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赤聖の祝福
347 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:05:48 ID:0lIuxfe1
実世界のはるか彼方。
そこは何万光年の先かもしれないし、あるいは存在次元にズレが生じているだけなのかもしれない。
我々現代人にとって視認できない世界が、ここにある…。
一面の銀世界に降りしきる雪。
それなのに空は美しい星空。
まさしくありえない光景はこの世界ではごく自然なことであった。
「もう今年も終わるのか…」
質素な部屋の男が窓の外を眺めていた。
『クダス? いる?』
外からと思われる声が聞こえた。
「ん…」
クダスと呼ばれた男は階段を下り、玄関のドアに移動する。
「あぁミランか」
クダスはドアを開け、客を招き入れる。
「どうした? こんな時間に」
「なに、男一人で寂しくしてるだろうと思ってね」
ミランは微笑みながら褐色のボトルを2本、クダスに見せる。
「……すまんな。俺はまだ、立ち直れない」
クダスは申し訳なさそうに言った。
「だからさ、良い酒でも飲んで寝よう?」
「……うむ」
ミランが家にはいると、クダスはドアを閉める。
グラスを運び、テーブルにつくクダス。
卓上には簡単なつまみも用意してあった。
「何年だっけ? 今年で」
「5年だな」
「そう…」
ミランはボトルの栓を抜き、グラスに中身を注ぐ。
「今日の酒は『赤き森の村』特産の奴だよ」
「あそこの酒は上質だからな。結構好きだ」
348 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:06:18 ID:0lIuxfe1
「銘柄は『赤聖の祝福』っていうんだ」
それを聞くとクダスはボトルを取り上げ、ラベルを見る。
「そりゃまたたいそうな名前だな…」
次にグラスを取り上げ、わずかに揺らしてその酒を見る。
「今回の旅はどうだったんだ?」
「ま、いつも通りだったかなー…」
「無事で何よりだ」
「……うん」
クダスの言葉に、少しうつむき加減で返事をするミラン。
「5年前…」
「やめよ? 辛くなるだけでしょ」
「……うむ……」
クダスが始めようとした思い出話。
それはミランの様子が内容を物語っていた。
「あ、でもね。今回の旅はちょっと変わったこともあったかな」
「ほう?」
「ま、飲みながらゆっくり聞かせてあげる」
そういって酒を勧める。
クダスとミランは互いのグラスでささやかな宴のスタートを切る。
「でね。さっきの『変わったこと』っていうのは、『赤き森の村』なんだけど」
「ふむ」
「なんか、村の年頃の女の子がすごい可愛かったのよね」
「………うむ?」
ミランの言うことの意味がわからないクダス。
「いや、さ。私も女だからあんまり言いたくないんだけどね。やっぱり、その……。
生まれ持った顔? とか体とか……、ようは差があるでしょ。魅力に」
「それは仕方ないことだと思うが…」
「うん、普通はそう言うよね。でも今回寄った時は明らかにみんな可愛く思えたんだ」
「いまいち言いたいことがわからないんだが」
349 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:07:16 ID:0lIuxfe1
「うーん…」
ミランは少し考える。
「要するに、魅力的な女の子しかいなかったってこと。おかしいでしょ?
ばらつきがあって当然なのにさ。何かあったんじゃないかと思ってね」
「まぁ、おかしいと言えばおかしいかもな」
クダスはグラスを口に運び、一口飲んでから言う。
「それで? 何か要因はあったのか?」
「別に私は国の兵士じゃないもん。調べる義務なんて無いしね」
「そりゃな」
そして、少しの沈黙が流れる。
「今日のつまみはどうだ?」
「うん、『赤聖の祝福』は甘酸っぱい感じだからよく合うよ」
「昨日ミランが帰ったって聞いてな。新作に挑戦してみたんだ」
クダスは5年前の一件以来、この『白き草原の村』で小さい飲み屋を開いていた。
酒も詳しいし、つまみを作るのもお手の物。
いわゆる腕利きのマスターというわけだ。
「今の俺は剣すらまともに振れないからな。せめて包丁くらい使えないといかん」
クダスは苦笑いする。
「なぁに言ってるのよ。隣の村まで評判よ? クダスのバー」
そうして、再会の土産話と世間話を肴にして楽しむ二人。
「ん……」
ミランは目を覚ます。
「あー…寝ちゃったか」
目の前にはソファで横になるクダス。
ミランはベッドで眠っていた。
「………ん」
その声に反応し、クダスが片目を開けた。
「そろそろ帰るわ」
「あぁ。気をつけてな」
350 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:07:48 ID:0lIuxfe1
ミランはクダスの家を後にした。
翌日。
村は一つの話題で持ちっきりであった。
『ミラン失踪する』
「………!?」
その話を聞き、クダスは愕然とする。
「どういうことだ? 確かにミランはあの時帰ったはずだ!」
「い、いや俺に言われても困るっての! だいたいクダス。あんた、昨晩ミランと一緒だったろ」
「あぁ。彼女が酒を持ってきたんでな。一緒に飲んでいたんだよ」
「だったらあんたのが詳しいんじゃないのか? ミランがどこに行ったのか」
「………どういうことだ」
「俺はあんたじゃないと思ってるが……。最悪、殺され……あ、おい!」
クダスは村人の話を最後まで聞かず、自宅へと走り出していた。
『……バカな! 俺は同じミスを………したというのか!?』
自責の念に駆られるクダス。
5年前、彼は自身のミスにより愛すべき人を失ったのだ。
自分の実力を過信したためのミス。
殺された訳ではないが、何者かにさらわれてしまったのだった。
「くそっ!」
昨晩、共についていたテーブルに拳を叩きつける。
だが、それで何かが変わるわけではない。
「………」
しばらくその拳を見つめた後、クダスはそのテーブルをどけた。
「もう使うことは…無いと思ったんだがな」
テーブルのあった場所には四角い線が入っていた。
クダスは器用な手つきで床を外し、その中へと潜り込んでいった。
穴の中には部屋。
地下室はそこそこの広さだった。
クダスの目の前にあるのは、白銀の鎧と一振りの剣。
351 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:08:22 ID:0lIuxfe1
「………」
無言のまま、クダスはその鎧を身につける。
それが終わると、台座に突き立てられた錆びついた剣を抜く。
するとどうしたことか。
確かに赤茶けた錆がついていた剣が、美しい銀色の輝きを取り戻したのだ。
「…この剣に輝きが戻るとは………マジか」
より一層深刻な表情で、クダスは剣を見つめていた。
「ん……」
ミランは目を覚ました。
寝起きの時独特の、頭が働かない感覚。
だがそれもすぐに覚めた。
「ここは?」
ミランは薄暗い周囲を見渡す。
どうやらベッドで眠っていたようだ。
「私、酔ってクダスのとこで眠っちゃって、それで……」
「目を覚まして帰ろうとしたのよね」
「!?」
振り返るとそこには人影。
「久しぶりね。ミラン」
「わ、私を知ってるの……?」
「あら、つれないわねぇ…」
近づく人影。
それにつれて人影の正体が露わになる。
「あ……、アルフィス……?」
「そうよ」
長身の美しい女性だった。
「あなた5年間いったいどこで!」
「まぁ落ち着いて。その辺の話をしようと思って来たのよ」
当時クダスと恋に落ちていたアルフィス。
クダスは退魔剣士として活躍しており、アルフィスはそのサポーターだった。
352 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:08:54 ID:0lIuxfe1
クダスの持つ剣は『白銀の退魔剣』として名をはせていたが、しかしその実は無名であった。
アルフィスは治癒魔法の使い手であり、二人は一流のペアとして有名だったのだ。
しかし5年前、二人の恋は突如として終焉を迎える。
『赤き森の村』へ立ち寄った際、アルフィスが失踪してしまったのだ。
たまたまアルフィスが魔法具を買い出しに行き、クダスが宿で休んでいた時のことだった。
それ以来アルフィスを見かけた者はおらず、クダスは絶望して剣を置いたのだった。
「その前に。『赤聖の祝福』、おいしかった?」
「え? う、うん…」
「どうして知ってるのかは後でね。物事には順番があるから。5年前ね…」
アルフィスは過去の話を始めた。
「あの日、私は魔法具を買いに行ったのよ。それは知ってるでしょ」
「知ってる。そして帰ってこなかった」
「そうね。クダスはなんて考えてたのかな」
「今では誘拐されたとか思ってるみたいよ」
「誘拐、か。間違ってないかな」
アルフィスはサイドボードに置いてあったボトルとグラスを持ってくる。
「『赤聖の祝福』よ。せっかくの思い出話なんだからね」
「え? あぁ……」
ミランはグラスを受け取り、酒をついでもらう。
グラスを口に持って行くミラン。
「あれ……?」
何故だか、どうしてもコレを飲まなくてはならない気がしてきたのだ。
「ふふ……」
その様子を見て微笑むアルフィス。
だがその笑みはどこか邪悪であった。
「実はね。魔法具を買った帰り、私はある物を見つけたの」
「ある物?」
「宿に向かう途中、強力な魔力を感じてね。そっちに行って見つけたのよ」
「それは何だったの?」
353 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:09:25 ID:0lIuxfe1
「魔法的な装置……といえばわかりやすいかしらね。あなた、魔法詳しくないし」
「……悪かったわね」
「村の近くにあった洞窟の中でね。村人が知らないってことは封印されてたわけね」
アルフィスが話す間、ミランは『赤聖の祝福』を飲み続ける。
飲めば飲むほど美味しく感じ、もっと欲しくなるのだ。
「その装置を調べていたら、事故って起動しちゃったのよ」
「事故ってって……」
「で、気づいたら見たことのない場所にいたってわけ」
「はぁ……」
いまいちわからない顔でミランが答える。
「そこはどこだったと思う?」
「知るわけ無いでしょ」
「そうよね。ワープ装置だったらしくてね。私がたどりついたのは魔界」
「ま……」
その言葉でミランは全てを悟ったようだった。
「おかしいわよね? 魔界から出てくるのは悪魔だけ。私が出てこられるのは不思議よね」
しかしミランは反応しない。
恐怖で震えているのだ。
「私ね。魔界で新しい発見をして、新しい力を手に入れたの」
アルフィスは両手でミランの頬を押さえる。
ミランは強く甘い芳香を感じる。
「発見したのは人間を悪魔に変える物質『ダークネスリキッド』。新しい力は――」
言うとアルフィスはミランに口づけをした。
目を見開くミラン。
アルフィスを突き飛ばそうとするが、力が入らない。
たっぷり30秒ほどして、アルフィスが口を離した。
「邪淫っていうの。人間の欲を増幅し、淫蕩にふけさせる。そして――」
アルフィスは『赤聖の祝福』を口に含み、ミランに口移しする。
「『赤聖の祝福』で仲間を増やす」
354 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:10:45 ID:0lIuxfe1
ミランはそれを聞いた瞬間、自分の中で何かが弾けるのを感じた。
「ミラン!!」
「あらクダス。久しぶり」
「あ………アル…フィス……なのか?」
クダスは目の前の存在が信じられなかった。
5年間だ。
もう会えないと思った愛しき人が、5年の時を経て自分の前にいる。
「お前……無事だったのか」
「ええ。あなたのところに戻る途中、ミランに会ったの」
「しかしミランは?」
クダスの視線の先には、寝台で横になっているミラン。
「もうすぐ仲間になるの。私たちのね」
「何?」
「クダス。私はあなたが大好き。だから大事にするわ」
「俺は5年間お前を諦めなかった。お前が失踪してから俺は腕を怪我してな。
もう今の俺は5年前並に剣を使えない体になっちまった………」
「そう。それなら安心ね」
「……?」
クダスは不審に思い始めていた。
何かがおかしい。
「そこに座ってよく見ててね」
アルフィスの指さす先には椅子。
クダスはどういうことか問い詰めようと思っていたのだが、何故かできなかった。
「ミラン。起きて……」
「ん……」
「クダスが来てくれたわよ」
「え? クダス? あ………」
ミランがクダスの方を向く。
「に、逃げてクダス! アルフィスは」
355 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:11:19 ID:0lIuxfe1
「はい、そこまで」
笑顔でミランの口に手を当てる。
「ミラン。あなたはもう、悪魔一歩手前の体よ」
「ぅ………」
「あれだけ『赤聖の祝福』を飲んだんだもの。心は人間でも体はほぼ悪魔ね」
「あ、あなたが!」
「あら、そうかしら? クダスへの土産にアレを買ったのはあなたじゃない」
「でも!」
「はいはい。言いたいことはわかったから。そろそろ私の物になりなさい」
その言葉と同時に、アルフィスのロングスカートが不自然にうねり始めた。
「!?」
クダスはとっさに動こうとしたが、やはり体が動かない。
まるで椅子に縛り付けられているようだ。
「うふふ………この力。使うととても気持ちいいの。この体だけじゃなくて、服も私の一部」
「いや………やめて」
「だぁめ。体だけ悪魔なのに人間としてやっていけると思ってるの?」
「でも心は人間よ!」
「いずれバランスが取れなくなって死ぬわ」
「死ぬって……」
「さ、始めましょ」
アルフィスのスカートから、背中の方から青い触手が無数に生える。
「ひ……」
ミランの全身にからみつくと、彼女の体を空中に固定した。
「クダス。私は悪魔になったの。それも邪淫を司る最高位のね」
「………!!」
依然としてクダスは声すら出せない。
「あなたも『赤聖の祝福』を飲んだようだから、私には逆らえない」
そのままミランに絡みつく触手は彼女の敏感なあちこちを刺激する。
「ひぅぅ……、やめぇ……」
356 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:11:56 ID:0lIuxfe1
魔酒によって高められた感覚は、冷酷にも彼女を性的な高みへと押し上げていく。
「イった瞬間、あなたは私の物になるわ」
狂気を帯びた笑みでそう宣言する。
「いやぁ、悪魔、なんてぇ………ひああ!!」
くちゅくちゅと嫌らしい音と共に悲鳴を上げるミラン。
そこには昨晩クダスと共に飲んだ表情は見受けられない。
あるのは快楽のみ。
「ほぉら。ほぉら……」
アルフィスは行為を楽しんでいる。
触手がうねる都度、ミランの表情は必死の度合いを増していく。
そして。
「い、あ、もう、もうぅぅぅ!!」
「イっちゃう? こんな醜い触手にぐねぐねされちゃってイっちゃう!?」
「い、イっちゃう、イっちゃうのぉ!!!!」
「いいわ。私の物になりなさい!」
次の瞬間、アルフィスの股間から漆黒の触手が生えるとミランの口に入れられる。
「!? んんんんんんんんんんんーーーーーーーーーーーーー!!!」
ミランが絶頂に達すると同時に、その漆黒の触手は彼女の体内に潜り込んでいく。
抵抗できず、ひたすら触手を受け入れているミラン。
やがてアルフィスの股間から触手が抜け、ミランに全て入っていった。
そのまま気を失ったかのように、ミランはぐったりとしてしまった。
「うふふふ………」
ひどく淫靡な笑みを見せるアルフィス。
「クダス。ヤっちゃったよ? あっはははははは………あ、もう喋っていいよ」
「!?」
クダスは自分を縛る何かが解かれた気がした。
「あ、アルフィス!? 何をした!」
357 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:12:41 ID:0lIuxfe1
「何って……、聞いてなかったの? ミランを悪魔にしたんだよ」
「馬鹿な! お前、俺と一緒に組んでいた時は悪魔なんて滅べって言って!」
「クダス。そういう正直なところ、好きよ」
「何だと!」
「私、実は悪魔になりたかったの。そのために魔法の勉強をしたんだし。
そのために退魔剣士のあなたと組んでいたのよ?」
ついに本性をさらすアルフィス。
「ならば俺との愛も嘘だったと?」
「いいえ。それは本物よ。でも、あなたがいけなかったのよ。あなたが私を愛するから、
私はあなたを独り占めしたくなっちゃったの。ミランよりも、ずっとずっとね」
「………!」
「さぁミラン。起きなさい。クダスをあなたの奴隷にしてあげなさい」
「はぁい、アルフィス様」
いつの間にか起き上がったミラン。
しかし、かつてのミランとは似つかない姿となっていた。
病的に白い肌。
ふくれあがった胸。
欲望をむき出しにした表情。
全てが悪魔ミランを象徴するものであった。
「さ、クダス。ヤろ?」
あどけない笑みには果てしない性欲と、計り知れない邪悪さが滲んでいた。
「ん……ふぅ………」
ミランが自慰行為をしていた。
彼女の股間の下には、ボトル。
ラベルには『赤聖の祝福』とある。
心地よいのか、背中から生える羽と尻から生える尻尾がぴくぴくと動いている。
「クス………、まさか誰も思わないでしょうね。この酒が、私たち悪魔の純粋な体液だなんて」
アルフィスの下にはクダス。
「あなたも思わなかったでしょ。クダス。あなたは私の愛液を口にしたの。
邪淫の魔王のオモチャになるための儀式としてね」
クダスはアルフィスに全てを吸い取られながらも、幸せな表情を浮かべていた……。
358 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:14:51 ID:0lIuxfe1
お題が難しくて沿えなかったかもw
まぁこんなとこで終了しまふ。
今回は例によってほぼ設定構想なしの行き当たりばったり執筆w
作ったのは
酒が悪魔の体液で、飲むと体が悪魔化
→後々悪魔が自分の体の一部を寄生させて、完全に悪魔にする
ということだけ。
クリスマスとか言うのに悪魔ものを書いてる私は異端ですか、そうですかw
実世界のはるか彼方。
そこは何万光年の先かもしれないし、あるいは存在次元にズレが生じているだけなのかもしれない。
我々現代人にとって視認できない世界が、ここにある…。
一面の銀世界に降りしきる雪。
それなのに空は美しい星空。
まさしくありえない光景はこの世界ではごく自然なことであった。
「もう今年も終わるのか…」
質素な部屋の男が窓の外を眺めていた。
『クダス? いる?』
外からと思われる声が聞こえた。
「ん…」
クダスと呼ばれた男は階段を下り、玄関のドアに移動する。
「あぁミランか」
クダスはドアを開け、客を招き入れる。
「どうした? こんな時間に」
「なに、男一人で寂しくしてるだろうと思ってね」
ミランは微笑みながら褐色のボトルを2本、クダスに見せる。
「……すまんな。俺はまだ、立ち直れない」
クダスは申し訳なさそうに言った。
「だからさ、良い酒でも飲んで寝よう?」
「……うむ」
ミランが家にはいると、クダスはドアを閉める。
グラスを運び、テーブルにつくクダス。
卓上には簡単なつまみも用意してあった。
「何年だっけ? 今年で」
「5年だな」
「そう…」
ミランはボトルの栓を抜き、グラスに中身を注ぐ。
「今日の酒は『赤き森の村』特産の奴だよ」
「あそこの酒は上質だからな。結構好きだ」
348 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:06:18 ID:0lIuxfe1
「銘柄は『赤聖の祝福』っていうんだ」
それを聞くとクダスはボトルを取り上げ、ラベルを見る。
「そりゃまたたいそうな名前だな…」
次にグラスを取り上げ、わずかに揺らしてその酒を見る。
「今回の旅はどうだったんだ?」
「ま、いつも通りだったかなー…」
「無事で何よりだ」
「……うん」
クダスの言葉に、少しうつむき加減で返事をするミラン。
「5年前…」
「やめよ? 辛くなるだけでしょ」
「……うむ……」
クダスが始めようとした思い出話。
それはミランの様子が内容を物語っていた。
「あ、でもね。今回の旅はちょっと変わったこともあったかな」
「ほう?」
「ま、飲みながらゆっくり聞かせてあげる」
そういって酒を勧める。
クダスとミランは互いのグラスでささやかな宴のスタートを切る。
「でね。さっきの『変わったこと』っていうのは、『赤き森の村』なんだけど」
「ふむ」
「なんか、村の年頃の女の子がすごい可愛かったのよね」
「………うむ?」
ミランの言うことの意味がわからないクダス。
「いや、さ。私も女だからあんまり言いたくないんだけどね。やっぱり、その……。
生まれ持った顔? とか体とか……、ようは差があるでしょ。魅力に」
「それは仕方ないことだと思うが…」
「うん、普通はそう言うよね。でも今回寄った時は明らかにみんな可愛く思えたんだ」
「いまいち言いたいことがわからないんだが」
349 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:07:16 ID:0lIuxfe1
「うーん…」
ミランは少し考える。
「要するに、魅力的な女の子しかいなかったってこと。おかしいでしょ?
ばらつきがあって当然なのにさ。何かあったんじゃないかと思ってね」
「まぁ、おかしいと言えばおかしいかもな」
クダスはグラスを口に運び、一口飲んでから言う。
「それで? 何か要因はあったのか?」
「別に私は国の兵士じゃないもん。調べる義務なんて無いしね」
「そりゃな」
そして、少しの沈黙が流れる。
「今日のつまみはどうだ?」
「うん、『赤聖の祝福』は甘酸っぱい感じだからよく合うよ」
「昨日ミランが帰ったって聞いてな。新作に挑戦してみたんだ」
クダスは5年前の一件以来、この『白き草原の村』で小さい飲み屋を開いていた。
酒も詳しいし、つまみを作るのもお手の物。
いわゆる腕利きのマスターというわけだ。
「今の俺は剣すらまともに振れないからな。せめて包丁くらい使えないといかん」
クダスは苦笑いする。
「なぁに言ってるのよ。隣の村まで評判よ? クダスのバー」
そうして、再会の土産話と世間話を肴にして楽しむ二人。
「ん……」
ミランは目を覚ます。
「あー…寝ちゃったか」
目の前にはソファで横になるクダス。
ミランはベッドで眠っていた。
「………ん」
その声に反応し、クダスが片目を開けた。
「そろそろ帰るわ」
「あぁ。気をつけてな」
350 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:07:48 ID:0lIuxfe1
ミランはクダスの家を後にした。
翌日。
村は一つの話題で持ちっきりであった。
『ミラン失踪する』
「………!?」
その話を聞き、クダスは愕然とする。
「どういうことだ? 確かにミランはあの時帰ったはずだ!」
「い、いや俺に言われても困るっての! だいたいクダス。あんた、昨晩ミランと一緒だったろ」
「あぁ。彼女が酒を持ってきたんでな。一緒に飲んでいたんだよ」
「だったらあんたのが詳しいんじゃないのか? ミランがどこに行ったのか」
「………どういうことだ」
「俺はあんたじゃないと思ってるが……。最悪、殺され……あ、おい!」
クダスは村人の話を最後まで聞かず、自宅へと走り出していた。
『……バカな! 俺は同じミスを………したというのか!?』
自責の念に駆られるクダス。
5年前、彼は自身のミスにより愛すべき人を失ったのだ。
自分の実力を過信したためのミス。
殺された訳ではないが、何者かにさらわれてしまったのだった。
「くそっ!」
昨晩、共についていたテーブルに拳を叩きつける。
だが、それで何かが変わるわけではない。
「………」
しばらくその拳を見つめた後、クダスはそのテーブルをどけた。
「もう使うことは…無いと思ったんだがな」
テーブルのあった場所には四角い線が入っていた。
クダスは器用な手つきで床を外し、その中へと潜り込んでいった。
穴の中には部屋。
地下室はそこそこの広さだった。
クダスの目の前にあるのは、白銀の鎧と一振りの剣。
351 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:08:22 ID:0lIuxfe1
「………」
無言のまま、クダスはその鎧を身につける。
それが終わると、台座に突き立てられた錆びついた剣を抜く。
するとどうしたことか。
確かに赤茶けた錆がついていた剣が、美しい銀色の輝きを取り戻したのだ。
「…この剣に輝きが戻るとは………マジか」
より一層深刻な表情で、クダスは剣を見つめていた。
「ん……」
ミランは目を覚ました。
寝起きの時独特の、頭が働かない感覚。
だがそれもすぐに覚めた。
「ここは?」
ミランは薄暗い周囲を見渡す。
どうやらベッドで眠っていたようだ。
「私、酔ってクダスのとこで眠っちゃって、それで……」
「目を覚まして帰ろうとしたのよね」
「!?」
振り返るとそこには人影。
「久しぶりね。ミラン」
「わ、私を知ってるの……?」
「あら、つれないわねぇ…」
近づく人影。
それにつれて人影の正体が露わになる。
「あ……、アルフィス……?」
「そうよ」
長身の美しい女性だった。
「あなた5年間いったいどこで!」
「まぁ落ち着いて。その辺の話をしようと思って来たのよ」
当時クダスと恋に落ちていたアルフィス。
クダスは退魔剣士として活躍しており、アルフィスはそのサポーターだった。
352 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:08:54 ID:0lIuxfe1
クダスの持つ剣は『白銀の退魔剣』として名をはせていたが、しかしその実は無名であった。
アルフィスは治癒魔法の使い手であり、二人は一流のペアとして有名だったのだ。
しかし5年前、二人の恋は突如として終焉を迎える。
『赤き森の村』へ立ち寄った際、アルフィスが失踪してしまったのだ。
たまたまアルフィスが魔法具を買い出しに行き、クダスが宿で休んでいた時のことだった。
それ以来アルフィスを見かけた者はおらず、クダスは絶望して剣を置いたのだった。
「その前に。『赤聖の祝福』、おいしかった?」
「え? う、うん…」
「どうして知ってるのかは後でね。物事には順番があるから。5年前ね…」
アルフィスは過去の話を始めた。
「あの日、私は魔法具を買いに行ったのよ。それは知ってるでしょ」
「知ってる。そして帰ってこなかった」
「そうね。クダスはなんて考えてたのかな」
「今では誘拐されたとか思ってるみたいよ」
「誘拐、か。間違ってないかな」
アルフィスはサイドボードに置いてあったボトルとグラスを持ってくる。
「『赤聖の祝福』よ。せっかくの思い出話なんだからね」
「え? あぁ……」
ミランはグラスを受け取り、酒をついでもらう。
グラスを口に持って行くミラン。
「あれ……?」
何故だか、どうしてもコレを飲まなくてはならない気がしてきたのだ。
「ふふ……」
その様子を見て微笑むアルフィス。
だがその笑みはどこか邪悪であった。
「実はね。魔法具を買った帰り、私はある物を見つけたの」
「ある物?」
「宿に向かう途中、強力な魔力を感じてね。そっちに行って見つけたのよ」
「それは何だったの?」
353 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:09:25 ID:0lIuxfe1
「魔法的な装置……といえばわかりやすいかしらね。あなた、魔法詳しくないし」
「……悪かったわね」
「村の近くにあった洞窟の中でね。村人が知らないってことは封印されてたわけね」
アルフィスが話す間、ミランは『赤聖の祝福』を飲み続ける。
飲めば飲むほど美味しく感じ、もっと欲しくなるのだ。
「その装置を調べていたら、事故って起動しちゃったのよ」
「事故ってって……」
「で、気づいたら見たことのない場所にいたってわけ」
「はぁ……」
いまいちわからない顔でミランが答える。
「そこはどこだったと思う?」
「知るわけ無いでしょ」
「そうよね。ワープ装置だったらしくてね。私がたどりついたのは魔界」
「ま……」
その言葉でミランは全てを悟ったようだった。
「おかしいわよね? 魔界から出てくるのは悪魔だけ。私が出てこられるのは不思議よね」
しかしミランは反応しない。
恐怖で震えているのだ。
「私ね。魔界で新しい発見をして、新しい力を手に入れたの」
アルフィスは両手でミランの頬を押さえる。
ミランは強く甘い芳香を感じる。
「発見したのは人間を悪魔に変える物質『ダークネスリキッド』。新しい力は――」
言うとアルフィスはミランに口づけをした。
目を見開くミラン。
アルフィスを突き飛ばそうとするが、力が入らない。
たっぷり30秒ほどして、アルフィスが口を離した。
「邪淫っていうの。人間の欲を増幅し、淫蕩にふけさせる。そして――」
アルフィスは『赤聖の祝福』を口に含み、ミランに口移しする。
「『赤聖の祝福』で仲間を増やす」
354 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:10:45 ID:0lIuxfe1
ミランはそれを聞いた瞬間、自分の中で何かが弾けるのを感じた。
「ミラン!!」
「あらクダス。久しぶり」
「あ………アル…フィス……なのか?」
クダスは目の前の存在が信じられなかった。
5年間だ。
もう会えないと思った愛しき人が、5年の時を経て自分の前にいる。
「お前……無事だったのか」
「ええ。あなたのところに戻る途中、ミランに会ったの」
「しかしミランは?」
クダスの視線の先には、寝台で横になっているミラン。
「もうすぐ仲間になるの。私たちのね」
「何?」
「クダス。私はあなたが大好き。だから大事にするわ」
「俺は5年間お前を諦めなかった。お前が失踪してから俺は腕を怪我してな。
もう今の俺は5年前並に剣を使えない体になっちまった………」
「そう。それなら安心ね」
「……?」
クダスは不審に思い始めていた。
何かがおかしい。
「そこに座ってよく見ててね」
アルフィスの指さす先には椅子。
クダスはどういうことか問い詰めようと思っていたのだが、何故かできなかった。
「ミラン。起きて……」
「ん……」
「クダスが来てくれたわよ」
「え? クダス? あ………」
ミランがクダスの方を向く。
「に、逃げてクダス! アルフィスは」
355 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:11:19 ID:0lIuxfe1
「はい、そこまで」
笑顔でミランの口に手を当てる。
「ミラン。あなたはもう、悪魔一歩手前の体よ」
「ぅ………」
「あれだけ『赤聖の祝福』を飲んだんだもの。心は人間でも体はほぼ悪魔ね」
「あ、あなたが!」
「あら、そうかしら? クダスへの土産にアレを買ったのはあなたじゃない」
「でも!」
「はいはい。言いたいことはわかったから。そろそろ私の物になりなさい」
その言葉と同時に、アルフィスのロングスカートが不自然にうねり始めた。
「!?」
クダスはとっさに動こうとしたが、やはり体が動かない。
まるで椅子に縛り付けられているようだ。
「うふふ………この力。使うととても気持ちいいの。この体だけじゃなくて、服も私の一部」
「いや………やめて」
「だぁめ。体だけ悪魔なのに人間としてやっていけると思ってるの?」
「でも心は人間よ!」
「いずれバランスが取れなくなって死ぬわ」
「死ぬって……」
「さ、始めましょ」
アルフィスのスカートから、背中の方から青い触手が無数に生える。
「ひ……」
ミランの全身にからみつくと、彼女の体を空中に固定した。
「クダス。私は悪魔になったの。それも邪淫を司る最高位のね」
「………!!」
依然としてクダスは声すら出せない。
「あなたも『赤聖の祝福』を飲んだようだから、私には逆らえない」
そのままミランに絡みつく触手は彼女の敏感なあちこちを刺激する。
「ひぅぅ……、やめぇ……」
356 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:11:56 ID:0lIuxfe1
魔酒によって高められた感覚は、冷酷にも彼女を性的な高みへと押し上げていく。
「イった瞬間、あなたは私の物になるわ」
狂気を帯びた笑みでそう宣言する。
「いやぁ、悪魔、なんてぇ………ひああ!!」
くちゅくちゅと嫌らしい音と共に悲鳴を上げるミラン。
そこには昨晩クダスと共に飲んだ表情は見受けられない。
あるのは快楽のみ。
「ほぉら。ほぉら……」
アルフィスは行為を楽しんでいる。
触手がうねる都度、ミランの表情は必死の度合いを増していく。
そして。
「い、あ、もう、もうぅぅぅ!!」
「イっちゃう? こんな醜い触手にぐねぐねされちゃってイっちゃう!?」
「い、イっちゃう、イっちゃうのぉ!!!!」
「いいわ。私の物になりなさい!」
次の瞬間、アルフィスの股間から漆黒の触手が生えるとミランの口に入れられる。
「!? んんんんんんんんんんんーーーーーーーーーーーーー!!!」
ミランが絶頂に達すると同時に、その漆黒の触手は彼女の体内に潜り込んでいく。
抵抗できず、ひたすら触手を受け入れているミラン。
やがてアルフィスの股間から触手が抜け、ミランに全て入っていった。
そのまま気を失ったかのように、ミランはぐったりとしてしまった。
「うふふふ………」
ひどく淫靡な笑みを見せるアルフィス。
「クダス。ヤっちゃったよ? あっはははははは………あ、もう喋っていいよ」
「!?」
クダスは自分を縛る何かが解かれた気がした。
「あ、アルフィス!? 何をした!」
357 FBX@赤聖の祝福 ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:12:41 ID:0lIuxfe1
「何って……、聞いてなかったの? ミランを悪魔にしたんだよ」
「馬鹿な! お前、俺と一緒に組んでいた時は悪魔なんて滅べって言って!」
「クダス。そういう正直なところ、好きよ」
「何だと!」
「私、実は悪魔になりたかったの。そのために魔法の勉強をしたんだし。
そのために退魔剣士のあなたと組んでいたのよ?」
ついに本性をさらすアルフィス。
「ならば俺との愛も嘘だったと?」
「いいえ。それは本物よ。でも、あなたがいけなかったのよ。あなたが私を愛するから、
私はあなたを独り占めしたくなっちゃったの。ミランよりも、ずっとずっとね」
「………!」
「さぁミラン。起きなさい。クダスをあなたの奴隷にしてあげなさい」
「はぁい、アルフィス様」
いつの間にか起き上がったミラン。
しかし、かつてのミランとは似つかない姿となっていた。
病的に白い肌。
ふくれあがった胸。
欲望をむき出しにした表情。
全てが悪魔ミランを象徴するものであった。
「さ、クダス。ヤろ?」
あどけない笑みには果てしない性欲と、計り知れない邪悪さが滲んでいた。
「ん……ふぅ………」
ミランが自慰行為をしていた。
彼女の股間の下には、ボトル。
ラベルには『赤聖の祝福』とある。
心地よいのか、背中から生える羽と尻から生える尻尾がぴくぴくと動いている。
「クス………、まさか誰も思わないでしょうね。この酒が、私たち悪魔の純粋な体液だなんて」
アルフィスの下にはクダス。
「あなたも思わなかったでしょ。クダス。あなたは私の愛液を口にしたの。
邪淫の魔王のオモチャになるための儀式としてね」
クダスはアルフィスに全てを吸い取られながらも、幸せな表情を浮かべていた……。
358 FBX ◆4gA1RyNyf. sage 2006/12/26(火) 03:14:51 ID:0lIuxfe1
お題が難しくて沿えなかったかもw
まぁこんなとこで終了しまふ。
今回は例によってほぼ設定構想なしの行き当たりばったり執筆w
作ったのは
酒が悪魔の体液で、飲むと体が悪魔化
→後々悪魔が自分の体の一部を寄生させて、完全に悪魔にする
ということだけ。
クリスマスとか言うのに悪魔ものを書いてる私は異端ですか、そうですかw
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