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白濁の巫女1
474 名無しさん@ピンキー sage 2009/05/04(月) 23:44:34 ID:npJjdDRn
唐突に思いついたネタでSS書いてみた。書きかけだけど。
そう言う訳で、半分ほど投下させていただきます。
・要素 巫女、蛭、肉体侵蝕→精神侵蝕
・NGワード 白濁の巫女
475 白濁の巫女 sage 2009/05/04(月) 23:47:36 ID:npJjdDRn
ある古い井戸がある。
大昔、まだ妖と呼ばれるようなモノが蔓延っていた頃、その井戸に一匹の鬼が封じられた。
それから水は涸れ、井戸の周りには邪気が立ちこめ、人はそれから逃げるように住処を変えた。
そして、いつしかその井戸の存在は忘れ去られていった。
時は現代。封じられた井戸へと近づく影が一つ。
「はぁ、はぁ・・・まさか途中が崖になってるなんて・・・今までロッククライミングなんてしたことなかったのにぃ」
今は私有地となっている、田舎の山の中腹にその井戸があった。
その山の中の崖を登ったばかりの人影、年の頃は16から17のあどけなさがまだ残る顔をした少女は、汚れた手で自らの頬をたたく。
「シャキッとしろ、私。これから封印をやり直さなきゃいけないんだから」
少女の瞳には、強い意志の光が宿っていた。
少女の名は伊上直美。
日本中の、巫術や法術などの特殊能力を持った巫女を束ねる組織「協会」の一員である。
全国各地から寄せられる怪奇現象の解決のために人員を派遣している組織だが、この件についてはそうではなかった。
「協会」に保管出来ないような邪なるものが全国にはいくつか存在し、それについては数年ごとに封印を重ねがけする、またはやり直すということをしている。
直美が向かっているのもその一つで、50年に一度は封印をやり直さねばならない代物だった。
476 白濁の巫女 sage 2009/05/04(月) 23:52:13 ID:npJjdDRn
歩を進める直美の周りに邪気が立ちこめてきた。そろそろ目的地が近いらしい。
「よし」
少女は背負っていたナップザックを地に降ろし、中から巫女装束と禊のための道具を取り出す。
少女の周りに円形に塩を撒き、玉串を振るうと、塩で描いた円の中から邪気が消えた。
今まで着ていた登山者然とした服を脱ぐと、ダボついた服に隠されていた形の良い双房がふるりと揺れ、白くきめの細かい素肌が外気に触れる。
細身の体には余計な脂肪はついておらず、見るものに美しいという感想を抱かせるが、所作に残る幼さに、この者がまだ子供であることを気づかされる。
少女は下着だけの姿になると、巫女装束を身につけた。
玉串を持ったままナップザックを背負い、直美は再び歩き出す。
しばらく行くと、一度生した苔が枯れたままくっついていて、その上から古びた注連縄(しめなわ)が巻かれているボロボロの石の井戸が見えてきた。普段は見えない邪気が見えてしまうのではないかと思うほどに、その辺りの空気は淀んでいる。すでに空は赤く染まっていた。
「聞いてたより凄い気がする・・・早く祓えるだけ邪気を祓って、封印をかけ直さなくちゃ」
自分に言い聞かせるように呟くと、直美は井戸の周辺に塩を撒き始める。
そんな彼女に忍び寄る小さな影があった。それは強烈な邪気を放っていたが、周囲の邪気の濃さ故に、その空間内に目立つこと無く存在していた。
「痛っ!」
塩を撒いていた少女の手が止まる。強烈な痛みを感じた右膝の裏を見ると、そこには
「きゃぁっ!! 気持ち悪い!!」
丸っこい、白い色をした蛭が直美に噛み付いていた。大きさは少女の握りこぶしの半分ほど。蛭にしては異常に大きい。
少女から血を吸っているのだろう、真っ白な蛭の体が、ゆっくりではあるがだんだんとピンク色になってゆく。
「は、離れろっ!」
直美は掴んでいた塩を蛭に投げつけ、自身の体から法力を放つ。
妖や邪なる者を祓う効果のある力によって、蛭はすぐに少女からはがれ落ち、そのまま地面に溶けるようにして消えてしまった。
蛭に対する嫌悪感から慌てて力を使用した直美は、肩で息をついていた。蛭に血を取られたのも相まって、体力を消費していたのだろう。
ナップザックから小さな応急セットを取り出し、傷口を消毒、清水で清め祓い、絆創膏を貼ったのち、その場に腰を下ろした。
「あぁ・・・なんだかフラフラする・・・増血剤なんて持ってきてないし、さっさと終わらせて早く帰ろう」
しかし、彼女の気分が悪いのは貧血と体力の消耗だけではなかった。
禊も済ませ、巫女装束をまとっている直美は、概念的には『清いもの』である。
それにも関わらず、蛭に噛み付かれた。そしてその蛭が法力で消滅した、ということは蛭は『不浄のもの』であったということであり、
彼女の禊や装備に何らかの不備があったことを示唆している。それに伴う不安が、彼女の精神を不安定にしていた。
477 白濁の巫女 sage 2009/05/04(月) 23:52:39 ID:npJjdDRn
「協会」の中でも指折りの実力を持った直美の封印の儀はすぐに終わった。
既に暗くなっている山を下り、人目につかない所で元の服に着替えると、携帯電話を取り出し「協会」本部の彼女の先輩へと、井戸の再封印が終わった旨を伝えた。そして、蛭に噛まれたことも相談する。
「実は儀式を始める前に大きな白い蛭に噛まれちゃって・・・法力で消えたので多分妖か何かだと思うんですけど、なんだかそれがショックで・・・それまでの手順でどこか失敗してたかも知れないと思うと・・・」
「あらそう? おかしいわね、直美ちゃんの禊とか、いつも見てるけど完璧よ。なんで妖が触れられたのかしら。不浄のものは清きものには触れられないのにねぇ。傷とか大丈夫?」
「清めたので大丈夫です。きちんと消毒もしました」
「なら大丈夫なんじゃないかしら。その蛭も、消えたように見えただけで縮んだのかも知れないし。蛭が妖でもなんでもない普通の蛭だとしたら、それは自然のものだから直美ちゃんにも触れるはずよ。塩とかかけたりしなかった?」
「あ、はい、かけましたけど・・・」
「じゃあそうよ。まあ、そんなに心配なら明日ここまでいらっしゃい。今日はもうこっちまで来られないでしょ? 明日も学校だろうし」
「あ」
直美は携帯を耳から離して表示を見る。「通話中」と表示されているディスプレイの右上には現在時刻が表示されており、
「しまった、早く電車乗らないと帰れなくなっちゃう!」
最寄りの駅から出る電車は2時間に1本。あと10分で電車がやってくる時刻であり、ここから駅までは徒歩で30分はかかる。しかも次の電車が終電だ。
「くうぅ、田舎の終電はどうしてこう早いんだか?!」
「直美ちゃん、ファイトー。じゃあ切るわね」
「はいっ、さようなら!」
電話を切って駅へと一目散に駆け出す直美。少ないながらも駅の方へ歩いてゆく人影のある道へ出て、無人改札の駅舎目指して一目散に駆けてゆく。そして
「・・・最悪」
ホームで荒い呼吸をする彼女は、恨めしげな目で小さくなる電車を見送った。
478 白濁の巫女 sage 2009/05/04(月) 23:55:00 ID:npJjdDRn
結局、歩いて数十分の所にあったビジネスホテルに、「協会」に予約を取ってもらって泊ることになった。
「あーあ、初電でも学校に着けるのは昼頃だし、第一教科書諸々は家だし・・・明日は学校休むかぁ」
学校に「仕事をしている」と説明はしてあるため、すでに「協会」から欠席の届けが学校に行っているはずであった。家は代々「協会」で仕事をしており、こちらへは直美が連絡を入れてある。
何より
「疲れた・・・」
色々なことで体力を使って疲れ果てていた直美はシャワーだけ浴びると、寝間着が無いため、普段着に着替えてそのまま寝入ってしまった。
翌日、目を覚まして顔を洗いに洗面台に向かった彼女は仰天した。
「え・・・なに・・・?」
血の気が引いたように、顔が真っ白だったのである。青みは無く、蒼白とは呼べない、純粋な白さ。
顔だけではなく、体中から血の色が失せていた。しかし直美の体調は良好で、むしろベストコンディションで儀式に臨んだ昨日よりも良いくらいである。
そして、異常はそれだけではなかった。
「どういうこと、これ・・・」
ショーツが股間に張り付いていたのである。もちろん、彼女自身からの分泌液のせいで。
ショーツを降ろすと、股間との間に糸が引いた。心無しか、普段の自身の愛液よりも粘度が高いように思える。女芯が外気に触れると、直美の体がピクリと震えた。
普段は自分を慰めるようなことも殆どしない直美だったが、どうにも今日は体の様子が違う。
便器に腰を下ろし、とりあえず愛液を拭き取ろうとトイレットペーパーで股間に触れると、
「んんっ!」
思わず大きなこえが口から飛び出て、直美はあわてて口を塞いだ。今まで感じたことも無いような刺激が―――快感が彼女を襲ったのだ。
直美は慌てて股間から手を離した。快感の余韻が、まだ女性器から流れ出してくる。
―もっと、欲しい
なぜか自然と浮かんできた思考を頭を振って追い払い、直美は荷物をまとめてホテルをチェックアウトする準備を始めた。
479 白濁の巫女 sage 2009/05/04(月) 23:56:33 ID:npJjdDRn
今度こそは電車に乗り込むと、車内には運転手を除いて彼女しか居なかった。2両編成の2両目のシートに腰掛ける。電車と同時に、窓の外の景色が動き始めた。
「ふぅ・・・」
歩いていたときは気が紛れていたが、座るとどうしても色々なことが気にかかる。
昨日、蛭に触れられたのはなぜか。
先輩に言われた通りだとすれば何も考える必要は無いが、この目で見た限りでは塩で縮んだのではない。確かに消滅した。
だとするならば、あの蛭は確実に妖であり、あの時「清きもの」であった直美に触れられたのは、禊に不備があったからか、それともあの蛭が「清きもの」を無視出来るほど聴力な邪気を持っていたのか。
しかし、蛭に噛まれるまで直美はその存在に気づかなかった。いくら大気に満ちる邪気が濃かったとしても、自分を「清きもの」でなくさせるほどに強力ではなかったから、それに紛れていたのならば、蛭の邪気も同程度かそれより弱いはずである。
しかし、蛭は消してしまったし、あの場所には戻らないため、これ以上の思索は無意味だ。
今朝、体中が紙のように白くなり、そして「濡れていた」のはなぜか。
昨日の今日でこんなことが起きたのだから、井戸を封印しに行ったことが原因と見て間違いなかろう。そして、中でも一番怪しいのが蛭である。
噛まれた所から邪気が入って、体に何らかの作用を施したのか。しかし傷口は清めたし、自分の中に邪気が入ってきたなら流石に分かる。
と、そこまで考えたときにガタンと電車が揺れた。
「んっ」
そして、また股間が濡れていることに気がついた。電車が揺れて腰が微妙に動いた時、ヌチャリとした感覚があったのだ。
まさかまた濡れていたとは。もはや性器が別の生物となって、直美の意思とは関係なく発情しているかのようだった。彼女自身は特に性に関する欲求を抱えている訳ではない。
―欲しい
まただ。勝手に頭の中に浮かんでくるこの思考。
―したい
強く頭を振っても、頬を強く叩いても、なお表れ続ける声。
これは自分の思考なのか、それとも何者かが頭の中にささやきかけているのか・・・その区別もつかないような言語的なイメージが、直美の頭の中を飛び交っていた。
480 白濁の巫女 sage 2009/05/04(月) 23:57:22 ID:npJjdDRn
―気持ちよくなりたい
―良いじゃないか。別におかしなことじゃない
「やめて・・・」
直美は頭を抱えて、謎の声に対して言葉を漏らした。
―誰もが抱える欲求
―ああ、あそこが熱い
「そんなこと無い・・・!」
―自分に嘘をつくのは良くないこと
―今のままじゃ満たされない
「そ、そんなこと・・・」
―刺激が欲しい
―快感が欲しい
―中に欲しい
―奥まで欲しい
「・・・欲しくない!」
―体が溶けて無くなるような
―全身が熱く燃えたぎるような
―それ以外の何もかもが分からなくなってしまうような
―私はそんな快楽に浸されたい
「違うっ!!」
とうとう彼女は大きな声を上げた。運転手が驚いて一瞬だけ後ろの車両の方を振り返ったが、直美はそれには気づかない。
―私のその言葉は嘘
―本当は誰よりも欲しいはず
―もっと自分の気持ちに正直になろう?
―欲しい
―したい
―さぁ、右手を脚の間へ
―人差し指を立てて
―濡れたスジをそっと撫でるの
―その瞬間、私は至福に包まれる
―この欲望は止まらない
間髪を入れずに沸き上がってくる言葉に、直美は必死に抗っていた。声の奔流に、段々と彼女の正常な意識が薄れてゆく。
「あああぁぁっ・・・」
口から出るのは湿った吐息。触ってもいないのに乳首は痛々しいほどに充血し、身じろぎするほどに下着と擦れて、小さな快感を脳へと届ける。
直美は今にも消え入りそうな理性で必死で声を否定したが、本能は既に性欲に溺れていた。
481 白濁の巫女 sage 2009/05/04(月) 23:58:24 ID:npJjdDRn
―私の心のどこかで思っていること
―それがこの声
―この声を口に出せば変わる
―本能が望むことから、理性が望むことへ
―さぁ、認めましょう?
―私の本心を
―私の欲望を
―私のこれからすることを
―口に出して
―私の感情を
―さあ
―さあ
―さあ
「・・・ほ・・・しぃ・・・・・・っ!?」
自分の口から出た言葉が信じられなくて、直美の意識が覚醒する。
「え、今・・・私、何て言った・・・?」
しかし、薄れていた意識は、自らが呟いていた言葉を覚えていなかった。
声はと言えば、もう完全に聞こえなくなっている。
そこで車内アナウンスが流れてきた。
「次は~○○、○○です。××線にお乗り換えのお客様は、お降りください。お降りになるお客様は、降車ボタンを押してください」
慌てて直美はボタンを押すと、穿いているデニムのパンツに愛液が染みていないかを確かめた。
家に帰る前に、直美は「協会」に寄ることにした。自分の体に起きていた変異のことについて相談するためである。
あまり人の降りない各駅停車の列車しか停まらない駅から20分ほど歩いた所に、ひっそりとした和風の屋敷―「協会」の施設が建っている。
人避けの結界が張られていて、通常の人間がこの屋敷を気にすることは少ない。
また。邪気避けの結界も同じように張られており、邪なるものは侵入出来ないようになっていた。
直美はその施設に入ろうと足を踏み出し、
「ん?」
微妙に感じた抵抗感に疑問を感じた。前まで、いや、井戸を封印する命を受け、必要な道具などを取りに来た一昨日まではそんなものは感じなかったはずだ。
しかし、彼女は原因を考えるよりも相談へ行く足を速めることを選んだ。
482 白濁の巫女 sage 2009/05/04(月) 23:58:51 ID:npJjdDRn
「きゃっ、どうしたの直美ちゃん! そんな真っ白な顔して」
「朝起きたらこうなってたんです・・・」
顔を合わせるなり、昨日電話越しに会話していた直美の先輩は驚いた様相を見せた。
「やっぱり昨日の蛭が原因なんじゃないかと思うんですけど・・・」
「でも普通、清めたなら大丈夫なはずよ。同じように妖に傷つけられた人たちを何人も見てるけど、みんな大丈夫そうだもの。毒気に当てられて数日寝込む人なら見たことあるけど、直美ちゃんは具合悪くなったりしてないんでしょ?」
「え、ええ、まぁ・・・」
今朝から頭の中に聞こえてくる声については、流石に話せなかった。
「今の直美ちゃんからは邪気とか感じないし、大丈夫だと思うけどなぁ」
「あ、邪気と言えば・・・さっきここに入る時、邪気避けの結界をくぐったときに、何て言うんでしょう、ちょっと弾かれるような抵抗感があったんですけど、関係あったりしませんかねぇ」
「でもくぐれたんでしょ? 弱い邪気持ちでも入れない結界だもの、と言うことは問題ないと思うんだけど。私は結界とか空間施術系詳しくないから、後で専門の人に聞いてみるね」
「はい、お願いします」
先輩は小首をかしげて
「すると、あとはその顔ね」
「顔だけじゃなくて、全身白いんですよ」
「白人になったみたいで、綺麗っちゃ綺麗なんだけどね。一応検査してみる?」
「その方が良いんでしょうね。お願いします」
その後、1時間ほどかけて、邪気に敏感な術者による検査が行われた。結局直美から邪気は感じられず、各種呪術の類の検知もできなかった上に、念のために行った血液検査でも異常は見つからなかった。
検査結果を見た先輩が、うーんとうなって一言。
「うらやましいほど健康体」
「体の調子が良いのは確かなんですけどね」
「結局、その白くなっちゃった原因はわからないわ。心配かも知れないけど、ここでは打つ手が無いから・・・どうする? 念のためここに泊って行く? それとも家に帰る?」
「流石に学校2日続けて休む訳には行かないんで・・・今日は帰ります」
「あら、学業熱心ね。あ、そうだ。お昼ご飯は食べた? もうそろそろおやつの時間だけど」
「来る途中にお弁当買って食べましたから大丈夫です」
「なら良かった。じゃあね、気をつけて帰るのよ」
「はい、どうもありがとうございました」
これ以降、直美の頭の中に声が響くことも、股間から愛液があふれることも無かった。懸案事項が消えてある程度安心した直美は、自宅に帰り着くと、先日抜けきらなかった疲労と、安心感のせいで、すぐに眠りに落ちてしまった。
―クスクスクス
―クスクスクス
―クスクスクス
直美は、寝ている間に何かの笑い声を聞いた。
唐突に思いついたネタでSS書いてみた。書きかけだけど。
そう言う訳で、半分ほど投下させていただきます。
・要素 巫女、蛭、肉体侵蝕→精神侵蝕
・NGワード 白濁の巫女
475 白濁の巫女 sage 2009/05/04(月) 23:47:36 ID:npJjdDRn
ある古い井戸がある。
大昔、まだ妖と呼ばれるようなモノが蔓延っていた頃、その井戸に一匹の鬼が封じられた。
それから水は涸れ、井戸の周りには邪気が立ちこめ、人はそれから逃げるように住処を変えた。
そして、いつしかその井戸の存在は忘れ去られていった。
時は現代。封じられた井戸へと近づく影が一つ。
「はぁ、はぁ・・・まさか途中が崖になってるなんて・・・今までロッククライミングなんてしたことなかったのにぃ」
今は私有地となっている、田舎の山の中腹にその井戸があった。
その山の中の崖を登ったばかりの人影、年の頃は16から17のあどけなさがまだ残る顔をした少女は、汚れた手で自らの頬をたたく。
「シャキッとしろ、私。これから封印をやり直さなきゃいけないんだから」
少女の瞳には、強い意志の光が宿っていた。
少女の名は伊上直美。
日本中の、巫術や法術などの特殊能力を持った巫女を束ねる組織「協会」の一員である。
全国各地から寄せられる怪奇現象の解決のために人員を派遣している組織だが、この件についてはそうではなかった。
「協会」に保管出来ないような邪なるものが全国にはいくつか存在し、それについては数年ごとに封印を重ねがけする、またはやり直すということをしている。
直美が向かっているのもその一つで、50年に一度は封印をやり直さねばならない代物だった。
476 白濁の巫女 sage 2009/05/04(月) 23:52:13 ID:npJjdDRn
歩を進める直美の周りに邪気が立ちこめてきた。そろそろ目的地が近いらしい。
「よし」
少女は背負っていたナップザックを地に降ろし、中から巫女装束と禊のための道具を取り出す。
少女の周りに円形に塩を撒き、玉串を振るうと、塩で描いた円の中から邪気が消えた。
今まで着ていた登山者然とした服を脱ぐと、ダボついた服に隠されていた形の良い双房がふるりと揺れ、白くきめの細かい素肌が外気に触れる。
細身の体には余計な脂肪はついておらず、見るものに美しいという感想を抱かせるが、所作に残る幼さに、この者がまだ子供であることを気づかされる。
少女は下着だけの姿になると、巫女装束を身につけた。
玉串を持ったままナップザックを背負い、直美は再び歩き出す。
しばらく行くと、一度生した苔が枯れたままくっついていて、その上から古びた注連縄(しめなわ)が巻かれているボロボロの石の井戸が見えてきた。普段は見えない邪気が見えてしまうのではないかと思うほどに、その辺りの空気は淀んでいる。すでに空は赤く染まっていた。
「聞いてたより凄い気がする・・・早く祓えるだけ邪気を祓って、封印をかけ直さなくちゃ」
自分に言い聞かせるように呟くと、直美は井戸の周辺に塩を撒き始める。
そんな彼女に忍び寄る小さな影があった。それは強烈な邪気を放っていたが、周囲の邪気の濃さ故に、その空間内に目立つこと無く存在していた。
「痛っ!」
塩を撒いていた少女の手が止まる。強烈な痛みを感じた右膝の裏を見ると、そこには
「きゃぁっ!! 気持ち悪い!!」
丸っこい、白い色をした蛭が直美に噛み付いていた。大きさは少女の握りこぶしの半分ほど。蛭にしては異常に大きい。
少女から血を吸っているのだろう、真っ白な蛭の体が、ゆっくりではあるがだんだんとピンク色になってゆく。
「は、離れろっ!」
直美は掴んでいた塩を蛭に投げつけ、自身の体から法力を放つ。
妖や邪なる者を祓う効果のある力によって、蛭はすぐに少女からはがれ落ち、そのまま地面に溶けるようにして消えてしまった。
蛭に対する嫌悪感から慌てて力を使用した直美は、肩で息をついていた。蛭に血を取られたのも相まって、体力を消費していたのだろう。
ナップザックから小さな応急セットを取り出し、傷口を消毒、清水で清め祓い、絆創膏を貼ったのち、その場に腰を下ろした。
「あぁ・・・なんだかフラフラする・・・増血剤なんて持ってきてないし、さっさと終わらせて早く帰ろう」
しかし、彼女の気分が悪いのは貧血と体力の消耗だけではなかった。
禊も済ませ、巫女装束をまとっている直美は、概念的には『清いもの』である。
それにも関わらず、蛭に噛み付かれた。そしてその蛭が法力で消滅した、ということは蛭は『不浄のもの』であったということであり、
彼女の禊や装備に何らかの不備があったことを示唆している。それに伴う不安が、彼女の精神を不安定にしていた。
477 白濁の巫女 sage 2009/05/04(月) 23:52:39 ID:npJjdDRn
「協会」の中でも指折りの実力を持った直美の封印の儀はすぐに終わった。
既に暗くなっている山を下り、人目につかない所で元の服に着替えると、携帯電話を取り出し「協会」本部の彼女の先輩へと、井戸の再封印が終わった旨を伝えた。そして、蛭に噛まれたことも相談する。
「実は儀式を始める前に大きな白い蛭に噛まれちゃって・・・法力で消えたので多分妖か何かだと思うんですけど、なんだかそれがショックで・・・それまでの手順でどこか失敗してたかも知れないと思うと・・・」
「あらそう? おかしいわね、直美ちゃんの禊とか、いつも見てるけど完璧よ。なんで妖が触れられたのかしら。不浄のものは清きものには触れられないのにねぇ。傷とか大丈夫?」
「清めたので大丈夫です。きちんと消毒もしました」
「なら大丈夫なんじゃないかしら。その蛭も、消えたように見えただけで縮んだのかも知れないし。蛭が妖でもなんでもない普通の蛭だとしたら、それは自然のものだから直美ちゃんにも触れるはずよ。塩とかかけたりしなかった?」
「あ、はい、かけましたけど・・・」
「じゃあそうよ。まあ、そんなに心配なら明日ここまでいらっしゃい。今日はもうこっちまで来られないでしょ? 明日も学校だろうし」
「あ」
直美は携帯を耳から離して表示を見る。「通話中」と表示されているディスプレイの右上には現在時刻が表示されており、
「しまった、早く電車乗らないと帰れなくなっちゃう!」
最寄りの駅から出る電車は2時間に1本。あと10分で電車がやってくる時刻であり、ここから駅までは徒歩で30分はかかる。しかも次の電車が終電だ。
「くうぅ、田舎の終電はどうしてこう早いんだか?!」
「直美ちゃん、ファイトー。じゃあ切るわね」
「はいっ、さようなら!」
電話を切って駅へと一目散に駆け出す直美。少ないながらも駅の方へ歩いてゆく人影のある道へ出て、無人改札の駅舎目指して一目散に駆けてゆく。そして
「・・・最悪」
ホームで荒い呼吸をする彼女は、恨めしげな目で小さくなる電車を見送った。
478 白濁の巫女 sage 2009/05/04(月) 23:55:00 ID:npJjdDRn
結局、歩いて数十分の所にあったビジネスホテルに、「協会」に予約を取ってもらって泊ることになった。
「あーあ、初電でも学校に着けるのは昼頃だし、第一教科書諸々は家だし・・・明日は学校休むかぁ」
学校に「仕事をしている」と説明はしてあるため、すでに「協会」から欠席の届けが学校に行っているはずであった。家は代々「協会」で仕事をしており、こちらへは直美が連絡を入れてある。
何より
「疲れた・・・」
色々なことで体力を使って疲れ果てていた直美はシャワーだけ浴びると、寝間着が無いため、普段着に着替えてそのまま寝入ってしまった。
翌日、目を覚まして顔を洗いに洗面台に向かった彼女は仰天した。
「え・・・なに・・・?」
血の気が引いたように、顔が真っ白だったのである。青みは無く、蒼白とは呼べない、純粋な白さ。
顔だけではなく、体中から血の色が失せていた。しかし直美の体調は良好で、むしろベストコンディションで儀式に臨んだ昨日よりも良いくらいである。
そして、異常はそれだけではなかった。
「どういうこと、これ・・・」
ショーツが股間に張り付いていたのである。もちろん、彼女自身からの分泌液のせいで。
ショーツを降ろすと、股間との間に糸が引いた。心無しか、普段の自身の愛液よりも粘度が高いように思える。女芯が外気に触れると、直美の体がピクリと震えた。
普段は自分を慰めるようなことも殆どしない直美だったが、どうにも今日は体の様子が違う。
便器に腰を下ろし、とりあえず愛液を拭き取ろうとトイレットペーパーで股間に触れると、
「んんっ!」
思わず大きなこえが口から飛び出て、直美はあわてて口を塞いだ。今まで感じたことも無いような刺激が―――快感が彼女を襲ったのだ。
直美は慌てて股間から手を離した。快感の余韻が、まだ女性器から流れ出してくる。
―もっと、欲しい
なぜか自然と浮かんできた思考を頭を振って追い払い、直美は荷物をまとめてホテルをチェックアウトする準備を始めた。
479 白濁の巫女 sage 2009/05/04(月) 23:56:33 ID:npJjdDRn
今度こそは電車に乗り込むと、車内には運転手を除いて彼女しか居なかった。2両編成の2両目のシートに腰掛ける。電車と同時に、窓の外の景色が動き始めた。
「ふぅ・・・」
歩いていたときは気が紛れていたが、座るとどうしても色々なことが気にかかる。
昨日、蛭に触れられたのはなぜか。
先輩に言われた通りだとすれば何も考える必要は無いが、この目で見た限りでは塩で縮んだのではない。確かに消滅した。
だとするならば、あの蛭は確実に妖であり、あの時「清きもの」であった直美に触れられたのは、禊に不備があったからか、それともあの蛭が「清きもの」を無視出来るほど聴力な邪気を持っていたのか。
しかし、蛭に噛まれるまで直美はその存在に気づかなかった。いくら大気に満ちる邪気が濃かったとしても、自分を「清きもの」でなくさせるほどに強力ではなかったから、それに紛れていたのならば、蛭の邪気も同程度かそれより弱いはずである。
しかし、蛭は消してしまったし、あの場所には戻らないため、これ以上の思索は無意味だ。
今朝、体中が紙のように白くなり、そして「濡れていた」のはなぜか。
昨日の今日でこんなことが起きたのだから、井戸を封印しに行ったことが原因と見て間違いなかろう。そして、中でも一番怪しいのが蛭である。
噛まれた所から邪気が入って、体に何らかの作用を施したのか。しかし傷口は清めたし、自分の中に邪気が入ってきたなら流石に分かる。
と、そこまで考えたときにガタンと電車が揺れた。
「んっ」
そして、また股間が濡れていることに気がついた。電車が揺れて腰が微妙に動いた時、ヌチャリとした感覚があったのだ。
まさかまた濡れていたとは。もはや性器が別の生物となって、直美の意思とは関係なく発情しているかのようだった。彼女自身は特に性に関する欲求を抱えている訳ではない。
―欲しい
まただ。勝手に頭の中に浮かんでくるこの思考。
―したい
強く頭を振っても、頬を強く叩いても、なお表れ続ける声。
これは自分の思考なのか、それとも何者かが頭の中にささやきかけているのか・・・その区別もつかないような言語的なイメージが、直美の頭の中を飛び交っていた。
480 白濁の巫女 sage 2009/05/04(月) 23:57:22 ID:npJjdDRn
―気持ちよくなりたい
―良いじゃないか。別におかしなことじゃない
「やめて・・・」
直美は頭を抱えて、謎の声に対して言葉を漏らした。
―誰もが抱える欲求
―ああ、あそこが熱い
「そんなこと無い・・・!」
―自分に嘘をつくのは良くないこと
―今のままじゃ満たされない
「そ、そんなこと・・・」
―刺激が欲しい
―快感が欲しい
―中に欲しい
―奥まで欲しい
「・・・欲しくない!」
―体が溶けて無くなるような
―全身が熱く燃えたぎるような
―それ以外の何もかもが分からなくなってしまうような
―私はそんな快楽に浸されたい
「違うっ!!」
とうとう彼女は大きな声を上げた。運転手が驚いて一瞬だけ後ろの車両の方を振り返ったが、直美はそれには気づかない。
―私のその言葉は嘘
―本当は誰よりも欲しいはず
―もっと自分の気持ちに正直になろう?
―欲しい
―したい
―さぁ、右手を脚の間へ
―人差し指を立てて
―濡れたスジをそっと撫でるの
―その瞬間、私は至福に包まれる
―この欲望は止まらない
間髪を入れずに沸き上がってくる言葉に、直美は必死に抗っていた。声の奔流に、段々と彼女の正常な意識が薄れてゆく。
「あああぁぁっ・・・」
口から出るのは湿った吐息。触ってもいないのに乳首は痛々しいほどに充血し、身じろぎするほどに下着と擦れて、小さな快感を脳へと届ける。
直美は今にも消え入りそうな理性で必死で声を否定したが、本能は既に性欲に溺れていた。
481 白濁の巫女 sage 2009/05/04(月) 23:58:24 ID:npJjdDRn
―私の心のどこかで思っていること
―それがこの声
―この声を口に出せば変わる
―本能が望むことから、理性が望むことへ
―さぁ、認めましょう?
―私の本心を
―私の欲望を
―私のこれからすることを
―口に出して
―私の感情を
―さあ
―さあ
―さあ
「・・・ほ・・・しぃ・・・・・・っ!?」
自分の口から出た言葉が信じられなくて、直美の意識が覚醒する。
「え、今・・・私、何て言った・・・?」
しかし、薄れていた意識は、自らが呟いていた言葉を覚えていなかった。
声はと言えば、もう完全に聞こえなくなっている。
そこで車内アナウンスが流れてきた。
「次は~○○、○○です。××線にお乗り換えのお客様は、お降りください。お降りになるお客様は、降車ボタンを押してください」
慌てて直美はボタンを押すと、穿いているデニムのパンツに愛液が染みていないかを確かめた。
家に帰る前に、直美は「協会」に寄ることにした。自分の体に起きていた変異のことについて相談するためである。
あまり人の降りない各駅停車の列車しか停まらない駅から20分ほど歩いた所に、ひっそりとした和風の屋敷―「協会」の施設が建っている。
人避けの結界が張られていて、通常の人間がこの屋敷を気にすることは少ない。
また。邪気避けの結界も同じように張られており、邪なるものは侵入出来ないようになっていた。
直美はその施設に入ろうと足を踏み出し、
「ん?」
微妙に感じた抵抗感に疑問を感じた。前まで、いや、井戸を封印する命を受け、必要な道具などを取りに来た一昨日まではそんなものは感じなかったはずだ。
しかし、彼女は原因を考えるよりも相談へ行く足を速めることを選んだ。
482 白濁の巫女 sage 2009/05/04(月) 23:58:51 ID:npJjdDRn
「きゃっ、どうしたの直美ちゃん! そんな真っ白な顔して」
「朝起きたらこうなってたんです・・・」
顔を合わせるなり、昨日電話越しに会話していた直美の先輩は驚いた様相を見せた。
「やっぱり昨日の蛭が原因なんじゃないかと思うんですけど・・・」
「でも普通、清めたなら大丈夫なはずよ。同じように妖に傷つけられた人たちを何人も見てるけど、みんな大丈夫そうだもの。毒気に当てられて数日寝込む人なら見たことあるけど、直美ちゃんは具合悪くなったりしてないんでしょ?」
「え、ええ、まぁ・・・」
今朝から頭の中に聞こえてくる声については、流石に話せなかった。
「今の直美ちゃんからは邪気とか感じないし、大丈夫だと思うけどなぁ」
「あ、邪気と言えば・・・さっきここに入る時、邪気避けの結界をくぐったときに、何て言うんでしょう、ちょっと弾かれるような抵抗感があったんですけど、関係あったりしませんかねぇ」
「でもくぐれたんでしょ? 弱い邪気持ちでも入れない結界だもの、と言うことは問題ないと思うんだけど。私は結界とか空間施術系詳しくないから、後で専門の人に聞いてみるね」
「はい、お願いします」
先輩は小首をかしげて
「すると、あとはその顔ね」
「顔だけじゃなくて、全身白いんですよ」
「白人になったみたいで、綺麗っちゃ綺麗なんだけどね。一応検査してみる?」
「その方が良いんでしょうね。お願いします」
その後、1時間ほどかけて、邪気に敏感な術者による検査が行われた。結局直美から邪気は感じられず、各種呪術の類の検知もできなかった上に、念のために行った血液検査でも異常は見つからなかった。
検査結果を見た先輩が、うーんとうなって一言。
「うらやましいほど健康体」
「体の調子が良いのは確かなんですけどね」
「結局、その白くなっちゃった原因はわからないわ。心配かも知れないけど、ここでは打つ手が無いから・・・どうする? 念のためここに泊って行く? それとも家に帰る?」
「流石に学校2日続けて休む訳には行かないんで・・・今日は帰ります」
「あら、学業熱心ね。あ、そうだ。お昼ご飯は食べた? もうそろそろおやつの時間だけど」
「来る途中にお弁当買って食べましたから大丈夫です」
「なら良かった。じゃあね、気をつけて帰るのよ」
「はい、どうもありがとうございました」
これ以降、直美の頭の中に声が響くことも、股間から愛液があふれることも無かった。懸案事項が消えてある程度安心した直美は、自宅に帰り着くと、先日抜けきらなかった疲労と、安心感のせいで、すぐに眠りに落ちてしまった。
―クスクスクス
―クスクスクス
―クスクスクス
直美は、寝ている間に何かの笑い声を聞いた。
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