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繭子メタフォーメーション
605 繭子メタフォーメーション【0/19】 sage 2013/09/16(月) 22:15:50.43 ID:tnFyl6wp
1レスに何行書き込めるかわからないので細切れ投下でスマンです
6行×19レス分、書き上げてはいるんで
尻切れになったら連投規制にかかったと思って下さい
微エロ、蟲化
ではどうぞ
606 繭子メタフォーメーション【1/19】 sage 2013/09/16(月) 22:17:27.08 ID:tnFyl6wp
「――出動指令よ、繭子(まゆこ)ちゃん。港東二丁目に歪蟲(わいぢゅう)出現」
「ちょっ……あたし、これから中間テスト……」
「いつも通り処理しておくわ。繭子ちゃんは任務を最優先」
「そんな……せっかく覚えた公式や英単語……処理って平均点になるだけじゃん……」
「赤点脱出おめでとう。現在地はGPSで把握してる。そこから五分で到着できるわね」
「ちょっ……赤点なんて一回だけだし……美冴(みさえ)さんってば……もうっ!」
607 繭子メタフォーメーション【2/19】 sage 2013/09/16(月) 22:18:36.44 ID:tnFyl6wp
電話が切れて、ふくれ面で繭子は、肩から下ろしたナップサックにスマートホンをしまい込んだ。
ウサギのぬいぐるみ型のナップサックは繭子のトレードマークだ。
《繭子二号》と名付けたそれを背負い直して、もと来た道を戻る方向に走り出す。
「着替え」の場所が必要だった。少し戻れば交番がある。
栗色のツーテールの髪と《繭子二号》のウサ耳が揺れる。
やや吊り目の仔猫っぽい顔立ちだが、繭子自身はウサギ萌えだ。髪型もウサギをちょっぴり意識している。
608 繭子メタフォーメーション【3/19】 sage 2013/09/16(月) 22:19:58.66 ID:tnFyl6wp
セーラー服の胸は揺れない。すらりと手足の長い、恵まれた体型だが胸だけは発展途上なのだ。
交番に飛び込み、胸ポケットから出した身分証をかざしてみせた。
「緊急事態です、トイレをお借りします!」
若い警察官が目を丸くして、繭子が手にしたそれを覗き込む。
「……区立港東第二中、三年E組……?」
「違った、こっち!」
609 繭子メタフォーメーション【4/19】 sage 2013/09/16(月) 22:20:59.60 ID:tnFyl6wp
慌てて生徒証を引っ込めて、もう一枚の身分証をポケットから引っぱり出す。
警察官の証票によく似たそれは、国家公安委員会発行の――
「……歪蟲対策作戦本部?」
警察官が、さっと姿勢を正して敬礼した。
「失礼しました! どうぞ、存分にご利用下さい!」
「ありがとうございます、あの……着替えるだけですから!」
610 繭子メタフォーメーション【5/19】 sage 2013/09/16(月) 22:22:01.16 ID:tnFyl6wp
自分の名誉のために言い添えて、繭子は交番の奥のトイレに入った。
以前にも借りたことがあるから勝手はわかっている。
洋式便器の蓋を閉めて《繭子二号》を肩から下ろす。
《繭子二号》は収納部分がウサギの頭と胴体に分かれている。
胴体部分には教科書やノートなど勉強道具が入れてある(試験前でなければ教科書なんて持ち帰らないが)。
そして頭の部分には、「歪蟲対策作戦本部」の任務に必要な「秘密兵器」が収めてあった。
611 繭子メタフォーメーション【6/19】 sage 2013/09/16(月) 22:23:13.39 ID:tnFyl6wp
そう――兵器である。それも「生物兵器」だ。極めてキケンな。
スカーフを解き、脇のジッパーを上げてセーラー服を脱ぎ、下に着ていたキャミソールも脱いだ。
色白のしなやかな身体に――Aカップに収まる慎ましやかな胸。
そして、むんっ……と、たち込めるバニラに似た甘い体臭。
「はあっ……」と、思わず吐息をつく。自分でも頭がくらくらする。
意識するほど匂いが濃く甘くなるのだから始末が悪い。
612 繭子メタフォーメーション【7/19】 sage 2013/09/16(月) 22:24:12.82 ID:tnFyl6wp
その匂いにこそ繭子が歪蟲対策作戦本部に所属する理由が秘められているのだが。
脱いだものは丸めて《繭子二号》の胴体側に押し込む。
それから腰のホックを外し、ジッパーを下ろしてスカートを脱いだ。
黒いニーソックスに太腿の半ばまで包まれた形のいい脚。
細く締まったウエストの下、程良く丸みを帯びたヒップは白と水色の横縞のショーツに収まっている。
613 繭子メタフォーメーション【8/19】 sage 2013/09/16(月) 22:27:04.29 ID:tnFyl6wp
どきどきと胸の鼓動が早まるのを感じながら、通学靴とニーソックスを脱ぐ。
露わになった素肌から立ち上るバニラの匂いに、むせ返りそうになる。
ブラを外し、淡い桜色の乳頭を晒す。
自分以外の誰が見ているわけでもない。なのに、どうしてこんなに身体が火照るのか。
そしてショーツも脱いだ。処理済のビキニラインは綺麗に無毛であった。
しかし幼いままとは違う。なだらかな陰阜の下のその部分には薄紅色の花弁が僅かに綻んでいる。
614 繭子メタフォーメーション【9/19】 sage 2013/09/16(月) 22:29:14.75 ID:tnFyl6wp
どくんどくんどくんどくん。心臓が早鐘を打つ。
脱いだものを《繭子二号》の胴体にしまい込み、頭の収納部分のジッパーを開けてポーチを取り出す。
元は生理用品を入れていたものだ。もう繭子が生理になることはないけど。
身体が「造り変わって」しまったから。
その原因でもある存在(もの)がポーチには収まっていた。
昆虫の蛹(さなぎ)に似たモノ。ただし、人間の握り拳ほども大きい。それが三つ。
615 繭子メタフォーメーション【10/19】 sage 2013/09/16(月) 22:31:20.75 ID:tnFyl6wp
「……はあっ」と、息を吐き、蛹を一つ手にとって、ポーチを《繭子二号》に戻す。
奇妙に大きくグロテスクといっていい蛹なのに、いまの繭子には、それが愛おしく思えてしまう。
「造り変わった」のは身体ばかりではない。繭子の意識(こころ)も、奥底の部分が変えられてしまった。
待ってて、いま「蜜」を吸わせてあげる……
繭子は《解放鍵(キーワード)》を口にした。
「――《メタフォーメーション》!」
616 繭子メタフォーメーション【11/19】 sage 2013/09/16(月) 22:34:12.07 ID:tnFyl6wp
眼の奥で光が弾けた。自慰で達したときと酷似した――いや、それを凌駕する絶頂感。
身体の芯から熱いものが噴き出す。比喩ではなくそうだった。どくどくと、花弁が蜜を溢れさせる。
《解放鍵》によって「本来の繭子」が覚醒したのだ。
とめどなく蜜を湧かせる花弁に、繭子は蛹を押し当てた。
「……ひゃうっ!? んにゅいぃぃぃっ……吸われるぅぅぅっ……!?」
――そして。蛹が、急速に「成長」を始めた。
617 繭子メタフォーメーション【12/19】 sage 2013/09/16(月) 22:37:43.10 ID:tnFyl6wp
体節が伸び、その末端が新たな体節を次々と生み、一部は枝分かれして、繭子の裸身に絡みつく。
すでに綻んでいた花弁を枝の一端が押し割り、蜜にまみれた別の枝は、ぬるりと尻穴に潜り込む。
「あにゅぅぅぅっ……!?」
二条の枝が柔肌の上を這い伸び、幼げな乳房に達すると、くるりと先端が弧を描き、乳頭を覆い隠す。
背にも二筋の枝が這い、左右の肩甲骨の上まで達すると、
――ぶわっ、と、扇を広げるように、蚕蛾に似た一対の白い羽根を生み出す。
618 繭子メタフォーメーション【13/19】 sage 2013/09/16(月) 22:39:16.45 ID:tnFyl6wp
一方、繭子の胎内に潜り込んだ「枝」は「母体」と同化しながら、その「変態」を促す。
ツーテールの髪が根元から白く染まり、前髪の生え際からは、これまた蚕蛾に似た触角が突き出した。
「……みぁっ!? みぁああああっ……!?」
ぎゅっと眼をつむり、上体を仰け反らせて再び眼を開けると、その瞳は紅く変わっている。
色だけではない。艶の消えた瞳を間近で見れば、複眼状に変じたことがわかるだろう。
可憐な少女の面影を残しながらも、蛾と融合したような奇怪な姿に、繭子は変貌を遂げていた。
619 繭子メタフォーメーション【14/19】 sage 2013/09/16(月) 22:42:22.26 ID:tnFyl6wp
いや、そうではない。この姿こそ、いまの繭子の「本来の姿」。
「人間の少女」としての日常生活は「擬態」にすぎない。
そう「造り変わって」しまったのだ。繭子の全てが。
「……はあっ、はあっ、はあっ……」
壁に手をつき、息を整える。
そして《繭子二号》を右肩に掛け、通学靴を手に提げてトイレを出た。
620 繭子メタフォーメーション【15/19】 sage 2013/09/16(月) 22:43:51.57 ID:tnFyl6wp
「……ありがとうございました」
繭子が声をかけると、交番の入口に立っていた若い警官が振り向き、ぽかんと口を開ける。
そして慌てて目を逸らした。顔が真っ赤だ。
「え……あ、はいっ……!」
無理もなかった。蛾と融合したといっても、見た目にはそれは触角や羽根など部分的なもの。
乳頭や股間は辛うじて隠されているが、繭子の姿はほとんど「人間の少女の裸身」なのだ。
621 繭子メタフォーメーション【16/19】 sage 2013/09/16(月) 22:45:27.76 ID:tnFyl6wp
もっとも、それを恥じらう意識は繭子自身からは消え失せている。
覚醒した繭子にとって、いまが当たり前の姿だから。
《繭子二号》と通学靴を警官に押しつける。
「あの……これ、預かって下さい」
返事は待たずに交番の外に出て、繭子は背の羽根を広げ、跳躍した。
「――とうっ!」
622 繭子メタフォーメーション【17/19】 sage 2013/09/16(月) 22:47:00.06 ID:tnFyl6wp
交番の向かいの五階建てビルの屋上へ跳び上がると、弾みをつけて、隣の十二階建てマンションの屋上へ。
そこからさらにビルやマンションの屋上をジャンプして渡って行く。
斃すべき歪蟲のいる場所まで――
異次元より現れ、人類に仇なす魔性のモノ――歪蟲。
見た目は巨大な節足動物や軟体動物――いわゆる「蟲」のよう。
623 繭子メタフォーメーション【18/19】 sage 2013/09/16(月) 22:49:08.50 ID:tnFyl6wp
だが人間の身体を侵蝕し、意識までをも支配して、新たな犠牲者を捕捉し増殖する――
そんな存在が「魔」ではなく何であろう。
しかし、いかなる理由かそれとも偶然か、歪蟲に侵されても自我を喪いきらない「人間」が、ごく稀にいた。
いや、その肉体はすでに歪蟲と同化し「造り変わって」いるのだから厳密には彼らは人間ではない。
それでも、歪蟲に対抗し得る能力を備えた彼らが、人類にとっての救世主であった。
繭子は、その「一人」なのだ。
624 繭子メタフォーメーション【19/19(完)】 sage 2013/09/16(月) 22:52:41.89 ID:tnFyl6wp
……人類のためとか、よっくわかんないけどね。
だいたい、あたし自身もう「人間」じゃないみたいなのに。でも。
ミミズ型とかウミウシ型とかグロい歪蟲がキモいしムカつくし。
悪い歪蟲相手に暴れるのはスカッとするし。出動手当は、いいお小遣いになるし……
繭子は、今日も歪蟲と戦うのであった。
【完】
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6行×19レス分、書き上げてはいるんで
尻切れになったら連投規制にかかったと思って下さい
微エロ、蟲化
ではどうぞ
606 繭子メタフォーメーション【1/19】 sage 2013/09/16(月) 22:17:27.08 ID:tnFyl6wp
「――出動指令よ、繭子(まゆこ)ちゃん。港東二丁目に歪蟲(わいぢゅう)出現」
「ちょっ……あたし、これから中間テスト……」
「いつも通り処理しておくわ。繭子ちゃんは任務を最優先」
「そんな……せっかく覚えた公式や英単語……処理って平均点になるだけじゃん……」
「赤点脱出おめでとう。現在地はGPSで把握してる。そこから五分で到着できるわね」
「ちょっ……赤点なんて一回だけだし……美冴(みさえ)さんってば……もうっ!」
607 繭子メタフォーメーション【2/19】 sage 2013/09/16(月) 22:18:36.44 ID:tnFyl6wp
電話が切れて、ふくれ面で繭子は、肩から下ろしたナップサックにスマートホンをしまい込んだ。
ウサギのぬいぐるみ型のナップサックは繭子のトレードマークだ。
《繭子二号》と名付けたそれを背負い直して、もと来た道を戻る方向に走り出す。
「着替え」の場所が必要だった。少し戻れば交番がある。
栗色のツーテールの髪と《繭子二号》のウサ耳が揺れる。
やや吊り目の仔猫っぽい顔立ちだが、繭子自身はウサギ萌えだ。髪型もウサギをちょっぴり意識している。
608 繭子メタフォーメーション【3/19】 sage 2013/09/16(月) 22:19:58.66 ID:tnFyl6wp
セーラー服の胸は揺れない。すらりと手足の長い、恵まれた体型だが胸だけは発展途上なのだ。
交番に飛び込み、胸ポケットから出した身分証をかざしてみせた。
「緊急事態です、トイレをお借りします!」
若い警察官が目を丸くして、繭子が手にしたそれを覗き込む。
「……区立港東第二中、三年E組……?」
「違った、こっち!」
609 繭子メタフォーメーション【4/19】 sage 2013/09/16(月) 22:20:59.60 ID:tnFyl6wp
慌てて生徒証を引っ込めて、もう一枚の身分証をポケットから引っぱり出す。
警察官の証票によく似たそれは、国家公安委員会発行の――
「……歪蟲対策作戦本部?」
警察官が、さっと姿勢を正して敬礼した。
「失礼しました! どうぞ、存分にご利用下さい!」
「ありがとうございます、あの……着替えるだけですから!」
610 繭子メタフォーメーション【5/19】 sage 2013/09/16(月) 22:22:01.16 ID:tnFyl6wp
自分の名誉のために言い添えて、繭子は交番の奥のトイレに入った。
以前にも借りたことがあるから勝手はわかっている。
洋式便器の蓋を閉めて《繭子二号》を肩から下ろす。
《繭子二号》は収納部分がウサギの頭と胴体に分かれている。
胴体部分には教科書やノートなど勉強道具が入れてある(試験前でなければ教科書なんて持ち帰らないが)。
そして頭の部分には、「歪蟲対策作戦本部」の任務に必要な「秘密兵器」が収めてあった。
611 繭子メタフォーメーション【6/19】 sage 2013/09/16(月) 22:23:13.39 ID:tnFyl6wp
そう――兵器である。それも「生物兵器」だ。極めてキケンな。
スカーフを解き、脇のジッパーを上げてセーラー服を脱ぎ、下に着ていたキャミソールも脱いだ。
色白のしなやかな身体に――Aカップに収まる慎ましやかな胸。
そして、むんっ……と、たち込めるバニラに似た甘い体臭。
「はあっ……」と、思わず吐息をつく。自分でも頭がくらくらする。
意識するほど匂いが濃く甘くなるのだから始末が悪い。
612 繭子メタフォーメーション【7/19】 sage 2013/09/16(月) 22:24:12.82 ID:tnFyl6wp
その匂いにこそ繭子が歪蟲対策作戦本部に所属する理由が秘められているのだが。
脱いだものは丸めて《繭子二号》の胴体側に押し込む。
それから腰のホックを外し、ジッパーを下ろしてスカートを脱いだ。
黒いニーソックスに太腿の半ばまで包まれた形のいい脚。
細く締まったウエストの下、程良く丸みを帯びたヒップは白と水色の横縞のショーツに収まっている。
613 繭子メタフォーメーション【8/19】 sage 2013/09/16(月) 22:27:04.29 ID:tnFyl6wp
どきどきと胸の鼓動が早まるのを感じながら、通学靴とニーソックスを脱ぐ。
露わになった素肌から立ち上るバニラの匂いに、むせ返りそうになる。
ブラを外し、淡い桜色の乳頭を晒す。
自分以外の誰が見ているわけでもない。なのに、どうしてこんなに身体が火照るのか。
そしてショーツも脱いだ。処理済のビキニラインは綺麗に無毛であった。
しかし幼いままとは違う。なだらかな陰阜の下のその部分には薄紅色の花弁が僅かに綻んでいる。
614 繭子メタフォーメーション【9/19】 sage 2013/09/16(月) 22:29:14.75 ID:tnFyl6wp
どくんどくんどくんどくん。心臓が早鐘を打つ。
脱いだものを《繭子二号》の胴体にしまい込み、頭の収納部分のジッパーを開けてポーチを取り出す。
元は生理用品を入れていたものだ。もう繭子が生理になることはないけど。
身体が「造り変わって」しまったから。
その原因でもある存在(もの)がポーチには収まっていた。
昆虫の蛹(さなぎ)に似たモノ。ただし、人間の握り拳ほども大きい。それが三つ。
615 繭子メタフォーメーション【10/19】 sage 2013/09/16(月) 22:31:20.75 ID:tnFyl6wp
「……はあっ」と、息を吐き、蛹を一つ手にとって、ポーチを《繭子二号》に戻す。
奇妙に大きくグロテスクといっていい蛹なのに、いまの繭子には、それが愛おしく思えてしまう。
「造り変わった」のは身体ばかりではない。繭子の意識(こころ)も、奥底の部分が変えられてしまった。
待ってて、いま「蜜」を吸わせてあげる……
繭子は《解放鍵(キーワード)》を口にした。
「――《メタフォーメーション》!」
616 繭子メタフォーメーション【11/19】 sage 2013/09/16(月) 22:34:12.07 ID:tnFyl6wp
眼の奥で光が弾けた。自慰で達したときと酷似した――いや、それを凌駕する絶頂感。
身体の芯から熱いものが噴き出す。比喩ではなくそうだった。どくどくと、花弁が蜜を溢れさせる。
《解放鍵》によって「本来の繭子」が覚醒したのだ。
とめどなく蜜を湧かせる花弁に、繭子は蛹を押し当てた。
「……ひゃうっ!? んにゅいぃぃぃっ……吸われるぅぅぅっ……!?」
――そして。蛹が、急速に「成長」を始めた。
617 繭子メタフォーメーション【12/19】 sage 2013/09/16(月) 22:37:43.10 ID:tnFyl6wp
体節が伸び、その末端が新たな体節を次々と生み、一部は枝分かれして、繭子の裸身に絡みつく。
すでに綻んでいた花弁を枝の一端が押し割り、蜜にまみれた別の枝は、ぬるりと尻穴に潜り込む。
「あにゅぅぅぅっ……!?」
二条の枝が柔肌の上を這い伸び、幼げな乳房に達すると、くるりと先端が弧を描き、乳頭を覆い隠す。
背にも二筋の枝が這い、左右の肩甲骨の上まで達すると、
――ぶわっ、と、扇を広げるように、蚕蛾に似た一対の白い羽根を生み出す。
618 繭子メタフォーメーション【13/19】 sage 2013/09/16(月) 22:39:16.45 ID:tnFyl6wp
一方、繭子の胎内に潜り込んだ「枝」は「母体」と同化しながら、その「変態」を促す。
ツーテールの髪が根元から白く染まり、前髪の生え際からは、これまた蚕蛾に似た触角が突き出した。
「……みぁっ!? みぁああああっ……!?」
ぎゅっと眼をつむり、上体を仰け反らせて再び眼を開けると、その瞳は紅く変わっている。
色だけではない。艶の消えた瞳を間近で見れば、複眼状に変じたことがわかるだろう。
可憐な少女の面影を残しながらも、蛾と融合したような奇怪な姿に、繭子は変貌を遂げていた。
619 繭子メタフォーメーション【14/19】 sage 2013/09/16(月) 22:42:22.26 ID:tnFyl6wp
いや、そうではない。この姿こそ、いまの繭子の「本来の姿」。
「人間の少女」としての日常生活は「擬態」にすぎない。
そう「造り変わって」しまったのだ。繭子の全てが。
「……はあっ、はあっ、はあっ……」
壁に手をつき、息を整える。
そして《繭子二号》を右肩に掛け、通学靴を手に提げてトイレを出た。
620 繭子メタフォーメーション【15/19】 sage 2013/09/16(月) 22:43:51.57 ID:tnFyl6wp
「……ありがとうございました」
繭子が声をかけると、交番の入口に立っていた若い警官が振り向き、ぽかんと口を開ける。
そして慌てて目を逸らした。顔が真っ赤だ。
「え……あ、はいっ……!」
無理もなかった。蛾と融合したといっても、見た目にはそれは触角や羽根など部分的なもの。
乳頭や股間は辛うじて隠されているが、繭子の姿はほとんど「人間の少女の裸身」なのだ。
621 繭子メタフォーメーション【16/19】 sage 2013/09/16(月) 22:45:27.76 ID:tnFyl6wp
もっとも、それを恥じらう意識は繭子自身からは消え失せている。
覚醒した繭子にとって、いまが当たり前の姿だから。
《繭子二号》と通学靴を警官に押しつける。
「あの……これ、預かって下さい」
返事は待たずに交番の外に出て、繭子は背の羽根を広げ、跳躍した。
「――とうっ!」
622 繭子メタフォーメーション【17/19】 sage 2013/09/16(月) 22:47:00.06 ID:tnFyl6wp
交番の向かいの五階建てビルの屋上へ跳び上がると、弾みをつけて、隣の十二階建てマンションの屋上へ。
そこからさらにビルやマンションの屋上をジャンプして渡って行く。
斃すべき歪蟲のいる場所まで――
異次元より現れ、人類に仇なす魔性のモノ――歪蟲。
見た目は巨大な節足動物や軟体動物――いわゆる「蟲」のよう。
623 繭子メタフォーメーション【18/19】 sage 2013/09/16(月) 22:49:08.50 ID:tnFyl6wp
だが人間の身体を侵蝕し、意識までをも支配して、新たな犠牲者を捕捉し増殖する――
そんな存在が「魔」ではなく何であろう。
しかし、いかなる理由かそれとも偶然か、歪蟲に侵されても自我を喪いきらない「人間」が、ごく稀にいた。
いや、その肉体はすでに歪蟲と同化し「造り変わって」いるのだから厳密には彼らは人間ではない。
それでも、歪蟲に対抗し得る能力を備えた彼らが、人類にとっての救世主であった。
繭子は、その「一人」なのだ。
624 繭子メタフォーメーション【19/19(完)】 sage 2013/09/16(月) 22:52:41.89 ID:tnFyl6wp
……人類のためとか、よっくわかんないけどね。
だいたい、あたし自身もう「人間」じゃないみたいなのに。でも。
ミミズ型とかウミウシ型とかグロい歪蟲がキモいしムカつくし。
悪い歪蟲相手に暴れるのはスカッとするし。出動手当は、いいお小遣いになるし……
繭子は、今日も歪蟲と戦うのであった。
【完】
(ヘッドフォンの中には・・・)
467 (1/7) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
部活が終わり、友人たちとファミレスでお喋りをして、駅前で別れ、帰路。
少女はいつものようにレコードショップに寄っていた。
特に欲しいものがあるわけでもないのだけれど、ついつい立ち寄ってしまう。
習慣みたいなものだ。
音楽好きな両親の影響だろうか。
本が好きな人がいるのと同じように、少女はCDやレコードが好きだった。
そんな彼女にとってレコードショップやレンタルショップというのは自宅と同じくらいほっとする場所なのだ。
タイトルを流し見し、目についたものを引きぬき、ジャケットを鑑賞し、棚に戻す。
ほぼ毎日同じ事をしているせいか、妙になれた、流れるような手つきだ。
ときどき気に入ったものがあったのか、目を見開いたり、口元をわずかにほころばせたりする。
中学生の財力ゆえに、気に入ったものすべてを買えるわけではない。
良かったものを覚えて帰り、特に気に入ったものだけを、後日また買いに来るようにして、一枚一枚コレクションを増やしていくのが常だった。
468 (2/7) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
少女はすこし飽きをおぼえていた。
それも当然。
そこそこ大きなレコードショップだったが、所詮はチェーン店。
しかも毎日来ているだけあって、大体のCDは見てしまっている。
店内の配置にしても、下手な店員よりは確実に詳しいだろう。
(そろそろ隣町のレコードショップに足を伸ばしてもいいかな)
そんなことを考えながら、新入荷の棚を漁り、店内をぶらつく。
棚の中を抜けて、壁際へ、店の隅へとふらりふらり。
(あ、試聴機のタイトル替わってる)
目ざとく見つけると、吸い付けられるように試聴機に手を伸ばす。
と、違和感。
(あれ、ヘッドフォンも?)
試聴機にかかっていたのは見慣れたものではなく、より大きく、高級そうなヘッドフォン。
新しいものはいいものだ。
少女はすこし得した気分になって、そのヘッドフォンをそっと取り上げる。
いままで慣れたここのヘッドフォンより、すこしずしりとした作り。
耳をすっぽり覆うおおきなイヤパッドは、手に吸い付くようなしめやかな素材で覆われている。
装着すると、店内のざわつきや音楽が、スッと遠くなった。
どこかがあたったのか、チクリとしたのをちょっとずらして調節すると、頭と一体化したかのように馴染む。
実に上等なヘッドフォンだ。嬉しくなって、試聴機の1番からかける。
はじめて見るバンドだったが、なかなか少女の好みにあった曲だった。
じっくり聞いてやろうと、肩にかけていた鞄をおろして、足の間に置き、楽な体勢をとる。
そうして、少女は静かな世界で音楽に没入していった。
469 (2/7) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
一曲目がおわり、二曲目が始まる。
全部聴いているほど暇でもないし、お店で全部聴くのはちょっと気まずい。
次のCDへかけ替えるために、少女は試聴に手を伸ばそうとした。
(あれ?)
動かない。
金縛りにあってしまったように、ピクリとも動かせない。
手どころか足や首、体全体が少女の意思をはなれてしまっていた。
声を出そうとするも、掠れ声さえ出せない。
音楽に集中するために薄く閉じたまぶたは、いくら開けようとしても微動だにしない。
予想だにしない状況に、パニックに陥ってしまう。
しかし、少女の内心とは裏腹に、身体は平常のまま。
店員や他の客には、リラックスした状態で曲を聴き続けているようにしか見えない。
いつもの子がまた試聴機を使っている、それだけである。
予想だにしない事態に混乱している少女は、聞こえてくる音に変化が生じたことに気づかなかった。
穏やかな音楽に紛れて、なにかが蠢き出す気配。
軟体質のそれは、ヘッドフォンの中にへばりついていたらしい。
染み出すようにイヤパッドの中に溢れて、少女の耳に近づいてゆく。
右のスピーカーがすべて覆われて、音がくぐもった頃に少女もようやく新たな異変を感じとった。
しかし、おぞましい気配を察したところで、少女は動けない。
抵抗のすべを持たない少女の耳を、生暖かい軟体が舐めるように覆ってゆく。
その行き先は少女の耳穴。
気色の悪い感覚に、少女の背筋から全身にぞっと怖気が走る。
右耳からはぐちゅぐちゅとした水音にも似た音ばかりきこえ、左耳から聞こえるはずの音楽は現実感をうしなって遠くへ行ってしまった。
軟体はぬるぬると這いながら耳穴をその身で埋め尽くすと、一度動きを止める。
耳を這う動きがとまったことにより、少女の理解がようやっと追いつく。
身体が動かせなくて、耳をなにかに覆い尽くされて、声もだせなくて。
現状の把握が進むにつれ、少女の胸中に今度は不安が広がる。
何が起きているのかわからないけれど、このまま終わるはずがない。
そんな漠然とした予感。
閉じた視界の中で耳へと意識が集中していて、ほんの些細な動きさえ感じ取れてしまう。
鋭敏になった感覚に突如激痛がはしる。
軟体がその身を尖らせ鼓膜を破ったのだ。
キーンという音にならない音が響き、身動きも声も出せない状況はより痛みをより一層大きく感じさせる。
唯一自由になる呼吸を詰まらせ、荒げ、なんとか痛みを和らげようとするも、たったそれだけでは気休めにもならない。
ただただ、すべてが終わるまで耐えるしかなかった。
470 (4/6) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
そんな少女にお構いなく軟体はその身を少女の奥へと進める。
鼓室に侵入し、蝸牛を埋め尽くし、そうして脳へ根を伸ばす。
丁寧に、丁寧に。
宿主をこわしてしまっては元も子もない。
脳を奪い取るのではなく、共有するのだ。
まずは痛みを感じる部位から変えてゆく。
快楽物質を大量に放出させ、痛みを和らげ、神経を繋ぎ変えて痛みを快感へと錯覚させる。
人間は脆いものだ。
人間をどう扱えばいいのかを、それは本能的に知っていた。
痛みだけで死んでしまうコレは、最初にここを抑えておかないとすぐに壊れてしまう。
痛覚神経と快感中枢を支配して。
さて、本格的な寄生の開始だ。
まだヘッドフォンの中に残った身体を、中へ中へと補充しながら脳に張った根を広げてゆく。
運動中枢を支配して、身体を掌握する。
これでもう神経毒は要らなくなった。
最初に打ち込んでコレの身体を麻痺させた毒は中和しておく。
さあ、あとは意思を司る部分を乗っ取るだけ。
471 (5/6) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
これは少々やっかい。
記憶を読み込んで、改ざんして、自分がいることを当然だと思い込ませなければいけない。
そのためには記憶を共有して、思考パターンを合わせるのが手っ取り早い。
そうしないと思い通りに動いてくれないのだ。
丁寧な仕事には時間がかかる。
その間に養分の確保をしておかなくては。
脳への侵食を進めながら、今度は鼓室から鼻の奥につながる耳管に触手を伸ばす。
身を細くして耳管を抜け、咽喉から食道へ。
消化管の内壁に張り付くように、網状のアメーバのように、奥へ奥へ。
胃を覆い、幽門を抜け、十二指腸、小腸、大腸と。
消化管全てを覆い尽くし、本体へと栄養を送る。
幸い、先ほど食事してくれていたらしい。
十分すぎるほどの養分が摂取できた。
どうやらコレは体重を気にしているみたい。
これからは私がいるからね。
好きなだけ食べるといいよ。
さて、記憶の読み取りもほぼ終わり。
やれやれ、これで一息つけるよ。
あとは吸収した養分で増やした部分を、このヘッドフォンへ残しておしまい。
これ以上ここにいては店員に怪しまれてしまうからね。
あとの作業は家に帰ってからにしましょう。
それにしてもこのヘッドフォンというのは理想的な住処だね。
最初の私はよっぽど賢かったのね。
最近は分裂の頻度もあがって、申し分なし。
さて、じゃあね。
脳から切り離した瞬間に襲っちゃだめだよ?
この人間には私がもう入ってるんだから。
そうね。
2日くらい、眠ってるといいわ。
じゃ、元気でね。
472 (6/6) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
遠い、あやふやなところへ行っていた少女の意識が戻ってくる。
6枚あったCDも、もう聞き終えてしまった。
(そうね、3枚目はなかなか良かった。買ってもいいかもしれないね)
そんなことを考えながら、ヘッドフォンを外し、試聴機へ戻す。
もうすっかり遅くなってしまった。
このままだと夕飯の時間に遅れてしまう。
少女は足の間においていたカバンを持ち上げる。
通学カバンの布地はところどころ、水気を含んでその色を濃くしている。
少女の股間から溢れでた液体が、太ももをつたい、ニーソックスに染みこみ、カバンにまで到達した結果である。
(いやだな。シミにならないといいんだけれど)
家に帰って、はやく洗うことを考えながら、少女は店をでる。
右耳から未だにズキンズキンと痛いほどに感じる快感で、少々足元がおぼつかないようだ。
そっと、手をあてがうと、キーンとした音がひびいてくるような気がする。
家へ足をむけると、クゥと可愛らしく腹がなる。
(お腹すいたなあ)
晩御飯のメニューはなんだろうかと思いを馳せる。
(そう、たくさん食べて、この子を育てて、もっともっと増やさないといけないもんね)
「うーん、楽しみ!」
思わずすこし大きな独り言をもらした後、少女はあわてて周りを見渡し、誰も見ていなかったことにホッとして、足を速めるのだった。
おわり
473 名無しさん@ピンキー sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
以上です
名前欄のレス番がグダったりほぼエロシーンなかったりですまんせん
ヘッドフォンから生えた触手に脳いじられるシチュが大好きですすいません
部活が終わり、友人たちとファミレスでお喋りをして、駅前で別れ、帰路。
少女はいつものようにレコードショップに寄っていた。
特に欲しいものがあるわけでもないのだけれど、ついつい立ち寄ってしまう。
習慣みたいなものだ。
音楽好きな両親の影響だろうか。
本が好きな人がいるのと同じように、少女はCDやレコードが好きだった。
そんな彼女にとってレコードショップやレンタルショップというのは自宅と同じくらいほっとする場所なのだ。
タイトルを流し見し、目についたものを引きぬき、ジャケットを鑑賞し、棚に戻す。
ほぼ毎日同じ事をしているせいか、妙になれた、流れるような手つきだ。
ときどき気に入ったものがあったのか、目を見開いたり、口元をわずかにほころばせたりする。
中学生の財力ゆえに、気に入ったものすべてを買えるわけではない。
良かったものを覚えて帰り、特に気に入ったものだけを、後日また買いに来るようにして、一枚一枚コレクションを増やしていくのが常だった。
468 (2/7) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
少女はすこし飽きをおぼえていた。
それも当然。
そこそこ大きなレコードショップだったが、所詮はチェーン店。
しかも毎日来ているだけあって、大体のCDは見てしまっている。
店内の配置にしても、下手な店員よりは確実に詳しいだろう。
(そろそろ隣町のレコードショップに足を伸ばしてもいいかな)
そんなことを考えながら、新入荷の棚を漁り、店内をぶらつく。
棚の中を抜けて、壁際へ、店の隅へとふらりふらり。
(あ、試聴機のタイトル替わってる)
目ざとく見つけると、吸い付けられるように試聴機に手を伸ばす。
と、違和感。
(あれ、ヘッドフォンも?)
試聴機にかかっていたのは見慣れたものではなく、より大きく、高級そうなヘッドフォン。
新しいものはいいものだ。
少女はすこし得した気分になって、そのヘッドフォンをそっと取り上げる。
いままで慣れたここのヘッドフォンより、すこしずしりとした作り。
耳をすっぽり覆うおおきなイヤパッドは、手に吸い付くようなしめやかな素材で覆われている。
装着すると、店内のざわつきや音楽が、スッと遠くなった。
どこかがあたったのか、チクリとしたのをちょっとずらして調節すると、頭と一体化したかのように馴染む。
実に上等なヘッドフォンだ。嬉しくなって、試聴機の1番からかける。
はじめて見るバンドだったが、なかなか少女の好みにあった曲だった。
じっくり聞いてやろうと、肩にかけていた鞄をおろして、足の間に置き、楽な体勢をとる。
そうして、少女は静かな世界で音楽に没入していった。
469 (2/7) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
一曲目がおわり、二曲目が始まる。
全部聴いているほど暇でもないし、お店で全部聴くのはちょっと気まずい。
次のCDへかけ替えるために、少女は試聴に手を伸ばそうとした。
(あれ?)
動かない。
金縛りにあってしまったように、ピクリとも動かせない。
手どころか足や首、体全体が少女の意思をはなれてしまっていた。
声を出そうとするも、掠れ声さえ出せない。
音楽に集中するために薄く閉じたまぶたは、いくら開けようとしても微動だにしない。
予想だにしない状況に、パニックに陥ってしまう。
しかし、少女の内心とは裏腹に、身体は平常のまま。
店員や他の客には、リラックスした状態で曲を聴き続けているようにしか見えない。
いつもの子がまた試聴機を使っている、それだけである。
予想だにしない事態に混乱している少女は、聞こえてくる音に変化が生じたことに気づかなかった。
穏やかな音楽に紛れて、なにかが蠢き出す気配。
軟体質のそれは、ヘッドフォンの中にへばりついていたらしい。
染み出すようにイヤパッドの中に溢れて、少女の耳に近づいてゆく。
右のスピーカーがすべて覆われて、音がくぐもった頃に少女もようやく新たな異変を感じとった。
しかし、おぞましい気配を察したところで、少女は動けない。
抵抗のすべを持たない少女の耳を、生暖かい軟体が舐めるように覆ってゆく。
その行き先は少女の耳穴。
気色の悪い感覚に、少女の背筋から全身にぞっと怖気が走る。
右耳からはぐちゅぐちゅとした水音にも似た音ばかりきこえ、左耳から聞こえるはずの音楽は現実感をうしなって遠くへ行ってしまった。
軟体はぬるぬると這いながら耳穴をその身で埋め尽くすと、一度動きを止める。
耳を這う動きがとまったことにより、少女の理解がようやっと追いつく。
身体が動かせなくて、耳をなにかに覆い尽くされて、声もだせなくて。
現状の把握が進むにつれ、少女の胸中に今度は不安が広がる。
何が起きているのかわからないけれど、このまま終わるはずがない。
そんな漠然とした予感。
閉じた視界の中で耳へと意識が集中していて、ほんの些細な動きさえ感じ取れてしまう。
鋭敏になった感覚に突如激痛がはしる。
軟体がその身を尖らせ鼓膜を破ったのだ。
キーンという音にならない音が響き、身動きも声も出せない状況はより痛みをより一層大きく感じさせる。
唯一自由になる呼吸を詰まらせ、荒げ、なんとか痛みを和らげようとするも、たったそれだけでは気休めにもならない。
ただただ、すべてが終わるまで耐えるしかなかった。
470 (4/6) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
そんな少女にお構いなく軟体はその身を少女の奥へと進める。
鼓室に侵入し、蝸牛を埋め尽くし、そうして脳へ根を伸ばす。
丁寧に、丁寧に。
宿主をこわしてしまっては元も子もない。
脳を奪い取るのではなく、共有するのだ。
まずは痛みを感じる部位から変えてゆく。
快楽物質を大量に放出させ、痛みを和らげ、神経を繋ぎ変えて痛みを快感へと錯覚させる。
人間は脆いものだ。
人間をどう扱えばいいのかを、それは本能的に知っていた。
痛みだけで死んでしまうコレは、最初にここを抑えておかないとすぐに壊れてしまう。
痛覚神経と快感中枢を支配して。
さて、本格的な寄生の開始だ。
まだヘッドフォンの中に残った身体を、中へ中へと補充しながら脳に張った根を広げてゆく。
運動中枢を支配して、身体を掌握する。
これでもう神経毒は要らなくなった。
最初に打ち込んでコレの身体を麻痺させた毒は中和しておく。
さあ、あとは意思を司る部分を乗っ取るだけ。
471 (5/6) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
これは少々やっかい。
記憶を読み込んで、改ざんして、自分がいることを当然だと思い込ませなければいけない。
そのためには記憶を共有して、思考パターンを合わせるのが手っ取り早い。
そうしないと思い通りに動いてくれないのだ。
丁寧な仕事には時間がかかる。
その間に養分の確保をしておかなくては。
脳への侵食を進めながら、今度は鼓室から鼻の奥につながる耳管に触手を伸ばす。
身を細くして耳管を抜け、咽喉から食道へ。
消化管の内壁に張り付くように、網状のアメーバのように、奥へ奥へ。
胃を覆い、幽門を抜け、十二指腸、小腸、大腸と。
消化管全てを覆い尽くし、本体へと栄養を送る。
幸い、先ほど食事してくれていたらしい。
十分すぎるほどの養分が摂取できた。
どうやらコレは体重を気にしているみたい。
これからは私がいるからね。
好きなだけ食べるといいよ。
さて、記憶の読み取りもほぼ終わり。
やれやれ、これで一息つけるよ。
あとは吸収した養分で増やした部分を、このヘッドフォンへ残しておしまい。
これ以上ここにいては店員に怪しまれてしまうからね。
あとの作業は家に帰ってからにしましょう。
それにしてもこのヘッドフォンというのは理想的な住処だね。
最初の私はよっぽど賢かったのね。
最近は分裂の頻度もあがって、申し分なし。
さて、じゃあね。
脳から切り離した瞬間に襲っちゃだめだよ?
この人間には私がもう入ってるんだから。
そうね。
2日くらい、眠ってるといいわ。
じゃ、元気でね。
472 (6/6) sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
遠い、あやふやなところへ行っていた少女の意識が戻ってくる。
6枚あったCDも、もう聞き終えてしまった。
(そうね、3枚目はなかなか良かった。買ってもいいかもしれないね)
そんなことを考えながら、ヘッドフォンを外し、試聴機へ戻す。
もうすっかり遅くなってしまった。
このままだと夕飯の時間に遅れてしまう。
少女は足の間においていたカバンを持ち上げる。
通学カバンの布地はところどころ、水気を含んでその色を濃くしている。
少女の股間から溢れでた液体が、太ももをつたい、ニーソックスに染みこみ、カバンにまで到達した結果である。
(いやだな。シミにならないといいんだけれど)
家に帰って、はやく洗うことを考えながら、少女は店をでる。
右耳から未だにズキンズキンと痛いほどに感じる快感で、少々足元がおぼつかないようだ。
そっと、手をあてがうと、キーンとした音がひびいてくるような気がする。
家へ足をむけると、クゥと可愛らしく腹がなる。
(お腹すいたなあ)
晩御飯のメニューはなんだろうかと思いを馳せる。
(そう、たくさん食べて、この子を育てて、もっともっと増やさないといけないもんね)
「うーん、楽しみ!」
思わずすこし大きな独り言をもらした後、少女はあわてて周りを見渡し、誰も見ていなかったことにホッとして、足を速めるのだった。
おわり
473 名無しさん@ピンキー sage 2013/07/26(金) NY:AN:NY.AN ID:MErCHgPi
以上です
名前欄のレス番がグダったりほぼエロシーンなかったりですまんせん
ヘッドフォンから生えた触手に脳いじられるシチュが大好きですすいません