ。そしてそのまま私の
口の中を隅々までつつきまわり、最後に舌を擦ってから吸い上げて出て行った。
「ふぁっ、あぁん」
口から出た触手は細く二つに分かれて私の頬を撫でるように這い上って耳に入り込んだ。
ぞくぞくする。触手はそこで優しい音を出した。
≪バレンタインのチョコありがとう≫
「何の事よっ!? ひゃん」
≪2月14日に夜の公園でボクにくれたでしょ?≫
私はあの無くしたポポロチョコの事かと瞬時に悟った。
「別に、アンタにやったわけじゃっ!! ふぁっ」
≪あ、それ知ってる。ツンデレって言うんだよね?≫
「違うからっ!!」
≪ボクはOKだよ≫
「な、何が? ひゃぁぁん」
時々変な声が出るのは、触手が私の膣と肛門を出たり入ったりしているせいだ。
≪つがいになること≫
「つ、つがい?」
ってあれか小鳥とか雌雄を一緒に飼うことだよね? え? え? え? それって??
「いや、いや、いや、そんなの望んでないしぃ……あはぁん」
≪ニンゲンって何かと嘘つきだよね。繁殖孔が水分を出すのって最高に気持ち良くって、
子孫を残したくなった時だって知ってるよ。こんなにびしょびしょにしておいて……
それにさっきから雄を誘う鳴き声を出してるでしょ?≫
「これは……あん、あ、ああぁん……違うの……」
629 『INADVERTENCE』 ◆h4.Hpofy9o sage 2010/02/16(火) 18:31:07 ID:jBarBhNN
≪ほら、また嘘言う。しょうがない。正直になるまでお仕置きだ≫
それから触手は激しい抽挿をしたかと思うと、ぴたりと動きを止めることを何度も繰り返した。
私はその焦らすような動きにもう訳が分からなくなって、尻を振りながら触手に向かって懇願していた。
「あぁん、あ、あぁん、もうどうにかしてぇ、もう、正直になりますからぁぁん」
≪わかった。じゃあボクとつがいになるね?≫
「あぁん、いい……いいの」
≪ボクと一緒に触手の森に来るね?≫
「あぁん、もう……イクイクイクゥゥゥゥッ!!」
私は膣内に注がれる熱い物を感じながら、あまりの快感にそのまま気を失い、気付くと見知らぬ森の
草の上に寝ていた。
「ここ……?」
≪触手の森だよ≫
「ど、ど、ど、ど、どうやって?」
≪みんなで力を合わせて自動車になって運んで来たんだ。マイハニー≫
「その、微妙にズレた人間情報はいったいどこから来るわけ?」
≪美鈴は知ってるでしょ? ボクらが風に乗せてメモリーを伝達できるって≫
――触手目流動体スライム属フィラム科――別名、詠う妖精
≪美鈴にチョコを貰った時、美鈴のホントの気持ちが分からなくて、暫く仔猫に擬態して
様子を見てたんだ。そしたら美鈴はとても優しくてボクは直ぐに気に入ったよ。
あぁ、でも、この星にこんな素敵なイベントがあってよかった。 さぁボク達の子どもを
作ろうね。きっと美鈴に似て可愛いよハニー≫
触手は無機物にしか擬態できなかったんじゃなかったのか? っと思ったが、その後は
もう何も考えられなかった。
「やぁぁん、そこはだめぇ……あぁん、気持ち良過ぎるのぉ、あん、あぁん」
≪美鈴ったら、ボクの受精管をそんなに締め付けて絞りだそうとするなんて、そんなに
欲しいならいっぱい注いであげるからね≫
「ひゃん、すごぉい」
こうして私は迂闊にも触手の妻になりました。
≪終≫
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