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竜姫の趣味趣向(parasitism side)
341 ... sage 2014/03/27(木) 23:33:27.01 ID:AYqx/RnX
>>331です。とりあえず途中まで投下します。前置きが長いのはご愛嬌で。
もしそれが面倒なら最後のレスまで飛ばしてください。
『竜姫の趣味趣向(parasitism side)』
人間の世界で些細な肌の色などで差別やいさかいが生まれるように、魔界に住む者達も決して一枚岩ではない。
魔界の中でも異種族との間の衝突はあり、特に魔竜族と魔虫族の民族間紛争は深刻であった。
その理由としてはごく簡単なことで、『産めや育てや』の精神を持つ魔虫族は、『孤高』を常に肝に銘じている魔竜族にとっては忌むべき存在なのだ。
また、魔虫族からすれば集団行動を嫌う教育理念と高すぎる上昇志向を持つ魔竜族の民族性は軽蔑する点として大きい。
その緊張は、魔竜族の長が魔虫族の長と話し合い、政略結婚にて和議が結ばれる方向で話がまとまりつつある今も変わらなかった。
レイア・バハムーン。
生まれながらにして将来を約束されたも同然と言われる家系に、三姉妹の次女として生まれ、
竜の部族の戦士ならば誰もがその肩書きを欲する高位な存在、騎士団に二人の姉妹と共に所属している竜亜目合成獣科マンティコアの剣士。
族長の直属の部隊の一員として仕える誰もが羨むエリートだが、その人生は決して順風満帆なものではなかった。
魔虫族との交戦が行われている前線近くにあった家は彼女が初等教育を受けている頃に魔蜂の部隊に襲撃され、その両親とともに灰と化した。
たとえ良家の生まれでも、親族という概念が存在しない魔竜族に彼女に救いの手を差し伸べる者はおらず、
彼女はすでに騎士団に所属していた姉の助けを借りて血のにじむような努力からこれまでの半生を何とか勝ち組として暮らしてきた。
だが、その研鑚のもとに成り立った安寧の生活にも、ついに亀裂が走ることになってしまった。
「そんな…姉貴が、負けたって言うのか!?」
「そうなのよー…私が谷まで降りてって川へ水を汲みに行ってる間にね、キャンプはもう火の海だったのよ…」
「くっ…被害は!?」
「それがわかったら苦労しないわよー、身体が乾くの覚悟で探したけどキャンプには死体は一つもなくて資材も盗まれてもぬけの殻だったのよー。
…一つ言えることは、ここまで帰ってこられたのがアタシ一人だけってこと。…分かるわね、部隊長?」
「…遺体がないということは、何らかの方法で姉貴の部隊は無力化させられ、敵に連行されたことになる。
基本的に、この戦線で現れる敵は…ほとんどが魔蟻で残りが魔蜂。だけど、進軍経路の敵を全て薙ぎ払う魔蟻がこんな人質をとる作戦をするなんて考えにくい。
というか、団長たる姉貴の直属の部隊を押さえることのできる頭脳派は、魔虫族にはそもそも、一人しかいない…!」
「魔蜂の長、女王蜂のパラレビー、ねー…まさか、部隊長の因縁の敵が、こんなところで現れるとはねぇ。何の因果よ、これー…」
「いや、だけど…これは私には絶好の好機ともいえる…奴らのことだ、捕虜とはいえ必ず巣に持ち帰っているだろう。
もし、私がそこに潜入し、捕虜を解放できれば…」
「内側から崩せるー…ね。でも…危ない橋を渡ることになるわね。
たしかに、成功すれば部隊長の妹…エリーちゃんだっけ、それと団長たちを救うことができるわよ?それに、仇だって討てるかもしれないわね…
でも…相手はアタシたちとは違う。文化も、頭の中も、何もかもがアタシたちの理解の範疇を超えてるやつらよー…」
「それはもちろん分かってる…だけど、私は、このまま座して姉貴たちに敗者の烙印を押させたくないんだ!」
「部隊長…分かったわよ、どうせ私は伝令にすぎないから部隊長に文句言える立場じゃないしねー…
…笑顔でまた会えるよね、レイア先輩…」
「おい、その呼び名はよせと言ったろ…だけど、素直にその思い、受け取るよ。
ほら、小指、出しなよ。指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます、指切った!…これで合ってたっけな。」
「…えっ?なんなのよ、コレー…?」
「あぁ、人間の奴らが誓約を交わす時の作法らしい。このくらいリスクを負えば必ず成功できるって願掛けだな、たぶん。」
342 ... sage 2014/03/27(木) 23:34:38.01 ID:AYqx/RnX
先ほどの驚くべき報告を伝えたあの伝令は別の部隊長に報告へ向かい、今は部屋に彼女一人のみがいる。
「…よしっ!そうと決まれば、工作の開始だ…!」
騎士団の寮の自室、レイアは頬を叩いて気合いを入れつつひとりごちる。
その声こそ快活で元気そうな印象を与えるものだが、顔は引きつり、手足に生えた毛も逆立っていて、緊張の色が隠せない。
常勝を求められる魔竜族の戦士は、一度の敗北で退役が確定してしまう。
もし、捕虜の取引で囚われた姉と妹が帰ってきたとしても、自分一人の稼ぎでは二人を養うのは難しいだろう。
竜の社会に他民族に屈した者など排されるべきものなのだから。
彼女が手勢を率いて軍事的手段に出るとしても、彼女たちを救出しただけでは同じ。張られるレッテルは『敗者』の二文字でしかない。
つまり彼女たちへの社会的制裁を阻止するためには、『彼女たちが敵軍を潰走へと追いやった勝者である』という事実がどうしても必要なのだ。
それに、相手は騎士団の団長である彼女の姉ドラコと、騎士団の参謀役を務める妹エリーを擁する精鋭部隊をもってしても敵わなかった相手だ。
普段の自分たちがするようなありきたりの陳腐な行軍では、救い出すどころか返り討ちの可能性の方が高いとも考えられる。
だが…だからといってきちんと作戦を練ってこの問題に望むことを上層部は許すだろうか?答えは、否だ。
正攻法で堂々と勝ってこそ、竜の戦い。つまり、小手先の策すら用意することは本来認められていないのだ。
彼女の妹であるエリーが軍師の役職についているのは、彼女がもともと淫魔族からの養子で、部族の常識が通じない外部の者だからである。
彼女自身、マンティコアという純潔の竜とは程遠い合成獣の種族に属するからこそ、ここまで考えが及んでいる。
姉、ドラコも低級な翼竜の姿を持ち、体力ではなく頭脳で勝負するタイプの人物だからこそ今の地位を得た。
つまり、
「さぁ、どうやって潜入するか…」
レイアの最愛の姉妹たちを守るためには、
「奴らを騙し、陥れる、大きな一手を…」
彼女が独断で行動を起こすほかないのだ。
「姉貴、エリー…必ず、必ず勝って、勝って帰ろう!」
結論を言えば、
「何だ、くそっ!?なぜわかった!やめろ!離せッ!」
「だってねぇ、触角のない子は今は一人もいないはずだもんねぇ。」
「そうだねぇ、この前アネスちゃんが右の触手折れちゃって入院してるくらいだしねぇ。」
「それに、よく見るとおねーさんみたいに背が高くておっぱい大きくていかにもうまく飛べなさそうな体型、お母様くらいしか知らないしねぇ。」
レイアは魔蜂の巣の入り口であっさりと捕まってしまった。
彼女がとった策とは、魔蜂を討伐し、その皮を剥いで作った衣装で変装をしようという大胆かつ、視力の弱い魔虫族の特性を利用した巧妙な奇策だった。
…だが、甲殻を再現し、尻尾を再現し、羽や複眼まで似せたところで、彼女は出来栄えに満足し作業を切り上げてしまったのだ。
そのため、触角という魔虫族最大の特徴が再現されておらず、あっさりと看破されてしまった。
そう、魔竜族特有の慢心という呪縛が、彼女を失敗へと追いやったのだ。
突然の侵入者に若干のどよめきこそ生まれるが、そこはチームワークを最大の得意技とする魔虫族、
レイアはまるで世間話でもしているようなテンションで先ほどから会話している門番と衛兵によって身ぐるみを剥がされ、
彼女の武器であるレイピアと短剣を押収され、固めたハチミツのブロックでできた枷で両手を拘束され、その間に侵入者の報が全ての仲間に行き渡っていた。
その報は巣の主であるパラレビーへと伝わり、結果としてレイアは取り押さえられてから宿敵の前に引き出され尋問されるまで5分とかからなかった。
このまるで流れ作業を行っているようなこの素早い対応に、レイアは魔竜族の組織体制とを比較して嫉妬し、同時にとても大きな恐怖を覚えた。
人海戦術を行うことに長けた民族という認識しかなかった魔蜂のあまりに見事な対応。
まるで組織の人物全てがまるで一人の人間であるような淀みない情報伝達、慌てることのない鋼の対応力、仲間一人の体調まで共有する記憶力…
そのどれもが自分たちに足りないものであり、欲していたものだった。
そして、それを仕切る存在…それが、この目の前の女であり、女王蜂であり、両親の仇。
レイアは、わけのわからないほどに強く打ちひしがれる感覚に襲われ、圧倒され、脱力した。
それは、竜の戦士ならば死を覚悟したその瞬間まで味わうことのない、絶望だった。
343 ... sage 2014/03/27(木) 23:35:30.89 ID:AYqx/RnX
何度も、何度もその身体を…腕を、足を、腹を、頭を引き裂くことを夢見たその女王蜂の姿はさながら女神のような美貌を持っていた。
…もっとも、魔に生きる者にとってその表現は、人間が娼婦を雌犬呼ばわりすることと同義であるが…
むちむち、という表現が似合いそうな四肢は、先端が薄く甲殻に覆われた人外の姿をしているのを差し引いても官能的に見える肉付きの良さ。
胴体はほっそりとして極端と言われかねないほど短く、人間界の蜂と同様に尻尾のようなあの器官が本来の腹部であることがうかがえる。
腰回りの骨格がガッチリしているのか、臀部はレイアが嫉妬しかねないほどに大きく、少し歩くだけで男を誘うようにプルプルと揺れている。
育児と出産に追われている女王蜂ならではと言いたげに自己主張する豊満な胸は、もし彼女がレイアの怨敵でなければ揉みしだきたい衝動に駆られるところだ。
淫靡で熟れた身体に反し、その顔は清純で純潔を保った瑞々しい笑みを浮かべている。幼子が気に入った玩具を抱きかかえているかのような、そんな表情。
だが、世の男性からしてみれば、そのような表情がこの情欲くすぐられる肉体についてると気付けば、なおのこと滾ってしまうだろう。
服装はよく見れば上着のボタンが二つしか付けられておらず、肌着の首元の切れ込みがへそまで届かんばかりに伸びており、授乳しやすいように配慮されている。
下がスラックスなのはおそらく腰から突き出た蜂の腹部を露出させるのに適しているからであろう。
そのようないでたちからか、いささか女王という言葉が見た目には似合っていない活動的で男勝りな印象も与えられる。
化粧は薄く、自らの美貌を高めることに興味などないと言っているようなものだが、もともとの顔面偏差値が高いのでそんなことは気にならない。
レイアを興味ありげに見つめるその瞳は深遠な黒で、複眼の特性を持つことはパッと見でわからない、蠱惑(こわく)的な目つきだ。
「うふふ、遠路はるばるよく参ったのう、竜の娘子よ。
そなたの変装、なかなか見事であったと聞いたぞ。それこそ、触角を付け忘れなかったら危うかったと。
大方、妾が婚儀をするための準備で生じる隙と、捕虜の解放が狙いじゃろうな?成功されたらまずいことになっておったわ。」
一般に、家族形態をとる魔虫の一族の者は人間の幼子ほどの体型で成長が止まる。
空を舞い、捕食のためのみに動く彼女らに生殖行動のための能力を身につける必要も、豊かな体格になる必要もないからだ。
その証拠に、二人がかりでレイアを押さえつけ、女王に危害を加えないようにしているこの娘たちは、ずいぶんと貧相な背丈と胸をしている。
レイアは、横目でその二人を見やり、かつて両親を失った時自分は確かこのくらいの背丈だったと思い返し、
続いて目の前の自分の持つそれを一回り上回る魅力を持つ豊満な肉体美を見せているこの巣の女王を見て、いっそう彼女らへの憎悪が大きくなる。
彼女の両親を殺すよう命じた黒幕はこの目の前の女王蜂であり、間違いなくその実行犯の実母でもあるのだから。
また、そんな憎むべき存在が敬畏してやまない我らが主である皇太子殿下のもとに嫁ぐことが決まっていることが彼女には許せないのだ。
「実に、実に見事じゃのう、娘子よ。ゆえに、その勇敢な心意気を称え、そなたへの尋問は妾自らが行う。光栄に思うがよいぞ。」
その発言に憤りを隠せず、身を乗り出すレイアだが、両脇に立つ兵が槍を構えて彼女を押さえつけ、跪いた状態から動けない。
先ほど巣の入り口で取り押さえられた際にチクリとした痛みを覚えたが、あの時に毒針で刺されたのだろうか。
立てばこの両脇の二人の1.5倍はあるかもしれない彼女の恵まれた体躯は痺れ、彼女たちを振りほどけるような十分な力が入らなかった。
レイアは己の至らなさ、無力さを心中で嘆いた。
眼前に我が怨敵を見据えているというのに、その居城のその自室にまで来れたのに、
武器を持っていないどころか、拘束され、裸で跪かされているという状況にだ。
手を封じられようとも姉ならば徒手武術を習得しているため足が無事なら戦える。妹ならば魔術使いなので喉が無事なら戦える。しかし、自分にはそれがない。
あと少し、万全を期していればあの喉元に手が届いたのに…そう思うと、むせび泣きたい衝動に駆られたが、それは種族の誇りが許さなかった。
344 ... sage 2014/03/27(木) 23:37:11.12 ID:AYqx/RnX
「ふん、貴様なんかに特別扱いしても何も出ないぞ?おだてれば木に登る上層部のプライドで凝り固まった連中と私は違う。」
「ふふふ、さすがにこんな変わったことをしでかすほどの者は気骨が違うようじゃの。娘子よ、妾はお主のような者、嫌いではないぞ?」
「さっきから娘娘ってうるさいね、私には…」
「レイア・バハムーン…と呼べば満足かの?娘子よ。」
レイアの目が見開かれ、額に大きな汗の粒が浮かび上がる。
バカな、そう頭に浮かんだまま、彼女は口をパクパクさせ、言葉が出ないでいる。
彼女はもっぱら前線から離れた後方支援と、街の哨戒を担当する部隊に所属し、戦いの場には未だに出ていない。
つまり、敵方に彼女の名前と顔が一致するものなどいるはずもないのだ。
情報戦のいかに重要であるかを知る彼女にとって、その事実は頭を鈍器で殴打されたような衝撃であった。
もしや、我ら軍の内情を全て、知られてしまっている…!?
いや、それどころか…
「ふふふ…我ら一族を甘く見るでない。この巣に住まう全ての子らが見聞きした情報はすべて最後には妾の下に集約されるのじゃからな…」
「貴様…!まさか、私にとって貴様が怨敵と知って…!」
「良いではないか、妾はここまで他人に感情を向けられることなど初めてでな、
たとえそれが恨みであろうと、そこまで妾を想うそなたを、妾は愛おしく思うぞ?」
「…ふざけたことを……このぉっ!父を、母を侮辱するかッ!許さん!この手で引き裂いてやるっ!っつ、離せぇっ!」
許さない。殺してやる。憎悪が渦を巻き彼女にまとわりつき、その身体を目の前の女王へと向かわせようとする。
その意志の力こそ強かったが、毒に蝕まれ押さえつけられている身ではどうにもならなかった。
もはや、後ろ手にされた手首に鎮められた蜜塊の手枷が背中にかける重量にすら抗えない。
彼女はすでに忘我という自身の毒に意識を蝕まれている。身をよじり不自由な身体で少しでも前に行こうともがく姿は半狂乱と言って差し支えないものだ。
「おやおや、物騒じゃの。せっかく妾がそなたに位を授けようとしているのに。」
レイアはその言葉を耳にし一瞬だが動きが止まる。
聞き間違いかと直前に過ぎ去った記憶を巻き戻し整理したが、やはり聞き間違いはないようだった。
なぜ、今にも襲いかかりそうな表情で睨みつける私に位を授けるなどと?
キョトンとした顔で真意を測りかねている彼女。
毒の効き目を信頼しているのであろう。今まさに憎悪を向けられている女王は彼女のすぐ目の前にまで歩を進め、その眼前に座り目線の高さを合わせた。
「そなたたち姉妹には、申し訳ないことをしたと思っておる。
…おぬしの父母は主戦派の一大勢力でな、和議を申し入れるためには口封じするよりなかったのじゃ。」
彼女の頬に手のひらをつけ、慈しみをこめて撫で擦る。忌々しい怨敵からの思いがけない行動に、レイアは怒ることすらできず目を白黒させている。
「正直なところ、そなたたちが両親を失ったくらいでここまで難儀するとは思わなかったのじゃ。
我らは幼子は皆で…地域で育てる。ゆえに、そなたたちのその後の暮らしを聞いて驚いた…
誰も保護者に名乗り出ぬとは、そなたらが孤独に生きていっていたとは、とな。
それを知る前ならば、もしお主に会ったらこう言っていたじゃろうな、『平和のためだ、許せ』と。」
もし、それが頬を撫でられながらではなく真顔で言われた一言であったら、彼女は頭に血が上りすぎて憤死していただろう。
それくらいのセリフを自然と聞き流してしまうのだから、彼女にとってこの怨敵の母性が自らに向くのが理解しがたいことなのであったのであろう。
彼女には母性愛という経験がない。
それは、厳格に育てられて母に甘えられないまま死別してしまったこともあるし、
母代わりであった姉のドラコが彼女に向けていた愛が父性愛に近いものであったこともある。
もっとも、騎士になること前提の激しい訓練を重ね、男同然の不器用な性格に育ったドラコに、母親の包容力を求めること自体が無理な話であったのだが。
345 ... sage 2014/03/27(木) 23:38:04.82 ID:AYqx/RnX
「妾のうがった物の考え方のせいで、そなたら姉妹には迷惑をかけ、辛い思いをさせてしまった。
もともと、和議が正式に発令された暁には…その詫びに、そなたらを養子に迎えようと思っていたのじゃ。
だが…良い誤算だった、和議の交渉を有利に進めようと前線の基地を接収した際にそなたの姉と妹、そして今そなたがここにやってきた。
これで我が野ぼ…いや、悲願を成すことができるというものじゃよ。」
呆れたようなもしくは意味がわからないというような表情のままの彼女の伸ばしっぱなしの前髪をかきあげ、女王は彼女の額にキスをする。
顔を真っ赤にして息もできず固まってしまっている彼女を尻目に、彼女の反応を半ば楽しんでいる女王。
その女王は指示を出し彼女を押さえつけている衛兵を退室するよう命じた。
「ふふ…初めはそなたの姉にしようと思ったが…あの娘は役目を負わせるには荒々しすぎての…
次に目を付けたのは妹…じゃが、淫魔の類の者には妾はちと相性が悪い。あちらの方が一枚上手じゃからの。
その点、そなたは良さそうよな。気丈な性格、肉付き良い体格、姉妹を思いやる心、どれもふさわしい…」
跪いた姿勢のまま振り返り、去っていく衛兵を訝しんでいた彼女は、衣擦れの音がすることに驚き毒で痺れて回らない首で精いっぱいの速さで前を向く。
すると、先ほどまできちんと着込んでいたはずの女王が服を傍らの床の上にたたみ、恥ずかしがりもせずむしろ胸を張って全裸で佇んでいた。
ティアラや服に隠れていた触角や乳首、陰毛までもまるで見せつけているかのように惜しげもなく彼女の視界に晒している。
彼女に考え得るすべての事柄のその更に斜め上を行く女王の行動にもうレイアはすでに考えることを止めてしまった。
「ふふ、知ってるとは思うが妾はじきに嫁がねばならない。ゆえに…この巣の女王の座が空く。
別段我が腹を痛めて産んだ子に任せてもよいのだが…そなたが気に入った。そなたがふさわしい。
妾から、そなたへの詫びの印だ…我が財と地位と役職を、この巣ごとそのまま全て遣わそう。じゃから、この巣の女王の代理を頼まれてはくれぬか?」
「本当に、心底から貴様ら虫の考えにはついていけない。いまさら罪の重さに気付いて贖罪とは。
…だが、相手の命乞いも聞かず嬲り殺すオークの連中よりよほど賢明だ。…姉と妹の安全は、その部下たちの安全は約束してくれるな?」
「もちろんじゃ。あの基地を制圧したのは、かの地を和議の話をするときの脅し文句に使う心積もりでおったからじゃ。
そもそもあの捕虜どもは傷つける気などさらさらないわ。」
「そうか、そうか…ならば断わる意味もないというもの。
このレイア、竜の恥を忍び…その提案、受けよう。」
苦渋の決断であることは、彼女の眉間のしわを見れば予想がつくし、その頬を伝う物体を見れば一目で理解できるだろう。
無理もない、これで彼女の姉妹と、その仲間たちの未来は断たれたも同然なのだ。その重圧は一人の双肩にかかるには重い荷であった。
敵国に捕虜として攫われた落伍者が出ただけでも問題なのに、それを助けに行って捕まり提示された要求を呑み恩赦を得るなど、生き恥をさらすようなもの。
もう、故郷の土を踏むことすら彼女には許されないであろう。また、監督責任者の問題として、騎士団長である姉や軍師の妹も同じ咎を背負うことになる。
姉たちが捕まったという第一報を聞いたあの時の知己との約束は、果たせなかった。
でも、ここでこの女王を討ち取ろうと無駄に足掻くよりは賢明で妥当だ。騎士団上がりの竜の傭兵など魔界中で引っ張りだこになること間違いない。
民間の存在へと下り、プライドを捨てることは苦行だが…カタチにこだわらなければ自分たちにいくらでも働き口などあるのだ。
苦悩したその顔を不思議そうに見つめる女王は、おそらく彼女たちの風習…というより、彼女たちの立場に理解が足りないのであろう。
気丈な顔で涙を抑えきれずにいるがそれでも顔を上げ前を向いているレイアと、小首をかしげ笑顔でその顔を覗き込んで様子を見ているパラレビー、
種族の壁がどうしようもなく二人の間を、魔竜族と魔虫族をさえぎっていた。
346 ... sage 2014/03/27(木) 23:40:02.32 ID:AYqx/RnX
「ふふ、受け入れているのならばこのような戒めなど必要ないな。」
女王はそう言うのが早いかレイアの手枷に触れる。すると、いきなり固形だったそれが融解し、元のハチミツへと戻っていく。
これは魔蜂特有の能力。自らの魔力がしみ込んだ液体を自由自在に変化させられるのだ。
この能力はレイアも知っているためこの出来事には大して驚きもしないが、実はこの巣丸ごとがその能力によって建造されたものだとは知るよしもない。
「しかし器用な力だな、息をするような感覚でできるのだろう?便利そうで憧れる。」
「それを言うなら、そなたたちが空を飛ぶ時に自然と風を集めていることこそ憧れるわ。
我らが飛ぶときはきちんと羽の向きなどとあれこれ意識して飛んでいるというに、そなたら竜はただ羽ばたくだけで進むことができるのじゃからな。」
そこまで話して顔を見合わせ、二人で笑う。このときレイアは異文化交流というものの楽しさを一瞬だが理解した気持ちになった。
「で…代理の女王、と言ったな?それは、どのような仕事をすればよいのだ?
もしかして、私に影武者になれと?」
毒に体が慣れてきた彼女は、固まったように動かない身体を強引に動かさせて床にぺたんと座り込み、
体育館座りの体勢で先ほどまで手枷が鎮められていた手首をさすっている。
彼女が影武者という発想に至ったのはある意味自然だ。彼女は目の前の文字通り裸の付き合いをしている女王とよく似た輪郭をしている。
豊満なボディーラインと胴が短くて足が長い体格、手足に生えた細かい毛と翼と尻尾があることなど二人の見た目には共通点が多い。
それに、女王蜂の代わり、もとい女王と同じ体格を持つ者は巣にはいるはずがなく、こうして外部の者にその任務を託すとも考えられた。
だが、彼女は獅子の体格と竜の翼、それに蠍の尾を持つ合成獣の開祖キマイラを祖先に持つ種族。よく目を凝らさなくとも二人の区別はつく。
彼女が女王に扮したとして一人も騙せないだろう。では、彼女は何をすればよいのだろうか?
答えを知る女王は彼女の目の前に膝立ちの状態でしばらく佇んでいたが、
その答えを示すようにゆっくりと首を振ると唐突に彼女の肩を掴み、勢いのまま床に彼女を巻き込んで倒れ込む。
「影武者…?そんなもの、いるはずがない。そなたには…本当に、女王になってもらうのじゃ。」
「女王になる?私が?…はっ、私は竜の者。種族が違いすぎて無理がある。」
背中にひんやりとした感触を感じつつ、またもや真意のつかめない言動を受けた彼女は、今度こそと冷静にその言葉を解釈しようと身構える。
それは、会話の主導権を向こうに掴まれたままなのがだんだん気に食わなくなってきたこともあるが、
何よりその言葉の示す意味を早く読み解かねばいけないような虫の知らせが彼女の頭の中でしたからだった。
「そういえば、そなたはなぜ女王蜂が卵を産むばかりで性交をしないと思う?」
「…?たしかに、言われてみれば妙なことだが…なぜそのような下世話な話を?」
そこまで言って、彼女は自身と目の前の女王の体勢に違和感を覚える。
床に寝そべった自分の上に座られている今の状況。これが蜂たちの会話風景なんだろうかと。
肩を掴まれ、彼女の引き締まった腹筋の上に尻がのしかかっているため、向こうがどいてくれなければ起き上がられそうにない。
そこまで考えが及び、彼女の肩にジワリとイヤな汗が出るのを感じた。
いや待てよ。この会話自体はもしかしたら重要ではないじゃないのだろうか。
もし…その目的が、自分をこの組み敷いた体勢に持ってくることだとしたら。
「その理由は、我ら女王は生涯に一度しか肌を合わせぬからだ。我らの仲間は、一回の行為で一生分の卵を産めるようにできておるのじゃ。」
「…つまり、逆を言えば女王は一度だけは行為に及ぶということか?…おい待て、貴様、一生分の卵って、まさか、」
「そうその通り、そのただ一度をしてもらうぞ。大丈夫じゃ、痛くない。痛覚ならとうに毒で麻痺して機能しておらん。処女を失った痛みなど感じまいて。」
その瞬間、彼女は股間に湿気た感触を感じた。
「…さぁ、我が子を、孕んでくれ。これもそなたのためじゃ、許せ。」
そして、それが何なのか知る余地さえ与えられずにその物体は彼女の秘裂に突き入れられた。
348 ... sage 2014/03/27(木) 23:44:23.50 ID:AYqx/RnX
「ん…そなた、自慰もしたことがないのか?ここまで締まりの良い生娘も珍しい…残念じゃのう、産卵でこの締りが失われると思うと…」
「う、う、うわああああああ!!!やめろ!やめろやめろやめろ!私を汚すな!私は、私は誇り高き竜の一族だ!私が矮小な虫と交わってよいはずなどっ!」
「もうそんなこと言わなくてよいのじゃよ。誇り、夢、力…そんなもののために頭を悩ませなくてもよいのじゃ…
そなたは、女王という機能の型に嵌まっていればよいのじゃから…な。
不自由なことも場合によれば幸せじゃよ?それ以上もそれ以下の暮らしも忘れてしまえば、必然的に頂点の幸せ者になれるのじゃからな。」
「そんな卑屈な生き方など、貴様は受け入れようと我が血は許さ…うぐっ!?あっ…!ちぃっ!」
「…あ…そこが善いのじゃな?ふふふ、咥えたままたくさん涎を垂らして、よっぽど妾の産卵管が口に合うとみえるの。」
「やめ、やめろ…!やめてくれ…感じてなど、いない。後生だから、許してくれ…!」
「ふふ、竜が嘘をつくなんてらしくないのう?そなたの身体はこんなに歓喜に打ち震えているというに。」
「あああああああ!!!嫌だぁああああああ!!!」
「これ、暴れるな。あまり横暴な手段に出るならその子宮に毒針を突き立てて使い物にならなくしてもよいのじゃぞ?」
彼女が知るそこに受け入れるべきものより明らかに柔軟で長いものがにゅるにゅると滑らかに前後するたび、彼女の心身に衝撃が加えられた。
産卵管、蜂が毒針を出す器官であり、また卵を産み落とす役目も持つ場所だ。そんなものを、女の場所に突き入れられてしまった。
…純潔を捧げてしまった。
そんな彼女に跨る女王は今しがたずいぶんと物騒な発言をしたが、その嗜虐的な表情から考えるに毛頭そんな手段に出る気はないのだろう。
そもそもこの女王には、据え膳であるこの竜の娘を食することしか頭にないのだから。
しかし、それを知るはずもない彼女は恐怖におののいていた。
女を蹂躙され、さらに抵抗すればそれをダメにすると脅されているのだ、おぞましい以外の何物でもないだろう。
それでいてしかも、浅ましいことに自分の身体はこの残忍な女王からの責めにすぐさま昂りだしたのだ。
青ざめるような顔をしているつもりなのに頬は朱に染まり、あまりの恐怖に身体は震えているにもかかわらず彼女の三つの突起は固く尖り刺激を求めていた。
生存本能から荒くなった息は鼻を通る際に彼女自身の雌の匂いを伝え、狂いそうな嫌悪感にさいなまれている心には徐々に快楽が主張を始めてきていたのだ。
その間にも女王は彼女を弄び、導き、その拒む心を侵食していった。
彼女が『イヤ』と言えば『初心だ』と返し優しく愛撫し恥丘をなぞり、
彼女が『ダメ』と言えば『大丈夫』と耳元で囁き耳たぶを舐め上げ、
彼女が『やめて』と言えば『嘘だ』と乳首をつねり高まる性感を自認させていた。
彼女は自分の身体を、自身の性器を呪った。
愛し愛される相手ならともかく、親の仇で姉妹を誘拐したこの憎き敵に強姦され、
あまつさえ性感を高められているこの事実が、彼女の胸と心とおまけに彼女に突き立てられた産卵管をちぎりそうな勢いに締め付けている。
だが、実は彼女がここまで熱に浮かされているのはからくりがある。
先ほどから散々に彼女を苦しめた毒、これが彼女を強引に善がらせていたのだ。
筋弛緩効果を持ち、全身に力が入らなくなり神経が鈍感になる作用に隠れて、性欲を高め色に酔わせる媚薬の機能を持つこの淫毒が彼女をここまで狂わせていた。
しかし、つい先ほどまで処女であった彼女にそのようなことが分かるはずもない。
性行というものを耳でしか知らぬ乙女であった彼女に、この快感が己の内から生じたものでないという分析などできようはずもなかった。
また自然体での交わりを当然とする魔竜族の彼女に、媚薬という言葉は皮肉のようだがまさにファンタジーの中の代物だったのだ。
だが、下腹部に襲いかかる叩きつけられるような衝撃と、
いつの間にか奪われていた唇から注がれる蜂の蜜と、
左右の胸をいたわるようにこねくり回す愛撫に、彼女の中で何かが開発されていったのは事実だった。
始めは罪悪感のみを与えていたその快楽の波は、彼女の股間から、胸から、口から波紋のように広がり、彼女のかたくなな嫌悪感を体外に放出させた。
それはたとえば女王に舐め取られ唾液へと置換されている汗であり、女王の産卵管を咥えさせられ弄ばれている膣からあふれる蜜であった。
349 ... sage 2014/03/27(木) 23:45:22.56 ID:AYqx/RnX
そして、そこに端を発する声色の変化に、女王の無垢そうな顔が歪んだ笑みを浮かべる。
彼女は自らという存在をグチャグチャに掻き乱されたような所在ない惚けた顔で、
一瞬でも気を抜けば喘いでしまいかねない声を必死で押さえつつうわごとのように許しを乞うていた。
命令口調だったその言葉も、すがるような言葉選びとなり、竜の文化に疎い女王にも彼女が陥落しかけてきたと知るには火を見るより明らかだった。
「やめろ…ほんとうに、やめて、ください…お願い、です、から…!わ、私、おかしく、なる…」
「今だけは壊れても構わないぞ?その善がる狂う姿、誰にも言わぬゆえな…じゃから、妾に身を任せ、安心して逝くとよい。」
「い、いや…だ、こわれたくない、私は、わたしは…騎士団の、誇り…竜の…、わたし…ぅあ…あっあっ…ぃやぁ……」
「…!そろそろ、妾も余裕がなくなってきたわ…さぁ、卵を産むぞ、これで!そなたも女王じゃ!そなたに、歴代女王からの祝福を!」
「あ、いや、なに、くるっ…いやああああああああああああああああっ!!!」
彼女の中の奥の奥、子宮の中までにねじ込まれた産卵管から、スポンと卵が飛び出し続いてそれを保護する液体がそそがれる。
子宮口をこじ開けられる感覚と固形物が通る刺激でレイアは気をやってしまったままの様子だ。
せめて、快楽という逃げ道があって彼女にはせめてもの救いだっただろう。そうでなければあまりのおぞましさに気絶することは容易に考えられる。
もっとも、意識を保っていられてしまったこともある意味酷な現実だが。
女王はひとしきり液体を注ぎ終わり彼女の子宮がとろとろのゼリーで満たされたことを確認したところで、その管を彼女から抜き自身の腹内へと戻す。
その刺激にすら、彼女の経験のない身体は快楽が振り切れてしまい跳ねるように動いてしまう。
「あぁ…良いものを持っていたぞ。特に逝く時など妾も頭が焼き切れそうな心地良さであったわ。まったく、竜の娘はみなしてここまで締りが良いのか?
魔竜族は生まれながらにして逞しい筋肉を持つとは聞くが…まさかそこの筋肉も強いとはのう、傑作じゃな。
…おい、…そうだ、誤算はまだない、手はず通りに。」
「あ…あぁ…そん……な…入って……入っちゃっ…てる…」
レイアは仰向けに押し倒されたままの状態から動けず、部屋にやってきた衛兵たちに両肩を抱かれ、引きずるように連れて行かれた。
彼女は、耐えがたい屈辱と受け入れがたい現実から逃れるため、その瞳を閉じた。
せめて、彼女の股から垂れる紅が混じった白い液体を一度でも見てしまわないように、
そして、夢の中になら逃げられるから、と信じて…
350 名無しさん@ピンキー sage 2014/03/27(木) 23:51:16.92 ID:AYqx/RnX
ごめんなさいここで一度中断です。消化不良で申し訳ないです。
NGは...でお願いします。
自分の自家発電にお付き合いいただきありがとうございました。
>>331です。とりあえず途中まで投下します。前置きが長いのはご愛嬌で。
もしそれが面倒なら最後のレスまで飛ばしてください。
『竜姫の趣味趣向(parasitism side)』
人間の世界で些細な肌の色などで差別やいさかいが生まれるように、魔界に住む者達も決して一枚岩ではない。
魔界の中でも異種族との間の衝突はあり、特に魔竜族と魔虫族の民族間紛争は深刻であった。
その理由としてはごく簡単なことで、『産めや育てや』の精神を持つ魔虫族は、『孤高』を常に肝に銘じている魔竜族にとっては忌むべき存在なのだ。
また、魔虫族からすれば集団行動を嫌う教育理念と高すぎる上昇志向を持つ魔竜族の民族性は軽蔑する点として大きい。
その緊張は、魔竜族の長が魔虫族の長と話し合い、政略結婚にて和議が結ばれる方向で話がまとまりつつある今も変わらなかった。
レイア・バハムーン。
生まれながらにして将来を約束されたも同然と言われる家系に、三姉妹の次女として生まれ、
竜の部族の戦士ならば誰もがその肩書きを欲する高位な存在、騎士団に二人の姉妹と共に所属している竜亜目合成獣科マンティコアの剣士。
族長の直属の部隊の一員として仕える誰もが羨むエリートだが、その人生は決して順風満帆なものではなかった。
魔虫族との交戦が行われている前線近くにあった家は彼女が初等教育を受けている頃に魔蜂の部隊に襲撃され、その両親とともに灰と化した。
たとえ良家の生まれでも、親族という概念が存在しない魔竜族に彼女に救いの手を差し伸べる者はおらず、
彼女はすでに騎士団に所属していた姉の助けを借りて血のにじむような努力からこれまでの半生を何とか勝ち組として暮らしてきた。
だが、その研鑚のもとに成り立った安寧の生活にも、ついに亀裂が走ることになってしまった。
「そんな…姉貴が、負けたって言うのか!?」
「そうなのよー…私が谷まで降りてって川へ水を汲みに行ってる間にね、キャンプはもう火の海だったのよ…」
「くっ…被害は!?」
「それがわかったら苦労しないわよー、身体が乾くの覚悟で探したけどキャンプには死体は一つもなくて資材も盗まれてもぬけの殻だったのよー。
…一つ言えることは、ここまで帰ってこられたのがアタシ一人だけってこと。…分かるわね、部隊長?」
「…遺体がないということは、何らかの方法で姉貴の部隊は無力化させられ、敵に連行されたことになる。
基本的に、この戦線で現れる敵は…ほとんどが魔蟻で残りが魔蜂。だけど、進軍経路の敵を全て薙ぎ払う魔蟻がこんな人質をとる作戦をするなんて考えにくい。
というか、団長たる姉貴の直属の部隊を押さえることのできる頭脳派は、魔虫族にはそもそも、一人しかいない…!」
「魔蜂の長、女王蜂のパラレビー、ねー…まさか、部隊長の因縁の敵が、こんなところで現れるとはねぇ。何の因果よ、これー…」
「いや、だけど…これは私には絶好の好機ともいえる…奴らのことだ、捕虜とはいえ必ず巣に持ち帰っているだろう。
もし、私がそこに潜入し、捕虜を解放できれば…」
「内側から崩せるー…ね。でも…危ない橋を渡ることになるわね。
たしかに、成功すれば部隊長の妹…エリーちゃんだっけ、それと団長たちを救うことができるわよ?それに、仇だって討てるかもしれないわね…
でも…相手はアタシたちとは違う。文化も、頭の中も、何もかもがアタシたちの理解の範疇を超えてるやつらよー…」
「それはもちろん分かってる…だけど、私は、このまま座して姉貴たちに敗者の烙印を押させたくないんだ!」
「部隊長…分かったわよ、どうせ私は伝令にすぎないから部隊長に文句言える立場じゃないしねー…
…笑顔でまた会えるよね、レイア先輩…」
「おい、その呼び名はよせと言ったろ…だけど、素直にその思い、受け取るよ。
ほら、小指、出しなよ。指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます、指切った!…これで合ってたっけな。」
「…えっ?なんなのよ、コレー…?」
「あぁ、人間の奴らが誓約を交わす時の作法らしい。このくらいリスクを負えば必ず成功できるって願掛けだな、たぶん。」
342 ... sage 2014/03/27(木) 23:34:38.01 ID:AYqx/RnX
先ほどの驚くべき報告を伝えたあの伝令は別の部隊長に報告へ向かい、今は部屋に彼女一人のみがいる。
「…よしっ!そうと決まれば、工作の開始だ…!」
騎士団の寮の自室、レイアは頬を叩いて気合いを入れつつひとりごちる。
その声こそ快活で元気そうな印象を与えるものだが、顔は引きつり、手足に生えた毛も逆立っていて、緊張の色が隠せない。
常勝を求められる魔竜族の戦士は、一度の敗北で退役が確定してしまう。
もし、捕虜の取引で囚われた姉と妹が帰ってきたとしても、自分一人の稼ぎでは二人を養うのは難しいだろう。
竜の社会に他民族に屈した者など排されるべきものなのだから。
彼女が手勢を率いて軍事的手段に出るとしても、彼女たちを救出しただけでは同じ。張られるレッテルは『敗者』の二文字でしかない。
つまり彼女たちへの社会的制裁を阻止するためには、『彼女たちが敵軍を潰走へと追いやった勝者である』という事実がどうしても必要なのだ。
それに、相手は騎士団の団長である彼女の姉ドラコと、騎士団の参謀役を務める妹エリーを擁する精鋭部隊をもってしても敵わなかった相手だ。
普段の自分たちがするようなありきたりの陳腐な行軍では、救い出すどころか返り討ちの可能性の方が高いとも考えられる。
だが…だからといってきちんと作戦を練ってこの問題に望むことを上層部は許すだろうか?答えは、否だ。
正攻法で堂々と勝ってこそ、竜の戦い。つまり、小手先の策すら用意することは本来認められていないのだ。
彼女の妹であるエリーが軍師の役職についているのは、彼女がもともと淫魔族からの養子で、部族の常識が通じない外部の者だからである。
彼女自身、マンティコアという純潔の竜とは程遠い合成獣の種族に属するからこそ、ここまで考えが及んでいる。
姉、ドラコも低級な翼竜の姿を持ち、体力ではなく頭脳で勝負するタイプの人物だからこそ今の地位を得た。
つまり、
「さぁ、どうやって潜入するか…」
レイアの最愛の姉妹たちを守るためには、
「奴らを騙し、陥れる、大きな一手を…」
彼女が独断で行動を起こすほかないのだ。
「姉貴、エリー…必ず、必ず勝って、勝って帰ろう!」
結論を言えば、
「何だ、くそっ!?なぜわかった!やめろ!離せッ!」
「だってねぇ、触角のない子は今は一人もいないはずだもんねぇ。」
「そうだねぇ、この前アネスちゃんが右の触手折れちゃって入院してるくらいだしねぇ。」
「それに、よく見るとおねーさんみたいに背が高くておっぱい大きくていかにもうまく飛べなさそうな体型、お母様くらいしか知らないしねぇ。」
レイアは魔蜂の巣の入り口であっさりと捕まってしまった。
彼女がとった策とは、魔蜂を討伐し、その皮を剥いで作った衣装で変装をしようという大胆かつ、視力の弱い魔虫族の特性を利用した巧妙な奇策だった。
…だが、甲殻を再現し、尻尾を再現し、羽や複眼まで似せたところで、彼女は出来栄えに満足し作業を切り上げてしまったのだ。
そのため、触角という魔虫族最大の特徴が再現されておらず、あっさりと看破されてしまった。
そう、魔竜族特有の慢心という呪縛が、彼女を失敗へと追いやったのだ。
突然の侵入者に若干のどよめきこそ生まれるが、そこはチームワークを最大の得意技とする魔虫族、
レイアはまるで世間話でもしているようなテンションで先ほどから会話している門番と衛兵によって身ぐるみを剥がされ、
彼女の武器であるレイピアと短剣を押収され、固めたハチミツのブロックでできた枷で両手を拘束され、その間に侵入者の報が全ての仲間に行き渡っていた。
その報は巣の主であるパラレビーへと伝わり、結果としてレイアは取り押さえられてから宿敵の前に引き出され尋問されるまで5分とかからなかった。
このまるで流れ作業を行っているようなこの素早い対応に、レイアは魔竜族の組織体制とを比較して嫉妬し、同時にとても大きな恐怖を覚えた。
人海戦術を行うことに長けた民族という認識しかなかった魔蜂のあまりに見事な対応。
まるで組織の人物全てがまるで一人の人間であるような淀みない情報伝達、慌てることのない鋼の対応力、仲間一人の体調まで共有する記憶力…
そのどれもが自分たちに足りないものであり、欲していたものだった。
そして、それを仕切る存在…それが、この目の前の女であり、女王蜂であり、両親の仇。
レイアは、わけのわからないほどに強く打ちひしがれる感覚に襲われ、圧倒され、脱力した。
それは、竜の戦士ならば死を覚悟したその瞬間まで味わうことのない、絶望だった。
343 ... sage 2014/03/27(木) 23:35:30.89 ID:AYqx/RnX
何度も、何度もその身体を…腕を、足を、腹を、頭を引き裂くことを夢見たその女王蜂の姿はさながら女神のような美貌を持っていた。
…もっとも、魔に生きる者にとってその表現は、人間が娼婦を雌犬呼ばわりすることと同義であるが…
むちむち、という表現が似合いそうな四肢は、先端が薄く甲殻に覆われた人外の姿をしているのを差し引いても官能的に見える肉付きの良さ。
胴体はほっそりとして極端と言われかねないほど短く、人間界の蜂と同様に尻尾のようなあの器官が本来の腹部であることがうかがえる。
腰回りの骨格がガッチリしているのか、臀部はレイアが嫉妬しかねないほどに大きく、少し歩くだけで男を誘うようにプルプルと揺れている。
育児と出産に追われている女王蜂ならではと言いたげに自己主張する豊満な胸は、もし彼女がレイアの怨敵でなければ揉みしだきたい衝動に駆られるところだ。
淫靡で熟れた身体に反し、その顔は清純で純潔を保った瑞々しい笑みを浮かべている。幼子が気に入った玩具を抱きかかえているかのような、そんな表情。
だが、世の男性からしてみれば、そのような表情がこの情欲くすぐられる肉体についてると気付けば、なおのこと滾ってしまうだろう。
服装はよく見れば上着のボタンが二つしか付けられておらず、肌着の首元の切れ込みがへそまで届かんばかりに伸びており、授乳しやすいように配慮されている。
下がスラックスなのはおそらく腰から突き出た蜂の腹部を露出させるのに適しているからであろう。
そのようないでたちからか、いささか女王という言葉が見た目には似合っていない活動的で男勝りな印象も与えられる。
化粧は薄く、自らの美貌を高めることに興味などないと言っているようなものだが、もともとの顔面偏差値が高いのでそんなことは気にならない。
レイアを興味ありげに見つめるその瞳は深遠な黒で、複眼の特性を持つことはパッと見でわからない、蠱惑(こわく)的な目つきだ。
「うふふ、遠路はるばるよく参ったのう、竜の娘子よ。
そなたの変装、なかなか見事であったと聞いたぞ。それこそ、触角を付け忘れなかったら危うかったと。
大方、妾が婚儀をするための準備で生じる隙と、捕虜の解放が狙いじゃろうな?成功されたらまずいことになっておったわ。」
一般に、家族形態をとる魔虫の一族の者は人間の幼子ほどの体型で成長が止まる。
空を舞い、捕食のためのみに動く彼女らに生殖行動のための能力を身につける必要も、豊かな体格になる必要もないからだ。
その証拠に、二人がかりでレイアを押さえつけ、女王に危害を加えないようにしているこの娘たちは、ずいぶんと貧相な背丈と胸をしている。
レイアは、横目でその二人を見やり、かつて両親を失った時自分は確かこのくらいの背丈だったと思い返し、
続いて目の前の自分の持つそれを一回り上回る魅力を持つ豊満な肉体美を見せているこの巣の女王を見て、いっそう彼女らへの憎悪が大きくなる。
彼女の両親を殺すよう命じた黒幕はこの目の前の女王蜂であり、間違いなくその実行犯の実母でもあるのだから。
また、そんな憎むべき存在が敬畏してやまない我らが主である皇太子殿下のもとに嫁ぐことが決まっていることが彼女には許せないのだ。
「実に、実に見事じゃのう、娘子よ。ゆえに、その勇敢な心意気を称え、そなたへの尋問は妾自らが行う。光栄に思うがよいぞ。」
その発言に憤りを隠せず、身を乗り出すレイアだが、両脇に立つ兵が槍を構えて彼女を押さえつけ、跪いた状態から動けない。
先ほど巣の入り口で取り押さえられた際にチクリとした痛みを覚えたが、あの時に毒針で刺されたのだろうか。
立てばこの両脇の二人の1.5倍はあるかもしれない彼女の恵まれた体躯は痺れ、彼女たちを振りほどけるような十分な力が入らなかった。
レイアは己の至らなさ、無力さを心中で嘆いた。
眼前に我が怨敵を見据えているというのに、その居城のその自室にまで来れたのに、
武器を持っていないどころか、拘束され、裸で跪かされているという状況にだ。
手を封じられようとも姉ならば徒手武術を習得しているため足が無事なら戦える。妹ならば魔術使いなので喉が無事なら戦える。しかし、自分にはそれがない。
あと少し、万全を期していればあの喉元に手が届いたのに…そう思うと、むせび泣きたい衝動に駆られたが、それは種族の誇りが許さなかった。
344 ... sage 2014/03/27(木) 23:37:11.12 ID:AYqx/RnX
「ふん、貴様なんかに特別扱いしても何も出ないぞ?おだてれば木に登る上層部のプライドで凝り固まった連中と私は違う。」
「ふふふ、さすがにこんな変わったことをしでかすほどの者は気骨が違うようじゃの。娘子よ、妾はお主のような者、嫌いではないぞ?」
「さっきから娘娘ってうるさいね、私には…」
「レイア・バハムーン…と呼べば満足かの?娘子よ。」
レイアの目が見開かれ、額に大きな汗の粒が浮かび上がる。
バカな、そう頭に浮かんだまま、彼女は口をパクパクさせ、言葉が出ないでいる。
彼女はもっぱら前線から離れた後方支援と、街の哨戒を担当する部隊に所属し、戦いの場には未だに出ていない。
つまり、敵方に彼女の名前と顔が一致するものなどいるはずもないのだ。
情報戦のいかに重要であるかを知る彼女にとって、その事実は頭を鈍器で殴打されたような衝撃であった。
もしや、我ら軍の内情を全て、知られてしまっている…!?
いや、それどころか…
「ふふふ…我ら一族を甘く見るでない。この巣に住まう全ての子らが見聞きした情報はすべて最後には妾の下に集約されるのじゃからな…」
「貴様…!まさか、私にとって貴様が怨敵と知って…!」
「良いではないか、妾はここまで他人に感情を向けられることなど初めてでな、
たとえそれが恨みであろうと、そこまで妾を想うそなたを、妾は愛おしく思うぞ?」
「…ふざけたことを……このぉっ!父を、母を侮辱するかッ!許さん!この手で引き裂いてやるっ!っつ、離せぇっ!」
許さない。殺してやる。憎悪が渦を巻き彼女にまとわりつき、その身体を目の前の女王へと向かわせようとする。
その意志の力こそ強かったが、毒に蝕まれ押さえつけられている身ではどうにもならなかった。
もはや、後ろ手にされた手首に鎮められた蜜塊の手枷が背中にかける重量にすら抗えない。
彼女はすでに忘我という自身の毒に意識を蝕まれている。身をよじり不自由な身体で少しでも前に行こうともがく姿は半狂乱と言って差し支えないものだ。
「おやおや、物騒じゃの。せっかく妾がそなたに位を授けようとしているのに。」
レイアはその言葉を耳にし一瞬だが動きが止まる。
聞き間違いかと直前に過ぎ去った記憶を巻き戻し整理したが、やはり聞き間違いはないようだった。
なぜ、今にも襲いかかりそうな表情で睨みつける私に位を授けるなどと?
キョトンとした顔で真意を測りかねている彼女。
毒の効き目を信頼しているのであろう。今まさに憎悪を向けられている女王は彼女のすぐ目の前にまで歩を進め、その眼前に座り目線の高さを合わせた。
「そなたたち姉妹には、申し訳ないことをしたと思っておる。
…おぬしの父母は主戦派の一大勢力でな、和議を申し入れるためには口封じするよりなかったのじゃ。」
彼女の頬に手のひらをつけ、慈しみをこめて撫で擦る。忌々しい怨敵からの思いがけない行動に、レイアは怒ることすらできず目を白黒させている。
「正直なところ、そなたたちが両親を失ったくらいでここまで難儀するとは思わなかったのじゃ。
我らは幼子は皆で…地域で育てる。ゆえに、そなたたちのその後の暮らしを聞いて驚いた…
誰も保護者に名乗り出ぬとは、そなたらが孤独に生きていっていたとは、とな。
それを知る前ならば、もしお主に会ったらこう言っていたじゃろうな、『平和のためだ、許せ』と。」
もし、それが頬を撫でられながらではなく真顔で言われた一言であったら、彼女は頭に血が上りすぎて憤死していただろう。
それくらいのセリフを自然と聞き流してしまうのだから、彼女にとってこの怨敵の母性が自らに向くのが理解しがたいことなのであったのであろう。
彼女には母性愛という経験がない。
それは、厳格に育てられて母に甘えられないまま死別してしまったこともあるし、
母代わりであった姉のドラコが彼女に向けていた愛が父性愛に近いものであったこともある。
もっとも、騎士になること前提の激しい訓練を重ね、男同然の不器用な性格に育ったドラコに、母親の包容力を求めること自体が無理な話であったのだが。
345 ... sage 2014/03/27(木) 23:38:04.82 ID:AYqx/RnX
「妾のうがった物の考え方のせいで、そなたら姉妹には迷惑をかけ、辛い思いをさせてしまった。
もともと、和議が正式に発令された暁には…その詫びに、そなたらを養子に迎えようと思っていたのじゃ。
だが…良い誤算だった、和議の交渉を有利に進めようと前線の基地を接収した際にそなたの姉と妹、そして今そなたがここにやってきた。
これで我が野ぼ…いや、悲願を成すことができるというものじゃよ。」
呆れたようなもしくは意味がわからないというような表情のままの彼女の伸ばしっぱなしの前髪をかきあげ、女王は彼女の額にキスをする。
顔を真っ赤にして息もできず固まってしまっている彼女を尻目に、彼女の反応を半ば楽しんでいる女王。
その女王は指示を出し彼女を押さえつけている衛兵を退室するよう命じた。
「ふふ…初めはそなたの姉にしようと思ったが…あの娘は役目を負わせるには荒々しすぎての…
次に目を付けたのは妹…じゃが、淫魔の類の者には妾はちと相性が悪い。あちらの方が一枚上手じゃからの。
その点、そなたは良さそうよな。気丈な性格、肉付き良い体格、姉妹を思いやる心、どれもふさわしい…」
跪いた姿勢のまま振り返り、去っていく衛兵を訝しんでいた彼女は、衣擦れの音がすることに驚き毒で痺れて回らない首で精いっぱいの速さで前を向く。
すると、先ほどまできちんと着込んでいたはずの女王が服を傍らの床の上にたたみ、恥ずかしがりもせずむしろ胸を張って全裸で佇んでいた。
ティアラや服に隠れていた触角や乳首、陰毛までもまるで見せつけているかのように惜しげもなく彼女の視界に晒している。
彼女に考え得るすべての事柄のその更に斜め上を行く女王の行動にもうレイアはすでに考えることを止めてしまった。
「ふふ、知ってるとは思うが妾はじきに嫁がねばならない。ゆえに…この巣の女王の座が空く。
別段我が腹を痛めて産んだ子に任せてもよいのだが…そなたが気に入った。そなたがふさわしい。
妾から、そなたへの詫びの印だ…我が財と地位と役職を、この巣ごとそのまま全て遣わそう。じゃから、この巣の女王の代理を頼まれてはくれぬか?」
「本当に、心底から貴様ら虫の考えにはついていけない。いまさら罪の重さに気付いて贖罪とは。
…だが、相手の命乞いも聞かず嬲り殺すオークの連中よりよほど賢明だ。…姉と妹の安全は、その部下たちの安全は約束してくれるな?」
「もちろんじゃ。あの基地を制圧したのは、かの地を和議の話をするときの脅し文句に使う心積もりでおったからじゃ。
そもそもあの捕虜どもは傷つける気などさらさらないわ。」
「そうか、そうか…ならば断わる意味もないというもの。
このレイア、竜の恥を忍び…その提案、受けよう。」
苦渋の決断であることは、彼女の眉間のしわを見れば予想がつくし、その頬を伝う物体を見れば一目で理解できるだろう。
無理もない、これで彼女の姉妹と、その仲間たちの未来は断たれたも同然なのだ。その重圧は一人の双肩にかかるには重い荷であった。
敵国に捕虜として攫われた落伍者が出ただけでも問題なのに、それを助けに行って捕まり提示された要求を呑み恩赦を得るなど、生き恥をさらすようなもの。
もう、故郷の土を踏むことすら彼女には許されないであろう。また、監督責任者の問題として、騎士団長である姉や軍師の妹も同じ咎を背負うことになる。
姉たちが捕まったという第一報を聞いたあの時の知己との約束は、果たせなかった。
でも、ここでこの女王を討ち取ろうと無駄に足掻くよりは賢明で妥当だ。騎士団上がりの竜の傭兵など魔界中で引っ張りだこになること間違いない。
民間の存在へと下り、プライドを捨てることは苦行だが…カタチにこだわらなければ自分たちにいくらでも働き口などあるのだ。
苦悩したその顔を不思議そうに見つめる女王は、おそらく彼女たちの風習…というより、彼女たちの立場に理解が足りないのであろう。
気丈な顔で涙を抑えきれずにいるがそれでも顔を上げ前を向いているレイアと、小首をかしげ笑顔でその顔を覗き込んで様子を見ているパラレビー、
種族の壁がどうしようもなく二人の間を、魔竜族と魔虫族をさえぎっていた。
346 ... sage 2014/03/27(木) 23:40:02.32 ID:AYqx/RnX
「ふふ、受け入れているのならばこのような戒めなど必要ないな。」
女王はそう言うのが早いかレイアの手枷に触れる。すると、いきなり固形だったそれが融解し、元のハチミツへと戻っていく。
これは魔蜂特有の能力。自らの魔力がしみ込んだ液体を自由自在に変化させられるのだ。
この能力はレイアも知っているためこの出来事には大して驚きもしないが、実はこの巣丸ごとがその能力によって建造されたものだとは知るよしもない。
「しかし器用な力だな、息をするような感覚でできるのだろう?便利そうで憧れる。」
「それを言うなら、そなたたちが空を飛ぶ時に自然と風を集めていることこそ憧れるわ。
我らが飛ぶときはきちんと羽の向きなどとあれこれ意識して飛んでいるというに、そなたら竜はただ羽ばたくだけで進むことができるのじゃからな。」
そこまで話して顔を見合わせ、二人で笑う。このときレイアは異文化交流というものの楽しさを一瞬だが理解した気持ちになった。
「で…代理の女王、と言ったな?それは、どのような仕事をすればよいのだ?
もしかして、私に影武者になれと?」
毒に体が慣れてきた彼女は、固まったように動かない身体を強引に動かさせて床にぺたんと座り込み、
体育館座りの体勢で先ほどまで手枷が鎮められていた手首をさすっている。
彼女が影武者という発想に至ったのはある意味自然だ。彼女は目の前の文字通り裸の付き合いをしている女王とよく似た輪郭をしている。
豊満なボディーラインと胴が短くて足が長い体格、手足に生えた細かい毛と翼と尻尾があることなど二人の見た目には共通点が多い。
それに、女王蜂の代わり、もとい女王と同じ体格を持つ者は巣にはいるはずがなく、こうして外部の者にその任務を託すとも考えられた。
だが、彼女は獅子の体格と竜の翼、それに蠍の尾を持つ合成獣の開祖キマイラを祖先に持つ種族。よく目を凝らさなくとも二人の区別はつく。
彼女が女王に扮したとして一人も騙せないだろう。では、彼女は何をすればよいのだろうか?
答えを知る女王は彼女の目の前に膝立ちの状態でしばらく佇んでいたが、
その答えを示すようにゆっくりと首を振ると唐突に彼女の肩を掴み、勢いのまま床に彼女を巻き込んで倒れ込む。
「影武者…?そんなもの、いるはずがない。そなたには…本当に、女王になってもらうのじゃ。」
「女王になる?私が?…はっ、私は竜の者。種族が違いすぎて無理がある。」
背中にひんやりとした感触を感じつつ、またもや真意のつかめない言動を受けた彼女は、今度こそと冷静にその言葉を解釈しようと身構える。
それは、会話の主導権を向こうに掴まれたままなのがだんだん気に食わなくなってきたこともあるが、
何よりその言葉の示す意味を早く読み解かねばいけないような虫の知らせが彼女の頭の中でしたからだった。
「そういえば、そなたはなぜ女王蜂が卵を産むばかりで性交をしないと思う?」
「…?たしかに、言われてみれば妙なことだが…なぜそのような下世話な話を?」
そこまで言って、彼女は自身と目の前の女王の体勢に違和感を覚える。
床に寝そべった自分の上に座られている今の状況。これが蜂たちの会話風景なんだろうかと。
肩を掴まれ、彼女の引き締まった腹筋の上に尻がのしかかっているため、向こうがどいてくれなければ起き上がられそうにない。
そこまで考えが及び、彼女の肩にジワリとイヤな汗が出るのを感じた。
いや待てよ。この会話自体はもしかしたら重要ではないじゃないのだろうか。
もし…その目的が、自分をこの組み敷いた体勢に持ってくることだとしたら。
「その理由は、我ら女王は生涯に一度しか肌を合わせぬからだ。我らの仲間は、一回の行為で一生分の卵を産めるようにできておるのじゃ。」
「…つまり、逆を言えば女王は一度だけは行為に及ぶということか?…おい待て、貴様、一生分の卵って、まさか、」
「そうその通り、そのただ一度をしてもらうぞ。大丈夫じゃ、痛くない。痛覚ならとうに毒で麻痺して機能しておらん。処女を失った痛みなど感じまいて。」
その瞬間、彼女は股間に湿気た感触を感じた。
「…さぁ、我が子を、孕んでくれ。これもそなたのためじゃ、許せ。」
そして、それが何なのか知る余地さえ与えられずにその物体は彼女の秘裂に突き入れられた。
348 ... sage 2014/03/27(木) 23:44:23.50 ID:AYqx/RnX
「ん…そなた、自慰もしたことがないのか?ここまで締まりの良い生娘も珍しい…残念じゃのう、産卵でこの締りが失われると思うと…」
「う、う、うわああああああ!!!やめろ!やめろやめろやめろ!私を汚すな!私は、私は誇り高き竜の一族だ!私が矮小な虫と交わってよいはずなどっ!」
「もうそんなこと言わなくてよいのじゃよ。誇り、夢、力…そんなもののために頭を悩ませなくてもよいのじゃ…
そなたは、女王という機能の型に嵌まっていればよいのじゃから…な。
不自由なことも場合によれば幸せじゃよ?それ以上もそれ以下の暮らしも忘れてしまえば、必然的に頂点の幸せ者になれるのじゃからな。」
「そんな卑屈な生き方など、貴様は受け入れようと我が血は許さ…うぐっ!?あっ…!ちぃっ!」
「…あ…そこが善いのじゃな?ふふふ、咥えたままたくさん涎を垂らして、よっぽど妾の産卵管が口に合うとみえるの。」
「やめ、やめろ…!やめてくれ…感じてなど、いない。後生だから、許してくれ…!」
「ふふ、竜が嘘をつくなんてらしくないのう?そなたの身体はこんなに歓喜に打ち震えているというに。」
「あああああああ!!!嫌だぁああああああ!!!」
「これ、暴れるな。あまり横暴な手段に出るならその子宮に毒針を突き立てて使い物にならなくしてもよいのじゃぞ?」
彼女が知るそこに受け入れるべきものより明らかに柔軟で長いものがにゅるにゅると滑らかに前後するたび、彼女の心身に衝撃が加えられた。
産卵管、蜂が毒針を出す器官であり、また卵を産み落とす役目も持つ場所だ。そんなものを、女の場所に突き入れられてしまった。
…純潔を捧げてしまった。
そんな彼女に跨る女王は今しがたずいぶんと物騒な発言をしたが、その嗜虐的な表情から考えるに毛頭そんな手段に出る気はないのだろう。
そもそもこの女王には、据え膳であるこの竜の娘を食することしか頭にないのだから。
しかし、それを知るはずもない彼女は恐怖におののいていた。
女を蹂躙され、さらに抵抗すればそれをダメにすると脅されているのだ、おぞましい以外の何物でもないだろう。
それでいてしかも、浅ましいことに自分の身体はこの残忍な女王からの責めにすぐさま昂りだしたのだ。
青ざめるような顔をしているつもりなのに頬は朱に染まり、あまりの恐怖に身体は震えているにもかかわらず彼女の三つの突起は固く尖り刺激を求めていた。
生存本能から荒くなった息は鼻を通る際に彼女自身の雌の匂いを伝え、狂いそうな嫌悪感にさいなまれている心には徐々に快楽が主張を始めてきていたのだ。
その間にも女王は彼女を弄び、導き、その拒む心を侵食していった。
彼女が『イヤ』と言えば『初心だ』と返し優しく愛撫し恥丘をなぞり、
彼女が『ダメ』と言えば『大丈夫』と耳元で囁き耳たぶを舐め上げ、
彼女が『やめて』と言えば『嘘だ』と乳首をつねり高まる性感を自認させていた。
彼女は自分の身体を、自身の性器を呪った。
愛し愛される相手ならともかく、親の仇で姉妹を誘拐したこの憎き敵に強姦され、
あまつさえ性感を高められているこの事実が、彼女の胸と心とおまけに彼女に突き立てられた産卵管をちぎりそうな勢いに締め付けている。
だが、実は彼女がここまで熱に浮かされているのはからくりがある。
先ほどから散々に彼女を苦しめた毒、これが彼女を強引に善がらせていたのだ。
筋弛緩効果を持ち、全身に力が入らなくなり神経が鈍感になる作用に隠れて、性欲を高め色に酔わせる媚薬の機能を持つこの淫毒が彼女をここまで狂わせていた。
しかし、つい先ほどまで処女であった彼女にそのようなことが分かるはずもない。
性行というものを耳でしか知らぬ乙女であった彼女に、この快感が己の内から生じたものでないという分析などできようはずもなかった。
また自然体での交わりを当然とする魔竜族の彼女に、媚薬という言葉は皮肉のようだがまさにファンタジーの中の代物だったのだ。
だが、下腹部に襲いかかる叩きつけられるような衝撃と、
いつの間にか奪われていた唇から注がれる蜂の蜜と、
左右の胸をいたわるようにこねくり回す愛撫に、彼女の中で何かが開発されていったのは事実だった。
始めは罪悪感のみを与えていたその快楽の波は、彼女の股間から、胸から、口から波紋のように広がり、彼女のかたくなな嫌悪感を体外に放出させた。
それはたとえば女王に舐め取られ唾液へと置換されている汗であり、女王の産卵管を咥えさせられ弄ばれている膣からあふれる蜜であった。
349 ... sage 2014/03/27(木) 23:45:22.56 ID:AYqx/RnX
そして、そこに端を発する声色の変化に、女王の無垢そうな顔が歪んだ笑みを浮かべる。
彼女は自らという存在をグチャグチャに掻き乱されたような所在ない惚けた顔で、
一瞬でも気を抜けば喘いでしまいかねない声を必死で押さえつつうわごとのように許しを乞うていた。
命令口調だったその言葉も、すがるような言葉選びとなり、竜の文化に疎い女王にも彼女が陥落しかけてきたと知るには火を見るより明らかだった。
「やめろ…ほんとうに、やめて、ください…お願い、です、から…!わ、私、おかしく、なる…」
「今だけは壊れても構わないぞ?その善がる狂う姿、誰にも言わぬゆえな…じゃから、妾に身を任せ、安心して逝くとよい。」
「い、いや…だ、こわれたくない、私は、わたしは…騎士団の、誇り…竜の…、わたし…ぅあ…あっあっ…ぃやぁ……」
「…!そろそろ、妾も余裕がなくなってきたわ…さぁ、卵を産むぞ、これで!そなたも女王じゃ!そなたに、歴代女王からの祝福を!」
「あ、いや、なに、くるっ…いやああああああああああああああああっ!!!」
彼女の中の奥の奥、子宮の中までにねじ込まれた産卵管から、スポンと卵が飛び出し続いてそれを保護する液体がそそがれる。
子宮口をこじ開けられる感覚と固形物が通る刺激でレイアは気をやってしまったままの様子だ。
せめて、快楽という逃げ道があって彼女にはせめてもの救いだっただろう。そうでなければあまりのおぞましさに気絶することは容易に考えられる。
もっとも、意識を保っていられてしまったこともある意味酷な現実だが。
女王はひとしきり液体を注ぎ終わり彼女の子宮がとろとろのゼリーで満たされたことを確認したところで、その管を彼女から抜き自身の腹内へと戻す。
その刺激にすら、彼女の経験のない身体は快楽が振り切れてしまい跳ねるように動いてしまう。
「あぁ…良いものを持っていたぞ。特に逝く時など妾も頭が焼き切れそうな心地良さであったわ。まったく、竜の娘はみなしてここまで締りが良いのか?
魔竜族は生まれながらにして逞しい筋肉を持つとは聞くが…まさかそこの筋肉も強いとはのう、傑作じゃな。
…おい、…そうだ、誤算はまだない、手はず通りに。」
「あ…あぁ…そん……な…入って……入っちゃっ…てる…」
レイアは仰向けに押し倒されたままの状態から動けず、部屋にやってきた衛兵たちに両肩を抱かれ、引きずるように連れて行かれた。
彼女は、耐えがたい屈辱と受け入れがたい現実から逃れるため、その瞳を閉じた。
せめて、彼女の股から垂れる紅が混じった白い液体を一度でも見てしまわないように、
そして、夢の中になら逃げられるから、と信じて…
350 名無しさん@ピンキー sage 2014/03/27(木) 23:51:16.92 ID:AYqx/RnX
ごめんなさいここで一度中断です。消化不良で申し訳ないです。
NGは...でお願いします。
自分の自家発電にお付き合いいただきありがとうございました。
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