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魔女伝説 Catastorphe.II 死への渇望
829 名前:FBX ◆4gA1RyNyf. :2006/07/02(日) 23:17:11 ID:zHzDIuBq
よし・・・
まだまだ忙しいが、息抜きに書いておくか・・・
831 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/02(日) 23:23:58 ID:zHzDIuBq
Catastorphe.II 死への渇望
「もう・・・ダメなんだ」
強風が吹き荒れるその場所に、彼女は呆然と立っている。
何度ここに来ただろうか。
何度ここで一歩踏み出そうとしたのか。
そして、何度それを躊躇したのだろうか。
やはり彼女も人間。
その「一歩」を踏み出すことの意味を理解しているが故に、恐怖する。
「っ!」
思い切って右足を上げる。
だが。
「ぅ・・・・・・ぅぅ」
嗚咽を漏らし、後ろに倒れ込む。
そう。
彼女は高層ビルの屋上のへりに立っていたのだ。
今日も、彼女は死ぬことができなかった。
「ここがすごく大事で、この性質を使った技術がたくさん・・・」
教員は熱意のこもった授業を展開している。
だが。
彼女にはそれがつまらない。
窓際に座る彼女は校庭にその視線を投げていた。
「瀬川、この問題は?」
教員がそれに気づいたのか、彼女をあてる。
「!」
瀬川は反応し、黒板を5秒ほど眺めて・・・
「先生、問題が間違っています。そこはキルヒホッフの法則で・・・」
瀬川の答えは5分、10分・・・結局30分を費やした。
とうてい学校で習うとは思えない知識で問題に答える。
そう、彼女は俗に言う天才。
832 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/02(日) 23:29:50 ID:zHzDIuBq
小学校に上がったころには、既に三角関数を学んでいた。
語学はネイティブ並、暗記力は超弩級・・・
彼女は自他共に認める天才であった。
しかしそんな彼女を責める者は誰一人としていなかった。
他の者と異なる者は排除されるが日本社会。
彼女はそれすら理解し、周囲に根回しをきちんと行っていたのだ。
「・・・よって答えは5Vです」
「・・・・・・」
唖然とする教員。
瀬川はしまった、と思う。
この教員は今年初めて教員に就く若手。
ついついいつものノリでやってしまった。
「き、君・・・一体?」
「・・・忘れてください・・・」
瀬川はため息をつき、教員にそう言う。
「いや、しかし――」
「なぁに、別にいいじゃないですか。瀬川さんは勉強家なんですよ先生」
学級委員の男子生徒が瀬川をサポートする。
「う・・・む・・・」
一応初任であり、この学校の性質を理解していないために教員は渋々次へ進む。
黒板に向き直ると、再び板書を始める。
その隙に男子生徒は瀬川の方を向き、軽くジェスチャーをする。
瀬川はそれに答えた。
833 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/02(日) 23:36:42 ID:zHzDIuBq
(・・・きちんと周囲の事も考えなきゃ)
瀬川は自責の念に駆られた。
瀬川 翔子。
ごく普通のサラリーマンの家庭に生まれた彼女だが、天賦の何かを持っていた。
それこそが彼女の脳。
常人ならざる思考力を持つ彼女は、決してその才におぼれることは無かった。
それどころかその才を周囲の為に活かそうとすらしていた。
(もし私一人が秀でているのなら、周囲の役に立たないと!)
勉強が苦手な友達がいれば、惜しまずにその知恵を授けた。
集団行動で難しい局面を迎えれば、まさしく臨機応変にその才を発揮した。
友達がいじめられるようなことがあれば、その子にも自分にも害が来ない形で解決した。
あらゆる方面で彼女は天才であったのだ。
・・・しかし。
(・・・そろそろ飽きてきた・・・かな)
校庭を眺めながら、翔子は思案にふける。
「では今日はここまで」
「きりーつ」
「礼!」
周りの生徒が礼をする中、翔子は校庭をひたすら眺めていた。
(私だけこんなのって不公平だよね)
「翔ちゃん」
「・・・」
「翔ちゃん?」
「あ・・・、何?」
翔子はようやく気づいて返事をした。
834 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/02(日) 23:40:56 ID:zHzDIuBq
「やっちゃったねー」
「うん。すっかり忘れてたんだよ」
「ずっと校庭見てたけど、何考えてたの?」
「んー・・・」
言うべきか少々悩む翔子。
「色恋沙汰?」
「まっさか・・・」
「じゃあ何よぉ」
「うーん・・・、なんだか最近、つまらないんだよねー」
「何が?」
「全部が」
「・・・」
友人は意外な顔をする。
「全部って?」
「全部よ」
悩む友人。
「具体的には?」
「授業とかご飯とか遊びとか、とにかく全部」
さらに悩む友人。
「う・・・、わかんないな・・・」
「そう? すごく簡単な事だと思うけどねぇ」
「それは翔ちゃんが天才だからだよ」
「それ、やめてよ・・・」
「あ、ごめん・・・」
翔子は天才呼ばわりされるのが好きではなかった。
自分があたかも常人でないように聞こえるからだ。
「・・・ねぇ」
「うん?」
「死んだら、そこには何があるのかな」
「え?」
「死んだらどうなるのかな、人間って」
「しょ、翔ちゃん・・・?」
835 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/02(日) 23:48:04 ID:zHzDIuBq
「考えたことあるでしょ? こういうこと」
「う、うん・・・」
「どう思う?」
「どうって・・・。やっぱり怖いと思うよ」
「それは死ぬまでの感情でしょ」
翔子は死ぬまでに思う事を考えている訳ではなかった。
死んだ後の事を考えていたのだ。
「どういうこと?」
「死ぬのが怖い っていうのは、生きている時の事でしょ?」
「うん」
「じゃあ死んだ後には何があると思う?」
「死んだ後・・・」
「皐月、あなたが死んだら・・・あなたはどこに行くと思う?」
「・・・わかんないよ」
「そうよね。私もそう」
「なーんだ」
皐月は安心した笑顔で翔子を見ていた。
「翔ちゃんにも分からないこと、あるんじゃん!」
「私は全知全能じゃないよ」
翔子はあきれたように言った。
「そんなことないよぉ、私にとっては全知全能だよ」
「もう・・・」
そこに、次の授業の教員が登場した。
帰宅した翔子は、自分の机に向かって考える。
・・・死。
それは何か。
何故発生するのか。
生と真逆の意味であるという認識が一般だが、本当にそうか。
経験して分かるものなのか。
「・・・そっか」
翔子は立ち上がる。
「試せばいいじゃん」
836 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/02(日) 23:58:13 ID:zHzDIuBq
エアコンを消し、翔子は外出した。
「・・・あの子・・・」
高層ビルの屋上から翔子を見る人影。
「・・・魔女の才能があるわねぇ」
ほくそ笑むと、背後に暗黒の空間が発生し、そこに消えた。
(どこにしようか・・・)
翔子は繁華街をぶらついていた。
死を経験する場所を探しているのだ。
「ねぇ」
「ん・・・?」
背後から声をかけられる翔子。
振り向くと、そこには女性が立っていた。
「どこ行くの?」
「・・・あなたに関係ありますか?」
不躾な質問をしてくる艶女に、不躾に答える翔子。
「だいたい名前も名乗らずに・・・、一体なんですか」
不機嫌そうに言う。
「あら・・・失礼したわ。私は芽依というの」
「はぁ・・・」
一応は名乗った艶女。
しかし、怪しいことには変わらない。
「それで、その芽依さんが私に何のご用ですか?」
「ちょっとお話でもしない?」
「私はこれでも忙しいんです。それじゃ」
踵を返し、去ろうとする翔子。
「・・・どのビルがいいかしらねぇ」
「!!」
芽依はニヤニヤしながらそう言った。
「・・・ここなんかいいんじゃないかしら」
そこは60階の高さを誇る有名な建築物であった。
翔子はいつの間に連れてこられたのかわからず、目をこすっていた。
「え・・・ええ?」
ここはそのビルの屋上。
芽依は強風をものともせず、普通に立っている。
だが翔子はそうもいかず、ふらつく。
「ねぇ。あなた、死にたいんでしょ」
837 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 00:05:02 ID:zHzDIuBq
「え・・・」
その瞬間、翔子の頭はあらゆる記憶をフラッシュバックさせた。
学校で死について考察したこと。
皐月にそれを話したこと。
自宅で「死を体験しよう」と考えたこと。
「あ・・・あああ・・・」
途端に恐怖が翔子を駆けめぐり、翔子は膝を地面につく。
「ふふ・・・、怖くなった?」
「死、死ぬ・・・」
「そう。あなたは死を望んでいたんでしょ」
「う、嘘・・・。そんなこと、な」
「あるわ。そうでなきゃ私はあなたに話しかけなかったもの」
「・・・」
翔子は膝を震わせ、ひたすら恐怖している。
「ねぇ」
顔を上げ、芽依を凝視する。
「体験させてあげようか」
「・・・!!」
目の前の芽依に、翔子の恐怖はいよいよ高まる。
「私が死を体験させてあげようか」
「ひ・・・」
恐怖に引きつる翔子の顔。
芽依は嬉しそうに微笑みながら、翔子の顔を見つめる。
「どうするの? 体験したいんでしょ」
「し・・・、したいけど!!」
「けど?」
「・・・怖い・・・」
「怖いんだ・・・じゃあ」
「あっ!?」
次の瞬間、翔子の身体は宙に浮いていた。
芽依の髪が翔子を縛り、空中に浮かせたのだ。
「あ、あなた一体・・・!」
翔子は必死に声を上げる。
「私は芽依。刻淫の魔女よ」
「え・・・」
「怖いなら私が踏み出させてあげる」
838 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 00:11:11 ID:4ODtieeC
翔子を縛ったまま、屋上の縁へと歩く芽依。
「い、いや・・・!」
翔子の身体の下は・・・
はるか彼方に、人々が歩き回る地上が見えた。
「んふ・・・、その恐怖に染まった表情。だぁいすきよ」
「あ・・・ああああ・・・」
「それじゃ、死ね」
芽依は翔子の拘束を解く。
「あっ」
自由になった翔子の身体には、重力という強大な力がかかり・・・
「いやあああああああああああああああああああああああああ」
翔子はその力に絡め取られ、急速に落下していった。
「・・・上手くいったわねー」
「ええ、思ったより」
「それじゃ、予定通りこの天才少女は・・・」
「もちろん。植え付けるわ」
「楽しみね・・・」
横たわる翔子の身体を前に、二人の異形の魔女がほくそ笑んでいた。
(う・・・)
ゆっくりと身体を起こそうとする翔子。
だが。
(動け・・・ない?)
動かそうとしても動かない。
というより、むしろ・・・
(身体の感覚が無い・・・)
今度は目を開けようとしてみる。
(何も見えない? ・・・いや、目が開いてないのかしら)
あくまで冷静に考える翔子の思念。
839 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 00:19:42 ID:4ODtieeC
(声は・・・)
いつも通り、皐月に話しかけるようなイメージで声を出そうとする。
(でない・・・)
声は出なかった。
(ということは)
翔子は結論付ける。
(・・・これが・・・死)
目が開けられない翔子には周りに何があるか分からない。
とにかく暗黒の世界が周囲に広がっているようにしか感じられない。
(私・・・死んだ?)
「そうよ」
(!)
どこからか、女性の声が聞こえる。
「あなたは死んだ。死を体験したいという、安直な理由でね」
(そんな・・・)
途端に悲しくなる翔子。
もう皐月にも会えない。
学校にも行けない。
自分の家にも帰れない。
そういった悲嘆の念が、翔子の中にこみ上げてきた。
「悲しいの?」
(・・・当然でしょ・・・)
「そうかしら」
(あなたは何なの? 死んだ人なの?)
「違うわ。私は人間じゃないもの」
(死の世界があるなら、人間じゃない人間もいるのね)
「そんなことより。気持ちいいでしょ? この世界」
(え?)
「何も無い。何も聞こえない。何も見えない。つめたぁい世界」
(悲しい世界ね)
「そうかしら。誰とも会う必要も無いし、話す必要もないわ」
(・・・一人で思案に耽ることができるってこと?)
「流石、天才さんね」
(天才なんて言わないで。私は普通の人間でいたいのよ)
840 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 00:27:32 ID:4ODtieeC
「でも考えてみて。あなたみたいに頭の良い子にとって、こんな
静寂の世界は・・・。素晴らしいものでしょう?」
(・・・うん)
翔子は、確かにそう考えていた。
時間は無限ではないし、必ずどこかで物音がしているものだ。
それが人間の世界。
人間の世界に完全なる静寂など存在しないのだ。
そして翔子は自分が思案に耽る間は、静寂を欲した。
無意識のうちに欲していた。
「ここならあなたの思っていた事が全部できる」
(・・・)
「感覚が無いから、本を読むとかはできないけど・・・
あなたに本なんて不要な代物でしょ」
(確かに)
翔子の脳は視覚からの入力を全て記憶する。
一度読めば、本などは不要だった。
「ね? あなたにピッタリの世界なのよ・・・。でも残念。
今日はもう時間よ。また死んでね」
その声は茶目っ気たっぷりにそう言うと、翔子の意識は沈んでいった。
「ん・・・」
目を開くと、見えたのは自分の部屋の天井。
「あれ?」
翔子は混乱する。
自分はさっきまで死んでいたのではないか・・・?
「・・・おかしいな」
841 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 00:37:39 ID:4ODtieeC
(――何が?)
「だ、誰!」
頭に響く女の声に翔子は驚く。
慌てて部屋全体を見回すが・・・何もいない。
「どこにいるの! 出てきなさい!!」
(それは無理な相談よ)
「何を・・・」
(だって、あなたの中にいるんだもの)
「嘘・・・」
翔子には信じられない。
自分の中に別な人格がいる。
そのような事など考えられなかった。
(あ、考えられないというのはおかしいわね)
(考えられないというのはおかしい? どうして?)
「なっ・・・」
(ふふふ・・・、あなたの中にいるんだもの。考えてる事は読めるわ)
「そんな・・・」
(ま、これからよろしくね。私はアイリ)
「ちょっと・・・」
(いいじゃないの。あんまり考えると病気になるわよ)
翔子はしぶしぶと眠りに就いた。
次の日。
今度は翔子は学校の屋上にいた。
柵によりかかり、校庭を見下ろす。
「・・・」
何かを期待しているような目で、下を見る。
(また行きたいんでしょ)
「うん」
適応力が高かったのか、翔子はアイリの存在を受け入れていた。
(死にたいんでしょ)
「・・・うん」
その言い方にはまだ躊躇があった。
昨日の経験は確かに「死」であったが、それは強制的なものだった。
芽依という怪しい女性によって与えられた――
842 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 00:43:53 ID:4ODtieeC
(どうして死にたいなんて思うようになったの?)
「試行錯誤の果てよ」
(知識と理論を追求した結果ってこと?)
「わかりやすくはそうね」
(怖くない?)
「・・・怖い」
確かに死にたい、もといあの空間に行きたいが、やはり怖い。
それが翔子の内心である。
(じゃあ、私が代わりにあなたを殺してあげる)
「え?」
(自分で死ぬのが怖いんでしょ)
「・・・うん」
(それならあなたの身体を私が動かしてあげる。そうすれば、あなたは勝手に死ぬ)
「か、勝手にって・・・」
(私が代わりに死なせてあげるって言ったじゃない)
「・・・」
そのアイリの言葉は、とても魅力的に聞こえた。
恐怖に震える自分の代わりに自分を殺してくれる。
とても、とても魅力的。
「お願いするわ」
翔子の決断は速かった。
(それじゃ、力を抜いて)
言われたとおりにすると・・・
「あ?」
翔子の腕が勝手に持ち上がり、頭をかく。
(ほら、私が代わりに動かしてるの。わかる?)
「うん」
(私は弱いから、あなたの意志があるとダメなの。力を抜いて、リラックスすれば大丈夫)
翔子はアイリに動かされ、屋上の柵を乗り越える。
(行くよ?)
「・・・ああ・・・・・・」
やはり恐怖に震える。
(ふふふ・・・、怖いよね。普通そうだよ。良かったね、普通で)
「!」
その言葉を聞く頃には、翔子の身体は宙に投げ出されていた。
あの魅力的な声に誘われて赴く死の空間。
暗黒と静寂が支配する、翔子にとって夢のような空間。
843 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 00:54:41 ID:4ODtieeC
経験すればするだけ、深みにはまっていく・・・
そう、彼女の経験する「死」はまさに麻薬であった。
そして、何回目だろうか。
最初は学校の屋上。
やがて市役所の屋上。
次は高層ビルの屋上。
今、翔子が立つのは・・・
日本一高いビル、高度296mの横浜ランドマークタワー。
その縁に翔子は立ち、アイリと会話をしていた。
(ここが一番高いビル?)
「うん」
回数を重ねていくうち、翔子は屋上の強風にも慣れていた。
突風にも驚く事なく、堂々と立ちつくす。
(・・・ここから落ちたら・・・、さぞ気持ちよく死ねるでしょうね)
「・・・はぁ・・・」
翔子は熱を含んだため息をつく。
(んふふふ、変態さん)
翔子の大腿からは濃密な愛液が垂れていた。
そう、翔子は高所からの死を重ねるたび、死の恐怖に快楽を感じる変態的な性癖を持ったのだ。
「うん・・・、あたしは・・・変態でもいいよぉ」
いつしか翔子の瞳は濁っていた。
アイリと出会ったばかりの頃は澄んだ色をしていたが、死の経験を重ねるたびに・・・
「アイリが来てから、あたしは変わったんだよ・・・」
右手で淫の穴をまさぐり、左手で胸をもむ。
(死って、気持ちいいものだもの。それでいいのよ)
「アイリもだいぶ強くなったんでしょ?」
(ええ。翔子のおかげよ)
脳内のアイリがそう言うと、翔子の右手の動きが変わる。
ベテランの淫女のような手つきに変わったのだ。
「あ、ふあ・・・!!」
(これはお礼よ・・・)
誰もいない屋上に、風の音と翔子の淫音が木霊する。
844 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 00:58:51 ID:4ODtieeC
「気持ちいい・・・」
(そろそろ逝く?)
そのアイリの声と同時に、地面に灰色の魔法陣がうっすらと浮かび上がる。
「うん・・・」
幸せそうな表情でアイリに答える。
(今まで言わなかったけど・・・)
「あぁん・・・なぁに・・・」
(あと一回逝けば・・・)
魔法陣が濃くなる。
「あと一回・・・?」
右手がせわしなく動く。
左手の動作が速まる。
(翔子はあたしの物になる)
瞬間、翔子の両足はビルの屋上から離れていた
845 名前:FBX ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 01:00:07 ID:4ODtieeC
次の部分からは少々グロ描写らしき物が含まれます。
コテにアルファベット大文字のGを入れ、
FBXG@魔女伝説◆----
としますので、苦手な方はスルーお願いします。
リアルで見ていらっしゃる方を考慮し、少し時間を開けてから投下します。
846 名前:FBXG@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 01:15:16 ID:4ODtieeC
「あああああああああああああああああああーーーーーッ」
翔子は叫びながら落ちていく。
彼女は、この落下する瞬間すら楽しんでいた。
「落ちる! 落ちる! あ、あたし、落ちてるよぉーーーーーーーーー!!!!」
深夜の横浜に、翔子の絶叫が響く。
(そう! どんどん落ちるわ!! そして地面に墜落した時、あなたは私の物になる)
どんどん近づく地面。
294mという高さは、重力加速度を考えればすぐに落下しきる。
この短い時間こそが、翔子の最高の快楽になるのだ。
「あっ、あっ、も、もう少し! もう少しぃ・・・!!」
(さぁ、死になさい!!)
50m。
30m。
10m。
5,4,3,2・・・
「イックゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!」
瞬間、翔子は人間として最後の絶頂に到達した。
天から墜ちた彼女が行き着いたは、快楽というなの天。
グシャアアア・・・
翔子が墜落した音が、誰もいない道路に広がる。
翔子を構成する物体が、脳が、目が、胃が心臓が、骨が・・・
あらゆる彼女の身体のパーツが粉砕され、周囲に飛び散った。
847 名前:FBXG@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 01:24:44 ID:4ODtieeC
粉々に粉砕された翔子。
だが、周囲に飛び散ったそれぞれはすぐに落下地点に集まりだした。
そして飛沫の一滴一滴がくっつき、大きくなっていく。
その地面には・・・灰色の魔法陣。
今や魔法陣はくっきりと描かれており、アイリの力が増大したことが分かる。
やがて全ての翔子の飛沫が集まると、魔法陣が強く輝く。
翔子の飛沫は一つの球体となり、魔法陣の上に浮かんでいた。
その肉色の球体からは、とても翔子だったとは思えない。
魔法陣から無数の触手が現れると、肉の球体に突き刺さる。
しかし、ただ刺さっただけではなく、何かが触手から注ぎ込まれていた。
翔子だった球体は、肉色から灰色に変わっていく。
そう、それはまさしく翔子を構成していた物質が変質させられていることだ。
触手はひたすら何かを注ぎ続け・・・
翔子の球体が完全に灰色になると、そのまま肉球の中に入り込んでいった。
直後、ぐちゃ、ぐちゃという粘液質の音と共に球体が蠢き始める。
徐々に人型に変わっていくと、元の翔子の顔が現れた。
「・・・」
すぐに球体は人間の形に戻る。
・・・が、その肌の色は灰色である。
まるで映画に出てくるゾンビ、という表現が正しいくらいだった。
完全に人間の形になると、翔子は目を開いた。
そして邪悪な笑みを作ると、その場からかき消えていった。
翌日。
「翔ちゃん、おっはよ」
校門の前で皐月が挨拶してくる。
「あ、おはよ」
848 名前:名無しさん@ピンキー :2006/07/03(月) 01:26:18 ID:4FUkY5tB
続きに期待。俺の触手も立ちっぱなしww
849 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 01:31:17 ID:4ODtieeC
何気なく挨拶を返す。
しかし、この親友は翔子の変化にいち早く気づこうとしていた。
「あら? 翔ちゃん、なんか・・・胸、大きくなったんじゃ?」
「え? そんなことないよ」
「うっそぉー」
そういって翔子の胸に手を出す皐月。
だが。
ぐちゃり、という嫌な感触が皐月の手に走った。
「え?」
「・・・」
胸を握ったはずの手は、胸を文字通り握りつぶしてしまった。
「うふふ・・・」
目の前の皐月に邪な笑みを向ける翔子。
「な、何・・・どうしたの翔ちゃん!」
翔子の心配をする皐月。
「あのねぇ・・・」
「ごめん、痛かったでしょ、ごめん!」
平謝りする。
だが翔子は痛みなど感じていなかった。
「痛くなんてないわ」
「嘘・・・、そんなことないでしょ」
「本当よ。だって私、痛覚なんて無いもの」
「痛覚が無いんだぁ・・・」
「うん」
「・・・痛覚? 痛みを感じる神経が?」
「そうよ」
ようやく異変に気づく皐月。
翔子は周囲に誰もいない路地へと皐月を誘導しながら歩いていた。
周りに人は誰もいない。
「あたしね。死んじゃったんだ」
「う、嘘・・・でしょ・・・」
「ほんと。横浜のあそこから飛び降りたんだよ」
「・・・・・・」
「そしたらね」
背後は袋小路。
背中に壁を感じ、皐月は固まる。
850 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 01:42:07 ID:4ODtieeC
「あたし、死んじゃったんだけど・・・」
ゴクリと唾を飲む皐月。
「生き返ったわ。魔女として、ね!」
翔子は口を大きく開き、紺色のガスを吐いた。
「うわ!?」
皐月は驚くも、背後に壁、正面に翔子という状況のために何もできない。
結果的に翔子の毒息を吸い込んでしまった。
「ゴホッゴホッ・・・」
「どうかしら。あたしの毒の息・・・」
アイリと融合し、死を司る魔女となった翔子。
そんな彼女にとって毒息を吐くことくらいは朝飯前だった。
「放っておけば死ぬわよ」
「そ、そんな・・・ゴホッゴホッ・・・」
「ま、病院に行っても死ぬけどね。血清が無い毒だもの」
「ひ、ひどい・・・」
大量の毒素を吸い込んだ皐月は、今にも死にそうな顔色になっていた。
「あたしは死んだけど、生き返ったわ。魔女として。もう人間じゃないの。
それに、あたしはもう死なない。永遠の命を得たのよ・・・」
立っていることすら厳しくなった皐月は、尻餅をつくように地面に崩れる。
「死者は生者を蝕む毒を吐くわ。そしてやがて生者は死者に・・・。
あたしは死者だからね。生者である皐月にとってあたしの息は猛毒よ」
「・・・」
もはや話す体力も無い皐月。
翔子の毒は、確実に皐月を死へと誘っている。
「このままだとあなたは死ぬわ。あたしみたいに生き返ることはできない」
皐月の身体は震えていた。
死への恐怖か、あるいは毒による症状か・・・
「でもね。あたしは皐月が好き。死なせたくないわ」
涙らしき水滴を落とす皐月。
「あなたを死者にしてあげる。死人じゃないわ。死者」
翔子の言う「死人」とは、いわゆる死体のことだった。
つまり死者は・・・
「あたしと同じ・・・って訳にはいかないけど、近い身体にしてあげる。
永遠の命を得て、あたしと一緒に生きるのよ。死にたくないでしょ?」
その問いに、皐月は確かに頷いた。
852 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 01:52:05 ID:4ODtieeC
「じゃ、話は決まりね」
翔子が言うと、彼女の服を突き破り、翔子の身体から触手が生えてきた。
触手はすぐに皐月を絡め取る。
「全身にあたしの体液を注ぎ込むの。そうすれば死者になれる」
皐月を絡め取った触手とは別に、翔子の秘所から粘液にまみれた触手が現れる。
それらの触手は皐月の秘所、口、耳、乳首に接続される。
「さ、受け取って。あたしからの愛の証。・・・くふああぁぁぁ・・・」
翔子の艶めかしい声と同時に蠕動運動を始める股間からの触手。
それは確かに、翔子の体液を皐月に流し込んでいた。
触手がうねるたび、皐月からは生気が失われていく。
死者の体液はそれ自体に生者の生気を奪う効力がある。
翔子は皐月の生気を奪い、より妖艶な肉体と強力な力を得る。
皐月は翔子の体液により、人間としての時間を失い死者となる。
皐月の身体は青白くなり、やがて・・・
心臓が止まった。
翔子は皐月を絡め取っている触手を外す。
「うふ・・・」
股間に手を持って行き、その粘液をすくって嘗める。
「あたしの毒、最高ね・・・」
翔子の毒の体液は、死者にとってはこの上ない味。
自身のものでも当然であった。
「さ、起きて・・・」
翔子の股間の触手が、倒れている皐月の股間と繋がる。
すると皐月は非人間的な動きで立ち上がった。
手を使わずに立ち上がったのだ。
「しょ・・・う・・・こ・・・」
皐月の口からわずかに声が漏れた。
虚ろな彼女の目からは、何の意志も感じられない。
「ん? ちょっと足りなかった・・・かな?」
翔子は思案に耽るような表情になると、皐月の股間に再び毒液をはき出す。
すると・・・
「翔子・・・」
今度ははっきりとした声になっていた。
にやり、と微笑む翔子。
「皐月。あなたはこれで永遠の命を得たわ」
こくりと頷く皐月。
「手始めに他の生者を襲って生気を奪いなさい。血を吸ってもいいし、SEXでもいいわ。
相手の体液に触れれば生気を吸収できるから。毒も有効利用しなさい」
「うん・・・」
その返事と共に、皐月の身体は変化し始めた。
853 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 01:55:25 ID:4ODtieeC
ぐちゃぐちゃと、肉がこすれるような粘液質のような音が、同時に聞こえる。
青白い彼女の身体にある二つの果実が、徐々に熟していく。
腰もくびれ、大人の体型へと変わっていくのだ。
皐月自身は快楽を感じているようで、青白い顔ながら幸せそうな表情だ。
やがて音が収まると、皐月の肌の色が変化して服のようになった。
翔子の目の前にいるのは、世にも美しい絶世の・・・
女の死者であった。
854 名前:FBX ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 02:01:13 ID:4ODtieeC
はい。
Catastorphe.II、これにて閉幕。
死を題材に取り上げるのは難しいですね。
エロと死って、直接的に関係無いですから。
できるだけ無理が無いように繋いだつもりですが、なかなか・・・
一応私の設定では、死者=ゾンビです。単純に。
ただ、バイオハザードみたいなのじゃなくて・・・
完全に人間の形をしていて、傍目には全く見分けがつきません。
ただしどの個体もが最高の肉体と美貌を持ちます。
死臭なんか持っての他。
彼女たちの糧となるのは生者の体液だから、生者を誘う香りがします。
しかしその香りに誘われたら最後。
生者は二度と生きて立ち上がることはできません。
・・・あぁ、気に入った女性なら話は別ですが。
濃厚なレズプレイの後、その女性は・・・
新たな死者となり、自分を襲った使者と共に生者を求めることでしょう。
皆さんも女性にはご注意を。
魔女か、はたまた・・・死者かもしれませんよ(笑
それでは・・・
(世にも奇妙な物語:タ○リ風)
#横浜某タワーらしきこと書いてますが、この物語はフィクションであります。
#悪意なんてこれっぽっちも無いのでよろしくw
よし・・・
まだまだ忙しいが、息抜きに書いておくか・・・
831 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/02(日) 23:23:58 ID:zHzDIuBq
Catastorphe.II 死への渇望
「もう・・・ダメなんだ」
強風が吹き荒れるその場所に、彼女は呆然と立っている。
何度ここに来ただろうか。
何度ここで一歩踏み出そうとしたのか。
そして、何度それを躊躇したのだろうか。
やはり彼女も人間。
その「一歩」を踏み出すことの意味を理解しているが故に、恐怖する。
「っ!」
思い切って右足を上げる。
だが。
「ぅ・・・・・・ぅぅ」
嗚咽を漏らし、後ろに倒れ込む。
そう。
彼女は高層ビルの屋上のへりに立っていたのだ。
今日も、彼女は死ぬことができなかった。
「ここがすごく大事で、この性質を使った技術がたくさん・・・」
教員は熱意のこもった授業を展開している。
だが。
彼女にはそれがつまらない。
窓際に座る彼女は校庭にその視線を投げていた。
「瀬川、この問題は?」
教員がそれに気づいたのか、彼女をあてる。
「!」
瀬川は反応し、黒板を5秒ほど眺めて・・・
「先生、問題が間違っています。そこはキルヒホッフの法則で・・・」
瀬川の答えは5分、10分・・・結局30分を費やした。
とうてい学校で習うとは思えない知識で問題に答える。
そう、彼女は俗に言う天才。
832 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/02(日) 23:29:50 ID:zHzDIuBq
小学校に上がったころには、既に三角関数を学んでいた。
語学はネイティブ並、暗記力は超弩級・・・
彼女は自他共に認める天才であった。
しかしそんな彼女を責める者は誰一人としていなかった。
他の者と異なる者は排除されるが日本社会。
彼女はそれすら理解し、周囲に根回しをきちんと行っていたのだ。
「・・・よって答えは5Vです」
「・・・・・・」
唖然とする教員。
瀬川はしまった、と思う。
この教員は今年初めて教員に就く若手。
ついついいつものノリでやってしまった。
「き、君・・・一体?」
「・・・忘れてください・・・」
瀬川はため息をつき、教員にそう言う。
「いや、しかし――」
「なぁに、別にいいじゃないですか。瀬川さんは勉強家なんですよ先生」
学級委員の男子生徒が瀬川をサポートする。
「う・・・む・・・」
一応初任であり、この学校の性質を理解していないために教員は渋々次へ進む。
黒板に向き直ると、再び板書を始める。
その隙に男子生徒は瀬川の方を向き、軽くジェスチャーをする。
瀬川はそれに答えた。
833 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/02(日) 23:36:42 ID:zHzDIuBq
(・・・きちんと周囲の事も考えなきゃ)
瀬川は自責の念に駆られた。
瀬川 翔子。
ごく普通のサラリーマンの家庭に生まれた彼女だが、天賦の何かを持っていた。
それこそが彼女の脳。
常人ならざる思考力を持つ彼女は、決してその才におぼれることは無かった。
それどころかその才を周囲の為に活かそうとすらしていた。
(もし私一人が秀でているのなら、周囲の役に立たないと!)
勉強が苦手な友達がいれば、惜しまずにその知恵を授けた。
集団行動で難しい局面を迎えれば、まさしく臨機応変にその才を発揮した。
友達がいじめられるようなことがあれば、その子にも自分にも害が来ない形で解決した。
あらゆる方面で彼女は天才であったのだ。
・・・しかし。
(・・・そろそろ飽きてきた・・・かな)
校庭を眺めながら、翔子は思案にふける。
「では今日はここまで」
「きりーつ」
「礼!」
周りの生徒が礼をする中、翔子は校庭をひたすら眺めていた。
(私だけこんなのって不公平だよね)
「翔ちゃん」
「・・・」
「翔ちゃん?」
「あ・・・、何?」
翔子はようやく気づいて返事をした。
834 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/02(日) 23:40:56 ID:zHzDIuBq
「やっちゃったねー」
「うん。すっかり忘れてたんだよ」
「ずっと校庭見てたけど、何考えてたの?」
「んー・・・」
言うべきか少々悩む翔子。
「色恋沙汰?」
「まっさか・・・」
「じゃあ何よぉ」
「うーん・・・、なんだか最近、つまらないんだよねー」
「何が?」
「全部が」
「・・・」
友人は意外な顔をする。
「全部って?」
「全部よ」
悩む友人。
「具体的には?」
「授業とかご飯とか遊びとか、とにかく全部」
さらに悩む友人。
「う・・・、わかんないな・・・」
「そう? すごく簡単な事だと思うけどねぇ」
「それは翔ちゃんが天才だからだよ」
「それ、やめてよ・・・」
「あ、ごめん・・・」
翔子は天才呼ばわりされるのが好きではなかった。
自分があたかも常人でないように聞こえるからだ。
「・・・ねぇ」
「うん?」
「死んだら、そこには何があるのかな」
「え?」
「死んだらどうなるのかな、人間って」
「しょ、翔ちゃん・・・?」
835 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/02(日) 23:48:04 ID:zHzDIuBq
「考えたことあるでしょ? こういうこと」
「う、うん・・・」
「どう思う?」
「どうって・・・。やっぱり怖いと思うよ」
「それは死ぬまでの感情でしょ」
翔子は死ぬまでに思う事を考えている訳ではなかった。
死んだ後の事を考えていたのだ。
「どういうこと?」
「死ぬのが怖い っていうのは、生きている時の事でしょ?」
「うん」
「じゃあ死んだ後には何があると思う?」
「死んだ後・・・」
「皐月、あなたが死んだら・・・あなたはどこに行くと思う?」
「・・・わかんないよ」
「そうよね。私もそう」
「なーんだ」
皐月は安心した笑顔で翔子を見ていた。
「翔ちゃんにも分からないこと、あるんじゃん!」
「私は全知全能じゃないよ」
翔子はあきれたように言った。
「そんなことないよぉ、私にとっては全知全能だよ」
「もう・・・」
そこに、次の授業の教員が登場した。
帰宅した翔子は、自分の机に向かって考える。
・・・死。
それは何か。
何故発生するのか。
生と真逆の意味であるという認識が一般だが、本当にそうか。
経験して分かるものなのか。
「・・・そっか」
翔子は立ち上がる。
「試せばいいじゃん」
836 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/02(日) 23:58:13 ID:zHzDIuBq
エアコンを消し、翔子は外出した。
「・・・あの子・・・」
高層ビルの屋上から翔子を見る人影。
「・・・魔女の才能があるわねぇ」
ほくそ笑むと、背後に暗黒の空間が発生し、そこに消えた。
(どこにしようか・・・)
翔子は繁華街をぶらついていた。
死を経験する場所を探しているのだ。
「ねぇ」
「ん・・・?」
背後から声をかけられる翔子。
振り向くと、そこには女性が立っていた。
「どこ行くの?」
「・・・あなたに関係ありますか?」
不躾な質問をしてくる艶女に、不躾に答える翔子。
「だいたい名前も名乗らずに・・・、一体なんですか」
不機嫌そうに言う。
「あら・・・失礼したわ。私は芽依というの」
「はぁ・・・」
一応は名乗った艶女。
しかし、怪しいことには変わらない。
「それで、その芽依さんが私に何のご用ですか?」
「ちょっとお話でもしない?」
「私はこれでも忙しいんです。それじゃ」
踵を返し、去ろうとする翔子。
「・・・どのビルがいいかしらねぇ」
「!!」
芽依はニヤニヤしながらそう言った。
「・・・ここなんかいいんじゃないかしら」
そこは60階の高さを誇る有名な建築物であった。
翔子はいつの間に連れてこられたのかわからず、目をこすっていた。
「え・・・ええ?」
ここはそのビルの屋上。
芽依は強風をものともせず、普通に立っている。
だが翔子はそうもいかず、ふらつく。
「ねぇ。あなた、死にたいんでしょ」
837 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 00:05:02 ID:zHzDIuBq
「え・・・」
その瞬間、翔子の頭はあらゆる記憶をフラッシュバックさせた。
学校で死について考察したこと。
皐月にそれを話したこと。
自宅で「死を体験しよう」と考えたこと。
「あ・・・あああ・・・」
途端に恐怖が翔子を駆けめぐり、翔子は膝を地面につく。
「ふふ・・・、怖くなった?」
「死、死ぬ・・・」
「そう。あなたは死を望んでいたんでしょ」
「う、嘘・・・。そんなこと、な」
「あるわ。そうでなきゃ私はあなたに話しかけなかったもの」
「・・・」
翔子は膝を震わせ、ひたすら恐怖している。
「ねぇ」
顔を上げ、芽依を凝視する。
「体験させてあげようか」
「・・・!!」
目の前の芽依に、翔子の恐怖はいよいよ高まる。
「私が死を体験させてあげようか」
「ひ・・・」
恐怖に引きつる翔子の顔。
芽依は嬉しそうに微笑みながら、翔子の顔を見つめる。
「どうするの? 体験したいんでしょ」
「し・・・、したいけど!!」
「けど?」
「・・・怖い・・・」
「怖いんだ・・・じゃあ」
「あっ!?」
次の瞬間、翔子の身体は宙に浮いていた。
芽依の髪が翔子を縛り、空中に浮かせたのだ。
「あ、あなた一体・・・!」
翔子は必死に声を上げる。
「私は芽依。刻淫の魔女よ」
「え・・・」
「怖いなら私が踏み出させてあげる」
838 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 00:11:11 ID:4ODtieeC
翔子を縛ったまま、屋上の縁へと歩く芽依。
「い、いや・・・!」
翔子の身体の下は・・・
はるか彼方に、人々が歩き回る地上が見えた。
「んふ・・・、その恐怖に染まった表情。だぁいすきよ」
「あ・・・ああああ・・・」
「それじゃ、死ね」
芽依は翔子の拘束を解く。
「あっ」
自由になった翔子の身体には、重力という強大な力がかかり・・・
「いやあああああああああああああああああああああああああ」
翔子はその力に絡め取られ、急速に落下していった。
「・・・上手くいったわねー」
「ええ、思ったより」
「それじゃ、予定通りこの天才少女は・・・」
「もちろん。植え付けるわ」
「楽しみね・・・」
横たわる翔子の身体を前に、二人の異形の魔女がほくそ笑んでいた。
(う・・・)
ゆっくりと身体を起こそうとする翔子。
だが。
(動け・・・ない?)
動かそうとしても動かない。
というより、むしろ・・・
(身体の感覚が無い・・・)
今度は目を開けようとしてみる。
(何も見えない? ・・・いや、目が開いてないのかしら)
あくまで冷静に考える翔子の思念。
839 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 00:19:42 ID:4ODtieeC
(声は・・・)
いつも通り、皐月に話しかけるようなイメージで声を出そうとする。
(でない・・・)
声は出なかった。
(ということは)
翔子は結論付ける。
(・・・これが・・・死)
目が開けられない翔子には周りに何があるか分からない。
とにかく暗黒の世界が周囲に広がっているようにしか感じられない。
(私・・・死んだ?)
「そうよ」
(!)
どこからか、女性の声が聞こえる。
「あなたは死んだ。死を体験したいという、安直な理由でね」
(そんな・・・)
途端に悲しくなる翔子。
もう皐月にも会えない。
学校にも行けない。
自分の家にも帰れない。
そういった悲嘆の念が、翔子の中にこみ上げてきた。
「悲しいの?」
(・・・当然でしょ・・・)
「そうかしら」
(あなたは何なの? 死んだ人なの?)
「違うわ。私は人間じゃないもの」
(死の世界があるなら、人間じゃない人間もいるのね)
「そんなことより。気持ちいいでしょ? この世界」
(え?)
「何も無い。何も聞こえない。何も見えない。つめたぁい世界」
(悲しい世界ね)
「そうかしら。誰とも会う必要も無いし、話す必要もないわ」
(・・・一人で思案に耽ることができるってこと?)
「流石、天才さんね」
(天才なんて言わないで。私は普通の人間でいたいのよ)
840 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 00:27:32 ID:4ODtieeC
「でも考えてみて。あなたみたいに頭の良い子にとって、こんな
静寂の世界は・・・。素晴らしいものでしょう?」
(・・・うん)
翔子は、確かにそう考えていた。
時間は無限ではないし、必ずどこかで物音がしているものだ。
それが人間の世界。
人間の世界に完全なる静寂など存在しないのだ。
そして翔子は自分が思案に耽る間は、静寂を欲した。
無意識のうちに欲していた。
「ここならあなたの思っていた事が全部できる」
(・・・)
「感覚が無いから、本を読むとかはできないけど・・・
あなたに本なんて不要な代物でしょ」
(確かに)
翔子の脳は視覚からの入力を全て記憶する。
一度読めば、本などは不要だった。
「ね? あなたにピッタリの世界なのよ・・・。でも残念。
今日はもう時間よ。また死んでね」
その声は茶目っ気たっぷりにそう言うと、翔子の意識は沈んでいった。
「ん・・・」
目を開くと、見えたのは自分の部屋の天井。
「あれ?」
翔子は混乱する。
自分はさっきまで死んでいたのではないか・・・?
「・・・おかしいな」
841 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 00:37:39 ID:4ODtieeC
(――何が?)
「だ、誰!」
頭に響く女の声に翔子は驚く。
慌てて部屋全体を見回すが・・・何もいない。
「どこにいるの! 出てきなさい!!」
(それは無理な相談よ)
「何を・・・」
(だって、あなたの中にいるんだもの)
「嘘・・・」
翔子には信じられない。
自分の中に別な人格がいる。
そのような事など考えられなかった。
(あ、考えられないというのはおかしいわね)
(考えられないというのはおかしい? どうして?)
「なっ・・・」
(ふふふ・・・、あなたの中にいるんだもの。考えてる事は読めるわ)
「そんな・・・」
(ま、これからよろしくね。私はアイリ)
「ちょっと・・・」
(いいじゃないの。あんまり考えると病気になるわよ)
翔子はしぶしぶと眠りに就いた。
次の日。
今度は翔子は学校の屋上にいた。
柵によりかかり、校庭を見下ろす。
「・・・」
何かを期待しているような目で、下を見る。
(また行きたいんでしょ)
「うん」
適応力が高かったのか、翔子はアイリの存在を受け入れていた。
(死にたいんでしょ)
「・・・うん」
その言い方にはまだ躊躇があった。
昨日の経験は確かに「死」であったが、それは強制的なものだった。
芽依という怪しい女性によって与えられた――
842 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 00:43:53 ID:4ODtieeC
(どうして死にたいなんて思うようになったの?)
「試行錯誤の果てよ」
(知識と理論を追求した結果ってこと?)
「わかりやすくはそうね」
(怖くない?)
「・・・怖い」
確かに死にたい、もといあの空間に行きたいが、やはり怖い。
それが翔子の内心である。
(じゃあ、私が代わりにあなたを殺してあげる)
「え?」
(自分で死ぬのが怖いんでしょ)
「・・・うん」
(それならあなたの身体を私が動かしてあげる。そうすれば、あなたは勝手に死ぬ)
「か、勝手にって・・・」
(私が代わりに死なせてあげるって言ったじゃない)
「・・・」
そのアイリの言葉は、とても魅力的に聞こえた。
恐怖に震える自分の代わりに自分を殺してくれる。
とても、とても魅力的。
「お願いするわ」
翔子の決断は速かった。
(それじゃ、力を抜いて)
言われたとおりにすると・・・
「あ?」
翔子の腕が勝手に持ち上がり、頭をかく。
(ほら、私が代わりに動かしてるの。わかる?)
「うん」
(私は弱いから、あなたの意志があるとダメなの。力を抜いて、リラックスすれば大丈夫)
翔子はアイリに動かされ、屋上の柵を乗り越える。
(行くよ?)
「・・・ああ・・・・・・」
やはり恐怖に震える。
(ふふふ・・・、怖いよね。普通そうだよ。良かったね、普通で)
「!」
その言葉を聞く頃には、翔子の身体は宙に投げ出されていた。
あの魅力的な声に誘われて赴く死の空間。
暗黒と静寂が支配する、翔子にとって夢のような空間。
843 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 00:54:41 ID:4ODtieeC
経験すればするだけ、深みにはまっていく・・・
そう、彼女の経験する「死」はまさに麻薬であった。
そして、何回目だろうか。
最初は学校の屋上。
やがて市役所の屋上。
次は高層ビルの屋上。
今、翔子が立つのは・・・
日本一高いビル、高度296mの横浜ランドマークタワー。
その縁に翔子は立ち、アイリと会話をしていた。
(ここが一番高いビル?)
「うん」
回数を重ねていくうち、翔子は屋上の強風にも慣れていた。
突風にも驚く事なく、堂々と立ちつくす。
(・・・ここから落ちたら・・・、さぞ気持ちよく死ねるでしょうね)
「・・・はぁ・・・」
翔子は熱を含んだため息をつく。
(んふふふ、変態さん)
翔子の大腿からは濃密な愛液が垂れていた。
そう、翔子は高所からの死を重ねるたび、死の恐怖に快楽を感じる変態的な性癖を持ったのだ。
「うん・・・、あたしは・・・変態でもいいよぉ」
いつしか翔子の瞳は濁っていた。
アイリと出会ったばかりの頃は澄んだ色をしていたが、死の経験を重ねるたびに・・・
「アイリが来てから、あたしは変わったんだよ・・・」
右手で淫の穴をまさぐり、左手で胸をもむ。
(死って、気持ちいいものだもの。それでいいのよ)
「アイリもだいぶ強くなったんでしょ?」
(ええ。翔子のおかげよ)
脳内のアイリがそう言うと、翔子の右手の動きが変わる。
ベテランの淫女のような手つきに変わったのだ。
「あ、ふあ・・・!!」
(これはお礼よ・・・)
誰もいない屋上に、風の音と翔子の淫音が木霊する。
844 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 00:58:51 ID:4ODtieeC
「気持ちいい・・・」
(そろそろ逝く?)
そのアイリの声と同時に、地面に灰色の魔法陣がうっすらと浮かび上がる。
「うん・・・」
幸せそうな表情でアイリに答える。
(今まで言わなかったけど・・・)
「あぁん・・・なぁに・・・」
(あと一回逝けば・・・)
魔法陣が濃くなる。
「あと一回・・・?」
右手がせわしなく動く。
左手の動作が速まる。
(翔子はあたしの物になる)
瞬間、翔子の両足はビルの屋上から離れていた
845 名前:FBX ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 01:00:07 ID:4ODtieeC
次の部分からは少々グロ描写らしき物が含まれます。
コテにアルファベット大文字のGを入れ、
FBXG@魔女伝説◆----
としますので、苦手な方はスルーお願いします。
リアルで見ていらっしゃる方を考慮し、少し時間を開けてから投下します。
846 名前:FBXG@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 01:15:16 ID:4ODtieeC
「あああああああああああああああああああーーーーーッ」
翔子は叫びながら落ちていく。
彼女は、この落下する瞬間すら楽しんでいた。
「落ちる! 落ちる! あ、あたし、落ちてるよぉーーーーーーーーー!!!!」
深夜の横浜に、翔子の絶叫が響く。
(そう! どんどん落ちるわ!! そして地面に墜落した時、あなたは私の物になる)
どんどん近づく地面。
294mという高さは、重力加速度を考えればすぐに落下しきる。
この短い時間こそが、翔子の最高の快楽になるのだ。
「あっ、あっ、も、もう少し! もう少しぃ・・・!!」
(さぁ、死になさい!!)
50m。
30m。
10m。
5,4,3,2・・・
「イックゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!」
瞬間、翔子は人間として最後の絶頂に到達した。
天から墜ちた彼女が行き着いたは、快楽というなの天。
グシャアアア・・・
翔子が墜落した音が、誰もいない道路に広がる。
翔子を構成する物体が、脳が、目が、胃が心臓が、骨が・・・
あらゆる彼女の身体のパーツが粉砕され、周囲に飛び散った。
847 名前:FBXG@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 01:24:44 ID:4ODtieeC
粉々に粉砕された翔子。
だが、周囲に飛び散ったそれぞれはすぐに落下地点に集まりだした。
そして飛沫の一滴一滴がくっつき、大きくなっていく。
その地面には・・・灰色の魔法陣。
今や魔法陣はくっきりと描かれており、アイリの力が増大したことが分かる。
やがて全ての翔子の飛沫が集まると、魔法陣が強く輝く。
翔子の飛沫は一つの球体となり、魔法陣の上に浮かんでいた。
その肉色の球体からは、とても翔子だったとは思えない。
魔法陣から無数の触手が現れると、肉の球体に突き刺さる。
しかし、ただ刺さっただけではなく、何かが触手から注ぎ込まれていた。
翔子だった球体は、肉色から灰色に変わっていく。
そう、それはまさしく翔子を構成していた物質が変質させられていることだ。
触手はひたすら何かを注ぎ続け・・・
翔子の球体が完全に灰色になると、そのまま肉球の中に入り込んでいった。
直後、ぐちゃ、ぐちゃという粘液質の音と共に球体が蠢き始める。
徐々に人型に変わっていくと、元の翔子の顔が現れた。
「・・・」
すぐに球体は人間の形に戻る。
・・・が、その肌の色は灰色である。
まるで映画に出てくるゾンビ、という表現が正しいくらいだった。
完全に人間の形になると、翔子は目を開いた。
そして邪悪な笑みを作ると、その場からかき消えていった。
翌日。
「翔ちゃん、おっはよ」
校門の前で皐月が挨拶してくる。
「あ、おはよ」
848 名前:名無しさん@ピンキー :2006/07/03(月) 01:26:18 ID:4FUkY5tB
続きに期待。俺の触手も立ちっぱなしww
849 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 01:31:17 ID:4ODtieeC
何気なく挨拶を返す。
しかし、この親友は翔子の変化にいち早く気づこうとしていた。
「あら? 翔ちゃん、なんか・・・胸、大きくなったんじゃ?」
「え? そんなことないよ」
「うっそぉー」
そういって翔子の胸に手を出す皐月。
だが。
ぐちゃり、という嫌な感触が皐月の手に走った。
「え?」
「・・・」
胸を握ったはずの手は、胸を文字通り握りつぶしてしまった。
「うふふ・・・」
目の前の皐月に邪な笑みを向ける翔子。
「な、何・・・どうしたの翔ちゃん!」
翔子の心配をする皐月。
「あのねぇ・・・」
「ごめん、痛かったでしょ、ごめん!」
平謝りする。
だが翔子は痛みなど感じていなかった。
「痛くなんてないわ」
「嘘・・・、そんなことないでしょ」
「本当よ。だって私、痛覚なんて無いもの」
「痛覚が無いんだぁ・・・」
「うん」
「・・・痛覚? 痛みを感じる神経が?」
「そうよ」
ようやく異変に気づく皐月。
翔子は周囲に誰もいない路地へと皐月を誘導しながら歩いていた。
周りに人は誰もいない。
「あたしね。死んじゃったんだ」
「う、嘘・・・でしょ・・・」
「ほんと。横浜のあそこから飛び降りたんだよ」
「・・・・・・」
「そしたらね」
背後は袋小路。
背中に壁を感じ、皐月は固まる。
850 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 01:42:07 ID:4ODtieeC
「あたし、死んじゃったんだけど・・・」
ゴクリと唾を飲む皐月。
「生き返ったわ。魔女として、ね!」
翔子は口を大きく開き、紺色のガスを吐いた。
「うわ!?」
皐月は驚くも、背後に壁、正面に翔子という状況のために何もできない。
結果的に翔子の毒息を吸い込んでしまった。
「ゴホッゴホッ・・・」
「どうかしら。あたしの毒の息・・・」
アイリと融合し、死を司る魔女となった翔子。
そんな彼女にとって毒息を吐くことくらいは朝飯前だった。
「放っておけば死ぬわよ」
「そ、そんな・・・ゴホッゴホッ・・・」
「ま、病院に行っても死ぬけどね。血清が無い毒だもの」
「ひ、ひどい・・・」
大量の毒素を吸い込んだ皐月は、今にも死にそうな顔色になっていた。
「あたしは死んだけど、生き返ったわ。魔女として。もう人間じゃないの。
それに、あたしはもう死なない。永遠の命を得たのよ・・・」
立っていることすら厳しくなった皐月は、尻餅をつくように地面に崩れる。
「死者は生者を蝕む毒を吐くわ。そしてやがて生者は死者に・・・。
あたしは死者だからね。生者である皐月にとってあたしの息は猛毒よ」
「・・・」
もはや話す体力も無い皐月。
翔子の毒は、確実に皐月を死へと誘っている。
「このままだとあなたは死ぬわ。あたしみたいに生き返ることはできない」
皐月の身体は震えていた。
死への恐怖か、あるいは毒による症状か・・・
「でもね。あたしは皐月が好き。死なせたくないわ」
涙らしき水滴を落とす皐月。
「あなたを死者にしてあげる。死人じゃないわ。死者」
翔子の言う「死人」とは、いわゆる死体のことだった。
つまり死者は・・・
「あたしと同じ・・・って訳にはいかないけど、近い身体にしてあげる。
永遠の命を得て、あたしと一緒に生きるのよ。死にたくないでしょ?」
その問いに、皐月は確かに頷いた。
852 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 01:52:05 ID:4ODtieeC
「じゃ、話は決まりね」
翔子が言うと、彼女の服を突き破り、翔子の身体から触手が生えてきた。
触手はすぐに皐月を絡め取る。
「全身にあたしの体液を注ぎ込むの。そうすれば死者になれる」
皐月を絡め取った触手とは別に、翔子の秘所から粘液にまみれた触手が現れる。
それらの触手は皐月の秘所、口、耳、乳首に接続される。
「さ、受け取って。あたしからの愛の証。・・・くふああぁぁぁ・・・」
翔子の艶めかしい声と同時に蠕動運動を始める股間からの触手。
それは確かに、翔子の体液を皐月に流し込んでいた。
触手がうねるたび、皐月からは生気が失われていく。
死者の体液はそれ自体に生者の生気を奪う効力がある。
翔子は皐月の生気を奪い、より妖艶な肉体と強力な力を得る。
皐月は翔子の体液により、人間としての時間を失い死者となる。
皐月の身体は青白くなり、やがて・・・
心臓が止まった。
翔子は皐月を絡め取っている触手を外す。
「うふ・・・」
股間に手を持って行き、その粘液をすくって嘗める。
「あたしの毒、最高ね・・・」
翔子の毒の体液は、死者にとってはこの上ない味。
自身のものでも当然であった。
「さ、起きて・・・」
翔子の股間の触手が、倒れている皐月の股間と繋がる。
すると皐月は非人間的な動きで立ち上がった。
手を使わずに立ち上がったのだ。
「しょ・・・う・・・こ・・・」
皐月の口からわずかに声が漏れた。
虚ろな彼女の目からは、何の意志も感じられない。
「ん? ちょっと足りなかった・・・かな?」
翔子は思案に耽るような表情になると、皐月の股間に再び毒液をはき出す。
すると・・・
「翔子・・・」
今度ははっきりとした声になっていた。
にやり、と微笑む翔子。
「皐月。あなたはこれで永遠の命を得たわ」
こくりと頷く皐月。
「手始めに他の生者を襲って生気を奪いなさい。血を吸ってもいいし、SEXでもいいわ。
相手の体液に触れれば生気を吸収できるから。毒も有効利用しなさい」
「うん・・・」
その返事と共に、皐月の身体は変化し始めた。
853 名前:FBX@魔女伝説 ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 01:55:25 ID:4ODtieeC
ぐちゃぐちゃと、肉がこすれるような粘液質のような音が、同時に聞こえる。
青白い彼女の身体にある二つの果実が、徐々に熟していく。
腰もくびれ、大人の体型へと変わっていくのだ。
皐月自身は快楽を感じているようで、青白い顔ながら幸せそうな表情だ。
やがて音が収まると、皐月の肌の色が変化して服のようになった。
翔子の目の前にいるのは、世にも美しい絶世の・・・
女の死者であった。
854 名前:FBX ◆4gA1RyNyf. :2006/07/03(月) 02:01:13 ID:4ODtieeC
はい。
Catastorphe.II、これにて閉幕。
死を題材に取り上げるのは難しいですね。
エロと死って、直接的に関係無いですから。
できるだけ無理が無いように繋いだつもりですが、なかなか・・・
一応私の設定では、死者=ゾンビです。単純に。
ただ、バイオハザードみたいなのじゃなくて・・・
完全に人間の形をしていて、傍目には全く見分けがつきません。
ただしどの個体もが最高の肉体と美貌を持ちます。
死臭なんか持っての他。
彼女たちの糧となるのは生者の体液だから、生者を誘う香りがします。
しかしその香りに誘われたら最後。
生者は二度と生きて立ち上がることはできません。
・・・あぁ、気に入った女性なら話は別ですが。
濃厚なレズプレイの後、その女性は・・・
新たな死者となり、自分を襲った使者と共に生者を求めることでしょう。
皆さんも女性にはご注意を。
魔女か、はたまた・・・死者かもしれませんよ(笑
それでは・・・
(世にも奇妙な物語:タ○リ風)
#横浜某タワーらしきこと書いてますが、この物語はフィクションであります。
#悪意なんてこれっぽっちも無いのでよろしくw
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