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(追放者たちの宴 第三章~第五章)
第三章 初めての交わりと姉妹の過去
「……ふぅ。本当になんとかなるもんだねぇ……」
海から上がった私は身体を犬のように震わして水気を飛ばし、フィオから渡されていたかなり使い古しのTシャツで身体を拭いた。
しかし……ベタベタとしてた身体を流すために海に入ったわけだけど、結局水分を拭いちゃったらまたベトベトになるよねぇ……海水だから。
多分すぐに脱ぐことになるんだろうけど、一応私はベトベトになり始めた身体に服を身に着けて、フィオが待っている場所に向かった。
私は先ほど案内されたフィオの部屋の前に着いた。部屋、と言っても大した仕切りは無く、ただ入り口が一部分しかないところを彼女達はそれぞれの部屋にしていた。
「くっ……んっ……」
耳をすますとフィオのわずかな声が耳に入って私は思わず足を止めた。何かグチュグチュという水音もリズムよく聞こえてきている。
私はその音の正体を確かめたくなって、岩の陰から部屋の中を覗こうとした……が、足元にあった石を蹴ってしまい、それが洞窟内に反響した。
「くんっ! だ、誰?!」
「ご、ごめんなさい!」
フィオの声に私はすぐさま頭を引っ込めて謝った。すると岩の向こうからなにやらガサゴソと慌しい音がせわしなく聞こえる。悪いことしちゃったぁ……。
「ご、ごめん! どうぞ!」
部屋の中から顔を出したフィオが私の手を引っ張って部屋の中に招き入れた。中の様子は、先ほど案内されたときとほぼ同じ状態に戻っている。
「か、身体は洗えたかしら?」
フィオが誤魔化すように私に聞いてきた。それに合わせて私も頷いて答える。
「う、うん。でも、やっぱり海水だから結構ベタベタしちゃってるんだけど……」
「ああ、それは大丈夫。心配しないで」
ニコリと笑ってくれたフィオの様子を見ると、本当に心配する必要はないみたいだ。
「あっ、ちょっと待ってね」
フィオが部屋の入り口の横に立つと、なんとそこに立て掛けてあった大きな石を軽々と持ち上げ、入り口を塞いでしまった。
「こうしないとクロエが悪戯しに来るかもしれないから」
同時に私の逃げ場も断たれたわけだけど。……ま、逃げる気もないけど。
「でも本当に海の底なんだね。私も海中で息できちゃったし」
「でしょ? 多分、私が復活させたときに水中でも生きられるような身体に変わったんだと思う。お母さんからそう聞いたことがあるわ」
「へぇ~。そう言えばさ、フィオたちのお母さんって何処に住んでるの?」
何気なく聞いた私の言葉にフィオの笑顔に曇りが掛かった。それに私が気付いた瞬間、聞いちゃいけないものだったとすぐに気付いた。
「ご、ごめんなさい!」
「あ、ううん。大丈夫。……それに、この際だから詳しく話したいんだけど、いいかな?」
フィオの静かな微笑みに私は二つ返事で了承した。するとフィオは床に座り込み、私にもそうするように手で示してきた。
「えっとね……私たちが寄生されたのは今から2年くらい前。私がクロエぐらいの頃だったの」
「フィオがそれぐらいってことは、クロエやニノン……ちゃんたちはもっとちっちゃかったの?」
私は入り口をしっかりと塞いである岩を見てから聞いた。
「クロエは結構大きかったけど、ニノンはまだ幼なくて母親二人に甘えてたかな、ふふっ。あの頃はとても可愛かったなぁ……あ、今も可愛いけどね」
フィオがクスクスと笑って話した。確かにニノンさん……ううん、さすが人魚って事もあって三人ともすっごく可愛いよね、今更だけど。
「そんな時、私とクロエが海底に落ちてた二匹の海蛇みたいなものを見つけてね。それぞれ、綺麗な青と赤の光を放ってて、私たちは思わずそれを手にとってみたの」
段々と伏目がちになるフィオを見て私もある程度の予想がついた。そしてその答えがフィオの口から出される。
「手に取った瞬間、それは素早く私たちの……下の前の穴から入ってきた。掴みなおすヒマもなくて、一気に侵入したそれが私たちに寄生したの」
フィオの視線の先をよく見ると、彼女は自らの秘所を見ていた。おそらくそこから入られた感触を思い出しているのだろう。
「私とクロエにはそれに寄生されたって分かったのは、頭にその寄生体に関する情報がそのとき一通り埋め込まれたから。それとね、それが私たちを通じて仲間に寄生できるって事も分かったの」
「そ、それで人魚の仲間に寄生を?」
私の予想にフィオは首を振った。まぁ、私もフィオがそんなことはしないだろうと思ってたわけだけど。
「私とクロエは正直に私たちの二人のお母さんに話して、お母さんが群れの人魚のみんなに説明してくれたの。……でも、みんなは認めてくれなかった」
「ど、どういうこと?」
「私たちには仲間に寄生するつもりはなかったの。けど、群れのみんなはそれを信じてはくれなかった。だからみんなは、私とクロエを追放することに決めたの」
「そんな……酷い……」
私は心底そう思ったが、フィオは微笑みながら首を振って否定した。
「みんなの判断は正しいと思う。それに、寄生されてから仲間を見て異常に興奮することもあったわけだったから。だから私とクロエはそれを受け入れたの」
「……お母さんたちは、それに対して仲間に不満を持たなかったの?」
「片方のお母さんはそれが決定する直前に死んじゃったけど、もう片方のお母さんは何も言わなかった。でも、よかった。下手に口を出せばお母さんまで群れにいられなくなっちゃうから」
フィオは微笑んで話していても……私にはそう思えなかった。私の母さんなら……おそらくめちゃくちゃに怒ってくれただろうから。
「それで私とクロエが群れから出て行こうとしたとき、ニノンが私たちに着いて来てしまったの……ううん、着いて来てくれたの。あんな馬鹿親のところになんか居たくない、って言ってくれて……」
フィオが感慨深く目を瞑ってしまう気持ちも私にはよく分かった。
「そして群れを離れた私たちが奇跡的に見つけたのがこの洞窟なわけ。海底のクレバスにある洞窟だから、海底に住んでる人魚達は来ないからお互いに干渉をしなくて済む。ふふっ、海水も入ってこないしいい場所でしょ?」
珍しく自慢げに言ってきたフィオに私は大きく頷いて同意する。
「まぁ、ここは酸素が無いから普通の人間は来れないと思うけどね」
フィオが言った言葉に私は苦笑いで返す。と言うことは私は酸素が無くても生きていける人間になっちゃったと。ううっ……もう海に身投げしたぐらいじゃ自殺はできないってことかぁ。
そのとき、ふと気付いたことをフィオに聞いてみた。
「ってことはさ、寄生されているのはフィオとクロエだけってこと?」
私の言葉にフィオは一瞬だけ硬直した後、苦笑いをして首を振った。あれ……また、聞いちゃいけないこと聞いたかな。
「ニノンには……私とクロエが寄生させたの。ここを見つけた後、ニノンが自分でそう望んでくれたから」
説明してくれたフィオの顔はとても複雑そうな表情だった。
「ふふっ……酷い姉でしょ? せっかく寄生されてなかった妹にそんなことするなんて」
「……ううん。そういう表情してるって事は、妹のことを案じてすごく悩んだ末に出した答えでしょ? そこまで妹の事を考えてるなら立派なお姉さんだよ」
「……ありがとう。……それとね、もう一つ見てもらいたいものがあるの」
スクッと立ち上がったフィオが部屋の隅にあった古めかしいカーテンのような布切れの近くに歩み寄った。その布切れの下に何かあるようでむくりとそれは膨らんでいた。
「これから見るものは……ちょっと刺激が強いと思うの。……けど、隠し事はしたくないから見せるね」
フィオの真剣な眼差しに、私は一呼吸置いて覚悟を決めから力強く頷いた。
そしてフィオがその布切れを一息に取り去り、その下に現れたのは……。
「……人……間?」
私と同い年……いや、もっと若い人かもしれない。そんな女性が虚ろな目をして裸のまま座っていたのだ。
「この人もひよりと同じように海で死んでたの。ただ、ひよりと違ってこの人を見つけたのは死後1ヶ月過ぎてからで、もう魂は旅立ってた」
フィオがその女性の隣に座り込んで彼女の頬を撫でる。すると虚ろな視線がフィオに向けられるが、その表情が変わる事はない。
「こうやって復活をさせても、魂がないから感情もないの。ただ身体に感覚が伝わればそれにわずかになら反応はするんだけど……」
「……そうなるって分かってて復活させたの?」
彼女と同じ人間として、私はフィオに聞いた。……この海域は日本の女性の間で自殺の名所として有名な場所。おそらく彼女も私と同じで自殺をしに来たのだろう。だとしたら私と同じように、彼女もこれ以上生きていられないような辛い目に合ったのだろう。
それなのに……それなのに、安らぎを求めて死を選んだのにこうして復活させられているのはあまりにひどいことだと感じたからだ。
「ええ。魂がない人間を復活させたらどうなるかも、復活させるときこの人の身体に既に魂がないのも、分かってた」
「だったら、なんで……」
「可愛かったから。それに、人魚の間でも人間の女の人はとてもいい穴を持ってるって評判だったから……どうしても欲しくなって」
「それって……」
私は言葉に詰まった。あまりに怒りが込み上がり過ぎていてこめかみが痛くなってくる。
「……妹二人と一緒にお互いに触手を入れあったりもした……けれど、それぐらいじゃ私たち人魚の欲望は満たされなくって」
「だからって死んだ人間まで……」
「死んでいたから、なの。魂はもうあの世に逝ってるはずだから……だから残された身体は好きにしていいかなって……言い訳だよね、ごめん」
「じゃあ、なんで私を復活させたの? 一ヶ月待って、私の魂があの世に逝ってから復活させなかったのは何でなの?」
魂があの世に逝った人間なら別にいい、と思ったわけじゃない。けど、私はそれより今は私を復活させた理由を聞きたかった。その理由次第では彼女に殴りかかるつもりだ。
「……一つは魂のない人間では感情がなく、穴もほとんど締めてくれない。はっきり言えば物足りない。だから……」
もうこの時点で殴りかかりたいのだが、『一つは』ということはまだ理由がありそうなのでそれを待った。
「もう一つは……これ」
そう言って彼女が着ている使い古しのベストのポケットから、あるものを取り出した。
「あ、それは!」
「ごめん。返しそびれちゃってて……中も見ちゃったんだ」
フィオが頭を下げながら差し出してきたのは、誕生日に貰った懐中時計だった。……受験のときにこれで時間を見ろ、ってくれた、私の大切なものだ。
私はそれを受け取ると、すぐさま中身を確認した。やはり海に飛び込んでしまったため、かなり色あせて皺くちゃになっていはいたがやっぱりそれは挟まっていた。
「よかったぁ……なんとか見える」
「家族の写真。……その真ん中で一際笑っているひよりを見て、この人なら分かってくれるんじゃないかって思って」
無口だけど優しいお父さん、いつもニコニコで元気なお母さん、そして……私の事が嫌いでも応援してくれた、妹のひなた。去年に家の前で撮った大好きな家族の集合写真だ。
「これは予想なんだけど……ひよりの自殺ってその家族の人たちに関係があるんじゃないかな?」
フィオの言葉を聞いて私の脳裏あの記憶が蘇る。自殺した3ヶ月前に私が犯した罪の、その結果の映像が脳裏にフラッシュバックした。
「……ねぇ、そんなに人魚の欲望って強い物なの? 私は正直、信じられないよ。フィオたちには人間みたいに理性がある……だから理性で欲望を抑えられるんじゃないかって私は思うんだけど……」
「正直言えばもう夜だから、今にもひよりに飛びつきたいほど、かな。信じられないだろうけど……この欲望が醒めた事は物心ついてからは1秒だってないよ」
……だめだ、想像つかない。一体どれだけ身体が疼くんだろうか。
「ひよりは、海に飛び込んで死んだ死体がどうなるか分かる? 一ヶ月間以上海底に残っていることなんて本当に稀なことなんだよ? 大抵は魚に食べられたり、腐敗が進みやすい人は2週間と持たずに全身が腐敗したりね」
「でもそれで魚や微生物の栄養になるならいい事じゃない。それが何の問題があるの?」
私はフィオに言った。するとフィオは諭すように言い返してきた。
「つまり海の生物のものになる、ってことだよね? ……なら残された身体を私たちが貰うことの何がいけないのかな?」
フィオは微笑みながら首を傾げた。……確かに魂が本当にあの世に逝っているというのなら彼女の言い分は正しい。私だって死ぬときに身体は海の生物の栄養になるんだろうなぁ、って思ったわけだから。
それでも納得できないのはあの世に魂が逝っているという保証がないから。それと、おそらく人間的な社会意識だろう。死者は安らかに眠らせるべし、それが私が日本で住んできて勝手に身についたことなのだろう。
私は魂のない女性に近づき、その頬にゆっくりと触れた。彼女の相変わらずな虚ろな目が私を見ていて、触れた指先からは人間的な温かさを感じれる。
「……ごめんなさい。やっぱり私たちに嫌悪感が湧いたよね? やっぱりやめて、明日の朝に地上に帰って。暫くすれば身体も人間的なものに戻ると思うから」
「いい。やろう」
「えっ?」
私は女性の頬から指先を離すとフィオのほうに向き直った。ぽかんとした彼女の顔が目に入る。
「確かにフィオの言うことは正しいよ。私だって自分の身体が死んだ後にどうなるなんて深くは考えなかった。多分、この人もそうだと思う。……そんなことを考えられる人は、まだ自殺をしないよ」
自殺をする直前、最後に私が考えてたのは……あの世に私が逝ったとき、家族が私を許してくれるかどうかだった。自分の死体のことなんて、正直海に身を投げてしまえば終わりだとしか考えてなかった。
「……ありがとう。ただ、これだけは知っておいて。私やクロエ、もちろんミノンだって死んだ人間の遺体を粗末に扱ったりはしてない。これだけは、分かって」
フィオの言うとおり、それは間違いないだろう。現に目の前の女性の一糸纏わぬ白い肌には傷一つついていない。正直、私の素肌より綺麗な気さえする。
「彼女の名前は?」
「名前はつけてない。クロエとミノンもそれぞれ一人ずつ彼女のような魂のない人間……私たちは『人形』って呼んでるけど、それを漏っているけど名前みたいなのはみんなつけていないと思うよ」
人形か……まぁ、彼女達をいまだに人間って呼ぶよりかはいいのかもしれない。
「ごめん。そろそろこの子寝かしてあげなきゃ」
フィオがその人形の前に膝を折って、その華奢な身体を抱きしめてあげながら頭を優しく撫で始めた。すると人形の虚ろな目が細まり、トロンと眠そうな目に変わった。
そのまま十数秒で人形は完全に目を閉じ、岩肌に寄りかかるように静かな寝息を立て始めた。それを確認したフィオが身体を離し、頭から布切れを掛けてあげた。
「これで明日の朝まではぐっすりと眠ってくれるの」
「食べ物はどうしてるの?」
「一応私の触手をその……穴から入れて私の体液を注入してあげれば特に他の栄養は必要ないの」
フィオが頬を掻きながら少し恥ずかしそうに答えた。
「一応、これで私の話は終わりなんだけど……」
「うん。……全部を正直にありがとうね。じゃあ、やろっか、ね?」
「よ、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
先ほどまではフィオは凛とした態度だったのに、今は別人のようにオドオドとしている。そうされるとこっちも恥ずかしくなってくるのに……。 私とフィオは苦笑いをしながらお互いに服を脱ぎはじめ、ふと思い出したように私にこう聞いてきた。「あ、あと人魚の足に戻したいんだけど、いいかな?」
「う、うん。どうぞ」
私の返事の後、裸になった彼女の絶妙に肉付きの良い足が変化していき、あっという間に人魚のそれへと変わった。幻想的な光を静かに放っている青色の鱗がまるで宝石のようだ。
「じゃあ……失礼して」
「は、はい」
いざ裸の人魚を目の前にして私はいよいよ緊張していた。まぁ、多分フィオがリードしてくれるんだろうけど……。
そう思っているとフィオの人魚の足が私の身体に優しく絡み付いてきた。意外思ったのは、その青い鱗が見た目より全然柔らかかったことだ。
「はぁ……柔らかくて暖かい身体……可愛い」
私の首に手を回して火照り顔でニコリと微笑むフィオ。ううっ……恥ずかしい。
「おいしそうな唇……んっ」
「んっ……んんっ」
フィオが私の口の中でゆっくりと動き回る。いきなりのキスに驚いたが、それも目を瞑ってキスに集中するフィオの表情を見れば可愛らしくて、私もフィオの舌に合わせて自分の舌を動かす。
その反応に喜んでくれたのか、フィオが先ほどの人形みたいに目を細く開いて嬉しそうに私を見つめた。私も彼女の身体を抱きしめることによってそれを返す。
「んぁっ……あっ……甘い」
唾液の橋を作りながらゆっくりとお互いに顔を離し、橋が崩れた後に私が舌の上に感じたのは氷砂糖のようなゆるやかな甘さだった。
「美味しい? ふふっ、ひよりのもすっごく甘くて美味しいよ」
フィオの柔らかい微笑みが私の心に響き、もっと彼女を喜ばしてあげたいという感情が湧き上がってくる。
「ひんっ! もぅぅ……」
「ふふっ、かわいいこえ」
私の乳首を指先て優しく揉んでくるフィオに、私は冗談交じりの膨れっ面をして、仕返しに彼女にも同じことをしてあげる。 「あんっ……きもちいいよ」
フィオが私の肩に首をもたれかけて耳元で囁いてきた。熱を孕んだ彼女の息が私の耳に吹きかかってくる。
「ほらっ、コリコリってなってきたよぉ」
「はずかしいこと、いわないでよ……」
先ほどまで恥ずかしがっていたフィオが楽しそうな顔で私の乳首を攻めかけ、そして不意に手を離すとゆっくりと顔を胸に近づけて私の乳首を咥えた。
「きゃぁんっ! ちょ、ちょっとやめてぇ……」
「んん~っ、おいひぃ」
「ふあっ! し、したで、ころがさない!」
私の乳首がクリクリと彼女の舌の上で転がされ、生暖かいそれが私に快感を伝えてくる。
その仕返しに私もフィオに何かをしようと探すが、彼女が前かがみになっているため胸の位置が分からず乳首が攻められない。
そうして手探りに彼女の身体を触っていると、不意に私の人差し指が何かに入り込み、途端にフィオがビクンと身体を震わした。
「あんっ! んもっ……せっかちさん」
「ま、まさか……」
フィオが私の胸から顔を離して自らの上半身を起き上がらせていくと、私の右手の人差し指が彼女の……穴に沈み込んでしまっていた。
「ご、ごめん! 大丈夫?!」
私は急いで右手を引き抜こうとすると、フィオがその手に自分の手を重ねて引きとめ、ニコリと微笑むとそのまま私の手を更に穴の奥へと押し入れ始めた。
「ちょ、ちょっと!」
「んぁぅぅ……あったかいでしょ? ふぁぁ……ひよりのあったかいてが、わたしのなかにはいってくるぅう!」
困惑する私をよそに、右手の指が彼女の中に招き入れられていく。彼女の中はすでに濡れきっていて、先ほどの彼女の態度が嘘ではないことを私に確信させてくれた。
「くぅんんっ……ちょっと、すとっぷ」
あっという間に私の5本の指が全て彼女の中に吸い込まれたところで、フィオが私の招き入れることをやめた。
「あっ……これって……」
突如、彼女の奥から出てきたものが彼女の中に入っている私の右手の指先に触れた。丸っこくてかなり太いそれはぬるりと私の5本の指の間に入り込んできた。
「ふふっ、わたしの、しょ・く・しゅ」
「こ、こんなおおきかったっけ?」
「だってぇ……こうふんしちゃって……ねぇ、ひっぱりだして?」
小首を傾げたフィオが私に甘い声でねだってきた。正直、あまり触りなれない感触に困惑したが、フィオの期待を込められた表情に決意を決めてその触手を指先で掴んだ。
「んぁうぅ……そうぅ。そのままぁ……ひっぱってぇ……」
「う、うん。いくよ……」
フィオが頷いたのを確認してから、私はゆっくりと右手を引き抜き始めた。ぬめっている触手を離さない様に気を使うと、自然と指先に力が入ってしまう。
「くぁんっ!」
「ご、ごめんっ! 痛かった?!」
私は触手から手を離して、自分の右手だけ引き抜こうとすると、すかさずにフィオの手がそれを押さえつけた。
「ちがぅう。……あんまりきもちよくて……イキそうになっちゃっただけ。さっ、あとすこしだから……おねがい」
悪戯っぽく舌を出してフィオの表情は嘘を言っているようには見えず、私は触手を掴みなおしてそれを再び引き抜き始めた。「ふぁんっ……でてくるよぉ」
やがて私の塗れた指先が彼女の中から出てきた。彼女の赤紫色の太い触手を携えて。
「ふふっ、ありがとう、ひより」
そう言って微笑むフィオの顔よりも、私は右手の指先に掴んでいるその触手に目を奪われていた。
「さ、さっき私に見せたときより2倍ぐらい太いじゃない!」
「だって……ひよりとキスとかしたり、あんなにつよくつかまれたりしたら、おっきくもなっちゃうよ」
フィオの言葉に反応するかのように触手がうにうにと動き始め、私が思わず手を離しても変わらず自立していた。
「ねぇ……そろそろひよりに、いれてもいい?」
「ちょちょちょちょ、ちょっと待って! こんな大きいの入るわけないって!」
「あははっ、大丈夫。ゆっくりいれてあげるから」
私が両手と首を振ってフィオの行動を制止しようとするが、彼女はすかさず私の身体を抱きしめると優しく微笑んだまま首を横に振った。
そして彼女の触手がするりと私の穴に近づいてきて、その入り口を丸っこい触手の先っぽで擦ってくる。
「くああぁんっ……やめてえぇ……」
「ふふっ……じゃあ、ゆっくりいくからねぇ……んんっ、と」
「ふあああぁんっ! ひ、ひろがっちゃぅうううう!」
押し広げるようにぬるりと触手が私に入ってくる。正直、経験豊富とはいえない私の穴はそこまで広くないのに……でも、不思議と痛みは感じない。
「やっぱり、しめつけてくるぅ……クロエとミノンより、せまいかも……でも、やさしくやってあげるからね……」
その言葉通り、フィオは触手を牛歩の如くゆっくりと入れてくる。痛みはなくても穴の押し広げられる感覚に思わずフィオの身体を強く抱きしめてしまう。
「そんなにつよくだきしめちゃって……かわいい」
「も、もうっ! あんっ!」
私が文句を言おうとするとすかさずフィオが私への侵入を再開した。その衝撃にまたしてもフィオに強く抱きつくと、彼女は楽しそうに笑いながらもそれを続けた。
「だ、だめぇ! も、もうはいらないぃい!」
「もう、すこしぃ……がん、ばって!」
興奮した表情のフィオが私と密着していた腰を少し上げると、私と彼女の穴の間から触手が見えた。しかし、触手が抜かれるような感触はない。
「じゃあっ、いくよおぉ……んんんんんんんっ!」
「ふぁあああああああああんっ!」
上げた腰をフィオが一息に沈め、同時に私の子宮へと触手があっという間に辿り着いた。
「んぁうぅ……は、はいったよおぉ、ひよりぃ」
「くぅうんっ……も、もう、いっぱいいっぱい……」
「あははっ、これからがきもちいいんだよ。おたがいに、ね」
フィオはそう言うやいなや、私の身体を強く抱きしめてお互いの身体を密着させると触手が私の入り口へと戻りはじめた。
「くはんっ! わたしのに、すいついてくるぅううううう!」
触手に私の中が絡みつき、いやらしくこもった水音が響く。満ちていた私の中から出ていく感触に、私はわずかな歯がゆさのようなものを覚える。
「んんぁっ……じゃ、もういちどいくよぉ……うぁううぅぅ」
「ああああああっ! またひろがるぅううう!」
触手が抜け始めると同時に締りかけていた私の穴が再び押し広げられ、またしても私の中がフィオで満たされていく。
「あははっ、ほらあっ。だんだん、はやくするよおぉぉ……」
「だめ、だめぇ! これいじょうは、むりぃいいいい!」
そう言ってるのに私の中へ出し入するスピードは下がるどころか、尻上がりにドンドン上がっていく。
「こわれるぅうううう! もう、こわれちゃうぅうううう!」
「ふふっ……じゃ、すとっぷ!」
フィオがニコリと笑ってその動きをピタリと止めた。私はそれに驚きながらも、じわじわと広がる膣の寂しさにもどかしさを覚えはじめた。
「ごめんね、ひより。ここらへんでやめておこっか?」
「えっ!? あ、あの……そ、それはちょっと……」
ニコニコと笑うフィオが私の身体を離して、触手を完全に抜き去ろうとする。私はその様子を見て慌て、そして思わず出て行こうとする触手を掴んでしまった。
「あれ? どうしたの?」
「う、うん。わ、私は気にしなくていいから……その続けよ?」
「え~っ。でもひよりが壊れちゃうと、ねぇ。妹二人もまだなわけだし。無理しちゃダメだよ」
そうしている間に、今にも抜けてしまいそうなぐらい触手が私の入り口へと戻っている。
「ああんっ! もう!」
私は思わずフィオに抱きつくと、その勢いのまま彼女を押し倒して彼女の上にすかさず跨った。
「……ぷっ、くくくっ、あははははっ!」
「えっ? な、なに?」
私の下でフィオが笑いを吹き出した。困惑する私の腕を取って身体を密着させてフィオが囁く。
「ごめん。ひよりをちょっと焦らしたくなってね」
「ひ、ひどい! 」
「あはは、ごめん! ……朝までじっくり、楽しもうね。んっ」
フィオが私の唇をまさぐりながら、再び触手で私の中に入り込んで太いそれを出し入れしていく。
「ぷはっ! ひ、よりぃ、きもちぃいい、きもちぃいいよぉおおおお!」
「んぁあああぅうう! わ、わたしもぉおお! んんっ」
今度は私がフィオの口の中を味わいながら、彼女の動きに合わせて自ら腰も動かす。そして段々と私の官能も頂点が見え始めた。
「んあっ、ふぃお! おねがぃいいい! いかせてぇえええええ!」
「あんぅうううううう! わたしを、うけとってぇ、ひよりぃいいいいいいいい!」
フィオの触手が子宮の一番奥で突き刺さったように止まり、そして私の中に熱い液体が放たれた。同時に私も膣から蜜を放った。
「はぅううううううううううううう! あつぃいいいいいいいい!」
「んっ、くぅ……しぼりとられるうぅぅ……ひよりぃ……さいこぉ……」
私はフィオの身体の上にへたりと倒れこんだ。酸素が要らなくなった身体のためなのか、息苦しくもなく汗もかかないが身体全体が熱くてたまらない。
フィオも同じように身体を休めていたが、ふと私の身体を再び掴むとニコリと笑ってこう言ってきた。
「ふぅ……さぁてひより……まだまだ、だよぉ?」
「えっ? あんっ! ちょ、っと!」
再び私の中で暴れるフィオ。その上で足をガッチリと掴まれてなすがままにされる私。
……それは私の意識が途切れるまで……いや、途切れた後もまだ続いていたらしい。
第四章 次女の涙と姉の過ち
次の日。起きたら既に夕方過ぎだった。……いや、元々この海中の洞窟に外の光なんて入ってこないから私には分からないんだけど、フィオはもう夕食の魚を床に広げていた。
「昨日はありがとうね、ひより。はぁ……思い出しただけで身体が疼いちゃう……」
「そ、それはよかったね。ふぅ……今日はクロエとだよね?」
「うん。ニノンは私が面倒を見てるから遠慮なくやってあげてね。さっ、二人は先に食べちゃったから私たちも食べよ?」
遠慮なく“やられて”ね、の間違いだと思うけど、なんて思いながら私は近くにあった海老を口に運んだ。やっぱり新鮮なためなのか、文句なしに美味しい。贅沢を言うならしょうゆが欲しいけど。
「それより身体が昨日よりスベスベしているんだけど……これも?」
「ふふっ、それは人魚の美しさの秘訣みたいなものかな。昨日、私の体液を身体に一杯浴びたから」
……記憶の片隅に、彼女の体液をお互いにローションのように塗りたくって行為をした映像が……。
「まっ、それを食べ終わったらそのままクロエのところに行ってあげてよ。多分、卵を出して楽しみに待ってると思うから」
「はいはい」
「あっ、待って」
私はイカのゲソを咥えてクロエの部屋に向かおうとすると、フィオが立ち上がってこちらに駆け寄って来ると、突然私の唇を奪った。
「んっ……」
私は慌てながらも私の口をイカごとまさぐるフィオに身を任せ、しばらくその甘美な彼女の唾液を味わった。
「……ふふっ。あんまり長くやってるとクロエに怒られちゃう」
フィオが私の中から舌を抜いたと思ったら、口の中にあったゲソも取られてしまっていて、フィオが口からニョロっとそのゲソを出して笑っていた。
「まったく……じゃ、行って来ます!」
私はフィオに敬礼をすると、彼女の見送りを背に受けながらクロエの部屋へと歩き出した。
この食事の部屋から四方に通路が分かれていて、海への出口と、それぞれ三姉妹の部屋へと繋がっている。クロエの部屋は食事の部屋をはさんでちょうどフィオの部屋の反対側だ。
クロエの部屋に近づくと、昨日フィオの部屋に近づいたときと同じようにいやらしい水音と、クロエの喘ぎ声がわずかに聞こえる。
「ク、クロエ! ひよりだけど!」
「おーっ! や~っと来たかぁ! さ~ぁ、入るんだぁ!」
クロエの元気な声に私はおそるおそる部屋の中を覗いた。すると既に裸で人魚の姿のクロエがくたびれたTシャツで見知らぬ女の子を拭いていた。
「その人って……クロエの人形?」
「その通り。今も卵を出すのに手伝ってもらってたところだ。まぁ、出してからも何発かやったけどな」
綺麗な歯を見せてクロエが笑い、そして人形を抱きしめて彼女を寝かすとその上に布切れを被せた。
「さぁて、始めるぞ~! さっさと服を脱げぇ~い!」
「わっ! じ、自分で脱ぐから!」
追いはぎでもするかのようにクロエが私の服を掴みに掛かってきた。
「あっ、ペンダント。一体何が入ってるんだ、それ」
「ペンダントじゃなくて懐中時計。まぁ、壊れちゃったけど。……ほら、これ」
私は懐中時計を開いて中身の写真をクロエに見せた。しかしクロエはそれを一見しただけで、大した興味はなかったようですぐに押し返してくるなり、裸になった私に抱きついた。
「よ~し、やるぞ!」
「あんっ! もぅ……んんっ」
私は懐中時計を脱いだ服の上に置いて振り返ると、クロエが強引に私の唇を奪い取ってきた。彼女の元気な舌が私の口の中で暴れ回る。
「んっ!?」
突然、私の身体に触手が何本も絡み付いてきた。そ、そんな! フィオは2本しか出せなかったのに!
「ぷはっ……ふっふっふ、驚いているなぁ? ただ太いだけのフィオとは違うのだよ」
「ちょちょちょちょ、ちょっと! こんなに出さなくても二本でいいでしょ?! 私の穴は二個しかないんだから!」
「何を言ってる。誰が一個の穴に触手を一本って決めたんだい? へっへっへっへ」
クロエが不適な笑いを私に向けた。た、確かにフィオのよりかは太くないけど、そんなの二本以上入らないって!
それでも私の秘所は左右二本の触手によって広げられ、更にもう一本が穴の中心に触手があてがわれる。
「さぁて……楽しませてもらおうか、ひより。いただきま~す! くっ、んんんん!」
「ふあぁああああああああんっ!」
クロエの触手が私の中に一息で侵入した。途中で止まることなく、一気に子宮まで突き刺さる。
「くぅううう! ひ、よりいぃ! さいこうだぁ~!」
「あうぅぅぅぅぅ……って、ちょっと!」
侵入されたの衝撃と快感の波に耐えている私の秘所に、更にもう一本の触手があてがわれた。
「よ~し! じゃあもういっぽん、ついかぁあああああああ!」
「くぅあああああああああああんっ!」
先の触手に絡みつくようにしてもう一本の触手が私の中に入ってくる。体感したことのない感覚にあやうく意識が飛び掛ける。
「あ、あぅうう、ああぅ……」
「おいおい、ひより。大丈夫かぁ? よ~し、じゃあ最後の一本、いってみよ~」
クロエがまったく悪びれた様子のない笑顔で私の顔を覗きこみ、高らかに宣言をしてきた。
「や、め……ああああああああああああああんっ!」
「くはぁああああんっ! こ、こりゃ……すごいぃぃぃ」
二本の触手のわずかな隙間に最後の一本の触手が入り込み、私の穴がピッシリと触手で埋め尽くされた。
「よ、よぉおおし……う、うごくぞおぉぉ!」
「だめぇ……やめ、うはあああああああんっ!」
「すっ……ごい……からみ……ついてくるうううううううううう!」
私の穴の中で三本の触手が入れ替わりに子宮を突いてきて、私の頭に快感が連続して流れ込んでくる。
「ひより! おしりもちょうだい!」
「む、りぃい、だってぇええええええ!」
私の返事も待たずに、クロエのお尻から出された新たな触手が私の肛門にあっという間に張り込んできた。
「くはんっ! こ、こっちもかくべつうぅぅ……」
衝撃に慣れるヒマもなく、前後の穴で触手の激しい出入りが開始される。気付けば後ろの穴も三本の触手が突き刺さっていたが、もうここまで来ると何本でも変わらない気さえしてきた。
やがて更に4本の触手が私の胸に絡みつき、クロエの手と胸を揉んできたり、その先端に開いた穴で乳首を包み込んできた。触手の中で乳首が無数のヒダのようなもので転がされる。
「ああんっ! しびれるぅうう!」
挿入の刺激に比べると決して大きな刺激ではないが、それとはまた違った感覚の快感に私は身を悶えさせた。
ぐにゅぐにゅと二つの穴の中でところ狭しと暴れまわる触手の数々に、私に送られる快感の濃度も自然と高くなってきた。
「いい、いいよぉ! くろえぇ! もっと、もっとぉおおおおおお!」
「ひゃんっ! しまるぅうう! ひより、もう、だすぞぉおおおおお!」
「ちょうだい! くろえのぜんぶ! ちょうだぁあああああああいいいいいいい!」
「はぁあああああああんっ! うけとれぇええええええええ!」
「ふぁああああああああああんっ!」
クロエの熱い体液が合計6本の触手から次々と私の中に注ぎ込まれ、私の身体の上にもそれが4本の触手によって浴びせられる。
「ああうぅぅ……くろえぇ……」
身体の上に受け取った彼女の体液を、クロエはお互いの身体に塗りたくった。わずかな光によってお互いの身体が妖しく光る。
「ひより……おまえさいこーだ! まだまだいくぞ!」
素直に嬉しそうな笑顔のクロエに、私は力強く頷いてその身体を抱きしめ、そして再び交わりを始めた。
「ふあぁぁぁ……ひより……すごすぎぃ……」
最初に根をあげたのはクロエだった。と言っても私の足腰はもうしびれて感覚が完全失われている。
私は岩肌に寄りかかり、疲れた様子のクロエを後ろから抱きしめていた。私の足の上に乗っかる人魚の足の鱗までもが火照っているかのごとく、彼女の身体全体が暖かかった。
「なぁ……ひより」
「うん? どうかした?」
突然、口調がどこかひかえめになったクロエの声をいぶかしげに思いながら私は返事をした。
「さっき写真、ひよりの家族だろ?」
「ああ、うん」
「どんな家族だったんだ? 人間の家族って」
ちょっと意外な質問に私が戸惑っていると、クロエが振り返って私の顔を見ながら続けた。
「私の二人の母親について、フィオから聞いてるんだろ? 片方の母親は優しかったけど、もう片方は……最低だ」
一人の母親は死に、もう片方の母親は三姉妹とは離れて今も群れに残っている、ということを昨日フィオから聞いた。ただ、フィオとはその残った母親に対する印象が随分違っているような気がした。
「クロエは、許せないんだ。群れに残った母親のこと」
「……あいつなんか親じゃない。けど……フィオが許すって言うなら、私も許す」
まるで子供が背伸びをするような言葉で、素直にクロエがそう話してくれた事を嬉しく思った。
「……私の父親はね、無口だったけどかっこいいお父さんだった。ただ、お酒を飲むとすぐ陽気になって下手な歌を歌うんだけどね」
私は知らぬ間に自分の家族のことをクロエに話し出していた。クロエは興味深そうに私の顔を見ている。
「お母さんは、とにかく元気な人でさ。私が落ち込んでるとすぐさま駆けつけて、あの手この手でうるさく励ましてくれる人だったかな。クロエみたいにね」
「ぶ~っ! 私はうるさくないぞ!」
膨れ面のクロエの頭を私は笑いながら撫でつけ、そして一呼吸置いてから話を続けた。
「それと……妹のひなた。お父さんに似て無口な子で……私のことは嫌いだったけど、私はとても大好きな妹だった」
「……大丈夫? ひより」
クロエが俯く私を下から覗き込むように聞いてきた。私は彼女の身体をぎゅっと強く抱きしめながら聞いた。
「つまらない話なんだけど、聞いてくれる?」
「う、うん。どーんと、話しちゃいなさいよ」
頼もしいクロエの返事に私は後押しされるように私は話し始めた。……自分の罪を。
「私の家族はね、貧乏……不自由な生活を送ってたの。周りの人より物が少なくて、食べるものも決して美味しいものばかりじゃない生活をしてた……それでも幸せだったけどね」
自分で作ったわけではない借金がお人よしだったお父さんに被せられ、ボロい木造の家に私たちは住んでいた。生活も……色々と苦労をしていた。
「だから私は、家族がもっと幸せに暮らせるように頑張ることにしたの。家族のみんなに美味しい食べ物とかを、いっぱい食べさせてあげられるようにね」
高校生になった私は弁護士になれるように法学系の大学を志した。しかし……私の学力ではどんなに頑張っても私立が限界だった。
「そのためにお父さんはお酒をやめて、お母さんもお仕事をするようになった。だけど……妹はそんな私を認めてくれなかったの」
妹は私がそんなことをするより、すぐにでも働きに出ると思っていたらしい。だから妹は私とは口もきかなくなってしまった。
「それでも両親が応援してくれたお陰で、私は幸せを掴むチャンスができたの」
大学入試直前、なんとか大学の入学金とその他の工面ができたということだった。
「けどね、それは両親だけの頑張りじゃなかった。妹が私に隠れて朝とか夜に働いてくれていたからだったの」
受験日の前日、お父さんから聞いた話だ。朝は新聞配達、夜はコンビニなどで働いてお父さんたちにこっそりお金を渡していたそうだ。
「優しい親と、素晴らしい妹じゃない」
クロエがにっこりと私に笑い掛けるが、私はこの先の結末を知っているだけあって同じように笑うことは出来なかった。
「うん。本当に……。でも、そのチャンスを手にできるかどうかって日に、事件が起きたの」
「事件?」
目を丸くして聞いてくるクロエに心が痛んだ。果たしてここから先を本当に話してしまっていいのか、ということを。
しかし、クロエは隠さず自分の本心を語った。それなら、私も何も隠さずに言う義務がある。私の……罪の全てを。
「その朝、家族はみんな寝静まっているとき私は起きた。その日は早起きしなきゃいけなくて、それを言ったらみんな私に合わせて起きると思ったから」
受験日。みんなに言ってある時間より私は1時間ほど早く起きた。
「それで朝ごはんを自分で作って、それを食べたあとに、こっそりと家族の寝顔を見て私は家を出たの」
朝ごはんは簡素に目玉焼きを作っただけだった。私は緊張するとお腹を壊すタイプなので、それを見越してのことだった。
……けど、私の最大の罪はそれだった。
「それでそのチャンスを掴むための問題を受けて、家へと急いで帰ったの。そしたら……」
「そしたら?」
目の前のクロエの顔が歪み、あの時の映像が映し出される。数時間前に出た家の、数時間後の姿が。
「……家が、焼けてた」
「え……?」
思わず頭が重くなり俯いてしまう。目を閉じた先に黒く焼け焦げた家の残骸が映る。そして近くに居た消防隊員から聞かされた犠牲者と……火の原因。
「家族は全員死んでた……火の原因は、私が朝作った料理だったの」
火事の原因は私がガスの元栓を閉め忘れていたことにより、劣化したガス栓から漏れたガスが冬の静電気によって引火し、爆発するように家は燃えたらしい。
「……私は帰って来たら真っ先に妹に、ありがとうって言おうとしたのに……それさえ言えずにみんな死んじゃったんだよ。……私のせいでね」
頬から枯れたはずの涙が流れた。この事件から2ヵ月半、私は涙に濡れた生活をした。そしてその後、私は自殺を決意した。
「2ヶ月過ぎたら涙が流れなくなったの。それで気付いた。泣いて償えるような罪じゃないんだ、って……だから自殺したの」
「……ふざけるな」
「え?」
涙目でクロエを視界に捉えると、彼女は私を押し倒して私の頬に流れる涙を舐めて拭き取ってくれると、その思いを私にぶつけた。
「私は妹でもあり、姉でもあるから分かる。妹として、姉が泣くのは見たくないし、姉として、妹に自分が泣くところも見せるべきではない!」
クロエの今まで見たことのない厳しい剣幕に、私はぐぅの音も出ない。
「結論として……結局ひよりの罪は死んでも、泣いても償えるようなものじゃないよ。笑って償うべきなんだよ」
「……無理だよ。あのことが忘れられなくて笑えないから……私は自殺したの」
「……だったら、私が忘れさせてやる! ひよりがそれを忘れるぐらいによがらせてやる!」
「なっ、んんんっ!」
反論の言葉も言わせず私の口は彼女の唇によって塞がれ、強引に口の中をまさぐられる。同時に何の前触れもなく、触手が前後の穴に突き刺さってきた。
「んんんんんんっ!」
「ぷはっ! ひよりの妹はな、お前に笑って欲しいから頑張ったんだよ! お前のことが好きだから頑張ったんだ!」
私の身体に生ぬるい液体が落ち、クロエの顔をじっと見れば、その綺麗な両目が涙で濡れていた。
「バカ、バカ! 私もバカだけど、お前のほうがずっとバカヤローだ! うわぁああああんっ!」
私の胸に顔を埋めてクロエが泣きじゃくった。私は驚きながらも、涙を流してくれた彼女を見て、私の両目からまた涙が流れ出した。
そして改めて自分のバカさ加減を心の中で強く罵った。
「ごめん……ごめんね」
私は泣きながらクロエの頭を撫でていた。このまま天国に逝っていたら、家族みんなにとてつもない説教を喰らうところだっただろう。
「ぐず……いいか、絶対に忘れさせてやるからな! くらえ、んんっ!」
「あんっ! もう……ありがとう、クロエ。んっ」
触手の一本が私の子宮を強く突き、涙目のクロエがニヤリと笑った。私はその彼女の唇を弄りながら、ほとばしる快感に身をゆだねた。
第五章 服従
だめだ……私、このままだとだめな人間になる。
「ど、どうしたの、ひより? そんな怖い顔しちゃって」
フィオが心配そうに私の顔を見て言葉を掛けてくれる。
「どうした? 食いすぎて身体でも重くなったか?」
う、クロエ。だいぶ近い。けど多分あれだけ激しいことをしてるから体重は増えてないと思うんだけど……増えて、ないよね……?
「だ、だって……い、今はもう夕方なんでしょ?」
「夕方ってより、もう夜だな。完全に外は暗いし」
小魚を噛み潰しながらクロエが放った言葉が私の心に強く突き刺さった。
「だめだぁ……こんな生活……起きてご飯食べて、行為して、また寝てなんて……」
ダメ人間、と呼ばれている人間でももう少しまともな生活をしているのではないかというぐらい、酷い生活をこの2日間送っている。うぅ……受験の時には毎日早起きしてたのに。
「まっ、まぁまぁ。私たちは別に迷惑にとも思ってないし。ね、クロエ?」
「そうだな。ま、いくら私でも昼過ぎには目を覚ますがな」
ぐさっ、という効果音と共に私の胸にクロエの言葉が深々と突き刺さった。すかさずフィオが助け舟を出してくれる。
「そ、そんなことより! 今日はニノンのことをよろしく頼むわね、ひより!」
「そうだぞ~。食った分は働けよ~」
「もう、クロエ! ……いいわ、今日は私が徹底的にかわいがってあげる!」
「なっ! フィ、フィオ! その……優しくして?」
クロエが小首を傾げながら小動物のようにフィオのお願いをした。対してフィオはニコリと笑いながらこう返す。
「ふふっ……さっ、行こうかしら、ク・ロ・エ? ひより、じゃあミノンをよろしくね」
「いぃいやぁああああああ!」
フィオはクロエを脇で持ち上げるようにして部屋を去っていった。フィオ……こわ……。
「さて……私も行かなくちゃ、ね」
食べ終わった魚の骨などを片付け、私はニノン……さんの部屋へ続く廊下に足を向けた。ううっ、気が重い。
正直、人間が嫌いなニノンさんを私は喜ばせることができるのだろうか? という不安があるのだけど……。
そう考えている間に、もうニノンさんの部屋に辿り着いてしまったわけだけど……不思議と姉二人と同じようないやらしい水音は聞こえなかった。
「あ、あのニノンさん。私、ひよりです!」
「入れ」
「失礼します……」
おずおずと部屋の中に入ると、綺麗に整頓されて入るものの、二人の部屋より幾分物に溢れた部屋だった。ボロボロの家具の中に、耳の取れたクマのぬいぐるみや、読めるとはとても思えない色あせた本が入れられている。
私が部屋に入ると、人魚の姿のニノンさんは部屋のちょうど中心辺りにちょこんと置かれた木の椅子に座り、立っている私をじっと見ていた。
「あ、あの……」
「とりあえず服、脱げ」
「は、はい!」
ニノンさんの言葉に私は急いで服を脱ぎ始めた。あうぅぅ……こんな小さな子供に命令されて服を脱ぐなんて……。
「おい、人間」
「は、はい!?」
「これは、なんだ?」
ニノンさんがなにやら黒いスポーツバックを広げてこちらに見せてきた。
「今朝、海底で見つけた」
「げっ。これって……メイド服」
私は中身を軽く触りながら確認した。……一体誰がこんなの海に捨てるのよ。しかも明らかに小さなサイズも入ってるし……。
「で、なんなんだ、これは?」
「こ、これはメイド服って言って、古い時代に身分の高い人に使える女性が着ていた服です」
私の説明に、ニノンさんは残念そうな顔をしてバックを覗き込んだ。
「そうか……フィオ姉さまにあげようと思っていたんだが、それじゃあだめだな」
そう言ってバックを閉じようとしていたニノンさんの手がピタリと止まり、私の顔とその中身を見合わせ、こんなことを言ってきた。
「お前、これ着ろ」
「え、えっ!?」
スポーツバックを押し付けられた私は反射的にそれを受け取ってしまった。
「あ、あの」
「早くしろ!」
「はっ、はい!」
私は慌てて中身取り出すと急いで着替えを始めた。ううっ……弱い……弱すぎる、私。
心の中で泣きながら、私は大慌てで着替えを終えた。……律儀にカチューシャまで着けちゃって……なにやってんだろう、わたし……。
「くっくっく、似合うじゃないか。……じゃ、早速始めてもらおうか」
浅めに椅子に座りなおしてニノンさんが、目に眉間を寄せると人魚の下腹部の穴から勢いよくそそり立つものが飛び出した。
「驚いたか? くくっ、私は姉さまとクロエが出せなくなった、人魚の頃の性器が出せるんだ。まぁ、卵は精液は出ないから、安心しろ」
彼女の股間のそれは触手よりかは当然短く、太さもない。だけど……少なくとも子供につけるような大きさではなかった。
「じゃあ、まずこれを……なめろ」
「な、なめろ!?」
私はたじろいで後ずさりをすると、ニノンさんの目が明らかに不機嫌そうなものになり、私は急いで彼女に近づくと股間の前にひざまづいた。
しかし……いざ立派なそれを前にするとそれ以上動けない。実際……口でやった経験もないわけで、目の前のそれを改めて見ると……やっぱり大きいわけで。
「何をやっているんだ。勝手に始めるぞ」
「えっ!? んんんんんんんっ!」
口を半開きにしたが最後、私の口内にニノンさんのそれが突っ込まれた。頭を両手で掴まれて逃げることも出来ない。
「ふぅ~ん。中々いい口をしてるじゃないか、人間」
「ひゃめ、んんんんんんんんんんっ!」
抗議の声を上げる前にニノンさんが私の口の中を出入りし始めた。いやがおうにもそれが舌に絡まり、しょっぱい味を私の味覚に感じさせる。
「くっ、生意気にも舌を絡ませるとは……やるじゃないか、人間!」
意識してやったことではないのだが、それがニノンさんの官能を高めてしまったらしく、口の中の出入りが激しくなってしまった。
「んぁっ! だ、めだ! まず一回、出すぞ!」
「んんんんんんんんんっ!」
私は首を振ってそれを拒否しようとするが、がっちりと固定された首はびくとも動こうとしない。そして、ニノンさんが身を悶えさせ、私の喉の近くまでそれを突き刺した。
「でるぅうううううううううううう!」
「んんんんんんんんんんんんっ!」
口の中にネバネバとした粘着質の液体が押し寄せ、そして口が一杯なりそうなところで止まら……ない……。うそ……もう、くちのなか……いっぱい……。。
「飲め! 絶対に出すな! くっ!」
ニノンさんがそう叫ぶ間にもそれはどんどんと口の中に溜まっていく。そんな……。
口内のキャパシティの限界が近づいてもとどまる様子のないそれを、私は本能的に飲み込み始めた。粘着質なものなんで飲み込みづらいが、睨むニノンさんの顔を見れば贅沢も言ってられない。
不思議と……味は不味くなかった。いやそれどころか……まるで舌が蕩けるような甘美な味がする。それでも量が多すぎる。
「んんんっ、ぷはっ! あんんんっ!」
思わず口を開いてしまうと、未だに暴れるニノンさんのそれが私の口から飛び出て、私の顔に半透明な液体を浴びせ掛けてきた。
「くぅう! ……出すなと言ったのに、出したな?」
「ご、ごめんなさい!」
私はほぼ土下座のような形をとってニノンさんに謝った。その間、顔から滴る彼女の体液を口に入れると、やはりそれは美味しかった。
「ふん、まぁいい。次は下だ」
「した……」
言われて私は自らの股間を見てみた。すると私の愛液が床に滴るほど出ていた。……ううっ、最近やってばかりだから興奮しやすい身体になっている気がする……。
「ボーッとしていないで、そこに横になれ。人間」
「は、はい」
私はニノンさんが撒き散らしたものと、私の愛液で濡れている岩肌に身体を横たえた。……そう言えば、やってるときってこの岩の固さってあんまり気にならないなぁ。どこまで熱中してんだ、わたし……。
「いくぞ。次はこいつもな」
「へっ……?」
私の穴に彼女のオチ○チンがあてがわれると同時に、ゆらりとその背後から触手が現れた。
「しょ、触手まで……出せるなんて」
「誰が触手を出せないって言った? 後ろからは触手だけだが、前からはこれと触手も出せるぞ」
ううっ……こういうサプライズなところはクロエと似ているような気がする。
「じゃあいくぞ」
「あっ、ちょっとまっ……くぁあああああああんっ!」
前の穴と後ろの穴に触手が勢いよく侵入してきて、私の身体にのしかかるようにニノンさんも倒れこんできた。くぅ……久々に感じるなぁ、オチ○チンが入ってくる感覚。ちょっと、新鮮かも。
「くぁうぅぅ……なんて……しめつけだ……」
子宮までオチ○チンが侵入すると同時に、ニノンさんの動きが止まる。目をギュッと閉じて、私の身体の上で硬直をしている。
しかし、突然ニヤリと笑うと、私を見て静かに言った。
「くっくっく……いくぞ」
「あんっ! くぁんっ! んっ!」
私の肩をつかむと、彼女が荒々しく私の前後の穴でそれぞれを出し入れし始めた。熱いオチ○チンが前の穴を突き、後ろの穴を濡れた触手が突いてくる。
「んっ、くっ!」
「いっ! いはい!」
突然私の唇を弄ったかと思うと、ニノンさんは私の唇に噛み付いてきた。そしてまるで獣のように私の口の中で彼女は暴れ散らしていく。
「あんっ! かむと、よく、しまるな!」
「いっ、やめ!」
どうやら刺激を与えられると、私の穴はよくしまるらしい。加減はしてくれるが、やはりちょっとは痛い。
「だすぞ! しめろおおおおおおおおおおおおお!」
「くっ、ふあぁああああああああああんっ!」
私は唇を噛まれたと同時に、今度は意識的にも穴に力を入れて彼女のものを締め上げた。すると穴の中に、更に熱いものが注ぎ込まれ始める。
「でてるうぅぅ……お、おなかがぁ」
子宮の中と腸の中が液体で満たされ始める。そ、そんな! やっぱりとまらない!
「かっ! も、う……だめ……」
「くううううぅ……まだ、まだ、でるぞぉ……」
お腹が外から見ても少し膨らんできたように思える。お尻の穴から入ったほうは、既に胃のほうまで逆流しているのではないかとさえ感じられる。
「らっ、めぇ……」
目の前がくらくらとし始めてきたとき、突然両方の穴の栓が私から抜かれ、勢い余った液体がメイド服のエプロンや私の身体と顔に塗りたくられていく。
「はぁああああああんっ!」
「ふううぅぅぅ……だらしないな、出したばかりのものが流れ出てくるぞ」
「ご、ごめんなさい……」
ニノンさんの言葉に私は本能的に謝罪の弁を述べていた。
すると、ニノンさんが私の顔の上で跨り、私の口にまたしてもオチ○チンを突っ込んできた。そして今度は私のオマ○コに触手が突っ込まれる。
「よく出来たら私の体液をくれてやる。……美味しいだろ、わたしのは?」
私は何度も頷いてそれを肯定した。すると、ニノンさんは少しだけ嬉しそうに頬をほころばせて私の頭を掴んだ。
「じゃあ上手にやれ……いくぞ」
そしてまたしても交わりが始まり、私はその日も失神するまで彼女の体液を味わった。
「……ふぅ。本当になんとかなるもんだねぇ……」
海から上がった私は身体を犬のように震わして水気を飛ばし、フィオから渡されていたかなり使い古しのTシャツで身体を拭いた。
しかし……ベタベタとしてた身体を流すために海に入ったわけだけど、結局水分を拭いちゃったらまたベトベトになるよねぇ……海水だから。
多分すぐに脱ぐことになるんだろうけど、一応私はベトベトになり始めた身体に服を身に着けて、フィオが待っている場所に向かった。
私は先ほど案内されたフィオの部屋の前に着いた。部屋、と言っても大した仕切りは無く、ただ入り口が一部分しかないところを彼女達はそれぞれの部屋にしていた。
「くっ……んっ……」
耳をすますとフィオのわずかな声が耳に入って私は思わず足を止めた。何かグチュグチュという水音もリズムよく聞こえてきている。
私はその音の正体を確かめたくなって、岩の陰から部屋の中を覗こうとした……が、足元にあった石を蹴ってしまい、それが洞窟内に反響した。
「くんっ! だ、誰?!」
「ご、ごめんなさい!」
フィオの声に私はすぐさま頭を引っ込めて謝った。すると岩の向こうからなにやらガサゴソと慌しい音がせわしなく聞こえる。悪いことしちゃったぁ……。
「ご、ごめん! どうぞ!」
部屋の中から顔を出したフィオが私の手を引っ張って部屋の中に招き入れた。中の様子は、先ほど案内されたときとほぼ同じ状態に戻っている。
「か、身体は洗えたかしら?」
フィオが誤魔化すように私に聞いてきた。それに合わせて私も頷いて答える。
「う、うん。でも、やっぱり海水だから結構ベタベタしちゃってるんだけど……」
「ああ、それは大丈夫。心配しないで」
ニコリと笑ってくれたフィオの様子を見ると、本当に心配する必要はないみたいだ。
「あっ、ちょっと待ってね」
フィオが部屋の入り口の横に立つと、なんとそこに立て掛けてあった大きな石を軽々と持ち上げ、入り口を塞いでしまった。
「こうしないとクロエが悪戯しに来るかもしれないから」
同時に私の逃げ場も断たれたわけだけど。……ま、逃げる気もないけど。
「でも本当に海の底なんだね。私も海中で息できちゃったし」
「でしょ? 多分、私が復活させたときに水中でも生きられるような身体に変わったんだと思う。お母さんからそう聞いたことがあるわ」
「へぇ~。そう言えばさ、フィオたちのお母さんって何処に住んでるの?」
何気なく聞いた私の言葉にフィオの笑顔に曇りが掛かった。それに私が気付いた瞬間、聞いちゃいけないものだったとすぐに気付いた。
「ご、ごめんなさい!」
「あ、ううん。大丈夫。……それに、この際だから詳しく話したいんだけど、いいかな?」
フィオの静かな微笑みに私は二つ返事で了承した。するとフィオは床に座り込み、私にもそうするように手で示してきた。
「えっとね……私たちが寄生されたのは今から2年くらい前。私がクロエぐらいの頃だったの」
「フィオがそれぐらいってことは、クロエやニノン……ちゃんたちはもっとちっちゃかったの?」
私は入り口をしっかりと塞いである岩を見てから聞いた。
「クロエは結構大きかったけど、ニノンはまだ幼なくて母親二人に甘えてたかな、ふふっ。あの頃はとても可愛かったなぁ……あ、今も可愛いけどね」
フィオがクスクスと笑って話した。確かにニノンさん……ううん、さすが人魚って事もあって三人ともすっごく可愛いよね、今更だけど。
「そんな時、私とクロエが海底に落ちてた二匹の海蛇みたいなものを見つけてね。それぞれ、綺麗な青と赤の光を放ってて、私たちは思わずそれを手にとってみたの」
段々と伏目がちになるフィオを見て私もある程度の予想がついた。そしてその答えがフィオの口から出される。
「手に取った瞬間、それは素早く私たちの……下の前の穴から入ってきた。掴みなおすヒマもなくて、一気に侵入したそれが私たちに寄生したの」
フィオの視線の先をよく見ると、彼女は自らの秘所を見ていた。おそらくそこから入られた感触を思い出しているのだろう。
「私とクロエにはそれに寄生されたって分かったのは、頭にその寄生体に関する情報がそのとき一通り埋め込まれたから。それとね、それが私たちを通じて仲間に寄生できるって事も分かったの」
「そ、それで人魚の仲間に寄生を?」
私の予想にフィオは首を振った。まぁ、私もフィオがそんなことはしないだろうと思ってたわけだけど。
「私とクロエは正直に私たちの二人のお母さんに話して、お母さんが群れの人魚のみんなに説明してくれたの。……でも、みんなは認めてくれなかった」
「ど、どういうこと?」
「私たちには仲間に寄生するつもりはなかったの。けど、群れのみんなはそれを信じてはくれなかった。だからみんなは、私とクロエを追放することに決めたの」
「そんな……酷い……」
私は心底そう思ったが、フィオは微笑みながら首を振って否定した。
「みんなの判断は正しいと思う。それに、寄生されてから仲間を見て異常に興奮することもあったわけだったから。だから私とクロエはそれを受け入れたの」
「……お母さんたちは、それに対して仲間に不満を持たなかったの?」
「片方のお母さんはそれが決定する直前に死んじゃったけど、もう片方のお母さんは何も言わなかった。でも、よかった。下手に口を出せばお母さんまで群れにいられなくなっちゃうから」
フィオは微笑んで話していても……私にはそう思えなかった。私の母さんなら……おそらくめちゃくちゃに怒ってくれただろうから。
「それで私とクロエが群れから出て行こうとしたとき、ニノンが私たちに着いて来てしまったの……ううん、着いて来てくれたの。あんな馬鹿親のところになんか居たくない、って言ってくれて……」
フィオが感慨深く目を瞑ってしまう気持ちも私にはよく分かった。
「そして群れを離れた私たちが奇跡的に見つけたのがこの洞窟なわけ。海底のクレバスにある洞窟だから、海底に住んでる人魚達は来ないからお互いに干渉をしなくて済む。ふふっ、海水も入ってこないしいい場所でしょ?」
珍しく自慢げに言ってきたフィオに私は大きく頷いて同意する。
「まぁ、ここは酸素が無いから普通の人間は来れないと思うけどね」
フィオが言った言葉に私は苦笑いで返す。と言うことは私は酸素が無くても生きていける人間になっちゃったと。ううっ……もう海に身投げしたぐらいじゃ自殺はできないってことかぁ。
そのとき、ふと気付いたことをフィオに聞いてみた。
「ってことはさ、寄生されているのはフィオとクロエだけってこと?」
私の言葉にフィオは一瞬だけ硬直した後、苦笑いをして首を振った。あれ……また、聞いちゃいけないこと聞いたかな。
「ニノンには……私とクロエが寄生させたの。ここを見つけた後、ニノンが自分でそう望んでくれたから」
説明してくれたフィオの顔はとても複雑そうな表情だった。
「ふふっ……酷い姉でしょ? せっかく寄生されてなかった妹にそんなことするなんて」
「……ううん。そういう表情してるって事は、妹のことを案じてすごく悩んだ末に出した答えでしょ? そこまで妹の事を考えてるなら立派なお姉さんだよ」
「……ありがとう。……それとね、もう一つ見てもらいたいものがあるの」
スクッと立ち上がったフィオが部屋の隅にあった古めかしいカーテンのような布切れの近くに歩み寄った。その布切れの下に何かあるようでむくりとそれは膨らんでいた。
「これから見るものは……ちょっと刺激が強いと思うの。……けど、隠し事はしたくないから見せるね」
フィオの真剣な眼差しに、私は一呼吸置いて覚悟を決めから力強く頷いた。
そしてフィオがその布切れを一息に取り去り、その下に現れたのは……。
「……人……間?」
私と同い年……いや、もっと若い人かもしれない。そんな女性が虚ろな目をして裸のまま座っていたのだ。
「この人もひよりと同じように海で死んでたの。ただ、ひよりと違ってこの人を見つけたのは死後1ヶ月過ぎてからで、もう魂は旅立ってた」
フィオがその女性の隣に座り込んで彼女の頬を撫でる。すると虚ろな視線がフィオに向けられるが、その表情が変わる事はない。
「こうやって復活をさせても、魂がないから感情もないの。ただ身体に感覚が伝わればそれにわずかになら反応はするんだけど……」
「……そうなるって分かってて復活させたの?」
彼女と同じ人間として、私はフィオに聞いた。……この海域は日本の女性の間で自殺の名所として有名な場所。おそらく彼女も私と同じで自殺をしに来たのだろう。だとしたら私と同じように、彼女もこれ以上生きていられないような辛い目に合ったのだろう。
それなのに……それなのに、安らぎを求めて死を選んだのにこうして復活させられているのはあまりにひどいことだと感じたからだ。
「ええ。魂がない人間を復活させたらどうなるかも、復活させるときこの人の身体に既に魂がないのも、分かってた」
「だったら、なんで……」
「可愛かったから。それに、人魚の間でも人間の女の人はとてもいい穴を持ってるって評判だったから……どうしても欲しくなって」
「それって……」
私は言葉に詰まった。あまりに怒りが込み上がり過ぎていてこめかみが痛くなってくる。
「……妹二人と一緒にお互いに触手を入れあったりもした……けれど、それぐらいじゃ私たち人魚の欲望は満たされなくって」
「だからって死んだ人間まで……」
「死んでいたから、なの。魂はもうあの世に逝ってるはずだから……だから残された身体は好きにしていいかなって……言い訳だよね、ごめん」
「じゃあ、なんで私を復活させたの? 一ヶ月待って、私の魂があの世に逝ってから復活させなかったのは何でなの?」
魂があの世に逝った人間なら別にいい、と思ったわけじゃない。けど、私はそれより今は私を復活させた理由を聞きたかった。その理由次第では彼女に殴りかかるつもりだ。
「……一つは魂のない人間では感情がなく、穴もほとんど締めてくれない。はっきり言えば物足りない。だから……」
もうこの時点で殴りかかりたいのだが、『一つは』ということはまだ理由がありそうなのでそれを待った。
「もう一つは……これ」
そう言って彼女が着ている使い古しのベストのポケットから、あるものを取り出した。
「あ、それは!」
「ごめん。返しそびれちゃってて……中も見ちゃったんだ」
フィオが頭を下げながら差し出してきたのは、誕生日に貰った懐中時計だった。……受験のときにこれで時間を見ろ、ってくれた、私の大切なものだ。
私はそれを受け取ると、すぐさま中身を確認した。やはり海に飛び込んでしまったため、かなり色あせて皺くちゃになっていはいたがやっぱりそれは挟まっていた。
「よかったぁ……なんとか見える」
「家族の写真。……その真ん中で一際笑っているひよりを見て、この人なら分かってくれるんじゃないかって思って」
無口だけど優しいお父さん、いつもニコニコで元気なお母さん、そして……私の事が嫌いでも応援してくれた、妹のひなた。去年に家の前で撮った大好きな家族の集合写真だ。
「これは予想なんだけど……ひよりの自殺ってその家族の人たちに関係があるんじゃないかな?」
フィオの言葉を聞いて私の脳裏あの記憶が蘇る。自殺した3ヶ月前に私が犯した罪の、その結果の映像が脳裏にフラッシュバックした。
「……ねぇ、そんなに人魚の欲望って強い物なの? 私は正直、信じられないよ。フィオたちには人間みたいに理性がある……だから理性で欲望を抑えられるんじゃないかって私は思うんだけど……」
「正直言えばもう夜だから、今にもひよりに飛びつきたいほど、かな。信じられないだろうけど……この欲望が醒めた事は物心ついてからは1秒だってないよ」
……だめだ、想像つかない。一体どれだけ身体が疼くんだろうか。
「ひよりは、海に飛び込んで死んだ死体がどうなるか分かる? 一ヶ月間以上海底に残っていることなんて本当に稀なことなんだよ? 大抵は魚に食べられたり、腐敗が進みやすい人は2週間と持たずに全身が腐敗したりね」
「でもそれで魚や微生物の栄養になるならいい事じゃない。それが何の問題があるの?」
私はフィオに言った。するとフィオは諭すように言い返してきた。
「つまり海の生物のものになる、ってことだよね? ……なら残された身体を私たちが貰うことの何がいけないのかな?」
フィオは微笑みながら首を傾げた。……確かに魂が本当にあの世に逝っているというのなら彼女の言い分は正しい。私だって死ぬときに身体は海の生物の栄養になるんだろうなぁ、って思ったわけだから。
それでも納得できないのはあの世に魂が逝っているという保証がないから。それと、おそらく人間的な社会意識だろう。死者は安らかに眠らせるべし、それが私が日本で住んできて勝手に身についたことなのだろう。
私は魂のない女性に近づき、その頬にゆっくりと触れた。彼女の相変わらずな虚ろな目が私を見ていて、触れた指先からは人間的な温かさを感じれる。
「……ごめんなさい。やっぱり私たちに嫌悪感が湧いたよね? やっぱりやめて、明日の朝に地上に帰って。暫くすれば身体も人間的なものに戻ると思うから」
「いい。やろう」
「えっ?」
私は女性の頬から指先を離すとフィオのほうに向き直った。ぽかんとした彼女の顔が目に入る。
「確かにフィオの言うことは正しいよ。私だって自分の身体が死んだ後にどうなるなんて深くは考えなかった。多分、この人もそうだと思う。……そんなことを考えられる人は、まだ自殺をしないよ」
自殺をする直前、最後に私が考えてたのは……あの世に私が逝ったとき、家族が私を許してくれるかどうかだった。自分の死体のことなんて、正直海に身を投げてしまえば終わりだとしか考えてなかった。
「……ありがとう。ただ、これだけは知っておいて。私やクロエ、もちろんミノンだって死んだ人間の遺体を粗末に扱ったりはしてない。これだけは、分かって」
フィオの言うとおり、それは間違いないだろう。現に目の前の女性の一糸纏わぬ白い肌には傷一つついていない。正直、私の素肌より綺麗な気さえする。
「彼女の名前は?」
「名前はつけてない。クロエとミノンもそれぞれ一人ずつ彼女のような魂のない人間……私たちは『人形』って呼んでるけど、それを漏っているけど名前みたいなのはみんなつけていないと思うよ」
人形か……まぁ、彼女達をいまだに人間って呼ぶよりかはいいのかもしれない。
「ごめん。そろそろこの子寝かしてあげなきゃ」
フィオがその人形の前に膝を折って、その華奢な身体を抱きしめてあげながら頭を優しく撫で始めた。すると人形の虚ろな目が細まり、トロンと眠そうな目に変わった。
そのまま十数秒で人形は完全に目を閉じ、岩肌に寄りかかるように静かな寝息を立て始めた。それを確認したフィオが身体を離し、頭から布切れを掛けてあげた。
「これで明日の朝まではぐっすりと眠ってくれるの」
「食べ物はどうしてるの?」
「一応私の触手をその……穴から入れて私の体液を注入してあげれば特に他の栄養は必要ないの」
フィオが頬を掻きながら少し恥ずかしそうに答えた。
「一応、これで私の話は終わりなんだけど……」
「うん。……全部を正直にありがとうね。じゃあ、やろっか、ね?」
「よ、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
先ほどまではフィオは凛とした態度だったのに、今は別人のようにオドオドとしている。そうされるとこっちも恥ずかしくなってくるのに……。 私とフィオは苦笑いをしながらお互いに服を脱ぎはじめ、ふと思い出したように私にこう聞いてきた。「あ、あと人魚の足に戻したいんだけど、いいかな?」
「う、うん。どうぞ」
私の返事の後、裸になった彼女の絶妙に肉付きの良い足が変化していき、あっという間に人魚のそれへと変わった。幻想的な光を静かに放っている青色の鱗がまるで宝石のようだ。
「じゃあ……失礼して」
「は、はい」
いざ裸の人魚を目の前にして私はいよいよ緊張していた。まぁ、多分フィオがリードしてくれるんだろうけど……。
そう思っているとフィオの人魚の足が私の身体に優しく絡み付いてきた。意外思ったのは、その青い鱗が見た目より全然柔らかかったことだ。
「はぁ……柔らかくて暖かい身体……可愛い」
私の首に手を回して火照り顔でニコリと微笑むフィオ。ううっ……恥ずかしい。
「おいしそうな唇……んっ」
「んっ……んんっ」
フィオが私の口の中でゆっくりと動き回る。いきなりのキスに驚いたが、それも目を瞑ってキスに集中するフィオの表情を見れば可愛らしくて、私もフィオの舌に合わせて自分の舌を動かす。
その反応に喜んでくれたのか、フィオが先ほどの人形みたいに目を細く開いて嬉しそうに私を見つめた。私も彼女の身体を抱きしめることによってそれを返す。
「んぁっ……あっ……甘い」
唾液の橋を作りながらゆっくりとお互いに顔を離し、橋が崩れた後に私が舌の上に感じたのは氷砂糖のようなゆるやかな甘さだった。
「美味しい? ふふっ、ひよりのもすっごく甘くて美味しいよ」
フィオの柔らかい微笑みが私の心に響き、もっと彼女を喜ばしてあげたいという感情が湧き上がってくる。
「ひんっ! もぅぅ……」
「ふふっ、かわいいこえ」
私の乳首を指先て優しく揉んでくるフィオに、私は冗談交じりの膨れっ面をして、仕返しに彼女にも同じことをしてあげる。 「あんっ……きもちいいよ」
フィオが私の肩に首をもたれかけて耳元で囁いてきた。熱を孕んだ彼女の息が私の耳に吹きかかってくる。
「ほらっ、コリコリってなってきたよぉ」
「はずかしいこと、いわないでよ……」
先ほどまで恥ずかしがっていたフィオが楽しそうな顔で私の乳首を攻めかけ、そして不意に手を離すとゆっくりと顔を胸に近づけて私の乳首を咥えた。
「きゃぁんっ! ちょ、ちょっとやめてぇ……」
「んん~っ、おいひぃ」
「ふあっ! し、したで、ころがさない!」
私の乳首がクリクリと彼女の舌の上で転がされ、生暖かいそれが私に快感を伝えてくる。
その仕返しに私もフィオに何かをしようと探すが、彼女が前かがみになっているため胸の位置が分からず乳首が攻められない。
そうして手探りに彼女の身体を触っていると、不意に私の人差し指が何かに入り込み、途端にフィオがビクンと身体を震わした。
「あんっ! んもっ……せっかちさん」
「ま、まさか……」
フィオが私の胸から顔を離して自らの上半身を起き上がらせていくと、私の右手の人差し指が彼女の……穴に沈み込んでしまっていた。
「ご、ごめん! 大丈夫?!」
私は急いで右手を引き抜こうとすると、フィオがその手に自分の手を重ねて引きとめ、ニコリと微笑むとそのまま私の手を更に穴の奥へと押し入れ始めた。
「ちょ、ちょっと!」
「んぁぅぅ……あったかいでしょ? ふぁぁ……ひよりのあったかいてが、わたしのなかにはいってくるぅう!」
困惑する私をよそに、右手の指が彼女の中に招き入れられていく。彼女の中はすでに濡れきっていて、先ほどの彼女の態度が嘘ではないことを私に確信させてくれた。
「くぅんんっ……ちょっと、すとっぷ」
あっという間に私の5本の指が全て彼女の中に吸い込まれたところで、フィオが私の招き入れることをやめた。
「あっ……これって……」
突如、彼女の奥から出てきたものが彼女の中に入っている私の右手の指先に触れた。丸っこくてかなり太いそれはぬるりと私の5本の指の間に入り込んできた。
「ふふっ、わたしの、しょ・く・しゅ」
「こ、こんなおおきかったっけ?」
「だってぇ……こうふんしちゃって……ねぇ、ひっぱりだして?」
小首を傾げたフィオが私に甘い声でねだってきた。正直、あまり触りなれない感触に困惑したが、フィオの期待を込められた表情に決意を決めてその触手を指先で掴んだ。
「んぁうぅ……そうぅ。そのままぁ……ひっぱってぇ……」
「う、うん。いくよ……」
フィオが頷いたのを確認してから、私はゆっくりと右手を引き抜き始めた。ぬめっている触手を離さない様に気を使うと、自然と指先に力が入ってしまう。
「くぁんっ!」
「ご、ごめんっ! 痛かった?!」
私は触手から手を離して、自分の右手だけ引き抜こうとすると、すかさずにフィオの手がそれを押さえつけた。
「ちがぅう。……あんまりきもちよくて……イキそうになっちゃっただけ。さっ、あとすこしだから……おねがい」
悪戯っぽく舌を出してフィオの表情は嘘を言っているようには見えず、私は触手を掴みなおしてそれを再び引き抜き始めた。「ふぁんっ……でてくるよぉ」
やがて私の塗れた指先が彼女の中から出てきた。彼女の赤紫色の太い触手を携えて。
「ふふっ、ありがとう、ひより」
そう言って微笑むフィオの顔よりも、私は右手の指先に掴んでいるその触手に目を奪われていた。
「さ、さっき私に見せたときより2倍ぐらい太いじゃない!」
「だって……ひよりとキスとかしたり、あんなにつよくつかまれたりしたら、おっきくもなっちゃうよ」
フィオの言葉に反応するかのように触手がうにうにと動き始め、私が思わず手を離しても変わらず自立していた。
「ねぇ……そろそろひよりに、いれてもいい?」
「ちょちょちょちょ、ちょっと待って! こんな大きいの入るわけないって!」
「あははっ、大丈夫。ゆっくりいれてあげるから」
私が両手と首を振ってフィオの行動を制止しようとするが、彼女はすかさず私の身体を抱きしめると優しく微笑んだまま首を横に振った。
そして彼女の触手がするりと私の穴に近づいてきて、その入り口を丸っこい触手の先っぽで擦ってくる。
「くああぁんっ……やめてえぇ……」
「ふふっ……じゃあ、ゆっくりいくからねぇ……んんっ、と」
「ふあああぁんっ! ひ、ひろがっちゃぅうううう!」
押し広げるようにぬるりと触手が私に入ってくる。正直、経験豊富とはいえない私の穴はそこまで広くないのに……でも、不思議と痛みは感じない。
「やっぱり、しめつけてくるぅ……クロエとミノンより、せまいかも……でも、やさしくやってあげるからね……」
その言葉通り、フィオは触手を牛歩の如くゆっくりと入れてくる。痛みはなくても穴の押し広げられる感覚に思わずフィオの身体を強く抱きしめてしまう。
「そんなにつよくだきしめちゃって……かわいい」
「も、もうっ! あんっ!」
私が文句を言おうとするとすかさずフィオが私への侵入を再開した。その衝撃にまたしてもフィオに強く抱きつくと、彼女は楽しそうに笑いながらもそれを続けた。
「だ、だめぇ! も、もうはいらないぃい!」
「もう、すこしぃ……がん、ばって!」
興奮した表情のフィオが私と密着していた腰を少し上げると、私と彼女の穴の間から触手が見えた。しかし、触手が抜かれるような感触はない。
「じゃあっ、いくよおぉ……んんんんんんんっ!」
「ふぁあああああああああんっ!」
上げた腰をフィオが一息に沈め、同時に私の子宮へと触手があっという間に辿り着いた。
「んぁうぅ……は、はいったよおぉ、ひよりぃ」
「くぅうんっ……も、もう、いっぱいいっぱい……」
「あははっ、これからがきもちいいんだよ。おたがいに、ね」
フィオはそう言うやいなや、私の身体を強く抱きしめてお互いの身体を密着させると触手が私の入り口へと戻りはじめた。
「くはんっ! わたしのに、すいついてくるぅううううう!」
触手に私の中が絡みつき、いやらしくこもった水音が響く。満ちていた私の中から出ていく感触に、私はわずかな歯がゆさのようなものを覚える。
「んんぁっ……じゃ、もういちどいくよぉ……うぁううぅぅ」
「ああああああっ! またひろがるぅううう!」
触手が抜け始めると同時に締りかけていた私の穴が再び押し広げられ、またしても私の中がフィオで満たされていく。
「あははっ、ほらあっ。だんだん、はやくするよおぉぉ……」
「だめ、だめぇ! これいじょうは、むりぃいいいい!」
そう言ってるのに私の中へ出し入するスピードは下がるどころか、尻上がりにドンドン上がっていく。
「こわれるぅうううう! もう、こわれちゃうぅうううう!」
「ふふっ……じゃ、すとっぷ!」
フィオがニコリと笑ってその動きをピタリと止めた。私はそれに驚きながらも、じわじわと広がる膣の寂しさにもどかしさを覚えはじめた。
「ごめんね、ひより。ここらへんでやめておこっか?」
「えっ!? あ、あの……そ、それはちょっと……」
ニコニコと笑うフィオが私の身体を離して、触手を完全に抜き去ろうとする。私はその様子を見て慌て、そして思わず出て行こうとする触手を掴んでしまった。
「あれ? どうしたの?」
「う、うん。わ、私は気にしなくていいから……その続けよ?」
「え~っ。でもひよりが壊れちゃうと、ねぇ。妹二人もまだなわけだし。無理しちゃダメだよ」
そうしている間に、今にも抜けてしまいそうなぐらい触手が私の入り口へと戻っている。
「ああんっ! もう!」
私は思わずフィオに抱きつくと、その勢いのまま彼女を押し倒して彼女の上にすかさず跨った。
「……ぷっ、くくくっ、あははははっ!」
「えっ? な、なに?」
私の下でフィオが笑いを吹き出した。困惑する私の腕を取って身体を密着させてフィオが囁く。
「ごめん。ひよりをちょっと焦らしたくなってね」
「ひ、ひどい! 」
「あはは、ごめん! ……朝までじっくり、楽しもうね。んっ」
フィオが私の唇をまさぐりながら、再び触手で私の中に入り込んで太いそれを出し入れしていく。
「ぷはっ! ひ、よりぃ、きもちぃいい、きもちぃいいよぉおおおお!」
「んぁあああぅうう! わ、わたしもぉおお! んんっ」
今度は私がフィオの口の中を味わいながら、彼女の動きに合わせて自ら腰も動かす。そして段々と私の官能も頂点が見え始めた。
「んあっ、ふぃお! おねがぃいいい! いかせてぇえええええ!」
「あんぅうううううう! わたしを、うけとってぇ、ひよりぃいいいいいいいい!」
フィオの触手が子宮の一番奥で突き刺さったように止まり、そして私の中に熱い液体が放たれた。同時に私も膣から蜜を放った。
「はぅううううううううううううう! あつぃいいいいいいいい!」
「んっ、くぅ……しぼりとられるうぅぅ……ひよりぃ……さいこぉ……」
私はフィオの身体の上にへたりと倒れこんだ。酸素が要らなくなった身体のためなのか、息苦しくもなく汗もかかないが身体全体が熱くてたまらない。
フィオも同じように身体を休めていたが、ふと私の身体を再び掴むとニコリと笑ってこう言ってきた。
「ふぅ……さぁてひより……まだまだ、だよぉ?」
「えっ? あんっ! ちょ、っと!」
再び私の中で暴れるフィオ。その上で足をガッチリと掴まれてなすがままにされる私。
……それは私の意識が途切れるまで……いや、途切れた後もまだ続いていたらしい。
第四章 次女の涙と姉の過ち
次の日。起きたら既に夕方過ぎだった。……いや、元々この海中の洞窟に外の光なんて入ってこないから私には分からないんだけど、フィオはもう夕食の魚を床に広げていた。
「昨日はありがとうね、ひより。はぁ……思い出しただけで身体が疼いちゃう……」
「そ、それはよかったね。ふぅ……今日はクロエとだよね?」
「うん。ニノンは私が面倒を見てるから遠慮なくやってあげてね。さっ、二人は先に食べちゃったから私たちも食べよ?」
遠慮なく“やられて”ね、の間違いだと思うけど、なんて思いながら私は近くにあった海老を口に運んだ。やっぱり新鮮なためなのか、文句なしに美味しい。贅沢を言うならしょうゆが欲しいけど。
「それより身体が昨日よりスベスベしているんだけど……これも?」
「ふふっ、それは人魚の美しさの秘訣みたいなものかな。昨日、私の体液を身体に一杯浴びたから」
……記憶の片隅に、彼女の体液をお互いにローションのように塗りたくって行為をした映像が……。
「まっ、それを食べ終わったらそのままクロエのところに行ってあげてよ。多分、卵を出して楽しみに待ってると思うから」
「はいはい」
「あっ、待って」
私はイカのゲソを咥えてクロエの部屋に向かおうとすると、フィオが立ち上がってこちらに駆け寄って来ると、突然私の唇を奪った。
「んっ……」
私は慌てながらも私の口をイカごとまさぐるフィオに身を任せ、しばらくその甘美な彼女の唾液を味わった。
「……ふふっ。あんまり長くやってるとクロエに怒られちゃう」
フィオが私の中から舌を抜いたと思ったら、口の中にあったゲソも取られてしまっていて、フィオが口からニョロっとそのゲソを出して笑っていた。
「まったく……じゃ、行って来ます!」
私はフィオに敬礼をすると、彼女の見送りを背に受けながらクロエの部屋へと歩き出した。
この食事の部屋から四方に通路が分かれていて、海への出口と、それぞれ三姉妹の部屋へと繋がっている。クロエの部屋は食事の部屋をはさんでちょうどフィオの部屋の反対側だ。
クロエの部屋に近づくと、昨日フィオの部屋に近づいたときと同じようにいやらしい水音と、クロエの喘ぎ声がわずかに聞こえる。
「ク、クロエ! ひよりだけど!」
「おーっ! や~っと来たかぁ! さ~ぁ、入るんだぁ!」
クロエの元気な声に私はおそるおそる部屋の中を覗いた。すると既に裸で人魚の姿のクロエがくたびれたTシャツで見知らぬ女の子を拭いていた。
「その人って……クロエの人形?」
「その通り。今も卵を出すのに手伝ってもらってたところだ。まぁ、出してからも何発かやったけどな」
綺麗な歯を見せてクロエが笑い、そして人形を抱きしめて彼女を寝かすとその上に布切れを被せた。
「さぁて、始めるぞ~! さっさと服を脱げぇ~い!」
「わっ! じ、自分で脱ぐから!」
追いはぎでもするかのようにクロエが私の服を掴みに掛かってきた。
「あっ、ペンダント。一体何が入ってるんだ、それ」
「ペンダントじゃなくて懐中時計。まぁ、壊れちゃったけど。……ほら、これ」
私は懐中時計を開いて中身の写真をクロエに見せた。しかしクロエはそれを一見しただけで、大した興味はなかったようですぐに押し返してくるなり、裸になった私に抱きついた。
「よ~し、やるぞ!」
「あんっ! もぅ……んんっ」
私は懐中時計を脱いだ服の上に置いて振り返ると、クロエが強引に私の唇を奪い取ってきた。彼女の元気な舌が私の口の中で暴れ回る。
「んっ!?」
突然、私の身体に触手が何本も絡み付いてきた。そ、そんな! フィオは2本しか出せなかったのに!
「ぷはっ……ふっふっふ、驚いているなぁ? ただ太いだけのフィオとは違うのだよ」
「ちょちょちょちょ、ちょっと! こんなに出さなくても二本でいいでしょ?! 私の穴は二個しかないんだから!」
「何を言ってる。誰が一個の穴に触手を一本って決めたんだい? へっへっへっへ」
クロエが不適な笑いを私に向けた。た、確かにフィオのよりかは太くないけど、そんなの二本以上入らないって!
それでも私の秘所は左右二本の触手によって広げられ、更にもう一本が穴の中心に触手があてがわれる。
「さぁて……楽しませてもらおうか、ひより。いただきま~す! くっ、んんんん!」
「ふあぁああああああああんっ!」
クロエの触手が私の中に一息で侵入した。途中で止まることなく、一気に子宮まで突き刺さる。
「くぅううう! ひ、よりいぃ! さいこうだぁ~!」
「あうぅぅぅぅぅ……って、ちょっと!」
侵入されたの衝撃と快感の波に耐えている私の秘所に、更にもう一本の触手があてがわれた。
「よ~し! じゃあもういっぽん、ついかぁあああああああ!」
「くぅあああああああああああんっ!」
先の触手に絡みつくようにしてもう一本の触手が私の中に入ってくる。体感したことのない感覚にあやうく意識が飛び掛ける。
「あ、あぅうう、ああぅ……」
「おいおい、ひより。大丈夫かぁ? よ~し、じゃあ最後の一本、いってみよ~」
クロエがまったく悪びれた様子のない笑顔で私の顔を覗きこみ、高らかに宣言をしてきた。
「や、め……ああああああああああああああんっ!」
「くはぁああああんっ! こ、こりゃ……すごいぃぃぃ」
二本の触手のわずかな隙間に最後の一本の触手が入り込み、私の穴がピッシリと触手で埋め尽くされた。
「よ、よぉおおし……う、うごくぞおぉぉ!」
「だめぇ……やめ、うはあああああああんっ!」
「すっ……ごい……からみ……ついてくるうううううううううう!」
私の穴の中で三本の触手が入れ替わりに子宮を突いてきて、私の頭に快感が連続して流れ込んでくる。
「ひより! おしりもちょうだい!」
「む、りぃい、だってぇええええええ!」
私の返事も待たずに、クロエのお尻から出された新たな触手が私の肛門にあっという間に張り込んできた。
「くはんっ! こ、こっちもかくべつうぅぅ……」
衝撃に慣れるヒマもなく、前後の穴で触手の激しい出入りが開始される。気付けば後ろの穴も三本の触手が突き刺さっていたが、もうここまで来ると何本でも変わらない気さえしてきた。
やがて更に4本の触手が私の胸に絡みつき、クロエの手と胸を揉んできたり、その先端に開いた穴で乳首を包み込んできた。触手の中で乳首が無数のヒダのようなもので転がされる。
「ああんっ! しびれるぅうう!」
挿入の刺激に比べると決して大きな刺激ではないが、それとはまた違った感覚の快感に私は身を悶えさせた。
ぐにゅぐにゅと二つの穴の中でところ狭しと暴れまわる触手の数々に、私に送られる快感の濃度も自然と高くなってきた。
「いい、いいよぉ! くろえぇ! もっと、もっとぉおおおおおお!」
「ひゃんっ! しまるぅうう! ひより、もう、だすぞぉおおおおお!」
「ちょうだい! くろえのぜんぶ! ちょうだぁあああああああいいいいいいい!」
「はぁあああああああんっ! うけとれぇええええええええ!」
「ふぁああああああああああんっ!」
クロエの熱い体液が合計6本の触手から次々と私の中に注ぎ込まれ、私の身体の上にもそれが4本の触手によって浴びせられる。
「ああうぅぅ……くろえぇ……」
身体の上に受け取った彼女の体液を、クロエはお互いの身体に塗りたくった。わずかな光によってお互いの身体が妖しく光る。
「ひより……おまえさいこーだ! まだまだいくぞ!」
素直に嬉しそうな笑顔のクロエに、私は力強く頷いてその身体を抱きしめ、そして再び交わりを始めた。
「ふあぁぁぁ……ひより……すごすぎぃ……」
最初に根をあげたのはクロエだった。と言っても私の足腰はもうしびれて感覚が完全失われている。
私は岩肌に寄りかかり、疲れた様子のクロエを後ろから抱きしめていた。私の足の上に乗っかる人魚の足の鱗までもが火照っているかのごとく、彼女の身体全体が暖かかった。
「なぁ……ひより」
「うん? どうかした?」
突然、口調がどこかひかえめになったクロエの声をいぶかしげに思いながら私は返事をした。
「さっき写真、ひよりの家族だろ?」
「ああ、うん」
「どんな家族だったんだ? 人間の家族って」
ちょっと意外な質問に私が戸惑っていると、クロエが振り返って私の顔を見ながら続けた。
「私の二人の母親について、フィオから聞いてるんだろ? 片方の母親は優しかったけど、もう片方は……最低だ」
一人の母親は死に、もう片方の母親は三姉妹とは離れて今も群れに残っている、ということを昨日フィオから聞いた。ただ、フィオとはその残った母親に対する印象が随分違っているような気がした。
「クロエは、許せないんだ。群れに残った母親のこと」
「……あいつなんか親じゃない。けど……フィオが許すって言うなら、私も許す」
まるで子供が背伸びをするような言葉で、素直にクロエがそう話してくれた事を嬉しく思った。
「……私の父親はね、無口だったけどかっこいいお父さんだった。ただ、お酒を飲むとすぐ陽気になって下手な歌を歌うんだけどね」
私は知らぬ間に自分の家族のことをクロエに話し出していた。クロエは興味深そうに私の顔を見ている。
「お母さんは、とにかく元気な人でさ。私が落ち込んでるとすぐさま駆けつけて、あの手この手でうるさく励ましてくれる人だったかな。クロエみたいにね」
「ぶ~っ! 私はうるさくないぞ!」
膨れ面のクロエの頭を私は笑いながら撫でつけ、そして一呼吸置いてから話を続けた。
「それと……妹のひなた。お父さんに似て無口な子で……私のことは嫌いだったけど、私はとても大好きな妹だった」
「……大丈夫? ひより」
クロエが俯く私を下から覗き込むように聞いてきた。私は彼女の身体をぎゅっと強く抱きしめながら聞いた。
「つまらない話なんだけど、聞いてくれる?」
「う、うん。どーんと、話しちゃいなさいよ」
頼もしいクロエの返事に私は後押しされるように私は話し始めた。……自分の罪を。
「私の家族はね、貧乏……不自由な生活を送ってたの。周りの人より物が少なくて、食べるものも決して美味しいものばかりじゃない生活をしてた……それでも幸せだったけどね」
自分で作ったわけではない借金がお人よしだったお父さんに被せられ、ボロい木造の家に私たちは住んでいた。生活も……色々と苦労をしていた。
「だから私は、家族がもっと幸せに暮らせるように頑張ることにしたの。家族のみんなに美味しい食べ物とかを、いっぱい食べさせてあげられるようにね」
高校生になった私は弁護士になれるように法学系の大学を志した。しかし……私の学力ではどんなに頑張っても私立が限界だった。
「そのためにお父さんはお酒をやめて、お母さんもお仕事をするようになった。だけど……妹はそんな私を認めてくれなかったの」
妹は私がそんなことをするより、すぐにでも働きに出ると思っていたらしい。だから妹は私とは口もきかなくなってしまった。
「それでも両親が応援してくれたお陰で、私は幸せを掴むチャンスができたの」
大学入試直前、なんとか大学の入学金とその他の工面ができたということだった。
「けどね、それは両親だけの頑張りじゃなかった。妹が私に隠れて朝とか夜に働いてくれていたからだったの」
受験日の前日、お父さんから聞いた話だ。朝は新聞配達、夜はコンビニなどで働いてお父さんたちにこっそりお金を渡していたそうだ。
「優しい親と、素晴らしい妹じゃない」
クロエがにっこりと私に笑い掛けるが、私はこの先の結末を知っているだけあって同じように笑うことは出来なかった。
「うん。本当に……。でも、そのチャンスを手にできるかどうかって日に、事件が起きたの」
「事件?」
目を丸くして聞いてくるクロエに心が痛んだ。果たしてここから先を本当に話してしまっていいのか、ということを。
しかし、クロエは隠さず自分の本心を語った。それなら、私も何も隠さずに言う義務がある。私の……罪の全てを。
「その朝、家族はみんな寝静まっているとき私は起きた。その日は早起きしなきゃいけなくて、それを言ったらみんな私に合わせて起きると思ったから」
受験日。みんなに言ってある時間より私は1時間ほど早く起きた。
「それで朝ごはんを自分で作って、それを食べたあとに、こっそりと家族の寝顔を見て私は家を出たの」
朝ごはんは簡素に目玉焼きを作っただけだった。私は緊張するとお腹を壊すタイプなので、それを見越してのことだった。
……けど、私の最大の罪はそれだった。
「それでそのチャンスを掴むための問題を受けて、家へと急いで帰ったの。そしたら……」
「そしたら?」
目の前のクロエの顔が歪み、あの時の映像が映し出される。数時間前に出た家の、数時間後の姿が。
「……家が、焼けてた」
「え……?」
思わず頭が重くなり俯いてしまう。目を閉じた先に黒く焼け焦げた家の残骸が映る。そして近くに居た消防隊員から聞かされた犠牲者と……火の原因。
「家族は全員死んでた……火の原因は、私が朝作った料理だったの」
火事の原因は私がガスの元栓を閉め忘れていたことにより、劣化したガス栓から漏れたガスが冬の静電気によって引火し、爆発するように家は燃えたらしい。
「……私は帰って来たら真っ先に妹に、ありがとうって言おうとしたのに……それさえ言えずにみんな死んじゃったんだよ。……私のせいでね」
頬から枯れたはずの涙が流れた。この事件から2ヵ月半、私は涙に濡れた生活をした。そしてその後、私は自殺を決意した。
「2ヶ月過ぎたら涙が流れなくなったの。それで気付いた。泣いて償えるような罪じゃないんだ、って……だから自殺したの」
「……ふざけるな」
「え?」
涙目でクロエを視界に捉えると、彼女は私を押し倒して私の頬に流れる涙を舐めて拭き取ってくれると、その思いを私にぶつけた。
「私は妹でもあり、姉でもあるから分かる。妹として、姉が泣くのは見たくないし、姉として、妹に自分が泣くところも見せるべきではない!」
クロエの今まで見たことのない厳しい剣幕に、私はぐぅの音も出ない。
「結論として……結局ひよりの罪は死んでも、泣いても償えるようなものじゃないよ。笑って償うべきなんだよ」
「……無理だよ。あのことが忘れられなくて笑えないから……私は自殺したの」
「……だったら、私が忘れさせてやる! ひよりがそれを忘れるぐらいによがらせてやる!」
「なっ、んんんっ!」
反論の言葉も言わせず私の口は彼女の唇によって塞がれ、強引に口の中をまさぐられる。同時に何の前触れもなく、触手が前後の穴に突き刺さってきた。
「んんんんんんっ!」
「ぷはっ! ひよりの妹はな、お前に笑って欲しいから頑張ったんだよ! お前のことが好きだから頑張ったんだ!」
私の身体に生ぬるい液体が落ち、クロエの顔をじっと見れば、その綺麗な両目が涙で濡れていた。
「バカ、バカ! 私もバカだけど、お前のほうがずっとバカヤローだ! うわぁああああんっ!」
私の胸に顔を埋めてクロエが泣きじゃくった。私は驚きながらも、涙を流してくれた彼女を見て、私の両目からまた涙が流れ出した。
そして改めて自分のバカさ加減を心の中で強く罵った。
「ごめん……ごめんね」
私は泣きながらクロエの頭を撫でていた。このまま天国に逝っていたら、家族みんなにとてつもない説教を喰らうところだっただろう。
「ぐず……いいか、絶対に忘れさせてやるからな! くらえ、んんっ!」
「あんっ! もう……ありがとう、クロエ。んっ」
触手の一本が私の子宮を強く突き、涙目のクロエがニヤリと笑った。私はその彼女の唇を弄りながら、ほとばしる快感に身をゆだねた。
第五章 服従
だめだ……私、このままだとだめな人間になる。
「ど、どうしたの、ひより? そんな怖い顔しちゃって」
フィオが心配そうに私の顔を見て言葉を掛けてくれる。
「どうした? 食いすぎて身体でも重くなったか?」
う、クロエ。だいぶ近い。けど多分あれだけ激しいことをしてるから体重は増えてないと思うんだけど……増えて、ないよね……?
「だ、だって……い、今はもう夕方なんでしょ?」
「夕方ってより、もう夜だな。完全に外は暗いし」
小魚を噛み潰しながらクロエが放った言葉が私の心に強く突き刺さった。
「だめだぁ……こんな生活……起きてご飯食べて、行為して、また寝てなんて……」
ダメ人間、と呼ばれている人間でももう少しまともな生活をしているのではないかというぐらい、酷い生活をこの2日間送っている。うぅ……受験の時には毎日早起きしてたのに。
「まっ、まぁまぁ。私たちは別に迷惑にとも思ってないし。ね、クロエ?」
「そうだな。ま、いくら私でも昼過ぎには目を覚ますがな」
ぐさっ、という効果音と共に私の胸にクロエの言葉が深々と突き刺さった。すかさずフィオが助け舟を出してくれる。
「そ、そんなことより! 今日はニノンのことをよろしく頼むわね、ひより!」
「そうだぞ~。食った分は働けよ~」
「もう、クロエ! ……いいわ、今日は私が徹底的にかわいがってあげる!」
「なっ! フィ、フィオ! その……優しくして?」
クロエが小首を傾げながら小動物のようにフィオのお願いをした。対してフィオはニコリと笑いながらこう返す。
「ふふっ……さっ、行こうかしら、ク・ロ・エ? ひより、じゃあミノンをよろしくね」
「いぃいやぁああああああ!」
フィオはクロエを脇で持ち上げるようにして部屋を去っていった。フィオ……こわ……。
「さて……私も行かなくちゃ、ね」
食べ終わった魚の骨などを片付け、私はニノン……さんの部屋へ続く廊下に足を向けた。ううっ、気が重い。
正直、人間が嫌いなニノンさんを私は喜ばせることができるのだろうか? という不安があるのだけど……。
そう考えている間に、もうニノンさんの部屋に辿り着いてしまったわけだけど……不思議と姉二人と同じようないやらしい水音は聞こえなかった。
「あ、あのニノンさん。私、ひよりです!」
「入れ」
「失礼します……」
おずおずと部屋の中に入ると、綺麗に整頓されて入るものの、二人の部屋より幾分物に溢れた部屋だった。ボロボロの家具の中に、耳の取れたクマのぬいぐるみや、読めるとはとても思えない色あせた本が入れられている。
私が部屋に入ると、人魚の姿のニノンさんは部屋のちょうど中心辺りにちょこんと置かれた木の椅子に座り、立っている私をじっと見ていた。
「あ、あの……」
「とりあえず服、脱げ」
「は、はい!」
ニノンさんの言葉に私は急いで服を脱ぎ始めた。あうぅぅ……こんな小さな子供に命令されて服を脱ぐなんて……。
「おい、人間」
「は、はい!?」
「これは、なんだ?」
ニノンさんがなにやら黒いスポーツバックを広げてこちらに見せてきた。
「今朝、海底で見つけた」
「げっ。これって……メイド服」
私は中身を軽く触りながら確認した。……一体誰がこんなの海に捨てるのよ。しかも明らかに小さなサイズも入ってるし……。
「で、なんなんだ、これは?」
「こ、これはメイド服って言って、古い時代に身分の高い人に使える女性が着ていた服です」
私の説明に、ニノンさんは残念そうな顔をしてバックを覗き込んだ。
「そうか……フィオ姉さまにあげようと思っていたんだが、それじゃあだめだな」
そう言ってバックを閉じようとしていたニノンさんの手がピタリと止まり、私の顔とその中身を見合わせ、こんなことを言ってきた。
「お前、これ着ろ」
「え、えっ!?」
スポーツバックを押し付けられた私は反射的にそれを受け取ってしまった。
「あ、あの」
「早くしろ!」
「はっ、はい!」
私は慌てて中身取り出すと急いで着替えを始めた。ううっ……弱い……弱すぎる、私。
心の中で泣きながら、私は大慌てで着替えを終えた。……律儀にカチューシャまで着けちゃって……なにやってんだろう、わたし……。
「くっくっく、似合うじゃないか。……じゃ、早速始めてもらおうか」
浅めに椅子に座りなおしてニノンさんが、目に眉間を寄せると人魚の下腹部の穴から勢いよくそそり立つものが飛び出した。
「驚いたか? くくっ、私は姉さまとクロエが出せなくなった、人魚の頃の性器が出せるんだ。まぁ、卵は精液は出ないから、安心しろ」
彼女の股間のそれは触手よりかは当然短く、太さもない。だけど……少なくとも子供につけるような大きさではなかった。
「じゃあ、まずこれを……なめろ」
「な、なめろ!?」
私はたじろいで後ずさりをすると、ニノンさんの目が明らかに不機嫌そうなものになり、私は急いで彼女に近づくと股間の前にひざまづいた。
しかし……いざ立派なそれを前にするとそれ以上動けない。実際……口でやった経験もないわけで、目の前のそれを改めて見ると……やっぱり大きいわけで。
「何をやっているんだ。勝手に始めるぞ」
「えっ!? んんんんんんんっ!」
口を半開きにしたが最後、私の口内にニノンさんのそれが突っ込まれた。頭を両手で掴まれて逃げることも出来ない。
「ふぅ~ん。中々いい口をしてるじゃないか、人間」
「ひゃめ、んんんんんんんんんんっ!」
抗議の声を上げる前にニノンさんが私の口の中を出入りし始めた。いやがおうにもそれが舌に絡まり、しょっぱい味を私の味覚に感じさせる。
「くっ、生意気にも舌を絡ませるとは……やるじゃないか、人間!」
意識してやったことではないのだが、それがニノンさんの官能を高めてしまったらしく、口の中の出入りが激しくなってしまった。
「んぁっ! だ、めだ! まず一回、出すぞ!」
「んんんんんんんんんっ!」
私は首を振ってそれを拒否しようとするが、がっちりと固定された首はびくとも動こうとしない。そして、ニノンさんが身を悶えさせ、私の喉の近くまでそれを突き刺した。
「でるぅうううううううううううう!」
「んんんんんんんんんんんんっ!」
口の中にネバネバとした粘着質の液体が押し寄せ、そして口が一杯なりそうなところで止まら……ない……。うそ……もう、くちのなか……いっぱい……。。
「飲め! 絶対に出すな! くっ!」
ニノンさんがそう叫ぶ間にもそれはどんどんと口の中に溜まっていく。そんな……。
口内のキャパシティの限界が近づいてもとどまる様子のないそれを、私は本能的に飲み込み始めた。粘着質なものなんで飲み込みづらいが、睨むニノンさんの顔を見れば贅沢も言ってられない。
不思議と……味は不味くなかった。いやそれどころか……まるで舌が蕩けるような甘美な味がする。それでも量が多すぎる。
「んんんっ、ぷはっ! あんんんっ!」
思わず口を開いてしまうと、未だに暴れるニノンさんのそれが私の口から飛び出て、私の顔に半透明な液体を浴びせ掛けてきた。
「くぅう! ……出すなと言ったのに、出したな?」
「ご、ごめんなさい!」
私はほぼ土下座のような形をとってニノンさんに謝った。その間、顔から滴る彼女の体液を口に入れると、やはりそれは美味しかった。
「ふん、まぁいい。次は下だ」
「した……」
言われて私は自らの股間を見てみた。すると私の愛液が床に滴るほど出ていた。……ううっ、最近やってばかりだから興奮しやすい身体になっている気がする……。
「ボーッとしていないで、そこに横になれ。人間」
「は、はい」
私はニノンさんが撒き散らしたものと、私の愛液で濡れている岩肌に身体を横たえた。……そう言えば、やってるときってこの岩の固さってあんまり気にならないなぁ。どこまで熱中してんだ、わたし……。
「いくぞ。次はこいつもな」
「へっ……?」
私の穴に彼女のオチ○チンがあてがわれると同時に、ゆらりとその背後から触手が現れた。
「しょ、触手まで……出せるなんて」
「誰が触手を出せないって言った? 後ろからは触手だけだが、前からはこれと触手も出せるぞ」
ううっ……こういうサプライズなところはクロエと似ているような気がする。
「じゃあいくぞ」
「あっ、ちょっとまっ……くぁあああああああんっ!」
前の穴と後ろの穴に触手が勢いよく侵入してきて、私の身体にのしかかるようにニノンさんも倒れこんできた。くぅ……久々に感じるなぁ、オチ○チンが入ってくる感覚。ちょっと、新鮮かも。
「くぁうぅぅ……なんて……しめつけだ……」
子宮までオチ○チンが侵入すると同時に、ニノンさんの動きが止まる。目をギュッと閉じて、私の身体の上で硬直をしている。
しかし、突然ニヤリと笑うと、私を見て静かに言った。
「くっくっく……いくぞ」
「あんっ! くぁんっ! んっ!」
私の肩をつかむと、彼女が荒々しく私の前後の穴でそれぞれを出し入れし始めた。熱いオチ○チンが前の穴を突き、後ろの穴を濡れた触手が突いてくる。
「んっ、くっ!」
「いっ! いはい!」
突然私の唇を弄ったかと思うと、ニノンさんは私の唇に噛み付いてきた。そしてまるで獣のように私の口の中で彼女は暴れ散らしていく。
「あんっ! かむと、よく、しまるな!」
「いっ、やめ!」
どうやら刺激を与えられると、私の穴はよくしまるらしい。加減はしてくれるが、やはりちょっとは痛い。
「だすぞ! しめろおおおおおおおおおおおおお!」
「くっ、ふあぁああああああああああんっ!」
私は唇を噛まれたと同時に、今度は意識的にも穴に力を入れて彼女のものを締め上げた。すると穴の中に、更に熱いものが注ぎ込まれ始める。
「でてるうぅぅ……お、おなかがぁ」
子宮の中と腸の中が液体で満たされ始める。そ、そんな! やっぱりとまらない!
「かっ! も、う……だめ……」
「くううううぅ……まだ、まだ、でるぞぉ……」
お腹が外から見ても少し膨らんできたように思える。お尻の穴から入ったほうは、既に胃のほうまで逆流しているのではないかとさえ感じられる。
「らっ、めぇ……」
目の前がくらくらとし始めてきたとき、突然両方の穴の栓が私から抜かれ、勢い余った液体がメイド服のエプロンや私の身体と顔に塗りたくられていく。
「はぁああああああんっ!」
「ふううぅぅぅ……だらしないな、出したばかりのものが流れ出てくるぞ」
「ご、ごめんなさい……」
ニノンさんの言葉に私は本能的に謝罪の弁を述べていた。
すると、ニノンさんが私の顔の上で跨り、私の口にまたしてもオチ○チンを突っ込んできた。そして今度は私のオマ○コに触手が突っ込まれる。
「よく出来たら私の体液をくれてやる。……美味しいだろ、わたしのは?」
私は何度も頷いてそれを肯定した。すると、ニノンさんは少しだけ嬉しそうに頬をほころばせて私の頭を掴んだ。
「じゃあ上手にやれ……いくぞ」
そしてまたしても交わりが始まり、私はその日も失神するまで彼女の体液を味わった。
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