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(停戦は突然に 前編)
525 名無しさん@ピンキー sage 2010/01/14(木) 22:43:11 ID:QRoeSo82
「だぁ~っ! なにやってるのよ! あの王国を落すのにいつまで時間を掛ける気なの!?」
「ひぃっ! す、すいません」
女王の怒号に震え上がるのは気弱な隊長の兵士だ。果たしてそんな子に兵士がついてくることが毎回不思議で仕方ないこの頃。
癇癪を起こした女王はたいそうな飾りのついた椅子に踏ん反り返って黒いショートヘアーをかき乱す。その上から見えるのは小さな猫耳二つ。
その成熟していない彼女こそがこのブラックキャット(以下、BC)帝国の女王――レティ女王その人だ。
彼女が率いるのは半猫、半人の猫人族だ。長い歴史はないが、レティの祖母は国民を思う善政で有名だった。
しかしその祖母が急死すると、その娘は本性を現したかのように悪政を開始。間もなく他国との戦争を始めた。
それまでの善政の事もあり、国としての力は持っていた帝国は周りの国を次々に陥没させていくが、近隣国に関わらず落ちない国が一つだけあった。
犬人族のホワイトドック(以下、WD)王国、十年前程前まではBC帝国とかなり親交のあった国である。
だが、それはもう十年以上も前の話だ。
レティの祖母の急死後、BC帝国の前女王であるレティの母親が宣戦布告をすると、それに応戦するようにWD王国は同盟を破棄し、攻めて来るBK帝国の兵士に抵抗。
WD王国はBC帝国の兵士を見事に撃退し続けたが、逆にBC帝国に攻め入るようなことはしなかった。
それから7年ほどでBC帝国の前女王が亡くなり、その後を引き継いだのが唯一の跡取りのレティ女王だった。
そうして火種となった前女王が亡くなったことによって終結するかに見えた戦争は、しかし終わることは無かった。
レティ女王は前女王の生前からWD王国の非道なる仕打ちを教えられてきた。もちろん、大嘘のものだが。
だが、小さなレティ女王はそれを間に受け現在まで成長し、彼女の中にとってはWD王国はもはや悪の根源と化していた。
対するWD王国は現在まで何回も停戦、和解交渉を続けているが実る気配は微塵も無いのである。
力の無いBC帝国はWD王国征服に的を絞って攻め続けるが、WD王国はそれを軽々といなし、やはり停戦を求める。
そんな終わりなき戦争がもう10年も続いてしまった。
「あ、あの……」
「なに!?」
ピリピリとした王の間に一人の兵士が現れ、女王の怒号に思わず目を瞑りながらも報告を開始した。
「ラ、ライザ様が女王様の謁見にお見えになられました!」
「ライザがねぇ……まぁ、いいわ。通してちょうだい」
「は、はっ!」
兵士が一礼の後、王の間から出て行くと同時に女王は頭を垂れたままの隊長にも下がるように命じた。
その隊長と入れ替わりにゆらりと現れた一人の女性。闇のように真っ黒なローブに身を包み、顔も同じく漆黒のフードに隠されている。
それでも彼女が女性と分かるのは、ローブの真ん中の少し上に二つの大きな膨らみが存在していたからである。
「まったく、たまには入ってくる前にそのフードを下ろしてくるぐらいの礼儀を見せたらどうなの?」
「これは申し訳ありません」
反省しているとは到底思えないような声と、人を小ばかにするようなせせら笑う声がフードの下から聞こえ、レティはわずかに顔をしかめた。
それを察したのかどうかは分からないが、間もなくフードを取り去り女性はその長く伸びたピンク色の眩しい髪をなびかせながら一礼をした。
最初の5年は終始フードを降ろさずにいた。それに比べれば、ライザの今の無礼はまだ大分可愛いほうなのだ。
526 名無しさん@ピンキー sage 2010/01/14(木) 22:43:38 ID:QRoeSo82
「ご機嫌麗しく、レティ女王様」
「あなたも相変らず元気そうね、ライザ」
お互いをあまり親しみの込められていない挨拶が行き交う。
と言うのも、ライザはそうではなかったが、レティのほうはライザのことが好きではなかった。
BC帝国の未開拓の森林に住んでいる妖しげな魔術師、という肩書きが町に出回ったのはもう十何年も前のことだ。
間違えて足を踏み入れたら最後、戻ってきたものは一人としていないというその魔術師は、時折こうしてBC帝国に謁見に来ていた。
以前、その面妖な噂を真に受けたレティはライザを召集しようとしたが、ライザがそれを受けることは無かった。
しかしライザは来るたびに舌が蕩けるような美味しい手土産やきれいな宝石などを持参してくるため、レティはライザが来るたびにこうして謁見をしていた。
「本日はお日柄もよく」
「能書きはいいの。んで、今日は何の用なの?」
あらかじめその反応を読んでいたかのようにライザはピタリと口を動かすのを止めた。その表情からは終始微笑みが絶えない。
対するレティの表情には更に不機嫌そうに新しい皺が刻まれるが、そんなことはまったく気にしていないような口調でライザは口を開いた。
「実は……此度の戦争、私が終わらせて差し上げましょうか、思いましてお伺いいたしました」
「……はっ?」
思いがけない言葉にレティは滅多に出さないほうけた声を上げ、半開きの口を開けっぱなしという貴婦人らしからぬ表情をした。
しかしそれらはすぐに引っ込み、身を乗り出して小さな星のように目を輝かせた。
「そこまで嬉しそうなお顔をしていただけると光栄の極みです」
「でも、本当にそんなことができるの? ……まさか、嘘だなんて言うんじゃないでしょうね?」
「この状況では嘘、と言っても命はなさそうですがね。まぁ、お任せ下さい」
レティが訝しむのも無理はないというものだ。
なにせ目の前に立っている女性は、魔術師と言う噂が先走りしているただの少女、という肩書きのほうがよほど似合っているからだ。
何百年にも及ぶ研究と致死性の実験によって魔術はやっと成就する、というのがこの世の魔術における勉学の基本らしい。
しかし目の前の少女の流れるようなピンクの長い髪、そして貴族より綺麗で幼げある顔とローブでも隠せないその恵まれた肉体。
そのどれをとっても噂される魔術師のイメージとはかけ離れているのだ。
「それで、何が必要なの? 一師団? それとも大量の資源かしら?」
「いえ……そうですね。使節としての書状がもらえると助かるのですが」
またも予期せぬ返答にレティは驚かされる。何万の兵を導入しても終わらないこの戦争を、一体どうやってライザは終わらせるつもりなのか、と。
しかし聞いたところで眉一つ動かさない反応を返してくる、と言うことをレティは分かっていたのでその代わりにこう言うのだった。
「分かったわ。それで、書状の内容は?」
「とりあえず、油断させるために……親善、とでもしといてください」
そんな返事を聞く頃には、もう何をするつもりかと考えをめぐらすことさえレテイには面倒なこととなってしまっていたのだ。
527 名無しさん@ピンキー sage 2010/01/14(木) 22:44:21 ID:QRoeSo82
「では、ここでお待ち下さい」
それから3日後、ライザはすんなりとWD王国の謁見の間へと足を踏み入れていた。
しかしその格好は相変らずで、端から見たら胡散臭い占い師かそこらに見えてしまいそうなものである。
それでも中に入れたのはやはりBC帝国からの書状、それ親善という名目のそれがあったからこそだった。
「ねぇ……あれが本当に親善の使者なの?」
「警戒しておきましょ。お姫様に何か変な術でも掛けるのかもしれないわ」
進められた飾り付けの椅子には座らず、立ったまま微動だにしないライザを厳しい目つきで背後から見つめるのは二人の衛兵。
しかし数年前にライザが初めてBC帝国を訪れたときには、兵士10数人に囲まれながらの謁見だった。それに比べたらかなり丁重な扱いである。
フードの下で表情を変えずに苦笑しながら、ライザはのんびりとWD王国の姫を待っていた。
そして、顔を向けずとも後ろの二人が姿勢を正したのを察知し、ライザはその人が近づいてくる足音を耳にした。
「お待たせしてすまない」
対して現れたWD王国の姫の格好もまた姫と呼ぶには変わった出で立ちであった。
銀色の鉄にわずかに可愛げを追加したような蒼い装飾が施された鎧を見ると、どちらかといえば姫というより将軍という肩書きのほうが似合っていそうな気がする。
しかしその防御より俊敏さを重視しているのであろうその鎧は、衛兵が着ているものよりは大分露出が多く、逆にそれがいやらしくもあった。
「なるほど。確かに使いとしては面白い格好をしているな」
「これは失礼をいたしまして」
王女は毅然とした動きで一際装飾のされている椅子に音もなく座ろうとしたが、フードを取り去ったライザの格好にわずかに姫は驚いた。
「ほぅ、もっとがさつな者かと思っていたのだが」
「ご期待に添えず申し訳ありません。ホワイト・ベル王女様」
恭しく頭を下げるライザに対し、ベルも降ろしかけていた腰をもう一度上げて一礼をした。とても、一使者に対して国の王女が行うに相応しくない行動だ。
「それで使者殿、貴殿の名前を伺ってもよろしいかな?」
「名乗るほどのものでもございませんが、ライザとレティ女王には呼ばれております」
レティ、という名前がライザの口から出るとベルは少しだけ感慨深げな表情をして目を細めた。
「そうか……して、BC帝国からの書状を見せてもらってもよろしいかな?」
ベルの言葉に反応して衛兵の一人がライザに近寄ろうとしたが、言葉なくベルが手でそれを制した。
「しかし」
「構わない。さぁ、ライザ殿。渡してもらえますか?」
ライザはコクリと頷き、まるで影が歩くような動きでゆっくりとベルに近づき、そしてローブ下から黒い筒を取り出した。
衛兵は持っている槍に両手を掛け、ライザがベルになにかしようものならばすぐにその尖った先端をライザのローブに突き刺そうと狙いをつけている。
「どうぞ、ベル王女」
「ありがとう」
しかしライザはあっさりとベルに書状を渡すと、中身を見ないように数歩ほど下がって目を閉じる。おかしなことをする気配は微塵も感じられない。
528 名無しさん@ピンキー sage 2010/01/14(木) 22:45:13 ID:QRoeSo82
「……まだ、戦争は続けるのか。残念だが、こうして友好への一歩を踏み出してくれたこと、私は嬉しく思う」
ベルの表情は少しだけ残念そうではあったが、大事そうに書状を何度も読み返してはわずかに笑顔を見せた。
「ご苦労だった。すぐに返事の書状を返そうと思うが……どうだろうか、よければ今晩こちらに泊まっては行かないか?」
王女の意外な言葉に驚いたのは衛兵だった。
「ひ、姫様!? そ、そのような輩をこの城に泊めようと言うのですか?!」
「ニース、口を慎め」
衛兵の過ぎた言動に、それまで穏やかだったベルの表情は冷たい怒りを孕んだそれに変わり、ニースと呼ばれた衛兵の槍を持つ手が大きく震えた。
「……すまない、失礼なことを」
「いえいえ、気になどしていませんよ。それに王女の身を一心に考えてくれるとは、立派な衛兵ではないですか」
「ふふっ、だそうだ、ニース。すまない、怒ってしまって」
そう言って微笑む王女に衛兵は涙を目に貯めながら顔を下に向けて頭を下げる。そんな光景を見てライザは思う。
同じくらいの年齢で、同じような地位に立つ二人でもこうも違うのか、と。
豪華な晩餐を終え、ライザは案内された来賓室で分厚い本を片手にくつろいでいた。
静かなその部屋にトントン、とドアを叩く音が響き、ライザは持っていた本をローブの中にしまってゆっくりとドアに近づいてそれを開ける。
すると赤い絨毯がひかれた廊下に昼間の衛兵、ニースが槍を持たずにぽつんと立っていた。
「あ、あの……夜遅くに申し訳ありません」
「いえ、どうかされましたか?」
フードの中から覗く微笑みにニースは思わず口ごもってしまうが、それを見たニースは黙って一歩身を引いて中に入るように促した。
「す、すいません」
「くすっ、気にしないで下さい。ちょうど退屈していたところですから」
ライザは窓際に置いてあった椅子をベットの近くに持ってくると、その椅子を掌で示して自分はベットに腰掛けた。
ニースが向かいに座ると、ライザはフードを取り去りその長い髪を軽く左右に振ってから口を開いた。
「ニースさんは何歳なんですか?」
「あ、こ、今年で19歳になります」
「へぇ、若いのにお城の衛兵なんてすごい出世ですね」
小麦色の頭から覗く小さな二つの耳と同じくらいにつぶらな両目は、勇ましいという印象より可愛さあふれるものを感じさせる。
「そんな……戦場に出ても私は怯えて後ろで震えるばかりで、それを見かねた姫様が推薦してくれたお陰です」
「なるほど。じゃあベル王女を尊敬してるわけですね?」
ライザの言葉に頬を染めるという分かりやすい反応をニースは返し、ライザはそれを見て珍しく表情を変えて笑った。
「だからあの時も、あんなに必死でベル王女のことを心配してたんですか」
「あ、そ、その、本当に申し訳ありませんでした!」
ニースは椅子から立ち上がると勢いよく腰を折って頭を下げた。まるで釘を打つカナヅチの様なスピードだ。
「いえいえ、本当に気にしないで下さい。逆に感心したぐらいですから、気にしないで下さい」
ベットから立ってニースの頭を優しく上げさせると、ライザはその天使のような微笑みをニースに向けた。
ニースは先ほどの自分が謝り易い様にする話の流れと、この暖かなライザの心遣いに心から感謝していた。
対するライザもニースに心から感謝し、彼女を優しく抱きしめた。
529 名無しさん@ピンキー sage 2010/01/14(木) 22:45:44 ID:QRoeSo82
「夜分遅くに失礼、私だ」
星空が一番きれいに見える時間帯に、ライザの来賓室にはまたしても来客があった。
「これはこれは、ベル王女。どうかなされましたか?」
「いえ、少し貴殿と話がしたくてな。お時間、よろしいかな?」
「もちろんです。まだ寝るには早く、退屈していたところですから」
フードの下からライザは微笑み、ドアから一歩身を引いて部屋の中へとベルを招き入れた。
ベルの格好は昼間の出で立ちとは違い、白いドレスのようないかにも王女の気品のある衣装を身に着けていた。
「そう言ってもらえると助かる」
「いえいえ。そういえばお付の方はいらっしゃらないのですか?」
ベットの前に置いてあった椅子を勧めながらライザはベルに問いかけた。対してベルは苦笑いをしながら返す。
「実は忍んできたのだ。任務に忠実なのは嬉しいのだが、さすがに私も気ままに行動したいときがあるのでね」
「なるほど。そこまでしてお伺いしていただけるとは、光栄の極みでございます」
フードを取り去ってピンクの長い髪を左右に振って整えてから、ライザは口を開いた。
「そういえば、ベル王女はレティ女王と年齢がお近いように見えますが」
「ああ、その通りだ。私もレティ……おっと、失礼」
「あっ、御気になさらずどうぞ」
「すまない。私もレティも同い年だ。……小さい頃はお互いによく遊んだものでね」
昔を思い出すベルは目を細めて小さい頃のレティの姿を懐かしんでいた。
それから白い髪の上から生えた小さな耳の根元を掻きながら、視線を下に逸らして言葉を詰まらせた。
「元気に過ごされていますよ、レティ女王も」
ライザの察しのよさに顔を上げたベルは、まるで子供の成長を喜ぶような母親のように満面の笑みで笑う。
「そうか……そうか」
「最後にお会いしたのは」
「10年前だ。戦争が始まる直後に会ったあの小さな姿のレティが、私が最後に見たレティの姿だ」
最後にあった年数を即答できるところをみれば、ベルがどれだけレティとの思い出を大切にしているのかが誰にでもよく分かる。
「やはり、お会いしたいですか?」
「……うん、会いたい。私のことなんて、レティにとっては憎むべき敵なのかもしれないけど、私にとってはかけがいのない友達だから」
ふと垣間見せたその表情は一国の逞しい王女のそれではなく、年頃の友達思いの少女のそれだった。
レティとベルは生い立ちが似ていることもあり、そして今では二人とも親を早くに亡くした者同士でもあったからだ。
「そうですか……実はいい方法があるのですが」
「っ! 本当に!?」
掴みかかろうとするような勢いで身を乗り出してきたベルにも、やはりライザの表情は変わらない。
「簡単なことです。戦争を終わらせればいいんです」
帰ってきたなんとも期待はずれの答えにベルは数秒硬直した後、やがて小さく笑いながら椅子に戻った。
「ははっ、確かに。それができればいいのだが、知ってのとおりだ。私も私の感情だけで国を滅亡させる気はないからね」
つまりベルはライザが自分に降伏するようにけしかけているのだと気付き、そしてその気がない事をしっかりと告げた。
しかしライザは逆に身を乗り出してこう追い討ちを掛ける。
530 名無しさん@ピンキー sage 2010/01/14(木) 22:47:04 ID:QRoeSo82
「他人なんて関係ありますか? あなたはレティ様に会いたい。それで充分じゃないですか」
「残念だが、その口車には乗らない。私は母から受け継いだこの国を守る義務がある。……そのためならレティだって……」
決意に満ちた目はその先の言葉を口で示すより明確に現していた。だが、その奥にある迷いがまだ消えきっていないのもまた事実であった。
「……くすっ、素直じゃありませんね。でも……」
ベルの周りをゆっくりと歩き、その背後に回った瞬間、その言葉は放たれた。
「あなたの部下は素直でしたけどね」
「なっ!?」
言葉に驚くと同時にベルの身体はライザに抱きしめられ、慌ててもがくがライザの身体は離れない。
「くっ、はっなせ!」
「いやですよ、くすくすっ。さぁって、ニース。手伝って」
そのライザの掛け声と共にクローゼットがカタカタと音を立て、そして木目のドアがゆっくりと開かれた。
「ニ、ニース! な、なんて格好を!」
そこに現れたのは一糸纏わぬニースの裸体。右手は胸に、左手は陰部に当てられているが、程よく育ったその身体を隠しきれてはいない。
「ふあぅぅ、ひ、ひめさまぁぁ……」
「きっ、貴様! 私の部下に非道な真似を!」
怒気を放ち、怒号を上げて怒りに震えるベルに、ライザはまるで一体何に怒っているのかが分かっていないような顔を覗かせた。
「ベル王女、落ち着いてください。私はニースを素直にしてあげただけですよ?」
「何をいって……ニ、ニー、ス?」
「ひめさまぁ……身体が、熱くて、たまらないの……ひめさま、ひめさまぁぁ……」
クローゼットから出てきたニースがベルの前に立った時、ベルはニースの両手が身体を隠すためではなくその火照りの煽るためのものだとやっと気付いた。
「ニース、な、何をしているんだ?」
「王女、ニースは自分の身体の快感を素直に愉しんでいるだけですよ?」
「ば、馬鹿を言え! ニースはそんなことをするようなやつでは」
「あんっ、きもちいぃのぉ……ゆびでちくびをさわったり、おま○こをいじったりすると、んんっ、きもちいいのぉ……」
自分の部下がライザに強制されているのだとベルは考えていたが、しかしニースの火照った顔、嬌声を上げるたびに跳ねる耳と尻尾を見てその考えが揺らぐ。
そして右手でいじっている彼女の穴の上には立派なものがいきり立っており、その先っぽは赤く丸まると膨らんでいる。
「さて、ベル王女。今度はあなたが素直になるためのお手伝いをして差し上げましょう」
「くっ、誰が貴様などにそんなことをさせるか!」
「ひめさまぁ、だいじょうぶですよぉ……すぐに、きもちよくなれますからぁ……」
信頼を寄せていた部下の変わり果てた姿にベルは心が折れそうになるが、首を振って弱気を飛ばすと言葉を投げる。
「ニース、あなたは操られてるの! 正気に戻って!」
「無駄ですよ。操ってるわけじゃないんですから。ニースは正直者になっただけですよ。んっ……さぁって、ニース足を持って」
531 名無しさん@ピンキー sage 2010/01/14(木) 22:48:09 ID:QRoeSo82
「あっ、はぁい。らいざさまぁ」
主の危機なのに従者はその元凶である人物の言葉に従順に反応し、ベルの両足を抱きかかえるように持ち上げた。
「きゃっ、離してニース!」
「ベットにお連れするだけですよぉ、ひめさまぁ、そんなにはしゃがないで下さい、ふふっ」
なすすべなくベッドに下ろされたベルの上にニースが跨り、いやがるベルの服を脱がせようとする。
「やめろ! ニース、やめるんだ!」
「あぅぅ……しかたないです。んっ……くふぅ、はぅぅ……」
突然顔をしかめて前かがみになったニースを不安に思いながらも、自分から意識が離れていることを好機と思ったベルは彼女のことを払いどけようと力を込めた。
ニースが身体をえびぞらせたのはその時だった。
「ふああああんっ! ……くふぅぅ……はぁはぁ」
突然の出来事にベルの全身からは力が抜け、逆にそれをチャンスと見たニースは不敵に笑うとベルの足を拘束した。
しかしそれは自らの両手ではなく、背中から生えた新たな足で、だ。
「なっ、ひぃっ! な、なんだこれは!」
ベルの腕に絡みつくそれは艶やかな紫色の光を放ち、ヌメヌメとした液体が絶えず分泌されていた。
「くすっ、王女があまりに強情なのでニースが怒ってしまったようですね」
いつの間にか裸になったライザの背中にもニースと同じように八本の足が生え、その姿はまるで―ー。
「く、くも……」
「あらっ、やはりお気づきになられましたか。いかにも、私は蜘蛛人族の端くれの者です」
「し、しかし蜘蛛人族は代々紫色か黒色の髪をしているはず」
ベルは城の書庫で見たことのある本の知識をとっさに思い出しながら口にすると、ライザは感心したように目をわずかに大きく開く。
「その通りです。この身体は森を訪れた者の身体。……ふふっ、このようなきれいな容姿をしていたので奪ってしまった次第でございます」
そう言ってニヤリと笑うライザの表情に、これが本来の彼女の姿なのか、ということにベルはそのときやっと気付いた。
「そして私は長年研究し続けたのです。私のみたいな一介の女が他の種族を支配するその方法を」
「支配、だと?」
「大変でした。森に時折訪れる者を捕まえてはその身体を奪い実験し、そして私はこの少女の身体を奪ったとき、ようやくそれを完成させた……」
そうして浮かべた笑顔に偽りはなく、本当にその長年の苦労を思い出してのことだった。
「この少女の身体には大きな魔力が備わっていたようで、それが私の術の最後の材料となってくれました。今まで何十年と悩んできた最後のピースをわずか5年で埋められたんです」
「っ、人の身体を奪っておきながらよくそのような笑顔を浮かべられるものだな!」
「くすっ、それはそうです。これでBC帝国とWD王国の長年の戦争を終わらせられると思えば笑顔もこぼれるというものでしょう」
まるで自分のチェス盤の上で最高の一手が思いついたかのようなその笑顔に、ベルの怒りのボルテージは湧き上がる温泉のようにうなぎのぼりに上がっていく。
「ふざけたことを……貴様は国を、民をなんだと思っている。貴様のゲームの駒ではな」
「王女こそ、この戦争をいったいいつまでお続けになるおつもりですか? 守るだけで攻めないのならば、この戦争は終わることはないですよ」
「そんなことはない! レティは……レティは、いつか分かってくれる! もう一度手を取り合って」
「あなたのそんな理想論のために、国民をずっと戦わせ続けるのですか?」
532 名無しさん@ピンキー sage 2010/01/14(木) 22:49:53 ID:QRoeSo82
これまでにない真剣な表情をしたライザにベルは心底驚く。端から見る限りその顔に嘘の匂いは感じない。
「……このままではあなたの政策に不満を持つ輩がいつか必ず現れ、あなたは失脚します」
そう言ってから見せる微笑みには、まるで母親が子供に優しく教えを説くような温かさがあった。
「大丈夫、あなたは素直になれないだけ。……私が、あなたをもっと素直にしてあげます」
「そうです、ひめさま……もうこんな戦争、おわりにしましょう……」
戦争は国を疲労させる。しかし、レティならいつかは自分の言葉に耳を貸してくれる。
そう信じていたベルの心に二人の言葉は深く突き刺さった。
「くっ、くるな……くるなぁぁぁ……」
ライザの足がゆっくりと顔に近づいてくるが、手を固定されてニースにのしかかられているベルにはどうしようもできない。
顔をそむけて見たところでそれはすぐに目の前に現れ、そしてついにライザが最後の宣告を口にした。
「私が、あなたを変えてあげます」
「いっ、いやぁああああ! んんんっ!」
ベルの悲鳴をさえぎったのは彼女の口に飛び込んできたライザの背中から生えた細い足だ。
それはベルの口だけではなく鼻、耳の両穴からも侵入してまるで決壊を起こした川のようにドンドンと奥へと突き進んでいく。
「ぐぅ、えぐぅ……かっ……」
宝石のような眼球が飛び出してしまいそうなほどにベルの二つの両目は大きく見開かれるが、それを見下ろすライザとニースの顔は嬉々としている。
「くすっ、そんな顔しなくても大丈夫ですよ。ちょっと苦しいかもしれませんが、すぐにそれが別の良いものに変わりますから」
両耳をふさがれていなくともパニック状態のベルがライザののんきな声など理解できるはずもなく、やがて両目から涙が溢れ出てきた。
「ああっ、ライザさまぁ、ひめさまがないていますぅ……」
「仕方ないですね。じゃあニース、ちょっと気持ちよくさせてあげてください」
「あはっ、りょうかいです~」
ぼんやりとニースの顔が視界から消えたことを察知しながらも両腕はピクリとも動かず、ベルはただひたすら顔の内側でうごめく不快な感触の恐怖に怯えるばかりだ。
そんな彼女に突如別の感触が与えられ、動かなかったはずの身体が勝手に跳ねた。
「んんんっ! んんぅぅう!
「やっぱりきもちいいですかぁ? ふふっ、うれしいです~」
ベルの白いスカートに隠れている女の穴のふちを覚えのある感触のものがなぞるように動き、その快感に身体が反応したのだ。
「いいですよ、その調子でもっと王女を喜ばせてあげてください、ニース。……そちらの穴はあなたにお任せしましょう、ふふっ」
「ありがとうございます……はぁっ、うれしいぃ……ひめさまのぉ、おま○こにわたしがうみつけさせていただけるなんて」
ニースは先ほどまでベルの両腕を掴んでいた足で絶え間なくベルの秘所をなぞり続け、対するベルの頭も段々とその快感に苦しみさえもがぼやけ始める。
「くふぅぅ……ふぅぅぅ、んっ!」
「ふあぁっ、らいざさまぁ、ひめさまのおま○こぐちゅぐちゅってないてますぅ」
「ニースも気持ちよさそうですね……では、そろそろ終わりにしましょう……私も早く王女にしてあげたくて、んんっ、疼いてきちゃいます」
小刻みに身震いをしたライザはニースと共に火照った顔でベルに笑いかけ、ベル自身はまるでそれをどこか遠くの景色でも見ているかのようにぼんやりと認識していた。
しかしそのニース自身の身体は、ニースのそれと同じように興奮が感情以上に身体を素直にさせて女陰の上には立派なモノが天に向かって伸びていた。
ニースはそれを片手で掴み、そして動かしていた足をピタリと止めてベルの入り口へと宛がうと、ゆっくりとベルの中へともぐりこみ始めた。
「ぎゅぅうう! んんんんんんぐううぐう!」
533 名無しさん@ピンキー sage 2010/01/14(木) 22:51:32 ID:QRoeSo82
飛び上がるほどに大きく跳ねたのは、ベルの純潔が奪われたからであり、ライザの侵入を拒むことが出来ずにへたっていた両耳もピンと張り詰めてその衝撃に耐える。
しかし彼女に痛みが襲うことはなかった。
「ほらっ、ベル王女……少しずつ、変わってきましたか? ふふっ、今あなたの頭の中に私の液体を染込ませているんですよ……」
衝撃に気を取られていたベルはそのせいだと思っていた頭の違和感の正体が、ライザによって与えら得たものだと気付くが、恐怖や痛みは感じない。
「くぅぅぅっっ……ぎっちぎちに……しめてくるぅぅぅ……ひめさまぁ、わたしのあしがぁ……ちぎれちゃいそうぅぅ……きゅんっ」
「くすくすっ、ほらっニース、動いてあげないと王女も気持ちよくなれませんよ?」
「あっ、ご、ごめんなさぃ……じゃ、じゃあ、うごきますよぉ……ひめさまぁ、くぅぅっ!」
「ぎゅうぅぅっっ、がっぐぅうぅ……」
ベル自身は頭が蕩けるような感覚に浸っており、声をあげてしまうのは襲い掛かる快感に身体が勝手に反応しているためだった。
もちろん、彼女がニースの足をもぎ取らんばかりに秘所に力を入れているのも、そびえたったモノの先から垂れる先走りの液体もそのためであった。
「ふぅぅっ……やっぱり、この感覚……やめられないわぁ……私の頭がおかしくなってきちゃいそう……んんっ」
絶え間なく頭に流し込まれる液体を否応なしにベルの脳は吸い込み、そしてその思考を弄られていく。
(私はWD王国の王女……民のために国を守らなくては……レティは私の大事な友達……いつか、わかってくれる……)
そんな中でベルが考えられるのは自分がなんであったのかを思い出すのがやっとであったが、段々とそれは変わり始めていた。
(私は王女……みんなが好き……でも、レティはもっと大好き……今すぐ会いたい……)
ゆがみ始めた記憶はベルの最後の砦であった国とレティとの思い出までおも侵食し、そして素直な彼女の思いは更に加速する。
(私はベル……王女様……レティのことが……会って、それで……)
眼光鋭かったベルの目が幼い少女の無垢な瞳に変わり、何かが自分の中で変わっていく恐怖は自分の中を満たす快楽となった。
やがてベルの顔の穴からするりとライザの足が抜け出ると、ベルは既に思考の変化を終えていた。あとに残るは最後の仕上げ。
身体の変化を残すのみであった。
「んぐぅうぅ……きもちいぃぃい! もっとぉおお、してぇええ!」
「くぅうぅつ! ひめさまあぁぁ……ひめさまぁああああああ!」
ベットの荒々しい交わりを椅子に腰掛けたライザは満足そうな微笑みで見守る。
お互いを抱きしめ、唇を貪り、尻尾を絡めて少しでも一つになろうと身体を重ねる姿はまさに欲望に素直になった姿そのものだった。
「かふっううう、もぅうぅ、でましゅぅううう! ひめしゃまにぃいだしましゅうううう!」
あまりの快感にろれつの回っていないニースだったが、ベルの中に入れた足を素早く動かしながらしっかりとベルのモノを両手でしごいていた。
「きゃはんっ! もうだめぇえええ! きちゃうううう! しろいのでちゃうううううううう!」
対するベルの限界ももう近いようで、丸く開いた口から舌を出したまま白い息を上げていた。
そして、ベルは身体の変化を受け入れる。
「くあああああああああんっ! れるうううううううううううううう!」
先に達したニースがベルの身体の中に子供を孕むためのそれとは別の種を放つと、熱いそれが中に流れ込んでくる快感がベルの最後の一押しをした。
「きゃああああんっ! くぁああああああああああああんっ!」
白い飛沫がニースの身体を汚し、そして二人はそれを挟み込むようにして力なく倒れこむ。
その様子を見守っていたライザはゆっくりと立ち上がると、ニースの身体の脇についていた白い液体をすくい、口に運び入れてからベルの耳元で囁く。
「さぁ、ベル王女……もうすぐ、レティ女王に会えますよ……ふふふっ」
その言葉に息を切らすベルの顔が嬉しそうに笑った。
「だぁ~っ! なにやってるのよ! あの王国を落すのにいつまで時間を掛ける気なの!?」
「ひぃっ! す、すいません」
女王の怒号に震え上がるのは気弱な隊長の兵士だ。果たしてそんな子に兵士がついてくることが毎回不思議で仕方ないこの頃。
癇癪を起こした女王はたいそうな飾りのついた椅子に踏ん反り返って黒いショートヘアーをかき乱す。その上から見えるのは小さな猫耳二つ。
その成熟していない彼女こそがこのブラックキャット(以下、BC)帝国の女王――レティ女王その人だ。
彼女が率いるのは半猫、半人の猫人族だ。長い歴史はないが、レティの祖母は国民を思う善政で有名だった。
しかしその祖母が急死すると、その娘は本性を現したかのように悪政を開始。間もなく他国との戦争を始めた。
それまでの善政の事もあり、国としての力は持っていた帝国は周りの国を次々に陥没させていくが、近隣国に関わらず落ちない国が一つだけあった。
犬人族のホワイトドック(以下、WD)王国、十年前程前まではBC帝国とかなり親交のあった国である。
だが、それはもう十年以上も前の話だ。
レティの祖母の急死後、BC帝国の前女王であるレティの母親が宣戦布告をすると、それに応戦するようにWD王国は同盟を破棄し、攻めて来るBK帝国の兵士に抵抗。
WD王国はBC帝国の兵士を見事に撃退し続けたが、逆にBC帝国に攻め入るようなことはしなかった。
それから7年ほどでBC帝国の前女王が亡くなり、その後を引き継いだのが唯一の跡取りのレティ女王だった。
そうして火種となった前女王が亡くなったことによって終結するかに見えた戦争は、しかし終わることは無かった。
レティ女王は前女王の生前からWD王国の非道なる仕打ちを教えられてきた。もちろん、大嘘のものだが。
だが、小さなレティ女王はそれを間に受け現在まで成長し、彼女の中にとってはWD王国はもはや悪の根源と化していた。
対するWD王国は現在まで何回も停戦、和解交渉を続けているが実る気配は微塵も無いのである。
力の無いBC帝国はWD王国征服に的を絞って攻め続けるが、WD王国はそれを軽々といなし、やはり停戦を求める。
そんな終わりなき戦争がもう10年も続いてしまった。
「あ、あの……」
「なに!?」
ピリピリとした王の間に一人の兵士が現れ、女王の怒号に思わず目を瞑りながらも報告を開始した。
「ラ、ライザ様が女王様の謁見にお見えになられました!」
「ライザがねぇ……まぁ、いいわ。通してちょうだい」
「は、はっ!」
兵士が一礼の後、王の間から出て行くと同時に女王は頭を垂れたままの隊長にも下がるように命じた。
その隊長と入れ替わりにゆらりと現れた一人の女性。闇のように真っ黒なローブに身を包み、顔も同じく漆黒のフードに隠されている。
それでも彼女が女性と分かるのは、ローブの真ん中の少し上に二つの大きな膨らみが存在していたからである。
「まったく、たまには入ってくる前にそのフードを下ろしてくるぐらいの礼儀を見せたらどうなの?」
「これは申し訳ありません」
反省しているとは到底思えないような声と、人を小ばかにするようなせせら笑う声がフードの下から聞こえ、レティはわずかに顔をしかめた。
それを察したのかどうかは分からないが、間もなくフードを取り去り女性はその長く伸びたピンク色の眩しい髪をなびかせながら一礼をした。
最初の5年は終始フードを降ろさずにいた。それに比べれば、ライザの今の無礼はまだ大分可愛いほうなのだ。
526 名無しさん@ピンキー sage 2010/01/14(木) 22:43:38 ID:QRoeSo82
「ご機嫌麗しく、レティ女王様」
「あなたも相変らず元気そうね、ライザ」
お互いをあまり親しみの込められていない挨拶が行き交う。
と言うのも、ライザはそうではなかったが、レティのほうはライザのことが好きではなかった。
BC帝国の未開拓の森林に住んでいる妖しげな魔術師、という肩書きが町に出回ったのはもう十何年も前のことだ。
間違えて足を踏み入れたら最後、戻ってきたものは一人としていないというその魔術師は、時折こうしてBC帝国に謁見に来ていた。
以前、その面妖な噂を真に受けたレティはライザを召集しようとしたが、ライザがそれを受けることは無かった。
しかしライザは来るたびに舌が蕩けるような美味しい手土産やきれいな宝石などを持参してくるため、レティはライザが来るたびにこうして謁見をしていた。
「本日はお日柄もよく」
「能書きはいいの。んで、今日は何の用なの?」
あらかじめその反応を読んでいたかのようにライザはピタリと口を動かすのを止めた。その表情からは終始微笑みが絶えない。
対するレティの表情には更に不機嫌そうに新しい皺が刻まれるが、そんなことはまったく気にしていないような口調でライザは口を開いた。
「実は……此度の戦争、私が終わらせて差し上げましょうか、思いましてお伺いいたしました」
「……はっ?」
思いがけない言葉にレティは滅多に出さないほうけた声を上げ、半開きの口を開けっぱなしという貴婦人らしからぬ表情をした。
しかしそれらはすぐに引っ込み、身を乗り出して小さな星のように目を輝かせた。
「そこまで嬉しそうなお顔をしていただけると光栄の極みです」
「でも、本当にそんなことができるの? ……まさか、嘘だなんて言うんじゃないでしょうね?」
「この状況では嘘、と言っても命はなさそうですがね。まぁ、お任せ下さい」
レティが訝しむのも無理はないというものだ。
なにせ目の前に立っている女性は、魔術師と言う噂が先走りしているただの少女、という肩書きのほうがよほど似合っているからだ。
何百年にも及ぶ研究と致死性の実験によって魔術はやっと成就する、というのがこの世の魔術における勉学の基本らしい。
しかし目の前の少女の流れるようなピンクの長い髪、そして貴族より綺麗で幼げある顔とローブでも隠せないその恵まれた肉体。
そのどれをとっても噂される魔術師のイメージとはかけ離れているのだ。
「それで、何が必要なの? 一師団? それとも大量の資源かしら?」
「いえ……そうですね。使節としての書状がもらえると助かるのですが」
またも予期せぬ返答にレティは驚かされる。何万の兵を導入しても終わらないこの戦争を、一体どうやってライザは終わらせるつもりなのか、と。
しかし聞いたところで眉一つ動かさない反応を返してくる、と言うことをレティは分かっていたのでその代わりにこう言うのだった。
「分かったわ。それで、書状の内容は?」
「とりあえず、油断させるために……親善、とでもしといてください」
そんな返事を聞く頃には、もう何をするつもりかと考えをめぐらすことさえレテイには面倒なこととなってしまっていたのだ。
527 名無しさん@ピンキー sage 2010/01/14(木) 22:44:21 ID:QRoeSo82
「では、ここでお待ち下さい」
それから3日後、ライザはすんなりとWD王国の謁見の間へと足を踏み入れていた。
しかしその格好は相変らずで、端から見たら胡散臭い占い師かそこらに見えてしまいそうなものである。
それでも中に入れたのはやはりBC帝国からの書状、それ親善という名目のそれがあったからこそだった。
「ねぇ……あれが本当に親善の使者なの?」
「警戒しておきましょ。お姫様に何か変な術でも掛けるのかもしれないわ」
進められた飾り付けの椅子には座らず、立ったまま微動だにしないライザを厳しい目つきで背後から見つめるのは二人の衛兵。
しかし数年前にライザが初めてBC帝国を訪れたときには、兵士10数人に囲まれながらの謁見だった。それに比べたらかなり丁重な扱いである。
フードの下で表情を変えずに苦笑しながら、ライザはのんびりとWD王国の姫を待っていた。
そして、顔を向けずとも後ろの二人が姿勢を正したのを察知し、ライザはその人が近づいてくる足音を耳にした。
「お待たせしてすまない」
対して現れたWD王国の姫の格好もまた姫と呼ぶには変わった出で立ちであった。
銀色の鉄にわずかに可愛げを追加したような蒼い装飾が施された鎧を見ると、どちらかといえば姫というより将軍という肩書きのほうが似合っていそうな気がする。
しかしその防御より俊敏さを重視しているのであろうその鎧は、衛兵が着ているものよりは大分露出が多く、逆にそれがいやらしくもあった。
「なるほど。確かに使いとしては面白い格好をしているな」
「これは失礼をいたしまして」
王女は毅然とした動きで一際装飾のされている椅子に音もなく座ろうとしたが、フードを取り去ったライザの格好にわずかに姫は驚いた。
「ほぅ、もっとがさつな者かと思っていたのだが」
「ご期待に添えず申し訳ありません。ホワイト・ベル王女様」
恭しく頭を下げるライザに対し、ベルも降ろしかけていた腰をもう一度上げて一礼をした。とても、一使者に対して国の王女が行うに相応しくない行動だ。
「それで使者殿、貴殿の名前を伺ってもよろしいかな?」
「名乗るほどのものでもございませんが、ライザとレティ女王には呼ばれております」
レティ、という名前がライザの口から出るとベルは少しだけ感慨深げな表情をして目を細めた。
「そうか……して、BC帝国からの書状を見せてもらってもよろしいかな?」
ベルの言葉に反応して衛兵の一人がライザに近寄ろうとしたが、言葉なくベルが手でそれを制した。
「しかし」
「構わない。さぁ、ライザ殿。渡してもらえますか?」
ライザはコクリと頷き、まるで影が歩くような動きでゆっくりとベルに近づき、そしてローブ下から黒い筒を取り出した。
衛兵は持っている槍に両手を掛け、ライザがベルになにかしようものならばすぐにその尖った先端をライザのローブに突き刺そうと狙いをつけている。
「どうぞ、ベル王女」
「ありがとう」
しかしライザはあっさりとベルに書状を渡すと、中身を見ないように数歩ほど下がって目を閉じる。おかしなことをする気配は微塵も感じられない。
528 名無しさん@ピンキー sage 2010/01/14(木) 22:45:13 ID:QRoeSo82
「……まだ、戦争は続けるのか。残念だが、こうして友好への一歩を踏み出してくれたこと、私は嬉しく思う」
ベルの表情は少しだけ残念そうではあったが、大事そうに書状を何度も読み返してはわずかに笑顔を見せた。
「ご苦労だった。すぐに返事の書状を返そうと思うが……どうだろうか、よければ今晩こちらに泊まっては行かないか?」
王女の意外な言葉に驚いたのは衛兵だった。
「ひ、姫様!? そ、そのような輩をこの城に泊めようと言うのですか?!」
「ニース、口を慎め」
衛兵の過ぎた言動に、それまで穏やかだったベルの表情は冷たい怒りを孕んだそれに変わり、ニースと呼ばれた衛兵の槍を持つ手が大きく震えた。
「……すまない、失礼なことを」
「いえいえ、気になどしていませんよ。それに王女の身を一心に考えてくれるとは、立派な衛兵ではないですか」
「ふふっ、だそうだ、ニース。すまない、怒ってしまって」
そう言って微笑む王女に衛兵は涙を目に貯めながら顔を下に向けて頭を下げる。そんな光景を見てライザは思う。
同じくらいの年齢で、同じような地位に立つ二人でもこうも違うのか、と。
豪華な晩餐を終え、ライザは案内された来賓室で分厚い本を片手にくつろいでいた。
静かなその部屋にトントン、とドアを叩く音が響き、ライザは持っていた本をローブの中にしまってゆっくりとドアに近づいてそれを開ける。
すると赤い絨毯がひかれた廊下に昼間の衛兵、ニースが槍を持たずにぽつんと立っていた。
「あ、あの……夜遅くに申し訳ありません」
「いえ、どうかされましたか?」
フードの中から覗く微笑みにニースは思わず口ごもってしまうが、それを見たニースは黙って一歩身を引いて中に入るように促した。
「す、すいません」
「くすっ、気にしないで下さい。ちょうど退屈していたところですから」
ライザは窓際に置いてあった椅子をベットの近くに持ってくると、その椅子を掌で示して自分はベットに腰掛けた。
ニースが向かいに座ると、ライザはフードを取り去りその長い髪を軽く左右に振ってから口を開いた。
「ニースさんは何歳なんですか?」
「あ、こ、今年で19歳になります」
「へぇ、若いのにお城の衛兵なんてすごい出世ですね」
小麦色の頭から覗く小さな二つの耳と同じくらいにつぶらな両目は、勇ましいという印象より可愛さあふれるものを感じさせる。
「そんな……戦場に出ても私は怯えて後ろで震えるばかりで、それを見かねた姫様が推薦してくれたお陰です」
「なるほど。じゃあベル王女を尊敬してるわけですね?」
ライザの言葉に頬を染めるという分かりやすい反応をニースは返し、ライザはそれを見て珍しく表情を変えて笑った。
「だからあの時も、あんなに必死でベル王女のことを心配してたんですか」
「あ、そ、その、本当に申し訳ありませんでした!」
ニースは椅子から立ち上がると勢いよく腰を折って頭を下げた。まるで釘を打つカナヅチの様なスピードだ。
「いえいえ、本当に気にしないで下さい。逆に感心したぐらいですから、気にしないで下さい」
ベットから立ってニースの頭を優しく上げさせると、ライザはその天使のような微笑みをニースに向けた。
ニースは先ほどの自分が謝り易い様にする話の流れと、この暖かなライザの心遣いに心から感謝していた。
対するライザもニースに心から感謝し、彼女を優しく抱きしめた。
529 名無しさん@ピンキー sage 2010/01/14(木) 22:45:44 ID:QRoeSo82
「夜分遅くに失礼、私だ」
星空が一番きれいに見える時間帯に、ライザの来賓室にはまたしても来客があった。
「これはこれは、ベル王女。どうかなされましたか?」
「いえ、少し貴殿と話がしたくてな。お時間、よろしいかな?」
「もちろんです。まだ寝るには早く、退屈していたところですから」
フードの下からライザは微笑み、ドアから一歩身を引いて部屋の中へとベルを招き入れた。
ベルの格好は昼間の出で立ちとは違い、白いドレスのようないかにも王女の気品のある衣装を身に着けていた。
「そう言ってもらえると助かる」
「いえいえ。そういえばお付の方はいらっしゃらないのですか?」
ベットの前に置いてあった椅子を勧めながらライザはベルに問いかけた。対してベルは苦笑いをしながら返す。
「実は忍んできたのだ。任務に忠実なのは嬉しいのだが、さすがに私も気ままに行動したいときがあるのでね」
「なるほど。そこまでしてお伺いしていただけるとは、光栄の極みでございます」
フードを取り去ってピンクの長い髪を左右に振って整えてから、ライザは口を開いた。
「そういえば、ベル王女はレティ女王と年齢がお近いように見えますが」
「ああ、その通りだ。私もレティ……おっと、失礼」
「あっ、御気になさらずどうぞ」
「すまない。私もレティも同い年だ。……小さい頃はお互いによく遊んだものでね」
昔を思い出すベルは目を細めて小さい頃のレティの姿を懐かしんでいた。
それから白い髪の上から生えた小さな耳の根元を掻きながら、視線を下に逸らして言葉を詰まらせた。
「元気に過ごされていますよ、レティ女王も」
ライザの察しのよさに顔を上げたベルは、まるで子供の成長を喜ぶような母親のように満面の笑みで笑う。
「そうか……そうか」
「最後にお会いしたのは」
「10年前だ。戦争が始まる直後に会ったあの小さな姿のレティが、私が最後に見たレティの姿だ」
最後にあった年数を即答できるところをみれば、ベルがどれだけレティとの思い出を大切にしているのかが誰にでもよく分かる。
「やはり、お会いしたいですか?」
「……うん、会いたい。私のことなんて、レティにとっては憎むべき敵なのかもしれないけど、私にとってはかけがいのない友達だから」
ふと垣間見せたその表情は一国の逞しい王女のそれではなく、年頃の友達思いの少女のそれだった。
レティとベルは生い立ちが似ていることもあり、そして今では二人とも親を早くに亡くした者同士でもあったからだ。
「そうですか……実はいい方法があるのですが」
「っ! 本当に!?」
掴みかかろうとするような勢いで身を乗り出してきたベルにも、やはりライザの表情は変わらない。
「簡単なことです。戦争を終わらせればいいんです」
帰ってきたなんとも期待はずれの答えにベルは数秒硬直した後、やがて小さく笑いながら椅子に戻った。
「ははっ、確かに。それができればいいのだが、知ってのとおりだ。私も私の感情だけで国を滅亡させる気はないからね」
つまりベルはライザが自分に降伏するようにけしかけているのだと気付き、そしてその気がない事をしっかりと告げた。
しかしライザは逆に身を乗り出してこう追い討ちを掛ける。
530 名無しさん@ピンキー sage 2010/01/14(木) 22:47:04 ID:QRoeSo82
「他人なんて関係ありますか? あなたはレティ様に会いたい。それで充分じゃないですか」
「残念だが、その口車には乗らない。私は母から受け継いだこの国を守る義務がある。……そのためならレティだって……」
決意に満ちた目はその先の言葉を口で示すより明確に現していた。だが、その奥にある迷いがまだ消えきっていないのもまた事実であった。
「……くすっ、素直じゃありませんね。でも……」
ベルの周りをゆっくりと歩き、その背後に回った瞬間、その言葉は放たれた。
「あなたの部下は素直でしたけどね」
「なっ!?」
言葉に驚くと同時にベルの身体はライザに抱きしめられ、慌ててもがくがライザの身体は離れない。
「くっ、はっなせ!」
「いやですよ、くすくすっ。さぁって、ニース。手伝って」
そのライザの掛け声と共にクローゼットがカタカタと音を立て、そして木目のドアがゆっくりと開かれた。
「ニ、ニース! な、なんて格好を!」
そこに現れたのは一糸纏わぬニースの裸体。右手は胸に、左手は陰部に当てられているが、程よく育ったその身体を隠しきれてはいない。
「ふあぅぅ、ひ、ひめさまぁぁ……」
「きっ、貴様! 私の部下に非道な真似を!」
怒気を放ち、怒号を上げて怒りに震えるベルに、ライザはまるで一体何に怒っているのかが分かっていないような顔を覗かせた。
「ベル王女、落ち着いてください。私はニースを素直にしてあげただけですよ?」
「何をいって……ニ、ニー、ス?」
「ひめさまぁ……身体が、熱くて、たまらないの……ひめさま、ひめさまぁぁ……」
クローゼットから出てきたニースがベルの前に立った時、ベルはニースの両手が身体を隠すためではなくその火照りの煽るためのものだとやっと気付いた。
「ニース、な、何をしているんだ?」
「王女、ニースは自分の身体の快感を素直に愉しんでいるだけですよ?」
「ば、馬鹿を言え! ニースはそんなことをするようなやつでは」
「あんっ、きもちいぃのぉ……ゆびでちくびをさわったり、おま○こをいじったりすると、んんっ、きもちいいのぉ……」
自分の部下がライザに強制されているのだとベルは考えていたが、しかしニースの火照った顔、嬌声を上げるたびに跳ねる耳と尻尾を見てその考えが揺らぐ。
そして右手でいじっている彼女の穴の上には立派なものがいきり立っており、その先っぽは赤く丸まると膨らんでいる。
「さて、ベル王女。今度はあなたが素直になるためのお手伝いをして差し上げましょう」
「くっ、誰が貴様などにそんなことをさせるか!」
「ひめさまぁ、だいじょうぶですよぉ……すぐに、きもちよくなれますからぁ……」
信頼を寄せていた部下の変わり果てた姿にベルは心が折れそうになるが、首を振って弱気を飛ばすと言葉を投げる。
「ニース、あなたは操られてるの! 正気に戻って!」
「無駄ですよ。操ってるわけじゃないんですから。ニースは正直者になっただけですよ。んっ……さぁって、ニース足を持って」
531 名無しさん@ピンキー sage 2010/01/14(木) 22:48:09 ID:QRoeSo82
「あっ、はぁい。らいざさまぁ」
主の危機なのに従者はその元凶である人物の言葉に従順に反応し、ベルの両足を抱きかかえるように持ち上げた。
「きゃっ、離してニース!」
「ベットにお連れするだけですよぉ、ひめさまぁ、そんなにはしゃがないで下さい、ふふっ」
なすすべなくベッドに下ろされたベルの上にニースが跨り、いやがるベルの服を脱がせようとする。
「やめろ! ニース、やめるんだ!」
「あぅぅ……しかたないです。んっ……くふぅ、はぅぅ……」
突然顔をしかめて前かがみになったニースを不安に思いながらも、自分から意識が離れていることを好機と思ったベルは彼女のことを払いどけようと力を込めた。
ニースが身体をえびぞらせたのはその時だった。
「ふああああんっ! ……くふぅぅ……はぁはぁ」
突然の出来事にベルの全身からは力が抜け、逆にそれをチャンスと見たニースは不敵に笑うとベルの足を拘束した。
しかしそれは自らの両手ではなく、背中から生えた新たな足で、だ。
「なっ、ひぃっ! な、なんだこれは!」
ベルの腕に絡みつくそれは艶やかな紫色の光を放ち、ヌメヌメとした液体が絶えず分泌されていた。
「くすっ、王女があまりに強情なのでニースが怒ってしまったようですね」
いつの間にか裸になったライザの背中にもニースと同じように八本の足が生え、その姿はまるで―ー。
「く、くも……」
「あらっ、やはりお気づきになられましたか。いかにも、私は蜘蛛人族の端くれの者です」
「し、しかし蜘蛛人族は代々紫色か黒色の髪をしているはず」
ベルは城の書庫で見たことのある本の知識をとっさに思い出しながら口にすると、ライザは感心したように目をわずかに大きく開く。
「その通りです。この身体は森を訪れた者の身体。……ふふっ、このようなきれいな容姿をしていたので奪ってしまった次第でございます」
そう言ってニヤリと笑うライザの表情に、これが本来の彼女の姿なのか、ということにベルはそのときやっと気付いた。
「そして私は長年研究し続けたのです。私のみたいな一介の女が他の種族を支配するその方法を」
「支配、だと?」
「大変でした。森に時折訪れる者を捕まえてはその身体を奪い実験し、そして私はこの少女の身体を奪ったとき、ようやくそれを完成させた……」
そうして浮かべた笑顔に偽りはなく、本当にその長年の苦労を思い出してのことだった。
「この少女の身体には大きな魔力が備わっていたようで、それが私の術の最後の材料となってくれました。今まで何十年と悩んできた最後のピースをわずか5年で埋められたんです」
「っ、人の身体を奪っておきながらよくそのような笑顔を浮かべられるものだな!」
「くすっ、それはそうです。これでBC帝国とWD王国の長年の戦争を終わらせられると思えば笑顔もこぼれるというものでしょう」
まるで自分のチェス盤の上で最高の一手が思いついたかのようなその笑顔に、ベルの怒りのボルテージは湧き上がる温泉のようにうなぎのぼりに上がっていく。
「ふざけたことを……貴様は国を、民をなんだと思っている。貴様のゲームの駒ではな」
「王女こそ、この戦争をいったいいつまでお続けになるおつもりですか? 守るだけで攻めないのならば、この戦争は終わることはないですよ」
「そんなことはない! レティは……レティは、いつか分かってくれる! もう一度手を取り合って」
「あなたのそんな理想論のために、国民をずっと戦わせ続けるのですか?」
532 名無しさん@ピンキー sage 2010/01/14(木) 22:49:53 ID:QRoeSo82
これまでにない真剣な表情をしたライザにベルは心底驚く。端から見る限りその顔に嘘の匂いは感じない。
「……このままではあなたの政策に不満を持つ輩がいつか必ず現れ、あなたは失脚します」
そう言ってから見せる微笑みには、まるで母親が子供に優しく教えを説くような温かさがあった。
「大丈夫、あなたは素直になれないだけ。……私が、あなたをもっと素直にしてあげます」
「そうです、ひめさま……もうこんな戦争、おわりにしましょう……」
戦争は国を疲労させる。しかし、レティならいつかは自分の言葉に耳を貸してくれる。
そう信じていたベルの心に二人の言葉は深く突き刺さった。
「くっ、くるな……くるなぁぁぁ……」
ライザの足がゆっくりと顔に近づいてくるが、手を固定されてニースにのしかかられているベルにはどうしようもできない。
顔をそむけて見たところでそれはすぐに目の前に現れ、そしてついにライザが最後の宣告を口にした。
「私が、あなたを変えてあげます」
「いっ、いやぁああああ! んんんっ!」
ベルの悲鳴をさえぎったのは彼女の口に飛び込んできたライザの背中から生えた細い足だ。
それはベルの口だけではなく鼻、耳の両穴からも侵入してまるで決壊を起こした川のようにドンドンと奥へと突き進んでいく。
「ぐぅ、えぐぅ……かっ……」
宝石のような眼球が飛び出してしまいそうなほどにベルの二つの両目は大きく見開かれるが、それを見下ろすライザとニースの顔は嬉々としている。
「くすっ、そんな顔しなくても大丈夫ですよ。ちょっと苦しいかもしれませんが、すぐにそれが別の良いものに変わりますから」
両耳をふさがれていなくともパニック状態のベルがライザののんきな声など理解できるはずもなく、やがて両目から涙が溢れ出てきた。
「ああっ、ライザさまぁ、ひめさまがないていますぅ……」
「仕方ないですね。じゃあニース、ちょっと気持ちよくさせてあげてください」
「あはっ、りょうかいです~」
ぼんやりとニースの顔が視界から消えたことを察知しながらも両腕はピクリとも動かず、ベルはただひたすら顔の内側でうごめく不快な感触の恐怖に怯えるばかりだ。
そんな彼女に突如別の感触が与えられ、動かなかったはずの身体が勝手に跳ねた。
「んんんっ! んんぅぅう!
「やっぱりきもちいいですかぁ? ふふっ、うれしいです~」
ベルの白いスカートに隠れている女の穴のふちを覚えのある感触のものがなぞるように動き、その快感に身体が反応したのだ。
「いいですよ、その調子でもっと王女を喜ばせてあげてください、ニース。……そちらの穴はあなたにお任せしましょう、ふふっ」
「ありがとうございます……はぁっ、うれしいぃ……ひめさまのぉ、おま○こにわたしがうみつけさせていただけるなんて」
ニースは先ほどまでベルの両腕を掴んでいた足で絶え間なくベルの秘所をなぞり続け、対するベルの頭も段々とその快感に苦しみさえもがぼやけ始める。
「くふぅぅ……ふぅぅぅ、んっ!」
「ふあぁっ、らいざさまぁ、ひめさまのおま○こぐちゅぐちゅってないてますぅ」
「ニースも気持ちよさそうですね……では、そろそろ終わりにしましょう……私も早く王女にしてあげたくて、んんっ、疼いてきちゃいます」
小刻みに身震いをしたライザはニースと共に火照った顔でベルに笑いかけ、ベル自身はまるでそれをどこか遠くの景色でも見ているかのようにぼんやりと認識していた。
しかしそのニース自身の身体は、ニースのそれと同じように興奮が感情以上に身体を素直にさせて女陰の上には立派なモノが天に向かって伸びていた。
ニースはそれを片手で掴み、そして動かしていた足をピタリと止めてベルの入り口へと宛がうと、ゆっくりとベルの中へともぐりこみ始めた。
「ぎゅぅうう! んんんんんんぐううぐう!」
533 名無しさん@ピンキー sage 2010/01/14(木) 22:51:32 ID:QRoeSo82
飛び上がるほどに大きく跳ねたのは、ベルの純潔が奪われたからであり、ライザの侵入を拒むことが出来ずにへたっていた両耳もピンと張り詰めてその衝撃に耐える。
しかし彼女に痛みが襲うことはなかった。
「ほらっ、ベル王女……少しずつ、変わってきましたか? ふふっ、今あなたの頭の中に私の液体を染込ませているんですよ……」
衝撃に気を取られていたベルはそのせいだと思っていた頭の違和感の正体が、ライザによって与えら得たものだと気付くが、恐怖や痛みは感じない。
「くぅぅぅっっ……ぎっちぎちに……しめてくるぅぅぅ……ひめさまぁ、わたしのあしがぁ……ちぎれちゃいそうぅぅ……きゅんっ」
「くすくすっ、ほらっニース、動いてあげないと王女も気持ちよくなれませんよ?」
「あっ、ご、ごめんなさぃ……じゃ、じゃあ、うごきますよぉ……ひめさまぁ、くぅぅっ!」
「ぎゅうぅぅっっ、がっぐぅうぅ……」
ベル自身は頭が蕩けるような感覚に浸っており、声をあげてしまうのは襲い掛かる快感に身体が勝手に反応しているためだった。
もちろん、彼女がニースの足をもぎ取らんばかりに秘所に力を入れているのも、そびえたったモノの先から垂れる先走りの液体もそのためであった。
「ふぅぅっ……やっぱり、この感覚……やめられないわぁ……私の頭がおかしくなってきちゃいそう……んんっ」
絶え間なく頭に流し込まれる液体を否応なしにベルの脳は吸い込み、そしてその思考を弄られていく。
(私はWD王国の王女……民のために国を守らなくては……レティは私の大事な友達……いつか、わかってくれる……)
そんな中でベルが考えられるのは自分がなんであったのかを思い出すのがやっとであったが、段々とそれは変わり始めていた。
(私は王女……みんなが好き……でも、レティはもっと大好き……今すぐ会いたい……)
ゆがみ始めた記憶はベルの最後の砦であった国とレティとの思い出までおも侵食し、そして素直な彼女の思いは更に加速する。
(私はベル……王女様……レティのことが……会って、それで……)
眼光鋭かったベルの目が幼い少女の無垢な瞳に変わり、何かが自分の中で変わっていく恐怖は自分の中を満たす快楽となった。
やがてベルの顔の穴からするりとライザの足が抜け出ると、ベルは既に思考の変化を終えていた。あとに残るは最後の仕上げ。
身体の変化を残すのみであった。
「んぐぅうぅ……きもちいぃぃい! もっとぉおお、してぇええ!」
「くぅうぅつ! ひめさまあぁぁ……ひめさまぁああああああ!」
ベットの荒々しい交わりを椅子に腰掛けたライザは満足そうな微笑みで見守る。
お互いを抱きしめ、唇を貪り、尻尾を絡めて少しでも一つになろうと身体を重ねる姿はまさに欲望に素直になった姿そのものだった。
「かふっううう、もぅうぅ、でましゅぅううう! ひめしゃまにぃいだしましゅうううう!」
あまりの快感にろれつの回っていないニースだったが、ベルの中に入れた足を素早く動かしながらしっかりとベルのモノを両手でしごいていた。
「きゃはんっ! もうだめぇえええ! きちゃうううう! しろいのでちゃうううううううう!」
対するベルの限界ももう近いようで、丸く開いた口から舌を出したまま白い息を上げていた。
そして、ベルは身体の変化を受け入れる。
「くあああああああああんっ! れるうううううううううううううう!」
先に達したニースがベルの身体の中に子供を孕むためのそれとは別の種を放つと、熱いそれが中に流れ込んでくる快感がベルの最後の一押しをした。
「きゃああああんっ! くぁああああああああああああんっ!」
白い飛沫がニースの身体を汚し、そして二人はそれを挟み込むようにして力なく倒れこむ。
その様子を見守っていたライザはゆっくりと立ち上がると、ニースの身体の脇についていた白い液体をすくい、口に運び入れてからベルの耳元で囁く。
「さぁ、ベル王女……もうすぐ、レティ女王に会えますよ……ふふふっ」
その言葉に息を切らすベルの顔が嬉しそうに笑った。
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